WO2022168992A1 - 1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質及びフコース含有糖質の製造法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、従来と比して効率的にフコース含有糖質を製造する手段の提供を目的とする。本発明は、[1]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質、[2]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する変異蛋白質、[3]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する相同蛋白質のいずれか1の蛋白質に関する。

Description

1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質及びフコース含有糖質の製造法
 本発明は、1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質及び3-フコシルラクトースなどのフコース含有糖質の製造法に関する。
 ヒト母乳中に含まれるヒトミルクオリゴ糖(HMO)はプレバイオティクスとしての腸内環境の改善作用や免疫の賦活化、乳幼児の認知機能発達などの健康機能を有することが報告されており、その生理活性から、幼児用調製粉乳への添加剤や成人向け健康機能素材としての活用が期待されている(非特許文献1)。
 HMOとして知られる糖質のうち3-フコシルラクトースなどのフコース含有糖質は、物質量比でHMO全体の約60%を占めており(非特許文献2)、HMOの中でも特に機能性が注目されている。
 3-フコシルラクトースの製造法としては、フコース転移酵素を用いる方法がある。フコース転移酵素を用いる3-フコシルラクトースの製造法としては、例えば、Helicobacter pylori(ヘリコバクター・ピロリ)由来のα1,3-フコシルトランスフェラーゼ(非特許文献3)や、Bacteroides fragilis(バクテロイデス・フラジリス)由来のα1,3-フコシルトランスフェラーゼ(非特許文献4、特許文献1)などを用いる方法が挙げられる。しかし、当該フコース転移酵素の活性が不十分であることが課題となっている。
 前記課題を解決するために、例えばHelicobacter pylori由来のα1,3-フコシルトランスフェラーゼの改変、具体的には、アミノ酸変異導入による酵素活性改善(特許文献2、非特許文献5)やC末端アミノ酸配列の欠損・付加による発現改善(非特許文献6)などによる3-フコシルラクトース生産性の改善効果が確認されている。
日本国特許第6097691号公報 米国特許第10336990号明細書
Int J Pediatrics(2019)2390240:1-8 Curr Opin Biotechnol(2019)56:130-137 Metabolic Engineering(2017)41:23-38 Biotechnol Bioproc Eng(2013)18:843-849 Biotechnol Bioeng(2016)113:1666-1675 Metabolic Engineering(2018)48:269-278
 しかしながら、特許文献2、非特許文献5及び非特許文献6等に記載のHelicobacter pylori由来のα1,3-フコシルトランスフェラーゼの改変による3-フコシルラクトース生産性の改善効果は不十分であり、さらなる効率的なフコース含有糖質の製造法が求められている。
 したがって、本発明は、従来と比して効率的にフコース含有糖質を製造する手段の提供を目的とする。
 本発明者は、特定のアミノ酸配列を含む1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質を用いることにより、従来の方法と比して、効率的に3-フコシルラクトースを製造できることを見出し、本発明を完成させた。
 すなわち、本発明は以下の通りである。
1.下記[1]~[3]のいずれか1の蛋白質。
[1]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質。
[2]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する変異蛋白質。
[3]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する相同蛋白質。
2.配列番号1又は3で表される塩基配列又はその相同配列からなり、かつ前記1に記載の[1]~[3]のいずれか1の蛋白質をコードするDNA。
3.前記2に記載のDNAを含有する組換え体DNA。
4.前記3に記載の組換え体DNAで宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
5.前記1に記載の[1]~[3]のいずれか1の蛋白質の活性及びフコース含有糖質の生産性が増強された微生物である、前記4に記載の形質転換体。
6.前記微生物が大腸菌である、前記5に記載の形質転換体。
7.前記4~6のいずれか1に記載の形質転換体を培地に培養してフコース含有糖質を生成させることを含む、フコース含有糖質の製造法。
8.前記4~6のいずれか1に記載の形質転換体を培地に培養して培養物又は該培養物の処理物を得ること、
 該培養物又は該培養物の処理物を酵素源として用い、該酵素源、GDP-フコース及び受容体糖質を水性媒体中に存在せしめ、フコース含有糖質を該水性媒体中に生成させること、および
 該水性媒体中から該フコース含有糖質を採取すること、を含む、フコース含有糖質の製造法。
9.前記フコース含有糖質が3-フコシルラクトースである、前記7又は8に記載の製造法。
 本発明の蛋白質は特定のアミノ酸配列からなることにより優れたα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有している。したがって、該蛋白質又は該蛋白質を生産する能力を有する微生物を用いることにより、従来と比して、効率的に3-フコシルラクトース等のフコース含有糖質を製造できる。
1.本発明の蛋白質
 本発明の蛋白質は、以下の[1]~[3]のいずれか1に記載の蛋白質である。
[1]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質。
[2]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する変異蛋白質。
[3]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する相同蛋白質。
 アミノ酸配列の「1~20個のアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加」における「1~20個」の範囲は特に限定されないが、例えば、アミノ酸配列におけるアミノ酸数100個を一単位とすれば、該一単位あたり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個程度、より好ましくは1、2、3、4又は5個程度を意味する。
 「アミノ酸の欠失」とは配列中のアミノ酸残基の欠落又は消失を意味し、「アミノ酸の置換」は配列中のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基に置き換えられていることを意味し、「アミノ酸の挿入」とは配列中に新たなアミノ酸残基が挿入されていることを意味し、「アミノ酸の付加」とは配列中に新たなアミノ酸残基が挿入するように付け加えられていることを意味する。
 「1~20個のアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加」の具体的な態様としては、1~20個のアミノ酸が別の化学的に類似したアミノ酸で置き換えられた態様がある。例えば、ある疎水性アミノ酸を別の疎水性アミノ酸に置換する場合、ある極性アミノ酸を同じ電荷を有する別の極性アミノ酸に置換する場合などが挙げられる。このような化学的に類似したアミノ酸は、アミノ酸毎に当該技術分野において知られている。
 具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ塩基性アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
 対象となるタンパク質が有するアミノ酸配列において1~20個のアミノ酸の欠失、置換、挿入又は付加などを有するアミノ酸配列としては、対象となるタンパク質が有するアミノ酸配列と一定以上の配列同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。例えば、対象となるタンパク質が有するアミノ酸配列と好ましくは60%以上、より好ましくは以下順に65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列が挙げられる。
 配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されていることは、例えば、欠失、置換、挿入又は付加されていることを確認しようとする蛋白質のアミノ酸配列と、元となる蛋白質のアミノ酸配列とをアライメントすることにより確認できる。
 アミノ酸配列のアライメントは、例えば、公知のアライメントプログラムClustalW[Nucelic Acids Research 22,4673,(1994)]を用いて作成できる。ClustalWは、例えば、http://www.ebi.ac.uk/clustalw/(European Bioinformatics Institute)より利用できる。ClustalWを用いてアライメントを作成する際のパラメータは、例えばデフォルトの値を用いることができる。
 配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸を置換、挿入又は付加する場合、置換、挿入又は付加するアミノ酸残基は、天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸としては、例えば、L-アラニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン、L-グルタミン酸、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-アルギニン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン、L-システイン等が挙げられる。
 以下に、相互に置換可能なアミノ酸の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、o-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニンB群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸C群:アスパラギン、グルタミンD群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリンF群:セリン、スレオニン、ホモセリンG群:フェニルアラニン、チロシン
 α1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性とは、ドナー基質であるGDP-フコースから受容体基質である糖質(「受容体糖質」とも称する)のN-アセチルグルコサミン3位水酸基またはグルコース3位水酸基にα1,3-結合でフコースを転移し、フコース含有糖質を生成する活性をいう。
 受容体糖質としては、例えば、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルラクトサミン、ガラクトース、フコース、シアル酸、グルコース若しくはラクトースまたはそれらの組合せ、およびそれらを部分構造として含む糖鎖が挙げられる。これらの中でも、ラクトースが好ましい。
 得られるフコース含有糖質としては、例えば、3-フコシルラクトース、ラクトジフコテトラオース、ルイスX及びラクト-N-フコペンタオースIIIが挙げられ、これらの中でも3-フコシルラクトースが好ましい。
 本明細書において、「基質」とは、フコース含有糖質を生じさせるためにα1,3-フコシルトランスフェラーゼが作用し得る物質または該物質の組み合わせをいう。
 変異蛋白質とは、元となる蛋白質中のアミノ酸残基を人為的に欠失若しくは置換、又は該蛋白質中に人為的にアミノ酸残基を挿入若しくは付加して得られる蛋白質をいう。変異蛋白質において、アミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたとは、同一配列中の任意の位置において、1~20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されていてもよい。
 置換、挿入又は付加されるアミノ酸は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸の例としては、前記の天然型アミノ酸が挙げられる。相互に置換可能なアミノ酸の例は前述の通りである。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。
 相同蛋白質とは、自然界に存在する生物が有する蛋白質であって、進化上の起源が同一の蛋白質に由来する一群の蛋白質をいう。相同蛋白質は、互いに構造及び機能が類似している。 
 アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST(Pro.Nat.Acad.Sci.USA,90,5873,1993)やFASTA(Methods Enzymol.,183,63,1990)を用いて決定できる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている(J.Mol.Biol.,215,403,1990)。BLASTに基づいてBLASTNを使用して塩基配列を解析する場合には、パラメータは、例えばScore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXを使用してアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGap ped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメータを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。
 上記の変異蛋白質又は相同蛋白質が、α1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有するとは、例えば以下の方法により確認できる。まず、後述の方法により、上記活性を確認しようとする変異蛋白質又は相同蛋白質をコードするDNAを有する組換え体DNAを作製する。次に、該組換え体DNAで、α1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有さない微生物、例えばEscherichia coli(エシェリヒア・コリ) W3110株を形質転換して得られる微生物を培養し、得られる培養物から該蛋白質を含む細胞抽出液を調製する。該蛋白質を含む細胞抽出液を、基質であるGDP-フコース及び受容体糖質を含む水溶液と接触させ、該水溶液中にフコース含有糖質を生成させる。最後に、後述の糖分析装置を用いて反応液中のフコース含有糖質を検出することにより、変異蛋白質又は相同蛋白質がα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有することを確認できる。
2.本発明のDNA
 本発明のDNAは、上記[1]~[3]のいずれか1に記載の蛋白質をコードするDNAである。本発明のDNAとして、具体的には以下の[A1]~[A3]のDNAが挙げられる。
[A1]配列番号1又は3で表される塩基配列からなるDNA。
[A2]配列番号1又は3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、α1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する相同蛋白質をコードするDNA。
[A3]配列番号1又は3で表される塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、α1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する相同蛋白質をコードするDNA。
 上記において、ハイブリダイズするとは、特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。従って、該特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部にハイブリダイズするDNAの塩基配列は、ノーザン又はサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、又はPCR解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。
 プローブとして用いるDNAとしては、例えば、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAが挙げられる。プライマーとして用いられるDNAとしては、例えば、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAが挙げられる。
 DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えば、モレキュラー・クローニング第4版(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2012)、Methods for General and Molecular Bacteriology(ASM Press,1994)、Immunology methods manual(Academic press,1997)の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行える。
 また、市販のハイブリダイゼーションキットに付属した説明書に従うことによっても、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを取得できる。市販のハイブリダイゼーションキットとしては、例えばランダムプライム法によりプローブを作製し、ストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションを行うランダムプライムドDNAラベリングキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)が挙げられる。
 上記のストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/Lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中にて42℃で一晩インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件が挙げられる。
 上記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加又は変更することにより設定することもできる。上記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
 上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えば上記したBLASTやFASTA等のプログラムを用いて、上記パラメータに基づいて計算した時に、配列番号1又は3で表される塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAが挙げられる。
 本発明のDNAは、例えば、配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAを用いて、例えば、モレキュラー・クローニング第4版(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2012)及びカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(JOHN WILEY&SONS,INC.)等に記載された部位特異的変異導入法により変異を導入し、他のアミノ酸残基をコードする塩基配列に置換することにより取得できる。あるいは、PrimeSTAR Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ社製)等を用いることでも、本発明のDNAが得られる。
 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAは、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質をコードするDNAの塩基配列に基づいて設計できるプローブを用い、微生物、好ましくはバクテロイデス属、より好ましくはBacteroides reticulotermitis(バクテロイデス・レティキュロターマイティス) JCM10512株の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーションにより、又は配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAに基づき設計できるプライマーDNAを用いた、Bacteroides reticulotermitis JCM10512株の染色体DNAを鋳型としたPCR[PCR Protocols,Academic press(1990)]により取得できる。配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAとしては、具体的には、配列番号1で表される塩基配列を有するDNAが挙げられる。
 配列番号4で表されるアミノ酸配列をコードするDNAは、例えば、以下の(i)または(ii)に示すフュージョンPCRによるキメラ化により取得できる。
(i)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAの塩基配列に基づいて設計できるプローブを用い、各染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーションによって得られた下記(i-1)~(i-3)の合計3つのDNA断片のフュージョンPCRによるキメラ化
(i-1)微生物、好ましくはバクテロイデス属、より好ましくはBacteroides reticulotermitis JCM10512株の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーションによって得られた配列番号3で表される塩基配列のうち、1~342番目の塩基配列からなるDNA断片
(i-2)微生物、好ましくはバクテロイデス属、より好ましくはBacteroides reticulotermitis JCM10512株の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーションによって得られた配列番号3で表される塩基配列のうち、607~954番目の塩基配列からなるDNA断片
(i-3)Bacteroides fragilis ATCC25285株の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーションによって得られた配列番号6で表されるアミノ酸配列のうち、127~214番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列を、大腸菌内で発現させるためにコドン最適化した塩基配列からなるDNA断片
(ii)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAに基づき設計できるプライマーDNAを用い、各染色体DNAを鋳型としたPCRによって得られた下記(ii-1)~(ii-3)の合計3つのDNA断片のフュージョンPCRによるキメラ化
(ii-1)微生物、好ましくはバクテロイデス属、より好ましくはBacteroides reticulotermitis JCM10512株の染色体DNAを鋳型としたPCRによって得られた配列番号3で表される塩基配列のうち、1~342番目の塩基配列からなるDNA断片
(ii-2)微生物、好ましくはバクテロイデス属、より好ましくはBacteroides reticulotermitis JCM10512株の染色体DNAを鋳型としたPCRによって得られた配列番号3で表される塩基配列のうち、607~954番目の塩基配列からなるDNA断片
(ii-3)Bacteroides fragilis ATCC25285株の染色体DNAを鋳型としたPCRによって得られた配列番号6で表されるアミノ酸配列のうち、127~214番目のアミノ酸配列をコードする塩基配列を、大腸菌内で発現させるためにコドン最適化した塩基配列からなるDNA断片
 配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAとしては、具体的には、配列番号3で表される塩基配列を有するDNAが挙げられる。
 前記[2]に記載の、配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において1~20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなる変異蛋白質であり、かつ1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する変異蛋白質をコードするDNAは、例えば、配列番号1又は3で表される塩基配列からなるDNAを鋳型としてエラープローンPCR等に供することにより取得できる。
 又は、目的の変異(欠失、置換、挿入又は付加)が導入されるように設計した塩基配列をそれぞれの5’端に持つ1組のPCRプライマーを用いたPCRによる部分特異的変異導入法(Gene,77,51,1989)によっても、前記[2]の配列番号2又は4で表わされるアミノ酸配列において1~20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる変異蛋白質であり、かつ1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する変異蛋白質をコードするDNAを取得できる。
 また、市販の部分特異的変異導入キットに付属した説明書に従うことによっても、該DNAを取得できる。市販の部分特異的変異導入キットとしては、例えば、目的の変異を導入したい位置に変異(欠失、置換、挿入又は付加)を導入できるPrimeSTAR(登録商標) Mutagenesis Basal Kit(タカラバイオ社製)が挙げられる。
 すなわち、まず、目的の変異(欠失、置換、挿入又は付加)が導入されるように設計した塩基配列を有するプラスミドを鋳型に、5’側が15塩基オーバーラップした一対の変異導入用プライマーを設計する。このとき、オーバーラップ部分には目的の変異を含む。次に、該変異導入用プライマーを用いて、目的の変異を導入したい塩基配列を有するプラスミドを鋳型にPCRを行う。これにより得られた増幅断片を大腸菌に形質転換すると、目的の変異が導入された塩基配列を有するプラスミドが得られる。
 前記配列番号2又は4で表わされるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなる相同蛋白質であり、かつα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する相同蛋白質をコードするDNAは、例えば、以下の方法により取得できる。具体的には、例えば、各種の遺伝子配列データベースに対して配列番号1又は3で表わされる塩基配列と好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を検索し、該検索によって得られた塩基配列又はアミノ酸配列に基づいて設計できるプローブDNA又はプライマーDNA、及び当該DNAを有する微生物を用いて、前記の配列番号2又は4で表わされるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAを取得する方法と同様の方法によって、該相同蛋白質をコードするDNAを取得できる。
 塩基配列やアミノ酸配列の同一性は、前記1と同様の方法で決定できる。上記の方法で取得した本発明のDNAは、そのまま、あるいは適当な制限酵素等で切断し、常法によりベクターに組み込み、得られた組換え体DNAを宿主細胞に導入した後、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばジデオキシ法(Proc.Nat.Acad.Sci.,USA,74,5463,1977)、又はアプライド・バイオシステムズ3500ジェネティックアナライザやアプライド・バイオシステムズ3730DNAアナライザ(いずれもサーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定できる。
 本発明のDNAの塩基配列を決定する際に用いることができるベクターとしては、例えば、pBluescriptII KS(+)、pPCR-Script Amp SK(+)(いずれもアジレント・テクノロジー社製)、pT7Blue(メルクミリポア社製)、pCRII(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)、pCR-TRAP(ジーンハンター社製)、及びpDIRECT(Nucleic Acids Res.,18,6069,1990)等が挙げられる。
 上記の宿主細胞としては、前記ベクターを導入し増殖可能なものであれば何でもよいが、例えば、Escherichia coli DH5α、Escherichia coli HST08Premium、Escherichia coli HST02、Escherichia coli HST04 dam/dcm、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coliCJ236、Escherichia coli BMH71-18 mutS、Escherichia coli MV1184、Escherichia coli TH2(いずれもタカラバイオ社製)、Escherichia coli XL1-Blue、Escherichia coli XL2-Blue(いずれもアジレント・テクノロジー社製)、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli W1485、Escherichia coli W3110、Escherichia coli MP347、Escherichia coli NM522等が挙げられる。
 本発明のDNAを組み込んで得られる、組み換えDNAの宿主細胞への導入方法としては、宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110,1972)、プロトプラスト法(日本国特開昭63-248394号公報)、エレクトロポレーション法(Nucleic Acids Res.,16,6127,1988)等が挙げられる。
 塩基配列を決定した結果、取得されたDNAが部分長であった場合は、該部分長DNAをプローブに用いた染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション法等により、全長DNAを取得できる。
 更に、決定されたDNAの塩基配列に基づいて、日本テクノサービス社製NTS MシリーズDNA合成装置等を用いて化学合成することにより、目的とするDNAを調製することもできる。
3.本発明の組換え体DNA
 本発明の組換え体DNAは、宿主細胞において自律複製可能なDNAであって、前記2の本発明のDNAを転写できる位置にプロモーターを含有している発現ベクターに本発明のDNAが組み込まれているDNAである。
 宿主細胞において染色体への組込が可能なDNAであって、本発明のDNAを有するDNAもまた、本発明の組換え体DNAである。組換え体DNAが、染色体への組込が可能な組換え体DNAである場合は、プロモーターを含有していなくてもよい。
 細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明の組換え体DNAは、プロモーター、リボソーム結合配列、前記2の本発明のDNA、及び転写終結配列により構成された組換え体DNAであることが好ましい。さらに、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
 ここで、リボソーム結合配列であるシャイン-ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンの間は、適当な距離、例えば6~18塩基に調節することが好ましい。また、本発明の組換え体DNAにおいては、本発明のDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
 本発明の組換え体DNAを導入する宿主細胞としてエシェリヒア属に属する微生物を用いる場合、発現ベクターとしては、例えば、pColdI、pSTV28、pUC118(いずれもタカラバイオ社製)、pET21a、pCDF-1b、pRSF-1b(いずれもメルクミリポア社製)、pMAL-c5x(ニューイングランドバイオラブス社製)、pGEX-4T-1、pTrc99A(いずれもGEヘルスケアバイオサイエンス社製)、pTrcHis、pSE280(いずれもサーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-30、pQE-60、pQE80L(いずれもキアゲン社製)、pET-3、pBluescriptII SK(+)、pBluescriptII KS(-)(いずれもアジレント・テクノロジー社製)、pKYP10(日本国特開昭58-110600号公報)、pKYP200(Agric.Biol.Chem.,48,669,1984)、pLSA1(Agric.Biol.Chem.,53,277,1989)、pGEL1(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82,4306(1985)、pTrS30[Escherichia coli JM109/pTrS30(FERM BP-5407)より調製]、pTrS32[Escherichia coli JM109/pTrS32(FERM BP-5408)より調製]、pTK31[APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,2007,Vol.73,No.20,p6378-6385]、pPE167(Appl.Environ.Microbiol.2007,73:6378-6385)、pPAC31(国際公開第1998/12343号)、pUC19(Gene,33,103,1985)、pPA1(日本国特開昭63-233798号公報)等が挙げられる。
 上記の発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、エシェリヒア属に属する微生物の細胞中で機能するものであればいかなるものでもよいが、例えば、trpプロモーター、gapAプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、Escherichia coliやファージ等に由来するプロモーターが挙げられる。また、例えば、プロモーターを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、lacT5プロモーター、lacT7プロモーター、letIプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーターが挙げられる。
 本発明の組換え体DNAを導入する宿主細胞としてコリネ型細菌を用いる場合、発現ベクターとしては、例えば、pCG1(日本国特開昭57-134500号公報)、pCG2(日本国特開昭58-35197号公報)、pCG4(日本国特開昭57-183799号公報)、pCG11(日本国特開昭57-134500号公報)、pCG116、pCE54、pCB101(いずれも日本国特開昭58-105999号公報)、pCE51、pCE52、pCE53(いずれもMolecular and General Genetics,196,175,1984)等が挙げられる。
 上記の発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、コリネ型細菌の細胞中で機能するものであればいかなるものでもよいが、例えば、P54-6プロモーター(Appl.Microbiol.Biotechnol.,53,p674-679,2000)が挙げられる。
 本発明の組換え体DNAを導入する宿主細胞として酵母菌株を用いる場合、発現ベクターとしては、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15などが挙げられる。
 前記の発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、酵母菌株の細胞中で機能するものであればいかなるものでもよいが、例えば、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックポリペプチドプロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーター等のプロモーターが挙げられる。
 本発明の組換え体DNAは、例えば、前記2の方法により調製したDNA断片を制限酵素処理する等して、前記の適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することによって作製できる。
 ここで、本発明のDNAを構成する塩基配列を宿主細胞の発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することにより、該DNAがコードする蛋白質の発現量を向上できる。宿主細胞におけるコドン使用頻度の情報は、公共のデータベースを通じて入手できる。
4.本発明の形質転換体
 本発明の形質転換体は、前記2に記載の本発明のDNAを含有する組換え体DNAで宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体である。本明細書において、「宿主細胞」とは、遺伝子導入による形質転換の対象となる元の細胞をいう。
 本発明の形質転換体としては、具体的には例えば、上記[1]~[3]のいずれか1の蛋白質の活性及びフコース含有糖質の生産性が増強された微生物が挙げられる。例えば上記[A1]~[A3]のいずれか1のDNAを有する組換え体DNAで親株を形質転換して得られる、該親株よりもフコース含有糖質の生産性が増強された微生物が挙げられる。本明細書において、「親株」とは、遺伝子改変及び形質転換等の対象となる元株をいう。
 前記組換え体DNAで親株を形質転換して得られる、該親株よりもフコース含有糖質の生産性が増強された微生物としては、例えば、以下のi)~iii)の微生物が挙げられる。
i)上記[A1]~[A3]のいずれか1のDNAを有する組換え体DNAが、親株において自律複製可能なプラスミドとして導入されることにより、又は親株の染色体中に組み込まれることにより、該DNAの転写量若しくは該DNAがコードする蛋白質の生産量が増大した微生物
ii)上記[2]の変異蛋白質として、α1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質の比活性が増強された蛋白質を生産することにより、フコース含有糖質の生産性が増強された微生物
iii)上記[3]の相同蛋白質として、α1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質の比活性が増強された蛋白質を生産することにより、フコース含有糖質の生産性が増強された微生物
 上記[A1]~[A3]のいずれか1つに記載のDNAの転写量若しくは該DNAがコードする蛋白質の生産量が増大したことを確認する方法としては、例えば、該DNAの転写量をノーザン・ブロッティングにより又は該蛋白質の生産量をウェスタン・ブロッティングにより測定し、親株のそれと比較することにより確認できる。
 α1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する蛋白質の比活性が増強されたことを確認する方法としては、例えば、変異蛋白質をコードするDNAで親株を形質転換して得られる形質転換株から該変異蛋白質を精製し、該蛋白質、GDP-フコース及び受容体糖質を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に生成、蓄積したフコース含有糖質と該蛋白質量から比活性を測定し、同様に測定した、フコース含有糖質生成活性を有し、且つ変異が導入されていない蛋白質の比活性と比較することにより確認できる。
 このような本発明の形質転換体の例としては、実施例において後述するT166/pATY2株及びT166/pATY3株が挙げられる。
 本発明の組換え体DNAを導入する宿主細胞は、原核生物、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等のいずれであってもよいが、好ましくは原核生物又は酵母菌株、より好ましくはエシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、若しくはシュードモナス属等に属する原核生物又はサッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、クルイベロミセス属、トリコスポロン属、シワニオミセス属、ピチア属、若しくはキャンディダ属等に属する酵母菌株であり、最も好ましくはEscherichia coli[例えば、Escherichia coli BL21 codon plus、Escherichia coli XL1-Blue、Escherichia coli XL2-Blue(いずれもアジレント・テクノロジー社製)、Escherichia coli BL21(DE3)pLysS(メルクミリポア社製)、Escherichia coli DH5α、Escherichia coli HST08Premium、Escherichia coli HST02、Escherichia coli HST04 dam/dcm、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coliCJ236、Escherichia coli BMH71-18 mutS、Escherichia coli MV1184、Escherichia coli TH2(いずれもタカラバイオ社製)、Escherichia coli W、Escherichia coli JM101、Escherichia coli W3110、Escherichia coli MG1655、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli W1485、Escherichia coli MP347、Escherichia coli NM522、Escherichia coli ATCC9637、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacterium immariophilum[例えば、Brevibacterium immariophilum ATCC14068]、Brevibacterium saccharolyticum[例えば、Brevibacterium saccharolyticum ATCC14066]、Corynebacterium ammoniagenes、Corynebacterium glutamicum[Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATCC13869]、Corynebacterium acetoacidophilum[Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870]、Microbacterium ammoniaphilum[Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354]若しくはPseudomonas(例えば、Pseudomonas sp.D-0110)等の原核生物、又はSaccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Trichosporon pullulans、Schwanniomyces alluvius、Pichia pastoris若しくはCandida utilis等の酵母菌株が挙げられる。
 宿主細胞としては、例えば、以下の1)および2)が挙げられる。
1)宿主細胞として用いる微生物に、フコース転移酵素の反応基質であるGDP-フコースを生産する能力が人工的に付与又は増強された微生物
2)宿主細胞として用いる微生物に、フコース転移酵素の反応基質である受容体糖質を供給する能力を人工的に付与又は増強された微生物
 以下、各宿主細胞について説明する。
1)宿主細胞として用いる微生物に、フコース転移酵素の反応基質であるGDP-フコースを生産する能力が人工的に付与又は増強された微生物
 宿主細胞としては、好ましくは、α1,3-フコシルトランスフェラーゼの反応基質であるGDP-フコースを生産する能力を人工的に付与又は増強された微生物が挙げられる。宿主細胞として用いる微生物において、GDP-フコースを生成する能力を付与又は増強する方法の具体例としては、各種遺伝子操作による方法(Metabolic Engineering(2017)41:23-38)等、公知の方法が挙げられる。
 GDP-フコースを生産する能力としては、糖からGDP-フコースを生産する能力が挙げられる。宿主細胞として用いる微生物に、糖からGDP-フコースを生産する能力を人工的に付与又は増強する方法としては、例えば、以下の(1a)~(1d)の方法が挙げられる。これらの方法は単独または組み合わせて用いてもよい。
(1a)糖からGDP-フコースを生成する生合成経路を制御する機構の少なくとも1つを緩和又は解除する方法
(1b)糖からGDP-フコースを生成する生合成経路に関与する酵素の少なくとも1つについて発現を増強する方法
(1c)糖からGDP-フコースを生成する生合成経路に関与する酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法
(1d)糖からGDP-フコースを生成する生合成経路から該目的物質以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の少なくとも1つを弱化又は遮断する方法
 糖からGDP-フコースを生成する生合成経路を制御する機構の具体例としては、例えば、当該生合成経路の制御に関わる転写調節因子(例えば、RcsA等)による制御機構等、公知の機構が挙げられる。
 糖からGDP-フコースを生成する生合成経路に関与する酵素の具体例としては、例えば、マンノース-6-リン酸イソメラーゼ、ホスホマンノムターゼ、マンノース-1-リン酸グアニリルトランスフェラーゼ、GDPマンノース-4,6-デヒドラターゼ、GDP-L-フコースシンターゼ等、公知の酵素が挙げられる。
 糖からGDP-フコースを生成する生合成経路から該目的物質以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の具体例としては、例えば、GDP-フコースからコラン酸への代謝経路等、公知の代謝経路が挙げられる。
2)宿主細胞として用いる微生物に、フコース転移酵素の反応基質である受容体糖質を供給する能力を人工的に付与又は増強された微生物
 宿主細胞として用いる微生物に、受容体糖質を供給する能力を人工的に付与又は増強する方法としては、例えば、以下の(2a)~(2g)が挙げられる。これらの方法は単独または組み合わせて用いてもよい。
(2a)糖から受容体糖質を生成する生合成経路を制御する機構の少なくとも1つを緩和又は解除する方法
(2b)糖から受容体糖質を生成する生合成経路に関与する酵素の少なくとも1つについて発現を増強する方法
(2c)糖から受容体糖質を生成する生合成経路に関与する酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法
(2d)受容体糖質を分解する機構の少なくとも1つを緩和又は解除する方法
(2e)受容体糖質の細胞内取り込みに関与する酵素の少なくとも1つについて発現を増強する方法
(2f)受容体糖質の細胞内取り込みに関与する酵素をコードする遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法
(2g)受容体糖質から該目的物質以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の少なくとも1つを弱化又は遮断する方法
 糖から受容体糖質を生成する生合成経路に関与する酵素の具体例としては、例えば、グルコース及びUDP-ガラクトースを基質としてラクトースを生成するラクトースシンターゼ活性を有する酵素等、公知の酵素が挙げられる。受容体糖質を分解する機構の具体例としては、例えば、ラクトースの加水分解を触媒しグルコース及びガラクトースを生成するβ-ガラクトシダーゼ等、公知の酵素が挙げられる。
 受容体糖質の細胞内取り込みに関与する酵素の具体例としては、例えば、ラクトースの細胞内取り込みに関与するラクトースパーミアーゼ等、公知の酵素が挙げられる。上記、受容体糖質を供給する能力を付与又は増強する方法の具体例としては、遺伝子操作によりβ-ガラクトシダーゼの活性を低下又は失活させる方法(Metabolic Engineering,2017,41:23-38)等、公知の方法が挙げられる。
 前記3の組換え体DNAを宿主細胞において自律複製可能なプラスミドとして導入する方法としては、例えば、上述のカルシウムイオンを用いる方法、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、並びに、スフェロプラスト法(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,4889,1984)、酢酸リチウム法(J.Bacteriol.,153,163,1983)等の方法が挙げられる。
 組換え体DNAを宿主細胞の染色体中に組み込む方法としては、例えば、相同組換え法が挙げられる。相同組換え法としては、例えば、導入したい宿主細胞内では自律複製できない薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドDNAと連結して作製できる相同組換え用プラスミドを用いる方法が挙げられる。Escherichia coliで頻用される相同組換えを利用した方法としては、例えば、ラムダファージの相同組換え系を利用して、組換え体DNAを導入する方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97,6641-6645,2000)が挙げられる。
 さらに、組換え体DNAと共に染色体上に組み込まれた枯草菌レバンシュークラーゼによって大腸菌がスクロース感受性となることを利用した選択法や、ストレプトマイシン耐性の変異rpsL遺伝子を有する大腸菌に野生型rpsL遺伝子を組み込むことによって大腸菌がストレプトマイシン感受性となることを利用した選択法[Mol.Microbiol.,55,137(2005)、Biosci.Biotechnol.Biochem.,71,2905(2007)]等を用いて、宿主細胞の染色体DNA上の目的の領域が組換え体DNAに置換された大腸菌を取得できる。
 上記の方法で得られた形質転換体が、前記2に記載の本発明のDNAを有していることは、例えば、該形質転換体が糖からGDP-フコースや受容体糖質を生成する能力を有している宿主細胞を形質転換して得られた形質転換体の場合、該形質転換体を培地に培養し、培養物中に蓄積したフコース含有糖質の生成量を、親株のそれと比較することにより確認できる。または、該培養物から本発明の蛋白質を含有する抽出液を調製し、該抽出液、GDP-フコース及び受容体糖質を水性媒体中に存在せしめ、該水性媒体中に蓄積したフコース含有糖質の生成量を、親株のそれと比較することによっても確認できる。
5.本発明のフコース含有糖質の製造法
 本発明のフコース含有糖質の製造法は、以下の5-1及び5-2に記載の方法である。
5-1.発酵法によるフコース含有糖質の製造法
 本発明のフコース含有糖質の製造法としては、上記4の形質転換体を培地に培養してフコース含有糖質を生成させることを含む、発酵法によるフコース含有糖質の製造法が挙げられる。
 発酵法によるフコース含有糖質の製造法に用いる、本発明の形質転換体としては、糖からGDP-フコースを生成する能力を有する形質転換体であることが好ましい。
 また、発酵によるフコース含有糖質の製造法に用いる本発明の形質転換体として、受容体糖質を生成する能力を有する形質転換体を用いてもよい。
 上記4の形質転換体を培養する方法は、微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
 該形質転換体を培養する培地としては、該形質転換体が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地と合成培地のいずれを用いてもよい。
 炭素源としては、該形質転換体が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプン若しくはデンプン加水分解物等の糖、酢酸若しくはプロピオン酸等の有機酸、又は、グリセロール、エタノール若しくはプロパノール等のアルコール類等が挙げられる。
 窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム又はリン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕、大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物等が挙げられる。
 無機塩としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が挙げられる。フコース含有糖質の前駆体としてラクトース等の受容体糖質を、また、GDP-フコースの前駆体としてGTPやマンノース等を培地に添加してもよい。
 発酵法によるフコース含有糖質の製造法において、用いる形質転換体がGDP-フコースを生成する能力を有していない場合には、培養中に、GDP-フコースを培地に添加する。また、発酵法によるフコース含有糖質の製造法において、用いる形質転換体がGDP-フコースを生成する能力を有していない場合には、培養中に、GDP-フコースを培地に添加する代わりに、糖からGDP-フコースを生成する能力を有する微生物を、本発明の形質転換体と同時に培養することにより、本発明の形質転換体にGDP-フコースを供給してもよい。
 また、GDP-フコースの前駆体であるGTPを供給または増強するために、GTPを生産する能力を有する微生物を同時に培養してもよい。GTPを生産する能力を有する微生物としては、例えば、各種遺伝子操作によりGTPの生合成経路に関与する酵素の発現が増強された微生物(Biotechnol Bioeng,Sep3:2019,2412-2417)等、公知の微生物が挙げられる。
 発酵法によるフコース含有糖質の製造法において、用いる形質転換体がラクトース等の受容体糖質を生成する能力を有していない場合には、培養中に、ラクトース等の受容体糖質を培地に添加する。
 また、発酵法によるフコース含有糖質の製造法において、用いる形質転換体がラクトース等の受容体糖質を生成する能力を有していない場合には、培養中に、ラクトース等の受容体糖質を培地に添加する代わりに、糖からラクトース等の受容体糖質を生成する能力を有する微生物を、本発明の形質転換体と同時に培養することにより、本発明の形質転換体にラクトース等の受容体糖質を供給してもよい。
 培養は、通常、振盪培養又は深部通気撹拌培養等の好気的条件下で行うことが好ましい。培養温度は、通常15~40℃であり、培養時間は、通常5時間~7日間である。培養中の培養液pHは、通常3.0~9.0に保持する。pHの調整は、無機又は有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。
 また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
 上記の培養により、培養物中にフコース含有糖質を生成させてフコース含有糖質を製造することで、例えば、形質転換体または該培養物中に蓄積したフコース含有糖質を採取することにより、フコース含有糖質を得ることができる。
 得られたフコース含有糖質は、糖質イオンクロマトグラフィーなどを用いる通常の方法によって分析できる。上記の培養物又は該培養物の処理物中からのフコース含有糖質の採取は、活性炭やイオン交換樹脂などを用いる通常の方法によって行うことができる。菌体内にフコース含有糖質が蓄積する場合には、例えば菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清から活性炭やイオン交換樹脂等によって、フコース含有糖質を採取できる。
5-2.GDP-フコース及び受容体糖質を基質として用いるフコース含有糖質の製造法
 本発明のフコース含有糖質の製造法としては、また、GDP-フコース及び受容体糖質を前駆体として用いるフコース含有糖質の製造法が挙げられる。具体的には、上記4の形質転換体を培養して得られる培養物又は該培養物の処理物を酵素源として用い、該酵素源、GDP-フコース及び受容体糖質を水性媒体中に存在せしめ、フコース含有糖質を該水性媒体中に生成させ、必要に応じて該水性媒体中に生成したフコース含有糖質を採取することができる。
 GDP-フコース及び受容体糖質は、本発明の形質転換体が有する本発明の蛋白質の基質となるものであればその由来は問わないが、GDP-フコース又は受容体糖質を生産する能力を有する微生物の培養物又は該培養物の処理物をそのまま、あるいは該培養物又は該培養物の処理物から採取したGDP-フコース及び受容体糖質を用いてもよい。
 培養物の処理物としては、培養物の濃縮物、培養物の乾燥物、培養物を遠心分離して得られる菌体、該菌体の乾燥物、該菌体の凍結乾燥物、該菌体の界面活性剤処理物、該菌体の超音波処理物、該菌体の機械的摩砕処理物、該菌体の溶媒処理物、該菌体の酵素処理物、該菌体の蛋白質分画物、該菌体の固定化物あるいは該菌体より抽出して得られる酵素標品などが挙げられる。
 水性媒体としては、例えば、水、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、トリスなどの緩衝液、メタノールやエタノールなどのアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、アセトアミドなどのアミド類などが挙げられる。また、酵素源として用いた微生物の培養液を水性媒体として用いることもできる。
 水性媒体中に生成したフコース含有糖質の分析及び採取方法は5-1と同様である。
[分析例]
 実施例において、3-フコシルラクトースの分析、定量は以下に示す手順で行った。培養後の微生物を含む培養液を遠心分離し、上清を回収した。該上清に含まれる3-フコシルラクトースを糖分析装置ICS-5000(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)にて分析した。
[分析条件]
カラム:CarboPAC PA1
カラム温度:25℃
移動相:(移動相A)水
    (移動相B)500mmol/L 水酸化ナトリウム
    (移動相C)300mmol/L 酢酸ナトリウム
移動相A、移動相B及び移動相C混合比:
   (0~10分)80:20:0
   (10~15分)80:20:0から70:20:10の勾配
   (15~17分)70:20:10から0:20:80の勾配
   (17~25分)0:20:80
   (25~35分)80:20:0
流速:1.0mL/min
検出器:パルスドアンペロメトリー検出器
 以下に発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]3-フコシルラクトースの製造に用いる微生物の造成
(1)遺伝子欠損の際にマーカーとして用いるDNA断片の取得
 表1の「プライマーセット」で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして、表1の「鋳型」に記載されたDNAを鋳型としてPCRを行い、各増幅DNA断片を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
 Bacillus subtilis(バチルス・サチルス)168株のゲノムDNAは定法により調製した。増幅DNA断片のcatは、pHSG396上のcat遺伝子の上流約200bpから下流約50bpを含む。増幅DNA断片のsacBは、Bacillus subtilis 168株のゲノムDNA上のsacB遺伝子の上流約300bpから下流約100bpを含む。
 次に、増幅DNA断片のcatおよびsacBを鋳型とし、配列番号8および11で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いてPCRを行い、cat遺伝子およびsacB遺伝子を含むDNA(以下、cat-sacBという。)断片を得た。
(2)β-ガラクトシダーゼ活性、ラクトースパーミアーゼ活性及びコラン酸生成活性が喪失した大腸菌の造成
 β-ガラクトシダーゼをコードするDNA(以下、lacZ遺伝子という。)、ラクトースパーミアーゼをコードするDNA(以下、lacY遺伝子という。)及びコラン酸生成関連蛋白質をコードするDNA(以下、wcaJ、wzxC、wcaK、wcaL又はwcaM遺伝子という。)を欠損した大腸菌を、以下の方法で造成した。なお、lacZ及びlacY(以下、lacZYという。)、ならびに、wcaJ、wzxC、wcaK、wcaL及びwcaM(以下、wcaJ-wzxC-wcaKLMという。)は大腸菌ゲノム上でそれぞれオペロンを形成している。
 常法により調製したEscherichia coli W3110株のゲノムDNAを鋳型として、表2の「プライマーセット」で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとしてPCRを行い、各DNA断片を増幅した。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 lacZ上流1およびlacZ上流2は、lacZ遺伝子の開始コドンから開始コドンの上流約1000bpまでの領域を含む。lacY下流1およびlacY下流2は、lacY遺伝子の終止コドン下流約50bpから約1000bpの領域を含む。
 lacZ上流1、lacY下流1、およびcat-sacB断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号13および15で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いてPCRを行い、lacZ及びlacY遺伝子周辺領域の配列にcat-sacB断片が挿入された配列からなるDNA(以下、lacZY::cat-sacBという。)断片を得た。
 lacZ上流2およびlacY下流2を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号13および15で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いてPCRを行い、lacZYを含まず、lacZ上流とlacY下流が直接連結した配列からなるDNA(以下、ΔlacZYという。)断片を得た。
 lacZY::cat-sacB断片を、λリコンビナーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドpKD46(Datsenko,K.A.,Warner,B.L.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,Vol.97,6640-6645,2000)を保持するW3110株に、エレクトロポレーション法により導入し、クロラムフェニコール耐性かつシュクロース感受性を示した形質転換体 (lacZY遺伝子がlacZY::cat-sacBに置換した形質転換体)を得た。
 ΔlacZY断片を、当該形質転換体にエレクトロポレーション法により導入し、クロラムフェニコール感受性かつシュクロース耐性を示す形質転換体(lacZY::cat-sacBがΔlacZYに置換した形質転換体)を得た。それらのうちからさらに、アンピシリン感受性を示す形質転換体(pKD46が脱落した形質転換体)を得た。当該形質転換体をW3110ΔlacZYと命名した。
 同様に、W3110株のゲノムDNAを鋳型として、表3の「プライマーセット」で表わされる塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いてPCRを行い、各増幅DNA断片を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 wcaJ上流1およびwcaJ上流2は、wcaJ遺伝子の開始コドンから開始コドンの上流約1000bpまでの領域を含む。wcaM下流1およびwcaM下流2は、wcaM遺伝子の終止コドンから終止コドンの下流約1000bpまでの領域を含む。
 wcaJ上流1、wcaM下流1およびcat-sacB断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号19および21で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いてPCRを行い、wcaJ-wzxC-wcaKLMオペロン周辺領域の配列にcat-sacB断片が挿入された配列からなるDNA(以下、wcaJ-wzxC-wcaKLM::cat-sacBという。)断片を得た。
 wcaJ上流2およびwcaM下流2を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号19および21で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いてPCRを行い、wcaJ-wzxC-wcaKLMを含まず、wcaJ上流とwcaM下流が直接連結した配列からなるDNA(以下、ΔwcaJ-wzxC-wcaKLMという。)断片を得た。
 wcaJ-wzxC-wcaKLM::cat-sacB断片を、上記で造成したW3110ΔlacZY株に、エレクトロポレーション法により導入し、クロラムフェニコール耐性、かつシュクロース感受性を示した形質転換体(wcaJ-wzxC-wcaKLMがwcaJ-wzxC-wcaKLM::cat-sacBに置換した形質転換体)を得た。
 ΔwcaJ-wzxC-wcaKLM断片を、当該形質転換体にエレクトロポレーション法により導入し、クロラムフェニコール感受性かつシュクロース耐性を示す形質転換体(wcaJ-wzxC-wcaKLM::cat-sacBがΔwcaJ-wzxC-wcaKLMに置換した形質転換体)を得た。さらに、アンピシリン感受性を示す形質転換体(pKD46が脱落した形質転換体)を得た。当該形質転換体をT166と命名した。
(3)α1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性(以下、1,3-FucT活性という。)を有する微生物の造成
 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるBacteroides reticulotermitis由来グリコシルトランスフェラーゼ(以下、BrFucTという。)をコードする遺伝子発現用プラスミドを有する大腸菌を、以下の方法で造成した。
 表4の「プライマーセット」で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして、表4の「鋳型」に記載されたDNAを鋳型としてPCRを行い、各増幅DNA断片を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 Escherichia coli W3110株及びBacteroides reticulotermitis JCM10512株のゲノムDNAは常法により調製した。また、配列番号25及び28、配列番号29及び34で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
 rcsA、BrFucT、及びlacY断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号36及び37で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いてPCRを行い、3断片を連結したDNA(以下、rcsA-BrFucT-lacYという。)断片を得た。
 配列番号38及び39で表わされる塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして、プラスミドpPE167(Appl.Environ.Microbiol.2007,73:6378-6385)を鋳型にPCRを行い、約4.4kbのベクター断片を得た。
 このとき、配列番号36及び39、配列番号37及び38で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
 上記で得られたrcsA-BrFucT-lacY断片とベクター断片を、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて連結することにより、BrFucT発現プラスミドpATY2を得た。
 上記、発現プラスミドpATY2を用いて、実施例1(2)で造成したT166株を形質転換することで、BrFucTを有する大腸菌を造成し、T166/pATY2株と命名した。
(4)改変型BrFucTを発現する微生物の造成
 配列番号4で表されるアミノ酸配列からなる改変型BrFucTをコードする遺伝子発現用プラスミドを有する大腸菌を、以下の方法で造成した。
 表5の「プライマーセット」で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして、表5の「鋳型」に記載されたDNAを鋳型としてPCRを行い、各増幅DNA断片を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
 Escherichia coli W3110株、Bacteroides reticulotermitis JCM10512株のゲノムDNAは常法により調製した。配列番号7で表される塩基配列からなるDNAは、Bacteroides fragilis由来α1,3-フコシルトランスフェラーゼ(以下、BfFucTという。)をコードする遺伝子の部分配列を、大腸菌で発現させるためにコドン最適化したDNAである。また、配列番号25及び28、配列番号30及び31、配列番号32及び33、配列番号29及び34で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
 まず、cBrFucT上流、cBrFucT中流及びcBrFucT下流の3断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号28および29で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いてPCRを行い、3断片を連結したDNA(以下、cBrFucT断片という。)断片を得た。
 rcsA、cBrFucT遺伝子、及びlacY断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号36及び37で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いてPCRを行い、3断片を連結したDNA(以下、rcsA-cBrFucT-lacYという。)断片を得た。
 配列番号38及び39で表わされる塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして、プラスミドpPE167(Appl.Environ.Microbiol.2007,73:6378-6385)を鋳型にPCRを行い、約4.4kbのベクター断片を得た。
 このとき、配列番号36及び39、配列番号37及び38で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
 上記で得られたrcsA-cBrFucT-lacY断片とベクター断片を、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて連結することにより、cBrFucT発現プラスミドpATY3を得た。
 上記、発現プラスミドpATY3を用いて、実施例1(2)で造成したT166株を形質転換することで、cBrFucTを有する大腸菌を造成し、T166/pATY3株と命名した。
[比較例]Bacteroides fragilis由来のα1,3-フコシルトランスフェラーゼ(以下、BfFucTという。)の発現が増強された微生物の造成
 表6の「プライマーセット」で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして、表6の「鋳型」に記載されたDNAを鋳型としてPCRを行い、各増幅DNA断片を得た。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 Escherichia coli W3110株、Bacteroides fragilis ATCC25285株のゲノムDNAは常法により調製した。また、配列番号25及び26、配列番号27及び34で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
 rcsA、BfFucT遺伝子及びlacY断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号36及び37で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いてPCRを行い、3断片を連結したDNA(以下、rcsA-BfFucT-lacYという。)断片を得た。
 配列番号38及び39で表わされる塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして、プラスミドpPE167(Appl.Environ.Microbiol.2007,73:6378-6385)を鋳型にPCRを行い、約4.4kbのベクター断片を得た。このとき、配列番号36及び39、配列番号37及び38で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
 上記で得られたrcsA-BfFucT-lacY断片とベクター断片を、In-Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて連結することにより、BfFucT発現プラスミドpATY1を得た。
 上記、発現プラスミドpATY1を用いて、実施例1(2)で造成したT166株を形質転換することで、BfFucTを有する大腸菌を造成し、T166/pATY1株と命名した。
[実施例2]3-フコシルラクトースの製造
 実施例1で得られたT166/pATY1株、T166/pATY2株、及びT166/pATY3株を、LBプレート上で30℃にて24時間培養し、100mg/Lのカナマイシンを含むLB培地4mLが入った大型試験管に植菌して30℃で18時間、振盪培養した。その後、得られた培養液を100mg/Lのカナマイシンを含む生産培地[グルコース30g/L、ラクトース一水和物10g/L、硫酸マグネシウム七水和物2g/L、リン酸水素二カリウム16g/L、リン酸二水素カリウム14g/L、硫酸アンモニウム2g/L、クエン酸1g/L、カザミノ酸5g/L、チアミン塩酸塩10mg/L、硫酸第一鉄七水和物50mg/L、硫酸マンガン五水和物10mg/L(グルコース、ラクトース一水和物及び硫酸マグネシウム七水和物以外については、水酸化ナトリウム水溶液によりpH7.2に調整した後オートクレーブした)(グルコース、ラクトース一水和物及び硫酸マグネシウム七水和物含有水溶液は別途調製した後オートクレーブし、それぞれ冷却後、混合した)]が4mL入った大型試験管に0.2mL植菌し、30℃で28時間振盪培養した。
 培養終了後、培養液を適宜希釈後に遠心分離し、上清に含まれる3-フコシルラクトースを糖分析装置ICS-5000にて分析した。結果を表7に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 表7に示すように、T166/pATY1株に比べ、T166/pATY2株、及びT166/pATY3株は、顕著に高い3-フコシルラクトース生産性を示し、BrFucT及びcBrFucTはいずれも1,3-FucT活性を有することが分かった。
 また、BrFucT及びcBrFucTを用いることで、公知のα1,3-FucTであるBfFucTに比べて3-フコシルラクトースの生産性が大幅に向上することが分かった。
 本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2021年2月8日付けで出願された日本特許出願(特願2021-018483)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
配列番号1:Bacteroides reticulotermitis由来brfucTの塩基配列
配列番号2:Bacteroides reticulotermitis由来BrfucTのアミノ酸配列
配列番号3:Bacteroides reticuloterimis及びB.fragilis由来cbrfucTの塩基配列
配列番号4:Bacteroides reticuloterimis及びB.fragilis由来cBrfucTのアミノ酸配列
配列番号5:Bacteroides fragilis由来bffucTの塩基配列
配列番号6:Bacteroides fragilis由来BffucTのアミノ酸配列
配列番号7:コドン最適化型BfFucTの部分塩基配列
配列番号8、9:cat増幅用プライマーの塩基配列
配列番号10、11:sacB増幅用プライマーの塩基配列
配列番号12、13:lacZ上流1増幅用プライマーの塩基配列
配列番号14、15:lacY下流1増幅用プライマーの塩基配列
配列番号16:lacZ上流2増幅用プライマーの塩基配列
配列番号17:lacY下流2増幅用プライマーの塩基配列
配列番号18、19:wcaJ上流1増幅用プライマーの塩基配列
配列番号20、21:wcaM下流1増幅用プライマーの塩基配列
配列番号22:wcaJ上流2増幅用プライマーの塩基配列
配列番号23:wcaM下流2増幅用プライマーの塩基配列
配列番号24、25:rcsA増幅用プライマーの塩基配列
配列番号26、27:bffucT増幅用プライマーの塩基配列
配列番号28、29:brfucT増幅用プライマーの塩基配列
配列番号30:cBrFucT上流増幅用プライマーの塩基配列
配列番号31、32:cBrFucT中流増幅用プライマーの塩基配列
配列番号33:cBrFucT下流増幅用プライマーの塩基配列
配列番号34、35:lacY増幅用プライマーの塩基配列
配列番号36、37:rcsA-cBrFucT-lacY増幅用プライマーの塩基配列
配列番号38、39:pPE167増幅用プライマーの塩基配列

Claims (9)

  1.  下記[1]~[3]のいずれか1の蛋白質。
    [1]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質。
    [2]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列において、1~20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する変異蛋白質。
    [3]配列番号2又は4で表されるアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつα1,3-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する相同蛋白質。
  2.  配列番号1又は3で表される塩基配列又はその相同配列からなり、かつ請求項1に記載の[1]~[3]のいずれか1の蛋白質をコードするDNA。
  3.  請求項2に記載のDNAを含有する組換え体DNA。
  4.  請求項3に記載の組換え体DNAで宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
  5.  請求項1に記載の[1]~[3]のいずれか1の蛋白質の活性及びフコース含有糖質の生産性が増強された微生物である、請求項4に記載の形質転換体。
  6.  前記微生物が大腸菌である、請求項5に記載の形質転換体。
  7.  請求項4~6のいずれか1項に記載の形質転換体を培地に培養してフコース含有糖質を生成させることを含む、フコース含有糖質の製造法。
  8.  請求項4~6のいずれか1項に記載の形質転換体を培地に培養して培養物又は該培養物の処理物を得ること、
     該培養物又は該培養物の処理物を酵素源として用い、該酵素源、GDP-フコース及び受容体糖質を水性媒体中に存在せしめ、フコース含有糖質を該水性媒体中に生成させること、を含む、フコース含有糖質の製造法。
  9.  前記フコース含有糖質が3-フコシルラクトースである、請求項7又は8に記載の製造法。
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