以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
本実施形態の横葺き屋根構造は、例えば、切妻屋根や、寄棟屋根、片流れ屋根等の屋根構造に適用される。屋根は、建物の最上部に設けられている。屋根は勾配を有している。屋根の勾配方向(図1中の矢印A1に平行な方向。以下、屋根勾配方向という。)は、軒棟方向と平行な方向として定義される。言い換えると、屋根勾配方向は、屋根において雨水が流れる方向(水流れ方向)に平行な方向として定義される。また、屋根勾配方向に直角な方向は、横方向(つまり、桁行方向。図1中の矢印A2に平行な方向)として定義される。
なお、「棟」は、屋根面において最も高い部位として定義される。つまり、本実施形態における棟は、異なる方向に傾斜した屋根が交差する稜線部分だけでなく、片流れ屋根の頂上部分をも含む。
本実施形態の横葺き屋根構造は、図1に示すように、屋根下地材1と、横葺き屋根2とを備えている。横葺き屋根2は、屋根下地材1の上に取り付けられる。
屋根下地材1は、横葺き屋根2を支持する。屋根下地材1は、横葺き屋根2の下方に設けられる。屋根下地材1は、屋根勾配と略同じ角度で傾斜している。言い換えると、屋根下地材1は、棟から軒に向かって下り傾斜している。屋根下地材1は、例えば、母屋11と、野地板12と、防水シート13とを備えている。
母屋11は、例えば、C型鋼やH型鋼などの鉄鋼材により構成される。母屋11は、屋根勾配方向に直交する方向(つまり横方向)に長さを有している。母屋11は、軒棟方向に複数並設されている。各母屋11は、互いに平行である。野地板12は、母屋11上に固定される。野地板12は、軒棟方向および横方向に長さを有しており、矩形板状に形成されている。防水シート13は、野地板12上に敷設される。防水シート13は、例えば、アスファルトルーフィングや、ゴムシートにより構成される。この防水シート13が野地板12上に設けられていることにより、万が一、横葺き屋根2の隙間から雨水が浸入したとしても、その雨水が室内側への浸入するのを防ぐことができる。
なお、屋根下地材1としては、例えば、防水シート13を備えていなくてもよい。また、野地板12の下方に垂木が設けられていてもよい。また、母屋11の材質は、木材であってもよく、本実施形態の構成に限定されない。
横葺き屋根2は、屋根下地材1の上方に設置される。横葺き屋根2は、複数の横葺き材3と、内樋5とを備えている。横葺き屋根2は、複数の横葺き材3が横方向に連結され、この連結された複数の横葺き材3が屋根勾配方向に並設されることで構成されている。
なお、以下においては、複数の横葺き材3のうち、任意の横葺き材3を第1の横葺き材31として定義し、第1の横葺き材31の左右方向に隣り合う別の横葺き材3を、第2の横葺き材32として定義する。本実施形態では、例えば図2において、左側の横葺き材3が第1の横葺き材31であり、第1の横葺き材31の右側に隣接配置された横葺き材3が第2の横葺き材32である。
第1の横葺き材31は、例えば、0.3mm~1.0mm程度の金属板により形成される。金属板としては、例えば、塗装鋼板や亜鉛めっき鋼板などが用いられる。第1の横葺き材31は、図3に示すように、葺材本体40と、引掛け部41と、被引掛け部42と、突条部43と、取付部44と、立上部45とを備えている。葺材本体40・引掛け部41・被引掛け部42・突条部43・取付部44・立上部45は、金属板を曲げ加工されることで形成されている。
葺材本体40は、屋根の大部分を構成する部分である。葺材本体40は、軒棟方向に幅を有し、横方向に長さを有し、これにより、平面視矩形状をしている。葺材本体40は、前部401と、屈曲部402と、後部403とを備えている。前部401は、後部403に対して傾斜している。前部401は、後部403における軒側の端部から、軒側に向かうほど上方に位置するよう傾斜している。なお、後部403に対する前部401の曲げ角度(前部401の後部403と同一面に対する角度)は、例えば、約12°に形成されている。屈曲部402は、前部401と後部403とが交差する部分に設けられており、これにより、葺材本体40の幅方向の中間部分に形成されている。屈曲部402は、長さ方向(つまり、横方向)に連続して形成されている。屈曲部402は、下方に凸曲している。
引掛け部41は、葺材本体40の軒側の端部から延出している。引掛け部41は、他の横葺き材3の被引掛け部42に係止される。引掛け部41は、断面略L字状に形成されている。引掛け部41は、葺材本体40の長さ方向の全長に亙って設けられている。
被引掛け部42は、葺材本体40の棟側の端部から延出している。被引掛け部42は、葺材本体40の棟側の端部が上方且つ軒側に向かって折り返され、さらにその軒側の端部が棟側に向かって折り返されることで形成されている。被引掛け部42は、葺材本体40の長さ方向の全長に亙って設けられている。
突条部43は、被引掛け部42の棟側の端部から延出している。突条部43は、上方に突出している。突条部43は、被引掛け部42の長さ方向の全長に亙って設けられている。
取付部44は、突条部43の棟側の端部から延出している。取付部44の底面は、葺材本体40の後部403と略同一面上に位置している。取付部44には、下方に凹没する溝部441が設けられている。溝部441には、固着具が打入され、これにより、第1の横葺き材31が屋根下地材1に固定される。具体的に説明すると、溝部441内に固着具としてのねじ具がねじ込まれることで、第1の横葺き材31が屋根下地材1に固定される。溝部441が設けられていることで、施工者は、ねじ具の位置決めを行ない易いようになっている。
立上部45は、取付部44の棟側の端部から上方に向かって延出している。立上部45の上端には、鍔部451が設けられている。
このような第1の横葺き材31の横方向には、図2に示すように、隣り合うようにして、第2の横葺き材32が配置される。
第2の横葺き材32は、第1の横葺き材31の長手方向の端部に隣り合って配置される。第2の横葺き材32は、第1の横葺き材31と略平行となるようにして取り付けられる。言い換えると、第2の横葺き材32の長手方向は、第1の横葺き材31の長手方向と略平行となっている。また、第2の横葺き材32と第1の横葺き材31とは、平面視で横方向に略直線状に配置される。なお、第2の横葺き材32の構造は、第1の横葺き材31の構造と同じであるため、説明を省略する。
第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との隣り合う端部の下方には、内樋5が配置される。
内樋5は、第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との間から浸入した雨水等を受けるために設けられている。内樋5は、図4に示すように、本体部51と、第1パッキン52と、第2パッキン53と、第3パッキン54とを備えている。
本体部51は、金属板により形成されている。本体部51は、軒棟方向に長さを有し、横方向に幅を有し、これにより平面視矩形状に形成されている。本体部51は、前側部511と、折曲部512と、後側部513とを備えている。前側部511は、後側部513に対して傾斜している。前側部511は、後側部513における軒側の端部から、軒側に向かうほど上方に位置するよう傾斜している。なお、後側部513に対する前側部511の曲げ角度(後側部513と同一面に対する前側部511の角度)は、例えば、約8°に形成されている。折曲部512は、前側部511と後側部513との交差する部分に設けられ、これにより、本体部51の長さ方向の中間部分に形成されている。折曲部512は、本体部51の幅方向の全長に亙って連続して設けられている。折曲部512は、下方に凸曲している。
また、本体部51の棟側の端部には、水返し部514が設けられている。水返し部514は、本体部51の後側部513の棟側の端部から上方に向かって突出している。水返し部514は、本体部51の幅方向の全長に亙って設けられている。また、本体部51の軒側の端部には、ガイド部515が設けられている。ガイド部515は、本体部51の前側部511の軒側の端部から下方に向かって延出している。これにより、ガイド部515は、本体部51の前側部511から軒側に向かって流下する雨水をスムーズに導水することができる。
第1パッキン52は、本体部51の第1の横葺き材31側の端部に設けられている。より詳しくは、第1パッキン52は、端縁からやや内側に位置する箇所に設けられている。言い換えると、第1パッキン52は、本体部51の第1の横葺き材31側の部位に設けられている。また、第1パッキン52は、本体部51の長さ方向(つまり、軒棟方向に平行な方向)の全長に亙って設けられている。言い換えると、第1パッキン52は、図2に示すように、第1の横葺き材31の長手方向の端部に沿って設けられている。第1パッキン52は、軒棟方向に平行な方向に長さを有し、横方向に幅を有し、帯状に形成されている。第1パッキン52は、第1の横葺き材31の下面に当接する。
第2パッキン53は、本体部51の第2の横葺き材32側の端部に設けられている。より詳しくは、第2パッキン53は、端縁からやや内側に位置する箇所に設けられている。言い換えると、第2パッキン53は、本体部51の第2の横葺き材32側の部位に設けられている。また、第2パッキン53は、本体部51の長さ方向(つまり、軒棟方向に平行な方向)の全長に亙って設けられている。言い換えると、第2パッキン53は、図2に示すように、第2の横葺き材32の長手方向の端部に沿って設けられている。第2パッキン53は、軒棟方向に平行な方向に長さを有し、横方向に幅を有し、帯状に形成されている。第2パッキン53は、第2の横葺き材32の下面に当接する。
第3パッキン54は、本体部51の棟側の端部に配置されている。また第3パッキン54は、第1パッキン52と第2パッキン53との間に配置されている。第3パッキン54は、平面視矩形状をしている。第3パッキン54は、第1パッキン52と第2パッキン53との間の全長に亙って設けられていてもよいし、第1パッキン52と第2パッキン53との間の全長のうちの一部に設けられてもよい。第3パッキン54は、第1の横葺き材31の棟側の端部と、第2の横葺き材32の棟側の端部との両方に当接する。
なお、各パッキン52,53,54同士は、全てが一体であってもよいし、第1パッキン52と第3パッキン54だけが一体であってもよいし、第2パッキン53と第3パッキン54だけが一体であってもよい。
この各パッキン52,53,54は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンゴム:Ethylene Propylene Rubber)発泡ゴム等のシールパッキンにより構成される。なお、この第1パッキン52、及び第2パッキン53、第3パッキン54については、本実施形態のものに限定されない。
このように構成された横葺き材3及び内樋5は、例えば、次のようにして施工される。
施工者は、図5に示すように、軒先に、スターター部材6を取り付ける。スターター部材6は、例えば、軒先唐草により構成される。スターター部材6は、横方向に長さを有している。スターター部材6は、軒先に沿って取り付けられる。なお、スターター部材6には、横葺き材3と同様、被引掛け部61と、突条部62とが設けられている。スターター部材6の被引掛け部61および突条部62は、横葺き材3の被引掛け部42および突条部43と同じ構造であるため、説明は省略する。
次いで施工者は、最も軒側の横葺き材3を、屋根下地材1上に設置する。施工者は、スターター部材6の被引掛け部61に、第1の横葺き材31の引掛け部41を係止した状態で、第1の横葺き材31を屋根下地材1上に配置する。そして施工者は、第2の横葺き材32を第1の横葺き材31の横方向に隣接するよう配置する。
このとき施工者は、図1に示すように、第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との隣り合う端部の間に、隙間を設ける。この隙間は、例えば、3~10mm程度の幅により形成される。
施工者は、第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との間の下方に、内樋5を配置する。内樋5は、屋根下地材1と、第1の横葺き材31及び第2の横葺き材32との間に介装される。このとき施工者は、図5に示すように、内樋5のガイド部515をスターター部材6の突条部62上に載せるようにして、内樋5を配置する。
この後、施工者は、第1の横葺き材31及び第2の横葺き材32の取付部44に固着具を打入し、これにより、第1の横葺き材31及び第2の横葺き材32を屋根下地材1に固定する。
このようにして施工者は、横方向に順に横葺き材3を設置する。横一列に横葺き材3が取り付けられると、施工者は、そのすぐ棟側の横葺き材3を、横方向に順に設置する。このようにして、施工者は、軒側から棟側に向かって、順に横葺き材3を設置する(図6参照)。これにより、横葺き屋根2が形成される。
このとき、内樋5は、図7(a)に示すように、ガイド部515が、軒側に配置された横葺き材3の突条部43上に載置された状態で、設置されている。
また、棟側の横葺き材3と軒側の横葺き材3とは、図7(c)に示すように、棟側の横葺き材3の引掛け部41の先端が軒側の横葺き材3の被引掛け部42に圧接し(第1圧接部71)、棟側の横葺き材3の裏面が軒側の横葺き材3の突条部43に圧接し(第2圧接部72)、棟側の横葺き材3の裏面が軒側の横葺き材3の鍔部451に圧接する(第3圧接部73)。
特に、この横葺き材3は、設置状態では、屈曲部402の角度が12°から8°となるよう弾性変形する。このため、横葺き材3の設置状態では、屈曲部402のスプリングバックにより、軒側の端部が上方に向かって付勢される。また、引掛け部41は、被引掛け部42に係止されることで、引掛け部41の開口端が拡がるように弾性変形する。この引掛け部41のスプリングバックにより、前部401が、軒側の横葺き材3の突条部43および鍔部451側に向かって付勢される。これにより、横葺き材3の設置状態では、各圧接部71,72,73や、屈曲部402と野地板12との当接部分において、強固に圧接させることができる。この結果、本実施形態の横葺き屋根構造は、横葺き材3のガタつきが防止できる上に、水密性も向上させることができる。
横葺き屋根2上に降雨すると、横葺き材3に降雨した雨水は、大部分が軒側に隣接する横葺き材3に流下する。一方、横葺き材3上に降雨した雨水のうち、一部の雨水は、第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との間の隙間を介して内樋5上に流れ込む。内樋5上に流下した雨水は、本体部51・ガイド部515と順に流下し、第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との隣り合う端部間の隙間を介して、軒側の横葺き材3上に排水される。
風雨が激しい場合、軒側から棟側に向かって風が吹き上がり、第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との間から雨水が入り込む。このとき、雨水が内樋5の棟側の端部に向かって流れようとするが、本実施形態の横葺き屋根構造は、第3パッキン54が設けられているため、隙間から棟側に向かって流れる雨水を効果的に止水することができる。
以上説明したように、本実施形態の横葺き屋根構造は、第1の横葺き材31と、第2の横葺き材32と、内樋5とを備えている。第2の横葺き材32は、第1の横葺き材31の長手方向の端部に隣り合って配置されている。内樋5は、第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との隣り合う端部の下方に配置されている。内樋5は、板状の本体部51と、第1パッキン52と、第2パッキン53と、第3パッキン54とを備えている。第1パッキン52は、本体部51の第1の横葺き材31側の部位に、第1の横葺き材31の長手方向の端部に沿って設けられており、第1の横葺き材31の下面に当接するものである。第2パッキン53は、本体部51の第2の横葺き材32側の部位に、第2の横葺き材32の長手方向の端部に沿って設けられており、第2の横葺き材32の下面に当接するものである。第3パッキン54は、本体部51の第1パッキン52と第2パッキン53との間に配置されており、第1の横葺き材31の屋根勾配方向の上流側の端部と第2の横葺き材32の屋根勾配方向の上流側の端部との両方に当接するものである。
このため、本実施形態の横葺き屋根構造によれば、第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との隣り合う端部の間から、雨水が浸入した場合であっても、内樋5で受けることができる。特に、風雨が激しい場合であっても、第1パッキン52と第2パッキン53と第3パッキン54とにより、第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との接続部分の左右両側と棟側とをシールすることができるため、良好な止水性を確保することができる。この結果、従来の横葺き屋根構造では必要であった化粧部材を、本実施形態の横葺屋根構造では省くことができ、コストダウンを図ることができる。すなわち、本実施形態の横葺き屋根構造によれば、止水性を保ったまま化粧部材を省くことができる。
また、本実施形態の第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との隣り合う端部間には、隙間が設けられている。本実施形態の横葺き屋根構造は、この隙間を介して内樋5が受けた水を排出するよう構成されている。
このため、本実施形態の横葺き屋根構造は、内樋5により受けた雨水の大部分を、隙間を介して軒側に排水することができる。したがって、本実施形態の横葺き屋根構造によれば、雨水が横葺き材3の裏側に滞留するのを防ぐことができる。
また、本実施形態の第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との隣り合う端部間には、隙間が設けられているため、第1の横葺き材31および第2の横葺き材32に熱による膨張が生じたとしても、互いに干渉するのを防ぐことができる。
また、第1の横葺き材31と第2の横葺き材31との隣り合う端部は、面一に配置されているため、意匠性を向上させることができる。つまり、従来の横葺き屋根構造では、化粧部材により屋根面を面一にすることができなかったが、本実施形態の横葺き屋根構造によれば、屋根面を面一にすることができるため、シンプルな外観とすることができる。
なお、本実施形態の横葺き屋根構造は、第1の横葺き材31と第2の横葺き材32との隣り合う端部間には隙間が設けられていたが、本発明においては、この隙間は設けられていなくてもよい。
また、本実施形態の横葺き屋根構造では、野地板12と横葺き材3との間には断熱材が配置されていなかったが、野地板12と横葺き材3との間には断熱材が配置されてもよい。
また、本発明の屋根構造は、本実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。