WO2018066398A1 - ニッケルめっき液及びニッケルめっき液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
サテンニッケルめっきの外観不良を引き起こすことなく、長期間活性炭処理を必要としない、サテンニッケルめっき液を提供することを目的とする。 サテンニッケルめっきに用いられるニッケルめっき液であって、少なくともサッカリン酸塩と、1級アミン化合物と、カチオン界面活性剤とを含有することを特徴とする。
Description
本発明は、サテンニッケルめっきに用いられるニッケルめっき液及びニッケルめっき液の製造方法に関する。本出願は、日本国において2016年10月7日に出願された日本特許出願番号特願2016-198963を基礎として優先権を主張するものであり、この出願は参照されることにより、本出願に援用される。
サテンニッケルめっきは、自動車部品等の自動車産業、オーディオやカメラ等の精密機器産業、家具産業、スポーツ用品、各種装飾品など幅広い分野で使用されている。従来、半光沢梨地面のサテンニッケル表面を得るために、ブラスト処理により、鉄粉やカーボンランダム、アランダムなどを試料面に吹き付けて形成していた。しかしブラスト処理により形成する方法は非常に高価であり、生産量も限られるため、生産性は低いものであった。
そこで近年では、安価なめっきによる方法が用いられている。ニッケルめっき浴中に非導電性の微粒子を添加して、ニッケルと共析させ、半光沢梨地面のサテンニッケルを得ている。
特許文献1では、めっき浴中にアルキルアリルスルホン酸塩型あるいはスルホコハク酸エステルアニオン界面活性剤を添加し、エマルジョン粒を分散させて、梨地効果を得るようなニッケルのめっき浴が記載されている。また特許文献2では、第4級アンモニウム化合物および強疎水性側鎖を有するポリエーテルを含有するサテンニッケル被膜を電解析出するための酸めっき浴が記載されている。
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載されている方法は、一次光沢剤、二次光沢剤とカチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤の組み合わせで行われている。この方法では、めっき液中でカチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とが反応し、めっき液を使用するにつれ、エマルジョンが大きくなっていき、外観不良を引き起こすため、短期間での活性炭処理が必要であった。また、数時間ごとに活性炭処理を行い反応した界面活性剤を除去した後に、新たに添加剤を添加して作業を繰り返すことにより、サテンニッケルめっき被膜を得ている。ゆえにこの方法では生産性が非常に低いという問題がある。
そこで、本発明はサテンニッケルめっきの外観不良を引き起こすことなく、長期間活性炭処理を必要としない、サテンニッケルめっき液を提供することを目的とする。
本発明の一態様に係るニッケルめっき液は、サテンニッケルめっきに用いられるニッケルめっき液であって、少なくともサッカリン酸塩と、1級アミン化合物と、カチオン界面活性剤とを含有することを特徴とする。
このようにすれば、ニッケルめっき被膜の外観不良を引き起こすことなく、ニッケルめっき液に対し長期間活性炭処理が不要なサテンニッケルめっき液を提供することができる。
このとき、本発明の一態様では、アニオン界面活性剤を含まないこととしても良い。
このようにすれば、カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とが反応し、不溶解性物質が凝集されることがないので、ニッケルめっき液に対し長期間活性炭処理が不要となる。
このようにすれば、適切な反応基部の大きさとなり、より良好なサテン外観を得ることができる。
このようにすれば、適切な分子鎖となり分散性及び被膜の組成が高まるので、より均一なサテン外観を得ることができる。
また、本発明の一態様では、前記1級アミン化合物及び前記4級アミン化合物の濃度は、共に5mg/L~50mg/Lとしても良い。
このようにすれば、より良好な梨地面のサテン外観を得ることができる。
また、本発明の一態様では、前記1級アミン化合物と前記4級アミン化合物の添加比は、モル比で1:0.3~1:3としても良い。
このようにすれば、より分散性を高め、よりニッケルめっき被膜組成を向上させ、良好な梨地面のサテン外観を得ることができる。
また、本発明の他の態様は、サテンニッケルめっきに用いられるニッケルめっき液の製造方法であって、少なくとも、サッカリン酸塩が含有されためっき液を添加し、1級アミン化合物が含有されためっき液を添加し、カチオン界面活性剤が含有されためっき液を添加することを特徴とする。
このようにすれば、めっき液のニッケル濃度を低くし、ニッケルの消費を抑制できる。またニッケルめっき被膜の外観不良を引き起こすことなく、ニッケルめっき液に対し長期間活性炭処理が不要なサテンニッケルめっき液を提供することができる。
また、本発明の一態様では、アニオン界面活性剤を添加しないこととしてもよい。
このようにすれば、カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とが反応し、不溶解性物質が凝集されることがないので、ニッケルめっき液に対し長期間活性炭処理が不要となる。
このようにすれば、適切な反応基部の大きさとなり、より良好なサテン外観を得ることができる。
このようにすれば、適切な分子鎖となり分散性及び被膜の組成が高まるので、より均一なサテン外観を得ることができる。
また、本発明の一態様では、前記1級アミン化合物及び前記4級アミン化合物の濃度は、共に5mg/L~50mg/Lとしてもよい。
このようにすれば、より良好な梨地面のサテン外観が得られる。
また、本発明の一態様では、前記1級アミン化合物と前記4級アミン化合物の添加比は、モル比で1:0.3~1:3としてもよい。
このようにすれば、より分散性を高めニッケルめっき組成を向上させ、良好な梨地面のサテン外観が得られる。
また、本発明の他の態様は、少なくとも前記1級アミン化合物が含有されためっき液と前記カチオン界面活性剤が含有されためっき液を、更に補給する際に、通電していない状態で添加することとしても良い。
このようにすれば、継続的に良好な梨地面のサテン外観を得ることができ、さらなる長期間の活性炭処理が不要となる。
以上説明したように本発明によれば、サテンニッケルめっきの外観不良を引き起こすことなく、長期間活性炭処理を必要としない、サテンニッケルめっき液及びニッケルめっき液の製造方法を提供することができる。
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
[ニッケルめっき液]
本発明の一実施形態に係るニッケルめっき液は、サテンニッケルめっきに用いられるニッケルめっき液であって、少なくともサッカリン酸塩と、1級アミン化合物と、カチオン界面活性剤とを含有する。
本発明の一実施形態に係るニッケルめっき液は、サテンニッケルめっきに用いられるニッケルめっき液であって、少なくともサッカリン酸塩と、1級アミン化合物と、カチオン界面活性剤とを含有する。
ここでめっき液とは、めっきをするために用いられる液であって、各種金属及び添加剤が一つの容器に濃縮されたもの、各種金属及び添加剤が複数の容器に分かれ各容器に各種金属及び添加剤が濃縮されたもの、上記濃縮されたもの等を水で調整し建浴したもの、及び各種金属及び添加剤を添加し調整し建浴したものをいう。
従来のサテンニッケルめっき液に用いられるニッケルめっき液では、梨地面のサテン外観を得るために、添加剤として、主にノニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とを組み合わせてめっきが行われていた。そしてノニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とが反応して形成される微細な不溶解性物質を利用して梨地面のサテン外観を得ていた。
しかし、上記の従来の方法では、これらのノニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤は比較的分子量が大きいため形成された不溶解性物質は凝集しやすく、再分散性も困難であった。上記の不溶解性物質が凝集されめっき液中に浮遊していると、それがサテンニッケルめっき被膜に取り込まれ、外観不良となる。
それゆえに、外観不良を引き起こさないためにも、数時間毎の活性炭処理による液再生が必要であった。数時間毎に活性炭処理を行わなければならないので、その都度生産を止めなければならなく、非常に生産性が悪い。さらに1度の活性炭処理は別のめっき槽に移し処理するので、非常に時間やコストがかかる。また別の槽に移さないとしても、活性炭を含んだフィルターなどで濾過循環させる方法もあるが、上記フィルターはコスト高である。
そこで本発明者らは、前述した本発明の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ニッケルめっき液は、サテンニッケルめっきに用いられるニッケルめっき液であって、少なくともサッカリン酸塩と、1級アミン化合物と、カチオン界面活性剤とを含有することで、サテンニッケルめっきの外観不良を引き起こすことなく、長期間活性炭処理が不要となることが分かった。以下詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係るめっき液に用いられる水溶性ニッケル塩としては、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、スルファミン酸ニッケル、硝酸ニッケル、亜硫酸ニッケル、炭酸ニッケル等を挙げることができ、これらの水溶性ニッケル塩を1種単独、又は2種以上を任意の割合で混合させて用いることができる。
次に、本発明の一実施形態に係るめっき液に含有する添加剤について説明する。本発明の一実施形態に係るめっき液に含有する添加剤は、少なくともサッカリン酸塩と、1級アミン化合物と、カチオン界面活性剤である。これは従来の添加剤の場合、上述した不具合が発生するため、本発明の実施形態に係る添加剤としたものである。それぞれの添加剤について以下に詳しく説明する。
まず、サッカリン酸塩と1級アミン化合物について説明する。本メカニズムは光沢ニッケルの光沢剤であるサッカリン酸塩の作用を今回は応用したものとなっている。つまり、従来サッカリン酸塩はニッケル析出界面に吸着・作用して結晶を微細化し光沢を得ていたが、本発明の一実施形態に係るめっき液では、ニッケル塩とサッカリン酸塩とを結合させておき、そして1級アミン化合物を添加することによって、それがサッカリン酸塩の反応基と電気的に又は分子間力などで弱く結合し反応物となる。その反応物が、ニッケル表面に吸着・反応が生じて梨地面のサテン外観を得ている。
サッカリン酸塩は、サッカリン酸ナトリウム、サッカリン酸カリウム、サッカリン酸カルシウム等を使用することができる。また、濃度は0.1g/L~20g/Lとすることが好ましい。
また、サッカリン酸塩に代えて、2-スルホ安息香酸イミドを用いても良い。その場合の濃度は、0.1g/L~20g/Lとすることが好ましい。さらに必要に応じて、サッカリン酸塩、2-スルホ安息香酸イミドの他に、アリルスルホン酸とその塩、ビニルスルホン酸とその塩、ブチンジオール、プロパギルスルホン酸とその塩等の光沢剤を添加しても良い。
また、本発明の一実施形態に係るニッケルめっき液では、アニオン界面活性剤を含まないことを特徴とする。このようにすれば、カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とが反応し、不溶解性物質が凝集されることがないので、ニッケルめっき液に対し長期間活性炭処理が不要となる。
本明細書中における1級アミン化合物は、1級アミンと酸との反応物を含む。1級アミンと反応させる酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、イセチオン酸等のカルボン酸が好ましい。このようにすれば、めっき液のpHの変動を抑制することができる。
1級アミン化合物は、サッカリン酸塩の反応場に作用して反応物を作り、より良好な外観を得て、長期間活性炭処理を必要としないために、下記の(1)式で示されるn=3~10、m=3~9の構造物と酸との反応物とすることが好ましい。
上記(1)式において、n、mが3未満の場合、1級アミン化合物の分子が短くなるので、反応基部が小さくなり、梨地が弱くなり過ぎて良好なサテン外観が得られない。一方、nが10、mが9を超えると1級アミン化合物の分子が長くなるので、反応基部が大きくなるので、梨地が強くなり過ぎて良好なサテン外観が得られない。また、(1)式で示される構造物と反応させる酸は、上記に述べたギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、イセチオン酸等のカルボン酸が好ましい。このようにすれば、めっき液のpHの変動を抑制することができる。
1級アミン化合物は、より良好な梨地面のサテン外観を得るために、濃度を5mg/L~50mg/Lとすることが好ましい。5mg/L未満では、サッカリン酸塩と結合する1級アミン化合物が少なくなるので、梨地のサテン外観は得られず、光沢ニッケルめっきに近い外観となる。一方、50mg/Lより多いと、サッカリン酸塩と結合する1級アミン化合物が多くなり、また1級アミン化合物が被めっき物表面の電流密度が高い箇所に過剰吸着することにより、梨地が強いサテン外観となり、電流密度変化に対する外観の均一性が損なわれる。
次に、カチオン界面活性剤について説明する。本発明の一実施形態に係るめっき液では、カチオン界面活性剤を添加する。上述したサッカリン酸塩と1級アミン化合物のみの場合、分散性が悪く、均一な梨地面のサテン外観が得られないため、カチオン界面活性剤を添加し、サッカリン酸塩と1級アミン化合物との反応物の分散性を向上させるために添加する。
分散剤としては、一般的にはノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤とカチオン界面活性剤を添加することが考えられるが、ノニオンでは溶解性の問題でエチレンオキサイドのモル数を大きくする必要がある。この様なノニオンはニッケル析出を阻害して被膜が脆くなる等の問題が発生する。アニオン界面活性剤では添加しているカチオン活性剤と反応して不溶性物質が生成し、コントロールができなくなる。そこで本発明の実施形態に係るめっき液にサッカリン酸塩と1級アミン化合物とカチオン界面活性剤を含有させたものである。
さらにカチオン界面活性剤は、分散性及びニッケルめっき被膜の組成をより高めるために、下記の(2)式で示される4級アミン化合物であり、l=12~20、RはCl-、SO3
-又はOH-とすることが好ましい。
上記(2)式において、lが12未満の場合、分子鎖が短くなり、サッカリン酸塩と1級アミン化合物の分散作用が小さくなり、均一なサテン外観とならない。一方、lが20より大きいと分子鎖が長くなり分子の相互作用が小さすぎて、分散作用が小さくなり、均一なサテン外観が得られない。
4級アミン化合物は、より分散性を高め、より良好な梨地面のサテン外観を得るために、濃度を5mg/L~50mg/Lとすることが好ましい。5mg/L未満では、サッカリン酸塩と1級アミン化合物との反応物を十分に分散させることができなく、良好な梨地のサテン外観が得られない。一方、50mg/Lより多いと、サッカリン酸塩と1級アミン化合物との反応物を分散しすぎてしまい、梨地が弱くなり良好なサテン外観が得られない。
また、1級アミン化合物及と4級アミン化合物の濃度の添加比は、モル比で1:0.3~1:3とすることが好ましい。このようにすれば、より分散性を高めニッケルめっき組成が向上し、良好な梨地面のサテン外観が得られる。
[ニッケルめっき液の製造方法]
以下、ニッケルめっき液の製造方法について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るニッケルめっき液の製造方法の概略を示す工程図である。少なくとも、サッカリン酸塩が含有されためっき液を添加し(S1)、1級アミン化合物が含有されためっき液を添加し(S2)、カチオン界面活性剤が含有されためっき液を添加する(S3)。以下、工程ごとに説明する。
以下、ニッケルめっき液の製造方法について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るニッケルめっき液の製造方法の概略を示す工程図である。少なくとも、サッカリン酸塩が含有されためっき液を添加し(S1)、1級アミン化合物が含有されためっき液を添加し(S2)、カチオン界面活性剤が含有されためっき液を添加する(S3)。以下、工程ごとに説明する。
最初に、サッカリン酸塩が含有されためっき液を添加する(S1)。これは、先に溶解されたニッケル塩とサッカリン酸塩とを、ニッケル塩と1級アミン化合物やカチオン界面活性剤よりも先に結合させておくものである。このようにすることで、1級アミン化合物やカチオン界面活性剤が、ニッケル塩と先に結合するのを防止することで、めっき液のニッケル濃度を、従来より約30%低くすることが可能となり、ひいてはニッケルの消費を抑制し、コスト低減となる。
サッカリン酸塩は、サッカリン酸ナトリウム、サッカリン酸カリウム、サッカリン酸カルシウム等を使用することができる。また、濃度は0.1g/L~20g/Lとすることが好ましい。
また、サッカリン酸塩に代えて、2-スルホ安息香酸イミドを用いても良い。その場合の濃度は、0.1g/L~20g/Lとすることが好ましい。さらに必要に応じて、サッカリン酸塩、2-スルホ安息香酸イミドの他に、アリルスルホン酸とその塩、ビニルスルホン酸とその塩、ブチンジオール、プロパギルスルホン酸とその塩等の光沢剤を添加しても良い。
次に、1級アミン化合物が含有されためっき液を添加する(S2)。これは、従来サッカリン酸塩はニッケル析出界面に吸着・作用して結晶を微細化し光沢を得ていたが、本発明の一実施形態に係るめっき液では、1級アミン化合物を添加することによって、それがサッカリン酸塩の反応基と電気的に又は分子間力などで弱く結合し反応物となる。その反応物が、ニッケル表面に吸着・反応が生じて梨地面のサテン外観を得るものである。
また、本発明の一実施形態に係るめっき液の製造方法では、アニオン界面活性剤を含まないことを特徴とする。このようにすれば、カチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とが反応し、不溶解性物質が凝集されることがないので、ニッケルめっき液に対し長期間活性炭処理が不要となる。
上記(1)式において、n、mが3未満の場合、1級アミン化合物の分子が短くなるので、反応基部が小さくなり、梨地が弱くなり過ぎて良好なサテン外観が得られない。一方、nが10、mが9を超えると1級アミン化合物の分子が長くなるので、反応基部が大きくなるので、梨地が強くなり過ぎて良好なサテン外観が得られない。また、(1)式で示される構造物と反応させる酸は、上記に述べたギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、イセチオン酸等のカルボン酸が好ましい。このようにすれば、めっき液のpHの変動を抑制することができる。
1級アミンは、濃度を5mg/L~50mg/Lとすることが好ましい。5mg/L未満では、サッカリン酸塩と結合する1級アミン化合物が少なくなるので、梨地のサテン外観は得られず、光沢ニッケルめっきに近い外観となる。一方、50mg/Lより多いと、サッカリン酸塩と結合する1級アミン化合物が多くなり、また1級アミン化合物が被めっき物表面の電流密度が高い箇所に過剰吸着することにより、梨地が強いサテン外観となり、電流密度変化に対する外観の均一性が損なわれる。
次に、カチオン界面活性剤が含有されためっき液を添加する(S3)。サッカリン酸塩と1級アミン化合物との反応物の分散性を向上させるために添加する。
さらにカチオン界面活性剤は、分散性及びニッケルめっき被膜の組成をより高めるために、下記の(2)式で示される4級アミン化合物であり、l=12~20、RはCl-、SO3
-又はOH-とすることが好ましい。
上記(2)式において、lが12未満の場合、分子鎖が短くなり、サッカリン酸塩と1級アミン化合物の分散作用が小さくなり、均一なサテン外観とならない。一方、lが20より大きいと分子鎖が長くなり分子の相互作用が小さすぎて、分散作用が小さくなり、均一なサテン外観が得られない。
4級アミン化合物は、濃度を5mg/L~50mg/Lとすることが好ましい。5mg/L未満では、サッカリン酸塩と1級アミン化合物との反応物を十分に分散させることができなく、良好な梨地のサテン外観が得られない。一方、50mg/Lより多いと、サッカリン酸塩と1級アミン化合物との反応物を分散しすぎてしまい、梨地が弱くなり良好なサテン外観が得られない。
1級アミン化合物及と4級アミン化合物の濃度の添加比は、モル比で1:0.3~1:3とすることが好ましい。このようにすれば、より分散性を高めニッケルめっき組成を向上させ、良好な梨地面のサテン外観が得られる。
以上のように、少なくとも、水溶性ニッケル塩を添加し(不図示)、サッカリン酸塩が含有されためっき液を添加し(S1)、1級アミン化合物が含有されためっき液を添加し(S2)、カチオン界面活性剤が含有されためっき液を添加し(S3)、ニッケルめっき液とすることができる。上述したように、添加する順はS1、S2、S3とすることが重要である。
また、1級アミン化合物が含有されためっき液を添加する工程S2の前に、酸を添加することが好ましい。上記の酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸、メタンスルホン酸、イセチオン酸等のカルボン酸が好ましい。このようにすれば、めっき液のpHの変動を抑制することができる。
また、少なくとも上記1級アミン化合物が含有されためっき液と上記カチオン界面活性剤が含有されためっき液を、更に補給する際に、通電していない状態で添加することが好ましい。サテンニッケルめっきは、電気を通電させてめっきを形成させる。めっきをするにつれ、上述したようにニッケル塩や各種添加剤がめっき被膜に取り込まれ、各種添加剤濃度は低下する。各種添加剤濃度の低下を防止するために補給を行うが、従来のめっき液では、上述したように、短期間での活性炭処理が必要であり、めっき液の寿命は非常に短いため、各種添加剤の補給は不要であった。また、従来より行われている各種添加剤の一般的な補給は、めっき中、つまり通電中に補給するものであった。
一方、本発明の一実施形態に係るニッケルめっき液及びニッケルめっき液の製造方法によれば、長期間の活性炭処理は不要となり、めっき液の寿命を延ばすことができたため、めっきをするにつれ、各種添加剤濃度が低下し期待するサテン外観が得られなくなるのでいずれ補給が必要となる。よって各種添加剤の濃度低下を防止するために、1級アミン化合物やカチオン界面活性剤を添加するものであり、その添加補給の際には、通電をやめた状態で添加することが好ましい。そうすることで、アノードへの過剰吸着を抑制し、過剰の補給を防止でき、継続的に良好な梨地面のサテン外観をえることができる。また、さらなる長期間の活性炭処理が不要となる。
一方で、通電した状態で上記の1級アミン化合物が含有されためっき液と上記のカチオン界面活性剤が含有されためっき液を添加したい場合には、建浴しためっき液の一部を抜き取り、その抜き取った液中に上記の1級アミン化合物が含有されためっき液と上記のカチオン界面活性剤が含有されためっき液を添加することが好ましい。
上記のサッカリン酸塩が含有されためっき液、1級アミン化合物が含有されためっき液及びカチオン界面活性剤が含有されためっき液を用いて、めっき槽に建浴しても良く、上記それぞれのめっき液を添加した後、必要に応じて工業用水、水道水、純水などで調整し建浴しても良い。また、サッカリン酸塩が含有されためっき液、1級アミン化合物が含有されためっき液及びカチオン界面活性剤が含有されためっき液を、2以上の容器に分けてめっき液とし、それらを建浴に用いても良く、それぞれのめっき液を1つの容器にしてめっき液とし、それを建浴に用いても良い。
次に、本発明の一実施形態に係るニッケルめっき液及びニッケルめっき液の製造方法について実施例により詳しく説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例におけるニッケルめっき液は、水溶性ニッケル塩として硫酸ニッケルを用い、サッカリン酸ナトリウム3g/Lとした。また1級アミン化合物は、下記(1)式のn、mを変えた4種類の構造物とギ酸との反応物を用い、濃度を変化させて実施した。また、カチオン界面活性剤として4級アミン化合物を用いて、下記(2)式のlを変えた3種類の化合物を用い、濃度を変化させて実施した。そして、実施例と同様に、1週間めっき液を使用し、ニッケルめっき表面の外観を観察した。
[実施例1]
実施例1では、1級アミン化合物は、n=8、m=8、濃度5mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、l=16、R=Cl-、濃度5mg/Lで実施した。
実施例1では、1級アミン化合物は、n=8、m=8、濃度5mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、l=16、R=Cl-、濃度5mg/Lで実施した。
[実施例2]
実施例2では、1級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
実施例2では、1級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
[実施例3]
実施例3では、1級アミン化合物は、濃度50mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度50mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
実施例3では、1級アミン化合物は、濃度50mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度50mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
[実施例4]
実施例4では、1級アミン化合物は、n=3、m=3、濃度25mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
実施例4では、1級アミン化合物は、n=3、m=3、濃度25mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
[実施例5]
実施例5では、1級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、l=12、濃度25mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
実施例5では、1級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、l=12、濃度25mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
[実施例6]
実施例6では、1級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、l=18、濃度25mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
実施例6では、1級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、l=18、濃度25mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
[実施例7]
実施例7では、1級アミン化合物は、n=10、m=9、濃度25mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
実施例7では、1級アミン化合物は、n=10、m=9、濃度25mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度25mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
[実施例8]
実施例8では、1級アミン化合物は、n=6、m=6、濃度50mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度7.5mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
実施例8では、1級アミン化合物は、n=6、m=6、濃度50mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度7.5mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
[実施例9]
実施例9では、1級アミン化合物は、n=6、m=6、濃度17mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度50mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
実施例9では、1級アミン化合物は、n=6、m=6、濃度17mg/Lで実施した。また、4級アミン化合物は、濃度50mg/Lで実施した。その他の条件は実施例1と同様とした。
[比較例1]
比較例1におけるニッケルめっき液は、ニッケル塩として硫酸ニッケルを用い、サッカリン酸ナトリウム3g/Lとし、従来使用してきたカチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤を添加した。カチオン界面活性剤として、4級アミン化合物l=30、濃度を25mg/Lとした。また、アニオン界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを用い、濃度を10mL/Lとした。そして、実施例と同様に、1週間めっき液を使用し、ニッケルめっき表面の外観を観察した。
比較例1におけるニッケルめっき液は、ニッケル塩として硫酸ニッケルを用い、サッカリン酸ナトリウム3g/Lとし、従来使用してきたカチオン界面活性剤とアニオン界面活性剤を添加した。カチオン界面活性剤として、4級アミン化合物l=30、濃度を25mg/Lとした。また、アニオン界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウムを用い、濃度を10mL/Lとした。そして、実施例と同様に、1週間めっき液を使用し、ニッケルめっき表面の外観を観察した。
評価方法として、1週間めっき液を使用した後のニッケルめっきの外観について、初期に使用しためっき液で得られた外観と同様の梨地面のサテン外観が得られたものを○、得られなかったものを×とした。その結果を表1に示す。
全ての実施例では、活性炭処理をすることなく1週間めっき液を使用した後のニッケルめっきの外観について、初期に使用しためっき液で得られた外観と同様の梨地面のサテン外観が得られた。
また実施例1~9におけるニッケル表面の梨地面について、実施例1では弱い梨地面であった。また、実施例2では梨地面であり、梨地の外観としては最も良い外観となった。その外観の表面を顕微鏡(キーエンスデジタルマイクロスコープVHX-5000)で観察した写真を図2に示す。図2に示したように、活性炭処理をすることなく1週間めっき液を使用した後のニッケルめっきの外観について、初期に使用しためっき液で得られた外観と同様の梨地面のサテン外観が得られた。また、実施例3では強い梨地面であった。また、実施例4では極弱い梨地面であった。また、実施例5、6では梨地面であった。また、実施例7ではニッケル表面は強い梨地面であった。また、実施例8、9では、弱い梨地面であった。また、均一性に関しては、実施例のなかでは、実施例2、4、7、8、9が最も均一性に優れていた。
一方、比較例1では1週間めっき液を使用した後のニッケルめっきの外観について、初期に使用しためっき液で得られた外観と同様の梨地面のサテン外観が得られなかった。その外観の表面を顕微鏡(キーエンスデジタルマイクロスコープVHX-5000)で観察した写真を図3に示す。図3では図2で得られたような、良好なサテン外観とはならなかった。
本実施形態に係るニッケルめっき液及びニッケルめっき液の製造方法を適用することによって、サテンニッケルめっきの外観不良を引き起こすことなく、長期間活性炭処理を不要とすることができた。
なお、上記のように本発明の各実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、ニッケルめっき液及びニッケルめっき液の製造方法の構成、動作も本発明の各実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
S1 サッカリン酸塩含有めっき液添加工程 S2 1級アミン化合物含有めっき液添加工程 S3 カチオン界面活性剤含有めっき液添加工程
Claims (13)
- サテンニッケルめっきに用いられるニッケルめっき液であって、
少なくともサッカリン酸塩と、1級アミン化合物と、カチオン界面活性剤とを含有することを特徴とするニッケルめっき液。 - アニオン界面活性剤を含まないことを特徴とする請求項1に記載のニッケルめっき液。
- 前記1級アミン化合物及び前記4級アミン化合物の濃度は、共に5mg/L~50mg/Lであることを特徴とする請求項4に記載のニッケルめっき液。
- 前記1級アミン化合物と前記4級アミン化合物の添加比は、モル比で1:0.3~1:3であることを特徴とする請求項5に記載のニッケルめっき液。
- サテンニッケルめっきに用いられるニッケルめっき液の製造方法であって、
少なくとも、
サッカリン酸塩が含有されためっき液を添加し、
1級アミン化合物が含有されためっき液を添加し、
カチオン界面活性剤が含有されためっき液を添加することを特徴とするニッケルめっき液の製造方法。 - アニオン界面活性剤を添加しないことを特徴とする請求項7に記載のニッケルめっき液の製造方法。
- 前記1級アミン化合物及び前記4級アミン化合物の濃度は、共に5mg/L~50mg/Lであることを特徴とする請求項10に記載のニッケルめっき液の製造方法。
- 前記1級アミン化合物と前記4級アミン化合物の添加比は、モル比で1:0.3~1:3であることを特徴とする請求項11に記載のニッケルめっき液の製造方法。
- 少なくとも前記1級アミン化合物が含有されためっき液と前記カチオン界面活性剤が含有されためっき液を、更に補給する際に、通電していない状態で添加することを特徴とする請求項7乃至9の何れか1項に記載のニッケルめっき液の製造方法。
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