JP2014001343A - プロピレン樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】プロピレン系重合体(A)40重量%以上90重量%以下、エラストマー(B)10重量%以上40重量%以下、無機充填材(C)0重量%以上35重量%以下(A、B、Cの合計を100重量%とする)からなり、前記エラストマー(B)がエチレンと炭素数3以上8以下のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件(I)〜(VI)を同時に満たすプロピレン樹脂組成物。(I)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1g/10分以上5.0g/10分以下である。(II)密度が0.860g/cm3以上0.890g/cm3以下である。(III)固体粘弾性測定のtanδから得られたガラス転移温度(Tg)が−90℃以上−50℃以下である。(IV)示差走査型熱量計(DSC)で測定された融点(Tm)が100℃以上135℃以下である。(V)固体粘弾性測定による、0℃と50℃とでの貯蔵弾性率E'の変化率〔(E'0−E'50)/(E'0)〕が0.80未満である(0℃でのE’をE’0、50℃でのE’を E’50とする)。(VI)ゲル分率が0.1重量%以下である。
【効果】本発明のプロピレン樹脂組成物は、低温下での耐衝撃性と、高温下での剛性のバランスが大きく改善されたものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、プロピレン系樹脂組成物に関し、特に自動車用内外装材を成形するのに適したプロピレン系樹脂組成物に関するものである。
従来、ポリプロピレン樹脂の耐衝撃性を向上させる目的で、ポリプロピレン樹脂にエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体などのエラストマーを配合する手法がよく知られている。
しかし、ポリプロピレン樹脂にエラストマーを配合すると、低温耐衝撃性が向上する反面、剛性が低下することが知られている。
剛性は常温下での剛性だけではなく、高温下での剛性が要求されることがあり、特に自動車用内外装材用途においては高温下での剛性の要求は一般的である。しかし、高温下での剛性は常温での剛性と必ずしも一致するものではない。このため、常温下のみならず高温下においても剛性が損なわれずに、なおかつ低温耐衝撃性に優れたプロピレン樹脂組成物が望まれている。
特許文献1には、ポリプロピレン樹脂にオレフィン系ブロック共重合体とエチレン系エラストマーを配合することによって、ポリプロピレン樹脂の常温下における剛性を損なうことなく低温衝撃性を向上させたプロピレン系樹脂組成物が、特許文献2には、ポリプロピレン樹脂にオレフィン系ブロック共重合体を配合することにより得られた耐衝撃性および耐熱性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。しかしいずれの組成物についても、高温下における剛性については不明である。
特許文献3,4にも、オレフィンブロック共重合体を用いたポリマー組成物について記載があるが、比較的軟質な組成物であって、高温下における剛性は十分なものとはいえない。
なおオレフィンブロック共重合体については、例えば特許文献5〜9、非特許文献1にエチレン/α−オレフィンブロック共重合体の記載があり、これをポリマーブレンド配合物に使用することができることの示唆はあるものの、具体的な言及はされていない。
特開2004−204057号公報 特開2007−84806号公報 国際公開第09/055482号パンフレット 国際公開第09/055486号パンフレット 国際公開第06/101966号パンフレット 国際公開第07/106881号パンフレット 国際公開第09/012215号パンフレット 国際公開第09/097560号パンフレット 国際公開第09/097565号パンフレット
Macromol. Symp. 2007, 257, 80−93 (DOWの文献)
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、低温下での耐衝撃性と高温下での剛性とのバランスが大きく改善された成形体を製造でき、特に自動車用内外装材等を成形するのに適したプロピレン樹脂組成物を提供することを目的としている。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、以下の[1]〜[4]に関する。
[1]プロピレン系重合体(A)40重量%以上90重量%以下、エラストマー(B)10重量%以上40重量%以下、無機充填材(C)0重量%以上35重量%以下((A)、(B)および(C)の合計を100重量%とする)を含有し、前記エラストマー(B)がエチレンと炭素数3以上8以下のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件(I)〜(VI)を同時に満たすプロピレン樹脂組成物。
(I)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1g
/10分以上5.0g/10分以下である。
(II)密度が0.860g/cm3以上0.890g/cm3以下である。
(III)固体粘弾性測定のtanδから得られたガラス転移温度(Tg)が−90℃以上−50℃以下である。
(IV)示差走査型熱量計(DSC)で測定された融点(Tm)が100℃以上135℃以下である。
(V)固体粘弾性測定による、0℃と50℃とでの貯蔵弾性率E’の変化率〔(E’0
−E’50)/(E’0)〕が0.80未満である(0℃でのE’を E’0、50℃でのE’を E’50とする)。
(VI)ゲル分率が0.1重量%以下である。
[2][1]に記載のプロピレン樹脂組成物から得られる成形体。
[3]シートまたは射出成形品である[2]に記載の成形体。
[4]自動車用内外装材である[2]または[3]に記載の成形体。
本発明のプロピレン樹脂組成物は、低温下での耐衝撃性と高温下での剛性とのバランスが大きく改善された自動車用内外装材等の成形体を製造することができる。
以下、本発明に係るプロピレン樹脂組成物について具体的に説明する。
本発明に係るプロピレン樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)、エラストマー(B)および無機充填材(C)を含有する。
プロピレン系重合体(A)
本発明のプロピレン系重合体(A)は、ホモポリプロピレンであっても、プロピレン系ブロック共重合体、あるいは、プロピレン系ランダム共重合体であってもよいが、好ましくはプロピレン系ブロック共重合体である。
前記プロピレン系ブロック共重合体の合成において用いられる重合触媒や重合条件は特に限定されない。前記プロピレン系ブロック共重合体としては、一般的にはブロックポリプロピレンの市販品を用いることができ、具体的には、プライムポリマー製プライムポリプロ等からたとえば下記の要件を満たすものを選択して用いることができる。
プロピレン系ブロック共重合体は、常温n−デカン不溶成分である高結晶性のポリプロピレン成分(結晶成分)と、常温(23℃)n−デカン可溶成分であるエチレン・プロピレン共重合ゴム成分(ゴム成分)とから形成されていることが好ましい。
プロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレート(MFR;ISO1133、230℃、2.16kg荷重下)は、一般的には0.1g/10分以上400g/10分以下であり、好ましくは0.1g/10分以上200g/10分以下である。メルトフローレートが前記範囲内であると、成形時の流動性に優れ、また本組成物から得られる成形体の衝撃強度が向上する。
プロピレン系ブロック共重合体は、常温(23℃)n−デカン可溶成分(ゴム成分)を一般的には1重量%以上45重量%以下、好ましくは1重量%以上30重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上25重量%以下の量で含有していることが、本組成物から得られる成形体の剛性と衝撃強度とのバランスが良好になる点において好ましい。
この常温n−デカン可溶成分は、エチレンから導かれる単位を20モル%以上60モル%以下の量で含有していることが好ましく、25モル%以上55モル%以下の量で含有していることがより好ましい。
この常温n−デカン可溶成分の、135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η]は、一般的に1dl/g以上15dl/g以下、好ましくは1dl/g以上10dl/g以下である。
この常温n−デカン可溶成分は、プロピレン系重合体(A)中のゴム成分であり、エチレンとプロピレンとが重合してなる成分であることが好ましい。
プロピレン系重合体(A)の常温n−デカン可溶成分は、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレンおよびプロピレン以外の重合性化合物から導かれる単位を含有していてもよい。このような他の重合性化合物としては、具体的にたとえば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサドデセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物、酢酸ビニルなどのビニルエステル、無水マレイン酸などの不飽和有機酸またはその誘導体などが挙げられる。
一方、常温n−デカン不溶成分は、プロピレン系重合体(A)の高結晶性ポリプロピレン成分であり、アイソタクティックポリプロピレン成分である。具体的には、常温n−デカン不溶成分の13C−NMR法により求められるペンタッドアイソタクティシティI5は、通常0.95以上、好ましくは0.97以上である。ペンタッドアイソタクティシティI5は、エイ・ザムベル(A.Zambelli )らにより、Macromolecules 6、925(1973) に提案された方法すなわち13C−NMR法(核磁気共鳴法)によって測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクティック分率であり、プロピレン単位が5個連続してアイソタクティック結合したプロピレンモノマー単位の分率である。
上述のNMRの測定におけるピークの帰属は、Macromolecules 8、687(1975) の記載に基づいて行われる。また13C−NMRは、フーリエ変換NMR[500MHz(水素核測定時)]装置を用いて、周波数125MHzで、20000回の積算測定することにより、シグナル検出限界を0.001まで向上させて測定することができる。
常温n−デカン不溶成分のペンタッドアイソタクティシティI5が上記の範囲であると、本組成物から剛性に優れた成形体を得ることができる。またプロピレン系重合体(A)として用いられるプロピレン系ブロック共重合体は、3-メチル-1- ブテン、3,3-ジメチル-1- ブテン、3-メチル-1- ペンテン、3-メチル-1- ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1- ヘキセン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどの単独重合体または共重合体を、たとえば前重合により形成される前重合体として含有していると、結晶化速度が大きくなり好ましい。
エラストマー(B)
エラストマー(B)は、エチレンと炭素数3以上8以下のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件(I)〜(VI)を同時に満たす。
下記要件を満たすエラストマー(B)は結晶セグメントと非晶セグメントが化学的に結合したブロック構造をとっていると推察される。本組成物から得られる成形体は、エラストマー内部で、結晶セグメントと非晶セグメントがブロック構造を成すことによって、低温衝撃性と、高温下での剛性の指標となる荷重たわみ温度とのバランスが良好であるという特徴を現すと推察される。
エラストマー(B)については、下記要件を満たすものが得られる限りにおいて、重合に用いられる重合触媒や重合条件は特に限定されない。エラストマー(B)としては、ダウ社のエンゲージXLT8677など、市販のエラストマーから上記要件を満たすものを選択して用いることができる。
エラストマー(B)はエチレンと炭素数3以上8以下のα-オレフィンとの共重合体である。炭素数3以上8以下のα-オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン1−オクテン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく使用される。α−オレフィンの炭素数が9以上になると、製造コストが高くなることが懸念される。
エラストマー(B)が満たす要件(I)〜(VI)につき以下説明する。
(I)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1g
/10分以上5.0g/10分以下である。下限値は、0.5g/10分以上であればより好ましい。一般に、エラストマー(B)の製造時にエチレンに対する水素の比率を高くすればエラストマー(B)のメルトフローレートは大きくなり、比率を低くすればエラストマー(B)のメルトフローレートは小さくなる。エラストマー(B)のメルトフローレートが上記下限値以上にあることで、本組成物は成形時の流動性が優れ、上記上限値以下にあることで、本組成物から得られる成形体の衝撃強度が優れる。
(II)密度が0.860g/cm3以上0.890g/cm3以下である。上限値は好ましくは0.885g/cm3、より好ましくは0.875g/cm3である。
エラストマー(B)の密度が上記範囲にあることで、本組成物から得られる成形体は低温衝撃性が優れる。
一般に、エラストマー(B)の密度は、エラストマー内に存在するα-オレフィンの割合に影響され、α-オレフィンの割合が多くなると、密度は低下する。
(III)固体粘弾性測定のtanδより得られたガラス転移温度(Tg)が−90℃以上−50℃以下である。下限値は好ましくは−85℃、より好ましくは−80℃、上限値は好ましくは−65℃、より好ましくは−70℃である。
エラストマー(B)のガラス転移温度(Tg)が上記上限値以下にあることで、本組成物から得られる成形体は十分な低温衝撃性改良効果が得られ、上記下限値以上にあることで、本組成物から得られる成形体は高温下における剛性が良好となる。
エラストマー(B)のガラス転移温度(Tg)は、非晶セグメント内に存在するα-オレフィン量に影響され、α-オレフィン量が多くなるほど、エラストマー(B)のTgは低くなる。
(IV)示差走査型熱量計(DSC)で測定された融点(Tm)が100℃以上135℃以下である。下限値は好ましくは105℃、より好ましくは110℃、上限値は好ましくは130℃、より好ましくは125℃である。エラストマー(B)の融点は、結晶ラメラの厚さに影響され、ラメラ厚が厚いと、融点は高くなる。
エラストマー(B)の融点(Tm)が上記範囲にあることで、本組成物から得られる成形体は高温下における剛性が良好となる。
(V)固体粘弾性測定による、0℃と50℃とでの貯蔵弾性率E’の変化率(E’0
E’50)/(E’0)が0.80未満である(0℃でのE’を E’0、50℃でのE’を E’50とする)。前記変化率は好ましくは0.70未満、より好ましくは0.60未満、特に好ましくは0.55未満である。
エラストマー(B)は、0℃から50℃の間のE’の変化率が小さいことより、結晶セグメントと非晶セグメントとが化学結合していると考えられ、その結果、良好な荷重たわみ温度、すなわち高温での高い剛性と、低温衝撃強度との優れたバランスが得られると推察される。
(VI)ゲル分率が0.1重量%未満である。
エラストマー(B)のゲル分率が上記範囲にあると、エラストマーが架橋していないことが示唆される。ゲル分率が0.1重量以上であると、エラストマーが架橋していると示唆され、エラストマーの分散性が悪化するため好ましくない。
無機充填剤(C)
無機充填材(C)として、具体的には、微粉末タルク、カオリナイト、焼成クレー、バイロフィライト、セリサイト、ウォラスナイトなどの天然珪酸または珪酸塩、沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、酸化亜鉛、亜鉛華、酸化マグネシウムなどの酸化物、含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸などの合成珪酸または珪酸塩などの粉末状充填剤、マイカなどのフレーク状充填剤、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Fiber)、ゾノトライト、チタン酸カリ、エレスタダイトなどの繊維状充填剤、ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状充填剤などを用いることができる。
本発明では、これらのうちでもタルクが好ましく用いられ、特に平均粒径0.01〜10μmの微粉末タルクが好ましく用いられる。なおタルクの平均粒径は、レーザー回折法によって測定することができる。
また本発明で用いられる無機充填材、特にタルクは、無処理であっても予め表面処理されていてもよい。この表面処理の例としては、具体的には、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、不飽和有機酸、有機チタネート、樹脂酸、ポリエチレングリコールなどの処理剤を用いる化学的または物理的処理が挙げられる。無機充填材(C)としてこのような表面処理が施されたタルクを用いると、本組成物からウェルド強度、塗装性、さらに成形加工性にも優れた自動車内外装材及びガソリンタンクを得ることができる。
上記のような無機充填材は、2種以上併用してもよい。また本発明では、このような無機充填材とともに、ハイスチレン類、リグニン、再生ゴムなどの有機充填剤を用いることもできる。
プロピレン樹脂組成物
本発明に係るプロピレン樹脂組成物における、プロピレン系重合体(A)、エラストマー(B)及び無機充填材(C)の配合割合について説明する。
プロピレン系重合体(A)の配合割合は40重量%以上90重量%以下であり、下限値は好ましくは45重量%、より好ましくは55重量%、上限値は好ましくは80重量%、より好ましくは70重量%である。
エラストマー(B)の配合割合は10重量%以上40重量%以下であり、下限値は好ましくは12重量%、より好ましくは15重量%、上限値は好ましくは30重量%、より好ましくは20重量%である。
無機充填材(C)の配合割合は0重量%以上35重量%以下であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
なお、上記の配合割合において、プロピレン系重合体(A)とエラストマー(B)と無機充填剤(C)との総量は100重量%である。
エラストマー(B)の配合割合が上記範囲よりも低いと、特に、低温での耐衝撃性の改質効果が十分に得られない恐れがある。一方、配合割合が上記範囲よりも高いと、プロピレン系重合体(A)が本来有する剛性等の優れた特性を損なう恐れがある。
また、無機充填剤(C)の配合割合が上記範囲よりも高いと、低温衝撃性の改良効果が十分に得られない恐れがあるし、比重が大きくなり製品重量が大きくなりすぎる懸念がある。
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、上記のような各成分に加えて本発明の目的を損なわない範囲で、核剤、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物などの流れ性改良剤、ウェルド強度改良剤などの添加剤などを含有していてもよい。
上記のような添加剤は、プロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.0001重量部〜10重量部の量で用いることができる。本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、上記のような添加剤類を含有することによって、物性バランス、耐久性、塗装性、印刷性、耐傷付き性および成形加工性などが一層向上された成形体を形成することができる。
核剤としては、従来知られている種々の核剤が特に制限されることなく用いられるが、中でも芳香族リン酸エステル塩、ジベンジリデンソルビトールなどの核剤が好ましい。
上記のような核剤は、プロピレン系重合体(A)100重量部当り0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、特に好ましくは0.1〜3重量部の量で組成物中に含有させることができる。本組成物が上記のような核剤を含有していると、本組成物の結晶化速度が向上され、結晶化時に結晶粒子を微細化することができるとともに、より高速で成形することができる。
プロピレン樹脂組成物の製造方法
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)とエラストマー(B)と無機充填剤(C)とを、必要に応じてさらに前記添加剤等とを、連続式押出機や密閉式混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて溶融混練することによって製造することができる。これらのうち、経済性、処理効率等の観点から一軸押出機及び/または二軸押出機を用いることが好ましい。
成形体
本発明に係るプロピレン系樹脂組成物は、押出成形、射出成形、インフレーション成形、カレンダー成形などの成形方法により、フィルム、シート、パイプなどの各種成形体に成形することができる。
上記のような本発明のプロピレン系樹脂組成物は、従来公知のポリオレフィン用途に広く用いることができ、例えばシート、未延伸または延伸フィルム、フィラメントなどを含む種々の形状の成形体に成形して利用することができる。
成形体として具体的には、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。
プロピレン系樹脂組成物を押出成形する際には、従来公知の押出装置および成形条件を採用することができ、たとえば単軸スクリュー押出機、混練押出機、ラム押出機、ギヤ押出機などを用いて、溶融したプロピレン系樹脂組成物をTダイなどから押出すことによりシートまたはフィルムなどに成形することができる。
延伸フィルムは、上記のような押出シートまたは押出フィルムを、たとえばテンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸法、一軸延伸法などの公知の延伸方法により延伸して得ることができる。シートまたは未延伸フィルムを延伸する際の延伸倍率は、二軸延伸の場合には通常20〜70倍程度、また一軸延伸の場合には通常2〜10倍程度である。延伸によって、厚み5〜200μm程度の延伸フィルムを得ることが望ましい。
また、フィルム状成形体として、インフレーションフィルムを製造することもできる。本発明に係るポリプロピレン系組成物をインフレーション成形するとドローダウンが生じにくい。
上記のような本発明のプロピレン系樹脂組成物からなるシートおよびフィルム成形体は、帯電しにくく、引張弾性率などの柔軟性、耐熱性、耐傷付き性、成形性、耐熱老化性、透明性、透視性、光沢、剛性、防湿性およびガスバリヤー性に優れており、包装用フィルムなどとして幅広く用いることができる。特に防湿性に優れるため、薬品の錠剤、カプセルなどの包装に用いられるプレススルーパック(press through pack)などに好適に用いられる。
射出成形体は、従来公知の射出成形装置を用いて公知の条件を採用して、プロピレン系樹脂組成物を種々の形状に射出成形して製造することができる。本発明のプロピレン系樹脂組成物からなる射出成形体は帯電しにくく、剛性、耐熱性、耐衝撃性、表面光沢、耐薬品性、耐磨耗性などに優れており、自動車内装用トリム材、バンパー、サイドモールおよびホイールカバーなどの自動車用外装材、家電製品の筐体、容器など幅広く用いることができる。
プレス成形体としてはモールドスタンピング成形体が挙げられ、たとえば基材と表皮材とを同時にプレス成形して両者を複合一体化成形(モールドスタンピング成形)する際の基材を、本発明のプロピレン系樹脂組成物で形成することができる。
このようなモールドスタンピング成形体としては、具体的には、ドアートリム、リアーパッケージトリム、シートバックガーニッシュ、インストルメントパネルなどの自動車用内装材が挙げられる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体は、高剛性を示し、たとえばエラストマー成分を含有していても充分に高い剛性を示すので、種々の高剛性用途に用いることができる。たとえば特にトリム材、バンパー、サイドモールおよびホイールカバーなど自動車内外装材、家電製品の筐体、各種容器などの用途に好適に利用することができる。
本発明のプロピレン系樹脂組成物からなるプレス成形体は帯電しにくく、剛性、耐熱性、耐傷付き性、耐熱老化性、表面光沢、耐薬品性、耐磨耗性などに優れている。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
プロピレン系重合体(A)の物性測定
プロピレン系重合体(A)として実施および比較例で使用したプロピレン系ブロック共重合体(A−1)、(A−2)および(A−3)の物性測定結果を表1に示す。各項目の測定方法を次に示す。
[メルトフローレート(MFR)]
ISO 1133に準拠し、230℃における2.16kg荷重でのMFRを測定した。
[室温n−デカン可溶成分量および室温n−デカン不溶成分量]
ガラス製の測定容器にプロピレン系ブロック共重合体約3g(10-4gの単位まで測定した。また、この重量を、下式においてb(g)と表した。)、n−デカン500mL、およびデカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温してプロピレン系ブロック共重合体を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン系ブロック共重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G−4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mLを採取し、これを減圧乾燥して室温n−デカン可溶成分の一部を得、この重量を10-4gの単位まで測定した(この重量を、下式においてa(g)と表した)。室温n−デカン可溶成分(以下、Dsolともいう)量および室温n−デカン不溶成分(以下、Dinsolともいう)量を下記式によって決定した。
Figure 2014001343
[Dsolの極限粘度([η])]
Dsolの極限粘度を、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。上記操作により得られたDsol約20mgをデカリン15mLに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5mL追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η]〔dl/g〕として求めた(下式参照)。
Figure 2014001343
[Dsol中のエチレンに由来する骨格およびプロピレンに由来する骨格の含量]
Dsol中のエチレンに由来する骨格の含量(以下、エチレン骨格含量ともいう)およびプロピレンに由来する骨格の含量(以下、プロピレン骨格含量ともいう)を測定するために、上記操作により得られたDsol 20〜30mgを1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンとの溶液(1,2,4−トリクロロベンゼン:重ベンゼン=2:1(容量比))0.6mLに溶解後、炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を行った。プロピレンおよびエチレンの含量はダイアッド連鎖分布より求めた。プロピレン−エチレン共重合体の場合、PP=Sαα、EP=Sαγ+Sαβ、EE=1/2(Sβδ+Sδδ)+1/4Sγδを用い、以下の計算式により求めた。
Figure 2014001343
Figure 2014001343
エラストマー(B)の物性測定
エラストマー(B)として実施例で使用したエラストマー(B−1)(ダウ社製エンゲージXLT8677)および比較例で使用したエラストマー(B−2)(ダウ社製エンゲージEG8842)、ならびにエラストマー(B−2)と同様に本発明の要件を満たさないエラストマーの例としてエラストマー(B−3)(ダウ社製エンゲージ8100)の物性測定結果を表2に示す。表2より、エラストマー(B−2)および(B−3)は本発明の要件(II)、(IV)および(V)を満たさない。各項目の測定方法を次に示す。
[メルトフローレート(MFR)]
ASTM D1238に準拠し、190℃、2.16kg荷重でMFRを測定した。
[密度]
MFR測定後のストランドを測定用試料とし、120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温まで徐冷したのち、密度勾配管で測定した。
[融点(Tm)]
DSCの吸熱曲線を求め、最大ピーク位置の温度をTmとした。測定機には、パーキンエルマー社製Pyris 1を用いた。試料をアルミパンに詰め、30℃で1分間保持したのち、500℃/分で160℃まで昇温し、その後、160℃で5分間保持したのち、10℃/分で−30℃まで降温し、ついで10℃/分で−30℃から160℃まで昇温したときに得られた吸熱曲線よりTmを求めた。
[エチレン含量およびα-オレフィン含量]
下記の装置を使用して下記の条件で13C−NMR測定を行い、「Makromol.Chem.,Rapid Commun 」第8巻,第305ページ(1987年)、「Macromolecules」第21巻,第617ページ(1988年)などの報告に基づいてスペクトル解析を行い、エチレン含量およびα-オレフィン含量を求めた。
装置:日本電子社製のJNM−EX400型NMR装置
試料濃度:220mg/NMR溶媒 3ミリリットル
NMR溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(90/10容量%)
測定温度:130℃
パルス幅:45゜
パルス繰返し時間:10秒
積算回数:500回
[E'の変化率およびガラス転移温度(Tg)]
セイコーインスルメンツ(株)社製のDMS6100(EXSTAR6000 SERIES)を用いて1Hzの周波数で−120〜80℃の間の動的粘弾性の温度依存性を測定した。貯蔵弾性率E'、損失弾性率E’’およびtanδと温度との相関を表わす曲線を得た。
ガラス転移温度(Tg)は、tanδ-温度曲線の最大ピーク温度とした。
0℃でのE’である E’0 および50℃でのE’である E’50を求め、0℃と50℃とでのE'の変化率〔(E'0−E'50)/(E'0)〕を算出した。
[ゲル分率]
試料であるペレットを、100メッシュのステンレス製網袋に約1.5g採取し、 140℃パラキシレン100cc中に投入して2時間スターラーで攪拌した。次いで、この網袋を取り出して乾燥した後、網袋中に残った固形分重量を測定し、採取した試料の重量に対する前記固体分重量の比率(重量%)をゲル分率として算出した。
Figure 2014001343
プロピレン樹脂組成物の物性測定
実施例および比較例で得られたプロピレン樹脂組成物の物性測定結果を表3〜5に示す。各項目の測定方法を次に示す。
[メルトフローレート(MFR)]
ISO1133に準拠し、230℃における2.16kg荷重でのMFRを測定した。
[密度]
ISO 1183に準拠し、水中置換法で密度を測定した。
[曲げ弾性率、シャルピー衝撃値および荷重たわみ温度]
曲げ弾性率、シャルピー衝撃値、荷重たわみ温度については、下記条件によって作成した成形体であるダンベル試験片(厚さ4mm×巾10mm×長さ150mm)を下記指定の形状および寸法に切削して、下記条件で測定を実施した。
試験片成形条件
成形機:NEX110-12E 日精樹脂射出成形機
温度:シリンダー195℃、金型温度40℃
計量:背圧5.0MPa、計量58 mm、SB1mm
射出:速度23.5mm/s、圧力100MPa
保圧:速度10mm/s、圧力50MPa、射出保圧時間42秒
冷却:10秒
〔曲げ弾性率(FM)〕
・ISO 178に準拠
・サンプル形状:厚さ4mm、巾10mm、長さ80mm
・試験条件:支点間距離64mm、曲げ速度2mm/min
〔シャルピー衝撃強度〕
・ISO 179に準拠
・試験片形状:厚さ4mm、巾10mm、長さ80mm、後ノッチ(45°、2mm深さ)
・試験条件:試験片固定間距離62mm、温度23℃、−30℃
〔荷重たわみ温度〕
・ISO 75に準拠
・試験片形状:厚さ4mm、巾10mm、長さ80mm
・試験条件:曲げ応力0.45MPa、四点間距離64mm、昇温速度120℃/hr
たわみが0.32mmとなったときの温度を荷重たわみ温度として用いた。
<プロピレン系重合体(A)の製造例>
[製造例A-1]
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム952g、デカン4420mLおよび2−エチルヘキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。
このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却した後、この均一溶液の750mLを、−20℃に保持された四塩化チタン2000mL中に1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱時濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mLの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。
加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2重量%、塩素を57重量%、マグネシウムを21重量%およびDIBPを20重量%の量で含有していた。
(2)前重合触媒の製造
固体触媒成分87.5g、トリエチルアルミニウム99.8mL、ジエチルアミノトリエトキシシラン28.4mL、ヘプタン12.5Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちプロピレンを875g挿入し、100分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。
(3) 本重合
内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを131kg/時間、触媒スラリーを遷移金属触媒成分として0.67g/時間、トリエチルアルミニウム19.7mL/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン4.4mL/時間を連続的に供給し、水素を気相部の水素濃度が5.9mol%になるように供給した。重合温度75℃、圧力3.5MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを30kg/時間、水素を気相部の水素濃度が4.6mol%になるように供給した。重合温度74.5℃、圧力3.5MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを20kg/時間、水素を気相部の水素濃度が4.0mol%になるように供給した。重合温度73℃、圧力3.4MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーは内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.17mol%、重合温度67℃、圧力3.3MPa/Gとなるようにエチレンを装入した。ジエチレングリコールエチルアセテートを遷移金属触媒成分中のTi成分あたり56モル倍の割合で添加した。
得られたスラリーは失活、気化後、気固分離を行った。得られたプロピレン系ブロック共重合体(A−1)は、80℃で真空乾燥を行った。
[製造例A-2]
前重合および重合方法を以下の様に変えた以外は、製造例A−1と同様の方法でプロピレン系重合体(A)の製造を行った。
(1)前重合触媒の製造
固体触媒成分86.0g、トリエチルアルミニウム39.2mL、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン11.0mL、ヘプタン4.6Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温10〜15℃に保ちプロピレンを860g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で1.0g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。
(2)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を408NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.79g/時間、トリエチルアルミニウム2.7mL/時間、ジシクロペンチルジメトキシシラン1.5mL/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は65.5℃であり、圧力は3.6MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が15mol%になるように供給した。重合温度64.5℃、圧力3.4MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.30(モル比)、水素/エチレン=0.075(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力0.7MPa/Gで重合を行った。
得られたプロピレン系ブロック共重合体(A−2)は、80℃で真空乾燥を行った。
[製造例A−3]
重合方法を以下の様に変えた以外は、製造例A−2と同様の方法でプロピレン系重合体(A)の製造を行った。
(1)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を137NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.60g/時間、トリエチルアルミニウム2.0mL/時間、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン1.2mL/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.5MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が5.1mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.3MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.46(モル比)、水素/エチレン=0.032(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力0.7MPa/Gで重合を行った。
得られたプロピレン系ブロック共重合体(A−3)は、80℃で真空乾燥を行った。
[実施例1]
プロピレン系樹脂(A)としてプロピレン系ブロック共重合体(A−1)を60重量%、エラストマー(B)としてエラストマー(B−1)(ダウ社製エンゲージXLT8677)を20重量%、無機充填材(C)としてタルク(C)(松村産業(株)社製ハイフィラー5000PJ)を20重量%((A−1)、(B−1)および(C)の合計を100重量%とする)、添加剤として、(A−1)、(B−1)および(C)の合計100量部に対してIrganox1010を0.1重量部、Irgafos168を0.1重量部(共にBASF社製)、カルシウムステアレートS(日本油脂製)を0.1重量部混合した。この混合物を、TEX−30α(二軸押出機:日本製鋼社製)を用いて、フィード量60kg/hr、シリンダー温度190℃、吐出量600rpmで混練後、ペレットタイズして、プロピレン樹脂組成物(X−1)を得た。
[実施例2]
プロピレン系樹脂(A)の種類をプロピレン系ブロック共重合体(A−2)に変更した以外は実施例1と同様にしてプロピレン樹脂組成物(X−2)を得た。
[実施例3]
プロピレン系樹脂(A)の種類をプロピレン系ブロック共重合体(A−3)に変更した以外は実施例1と同様にしてプロピレン樹脂組成物(X−3)を得た。
[比較例1]
エラストマー(B)としてエラストマー(B−2)(ダウ社製エンゲージEG8842)を用いた以外は実施例1と同様にしてプロピレン樹脂組成物(E−1)を得た。
[比較例2]
エラストマー(B)としてエラストマー(B−2)(ダウ社製エンゲージEG8842)を用いた以外は実施例2と同様にしてプロピレン樹脂組成物(E−2)を得た。
[比較例3]
エラストマー(B)としてエラストマー(B−2)(ダウ社製エンゲージEG8842)を用いた以外は実施例3と同様にしてプロピレン樹脂組成物(E−3)を得た。
表3に示す結果から、プロピレン系樹脂(A)の組成によらず、本発明の要件を満たさないエラストマー(B−2)を用いた比較例に比べて実施例は、曲げ弾性率で評価される常温下での剛性および荷重たわみ温度で評価される高温下での剛性とシャルピー衝撃強度(−30℃)で評価される低温衝撃強度とのバランスに優れることがわかる。
実施例で用いたエラストマー(B−1)は、エラストマー(B−2)や(B−3)と比較して、α-オレフィン含量が高い割に、Tgが低く、Tmが高い(表2)。これより、エラストマー(B−1)はエラストマー(B−2)およびエラストマー(B−3)に比べて、非晶セグメントの密度が低く、また結晶ラメラの厚みは厚いと推察される。また、エラストマー(B−1)は、E’の変化率が小さいことより、結晶ラメラと非晶セグメントとが化学結合していると考えられる。すなわち、エラストマー(B−1)は密度の低い非晶セグメントと、厚い結晶ラメラとが化学結合していると推察され、このようなエラストマーがプロピレン樹脂組成物中に存在することによって、実施例では、良好な高温剛性と低温衝撃強度が同時に得られたと推察される。
Figure 2014001343
[比較例4]
プロピレン系ブロック共重合体(A−1)およびエラストマー(B−1)の配合量を表4に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてプロピレン樹脂組成物(X−4)を得た。
[実施例4]
プロピレン系ブロック共重合体(A−1)およびエラストマー(B−1)の配合量を表4に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にしてプロピレン樹脂組成物(X−5)を得た。
[比較例5および6]
プロピレン系ブロック共重合体(A−1)およびエラストマー(B−2)の配合量を表4に示すとおりに変更した以外は比較例1と同様にしてプロピレン樹脂組成物(E−4)および(E−5)を得た。
表4に示す結果から、エラストマー(B)の配合量が10重量%より少ない比較例4に比べて実施例1および4は低温衝撃強度が優れることがわかる。また、本発明の要件を満たさないエラストマー(B−2)を用いた比較例に比べて実施例は、常温下、高温下での剛性と低温衝撃強度とのバランスが優れることがわかる。
Figure 2014001343
[実施例5および6]
プロピレン系ブロック共重合体(A−1)およびタルク(C)の配合量を表5に示すとおりに変更した以外は実施例1と同様にしてプロピレン樹脂組成物(X−6)および(X−7)を得た。
[比較例7および8]
プロピレン系ブロック共重合体(A−1)およびタルク(C)の配合量を表5に示すとおりに変更した以外は比較例1と同様にしてプロピレン樹脂組成物(E−6)および(E−7)を得た。
表5に示す結果から、タルクの配合量が0重量%、20重量%および30重量%のいずれにおいてもプロピレン樹脂組成物の物性が優れることがわかる。
Figure 2014001343

Claims (4)

  1. プロピレン系重合体(A)40重量%以上90重量%以下、エラストマー(B)10重量%以上40重量%以下、無機充填材(C)0重量%以上35重量%以下((A)、(B)および(C)の合計を100重量%とする)を含有し、
    前記エラストマー(B)がエチレンと炭素数3以上8以下のα-オレフィンとの共重合体であって、下記要件(I)〜(VI)を同時に満たすプロピレン樹脂組成物。
    (I)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1g
    /10分以上5.0g/10分以下である。
    (II)密度が0.860g/cm3以上0.890g/cm3以下である。
    (III)固体粘弾性測定のtanδから得られたガラス転移温度(Tg)が−90℃以上 −50℃以下である。
    (IV)示差走査型熱量計(DSC)で測定された融点(Tm)が100℃以上135℃以下である。
    (V)固体粘弾性測定による、0℃と50℃とでの貯蔵弾性率E'の変化率〔(E'0−'50)/(E'0)〕が0.80未満である(0℃でのE’を E’0、50℃でのE’を E’50とする)。
    (VI)ゲル分率が0.1重量%以下である。
  2. 請求項1に記載のプロピレン樹脂組成物から得られる成形体。
  3. シートまたは射出成形品である請求項2に記載の成形体。
  4. 自動車用内外装材である請求項2または3に記載の成形体。
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