WO2016084777A1 - ポリイミドフィルム、それを用いた基板、及び、ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

ポリイミドフィルム、それを用いた基板、及び、ポリイミドフィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

 下記一般式(1)及び(2):[式(1)及び(2)中、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子等を示し、Rは炭素数6~40のアリール基を示し、nは0~12の整数を示す。] で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であり、350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で50℃~400℃の温度範囲において長さの変化を測定して求められる平均線膨張係数が15ppm/℃以下である、ポリイミドからなるフィルムである、ポリイミドフィルム。

Description

ポリイミドフィルム、それを用いた基板、及び、ポリイミドフィルムの製造方法
 本発明は、ポリイミドフィルム、それを用いた基板、並びに、ポリイミドフィルムの製造方法に関し、より詳しくは、ポリイミドフィルム、フレキシブル配線基板、透明電極用基板、液晶配向膜積層用基板、有機ELディスプレイ用基板、有機EL照明用基板、並びに、ポリイミドフィルムの製造方法に関する。
 近年、耐熱材料の開発研究が活発に行われており、耐熱性や寸法安定性に優れるという観点から、ポリイミドが注目されている。このようなポリイミドとしては、耐熱性高分子の中でも最高クラスの耐熱性を有するものとして、例えば、米国DuPont社により1960年代に開発された代表的な有機材料である全芳香族ポリイミド「Kapton」が市販されており、かかる全芳香族ポリイミドは300℃程度の高温や過酷な宇宙環境にも長期間耐え得る高分子材料であることが知られている。
 また、他の全芳香族ポリイミドとしては、例えば、特開2007-46045号公報(特許文献1)には、100~400℃での平均線膨張係数が-20~10ppm/℃であるポリイミドフィルムが開示されている。また、特開2009-67042号公報(特許文献2)には、ポリイミド前駆体の溶媒溶液を支持体上にキャストし、該溶液中の溶媒を除去し自己支持性フィルムとして支持体から剥離し、自己支持性フィルムを初期加熱温度80~300℃で幅方向に延伸し、その後最終加熱温度350~580℃で加熱することにより得られるポリイミドフィルムが開示されている。
 しかしながら、このような全芳香族ポリイミドは、芳香系のテトラカルボン酸二無水物ユニットと芳香系のジアミンユニットとの間で分子内電荷移動(CT)が起きるため、褐色を呈し、透明性が必要とされる用途(プリンタブルエレクトロニクス用途、フレキシブルガラス代替用途、半導体レジスト用途等)に使用できるものではなかった。そのため、近年では、透明性が必要とされる用途に使用可能なポリイミドを製造するために、分子内CTが生じることがなく、光透過性が高い脂環式のポリイミドの研究が進められてきており、光透過性とともに耐熱性等の点においても優れた脂環式のポリイミドが開発されてきている。
 このような脂環式のポリイミドとしては、例えば、国際公開第2014/034760号(特許文献3)においては、下記一般式(I)及び(II):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000008
[式中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、Rは炭素数6~40のアリール基を示し、nは0~12の整数を示す。]
で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、かつ、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリイミドが開示されている。このような特許文献3に記載の脂環式のポリイミドは、十分に高度な光透過性及び耐熱性を有するものであり、しかも、十分に低い線膨張係数も有するものであった。
特開2007-46045号公報 特開2009-67042号公報 国際公開第2014/034760号
 しかしながら、特許文献3に記載のような、十分に低い線膨張係数を有する脂環式のポリイミドにおいても、高温(例えば350℃以上の温度)での線膨張係数の増大の抑制といった観点では、必ずしも十分なものではなかった。そのため、例えば、特許文献3に記載のようなポリイミドからなるフィルムに対して、350℃以上となるような比較的高温の条件下において無機材料を積層した場合に、無機材料からなる層との間に生じる応力により、フィルムの一部にクラックが生じたり、無機材料からなる層との間に微細な剥がれが生じたりすることを、必ずしも十分に抑制できなかった。このような観点から、特に、ポリイミドからなるフィルムを利用して最終製品を製造する際に高温に晒す必要があるような場合(例えば、高温で無機材料からなる層を積層する必要があるような場合等)に、最終的な製品の歩留向上の観点から、より高度な水準で高温(例えば350℃以上の温度)での線膨張係数の増大の抑制が可能なポリイミドフィルムの出現が望まれている。
 本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、光透過性や耐熱性に優れ、しかも高温での線膨張係数が十分に低いポリイミドフィルム及びその製造方法を提供することを目的とし、更には、そのポリイミドフィルムからなる、フレキシブル配線基板、透明電極用基板、液晶配向膜積層用基板、有機ELディスプレイ用基板及び有機EL照明用基板を提供することを目的とする。
 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であり、350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で50℃~400℃の温度範囲において長さの変化を測定して求められる平均線膨張係数が15ppm/℃以下であるポリイミドからなるフィルムにより、例えば、無機材料を積層するために高温(例えば350℃以上の温度)で加熱する必要が生じた場合においても、熱による膨張を十分に抑制することが可能となることを見出した。
 このように、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、上記ポリイミドからなるフィルム(ポリイミドフィルム)によって、光透過性や耐熱性に優れ、しかも高温での線膨張係数が十分に低いポリイミドフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
 本発明のポリイミドフィルムは、下記一般式(1)及び(2):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000009
[式(1)及び(2)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、Rは炭素数6~40のアリール基を示し、nは0~12の整数を示す。]
で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、
 前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であり、
 350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、
 窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で50℃~400℃の温度範囲において長さの変化を測定して求められる平均線膨張係数が15ppm/℃以下である、
ポリイミドからなるフィルムである。
 上記本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記ポリイミドの350℃の線膨張係数が1~10ppm/℃(より好ましくは5~10ppm/℃)であることが好ましい。
 また、上記本発明のポリイミドフィルムにおいては、前記一般式(1)及び(2)中のRが、下記一般式(3)~(6):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000010
[式(5)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基及びトリフルオロメチル基よりなる群から選択される1種を示し、式(6)中、Qは、式:-O-、-S-、-CO-、-CONH-、-C-、-COO-、-SO-、-C(CF-、-C(CH-、-CH-、-O-C-C(CH-C-O-、-O-C-SO-C-O-、-C(CH-C-C(CH-、-O-C-C-O-及び-O-C-O-で表される基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される基のうちの1種であることが好ましい。
 また、本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、下記一般式(7):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000011
[式(7)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0~12の整数を示す。]
で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び下記一般式(8):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000012
[式(8)中、R、R、R、nは前記一般式(7)中のR、R、R、nと同義である。]
で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)のうちの少なくとも1種を含有し、且つ、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B)の総量が90モル%以上である脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーと、
 下記一般式(9):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000013
[式(9)中、Rは炭素数6~40のアリール基を示す。]
で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られる、下記一般式(10)及び(11):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000014
[式(10)及び(11)中、R、R、R、nは前記一般式(7)中のR、R、R、nと同義であり、Rは前記一般式(9)中のRと同義である。]
で表される繰り返し単位を少なくとも1種含有し且つ前記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位の総量が90モル%以上のポリアミド酸を含有するポリアミド酸溶液を用いて、下記一般式(1)及び(2):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000015
[式(1)及び(2)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、Rは炭素数6~40のアリール基を示し、nは0~12の整数を示す。]
で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、かつ、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリイミドからなる第一のフィルムを得る工程と、
 前記第一のフィルムを、不活性ガス雰囲気下において、370~450℃の雰囲気温度で、延伸倍率が1.0001~1.050倍となるようにして延伸することにより第二のフィルムを形成して、ポリイミドフィルムを得る工程と、
を含む、方法である。
 また、上記本発明のポリイミドフィルムの製造方法においては、前記第一のフィルムを延伸する際に、前記延伸倍率が1.0005(より好ましくは1.0010)~1.030倍となるようにして延伸することが好ましい。
 さらに、上記本発明のポリイミドフィルムの製造方法においては、前記ポリイミドフィルムが、350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で50℃~400℃の温度範囲において長さの変化を測定して求められる平均線膨張係数が15ppm/℃以下である、ポリイミドからなることが好ましい。
 本発明のフレキシブル配線基板、本発明の透明電極用基板、本発明の液晶配向膜積層用基板、本発明の有機ELディスプレイ用基板、及び、本発明の有機EL照明用基板は、それぞれ、上記本発明のポリイミドフィルムからなるものである。また、上記本発明の透明電極用基板は、表示装置及び太陽電池のうちのいずれかの透明電極を積層するために用いること(表示装置用の透明電極基板、及び、太陽電池用の透明電極基板のうちのいずれかであること)が好ましい。なお、このような表示装置としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELディスプレイ)、液晶表示装置、電子ペーパー等が挙げられる。また、本発明の有機ELディスプレイ用基板は、有機ELディスプレイに用いる透明電極を積層するための基板や有機ELディスプレイに用いるバリア基板、薄膜トランジスタ基板、封止層基板、負極基板、有機半導体基板、正極基板、直流駆動回路基板、ハードコート基板、フロントフィルム基板、バックフィルム基板として利用するものが挙げられる。
 なお、本発明のポリイミドフィルムが、高温において十分に低い線膨張係数を有するものとなる理由は必ずしも定かではないが、その理由を従来技術と対比しながら簡単に説明する。すなわち、上記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位を総量で90モル%以上含有する従来のポリイミドフィルム(特許文献3に記載のようなポリイミドフィルム)は、通常、ポリマーの主鎖が、いわゆる平面ジグザク構造となり、高次構造が形成されるものと推察される(分子軌道計算により求められる平面ジグザグ構造を図1及び図2に示す。なお、このような分子軌道計算は、FUJITSU FMV-B8200型パソコンを用いて、Chem Bio3D Ultra10に装備されているMOPACソフトを用いて行ったものである。)。そして、このような高次構造を有する場合、ポリイミドは面内において配向し、フィルム面内方向(XY方向:フィルムに垂直な方向をZ方向とし、該Z方向に垂直な一つの方向をX方向とし、Z方向及びX方向と垂直な方向をY方向とした場合の方向をいう。)の線膨張係数が低くなる。
 しかしながら、このような一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位を含有する特許文献3に記載のポリイミドからなるフィルムにおいても、高温(例えば350℃以上の温度)での線膨張係数の増大の抑制という点では必ずしも十分ではなかった。そこで、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、高温(例えば350℃以上の温度)での線膨張係数の増大をより高度な水準で抑制することが可能となるようなポリイミドからなるフィルムが、一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位を含有するポリイミドからなる第一のフィルム(フィルム状物:本発明のポリイミドフィルムの前駆体)を形成した後、不活性ガス雰囲気下において、370~450℃の雰囲気温度で、延伸倍率が1.0001~1.050倍となるようにして前記第一のフィルムを延伸して第二のフィルム(ポリイミドフィルム)を形成する方法により好適に製造することが可能となることを見出した。
 このような方法によれば、驚くべきことに、350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で50℃~400℃の温度範囲において長さの変化を測定して求められる平均線膨張係数(以下、場合により、単に「50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数」と称する。)が15ppm/℃以下となるような、高温での線膨張係数が十分に低いポリイミドフィルム(第二のフィルム)を好適に製造することが可能となる。なお、このような延伸後に得られる第二のフィルムである、前記ポリイミドフィルムによって、高温(好ましくは350℃以上の温度)での線膨張係数の増大を抑制することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、延伸により、その構造がさらに規則正しく配向し、フィルムの延伸方向における線膨張係数が更に高度な水準で低いものとなるためであると本発明者らは推察する。なお、一般に、脂環式のポリイミドは、環状構造に由来する剛直な構造により、単に延伸した場合にはフィルムにクラックが生じる等といった問題が生じると考えられていたが、本発明者らは、上記温度雰囲気下において、延伸倍率が1.0001~1.050倍となるように制御しながら延伸することで、着色やクラックを生じることなく延伸することが可能となること、及び、そのような延伸により、高温で線膨張係数が増加することを十分に抑制することが可能となることを見出している。このように、延伸等の手段により、平面ジグザク構造からなる高次構造が、さらに高度に配向した平面ジグザク構造になることにより、ポリイミドフィルムが、350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で50℃~400℃の温度範囲において長さの変化を測定して求められる平均線膨張係数が15ppm/℃以下となるような高温での線膨張係数が十分に低いポリイミドからなるフィルムとなるものと本発明者らは推察する。
 本発明によれば、光透過性や耐熱性に優れ、しかも高温での線膨張係数が十分に低いポリイミドフィルム及びその製造方法を提供することが可能となる。更に、本発明によれば、前記ポリイミドフィルムからなる、フレキシブル配線基板、透明電極用基板、液晶配向膜積層用基板、有機ELディスプレイ用基板及び有機EL照明用基板を提供することが可能となる。
特許文献3に記載の従来のポリイミドフィルムを、フィルムに対して垂直な方向から見た場合におけるポリイミドの主鎖構造を理論的に計算して得られた模式図である。 特許文献3に記載の従来のポリイミドフィルムを横方向から見た場合におけるポリイミドの主鎖構造を理論的に計算して得られた模式図である。 実施例1で得られたポリイミドフィルムを構成する化合物のIRスペクトルのグラフである。 実施例1で得られたポリイミドフィルムを構成するポリイミドの線膨張係数の測定時に求められたフィルムの長さの変化と、温度との関係を示すグラフである。 比較例1で得られたポリイミドフィルムを構成するポリイミドの線膨張係数の測定時に求められたフィルムの長さの変化と、温度との関係を示すグラフである。
 以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
 先ず、本発明のポリイミドについて説明する。本発明のポリイミドフィルムは、下記一般式(1)及び(2):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000016
[式(1)及び(2)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、Rは炭素数6~40のアリール基を示し、nは0~12の整数を示す。]
で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、
 前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であり、
 350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、
 窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で50℃~400℃の温度範囲において長さの変化を測定して求められる平均線膨張係数が15ppm/℃以下である、
ポリイミドからなるフィルムである。
 このような一般式(1)及び(2)中のR、R、Rとして選択され得るアルキル基は、炭素数が1~10のアルキル基である。このような炭素数が10を超えると、ガラス転移温度が低下し、得られるポリイミドからなるフィルムの耐熱性が不十分なものとなる。また、このようなR、R、Rとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1~6であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~3であることが特に好ましい。また、このようなR、R、Rとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。更に、このようなアルキル基としては精製の容易さの観点から、メチル基、エチル基がより好ましい。
 前記一般式(1)及び(2)中のR、R、Rとしては、より高度な耐熱性が得られるという観点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましく、中でも、原料の入手が容易であることや精製がより容易であるという観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のR、R、Rは精製の容易さ等の観点から、同一のものであることが特に好ましい。
 また、前記一般式(1)及び(2)中のRとして選択され得るアリール基は、炭素数が6~40のアリール基である。また、このような炭素数としては6~30であることが好ましく、12~20であることがより好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると、ガラス転移温度が低下して十分な耐熱性が得られなくなる傾向にあり、他方、前記下限未満では、得られたポリイミドの溶媒に対する溶解性が低下して、フィルム等への成形性が低下する傾向にある。
 また、前記一般式(1)及び(2)中のRとしては、十分に高いガラス転移温度と、十分に低い、高温における線膨張係数とを有し、これらの特性をよりバランスよく発揮することが可能となるという観点から、下記一般式(3)~(6):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000017
[式(5)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基及びトリフルオロメチル基よりなる群から選択される1種を示し、式(6)中、Qは、式:-O-、-S-、-CO-、-CONH-、-C-、-COO-、-SO-、-C(CF-、-C(CH-、-CH-、-O-C-C(CH-C-O-、-O-C-SO-C-O-、-C(CH-C-C(CH-、-O-C-C-O-及び-O-C-O-で表される基よりなる群から選択される1種を示す。]
で表される基のうちの1種であることが好ましい。
 このような一般式(5)中のRとしては、ガラス転移温度と線膨張係数とを、よりバランスよく、より高水準なものとすることが可能となるという観点から、水素原子、フッ素原子、メチル基又はエチル基がより好ましく、水素原子が特に好ましい。
 また、上記一般式(6)中のQとしては、ガラス転移温度と線膨張係数とをバランスよく、より高水準なものとするという観点から、式:-O-、-S-、-CONH-、-COO-、-CO-、-C-、-CH-、-O-C-O-、-O-C-C-O-で表される基であることが好ましく、式:-O-、-CONH-、-COO-、-CH-で表される基であることがより好ましく、式:-O-又は-CONH-で表される基であることが特に好ましい。
 また、このようなRとして選択され得る一般式(3)~(6)で表される基としては、ガラス転移温度を十分に高い温度とすることができるとともに、線膨張係数をより十分に低い値とすることができ、これらの特性のバランスが向上し、より高度な耐熱衝撃性(周囲の高温の温度変化に対して品質を十分に維持できるような耐性であり、例えば、350℃以上程度の高温条件下で無機層を積層する工程を採用する必要がある場合等に、かかる温度条件下においても、はがれや割れが生じることを十分に抑制できるような耐性)が得られるという観点からは、一般式(5)又は(6)で表される基であることがより好ましい。中でも、高温での線膨張係数をより十分に低いものとすることができるという観点からは、Rが、一般式(5)で表される基、又は、一般式(6)で表され且つ前記Qが-CONH-、-COO-、-CO-、-C-で表される基(より好ましくは-CONH-又は-COO-で表される基、特に好ましくは-CONH-で表される基)のうちの少なくとも1種である基であることが好ましい。更に、Rとしては、得られるポリイミドを用いてフィルムを形成した場合に、そのフィルムにより高度なフレキシブル性(柔軟性)を付与することができるという観点からは、一般式(3)で表される基、又は、一般式(6)で表され且つ前記Qが-O-、-S-、-CH-、-O-C-O-、-O-C-C-O-で表される基のうちの少なくとも1種(より好ましくは-O-、-CH-で表される基のうちの1種、更に好ましくは-O-で表される基)である基であることが好ましい。
 また、前記一般式(1)及び(2)中のnは0~12の整数を示す。このようなnの値が前記上限を超えると、精製が困難になる。また、このような一般式(1)及び(2)中のnの数値範囲の上限値は、より精製が容易となるといった観点から、5であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。また、このような一般式(1)及び(2)中のnの数値範囲の下限値は、ポリイミドの製造に用いるモノマー(例えば、後述の脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B)を含む脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー)の原料の安定性の観点から、1であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。このように、一般式(1)及び(2)中のnとしては、2~3の整数であることが特に好ましい。
 さらに、このようなポリイミドとしては、十分に高いガラス転移温度と、高温(好ましくは350℃)での十分に低い線膨張係数と、フィルムを形成した場合におけるフィルムの十分なフレキシブル性(柔軟性)とを高度な水準で、よりバランスよく発揮させるという観点から、ポリイミド中に、Rの種類が異なる前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも2種の繰り返し単位を含有させることが好ましい。この場合、例えば、前記Rの種類の異なる繰り返し単位を含有するポリイミドとしては、Rが、前記一般式(5)で表される基;及び前記Qが-CONH-、-COO-、-CO-、-C-で表される基のうちの1種(より好ましくは、-CONH-、-COO-で表される基、特に好ましくは-CONH-で表される基)である前記一般式(6)で表される基;からなる群から選択される1種の基である一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位のちの少なくとも1種からなる繰り返し単位(A)と、Rが、前記一般式(3)で表される基;及び前記Qが-O-、-S-、-CH-、-O-C-O-、-O-C-C-O-で表される基のうちの1種(より好ましくは-O-、-CH-で表される基のうちの1種、更に好ましくは-O-で表される基)である前記一般式(6)で表される基;からなる群から選択される1種の基である一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種からなる繰り返し単位(B)と、を含有するものとしてもよい。なお、このような繰り返し単位(B)としては、製造時のモノマーの入手の容易性の観点からは、前記Rが前記一般式(6)で表される基であり且つ前記式(6)中のQが-O-、-CH-、-O-C-O-、-O-C-C-O-で表される基のうちの1種(より好ましくは-O-、-CH-、-O-C-C-O-で表される基のうちの1種、更に好ましくは-O-、-O-C-C-O-で表される基)であるものがより好ましい。
 本発明にかかるポリイミドは、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるものである。このような含有比率が前記下限未満では、高温での十分に高度な線膨張係数(高温にて、より低い線膨張係数)を達成することができなくなる。このような前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の含有比率(総量)としては、全繰り返し単位に対して95~100モル%であることがより好ましく、98~100モル%であることが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。なお、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位以外の他の繰り返し単位としては特に制限されず、用途等に応じて公知のモノマーに由来する他の繰り返し単位を適宜選択して利用することができる。
 また、本発明にかかるポリイミドにおいては、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有していればよいが、双方とも含有する場合においては、前記一般式(1)で表される繰り返し単位と前記一般式(2)で表される繰り返し単位との比率が、モル比([式(1)]:[式(2)])で1:2~2:1であることが好ましく、1:1.85~1.85:1であることがより好ましく、1:1.7~1.7:1であることが更に好ましい。このような一般式(1)で表される繰り返し単位の含有比率が前記下限未満ではフィルムが脆くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えてもフィルムが脆くなる傾向にある。
 また、本発明にかかるポリイミドにおいて、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位として、前記繰り返し単位(A)及び(B)を含有する場合には、これらの繰り返し単位を組み合わせることにより達成される効果をより十分に得るという観点から、前記繰り返し単位(A)及び(B)の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であることが好ましく、95~100モル%であることがより好ましく、98~100モル%であることが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。また、このような繰り返し単位(A)及び(B)を含有する場合には、繰り返し単位(A)と繰り返し単位(B)との含有比率がモル比((A):(B))で9:1~6:4(より好ましくは8:2~7:3)であることが好ましい。なお、繰り返し単位(A)及び(B)を含有する場合には、より効率よくポリイミドを調製できるという観点から、前記一般式(1)及び(2)中のR以外の置換基の構成は同じであることが好ましい。
 また、本発明にかかるポリイミドは、350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下である。このような線膨張係数が前記上限を超えると、高温においてフィルムに割れ等が生じて品質の劣化を十分に抑制することが困難となる傾向にある。例えば、線膨張係数が前記上限を超えたポリイミドからなるフィルムにおいては、そのフィルムを太陽電池や液晶表示装置の製造に用いた場合、その製造過程において高温(例えば350℃以上の高温)に晒されてフィルムに割れ等が生じる場合があり、製品の歩留まりの低下を抑制するといった点で必ずしも十分なものとは言えない。一方、上記本発明に記載のように、350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下である場合には、太陽電池や液晶表示装置の製造過程において、フィルムの割れ等を、より高度な水準で防止できることから、これにより最終的な製品の歩留まりを向上させることも可能となる。
 また、このような350℃の線膨張係数としては、用途に応じて異なるものではあるが、1~10ppm/℃であることが好ましく、5~10ppm/℃であることがより好ましく、4~8ppm/℃であることが更に好ましい。このような350℃の線膨張係数が、上述のような好適な数値範囲内にある場合には、高温におけるフィルムの品質の劣化の抑制といった点でより高い効果が得られる傾向にある。また、このような線膨張係数が前記下限未満では製品に割れ、カール、歪み、剥がれ、剥離、ゆがみが入る傾向にある。なお、ここにいう「350℃の線膨張係数」は、349℃~351℃の温度範囲におけるポリイミドの線膨張係数の平均値をいう。
 また、本発明にかかるポリイミドは、50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数が15ppm/℃以下のものである。このような50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数が前記上限を超えると、高温においてフィルムに割れ等が生じて品質の劣化を十分に抑制することが困難となる。このような50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数としては、用途に応じて異なるものではあるが、1~13ppm/℃であることが好ましく、4~10ppm/℃であることがより好ましい。このような平均線膨張係数が前述の好適な数値範囲内にある場合には、高温におけるフィルムの品質の劣化の抑制といった点でより高い効果が得られる傾向にある。また、このような平均線膨張係数が前記下限未満では製品に割れ、カール、歪み、剥がれ、剥離、ゆがみが入る傾向にある。
 また、本発明にかかるポリイミドにおいては、50℃~200℃の温度範囲における平均線膨張係数が15ppm/℃以下のものであることが好ましく、1~12ppm/℃であることが好ましく、4~10ppm/℃であることがより好ましい。このような50℃~200℃の温度範囲における平均線膨張係数が前記上限を超えると製品に割れ、カール、歪み、剥がれ、剥離、ゆがみが入る傾向にあり、他方、前記下限未満では製品に割れ、カール、歪み、剥がれ、剥離、ゆがみが入る傾向にある。
 また、本発明において、前記ポリイミドの線膨張係数(350℃の線膨張係数、50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数、50℃~200℃の温度範囲における平均線膨張係数等を含む。)の測定方法としては、以下に記載のような方法を採用する。
 すなわち、先ず、縦20mm、横5mm、厚み0.013mm(13μm)の大きさのポリイミドからなるフィルム(試料前駆体)を形成した後、そのフィルムを真空乾燥(120℃で1時間)し、窒素雰囲気下において200℃で1時間熱処理して、測定用の試料を形成する。次に、このような測定用の試料を用い、かつ、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用し、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、50℃~400℃の温度範囲において前記試料の縦方向の長さの変化を連続的に測定する(50℃~400℃における前記試料の縦方向の長さの変化のデータの測定)。なお、前記試料前駆体が延伸工程(一軸延伸工程)を採用して形成されたものである場合には、延伸方向を、そのフィルム(前記試料前駆体)の縦方向とする。
 このような測定の後、50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数を求める際には、50℃~400℃における前記試料の縦方向の長さの変化のデータに基づいて、50℃~400℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求める方法を採用し、かかる方法により得られた平均値を50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数として採用する(50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数の測定方法)。
 また、上述のような測定の後、50℃~200℃の温度範囲における平均線膨張係数を求める際には、上述のようにして得られる50℃~400℃の温度範囲における前記試料の縦方向の長さの変化のデータから、50℃~200℃における前記試料の縦方向の長さの変化のデータを利用して、50℃~200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を求める方法を採用し、かかる方法により得られた平均値を50℃~200℃の温度範囲における平均線膨張係数として採用する(50℃~200℃の温度範囲における平均線膨張係数の測定方法)。
 さらに、上述のような測定の後、前述の350℃の線膨張係数数を求める際には、上述のようにして得られる50℃~400℃の温度範囲における前記試料の縦方向の長さの変化のデータから、349℃~351℃の温度範囲における前記試料の縦方向の長さの変化のデータを利用して、349℃~351℃の温度範囲における1℃あたりの前記試料の縦方向の長さの変化の平均値を求める方法を採用し、かかる方法により得られた平均値を350℃の線膨張係数数として採用する(350℃の線膨張係数数の測定方法)。
 また、本発明にかかるポリイミドにおいては、ガラス転移温度が350℃以上(より好ましくは350℃~500℃)であることが好ましく、360℃~500℃であることが更に好ましく、370~450℃とすることが特に好ましい。このようなガラス転移温度が前記下限未満では、耐熱性が低下し、例えば、太陽電池や液晶表示装置の透明電極用の基板としてポリイミドフィルムを用いた場合において、その製品の製造過程における加熱工程において、かかるフィルム(基板)の品質の劣化(割れの発生等)を十分に抑制することが困難となる傾向にある。
 なお、前記ガラス転移温度は耐熱性の観点からは、より高い温度であることが好ましい。また、前記ガラス転移温度の上限値である500℃は、後述の測定法を採用した場合のガラス転移温度の測定上限付近の温度である。このように、後述の測定法を採用した場合のガラス転移温度の測定上限が500℃程度であることから、ガラス転移温度が500℃まで測定されないようなポリイミドに対しては、例えば、軟化温度の上限値を指標として好適なものを判断してもよい。すなわち、本発明にかかるポリイミドとしては、ガラス転移温度とは関係なく、軟化温度が後述の温度範囲にあるものを好適に利用できるが、例えば、ガラス転移温度が500℃を超える温度となって測定できない場合には、軟化温度の上限値を好適なポリイミドの指標として利用して、その特性を評価してもよく、この場合には、軟化温度が後述の数値範囲の上限を超えないものであることが好ましい。また、ガラス転移温度が500℃まで測定されず、かつ、軟化温度が後述の軟化温度の上限を超えるようなポリイミドは、ポリイミドを製造する際にポリアミド酸の熱閉環縮合反応と同時に十分な固相重合反応が進行せず、フィルムを形成した場合に却って脆いフィルムになる傾向がある。
 このようなポリイミドのガラス転移温度は、測定装置として示差走査熱量計(例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「DSC7020」)を使用し、昇温速度:10℃/分及び降温速度:30℃/分の条件で、窒素雰囲気下、30℃から450℃の間を走査することにより求められる値を採用することができる。なお、走査温度30℃から450℃の間にガラス転移温度を有さないポリイミドについては、前述の走査温度を30℃から500℃に変更してガラス転移温度を測定する。
 また、このようなポリイミドとしては、5%重量減少温度が450℃以上のものが好ましく、460~550℃のものがより好ましい。このような5%重量減少温度が前記下限未満ではフィルムを形成した場合に十分な耐熱性(耐熱衝撃性を含む。)が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、そのような特性を有するポリイミドを製造することが困難となる傾向にある。なお、このような5%重量減少温度は、窒素ガス雰囲気下、窒素ガスを流しながら室温(25℃)から徐々に加熱して、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めることができる。
 また、このようなポリイミドとしては、軟化温度が350~550℃のものが好ましく、360~500℃のものがより好ましい。このような軟化温度が前記下限未満では耐熱性が低下し、例えば、太陽電池や液晶表示装置の透明電極用の基板としてポリイミドフィルムを用いた場合において、その製品の製造過程における加熱工程において、かかるフィルム(基板)の品質の劣化(割れの発生等)を十分に抑制することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリイミドを製造する際にポリアミド酸の熱閉環縮合反応と同時に十分な固相重合反応が進行せず、フィルムを形成した場合に却って脆いフィルムとなる傾向にある。なお、このようなポリイミドの軟化温度は以下のようにして測定することができる。すなわち、測定試料として縦5mm、横5mm、厚み0.013mm(13μm)の大きさのポリイミドからなるフィルムを準備し、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件を採用して、30℃~550℃の温度範囲の条件でフィルムに透明石英製ピン(先端の直径:0.5mm)を針入れすることにより測定することができる(いわゆるペネトレーション(針入れ)法により測定できる)。なお、このような測定に際しては、JIS K 7196(1991年)に記載の方法に準拠して、測定データに基づいて軟化温度を計算する。
 さらに、このようなポリイミドの分子量に関しては、熱イミド化後の膜が汎用の有機溶媒に溶けにくくなる場合もあるので、その分子量の評価は前駆体であるポリアミド酸の固有粘度[η]を用いて測定を行なうことができる。そのような前駆体であるポリアミド酸の固有粘度[η]としては、0.1~8.0dL/gであることが好ましく、0.1~6.0dL/gであることがより好ましく、0.1~3.0dL/gであることが更に好ましく、0.4~2.0dL/gであることが特に好ましい。このような固有粘度が前記下限未満では、十分な耐熱性を得ることが困難となるばかりか、高温での線膨張係数が増大する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、流延成膜(キャスト成膜)が困難となる傾向にある。このような固有粘度[η]は、以下のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミドを用い、そのN,N-ジメチルアセトアミド中に前記ポリアミド酸を濃度が0.5g/dLとなるようにして溶解している測定試料(溶液)を得る。次に、前記測定試料を用いて、30℃の温度条件下において動粘度計を用いて、前記測定試料の粘度を測定し、求められた値を固有粘度[η]として採用する。なお、このような動粘度計としては、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC-252」)を用いる。
 また、このようなポリイミドは、構成単位である酸二無水物やジアミンが、剛直かつ対称的な構造を有するとともに、分子間で相互作用が可能な極性基を有することが望ましい。例えば、環状構造、多環構造、スピロ構造、架橋環状、ヘテロ環状などの骨格を有し、さらにケトン、スルホン、アミド、イミド等の極性基を有するような構造を形成していることが好ましい。また、このようなポリイミドは、十分に配向が形成された構造であることが好ましい。これらの構造を有するものとすることにより、ポリイミドを、より十分に低い線膨張係数を有するものとすることが可能となる。このようなポリイミドの有するポリマー鎖の構造は、用いるモノマーの種類に基づいて、ポリイミドの分子軌道計算することにより求めることができる(例えば、FUJITSU FMV-B8200型パソコンを用いて、Chem Bio3D Ultra10に装備されているMOPACソフトを用いて、形成されるポリイミドをChem Bio3D Ultra10に描写し、MM2計算した後、AM1計算することにより、得られるポリマーの安定構造をシミュレーションすることにより求めることができる。)。なお、このようなポリマーの構造は、光干渉法を用いてポリイミド薄膜のZ方向の線膨張係数を測定して、線膨張係数と分子構造との関係を明らかにすることによって求めることもできる。
 さらに、このようなポリイミドからなるフィルムの具体的な形状(大きさや厚み)等は特に制限されず、そのフィルムの用途等に応じて適宜設計できる。このように、フィルムの厚みは特に制限されるものではないが、1~200μmであることが好ましく、1~100μmであることがより好ましい、5~50μmであることが更に好ましく、10~20μmであることが特に好ましい。このようなフィルムの厚みが前記下限未満では、各種用途に使用する場合に機械的な強度が低下して弱くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると成膜加工が困難となる傾向にある。
 また、このようなポリイミドからなるフィルムは、透明性が十分に高いものであることが好ましく、全光線透過率が80%以上(更に好ましくは85%以上、特に好ましくは87%以上)であるものがより好ましい。このような全光線透過率は、ポリイミドの種類等を適宜選択することにより容易に達成することができる。なお、このような全光線透過率としては、測定装置として、日本電色工業株式会社製の商品名「ヘーズメーターNDH-5000」を用いて測定した値を採用することができる。
 さらに、このようなポリイミドからなるフィルムは、屈折率が1.50~1.70であることが好ましく、1.55~1.65であることがより好ましい。このような屈折率が前記下限未満では、導電性薄膜との積層体を形成して透明用途に利用する場合等に、ポリイミドと導電性薄膜との屈折率差が大きくなり、全光線透過率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリイミドが着色していく傾向が見られるとともに、モノマー合成自体も困難となる傾向にある。なお、このような屈折率としては、屈折率測定装置(株式会社アタゴ製の商品名「NAR-1T SOLID」)を用い、589nmの光源下、23℃の温度条件で測定される値を採用することができる。
 このようなポリイミドからなるフィルムは、脂肪族系のテトラカルボン酸二無水物を用いて得られる脂肪族系のポリイミドからなるフィルムであるにも関わらず、無色透明であり、しかも耐熱性も十分に高く、従来公知の脂肪族系テトラカルボン酸二無水物から作られるポリイミドと比較して十分に高度なガラス転移温度(Tg)や軟化温度を有するものとすることもできる。また、このようなフィルムを形成するポリイミドは、溶媒への溶解性も十分に高度なものとすることもできる。更に、このようなポリイミドからなるフィルムは十分に低い線膨張係数を有するものである。
 このような本発明のポリイミドフィルム(ポリイミドからなるフィルム)は、フレキシブル配線基板、耐熱絶縁テープに用いるポリイミドフィルム、液晶配向膜用の基板(液晶配向膜積層用の基板)、プリンタブルエレクトロニクス用の基材に用いるポリイミドフィルム、透明電極用基板(例えばITOフィルム用の基板、太陽電池の透明電極用の基板、有機EL素子の透明電極用の基板、電子ペーパー用の基板等)、リチウムイオンバッテリー用のポリイミドフィルム(例えばセパレータに用いるフィルム)、タッチパネル用基板、有機ELディスプレイ用基板、有機EL照明用基板、水蒸気バリアフィルム基板、空気バリアフィルム基板、有機メモリ用基板、有機トランジスタ用基板、有機半導体用基板、複写機用ベルト等に有用である。
 次に、本発明のフレキシブル配線基板、本発明の透明電極用基板、本発明の液晶配向膜積層用基板、本発明の有機ELディスプレイ用基板、及び、本発明の有機EL照明用基板について説明する。
 本発明のフレキシブル配線基板、本発明の透明電極用基板、本発明の液晶配向膜積層用基板、本発明の有機ELディスプレイ用基板、及び、本発明の有機EL照明用基板は、それぞれ上記本発明のポリイミドフィルムからなるものである。このようなフレキシブル配線基板としては、上記本発明のポリイミドフィルムを基板として利用すればよく、他の構成は特に制限されるものではない。
 また、前記透明電極用基板としては、上記本発明のポリイミドフィルムを、かかる基板として利用すればよく、他の構成は特に制限されるものではない。このような透明電極用基板としては、表示装置及び太陽電池のうちのいずれかの透明電極を積層するために用いるものであること(表示装置用の透明電極基板、及び、太陽電池用の透明電極基板のうちのいずれかであること)が好ましい。なお、このような表示装置としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELディスプレイ)、液晶表示装置、電子ペーパー等が挙げられる。なお、本発明においては、上記本発明のポリイミドフィルムを用いていることから、透明電極を積層する際に高温(例えば350℃以上の温度)の温度条件を採用しても、ポリイミドフィルム(基板)が破損等することなく、最終製品の歩留まりを十分に向上させることが可能となる。
 また、前記液晶配向膜積層用基板は、液晶配向膜を積層するための基板である。本発明においては、ガラス基板等の代替品として、上記本発明のポリイミドフィルムからなる基板を液晶配向膜を積層するための基板として利用するため、ガラス基板等と比較して、十分にフレキシブルな液晶配向膜積層体を製造し得る。また、前記液晶配向膜積層用基板としては、上記本発明のポリイミドフィルムを、かかる基板として利用すればよく、他の構成は特に制限されるものではない。
 さらに、本発明の有機ELディスプレイ用基板(有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ用基板)は、有機ELディスプレイに用いる基板であればよく、特に制限されず、例えば、透明電極を積層するための基板や有機ELディスプレイに用いるバリア基板、薄膜トランジスタ基板、封止層基板、負極基板、有機半導体基板、正極基板、直流駆動回路基板、ハードコート基板、フロントフィルム基板、バックフィルム基板として利用するものであってもよい。また、前記有機ELディスプレイ用基板としては、上記本発明のポリイミドフィルムを、かかる基板として利用すればよく、他の構成は特に制限されるものではない。このような基板として上記本発明のポリイミドフィルムからなる基板を利用することで、ガラス基板等と比較して、十分にフレキシブルな製品を製造し得る。
 また、本発明の有機EL照明用基板は、有機EL照明(例えば有機EL照明パネル)に用いる基板であればよく、例えば、有機EL照明の透明電極を積層するための基板や陽極基板、有機正孔輸送層基板、有機発光層基板、有機電子輸送層基板、陰極基板、注入層基板、バリア層基板として利用するものであってもよい。また、前記有機EL照明用基板としては、上記本発明のポリイミドフィルムを、かかる基板として利用すればよく、他の構成は特に制限されるものではない。このような基板として上記本発明のポリイミドフィルムからなる基板を利用することで、ガラス基板等と比較して、十分にフレキシブルな製品を製造し得る。
 次に、本発明のポリイミドフィルムの製造方法について説明する。本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、下記一般式(7):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000018
[式(7)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0~12の整数を示す。]
で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び下記一般式(8):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000019
[式(8)中、R、R、R、nは前記一般式(7)中のR、R、R、nと同義である。]
で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)のうちの少なくとも1種を含有し、且つ、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B)の総量が90モル%以上である脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーと、
 下記一般式(9):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000020
[式(9)中、Rは炭素数6~40のアリール基を示す。]
で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られる、下記一般式(10)及び(11):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000021
[式(10)及び(11)中、R、R、R、nは前記一般式(7)中のR、R、R、nと同義であり、Rは前記一般式(9)中のRと同義である。]
で表される繰り返し単位を少なくとも1種含有し且つ前記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位の総量が90モル%以上のポリアミド酸を含有するポリアミド酸溶液を用いて、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、かつ、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリイミドからなる第一のフィルムを得る工程(I)と、
 前記第一のフィルムを、不活性ガス雰囲気下において、370~450℃の雰囲気温度で、延伸倍率が1.0001~1.050倍となるようにして延伸することにより第二のフィルムを形成して、ポリイミドフィルムを得る工程(II)と、
を含む、方法である。以下において、工程(I)~(II)を分けて説明する。
 (工程(I):第一のフィルムを得るための工程)
 先ず、工程(I)について説明する。工程(I)は、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)のうちの少なくとも1種を含有し、且つ、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B)の総量が90モル%以上である脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーと、前記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られる、上記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含有し且つ前記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位の総量が90モル%以上のポリアミド酸を含有するポリアミド酸溶液を用いて、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、かつ、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリイミドからなる第一のフィルムを得る工程である。
 先ず、このような工程(I)に用いるポリアミド酸溶液について説明する。このような工程(I)に用いるポリアミド酸溶液中に含有される前記ポリアミド酸は、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)のうちの少なくとも1種を含有し、且つ、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B)の総量が90モル%以上である脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーと、前記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られるものである。
 このような脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)は、上記一般式(7)で表されるトランス、エンド、エンド-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロアルカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物である。また、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)は、上記一般式(8)で表されるシス、エンド、エンド-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロアルカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物である。
 このような一般式(7)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)(トランス、エンド、エンド-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロアルカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物)は、上記本発明にかかるポリイミドを形成するための材料(モノマー)として利用することが可能な化合物であって、ポリイミド中において前記一般式(1)で表される繰り返し単位(トランス、エンド、エンド型の繰り返し単位)を形成させるために用いる化合物である。そのため、このような一般式(7)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)中のR、R、R、nは、上記一般式(1)中のR、R、R、nと同義である(好適なものも同一である。)。なお、このような一般式(7)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)は、2つのノルボルナン基がトランス配置し且つ該2つのノルボルナン基のそれぞれに対してシクロアルカノンのカルボニル基がエンドの立体配置となるノルボルナン-2-スピロ-α-シクロアルカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物の異性体である。
 また、上記一般式(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)(シス、エンド、エンド-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロアルカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物)は、上記本発明にかかるポリイミドを形成するための材料(モノマー)として利用することが可能な化合物であって、ポリイミド中において前記一般式(2)で表される繰り返し単位(シス、エンド、エンド型の繰り返し単位)を形成させるために用いる化合物である。そのため、このような一般式(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)中のR、R、R、nは、上記一般式(2)中のR、R、R、nと同義である(好適なものも同一である。)。なお、このような一般式(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)中のR、R、R、nは、上記一般式(7)中のR、R、R、nとも同義である(好適なものも同一である。)。このような一般式(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)は、2つのノルボルナン基がシス配置し且つ該2つのノルボルナン基のそれぞれに対してシクロアルカノンのカルボニル基がエンドの立体配置となるノルボルナン-2-スピロ-α-シクロアルカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物の異性体である。
 また、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーは、脂環式テトラカルボン酸二無水物からなるモノマーである(なお、脂環式のテトラカルボン酸二無水物以外の他の化合物は実質的に含まないものが好ましい)。このような脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーにおいて、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B)の総量(含有量)は、全脂環式テトラカルボン酸二無水物(全モノマー)に対して、90モル%以上である。このように、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーは、上記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B))の純度が90モル%以上の脂環式テトラカルボン酸二無水物からなるモノマーである。このような一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物の総量(含有比率)が前記下限未満の脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーを用いてポリイミドを製造した場合には、高温における十分に低い線膨張係数を得ることができなくなる。また、同様の観点から、上記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B))の総量(含有比率)としては、全脂環式テトラカルボン酸二無水物に対して、95モル%以上であることが好ましく、98~100モル%であることが好ましく、100モル%であることが特に好ましい。
 また、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーとしては、上記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B))の少なくとも1種を含有していればよいが、双方とも含有する場合、上記一般式(7)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び上記一般式(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)の含有比率は、モル比([式(7)]:[式(8)])で1:2~2:1であることが好ましく、1:1.85~1.85:1であることがより好ましく、1:1.7~1.7:1であることが更に好ましい。このようなモル比が前記下限未満では得られるポリイミドフィルムが脆くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えても得られるポリイミドフィルムが脆くなる傾向にある。
 なお、このような脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー中の上記一般式(7)及び上記一般式(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物の総量(含有量)や、上記モル比([式(7)]:[式(8)])は、例えば、HPLC測定により求められるスペクトルのグラフに基づいて、各異性体に基づくピークの面積比を求め、検量線を用いて算出することにより求めることができる。
 なお、このようなHPLC測定は、測定装置としてアジレントテクノロジー株式会社製の商品名「1200 Series」を用い、カラムはアジレントテクノロジー株式会社製の商品名「Eclipse XDB-C18(5μm、直径4.6mm、長さ150mm)」を用い、溶媒としてアセトニトリルと蒸留水との混合物(アセトニトリル/蒸留水=70ml/30ml)を用い、溶媒の流速を1ml/min.とし、ダイオードアレイ検出器(DAD)の検出波長を210nmに設定し、温度を35℃とし、脂環式テトラカルボン酸二無水物を溶媒1.5mlに対して1mg添加した試料を調製することにより行うことができる。また、前記検量線は、標準試料としてジシクロペンタジエンやナフタレンなどを利用して同様の測定条件でHPLCのスペクトルを求めることにより得ることができる。また、HPLCスペクトルのグラフにおいて、各異性体に基づくピークの面積比は上記測定装置により直接求めることができる。
 また、このような脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーにおいては、上記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B))の総量(含有量)が90モル%以上であればよく、他の脂環式テトラカルボン酸二無水物も含有し得る。このような一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B))以外の他の脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロアルカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物の他の異性体(上記一般式(7)及び(8)で表される異性体以外の異性体)、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボルナン-2-酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]-フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]-フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]-フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,1]-ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、デカハイドロジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。なお、本発明の効果を損なわない限りにおいては、ポリイミドの製造に際して、脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー中に脂環式テトラカルボン酸二無水物以外の他のモノマーを含有させてもよい。
 また、このような脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーを製造するための方法は、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、国際公開第2014/034760号に記載の方法を採用してもよい。また、このような脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーを製造するための好適な方法としては、例えば、公知の方法(国際公開第2014/034760号に記載の方法、国際公開第2011/099517号に記載の方法、国際公開第2011/099518号に記載の方法等)等により下記一般式(12):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000022
[式(12)中、R、R、R、nは前記一般式(1)中のR、R、R、nと同義である。]
で表される5-ノルボルネン-2-スピロ-α-シクロアルカノン-α’-スピロ-2’’-5’’-ノルボルネン類(以下、単に「一般式(12)で表される化合物」という。)を準備し、次いで、前記一般式(12)で表される化合物をテトラカルボン酸二無水物化して、下記一般式(13):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000023
[式(13)中、R、R、R、nは前記一般式(1)中のR、R、R、nと同義である。]
で表されるテトラカルボン酸二無水物(前記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物を含む6種の立体異性体(シス-エンド-エンド異性体、シス-エキソ-エンド異性体、シス-エキソ-エキソ異性体、トランス-エンド-エンド異性体、トランス-エキソ-エンド異性体、トランス-エキソ-エキソ異性体))を得た後、かかる一般式(13)で表されるテトラカルボン酸二無水物から、純度が90モル%以上となるようにして前記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B))を分離して取り出すこと(選別すること)により脂環式テトラカルボン酸二無水物を得る方法、前記一般式(12)で表される化合物を準備し、前記一般式(12)で表される化合物からシス-エンド-エンド異性体及び/又はトランス-エンド-エンド異性体を純度が90モル%以上となるようにして分離して取り出し、これをテトラカルボン酸二無水物化して、前記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B))を総量で90モル%以上含有する脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーを得る方法、前記一般式(12)で表される化合物を準備し、前記一般式(12)で表される化合物をエステル化(次いで加水分解処理やカルボン酸とのエステル交換反応を施してカルボン酸としてもよい。)した後に、得られる化合物(エステル又はカルボン酸)からシス-エンド-エンド異性体及び/又はトランス-エンド-エンド異性体を純度が90モル%以上となるようにして分離して取り出し、これを酸二無水物化して前記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B))を総量で90モル%以上含有する脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーを得る方法等を適宜利用することができる。
 なお、前記一般式(12)で表される化合物をテトラカルボン酸二無水物化して上記一般式(13)で表されるテトラカルボン酸二無水物を得るための好適な方法としては、特に制限されず、前記一般式(12)で表される化合物をテトラカルボン酸化した後に、これらを二無水物化することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、1994年発行のMacromolecules(27巻)の1117頁に記載のような方法、国際公開第2014/034760号に記載の方法、国際公開第2011/099517号に記載の方法、国際公開第2011/099518号に記載の方法等を適宜利用することができる。また、前記一般式(13)で示される化合物から、前記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物を分離して取り出す方法、前記一般式(12)で表される化合物から該化合物のシス-エンド-エンド異性体及び/又はトランス-エンド-エンド異性体を分離して取り出す方法、前記一般式(12)で表される化合物をエステル化して得られる化合物(エステル又はカルボン酸)からシス-エンド-エンド異性体及び/又はトランス-エンド-エンド異性体を取り出す方法としては、特に制限されず、これらの化合物群の中から所望の異性体を分離することが可能な公知の方法を適宜利用することが可能であり、例えば、再結晶法(晶析法を含む)や吸着分離法を採用してもよい。このような再結晶法(晶析法を含む)や吸着分離法としても、例えば、国際公開第2014/034760号に記載の方法等を適宜採用してもよい。
 また、上記一般式(9)で表されるジアミン化合物に関して、一般式(9)中のRは、上記一般式(1)及び(2)中のRと同様のものであり、その好適なものも上記一般式(1)及び(2)中のRの好適なものと同様である。このような一般式(9)中のRは、目的とするポリイミドの構成に応じて適宜変更すればよい。
 このような一般式(14)で表される芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4''-ジアミノ-p-ターフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、p-ジアミノベンゼン(別名:p-フェニレンジアミン)、m-ジアミノベンゼン、o-ジアミノベンゼン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、2,6-ジアミノナフタレン、1,4-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチル-エチリデン)]ビスアニリン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(別名:o-トリジン)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-ジアミノフェニルベンゾエート(別名:4,4’-ジアミノジフェニルエステル)、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、o-トリジンスルホン、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、ジエチルトルエンジアミン、アミノベンジルアミン、1,4-ビス-N,N‘-(4’-アミノフェニル)テレフタルアミド、ビス(4-アミノフェノキシ)テレフタレート、ビスアニリンM、ビスアニリンP等が挙げられる。このような芳香族ジアミンを製造するための方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このような芳香族ジアミンとしては市販のものを適宜用いてもよい。
 また、得られるポリイミドの線膨張係数を前記数値の範囲内において、より低い値とすることが可能であるという観点から、一般式(9)で表される芳香族ジアミンのRが、一般式(5)又は(6)で表される基であることがより好ましく、中でも、一般式(5)で表される基、及び、一般式(6)で表され且つ前記Qが-CONH-、-COO-、-CO-、-C-で表される基のうちの少なくとも1種(より好ましくは、-CONH-、-COO-で表される基、特に好ましくは-CONH-で表される基)である基であることが好ましい。また、得られるポリイミドによりフィルムを形成した場合に、より高度なフレキシブル性も併せて付与するといった観点からは、一般式(9)で表される芳香族ジアミンのRが、前記一般式(3)で表される基;及び前記Qが-O-、-S-、-CH-、-O-C-O-で表される基のうちの1種である前記一般式(6)で表される基;からなる群から選択される1種の基であることが好ましい。また、入手容易性の観点からは、一般式(9)で表される芳香族ジアミンのRは、前記Qが-O-、-CH-、-O-C-O-、-O-C-C-O-で表される基のうちの1種(より好ましくは-O-、-CH-、-O-C-C-O-で表される基のうちの1種、更に好ましくは-O-で表される基)である前記一般式(6)で表される基であることが好ましい。
 さらに、前記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとしては、ポリイミドのガラス転移温度及び線膨張係数を前記好適な数値の範囲内とすることができ、且つ、ガラス転移温度と、線膨張係数と、フィルムを形成した場合のフレキシブル性とを、更に高度な水準でバランスよく発揮できるポリイミドをより確実に調製するという観点から、前記一般式(14)中のRの種類が異なる複数種(2種以上)の芳香族ジアミンを組み合わせて用いることが好ましい。また、同様の観点から、より高い効果が得られることから、前記Rの種類が異なる複数種(2種以上)の芳香族ジアミンとしては、前記一般式(14)中のRが前記一般式(5)で表される基;及び前記Qが-CONH-、-COO-、-CO-、-C-で表される基のうちの少なくとも1種(より好ましくは-CONH-、-COO-で表される基、特に好ましくは-CONH-で表される基)である前記一般式(6)で表される基;からなる群から選択される1種の基である芳香族ジアミンと、前記一般式(14)中のRが、前記一般式(3)で表される基;及び前記Qが-O-、-S-、-CH-、-O-C-O-、-O-C-C-O-で表される基のうちの1種(より好ましくは-O-、-CH-、-O-C-C-O-で表される基のうちの1種、更に好ましくは-O-で表される基)である前記一般式(6)で表される基;からなる群から選択される1種の基である芳香族ジアミンと、を少なくとも含有するものがより好ましい。
 また、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B)を含有しかつ前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B)の総量(含有量)が全脂環式テトラカルボン酸二無水物に対して90モル%以上である前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と、上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとを反応させる際には、有機溶剤を用いることが好ましい。すなわち、このようなポリアミド酸を得るための工程としては、有機溶媒の存在下、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)のうちの少なくとも1種を含有し、且つ、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B)の総量が90モル%以上である脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーと、前記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとを反応させて、上記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含有し且つ前記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位の総量が90モル%以上のポリアミド酸を形成せしめ、前記ポリアミド酸を含有するポリアミド酸溶液を得る工程が好ましい。このような有機溶媒としては、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と、上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとの両者を溶解することが可能な有機溶媒であることが好ましい。更に、このような有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルイミダゾール、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、ピリジンなどの非プロトン系極性溶媒;m-クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒;テトラハイドロフラン、ジオキサン、セロソルブ、グライムなどのエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、2-クロル-4-ヒドロキシトルエンなどの芳香族系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶剤;が挙げられる。このような有機溶媒は、1種を単独であるいは2種以上を混合して使用してもよい。
 また、上記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と、上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンと反応させる際において、上記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と、上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとの使用割合は、上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンが有するアミノ基1当量に対して、上記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)の酸無水物基を0.2~2当量とすることが好ましく、0.3~1.2当量とすることがより好ましい。このような使用割合が前記下限未満では重合反応が効率よく進行せず高分子量のポリアミド酸が得られない傾向にあり、他方、前記上限を超えると前記と同様に高分子量のポリアミド酸が得られない傾向にある。
 また、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとの反応において、これらの使用割合は、モル比([脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー]:[芳香族ジアミン])で0.5:1.0~1.0:0.5(より好ましくは0.9:1.0~1.0:0.9)であることが好ましい。このような脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)の使用量が前記下限未満では、ポリイミドの収量が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えても、ポリイミドの収量が低下する傾向にある。
 さらに、有機溶剤の存在下において反応させる場合において、前記有機溶媒の使用量としては、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンの総量が、反応溶液の全量に対して0.1~50質量%(より好ましくは10~30質量%)になるような量であることが好ましい。このような有機溶媒の使用量が前記下限未満では効率よくポリアミド酸を得ることができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると高粘度化により撹拌が困難となる傾向にある。
 また、有機溶剤の存在下において反応させる場合、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と、上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとを反応させる際に、反応速度向上と高重合度のポリアミド酸を得るという観点から、前記有機溶媒中に塩基化合物を更に添加してもよい。このような塩基性化合物としては特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、テトラブチルアミン、テトラヘキシルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデセン-7、ピリジン、イソキノリン、N-メチルピペリジン、α-ピコリン等が挙げられる。また、このような塩基化合物の使用量は、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)1当量に対して、0.001~10当量とすることが好ましく、0.01~0.1当量とすることがより好ましい。このような塩基化合物の使用量が前記下限未満では添加効果が見られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると着色等の原因になる傾向にある。
 また、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとを反応させる際の反応温度は、これらの化合物を反応させることが可能な温度に適宜調整すればよく、特に制限されないが、80℃以下とすることが好ましく、-30~30℃とすることが好ましい。また、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとを反応させるための方法としては、テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの重合反応を行うことが可能な方法を適宜利用でき、特に制限されないが、例えば、大気圧中、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性雰囲気下において、芳香族ジアミン類を溶媒に溶解させた後、前記反応温度において前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)を添加し、その後、10~48時間反応させる方法を採用してもよい。このような反応温度や反応時間が前記下限未満では十分に反応させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合物を劣化させる物質(酸素等)の混入確率が高まり分子量が低下する傾向にある。
 このようにして、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとを反応させることにより、上記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含有し且つ前記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位の総量が90モル%以上のポリアミド酸を得ることができる。
 なお、前記一般式(10)及び(11)中、R、R、R、nは、前記一般式(7)中のR、R、R、nと同義であり、Rは、前記一般式(9)中のRと同義である。すなわち、前記一般式(10)及び(11)中のR、R、R、R及びnは前記一般式(1)及び(2)中のR、R、R、R及びnと同様のものであり、その好適なものも上記一般式(1)及び(2)中のR、R、R、R及びnと同様である。
 また、このようなポリアミド酸は、前記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位の総量が90モル%以上のものである。このような繰り返し単位の総量は、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)中の上記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物の総量に由来するものであり、その総量の好適な範囲も上記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物の総量の好適な範囲と同様である。なお、このような前記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位の総量が90モル%未満では、本発明のポリイミドからなるフィルムを製造することができなくなる。
 また、このような工程(I)で用いられるポリアミド酸としては、固有粘度[η]が0.1~8.0dL/gであることが好ましく、0.1~6.0dL/gであることがより好ましく、0.1~3.0dL/gであることが更に好ましく、0.4~2.0dL/gであることが特に好ましい。このような固有粘度[η]が0.1dL/gより小さいと、これを用いてフィルム状のポリイミドを製造した際に、得られるフィルムが脆くなる傾向にあり、他方、8.0dL/gを超えると、粘度が高すぎて加工性が低下し、例えばフィルムを製造した場合に均一なフィルムを得ることが困難となる。また、このような固有粘度[η]は、以下のようにして測定することができる。すなわち、先ず、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミドを用い、そのN,N-ジメチルアセトアミド中に前記ポリアミド酸を濃度が0.5g/dLとなるようにして溶解している測定試料(溶液)を得る。次に、前記測定試料を用いて、30℃の温度条件下において動粘度計を用いて、前記測定試料の粘度を測定し、求められた値を固有粘度[η]として採用する。なお、このような動粘度計としては、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC-252」)を用いる。
 また、前記ポリアミド酸を含有する前記ポリアミド酸溶液は、前記ポリアミド酸と溶媒とからなるものである。このような溶媒としては特に制限されず、前記有機溶媒(ポリアミド酸を得るための工程に用いることが可能な有機溶媒)と同様のものを好適に利用できる。また、このようなポリアミド酸を含有するポリアミド酸溶液を調製するための方法は特に制限されるものではなく、例えば、前記反応によりポリアミド酸を得て、これを単離した後に、再度、溶媒(例えば、前記有機溶媒等)に溶解させることにより、前記ポリアミド酸溶液としてもよく、あるいは、有機溶媒中において前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとを反応させて前記ポリアミド酸を形成した後、前記ポリアミド酸を単離することなく、得られた反応液(上記ポリアミド酸を含有する反応液)をそのままポリアミド酸溶液としてもよい。なお、前記反応液から前記ポリアミド酸を単離して利用する場合、その単離方法としては特に制限されず、前記ポリアミド酸を単離することが可能な公知の方法を適宜採用することができ、例えば、再沈殿物として単離する方法などを採用してもよい。
 また、前記ポリアミド酸溶液中の前記ポリアミド酸の含有量は特に制限されないが、1~80質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましい。このようなポリアミド酸の含有量が前記下限未満では、得られるポリイミドの分子量が低下して得られるフィルムの物性(ガラス転移温度、5%重量減少温度、軟化温度、引張強度、破断伸度、弾性率、線膨張係数、透過率、ヘーズ、黄色度、位相差など)が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリイミドフィルムを製造することが困難となる傾向にある。
 なお、工程(I)により得られる第一のフィルムを形成するポリイミド中には、上記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を含有させてもよく、その場合には、他の繰り返し単位を、例えば、上記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー中に上記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物以外の他のテトラカルボン酸二無水物を導入することで形成してもよく、上記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーとともに他のモノマーを用いることで形成してもよく、また、上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとともに、他のジアミン化合物を用いる方法を採用して形成してもよく、更には、これらの方法を適宜組み合わせて採用して形成してもよい。
 このよう脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)に導入し得る上記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物以外の他の脂環式テトラカルボン酸二無水物や、上記本発明の脂環式テトラカルボン酸二無水物とともに利用し得る他のモノマーとしては、上記一般式(7)及び(8)で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物以外の上記一般式(13)で表される化合物(他の異性体)、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボルナン-2-酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]-フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]-フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]-フラン-1,3-ジオン、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物;ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。なお、芳香族テトラカルボン酸を使用する場合は、分子内CTによる着色を防止するため、その使用量は得られるポリイミドが十分な透明性を有することが可能となるような範囲内で適宜変更することが好ましい。
 また、前記芳香族系ジアミン以外の他のジアミン化合物としては特に制限されず、ポリイミド又はポリアミド酸の製造に用いることが可能な公知のジアミン化合物を適宜用いることができ、例えば、脂肪族系ジアミン、脂環式系ジアミン等を適宜用いることができる。このような脂肪族系ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ポリオキシアルキレンジアミン等が挙げられる。また、前記脂環式系ジアミンとしては、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、3,5-ジエチル-3’,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンジメタンアミン、ノルボルナンジアミン等が挙げられる。
 次に、このようなポリアミド酸溶液を用いて、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリイミドからなる第一のフィルムを得る工程について説明する。
 前記ポリアミド酸溶液を用いて第一のフィルムを得る工程としては、特に制限されるものではないが、前記ポリアミド酸溶液を基材上に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜中のポリアミド酸をイミド化して塗膜を硬化せしめることにより、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、かつ、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリイミドからなる第一のフィルムを得る工程(a)を採用することが好ましい。
 このような工程(a)に用いる基材としては特に制限されず、目的とするポリイミドからなるフィルムの形状等に応じて、フィルムの形成に用いることが可能な公知の材料からなる基材(例えば、ガラス板や金属板)を適宜用いることができる。
 また、工程(a)において、前記基材上に前記ポリアミド酸溶液等を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、滴下法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、インクジェット法等の公知の方法を適宜採用することができる。
 また、工程(a)において、前記基材上に形成される前記ポリアミド酸の塗膜の厚みとしては、乾燥後の塗膜の厚みが1~200μmとなるようにすることが好ましく、5~100μmとなるようにすることがより好ましい。このような厚みが前記下限未満では得られるフィルムの機械強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると成膜加工が困難となる傾向にある。
 また、工程(a)において、前記塗膜を形成した後には、場合により、前記塗膜から溶媒を除去する処理を施してもよい。このように、前記塗膜から溶媒を除去する処理(溶媒除去処理)を施す場合における温度条件としては、特に制限されないが、0~100℃であることが好ましく、20~80℃であることがより好ましい。このような溶媒除去処理における温度条件が前記下限未満では溶媒が蒸発しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると溶媒が沸騰し気泡やボイドを含むフィルムになる傾向にある。また、このような乾燥処理の方法における雰囲気としては、不活性ガス雰囲気(例えば窒素雰囲気)とすることが好ましい。また、より効率よく溶媒除去処理を行うという観点から、このような溶媒除去処理における圧力の条件としては、1~760mmHgであることが好ましい。このような溶媒除去処理により、前記ポリアミド酸をフィルム状などの形態として単離でき、その後に溶媒除去処理を施すこと等が可能となる。
 また、工程(a)において、前記塗膜中のポリアミド酸をイミド化する方法としては、ポリアミド酸をイミド化し得る方法であればよく、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、前記ポリアミド酸に対して加熱処理を施して脱水反応を行うことによりイミド化する方法や、いわゆる「イミド化剤」を用いてイミド化する方法を採用することが好ましい。
 このように、ポリアミド酸のイミド化の方法として加熱処理を施して脱水反応を行う方法(加熱処理を施すことによりイミド化する方法)を採用する場合においては、200~450℃(好ましくは250~440℃、より好ましくは300~430℃、更に好ましくは350~420℃、特に好ましくは360℃~410℃)の温度条件で加熱処理を施すことが好ましい。このような加熱処理を施して脱水反応を行うことによりイミド化する方法を採用する場合において、前記加熱温度が200℃未満ではポリアミド酸が脱水閉環し、ポリイミドになる反応よりも酸二無水物とアミンに分解する平衡反応が有利になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると着色したり、熱分解による分子量低下などが起きる傾向にある。
 また、工程(a)において、加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用する場合においては、工程(I)において前記ポリアミド酸を単離することなく、有機溶媒中において、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と、上記一般式(14)で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られた反応液(前記ポリアミド酸を含有する反応液)をそのままイミド化するための前記ポリアミド酸の溶液として用い、前記ポリアミド酸の溶液(反応液)に対して上述の溶媒除去処理を施して溶媒を除去した後、前記温度範囲において加熱処理を施すことによりイミド化する方法を採用することが好ましい。
 また、工程(a)において、いわゆる「イミド化剤」を利用してイミド化する方法を採用する場合、イミド化剤の存在下、前記ポリアミド酸の溶液中でイミド化することが好ましい。このような溶液の溶媒としては工程(I)において説明した有機溶媒を好適に用いることができる。そのため、イミド化剤を利用してイミド化する方法を採用する場合においては、工程(I)で得られた前記ポリアミド酸を単離することなく、有機溶媒中において、脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー(ポリイミド形成用のモノマー)と、上記一般式(9)で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られた反応液(前記ポリアミド酸を含有する反応液)をそのままイミド化するための前記ポリアミド酸溶液として用い、前記ポリアミド酸溶液(反応液)にイミド化剤を添加してイミド化する方法を採用することがより好ましい。
 このようなイミド化剤としては、公知のイミド化剤を適宜利用することができ、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物;ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン、N-メチルピペリジン、β-ピコリンなどの3級アミン;などを挙げることができる。
 また、イミド化剤を添加してイミド化する場合、イミド化の反応温度は、0~180℃であることが好ましく、60~150℃であることがより好ましい。また、反応時間は0.1~48時間とすることが好ましい。このような反応温度や時間が前記下限未満では十分にイミド化することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると重合物を劣化させる物質(酸素等)の混入確率が高まり分子量が低下する傾向にある。また、このようなイミド化剤の使用量としては、特に制限されず、ポリアミド酸中の上記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位1モルに対して数ミリモル~数モル(好ましくは0.05~1.0モル程度)とすればよい。
 このようにして前記塗膜中の前記ポリアミド酸をイミド化した後、塗膜を硬化せしめることにより、上記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位を少なくとも1種含有し且つ前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリイミドの第一のフィルムを好適に得ることができる。
 このように、イミド化後に塗膜を硬化せしめる方法としては特に制限されないが、イミド化して得られるポリイミドのガラス転移温度近傍の温度(より好ましくはガラス転移温度±40℃、更に好ましくはガラス転移温度±20℃、特に好ましくはガラス転移温度±10℃)で、0.1~10時間(好ましくは0.5~2時間)加熱する方法(加熱硬化)を採用することが好ましい。このような加熱温度及び時間が前記下限未満では十分に固相重合反応が進行せず脆くて弱い膜となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると着色したり、熱分解による分子量低下などが起きる傾向にある。また、このような加熱硬化の際の雰囲気としては、不活性ガス雰囲気(例えば窒素雰囲気)とすることが好ましく、加熱硬化の際の圧力の条件としては、0.01~760mmHgであることが好ましく、0.01~200mmHgであることがより好ましい。なお、イミド化のための加熱処理とその後の加熱硬化のための加熱処理とを同時に一連の加熱処理として行ってもよく、この場合には、前述のイミド化の際の加熱温度を、前記加熱硬化の際に採用される温度範囲内の温度として一定の温度で連続して加熱処理を施すことが好ましい。すなわち、一連の加熱処理(イミド化と加熱硬化とを一つの加熱処理とすること)により、イミド化後にそのまま塗膜を硬化させてフィルムを得ることもできる。また、工程(I)で得られた反応液をそのまま基材(例えばガラス板)上に塗布し、前記溶媒除去処理及び前記加熱処理を施す方法を採用すれば、簡便な方法でポリイミドからなるフィルム前駆体(本発明のポリイミドフィルムの前駆体)を製造することが可能となる。
 なお、前記ポリアミド酸溶液を用いて第一のフィルムを得る工程においては、前記工程(a)以外にも、例えば、前述の工程(a)に記載の方法を採用して基材上の硬化塗膜として得られたポリイミド;又は、塗膜を形成することなく、ポリアミド酸溶液にイミド化剤を添加して、イミド化して得られるポリイミドの溶液;を用いて、これを、該ポリイミドの溶解性が乏しい溶媒中に添加し、ろ過、洗浄、乾燥等を適宜施すことにより、ポリイミドを単離した後、その単離したポリイミドを有機溶剤中に溶解させてポリイミドの溶液を調製し、かかるポリイミドの溶液を基材に塗布して塗膜を形成した後、溶媒除去処理を施し、次いで、そのポリイミドの塗膜を加熱硬化して、第一のフィルム(フィルム前駆体)を得る工程(b)を好適に採用し得る。なお、このような工程(b)に用いられる基材、イミド化の方法、加熱硬化の方法等としては、工程(a)において説明した基材、イミド化の方法、加熱硬化の方法等と、同様のもの、同様の方法等を適宜利用することができる。
 また、前記工程(b)において、前記ポリイミドを単離する際に用いる該ポリイミドの溶解性が乏しい溶媒としては、特に制限されないが、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、トルエン等を用いることができる。また、前記工程(b)におけるポリイミドの溶液の溶媒としては、前述のポリアミド酸の溶液の溶媒と同様のものを用いることができ、更に、前記工程(b)において採用されるポリイミドの溶液の塗膜の溶媒除去処理の方法としては、前述の工程(a)において説明したポリアミド酸の溶液の塗膜の溶媒除去処理の方法と同様の方法を採用することができる。
 このようにして、前記ポリアミド酸溶液を用いて第一のフィルムを得る工程として好適に利用可能な工程(a)又は工程(b)を実施することにより、前記ポリアミド酸をイミド化して得られるポリイミド(第一のポリイミド)からなる第一のフィルム(本発明のポリイミドフィルムの前駆体)を好適に得ることができる。
 (工程(II):ポリイミドフィルム(第二のフィルム)を得る工程)
 次に、工程(II)について説明する。工程(II)は、前記第一のフィルムを、不活性ガス雰囲気下において、370~450℃の雰囲気温度で、延伸倍率が1.0001~1.050倍となるようにして延伸することにより第二のフィルムを形成して、ポリイミドフィルム(第二のフィルム)を得る工程である。
 工程(II)において、第一のフィルムを延伸する工程(延伸工程)を実施する際のガス雰囲気は、不活性ガス雰囲気とする必要がある。不活性ガス雰囲気以外のガス雰囲気下において、上記雰囲気温度で加熱した場合には、得られるポリイミドフィルム(第二のフィルム)が酸化される等して着色してしまう。また、ここにいう不活性ガス雰囲気とは、不活性ガスを含有しかつ酸素の含有量が20ppm未満となるようなガス雰囲気をいう。このような不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。
 また、前記延伸工程においては、370~450℃の雰囲気温度の条件下において、前記第一のフィルムを延伸する必要がある。ここにいう「雰囲気温度」は、延伸工程を実施して延伸している際に測定される雰囲気の温度のうちの最高温度をいう。例えば、温度を徐々に上げながら延伸工程を施す場合には、第一のフィルムを延伸している間において達する最高温度が前述の「雰囲気温度」となり、均一な温度条件下で延伸する場合には、その温度が前述の「雰囲気温度」となり、温度を適宜変更しながら延伸を施す場合には、延伸時に測定される雰囲気の温度のうちの最高温度が前述の「雰囲気温度」となる。このような雰囲気温度が前記下限未満では延伸することが出来ず、所望の線膨張係数が達成できない傾向となり、他方、前記上限を超えるとフィルムの熱分解等が進行し物性低下や着色の原因となる。また、同様の観点から、延伸工程における雰囲気温度としては、375~440℃(雰囲気温度の上限値は、より好ましくは430℃、更に好ましくは420℃である。)であることが好ましく、特に、作業性の観点等からは370~400℃であることがより好ましい。このような好適な温度範囲内の雰囲気温度を採用することにより、フィルムの物性低下や着色なく線膨張係数を所望の値に制御することが可能となる。
 また、本発明においては、延伸倍率が1.0001~1.050倍となるようにして前記第一のフィルムを延伸する必要がある。このような延伸倍率が前記下限未満では線膨張係数を所望の値に制御することが困難になるとともに、強度の低下、弾性率の低下、クリープ特性の低下の原因となる傾向にあり、他方、前記上限を超えるとフィルムの破断やウェーブ、白化、斑化の原因となる傾向にある。また、同様の観点から、このような延伸倍率としては、1.0005~1.040倍となるようにすることが好ましく、1.0008~1.035倍とすることがより好ましく、1.0010~1.030倍となるようにすることが更に好ましい。なお、このような好適な延伸倍率の範囲内において第一のフィルムを延伸することにより、線膨張係数を所望の値に制御することが可能となり、平滑性や均一性の点においてもより高度な効果が得られる傾向にある。また、ここにいう延伸倍率は、室温(25℃)における、延伸前のフィルムの長さに対する延伸後のフィルムの長さの比率([延伸後のフィルムの長さ]/[延伸前のフィルムの長さ])をいう。なお、フィルムの一部を延伸する場合(例えば、一部を固定してフィルムの他の部分を延伸する場合等)、前記延伸倍率としては、延伸前のフィルムの延伸させる部分の長さ(延伸されない固定部分(つかんでフィルムを固定する場合には掴み代部分)を除いた部分のフィルムの長さ)に対する、延伸させた部分の長さの比率を採用する。すなわち、延伸に関与しない部分の長さは除外して、延伸に関与する部分の延伸前の長さと延伸後の長さの比率により延伸倍率を求める。
 また、このような延伸の具体的な方法としては、前記ガス雰囲気、前記雰囲気温度、前記延伸倍率の条件を満たす必要がある以外は特に制限されず、従来公知の延伸方法を適宜採用することができ、例えば、輻射延伸法、熱風加熱法、熱板過熱法、ロール加熱法等を利用してもよい。更に、このような延伸工程としては、所定方向に十分な配向を形成するといった観点から、一定方向に延伸することが好ましく、いわゆる一軸延伸であってもよい。なお、ここにいう延伸としては、基本的に、所定方向に十分な配向を形成するといった観点から、一方向に延伸することが望ましいが、このような一方向への延伸の際に生じ得るフィルムのたわみ等を解消するために、そのような一方向への延伸(例えばMachine Direction(マシンダイレクション):フィルムの流れ方向:MD方向に延伸)とともに、前記延伸方向以外の方向(例えばTransverse Direction(トランスバースダイレクション):フィルムの幅方向:TD方向)にも延伸してもよく、たわみ等の不都合を解消するために、他の方向にも延伸するような工程やアニール加工を行ってもよい。また、これらを同時に実施しても良いし、逐次的に実施しても良い。さらに延伸操作を連続的に実施しても良いしバッチ的に実施しても良い。なお、延伸装置は横方向の延伸装置(横延伸装置)であっても良いし縦方向の延伸装置(縦延伸装置)であっても良い。
 また、本発明では、延伸工程を終了後には、前記延伸後のフィルムを物性が変化しない温度(高分子鎖の配向状態が固定される温度;ガラス転位温度以下や軟化点温度以下)に冷却した後に、他の用途に利用(例えば製品を製造する際に無機層を製造する工程等の他の工程に利用)してもよく、あるいは、他の用途に効率よく利用すべく、延伸温度のまま搬送して利用してもよい(延伸温度のまま搬送して他の工程を施してもよい)。なお、用途に応じて、他の工程(例えば製品を製造する際に無機層を製造する工程等)に延伸温度のままで搬送する必要が無ければ、物性が変化しない温度まで冷却する方法を採用することが一般的である。この場合には、延伸された高分子鎖の配向状態を固定するために、降温温度等を適宜調製して、フィルムの大幅な変形の無い範囲にて、ガラス転位温度以下や軟化温度以下(より好ましくは軟化点-10℃)まで冷却することが好ましい。このように、上記冷却方法において、フィルムの物性が変化しない温度(冷却の温度)としては、ポリイミドの種類に応じて異なるものではあるが、例えば、ガラス転位温度以下の温度、又は、ポリイミドの軟化温度以下の温度(更に好ましくはポリイミドの軟化温度よりも10℃低い温度以下の温度[(軟化温度-10)℃以下の温度])が挙げられる。なお、延伸後においては、自然放冷によりフィルムを冷却してもよい。
 このようにして延伸工程を施すことにより、延伸後のポリイミド(第二のポリイミド)からなる、ポリイミドフィルムを得ることができる。なお、このような延伸工程においては、延伸前の第一のフィルム中のポリイミドの構造が、配向不十分である構造から、配向が十分に形成された構造に変化して、新たな構造のポリイミド(延伸後のポリイミド:第二のポリイミド)となるため、得られる第二のフィルム(延伸後のフィルム)からなるポリイミドフィルム(最終的に得られるフィルム)においては、高温での線膨張係数を十分に低いものとすることができるものと本発明者らは推察する。
 このようにして得られるポリイミドフィルム(延伸後のポリイミドフィルム:第二のフィルム)は、縦方向(延伸方向)の350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で50℃~400℃の温度範囲において長さの変化を測定して求められる平均線膨張係数が15ppm/℃以下であるポリイミドからなるフィルムとなる。このように、本発明のポリイミドフィルムの製造方法によれば、上記本発明のポリイミドをより効率よく確実に製造することが可能となる。また、このようにして得られる前記ポリイミドからなるフィルムは、透明性及び耐熱性が十分に高いものであるとともに、高温での線膨張係数が十分に低いものとなり、熱による衝撃(周囲温度の変化)に対しても十分に高い耐性を有するものとなる。そのため、本発明により得られるポリイミドフィルム(第二のフィルムとしてのポリイミドフィルム)は、透明性が十分に高いばかりか、十分に高度な耐熱性と、極めて低い線膨張係数を有するものとなり、太陽電池や表示装置等の製品の製造に利用する場合等においても、その製造過程で高温に晒されてもフィルムに割れや亀裂が生じることが高度な水準で十分に抑制される。従って、かかるポリイミドフィルムは、例えば、フレキシブル配線基板、透明電極用基板(例えば、タッチパネルや太陽電池の透明電極を積層させるための基板フィルム、表示装置(有機EL表示装置、液晶表示装置等)の透明電極を積層させるための基板フィルム等)などの用途に用いるフィルムの他、FPC(フレキシブルプリント回路基板)、光導波路、イメージセンサー、LED反射板、LED照明用カバー、スケルトン型FPC、カバーレイフィルム、チップオンフィルム、高延性複合体基板、液晶配向膜、ポリイミドコーティング材(DRAM、フラッシュメモリ、次世代LSIなどのバッファーコート材)、半導体向けレジスト、リチウムイオンバッテリー、各種の電材等の用途に用いるフィルム、タッチパネル用基板、有機ELディスプレイ用基板、有機EL照明用基板、水蒸気バリアフィルム基板、空気バリアフィルム基板、有機メモリ用基板、有機トランジスタ用基板、有機半導体用基板、複写機用ベルト等として特に有用である。
 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
 先ず、各実施例、各比較例で得られたフィルムを形成するポリイミドの特性(線膨張係数等)の評価方法について説明する。
 <線膨張係数の測定>
 各線膨張係数(50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数、50℃~200℃の温度範囲における平均線膨張係数、350℃の線膨張係数)は、以下のようにして測定した。すなわち、先ず、実施例1~6及び比較例1~4で得られたポリイミドフィルムから縦20mm、横5mm、厚み0.013mm(13μm)の大きさの測定用試料前駆体(フィルム)をそれぞれ形成した。なお、測定用試料前駆体の形成に際しては、かかる測定用試料前駆体形成前のポリイミドフィルムの縦方向(実施例1~6及び比較例4では延伸方向)を、測定用試料前駆体の縦方向とした。次いで、前記測定用試料前駆体(フィルム)を真空乾燥(120℃、1時間(Hr))し、窒素雰囲気下で200℃で1時間(Hr)熱処理して、得られた測定用試料(乾燥フィルム)を形成した。その後、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8310」)を利用して、窒素雰囲気下、引張りモード(49mN)、昇温速度5℃/分の条件を採用して、50℃~400℃における前記測定用試料の長さの変化を連続的に測定した。
 そして、先ず、前記測定により得られたデータ(測定データ:前記測定用試料の長さの変化のデータ)に基づいて、50℃~400℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を計算して求めることで、50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数を求めた。次に、前記測定データを利用して、349℃~351℃の温度範囲における1℃あたりの前記試料の縦方向の長さの変化の値を求めて、349℃~351℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値を計算して、350℃の線膨張係数を求めた。なお、前記測定データに基づいて求められる50℃~200℃の温度範囲における1℃あたりの長さの変化の平均値(50℃~200℃の温度範囲における平均線膨張係数)も併せて求めた。
 <軟化温度の測定>
 実施例1及び比較例1で得られたフィルムを形成するポリイミドの軟化温度は以下のようにして測定した。すなわち、測定試料として縦5mm、横5mm、厚み0.013mm(13μm)の大きさのポリイミドからなるフィルムを準備し、測定装置として熱機械的分析装置(リガク製の商品名「TMA8311」を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分、30℃~550℃の温度範囲の条件でフィルムに透明石英製ピン(先端の直径φ0.5mm)を針入れすることにより測定した(いわゆるペネトレーション(針入れ)法による測定)。このような測定に際しては、上記測定試料を利用する以外は、JIS K 7196(1991年)に記載の方法に準拠して、測定データに基づいて軟化温度を計算した。
 <5%重量減少温度の測定>
 実施例1及び比較例1で得られたフィルムを形成するポリイミドの5%重量減少温度は、それぞれ、縦2mm、横2mm、厚み50μmのフィルム形状の試料を5枚準備し、これをアルミ製サンプルパンに入れ、測定装置としてTG/DTA7200熱重量分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を使用して、窒素ガスを流しながら、室温(25℃)から600℃の範囲で10℃/分の条件で加熱して、用いた試料の重量が5%減少する温度を測定することにより求めた。
 <延伸倍率の測定>
 各実施例、各比較例で採用した延伸工程における延伸倍率は、室温(25℃)において、掴み代部分(縦10mm分)を除く縦(延伸)方向の延伸前の長さ(下記計算式(I)中において「L1」と示す。)と、掴み代部分を除く延伸後の縦(延伸)方向の長さ(下記計算式(I)中において「L2」と示す。)を測定し、下記計算式(I):
  [延伸倍率]=[L2]/[L1]      (I)
により算出した。すなわち、延伸に関与しない部分の長さは除外して、延伸に関与する部分の延伸前後の長さの比率により、延伸倍率を求めた。
(実施例1)
 <脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーの準備工程>
 先ず、国際公開第2014/034760号の実施例1のモノマー合成工程に準拠して、下記一般式(14):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000024
で表されるトランス、エンド、エンド-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物及び下記一般式(15):
Figure JPOXMLDOC01-appb-C000025
で表されるシス、エンド、エンド-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物の混合物(脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー:上記一般式(14)及び(15)で表される化合物の含有比率が99モル%(残りの成分はノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸二無水物のトランス-エンド-エンド異性体及びシス-エンド-エンド異性体以外の他の異性体である。)であり、上記一般式(14)で表される化合物と上記一般式(15)で表される化合物のモル比([式(14)]:[式(15)])が63:37である混合物)を準備した。
 なお、化合物中の異性体の同定はHPLC測定により行った値を採用した。このようなHPLC測定は、測定装置としてアジレントテクノロジー株式会社製の商品名「1200 Series」を用い、カラムとしてアジレントテクノロジー株式会社製の商品名「Eclipse XDB-C18(5μm、直径4.6mm、長さ150mm)」を用い、溶媒としてアセトニトリルと蒸留水との混合物(アセトニトリル/蒸留水=70ml/30ml)を用い、溶媒の流速を1ml/min.とし、ダイオードアレイ検出器(DAD)の検出波長を210nmに設定し、温度を35℃とし、試料として測定する化合物を溶媒1.5mlに対して1mg添加して調製したものを用いて行った。そして、トランス-エンド-エンド異性体及びシス-エンド-エンド異性体の総量(含有比率:純度)、及び、トランス-エンド-エンド異性体とシス-エンド-エンド異性体とのモル比は、HPLCの面積比より検量線(標準試料:ナフタレン)を用いて算出することにより求めた。
 <ポリアミド酸溶液の調製工程>
 先ず、30mlの三口フラスコをヒートガンで加熱して十分に乾燥させた。次に、十分に乾燥させた前記三口フラスコ内の雰囲気ガスを窒素で置換して、前記三口フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、前記三口フラスコ内に、4,4’-ジアミノベンズアニリド0.2045g(0.90mmol:日本純良薬品株式会社製:4,4’-DABAN)を添加した後、更に、N,N-ジメチルアセトアミドを2.7g添加して、撹拌することにより、前記N,N-ジメチルアセトアミド中に4,4’-ジアミノベンズアニリド(芳香族ジアミン化合物:4,4’-DABAN)を溶解させて溶解液を得た(なお、4,4’-DABANは一部溶解)。
 次に、前記溶解液を含有する三口フラスコ内に、窒素雰囲気下、上記一般式(14)及び(15)で表される混合物(脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマー)を0.3459g(0.90mmol)添加した後、窒素雰囲気下、室温(25℃)で12時間撹拌して、ポリアミド酸を形成し、反応液(ポリアミド酸溶液)を得た。このようにして溶媒(N,N-ジメチルアセトアミド)中においてポリアミド酸を形成して、反応液(ポリアミド酸溶液)を得た。
 なお、このようにして形成されたポリアミド酸の固有粘度[η]を、離合社製の自動粘度測定装置(商品名「VMC-252」)を用い、N,N-ジメチルアセトアミドを溶媒として、濃度0.5g/dLのポリアミド酸の測定試料を調整して、30℃の温度条件下において測定した。すなわち、前記反応液(ポリアミド酸溶液(溶媒:N,N-ジメチルアセトアミド))の一部を利用して、ポリアミド酸の濃度が0.5g/dLとなるN,N-ジメチルアセトアミド溶液を調製して、上記条件でポリアミド酸の固有粘度[η]を測定したところ、ポリアミド酸の固有粘度[η]は0.91dL/gであった。
 <ポリイミドからなる第一のフィルムの調製工程>
 上述のようにして得られた反応液(ポリアミド酸溶液)をガラス板(縦:75mm、横50mm、厚み1.3mm)上に、加熱硬化後の塗膜の厚みが13μmとなるようにスピンコートして、ガラス板上に塗膜を形成した。次に、前記塗膜の形成されたガラス板を60℃のホットプレート上に載せて2時間静置することで溶媒を蒸発させた。その後、前記塗膜(溶媒を蒸発させた後の塗膜)の形成されたガラス板を3L/分の流量で窒素が流れている250mm角イナートオーブン中に投入して、窒素雰囲気下、25℃の温度条件において0.5時間静置した後、135℃の温度条件で0.5時間加熱し、更に、370℃の温度条件で1時間加熱して塗膜を硬化せしめ、ガラス板上にポリイミドからなる第一のフィルムを形成した。次いで、前記ポリイミドからなる第一のフィルムの形成されたガラス板をイナートオーブンから取り出し、90℃の水に10分間浸漬し、ガラス板上からポリイミドからなる第一のフィルムを剥離して回収し、ポリイミドからなる第一のフィルム(色:無色透明、大きさ:縦75mm、横50mm、厚み13μm)を得た。
 <ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の調製工程>
 前記ポリイミドからなる第一のフィルムの横50mmの辺の一方を固定した後、更に、横50mmの辺のもう一方(固定されている側の辺とは反対側の辺の部分)に、重さ50gの錘をぶら下げて、3L/分の流量で窒素が流れているイナートオーブン中に設置した。その後、イナートオーブン中、酸素の含有量が20ppm未満となるような窒素雰囲気下において、400℃(加熱時の最高温度)になるまで加熱(加熱時の昇温速度5℃/分)して、錘の重さにより前記第一のフィルムを延伸した後、イナートオーブンの内部の温度条件を室温(25℃)に戻して、フィルムを自然放冷し、ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)を得た。このようなフィルムに関して、前述の方法で、室温(25℃)において延伸前後の長さ(第一のフィルム及び第二のフィルムの長さ(固定時の掴み代部分を除く長さ))をそれぞれ測定して、延伸倍率を計算した結果、延伸倍率は1.0149倍であった。
 なお、得られたポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸フィルム)を構成する化合物のIRスペクトルを測定した。得られた化合物のIRスペクトルを図3に示す。図3に示す結果からも明らかなように、得られた化合物においては、1697cm-1にイミドカルボニルのC=O伸縮振動が確認され、得られた化合物がポリイミドであることが確認された。
 さらに、このようにして得られたポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)を利用して、前述のようにしてポリイミドの線膨張係数を測定した。このような測定の結果、フィルムを形成するポリイミドの350℃の線膨張係数(349~351℃の間の平均線膨張係数)は5.8ppm/Kであり、50℃~400℃の平均線膨張係数は7.5ppm/Kであり、50℃~200℃の平均線膨張係数は8.3ppm/Kであった。得られた結果を表1に示す。また、線膨張係数の測定時により求められるポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の長さの変化と、温度との関係を示すグラフを図4に示す。
 さらに、得られたフィルムを形成するポリイミドの軟化温度と5%重量減少温度とを前述の方法で測定したところ、ポリイミドのペネトレーション法による軟化温度は502℃であり、5%重量減少温度は482℃であった。なお、得られたポリイミドフィルムは、無色透明であり、十分に透明性の高いものであった。
 また、得られたフィルムを形成するポリイミドのガラス転移温度を、測定装置として示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の商品名「DSC7020」)を使用し、走査温度を30℃から500℃に設定し、昇温速度:10℃/分及び降温速度:30℃/分の条件で、窒素雰囲気下において測定したものの、500℃までガラス転移温度が観測されなかった。このような結果から、得られたフィルムを形成するポリイミドのガラス転移温度は500℃以下には無いことが分かる。
 (実施例2)
 ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の調製工程において、延伸時の加熱温度(加熱時の最高温度)を400℃から380℃に変更した以外は、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用してポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)を得た。このようなポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。なお、得られたポリイミドフィルムは、無色透明であり、十分に透明性の高いものであった。
 (実施例3)
 ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の調製工程において、延伸時の加熱温度(加熱時の最高温度)を400℃から420℃に変更した以外は、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用してポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)を得た。このようなポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。なお、得られたポリイミドフィルムは、無色透明であり、十分に透明性の高いものであった。
 (実施例4)
 ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の調製工程において、前記ポリイミドからなる第一のフィルムの横50mmの辺にぶら下げる錘の重さを50gから25gに変更した以外は、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用してポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)を得た。このようなポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。なお、得られたポリイミドフィルムは、無色透明であり、十分に透明性の高いものであった。
 (実施例5)
 ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の調製工程において、前記ポリイミドからなる第一のフィルムの横50mmの辺にぶら下げる錘の重さを50gから100gに変更した以外は、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用してポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)を得た。このようなポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。なお、得られたポリイミドフィルムは、無色透明であり、十分に透明性の高いものであった。
 (実施例6)
 ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の調製工程において、前記ポリイミドからなる第一のフィルムの横50mmの辺にぶら下げる錘の重さを50gから200gに変更した以外は、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用してポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)を得た。このようなポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。なお、得られたポリイミドフィルムは、無色透明であり、十分に透明性の高いものであった。
 (比較例1)
 ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の調製工程を実施しなかった以外は実施例1で採用した方法と同様の方法を採用して比較のためのポリイミドフィルムを得た。すなわち、実施例1に記載のポリイミドからなる第一のフィルムの調製工程により得られた、ポリイミドからなる第一のフィルム(色:無色透明、大きさ:縦75mm、横50mm、厚み13μm)を、そのまま比較のためのポリイミドフィルム(未延伸のフィルム)とした。
 このようなポリイミドフィルムの特性の評価結果を表1に示す。また、線膨張係数の測定時により求められるポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の長さの変化と、温度との関係を示すグラフを図5に示す。さらに、得られたフィルムを形成するポリイミドの軟化温度と5%重量減少温度とを前述の方法で測定したところ、ポリイミドのペネトレーション法による軟化温度は501℃であり、5%重量減少温度は482℃であった。
 (比較例2)
 ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の調製工程において、錘をぶら下げなかった以外は、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用して、比較のためのポリイミドフィルムを得た。すなわち、実施例1に記載の「ポリイミドからなる第一のフィルムの調製工程」により得られた、ポリイミドからなる第一のフィルム(色:無色透明、大きさ:縦75mm、横50mm、厚み13μm)を、荷重の無い条件で400℃で熱処理して、比較のためのポリイミドフィルム(未延伸のフィルム)とした。
 このようなポリイミドフィルム(未延伸のフィルム)の特性の評価結果を表1に示す。なお、得られたポリイミドフィルムは、無色透明であり、十分に透明性の高いものであった。
 (比較例3)
 ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の調製工程において、400℃まで加熱した後、400℃に維持して、前記ポリイミドからなる第一のフィルムの横50mmの辺にぶら下げる錘の重さを50gから増加させて(荷重を増して)、破断点を確認したところ、錘の重さを700gとした際に(700g荷重で)、フィルムが破断することが確認された。なお、錘の重さを700gとした際に得られた破断フィルムの長さより延伸倍率を求めたところ、延伸倍率は1.0680倍であることが分かった。得られた結果を表1に示す。
 (比較例4)
 ポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)の調製工程において、延伸時の加熱温度(加熱時の最高温度)を400℃から360℃に変更した以外は、実施例1で採用した方法と同様の方法を採用してポリイミドフィルム(第二のフィルム:延伸後のフィルム)を得た。このようなポリイミドフィルム(未延伸のフィルム)の特性の評価結果を表1に示す。なお、得られたポリイミドフィルムは、無色透明であり、十分に透明性の高いものであった。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000026
 表1に示す結果からも明らかなように、本発明のポリイミドフィルムの製造方法を利用してポリイミドフィルムを製造した場合(実施例1~6)においては、得られるポリイミドフィルムはいずれも、350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数が15ppm/℃以下であった。これに対して、比較例1及び2のように延伸をしなかった場合においては、得られたフィルム(未延伸のフィルム)の50~200℃の温度範囲における線膨張係数は十分に低い値となっていたものの、350℃の線膨張係数はそれぞれ、89.8ppm/℃(比較例1)、19.0ppm/℃(比較例2)となっており、本発明のポリイミドフィルム(実施例1~6)と比較して、高温における線膨張係数の増加を十分に抑制できないことが分かった。また、延伸工程を施した場合においても、700g荷重での延伸した場合(比較例3)には、フィルムが破断して、延伸フィルムを形成することができなかった。また、360℃の雰囲気温度での延伸した場合(比較例4)では、実施例1~3と同じ荷重で延伸して、延伸倍率が1.0079倍となっていても、得られるポリイミドの350℃の線膨張係数は11.4ppm/℃となっており、更には、50℃~400℃の温度範囲における平均線膨張係数が23.1ppm/℃となっており、350℃以上の高温における線膨張係数の増大を必ずしも十分に抑制できないことが分かった。このような比較例2及び4の結果から、第一のフィルムを400℃に加熱しても延伸しなかった場合(比較例2)には、高温での線膨張係数の増加を必ずしも十分に抑制することができず、また、第一のフィルムを延伸したとしても、延伸時の雰囲気温度を360℃とした場合(比較例4)には、やはり高温での線膨張係数の増加を必ずしも十分に抑制することができないことが分かった。このような結果は、延伸温度や延伸荷重によってポリマーの分子鎖の配向状態が変化することに起因するものであると本発明者らは推察する。なお、実施例1及び比較例1で得られたポリイミドフィルムの5%重量減少温度と軟化温度の測定結果を考慮すれば、各実施例及び各比較例で得られたポリイミドフィルムはいずれも、十分に高度な耐熱性を有するものであることが分かる。また、表1に示す結果から、荷重や温度の増加と、延伸倍率の値と関係を考慮すると、同じ雰囲気温度で荷重を増加して延伸倍率が低下している場合なども見られるが、これは、延伸後、室温(25℃)まで冷却する際にフィルムに収縮が生じることに起因するものと本発明者らは推察する。すなわち、延伸工程において採用する荷重や温度の差によって、フィルム内部の配向状態は異なるものとなるため、冷却時に必ずしも一様な収縮をするものではなく、延伸後においては、そのフィルム中の成分の配向状態に応じた収縮が生じることから、荷重を増加して延伸したものが、より低い荷重により延伸した場合よりも、結果的に延伸倍率が低くなることもあるため、上述のような結果が得られたものと本発明者らは推察する。なお、上述の結果から、370~450℃の雰囲気温度で、延伸倍率が1.0001~1.050倍となるようにして延伸する工程を実施した場合には、高温での線膨張係数を十分に低いものとすることが可能となることが分かった。
 また、図4及び5に示す結果からも明らかなように、比較例1で得られたポリイミドフィルムにおいては、350℃付近を超えた辺りから400℃程度の温度領域において、フィルムの長さが増加する割合が急激に増加しているのに対して、実施例1で得られたポリイミドフィルム(本発明のポリイミドフィルム)においては、350℃を超えた付近から400℃程度の領域までの温度領域においても、フィルムの長さが増加する割合に急激な変化はなかった。このような結果から、実施例1で得られたポリイミドフィルム(本発明のポリイミドフィルム)においては、高温での線膨張係数の増加を十分に抑制することができ、高温での線膨張係数が十分に低いものとなることが分かった。
 以上説明したように、本発明によれば、光透過性や耐熱性に優れ、しかも高温での線膨張係数が十分に低いポリイミドフィルム及びその製造方法を提供することが可能となる。更に、本発明によれば、前記ポリイミドフィルムからなる、フレキシブル配線基板、透明電極用基板及び液晶配向膜積層用基板を提供することが可能となる。
 このような本発明のポリイミドフィルムは、光透過性や耐熱性に優れ、しかも高温での線膨張係数が十分に低いものとなるため、例えば、フレキシブル配線基板、透明電極用基板(例えば、タッチパネルや太陽電池の透明電極を積層させるための基板フィルム、表示装置(有機EL表示装置、液晶表示装置等)の透明電極を積層させるための基板フィルム等)などの用途に用いるフィルムの他、FPC(フレキシブルプリント回路基板)、光導波路、イメージセンサー、LED反射板、LEDリフレクター、LED照明用カバー、スケルトン型FPC、カバーレイフィルム、チップオンフィルム、高延性複合体基板、液晶配向膜、ポリイミドコーティング材(DRAM、フラッシュメモリ、次世代LSIなどのバッファーコート材)、半導体向けレジスト、リチウムイオンバッテリー、各種の電材等の用途に用いるフィルム、有機ELディスプレイ用基板、有機EL照明用基板、水蒸気バリアフィルム基板、空気バリアフィルム基板、有機メモリ用基板、有機トランジスタ用基板、有機半導体用基板、複写機用ベルト、フレキシブルディスプレイ用フロントフィルム、フレキシブルディスプレイ用バックフィルム、フレキシブルディスプレイ用ハードコートフィルム等として特に有用である。

Claims (12)

  1.  下記一般式(1)及び(2):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000001
    [式(1)及び(2)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、Rは炭素数6~40のアリール基を示し、nは0~12の整数を示す。]
    で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、
     前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であり、
     350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、
     窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で50℃~400℃の温度範囲において長さの変化を測定して求められる平均線膨張係数が15ppm/℃以下である、
    ポリイミドからなるフィルムである、ポリイミドフィルム。
  2.  前記ポリイミドの350℃の線膨張係数が1~10ppm/℃である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
  3.  前記一般式(1)及び(2)中のRが、下記一般式(3)~(6):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000002
    [式(5)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基、エチル基及びトリフルオロメチル基よりなる群から選択される1種を示し、式(6)中、Qは、式:-O-、-S-、-CO-、-CONH-、-C-、-COO-、-SO-、-C(CF-、-C(CH-、-CH-、-O-C-C(CH-C-O-、-O-C-SO-C-O-、-C(CH-C-C(CH-、-O-C-C-O-及び-O-C-O-で表される基よりなる群から選択される1種を示す。]
    で表される基のうちの1種である、請求項1又は2に記載のポリイミドフィルム。
  4.  下記一般式(7):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000003
    [式(7)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0~12の整数を示す。]
    で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び下記一般式(8):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000004
    [式(8)中、R、R、R、nは前記一般式(7)中のR、R、R、nと同義である。]
    で表される脂環式テトラカルボン酸二無水物(B)のうちの少なくとも1種を含有し、且つ、前記脂環式テトラカルボン酸二無水物(A)及び(B)の総量が90モル%以上である脂環式テトラカルボン酸二無水物系モノマーと、
     下記一般式(9):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000005
    [式(9)中、Rは炭素数6~40のアリール基を示す。]
    で表される芳香族ジアミンとを反応させて得られる、下記一般式(10)及び(11):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000006
    [式(10)及び(11)中、R、R、R、nは前記一般式(7)中のR、R、R、nと同義であり、Rは前記一般式(9)中のRと同義である。]
    で表される繰り返し単位を少なくとも1種含有し且つ前記一般式(10)及び(11)で表される繰り返し単位の総量が90モル%以上のポリアミド酸を含有するポリアミド酸溶液を用いて、下記一般式(1)及び(2):
    Figure JPOXMLDOC01-appb-C000007
    [式(1)及び(2)中、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、Rは炭素数6~40のアリール基を示し、nは0~12の整数を示す。]
    で表される繰り返し単位のうちの少なくとも1種を含有し、かつ、前記一般式(1)及び(2)で表される繰り返し単位の総量が全繰り返し単位に対して90モル%以上であるポリイミドからなる第一のフィルムを得る工程と、
     前記第一のフィルムを、不活性ガス雰囲気下において、370~450℃の雰囲気温度で、延伸倍率が1.0001~1.050倍となるようにして延伸することにより第二のフィルムを形成して、ポリイミドフィルムを得る工程と、
    を含む、ポリイミドフィルムの製造方法。
  5.  前記第一のフィルムを延伸する際に、前記延伸倍率が1.0005~1.030倍となるようにして延伸する、請求項4に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  6.  前記ポリイミドフィルムが、350℃の線膨張係数が10ppm/℃以下であり、かつ、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分の条件で50℃~400℃の温度範囲において長さの変化を測定して求められる平均線膨張係数が15ppm/℃以下である、ポリイミドからなる、請求項4又は5に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  7.  請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のポリイミドフィルムからなる、フレキシブル配線基板。
  8.  請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のポリイミドフィルムからなる、透明電極用基板。
  9.  表示装置及び太陽電池のうちのいずれかの透明電極を積層するために用いる、請求項8に記載の透明電極用基板。
  10.  請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のポリイミドフィルムからなる、液晶配向膜積層用基板。
  11.  請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のポリイミドフィルムからなる、有機ELディスプレイ用基板。
  12.  請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のポリイミドフィルムからなる、有機EL照明用基板。
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