JP5004262B2 - 樹脂組成物ならびにそれからなる成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂および強化材を含有してなり、成形性、機械特性および耐熱性に優れた樹脂組成物、およびこの樹脂組成物からなる成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリ乳酸樹脂は、高い融点を持ち、また溶融成形可能であることから、実用上優れた生分解性ポリマーとして期待されている。しかしながら、ポリ乳酸樹脂は結晶化速度が遅いため、結晶化させて成形品として用いるには限界があった。例えばポリ乳酸樹脂を射出成形する場合には、長い成形サイクル時間や成形後の熱処理を必要とすること、および成形時や熱処理時の変形が大きいことなどの実用的に大きな問題があった。そして、これらの問題を改良するために、ポリ乳酸樹脂に対し各種強化材を添加することが検討されているが、それによる効果はいまだに不十分なものであった。
【0003】
一方、ポリアセタール樹脂は、機械特性や成形性などバランスに優れた樹脂であることから、射出成形品として広く用いられているが、これに繊維状強化材を添加して使用した場合には、成形品に収縮の異方性に起因する変形を生じること、および衝撃強度の向上効果が小さいことなどの問題があった。また、強化材の配合量が多くなると成形品の表面外観が低下するという問題も生じていた。
【0004】
2種またはそれ以上のポリマーを配合して用いる技術については、ポリマーアロイとして広く知られており、このポリマーアロイは個々のポリマーの欠点を改良する目的で広く利用されている。しかしながら、2種以上のポリマーを混合した場合、多くはポリマー同士の分散性が悪く、ペレットや成形品の形状に加工できなかったり、劣った特性を示す傾向となる。
【0005】
しかし、まれに2種のポリマーが均一な非晶相を形成する場合があって、この種のものは、一般に相溶性または混和性のポリマーアロイとして知られており、優れた特性を示すことが期待されているが、その例は少ない。
【0006】
ポリ乳酸樹脂と相溶性のあるポリマーとしては、ポリエチレングリコール(例えば、非特許文献1参照)や、ポリメチルメタクリレート(例えば、非特許文献2参照)が知られているが、これらのポリマーを混合した場合には、ポリ乳酸樹脂の強度や結晶性が大きく低下するという問題があった。
【0007】
また、ポリアセタール樹脂と相溶性のあるポリマーとしては、ポリビニルフェノール(例えば、非特許文献3参照)が知られているが、このポリビニルフェノールは分子量が一般に低いことから、混合後の樹脂物性が低下するという問題があった。
【0008】
【非特許文献1】
Polymer 37(26),5849−5857頁(1996)
【非特許文献2】
Polymer 39(26),6891−6897頁(1998)
【非特許文献3】
Polymer 33(4),760−766頁(1992)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0010】
したがって、本発明の目的は、成形性、機械特性および耐熱性に優れた樹脂組成物、およびそれからなる成形品を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂および強化材を必須成分として含有した樹脂組成物が、目的とする優れた特性を有することを見い出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂および強化材としてタルクを含有する樹脂組成物であって、前記ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、前記ポリ乳酸樹脂の配合量が40重量部以下1重量部以上及び前記ポリアセタール樹脂の配合量が60重量部以上99重量部以下であり、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂とが相溶化していることを特徴とする樹脂組成物を提供するものである。
【0013】
なお、本発明の樹脂組成物においては、
前記ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、強化材の配合量が200重量部以下0.1重量部以上であること、
樹脂組成物のポリアセタール樹脂由来の降温時の結晶化温度が、用いたポリアセタール樹脂単独の降温時の結晶化温度よりも低い温度であること、
前記ポリアセタール樹脂が、ポリアセタールコポリマーであること、
が好ましい条件として挙げられ、これらの条件を適用した場合には一層優れた効果の取得を期待することができる。
【0014】
また、本発明の成形品は、上記の樹脂組成物からなること、または上記の樹脂組成物を金型温度80℃以上120℃以下で射出成形してなることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。
【0017】
本発明においては、相溶性の点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が70%以上含まれるかあるいはD体が70%以上含まれることが好ましく、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが特に好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが更に好ましく、L体が98%以上含まれるかあるいはD体が98%以上含まれることが更に好ましい。また、L体またはD体の含有量の上限は通常100%以下である。い。
【0018】
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
【0019】
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが望ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0020】
ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましく、特に160℃以上であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂の融点は、通常乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点が120℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることにより、また融点が150℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることにより、得ることができる。
【0021】
本発明に用いられるポリアセタール樹脂は、オキシメチレン単位を主たる繰り返し単位とするポリマーであり、ホルムアルデヒドもしくはトリオキサンを主原料として、重合反応によって得られる、いわゆるポリアセタールホモポリマーであっても、主としてオキシメチレン単位からなり、主鎖中に2〜8個の隣接する炭素原子を有するオキシアルキレン単位を15重量%以下含有するいわゆるポリアセタールコポリマーのいずれであってもよく、また他の構成単位を含有するコポリマー、すなわち、ブロックコポリマー、ターポリマー、架橋ポリマーのいずれであっても良く、これらは1種または2種以上で用いることができるが、熱安定性の観点からポリアセタールコポリマーであることが好ましい。
【0022】
本発明におけるポリアセタール樹脂の製造方法は特に制限はなく、公知の方法により製造できる。ポリアセタールホモポリマーの代表的な製造方法の例としては、高純度のホルムアルデヒドを有機アミン、有機あるいは無機の錫化合物、金属水酸化物のような塩基性重合触媒を含有する有機溶媒中に導入して重合し、重合体を濾別した後、無水酢酸中、酢酸ナトリウムの存在下で加熱してポリマー末端をアセチル化して製造する方法などが挙げられる。
【0023】
また、代表的なポリアセタールコポリマーの製造方法としては、高純度のトリオキサンおよびエチレンオキシドや1,3−ジオキソランなどの共重合成分をシクロヘキサンのような有機溶媒中に導入し、三弗化ホウ素ジエチルエーテル錯体のようなルイス酸触媒を用いてカチオン重合した後、触媒の失活と末端基の安定化を行うことにより製造する方法、あるいは溶媒を全く使用せずに、セルフクリーニング型攪拌機の中へトリオキサン、共重合成分および触媒を導入して塊状重合した後、さらに不安定末端を分解除去して製造する方法などが挙げられる。
【0024】
これらポリマーの粘度は、成形材料として使用できる程度のものであれば特に制限はないが、ASTMD1238法によるメルトインデックス(MI)が測定可能であり、温度190℃、荷重2.16Kgで測定したMIが1.0〜50g/10分の範囲のものが好ましく、1.5〜35g/10分のものであることが特に好ましい。
【0025】
また、ポリアセタール樹脂としては、あらかじめ熱安定剤や発生ガス捕捉剤を含有しているものを用いることが好ましく、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、カルシウムリシノレート、シアノグアナジン、ヘキサメチレンビス(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシハイドロシアナメート)、メラミン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ナイロン6/66、ナイロン66/610/6、ナイロン612/6、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシアナメート)]メタン、1,6−ヘキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール[3−(3,5−ジ−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]の少なくとも1種が含有されていることが好ましい。
【0026】
なお、ポリアセタール樹脂を用いる場合、特に40重量部以上を用いる場合には、ポリアセタール樹脂の分解が促進されることにより組成物の耐久性を損なうなど、組成物自体の特性に強い影響を与える可能性の高いホルムアルデヒドについては、配合しないことが好ましい。ポリアセタール樹脂自体に含まれるホルムアルデヒドを考慮して、ポリアセタール樹脂に対して、多くとも500ppm未満にとどめておくのが好ましく、250ppm未満とするのがさらに好ましく、100ppm未満とするのが特に好ましい。このようなホルムアルデヒド含有量を達成するには、前述したようにポリアセタールホモポリマーの重合後、ポリマー末端をアセチル化したり、ポリアセタールコポリマーの重合後、不安定末端を分解除去するなどの方法により安定化処理を行ったポリアセタール樹脂を用いることが好ましい。上記樹脂組成物中のホルムアルデヒド含有量は、樹脂組成物を粉砕して得られる粉体1gを、水100ml中、50℃で6時間撹拌して、ホルムアルデヒドを抽出し、アセチルアセトン法で定量することにより測定することができる。
【0027】
本発明で使用する強化材としてはタルクが用いられる。
【0029】
また、強化材としてのタルクの平均粒径は10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがさらに好ましく、3μm以下であることがさらに好ましい。
【0030】
上記の強化材は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシランなどのカップリング剤などで処理または各種有機物で修飾処理されていることが好ましい。
【0031】
上記の強化材は、1種で用いても2種以上併用して用いても良い。
【0032】
また、強化材の配合量は、ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計100重量部に対して、200重量部以下0.1重量部以上が好ましく、100重量部以下0.5重量部以上がさらに好ましい。また、板状や粒状の強化材を用いる場合にはポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計100重量部に対して、200重量部以下5重量部超を用いることが、強化剤としての効果が十分であるので好ましい。
【0034】
また、本発明の樹脂組成物におけるポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の配合組成は、ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリアセタール樹脂99重量部以下60重量部以上とするのが好ましく、この場合には、ポリアセタール樹脂の特性を改良することが可能であり、特に強化材を用いた場合に寸法精度や機械特性の改良に効果がある。また、成形品の表面外観を改良する効果もある。
【0035】
本発明の樹脂組成物においては、ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂とが相溶化していることが必要である。ここでいう「相溶化」とは、分子レベルで非晶相内に均一相を形成する重合体の混合物を形成することを説明するために用いられる。つまり、配合物の一方または両方が結晶相および非晶相の両方を形成する場合、相溶性とは、非晶相が分子レベルで混合していることを意味する。
【0036】
配合物中の相溶性の判断は、いくつかの方法で行うことができる。相溶性について判断する最も一般的な方法は、ガラス転移温度で判断する方法である。相溶性配合物中では、ガラス転移温度が各々単独のものより変化し、多くの場合、単一のガラス転移温度を示す。ガラス転移温度の測定方法としては、差動走査熱量計(DSC)で測定する方法、および動的粘弾性試験により測定する方法のいずれも用いることができる。
【0037】
しかしながら、ポリアセタール樹脂は高結晶性であるために、ポリアセタール樹脂の含有量が多い場合には、ガラス転移温度が不明確になるという問題がある。この場合の相溶性の判断としては、ポリアセタール樹脂の結晶化温度を用いることができる。すなわち、ポリアセタール樹脂がそれ自体よりも結晶化速度の遅い樹脂と相溶性配合物を形成した場合には、ポリアセタール樹脂の結晶化速度が単体の場合よりも低下するからである。したがって、この結晶化速度の低下を、DSCで測定した降温時の結晶化温度で判断することができる。
【0038】
例えば、Polymer 38(25),6135−6143(1997)には、脂肪族ポリエステルであるポリ(3−ヒドロキシブチレート)とポリメチレンオキサイド(ポリアセタール)のブレンドが非相溶性であることが報告されているが、この場合、DSCで測定した組成物中のポリアセタールの降温時の結晶化温度は、ポリアセタール単体の結晶化温度とほとんど変わらないことが示されている。一方、上記非特許文献3には、ポリアセタールとポリビニルフェノールが相溶性であることが報告されているが、この場合、組成物中のポリアセタールの降温時の結晶化温度が、ポリアセタール単体の結晶化温度に比べて、低下することが示されている。
【0039】
本発明の樹脂組成物では、樹脂組成物中のポリアセタール樹脂の降温時の結晶化温度が、ポリアセタール樹脂単独の結晶化温度よりも低い温度を示す。好ましい結晶化温度の低下は組成によって異なる。そして、この結晶化温度は、用いるポリ乳酸樹脂の光学純度が高くなると、低下の程度が大きくなる傾向にある。
【0040】
ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、ポリ乳酸樹脂40重量部未満1重量部以上およびポリアセタール樹脂60重量部超99重量部以下を配合した場合には、DSCにより降温速度20℃/分で測定したポリアセタール樹脂の結晶化温度の低下は0.2℃以上であることが好ましく、0.5℃以上であることがさらに好ましく、1℃以上であることが特に好ましい。
【0041】
本発明の樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、滑剤、離形剤、難燃剤(臭素系難燃剤、燐系難燃剤、アンチモン化合物など)、染料および顔料を含む着色剤、核化剤、および可塑剤などを添加することができる。
【0042】
また、本発明の樹脂組成物に対して、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリエーテルイミドなど)、熱硬化性樹脂(例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)および軟質熱可塑性樹脂(例えばエチレン/グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン/プロピレンターポリマー、エチレン/ブテン−1共重合体などの軟質ポリオレフィン系ポリマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーなど)などの少なくとも1種以上をさらに添加することができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではないが、例えばポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂、強化材および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、1軸または2軸押出機で、均一に溶融混練する方法や、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、独特の特性を持つ組成物であり、射出成形や押出成形などの方法によって、各種成形品に加工し利用することができる。射出成形する場合の金型温度としては、結晶化の観点から、30℃以上が好ましく、60℃以上がさらに好ましく、80℃以上がさらに好ましく、試験片の変形の観点から、140℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましく、110℃以下がさらに好ましい。
【0045】
また、本発明の樹脂組成物からなる成形品としては、射出成形品、押出成形品、およびブロー成形品などが挙げられ、シート、フイルム、繊維などとしても利用することができる。また、これらの成形品は、電気・電子部品(各種ハウジング、歯車、ギアなど)、建築部材、土木部材、農業資材、自動車部品(内装・外装部品など)、および日用品など各種用途に利用することができる。
【0046】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
[参考例1〜10、比較例1〜13]
D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂、ASTM D1238法、190℃、2.16Kg荷重で測定したメルトインデックス値が27g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS731)、および表1、表2に示した各種強化材を、表1に示した割合で混合し、30mm径の2軸押出機で、温度210℃、回転数150rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0047】
なお、表1、表2における強化材の符号は、次の内容を示すものである。
【0048】
B−1:ガラス繊維(日東紡績社製、3J948)
B−2:ワラステナイト(Partek社製、ウィックロール)
B−3:ホウ酸アルミニウムウィスカー(四国化成社製、アルボレックス)
B−4:チタン酸カリウムウィスカー(大塚化学社製ティスモ)
B−5:マイカ(山口雲母工業所社製、21PU、平均粒径6μm)
B−6:タルク(富士タルク社製、LMS100、平均粒径2μm)
B−7:カオリン(エンゲルハルド社製、トランスリンク445、平均粒径2μm)
B−8:クレイ(サザンクレイ社製、クロイサイト93A)
B−9:木粉(アメリカンウッドファイバー社製)
得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)、組成物中のポリアセタール樹脂の降温時の結晶化温度(Tc)を、差動走査熱量計(DSC)を用い、昇降温速度20℃/分で測定した。なお、使用したポリアセタール単独の降温時の結晶化温度は140℃であった。
【0049】
また、得られた樹脂組成物をシリンダー温度210℃、金型温度90℃(一部40℃)で射出成形を行うことにより試験片を得た。この成形時の試験片の変形を目視で観察した。
【0050】
さらに、上記で得られた引張試験片を用い、ASTM法D638に準じて引張試験を、ASTM法D256に準じてアイゾッド衝撃試験を、ASTM法D648に準じて熱変形温度(荷重1.82MPa)の測定を行った。また、上記試験片を140℃で1時間熱処理した場合に試験片がさらに変形するか否かを目視で観測した。これらの結果を表1および表2に併せて示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1および表2の結果から、参考例1〜10の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂単独の場合(比較例1、2)に比べて、ガラス転移温度が低下し、さらに組成物中のポリアセタール樹脂の降温結晶化温度も低下していることから、ポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂とが相溶化していることがわかる。さらに、参考例1〜10の樹脂組成物では、ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂および強化材を含有することにより、金型温度を90℃として成形しても試験片の変形がなく、熱変形温度が高く、熱処理時の変形も見られず耐熱性が高い。これに対し、比較例3、4、6〜13のように、金型温度が90℃の場合では、成形時の変形が大きく、耐熱性も低い。また、比較例5のように、金型温度が40℃の場合では、成形時の試験片の変形はないものの、耐熱性はさらに低くなり、熱処理時の変形が大きい。
[実施例1〜2、比較例14〜17]
D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂、ASTM D1238法、190℃、2.16Kg荷重で測定したメルトインデックス値が27g/10分であり融点が170℃であるポリアセタールコポリマー(東レ株式会社製アミラスS731)、および表3に示した各種強化材を、表3に示した割合で混合し、30mm径の2軸押出機で、温度210℃、回転数150rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0054】
得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)、組成物中のポリアセタール樹脂の降温時の結晶化温度(Tc)を、差動走査熱量計(DSC)を用い、昇降温速度20℃/分で測定した。
【0055】
また、得られた樹脂組成物をシリンダー温度210℃、金型温度60℃で射出成形を行うことにより曲げ試験片と厚さ1mm、一辺が80mmの片面鏡面仕上げの角板を得た。
【0056】
上記で得られた曲げ試験片を用い、ASTM法D790に準じて曲げ試験を行った。また、1mm厚の角板を平板上に置き、4隅のうち1点を平板に密着させた際に最も浮き上がった位置を計測しソリ量とした。また、この角板の表面外観を目視で観察し、下記の判定基準で外観の評価を行った。
【0057】
:強化材の浮きは見られず、鏡面転写に優れる。
【0058】
○:強化材の浮きは見られず、表面光沢がある。
【0059】
△:強化材の浮きは見られないが、光沢は無い。
【0060】
×:強化材の浮きが見られ、光沢も無い。
これらの結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
これらの結果から、本発明の樹脂組成物は、成形性、機械特性および耐熱性に優れていることがわかる。また、ポリアセタール樹脂が主成分となる組成においては、表面外観や低ソリ性に優れていることがわかる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の樹脂組成物は、成形性、機械特性および耐熱性に優れており、この樹脂組成物から得られる成形品は、上記の特性を生かして、電気・電子部品、建築部材、土木部材、農業資材、自動車部品および日用品など各種用途に利用することができる。
Claims (6)
- ポリ乳酸樹脂、ポリアセタール樹脂および強化材としてタルクを含有する樹脂組成物であって、前記ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、前記ポリ乳酸樹脂の配合量が40重量部以下1重量部以上及び前記ポリアセタール樹脂の配合量が60重量部以上99重量部以下であり、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂とポリアセタール樹脂とが相溶化していることを特徴とする樹脂組成物。
- 前記ポリ乳酸樹脂およびポリアセタール樹脂の合計を100重量部としたときに、強化材の配合量が200重量部以下0.1重量部以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 樹脂組成物のポリアセタール樹脂由来の降温時の結晶化温度が、用いたポリアセタール樹脂単独の降温時の結晶化温度よりも低い温度であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 前記ポリアセタール樹脂が、ポリアセタールコポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなることを特徴とする成形品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物を、金型温度80℃以上120℃以下で射出成形してなることを特徴とする成形品。
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