WO2018101022A1 - 繊維強化樹脂用組成物及びその製造方法、繊維強化樹脂、並びに成形体 - Google Patents
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Abstract
耐衝撃性や曲げ強度などの機械的強度に優れた成形体が得られる繊維強化樹脂を作製するための繊維強化樹脂用組成物を提供する。 本発明に係る繊維強化樹脂用組成物は、ブロック重合体(A)と、エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)と、を含有する。
Description
本発明は、繊維強化樹脂用組成物及びその製造方法、該組成物を含有する繊維強化樹脂、並びに該繊維強化樹脂を成形して得られる成形体に関する。
繊維強化樹脂(FRP)は、ガラス繊維、炭素繊維等の補強繊維を樹脂で固めた材料であり、機械的強度、耐熱性、成形加工性等に優れた複合材料である。そのため、FRPは、航空、宇宙用途、車両用途、建材用途、スポーツ用途等の広範な分野における材料として利用されている。
中でも炭素繊維強化樹脂(CFRP)は、高強度に加えて軽量という特徴を有している。樹脂としては、熱硬化性のエポキシ樹脂を用いて炭素繊維を補強したものが主流であり、例えば航空機の構造材等に採用されている。一方、熱可塑性樹脂を用いたFRPは、上記の特性に加えて成形サイクル短縮が可能であるという特徴を有するため近年注目されている。
このような熱可塑性樹脂を用いたCFRPにおいては、炭素長繊維を張力下に引き揃えながら熱可塑性樹脂を含浸させて繊維強化樹脂ロッド(ストランド)を得た後、それを任意の長さに切断して得られる炭素長繊維強化樹脂ペレットを用いることが行われている(例えば、特許文献1参照)。また、繊維からなるマット(不織布等)に、熱可塑性樹脂を含浸させてCFRPを作製する方法も検討されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、上記の方法により作製されるCFRPは、炭素繊維とマトリックス樹脂との密着性が不十分な場合があり、曲げ強度などの機械的物性の点でも不十分な場合があった。そのため、上記の方法により作製されるCFRPは、曲げ荷重などの負荷が印加された場合、炭素繊維とマトリックス樹脂との界面から亀裂が発生することがあった。このようにして発生した亀裂が炭素繊維とマトリックス樹脂との他の界面に伝播することにより、さらに亀裂を誘発し、最終的に成形体を横断して全体破壊に至ることがあった。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、前記課題の少なくとも一部を解決することで、耐衝撃性や曲げ強度などの機械的強度に優れた成形体が得られる繊維強化樹脂を提供する。また、本発明に係る幾つかの態様は、前記繊維強化樹脂を作製するための組成物及びその製造方法を提供する。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係る繊維強化樹脂用組成物の一態様は、
ブロック重合体(A)と、
エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)と、
を含有することを特徴とする。
本発明に係る繊維強化樹脂用組成物の一態様は、
ブロック重合体(A)と、
エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)と、
を含有することを特徴とする。
[適用例2]
適用例1の繊維強化樹脂用組成物において、
前記重合体(A)及び前記重合体(B)の両方の重量平均分子量が10,000以上であることができる。
適用例1の繊維強化樹脂用組成物において、
前記重合体(A)及び前記重合体(B)の両方の重量平均分子量が10,000以上であることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2の繊維強化樹脂用組成物において、
前記重合体(A)の23℃雰囲気下の貯蔵弾性率が5MPa以上であることができる。
適用例1または適用例2の繊維強化樹脂用組成物において、
前記重合体(A)の23℃雰囲気下の貯蔵弾性率が5MPa以上であることができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例の繊維強化樹脂用組成物において、
前記重合体(A)がスチレンブロックを有することができる。
適用例1ないし適用例3のいずれか一例の繊維強化樹脂用組成物において、
前記重合体(A)がスチレンブロックを有することができる。
[適用例5]
本発明に係る繊維強化樹脂用組成物の製造方法の一態様は、
ブロック重合体(A)と、
エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)と、
を溶融混練する工程を備えることを特徴とする。
本発明に係る繊維強化樹脂用組成物の製造方法の一態様は、
ブロック重合体(A)と、
エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)と、
を溶融混練する工程を備えることを特徴とする。
[適用例6]
適用例5の繊維強化樹脂用組成物の製造方法において、
前記重合体(A)及び前記重合体(B)の両方の重量平均分子量が10,000以上であることができる。
適用例5の繊維強化樹脂用組成物の製造方法において、
前記重合体(A)及び前記重合体(B)の両方の重量平均分子量が10,000以上であることができる。
[適用例7]
本発明に係る繊維強化樹脂の一態様は、
適用例1ないし適用例4のいずれか一例の繊維強化樹脂用組成物と、熱可塑性樹脂(C)と、炭素繊維(D)と、を含有することを特徴とする。
本発明に係る繊維強化樹脂の一態様は、
適用例1ないし適用例4のいずれか一例の繊維強化樹脂用組成物と、熱可塑性樹脂(C)と、炭素繊維(D)と、を含有することを特徴とする。
[適用例8]
本発明に係る成形体の一態様は、
適用例7の繊維強化樹脂を成形して得られることを特徴とする。
本発明に係る成形体の一態様は、
適用例7の繊維強化樹脂を成形して得られることを特徴とする。
本発明に係る繊維強化樹脂用組成物を含有する繊維強化樹脂によれば、繊維とマトリックス樹脂との接着性が良好となるため、耐衝撃性や曲げ強度などの機械的強度に優れた成形体が得られる。
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~」および「メタクリル酸~」の双方を包括する概念である。また、「~(メタ)アクリレート」とは、「~アクリレート」および「~メタクリレート」の双方を包括する概念である。
なお、本明細書中では、ブロック重合体(A)を「成分(A)」、エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)を「成分(B)」、熱可塑性樹脂(C)を「成分(C)」、炭素繊維(D)を「成分(D)」、と略して用いることがある。
1.繊維強化樹脂用組成物
一般的に、FRP成形体は曲げ荷重などの負荷が印加された場合、繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となりやすく、繊維とマトリックス樹脂との界面から亀裂が発生しやすい。このようにして発生した亀裂が繊維とマトリックス樹脂との他の界面に伝播することにより、さらに亀裂を誘発し、最終的に成形体を横断して全体破壊に至る。
一般的に、FRP成形体は曲げ荷重などの負荷が印加された場合、繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となりやすく、繊維とマトリックス樹脂との界面から亀裂が発生しやすい。このようにして発生した亀裂が繊維とマトリックス樹脂との他の界面に伝播することにより、さらに亀裂を誘発し、最終的に成形体を横断して全体破壊に至る。
このようなメカニズムによる亀裂発生を抑制するためには、繊維とマトリックス樹脂との界面の接着性を高める必要がある。これを実現すべく、本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、ブロック重合体(A)と、エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)とを含有し、及び/又はこれらを反応させて得られた重合体を含有する。以下、本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物に含まれる各成分について説明する。
1.1.重合体(A)
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、ブロック重合体(A)を含む。成分(A)は、本実施形態に係る成形体において、成分(B)や成分(C)との相溶性を高め、繊維強化樹脂中におけるマトリックス樹脂である成分(C)と成分(D)とを強固に接着させることにより、曲げ荷重などの負荷が印加された場合の成分(C)と成分(D)の界面から亀裂の発生を抑制できるので、成形体の曲げ強度、シャルピー衝撃強度等の機械的強度を向上させると考えられる。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、ブロック重合体(A)を含む。成分(A)は、本実施形態に係る成形体において、成分(B)や成分(C)との相溶性を高め、繊維強化樹脂中におけるマトリックス樹脂である成分(C)と成分(D)とを強固に接着させることにより、曲げ荷重などの負荷が印加された場合の成分(C)と成分(D)の界面から亀裂の発生を抑制できるので、成形体の曲げ強度、シャルピー衝撃強度等の機械的強度を向上させると考えられる。
本実施形態で使用される成分(A)は、ブロック重合体であれば特に限定されないが、アミノ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。なお、本明細書において「アミノ基」とは、1級アミノ基(-NH2)、2級アミノ基(-NHR、ただしRは炭化水素基)及び3級アミノ基(-NRR’、ただしR、R’は炭化水素基)のうちいずれか一つを指す。本明細書において「カルボキシル基」とは、-COOHだけでなく、-COOM(Mは一価の金属イオン)をも含む概念である。「酸無水物構造」の具体例としては、無水酢酸構造、無水プロピオン酸構造、無水シュウ酸構造、無水コハク酸構造、無水フタル酸構造、無水マレイン酸構造、無水安息香酸構造などのカルボン酸無水物構造が挙げられる。前記アミノ基、前記カルボキシル基、前記オキサゾリン基及び酸無水物構造は、それぞれ保護基によって保護されていてもよい。
成分(A)の一分子鎖あたりのアミノ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及び酸無水物構造の総量は、好ましくは0.1個以上、より好ましくは0.3個以上、特に好ましくは0.5個以上である。成分(A)の一分子鎖あたりのアミノ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及び酸無水物構造の総量が前記範囲であると、炭素繊維(D)との接着性がより強固となり、本実施形態に係る繊維強化樹脂を成形することにより得られる成形体の機械的強度がより向上すると考えられる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法におけるポリスチレン換算による成分(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上300万以下、特に好ましくは3万以上200万以下である。また、成分(A)の、JIS K7210に準拠して測定されるメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)は、好ましくは0.1~200g/10minである。
成分(A)の23℃雰囲気下における貯蔵弾性率の下限値は、好ましくは5MPa、より好ましくは5.5MPa、特に好ましくは6MPaである。また、上記貯蔵弾性率の上限としては、好ましくは300MPa、より好ましくは250MPa、特に好ましくは230MPaである。成分(A)の23℃雰囲気下における貯蔵弾性率が前記範囲にあることで、曲げ強度とシャルピー衝撃強度とのバランスに優れた成形体が得られやすくなる。なお、「23℃雰囲気下における貯蔵弾性率」は、粘弾性測定装置を用いて、23℃雰囲気下、周波数1Hzのもと粘弾性を測定し、歪み0.01~1%の範囲における貯蔵弾性率E’(MPa)の平均値である。
成分(A)の23℃雰囲気下における貯蔵弾性率は、例えば重合体に導入される極性基の種類及び量、重合体の分子量及び架橋度等を調整することにより制御できる。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物における成分(A)の含有割合は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部中、好ましくは10~90質量部、より好ましくは15~85質量部である。
成分(A)は、共役ジエンに由来する繰り返し単位を有してもよい。成分(A)は、必要に応じて共役ジエン以外の単量体に由来する繰り返し単位を有してもよい。成分(A)は、同一の単量体が繰り返し単位を形成するブロック重合体であるが、スチレンブロックを有することが好ましい。成分(A)がスチレンブロックを有することにより、成分(B)や成分(C)との相容性をさらに高めることができ、成分(C)と成分(D)をより強固に接着させることができる。以下、成分(A)の繰り返し単位について詳述する。
1.1.1.共役ジエン
共役ジエンとしては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ミルセン、ファルネセン及びクロロプレン等を挙げることができるが、1,3-ブタジエン又はイソプレンを含むことが好ましい。
共役ジエンとしては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ミルセン、ファルネセン及びクロロプレン等を挙げることができるが、1,3-ブタジエン又はイソプレンを含むことが好ましい。
1.1.2.共役ジエン以外の単量体
成分(A)は、共役ジエン以外の化合物に由来する繰り返し単位を有してもよい。このような化合物としては、芳香族アルケニル化合物が好ましい。
成分(A)は、共役ジエン以外の化合物に由来する繰り返し単位を有してもよい。このような化合物としては、芳香族アルケニル化合物が好ましい。
芳香族アルケニル化合物の具体例としては、スチレン、tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルスチレン、1-ビニルナフタリン、2-ビニルナフタリン、2-ビニルアントラセン、9-ビニルアントラセン、p-ビニルベンジルプロピルエーテル、p-ビニルベンジルブチルエーテル、p-ビニルベンジルヘキシルエーテル、p-ビニルベンジルペンチルエーテル、m-N,N-ジエチルアミノエチルスチレン、p-N,N-ジエチルアミノエチルスチレン、p-N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、o-ビニルベンジルジメチルアミン、p-ビニルベンジルジメチルアミン、p-ビニルベンジルジエチルアミン、p-ビニルベンジルジ(n-プロピル)アミン、p-ビニルベンジルジ(n-ブチル)アミン、ビニルピリジン、2-ビニルビフェニル、4-ビニルビフェニル、p-[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン、p-[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノメチル]スチレン、p-{2-[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノ]エチル}スチレン、m-[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノ]スチレン、p-(N-メチル-N-トリメチルシリルアミノ)スチレン及びp-(N-メチル-N-トリメチルシリルアミノメチル)スチレン等を挙げることができる。これらの単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
成分(A)が共役ジエンに由来する繰り返し単位と芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位とを有する場合において、成分(A)の共役ジエンに由来する繰り返し単位と芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位との質量比は、100:0~20:80であることが好ましく、90:10~60:40であることがより好ましい。
1.1.3.重合体の構成
成分(A)は、ブロック重合体であるが、下記A~Dの重合体ブロックの中から選ばれた2種以上の重合体ブロックを含むブロック重合体であることがより好ましい。
成分(A)は、ブロック重合体であるが、下記A~Dの重合体ブロックの中から選ばれた2種以上の重合体ブロックを含むブロック重合体であることがより好ましい。
Aブロック:芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位量が80質量%以上である重合体ブロック。
Bブロック:共役ジエンに由来する繰り返し単位量が80質量%以上であって、かつ、ビニル結合含量が30モル%未満の重合体ブロック。
Cブロック:共役ジエンに由来する繰り返し単位量が80質量%以上であって、かつ、ビニル結合含量が30モル%以上90モル%以下の重合体ブロック。
Dブロック:共役ジエンに由来する繰り返しと芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返しとのランダム共重合体ブロックであって、上記A~C以外の重合体ブロック。
Bブロック:共役ジエンに由来する繰り返し単位量が80質量%以上であって、かつ、ビニル結合含量が30モル%未満の重合体ブロック。
Cブロック:共役ジエンに由来する繰り返し単位量が80質量%以上であって、かつ、ビニル結合含量が30モル%以上90モル%以下の重合体ブロック。
Dブロック:共役ジエンに由来する繰り返しと芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返しとのランダム共重合体ブロックであって、上記A~C以外の重合体ブロック。
成分(A)が上記Cブロックを含有することにより、成分(C)の一種であるオレフィン系樹脂との分子の絡み合い及び相容性が良好となるため、成形体の機械的強度をより向上させることができる。上記Cブロックのビニル結合含量は、より好ましくは50モル%以上90モル%以下である。オレフィン系樹脂との分子の絡み合い及び相容性を顕著に向上させるためには、上記Cブロックは水素添加されていることがより好ましい。
なお、本発明における「ビニル結合含量」とは、水添前の重合体中に1,2結合、3,4結合及び1,4結合の結合様式で組み込まれている共役ジエンに由来する繰り返し単位のうち、1,2結合及び3,4結合で組み込まれている単位の合計割合(モル%基準)である。当該ビニル結合含量(1,2結合含量及び3,4結合含量)は、赤外吸収スペクトル法(モレロ法)によって算出することができる。
1.1.4.水素添加
本実施形態に係る成形体の耐候性および機械的強度を向上させるために、成分(A)は水素添加(以下、「水添」ともいう。)された重合体であることが好ましい。特に成分(C)としてオレフィン系樹脂を用いた場合、水素添加された重合体を成分(A)として使用することにより、成分(A)とオレフィン系樹脂との分子の絡み合いおよび相容性を顕著に向上させ、成分(C)と成分(D)との接着性をより向上させることができる。
本実施形態に係る成形体の耐候性および機械的強度を向上させるために、成分(A)は水素添加(以下、「水添」ともいう。)された重合体であることが好ましい。特に成分(C)としてオレフィン系樹脂を用いた場合、水素添加された重合体を成分(A)として使用することにより、成分(A)とオレフィン系樹脂との分子の絡み合いおよび相容性を顕著に向上させ、成分(C)と成分(D)との接着性をより向上させることができる。
重合体の水素添加率(以下、「水添率」ともいう。)は、ビニル結合などの二重結合の60%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。
水素添加された重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万以上、より好ましくは2万以上300万以下、特に好ましくは3万以上200万以下である。なお、「重量平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
1.1.5.成分(A)の製造方法
成分(A)は、例えば特許第5402112号公報、特許第4840140号公報、国際公開第2003/029299号、国際公開第2014/014052号等に記載の方法に従って製造することができる。また、成分(A)は、適時市販品を使用することもできる。たとえば、JSR株式会社製の商品名「DR8660」や「DR4660」、旭化成ケミカルズ社製の商品名「タフテック M1913」、「タフテック MP10」等や、三洋化成工業社製の商品名「ユーメックス1001」等を使用することができる。
成分(A)は、例えば特許第5402112号公報、特許第4840140号公報、国際公開第2003/029299号、国際公開第2014/014052号等に記載の方法に従って製造することができる。また、成分(A)は、適時市販品を使用することもできる。たとえば、JSR株式会社製の商品名「DR8660」や「DR4660」、旭化成ケミカルズ社製の商品名「タフテック M1913」、「タフテック MP10」等や、三洋化成工業社製の商品名「ユーメックス1001」等を使用することができる。
1.2.重合体(B)
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)を含む。成分(B)は、成分(A)との相容性に優れており、特に成形体の曲げ強度の向上に寄与すると考えられる。成分(A)がアミノ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する場合、成分(B)は、成分(A)と反応し、さらに成分(D)とも反応することにより、成分(A)と成分(D)とを強固に接着するための仲介となると考えられる。その結果、本実施形態に係る成形体に曲げ荷重などの負荷が印加された場合の成分(C)と成分(D)の界面から亀裂の発生を抑制し、該成形体の曲げ強度、シャルピー衝撃強度等の機械的強度を向上させると考えられる。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)を含む。成分(B)は、成分(A)との相容性に優れており、特に成形体の曲げ強度の向上に寄与すると考えられる。成分(A)がアミノ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する場合、成分(B)は、成分(A)と反応し、さらに成分(D)とも反応することにより、成分(A)と成分(D)とを強固に接着するための仲介となると考えられる。その結果、本実施形態に係る成形体に曲げ荷重などの負荷が印加された場合の成分(C)と成分(D)の界面から亀裂の発生を抑制し、該成形体の曲げ強度、シャルピー衝撃強度等の機械的強度を向上させると考えられる。
なお、後述の本実施形態に係る繊維強化樹脂において、成分(B)の含有割合は、炭素繊維(D)100質量部に対し、1~150質量部であることが好ましく、1.5~100質量部であることがより好ましい。成分(B)の含有割合が前記範囲であると、成分(A)と成分(D)の仲介としての機能がより向上するため、成形体の曲げ強度やシャルピー衝撃強度がさらに向上すると考えられる。
成分(B)が有する酸無水物構造としては、無水酢酸構造、無水プロピオン酸構造、無水シュウ酸構造、無水コハク酸構造、無水フタル酸構造、無水マレイン酸構造、無水安息香酸構造などのカルボン酸無水物構造が挙げられる。なお、成分(B)が有する官能基、すなわちエポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造は、それぞれ保護基によって保護されていてもよい。
成分(B)が有する官能基の中でも、エポキシ基であることが好ましい。エポキシ基を有する重合体としては、ポリオレフィン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、ポリオレフィン-アリルグリシジルエーテル及び/又はポリオレフィンにグリシジル(メタ)アクリレートもしくはアリルグリシジルエーテルを有機過酸化物とともに作用させてグラフト結合させた共重合体等が挙げられる。具体的には、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体;エチレン-酢酸ビニル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体;エチレン-アクリル酸メチルエステル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸エチルエステル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸ブチルエステル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン-アクリル酸エステル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体;エチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体;エチレン-メタクリル酸エステル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体;エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エステル共重合体-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体;エチレン-ポリプロピレン-グリシジル(メタ)アクリレートグラフト共重合体;エチレン-ポリプロピレン-ジエン共重合体-グリシジル(メタ)アクリレートグラフト共重合体;エチレン-αオレフィン共重合体-グリシジル(メタ)アクリレートグラフト共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体-グリシジル(メタ)アクリレートグラフト共重合体;ポリプロピレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体;ポリプロピレン-グリシジル(メタ)アクリレートグラフト共重合体などが挙げられる。これらの中では、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸エステル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-ポリプロピレン-グリシジル(メタ)アクリレートグラフト共重合体、エチレン-ポリプロピレン-ジエン共重合体-グリシジル(メタ)アクリレートグラフト共重合体、ポリプロピレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、ポリプロピレン-グリシジル(メタ)アクリレートグラフト共重合体が好ましい。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物における成分(B)の含有割合は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部中、好ましくは10~90質量部、より好ましくは15~85質量部である。
なお、本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物において、成分(A)及び成分(B)は、反応条件を満たすことにより、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基に由来する構造単位を有する重合体が合成される場合がある。すなわち、本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、以下の(a)ないし(c)の三形態が考えられる。
(a)成分(A)及び成分(B)が反応せずにそれぞれ独立して存在する形態。
(b)成分(A)及び成分(B)が全て反応して、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基に由来する構造単位を有する重合体のみが存在する形態。
(c)未反応の成分(A)及び/又は未反応の成分(B)と、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基に由来する構造単位を有する重合体と、が共存する形態。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物が(a)ないし(c)のいずれの形態で存在しているかは高度な分析技術をもってしても判別困難であることが、本発明者らの研究により明らかとなっている。
(a)成分(A)及び成分(B)が反応せずにそれぞれ独立して存在する形態。
(b)成分(A)及び成分(B)が全て反応して、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基に由来する構造単位を有する重合体のみが存在する形態。
(c)未反応の成分(A)及び/又は未反応の成分(B)と、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基に由来する構造単位を有する重合体と、が共存する形態。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物が(a)ないし(c)のいずれの形態で存在しているかは高度な分析技術をもってしても判別困難であることが、本発明者らの研究により明らかとなっている。
1.3.熱可塑性樹脂(C)
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、熱可塑性樹脂(C)を含有することができる。成分(C)は、後述の繊維強化樹脂を作製する際には必須成分となるが、繊維強化樹脂を作製するための繊維強化樹脂用組成物に成分(C)の少なくとも一部をあらかじめ添加しておいてもよい。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、熱可塑性樹脂(C)を含有することができる。成分(C)は、後述の繊維強化樹脂を作製する際には必須成分となるが、繊維強化樹脂を作製するための繊維強化樹脂用組成物に成分(C)の少なくとも一部をあらかじめ添加しておいてもよい。
成分(C)としては、例えばオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂;アクリル系樹脂;ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン12、半芳香族ポリアミド(ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T)、変性ポリアミド等のポリアミド;ポリカーボネート、ポリアセタール、フッ素樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルエラストマー、ポリアリレート、液晶ポリマー(全芳香族系、半芳香族系)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリウレタン系樹脂が例示され、これらから選ばれる1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、成分(A)との相容性が良好となる観点から、オレフィン系樹脂が好適である。
成分(C)の分子量は、重量平均分子量(Mw)で0.5万以上100万以下であることが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、1以上10以下が好ましい。
以下、本実施形態において好適に用いられるオレフィン系樹脂について説明する。
オレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等の炭素数2~8程度のα-オレフィンの単独重合体;それらのα-オレフィンと、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-オクタデセン等の炭素数2~18程度の他のα-オレフィン等との二元あるいは三元の(共)重合体等が挙げられる。
オレフィン系樹脂の具体例としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ヘプテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等のエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂;1-ブテン単独重合体、1-ブテン-エチレン共重合体、1-ブテン-プロピレン共重合体等の1-ブテン系樹脂;4-メチル-1-ペンテン単独重合体、4-メチル-1-ペンテン-エチレン共重合体等の4-メチル-1-ペンテン系樹脂等の樹脂などが挙げられる。
これらのオレフィン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂が好ましく、プロピレン系樹脂がより好ましい。特に成分(A)が、共役ジエンに由来する繰り返し単位量が80質量%以上であって、かつ、ビニル結合含量が30モル%以上90モル%以下の共役ジエン重合体ブロックを有するブロック重合体である場合、プロピレン系樹脂は当該成分(A)との相容性がとりわけ良好となる点で好ましい。この場合、上記の重合体ブロックのビニル結合含量は、50モル%以上90モル%以下であることがより好ましい。また、成分(A)が水素添加されると、プロピレン系樹脂との相容性や、分子の絡み合いが顕著に向上するため好ましい。
オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、成形体の機械的強度を向上させるために、0.5万以上100万以下であることが好ましい。また、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、1以上10以下が好ましい。
1.4.老化防止剤
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、老化防止剤を含有してもよい。老化防止剤の含有量は、繊維強化樹脂用組成物100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.02~8質量部であることがより好ましい。老化防止剤の含有量が前記範囲であると、成形体の曲げ強度とシャルピー衝撃強度、成形外観が向上する。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、老化防止剤を含有してもよい。老化防止剤の含有量は、繊維強化樹脂用組成物100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.02~8質量部であることがより好ましい。老化防止剤の含有量が前記範囲であると、成形体の曲げ強度とシャルピー衝撃強度、成形外観が向上する。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物に含有される老化防止剤としては、ヒンダードアミン系化合物、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、含硫黄化合物、含リン化合物、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p-フェニレンジアミン系化合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体系化合物、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、亜リン酸エステル系化合物、イミダゾール系化合物、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系化合物、リン酸系化合物等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、老化防止剤は、市販品を使用することもできる。たとえば、ADEKA社製の商品名「アデカスタブAO-60」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブAO-412S」等を使用することができる。
1.5.その他の成分
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物には、上記成分以外に、その他の成分として、水分、金属原子、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、防菌・防黴剤、防臭剤、導電性付与剤、分散剤、軟化剤、可塑剤、架橋剤、共架橋剤、加硫剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、難燃剤、制振剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤等を配合することができる。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物には、上記成分以外に、その他の成分として、水分、金属原子、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、防菌・防黴剤、防臭剤、導電性付与剤、分散剤、軟化剤、可塑剤、架橋剤、共架橋剤、加硫剤、加硫助剤、発泡剤、発泡助剤、着色剤、難燃剤、制振剤、造核剤、中和剤、滑剤、ブロッキング防止剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤等を配合することができる。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物が水分を含有する場合、水分の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対し、100×10-4~50000×10-4質量部であることが好ましく、120×10-4~40000×10-4質量部であることがより好ましい。なお、本願発明において「繊維強化樹脂用組成物の水分含有量」とは、繊維強化樹脂用組成物のペレットの水分含有量と同義である。
本願発明における水分含有率は、JIS K7251 「プラスチック-水分含有率の求め方」に準拠して測定した値である。繊維強化樹脂用組成物の水分含有量は、脱湿乾燥機、減圧乾燥機、熱風乾燥機などのペレット乾燥機を用い、使用する繊維強化樹脂用組成物に適した温度及び時間で加熱処理して制御することができる。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物が金属原子を含有する場合、金属原子の含有量は、繊維強化樹脂用組成物100質量%中、0.3~3000ppmが好ましく、0.5~2500ppmであることがより好ましい。また、金属原子の含有量は、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対し、0.2×10-4~4000×10-4質量部が好ましく、0.9×10-4~3400×10-4質量部であることがより好ましい。
金属原子は、形態を問わず、金属塩、金属錯体、金属水和物、有機金属、あるいは無機金属として添加してもよく、繊維強化樹脂用組成物中に上記の濃度が含有されていれば良い。このような金属原子を含有する金属化合物としては、例えば、硝酸鉄(硝酸第一鉄、硝酸第二鉄)、硫酸鉄(硫酸第一鉄、硫酸第二鉄)、塩化鉄(塩化第一鉄、塩化第二鉄)、フェロシアン化鉄(III)、三価の鉄キレート錯体、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、水酸化アルミニウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムカリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化バリウム、硝酸バリウム、硝酸銅、硫酸銅(II)、塩化銅(塩化第二銅)、酸化チタン、硫化チタン、塩化チタン、硫酸ニッケル、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ミョウバン等の多価金属原子含有化合物;水酸化リチウム、塩化リチウム、メトキシリチウム等の1価の金属原子を含有する化合物が挙げられる。
1.6.組成物の製造方法
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて成分(C)やその他の成分を混合または溶融混練することにより製造することができる。
本実施形態に係る繊維強化樹脂用組成物は、成分(A)、成分(B)、及び必要に応じて成分(C)やその他の成分を混合または溶融混練することにより製造することができる。
2.繊維強化樹脂
本実施形態に係る繊維強化樹脂は、上述の繊維強化樹脂用組成物と、熱可塑性樹脂(C)と、炭素繊維(D)とを含有する。
本実施形態に係る繊維強化樹脂は、上述の繊維強化樹脂用組成物と、熱可塑性樹脂(C)と、炭素繊維(D)とを含有する。
2.1.熱可塑性樹脂(C)
熱可塑性樹脂(C)としては、上述の熱可塑性樹脂(C)と同様の樹脂を使用することができる。繊維強化樹脂用組成物が熱可塑性樹脂(C)を含有する場合、繊維強化樹脂用組成物と同じ熱可塑性樹脂(C)を用いることが好ましい。
熱可塑性樹脂(C)としては、上述の熱可塑性樹脂(C)と同様の樹脂を使用することができる。繊維強化樹脂用組成物が熱可塑性樹脂(C)を含有する場合、繊維強化樹脂用組成物と同じ熱可塑性樹脂(C)を用いることが好ましい。
2.2.炭素繊維(D)
一般的に、FRP成形体は曲げ荷重などの負荷が印加された場合、繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となりやすく、繊維とマトリックス樹脂との界面から亀裂が発生しやすい。このようにして発生した亀裂が繊維とマトリックス樹脂との他の界面に伝播することにより、さらに亀裂を誘発し、最終的に成形体を横断して全体破壊に至ることがあった。ところが、上述の繊維強化樹脂用組成物を含有することにより成分(C)と成分(D)との接着性が向上し、曲げ強度及び耐衝撃性などの機械的特性を効果的に向上できることが明らかとなった。
一般的に、FRP成形体は曲げ荷重などの負荷が印加された場合、繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となりやすく、繊維とマトリックス樹脂との界面から亀裂が発生しやすい。このようにして発生した亀裂が繊維とマトリックス樹脂との他の界面に伝播することにより、さらに亀裂を誘発し、最終的に成形体を横断して全体破壊に至ることがあった。ところが、上述の繊維強化樹脂用組成物を含有することにより成分(C)と成分(D)との接着性が向上し、曲げ強度及び耐衝撃性などの機械的特性を効果的に向上できることが明らかとなった。
本発明における炭素繊維(D)は、不織布であってもよい。不織布とは、空隙部を有し、繊維のストランド及び/又はモノフィラメント(以下、ストランドとモノフィラメントを総称して細繊度ストランドと称す)が面状に分散した形態を指し、チョップドストランドマット、コンティニュアンスストランドマット、抄紙マット、カーディングマット、エアレイドマット、などが例示できる。ストランドとは、複数本の単繊維が並行配列して集合したもので、繊維束とも言われる。成分(D)において、細繊度ストランドは分散状態に通常規則性を有しない。成分(D)を用いることで、繊維同士の立体障害が大きくなり、繊維の割合を効率的に下げられるうえ、賦形性に優れることから、複雑形状への成形が容易である。また、成分(D)中の空隙が樹脂含浸の進行を複雑化するため、成分(A)及び後述する成分(C)がより複雑な界面を形成し、優れた接着能力を発現する。
成分(D)は、繊維が略モノフィラメント状であることが好ましい。ここで、「略モノフィラメント状に分散する」とは、成分(D)を構成する繊維のうち、フィラメント数100本未満の細繊度ストランドが50重量%以上含まれることを指す。また、成分(D)において、繊維はランダムに分散していることが好ましい。このような成分(D)は、公知の方法により作製することができる。例えば、特開2014-196584号公報や特開2014-125532号公報に記載の方法を用いることができる。
成分(D)に含有される繊維としては、リサイクル繊維を使用することができる。リサイクル繊維とは、廃材となった繊維強化樹脂(FRP)からマトリックス樹脂を取り除いた後、繊維部分を回収し、その回収された繊維のうち再利用可能な繊維のことをいう。
一般的に、FRPから繊維を回収する際に用いられる樹脂の分解方法としては、熱分解、化学分解、光分解等の方法が挙げられる。しかしながら、いずれの方法を用いた場合であっても、処理工程でサイジング剤が熱分解や光分解等で除去されたり、あるいは、炭素繊維表面の官能基が消失してしまうことがある。そのため、リサイクルによって回収された再生繊維をFRPとして再利用すると、未使用の場合の繊維を添加した場合に比べてFRPの耐衝撃性や曲げ強度などの機械的特性が顕著に劣化するのである。ところが、リサイクル繊維であっても、上述の繊維強化樹脂用組成物及び成分(C)を含有することにより、耐衝撃性や曲げ強度などの機械的特性を向上できる。
成分(D)としては、繊維長が1mm以上200mm以下であることが好ましい。成分(D)の繊維長の下限値は、好ましくは2mm、より好ましくは3mmである。成分(D)の繊維長の上限値は、好ましくは100mm、より好ましくは50mmである。
成分(D)の繊維径の下限値は、好ましくは1nm、より好ましくは5nm、特に好ましくは10nmである。成分(D)の繊維径の上限値は、好ましくは10mm、より好ましくは5mm、さらに好ましくは3mm、特に好ましくは1mmである。
成分(D)の繊維長及び繊維径は、公知の方法により測定することができる。例えば、顕微鏡にて繊維を観察することにより、繊維長及び繊維径を測定することができる。また、FRP成形体中の成分(D)の繊維長及び繊維径は、成形品の高温灰化、溶剤による溶解、試薬による分解等の処理で採取される充填材残渣を、顕微鏡にて観察することにより測定することができる。
成分(D)の繊維長と繊維径との比(アスペクト比)は、140~30000が好ましく、400~7500がより好ましい。アスペクト比が前記範囲であると、成形体の機械的特性をより向上させることができる。また、アスペクト比が前記範囲であると、成形体の変形や異方性の発生を防ぎ、良好な外観を得ることができる。
成分(D)の不織布に好適な目付の下限値は、好ましくは50g/cm3、より好ましくは80g/cm3である。成分(D)に好適な目付の上限値は、好ましくは300g/cm3、より好ましくは250g/cm3である。
成分(D)としては、例えば、ポリアクリロニトリル繊維を原料とするPAN系炭素繊維、石炭タールや石油ピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、ビスコースレーヨンや酢酸セルロースなどを原料とするセルロース系炭素繊維、炭化水素などを原料とする気相成長系炭素繊維、及びこれらの黒鉛化繊維などが好ましく挙げられる。これらの成分(D)は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
成分(D)は、必要に応じて表面を官能基で修飾してもよい。このような官能基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アミド基、アミノ基、イソシアネート基、イミド基、ウレタン基、エーテル基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及び酸無水物構造等が挙げられる。
炭素繊維に上記の官能基を導入する方法は特に限定されないが、炭素繊維とサイジング剤とを直接反応させて導入する方法や、炭素繊維にサイジング剤を塗布又は含浸したのち必要に応じてサイジング剤を固化する方法等が挙げられる。具体的には、特開2013-147763号公報等に記載の方法に基づいて作製することができる。
サイジング剤の種類としては、例えば、酸、酸無水物、アルコール、ハロゲン化試薬、イソシアナート、アルコキシシラン、オキシラン(エポキシ)等の環状エーテル、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ウレタン樹脂、アミン変性芳香族エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂よりなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
2.3.各成分の含有割合
本実施形態に係る繊維強化樹脂において、成分(A)及び成分(B)の合計量の含有割合の下限値は、マトリックス樹脂である成分(C)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部、より好ましくは0.5質量部である。成分(A)及び成分(B)の合計量の含有割合の上限値は、マトリックス樹脂である成分(C)100質量部に対して、好ましくは15質量部、より好ましくは10質量部、特に好ましくは5質量部である。成分(A)及び成分(B)の合計量の含有割合が前記範囲にあることにより、成分(A)及び成分(B)が、成分(C)と成分(D)とを強固に接着させることができる。その結果、曲げ荷重などの負荷が印加された場合の成分(C)と成分(D)との界面から亀裂の発生を抑制し、成形体の曲げ強度やシャルピー衝撃強度等の機械的強度を向上させると考えられる。
本実施形態に係る繊維強化樹脂において、成分(A)及び成分(B)の合計量の含有割合の下限値は、マトリックス樹脂である成分(C)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部、より好ましくは0.5質量部である。成分(A)及び成分(B)の合計量の含有割合の上限値は、マトリックス樹脂である成分(C)100質量部に対して、好ましくは15質量部、より好ましくは10質量部、特に好ましくは5質量部である。成分(A)及び成分(B)の合計量の含有割合が前記範囲にあることにより、成分(A)及び成分(B)が、成分(C)と成分(D)とを強固に接着させることができる。その結果、曲げ荷重などの負荷が印加された場合の成分(C)と成分(D)との界面から亀裂の発生を抑制し、成形体の曲げ強度やシャルピー衝撃強度等の機械的強度を向上させると考えられる。
また、本実施形態に係る繊維強化樹脂において、成分(D)の含有割合の下限値は、マトリックス樹脂である成分(C)100質量部に対して、好ましくは10質量部、より好ましくは30質量部、特に好ましくは50質量部である。成分(D)の含有割合の上限値は、好ましくは150質量部、より好ましくは100質量部である。成分(D)の含有割合が前記範囲にあることにより、得られる成形体の曲げ強度や落錘衝撃強度等の機械的強度を向上させることができる。
2.4.繊維強化樹脂の製造方法
本実施形態に係る繊維強化樹脂は、上述の繊維強化樹脂用組成物、成分(C)及び必要に応じてその他の成分を、成分(D)に含浸させることにより製造することができる。含浸の方法は、特に限定されず、繊維強化樹脂用組成物及び成分(C)を混合した後、その混合物中に成分(D)を含浸させてもよい。
本実施形態に係る繊維強化樹脂は、上述の繊維強化樹脂用組成物、成分(C)及び必要に応じてその他の成分を、成分(D)に含浸させることにより製造することができる。含浸の方法は、特に限定されず、繊維強化樹脂用組成物及び成分(C)を混合した後、その混合物中に成分(D)を含浸させてもよい。
3.成形体
本実施形態に係る成形体は、上述の繊維強化樹脂を成形して得られるものである。成形においては、本実施形態に係る繊維強化樹脂に含まれる繊維の折損が抑制できるような成形条件を選択することが好ましい。繊維長をできるだけ維持する成形条件としては、マトリックス樹脂に対して強化繊維を添加していない(非強化の)状態で成形する際の一般的可塑化温度より10~30℃高めの温度設定とするなど、可塑化による剪断を低減することが望ましい。このように成形時においては繊維長を長くするような条件をとることで、本実施形態に係る繊維強化樹脂から成形される成形体中に繊維が分散される繊維強化樹脂成形体を達成できる。
本実施形態に係る成形体は、上述の繊維強化樹脂を成形して得られるものである。成形においては、本実施形態に係る繊維強化樹脂に含まれる繊維の折損が抑制できるような成形条件を選択することが好ましい。繊維長をできるだけ維持する成形条件としては、マトリックス樹脂に対して強化繊維を添加していない(非強化の)状態で成形する際の一般的可塑化温度より10~30℃高めの温度設定とするなど、可塑化による剪断を低減することが望ましい。このように成形時においては繊維長を長くするような条件をとることで、本実施形態に係る繊維強化樹脂から成形される成形体中に繊維が分散される繊維強化樹脂成形体を達成できる。
成形方法としては、公知の方法を適用することができるが、可塑化による繊維の剪断を低減する条件を適宜選択することができ、例えば射出成形、押出成形、中空成形、発泡成形、プレス成形等の方法を採ることができる。また、成分(D)をあらかじめシート状など所望の形状に成形しておき、溶融させた繊維強化樹脂用組成物と成分(C)の混合物を含浸させて成形体を作製することもできる。
本実施形態に係る成形体は、その特性を活かして例えば、自動車内装材、外板、バンパー等の自動車材料や家庭電気製品の筐体、家電部品、包装用資材、建築資材、土木資材、水産資材、その他の工業用資材等として好適に用いられる。また、樹脂中の炭素繊維の配向度を調整することにより電磁波吸収材として用いることもできる。
4.実施例
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
4.1.重合体の重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(アジレント・テクノロジー(株)製、PL-GPC220)法により測定された、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
・展開溶媒:o-ジクロロベンゼン
・測定温度:135℃
・カラム:PLgel Olexis
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(アジレント・テクノロジー(株)製、PL-GPC220)法により測定された、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
・展開溶媒:o-ジクロロベンゼン
・測定温度:135℃
・カラム:PLgel Olexis
4.2.実施例1
4.2.1.ペレットの作製
表1に示す種類、質量部の成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、老化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名「アデカスタブAO-60」、ADEKA社製)0.1質量部と、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「アデカスタブ2112」、ADEKA社製)0.1質量部とを添加した。次いで、この混合物を、東芝機械社製二軸押出機「TEM26SS」(型式名)に供給して、シリンダ温度230℃、スクリュー回転数300rpm、吐出30kg/hの条件で溶融混練し、直径2mm、長さ4mmの円柱状のペレットを得た。
4.2.1.ペレットの作製
表1に示す種類、質量部の成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、老化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](商品名「アデカスタブAO-60」、ADEKA社製)0.1質量部と、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「アデカスタブ2112」、ADEKA社製)0.1質量部とを添加した。次いで、この混合物を、東芝機械社製二軸押出機「TEM26SS」(型式名)に供給して、シリンダ温度230℃、スクリュー回転数300rpm、吐出30kg/hの条件で溶融混練し、直径2mm、長さ4mmの円柱状のペレットを得た。
作製した未乾燥ペレットを、乾燥機(商品名「並行流回分式乾燥機」、佐竹化学機械工業(株)製)を用いて乾燥温度80℃の条件で、水分量が150ppmとなるまで乾燥し、ペレットを作製した。
4.2.2.成形体の作製
上記ペレットを100質量部、「ノバテック MA1B」(ポリプロピレン、日本ポリプロ社製)のペレットを5000質量部、及び「HT C702」(PAN系炭素繊維、東邦テナックス社製)を2600質量部、を東芝機械社製二軸押出機「TEM26SS」(型式名)に供給して、シリンダ温度230℃、スクリュー回転数700rpm、吐出30kg/hの条件にて溶融混練し、直径2mm、長さ4mmの円柱状の繊維強化樹脂ペレットを得た。
上記ペレットを100質量部、「ノバテック MA1B」(ポリプロピレン、日本ポリプロ社製)のペレットを5000質量部、及び「HT C702」(PAN系炭素繊維、東邦テナックス社製)を2600質量部、を東芝機械社製二軸押出機「TEM26SS」(型式名)に供給して、シリンダ温度230℃、スクリュー回転数700rpm、吐出30kg/hの条件にて溶融混練し、直径2mm、長さ4mmの円柱状の繊維強化樹脂ペレットを得た。
作製した繊維強化樹脂ペレットを型締力110トンの射出成形機(日本製鋼所製、製品名「J-110AD」)を用いて該樹脂混合物をシリンダ温度230℃、背圧10MPaの条件にて射出成形し、150mm(幅)×150mm(長さ)×2mm(厚さ)の平板状の成形体を作製した。
4.2.3.成形体の評価
(1)曲げ強度
上記で作製した成形体を、ユニバーサルカッターを用いて、大きさが10mm×150mm×2mm(=幅×長さ×厚さ)となるように切り出して試験片を作製した。試験はISO179に準じて、支点間距離64mm、試験速度2mm/minの条件で行った。試験温度は23℃、単位は「MPa」である。曲げ強度が155MPa以上である場合を良好、155MPa未満を不良と判断した。
(1)曲げ強度
上記で作製した成形体を、ユニバーサルカッターを用いて、大きさが10mm×150mm×2mm(=幅×長さ×厚さ)となるように切り出して試験片を作製した。試験はISO179に準じて、支点間距離64mm、試験速度2mm/minの条件で行った。試験温度は23℃、単位は「MPa」である。曲げ強度が155MPa以上である場合を良好、155MPa未満を不良と判断した。
(2)シャルピー衝撃強度
上記で作製した成形体を、ユニバーサルカッターを用いて、大きさが10mm×80mm×2mm(=幅×長さ×厚さ)となるよう切り出して試験片を作製した。試験はJIS-K7077に準じて行った。なお、シャルピー衝撃強度を測定した単位は「kJ/m2」である。シャルピー衝撃強度が20kJ/m2以上である場合を良好、20kJ/m2未満である場合を不良と判断した。
上記で作製した成形体を、ユニバーサルカッターを用いて、大きさが10mm×80mm×2mm(=幅×長さ×厚さ)となるよう切り出して試験片を作製した。試験はJIS-K7077に準じて行った。なお、シャルピー衝撃強度を測定した単位は「kJ/m2」である。シャルピー衝撃強度が20kJ/m2以上である場合を良好、20kJ/m2未満である場合を不良と判断した。
4.3.実施例2~12、比較例1~4
表1に示すペレット組成とし、表1に示す繊維強化樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の方法により成形体を作製し、実施例1と同様にして成形体の評価を行った。
表1に示すペレット組成とし、表1に示す繊維強化樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の方法により成形体を作製し、実施例1と同様にして成形体の評価を行った。
4.4.評価結果
表1に各実施例、各比較例で用いたペレット及び繊維強化樹脂の組成、並びに成形体の評価結果を示した。
表1に各実施例、各比較例で用いたペレット及び繊維強化樹脂の組成、並びに成形体の評価結果を示した。
表1において、各成分の略称はそれぞれ下記の通りである。
<ブロック重合体(A)>
・A1:JSR株式会社製、変性水添共役ジエンブロック重合体(SEBSブロックポリマー)、商品名「DR8660」
・A2:旭化成ケミカルズ株式会社製、アミン変性水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBSブロックポリマー)、商品名「タフテック MP10」
・A3:JSR株式会社製、水添共役ジエンブロック重合体(SEBSブロックポリマー)、商品名「DR8900」
・A4:JSR株式会社製、変性水添共役ジエン重合体(SEBCブロックポリマー)、商品名「DR4660」
<重合体(B)>
・B1:住友化学株式会社製、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、商品名「BF-E」
・B2:住友化学株式会社製、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、商品名「BF-CG5001」
・B3:住友化学株式会社製、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、商品名「BF-2C」
・B4:日油株式会社製、ポリ(エチレン/メタクリル酸グリシジル)-graft-ポリスチレン、商品名「モディパーA4100」
・B5:日油株式会社製、ポリ(エチレン/メタクリル酸グリシジル)-graft-ポリ(アクリロニトリル/スチレン)、商品名「モディパーA4400」
・B6:株式会社日本触媒製、オキサゾリン変性ポリスチレン、商品名「エポクロスRPS-1005」
・B7:三洋化成工業株式会社製、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、商品名「ユーメックス 1001」
<他成分>
・HF77:PSジャパン株式会社製、ポリスチレン樹脂、商品名「HF77」
<熱可塑性樹脂(C)>
・PP:日本ポリプロ社製、ポリプロピレン「ノバテック MA1B」(商品名)
<炭素繊維(D)>
・D1:東邦テナックス社製、PAN系炭素繊維「HT C702」(商品名)、平均繊維長6mm
<老化防止剤>
・E1:ADEKA社製、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、商品名「アデカスタブAO-60」
・E2:ADEKA社製、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、商品名「アデカスタブ2112」
<ブロック重合体(A)>
・A1:JSR株式会社製、変性水添共役ジエンブロック重合体(SEBSブロックポリマー)、商品名「DR8660」
・A2:旭化成ケミカルズ株式会社製、アミン変性水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBSブロックポリマー)、商品名「タフテック MP10」
・A3:JSR株式会社製、水添共役ジエンブロック重合体(SEBSブロックポリマー)、商品名「DR8900」
・A4:JSR株式会社製、変性水添共役ジエン重合体(SEBCブロックポリマー)、商品名「DR4660」
<重合体(B)>
・B1:住友化学株式会社製、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、商品名「BF-E」
・B2:住友化学株式会社製、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、商品名「BF-CG5001」
・B3:住友化学株式会社製、エチレングリシジルメタクリレート共重合体、商品名「BF-2C」
・B4:日油株式会社製、ポリ(エチレン/メタクリル酸グリシジル)-graft-ポリスチレン、商品名「モディパーA4100」
・B5:日油株式会社製、ポリ(エチレン/メタクリル酸グリシジル)-graft-ポリ(アクリロニトリル/スチレン)、商品名「モディパーA4400」
・B6:株式会社日本触媒製、オキサゾリン変性ポリスチレン、商品名「エポクロスRPS-1005」
・B7:三洋化成工業株式会社製、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、商品名「ユーメックス 1001」
<他成分>
・HF77:PSジャパン株式会社製、ポリスチレン樹脂、商品名「HF77」
<熱可塑性樹脂(C)>
・PP:日本ポリプロ社製、ポリプロピレン「ノバテック MA1B」(商品名)
<炭素繊維(D)>
・D1:東邦テナックス社製、PAN系炭素繊維「HT C702」(商品名)、平均繊維長6mm
<老化防止剤>
・E1:ADEKA社製、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、商品名「アデカスタブAO-60」
・E2:ADEKA社製、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、商品名「アデカスタブ2112」
なお、ブロック重合体(A)の貯蔵弾性率は、以下のように測定した。
株式会社岩城工業社製プレス機(型式「IPS37」)にて1mm厚のプレスシートを作製した。作製したプレスシートから幅3mm、長さ4cmの短冊状の試験片を打ち抜き、TA Instruments社製粘弾性測定装置(型式「RSA-GII」)を用いて、23℃雰囲気下、周波数1Hzのもと粘弾性を測定し、歪み0.01~1%の範囲における貯蔵弾性率E’(MPa)の平均値を求めた。
株式会社岩城工業社製プレス機(型式「IPS37」)にて1mm厚のプレスシートを作製した。作製したプレスシートから幅3mm、長さ4cmの短冊状の試験片を打ち抜き、TA Instruments社製粘弾性測定装置(型式「RSA-GII」)を用いて、23℃雰囲気下、周波数1Hzのもと粘弾性を測定し、歪み0.01~1%の範囲における貯蔵弾性率E’(MPa)の平均値を求めた。
実施例1~12によれば、曲げ強度及びシャルピー衝撃強度の点で良好な成形体が得られた。
比較例1によれば、成分(B)を含まないため、実施例に比べて曲げ強度及びシャルピー衝撃強度の点で劣る傾向が認められた。
比較例2及び比較例3によれば、成分(A)を含まないため、実施例に比べて曲げ強度及びシャルピー衝撃強度の点で劣る傾向が認められた。
比較例4によれば、成分(A)に代えてブロックではない重合体(HF77)を使用したため、実施例に比べて曲げ強度及びシャルピー衝撃強度で劣る傾向が認められた。
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を包含する。また本発明は、上記の実施形態で説明した構成の本質的でない部分を他の構成に置き換えた構成を包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成をも包含する。さらに本発明は、上記の実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成をも包含する。
Claims (8)
- ブロック重合体(A)と、
エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)と、
を含有する、繊維強化樹脂用組成物。 - 前記重合体(A)及び前記重合体(B)の両方の重量平均分子量が10,000以上である、請求項1に記載の繊維強化樹脂用組成物。
- 前記重合体(A)の23℃雰囲気下の貯蔵弾性率が5MPa以上である、請求項1または請求項2に記載の繊維強化樹脂用組成物。
- 前記重合体(A)がスチレンブロックを有する、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂用組成物。
- ブロック重合体(A)と、
エポキシ基、オキサゾリン基及び酸無水物構造よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する重合体(B)と、
を溶融混練する工程を備える、繊維強化樹脂用組成物の製造方法。 - 前記重合体(A)及び前記重合体(B)の両方の重量平均分子量が10,000以上である、請求項5に記載の繊維強化樹脂用組成物の製造方法。
- 請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂用組成物と、熱可塑性樹脂(C)と、炭素繊維(D)と、を含有する、繊維強化樹脂。
- 請求項7に記載の繊維強化樹脂を成形して得られる、成形体。
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