JP2017155094A - 脂肪族ポリエステル樹脂成形物およびその製造方法 - Google Patents

脂肪族ポリエステル樹脂成形物およびその製造方法 Download PDF

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史典 小林
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隆宏 渡邊
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Abstract

【課題】十分な強度を有し、且つ分解性を損なわない脂肪族ポリエステル繊維強化脂肪族ポリエステル樹脂成形物およびその製造方法
【解決手段】本発明の脂肪族ポリエステル樹脂成形物は、第一の脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物を含み、第一の脂肪族ポリエステルより高強度な第二の脂肪族ポリエステルを主成分とする繊維が分散されており、前記樹脂組成物と前記繊維との間の界面強度が2MPa以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪族ポリエステル樹脂成形物およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、脂肪族ポリエステル繊維で強化された脂肪族ポリエステル樹脂成形物およびその製造方法に関する。
近年、エネルギー資源の確保および環境保護等のために、石油、ガス、水、熱水、および温泉等を地中から取り出したり、水質調査を行ったりする井戸(以下、総称して「坑井」という)を掘削することの必要性が高まっている。坑井を掘削するための装置(すなわち坑井掘削装置)を用いて坑井(例えば油井)を掘削するには、通常、地表から所定の深さまで掘削を行う必要がある。したがって、坑井掘削装置に用いられる部材は、十分な強度を有していることが求められている。また、地球環境保全意識の高揚に伴い、坑井掘削装置に用いられる材料には、耐熱性、化学的安定性、機械的特性、およびその他の性質を有すると同時に、掘削作業終了時には速やか且つ安全に廃棄できることが求められている。
例えば、特許文献1には、金型中でポリマー製品を環式エステルから製造する方法において、繊維強化材料を混合することが記載されている。
特開平5−186569号公報(1993年7月27日公開)
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法によって得られたポリマー製品は機械的強度が不十分であり、十分な機械的強度を有する脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物を含む成型物を得ることは困難である。また、特許文献1において、添加剤の効果は明らかではなく、繊維の添加した場合の界面強度についての記載もされていない。
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分な強度を有し且つ分解性を損なわない、脂肪族ポリエステル繊維で強化された脂肪族ポリエステル樹脂成形物およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物中に、脂肪族ポリエステルを主成分とする繊維を分散させることによって、脂肪族ポリエステル樹脂成形物が十分な強度を有し且つ分解性を損なわないことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のように表すことができる。
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂成形物は、第一の脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物を含み、前記第一の脂肪族ポリエステルより高強度な第二の脂肪族ポリエステルを主成分とする繊維が分散されており、前記樹脂組成物と前記繊維との間の界面強度が2MPa以上であることを特徴とする。
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂成形物において、前記樹脂組成物および前記繊維の少なくとも一方が低分子量添加剤を含んでおり、前記第一の脂肪族ポリエステルのSP値(フェダー法による)をA、前記第二の脂肪族ポリエステルのSP値(フェダー法による)をB、前記低分子量添加剤のSP値(フェダー法による)をCとした場合に、以下の関係を有し:
|A−C|>6(J/cm1/2 且つ |B−C|>6(J/cm1/2
前記低分子量添加剤の総含有量が1000ppm以下であることが好ましい。
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂成形物において、前記繊維にのみ前記低分子量添加剤を含んでいてもよい。
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂成形物において、前記樹脂組成物と前記繊維との質量比が5:95〜90:10であることが好ましい。
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂成形物において、第一の脂肪族ポリエステルおよび第二の脂肪族ポリエステルが、それぞれ、乳酸系重合体およびグリコール酸系重合体からなる群から選ばれることが好ましい。
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂成形物の製造方法は、上述の脂肪族ポリエステル樹脂成形物を製造する方法であって、前記繊維と環状エステルとを5:95〜90:10の質量比で混合して混合物を調製する工程と、前記繊維の融点未満の温度で前記環状エステルを開環重合する工程とを含むことを特徴とする。
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂成形物の製造方法において、前記環状エステルがラクチドおよびグリコリドからなる群から選ばれ、前記第二の脂肪族ポリエステルが乳酸系重合体およびグリコール酸系重合体からなる群から選ばれることが好ましい。
本発明は、十分な強度を有し且つ分解性を損なわない、脂肪族ポリエステル繊維で強化された脂肪族ポリエステル樹脂成形物およびその製造方法を提供できるという効果を奏する。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
〔脂肪族ポリエステル樹脂成形物〕
本実施形態に係る脂肪族ポリエステル樹脂成形物(以下「成形物」と称する)は、第一の脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物(以下「脂肪族ポリエステル樹脂組成物」と称する)を含んでおり、第一の脂肪族ポリエステルより高強度な第二の脂肪族ポリエステルを主成分とする繊維(以下「脂肪族ポリエステル繊維」と称する)が分散されている。また、本実施形態に係る成形物では、脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族ポリエステル繊維との間の界面強度が2MPa以上である。
(脂肪族ポリエステル樹脂組成物)
本実施形態における脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、第一の脂肪族ポリエステルを主成分としている。第一の脂肪族ポリエステルとしては、特に限定されないが、例えば、グリコール酸系重合体、乳酸系重合体、カプロラクトン系重合体、ヒドロキシブチレート系重合体、ヒドロキシバレレート系重合体、ヒドロキシカプロエート系重合体、ヒドロキシヘプタノエート系重合体、ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバレレート系重合体、エチレンサクシネート系重合体、ブチレンサクシネート系重合体、およびブチレンサクシネートアジペート系重合体等の分解性を有する重合体が挙げられる。なお、本明細書において、「〜系重合体」とは、脂肪族ポリエステルを構成する全構成単位100モル%中に当該“〜”単位を最も多く含んでいる重合体(単独重合体および共重合体の両方を包含する)を指す。
第一の脂肪族ポリエステルは、単独重合体であってもよいし、最も多く含まれている構成単位以外の他のモノマー(以下「コモノマー」という)に由来する構成単位を有する共重合体であってもよい。コモノマーとしては、例えば、シュウ酸エチレン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、グリコリド、ラクチド類、ラクトン類、カーボネート類、エーテル類、エーテルエステル類、およびアミド類等の環状モノマー;乳酸(L−乳酸、D−乳酸またはDL−乳酸)、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、および6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、および1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類と、コハク酸、アジピン酸、およびグリコール酸等の脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物;ならびにこれらのうちの2種以上の組み合わせ等が挙げられる。特に、環状モノマーのみを用いれば、水およびアルコール類等といった重合反応時の副生成物が生じないことから、水およびアルコール類等の除去工程を省くことができるという利点がある。また、生成したアルコールおよび水によって第一の脂肪族ポリエステルが分解するのを防ぐことができる。
成形物の分解性を容易とするため、前記の主となるコモノマーが脂肪族ポリエステル中に50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含まれていることが好ましく、単独重合体であってもよい。割合が高いほど、脂肪族ポリエステルに期待される強度、耐溶剤性(耐薬品性)または分解性が良好である。
第一の脂肪族ポリエステルは、1種類を単独で使用してもよいし、複数種類を併用してもよい。
第一の脂肪族ポリエステルは、乳酸系重合体およびグリコール酸系重合体からなる群から選ばれることが好ましく、ポリグリコール酸またはポリ乳酸であることがより好ましい。以下、乳酸系重合体およびグリコール酸系重合体についてより具体的に説明する。
<乳酸系重合体>
乳酸系重合体は、脂肪族ポリエステルを構成する全構成単位100モル%中に乳酸単位(−O−CH(CH)−CO−)を最も多く含んでいる重合体である。乳酸系重合体としては、乳酸単位のみからなるポリ乳酸(PLA;乳酸の単独重合体)、および乳酸単位と他のモノマー(以下「コモノマー」という)に由来する構成単位とを有する乳酸共重合体が挙げられる。
ポリ乳酸としては、D−乳酸単位のみからなるポリ−D−乳酸(D−乳酸の単独重合体)、L−乳酸単位のみからなるポリ−L−乳酸(L−乳酸の単独重合体)、およびD−乳酸単位とL−乳酸単位とからなるポリ−DL−乳酸(D−乳酸とL−乳酸との共重合体)が挙げられる。乳酸系重合体としては、共重合体を構成する全構成単位100モル%中に乳酸単位が50モル%以上含まれているものが好ましく、70モル%以上含まれているものがより好ましく、90モル%以上含まれているものがさらに好ましく、95モル%以上含まれているものが特に好ましい。また、乳酸共重合体においても、乳酸単位は、D−乳酸単位のみであってもよいし、L−乳酸単位のみであってもよいし、D−乳酸単位とL−乳酸単位とが混合したものであってもよい。
乳酸系重合体は、重量平均分子量(Mw)が、50,000〜500,000の範囲にあるものが好ましく、100,000〜300,000の範囲にあるものがより好ましい。このような重量平均分子量(Mw)の場合、より高い成形物の強度を実現しつつ、分解を短時間で行うことができる易分解性の成形物を与える。また、溶融樹脂の吐出性の低下を回避し、より容易に成形物を製造することができる。
<グリコール酸系重合体>
ポリグリコール酸系重合体は、脂肪族ポリエステルを構成する全構成単位100モル%中にグリコール酸単位(−O−CH−CO−)を最も多く含んでいる重合体である。グリコール酸系重合体としては、グリコール酸単位のみからなるポリグリコール酸(PGA;グリコール酸の単独重合体;グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合物を含む)、およびグリコール酸単位とコモノマーに由来する構成単位とを有するグリコール酸共重合体が挙げられる。
グリコリドは、ヒドロキシカルボン酸の一種であるグリコール酸の2分子間環状エステルであり、融点が80℃以上、83℃以下、不純物含有量1%以下、水分含有量0.01%以下であることが好ましい。
グリコール酸系重合体は、重量平均分子量(Mw)が、70,000〜800,000の範囲にあるものが好ましく、100,000〜600,000の範囲にあるものがより好ましくは、150,000〜400,000の範囲にあるものがさらに好ましい。このような重量平均分子量(Mw)の場合、より高い成形物の強度を実現しつつ、分解を短時間で行うことができる易分解性の成形物を与える。また、溶融樹脂の吐出性の低下を回避し、より容易に成形物を製造することができる。
本明細書において「主成分」とは、その物質を構成している成分のうち最も多い成分を指す。脂肪族ポリエステル樹脂組成物は、主成分である第一の脂肪族ポリエステルの他に、後述する低分量添加剤、触媒、分子量調整剤、有機または無機物のフィラー等を含み得る。
(脂肪族ポリエステル繊維)
本実施形態における脂肪族ポリエステル繊維は、第二の脂肪族ポリエステルを主成分としている。第二の脂肪族ポリエステルとしては、第一の脂肪族ポリエステルとして列挙したものが挙げられ、説明も同様である。第二の脂肪族ポリエステルは、乳酸系重合体およびグリコール酸系重合体からなる群から選ばれることが好ましく、ポリグリコール酸またはポリ乳酸であることがより好ましい。また、成形物の強度および分解性の観点から、第二の脂肪族ポリエステルとして、第一の脂肪族ポリエステルと同じ構成要素の脂肪族ポリエステルを用いることが好ましい。
脂肪族ポリエステル繊維は、脂肪族ポリエステル樹脂成形物の強度を高めるために混合されるものである。そのため、第二の脂肪族ポリエステルは、第一の脂肪族ポリエステルよりも高い強度(特には、引張強度)を有するものとする。具体的には、第二の脂肪族ポリエステルを高分子量化したり、結晶化度を大きくしたりすることによって、高い強度を得ることができる。第二の脂肪族ポリエステルの強度を高くする特に好ましい手段としては、第二の脂肪族ポリエステルを延伸することによって分子鎖を配向させることが挙げられ、これにより引張強度を延伸前の第二の脂肪族ポリエステルよりも10倍程度高くすることができる。
脂肪族ポリエステル繊維は、主成分である第二の脂肪族ポリエステルの他に、後述する低分量添加剤、触媒、分子量調整剤、有機または無機物のフィラー等を含み得る。
脂肪族ポリエステル繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円形断面または異形断面等とすることができるが、円形断面であることが好ましい。円形断面は単純な形状であるため、成形物において脂肪族ポリエステル繊維表面に空隙が生じにくく、界面強度がより高くなり得る。
また、脂肪族ポリエステル繊維の繊維径は、特に限定されるものではないが、繊維表面に空隙が生じにくくし、界面強度をより高める観点から、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。また、脂肪族ポリエステル繊維の繊維径は、体積あたりの表面積を大きくし、界面強度をより高める観点から、2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましい。
脂肪族ポリエステル繊維の延伸条件は、特に限定されるものではないが、延伸温度は第二の脂肪族ポリエステルのガラス転移点以上で且つ融点未満とすることが好ましい。また、延伸倍率は例えば3倍以上とすることができる。PGA繊維では、例えば、延伸温度はPGAのガラス転移点(40℃)以上で且つ融点付近の230℃未満とし、延伸倍率は3倍以上にする方法が挙げられる。これにより、PGA鎖が高配向した高強度のPGA繊維を得ることができる。PLA繊維では、例えば、延伸温度は60℃以上で且つ170℃未満とし、延伸倍率は3倍以上にする方法が挙げられる。
また、延伸後の脂肪族ポリエステル繊維を結晶化処理して結晶化度を高めることによって、強度が高められていてもよい。また、脂肪族ポリエステル繊維を架橋反応させ融点が上げられていてもよい。
脂肪族ポリエステル繊維の長さは、特に限定されるものではなく、長繊維の状態(例えば、100〜10000mm程度の長さ)であってもよいし、切断された短繊維の状態(例えば、0.1〜100mm程度の長さ)であってもよい。
(低分子量添加剤)
脂肪族ポリエステル樹脂組成物および脂肪族ポリエステル繊維には、低分子量添加剤が含まれていてもよい。低分子量添加剤は、脂肪族ポリエステル樹脂組成物にのみ含まれていてもよいし、脂肪族ポリエステル繊維にのみ含まれていてもよいし、脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族ポリエステル繊維との両方に含まれていてもよい。
低分子量添加剤の分子量は、50〜1000の範囲であり、好ましくは100〜700の範囲、より好ましくは200〜700の範囲である。
低分子量添加剤は、特に限定されるものではないが、SP(Solubility Parameter)値(フェダー法による;以下同様)が以下の関係を有するものであることが好ましい。すなわち、第一の脂肪族ポリエステルのSP値をA、第二の脂肪族ポリエステルのSP値をB、低分子量添加剤のSP値をCとした場合に、
|A−C|>6(J/cm1/2 且つ |B−C|>6(J/cm1/2
となることが好ましい。なお、| |は絶対値を表し、>は不等号を表す。
低分子量添加剤は、SP値が以下の関係:
|A−C|>8(J/cm1/2 且つ |B−C|>8(J/cm1/2
を有するものであることがより好ましい。
低分子量添加剤のSP値が、第一の脂肪族ポリエステルおよび第二の脂肪族ポリエステルのSP値と近い方が、低分子量添加剤と第一の脂肪族ポリエステルおよび第二の脂肪族ポリエステルとの相分離を起こしにくくなることから、脂肪族ポリエステル繊維と脂肪族ポリエステル樹脂組成物との間の界面強度をより高め、成形物の引張強度がより向上する。よって、低分子量添加剤は、SP値が以下の関係:
|A−C|<20(J/cm1/2 且つ |B−C|<20(J/cm1/2
を有するものであることがさらに好ましい。
低分子量添加剤としては、熱安定剤、末端封鎖剤、着色剤、抗酸化剤、および滑剤等が挙げられ、より具体的には、例えば、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等のモノカルボジイミドおよびポリカルボジイミド化合物等を包含するカルボジイミド化合物;ペンタエリスリトール骨格構造(またはサイクリックネオペンタンテトライル構造)を有するリン酸エステルと少なくとも1つの水酸基と少なくとも1つのアルキルエステル基とを有する(亜)リン酸アルキルエステル;パラフィン;ヒドラジン;ホルムアミド等が挙げられる。低分子量添加剤は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。なお、低分子量添加剤が複数種類である場合、それぞれが前記関係を満たすことが意図される。
なお、一例において、ポリグリコール酸のSP値は26.8であり、ポリ乳酸のSP値は23.1である。第一の脂肪族ポリエステルおよび/または第二の脂肪族ポリエステルとしてポリグリコール酸またはポリ乳酸を用いる場合、前記に列挙した化合物を低分子量添加剤として好適に選択することができる。
なお、PGAのモノマーであるグリコリド(SP値は26.8)、またはPLAのモノマーであるラクチド(SP値は23.1)等も低分子量添加剤として選択することができる。
成形物に低分子量添加剤が含まれている場合、成形物における低分子量添加剤の総含有量は、(0ppm超で且つ)1000ppm以下であることが好ましく、700ppm以下であることがより好ましく、500ppm以下であることがさらに好ましく、300ppm以下であることが特に好ましい。低分子量添加剤が1000ppm以下である場合、脂肪族ポリエステル繊維とマトリックスである脂肪族ポリエステル樹脂組成物との界面に低分子量添加剤がブリードアウトすることを防ぎ、脂肪族ポリエステル繊維と脂肪族ポリエステル樹脂組成物との接着性が阻害されにくいため、界面強度がより高まり、強化効果をより得ることができる。なお、低分子量添加剤は、脂肪族ポリエステル樹脂組成物および脂肪族ポリエステル繊維と未反応の低分子量添加剤を示す。
SP値が前記範囲外の低分子量添加剤については、脂肪族ポリエステル繊維と脂肪族ポリエステル樹脂組成物との接着性を阻害しない範囲で適宜添加することができる。
(本実施形態に係る成形物の特徴)
本実施形態に係る成形物は、さらに以下の特徴を有し得る。
[界面強度]
本発明における界面強度とは、成形物における脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族ポリエステル繊維と間の接着性を表すものである(実施例も参照)。界面強度が強いほど複合化した際の強度が向上する傾向にある。
本実施形態に係る成形物において、脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族ポリエステル繊維と間の界面強度は、2MPa以上であり、3MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。界面強度が2MPa未満である場合、脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族ポリエステル繊維との接着性が低下するため、十分な機械的強度を有する成形物を得ることは困難である。
[引張強度]
本発明における引張強度とは、成形物の強度を示すものであり、成形物を引っ張った際の、破断するまでの最大引張応力から算出される(実施例も参照)。
本実施形態における成形物の引張強度は、脂肪族ポリエステル繊維の強度または含有量等によって制御可能であるが、高強度部材等として使用するための強度を与える観点から、91MPa以上であることが好ましく、92MPa以上であることがより好ましく、95MPa以上であることがさらに好ましく、110MPa以上であることが特に好ましい。
[組成比]
成形物における脂肪族ポリエステル樹脂組成物および脂肪族ポリエステル繊維の含有量は特に限定されないが、例えば、脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族ポリエステル繊維との質量比は、5:95〜90:10であることが好ましく、10:90〜50:50であることがより好ましい。脂肪族ポリエステル繊維が多い方が高強度な成形物が得られやすいが、脂肪族ポリエステル繊維の含有量が多すぎると、成形物の製造の際に脂肪族ポリエステル樹脂組成物のモノマー融液が脂肪族ポリエステル繊維の間に浸透せず、脂肪族ポリエステル繊維と十分に接着しないため、高強度な成形物を得にくくなる可能性がある。一方、脂肪族ポリエステル樹脂組成物の含有量が多すぎると、脂肪族ポリエステル繊維の濃度が低くなるため、十分な強度を有する成形物を得にくくなる可能性がある。
[脂肪族ポリエステル繊維の配列方向]
成形物における脂肪族ポリエステル繊維の配列方向は、ランダムであってもよいし、一方向であってもよい。ランダムの場合は、成形物の強度の異方性が少なくなっている。一方向に配列している場合は、配列方向の強度が高まっている。また、脂肪族ポリエステル繊維は、平織、綾織、または朱子織等の織物にして分散されていてもよい。
(本実施形態に係る成形物の利点)
本実施形態に係る成形物は、後述の実施例に示されるとおり、強度(特には引張強度)が向上している。また、本実施形態に係る成形物は、脂肪族ポリエステル由来の完全分解性を備え得る。そのため、本実施形態に係る成形物は、例えば、坑井掘削部材、より具体的にはフラックプラグ、分解性プラグ、ブリッジプラグ、セメントリテイナー、パーフォレーションガン、ボールシーラー、フラックボール等およびそれらの部材であり得る。また、本実施形態に係る成形物は、ペレット、チップ等であり得、例えば、このような坑井掘削部材のための材料、具体的には、掘削流体、フラクチャリング流体、セメンティング流体、一時プラグ流体および仕上げ流体の添加剤等として好適に用いられ得る。なお、本明細書において「分解性」とは、好ましくは加水分解性、より好ましくは自然環境下での加水分解性を指し、生分解性も包含する。
本実施形態に係る成形物では、脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族ポリエステル繊維との間の界面強度が十分に強い。その理由は明確でないが、低分子量添加物の含有量を減少させることによって、脂肪族ポリエステル繊維とマトリックスである脂肪族ポリエステル樹脂組成物との界面に析出する低分子量添加剤の量が減少するのではないかと推測される。その結果として、脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族ポリエステル繊維との間の接着性界面強度が十分に強く、引張強度に優れた成形物を得ることができると推測される。
〔成形物の製造方法〕
本実施形態に係る成形物は、製造方法に特に限定はない。一実施形態において、本実施形態に係る成形物は、例えば、脂肪族ポリエステル繊維と環状エステルとを5:95〜90:10の質量比で混合して混合物を調製する工程と、脂肪族ポリエステル繊維の融点未満の温度で環状エステルを開環重合する工程とを含む方法で製造することができる。
(脂肪族ポリエステル繊維)
脂肪族ポリエステル繊維の成分および構造等は、上述のとおりである。脂肪族ポリエステル繊維の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の方法で製造すればよい。
(環状エステル)
環状エステルは、第一の脂肪族ポリエステルの原料となる物質である。本実施形態に係る製造方法では、第一の脂肪族ポリエステルの基本単位となる開環状化合物(例えば、PGAの場合は、グリコール酸)ではなく、当該開環状化合物が分子内縮合した環状エステルまたは2分子もしくはそれ以上の当該開環状化合物が分子間縮合した環状エステル(例えば、PGAの場合は、2分子のグリコール酸が縮合したグリコリド等)を用いる。なお、環状エステル自体の製造方法は、開環状化合物の縮合反応に限定されるわけではなく、環状エステル構造を与える任意の製造方法であり得る。
環状エステルとしては、グリコリド、ラクチド、およびカプロラクトン等が挙げられる。例えば、グリコール酸系重合体を製造する場合には、環状エステルとしてグリコリドを好適に用いることができる。また、乳酸系重合体を製造する場合には、環状エステルとしてラクチドを好適に用いることができる。一例において、環状エステルは、ラクチドおよびグリコリドからなる群から選ばれる。
環状エステルを原料として用いる場合には、開環反応においてアルコールおよび水が生成しないため、アルコールおよび水の除去工程を省くことができるという利点がある。また、生成したアルコールおよび水によって第一の脂肪族ポリエステルが分解するのを防ぐことができる。
(混合工程)
脂肪族ポリエステル繊維と環状エステルとの混合比は、重量比で、5:95〜90:10であることが好ましく、10:90〜50:50であることがより好ましい。脂肪族ポリエステル繊維が多い方が高強度な成形物が得られやすいが、脂肪族ポリエステル繊維の含有量が多すぎると、成形物の製造の際に脂肪族ポリエステル樹脂組成物のモノマー融液が脂肪族ポリエステル繊維の間に浸透せず、脂肪族ポリエステル繊維と十分に接着しないため、高強度な成形物を得にくくなる可能性がある。一方、脂肪族ポリエステル樹脂組成物の含有量が多すぎると、脂肪族ポリエステル繊維の濃度が低くなるため、十分な強度を有する成形物を得にくくなる可能性がある。
混合の際、環状エステルは脂肪族ポリエステル繊維との空隙を減らすために融液状態にすることが望ましい。また、混合する際の融液の温度は、脂肪族ポリエステル繊維の融点未満であることが好ましい。脂肪族ポリエステル繊維の融点未満の温度で混合する場合には、脂肪族ポリエステル繊維が融解するのを防ぎ、繊維による成形物の強度向上の効果をより得ることができる。
混合は、重合用の容器(例えば、重合用の型)内で行ってもよいし、混合用の容器内で行い、混合後に重合用の容器(例えば、重合用の型)に混合物を注入してもよい。重合用の容器(例えば、重合用の型)は、特に限定されるものではないが、例えば、金属製、樹脂製等が挙げられ、脂肪族ポリエステルを主成分とするものでもよい。
脂肪族ポリエステル樹脂組成物に低分子量添加剤が含まれている場合、混合工程において低分子量添加剤を添加してもよい。
また、開環重合は、好ましくは、少量の触媒および/または少量の分子量調整剤等の存在下で行われる。そのため、触媒および/または分子量調整剤等を、混合工程において添加してもよい。
触媒としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化スズ(例えば、二塩化スズ、四塩化スズ等)および有機カルボン酸スズ(例えば、2−エチルヘキサン酸スズ等のオクタン酸スズ)等のスズ系化合物;アルコキシチタネート等のチタン系化合物;アルコキシアルミニウム等のアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトン等のジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモンおよび酸化アンチモン等のアンチモン系化合物;等が挙げられる。触媒は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。触媒の使用量(複数種類の場合は合計量)は、環状エステルに対して、質量比で、1〜1000ppmであることが好ましく、3〜300ppm程度であることがより好ましい。
分子量調整剤は、生成する第一の脂肪族ポリエステルの分子量および溶融粘度等の物性を制御するために用いられる。分子量調整剤としては、特に限定されないが、例えば、ラウリルアルコール等の高級アルコール;その他のアルコール類および水等のプロトン性化合物;等が挙げられる。分子量調整剤は、1種類であってもよいし、複数種類であってもよい。分子量調整剤の使用量(複数種類の場合は合計量)は、環状エステルに対して、質量比で、10〜100,000ppmであることが好ましく、20〜20,000ppmであることがより好ましい。グリコリドには通常、微量の水分、ならびにグリコール酸および直鎖状のグリコール酸オリゴマーからなるヒドロキシカルボン酸化合物類が不純物として含まれていることがあり、これらの化合物も重合反応に作用する。そのため、これらの不純物の濃度を、例えばこれらの化合物中のカルボン酸量を中和滴定等によってモル濃度として定量し、この定量値に基づいて、目的の分子量等に応じプロトン性化合物としてアルコール類および/または水を添加し、全プロトン性化合物のモル濃度をグリコリドに対して制御することによって、生成PGAの分子量等を調整することもできる。また、物性改良のために、グリセリン等の多価アルコールを添加してもよい。なお、分子量調整剤は環状エステルと反応するため、生成する脂肪族ポリエステルの末端部に取り込まれる。
コモノマーを用いる場合は、混合工程において当該コモノマーを添加すればよい。
(開環重合工程)
重合用の容器(例えば、重合用の型)に前記混合工程で調製した混合物を注入し、その後、開環重合工程を行う。
重合時に溶融モノマーと繊維との間に気泡が巻き込まれていると、空隙が生じて強度が低下する虞があるため、脱泡操作をして気泡を除去してから重合反応させることが好ましい。脱泡操作としては、真空脱気、ハンドレイアップ法、およびスプレーアップ法等が挙げられる。
重合温度は、環状エステルの種類および目的等によって適宜設定すればよい。例えば、環状エステルがグリコリドである場合、重合温度は、実質的な重合開始温度である120〜220℃の範囲内で適宜設定することができる。重合温度は、好ましくは130〜210℃、より好ましくは140〜200℃、特に好ましくは150〜190℃である。重合温度が低すぎると、生成したPGAの分子量分布が広くなりやすい。重合温度が高すぎると、生成したPGAが熱分解を受けやすくなる。また、環状エステルがラクチドである場合、重合温度は、実質的な重合開始温度である100〜200℃の範囲内で適宜設定することができる。
重合時の圧力は、環状エステルの種類および目的等によって適宜設定すればよいが、例えば、1〜101kPaとすることができる。
重合時間は、環状エステルの種類および目的等によって適宜設定すればよい。例えば、環状エステルがグリコリドである場合、重合時間は、好ましくは3分間〜50時間、より好ましくは5分間〜30時間の範囲内である。重合時間が短すぎると重合が十分に進行し難く、所定の分子量を実現することができなかったり、未反応の分子量調整剤が残存したりする虞がある。重合時間が長すぎると生成したPGAが熱分解し着色しやすくなる。また、環状エステルがラクチドである場合も同様に、重合時間は、3分間〜50時間の範囲内が好ましい。
繊維の所望の方向に配向させるために、遠心を行いながら開環重合を行ってもよい。この場合、温度は環状エステルが融液状態となっている温度とすることができ、回転数および時間は環状エステルおよび脂肪族ポリエステル繊維の種類によって適宜設定すればよい。
以下に実施例を示し、本実施形態について更に詳しく説明する。もちろん、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
脂肪族ポリエステル繊維が分散されている脂肪族ポリエステル樹脂組成物を含む成形物を製造し、様々な評価を行った。
〔各種測定方法〕
具体的な実施例の前に、本明細書における「界面強度測定」、「引張強度測定」、「SP値(フェダー法)」、「重量平均分子量測定」、および「加水分解性試験」の方法について以下に説明する。
(1)界面強度測定
脂肪族ポリエステル樹脂組成物と脂肪族ポリエステル繊維と間の界面強度測定は、精密万能試験機((株)エーアンドディー製)を用いて測定した。まず、実施例および比較例における脂肪族ポリエステル繊維に脂肪族ポリエステル樹脂組成物の融液を滴下して175℃で3時間重合させ、脂肪族ポリエステル繊維にビーズ状の脂肪族ポリエステル樹脂組成物が付着した試料を作製した。次いで、脂肪族ポリエステル繊維の片側を精密万能試験機に備えたタイヤコード用引っかけチャックにセットし、脂肪族ポリエステル繊維のもう片側に密着しているビーズ状の脂肪族ポリエステル樹脂組成物をフィルム用チャックに固定し、100mm/分の速度で引っ張った時の最大強度を測定し、得られた強度から以下の式で界面強度を算出した。
Figure 2017155094
(ここで、τ:界面強度(MPa)、F:最大強度(N)、D:繊維径(mm)、L:繊維の埋め込み長さ(mm))
(2)引張強度測定
引張強度は、JIS K7113に準拠して測定した。すなわち、JIS K7113に規定される形状の試験片を、材料試験機(株式会社島津製作所製、2tオートグラフAG−2000E)を用いて、温度23±1℃において、秒速50mm/分で引張試験を行い、試験片が破断した時の引張応力を測定した。引張応力の結果から、強度を算出し、試験片の引張強度とした。
(3)SP値(フェダー法)
SP値は、フェダー(Fedor)法(参考文献:山本秀樹著「SP値 基礎・応用と計算方法」第66〜67頁(株式会社情報機構発行,2005年))によって算定した。より具体的にはフェダーの提案した下式:
Figure 2017155094
(ここで、ΣEcohは、Ecoh(対象化合物の構成単位の凝集エネルギー密度(cal/cm))の総和;ΣVは、V(対象化合物の構成単位のモル分子容積(cm))の総和)
に従い、対象化合物のSP値δ((cal/cm1/2)を計算した。
(4)重量平均分子量測定
脂肪族ポリエステルの重量平均分子量(Mw)の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析装置を用いて、以下の条件で行った。トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解させたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に、脂肪族ポリエステル試料10mgを溶解させて10cmとした後、メンブレンフィルターでろ過して試料溶液を得て、この試料溶液10μLをGPC分析装置に注入して、下記の測定条件で分子量を測定することによって求めた。
<GPC測定条件>
装置:昭和電工株式会社製GPC104
カラム:昭和電工株式会社製HFIP−806M 2本(直列接続)+プレカラム:HFIP−G 1本
カラム温度:40℃
溶離液:トリフルオロ酢酸ナトリウムを5mMの濃度で溶解させたHFIP溶液
検出器:示差屈折率計
分子量校正:分子量の異なる標準分子量のポリメタクリル酸メチル5種(Polymer laboratories Ltd.製)を用いて作成した分子量の検量線データを使用。
(5)加水分解性試験
成形物を10mm×10mm×4mmの形状に切削し、それを66℃のイオン交換水50mL中に投入し、2、4、6、8日後、3辺の長さを測定し、その平均値の経時変化から厚み減少速度を算出した。
〔脂肪族ポリエステル繊維の製造方法〕
(PGA繊維製造方法1(PGA繊維−1))
グリコリド(株式会社クレハ製、遊離酸濃度2eq/t)を、露点−40℃以下に管理されているドライルーム内でビーカーに入れ、100℃に加熱して完全に溶解させた。ここに、分子量調整剤としてドデシルアルコール(純正化学製)をグリコリドに対して0.25mol%、触媒として二塩化スズ・二水和物(関東化学製)をグリコリドに対して30ppm添加し、均一になってから5分間撹拌した。この融液を速やかにガラス製試験管に流し込み、170℃で7時間重合させた。その後、室温まで冷却し、粉砕機で粉砕することでPGA粉砕物を得た。このPGA粉砕物を二軸押出機(東洋精機製作所製、2D25S)で溶融混練して、PGAペレットを得た。
下記の押出機の先端部に1.0cc/revのギアポンプと、1mmφ×1mmL×24holeのノズルとを備えた押出機に、得られたPGAペレットを投入し、ノズルから吐出された繊維を引取りローラーで周速200m/分で引取った。さらに温度60℃の加熱ローラーで加熱後に周速1000m/分で引き取ることによって、延伸倍率5倍で糸径50μmのPGA繊維を得た。このPGA繊維を175℃の乾燥空気雰囲気下で30分間熱処理し、PGA繊維−1とした。PGA繊維−1の引張強度は1000MPaであり、グリコリド含有量は0.1重量%であった。
<押出機>
機台:Fiber Extrusion Technology製FET lab extruder
シリンダー径:25mmφ、L/D=30
スクリュー:一条一軸のフルフライトスクリュー
ギアポンプ回転数:5rpm
シリンダーおよびギアポンプ温度:C1 210/ C2 220/ C3 235/ C4 245/ GP245℃
(PGA繊維製造方法2(PGA繊維−2))
PGA繊維製造方法1において、PGA粉砕物を二軸押出機で溶融混練する際に、ADEKA製アデカスタブAX−71(モノおよびジステアリルリン酸エステルの50:50重量比の混合物、平均分子量476、SP値18.4(J/cm1/2)を300ppm添加してPGAペレットを得たこと以外は、PGA繊維製造方法1と同様の方法でPGA繊維を得た。得られたPGA繊維をPGA繊維−2とした。PGA繊維−2の引張強度は1100MPaであり、グリコリド含有量は0.04重量%であった。
(PGA繊維製造方法3(PGA繊維−3))
PGA繊維製造方法1において、PGA粉砕物を二軸押出機で溶融混練する際に、ADEKA製アデカスタブAX−71(モノおよびジステアリルリン酸エステルの50:50重量比の混合物、平均分子量476、SP値18.4(J/cm1/2)を200ppmと、川口化学製N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(分子量362、SP値16.8(J/cm1/2)を4000ppm添加してPGAペレットを得たこと以外は、PGA繊維製造方法1と同様の方法でPGA繊維を得た。得られたPGA繊維をPGA繊維−3とした。PGA繊維−3の引張強度は1000MPaであり、グリコリド含有量は0.04重量%であり、未反応N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド量は1500ppmであった。
〔調製グリコリド〕
グリコリド(株式会社クレハ製、遊離酸濃度2eq/t)と、グリコリドに対して0.25mol%のドデシルアルコール(純正化学製)と、グリコリドに対して30ppmの二塩化スズ・二水和物(関東化学製)とを十分に混合して得られたものを、調製グリコリドとした。
〔PGA繊維強化PGA成形物の製造方法〕
(実施例1)
深さ30mmのアルミ製のバット中で、長さ6mmにカットしたPGA繊維−1に、100℃で溶融している調製グリコリドを重量比で10:90になるように流し込み、十分に混合し、ハンドローラーで気泡を脱気した。その後、真空乾燥機内で10kPaに減圧し、175℃で3時間重合した。重合後、室温まで冷却して、厚みが約4mmの板状のPGA繊維強化PGA成形物を得た。
(実施例2)
PGA繊維−1の代わりにPGA繊維−2を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でPGA繊維強化PGA成形物を得た。
(実施例3)
PGA繊維−1と調製グリコリドとの重量比が5:95となるようにした以外は、実施例1と同様の方法でPGA繊維強化PGA成形物を得た。
(比較例1)
PGA繊維を添加しないこと以外は、実施例1と同様の方法でPGA繊維強化PGA成形物を得た。
(比較例2)
PGA繊維−1の代わりにPGA繊維−3を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でPGA繊維強化PGA成形物を得た。
〔測定結果〕
実施例1〜3および比較例1〜2のPGA繊維強化PGA成形物について、切削加工して、引張強度測定および加水分解性試験を行った。
結果を表1に示す。低分子量添加剤(アデカスタブAX−71、N,N−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)を一定量以上含まないPGA繊維を含有するPGA成形物は、界面強度および引張強度の何れもが高くなることが示された。さらに、実施例1のPGA成形物と、比較例1のPGA成形物の加水分解試験を行ったところ、厚み減少速度は両者ともほぼ同等となることが示された。
Figure 2017155094
本発明に係る成形物は、高強度であり、且つ脂肪族ポリエステル繊維を含まない成形物と同等の加水分解性を有する。そのため、高強度が要求され且つ環境負荷軽減を求められる分野、特に石油掘削分野において、各種ダウンホールツールまたはその部材としてとして好適に利用することができる。

Claims (7)

  1. 第一の脂肪族ポリエステルを主成分とする樹脂組成物を含む脂肪族ポリエステル樹脂成形物であって、
    前記第一の脂肪族ポリエステルより高強度な第二の脂肪族ポリエステルを主成分とする繊維が分散されており、
    前記樹脂組成物と前記繊維との間の界面強度が2MPa以上であることを特徴とする脂肪族ポリエステル樹脂成形物。
  2. 前記樹脂組成物および前記繊維の少なくとも一方が低分子量添加剤を含んでおり、
    前記第一の脂肪族ポリエステルのSP値(フェダー法による)をA、前記第二の脂肪族ポリエステルのSP値(フェダー法による)をB、前記低分子量添加剤のSP値(フェダー法による)をCとした場合に、以下の関係を有し:
    |A−C|>6(J/cm1/2 且つ |B−C|>6(J/cm1/2
    前記低分子量添加剤の総含有量が1000ppm以下である、請求項1に記載の脂肪族ポリエステル樹脂成形物。
  3. 前記繊維にのみ前記低分子量添加剤を含む、請求項2に記載の脂肪族ポリエステル樹脂成形物。
  4. 前記樹脂組成物と前記繊維との質量比が5:95〜90:10である、請求項1〜3の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステル樹脂成形物。
  5. 第一の脂肪族ポリエステルおよび第二の脂肪族ポリエステルが、それぞれ、乳酸系重合体およびグリコール酸系重合体からなる群から選ばれる、請求項1〜4の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステル樹脂成形物。
  6. 前記繊維と環状エステルとを5:95〜90:10の質量比で混合して混合物を調製する工程と、
    前記繊維の融点未満の温度で前記環状エステルを開環重合する工程と、を含むことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の脂肪族ポリエステル樹脂成形物の製造方法。
  7. 前記環状エステルがラクチドおよびグリコリドからなる群から選ばれ、前記第二の脂肪族ポリエステルが乳酸系重合体およびグリコール酸系重合体からなる群から選ばれる、請求項6に記載の脂肪族ポリエステル樹脂成形物の製造方法。
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