JP5788697B2 - 油性固形組成物、その製造方法、及び油性固形製品 - Google Patents
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[1] 次の成分(A)〜(D);
(A)コウジ酸
(B)ポリエチレングリコール
(C)IOB値が0.4以上の油剤
(D)固形油
を含有する油性固形組成物。
[2] 成分(C)が水酸基を有する油剤である[1]の油性固形組成物。
[3] 成分(C)が、ポリグリセリン構造を有する油剤である[1]又は[2]の油性固形組成物。
[4] 成分(A)と成分(B)の含有質量比が1:10〜1:40の範囲である[1]〜[3]のいずれかの油性固形組成物。
[5] 成分(A)及び成分(B)の合計含有質量と、成分(C)の含有質量が3:1〜1:9の範囲である[1]〜[4]のいずれかの油性固形組成物。
[6] 成分(B)が分子量20000以下である[1]〜[5]のいずれかの油性固形組成物。
[7] 成分(E)部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物もしくは煙霧状シリカから選ばれる油性増粘剤をさらに含有する[1]〜[6]のいずれかの油性固形組成物。
[8] 金属イオンを放出する成分を含有しない[1]〜[7]のいずれかの油性固形組成物。
[9] 水の含有量が1質量%以下である[1]〜[8]のいずれかの油性固形組成物。
[10] 油性固形化粧料である請求項[1]〜[9]のいずれかの油性固形組成物。
[11] [1]〜[10]のいずれかの油性固形組成物と、それを収納する容器とからなり、前記容器の前記油性固形組成物との接触面が、非金属材料又は油性固形組成物への金属イオンの溶出を抑制する表面処理が施された金属材料からなる油性固形製品。
[12] (A)コウジ酸、(B)ポリエチレングリコール及び(C)IOB値が0.4以上の油剤を混合溶解すること、
該溶解混合物を、(D)固形油を含有する組成物と混合すること、
を含む[1]〜[10]のいずれかの油性固形組成物の製造方法。
1.油性固形組成物
本発明は、次の(A)〜(D)を含有する油性固形組成物に関する。
(A)コウジ酸
(B)ポリエチレングリコール
(C)IOB値が0.4以上の油剤
(D)固形油
本発明の油性固形組成物は、親水性で且つ油不溶性の美容成分であるコウジ酸を、ワックス等の固形油中に安定的に含有することを特徴とする。本発明の油性固形組成物は、強力なシェアをかけることなく調製可能であるので、ロールミル等の使用は不要であり、コウジ酸を変質させる金属イオンの混入を避けることができる。さらに、充填成形時に加熱溶融させても、コウジ酸の沈降等は生じ難く、均一な配合状態を維持可能であり、化粧料用及び皮膚外用剤用の油性固形製品としての価値が非常に高いものである。
(A)コウジ酸
コウジ酸は、化学名5−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−4−ピロン、又は5−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル)−4H−ピラン−4−オンと呼ばれる複素環化合物である。一般的には、微生物の発酵液から抽出・精製して得られるが、有機合成によって製造されたものを使用しても勿論よい。またコウジ酸の塩を用いてもよい。
成分(B)のポリエチレングリコールは、通常化粧料又は皮膚外用剤等に用いられるものであれば特に制限なく用いることができるが、平均分子量20000以下のものが好ましい。平均分子量が20000以下のポリエチレングリコールは、コウジ酸の溶解性に優れ、また油に分散させる際にも加温状態で流動性が高く扱いが容易である。また感触もきしみやベタツキが発生しにくい利点がある。成分(B)のポリエチレングリコールは、平均分子量200〜20000のものが好ましく、380〜10000のものがより好ましい。また、互いに異なる重合度のポリエチレングリコールを2種以上用いるのも好ましい。例えば、平均分子量が200〜1000程度のものと、1000を超えて20000程度のものをそれぞれ用いるのも好ましい。本発明に使用可能な成分(B)ポリエチレングリコールは、例えば、International Nomenclature Cosmetic Ingredientに収載されているPEG−4,PEG−6,PEG−8,PEG−12,PEG−15、PEG−20、PEG−30、PEG−32、PEG−40、PEG−80、PEG−120、PEG−400等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。また、平均分子量は、医薬部外品原料規格2006のポリエチレングリコール4000の平均分子量試験により測定される。
成分(C)は、IOB値が0.4以上である限り、その種類については特に制限はない。IOB値とは無機性(inorganic)と有機性(organic)のバランスを示す指標であり、この値が大きい化合物ほど、より親水性の化合物と言える。IOB値が0.4未満の油剤はコウジ酸の溶解を補助するだけの極性を有しておらず、コウジ酸を油性固形組成物中に均一分散することができない。本発明では、IOB値が0.4以上1.8以下の油剤を用いるのが好ましく、0.4以上1.0以下の油剤を用いるのがより好ましい。この範囲であればコウジ酸の溶解を補助する効果に優れながらも、他の油剤との分散性・相溶性に優れる。
成分(D)は、室温において固体の油である。融点60℃以上の固形油から選択することができる。通常化粧料又は皮膚外用剤等において用いられているものであれば、何れのものも使用できる。具体的には、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エチレン・プロピレン共重合体、オゾケライトワックス、セレシンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の炭化水素ワックス;カルナウバワックス、キャンデリラワックス等のエステル類ワックス、パルミチン酸デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステル;等が挙げられ、これらを必要に応じて一種又は二種以上用いることができる。中でも、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素ワックスが好ましい。
本発明の油性固形組成物は、油性増粘剤を含んでいるのが好ましい。油性増粘剤は、油に溶解及び/又は分散可能な増粘剤である。油性増粘剤は、充填成形時に加熱溶融させた際に、溶融物の粘度を上昇させ、成分(A)コウジ酸等の親水性成分と油性成分とが分離するのを抑制し、充填成形性の改善に寄与する。油性増粘剤は、糖類やアミノ酸系化合物等の有機系材料、シリカ等の無機系材料、及びオルガノポリシロキサン重合物等の有機−無機系材料のいずれからも選択することができる。本発明では、無機系又は有機−無機系材料から選択するのが好ましく、中でも、油系成分の中で効率的に増粘が可能な部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物もしくは少量でも油の増粘が可能な煙霧状シリカから選ばれる油性増粘剤を利用するのが好ましい。
本発明は、コウジ酸を含む油性固形組成物の製造方法にも関する。本発明の方法によれば、ロールミル等、コウジ酸を変質させる原因物質である金属イオンを混入させ得る機器を用いることなく、コウジ酸を含む油性固形組成物を製造できる。具体的には、本発明は、
(i) (A)コウジ酸、(B)ポリエチレングリコール及び(C)IOB値が0.4以上の油剤を混合溶解すること、
(ii) 該溶解混合物を、(D)固形油を含有する組成物と混合すること、
を含む油性固形組成物の製造方法に関する。
本発明の油性固形組成物の用途については特に制限はない。化粧料、並びに医薬品及び医薬部外品等の皮膚外用剤として有用である。コウジ酸を美容成分(例えば美白剤)として含有することによる薬効を利用した基礎化粧料、メイクアップ化粧料、頭髪化粧料等、種々の用途の化粧料として用いることができる。また、シミ治療薬等の皮膚外用剤として用いることができる。常温で固形であることから、その形状としては棒状(スティック状)、ケーキ状、皿流し込み型等の形状が適する。例えば、基礎化粧料としては、美白用スティック、アイスティック、日焼け止め用スティック、及びスティック状の種々のメイクアップ化粧料(口紅等)、及びシミ治療用軟膏等の用途において適する。
[実施例1]
下記表に示した組成の油性固形組成物を下記方法によりそれぞれ調製した。なお、下記表中、成分1が成分(A)、成分2〜4が成分(B)、成分7〜9及び12が成分(C)、成分(18)及び(19)が成分(D)、並びに成分(15)及び(16)が成分(E)にそれぞれ相当する。
A.成分1〜13を混合して70℃に加温し均一に溶解した。
B.成分14〜22を混合し、110℃に加温し均一に分散した。
C.90℃まで冷却したBをAに加え均一に分散した。
D:上記4gを90℃に加温溶融し、アクリロニトリル・スチレン及びアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンを混合した樹脂からなるスティック用容器に充填し、油性固形状美白用スティックを得た。
(1)分散性評価
スティック状に成型直後、スティックの各部位(上部、中部、下部、中心部、外周部)のコウジ酸の濃度を測定し、表の組成のコウジ酸の濃度を100%として、各部位のコウジ酸の濃度と比較し下記の評価基準にて評価を行った。
◎:全ての部位のコウジ酸の濃度が98%以上100%以下の範囲である。
○:いずれかの部位のコウジ酸の濃度が96%以上98%未満の範囲である。
△:いずれかの部位のコウジ酸の濃度が90%以上96%未満の範囲である。
×:目視にてコウジ酸の結晶が確認されるものや、いずれかの部位のコウジ酸の濃度が90%未満である。
(2)有効成分安定性
50℃にて1ヶ月静置した際のコウジ酸の濃度を測定し、初期値を100%としてその初期値と比較した。
◎:コウジ酸の濃度が95%以上100%以下の範囲である。
○:コウジ酸の濃度が90%以上95%未満の範囲である。
△:コウジ酸の濃度が85%以上90%未満の範囲である。
×:コウジ酸の濃度が85%未満である。
なお、下記表中、有効成分安定性の評価結果の欄に記載の「−」は、コウジ酸が溶解しなかったので、評価できなかったことを意味する。
(3)充填成形性
各試料を上記方法により調製した際のスティック状成型の可否、及び、「使用時のスティックの折れ」について以下の基準で評価した。
◎:スティック状に成型でき、5〜50℃の範囲で問題なく使用できる。
○:スティック状に成型でき、5〜40℃の範囲で問題なく使用できる。
△:スティック状に成型できるが、室温以上で使用時に容易に折れる。
×:スティック状に成型不可である。
一方、成分(B)を含有していない比較例1では、コウジ酸の分散性は非常に悪く、成分(B)の代わりに他の多価アルコール化合物(1,3−ブチレングリコール又はグリセリン)を含有した比較例3及び4では、コウジ酸の分散性改善効果は得られたものの、コウジ酸の分析値に大幅なばらつきが確認され、安定には含有できていなかった。これは充填成型時や経時において1,3−ブチレングリコールやグリセリン、もしくはこれらに存在する水分が揮発してしまったものと推測される。
また、成分(C)を含有していない比較例2では、比較例1と同様、コウジ酸の分散性は非常に悪く、また成分(C)の代わりにIOB値が0.4未満の油剤を含有した比較例5及び6も、コウジ酸の分散性の改善効果は得られなかった。比較例7は成分(D)を含有していないため、スティック状にならず、コウジ酸の濃度が非常に不均一であった。
また、特許文献1及び2に開示されているような、水性媒体中におけるコウジ酸の安定化技術を利用しても、油性固形組成物では、コウジ酸の安定化効果を得られず、例えば、比較例8では特許文献1、及び比較例9では特許文献2に開示の技術をそれぞれ利用しているが、いずれも十分な効果は得られなかった。
(成分) (%)
1.(エチレン/プロピレン)コポリマー(融点:90℃) 7
2.マイクロクリスタリンワックス(融点:80℃) 5
3.ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2 10
4.トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2 20
5.ポリエチレングリコール20000 10
6.コウジ酸 0.7
7.ミリスチン酸イソプロピル 5
8.スクワラン 1
9.ジメチコン 0.5
10.水添ポリデセン 6
11.イソノナン酸イソトリデシル 残量
12.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
13.フェノキシエタノール 0.1
14.ノバラエキス 0.1
15.香料 0.3
A:成分3〜6を混合する。
B:成分1〜2、7〜12を均一溶解する。
C:AにBを添加し、混合する。
D:Cに13〜15を添加し、混合する。
E:上記5gをポリプロピレン製ジャー容器に充填し、油性固形状美容クリームを得た。本発明の実施品である実施例12の油性固形状美容クリームは、「分散性評価」、「有効成分安定性」、「充填成形性」の全ての項目に優れた油性固形組成物であった。
(成分) (%)
1.ポリエチレンワックス(融点:80℃) 5
2.フィッシャートロプシュワックス(融点:80℃) 5
3.セレシン(融点:93℃) 5
4.トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2 5
5.ポリエチレングリコール1500 10
6.コウジ酸 1
7.ベヘネス−10 5
8.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニル
トリアジン 1
9.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 3
10.ジメチコン 5
11.メチルフェニルポリシロキサン 1
12.エチルヘキサン酸セチル 残量
13.レシチン 0.1
14.ジブチルヒドロキシトルエン 0.02
15.ポリメチルシルセスキオキサン 2
16.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
17.フェノキシエタノール 0.1
18.アンズ核油 0.1
19.香料 0.3
A:成分4〜7を混合する。
B:成分1〜3、8〜14を均一溶解する。
C:AにBを添加し、混合する。
D:Cに15〜19を添加し、混合する。
E:上記5gをプラスティック製スティック容器に充填し、油性固形状日焼け止めスティックを得た。本発明の実施品である実施例13の油性固形状日焼け止めスティックは、「分散性評価」、「有効成分安定性」、「充填成形性」の全ての項目に優れた油性固形組成物であった。
(成分) (%)
1.パラフィンワックス(融点:69℃) 3
2.フィッシャートロプシュワックス(融点:90℃) 5
3.マイクロクリスタリンワックス(融点:68℃) 5
4.キャンデリラロウ(融点:70℃) 1
5.イソステアリン酸ポリグリセリル−2 1
6.ベヘネス−30 4
7.ポリエチレングリコール400 3
8.ポリエチレングリコール20000 3
9.コウジ酸 0.5
10.t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 0.2
11.テトラオクタン酸ペンタエリスリチル 6
12.ジメチコン 1
13.メチルフェニルポリシロキサン 1
14.トリエチルヘキサノイン 残量
15.水添ポリイソブテン 0.1
16.トコフェロール 0.02
17.ポリエチレンテレフタレート粉末 0.5
18.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
19.フェノキシエタノール 0.05
20.ローズヒップ油 0.1
21.香料 0.2
A:成分5〜9を混合する。
B:成分1〜4、10〜16を均一溶解する。
C:AにBを添加し、混合する。
D:Cに17〜21を添加し、混合する。
E:上記2gをプラスティック製皿状容器に充填し、油性固形状アイクリームを得た。本発明の実施品である実施例14の油性固形状アイクリームは、「分散性評価」、「有効成分安定性」、「充填成形性」の全ての項目に優れた油性固形組成物であった。
Claims (12)
- 次の成分(A)〜(D);
(A)コウジ酸
(B)ポリエチレングリコール
(C)IOB値が0.4以上1.8以下の油剤
(D)固形油
を含有する油性固形組成物であって、
成分(C)がエステル油又はエーテル油である、油性固形組成物。 - 成分(C)が水酸基を有する油剤である請求項1に記載の油性固形組成物。
- 成分(B)として、互いに異なる重合度のポリエチレングリコールを2種以上含有する、請求項1又は2に記載の油性固形組成物。
- 成分(A)と成分(B)の含有質量比が1:10〜1:40の範囲である請求項1〜3のいずれか1項に記載の油性固形組成物。
- 成分(A)及び成分(B)の合計含有質量と、成分(C)の含有質量が3:1〜1:9の範囲である請求項1〜4のいずれか1項に記載の油性固形組成物。
- 成分(B)が分子量20000以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の油性固形組成物。
- 成分(E)部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物もしくは煙霧状シリカから選ばれる油性増粘剤をさらに含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の油性固形組成物。
- 金属イオンを放出する成分を含有しない請求項1〜7のいずれか1項に記載の油性固形組成物。
- 水の含有量が1質量%以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の油性固形組成物。
- 油性固形化粧料である請求項1〜9のいずれか1項に記載の油性固形組成物。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の油性固形組成物と、それを収納する容器とからなり、前記容器の前記油性固形組成物との接触面が、非金属材料又は油性固形組成物への金属イオンの溶出を抑制する表面処理が施された金属材料からなる油性固形製品。
- (A)コウジ酸、(B)ポリエチレングリコール及び(C)IOB値が0.4以上1.8以下のエステル油又はエーテル油を混合溶解し、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の溶解混合物を得ること、
該溶解混合物を、(D)固形油を含有する組成物と混合すること、
を含む請求項1〜10のいずれか1項に記載の油性固形組成物の製造方法。
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