以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂とは、L−乳酸及び/またはD−乳酸を主たる構成成分とするポリマーであるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、ブロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。
本発明においては、耐熱性の観点から、乳酸成分の光学純度が高いポリ乳酸樹脂を用いることが好ましい。すなわち、ポリ乳酸樹脂の総乳酸成分の内、L体が80%以上含まれるかあるいはD体が80%以上含まれることが好ましく、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることが特に好ましく、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることが更に好ましく、L体が98%以上含まれるかあるいはD体が98%以上含まれることがさらに好ましい。また、L体またはD体の含有量の上限は通常100%以下である。
ポリ乳酸樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、120℃以上であることが好ましく、さらに150℃以上であることが好ましく、特に160℃以上であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂の融点は、通常乳酸成分の光学純度を高くすることにより高くなり、融点が120℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が90%以上含まれるかあるいはD体が90%以上含まれることにより、また融点が150℃以上のポリ乳酸樹脂は、L体が95%以上含まれるかあるいはD体が95%以上含まれることにより、得ることができる。なお、本発明において、ポリ乳酸樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/分で測定した値である。
ポリ乳酸樹脂の分子量や分子量分布については、実質的に成形加工が可能であれば、特に制限されるものではないが、重量平均分子量としては、通常1万以上、好ましくは4万以上、さらに8万以上であることが望ましい。上限としては特に制限はないが、成形性の観点から、50万以下であることが好ましい。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
ポリ乳酸樹脂は、変性したものを用いてもよく、例えば、無水マレイン酸変性ポリ乳酸樹脂、エポキシ変性ポリ乳酸樹脂、アミン変性ポリ乳酸樹脂などを用いることにより、耐熱性だけでなく、機械特性も向上する傾向にあり好ましい。
ポリ乳酸樹脂の製造方法としては、公知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、およびラクチドを介する開環重合法などを挙げることができる。
本発明では、天然由来の有機充填剤として紙粉を用いる。
本発明では、天然由来の有機充填剤の具体例として、籾殻、木材チップ、おから、古紙粉砕材、衣料粉砕材などのチップ状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維もしくはこれらの植物繊維から加工されたパルプやセルロース繊維および絹、羊毛、アンゴラ、カシミヤ、ラクダなどの動物繊維などの繊維状のもの、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質、澱粉などの粉末状のものを併用することができ、耐熱性の観点から、木粉、竹粉、セルロース粉末、籾殻粉末、果実殻粉末、キチン粉末、キトサン粉末、タンパク質粉末、澱粉などの粉末状のもの、綿繊維、麻繊維、竹繊維、木材繊維、ケナフ繊維、ヘンプ繊維、ジュート繊維、バナナ繊維、ココナッツ繊維などの植物繊維が好ましく、木粉、竹粉、セルロース粉末、ケナフ繊維、ヘンプ繊維がより好ましく、木粉がさらに好ましい。
紙粉は、地球環境の保護や資源保全の観点から、古紙などの廃材をリサイクルして用いてもよい。
古紙とは、新聞紙、雑誌、その他の再生パルプ、もしくは、段ボール、ボール紙、紙管などの板紙であり、植物繊維を原料として加工されたものであれば、いずれを用いてもよいが、結晶化特性向上効果が高いという点から、新聞紙および段ボール、ボール紙、紙管などの板紙の粉砕品が好ましい。
紙粉は、表面処理したものを用いてもよく、アルカリ処理、熱処理、アセチル化処理、シアノエチル化処理、シランカップリング処理、グリオギザール処理など各種公知の方法で表面処理した紙粉を用いることにより、耐熱性だけでなく、機械特性も向上する傾向にあり好ましい。
紙粉としては、特に限定されるものではないが、結晶化特性向上効果が高くなる傾向にあるという点から、接着剤を含むことが好ましい。接着剤としては、紙を加工する際に通常使用されるものであれば特に限定されるものではなく、酢酸ビニル樹脂系エマルジョンやアクリル樹脂系エマルジョンなどのエマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、セルロース系接着剤、天然ゴム系接着剤、澱粉糊およびエチレン酢酸ビニル共重合樹脂系接着剤やポリアミド系接着剤などのホットメルト接着剤などを挙げることができ、エマルジョン系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤およびホットメルト接着剤が好ましく、エマルジョン系接着剤およびポリビニルアルコール系接着剤がより好ましい。なお、これらの接着剤は、紙加工剤用のバインダーなどとしても使用されるものである。また、接着剤には、クレイ、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、マイカ、合成マイカ、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウムおよび酸化ネオジウムなどの無機充填剤が含まれていることが好ましく、クレイ、タルク、カオリナイト、モンモリロナイト、合成マイカおよびシリカがより好ましい。
また、紙粉としては、結晶化特性向上効果が高くなる傾向にあるという点から、製紙用原料として一般的に使用される薬品、例えば、ロジン系、アルキルケテンダイマー系、アルケニル無水コハク酸系などのサイズ剤、ポリアクリルアミド系、でんぷん系などの紙力増強剤、ポリエチレンイミンなどの歩留まり向上剤、高分子凝集剤、濾水性向上剤、非イオン性界面活性剤などの脱墨剤、有機ハロゲン系などのスライムコントロール剤、有機系もしくは酵素系などのピッチコントロール剤、過酸化水素などの洗浄剤、消泡剤、顔料分散剤および潤滑剤などの有機物、サイズ剤の定着剤として使用される硫酸アルミニウム、ポリアルミニウムクロリド、それ以外にも製紙用原料として使用される水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、硫酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、塩化アルミニウム、塩素酸ソーダなどの無機物を含むことが好ましい。
また、紙粉としては、結晶化特性向上効果が高くなる傾向にあるという点から、灰分が5重量%以上のものを使用する。5.5重量%以上であることがより好ましく、7.5重量%以上であることがさらに好ましい。上限については、30重量%以下である。ここで、灰分とは、電気炉などを用いて450℃以上の高温で8時間紙粉を焼成した時の残存する灰分の重量の焼成前の紙粉の重量に対する割合である。
また、紙粉としては、結晶化特性向上効果が高くなる傾向にあるという点から、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウム、チタンから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウムをいずれも含むことがより好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄をいずれも含むことがさらに好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウムをいずれも含むことが特に好ましい。
さらに、アルミニウムの量がマグネシウムの量よりも多いことが好ましく、アルミニウムとケイ素のそれぞれの量がマグネシウムの量よりも多いことがより好ましく、アルミニウム、ケイ素、カルシウムのそれぞれの量がマグネシウムの量よりも多いことがさらに好ましい。アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウム、チタンの存在量比としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記元素の総数を100とした場合、アルミニウムが1〜60%、ケイ素が20〜90%、カルシウムが1〜30%、硫黄が1〜20%、マグネシウムが0〜20%、チタンが0〜20%であることが好ましく、アルミニウムが1〜50%、ケイ素が20〜85%、カルシウムが1〜20%、硫黄が1〜15%、マグネシウムが0〜10%、チタンが0〜10%であることがより好ましく、アルミニウムが3〜50%、ケイ素が25〜80%、カルシウムが3〜20%、硫黄が2〜10%、マグネシウムが0〜8%、チタンが0〜3%であることがさらに好ましい。これらの元素分析については、天然由来の有機充填剤の単体、天然由来の有機充填剤の灰分のいずれを用いても測定することができるが、灰分を用いることが好ましい。なお、元素分析は、蛍光X線分析、原子吸光法、走査型電子顕微鏡(SEM)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM)とエネルギー分散形X線マイクロアナライザー(XMA)を組み合わせた装置を用いることにより測定することができるが、本発明では蛍光X線分析を用いて測定した値とする。
また、紙粉としては、結晶化特性向上効果が高くなる傾向にあるという点から、表面上に微粒子が付着するセルロースを含むことが好ましい。微粒子とは、特に限定されるものではなく、有機物もしくは無機物のいずれでもよい。微粒子の形状は、針状、板状、球状のいずれでもよい。微粒子のサイズは、特に限定されるものではないが、0.1〜5000nmの範囲に分布していることが好ましく、0.3〜1000nmの範囲に分布していることがより好ましく、0.5〜500nmの範囲に分布していることがさらに好ましく、1〜100nmの範囲に分布していることが特に好ましく、1〜80nmの範囲に分布していることが最も好ましい。なお、ここで特定の範囲に「分布している」とは、微粒子総数の80%以上が特定の範囲に含まれることを意味する。微粒子の付着形態は、凝集状態もしくは分散状態のいずれでもよいが、分散状態で付着していることがより好ましい。上記微粒子のサイズは、ポリ乳酸樹脂と紙粉を配合した樹脂組成物から得られる成形品を透過型電子顕微鏡により8万倍の倍率で観察することができる。
また、紙粉以外のその他の天然物由来の有機充填剤においても、上記特徴、すなわち、灰分量、その組成を有するもの、微粒子が付着したものを選択して用いることが好ましい。
また、本発明においては、本発明の樹脂組成物が得られる限り、その他の天然物由来の有機充填剤を一種または二種以上で用いることができるが、上記好ましい特徴を有する紙粉を含むものであることが重要である。
紙粉としては、結晶化特性の向上効果が高いものを用いることがより好ましい。なお、天然由来の有機充填剤として、結晶化特性向上効果の低いものを単独で用いても本発明の効果を達成することは可能であるが、成形性および耐熱性の観点から、より優れた射出成形品が得られやすくなる傾向にあるという点で、結晶化特性向上効果の低いものと結晶化特性向上効果の高いものを併用することがより好ましい。
本発明において、紙粉の配合量は、特に限定されるものではないが、耐熱性の観点から、ポリ乳酸樹脂を100重量部としたときに、1〜350重量部であり、1〜300重量部であることがより好ましく、10〜200重量部がさらに好ましく、30〜150重量部が特に好ましく、60〜100重量部が最も好ましい。紙粉の配合量が、1重量部未満では、ポリ乳酸樹脂の耐熱性向上効果が小さくなる傾向にあり、350重量部を越える場合には、紙粉をポリ乳酸樹脂中に均一に分散させることが困難になり、耐熱性以外にも、材料としての強度や外観が低下する傾向にある。
本発明においては、エステル残基として下記式(a)で表される構造を有するエステル系可塑剤を配合することを特徴とする。
−(CH2COO)m−(R1O)n−R2 (a)
((a)式中、mは0もしくは1を表し、nは0〜6の整数を表し、R1は炭素数1〜6のアルキレン基を表し、R2は炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜15のアリールアルキル基もしくは炭素数7〜15のアルキルアリール基を表す。ただし、m+n≧1である。)
上記式中、nは0〜5の整数であることが好ましく、0〜4の整数であることがより好ましく、0〜3であることがさらに好ましく、R1は炭素数2〜5のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることがさらに好ましく、R2は炭素数1〜7の直鎖状または分岐状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜12のアリールアルキル基もしくは炭素数7〜12のアルキルアリール基であることが好ましく、炭素数1〜5の直鎖状のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数7〜9のアリールアルキル基もしくは炭素数7〜9のアルキルアリール基であることがさらに好ましい。
本発明のエステル系可塑剤としては、上記式(a)で表される構造を一つ以上有するものを用いることができるが、上記式(a)で表される構造を2つ以上、好ましくは3つ以上有するものを用いることがより好ましい。
本発明のエステル系可塑剤としては、エステル残基として上記式(a)で表される構造を有するものであれば、コハク酸エステル、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、フマル酸エステル、マレイン酸エステルおよびクエン酸エステルなどの脂肪族多塩基酸エステル系可塑剤、脂肪族一塩基酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤およびリン酸エステル系可塑剤などのいずれのエステル系可塑剤でもよいが、耐熱性と耐ブリードアウト性が向上する傾向にあるという点で、脂肪族多塩基酸エステル系可塑剤およびリン酸エステル系可塑剤であることが好ましく、脂肪族多塩基酸エステル系可塑剤であることがより好ましく、アジピン酸エステル系可塑剤およびクエン酸エステル系可塑剤がさらに好ましい。また、脂肪族多塩基酸エステル系可塑剤のようなエステル基を複数有するものについては、それぞれのエステル基の構造が異なる混基エステルであることが好ましい。
エステル系可塑剤が、脂肪族多塩基酸エステル系可塑剤である場合には、脂肪族多塩基酸とアルコールを反応させて得られるエステル化合物である。
脂肪族多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、クエン酸などが挙げられ、耐ブリードアウト性の点で、コハク酸、アジピン酸、クエン酸が好ましい。
アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−ブタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(別名:メチルグリコール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(別名:エチルグリコール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(別名:ブチルグリコール)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(別名:フェニルグリコール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(別名:メチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名:エチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(別名:ブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(別名:フェニルジグリコール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(別名:メチルトリグリコール)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(別名:エチルトリグリコール)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(別名:ブチルトリグリコール)、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル(別名:フェニルトリグリコール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテルなどが挙げられ、耐ブリードアウト性の点で、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(別名:メチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名:エチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(別名:ブチルジグリコール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(別名:メチルトリグリコール)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(別名:エチルトリグリコール)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(別名:ブチルトリグリコール)が好ましく、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(別名:メチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(別名:エチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(別名:ブチルジグリコール)がより好ましい。
上記脂肪族多塩基酸エステル系可塑剤の具体例としては、ビス(メチルジグリコール)サクシネート、ビス(ブチルジグリコール)サクシネートメチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、エチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、プロピルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、ベンジルメチルジグリコールサクシネート、メトキシカルボニルメチルメチルジグリコールサクシネート、エトキシカルボニルメチルメチルジグリコールサクシネート、ベンジルブチルジグリコールサクシネート、ビス(メチルジグリコール)アジペート、ビス(ブチルジグリコール)アジペート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、エチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、プロピルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペート、メトキシカルボニルメチルメチルジグリコールアジペート、メトキシカルボニルメチルブチルジグリコールアジペート、エトキシカルボニルメチルメチルジグリコールアジペート、エトキシカルボニルメチルブチルジグリコールアジペート、ジメチルジグリコールモノブチルジグリコールサイトレート、ベンジルジメチルジグリコールサイトレート、メトキシカルボニルメチルジメチルサイトレート、メトキシカルボニルメチルジエチルサイトレート、メトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジメチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジオクチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジメチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジエチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノメチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノエチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノメチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノオクチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノメチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノエチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジメチルジグリコールサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルジグリコールサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノメチルジグリコールサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノブチルジグリコールサイトレートなどが挙げられ、なかでもメチルジグリコールブチルジグリコールサクシネート、ベンジルメチルジグリコールサクシネート、ベンジルブチルジグリコールサクシネート、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペート、メトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、ブトキシカルボニルメチルジブチルサイトレート、ジメトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジエトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレート、ジブトキシカルボニルメチルモノブチルサイトレートが好ましい。
上記エステル系可塑剤の中でも、メチルジグリコールブチルジグリコールアジペート、ベンジルメチルジグリコールアジペート、ベンジルブチルジグリコールアジペート、エトキシカルボニルメチルジブチルサイトレートが最も好ましい。
本発明においては、上記エステル系可塑剤を1種または2種以上で用いることができる。
上記エステル系可塑剤の配合量は、耐熱性の観点から、ポリ乳酸樹脂を100重量部としたときに、5〜12重量部である。上記エステル系可塑剤が、5重量部未満もしくは12重量部を越える場合には、ポリ乳酸樹脂の耐熱性向上効果が小さくなる傾向にあり、また、材料としての強度や外観が低下する可能性がある。
上記エステル系可塑剤の分子量は、特に限定されるものではないが、200〜1500が好ましく、300〜1000がより好ましい。分子量が200未満であると、ブリードアウトが発生しブロッキングなどを起こしやすくなる傾向にあり、1500を越える場合には、ポリ乳酸樹脂の耐熱性向上効果が小さくなる傾向にある。
本発明においては、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂に由来する降温結晶化温度(Tc)は、特に限定されないが、射出成形性の点から好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上、さらに好ましくは100℃以上、特に好ましくは110℃以上である。Tcの上限は特に制限されるものではなく、高いものほど優れた結晶化特性を有する傾向にあるため、ポリ乳酸樹脂の融点未満であればよい。ここで、Tcとは、DSCにより降温速度20℃/分で測定した樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂に由来する降温時の結晶化温度である。このようなTcを有する樹脂組成物は、好ましい態様を有するポリ乳酸樹脂、紙粉もしくはエステル系可塑剤を用いることにより得ることができるが、より好ましくは、好ましい態様を有するポリ乳酸樹脂および紙粉を用いることによる得ることができる。
本発明において、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂に由来する昇温結晶化温度(Tcc)は、特に限定されないが、射出成形性や耐熱性の点から好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。Tccの下限は特に制限されるものではなく、低いものほど優れた結晶化特性を有する傾向にあるが、30℃以上であれば十分に優れた結晶化特性を有しているといえる。ここで、Tccとは、DSCにより昇温速度20℃/分で測定した樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂に由来する昇温時の結晶化温度であり、本発明では、完全に溶融させた後、ドライアイスで急冷したサンプルを用いて求めた値である。このようなTccを有する樹脂組成物は、好ましい態様を有するポリ乳酸樹脂、紙粉もしくはエステル系可塑剤を用いることにより得ることができるが、好ましくは、好ましい態様を有するポリ乳酸樹脂およびエステル系可塑剤を用いることにより得ることができる。
本発明においては、射出成形性や耐熱性の点からTcとTccの関係が、Tc−Tcc≧20℃を満たすものであることが好ましく、Tc−Tcc≧25℃であることがより好ましく、Tc−Tcc≧30℃であることがさらに好ましく、Tc−Tcc≧40℃であることが最も好ましい。Tc−Tccの上限は特に制限されるものではなく、大きい値を示すものほど優れた結晶化特性を有する傾向にあるが、Tc−Tcc≦100℃であれば十分に優れた結晶化特性を有しているといえる。このような特性を有する樹脂組成物は、好ましい態様を有するポリ乳酸樹脂、紙粉もしくはエステル系可塑剤を用いることにより得ることができるが、好ましくは、好ましい態様を有するポリ乳酸樹脂、紙粉およびエステル系可塑剤を用いることにより得ることができる。
本発明においては、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂に由来する融点(Tm)とTcの関係として、Tm−Tcが、30〜65℃の範囲にあることが、射出成形性や耐熱性の点から好ましく、35〜60℃の範囲にあることがより好ましく、40〜55℃の範囲にあることがさらに好ましい。ここで、TmはDSCにより昇温速度20℃/分で測定した樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂に由来する融点である。このような特性を有する樹脂組成物は、好ましい態様を有するポリ乳酸樹脂、紙粉もしくはエステル系可塑剤を用いることにより得ることができるが、好ましくは、好ましい態様を有するポリ乳酸樹脂及び紙粉を用いることにより得ることができる。
本発明においては、TmとTccの関係として、Tm−Tccが、75〜105℃の範囲にあることが、射出成形性や耐熱性の点から好ましく、80〜100℃の範囲にあることがより好ましく、85〜95℃の範囲にあることがさらに好ましい。このような特性を有する樹脂組成物は、好ましい態様を有するポリ乳酸樹脂、紙粉もしくはエステル系可塑剤を用いることにより得ることができるが、好ましくは、好ましい態様を有するポリ乳酸樹脂及びエステル系可塑剤を用いることにより得ることができる。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂、カルボキシル基反応性末端封鎖剤、安定剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物及びヒンダードアミン系化合物)、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂など)、天然由来の有機充填剤以外の充填剤(ガラス繊維、ホウ酸アルミニウムウィスカー、マイカ、チタン酸カリウムなど)、抗菌剤、顔料および染料を含む着色剤、本発明で配合するエステル系可塑剤以外の可塑剤、耐候剤などの射出成形品に通常添加される他の成分を1種以上添加することができる。
本発明においては、結晶核剤を配合することが好ましい。結晶核剤を配合することで、成形性および耐熱性に優れた射出成形品を得ることができる。
本発明で使用する結晶核剤としては、一般に樹脂の結晶核剤として用いられるものを特に制限なく用いることができ、無機系結晶核剤および有機系結晶核剤のいずれをも使用することができる。
無機系結晶核剤の具体例としては、タルク、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などを挙げることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていることが好ましい。
また、有機系結晶核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウムなどの有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)などの有機カルボン酸アミド、エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートなどのリン化合物金属塩などを挙げることができる。
本発明で使用する結晶核剤としては、上記に例示したもののなかでも、特にタルク、有機カルボン酸金属塩および有機カルボン酸アミドから選択された少なくとも1種が好ましい。本発明で使用する結晶核剤は、1種のみでもよくまた2種以上の併用を行ってもよい。
また、結晶核剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.01〜50重量部の範囲が好ましく、0.05〜25重量部の範囲がより好ましく、0.1〜10重量部の範囲がさらに好ましい。
本発明においては、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することが好ましい。ポリ乳酸樹脂、紙粉およびポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂を配合することにより、表面外観性、成形性、機械特性、耐熱性および靭性などに優れた射出成形品を得ることができる。
本発明において、熱可塑性樹脂とは、特に限定されるものではなく、ポリアセタール樹脂、ポリ乳酸以外のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂およびポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリイミド樹脂、熱可塑性澱粉樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、MS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリエーテルイミド樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができ、中でもポリアセタール樹脂、ポリ乳酸以外のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を配合することが好ましい。また、上記熱可塑性樹脂の中には、耐衝撃性を大きく向上することができる耐衝撃改良剤と呼ばれるものも含まれており、例えば、コア層とそれを覆う1つ以上のシェル層から構成され、また、隣接し合った層が異種の重合体から構成される、いわゆるコアシェルゴムと呼ばれる多層構造重合体などが好ましく用いられる。これらの樹脂を配合することで、優れた特性を有する成形品を得ることができる。
本発明におけるポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂の配合量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.5〜120重量部の範囲であることが好ましく、1〜100重量部の範囲であることがさらに好ましく、3〜50重量部の範囲であることがさらに好ましく、5〜30重量部の範囲であることが特に好ましい。
本発明においては、耐久性を向上することができるという点で、カルボキシル基反応性末端封鎖剤を配合することが好ましい。本発明で使用するカルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、ポリマーのカルボキシル末端基を封鎖することのできる化合物であれば特に制限はなく、ポリマーのカルボキシル末端の封鎖剤として用いられているものを用いることができる。本発明においてかかるカルボキシル基反応性末端封鎖剤は、ポリ乳酸樹脂の末端を封鎖するのみではなく、ポリ乳酸樹脂や天然由来の有機充填剤の熱分解や加水分解などで生成する乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基も封鎖することができる。また、上記末端封鎖剤は、熱分解により酸性低分子化合物が生成する水酸基末端も封鎖できる化合物であることがさらに好ましい。
このようなカルボキシル基反応性末端封鎖剤としては、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を使用することが好ましく、なかでもエポキシ化合物および/またはカルボジイミド化合物が好ましい。
カルボキシル基反応性末端封鎖剤の量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、0.05〜5重量部がさらに好ましい。
カルボキシル基反応性末端封鎖剤の添加時期は、特に限定されないが、耐熱性を向上するだけでなく、機械特性や耐久性を向上できるという点で、ポリ乳酸樹脂と予め溶融混練した後、天然由来の有機充填剤と混練することが好ましい。
本発明においては、さらにカルボキシル基反応性末端封鎖剤の反応触媒を添加することが好ましい。ここで言う反応触媒とは、カルボキシル基反応性末端封鎖剤と、ポリマー末端や酸性低分子化合物の酸性基との反応を促進する効果のある化合物であり、少量の添加で反応を促進する効果のある化合物が好ましい。このような化合物の例としてはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、第4級アンモニウム塩、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩、リン酸エステル、有機酸、ルイス酸が挙げられ、その具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ほう素ナトリウム、水素化ほう素リチウム、フェニル化ほう素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、同二カリウム塩、同二リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、同カリウム塩、同リチウム塩、同セシウム塩などのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウムなどのアルカリ土類金属化合物、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリアミルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、ジメチルフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアニリン、ピリジン、ピコリン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−フェニル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール化合物、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、トリプロピルベンジルアンモニウムクロライド、N−メチルピリジニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム塩、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリ(p−ヒドロキシ)フェニルホスフェート、トリ(p−メトキシ)フェニルホスフェートなどのリン酸エステル、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸、三フッ化ホウ素、四塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズなどのルイス酸などが挙げられ、これらは1種または2種以上使用することができる。なかでも、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、リン酸エステルを使用するのが好ましく、特にアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の有機塩を好ましく使用することができる。特に好ましい化合物は、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムである。さらにアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭素数6以上の有機塩が好ましく、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウムをいずれか1種以上用いることが好ましい。
反応触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.001〜1重量部が好ましく、また0.01〜0.5重量部がより好ましく、さらには0.02〜0.3重量部が最も好ましい。
本発明においては、安定剤を配合することが好ましい。本発明で使用する安定剤としては、通常熱可塑性樹脂の安定剤に用いられるものを用いることができる。具体的には、酸化防止剤、光安定剤などを挙げることができる。これらを配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
本発明で使用する酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、チオエーテル系化合物などをあげることができる。
ヒンダードフェノール系化合物の例としては、トリエチレングリコール‐ビス‐[3‐(3‐t‐ブチル‐5‐メチル‐4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]及びテトラキス[メチレン‐3‐(3’,5’‐ジ‐t‐ブチル‐4’‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンである。
ホスファイト系化合物としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスホナイトなどが好ましく使用できる。
チオエーテル系化合物の具体的な例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−オクタデシルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−ステアリルチオプロピオネート)などが挙げられる。
本発明で使用する光安定剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物及びヒンダードアミン系化合物などを挙げることができる。
本発明において上記安定剤は、1種類で用いても良いし、2種類以上を組み合せて用いても良い。また、安定剤としてはヒンダードフェノール系化合物および/またはベンゾトリアゾール系化合物を用いることが好ましい
また、安定剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましい。
本発明においては、離型剤を配合することが好ましい。本発明で使用する離型剤としては、通常熱可塑性樹脂の離型剤に用いられるものを用いることができる。具体的には、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、変成シリコーンなどを挙げることができる。これらを配合することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
脂肪酸としては、炭素数6〜40のものが好ましく、具体的には、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸およびこれらの混合物などが挙げられる。脂肪酸金属塩としては、炭素数6〜40の脂肪酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩が好ましく、具体的にはステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウムなどが挙げられる。オキシ脂肪酸としては1,2−オキシステアリン酸などが挙げられ、脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキジン酸エステル、モンタン酸エステル、イソステアリン酸エステル、重合酸のエステル、脂肪族部分鹸化エステルとしてはモンタン酸部分鹸化エステルなどが挙げられる。パラフィンとしては、炭素数18以上のものが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどが挙げられ、低分子量ポリオレフィンとしては例えば分子量5000以下のものが好ましく、具体的にはポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化タイプポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどが挙げられ、脂肪酸アミドとしては、炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミドなどが挙げられ、アルキレンビス脂肪酸アミドとしては、 炭素数6以上のものが好ましく、具体的にはメチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリン酸アミドなどが挙げられ、脂肪族ケトンとしては、高級脂肪族ケトンなどが挙げられ、脂肪酸低級アルコールエステルとしては、 炭素数6以上のものが好ましく、エチルステアレートブチルステアレート、エチルベヘネート、ライスワックスなどが挙げられ、脂肪酸多価アルコールエステルとしては、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアレート、ジペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸、ソルビタンモノベヘネートなどが挙げられ、脂肪酸ポリグリコールエステルとしては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルやポリプロピレングリコール脂肪酸エスエルが挙げられ、変成シリコーンとしては、メチルスチリル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、高級脂肪酸アルコキシ変性シリコーン、高級脂肪酸含有シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フッ素変性シリコーンなどを挙げることができる。
上記のうち、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪族アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドが好ましく、脂肪酸部分鹸化エステルおよび/またはアルキレンビス脂肪酸アミドがより好ましい。
なかでも、モンタン酸エステル、モンタン酸部分鹸化エステル、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ソルビタン脂肪酸エステル、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましく、特にモンタン酸部分鹸化エステル、エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。
本発明において上記離型剤は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
また、離型剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部が好ましく、0.03〜2重量部がさらに好ましい。
本発明においては、難燃性を付与することができるという点で、難燃剤を配合することが好ましい。本発明において、難燃剤とは、樹脂に難燃性を付与する目的で添加される物質であれば特に限定されるものではなく公知のものを使用することができる。具体的には、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、その他の無機系難燃剤などが挙げられ、これらから選ばれる難燃剤は、1種または2種以上で用いることができる。なお、上記難燃剤としては、環境に低負荷な難燃剤であることが好ましい。環境に低負荷な難燃剤とは、生分解性を有するもの、焼却処分の際に有毒ガスが発生しないもの、植物資源等の非石油原料もしくは天然原料に由来するものなどが挙げられ、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、その他の無機系難燃剤などが好ましい。
難燃剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.01〜100重量部であり、さらに0.5〜90重量部がより好ましく、1〜80重量部がさらに好ましい。
上記難燃剤の中では、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選ばれる少なくとも1種以上を用いることが好ましく、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤から選ばれる少なくとも2種以上を組み合わせて用いることがより好ましい。
リン系難燃剤と窒素化合物系難燃剤を併用する場合には、リン系難燃剤としては、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩、赤リンの何れか1種以上、なかでも縮合リン酸エステル、ポリリン酸塩の何れか1種以上が好ましく、生分解性を有するものであればより好ましい。また、縮合リン酸エステルと窒素化合物系難燃剤を併用するか、ポリリン酸塩と窒素化合物系難燃剤を併用することがさらに好ましく、窒素化合物系難燃剤を縮合リン酸エステルやポリリン酸塩よりも少ない量で用いることが難燃効果が高く好ましい。また、縮合リン酸エステルとしては、芳香族縮合リン酸エステルが好ましく、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートが好ましく、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートの市販例としては大八化学製PX−200を挙げることができる。窒素化合物系難燃剤としては、トリアジン系化合物が好ましく、さらにメラミンシアヌレートが好ましい。また、リン系難燃剤と併用するシリコーン系難燃剤としてはシリコーン樹脂が好ましい。また、リン系難燃剤と併用するその他の無機系難燃剤としてはホウ酸亜鉛または膨潤性黒鉛が好ましい。
リン系難燃剤と窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤またはその他の無機系難燃剤を併用する場合、リン系難燃剤100重量部に対して、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤またはその他の無機系難燃剤を1〜100重量部用いることが好ましい。
本発明においては、制電性を付与できるという点で、さらに帯電防止剤を配合することが好ましい。本発明で使用する帯電防止剤としては、公知のものをいずれも用いることができる。
本発明の帯電防止剤において、そのイオン性は特に限定されるものではなく、カチオン性、アニオン性、両性イオン性、非イオン性のいずれを用いてもよいが、ポリ乳酸樹脂の熱分解を抑制できるという点で、両性イオン系、非イオン系が好ましく、非イオン系がより好ましい。
上記の帯電防止剤の配合量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部がさらに好ましい。
本発明において、樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸樹脂、紙粉、エステル系可塑剤および必要に応じてその他の添加剤を予めブレンドした後、融点以上において、単軸またはニ軸押出機で均一に溶融混練する方法、成形機で直接混練する方法、溶液中で混合した後に溶媒を除く方法などが好ましく用いられる。また、微細な粉末を使用する場合には、その他の添加物とは独立して、押出機に供給する方法や微細な粉末を圧縮した後に添加する方法などが好ましい。
本発明において、樹脂組成物を製造する際の、溶融混練温度は、170〜240℃が好ましく、175℃〜230℃がさらに好ましく、180〜220℃が特に好ましい。
本発明の射出成形品は、一般的な熱可塑性樹脂の射出成形方法を用いることにより得ることができ、射出成形、射出圧縮成形、2色射出成形法などいずれの射出成形法で成形を行っても、本発明の目的を容易に達成できるので好ましい。
射出成形する際の金型温度としては、結晶化の観点から、30℃以上が好ましく、60℃以上がさらに好ましく、70℃以上がさらに好ましく、試験片の変形の観点から、140℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましく、110℃以下がさらに好ましい。
また、本発明の樹脂組成物からなる射出成形品としては、ボード状、シート状、フイルム状、板状、棒状、柱状、箱状、塊状、チューブ状、その他複雑な形状を有するものなど各種形状のものとして利用することができる。
また、この射出成形品は、自動車部品(内装・外装部品など)、電気・電子部品(各種ハウジング、歯車、ギアなど)、建材、土木資材、家具部材、農業資材、遊技機用資材、食器、スポーツ資材、楽器および日用品など各種用途に利用することができる。なかでも、耐熱性、表面外観性および耐ブリードアウト性の点から特に自動車部品、電気・電子部品、建材、土木資材、家具部材、遊技機用資材に有用に利用することができる。
具体的には、自動車部品としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、ドアトリム、ドアーポケット、コラムカバー、カウルサイド、フットレストデッキトリム、フロントピラー、センターピラー、フロントスカッフ、リヤースカッフ、ドアースカッフ、フロントアウトサイド、リヤーアウトサイド、シートサイド、ルーフサイド、ストライカー、エアコンケース、カセットデッキケース、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクターが挙げられる。電気・電子部品としては、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、モーターケース、スイッチ、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどが挙げられる。建材としては、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井吊り具、階段、ドアー、床材、天井材、柱、土台、梁、巾木、窓枠、戸、デッキ材などが挙げられる。土木資材としては、植生ネット、植生マット、防草ネット、コンクリート型枠、足場板、矢板、杭などが挙げられる。家具部材としては、たんす、机、いす、各種棚などが挙げられる。遊技機用資材としては、パチンコ台ゲージ盤および枠材などのパチンコ部品、麻雀台およびビリヤード台などの部品などが挙げられる。その他には、疑似餌、うきなどの水産関連資材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、ファン、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、農ビの止め具、緩効性肥料などの農業資材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、骨折補強材、人工臓器などの医療用品、トレイ、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パレット、コンテナー、タンク、カゴ、飲料用ボトル、カップ、果物かごなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、発泡緩衝剤、シャンプーボトル、、蓋材料、記録メディア包装、ショッピングバック、各種スポーツ用資材、楽器、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、ゴルフティー、歯ブラシ、文具、クリアファイル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
[実施例1〜10、比較例1〜5]
D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂、厚み1mmの板紙を粉砕した古紙粉末、粒度200メッシュ以下の木粉(アメリカンウッドファイバー製14010)、繊維長が1〜10mmの範囲に分布しているケナフ繊維、長さ50mm以下、直径5mmのヘンプペレット、バージンパルプを粉砕した繊維長が1〜5mmの範囲に分布している紙粉、A4コピー用紙を粉砕した繊維長が1〜5mmの範囲に分布している紙粉、表1に示す各種可塑剤を表1に示した割合で混合し、30mm径の2軸押出機で、シリンダー温度190℃、回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。なお、ここで、用いたエステル系可塑剤は、特許第3421769号公報に記載されている合成方法に従い、合成して得られたものを使用した。
得られた樹脂組成物について、8万倍でTEM観察を行い、セルロース表面上の微粒子について調べた。
得られた樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度190℃、金型温度90℃で射出成形を行い、厚み3mmのASTM試験片(引張試験片および曲げ試験片)を得た。
流動性について、引張試験片および曲げ試験片を同時に成形する時の成形下限圧を計測した。なお、成形下限圧は、各試験片および必要最低限のランナー部を全て満たすことができる最低の圧力である。成形下限圧が小さいほど流動性に優れているといえる。なお、測定等に用いる試験片の作製は、成形下限圧+0.3MPaの射出圧力で行った。
成形性について、引張試験片を取り出す際に、変形のない固化した成形品が得られる最短の時間を成形サイクル時間として計測した。成形サイクル時間が短いほど成形性に優れているといえる。なお、成形サイクル時間の上限を150秒とした。それ以上の時間を要するものは耐熱性および生産性が低いといえ、実用的ではない。
上記で得られた曲げ試験片の表層部分の一部を切り出し、ポリ乳酸樹脂由来の降温結晶化温度(Tc)、昇温結晶化温度(Tcc)、融点(Tm)を測定した。測定は、試料10mg、窒素雰囲気下中、200℃で1分保持し完全に溶融させた後、ドライアイスで急冷したサンプルを、パーキンエルマー製DSC7を用いて、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で200℃から30℃まで降温して行った。
上記で得られた曲げ試験片を用いて、ASTM法D648に準じて荷重たわみ温度(0.45MPa)測定を、ASTM法D790に準じて曲げ試験を行った。
上記で得られた引張試験片を、熱風乾燥機を用いて、140℃で1時間熱処理し、耐ブリードアウト性を目視で観察した。
上記で得られた引張試験片の表面外観性について、触感および目視で評価した。
これらの結果を表1に示す。
さらに、実施例で用いた古紙粉末および比較例1,3で用いたコピー用紙粉砕紙粉について、電気炉で450℃、12時間処理して灰分量を求めた。さらに、得られた灰分について、蛍光X線装置を用いて、分析を行った。分析結果を表2に示す。
表1の結果から、本発明の樹脂組成物からなる射出成形品は、流動性、成形性に優れた樹脂組成物を用いることにより、耐熱性、耐ブリードアウト性、表面外観性に優れていることがわかる。ポリ乳酸樹脂と紙粉のみを配合したもの(比較例2および3)やポリ乳酸樹脂と可塑剤のみを配合したもの(比較例4)は、耐熱性に劣っており、本発明の樹脂組成物からなる射出成形品の耐熱性が大幅に向上することは予想外であり驚くべき効果といえる。また、表1の結果から、古紙粉末を使用した場合には、セルロース表面上に10〜80nm範囲に分布した微粒子が付着していることがわかる。また、表1および表2の結果から、天然由来の有機充填剤として、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、硫黄、マグネシウムを含み、かつ、アルミニウムとケイ素のそれぞれの量がマグネシウムよりも多い古紙粉末を用いることにより、成形性に優れた樹脂組成物からなる耐熱性に優れた射出成形品が得られることがわかる。
[実施例11〜14、比較例6〜7]
D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂、厚み1mmの板紙を粉砕した古紙粉末、表3に示した可塑剤、ポリ乳酸樹脂以外の熱可塑性樹脂および離型剤を、それぞれ表3に示した割合で混合し、30mm径の2軸押出機で、シリンダー温度190℃、回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度190℃、金型温度90℃で射出成形を行い、厚み3mmのASTM試験片(引張試験片、曲げ試験片およびアイゾット衝撃試験片)を得た。
流動性について、全ての試験片を同時に成形する時の成形下限圧を計測した。なお、成形下限圧は、各試験片および必要最低限のランナー部を全て満たすことができる最低の圧力である。成形下限圧が小さいほど流動性に優れているといえる。なお、測定等に用いる試験片の作製は、成形下限圧+0.3MPaの射出圧力で行った。
成形性について、引張試験片を取り出す際に、変形のない固化した成形品が得られる最短の時間を成形サイクル時間として計測した。成形サイクル時間が短いほど成形性に優れているといえる。なお、成形サイクル時間の上限を150秒とした。それ以上の時間を要するものは耐熱性および生産性が低いといえ、実用的ではない。
上記で得られた曲げ試験片の表層部分の一部を切り出し、ポリ乳酸樹脂由来の降温結晶化温度(Tc)、昇温結晶化温度(Tcc)、融点(Tm)を測定した。測定は、試料10mg、窒素雰囲気下中、200℃で1分保持し完全に溶融させた後、ドライアイスで急冷したサンプルを、パーキンエルマー製DSC7を用いて、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で200℃から30℃まで降温して行った。
上記で得られた曲げ試験片を用いて、ASTM法D648に準じて荷重たわみ温度(0.45MPa)測定を、ASTM法D790に準じて曲げ試験を、アイゾット衝撃試験片を用いて、ASTM法D256に準じてアイゾット衝撃試験を行った。
上記で得られた引張試験片を、熱風乾燥機を用いて、140℃で1時間熱処理し、耐ブリードアウト性を目視で観察した。
上記で得られた引張試験片の表面外観性について、触感および目視で評価した。
これらの結果を表3に示す。
表3の結果から、本発明の樹脂組成物からなる射出成形品は、流動性、成形性に優れた樹脂組成物を用いることにより、耐熱性、耐衝撃性、耐ブリードアウト性、表面外観性に優れていることがわかる。
[実施例15〜17、比較例8]
D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂、厚み1mmの板紙を粉砕した古紙粉末、表4に示した可塑剤、カルボキシル基反応性末端封鎖剤、反応触媒および離型剤を、それぞれ表4に示した割合で混合し、30mm径の2軸押出機で、シリンダー温度190℃、回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度190℃、金型温度90℃で射出成形を行い、厚み3mmのASTM試験片(引張試験片および曲げ試験片)を得た。
流動性について、引張試験片および曲げ試験片を同時に成形する時の成形下限圧を計測した。なお、成形下限圧は、各試験片および必要最低限のランナー部を全て満たすことができる最低の圧力である。成形下限圧が小さいほど流動性に優れているといえる。なお、測定等に用いる試験片の作製は、成形下限圧+0.3MPaの射出圧力で行った。
成形性について、引張試験片を取り出す際に、変形のない固化した成形品が得られる最短の時間を成形サイクル時間として計測した。成形サイクル時間が短いほど成形性に優れているといえる。なお、成形サイクル時間の上限を150秒とした。それ以上の時間を要するものは耐熱性および生産性が低いといえ、実用的ではない。
上記で得られた曲げ試験片の表層部分の一部を切り出し、ポリ乳酸樹脂由来の降温結晶化温度(Tc)、昇温結晶化温度(Tcc)、融点(Tm)を測定した。測定は、試料10mg、窒素雰囲気下中、200℃で1分保持し完全に溶融させた後、ドライアイスで急冷したサンプルを、パーキンエルマー製DSC7を用いて、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で200℃から30℃まで降温して行った。
上記で得られた曲げ試験片を用いて、ASTM法D648に準じて荷重たわみ温度(0.45MPa)測定を、引張試験片を用いて、ASTM法D638に準じて引張試験を行った。また、引張試験片を、恒温恒湿槽中で60℃、相対湿度95%の条件で300時間処理した後、引張強度を測定し引張強度保持率((処理後の引張強度/処理前の引張強度)×100(%))を求めた。
上記で得られた引張試験片を、熱風乾燥機を用いて、140℃で1時間熱処理し、耐ブリードアウト性を目視で観察した。
上記で得られた引張試験片の表面外観性について、触感および目視で評価した。
これらの結果を表4に示す。
表4の結果から、本発明の樹脂組成物からなる射出成形品は、流動性、成形性に優れた樹脂組成物を用いることにより、耐熱性、耐加水分解性、耐ブリードアウト性、表面外観性に優れていることがわかる。
[実施例18〜20、比較例9]
D体の含有量が2%であり、PMMA換算の重量平均分子量が17万であるポリL乳酸樹脂、厚み1mmの板紙を粉砕した古紙粉末、表5に示した可塑剤、安定剤および離型剤を、それぞれ表5に示した割合で混合し、30mm径の2軸押出機で、シリンダー温度190℃、回転数100rpmの条件で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を住友重工業製射出成形機SG75H−MIVを用い、シリンダー温度190℃、金型温度90℃で射出成形を行い、厚み3mmのASTM試験片(引張試験片および曲げ試験片)を得た。
流動性について、引張試験片および曲げ試験片を同時に成形する時の成形下限圧を計測した。なお、成形下限圧は、各試験片および必要最低限のランナー部を全て満たすことができる最低の圧力である。成形下限圧が小さいほど流動性に優れているといえる。なお、測定等に用いる試験片の作製は、成形下限圧+0.3MPaの射出圧力で行った。
成形性について、引張試験片を取り出す際に、変形のない固化した成形品が得られる最短の時間を成形サイクル時間として計測した。成形サイクル時間が短いほど成形性に優れているといえる。なお、成形サイクル時間の上限を150秒とした。それ以上の時間を要するものは耐熱性および生産性が低いといえ、実用的ではない。
上記で得られた曲げ試験片の表層部分の一部を切り出し、ポリ乳酸樹脂由来の降温結晶化温度(Tc)、昇温結晶化温度(Tcc)、融点(Tm)を測定した。測定は、試料10mg、窒素雰囲気下中、200℃で1分保持し完全に溶融させた後、ドライアイスで急冷したサンプルを、パーキンエルマー製DSC7を用いて、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度20℃/分で200℃から30℃まで降温して行った。
上記で得られた曲げ試験片を用いて、ASTM法D648に準じて荷重たわみ温度(0.45MPa)測定を、引張試験片を用いて、ASTM法D638に準じて引張試験を行った。また、引張試験片を、熱風乾燥機中で、120℃の条件で200時間処理した後、引張強度を測定し、引張強度保持率((処理後の引張強度/処理前の引張強度)×100(%))を求めた。
上記で得られた引張試験片を、熱風乾燥機を用いて、140℃で1時間熱処理し、耐ブリードアウト性を目視で観察した。
上記で得られた引張試験片の表面外観性について、触感および目視で評価した。
これらの結果を表5に示す。
表5の結果から、本発明の樹脂組成物からなる射出成形品は、流動性、成形性に優れた樹脂組成物を用いることにより、耐熱性、長期耐熱性、耐ブリードアウト性、表面外観性に優れていることがわかる。
[実施例21〜23]
実施例2で得られた樹脂組成物を用いて、各種成形用金型を用いて、シリンダー温度190℃、金型温度90℃で射出成形を行い、自動車用エアコンハウジング(実施例21)、携帯電話筐体(実施例22)、長さ100mm×幅100mm×厚み20mmの板状成形品(実施例23)を作製した。
いずれの成形品も変形することなく、目的とする良好な形状を有する成形品を成形可能であることがわかった。
上記で得られた各種成形品を、熱風乾燥機を用いて、140℃で1時間熱処理し、耐熱性および耐ブリードアウト性を目視で観察したところ、いずれも熱処理による変形がなく、またブリードアウトの発生のないことを確認でき、耐熱性および耐ブリードアウト性に優れた射出成形品であることがわかった。
上記で得られた各種成形品の表面外観性について、触感および目視で評価し、表面のざらつきがなく、光沢を有していることを確認でき、表面外観性に優れた射出成形品であることがわかった。
実施例23で得られた板状成形品について、鋸を使って切断したところ、特に問題なく切断できることがわかった。また、ボール盤を用いて直径3mmの穴開けを行ったところ、特に問題なく穴開け加工できることがわかった。また、長さ100mm×幅100mm×厚み5mmの木製板を板状成形品の上に重ねておき、釘打ちを行ったところ、特に問題なく釘打ちでき、木製板を板状成形品に接合することができた。上記結果から、板状成形品は、木材としての切削加工性、釘打ち性を有する射出成形品であることがわかった。