WO2022071026A1

WO2022071026A1 - 農薬テープ

Info

Publication number: WO2022071026A1
Application number: PCT/JP2021/034598
Authority: WO
Inventors: 真起岡田; 梨江服部; 一博河野
Original assignee: ニチバン株式会社
Priority date: 2020-09-30
Filing date: 2021-09-21
Publication date: 2022-04-07
Also published as: TW202218549A; CN115426881A; EP4223121A1; JPWO2022071026A1

Abstract

本発明は、基材１１、及び浸透移行性を有する農薬を含有する農薬含有粘着剤層１２をこの順に備え、基材１１が、生分解性を有し、かつ生分解性試験における質量残存率が５０％以下である農薬テープ１０である。

Description

農薬テープ

　本発明は、農薬テープに関する。

　現在、農薬は、薬剤の種類や対象物に応じて定められた使用法によって、安全に処理されている。しかしながら、その処理方法の多くは、空中への散布に代表されるように圃場に対して一斉に処理されることが多い。この方法は、作業コストが低く圃場へ画一的な処理ができるというメリットがある一方、処理時の農薬飛散（ドリフト）による作業者への被爆は避けられないだけでなく、近隣環境、生態系への影響も議論されている。また、画一的な処理ができる一方、対象区へ投下した薬剤は対象物へ付着するものと、付着せずに対象区の土壌へ落ちて効果を発揮できないものとがあり、薬効という観点でも効果的ではないとも言える。

　一方、処理の方法によっては、樹幹注入や塗布等の方法もある。しかしながら、樹幹注入では個々の対象物に対して、穴をあけて処理をする必要があり、手間がかかるだけではなく、対象物の育成に影響を与える可能性もある。また、塗布については、樹幹注入よりは簡便ではあるが、塗布するだけであるので、薬液表面が保護されず、雨や風等により土壌へ漏洩し薬効が得られない恐れや、周辺植物へのドリフトに対する懸念は解消されない。

　そこで、上記の方法とは異なる除草方法として、特許文献１に、ガムシートの粘着剤層面にインドール酢酸様活性の除草剤であるピクロラムをラノリンに混合させて基材に塗布した除草テープが提案されている。

実開昭４９－９９７２５号公報

　しかしながら、特許文献１に記載の除草テープは、シート１ｃｍ^２当りの薬量が多く、対象植物を枯死させる為には大量の農薬が必要となる。さらに、シート基材として、撥水性及び水不浸透性の材料が用いられており、植物が枯死した後、そのまま放置すれば土壌に残留するという問題がある。
シート基材の土壌への残留を防ぐには、枯死した植物から除草テープを剥離するという作業が発生する。クズなど繁殖力が強い植物の場合、貼付数も膨大であり、枯死した植物から除草テープを剥離する作業は困難を極める。
　また、除草剤に限らず、植物に適用される殺虫剤、殺菌剤等の農薬を含んだ農薬テープを作製しようとする場合においても、使用後の農薬テープは除去されることが望まれる。
　このようなことから、農薬テープの使用後も、剥離作業が不要で、土壌への残留が極力抑えられた環境に配慮した農薬テープの提供が求められる。
　本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、対象植物に対して農薬を効率良く投与でき、使用後の剥離作業が不要な環境に配慮された農薬テープを提供することを目的とする。

　本発明の農薬テープは、基材、及び浸透移行性を有する農薬を含有する農薬含有粘着剤層をこの順に備え、基材が、生分解性を有し、かつ生分解性試験における質量残存率が５０％以下である。

　本発明の農薬テープにおいて、水噴霧試験における農薬の農薬残留率は、３０％以上であることが好ましい。

　本発明によれば、植物に貼付して使用する農薬テープにおいて、使用後の剥離作業が不要な環境に配慮された農薬テープを得ることができる。

本発明の農薬テープの一実施形態を示す断面図である。基材の質量残存率を示すグラフである。

　以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態は例示の目的で提示するものであり、本発明は、以下に示す実施形態に何ら限定されるものではない。

［一実施形態］
　本発明の一実施形態について図１を参照しながら説明する。
　本発明の一実施形態の農薬テープ１０は、図１に示すように、基材１１、及び浸透移行性を有する農薬を含有する農薬含有粘着剤層１２をこの順に備えるものである。基材１１は、生分解性試験における質量残存率が５０％以下である。
　以下、基材１１及び農薬含有粘着剤層１２の詳細について説明する。

（基材）
　本発明の基材１１は、生分解性があり、かつ生分解性試験における質量残存率が５０％以下である。質量残留率が小さいほど、生分解性が高く、土壌中で分解しやすいことを示す。
　ここで、生分解性試験とは、基材１１を土壌中に埋設し、６０℃で６０日間放置して、基材１１がどれだけ生分解されたかを判断する試験である。
　また、質量残存率Ｒ（％）とは、基材１１の初期質量Ｗ_０に対する、生分解性試験後に残存した基材１１の質量Ｗ_１の割合（％）であり、下記式（１）から求められる。
　　Ｒ（％）＝Ｗ_１／Ｗ_０×１００　　　（１）
　　Ｗ_０：生分解性試験開始前の基材の初期質量（ｇ）
　　Ｗ_１：生分解性試験開始から６０日間後の基材の質量（ｇ）

　また、本発明の農薬テープ１０は、樹木の幹又は茎に巻き付けて使用するものであるため、可撓性又は柔軟性を有する材料であることが望ましい。さらに、基材１１は、幹又は茎への密着性、防水性、除草剤の蒸発及び漏洩を防ぐような物性を有するものであることが好ましい。このような観点から、基材１１の材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリ乳酸／ポリカプロラクトン共重合体、ポリ乳酸／ポリエーテル共重合体、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ブタンジオール／長鎖ジカルボン酸共重合体、ポリブチレンアジペート／テレフタレート、ポリテトラメチレンアジペート・コ・テレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリビニルアルコール、澱粉ポリエステル、セロハン、ポリブチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートアジペートから選ばれる少なくとも１種であることが好ましい。基材１１は単層であってもよく、これらの材料を積層したものでもよい。

　基材１１の厚みは、伸び、引張り強さ、作業性などの物理的性質、及び幹又は茎の表面への追随性を考慮して適宜選択可能であるが、５μｍ以上２００μｍ以下であることが好ましく、２０μｍ以上１００μｍ以下であることがより好ましい。基材１１の厚みが５μｍ未満であると、農薬テープ１０の強度及び取り扱い性が低下して、幹や茎への貼付が困難になり、樹皮との接触によって破れる場合がある。また、基材１１の厚みが２００μｍを超えると、農薬テープ１０が幹や茎に巻くのに、追随しにくくなり、剥がれやすくなる。

　基材１１の大きさは、対象植物の大きさ及び除草剤の濃度によって適宜選択することができる。

　基材１１は、農薬含有粘着剤層１２と基材１１の少なくとも一方にサンドブラスト処理、コロナ処理等の処理を行ってもよい。

　基材１１は、フェノールやアミン類等の酸化防止剤又はベンゾフェノン類等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系の光安定剤、炭酸カルシウムやシリカ等の充填剤を本発明の効果を阻害しない程度に含有してもよい。基材１１は、必要に応じて着色、文字等の印刷、剥離剤、プライマー、耐候性のある処理剤等の塗布や蒸着等の処理を行ってもよい。

　なお、基材１１の厚みが、ごく薄い場合は、基材１１の農薬含有粘着剤層１２が設けられている面とは反対の面に、キャリアフィルムを設けてもよい。キャリアフィルムとしては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレンなどの各種熱可塑性樹脂からなる各種フィルムを用いて形成することが好ましい。また、各種フィルムは、紙にラミネートされた状態のものを用いてもよい。
　これらの各種フィルム等から形成されるキャリアフィルムは、厚みを厚いものとするか、又は腰の強い材質からなるものとすることが望ましい。キャリアフィルムの厚みは、適宜設定できるが、通常、１０μｍ以上、好ましくは２０μｍ以上であり、その上限値は５００μｍ程度である。

（農薬含有粘着剤層）
　農薬含有粘着剤層１２は、単層であってもよく、複層からなるものであってもよい。農薬含有粘着剤層１２が、複数層からなる場合、種類の異なる粘着剤からなる層を積層したものとすることができる。また、複数の層にそれぞれ異なる農薬を含有させてもよい。農薬含有粘着剤層１２は、適用される植物の大きさ、基材１１の大きさ等に応じて、基材１１の一方の面の全面に形成されていてもよいし、一部に形成されていてもよい。

－粘着剤－
　農薬含有粘着剤層１２を形成する粘着剤としては、特に限定されるものではない。公知の粘着剤を用いることができ、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤、その他の合成樹脂を含有する粘着剤などが挙げられる。形成方法も特に限定されず、公知の粘着剤層の形成方法を利用して形成することができる。これら粘着剤は１種を単独で、又は２種以上を混合して用いてもよい。中でも、幹や茎への密着性の観点から、アクリル系粘着剤やゴム系粘着剤が好ましい。

　アクリル系粘着剤としては、例えばブチルアクリレート、２－エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート等の（メタ）アクリル酸アルキルエステルモノマーの単独重合体又はこれらモノマーの共重合体、（メタ）アクリル酸、（メタ）アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルピロリドン、（メタ）アクリルアミド、アルコキシアルキル（メタ）アクリレート等の、上記（メタ）アクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体を含有する粘着剤が挙げられる。アクリル系粘着剤には、公知の適宜な架橋剤を含有し得る。その架橋剤としては、例えば、イソシアネート架橋剤、エポキシ架橋剤、アジリジン系化合物、キレート系架橋剤等が挙げられる。それらの架橋剤の含有量は特に限定されない。また、必要に応じて、ロジン系、テルペン樹脂、脂肪系炭化水素樹脂、脂環炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、クマロン樹脂、これらの共重合体、変性物、水添物等の粘着付与剤を添加してもよい。

　ゴム系粘着剤としては、ゴム成分と粘着付与剤を混合し作製する。ゴム成分としては、例えば、合成ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレンイソプレンブロック共重合体とその水添物、スチレンブタジエンブロック共重合体とその水添ゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、ポリブテン、天然ゴムなどが挙げられる。

　農薬含有粘着剤層１２の厚みは、１０μｍ以上３００μｍ以下であることが好ましく、１５μｍ以上１５０μｍ以下であることがより好ましい。

－農薬－
　本発明の農薬テープに用いる農薬は、浸透移行性を有し、植物、病害虫に作用するものであれば特に限定されない。植物だけでなく、環境、他の動植物への影響を鑑みると、農薬登録されている薬剤を使用することが好ましい。
　農薬取締法によれば、「農薬」とは、「農作物（樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。）を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス（以下「病害虫」と総称する。）の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤（その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。）及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる植物成長調整剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。」とされている。また、「農作物等の病害虫を防除するための「天敵」も農薬とみなす。」とされている。

　農薬としては、具体的には、殺虫剤（農作物を加害する害虫を防除する薬剤）、殺菌剤（農作物を加害する病気を防除する薬剤）、殺虫殺菌剤（農作物の害虫、病気を同時に防除する薬剤）、除草剤（雑草を防除する薬剤）、殺そ剤（農作物を加害するノネズミなどを防除する薬剤）、植物成長調整剤（農作物の生育を促進又は抑制する薬剤）、誘引剤（主として害虫をにおいなどで誘き寄せる薬剤）、展着剤（ほかの農薬と混合して用い、その農薬の付着性を高める薬剤）、天敵（農作物を加害する害虫の天敵）、微生物剤（微生物を用いて農作物を加害する害虫病気等を防除する剤）が挙げられる。これらのなかでも、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤で浸透移行性があるものについて本発明に用いることができる。

　農薬の量は、植物への影響を考慮して、樹皮１ｃｍ^２に対する量で、０．０００１ｍｇ／ｃｍ^２以上９ｍｇ／ｃｍ^２未満であることが好ましく、０．０１５ｍｇ／ｃｍ^２以上３ｍｇ／ｃｍ^２であることがより好ましい。

　本実施形態の農薬テープ１０は、農薬含有粘着剤層１２を形成する粘着剤成分、及び各種添加剤を含む樹脂組成物に除草剤を添加して、基材１１上に塗布することによって得ることができる。

　農薬含有粘着剤層１２は、任意成分として、液状ゴム、架橋剤、軟化剤（可塑剤）、ｐＨ調整剤、酸化防止剤（抗酸化剤、防腐剤）、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤及び着色料等の、粘着層に通常配合され得る添加剤を含有してもよい。
　また、本実施形態で使用する農薬含有粘着剤層１２中には、薬剤の安定化、貼付時の薬剤の浸透性を促進させる為に、界面活性剤（陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、両性、シリコーン系等）、脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等の添加剤を添加することができる。

　農薬テープ１０の農薬含有粘着剤層１２中の農薬濃度としては、粘着剤組成物１００質量％に対して、０．０１質量％以上３０質量％以下であることが好ましく、０．１質量％以上２５質量％以下がより好ましく、１質量％以上２０質量％以下であることが更に好ましい。
　また、農薬含有粘着剤層１２の塗布量は、幹又は茎への農薬の移行性を考慮すると、１０ｇ／ｍ^２以上３００ｇ／ｍ^２以下であることが好ましく、１５ｇ／ｍ^２以上１５０ｇ／ｍ^２以下であることが好ましい。

　さらに、基材１１及び農薬含有粘着剤層１２の合計厚みは、幹又は茎への追随性を考慮すると、１５μｍ以上５００μｍ以下であることが好ましく、２５μｍ以上２５０μｍ以下であることが、更に好ましい。

－農薬残留率－
　本発明の農薬テープ１０は、水噴霧試験における農薬の農薬残留率Ｐ（％）が、３０％以上であることが好ましい。農薬残留率Ｐ（％）が高いほど、実際に植物に貼付した際の雨等で薬剤の漏出が少ないことを示し、対象植物のみに効果を発揮しやすい。
　ここで、水噴霧試験とは、農薬テープ１０をパネルに貼付し、農薬テープ１０の上から毎分０．７２Lの水を一定の割合で８時間噴霧して、農薬がどの程度流出したかを測定する試験である。
　また、農薬残留率Ｐ（％）とは、農薬テープ１０に含まれる初期の薬剤含量Ｍ_０に対する、水噴霧試験後に残留した薬剤含量Ｍ_１の割合であり、下記式（２）から求められる。
　　Ｐ（％）＝Ｍ_１／Ｍ_０×１００　　　（２）
　　Ｍ_０：初期の薬剤含量
　　Ｍ_１：水噴霧試験後の薬剤含量

［その他の構成］
（剥離紙）
　本発明の農薬テープ１０は、農薬含有粘着剤層１２の表面に剥離紙を貼付してもよい。貼付される剥離紙としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、無延伸ポリプロピレン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチックフィルム；上記のプラスチックフィルムに離型処理を施した加工シート；紙；紙に、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチックフィルムやそれらに離型処理を施した加工シートを積層したラミネート加工紙；これらのフィルム又はシートを相互に積層させた積層フィルム又はシートなどの、無色又は着色したシートを用いることができる。
　剥離紙の厚みは、特に限定されないが、１０μｍ以上５００μｍ以下が好ましく、２０μｍ以上３００μｍ以下がより好ましく、４０μｍ以上２００μｍ以下が更に好ましい。

　また、本発明の農薬テープは、製品の保存安定性の観点から、袋に密閉されていてもよい。

［農薬テープの使用方法］
　本発明の一実施形態の農薬テープ１０は、農薬を含む農薬含有粘着剤層１２を、植物又は樹木の茎又は幹に密着させるように貼付し、効果が発現するまで、所望の日数、放置して使用するものである。
　植物の茎又は幹において、農薬テープ１０を貼付する場所は、特に制限はなく、適宜選択してよい。

　本発明の農薬テープ１０は、基材１１が、生分解性であり、かつ生分解性試験における質量残存率が５０％以下であるため、対象植物に薬効が発現し終えた後も、農薬テープ１０を回収する必要がなく、環境に配慮されたテープといえる。

　本発明の農薬テープは、農薬が設けられた粘着テープを幹又は茎に貼付するだけであるため、農薬を希釈して散布する手間が省かれ、有用植物に影響を及ぼすことなく対象植物のみに薬効を発現させることができる。また、本発明の農薬テープは、従来の散布方法と同程度の濃度の農薬溶液に比べ少量で効率よく作用するため、土壌の汚染や、周囲へのドリフト、作業者への被爆を抑えることができる。

　特に、粘着剤層中に農薬を添加して粘着機能と薬効の両方を持たせようとすると、農薬と粘着層を構成する材料との相性から、除草剤を所望の量添加できない場合がある。しかしながら、近年の農薬の進歩により少量であっても、薬効を発現させることが可能であり、土壌の汚染や、周囲へのドリフト、作業者への被爆を抑えることができる。

［基材の生分解性］
　以下の基材を用意して、上記生分解性試験を行い、質量残存率を求めた。結果を図２に示す。
　（１）セロハン
　（２）ＰＢＳＡ（ポリブチレンサクシネートアジペート）
　（３）ポリ乳酸
　（４）ＰＢＳ（ポリブチレンサクシネート）
　（５）ＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート）
　（６）ＰＰ（ポリプロピレン）

　図２に示すように、（１）セロハン、（２）ＰＢＳＡ、（３）ポリ乳酸、及び（４）ＰＢＳは、６０日後に質量残存率が５０（％）以下であり、生分解性があり、農薬テープに好適であるといえる。
　一方、（５）ＰＥＴ及び（６）ＰＰは、生分解性がなく、農薬テープには不向きであるといえる。
　なお、（１）セロハン、（２）ＰＢＳＡ及び（３）ポリ乳酸は、６０日を待たずして３４日間以下で分解した。

［実施例１］
（農薬テープの作製）
　基材上に、除草剤を含有する農薬含有粘着剤層を形成して農薬テープを作製した。この農薬テープを、圃場の対象植物に巻き付けて、所定の日数、放置した。
　各構成材料は以下のとおりである。除草剤の濃度、液量、及び農薬量は、試験結果とともに表１に示す。
（１）基材：ポリ乳酸（厚み２３μｍ）
（２）農薬含有粘着剤層：アクリルエマルジョン系粘着剤（アクリル酸エステル／ＢＡ系）
（３）対象植物：クズ
（４）除草剤：グリホサートカリウム塩（（ＥＰＳＰ）合成酵素活性阻害剤）

［実施例２］
　基材にセロハン（厚さ３５μｍ）を用いた以外は、実施例１と同様に農薬テープを作製した。

［比較例１］
　基材にＰＥＴ（ポリエチレンテレフタレート、厚さ３８μｍ）を用いた以外は、実施例１と同様に農薬テープを作製した。

［比較例２］
　基材にＰＰ（ポリプロピレン）系不織布（厚さ７２μｍ）を用いた以外は、実施例１と同様に農薬テープを作製した。

［評価］
　上記実施例及び比較例について、以下の評価を行った。評価結果を表１に示す。

（基材の質量残存率）
　実施例及び比較例に用いた基材（大きさ：３×３ｃｍ）について、生分解性試験を行い、基材の質量残存率を上記式（１）から求めた。なお、実施例１のポリ乳酸及び実施例２のセロハンは、６０日を待たずして３４日間以下で分解したため、質量が測定可能な時期に基材を採取して質量残存率を求めたが、実際は、６０日後には、質量残存率はほぼ０である。

（農薬残留率）
　農薬テープに０．７２Ｌ／分の水を８時間噴霧して、前述の式（２）から農薬残留率を求めた。

　上記実施例及び比較例の農薬テープをクズに巻き付けて、貼付し、貼付から４９日後に、植物の状態、新芽及び残葉の状態を観察した。試験中は、雨を想定して対象植物に多量の水がかかるようにした。

（植物の状態）
　植物の状態を以下の基準で評価した。なお、「枯死」とは、クズの茎の水分がなくなり、木質化した状態を示し、「枯死せず」とは、茎に水分が残っている状態を示す。
　Ａ：枯死
　Ｂ：枯死せず

（新芽の状態）
　対象植物の、農薬テープを貼付した箇所から先端にかけて６０ｃｍの領域において、新芽の有無を確認し、以下の基準で評価した。
　Ａ：新芽が無い
　Ｂ：新芽が芽吹く気配がある
　Ｃ：新芽（葉）が出ている

（残葉の状態）
　対象植物の葉の状況を観察し、以下の基準で評価した。
　Ａ：残葉なし
　Ｂ：植物全体の葉の８０％以上が変色している
　Ｃ：植物全体の５０％以上８０％未満が変色している
　Ｄ：植物全体の５０％未満が変色している

　表１に示すように、本発明は、質量残留率が極めて低い基材を用いているため、使用後は土壌で分解され、環境に配慮された農薬テープであることがわかる。このため、植物が枯死した後は、農薬テープを回収する必要がなく、作業者の負担を軽減することができる。また、本発明の農薬テープは、植物に貼付するものであり、農薬の散布を必要としないため、農薬の飛散によって有用植物まで枯死させる心配が無い。

　１０　　農薬テープ
　１１　　基材
　１２　　農薬含有粘着剤層

Claims

　基材、及び浸透移行性を有する農薬を含有する農薬含有粘着剤層をこの順に備え、
　前記基材が、生分解性を有し、かつ生分解性試験における質量残存率が５０％以下である農薬テープ。
　基材、粘着剤層、及び浸透移行性を有する農薬を含有する農薬保持層をこの順に備え、
　前記基材が、生分解性を有し、かつ生分解性試験における質量残存率が５０％以下である農薬テープ。
　水噴霧試験における前記農薬の農薬残留率が、３０％以上である請求項１又は２記載の農薬テープ。