WO2022091318A1

WO2022091318A1 - サリチル酸を含有する油中水型乳化組成物

Info

Publication number: WO2022091318A1
Application number: PCT/JP2020/040742
Authority: WO
Inventors: 恵吉田
Original assignee: 株式会社資生堂
Priority date: 2020-10-30
Filing date: 2020-10-30
Publication date: 2022-05-05
Also published as: US20240024211A1; JPWO2022091318A1; CN116322617A

Abstract

本発明は、サリチル酸を比較的多く配合した場合でも長期にわたり離漿を起こさず安定であり、なおかつ使用性が経時で低下せず、メーキャップ化粧料に応用可能な油中水型乳化組成物を提供することを目的とする。本発明は、（ａ）０．５質量％以上のサリチル酸；（ｂ）有機変性粘土鉱物；（ｃ）ソルビタン脂肪酸エステル；及び（ｄ）色材、を含有することを特徴とする油中水型乳化組成物に関する。

Description

サリチル酸を含有する油中水型乳化組成物

　本発明は、油中水型乳化組成物に関する。特に、比較的多くのサリチル酸を安定に配合することができる油中水型乳化組成物及びそれを用いた乳化化粧料に関する。

　サリチル酸は、比較的軽度のニキビ治癒に有効な化合物として知られている。また、４－メトキシサリチル酸塩等のサリチル酸誘導体は、皮膚に適用することによりメラニン色素の異常沈着を改善・防止する美白効果を発揮する。しかしながら、サリチル酸又はその誘導体を油中水型乳化組成物に配合した場合、経時的に乳化粒子の合一を生じて系が不安定になり、結果的に分離する（離漿が起こる）という問題があった。

　特許文献１には、サリチル酸誘導体である４－メトキシサリチル酸塩を配合した油中水型皮膚美白化粧料が開示されている。当該化粧料は、有機変性粘土鉱物とオレイン酸及び／又はイソステアリン酸とを組み合わせて配合することによって、べたつきがなく、しっとりした使用感触を有し、収容する容器の材質に依らず経時安定性に優れるとされている。

　しかしながら、特許文献１の化粧料において４－メトキシサリチル酸塩をサリチル酸に置換すると、経時的に系の粘度が上昇し使用性が重くなる傾向が見られた。また、特許文献１の化粧料は美白を目的とするスキンケア化粧料であって、顔料等の色材（粉末）を配合することを意図したものではない。実際に、特許文献１には色材が記載されておらず、具体的に記載されている処方にも色材は配合されていない。従って、特許文献１の化粧料に色材を配合してメーキャップ化粧料への応用を試みたときに如何なる変化が生じるかは不明である。
特許第５１６４２９２号公報

　よって、本発明における課題は、サリチル酸を比較的多く配合した場合でも長期にわたる離漿を起こさず安定であり、なおかつ使用性が経時で低下せず、メーキャップ化粧料に応用可能な油中水型乳化組成物を提供することである。

　前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者は、０．５質量％以上のサリチル酸、有機変性粘土鉱物、及び色材を含有する油中水型乳化組成物において、ソルビタン脂肪酸エステルを配合することにより、長期にわたって安定で、良好な使用性が維持できる油中水型乳化組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

　即ち、本発明は、
（ａ）０．５質量％以上のサリチル酸；
（ｂ）有機変性粘土鉱物；
（ｃ）ソルビタン脂肪酸エステル；及び
（ｄ）色材、を含有することを特徴とする油中水型乳化組成物、を提供する。

　本発明の組成物では、油中水型の乳化状態を破壊する傾向を有するとされるサリチル酸を比較的高濃度で含有していても経時的に極めて安定である。それと同時に、経時による粘度変化が小さく良好な使用性が長期間維持される。更に、色縞を生じることがなく、メーキャップ化粧料とするのに特に適した組成物である。

　上記したように、本発明の油中水型乳化組成物は、（ａ）サリチル酸、（ｂ）有機変性粘土鉱物、（ｃ）ソルビタン脂肪酸エステル、及び（ｄ）色材を必須成分として含有する。以下に詳述する。

（ａ）サリチル酸
　サリチル酸は比較的軽度のニキビの治癒に有効であることが知られ、従来から化粧料に配合されている既知の成分である。
　従来の化粧料にあっては、サリチル酸は少量しか配合されていなかったが、本発明の組成物は、少なくとも０．５質量％のサリチル酸を安定に配合可能である点にも特徴がある。本発明の組成物におけるサリチル酸の配合量は、０．５質量％以上であり、配合量の上限値は特に限定されないが、通常は２０質量％以下、好ましくは１０質量％以下程度である。

　サリチル酸は水に対する溶解度が低いので、本発明の組成物を調製する際は、適量のアルコール（エタノール）にサリチル酸を溶解させて配合するのが好ましい。
　なお、本発明の組成物のサリチル酸を４－メトキシサリチル酸塩等のサリチル酸誘導体（アルコキシサリチル酸）に置換すると、経時で粘度が上昇して使用性が重くなる傾向があり好ましくない。従って、本発明における「サリチル酸」はサリチル酸及びその塩を含むが、アルコキシサリチル酸等のサリチル酸誘導体を含まないものとする。

（ｂ）有機変性粘土鉱物
　本発明の組成物に用いる有機変性粘土鉱物としては、ベントナイトのような天然または合成のスメクタイトの粘土鉱物に第四級アンモニウム塩化合物をイオン交換反応により付加させたものが好適である。有機変性粘土鉱物は、製薬学上許容され得るものであれば特に限定されず、例えば、ジメチルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。好ましい市販品としては、エレメンティス社より「ベントン３８ＶＣＧ」の名称で販売されているジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、エレメンティス社より「ベントン２７ＶＣＧ」の名称で販売されているベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライトなどが例示される。

　有機変性粘土鉱物は１種または２種以上を配合することができる。有機変性粘土鉱物の配合量は、組成物全量に対して０．１～５．０質量％とするのが好ましく、例えば、１．５～５．０質量％とするのが好ましい。０．１質量％未満では乳化安定性が低下する傾向があり、５．０質量％を超えて配合するとべたつきを生じ、使用感が劣る傾向がみられる。

（ｃ）ソルビタン脂肪酸エステル
　本発明の組成物で用いるソルビタン脂肪酸エステルは、炭素数１２～２０の脂肪酸とソルビトールとのエステルである。炭素数１２～２０の脂肪酸としてはステアリン酸、イソステアリン酸、セスキイソステアリン酸等が挙げられる。具体例としては、モノイソステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン等が挙げられるが、中でも、セスキイソステアリン酸ソルビタンが好ましく用いられる。市販品としては、「エステモール１８２Ｖ」（日清オイリオ（株）製）、「エマレックスＳＰＩＳ－１５０」（日本エマルジョン（株）製）等が例示される。

　本発明の組成物におけるソルビタン脂肪酸エステルの配合量は、通常は０．１～４．０質量％、好ましくは０．５～３．０質量％、より好ましくは０．５～１．５質量％である。０．１質量％未満では十分な乳化安定性が得られず、４．０質量％を超えて配合するとべたつきを生じることがある。

　特許文献１は、サリチル酸誘導体である４－メトキシサリチル酸カリウムと有機変性粘土鉱物とが共存する系において、オレイン酸及び／又はイソステアリン酸を配合することによって乳化安定性を向上させた発明である。特許文献１には、イソステアリン酸等の液状脂肪酸に加えて、低ＨＬＢ（７以下）の乳化剤を配合可能であることが記載され（段落００２４）、当該低ＨＬＢ乳化剤の例にソルビタン脂肪酸エステルも含まれている。しかしながら、特許文献１の系におけるサリチル酸誘導体をサリチル酸に置換し、さらに色材を配合した場合には、イソステアリン酸が配合されていても経時的な粘度変化が見られこと、サリチル酸、有機変性粘土鉱物及び色材が共存する系では、ソルビタン脂肪酸エステルを配合することにより、液状脂肪酸を含まなくても経時の粘度変化が起こらず極めて安定した組成物が得られることが初めて見出された。従って、本発明の組成物は、イソステアリン酸、オレイン酸等の液状脂肪酸を含まない態様を包含する。

（ｄ）色材
　本発明の組成物に配合される色材は、顔料及びパール顔料等の、メーキャップ化粧料に通常配合されるものを使用することができる。
　具体的には、無機白色系顔料（二酸化チタン、酸化亜鉛）、無機赤色系顔料（酸化鉄(べンガラ)、チタン酸鉄）、無機褐色系顔料（γ－酸化鉄）、無機黄色系顔料（黄酸化鉄、黄土）、無機黒色系顔料（黒酸化鉄、カーボン、低次酸化チタン）、無機紫色系顔料（マンゴバイオレット、コバルトバイオレット）、無機緑色系顔料（酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト）、無機青色系顔料（群青、紺青）、パール顔料（酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔）、金属粉末顔料（アルミニウムパウダー、カッパーパウダー）、有機顔料（赤色２０２号、赤色２０５号、赤色２２０号、赤色２２８号、赤色４０５号、橙色２０３号、橙色２０４号、黄色２０５号、黄色４０１号、青色４０４号）、ジルコニウム、バリウム、アルミニウムレーキの有機顔料（赤色３号、赤色１０４号、赤色２２７号、赤色４０１号、橙色２０５号、黄色４号、黄色２０２号、緑色３号、青色１号）、天然色素（クロロフィル、カルチノイド系（β－カロチン）、カルサミン、コチニール、カルコン、クルクミン、ベタニン、フラボノール、フラボン、アントシアニジン、アントラキノン、ナフトキノン）、機能性顔料（窒化ホウ素、フォトクロミック顔料、合成フッ素金雲母、鉄含有合成フッ素金雲母、微粒子複合粉体（ハイブリッドファインパウダー））の中からいずれか１種又は２種以上を選ぶことができるが、これに限定されない。

　顔料等の粉末状色材は表面未処理のものを用いてもよく、また、オルガノシラン系化合物、シリコーン化合物、フッ素化合物、シランカップリング剤、フッ素樹脂、脂肪酸、脂肪酸セッケン、ラウロイルリジン等により表面処理を施したものを用いてもよい。

　本発明の組成物は、組成物全量に対して０．１質量％以上の色材を含有していれば、色縞の防止という本発明の効果が発揮できる。従って、本発明の組成物における色材の配合量は０．１質量％以上とすることができる。特に、本発明の組成物をメーキャップ化粧料とする場合には、色材の配合量を１．０質量％以上とするのが好ましく、より好ましくは５．０質量％以上、更に好ましくは１０質量％以上である。配合量が１．０質量％未満では十分なメーキャップ効果が得られない。色材の配合量の上限は、特に限定されないが、通常は４０質量％以下、好ましくは３０質量％以下である。４０質量％を超えて配合すると安定性が低下する場合がある。

　本発明の組成物は油中水型乳化組成物である。従って、乳化物の外相を構成する油分並びに内相を構成する水を含有している。
　外相を構成する油分は、化粧料等に使用できる油分であれば特に限定されないが、シリコーン油を含有するのが好ましい。シリコーン油としては、揮発性シリコーン油、中でも、揮発性の直鎖状シリコーン油（１．５ｃｓ、２ｃｓ等）を用いるのが特に好ましい。本発明の組成物における油分の配合量は、１～３０質量％程度である。
　内相を構成する水は、アルコール（エタノール）等の親水性成分を保持しうる。本発明の組成物における水の配合量は、２０～４０質量％程度である。

　本発明の組成物には、上記の必須成分（ａ）～（ｄ）及び油分並びに水以外に、化粧品、医薬品等に通常用いられる他の任意成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で配合することができる。

　例えば、本発明の組成物にポリエーテル変性シリコーンを配合することにより、離漿安定性を更に向上させることができる。
　本発明で好ましく使用されるのは、ポリシロキサン骨格にグラフトしたポリオキシアルキレン基を持つポリエーテル変性シリコーンであって、任意にアルキル共変性されていてもよい。ポリシロキサン骨格が直鎖状のポリエーテル変性シリコーン（直鎖型）、及びポリシロキサン骨格が分岐鎖状のポリエーテル変性シリコーン（分岐鎖型）が使用できるが、安定性向上の点で、分岐鎖型のポリエーテル変性シリコーンが好ましい。また、特に限定されないが、好ましくは６．０以下、より好ましくは５．０以下であり、好ましくは３．０以上のＨＬＢを持つポリエーテル変性シリコーン、及びアルキル共変性されていないポリエーテル変性シリコーンが好ましく用いられる。

　ポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、ＰＥＧ－３ジメチコン、ＰＥＧ－１０ジメチコン、セチルＰＥＧ／ＰＰＧ－１０／１ジメチコン（以上、直鎖型）、ＰＥＧ－９ポリジメチルシロキシエチルジメチコン（以上、分岐鎖型）などが挙げられる。これらの中で、ＰＥＧ－９ポリジメチルシロキシエチルジメチコンが特に好ましい。

　ポリエーテル変性シリコーンを配合する場合、その配合量は、組成物全量に対して０．１～５質量％が好ましく、より好ましくは１～４質量％、特に好ましくは２～３質量％である。０．１質量％未満では安定化向上効果が得られず、５質量％を超えて配合すると色縞を生じることがある。

　本発明の組成物にポリエチレングリコールを配合すると、サリチル酸を安定に保持する効果が更に向上する。
　本発明で好ましく用いられるポリエチレングリコールは、平均分子量が１０００～１５０００のポリエチレングリコールである。具体例としては、ポリエチレングリコール１０００（ＩＮＣＩ名：ＰＥＧ－２０）、ポリエチレングリコール１５００（ＩＮＣＩ名：ＰＥＧ－６；ＰＥＧ－３２）、ポリエチレングリコール４０００（ＩＮＣＩ名：ＰＥＧ－７５）、ポリエチレングリコール６０００（ＩＮＣＩ名：ＰＥＧ－１５０）、ポリエチレングリコール１１０００（ＩＮＣＩ名：ＰＥＧ－２４０）等が挙げられる。これらの中でもポリエチレングリコール－６０００が好ましい。

　ポリエチレングリコールの配合量としては、組成物全量に対して１～８質量％が好ましく、より好ましくは２～７質量％、特に好ましくは３～６質量％である。

　他の任意成分としては、例えば、保湿剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、緩衝剤、キレート剤、防腐剤、香料、各種薬剤などが挙げられるが、これら例示の成分に限定されるものではない。

　本発明の油中水型乳化組成物は、常法により調製することができ、乳化の方法は特に限定されるものではない。例えば、個別に調製した水相（内相）と油相（外相）を、それぞれ８０℃程度に加温し、加温した水相を油相に徐々に添加して、乳化機で乳化し、その後、室温まで放冷する等の方法が挙げられる。

　本発明の組成物は、従来より高濃度のサリチル酸を安定に含有しているため、サリチル酸に基づく抗ニキビ効果が十分に発揮される。それに加えて、顔料等の色材が配合され、色縞を生じないため優れたメーキャップ効果を発揮する。従って、本発明の組成物はメーキャップ化粧料として提供するのに特に適している。

　以下に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。

　下記の表１に掲げた処方のメーキャップ化粧料を常法に従って調製した。
　各例の化粧料について、以下の方法及び基準に従って、離漿安定性、色縞、及び使用性（調製直後及び２週間後）を評価した。

（１）離獎安定性
　各例の化粧料を、５０℃で４週間静置した後、離漿（油浮き）の有無を目視により観察し、下記基準により評価した。
（評価基準）
　Ａ：変化無し（離漿なし）
　Ｂ：表面に透明な液が少し認められた
　Ｃ：透明な液が溜まった状態で認められた

（２）色縞
　各例の化粧料をポリエチレン容器で保存したときの化粧料バルクを目視により観察し、以下の基準で評価した。
（評価基準）
　Ａ：色縞なし
　Ｂ：狭い範囲にぼやけた色縞があるが外観全体としては問題がない
　Ｃ：広い範囲にぼやけた色縞がある

（３）使用性
　各例の化粧料の使用性を、調製直後（直後）及び室温で２週間静置後（経時）に、以下の基準で専門パネルが評価した。
（評価基準）
　Ａ：のびが軽い
　Ｂ：ややのびが重い
　Ｃ：とてものびが重い

　表１に示すように、（ａ）サリチル酸、（ｂ）有機変性粘土鉱物、（ｃ）ソルビタン脂肪酸エステル及び（ｄ）色材の全てを含有する油中水型乳化組成物である実施例１の化粧料は、離漿安定性に優れ、色縞を生じず、なおかつ経時での使用性変化もなかった。一方、ソルビタン脂肪酸エステルをイソステアリン酸に置換した比較例１は、経時で粘度が上昇して使用性がやや重くなった。ソルビタン脂肪酸エステルもイソステアリン酸も配合しない比較例２は、調製直後から使用性が重く、若干の色縞を生じた。比較例２からサリチル酸を抜去した比較例３は、使用性はやや改善されたが色縞は抑制されなかった。また、実施例１におけるサリチル酸を４－メトキシサリチル酸に置換した比較例４は、経時で粘度が上昇して使用性がやや重くなり、著しい色縞が生じた。以上より、本発明の必須成分（ａ）～（ｄ）の全てを配合することにより、離漿安定性のみならず、色縞や使用性変化（粘度上昇）を抑制できることが裏付けられた。

Claims

（ａ）０．５質量％以上のサリチル酸；
（ｂ）有機変性粘土鉱物；
（ｃ）ソルビタン脂肪酸エステル；及び
（ｄ）色材、を含有することを特徴とする油中水型乳化組成物。
前記（ｂ）有機変性粘土鉱物の配合量が、組成物全量に対して０．１～５．０質量％である、請求項１に記載の組成物。
ポリエーテル変性シリコーンを更に含有する、請求項１又は２に記載の組成物。
ポリエチレングリコールを更に含有する、請求項１から３のいずれか一項に記載の組成物。
前記（ｃ）ソルビタン脂肪酸エステルが、セスキイソステアリン酸ソルビタンである、請求項１から４のいずれか一項に記載の組成物。
請求項１から５のいずれか一項に記載の組成物からなるメーキャップ化粧料。