JP7384176B2 - 振動吸収材 - Google Patents

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Description

本発明は、振動吸収材に関する。更に詳しくは、構造材としての一定の機械的強度を備える成形材であって、熱可塑性樹脂を含む成形材単独で優れて振動吸収能力を発揮する振動吸収材に関する。
近年、日常生活に関わる家庭内の電器機或いは自動車等の分野において、快適性の観点から制振性や防音性に多くの注意が払われるようになっている。家庭内電器機の分野では、モータ等の駆動装置を搭載した電器機が、振動源になる。また、自動車分野では、走行中に微振動する車両の屋根や扉、エンジン等の駆動系装置が、振動源になる。振動源から発生する振動が、振動源を内部に収容する電機器の構造材や自動車の内外装材やパネル材等を介し、空気を介し、騒音としてヒトに届く。そこで、電器機の構造材、自動車の内外装材又はパネル材等のような制振が期待される被振動吸収材に防振ゴムや防振シート等の振動吸収材を取り付け、被振動吸収材の振動を介して伝搬する騒音を低減する対応が行われている。
具体的には、自動車の内外装材と内外装材の被取付体との間に防振シートを介在させ、両者を一体化して振動吸収する方法が知られている。特許文献1、2には、性質が異なる材料を積層した複合材料タイプの制振材或いは吸音材が開示されている。特許文献3には、低温下での耐衝撃性と高温下での剛性とのバランスを改善したプロピレン樹脂組成物が開示されている。
特開2005-003019号公報 特開平08-152890号公報 特開2014-001343号公報
しかしながら、内外装材(被振動吸収材)に振動吸収材を取り付ける作業は、延いては自動車の生産性を損なう。
特に構造材に軽量化が求められる場合には、被振動吸収材を形成する構造材として合成樹脂が多用される。合成樹脂製の構造材には、外力に対して変形しにくく一定の機械的強度を備えることが求められる。他方、代表的な振動吸収材であるゴム材は、振動吸収性能に優れるが弾性率が小さくなる点で機械的強度(剛性)が小さく、構造材として用いるための適性を有さない。従って、被振動吸収材と振動吸収材とを個別に準備し、被振動吸収材(内外装材)に振動吸収材(防振ゴム)を取り付ける作業を不可避的に必要とする実情がある。
特許文献1には、制振材が、振動源から伝わる振動を、合成樹脂を主成分とする基材シートによって熱エネルギーに変換し、更に基材シートと金属シートとの界面で剪断エネルギーに変換する振動吸収作用が記載されている。特許文献2には、吸音材が、合成樹脂繊維よりなる高密度層を質量部とし、同じく低密度層をばね部とした、マス-ばね系を形成し、音のエネルギーを減衰させる吸音作用が記載されている。複合材料タイプの制振材又は吸音材は、合成樹脂或いは同質の合成樹脂繊維よりなる材料単独で制振又は吸音効果を作用させるものではない点で、上記同様に、生産性を損なう。
そこで、軽量な合成樹脂を用いて成形され、且つ、構造材としての一定の機械的強度を備え、しかも、単独材で優れた振動吸収能力を発揮する、利便性に一層優れた振動吸収材の開発が望まれている。特許文献3には、プロピレン樹脂組成物であって好ましくはプロピレン系ブロック共重合体が、耐衝撃性と剛性とをバランス良く発揮する成形材料であることが開示されているが、振動吸収能力に関する言及はなされていない。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、構造材料としての一定の機械的強度を備える成形材であって、熱可塑性樹脂を含む成形材単独で優れて振動吸収能力を発揮する振動吸収材を提供することを目的とする。
即ち、本発明は以下のとおりである。
請求項1に記載の振動吸収材は、ポリオレフィン樹脂と、ポリアミド樹脂と、前記ポリアミド樹脂に対する反応基を有する変性エラストマーと、を含有し、
前記ポリオレフィン樹脂と前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、前記ポリオレフィン樹脂の割合は10質量%以上90質量%以下、前記ポリアミド樹脂の割合は3質量%以上85質量%以下及び前記変性エラストマーの割合は、3質量%以上35質量%以下であり、
前記ポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、前記連続相(A)の中に分散された前記ポリアミド樹脂を含む分散相(B)とを備える熱可塑性樹脂を含むことを要旨とする。
請求項2に記載の振動吸収材は、請求項1に記載の振動吸収材において、前記分散相(B)が、前記ポリアミド樹脂を含む分散相内連続相(Ba)と、前記分散相内連続相(Ba)中に分散された前記変性エラストマーを含む微分散相(Bb)と、を有することを要旨とする。
請求項3に記載の振動吸収材は、請求項2に記載の振動吸収材において、前記分散相(B)の平均分散径が、100nm以上4000nm以下であり、前記微分散相(Bb)の平均分散径が、15nm以上350nm以下であることを要旨とする。
請求項4に記載の振動吸収材は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の振動吸収材において、前記熱可塑性樹脂が、前記連続相(A)に加えて、前記連続相(A)と共存し、且つ、前記ポリアミド樹脂を含む第2連続相(A2)を備えており、前記第2連続相(A2)は、前記第2連続相(A2)中に分散された前記変性エラストマーを含む第2分散相(B2)を有していることを要旨とする。
請求項5に記載の振動吸収材は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の振動吸収材において、自動車の内外装材として用いられることを要旨とする。
請求項6に記載の振動吸収材は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の振動吸収材において、前記熱可塑性樹脂に、更にポリオレフィン樹脂を加えた混合樹脂を含むことを要旨とする。
本振動吸収材は、構造材料としての一定の機械的強度を備える成形材であって、熱可塑性樹脂を含む成形材単独で優れた振動吸収能力を発揮できる。
即ち、本振動吸収材を構成する熱可塑性樹脂は、振動吸収材としての使用に優れる。振動吸収材として効果的に使用することができる。
本振動吸収材に含まれる熱可塑性樹脂の相構造の一例を説明する模式図である。 図1と同じく、相構造の他の例を説明する模式図である。 本実施例で、-30℃でのtanδ値の評価試験結果を示すグラフである。 本実施例で、25℃でのtanδ値の評価試験結果を示すグラフである。 本実施例で、80℃でのtanδ値の評価試験結果を示すグラフである。
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
本発明の振動吸収材は、ポリオレフィン樹脂と、ポリアミド樹脂と、ポリアミド樹脂に対する反応基を有する変性エラストマーと、を含有し、ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、ポリオレフィン樹脂の割合は10質量%以上90質量%以下、ポリアミド樹脂の割合は3質量%以上85質量%以下及び変性エラストマーの割合は、3質量%以上35質量%以下であり、ポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、連続相(A)の中に分散されたポリアミド樹脂を含む分散相(B)とを備える熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする。
また、本発明の振動吸収材は、ヒトの可聴帯域とされる周波数20Hzから20kHz程度の範囲の振動を、吸収すべき振動対象とする。
本発明の振動吸収材は、その熱可塑性樹脂を用いて構造材を形成する場合に、振動吸収性能のみならず、構造材料としての適格性を備えるものが好ましい。
つまり、剛性、耐衝撃性等の機械的特性や、耐疲労性、成形性等を備えることが好ましい。この点、本発明者等は、ポリオレフィン樹脂と、ポリアミド樹脂と、ポリアミド樹脂に対する反応性基を有する変性エラストマーとを含む熱可塑性樹脂の開発を行っている。また、本発明者らは、特開2013-147645号公報、特開2013-147646号公報、特開2013-147647号公報、特開2013-147648号公報等に、機械的特性に優れた当該熱可塑性樹脂を開示している。また、本発明者らは、耐疲労性に優れた当該熱可塑性樹脂をWO2018/193923号に、繊維材料として引張特性に優れた当該熱可塑性繊維を特開2018-123457号公報に、開示している。
しかしながら、このような熱可塑性樹脂を用いた種々の成形材に関して、その振動吸収性能については何も知られていなかった。本発明者らは、更に検討を重ねるうちに、上述の熱可塑性樹脂を用いて、ヒトの可聴帯域の周波数に対応する振動吸収性能に優れた成形材が得られ得ることを知見した。本発明者等は、当該熱可塑性樹脂を含む成形材が、別途防振ゴムを取り付けたり、他の材料を積層したりする特段の工数を要さずに、ヒトに届く騒音を低減でき得ることを見出した。
(熱可塑性樹脂)
本振動吸収材に含まれる熱可塑性樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂と、ポリアミド樹脂と、ポリアミド樹脂に対する反応性基を有する変性エラストマーと、を含む。個々の成分の詳細については、上記特開2013-147645号公報、特開2013-147646号公報、特開2013-147647号公報、特開2013-147648号公報等に開示されているものに準じるが、以下に、確認的に説明する。
〈1〉ポリオレフィン樹脂
ポリオレフィン樹脂としては、オレフィンの単独重合体、及び/又は、オレフィンの共重合体を用いることができる。
上記オレフィンは特に限定されないが、エチレン、プロピレン及び炭素数4~8のα-オレフィン等が挙げられる。炭素数4~8のα-オレフィンとしては、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
具体的には、ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ1-ブテン、ポリ1-ヘキセン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。これら重合体は1種のみで用いてもよく、2種以上を併用してもよい。即ち、ポリオレフィン樹脂は上記重合体の混合物であっても良い。
上記ポリエチレン樹脂としては、エチレン単独重合体、及び、エチレンと他のオレフィン(他のオレフィンにエチレンは含まれない)との共重合体が挙げられる。後者としては、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体等が挙げられる(但し、全構成単位数のうちの50%以上がエチレンに由来する単位である)。
上記ポリプロピレン樹脂としては、プロピレン単独重合体、及び、プロピレンと他のオレフィン(他のオレフィンにプロピレンは含まれない)との共重合体が挙げられる。後者としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体等が挙げられる(但し、全構成単位数のうちの50%以上がプロピレンに由来する単位である)。
また、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。これらのうちでは、機械的強度に優れるという観点からブロック共重合体が好ましい。とりわけ、他のオレフィンがエチレンであるプロピレン・エチレンブロック共重合体であることが好ましい。このプロピレン・エチレンブロック共重合体は、例えば、インパクトコポリマー、ポリプロピレンインパクトコポリマー、ヘテロファジックポリプロピレン、ヘテロファジックブロックポリプロピレン等とも称される。
ポリオレフィン樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)は特に限定されないが、例えば、10,000以上500,000以下とすることができ、100,000以上450,000以下が好ましく、200,000以上400,000以下がより好ましい。なお、ポリオレフィン樹脂は、後述するポリアミド樹脂に対して親和性を有さないポリオレフィンであり、且つ、ポリアミド樹脂に対して反応し得る反応性基も有さないポリオレフィンである。この点において、後述する変性エラストマーとしてのオレフィン系成分とは異なる。
〈2〉ポリアミド樹脂
ポリアミド樹脂は、アミド結合(-NH-CO-)を介して複数の単量体が重合されてなる重合体である。
ポリアミド樹脂を構成する単量体としては、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ω-ラウリルラクタムなどのラクタムなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、ポリアミド樹脂は、ジアミンとジカルボン酸との共重合により得ることもできる。この場合、単量体としてのジアミンには、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノテトラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,16-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプタデカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジアミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン等の脂肪族ジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン、キシリレンジアミン(p-フェニレンジアミン及びm-フェニレンジアミンなど)等の芳香族ジアミンなどが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、単量体としてのジカルボン酸には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸のような脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のような芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド12、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T、ポリアミドMXD6、ポリアミド6T/66、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6T/6I/66、ポリアミド6T/2M-5T、ポリアミド9T/2M-8T等が挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
更に、本発明では、上述の各種ポリアミド樹脂のうち、植物由来ポリアミド樹脂を用いることができる。植物由来ポリアミド樹脂は、植物油等の植物に由来する成分から得られた単量体を用いる樹脂であるため、環境保護の観点(特にカーボンニュートラルの観点)から望ましい。
植物由来ポリアミド樹脂としては、ポリアミド11、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド614、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド10T等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記植物由来ポリアミド樹脂のなかでも、ポリアミド11は、他の植物由来ポリアミド樹脂に対し、低吸水性、低比重及び植物化度の高さの観点においてより優れる。また、ポリアミド610は、吸水率、耐薬品性、及び衝撃強度の点でポリアミド11よりも劣るが、耐熱性(融点)及び強度の観点において優れる。更に、ポリアミド610は、ポリアミド6やポリアミド66と比べ、低吸水性で寸法安定性が良いため、ポリアミド6やポリアミド66の代替材として使用できる。ポリアミド1010は、ポリアミド11に比べて、耐熱性及び強度の観点において優れる。更に、ポリアミド1010は、植物化度もポリアミド11と同等であり、より耐久性の必要な部位に使用できる。ポリアミド10Tは、分子骨格に芳香環を含むため、ポリアミド1010に比べて、より融点が高く高強度である。そのため、ポリアミド10Tは、より過酷な環境での使用を可能にする。
ポリアミド樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)は特に限定されないが、例えば、5,000以上100,000以下とすることができ、7,500以上50,000以下が好ましく、10,000以上50,000以下がより好ましい。
〈3〉変性エラストマー
変性エラストマーは、ポリアミド樹脂に対する反応性基を有するエラストマーである。この変性エラストマーは、ポリオレフィン樹脂に対して親和性を有する成分であることが好ましい。即ち、この変性エラストマーは、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とに対する相容化作用を有する成分であることが好ましい。更に換言すれば、この変性エラストマーは、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂との相容化剤であることが好ましい。
反応性基としては、酸無水物基(-CO-O-OC-)、カルボキシル基(-COOH)、エポキシ基{-CO(2つの炭素原子と1つの酸素原子とからなる三員環構造)}、オキサゾリン基(-CNO)及びイソシアネート基(-NCO)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
変性エラストマーの変性量は限定されず、変性エラストマーは1分子中に1以上の反応性基を有すればよい。更に、変性エラストマーは1分子中に1以上50以下の反応性基を有することが好ましく、3以上30以下の反応性基を有することがより好ましく、5以上20以下の反応性基を有することが特に好ましい。
変性エラストマーとして、反応性基を導入できる各種単量体を用いた重合体(反応性基を導入できる単量体を用いた重合により得られた変性エラストマー)、各種重合体の酸化分解物(酸化分解により反応性基が形成された変性エラストマー)、各種重合体に対する有機酸のグラフト重合物(有機酸のグラフト重合により反応性基が導入された変性エラストマー)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
反応性基を導入できる単量体としては、重合性不飽和結合と酸無水物基とを有する単量体、重合性不飽和結合とカルボキシル基とを有する単量体、重合性不飽和結合とエポキシ基とを有する単量体などが挙げられる。
具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ブテニル無水コハク酸等の酸無水物、及びマレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸が挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの化合物のうちでは、酸無水物が好ましく、無水マレイン酸及び無水イタコン酸がより好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
更に、変性エラストマーの骨格を構成する樹脂(以下、「骨格樹脂」という。)の種類は特に限定されず、種々の熱可塑性樹脂を用いることができる。この骨格樹脂としては、ポリオレフィン樹脂として先に例示した各種の樹脂の1種又は2種以上を用いることができる。加えて、骨格樹脂としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー、及び、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
オレフィン骨格を有するオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、2種以上のオレフィンを共重合してなる共重合体が挙げられる。
オレフィンとしては、ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィンとして先に例示した各種のオレフィンの1種又は2種以上を用いることができる。このなかでも、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体、及び、プロピレンと炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。
即ち、エチレンと炭素数3~8のα-オレフィンとの共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン・1-ブテン共重合体(EBR)、エチレン・1-ペンテン共重合体、エチレン・1-ヘキセン共重合体、エチレン・1-ヘプテン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体(EOR)が挙げられる。
また、プロピレンと炭素数4~8のα-オレフィンとの共重合体としては、プロピレン・1-ブテン共重合体(PBR)、プロピレン・1-ペンテン共重合体、プロピレン・1-ヘキセン共重合体、プロピレン・1-ヘプテン共重合体、プロピレン・1-オクテン共重合体(POR)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
一方、スチレン骨格を有するスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、及びその水添体が挙げられる。
上記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン等のアルキルスチレン、p-メトキシスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
即ち、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、SEBSが好ましい。
変性エラストマーのゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)は、特に限定されないが、例えば、10,000以上500,000以下とすることができ、35,000以上500,000以下が好ましく、35,000以上300,000以下がより好ましい。
〈4〉その他の成分
本振動吸収材に含まれる熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂及び変性エラストマー以外に、他の熱可塑性樹脂又は成分を含むことができる。他の成分としては、充填剤(補強フィラー)、造核剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、光安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、着色剤(顔料、染料)、分散剤、銅害防止剤、中和剤、気泡防止剤、ウェルド強度改良剤、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記のうち、他の熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂(ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸)等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
充填剤としては、ガラス成分(ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク等)、シリカ、無機繊維(ガラス繊維、アルミナ繊維、カーボン繊維)、黒鉛、珪酸化合物(珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、モンモリロナイト、カオリン、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、アルミナ等)、リチウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属の炭酸塩及び硫酸塩、金属(アルミニウム、鉄、銀、銅等)、水酸化物(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)、硫化物(硫酸バリウム等)、炭化物(木炭、竹炭等)、チタン化物(チタン酸カリウム、チタン酸バリウム等)、有機繊維(芳香族ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊維、植物性繊維等)、セルロース類(セルロースミクロフィブリル、酢酸セルロース等)などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらは、造核剤としても利用できる。
〈5〉相構造について
本振動吸収材に含まれる熱可塑性樹脂がとる好ましい相構造として、下記の相構造(1)、相構造(2)が挙げられる。
相構造(1):ポリオレフィン樹脂を含んだ連続相(A)と、連続相(A)中に分散された、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含んだ分散相(B)と、を有する構造(図1参照)。但し、ポリアミド樹脂を含んだ連続相、及び、この連続相中に分散された分散相、を有する他の相構造は共存されない。
相構造(2):上記連続相(A)に加えて、当該連続相(A)と共存し、且つ、ポリアミド樹脂を含んだ第2連続相(A2)を備えており、当該第2連続相(A2)は、第2連続相(A2)中に分散された、変性エラストマーを含んだ第2分散相(B2)を有する構造(図2参照)。
相構造(1)では、更に、相構造(1)中の分散相(B)が、分散相(B)内における連続相であって、ポリアミド樹脂を含む分散相内連続相(Ba)と、この分散相内連続相(Ba)内で分散された微分散相であって、変性エラストマーを含む微分散相(Bb)と、を有することができる(図1参照)。この場合、相構造(1)は、分散相(B)内に更に微分散相(Bb)を有する多重相構造を呈することになる。
なお、相構造(1)において変性エラストマーは、未反応の変性エラストマーであってもよく、ポリアミド樹脂との反応物であってもよく、これらの混合物であってもよい。
相構造(2)は、連続相(A)と第2連続相(A2)との2つの連続相が共存された共連続相構造を呈することができる。また、相構造(2)の連続相(A)の分散相(B)は、この分散相(B)内における連続相であって、ポリアミド樹脂を含む分散相内連続相(Ba)と、この分散相内連続相内(Ba)内で分散された微分散相であって、変性エラストマーを含む微分散相(Bb)と、を有することができる(図2参照)。この場合、相構造(2)は、分散相(B)内に更に微分散相(Bb)を有する多重相構造を呈することになる。
なお、相構造(2)において変性エラストマーは、未反応の変性エラストマーであってもよく、ポリアミド樹脂との反応物であってもよく、これらの混合物であってもよい。
また、相構造(1)の場合、連続相(A)は、ポリオレフィン樹脂を含む。ポリオレフィン樹脂は、連続相(A)の主成分である。このポリオレフィン樹脂は、連続相(A)全体に対し、通常70質量%以上であり、100質量%であってもよい。また、分散相(B)は、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む。ポリアミド樹脂(分散相(B)に変性エラストマーを含む場合には、ポリアミド樹脂及び変性エラストマー)は、分散相(B)の主成分である。このポリアミド樹脂(分散相(B)に変性エラストマーを含む場合には、ポリアミド樹脂及び変性エラストマー)は、分散相(B)全体に対し、通常70質量%以上であり、100質量%であってもよい。
更に、相構造(1)において前述の多重相構造を呈する場合、分散相内連続相(Ba)は、ポリアミド樹脂を含む。ポリアミド樹脂は、分散相内連続相(Ba)の主成分である。このポリアミド樹脂は、分散相内連続相(Ba)全体に対し、通常70質量%以上であり、100質量%であってもよい。また、微分散相(Bb)は、変性エラストマーを含む。変性エラストマーは、微分散相(Bb)の主成分である。この変性エラストマーは、微分散相(Bb)全体に対し、通常70質量%以上であり、100質量%であってもよい。
上記相構造(2)の場合、連続相(A)は、ポリオレフィン樹脂を含む。ポリオレフィン樹脂は、連続相(A)の主成分である。このポリオレフィン樹脂は、連続相(A)全体に対し、通常70質量%以上であり、100質量%であってもよい。また、分散相(B)は、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーを含む。ポリアミド樹脂及び変性エラストマーは、分散相(B)の主成分である。このポリアミド樹脂及び変性エラストマーは、分散相(B)全体に対し、通常70質量%以上であり、100質量%であってもよい。
更に、相構造(2)において前述の多重相構造を呈する場合、分散相内連続相(Ba)は、ポリアミド樹脂を含む。ポリアミド樹脂は、分散相内連続相(Ba)の主成分である。このポリアミド樹脂は、分散相内連続相(Ba)全体に対し、通常70質量%以上であり、100質量%であってもよい。また、微分散相(Bb)は、変性エラストマーを含む。変性エラストマーは、微分散相(Bb)の主成分である。この変性エラストマーは、微分散相(Bb)全体に対し、通常70質量%以上であり、100質量%であってもよい。
また、第2連続相(A2)は、ポリアミド樹脂を含む。ポリアミド樹脂は、第2連続相(A2)の主成分である。このポリアミド樹脂は、第2連続相(A2)全体に対し、通常70質量%以上であり、100質量%であってもよい。また、第2連続相(A2)に対する第2分散相(B2)は、変性エラストマーを含む。変性エラストマーは、第2分散相(B2)の主成分である。この変性エラストマーは、第2分散相(B2)全体に対し、通常70質量%以上であり、100質量%であってもよい。
これらの相構造は、実施例で後述するように、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、変性エラストマーの各配合割合により、変化させることができる。
なお、前述のように、本熱可塑性樹脂組成物では、変性エラストマーが有する反応性基がポリアミド樹脂に対して反応された反応物となることができる。この場合、この反応物は、相構造(1)では、例えば、連続相(A)と分散相(B)との界面、及び/又は、分散相内連続相(Ba)と微分散相(Bb)との界面、に存在できる。同様に、相構造(2)では、この反応物は、例えば、連続相(A)と第2連続相(A2)との界面、連続相(A)と分散相(B)との界面、分散相内連続相(Ba)と微分散相(Bb)との界面、等に存在できる。
各種相構造は、酸素プラズマエッチング処理した後、更に、オスミウムコート処理を施した試験片(振動吸収材の試験片)の処理面を電界放出形走査型電子顕微鏡(FE-SEM)で観察できる。特に、分散相及び微分散相は、この方法において1000倍以上(通常10,000倍以下)に拡大した画像で観察できる。また、各相を構成する成分は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いた観察時に、エネルギー分散型X線分析(EDS)を行うことで特定できる。
本振動吸収材に含まれる熱可塑性樹脂組成物の分散相(図1,2における分散相(B))の大きさは特に限定されないが、その分散径(平均分散径)は、10000nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以上8000nm以下、更に好ましくは100nm以上4000nm以下である。
この分散相の分散径は、電子顕微鏡を用いて得られる1000倍以上の拡大画像において測定できる。即ち、画像内の所定の領域内から無作為に選択された20個の分散相の各々の最長径を測定し、得られた最長径の平均値が第1平均値である。そして、画像内の異なる5つの領域において測定された第1平均値の更なる平均値が、分散相の平均分散径(長軸平均分散径)である。
本振動吸収材に含まれる熱可塑性樹脂組成物の分散相(図1,2における分散相(B))内に含まれた微分散相(図1,2における微分散相(Bb))の大きさは特に限定されない。微分散相の分散径(平均分散径)は、5nm以上1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは5nm以上600nm以下、更に好ましくは10nm以上400nm以下、特に好ましくは15nm以上350nm以下である。
この微分散相の分散径は、電子顕微鏡を用いて得られる1000倍以上の拡大画像において測定できる。即ち、画像内の所定の領域内から無作為に選択された20個の微分散相の各々の最長径を測定し、得られた最長径の平均値を第1平均値とする。そして、画像内の異なる5つの領域において測定された第1平均値の更なる平均値が、微分散相の平均分散径(長軸平均分散径)である。
〈6〉各成分の配合について
本振動吸収材に含まれる熱可塑性樹脂において、ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、ポリオレフィン樹脂の割合は、2質量%以上95質量%以下とすることができる。この割合は、5質量%以上92質量%以下が好ましく、更に10質量%以上90質量%以下が好ましく、更に15質量%以上85質量%以下が好ましく、更に20質量%以上78質量%以下が好ましく、更に25質量%以上75質量%以下が好ましく、更に30質量%以上73質量%以下が好ましく、更に32質量%以上70質量%以下が好ましい。熱可塑性樹脂中のポリオレフィン樹脂成分が上記範囲内であれば、振動吸収と剛性を両立させた機械的強度を備える振動吸収材を成形できる。
本振動吸収材に含まれる熱可塑性樹脂において、ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、ポリアミド樹脂の割合は、1質量%以上91質量%以下とすることができる。この割合は、2質量%以上88質量%以下が好ましく、更に3質量%以上85質量%以下が好ましく、更に6質量%以上60質量%以下が好ましく、更に8質量%以上55質量%以下が好ましく、更に10質量%以上50質量%以下が好ましく、更に12質量%以上45質量%以下が好ましく、更に15質量%以上43質量%以下が好ましい。熱可塑性樹脂中のポリアミド樹脂成分が上記範囲内であれば、振動吸収と剛性を両立させた機械的強度を備える振動吸収材を成形できる。
本振動吸収材に含まれる熱可塑性樹脂において、ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、変性エラストマーの割合は、1質量%以上60質量%以下とすることができる。この割合は、2質量%以上55質量%以下が好ましく、更に3質量%以上35質量%以下が好ましく、更に6質量%以上34質量%以下が好ましく、更に8質量%以上33質量%以下が好ましく、更に10質量%以上32質量%以下が好ましく、更に12質量%以上31質量%以下が好ましく、更に15質量%以上30質量%以下が好ましい。熱可塑性樹脂中の変性エラストマー成分が上記範囲内であれば、振動吸収と剛性を両立させた機械的強度を備える振動吸収材を成形できる。
本振動吸収材に含まれる熱可塑性樹脂組成物において、ポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、変性エラストマーの割合は、20質量%以上90質量%以下とすることができる。この割合は、22質量%以上88質量%以下が好ましく、更に25質量%以上86質量%以下が好ましく、更に27質量%以上75質量%以下が好ましく、29質量%以上70質量%以下が好ましく、更に32質量%以上66質量%以下が好ましく、更に36質量%以上60質量%以下が好ましい。熱可塑性樹脂の分散相中の変性エラストマー成分が上記範囲内であれば、振動吸収と剛性を両立させた機械的強度を備える振動吸収材を成形できる。
〈7〉物性について
本振動吸収材では、機械的強度のうち、特に、耐衝撃性と剛性とを両立させることができる。具体的には、耐衝撃性は、シャルピー衝撃強度50kJ/m以上150kJ/m以下、且つ、剛性は、剛性を推し量る基準としての曲げ弾性率450MPa以上1300MPa以下にできる。更に、耐衝撃性は、シャルピー衝撃強度60kJ/m以上140kJ/m以下、且つ、剛性は、曲げ弾性率500MPa以上1200MPa以下にでき、更に、シャルピー衝撃強度70kJ/m以上130kJ/m以下、且つ、曲げ弾性率550MPa以上1100MPa以下にできる。
なお、上記シャルピー衝撃強度の値は、JIS K7111-1に準拠して測定(タイプAノッチ、温度23℃、エッジワイズ試験法)した場合の値である。また、上記曲げ弾性率の値は、JIS K7171に準拠して測定(支点間距離64mm、曲率半径5mmの支点2つで支持、曲率半径5mmの作用点を使用、荷重負荷速度2mm/分)した場合の値である。
〈8〉熱可塑性樹脂の製造
本振動吸収材をなす熱可塑性樹脂を製造する方法は限定されない。本熱可塑性樹脂は、例えば、特開2013-147645号公報、特開2013-147648号公報に開示の方法で製造でき、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーの溶融混練物と、ポリオレフィン樹脂と、を溶融混練することで得ることができる。この際、上述の溶融混練物の調製、及び、この溶融混練物とポリオレフィン樹脂との溶融混練では、溶融混練装置を用いてもよい。例えば、押出機(一軸スクリュー押出機、二軸混練押出機等)、ニーダー、ミキサー(高速流動式ミキサー、バドルミキサー、リボンミキサー等)等を用いることができる。
なお、ポリアミド樹脂と変性エラストマーとの溶融混練温度は限定されない。この温度は、例えば、190℃以上350℃以下とすることができ、200℃以上330℃以下が好ましく、205℃以上310℃以下がより好ましい。また、得られた溶融混練物とポリオレフィン樹脂との溶融混練温度は限定されない。この温度は、例えば、190℃以上350℃以下とすることができ、200℃以上300℃以下が好ましく、205℃以上260℃以下がより好ましい。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]熱可塑性樹脂を含む成形材の作製
《実施例1》
(1)熱可塑性樹脂
下記ポリアミド樹脂のペレットと、下記変性エラストマーのペレットとをドライブレンドした後、二軸溶融混練押出機に投入し、混練温度210℃で溶融混練を行い、ペレタイザーを介して、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーの溶融混練物からなるペレットを得た。更に、上記ペレット(ポリアミド樹脂及び変性エラストマーの溶融混練物からなるペレット)と、下記ポリオレフィン樹脂のペレットと、をドライブレンドした後、二軸溶融混練押出機に投入し、混練温度210℃で溶融混練を行い、ペレタイザーを介して、熱可塑性樹脂のペレットを得た。
(a)ポリオレフィン樹脂:ポリプロピレン樹脂、ホモポリマー、日本ポリプロ株式会社製、品名「ノバテック MA1B」、重量平均分子量312,000、融点165℃
(b)ポリアミド樹脂:ポリアミド11樹脂、アルケマ株式会社製、品名「Rilsan BMN O」、重量平均分子量18,000、融点190℃
(c)変性エラストマー:無水マレイン酸変性エチレン・ブテン共重合体(変性EBR)、三井化学株式会社製、品名「タフマー MH7020」
得られた熱可塑性樹脂において、ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂と変性エラストマーとの配合割合は、質量比で、55:25:20であった。この質量比の熱可塑性樹脂は、相構造(1)(図1参照)を呈した。
(2)成形材
上記(1)で得られたペレットを、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、40トン射出成形機)に投入し、設定温度210℃、金型温度40℃の射出条件で、実施例1に係る成形材を射出成形した。成形材は、後述する評価試験を行うための所定形状に成形された。
《実施例2》
上記実施例1と同様に、実施例2に係る成形材の作製を行った。即ち、実施例1と同じ種類のポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂及び変性エラストマーを用い、実施例1と同様の手順で実施例2の熱可塑性樹脂のペレットを得た。得られた熱可塑性樹脂を用い、実施例1と同様の条件で、成形材を射出成形した。
実施例2に係る熱可塑性樹脂において、ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂と変性エラストマーとの配合割合が、質量比で、32.5:42.5:25であった。実施例2に係る熱可塑性樹脂は、相構造(2)(図2参照)を呈した。
《比較例1》
比較例1として、下記のポリオレフィン樹脂のペレットを用い、実施例1と同様の条件で、成形材を射出成形した。
(a)ポリオレフィン樹脂のブロック共重合体:ポリプロピレン樹脂、ブロックポリマー、株式会社プライムポリマー製、品名「J-452HP」
[2]評価試験
上記[1]で成形した実施例1,2又は比較例1の成形材から評価試験用の試験片を切り出し、固体動的粘弾性の測定を行った。即ち、以下の条件に従って、試験片に引張モードにて特定の周波数の所定の正弦歪みを与え、発生する応力を検知した。得られた応力から公知の方法によって貯蔵弾性率E’と損失弾性率E"を求め、両者の比で定義されるtanδ(ダンピング係数)を算出した(=損失弾性率E"/貯蔵弾性率E’)。測定周波数とtanδとの相聞を、測定温度毎に、図3~5に示した。なお、図3~5中の「DMA」は、固体動的粘弾性の測定を意味する。
(a)装置: RSA-III(ティー・エイ・インスツルメント社製)
(b)試験片形状: 短冊形状(幅4mm×長さ30mm×厚み1mm)
(c)ひずみ振幅: 0.1(%)
(d)変形モード: 引張り
(e)測定周波数: 0.1~10kHz
(f)測定温度: -30℃,25℃,80℃
(g)昇温速度: 3℃/分
[3]実施例の効果
(a.振動吸収材)
実施例1,2に係る成形材は、ポリオレフィン樹脂としてのホモポリプロピレンと、ポリアミド樹脂としてのポリアミド11と、変性エラストマーとしての無水マレイン酸変性EBRと、を含有するものであった。ポリオレフィン樹脂とポリアミド樹脂と変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、実施例1の成形材では、ポリオレフィン樹脂の割合は55質量%、ポリアミド樹脂の割合は25質量%及び変性エラストマーの割合は20質量%であった。実施例2の成形材では、ポリオレフィン樹脂の割合は32.5質量%、ポリアミド樹脂の割合は42.5質量%及び変性エラストマーの割合が25質量%であった。実施例1,2の成形材は、それぞれ、ポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、連続相(A)の中に分散されたポリアミド樹脂を含む分散相(B)とを備える熱可塑性樹脂により成形されるものであった。
図3~5に示す評価試験の結果から、実施例1に係る熱可塑性樹脂を用いた成形材では、tanδ値が、比較例1よりも、平均的に1.42倍程度大きいことが分かった。また、同様に実施例2では、tanδ値が、比較例1よりも、平均的に1.18倍程度大きいことが分かった。当該「平均」は、各測定温度及び各測定周波数における各実施例又は比較例毎のtanδ値全てを対象として求めた数値に基づく。
また、比較例1の成形材を成形する熱可塑性樹脂は、ホモポリプロピレンの連続相と、その連続相中に分散されたポリエチレンの分散相(エチレンブロック)とを有する海島構造であり、エチレンブロックの周囲、即ち、連続相と分散相との境界にEPRのゴム相を有する相構造を備えるものである。従って、実施例1は、ホモポリプロピレン樹脂を連続相とする海島構造を有する点で、比較例と同様の相構造を有する。しかしながら、同様の相構造を有していても、実施例1に係る成形材は、比較例1の成形材よりも、各測定温度及び測定周波数の全範囲内において、tanδ値が大きくなっていた。
即ち、実施例1に係る成形材は、比較例1よりも減衰特性に優れていることから、比較例1よりも振動吸収材としての潜在能力が大きいことが分かった。このような測定周波数とtanδ値の相関傾向は、実施例1よりも総じてtanδ値が平均的に0.013程小さくなるものの、実施例2でも同様に認められた。従って、実施例2も実施例1同様に、振動吸収材としての潜在能力を有することが分かった。
上記評価試験を行った0.1~10kHzの測定周波数は、ヒトの可聴帯域である周波数帯域(20Hz~20kHz)に含まれる。0.1~10kHzの測定周波数の範囲内で、比較例よりも振動を吸収する機能に優れていた試験結果に基づいて、実施例1,2の成形材は、ヒトが感じる騒音を低減する振動吸収材として用いるために適した特性を有するものであることが分かった。各実施例の成形材は、本来、機械的強度を備える合成樹脂として周知された材料である。また、各実施例の成形材は、同様に海島の相構造を備える比較例よりも、優れたtanδ値を示した。これらの事実を鑑みれば、各実施例の成形材が、0.1~10kHzの範囲にある振動を吸収する材として適する属性を有することは、本成形材の新たな特徴であると考えられる。
(b.自動車の内外装用途)
ここで、上記実施例で測定を行った測定周波数の範囲は、自動車が走行することによって車室内にいるヒトに届く騒音として知られる周波数帯域を包含する。具体的には、自動車の車室内でヒトが意識する騒音は、0.1~3kHz程度の低周波数帯域に対応することが知られている。より具体的には、「エンジン音」はエンジン回転数に応じた複合的な周期音であり、主要な周波数帯域は2kHz程度である。「こもり音」は車室内でヒトが感じる耳を圧迫するような騒音であり、主要な周波数帯域は0.02~0.25kHz程度の低周波である。「ブルゴツ音」は、路面とタイヤの接触により発生する騒音であり、主要な周波数帯域は1kHz以下である。「風切り音」は、自動車の高速走行によって車両周辺の気流が乱されることにより発生するランダム性の騒音であり、3kHz付近までの周波数帯域に属する。
図3~5より、図4の場合のみ、車室内温度に近い25℃での本実施例2の振動吸収材は、周波数が3kHzを超えて高くなると、その際のtanδ値が、比較例のtanδ値に及ばない傾向が認められた。しかしながら、実施例1,2の振動吸収材は、25℃で0.1~3kHz程度の低周波数の帯域、及び-30℃及び80℃の測定周波数の全帯域で、比較例との対比で、良好なtanδ値を表わすことが分かった。
また、図4より、実施例1の振動吸収材では、車室内温度に近い25℃でのtanδ値が、0.1~1kHzの低周波数帯域で、概ね0.06より大きく、更に0.1~0.4kHzの超低周波数帯域で、0.07より大きく、更に0.1~0.2kHzへと超低周波数側に近付くにつれて、0.09程度にまで大きくなることが分かった。
従来、防振ゴムに用いられるゴム材料のtanδ値は、0.1程度であることが知られている。実施例1,2の振動吸収材の振動吸収性能は、25℃程度の通常の車室内の温度付近において、0.1~1kHz、好ましくは0.1~0.4kHz、より好ましくは0.1~0.2kHzの超低周波数帯域で、ゴム材と比較して見劣りしない同程度に優れていることが分かった。
以上より、実施例1,2の振動吸収材は、比較例の成形材との対比に基づいて、自動車の車室内でヒトが意識する3kHz付近までの低周波数帯域の騒音を抑制するための振動吸収材として、優れていることが分かった。更に、実施例1,2の振動吸収材は、防振ゴムに用いられるゴム材と対比しても、特に1kHz付近までの超低周波数帯域の騒音を抑制するための振動吸収材として、見劣りしない程に優れていることが分かった。従って、本振動吸収材は、振動吸収機能を備える自動車の内外装材を成形するための材として特に適するものであることが分かった。
このように、本振動吸収材を自動車の内外装材として用いる用途は、車室内に届く3kHz付近までの低周波数帯域に対応する騒音、特に1kHzまでの超低周波数帯域の騒音に対応する振動を、優れて吸収する機能を果たすという属性によるものである。また、自動車の内外装材自体が、防振ゴムを不要とするほどの振動吸収機能を果たす属性は、本振動吸収材が、本来、ゴム材よりも優れて大きな機械的強度(剛性)を備える合成樹脂材であることを鑑みれば、従来知られた用途とは異なる新たな用途を提供するものである。
具体的な内外装材の例としては、特に限定されないが、振動吸収材を用いたフロアカーペット、ドアトリム、各種パネル、各種ピラー、バンパー、フェンダーライナー、エンジンカバー、トノカバー、パッケージトレイ、サイレンサー、エンジン吸気系システムに用いられるエアクリーナー、インテークマニホールド、シリンダーヘッドカバー等を挙げることができる。
(c.相構造)
また、実施例1の振動吸収材は、図1に示すとおり、熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、連続相(A)の中に分散されたポリアミド樹脂を含む分散相(B)とを有すると共に、更に、分散相(B)が、ポリアミド樹脂を含む分散相内連続相(Ba)と、分散相内連続相(Ba)中に分散された変性エラストマーを含む微分散相(Bb)と、を有する相構造(1)を備えている。
振動吸収材が、実施例1に係る相構造(1)を有する場合、当該振動吸収材は、微分散相(Bb)を有するため、多重の相構造を表す。一般に、異種の高分子を含む熱可塑性樹脂に応力が負荷された場合に、異種の高分子間の境界に応力が集中しやすいと考えられる。相構造(1)では、分散相(B)と連続相(A)との周囲(境界面)に加えて、分散相内連続相(Ba)と微分散相(Bb)の周囲(境界面)においても、振動エネルギーを吸収可能な変性エラストマーが糊状に存在することから、広範囲に亘って、一層効果的に振動吸収能力が高められると考えられる。
また、実施例2の振動吸収材は、図2に示すとおり、熱可塑性樹脂が、連続相(A)に加えて、連続相(A)と共存し、且つ、ポリアミド樹脂を含む第2連続相(A2)を備えており、第2連続相(A2)は、第2連続相(A2)中に分散された変性エラストマーを含む第2分散相(B2)を有する相構造(2)を備えている。
振動吸収材が、実施例2に係る相構造(2)を有する場合、熱可塑性樹脂は、連続相(A)と共存する第2連続相(A2)を有しており、連続相(A)が分散相内連続相(Ba)及び微分散相(Bb)を有する分散相(B)を備え、第2連続相(A2)が第2分散相(B2)を備える相構造を表す。従って、相構造(2)の場合も、相構造(1)と同様に、広範囲に亘って、一層効果的に振動吸収能力が高められると考えられる。
上記の相構造(1)(2)において、連続相(A)中の分散相(B)が、分散相内連続相(Ba)及び微分散相(Bb)を有する場合、分散相(B)の平均分散径は、100nm以上4000nm以下であり、微分散相(Bb)の平均分散径は、15nm以上350nm以下である蓋然性が大きい。この場合、分散相(B)及び微分散相(Bb)の均一分散性が担保され、一層確実に広範囲に亘って、振動吸収能力が高められると考えられる。
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。例えば、振動吸収材は、実施例に係る上記熱可塑性樹脂に、更にポリオレフィン樹脂を加えた混合樹脂を含むものであってもよい。
この場合、元々ポリオレフィン樹脂を含む実施例に係る上記熱可塑性樹脂に、更に別途のポリオレフィン樹脂を加えて混合樹脂を得る方法は特に限定されず、溶融状態の樹脂同士をウエットで混合してもよいし、ペレット状の固体の樹脂原料同士をドライで混合してもよい。また、上記熱可塑性樹脂は、上述した所定の成分樹脂を所定の成分割合で含み、所定の相構造を有するものであればよく、例えば、使用済の振動吸収材の端材を砕いて熱可塑性樹脂原料とするものであってもよいし、更にこの端材にポリオレフィン樹脂を加えた混合樹脂を含むものであってもよい。振動吸収材がこのような混合樹脂を含む場合は、熱可塑性樹脂成分中の分散相の均一分散性が一層高められ、従って、応力集中箇所の分散性も高まるため、振動吸収機能が向上し得ると考えられる。
実施例で示した振動吸収材は、ソリッド成形を行う加工形態によるものであったが、本熱可塑性樹脂が、発泡成形体(WO2017/155114号)、強化繊維樹脂成形体(特開2018-123284号公報)、繊維(特開2018-123457号公報)等の各形態に加工するのに適していることは、公知である。本熱可塑性樹脂を含む振動吸収材による振動を吸収する能力は、実施例に示したtanδ値に特定されず、各加工形態毎にtanδ値を一層高める潜在能力を有している。
以上詳述したとおり、構造材料としての一定の機械的強度を備える成形材であって、熱可塑性樹脂を含む成形材単独で優れて振動吸収能力を発揮する、振動吸収材としての新たな用途を発見できた。
また、自動車の内外装材自体が防振ゴムに匹敵するほどの振動吸収機能を果たす属性を明らかにすることで、本振動吸収材の新たな用途を見出すことができた。
また、本振動吸収材の発明は、本熱可塑性樹脂の新たな使用方法の発明としても把握される。即ち、本発明は、熱可塑性樹脂の使用方法の発明であって、ポリオレフィン樹脂と、ポリアミド樹脂と、前記ポリアミド樹脂に対する反応基を有する変性エラストマーと、を含有し、前記ポリオレフィン樹脂と前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、前記ポリオレフィン樹脂の割合は10質量%以上90質量%以下、前記ポリアミド樹脂の割合は3質量%以上85質量%以下及び前記変性エラストマーの割合は、3質量%以上35質量%以下であり、前記ポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、前記連続相(A)の中に分散された前記ポリアミド樹脂を含む分散相(B)と、を備える熱可塑性樹脂を、振動吸収材として使用することを特徴とする。
本熱可塑姓樹脂の使用方法は、熱可塑性樹脂を振動吸収材として用いることを可能とする。本熱可塑姓樹脂を用いた成形材は、構造材料として一定の機械的強度を備える成形材単独で、優れた振動吸収能力を発揮できる。このように、本発明によって、従来知られた構造材料としての使用方法とは異なる、新たな本熱可塑性樹脂の使用方法を見出すことができた。
以上、本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施例を参照したが、本発明をここに掲げる開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。

Claims (7)

  1. 20Hz~20kHzの振動吸収に用いる振動吸収材であって、
    ポリオレフィン樹脂と、ポリアミド樹脂と、前記ポリアミド樹脂に対する反応基を有する変性エラストマーと、を含有し、
    前記ポリオレフィン樹脂と前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、前記ポリオレフィン樹脂の割合は10質量%以上90質量%以下、前記ポリアミド樹脂の割合は3質量%以上85質量%以下及び前記変性エラストマーの割合は、3質量%以上35質量%以下であり、
    前記ポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、前記連続相(A)の中に分散された前記ポリアミド樹脂を含む分散相(B)とを備える熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする20Hz~20kHzの振動吸収に用いる振動吸収材。
  2. 前記分散相(B)が、前記ポリアミド樹脂を含む分散相内連続相(Ba)と、前記分散相内連続相(Ba)中に分散された前記変性エラストマーを含む微分散相(Bb)と、を有する請求項1に記載の振動吸収材。
  3. -30~80℃における0.1~10kHzの振動吸収に用いる振動吸収材であって、
    ポリオレフィン樹脂と、ポリアミド樹脂と、前記ポリアミド樹脂に対する反応基を有する変性エラストマーと、を含有し、
    前記ポリオレフィン樹脂と前記ポリアミド樹脂と前記変性エラストマーとの合計を100質量%とした場合に、前記ポリオレフィン樹脂の割合は10質量%以上90質量%以下、前記ポリアミド樹脂の割合は3質量%以上85質量%以下及び前記変性エラストマーの割合は、3質量%以上35質量%以下であり、
    前記ポリオレフィン樹脂を含む連続相(A)と、前記連続相(A)の中に分散された前記ポリアミド樹脂を含む分散相(B)とを備え
    前記分散相(B)が、前記ポリアミド樹脂を含む分散相内連続相(Ba)と、前記分散相内連続相(Ba)中に分散された前記変性エラストマーを含む微分散相(Bb)と、を有する熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする-30~80℃における0.1~10kHzの振動吸収に用いる振動吸収材。
  4. 前記分散相(B)の平均分散径が、100nm以上4000nm以下であり、前記微分散相(Bb)の平均分散径が、15nm以上350nm以下である請求項2又は3に記載の振動吸収材。
  5. 前記熱可塑性樹脂が、前記連続相(A)に加えて、前記連続相(A)と共存し、且つ、前記ポリアミド樹脂を含む第2連続相(A2)を備えており、
    前記第2連続相(A2)は、前記第2連続相(A2)中に分散された前記変性エラストマーを含む第2分散相(B2)を有している請求項1乃至のいずれか一項に記載の振動吸収材。
  6. 自動車の内外装材として用いられる請求項1乃至のいずれか一項に記載の振動吸収材。
  7. 前記熱可塑性樹脂に、更にポリオレフィン樹脂を加えた混合樹脂を含む請求項1乃至のいずれか一項に記載の振動吸収材。
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