WO2018146956A1 - サンルーフ装置の昇降ガイド機構 - Google Patents

Abstract

軽量化、薄型化及び低コスト化が可能なサンルーフ装置の昇降ガイド機構を提供する。ガイド溝３４に収容される後部第１ガイドピン２６の後方且つ上方に後部第２ガイドピン２７が設けられる。第１上壁３２には、後部第１ガイドピン２６をガイド溝３４に出入りさせる後部開口部３６が形成される。後部第１昇降ガイド部材３９が、後部開口部３６の後方にて上方に突出するように第１上壁３２に設けられ、可動パネル１１のスライドと傾動とが切り替わる時に後部第２ガイドピン２７をガイドする。これにより、ガイド溝３４内で後部第１ガイドピン２６をガイドする部材が<u>不要</u>になり、パネルガイドレール１４の１段構造化が可能になる。

Description

サンルーフ装置の昇降ガイド機構

　本開示は、サンルーフ装置の昇降ガイド機構に関し、より詳しくは、可動パネルがルーフの下方をスライドするインナスライド式のサンルーフ装置の昇降ガイド機構に関する。

　インナスライド式のサンルーフ装置として、サンルーフパネルの側端に取り付けられたパネルブラケットの後部に後部カムボスが設けられ、後部カムボスを案内すべく横向きに開口する後部ボスガイド溝を形成するチャンネル形状のガイドレールがルーフに設けられ、このガイドレールの一部の上壁が除去された部分に、カム溝を形成する後部ガイド部材が取り付けられたものが公知である（特許文献１）。このサンルーフ装置では、後部ボスガイド溝に摺合する後部カムボスが後部ガイド部材によってガイドされることにより、サンルーフパネルの傾動動作と水平移動動作との間の移行が円滑になされる。

特開２００９－９０９６６号公報

　しかしながら、特許文献１記載のサンルーフ装置では、後部ガイド部材がガイドレールの後部ボスガイド溝内に設けられる。そのため、パネルブラケットの後部を支持する後部スライダが後部ガイド部材に干渉しないように、後部スライダを後部ボスガイド溝の下方でスライドさせる必要、即ちガイドレールを多段構造にする必要があり、軽量化、薄型化及び低コスト化の面で不利であった。

　本発明は、このような背景に鑑み、軽量化、薄型化及び低コスト化が可能なサンルーフ装置の昇降ガイド機構を提供することを課題とする。

　このような課題を解決するために、本発明のある態様は、車両（１）のルーフ（２）に形成された開口（３Ａ）を開閉する可動パネル（１１）と、前記ルーフに設けられ、上壁（３２）及び下壁（３１）を有し、側方に開放されたガイド溝（３４）を画成するガイドレール（１４）と、前記ガイド溝に摺動可能に設けられたスライダ（２２）と、前記可動パネル（１１）に設けられ、前記スライダの摺動に伴って連動するパネルステー（２０）と、を備え、前記スライダの摺動に伴って前記パネルステーが連動することにより、前記開口（３Ａ）を閉鎖する閉位置（図９（Ａ）、図１０（Ａ））と当該閉位置よりも下方のダウン位置（図９（Ｂ）、図１０（Ｂ））との間を前記可動パネルが昇降又は傾動し、且つ、前記ダウン位置と当該ダウン位置の後方にあって前記開口を開放する開位置（図９（Ｃ）、図１０（Ｃ））との間を前記可動パネルがスライドするインナスライド式のサンルーフ装置（１０）における昇降ガイド機構であって、前記パネルステーの後部に側方に突出するように設けられ、前記可動パネルが前記ダウン位置と前記開位置との間に位置する時に、前記ガイド溝に収容される第１ガイドピン（２６）と、前記パネルステーにおける前記第１ガイドピンに対して後方且つ上方に隣接した位置に側方に突出するように設けられ、前記可動パネルが前記ダウン位置と前記開位置との間に位置する時に、前記上壁の上方に位置する第２ガイドピン（２７）と、前記上壁に形成され、前記可動パネルが前記ダウン位置と前記閉位置との間を移動する時に前記第１ガイドピンを前記ガイド溝に出入りさせるための開口部（３６）と、前記開口部の後方にて上方に突出するように前記上壁に設けられ、前記可動パネルのスライドと昇降又は傾動とが切り替わる時に、前記第２ガイドピンをガイドする第１昇降ガイド部材（３９）とを有する構成とする。

　この構成によれば、可動パネルのスライドと昇降又は傾動とが切り替わる時に第２ガイドピンが第１昇降ガイド部材によりガイドされるため、ガイド溝内で第１ガイドピンをガイドする部材が必要ない。そのため、ガイドレールを、スライダ及び第１ガイドピンを共通のガイド溝によってガイドする１段構造にすることができる。これにより、サンルーフ装置の昇降ガイド機構の軽量化、薄型化及び低コスト化が可能である。

　また、上記構成において、前記第１昇降ガイド部材（３９）は、前側ほど前記上壁（３２）の上面に対して傾斜するように湾曲し、前記第２ガイドピン（２７）を摺接させる傾斜上面（３９Ｂ）を有するとよい。

　この構成によれば、可動パネルのスライドと昇降又は傾動とが切り替わる時に第１昇降ガイド部材の湾曲したガイド面によって第２ガイドピンがガイドされることにより、動作の切り替えが円滑に行われる。

　また、上記構成において、前記第１昇降ガイド部材（３９）は、前記可動パネル（１１）が前記閉位置から前記ダウン位置へ移動する時に、前記第１ガイドピン（２６）の後部をガイドすべく上側が後方に傾斜した傾斜前面（３９Ａ）を有するとよい。

　この構成によれば、可動パネルが閉位置からダウン位置へ移動する時に、第１ガイドピンの後部が第１昇降ガイド部材の傾斜前面によってガイドされることにより、第１ガイドピンがガイド溝に確実に進入する。

　また、上記構成において、前記開口部（３６）の前方にて上方に突出するように前記上壁（３２）に設けられ、前記可動パネル（１１）が前記閉位置から前記ダウン位置へ移動する時に、前記第１ガイドピン（２６）の前部をガイドすべく上側が前方に傾斜した傾斜後面（４０Ａ）を有する第２昇降ガイド部材（４０）を更に有するとよい。

　この構成によれば、可動パネルが閉位置からダウン位置へ移動する時に、第１ガイドピンの前部が第２昇降ガイド部材の傾斜後面によってガイドされることにより、第１ガイドピンがガイド溝に確実に進入する。

　また、上記構成において、前記第１昇降ガイド部材（３９）及び前記第２昇降ガイド部材（４０）が、中空断面構造の樹脂製部品であるとよい。

　この構成によれば、第１昇降ガイド部材及び第２昇降ガイド部材が弾性変形し易くなるため、第１ガイドピン又は第２ガイドピンの衝撃をこれらの弾性変形によって吸収できる。従って、ゴム弾性部材等の他の衝撃吸収部材を設ける必要がなく、構成が簡単になる。

　また、上記構成において、前記第１昇降ガイド部材（３９）と前記第２昇降ガイド部材（４０）とが一体成形されているとよい。

　この構成によれば、部品点数が削減される上、第１昇降ガイド部材及び前記第２昇降ガイド部材のガイドレールへの取付も容易である。

　このように本発明によれば、軽量化、薄型化及び低コスト化が可能なサンルーフ装置の昇降ガイド機構を提供することができる。

実施形態に係るサンルーフ装置が適用された自動車の要部斜視図 図１に示されるサンルーフ装置の斜視図 図２に示される左側のカム機構部分を外側から見た斜視図 図２に示される左側のカム機構部分を内側から見た斜視図 図３中のＶ－Ｖ断面線に沿って示すカム機構部分の側面図 図５中のVI－VI断面図 図５中のVII－VII断面図 サンルーフ装置のチルト動作を示す左側面図 サンルーフ装置の開閉動作を示す左側面図 サンルーフ装置の開閉動作時のカム機構部分の拡大図

　以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、サンルーフ装置１０が設けられる自動車１の進行方向を基準にして、前後、左右の方向を用いる。また、自動車１の左右方向（車幅方向）を基準にして、サンルーフ装置１０の内側、外側と言う。

　図１は、実施形態に係るサンルーフ装置１０が適用された自動車１の要部斜視図である。図１に示されるように、自動車１のルーフ２にはインナスライド式のサンルーフ装置１０が取り付けられている。ルーフ２は、外側のアウタルーフパネル２Ａと内側（車室側）のルーフライニング２Ｂとによって構成されている。アウタルーフパネル２Ａには矩形の上側開口３Ａが形成されており、ルーフライニング２Ｂには矩形の下側開口３Ｂが形成されている。下側開口３Ｂは、上側開口３Ａよりも若干小さく、平面視で上側開口３Ａに含まれるように上側開口３Ａと概ね同じ位置に設けられている。上側開口３Ａと下側開口３Ｂとにより、ルーフ２に開口孔３が形成されている。

　サンルーフ装置１０は、主に前後方向の移動によってルーフ２の上側開口３Ａを開閉する可動パネル１１と、可動パネル１１の下方に重畳するように配置され、前後方向の移動によって下側開口３Ｂを開閉するシェードパネル１２とを有している。

　図２は、図１に示されるサンルーフ装置１０の斜視図である。なお、図２では、可動パネル１１の全体、シェードパネル１２の右半分、及び後述する右側のパネルガイドレール１４の図示が省略されている。図２に示されるように、可動パネル１１及びシェードパネル１２は、アウタルーフパネル２Ａの上側開口３Ａの下方であってルーフライニング２Ｂの上方且つ下側開口３Ｂの外側に配置されたサンルーフフレーム１３によって支持されている。

　サンルーフフレーム１３は、上側開口３Ａの互いに平行な左右の側縁部に沿って前後方向に延在する金属製の左右のパネルガイドレール１４を有している。左右のパネルガイドレール１４の内側には、下側開口３Ｂ（図１参照）の互いに平行な左右の側縁部に沿って前後方向に延在する樹脂製の左右のシェードガイドレール１５が配置されている。パネルガイドレール１４の外側には、上側開口３Ａの互いに平行な左右の縁部に沿って前後方向に延在する左右の樹脂製のサイドドレンレール１６が配置されている。左右のそれぞれにおいて、シェードガイドレール１５とサイドドレンレール１６とは互いに一体となっており、対応する側のパネルガイドレール１４を保持している。

　パネルガイドレール１４は、可動パネル１１を前後方向に移動可能に支持するものであり、可動パネル１１の前後長の２倍以上の前後長を有している。パネルガイドレール１４は、上側開口３Ａの前後方向の全域に亘って延在し、更に上側開口３Ａから後方へ延出している。シェードガイドレール１５は、シェードパネル１２を前後方向に移動可能に支持するものであり、シェードパネル１２の前後長よりも大きい前後長を有し、上側開口３Ａの前後方向の全域に亘って延在している。

　サンルーフ装置１０は、更に、上側開口３Ａの前縁部に沿って左右方向に延在して両端を左右対応する側のサイドドレンレール１６に接合された樹脂製のフロントフレーム１７と、上側開口３Ａの後縁部に沿って左右方向に延在して両端を左右対応する側のパネルガイドレール１４に接合された金属製のクロスフレーム１８とを有しており、これにより矩形状をなしている。

　可動パネル１１の両側部の下面には、前後方向に延在する左右のパネルステー２０が垂下するように取り付けられる。各パネルステー２０は、パネルガイドレール１４に摺動可能に係合する前部スライダ２１及び後部スライダ２２を介して対応するパネルガイドレール１４に支持されている。前部スライダ２１は対応するパネルステー２０に一体的に設けられている。一方、後部スライダ２２は、対応するパネルステー２０に対する相対移動によって可動パネル１１を傾動させると共に、対応するパネルステー２０に係合してパネルステー２０と一体に移動することによって可動パネル１１を前後方向にスライドさせる公知のカム機構を介して対応するパネルステー２０に連結されている。右側及び左側のカム機構部分は、互いに左右対称とされている。そのため、以下では左側のカム機構部分を図示して説明する。

　図３は、図２に示される左側のカム機構部分を外側から見た斜視図であり、図４は、図２に示される左側のカム機構部分を内側から見た斜視図である。図３及び図４に示されるように、パネルステー２０は、前後方向に延在する細長い金属板からなる主部材２３を有している。主部材２３の前端部には、内側に突出する樹脂製の前部スライダ２１が固定されている。主部材２３の中間部には、外側に向けて突出する樹脂製の前部ガイドピン２４と樹脂製のカム形成部材２５とが固定されている。主部材２３の後端部には、外側に向けて突出する樹脂製の後部第１ガイドピン２６及び後部第２ガイドピン２７が固定されている。前部スライダ２１、前部ガイドピン２４、カム形成部材２５、後部第１ガイドピン２６及び後部第２ガイドピン２７は、全てアウトサート成形によって主部材２３に固定されるアウトサート成形品である。

　図５は、図３中のＶ－Ｖ断面線に沿って示すカム機構部分の側面図であり、図６は、図５のVI－VI断面図である。図５及び図６に示されるように、カム形成部材２５は、主部材２３の外側面２３Ａ及び内側面２３Ｂを含む全周を取り囲むアウトサート成形品であり、外側面２５Ａに前後方向に長い波形のカム溝２８を成形されている。カム溝２８は、主部材２３を溝底壁として外側に向けて開放された有底溝をなすものであり、有底溝の上面及び下面がカム面２８Ａ、２８Ｂをなしている。

　パネルガイドレール１４は、アルミニウム板等の金属板の折曲成形品によってリップ付き溝形鋼のような横断面形状に形成された直線状のものである。図６に示されるように、パネルガイドレール１４は、樹脂製のベルトガイド部材２９を装着される略矩形横断面のガイド装着部３０を最も外側に有している。ガイド装着部３０の内側下部には、底片からなる下壁３１が連続している。ガイド装着部３０の内側上部には、下壁３１の上方にて所定の上下間隔をおいて下壁３１の外縁部に対向するリップ片からなる第１上壁３２が連続している。下壁３１の内縁には、下壁３１の上方にて所定の上下間隔をおいて下壁３１の内縁部に対向するリップ片からなる第２上壁３３が連続している。下壁３１と第１上壁３２と第２上壁３３とは互いに平行をなしている。下壁３１と第１上壁３２とによって内方に開放されたガイド溝３４が画成される。

　図７は、図５中のVII－VII断面図である。図５及び図７に示されるように、後部第２ガイドピン２７は、後部第１ガイドピン２６に対して後方且つ上方に隣接した位置に形成されている。後部第１ガイドピン２６及び後部第２ガイドピン２７は、主部材２３の外面から、ガイド溝３４に到達し且つガイド装着部３０に到達しない程度の突出量をもって外側に向けて突出している。図５及び図３に示される前部ガイドピン２４も、ガイド溝３４に到達し且つガイド装着部３０に到達しない程度の突出量をもって外側に向けて突出している。

　図５及び図７に示されるように、パネルガイドレール１４の第１上壁３２における、前部ガイドピン２４及び後部第１ガイドピン２６に整合する位置には、前部開口部３５及び後部開口部３６が形成されている。これにより、前部ガイドピン２４及び後部第１ガイドピン２６は、対応する前部開口部３５又は後部開口部３６を通ってガイド溝３４に対して出入りすることができる。

　図７に示されるように、前部開口部３５は、前部ガイドピン２４の昇降動作をガイドする樹脂製の前部第１昇降ガイド部材３７及び前部第２昇降ガイド部材３８によって画定されている。前部第１昇降ガイド部材３７は、前部開口部３５の前方にて第１上壁３２に設けられ、ガイド溝３４の下面から第１上壁３２よりも上方まで延在している。前部第２昇降ガイド部材３８は、前部開口部３５の後方にて第１上壁３２に設けられ、ガイド溝３４の上部から第１上壁３２よりも上方まで延在している。前部第１昇降ガイド部材３７及び前部第２昇降ガイド部材３８は、一体成形品として形成され、第１上壁３２に形成された前部切欠部に嵌め込まれることで第１上壁３２に装着される。

　後部開口部３６は、後部第１ガイドピン２６の昇降動作をガイドする後部第１昇降ガイド部材３９及び後部第２昇降ガイド部材４０によって画定されている。後部第１昇降ガイド部材３９は、後部開口部３６の後方にて第１上壁３２に設けられ、第１上壁３２の下面から第１上壁３２よりも上方まで延在している。後部第２昇降ガイド部材４０は、後部開口部３６の前方にて第１上壁３２に設けられ、第１上壁３２の下面から第１上壁３２よりも上方まで延在している。後部第１ガイドピン２６及び後部第２昇降ガイド部材４０は、それぞれ中空断面構造の樹脂製部品として一体成形され、第１上壁３２に形成された後部切欠部に嵌め込まれることで第１上壁３２に装着される。

　後部第１昇降ガイド部材３９は、上側が後方に傾斜した傾斜前面３９Ａと、前側が上方に傾斜し且つ前側ほど第１上壁３２の上面に対して傾斜するように湾曲した傾斜上面３９Ｂとを有している。後部第２昇降ガイド部材４０は、上側が後方に傾斜した傾斜前面３９Ａを有している。

　図４に示されるように、前部スライダ２１は、パネルガイドレール１４の第２上壁３３（図６）を上下から挟む１対の円弧面によって摺動可能且つ傾動可能に第２上壁３３に係合しており、可動パネル１１のチルト動作の支点をなす。

　図６に示されるように、後部スライダ２２は、金属板からなるスライダ本体４１を含む。スライダ本体４１は、パネルステー２０の下方を左右方向に横切って延在する基部４１Ａと、基部４１Ａの左右方向の中間部より起立してカム形成部材２５の外側面２５Ａに対向するピン支持部４１Ｂとを有する。

　ピン支持部４１Ｂには金属製のカムフォロアピン４３が取り付けられている。カムフォロアピン４３は、一端をピン支持部４１Ｂにかしめ結合されてピン支持部４１Ｂからパネルステー２０の側に突出した片持ちピンであり、カム溝２８のカム面２８Ａ、２８Ｂに摺動可能に係合している。なお、カムフォロアピン４３の他端（先端）とカム溝２８の溝底壁をなす主部材２３との間には隙間があり、カムフォロアピン４３の他端は主部材２３とは非接触である。

　後部スライダ２２の基部４１Ａの外端は、パネルガイドレール１４の下壁３１と第１上壁３２との間のガイド溝３４に挿入され、ガイド装着部３０に至っている。基部４１Ａのガイド溝３４に整合する部分には、ガイド溝３４に沿ってパネルガイドレール１４を摺動可能な樹脂製の係合子４２が取り付けられている。

　スライダ本体４１の基部４１Ａの内端は第２上壁３３の上方にまで立ち上がっており、当該他端には、カム形成部材２５の内側面２５Ｂに摺動可能に当接（対向）する平らな外側面４４Ａを備えた樹脂製の当接部材４４が固定されている。これにより、後部スライダ２２はピン支持部４１Ｂと当接部材４４とによってカム形成部材２５を前後方向に移動可能に左右から挟んでいる。

　当接部材４４の内側面４４Ｂには凹溝４５が形成されている。凹溝４５には第２上壁３３が前後方向に摺動可能に係合している。これにより、後部スライダ２２は、係合子４２と凹溝４５とによって左右両側においてパネルガイドレール１４に係合することになり、パネルガイドレール１４に対する後部スライダ２２の前後方向のスライド移動がスキュー変位（こじれ）を生じることなく安定して行われる。

　パネルガイドレール１４のベルトガイド部材２９には、左右のラックベルト５１のうちの対応するものが通されている。左右のラックベルト５１は、可撓性を有する樹脂製ベルトであり、後端部を対応するスライダ本体４１の基部４１Ａの外端と接続（連結）されている。左右のラックベルト５１は、各々、ベルトガイド部材２９から前方に延出し、図２に示されるように、フロントフレーム１７に形成された前後のベルトガイド溝５２に移動可能に係合している。フロントフレーム１７には電動機５３及び電動機５３によって回転駆動されるピニオン５４が取り付けられている。ピニオン５４には左右のラックベルト５１のラック（不図示）が噛合している。これにより、左右のラックベルト５１は電動機５３によって駆動され、左右の後部スライダ２２はラックベルト５１によって互いに同期して前後方向に移動する。

　図８は、サンルーフ装置１０のチルト動作を示す左側面図である。図８（Ａ）は、可動パネル１１がルーフ２の上側開口３Ａを閉鎖する閉位置にある状態を示している。図８（Ａ）に示されるように、可動パネル１１が閉位置にある状態では、後部スライダ２２はカムフォロアピン４３をカム溝２８の前後方向の中間部に配置している。この状態から後部スライダ２２が前方に駆動されると、カムフォロアピン４３がカム溝２８を前方に移動することにより、パネルステー２０が前部スライダ２１を支点として後部を上昇させるように傾動する。これにより、図８（Ｂ）に示されるように、可動パネル１１が後部を跳ね上げたチルトアップ位置へと移動する。この状態から後部スライダ２２が後方に駆動されることにより、可動パネル１１は図８（Ａ）に示される閉位置に戻る。

　このように、後部スライダ２２の摺動に伴ってパネルステー２０が連動することにより、可動パネル１１は、閉位置（図８（Ａ））とチルトアップ位置（図８（Ｂ））との間を傾動する。

　図９は、サンルーフ装置１０の開閉動作を示す左側面図である。図９（Ａ）は、図８（Ａ）と同様に可動パネル１１が閉位置にある状態を示している。図９（Ａ）に示される状態から後部スライダ２２が後方に駆動されると、カムフォロアピン４３がカム溝２８を後方に移動することにより、パネルステー２０が前部スライダ２１を支点として後部を降下させるように傾動する。これにより、図９（Ｂ）に示されるように、パネルステー２０と共に傾動する可動パネル１１は、全体として閉位置よりも下方のダウン位置へ移動する。更に後部スライダ２２が後方に駆動されると、カムフォロアピン４３がカム溝２８の後端付近でカム形成部材２５に係合し、パネルステー２０を一体的にガイド溝３４に沿って後方にスライドさせる。これにより、可動パネル１１が姿勢を保ったままアウタルーフパネル２Ａの下方を後方にスライドし、図９（Ｃ）に示されるように上側開口３Ａを開放した開位置へ移動する。

　逆に、図９（Ｃ）に示される可動パネル１１が開位置にある状態から、後部スライダ２２が前方に駆動されると、カム溝２８の後端付近でカム形成部材２５に係合するカムフォロアピン４３がパネルステー２０を一体的にガイド溝３４に沿って前方にスライドさせる。これにより、可動パネル１１が前方にスライドし、図９（Ｂ）に示されるダウン位置へ移動する。更に後部スライダ２２が前方に駆動されると、カムフォロアピン４３がカム溝２８の後端付近から前方に移動することにより、パネルステー２０が前部スライダ２１を支点として後部を上昇させるように傾動する。これにより、可動パネル１１がリフトアップして閉位置に戻る。

　このように、後部スライダ２２の摺動に伴ってパネルステー２０が連動することにより、可動パネル１１は、閉位置（図９（Ａ））とダウン位置（図９（Ｂ））との間を傾動し、且つダウン位置（図９（Ｂ））と開位置（図９（Ｂ））との間をスライドする。

　図１０は、サンルーフ装置１０の開閉動作時におけるカム機構部分の拡大図である。図１０（Ａ）は、図９（Ａ）と同様に、可動パネル１１が閉位置にある状態を示している。図１０（Ｂ）は、図９（Ｂ）と同様に、可動パネル１１がダウン位置にある状態を示している。図１０（Ｃ）は、可動パネル１１がダウン位置よりも若干後方にある状態を示している。

　図１０（Ａ）に示されるように、可動パネル１１が閉位置にある状態では、後部第１ガイドピン２６及び後部第２ガイドピン２７が共にパネルガイドレール１４の第１上壁３２よりも上方に位置している。一方、前部ガイドピン２４は、ガイド溝３４内に位置し、前部第１昇降ガイド部材３７及び前部第２昇降ガイド部材３８によって前後から挟まれている。これにより、可動パネル１１の前後動が規制されている。

　この状態から後部スライダ２２が後方に駆動され、パネルステー２０が下方に傾動すると、図１０（Ｂ）に示されるように、前部ガイドピン２４は前部第１昇降ガイド部材３７及び前部第２昇降ガイド部材３８にガイドされながらガイド溝３４の下部に移動し、後部第１ガイドピン２６は後部開口部３６からガイド溝３４に進入する。この際、後部第１ガイドピン２６は、後部第１昇降ガイド部材３９の傾斜前面３９Ａ及び後部第２昇降ガイド部材４０の傾斜後面４０Ａによってガイドされる。また、後部第２ガイドピン２７は、可動パネル１１のリフトダウン時に後部第１昇降ガイド部材３９の傾斜上面３９Ｂに当接して傾斜上面３９Ｂ上を摺動する。これにより、可動パネル１１の動作が下降動作から後方へのスライド動作に円滑に切り替わる。また、後部第１ガイドピン２６が下壁３１に当接する際の打音が軽減される。可動パネル１１がダウン位置に移動した状態では、後部第２ガイドピン２７が第１上壁３２よりも上方に位置する一方、後部第１ガイドピン２６が第１上壁３２の下方且つ下壁３１の上方、即ちガイド溝３４内に位置している。

　更に後部スライダ２２が後方に駆動されると、図１０（Ｃ）に示されるように、パネルステー２０は、前部ガイドピン２４及び後部第１ガイドピン２６がガイド溝３４に収容された状態でパネルガイドレール１４にガイドされて後方へ移動する。これにより、パネルステー２０の上下のがたつきが抑制される。可動パネル１１がダウン位置と開位置との間にある時、前部ガイドピン２４及び後部第１ガイドピン２６はガイド溝３４に収容されており、後部第２ガイドピン２７は第１上壁３２の上方に位置する。

　可動パネル１１がダウン位置よりも開位置（図９（Ｃ））側にある状態から後部スライダ２２が前方に駆動されると、後部第１ガイドピン２６がガイド溝３４内に位置していることから、パネルステー２０は、姿勢を保ったまま前方に移動し、図１０（Ｃ）に示される状態を経て図１０（Ｂ）に示される状態になる。この際には、後部第２ガイドピン２７は、可動パネル１１の前方スライド時に後部第１昇降ガイド部材３９の傾斜上面３９Ｂに当接して傾斜上面３９Ｂ上を摺動することで、可動パネル１１のスライド動作を上昇動作（上方への傾動動作）に円滑に切り替える。

　次に、このように構成されたサンルーフ装置１０の昇降ガイド機構の作用効果を説明する。

　図５に示されるように、後部第１ガイドピン２６の後方且つ上方に後部第２ガイドピン２７が設けられ、図１０（Ｂ）、（Ａ）に示されるように、可動パネル１１のスライドと傾動とが切り替わる時に後部第２ガイドピン２７が後部第１昇降ガイド部材３９によってガイドされる。そのため、ガイド溝３４内で後部第１ガイドピン２６をガイドする部材が必要なく、後部スライダ２２及び後部第１ガイドピン２６の両方が共通のガイド溝３４によってガイドされる１段構造のパネルガイドレール１４が可能になる。これにより、サンルーフ装置１０の昇降ガイド機構の軽量化、薄型化及び低コスト化が可能である。

　後部第１昇降ガイド部材３９が、前側ほど第１上壁３２の上面に対して傾斜するように湾曲し、後部第２ガイドピン２７を摺接させる傾斜上面３９Ｂを有しており、可動パネル１１がダウン位置を通過する際に、後部第１昇降ガイド部材３９の湾曲したガイド面によって後部第２ガイドピン２７がガイドされる。これにより、可動パネル１１のスライドと傾動とが円滑に切り替えられる。

　後部第１昇降ガイド部材３９は、後部第１ガイドピン２６の後部をガイドすべく上側が後方に傾斜した傾斜前面３９Ａを有しており、可動パネル１１が閉位置（図１０（Ａ））からダウン位置（図１０（Ｂ））へ移動する時に、後部第１ガイドピン２６の後部が後部第１昇降ガイド部材３９の傾斜前面３９Ａによってガイドされる。これにより、後部第１ガイドピン２６がガイド溝３４に確実に進入する。

　後部第１ガイドピン２６の前部をガイドすべく上側が前方に傾斜した傾斜後面４０Ａを有する後部第２昇降ガイド部材４０が、後部開口部３６の前部にて上方に突出するように第１上壁３２に設けられており、可動パネル１１が閉位置（図１０（Ａ））からダウン位置（図１０（Ｂ））へ移動する時に、後部第１ガイドピン２６の前部が後部第２昇降ガイド部材４０の傾斜後面４０Ａによってガイドされる。これにより、後部第１ガイドピン２６がガイド溝３４に確実に進入する。

　後部第１昇降ガイド部材３９及び後部第２昇降ガイド部材４０は、中空断面構造の樹脂製部品であるため、弾性変形し易く、後部第１ガイドピン２６又は後部第２ガイドピン２７の衝撃がこれらの部材の弾性変形によって吸収される。従って、ゴム弾性部材等の他の衝撃吸収部材を設ける必要がなく、構成が簡単になる。

　後部第１昇降ガイド部材３９と後部第２昇降ガイド部材４０とが一体成形されているため、部品点数が削減される上、これらの部材のパネルガイドレール１４への取付も容易である。

　以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記実施形態では、一例として自動車１用としてサンルーフ装置１０の説明を行ったが、鉄道車両等にも広く適用することができる。また、上記実施形態では、サンルーフ装置１０は、可動パネル１１が自動車１の後方に移動して開口を開放するように設けられているが、可動パネル１１が自動車１の前方や側方に移動するように設けられてもよい。この場合、自動車１の前方や側方がサンルーフ装置１０における後方になる。この他、各部材や部位の具体的構成や配置、数量、角度、素材など、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。また、上記実施形態に示した各構成要素は必ずしも全てが必須ではなく、適宜選択することができる。

　１　　　自動車
　２　　　ルーフ
　３Ａ　　上側開口（開口）
　１０　　サンルーフ装置
　１１　　可動パネル
　１４　　パネルガイドレール
　２０　　パネルステー
　２２　　後部スライダ
　２６　　後部第１ガイドピン
　２７　　後部第２ガイドピン
　２８　　カム溝
　３１　　下壁
　３２　　第１上壁
　３６　　後部開口部（開口部）
　３９　　後部第１昇降ガイド部材（第１昇降ガイド部材）
　３９Ａ　傾斜前面
　３９Ｂ　傾斜上面
　４０　　後部第２昇降ガイド部材（第２昇降ガイド部材）
　４０Ａ　傾斜後面

Claims (6)

1. 　車両のルーフに形成された開口を開閉する可動パネルと、
   　前記ルーフに設けられ、上壁及び下壁を有し、側方に開放されたガイド溝を画成するガイドレールと、
   　前記ガイド溝に摺動可能に設けられたスライダと、
   　前記可動パネルに設けられ、前記スライダの摺動に伴って連動するパネルステーと、を備え、
   　前記スライダの摺動に伴って前記パネルステーが連動することにより、前記開口を閉鎖する閉位置と当該閉位置よりも下方のダウン位置との間を前記可動パネルが昇降又は傾動し、且つ、前記ダウン位置と当該ダウン位置の後方にあって前記開口を開放する開位置との間を前記可動パネルがスライドするインナスライド式のサンルーフ装置における昇降ガイド機構であって、
   　前記パネルステーの後部に側方に突出するように設けられ、前記可動パネルが前記ダウン位置と前記開位置との間に位置する時に、前記ガイド溝に収容される第１ガイドピンと、
   　前記パネルステーにおける前記第１ガイドピンに対して後方且つ上方に隣接した位置に側方に突出するように設けられ、前記可動パネルが前記ダウン位置と前記開位置との間に位置する時に、前記上壁の上方に位置する第２ガイドピンと、
   　前記上壁に形成され、前記可動パネルが前記ダウン位置と前記閉位置との間を移動する時に前記第１ガイドピンを前記ガイド溝に出入りさせるための開口部と、
   　前記開口部の後方にて上方に突出するように前記上壁に設けられ、前記可動パネルのスライドと昇降又は傾動とが切り替わる時に、前記第２ガイドピンをガイドする第１昇降ガイド部とを有することを特徴とするサンルーフ装置の昇降ガイド機構。
2. 　前記第１昇降ガイド部は、前側ほど前記上壁の上面に対して傾斜するように湾曲し、前記第２ガイドピンを摺接させる傾斜上面を有することを特徴とする請求項１に記載のサンルーフ装置の昇降ガイド機構。
3. 　前記第１昇降ガイド部は、前記可動パネルが前記閉位置から前記ダウン位置へ移動する時に、前記第１ガイドピンの後部をガイドすべく上側が後方に傾斜した傾斜前面を有することを特徴とする請求項１又は請求項２に記載のサンルーフ装置の昇降ガイド機構。
4. 　前記開口部の前方にて上方に突出するように前記上壁に設けられ、前記可動パネルが前記閉位置から前記ダウン位置へ移動する時に、前記第１ガイドピンの前部をガイドすべく上側が前方に傾斜した傾斜後面を有する第２昇降ガイド部を更に有することを特徴とする請求項１～請求項３のいずれかに記載のサンルーフ装置の昇降ガイド機構。
5. 　前記第１昇降ガイド部及び前記第２昇降ガイド部が、中空断面構造の樹脂製部品であることを特徴とする請求項４に記載のサンルーフ装置の昇降ガイド機構。
6. 　前記第１昇降ガイド部と前記第２昇降ガイド部とが一体成形されていることを特徴とする請求項４又は請求項５に記載のサンルーフ装置の昇降ガイド機構。

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