JP2021019518A - ビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造法 - Google Patents

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敏彦 森田
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Abstract

【課題】従来の製造法に比べて生産性が高く効率的なビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造方法の提供。【解決手段】L−トリプトファンオキシダーゼ活性を有する蛋白質、イミノフェニルピルビン酸ダイマーシンターゼ活性を有する蛋白質、FAD依存モノオキシゲナーゼ活性を有する蛋白質、ビオラセイン生合成酵素活性を有する蛋白質、及びトリプトファンヒドロキシラーゼ活性を有する蛋白質の活性が増強した微生物を用いることにより、低温での培養を必要とせずに、効率的にビオラセイン又はデオキシビオラセインを製造することができる。【選択図】なし

Description

本発明は、効率的なビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造法に関する。
ビオラセイン(Violacein)は、微生物により産生される二次代謝産物で、青紫色の天然色素である(特許文献1)。近年は、抗腫瘍活性、抗バクテリア活性、抗菌活性、抗ウイルス活性など、その機能性が注目されている。またビオラセインの構造類縁体であるデオキシビオラセインは、ビオラセインよりも優れた染色作用及び抗細菌活性を有していることが開示されている(特許文献1)。
ビオラセインの生合成機構は、ビオラセインを生産する微生物として知られるChromobacterium violaceumを用いて詳細な検討がなされており、L−トリプトファンを出発基質として、VioA、VioB、VioC、VioD、VioEによる5段階の酵素反応を経てビオラセインが生成されることが開示されている(非特許文献1)。またデオキシビオラセインは、該生合成経路の副生産物として生成される。
ビオラセインの製造法としては、Chromobacterium violaceum又はJanthionobacterium lividumを培養し、該培養液又は培養菌体からビオラセインを抽出する方法(特許文献2、非特許文献2)、Duganella属由来のビオラセイン生合成酵素遺伝子を大腸菌(Escherichia coli)、Citrobacter freundii、又はCorynebacteriumglutamicumに導入してビオラセインを生成させる方法(非特許文献3、4)などが開示されている。非特許文献5では、Dunganella sp.のビオラセイン生合成酵素遺伝子を、L−トリプトファン生産能が高い大腸菌に導入することで、安価なグルコースを原料とするビオラセインの直接発酵が可能であることが知られている。また、デオキシビオラセインの製造法としては、ビオラセイン生合成酵素遺伝子のうちVioDをノックアウトする方法が開示されている(特許文献1)。
上記のように、ビオラセイン及びデオキシビオラセインの製造法は複数知られている。しかし、特許文献2など、ビオラセイン生産能を元来有する微生物を用いたビオラセインの製造法では、該微生物の培養時間が長いことが課題となっている。また、大腸菌などにビオラセイン合成酵素遺伝子を導入した組換え微生物を用いる製造法では、宿主菌体内における該導入酵素の安定性が悪いために、低温条件下で培養する必要がある(特許文献1)など、製造面で課題がある。この課題に対し、非特許文献4、5では、IPTG誘導下で温度シフトを利用したビオラセインの製造法が開示されているが、工業化に向けては課題が多い。
グラム陰性のプロテオバクテリアの一種であるIodobacter fluviatilisは、ビオラセインを生産する微生物として単離されたが(非特許文献6)、ビオラセイン製造における該微生物の有用性については明らかになっていない。
特許第5632370号公報 特開平6−253864号公報
Biochemistry(2006)45(51):15444−15457. Front Microbiol(2018)9:1495. Appl Microbiol Biotechnol(2010)86(4):1077−1088. Microbial Cell Factories(2016)15(1):148. Microbial Cell Factories(2015)14:8. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology(1989)39(4):450−456.
本発明の目的は、従来の製造法に比べて生産性が高く効率的なビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造方法を提供することにある。
本発明は、以下の1〜4に関する。
1.親株よりも以下の(1)〜(5)に記載の蛋白質の活性が増強した微生物。
(1)配列番号2に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、L−トリプトファンオキシダーゼ(VioA)活性を有する蛋白質
(2)配列番号4に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、イミノフェニルピルビン酸ダイマーシンターゼ(VioB)活性を有する蛋白質
(3)配列番号6に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、FAD依存モノオキシゲナーゼ(VioC)活性を有する蛋白質
(4)配列番号10に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、ビオラセイン生合成酵素(VioE)活性を有する蛋白質
(5)配列番号8に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、トリプトファンヒドロキシラーゼ(VioD)活性を有する蛋白質
2.親株よりも上記1の(1)〜(4)に記載の蛋白質の活性が増強した微生物。
3.微生物が、大腸菌である、上記1又は2に記載の微生物。
4.上記1〜3のいずれか1つに記載の微生物を培地に培養し、培養物中にビオラセイン又はデオキシビオラセインを生成、蓄積させ、該培養物中からビオラセイン又はデオキシビオラセインを採取することを特徴とする、ビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造法。
本発明によれば、低温での培養を必要とせず、かつ効率的なビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造方法が提供される。
<本発明の微生物1>
本発明の微生物は、親株よりも以下の(1)〜(5)に記載の蛋白質の活性が増強した微生物である。
(1)配列番号2に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、L−トリプトファンオキシダーゼ活性(以下、VioA活性という)を有する蛋白質。
(2)配列番号4に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、イミノフェニルピルビン酸ダイマーシンターゼ活性(以下、VioB活性という)を有する蛋白質。
(3)配列番号6に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、FAD依存モノオキシゲナーゼ活性(以下、VioC活性という)を有する蛋白質。
(4)配列番号10に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、ビオラセイン生合成酵素活性(以下、VioE活性という)を有する蛋白質。
(5)配列番号8に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、トリプトファンヒドロキシラーゼ活性(以下、VioD活性という)を有する蛋白質。
上記(1)に記載の蛋白質としては、以下の[1]〜[3]のいずれか1つに記載のVioA活性を有する蛋白質が挙げられる。
[1]配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
[2]配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1〜20個、好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、VioA活性を有する変異蛋白質。
[3]配列番号2で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、VioA活性を有する相同蛋白質。
上記(2)に記載の蛋白質としては、以下の[4]〜[6]のいずれか1つに記載のVioB活性を有する蛋白質が挙げられる。
[4]配列番号4で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
[5]配列番号4で表されるアミノ酸配列において、1〜20個、好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、VioB活性を有する変異蛋白質。
[6]配列番号4で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、VioB活性を有する相同蛋白質。
上記(3)に記載の蛋白質としては、以下の[7]〜[9]のいずれか1つに記載のVioC活性を有する蛋白質が挙げられる。
[7]配列番号6で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
[8]配列番号6で表されるアミノ酸配列において、1〜20個、好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、VioC活性を有する変異蛋白質。
[9]配列番号6で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、VioC活性を有する相同蛋白質。
上記(4)に記載の蛋白質としては、以下の[10]〜[12]のいずれか1つに記載のVioE活性を有する蛋白質が挙げられる。
[10]配列番号10で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
[11]配列番号10で表されるアミノ酸配列において、1〜20個、好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、VioE活性を有する変異蛋白質。
[12]配列番号10で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、VioE活性を有する相同蛋白質。
上記(5)に記載の蛋白質としては、以下の[13]〜[15]のいずれか1つに記載のVioD活性を有する蛋白質が挙げられる。
[13]配列番号8で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質。
[14]配列番号8で表されるアミノ酸配列において、1〜20個、好ましくは1〜10個、最も好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、VioD活性を有する変異蛋白質。
[15]配列番号8で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、VioD活性を有する相同蛋白質。
変異蛋白質とは、元となる蛋白質中のアミノ酸残基を人為的に欠如若しくは置換、又は該蛋白質中に人為的にアミノ酸残基を挿入若しくは付加して得られる蛋白質をいう。
相同蛋白質とは、自然界に存在する生物が有する蛋白質であって、進化上の起源が同一の蛋白質に由来する一群の蛋白質をいう。相同蛋白質は、互いに構造及び機能が類似している。
変異蛋白質において、アミノ酸が欠如、置換、挿入又は付加されたとは、同一配列中の任意の位置において、1〜20個のアミノ酸が欠如、置換、挿入又は付加されていてもよい。
欠如、置換、挿入又は付加されるアミノ酸は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−アルギニン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システイン等が挙げられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro.Nat.Acad.Sci.USA,90,5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol.,183,63(1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J.Mol.Biol.,215,403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNを使用して塩基配列を解析する場合には、パラメータは、例えばScore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXを使用してアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGap ped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメータを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。
上記の変異蛋白質又は相同蛋白質がVioA、VioB、VioC、VioD、又はVioE活性を有していることは、例えば以下の方法により確認することができる。例えば、変異蛋白質又は相同蛋白質がVioA活性を有していることを確認するためには、まず、後述の方法により、上記活性を確認しようとする変異蛋白質又は相同蛋白質、並びに[4]、[7]、[10]及び[13]に記載の蛋白質をコードするDNAを有する組換え体DNAを作製する。次に、該組換え体DNAで、ビオラセイン又はデオキシビオラセイン生成活性を有さない微生物、例えばEscherichia coli W3110株を形質転換して得られる微生物を培養し、得られる培養物から該蛋白質を含む細胞抽出液を調製する。得られた画分を基質であるL−トリプトファンを含む水溶液と接触させ、最後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて反応液中のビオラセイン又はデオキシビオラセインを検出することにより、変異蛋白質又は相同蛋白質が、VioA活性を有することを確認することができる。以下、VioB、VioC、VioD、又はVioE活性についても同様の方法で確認することができる。
親株とは、遺伝子改変及び形質転換等の対象となる元株のことをいう。遺伝子導入による形質転換の対象となる元株は宿主株ともいう。
親株は、いずれの微生物であってもよいが、好ましくは、原核生物又は酵母菌株を、より好ましくは、エシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、若しくはシュードモナス属等に属する原核生物、又はサッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、クルイベロミセス属、トリコスポロン属、シワニオミセス属、ピチア属、若しくはキャンディダ属等に属する酵母菌株を、最も好ましくは、Escherichia coli BL21 codon plus、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue(いずれもアジレント・テクノロジー社製)、Escherichia coli BL21(DE3)pLysS(メルクミリポア社製)、Escherichia coli BL21、Escherichia coli DH5α、Escherichia coli HST08 Premium、Escherichia coli HST02、Escherichia coli HST04 dam−/dcm−、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coli CJ236、Escherichia coli BMH71−18 mutS、Escherichia coli MV1184、Escherichia coli TH2(いずれもタカラバイオ社製)、Escherichia coli W(ATCC9637)、Escherichia coli JM101、Escherichia coli W3110、Escherichia coli MG1655、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli W1485、Escherichia coli MP347、Escherichia coli NM522、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticum ATCC14066、Corynebacterium ammoniagenes、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATCC13869、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354、若しくはPseudomonas sp.D−0110等の原核生物、又はSaccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Trichosporon pullulans、Schwanniomyces alluvius、Pichia pastoris、若しくはCandida utilis等の酵母菌株を挙げることができる。
また親株としては、好ましくは、糖からL−トリプトファンを生成する能力を人工的に付与又は強化した育種株を用いることができる。
親株として用いる微生物に、糖からL−トリプトファンを生成する能力を人工的に付与又は強化する方法としては、(a)糖からL−トリプトファンを生成する生合成経路を制御する機構の少なくとも1つを緩和又は解除する方法、(b)糖からL−トリプトファンを生成する生合成経路に関与する酵素の少なくとも1つを発現強化する方法、(c)糖からL−トリプトファンを生成する生合成経路に関与する酵素遺伝子の少なくとも1つのコピー数を増加させる方法、(d)糖からL−トリプトファンを生成する生合成経路から該目的物質以外の代謝産物へ分岐する代謝経路の少なくとも1つを弱化又は遮断する方法、及び(e)野生株に比べ、L−トリプトファンのアナログに対する耐性度が高い細胞株を選択する方法、などを挙げることができ、上記公知の方法は単独または組み合わせて用いることができる。
上記、L−トリプトファンを生成する能力を付与又は強化する方法の具体例としては、ランダム変異導入による方法(Appl Microbiol Biotechnol 39:471−476,1993)や各種遺伝子操作による方法(J Indust Microbiol Biotechnol 46:55−65,2019)等、公知の方法を挙げることができる。
糖からL−トリプトファンを生成する能力が付与又は強化された微生物であることは、育種株と親株をそれぞれ培地に培養し、L−トリプトファンの生成量を比較することにより確認することができる。
親株よりも上記(1)〜(5)に記載の蛋白質の活性が増強した微生物としては、以下の(6)〜(10)に記載のDNAを有する組換え体DNAで親株を形質転換して得られる、該親株よりもビオラセイン又はデオキシビオラセイン生成活性が増強された微生物を挙げることができる。
(6)以下の[16]〜[19]のいずれか1つに記載のVioA活性を有する蛋白質をコードするDNA。
[16]上記(1)に記載の蛋白質をコードするDNA
[17]配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
[18]配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、VioA活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
[19]配列番号1で表される塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、VioA活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
(7)以下の[20]〜[23]のいずれか1つに記載のVioB活性を有する蛋白質をコードするDNA。
[20]上記(2)に記載の蛋白質をコードするDNA
[21]配列番号3で表される塩基配列からなるDNA
[22]配列番号3で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、VioB活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
[23]配列番号3で表される塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、VioB活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
(8)以下の[24]〜[27]のいずれか1つに記載のVioC活性を有する蛋白質をコードするDNA。
[24]上記(3)に記載の蛋白質をコードするDNA
[25]配列番号5で表される塩基配列からなるDNA
[26]配列番号5で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、VioC活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
[27]配列番号5で表される塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、VioC活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
(9)以下の[28]〜[31]のいずれか1つに記載のVioE活性を有する蛋白質をコードするDNA。
[28]上記(4)に記載の蛋白質をコードするDNA
[29]配列番号9で表される塩基配列からなるDNA
[30]配列番号9で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、VioE活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
[31]配列番号9で表される塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、VioE活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
(10)以下の[32]〜[35]のいずれか1つに記載のVioD活性を有する蛋白質をコードするDNA。
[32]上記(5)に記載の蛋白質をコードするDNA
[33]配列番号7で表される塩基配列からなるDNA
[34]配列番号7で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、VioD活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
[35]配列番号7で表される塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、VioD活性を有する相同蛋白質をコードするDNA
上記において、ハイブリダイズするとは、特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部にDNAがハイブリダイズする工程である。したがって、該特定の塩基配列を有するDNA又は該DNAの一部にハイブリダイズするDNAの塩基配列は、ノーザン又はサザンブロット解析のプローブとして有用であるか、又はPCR解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できる長さのDNAであってもよい。
プローブとして用いるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAを挙げることができ、プライマーとして用いられるDNAとしては、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAを挙げることができる。
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えばモレキュラー・クローニング第4版(Cold Spring Harbor Laboratory Press(2012))、Methods for General and Molecular Bacteriology(ASM Press(1994))、Immunology methods manual(Academic press(1997))の他、多数の他の標準的な教科書に従ってハイブリダイゼーションの条件を決定し、実験を行うことができる。
また、市販のハイブリダイゼーションキットに付属した説明書に従うことによっても、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを取得することができる。市販のハイブリダイゼーションキットとしては、例えばランダムプライム法によりプローブを作製し、ストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションを行うランダムプライムドDNAラベリングキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を挙げることができる。
上記のストリンジェントな条件とは、例えばDNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、及び20μg/Lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件を挙げることができる。
上記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加又は変更することにより設定することもできる。上記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えば上記したBLASTやFASTA等のプログラムを用いて、上記パラメータに基づいて計算した時に、配列番号1、3、5、7、又は9で表される塩基配列と少なくとも95%以上、好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAを挙げることができる。
上記(6)〜(10)に記載のDNAを有する組換え体DNAとは、例えば、該DNAが親株において自律複製可能なDNAであって、上記(6)〜(10)のいずれか1つ以上に記載のDNAを転写できる位置にプロモーターを含有している発現ベクターに、上記(6)〜(10)のいずれか1つ以上に記載のDNAが組み込まれている組換え体DNAをいう。
親株において染色体中への組込が可能なDNAであって、上記(6)〜(10)のいずれか1つ以上に記載の組換え体DNAもまた、上記(6)〜(10)に記載のDNAを有する組換え体DNAである。
組換え体DNAが、親株の染色体DNAへの組込が可能なDNAである場合は、プロモーターを含有していなくてもよい。
細菌等の原核生物を親株として用いる場合は、親株において自律複製可能な組換え体DNAは、プロモーター、リボソーム結合配列、上記(6)〜(10)のいずれか1つ以上に記載のDNA、及び転写終結配列により構成された組換え体DNAであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節した組換え体DNAを用いることが好ましい。
親株にて自律複製可能な組換え体DNAにおいては、該DNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
親株にエシェリヒア属に属する微生物を用いる場合は、発現ベクターとしては、例えば、pColdI、pSTV28、pSTV29、pUC118(いずれもタカラバイオ社製)、pMW119(ニッポンジーン社製)、pET21a、pCOLADuet−1、pCDFDuet−1、pCDF−1b、pRSF−1b(いずれもメルクミリポア社製)、pMAL−c5x(ニューイングランドバイオラブス社製)、pGEX−4T−1、pTrc99A (いずれもジーイーヘルスケアバイオサイエンス社製)、pTrcHis、pSE280(いずれもサーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)、pGEMEX−1(プロメガ社製)、pQE−30、pQE80L(いずれもキアゲン社製)、pET−3、pBluescriptII SK(+)、pBluescriptII KS(−)(いずれもアジレント・テクノロジー社製)、pKYP10(特開昭58−110600号公報)、pKYP200[Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)]、pLSA1[Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)]、pGEL1[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,82,4306(1985)]、pTrS30 [Escherichia coli JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調整]、pTrS32[Escherichia coli JM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調整]、pTK31[APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY,2007,Vol.73,No.20,p6378−6385]、pPAC31(WO98/12343)、pUC19[Gene,33,103(1985)]、pPA1(特開昭63−233798号公報)等を挙げることができる。
上記発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、エシェリヒア属に属する微生物の細胞中で機能するものであればいかなるものでもよいが、例えば、trpプロモーターやilvプロモーター等のアミノ酸生合成に関与する遺伝子のプロモーター、uspAプロモーター、lacプロモーター、Pプロモーター、Pプロモーター、PSEプロモーター等のEscherichia coliやファージ等に由来するプロモーターを用いることができる。また、trpプロモーターを2つ直列させたプロモーター、tacプロモーター、trcプロモーター、lacT7プロモーター、letIプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーターを用いることもできる。
親株にコリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、又はミクロバクテリウム属に属する微生物等のコリネ型細菌を用いる場合は、例えば、pCG1(特開昭57−134500号公報)、pCG2(特開昭58−35197号公報)、pCG4(特開昭57−183799号公報)、pCG11(特開昭57−134500号公報)、pCG116、pCE54、pCB101(いずれも特開昭58−105999号公報)、pCE51、pCE52、pCE53[いずれもMolecular and General Genetics,196,175(1984)]等を挙げることがきる。
上記発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、又はミクロバクテリウム属に属する微生物等のコリネ型細菌の細胞中で機能するものであればいかなるものでもよいが、例えば、P54−6プロモーター[Appl.Microbiol.Biotechnol.,53,p674−679(2000)]を用いることができる。
親株に酵母菌株を用いる場合には、発現ベクターとしては、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15などを挙げることができる。
上記発現ベクターを用いる場合のプロモーターとしては、酵母菌株の細胞中で機能するものであればいかなるものでもよいが、例えば、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックポリペプチドプロモーター、MFα1プロモーター、CUP1プロモーター等のプロモーターを挙げることができる。
親株を該組換え体DNAで形質転換して得られる微生物とは、該組換え体DNAが、親株において自律複製可能なプラスミドとして導入されることにより、又は親株の染色体中に組み込まれることにより、該DNAが転写され、該DNAがコードする蛋白質を生産するようになった微生物をいう。
上記(6)〜(10)に記載のDNAが転写されること、及び該DNAがコードする蛋白質を生産するようになったことを確認する方法としては、例えば該DNAの転写量をノーザン・ブロッティングにより、又は該タンパク質の生産量をウエスタン・ブロッティングにより測定し、親株のそれと比較することにより確認することができる。
親株を、上記(6)〜(10)に記載のDNAを有する組換え体DNAで形質転換して得られる微生物は、以下の方法で造成することができる。
上記(6)〜(10)のDNAのうち、上記[1]、[4]、[7]、[10]、又は[13]に記載の蛋白質をコードするDNA、及び上記[17]、[21]、[25]、[29]、又は[33]のDNAは、例えば、配列番号1、3、5、9、又は7で表される塩基配列に基づき設計することができるプローブDNAを用いた、微生物、好ましくはIodobacter属、より好ましくはIodobacter fluviatilis NBRC102505株の染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション、又は該塩基配列に基づき設計することができるプライマーDNAを用いた上記微生物の染色体DNAを鋳型としたPCR[PCR Protocols,Academic Press(1990)]により取得することができる。
Iodobacter fluviatilis NBRC102505株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター(NITE Biological Resource Center)又はアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手することができる。
上記(6)〜(10)のDNAのうち、上記[2]、[5]、[8]、[11]、又は[14]に記載の変異蛋白質をコードするDNAは、例えば、配列番号1、3、5、9、又は7で表わされる塩基配列からなるDNAを鋳型としてエラープローンPCR等に供することにより取得することができる。
また、目的の変異(欠失、置換、挿入又は付加)が挿入されるように設計した塩基配列をそれぞれの5’端に持つ1組のPCRプライマーを用いたPCR[Gene,77,51(1989)]によっても、上記[2]、[5]、[8]、[11]、又は[14]に記載の変異蛋白質をコードするDNAを取得することができる。
すなわち、まず該DNAの5’端に対応するセンスプライマーと、5’端に変異の配列と相補的な配列を有する、変異導入部位の直前(5’側)の配列に対応するアンチセンスプライマーで該DNAを鋳型にしてPCRを行い、該DNAの5’端から変異導入部位までの断片A(3’側に変異が導入されている)を増幅する。次いで、5’端に変異の配列を有する、変異導入部位の直後(3’側)の配列に対応するセンスプライマーと、該DNAの3’端に対応するアンチセンスプライマーで該DNAを鋳型にしてPCRを行い、5’端に変異が導入された該DNAの変異導入部位から3’端までの断片Bを増幅する。これらの増幅断片同士を精製後、混合して鋳型やプライマーを加えずにPCRを行うと、増幅断片Aのセンス鎖と増幅断片Bのアンチセンス鎖は変異導入部位が共通しているのでハイブリダイズし、プライマー兼鋳型としてPCRの反応が進行し、変異が導入されたDNAが増幅する。
上記(6)〜(10)のDNAのうち、上記[3]、[6]、[9]、[12]、又は[15]の相同蛋白質をコードするDNA、上記[18]、[22]、[26]、[30]、又は[34]のDNA、及び、[19]、[23]、[27]、[31]、又は[35]のDNAは、例えば、各種の遺伝子配列データベースに対して配列番号1、3、5、9、又は7で表される塩基配列と95%以上、好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列を検索し、又は、各種の蛋白質配列データベースに対して配列番号2、4、6、10、又は8で表されるアミノ酸配列と95%以上、好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列を検索し、該検索によって得られた塩基配列又はアミノ酸配列に基づいて設計することができるプローブDNAまたはプライマーDNA、及び当該DNAを有する微生物を用いて、上記のDNAを取得する方法と同様のサザンハイブリダイゼーション又はPCRを用いた方法等によって取得することができる。
取得した上記(6)〜(10)に記載のDNAは、そのまま、あるいは適当な制限酵素等で切断し、常法によりベクターに組み込み、得られた組換え体DNAを宿主細胞に導入した後、通常用いられる塩基配列解析方法、例えばジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,74,5463(1977)]、又はアプライド・バイオシステムズ3500ジェネティックアナライザやアプライド・バイオシステムズ3730DNAアナライザ(いずれもサーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)等の塩基配列分析装置を用いて分析することにより、該DNAの塩基配列を決定することができる。
DNAの塩基配列を決定する際に用いることができる宿主細胞としては、例えば、Escherichia coli DH5α、Escherichia coli HST08Premium、Escherichia coli HST02、Escherichia coli HST04 dam−/dcm−、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coliCJ236、Escherichia coli BMH71−18 mutS、Escherichia coli MV1184、Escherichia coli TH2(いずれもタカラバイオ社製)、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue(いずれもアジレント・テクノロジー社製)、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli W1485、Escherichia coli W3110、Escherichia coli MP347、Escherichia coli NM522等を挙げることができる
上記のベクターとしては、pBluescriptII KS(+)、pPCR−Script Amp SK(+)(いずれもアジレント・テクノロジー社製)、pT7Blue(メルクミリポア社製)、pCRII(サーモフィッシャー・サイエンティフィック社製)、pCR−TRAP(ジーンハンター社製)、及びpDIRECT[Nucleic Acids Res.,18,6069(1990)]等を挙げることができる。
組換え体DNAの導入方法としては、宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69,2110(1972)]、プロトプラスト法(特開昭63−248394号公報)、エレクトロポレーション法[Nucleic Acids Res.,16,6127(1988)]等を挙げることができる。
塩基配列を決定した結果、取得されたDNAが部分長であった場合は、該部分長DNAをプローブに用いた染色体DNAライブラリーに対するサザンハイブリダイゼーション法等により、全長DNAを取得することができる。
更に、決定されたDNAの塩基配列に基づいて、パーセプティブ・バイオシステムズ社製8905型DNA合成装置等を用いて化学合成することにより、目的とするDNAを調製することもできる。
ここで、該DNAの塩基配列を宿主での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することにより、該DNAがコードする蛋白質の発現量を向上させることもできる。本発明の製造方法に用いられる親株におけるコドン使用頻度の情報は、公共のデータベースを通じて入手することができる。
上記のようにして調製したDNA断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、本発明の製造方法に用いられる微生物が有する組換え体DNAを作製することができる。
このような組換え体DNAの例としては、実施例において後述するpSTV29_PuspA_IfVioA、pMW119_PuspA_IfVioB、pCOLADuet−1_PuspA_IfVioC、及びpCDFDuet_PuspA_IfVioD_IfVioEを挙げることができる。
組換え体DNAを親株において自律複製可能なプラスミドとして導入させる方法としては、例えば、上記のカルシウムイオンを用いる方法、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法等の方法を挙げることができる。
上記の方法で造成した微生物が、親株よりもVioA、VioB、VioC、VioD、及びVioE活性を有する蛋白質の活性が増強された微生物であることは、例えば、親株と造成した微生物をそれぞれ培地に培養し、ビオラセイン又はデオキシビオラセインの生成量を比較することにより、確認することができる。
このような微生物の例としては、実施例において後述するW3110ΔtnaA_IfVioABCDE株を挙げることができる。
<本発明の微生物2>
親株よりも上記(1)〜(4)に記載の蛋白質の活性が増強した微生物もまた、本発明の微生物である。
親株よりも上記(1)〜(4)に記載の蛋白質の活性が増強した微生物及び該微生物の造成方法については、上記と同様である。
上記の変異蛋白質又は相同蛋白質がVioA、VioB、VioC、又はVioE活性を有していることを確認する方法については、上述の通りである。
親株よりも上記(1)〜(4)に記載の蛋白質の活性が増強した微生物としては、上記(6)〜(9)に記載のDNAを有する組換え体DNAで親株を形質転換して得られる、該親株よりもデオキシビオラセイン生成活性が増強された微生物を挙げることができる。
上記の方法で造成した微生物が、親株よりもVioA、VioB、VioC、及びVioE活性が増強された微生物であることは、例えば、親株と造成した微生物をそれぞれ培地に培養し、デオキシビオラセインの生成量を比較することにより、確認することができる。
<本発明のビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造法>
本発明のビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造法としては、上述の本発明の微生物を培地に培養し、培養物中にビオラセイン又はデオキシビオラセインを生成、蓄積させ、該培養物中からビオラセイン又はデオキシビオラセインを採取することを特徴とする、ビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造法を挙げることができる。
上述の微生物のうち、上記(1)〜(5)に記載の蛋白質の活性が増強した微生物を用いることで、ビオラセイン又はデオキシビオラセイン、あるいはその両方を製造することができる。また、上記(1)〜(4)に記載の蛋白質の活性が増強した微生物を用いることで、デオキシビオラセインのみを選択的に製造することができる。
上述の、本発明の微生物を培養する方法は、微生物の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
該微生物を培養する培地としては、該微生物が資化し得る炭素源、窒素原、無機塩類等を含有し、該微生物の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地と合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、該微生物が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプン若しくはデンプン加水分解物等の糖、酢酸若しくはプロピオン酸等の有機酸、又は、グリセロール、エタノール若しくはプロパノール等のアルコール類等を用いることができる。
窒素原としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム又はリン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕、大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物等を用いることができる。
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を使用することができる。
培養は、通常、振盪培養又は深部通気撹拌培養等の好気的条件下で行うことが好ましい。培養温度は、通常15〜40℃であり、培養時間は、通常5時間〜7日間である。培養中の培養液pHは、通常3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機又は有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行う。
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
上記の培養により、培養物中にビオラセイン又はデオキシビオラセインを生成、蓄積させ、該培養物中からビオラセイン又はデオキシビオラセインを採取することにより、ビオラセイン又はデオキシビオラセインを製造することができる。
培養物中に生成、蓄積したビオラセイン又はデオキシビオラセインは、ODSカラムを用いたHPLC、又は分光光度計[Appl Microbiol Biotechnol.,94(6):1521−1532(2012)]を用いて分析することができる。
上記の培養物中からのビオラセイン又はデオキシビオラセインの採取は、ODSシリカゲル充填剤などを用いる通常の方法によって行うことができる。微生物菌体内にビオラセイン又はデオキシビオラセインが蓄積する場合には、例えば微生物菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって微生物菌体を除去して得られる上清からODSシリカゲル充填剤等によって、ビオラセイン又はデオキシビオラセインを採取することができる。
ビオラセイン又はデオキシビオラセインを採取する際には、微生物菌体からの抽出用溶媒として、エタノールやメタノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類等を使用することができる。
微生物菌体からのビオラセイン又はデオキシビオラセインの採取は、培養物中にビオラセイン及びデオキシビオラセインの両方が蓄積している場合には、ビオラセイン及びデオキシビオラセインを混合物として採取してもよい。
ビオラセイン又はデオキシビオラセインを微生物菌体から抽出する際の、抽出用溶媒の濃度、量、抽出時間、温度等の条件は、微生物菌体から物質を抽出する通常の方法によって適宜設定することができる。
[分析例]
実施例において、ビオラセイン又はデオキシビオラセインの分析、定量は以下に示す手順で行った。
培養後の微生物を含む培養液1mLを13000回転で3分間遠心分離して上清を除去し、残りの菌体に0.1mmのガラスビーズと1mLのエタノールを加えた。該菌体をマルチビーズショッカー(安井機械社製)にて破砕し、菌体内に蓄積されたビオラセインをエタノールに溶解させた。該サンプルに含まれるビオラセイン又はデオキシビオラセインをHPLC(島津製作所社製)にて分析した。
[分析条件]
カラム:Develosil ODS−HG−5 5μm 250mm×4.6mm(野村化学社製)
カラム温度:30℃
移動相:50%(v/v)エタノール
流速:0.5mL/分
検出波長:575nm
以下に実施例の詳細を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。

[実施例1]ビオラセイン及びデオキシビオラセイン生成活性が増強した微生物の造成
(1)遺伝子欠損の際にマーカーとして用いるDNA断片の取得
表1の「プライマーセット」で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして、表1の「鋳型」に記載されたDNAを鋳型としてPCRを行い、各DNA断片を増幅した。
Figure 2021019518
バチルス・サチルス 168株のゲノムDNAは定法により調製した。増幅DNA断片のcatは、cat遺伝子の上流約200bpから下流約100bpを含む。増幅DNA断片のsacBは、sacB遺伝子の上流約30bpから下流約100bpを含む。配列番号21で表される塩基配列からなるDNAにはBamHI認識サイトが、配列番号23で表される塩基配列からなるDNAにはSphI認識サイトが付与されている。また、配列番号22および24で表される塩基配列からなるDNAにはSalI認識サイトが付与されている。
増幅DNA断片のcatを制限酵素BamHIとSalI、sacBを制限酵素SphIとSalIで切断した。pHSG298(タカラバイオ社製)を制限酵素BamHIとSphIで切断した。
上記3つのDNA断片をDNA ligation Kit Ver.2(タカラバイオ社製)を用いて連結することにより、pHSG−catsacBを造成した。得られたプラスミドpHSG−catsacBを鋳型に、配列番号25及び26で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、cat遺伝子およびsacB遺伝子を含むDNA(以下、cat−sacBという。)断片を得た。
(2)トリプトファナーゼ活性が喪失した微生物の造成
トリプトファナーゼをコードするDNA(以下、tnaA遺伝子という。)を欠損した大腸菌を、以下の方法で造成した。
定法により調製したエシェリヒア・コリ W3110株のゲノムDNAを鋳型として、表2の「プライマーセット」で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとして用いてPCRを行い、各DNA断片を増幅した。
Figure 2021019518
tnaA上流1及びtnaA上流2は、tnaA遺伝子の開始コドンからその上流約800bpを含む。tnaA下流1及びtnaA下流2は、tnaA遺伝子の終止コドンからその下流約1400bpを含む。
tnaA上流1、tnaA下流1、及びcat−sacB断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号33及び34で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いてPCRを行い、tnaA遺伝子周辺領域の配列にcat−sacB断片が挿入された配列からなるDNA(以下、tnaA::cat−sacBという。)断片を得た。
tnaA上流2及びtnaA下流2を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号33及び34で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットに用いてPCRを行い、tnaAを含まず、tnaA上流とtnaA下流が直接連結した配列からなるDNA(以下、ΔtnaAという。)断片を得た。
tnaA::cat−sacB断片を、λリコンビナーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドpKD46[Datsenko,K.A.,Warner.,B.L.,Proc.Natl.Acad. Sci.,USA,Vol.97,6640−6645(2000)]を保持するエシェリヒア・コリ W3110株に、エレクトロポレーション法により導入し、クロラムフェニコール耐性、かつスクロース感受性を示した形質転換体(tnaA遺伝子がtnaA::cat−sacBに置換された形質転換体)を得た。
ΔtnaA断片を、当該形質転換体にエレクトロポレーション法により導入し、クロラムフェニコール感受性かつスクロース耐性を示す形質転換体(tnaA::cat−sacBがΔtnaAに置換した形質転換体)を得た。さらに、pKD46が脱落した形質転換体を得た。当該微生物をW3110ΔtnaAと命名した。
(3)Iodobacter由来のビオラセイン生合成遺伝子群の発現が増強した微生物の造成
uspAプロモーター下にIodobacter fluviatilis由来のビオラセイン生合成遺伝子(vioA、vioB、vioC、vioD、vioE)を配置した、該遺伝子発現用プラスミドを有する大腸菌を、以下の方法で造成した。
エシェリヒア・コリ W3110株の染色体DNAを鋳型として、配列番号35及び36で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いてPCRを行い、uspAプロモーターとその下流に位置するリボソーム結合部位を含むDNA断片を増幅した。
Iodobacter fluviatilis NBRC102505株を周知の培養方法により培養し、該微生物の染色体DNAを単離精製した。配列番号37及び38で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして、当該染色体DNAを鋳型にPCRを行い、VioA蛋白質(配列番号2で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質)をコードするDNA断片を増幅した。このとき、配列番号36及び37で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。またVioA蛋白質をコードするDNAの断片増幅に使用したプライマーは、vioA遺伝子の開始コドンをGTGからATGに置換するよう設計した。
得られたuspAプロモーターをコードするDNA断片及びVioA蛋白質をコードするDNA断片の混合物を鋳型に、配列番号35及び38で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、両断片を連結したDNA(以下、PuspA_IfVioAという。)断片を得た。
上記で得られたPuspA_IfVioA断片を、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて発現ベクターpSTV29(タカラバイオ社製)に連結することにより、発現プラスミドpSTV29_PuspA_IfVioAを得た。
続いて、エシェリヒア・コリ W3110株の染色体DNAを鋳型として、配列番号35及び39で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いてPCRを行い、uspAプロモーターとその下流に位置するリボソーム結合部位を含むDNA断片を増幅した。
同様に、上記で得たIodobacter fluviatilis NBRC102505株の染色体DNAを鋳型として、配列番号40及び41で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、VioB蛋白質(配列番号4で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質)をコードするDNA断片を増幅した。このとき、配列番号39及び40で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
得られたuspAプロモーターをコードするDNA断片及びVioBをコードするDNA断片の混合物を鋳型に、配列番号35及び41で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、両断片を連結したDNA(以下、PuspA_IfVioBという。)断片を得た。
上記で得られたPuspA_IfVioB断片を、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて発現ベクターpMW119(ニッポンジーン社製)に連結することにより、発現プラスミドpMW119_PuspA_IfVioBを得た。
続いて、エシェリヒア・コリ W3110株の染色体DNAを鋳型として、配列番号42及び43で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いてPCRを行い、uspAプロモーターとその下流に位置するリボソーム結合部位を含むDNA断片を増幅した。
同様に、上記で得たIodobacter fluviatilis NBRC102505株の染色体DNAを鋳型として、配列番号44及び45で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、VioC蛋白質(配列番号6で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質)をコードするDNA断片を増幅した。このとき、配列番号43及び44で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
得られたuspAプロモーターをコードするDNA断片及びVioCをコードするDNA断片の混合物を鋳型に、配列番号42及び45で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、両断片を連結したDNA(以下、PuspA_IfVioCという。)断片を得た。
上記で得られたPuspA_IfVioC断片を、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて発現ベクターpCOLADuet−1(メルクミリポア社製)に連結することにより、発現プラスミドpCOLADuet−1_PuspA_IfVioCを得た。
続いて、エシェリヒア・コリ W3110株の染色体DNAを鋳型として、配列番号42及び46で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いてPCRを行い、uspAプロモーターとその下流に位置するリボソーム結合部位を含むDNA断片を増幅した。
上記で得たIodobacter fluviatilis NBRC102505株の染色体DNAを鋳型として、配列番号47及び48で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、VioD蛋白質(配列番号8で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質)をコードするDNA断片を増幅した。
同様に、該染色体DNAを鋳型として、配列番号49及び50で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、VioE蛋白質(配列番号10で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質)をコードするDNA断片を増幅した。このとき、配列番号46及び47、配列番号48及び49で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
得られたuspAプロモーターをコードするDNA断片、VioDをコードするDNA断片、及びVioEをコードするDNA断片の混合物を鋳型に、配列番号42及び50で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、全断片を連結したDNA(以下、PuspA_IfVioD_IfVioEという。)断片を得た。
上記で得られたPuspA_IfVioD_IfVioE断片を、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて発現ベクターpCDFDuet(メルクミリポア社製)に連結することにより、発現プラスミドpCDFDuet_PuspA_IfVioD_IfVioEを得た。
上記、発現プラスミドpSTV29_PuspA_IfVioA、pMW119_PuspA_IfVioB、pCOLADuet−1_PuspA_IfVioC、及びpCDFDuet_PuspA_IfVioD_IfVioEを用いて、実施例1(2)で造成したW3110ΔtnaA株を形質転換することで、Iodobacter fluviatilis NBRC102505株由来のビオラセイン生合成遺伝子を有する大腸菌を造成し、W3110ΔtnaA_IfVioABCDE株と命名した。
[比較例1]Janthinobacterium由来のビオラセイン生合成遺伝子群の発現が増強した微生物の造成
uspAプロモーター下にJanthinobacterium lividum由来のビオラセイン生合成遺伝子(vioA、vioB、vioC、vioD、vioE)を配置した、該遺伝子発現用プラスミドを有する大腸菌を、以下の方法で造成した。
エシェリヒア・コリ W3110株の染色体DNAを鋳型として、配列番号35及び51で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いてPCRを行い、uspAプロモーターとその下流に位置するリボソーム結合部位を含むDNA断片を増幅した。
Janthinobacterium lividum NBRC12613株を周知の培養方法により培養し、該微生物の染色体DNAを単離精製した。配列番号52及び53で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして、当該染色体DNAを鋳型にPCRを行い、VioA蛋白質(配列番号12で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質)をコードするDNA断片を増幅した。このとき、配列番号51及び52で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。またVioA蛋白質をコードするDNAの断片増幅に使用したプライマーは、vioA遺伝子の開始コドンをGTGからATGに置換するよう設計した。
得られたuspAプロモーターをコードするDNA断片及びVioAをコードするDNA断片の混合物を鋳型に、配列番号35及び53で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、両断片を連結したDNA(以下、PuspA_JlVioAという。)断片を得た。
上記で得られたPuspA_JlVioA断片を、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて発現ベクターpSTV29(タカラバイオ社製)に連結することにより、発現プラスミドpSTV29_PuspA_JlVioAを得た。
続いて、エシェリヒア・コリ W3110株の染色体DNAを鋳型として、配列番号35及び54で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いてPCRを行い、uspAプロモーターとその下流に位置するリボソーム結合部位を含むDNA断片を増幅した。
同様に、上記で得たJanthinobacterium lividum NBRC12613株の染色体DNAを鋳型として、配列番号55及び56で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、VioB蛋白質(配列番号14で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質)をコードするDNA断片を増幅した。このとき、配列番号54及び55で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
得られたuspAプロモーターをコードするDNA断片及びVioBをコードするDNA断片の混合物を鋳型に、配列番号35及び56で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、両断片を連結したDNA(以下、PuspA_JlVioBという。)断片を得た。
上記で得られたPuspA_JlVioB断片を、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて発現ベクターpMW119(ニッポンジーン社製)に連結することにより、発現プラスミドpMW119_PuspA_JlVioBを得た。
続いて、エシェリヒア・コリ W3110株の染色体DNAを鋳型として、配列番号42及び57で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いてPCRを行い、uspAプロモーターとその下流に位置するリボソーム結合部位を含むDNA断片を増幅した。
同様に、上記で得たJanthinobacterium lividum NBRC12613株の染色体DNAを鋳型として、配列番号58及び59で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、VioC蛋白質(配列番号16で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質)をコードするDNA断片を増幅した。このとき、配列番号57及び58で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
得られたuspAプロモーターをコードするDNA断片及びVioCをコードするDNA断片の混合物を鋳型に、配列番号42及び59で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、両断片を連結したDNA(以下、PuspA_JlVioCという。)断片を得た。
上記で得られたPuspA_JlVioC断片を、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて発現ベクターpCOLADuet−1(メルクミリポア社製)に連結することにより、発現プラスミドpCOLADuet−1_PuspA_JlVioCを得た。
続いて、エシェリヒア・コリ W3110株の染色体DNAを鋳型として、配列番号42及び60で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとして用いてPCRを行い、uspAプロモーターとその下流に位置するリボソーム結合部位を含むDNA断片を増幅した。
上記で得たJanthinobacterium lividum NBRC12613株の染色体DNAを鋳型として、配列番号61及び62で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、VioD蛋白質(配列番号18で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質)をコードするDNA断片を増幅した。
同様に、該染色体DNAを鋳型として、配列番号63及び64で表わされる塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、VioE蛋白質(配列番号20で表わされるアミノ酸配列を有する蛋白質)をコードするDNA断片を増幅した。このとき、配列番号60及び61、配列番号62及び63で表される塩基配列は、それぞれの5’末端に相補的な配列を含む。
得られたuspAプロモーターをコードするDNA断片、VioDをコードするDNA断片、及びVioEをコードするDNA断片の混合物を鋳型に、配列番号42及び64で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしてPCRを行い、全断片を連結したDNA(以下、PuspA_JlVioD_JlVioEという。)断片を得た。
上記で得られたPuspA_JlVioD_JlVioE断片を、In−Fusion HD Cloning Kit(タカラバイオ社製)を用いて発現ベクターpCDFDuet(メルクミリポア社製)に連結することにより、発現プラスミドpCDFDuet_PuspA_JlVioD_JlVioEを得た。
上記、発現プラスミドpSTV29_PuspA_JlVioA、pMW119_PuspA_JlVioB、pCOLADuet−1_PuspA_JlVioC、及びpCDFDuet_PuspA_JlVioD_JlVioEを用いて、実施例1(2)で造成したW3110ΔtnaA株を形質転換することで、Janthinobacterium lividum NBRC12613株由来のビオラセイン生合成遺伝子を有する大腸菌を造成し、W3110ΔtnaA_JlVioABCDE株と命名した。
[実施例2]ビオラセイン及びデオキシビオラセインの製造
(1)試験管培養試験
実施例1及び比較例1で得られたW3110ΔtnaA_IfVioABCDE株、及びW3110ΔtnaA_JlVioABCDE株をLBプレート上で28℃にて24時間培養し、前培養培地[グルコース20g/L、乾燥酵母エキス10g/L、ペプトン10g/L、塩化ナトリウム2.5g/L、グルタミン酸ナトリウム10g/L、水酸化ナトリウム溶液によりpH7.4に調整後、炭酸カルシウム10g/Lを添加しオートクレーブ]6mLが入った太型試験管に植菌して、28℃で24時間、振盪培養した。必要に応じて100mg/Lのアンピシリン、50mg/Lのカナマイシン、50mg/Lのクロラムフェニコール、及び50mg/Lのストレプトマイシンを添加した。その後、得られた培養液を生産培地[グルコース50g/L、硫酸マグネシウム七水和物2g/L、リン酸二水素カリウム2g/L、リン酸水素二カリウム2g/L、硫酸アンモニウム10g/L、コーンスティープリカー2g/L、グルタミン酸ナトリウム10g/L、トリプトファン1g/L、チアミン塩酸塩10mg/L、硫酸第一鉄七水和物10mg/L、硫酸マンガン五水和物10mg/L、硫酸亜鉛七水和物1.5mg/L、塩化カルシウム二水和物15mg/L(グルコース及び硫酸マグネシウム七水和物以外については、水酸化ナトリウム溶液によりpH7.6に調整した後、炭酸カルシウム10g/L、リン酸三マグネシウム八水和物40g/Lを添加してオートクレーブし、グルコース及び硫酸マグネシウム七水和物含有水溶液は別途調製した後オートクレーブし、それぞれ冷却後に混合した)]が5mL入った太型試験管に0.4mL植菌し、28℃で48時間培養した。必要に応じて100mg/Lのアンピシリン、50mg/Lのカナマイシン、50mg/Lのクロラムフェニコール、及び50mg/Lのストレプトマイシンを添加した。
培養終了後、培養液を遠心分離して上清を除去し、残りの菌体を破砕して得られた菌体内ビオラセイン及びデオキシビオラセインをHPLCにて分析した。結果を表3に示す。
Figure 2021019518
本発明により、Iodobacter fluviatilisに由来するビオラセイン生合成関連酵素の活性が増強した微生物を用いることにより、従来の製造法のような低温での培養を必要としない、効率的なビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造方法が提供される。

Claims (4)

  1. 親株よりも以下の[1]〜[5]に記載の蛋白質の活性が増強した微生物。
    [1]配列番号2に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、L−トリプトファンオキシダーゼ活性を有する蛋白質
    [2]配列番号4に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、イミノフェニルピルビン酸ダイマーシンターゼ活性を有する蛋白質
    [3]配列番号6に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、FAD依存モノオキシゲナーゼ活性を有する蛋白質
    [4]配列番号10に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、ビオラセイン生合成酵素活性を有する蛋白質
    [5]配列番号8に表されるアミノ酸配列又はその相同配列からなり、トリプトファンヒドロキシラーゼ活性を有する蛋白質
  2. 親株よりも上記[1]〜[4]に記載の蛋白質の活性が増強した微生物。
  3. 微生物が、大腸菌である、請求項1又は2に記載の微生物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の微生物を培地に培養し、培養物中にビオラセイン又はデオキシビオラセインを生成、蓄積させ、該培養物中からビオラセイン又はデオキシビオラセインを採取することを特徴とする、ビオラセイン又はデオキシビオラセインの製造法。
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