WO2019043791A1 - エレベータのガイドレール加工装置 - Google Patents
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Abstract
エレベータのガイドレール加工装置は、フレーム、ガイドレールの制動面に加工を施す円筒状の加工具、及び加工具の外周面を制動面に平行に接触させる少なくとも1つのガイドローラを有している。吊り下げ部材によりフレームを吊り下げた状態からフレームを上昇又は下降させる場合に、ガイドローラが制動面上を転がって行こうとする方向であって、ガイドローラの回転軸に直交する方向をガイドローラの回転方向とする。少なくとも1つのガイドローラの回転方向は、ガイドレールの長手方向に対して傾斜している。
Description
この発明は、昇降路に設置された状態のガイドレールに対して加工を施すエレベータのガイドレール加工装置に関するものである。
従来のエレベータでは、工場に設置された専用の加工設備を用いて、複数本のガイドレールが効率良く高精度に加工され製造される(例えば、特許文献1参照)。
また、従来のエレベータガイドレールの研削装置では、かご上部に枠体が設置されている。枠体には、ガイドレールを研削するグラインダが設けられている。また、枠体のグラインダの上下には、それぞれ複数のローラが設けられている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、従来のガイドレール清掃装置では、ガイドレールに接する複数の板状の清掃体が清掃体取付部材に取り付けられている。清掃体取付部材の上下には、それぞれ複数の駆動ローラが設けられている。これらの駆動ローラには、それぞれ減速機構を介してモータが接続されている(例えば、特許文献3参照)。
従来のエレベータのリニューアル工事において、既設のかごを新設のかごと入れ換える場合、既設のかごに搭載されている既設の非常止め装置も新設の非常止め装置に入れ換えられる。また、既設のガイドレールの案内面は、既設のかごに搭載されているガイド装置との長期間の接触により摩耗し、非常止め装置に対する摩擦係数が小さくなっていることがある。このため、既設のかごを新設のかごと入れ換える場合、既設のガイドレールも新設のガイドレールと入れ換えられる。
しかし、この場合、既設のガイドレールの撤去、新設のガイドレールの設置、及び新設のガイドレールの位置決め等に多大な手間がかかり、工期が長くなる。また、コストも高くなる。
これに対して、特許文献1に示された従来のガイドレールの加工設備は、あくまで新しいガイドレールを製造するための装置であり、工場に設置されているため、既設のガイドレールに加工を施そうとすると、昇降路からガイドレールを取り外し、工場に搬送して加工を施し、さらに昇降路に搬入し、再度据え付ける必要があり、結局は工期が長くなる。
また、特許文献2の研削装置では、グラインダが枠体を介してかごに固定されている。このため、ガイドレールの継ぎ目の段差を削る加工など、部分的な加工は可能である。しかし、かごを走行させながらガイドレールの全体に渡って連続して加工を施そうとすると、かごの振動の影響を受け、均等な加工ができない。
さらに、特許文献3の清掃装置は、単に清掃体によりガイドレールの表面を清掃するものであり、ガイドレールの制動面に対して加工を施すことはできない。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、昇降路にガイドレールを設置したまま、ガイドレールの制動面に対して、連続して安定した加工を施すことができるエレベータのガイドレール加工装置を得ることを目的とする。
この発明に係るエレベータのガイドレール加工装置は、昇降体の非常停止時に非常止め装置が接する制動面と昇降体側の端面である先端面とを有しているガイドレールに対して加工を施すエレベータのガイドレール加工装置であって、可撓性の吊り下げ部材によって昇降路内に吊り下げられるフレーム、フレームに設けられており、制動面に加工を施す円筒状の加工具、及び加工具と並んでフレームに設けられており、加工具とともに制動面に接することにより、加工具の外周面を制動面に平行に接触させる少なくとも1つのガイドローラを備え、吊り下げ部材によりフレームを吊り下げた状態からフレームを上昇又は下降させる場合に、ガイドローラが制動面上を転がって行こうとする方向であって、ガイドローラの回転軸に直交する方向をガイドローラの回転方向とすると、少なくとも1つのガイドローラの回転方向は、加工具が制動面から外れるのを防止するように、ガイドレールの長手方向に対して傾斜している。
この発明のエレベータのガイドレール加工装置は、少なくとも1つのガイドローラの回転方向は、加工具が制動面から外れるのを防止するように、ガイドレールの長手方向に対して傾斜しているので、昇降路にガイドレールを設置したまま、ガイドレールの制動面に対して、連続して安定した加工を施すことができる。
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータのリニューアル工事中の状態を示す構成図である。図において、昇降路1内には、一対のかごガイドレール2が設置されている。各かごガイドレール2は、複数本のレール部材を上下方向に継ぎ合わせて構成されている。また、各かごガイドレール2は、複数のレールブラケット(図示せず)を介して昇降路壁に対して固定されている。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1によるエレベータのリニューアル工事中の状態を示す構成図である。図において、昇降路1内には、一対のかごガイドレール2が設置されている。各かごガイドレール2は、複数本のレール部材を上下方向に継ぎ合わせて構成されている。また、各かごガイドレール2は、複数のレールブラケット(図示せず)を介して昇降路壁に対して固定されている。
昇降体であるかご3は、一対のかごガイドレール2間に配置されている。また、かご3は、かごガイドレール2に沿って昇降路1内を昇降する。
かご3の上部には、懸架体4の第1の端部が接続されている。懸架体4としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。懸架体4の第2の端部には、釣合おもり(図示せず)が接続されている。かご3及び釣合おもりは、懸架体4により昇降路1内に吊り下げられている。
懸架体4の中間部は、巻上機(図示せず)の駆動シーブに巻き掛けられている。かご3及び釣合おもりは、駆動シーブを回転させることにより、昇降路1内を昇降する。昇降路1内には、釣合おもりの昇降を案内する一対の釣合おもりガイドレール(図示せず)が設置されている。
かご3の下部には、非常止め装置5が搭載されている。非常止め装置5は、一対のかごガイドレール2を把持することにより、かご3を非常停止させる。
かご3の上部の幅方向両端部とかご3の下部の幅方向両端部とには、かごガイドレール2に接するガイド装置6がそれぞれ取り付けられている。各ガイド装置6としては、スライディングガイドシュー又はローラガイド装置が用いられている。
かご3の下方には、かごガイドレール2に対して加工を施すガイドレール加工装置7が設けられている。図1ではガイドレール加工装置7を単なるボックスで示しているが、詳細な構成は後述する。
ガイドレール加工装置7は、可撓性の吊り下げ部材8を介して、かご3の下部から昇降路1内に吊り下げられている。吊り下げ部材8としては、例えば、ロープ、ワイヤ又はベルトが用いられる。また、ガイドレール加工装置7は、昇降路1に設置された状態のかごガイドレール2に加工を施す際に使用されるもので、通常運転時には吊り下げ部材8とともに撤去される。
図2は図1のII-II線に沿うかごガイドレール2の断面図である。かごガイドレール2は、ブラケット固定部2aと、案内部2bとを有している。ブラケット固定部2aは、レールブラケット(図示せず)を介して昇降路1に固定される部分である。案内部2bは、ブラケット固定部2aの幅方向中央からかご3側へ直角に突出し、かご3の昇降を案内する。また、案内部2bは、かご3の非常停止時に非常止め装置5により把持される。
さらに、案内部2bは、互いに対向する一対の制動面2cと、先端面2dとを有している。先端面2dは、案内部2bのブラケット固定部2aとは反対側、即ちかご3側の端面である。一対の制動面2c及び先端面2dは、通常運転時にはガイド装置6が接する案内面として機能する。また、一対の制動面2cは、かご3の非常停止時に非常止め装置5が接する面である。
図3は図1のガイドレール加工装置7の詳細な構成を示す斜視図、図4は図3のガイドレール加工装置7を図3とは異なる角度から見た斜視図、図5は図3のガイドレール加工装置7を図3及び図4とは異なる角度から見た斜視図、図6は図3のガイドレール加工装置7を図3~5とは異なる角度から見た斜視図である。
ガイドレール加工装置7は、フレーム11、接続具12、加工具13、駆動装置14、第1のガイドローラ15、第2のガイドローラ16、第1の押付ローラ17、第2の押付ローラ18、第1の先端面ローラ19、及び第2の先端面ローラ20を有している。
フレーム11は、フレーム本体21とフレーム分割体22とを有している。接続具12、加工具13、駆動装置14、第1のガイドローラ15、第2のガイドローラ16、第1の先端面ローラ19、及び第2の先端面ローラ20は、フレーム本体21に設けられている。
第1の押付ローラ17及び第2の押付ローラ18は、フレーム分割体22に設けられている。
接続具12は、フレーム本体21の上端部に設けられている。接続具12には、吊り下げ部材8が接続される。
駆動装置14は、フレーム本体21の加工具13とは反対側に配置されている。また、駆動装置14は、加工具13を回転させる。駆動装置14としては、例えば電動モータが用いられている。
加工具13としては、例えば、外周面に多数の砥粒が設けられている円筒状の平形砥石が用いられるが、切削工具等を用いてもよい。加工具13の外周面を制動面2cに接触させた状態で加工具13を回転させることにより、制動面2cの少なくとも一部、即ち一部又は全面を削り取ることができる。これにより、例えば制動面2cの表面粗さを粗くし、非常止め装置5に対する制動面2cの摩擦係数をより適正な値にすることができる。
加工具13により制動面2cを加工する際には、加工屑が発生する。フレーム本体21には、加工屑がガイドレール加工装置7の周囲に散乱するのを防止するためのカバー(図示せず)が設けられている。
第1のガイドローラ15及び第2のガイドローラ16は、加工具13と並んでフレーム本体21に設けられている。吊り下げ部材8によりフレーム11を吊り下げた状態で、第1のガイドローラ15は加工具13の上方に配置され、第2のガイドローラ16は加工具13の下方に配置される。加工具13は、第1のガイドローラ15と第2のガイドローラ16との中間に配置されている。
第1のガイドローラ15及び第2のガイドローラ16は、加工具13とともに制動面2cに接することにより、加工具13の外周面を制動面2cに平行に接触させる。即ち、加工具13の幅方向全体で加工具13の外周面を制動面2cに均等に接触させる。
ガイドローラ15,16の制動面2cとの接触部である2本の線分と、加工具13の制動面2cとの接触部である1本の線分とは、1つの平面内に存在できるように設定されている。
第1の押付ローラ17は、第1のガイドローラ15との間に案内部2bを挟み込む。第2の押付ローラ18は、第2のガイドローラ16との間に案内部2bを挟み込む。即ち、加工具13、第1のガイドローラ15、及び第2のガイドローラ16が加工する側の制動面2cに接するとき、第1の押付ローラ17及び第2の押付ローラ18は、反対側の制動面2cに接する。
加工具13及びローラ15,16,17,18の回転軸は、互いに平行又はほぼ平行である。また、加工具13の回転軸は、かごガイドレール2の加工時には、水平又はほぼ水平である。
第1の先端面ローラ19は、フレーム本体21の上端部に設けられている。第2の先端面ローラ20は、フレーム本体21の下端部に設けられている。第1の先端面ローラ19及び第2の先端面ローラ20の少なくともいずれか一方は、かごガイドレール2の加工時に先端面2dに接触する。
フレーム分割体22は、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込む挟み込み位置と、挟み込み位置よりも押付ローラ17,18がガイドローラ15,16から離れた解放位置との間で、フレーム本体21に対して直線的に移動可能になっている。
フレーム本体21には、フレーム本体21に対するフレーム分割体22の移動を案内する一対の棒状のフレームガイド23が設けられている。フレームガイド23は、フレーム分割体22を貫通している。
フレーム本体21の上下端部には、一対のロッド固定部24が設けられている。フレーム分割体22には、ロッド固定部24に対向する一対の対向部25が設けられている。各ロッド固定部24には、フレームばねロッド26が固定されている。各フレームばねロッド26は、対向部25を貫通している。
フレームばねロッド26には、フレームばね受け27が取り付けられている。フレームばね受け27と対向部25との間には、それぞれフレームばね28が設けられている。各フレームばね28は、フレーム分割体22を挟み込み位置へ移動させる力を発生している。
フレームばね28による押付ローラ17,18の加圧力は、ガイドレール加工装置7の重心位置の偏心によって、ガイドレール加工装置7が傾こうとする力に打ち勝ち、ガイドローラ15,16の外周面と制動面2cとの平行を維持できるような大きさに設定されている。
また、フレームばね28による押付ローラ17,18の加圧力は、加工具13を回転させながらガイドレール加工装置7をかごガイドレール2に沿って移動させたときにも、ガイドローラ15,16の外周面と制動面2cとの平行を維持できるような大きさに設定されている。
フレーム本体21とフレーム分割体22との間には、フレームばね28のばね力に抗して、フレーム分割体22を解放位置に保持する解放位置保持機構(図示せず)が設けられている。
加工具13及び駆動装置14は、加工位置と離隔位置との間でフレーム本体21に対して直線的に移動可能になっている。加工位置は、ガイドローラ15,16が制動面2cに接した状態で、加工具13が制動面2cに接する位置である。離隔位置は、ガイドローラ15,16が制動面2cに接した状態で、加工具13が制動面2cから離れる位置である。
上記のように、押付ローラ17,18は、制動面2cに対して直角の方向へ移動可能になっている。また、加工具13及び駆動装置14も、制動面2cに対して直角の方向へ移動可能になっている。
図4に示すように、駆動装置14は、平板状の可動支持部材29に取り付けられている。フレーム本体21には、一対の棒状の駆動装置ガイド30が固定されている。可動支持部材29は、駆動装置ガイド30に沿ってスライド可能になっている。これにより、加工具13及び駆動装置14は、フレーム本体21に対して直線的に移動可能になっている。
可動支持部材29とフレーム本体21との間には、加工具13及び駆動装置14を加工位置側へ移動させる力を発生する加工具ばね31が設けられている。加工具ばね31による加工具13の加圧力は、ビビリなどの不具合が発生しない大きさに設定されている。
フレーム本体21と可動支持部材29との間には、加工具ばね31のばね力に抗して、加工具13及び駆動装置14を離隔位置に保持する離隔位置保持機構(図示せず)が設けられている。
なお、図7は図3のガイドレール加工装置7をかごガイドレール2にセットした状態を示す斜視図、図8は図4のガイドレール加工装置7をかごガイドレール2にセットした状態を示す斜視図、図9は図5のガイドレール加工装置7をかごガイドレール2にセットした状態を示す斜視図である。
図10は図7の加工具13とかごガイドレール2との接触状態を示す断面図である。加工具13の外周面の幅寸法は、制動面2cの幅寸法よりも大きい。これにより、加工具13は、制動面2cの幅方向の全体に接触している。
次に、図11は実施の形態1のガイドレール加工方法を示すフローチャートである。ガイドレール加工装置7によりかごガイドレール2に加工を施す場合、まずガイドレール加工装置7を制御する制御装置(図示せず)及び電源(図示せず)をかご3に搬入する(ステップS1)。また、ガイドレール加工装置7を昇降路1のピットに搬入する(ステップS2)。
続いて、かご3を昇降路1の下部に移動させておき、吊り下げ部材8を介してガイドレール加工装置7をかご3に接続して昇降路1内に吊り下げる(ステップS3)。また、ガイドレール加工装置7を制御装置及び電源に接続する(ステップS4)。そして、ガイドレール加工装置7をかごガイドレール2にセットする(ステップS5~S6)。
具体的には、図12に示すように、加工具13が離隔位置に保持され、フレーム分割体22が解放位置に保持された状態で、ガイドローラ15,16を一方の制動面2cに接触させる(ステップS5)。また、先端面ローラ19,20を先端面2dに接触させる。
この後、フレーム分割体22を挟み込み位置に移動させ(ステップS6)、図13に示すように、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込ませる。
このようにしてガイドレール加工装置7をかごガイドレール2にセットした後、加工具13を回転させる(ステップS7)。そして、図14に示すように、加工具13及び駆動装置14を加工位置に移動させるとともに、かご3を定格速度よりも低速で最上階へ移動させる(ステップS8)。即ち、加工具13によって制動面2cに加工を施しながら、ガイドレール加工装置7をかごガイドレール2に沿って移動させる。かご3が最上階に到着すると、加工具13及び駆動装置14を離隔位置に移動させる(ステップS9)。また、加工具13の回転を停止させるとともに、かご3を停止させる(ステップS10)。
この後、かご3を最下階へ移動させながら、加工量の測定を行う(ステップS11)。この例では、かご3の上昇時のみ制動面2cに加工を施すので、かご3の下降時には、加工具13を制動面2cから離しておくのが好ましい。加工量の測定は、例えば、案内部2bの厚さ寸法を測定、又は制動面2cの表面粗さを測定することにより行う。
かご3が最下階に到着すると、加工量が予め設定した値に達していたかどうかを確認する(ステップS12)。加工量が不十分であった場合、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込み、ステップS7~12を再度実施する。加工量が十分であった場合、加工完了となる。
反対側の制動面2cに対して加工を施す場合、図3とは左右対称のガイドレール加工装置7を用いるか、又は図3のガイドレール加工装置7を上下反対向きに吊り下げればよい。後者の場合、フレーム本体21の下端部にも接続具12を追加すればよい。
上記の加工方法を残りのかごガイドレール2に対しても施すことにより、全ての制動面2cに加工を施すことができる。また、2台以上のガイドレール加工装置7により2面以上の制動面2cに同時に加工を施すこともできる。
次に、実施の形態1のエレベータのリニューアル方法について説明する。実施の形態1では、既設のかごガイドレール2を残したまま、既設のかご3及び既設の非常止め装置5を新設のかご及び新設の非常止め装置に入れ換える。
具体的には、既設のかごガイドレール2の制動面2cの少なくとも一部を、上記のようなガイドレール加工装置7を用いて削り取る加工を施す(レール加工工程)。このとき、吊り下げ部材8を介してガイドレール加工装置7を既設のかご3に接続し、既設のかご3の移動によりガイドレール加工装置7を既設のかごガイドレール2に沿って移動させる。
この後、既設のかごガイドレール2を残したまま、既設のかご3及び既設の非常止め装置5を、新設のかご及び新設の非常止め装置に入れ換える(入れ換え工程)。
ここで、図15は図3の加工具13が制動面2cに適正に押し当てられている状態を模式的に示す説明図である。かごガイドレール2の制動面2cの全面を加工するためには、ガイドレール加工装置7による加工中、図10及び図15に示すように制動面2cの全面に加工具13が押し当てられている必要がある。
この状態では、第1及び第2の先端面ローラ19,20の少なくともいずれか一方は、先端面2dに接触している。また、加工具13、ガイドローラ15,16、及び押付ローラ17,18は、制動面2cのほぼ中央に配置されている。
これに対して、例えば図16に示すように、ガイドレール加工装置7の移動中に加工具13が制動面2cの一部に接触しない状態になると、制動面2cの幅方向の全体を加工することができない。
図16のような状態になるのを防止するため、実施の形態1のガイドレール加工装置7では、ガイドローラ15,16及び押付ローラ17,18の回転方向が、第1のガイドローラ15の回転軸の中心点と第2のガイドローラ16の回転軸の中心点とを結んだ直線に対して平行ではないように設定されている。即ち、吊り下げ部材8によりフレーム11を吊り下げた状態で、ガイドローラ15,16及び押付ローラ17,18の回転軸が、それぞれ水平ではなく傾斜している。
各ガイドローラ15,16の回転方向とは、吊り下げ部材8によりフレーム11を吊り下げた状態から、フレーム11を上昇又は下降させる場合に、各ガイドローラ15,16が制動面2c上を転がって行こうとする方向である。また、各ガイドローラ15,16の回転方向とは、図17に実線矢印で示すように、各ガイドローラ15,16の回転軸に直交する方向である。
同様に、各押付ローラ17,18の回転方向とは、各押付ローラ17,18が制動面2c上を転がって行こうとする方向であり、各押付ローラ17,18の回転軸に直交する方向である。
図18は図17の第1及び第2のガイドローラ15,16を制動面2cに当ててフレーム11を上昇させる直前の状態を示す説明図である。第1のガイドローラ15の回転軸の中心点と第2のガイドローラ16の回転軸の中心点とを結んだ直線は、かごガイドレール2の長手方向、即ち鉛直方向に対して平行である。
また、フレーム11を上昇させる際の第1のガイドローラ15の回転方向は、かごガイドレール2の長手方向に対して、先端面2dとは反対側、即ちブラケット固定部2a側へ僅かに傾斜している。さらに、フレーム11を上昇させる際の第2のガイドローラ16の回転方向は、かごガイドレール2の長手方向に対して、先端面2d側へ僅かに傾斜している。
第1及び第2のガイドローラ15,16の回転方向は、かごガイドレール2の長手方向に対して、互いに反対側へ同じ角度だけ傾斜している。この傾斜角度は、例えば0.09°以上10°以下である。図17以降の図では、理解を容易にするため、傾斜角度を大きくして示している。
第1及び第2の押付ローラ17,18については、対応するガイドローラ15,16と同じ方向へ同じ角度だけ傾斜している。
図18の状態からフレーム11を上昇させると、第1のガイドローラ15は、ブラケット固定部2a側へ移動しようとする。また、第2のガイドローラ16は、先端面2d側へ移動しようとする。即ち、ガイドレール加工装置7には、図18の反時計方向への回転力が発生する。
このとき、第1の先端面ローラ19が先端面2dに押し付けられることにより、第1のガイドローラ15のブラケット固定部2a側への移動は規制される。
また、図19に示すように、第2のガイドローラ16の回転軸がかごガイドレール2の長手方向に対して直角になると、第2のガイドローラ16には、先端面2d側へ移動しようとする力が発生しなくなる。また、第2のガイドローラ16には、ブラケット固定部2a側へ移動しようとする力も発生しない。
従って、ガイドレール加工装置7は、図19の状態のまま上昇して行くことになる。そして、図19の状態では、制動面2cの全体に加工具13が接している。
一方、図20は図17の第1及び第2のガイドローラ15,16を制動面2cに当ててフレーム11を下降させる直前の状態を示す説明図である。図20の状態からフレーム11を下降させると、第2のガイドローラ16は、ブラケット固定部2a側へ移動しようとする。また、第1のガイドローラ15は、先端面2d側へ移動しようとする。即ち、ガイドレール加工装置7には、図20の時計方向への回転力が発生する。
このとき、第2の先端面ローラ20が先端面2dに押し付けられることにより、第2のガイドローラ16のブラケット固定部2a側への移動は規制される。
また、図21に示すように、第1のガイドローラ15の回転軸がかごガイドレール2の長手方向に対して直角になると、第1のガイドローラ15には、先端面2d側へ移動しようとする力が発生しなくなる。また、第1のガイドローラ15には、ブラケット固定部2a側へ移動しようとする力も発生しない。
従って、ガイドレール加工装置7は、図21の状態のまま下降して行くことになる。そして、図21の状態では、制動面2cの全体に加工具13が接している。
このように、かごガイドレール2の長手方向に沿ってフレーム11を上昇させる場合の第1のガイドローラ15の回転方向は、かごガイドレール2の長手方向に対して、先端面2dから離れる方向へ傾斜している。
また、かごガイドレール2の長手方向に沿ってフレーム11を下降させる場合の第2のガイドローラ16の回転方向は、かごガイドレール2の長手方向に対して、先端面2dから離れる方向へ傾斜している。即ち、ガイドローラ15,16の回転方向は、加工具13が制動面2cから外れるのを防止するように、かごガイドレール2の長手方向に対して傾斜している。
このようなガイドレール加工装置7では、吊り下げ部材8によって吊り下げた状態でフレーム11をかごガイドレール2に沿って移動させても、加工具13が制動面2cから外れるのが防止される。従って、昇降路1にかごガイドレール2を設置したまま、制動面2cに対して、連続して安定した加工を施すことができる。
また、ガイドレール加工装置7を上昇させる場合でも下降させる場合でも、制動面2cに対して、連続して安定した加工を施すことができる。
さらに、フレーム11に第1及び第2の先端面ローラ19,20が設けられているので、簡単な構成により、フレーム11が必要以上に回転するのを阻止することができる。
さらにまた、可撓性の吊り下げ部材8を介してフレーム11を昇降路1内に吊り下げ、加工具13により制動面2cに加工を施しながらフレーム11をかごガイドレール2に沿って移動させる。このため、非常止め装置5に対するかごガイドレール2の摩擦係数を昇降路1にかごガイドレール2を設置したまま、より適正化することができる。
また、かごガイドレール2のほぼ全長に渡って、制動面2cを均等に加工することができる。
さらに、吊り下げ部材8によりフレーム11が吊り下げられているので、制動面2cの加工中にかご3の振動がフレーム11に伝わるのを防止することができる。これにより、加工不具合の発生を防止し、制動面2cを安定して加工することができる。
さらにまた、ガイドレール加工装置7をかご3から吊り下げるので、ガイドレール加工装置7を揚重する装置を別途用意する必要がない。また、かごガイドレール2の非常止め装置5が把持する領域に効率的に加工を施すことができる。さらに、昇降行程が長いエレベータにおいても、長い吊り下げ部材を用いることなく、かごガイドレール2のほぼ全長に渡って容易に加工を施すことができる。
また、フレーム11にガイドローラ15,16を設けたので、加工具13の外周面をより確実に制動面2cに平行に接触させることができ、削り残しを発生させずに、制動面2cに均等に加工を施すことができる。
さらに、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを挟み込むので、加工具13の外周面をより安定して制動面2cに平行に接触させることができる。また、制動面2cに上下方向の傾きがあった場合にも、加工具13の外周面と制動面2cとの平行を維持することができる。
さらにまた、フレーム本体21に接続具12が設けられているので、接続具12に吊り下げ部材8を接続して昇降路1内に吊り下げた状態で、フレーム11をかごガイドレール2に沿って移動させることができる。
また、加工具13の上方に第1のガイドローラ15が配置され、加工具13の下方に第2のガイドローラ16が配置されているので、加工具13の外周面と制動面2cとの平行をより安定して維持することができる。これにより、かごガイドレール2の上下方向の傾き、曲がり、又はうねりがあった場合にも、加工具13の外周面と制動面2cとの平行を維持することができる。
さらに、第1及び第2のガイドローラ15,16の中間位置に加工具13が配置されている。このため、フレーム本体21に対する加工具13の移動方向を制動面2cに直角な方向とすることができる。これにより、加工具13を制動面2cに押し付ける力を安定させることができる。また、加工のムラ、即ち削り取る量の不均一が発生することがなく、安定した加工を施すことができる。
さらにまた、フレーム11をフレーム本体21とフレーム分割体22とに分割し、フレームばね28によりフレーム分割体22を挟み込み位置側へ移動させる力を発生させるので、簡単な構成により、ガイドローラ15,16と押付ローラ17,18との間に案内部2bを安定して挟み込むことができる。
また、加工具13及び駆動装置14を加工位置と離隔位置との間で移動可能とし、加工具ばね31により加工具13及び駆動装置14を加工位置側へ移動させる力を発生させるので、簡単な構成により、加工具13を安定して制動面2cに押し当て、安定した加工を施すことができる。また、加工具13を離隔位置に移動させることで、制動面2cを加工せずにガイドレール加工装置7をかごガイドレール2に沿って移動させることもできる。
さらに、フレーム本体21に先端面ローラ19,20を設けたので、ガイドレール加工装置7をかごガイドレール2に沿って安定した姿勢でスムーズに移動させることができる。
また、上記のようなエレベータのリニューアル方法では、既設のかごガイドレール2の制動面2cの少なくとも一部を削り取る加工を施した後、既設のかごガイドレール2を残したまま、既設のかご3及び既設の非常止め装置5を、新設のかご及び新設の非常止め装置に入れ換える。このため、新設の非常止め装置に対する既設のかごガイドレール2の摩擦係数を昇降路1にかごガイドレール2を設置したまま、より適正化することができる。これにより、既設のかごガイドレール2を取り換えることなく、エレベータのリニューアルを実現することができ、工期を大幅に短縮することができるとともに、工事にかかる費用も大幅に削減することができる。
さらに、レール加工工程では、ガイドレール加工装置7を、可撓性の吊り下げ部材8を介して昇降路1内に吊り下げ、加工具13を回転させながら、吊り下げ部材8を介してガイドレール加工装置7をかごガイドレール2に沿って移動させるので、かごガイドレール2のほぼ全長に渡って、制動面2cを安定して加工することができる。
さらにまた、ガイドレール加工装置7を既設のかご3を利用して移動させるので、加工時に発生する加工屑等が新設のかご及び新設の非常止め装置5に付着するのを防止することができる。
実施の形態1では、第1及び第2のガイドローラ15,16が互いに反対方向に同じ角度で傾斜している例を示したが、その他の例を以下の実施の形態に示す。なお、図22以降の図では、第1及び第2のガイドローラ15,16の少なくともいずれか一方とフレーム11とのみを示す。また、図22以降の図では、図の上下方向がかごガイドレール2の長手方向である。さらに、図22以降の図では、図20と同様に、フレーム11の左側にかごガイドレール2のブラケット固定部2a側が配置されている。
実施の形態2.
図22はこの発明の実施の形態2によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図23は図22のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図、図24は図22のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
図22はこの発明の実施の形態2によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図23は図22のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図、図24は図22のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
実施の形態2では、かごガイドレール2の長手方向に対する第1のガイドローラ15の回転方向の傾斜角度が、かごガイドレール2の長手方向に対する第2のガイドローラ16の回転方向の傾斜角度よりも大きい。
仮に、第1のガイドローラ15の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に対して5°傾斜しており、第2のガイドローラ16の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に対して2°傾斜しているとする。この場合、フレーム11を上昇させると、図23に示すように、フレーム11が図の反時計方向に2°回転してガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
また、フレーム11を下降させると、図24に示すように、フレーム11が図の時計方向に5°回転してガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
このように、第1及び第2のガイドローラ15,16の傾斜角度が異なっていても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態3.
次に、図25はこの発明の実施の形態3によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図26は図25のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図、図27は図25のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
次に、図25はこの発明の実施の形態3によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図26は図25のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図、図27は図25のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
実施の形態3では、かごガイドレール2の長手方向に対する第1のガイドローラ15の回転方向の傾斜角度が、かごガイドレール2の長手方向に対する第2のガイドローラ16の回転方向の傾斜角度よりも小さい。
仮に、第1のガイドローラ15の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に対して2°傾斜しており、第2のガイドローラ16の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に対して5°傾斜しているとする。この場合、フレーム11を上昇させると、図26に示すように、フレーム11が図の反時計方向に5°回転してガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
また、フレーム11を下降させると、図27に示すように、フレーム11が図の時計方向に2°回転してガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
このように、第1及び第2のガイドローラ15,16の傾斜角度が異なっていても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態4.
次に、図28はこの発明の実施の形態4によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図29は図28のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図、図30は図28のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
次に、図28はこの発明の実施の形態4によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図29は図28のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図、図30は図28のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
実施の形態4では、吊り下げ部材8によりフレーム11を吊り下げた状態で、第2のガイドローラ16の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に平行である。
仮に、第1のガイドローラ15の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に対して5°傾斜しているとする。この場合、フレーム11を上昇させると、図29に示すように、フレーム11がほぼ回転せずにガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
また、フレーム11を下降させると、図30に示すように、フレーム11が図の時計方向に5°回転してガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
このように、第1のガイドローラ15のみを傾斜させても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態5.
次に、図31はこの発明の実施の形態5によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図32は図31のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図、図33は図31のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
次に、図31はこの発明の実施の形態5によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図32は図31のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図、図33は図31のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
実施の形態5では、吊り下げ部材8によりフレーム11を吊り下げた状態で、第1のガイドローラ15の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に平行である。
仮に、第2のガイドローラ16の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に対して5°傾斜しているとする。この場合、フレーム11を上昇させると、図32に示すように、フレーム11が図の反時計方向に5°回転してガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
また、フレーム11を下降させると、図33に示すように、フレーム11がほぼ回転せずにガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
このように、第2のガイドローラ16のみを傾斜させても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態6.
次に、図34はこの発明の実施の形態6によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図35は図34のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図である。
次に、図34はこの発明の実施の形態6によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図35は図34のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図である。
実施の形態6では、第1及び第2のガイドローラ15,16の回転方向が、かごガイドレール2の長手方向に対して互いに同じ方向へ同じ角度だけ傾斜している。この場合、フレーム11を上昇させると、フレーム11をブラケット固定部2a側へ移動させようとする力のみが生じる。このため、図35に示すように、フレーム11がほぼ回転せずにガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
一方、フレーム11を下降させると、フレーム11を先端面2d側へ移動させようとする力のみが生じる。このため、加工具13が制動面2cから外れてしまう。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
このような構成では、フレーム11を上昇させるときのみ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、かごガイドレール2の長手方向に対する第1及び第2のガイドローラ15,16の回転方向を図34とは反対にしてもよい。この場合、フレーム11を下降させるときのみ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態7.
次に、図36はこの発明の実施の形態7によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図37は図36のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図、図38は図36のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
次に、図36はこの発明の実施の形態7によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図37は図36のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図、図38は図36のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
実施の形態7では、第1及び第2のガイドローラ15,16の回転方向が、かごガイドレール2の長手方向に対して互いに同じ方向へ傾斜している。但し、かごガイドレール2の長手方向に対する第1のガイドローラ15の回転方向の傾斜角度が、かごガイドレール2の長手方向に対する第2のガイドローラ16の回転方向の傾斜角度よりも大きい。
仮に、第1のガイドローラ15の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に対して5°傾斜しており、第2のガイドローラ16の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に対して2°傾斜しているとする。この場合、フレーム11を上昇させると、図37に示すように、フレーム11がほぼ回転せずにガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
また、フレーム11を下降させると、図38に示すように、フレーム11が図の時計方向に5°回転してガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
このとき、第2のガイドローラ16には、先端面2d側へ移動しようとする力が生じる。しかし、第1のガイドローラ15の傾斜角度の方が大きいため、フレーム11を図38の時計方向へ回転させようとする力が働き、フレーム11が時計方向に5°回転した状態でガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
図38の状態では、第1のガイドローラ15の回転軸は、かごガイドレール2の長手方向に対して直角である。また、第2のガイドローラ16は、かごガイドレール2の長手方向に対して、ブラケット固定部2a側へ2°傾斜した方向へ転がろうとしている。
このため、第2のガイドローラ16の回転によって、ブラケット固定部2a側へ移動しようとする力が働き、ガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
このように、第1のガイドローラ15の回転方向の傾斜角度が、第2のガイドローラ16の回転方向の傾斜角度よりも大きい場合にも、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態8.
次に、図39はこの発明の実施の形態8によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図40は図39のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図である。
次に、図39はこの発明の実施の形態8によるガイドレール加工装置7の第1及び第2のガイドローラ15,16の配置を示す説明図、図40は図39のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図である。
実施の形態8では、第1及び第2のガイドローラ15,16の回転方向が、かごガイドレール2の長手方向に対して互いに同じ方向へ傾斜している。但し、かごガイドレール2の長手方向に対する第1のガイドローラ15の回転方向の傾斜角度が、かごガイドレール2の長手方向に対する第2のガイドローラ16の回転方向の傾斜角度よりも小さい。
仮に、第1のガイドローラ15の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に対して2°傾斜しており、第2のガイドローラ16の回転方向がかごガイドレール2の長手方向に対して5°傾斜しているとする。この場合、フレーム11を上昇させると、図40に示すように、フレーム11がほぼ回転せずにガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
一方、フレーム11を下降させると、フレーム11を先端面2d側へ移動させようとする力のみが生じる。このため、加工具13が制動面2cから外れてしまう。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
このような構成では、フレーム11を上昇させるときのみ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態9.
次に、図41はこの発明の実施の形態9によるガイドレール加工装置7の第1のガイドローラ15の配置を示す説明図、図42は図41のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図である。
次に、図41はこの発明の実施の形態9によるガイドレール加工装置7の第1のガイドローラ15の配置を示す説明図、図42は図41のフレーム11を上昇させた状態を示す説明図である。
実施の形態9では、第2のガイドローラ16が省略されており、第1のガイドローラ15のみが用いられている。フレーム11を上昇させる際の第1のガイドローラ15の回転方向は、かごガイドレール2の長手方向に対して、ブラケット固定部2a側へ傾斜している。
この場合、フレーム11を上昇させると、図42に示すように、フレーム11がほぼ回転せずにガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
一方、フレーム11を下降させると、フレーム11を先端面2d側へ移動させようとする力のみが生じる。このため、加工具13が制動面2cから外れてしまう。他の構成及び動作は、実施の形態1と同様である。
このような構成では、フレーム11を上昇させるときのみ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
実施の形態10.
次に、図43はこの発明の実施の形態10によるガイドレール加工装置7の第1のガイドローラ15の配置を示す説明図、図44は図43のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
次に、図43はこの発明の実施の形態10によるガイドレール加工装置7の第1のガイドローラ15の配置を示す説明図、図44は図43のフレーム11を下降させた状態を示す説明図である。
実施の形態10では、フレーム11を下降させる際の第1のガイドローラ15の回転方向は、かごガイドレール2の長手方向に対して、ブラケット固定部2a側へ傾斜している。
この場合、フレーム11を下降させると、図44に示すように、フレーム11がほぼ回転せずにガイドレール加工装置7の姿勢が安定する。
一方、フレーム11を上昇させると、フレーム11を先端面2d側へ移動させようとする力のみが生じる。このため、加工具13が制動面2cから外れてしまう。他の構成及び動作は、実施の形態9と同様である。
このような構成では、フレーム11を下降させるときのみ、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、加工具を制動面に安定して平行に当てることができれば、押付ローラは省略してもよい。
また、上記の例では、加工具及び押付ローラを制動面に押し付ける力をばねにより発生させたが、例えば、空圧シリンダ、油圧シリンダ、又は電動アクチュエータにより発生させてもよい。
さらに、接続具は、フレームに一体に形成してもよい。
さらにまた、上記の例では、先端面ローラによりフレームの回転を規制したが、ガイドレールの先端面以外の部分にローラ又はストッパを当ててフレームの回転を規制してもよい。
また、上記の例では、加工具及び押付ローラを制動面に押し付ける力をばねにより発生させたが、例えば、空圧シリンダ、油圧シリンダ、又は電動アクチュエータにより発生させてもよい。
さらに、接続具は、フレームに一体に形成してもよい。
さらにまた、上記の例では、先端面ローラによりフレームの回転を規制したが、ガイドレールの先端面以外の部分にローラ又はストッパを当ててフレームの回転を規制してもよい。
また、上記の例では、既設のかごからガイドレール加工装置を吊り下げたが、新設のかごから吊り下げてもよい。
さらに、上記の例では、ガイドレール加工装置をかごから吊り下げたが、例えば、昇降路の上部に設置したウインチ等の揚重装置からガイドレール加工装置を吊り下げてもよく、ガイドレール加工装置の移動速度をより自由に設定することができる。
さらに、上記の例では、ガイドレール加工装置をかごから吊り下げたが、例えば、昇降路の上部に設置したウインチ等の揚重装置からガイドレール加工装置を吊り下げてもよく、ガイドレール加工装置の移動速度をより自由に設定することができる。
さらにまた、上記の例では、昇降体がかごであり、加工対象がかごガイドレールである場合を示したが、この発明は、昇降体が釣合おもりであり、加工対象が釣合おもりガイドレールである場合にも適用できる。例えば、かご及び釣合おもりの両方に非常止め装置が搭載されている場合には、かごガイドレール及び釣合おもりガイドレールの両方に加工を施せばよい。
また、上記の例では、リニューアル工事の際にガイドレールに加工を施したが、例えば、新設のエレベータにおいて制動面の表面粗さを調整したい場合、又は既設のエレベータの保守時に制動面をリフレッシュしたい場合にも、この発明のガイドレール加工装置を適用できる。
さらに、この発明は、機械室を有するエレベータ、機械室レスエレベータ、ダブルデッキエレベータ、ワンシャフトマルチカー方式のエレベータなど、種々のタイプのエレベータに適用できる。ワンシャフトマルチカー方式は、上かごと、上かごの真下に配置された下かごとが、それぞれ独立して共通の昇降路を昇降する方式である。
また、上記の例では、リニューアル工事の際にガイドレールに加工を施したが、例えば、新設のエレベータにおいて制動面の表面粗さを調整したい場合、又は既設のエレベータの保守時に制動面をリフレッシュしたい場合にも、この発明のガイドレール加工装置を適用できる。
さらに、この発明は、機械室を有するエレベータ、機械室レスエレベータ、ダブルデッキエレベータ、ワンシャフトマルチカー方式のエレベータなど、種々のタイプのエレベータに適用できる。ワンシャフトマルチカー方式は、上かごと、上かごの真下に配置された下かごとが、それぞれ独立して共通の昇降路を昇降する方式である。
1 昇降路、2 かごガイドレール、2c 制動面、2d 先端面、3 かご(昇降体)、5 非常止め装置、7 ガイドレール加工装置、8 吊り下げ部材、11 フレーム、13 加工具、15 第1のガイドローラ、16 第2のガイドローラ、19 第1の先端面ローラ、20 第2の先端面ローラ。
Claims (7)
- 昇降体の非常停止時に非常止め装置が接する制動面と前記昇降体側の端面である先端面とを有しているガイドレールに対して加工を施すエレベータのガイドレール加工装置であって、
可撓性の吊り下げ部材によって昇降路内に吊り下げられるフレーム、
前記フレームに設けられており、前記制動面に加工を施す円筒状の加工具、及び
前記加工具と並んで前記フレームに設けられており、前記加工具とともに前記制動面に接することにより、前記加工具の外周面を前記制動面に平行に接触させる少なくとも1つのガイドローラ
を備え、
前記吊り下げ部材により前記フレームを吊り下げた状態から前記フレームを上昇又は下降させる場合に、前記ガイドローラが前記制動面上を転がって行こうとする方向であって、前記ガイドローラの回転軸に直交する方向を前記ガイドローラの回転方向とすると、
少なくとも1つの前記ガイドローラの回転方向は、前記加工具が前記制動面から外れるのを防止するように、前記ガイドレールの長手方向に対して傾斜しているエレベータのガイドレール加工装置。 - 前記ガイドローラは、前記吊り下げ部材により前記フレームを吊り下げた状態で、前記加工具の上方に配置されている第1のガイドローラと、前記加工具の下方に配置されている第2のガイドローラとを含む請求項1記載のエレベータのガイドレール加工装置。
- 前記フレームを上昇させる場合の前記第1のガイドローラの回転方向は、前記ガイドレールの長手方向に対して、前記先端面とは反対側に傾斜しており、
前記フレームを下降させる場合の前記第2のガイドローラの回転方向は、前記ガイドレールの長手方向に対して、前記先端面とは反対側に傾斜している請求項2記載のエレベータのガイドレール加工装置。 - 前記フレームを上昇させる場合の前記第1のガイドローラの回転方向は、前記ガイドレールの長手方向に対して、前記先端面とは反対側に傾斜しており、
前記フレームを上昇させる場合の前記第2のガイドローラの回転方向は、前記ガイドレールの長手方向に対して平行である請求項2記載のエレベータのガイドレール加工装置。 - 前記フレームを下降させる場合の前記第2のガイドローラの回転方向は、前記ガイドレールの長手方向に対して、前記先端面とは反対側に傾斜しており、
前記フレームを下降させる場合の前記第1のガイドローラの回転方向は、前記ガイドレールの長手方向に対して平行である請求項2記載のエレベータのガイドレール加工装置。 - 前記フレームを上昇させる場合の前記第1及び第2のガイドローラの回転方向は、前記ガイドレールの長手方向に対して、同じ方向に傾斜している請求項2記載のエレベータのガイドレール加工装置。
- 前記フレームに設けられており、前記先端面に接して前記フレームの回転を規制する先端面ローラ
をさらに備えている請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のエレベータのガイドレール加工装置。
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