(1)実施形態
(1.1)概要
本実施形態に係る屋根構造は、図1に示すように、第一屋根板5と、第二屋根板8とを備える。第二屋根板8は、第一屋根板5に対して、一方向に配置され、第一屋根板5に接続されている。
第一屋根板5は、図3に示すように、屋根面1の一部を構成する第一本体部61と、第一本体部61の一方向の端部につながり、当該端部の上方に折り返された保持体66と、保持体66に対して、一方向につながる樋部67とを有する。
第二屋根板8は、図8A,8Bに示すように、屋根面1の一部を構成する第二本体部91と、引掛け体92とを有する。引掛け体92は、第二本体部91の一方向の端部とは反対側の端部につながり、当該端部の下方に折り返され、保持体66に引掛けられる。樋部67は、保持体66の上端よりも上方に突出した立壁676を有する。
本実施形態では、図9A,9Bに示すように、屋根面1に沿って水下から水上に風が吹いて第一本体部61上の水の流れが滞っても、樋部67を通して排水することができる。樋部67は、第二屋根板8に覆われており、風の影響を受けにくいため、スムーズな排水を実現できる。また、万が一、樋部67における液面が上昇しても、立壁676によって、下地に浸水するのを抑えることができる。
(1.2)詳細
以下、本実施形態に係る縦葺き材60の接続構造について、建築物の屋根構造に基づいて詳細に説明する。本実施形態に係る建築物は、非住宅建築物である。非住宅建築物は、例えば、店舗,倉庫,工場,又は集会場等が例示される。ただし、本開示に係る建築物は、非住宅建築物に限らず、住宅建築物又は複合建築物であってもよい。
屋根構造は、建築物の上部に形成される。ここでいう「建築物の上部」には、例えば、二階建て建築物の一階部分の上部も含まれる。要するに、本開示でいう「屋根構造」には、下屋の構造も含まれる。
屋根構造は、少なくとも一つの屋根面1を有する。本開示でいう「屋根面1」とは、屋根の上面のうちの一面であって、一定の屋根勾配を有する。屋根構造として、例えば、片流れ屋根に係る屋根構造の場合、屋根構造は一つの屋根面1を有し、切妻屋根に係る屋根構造の場合、屋根構造は二つの屋根面1を有する。本開示では、複合屋根のように三つ以上の屋根面1を有していてもよい。本実施形態では、一つの屋根面1に対応する屋根構造について、主に説明する。
図1は、屋根構造の一の屋根面1の斜視図であり、一部を破断している。図1に示すように、本実施形態に係る屋根構造は、既設屋根について、改修工法を適用した屋根構造である。ただし、本開示では、屋根構造は、改修工法を適用した構造である必要はなく、新築の屋根構造であってもよい。本実施形態に係る屋根構造は、屋根下地2(下地)と、複数の既設屋根板3と、既設屋根板3の上に配置される複数の屋根板4と、既設屋根板3と屋根板4との間に配置される下葺材(不図示)と、を備える。下葺材は、図1、2において図示を省略しているが、実際は、既設屋根板3を覆う。下葺材は、例えば、アスファルトルーフィングである。
本開示では、屋根板4の下方の部材を「屋根下部材」という場合がある。本実施形態では、「屋根下部材」は既設屋根板3及び下葺材であるが、既設屋根板3が設けられない場合、「屋根下部材」は、例えば、屋根下地2である。
ここで、本開示では、一の屋根面1において最も高い部位を「水上」とし、最も低い部位を「水下」として定義する。また、水上から水下に向かう方向であって、屋根面1における設計上の排水の方向を「水流れ方向」として定義する。本実施形態では、水上が棟であり、水下が軒であり、水流れ方向は軒棟方向に平行である。また、水流れ方向に直交しかつ屋根面1に沿う方向を「横方向」として定義する。
本実施形態に係る屋根構造は、複数の屋根板4を有する。各屋根板4は、水流れ方向に延びており、すなわち、各屋根板4の長手方向は水流れ方向に平行である。本実施形態では、各屋根板4は、複数の建築板6(ここでは、縦葺き材60)、又は複数の建築板9(ここでは、縦葺き材60)で構成されており、水上から水下までの全長にわたって形成されている。複数の屋根板4は、横方向に並ぶように配置されており、隣接する端部同士が互いに接続される。以下の説明では、複数の屋根板4として、隣り合う2つの屋根板4(第一屋根板5及び第二屋根板8)の関係を主に説明する。複数の屋根板4は、第一屋根板5と第二屋根板8との関係で成り立っている。
(1.2.1)屋根下地
屋根下地2は、既設屋根板3又は複数の屋根板4の下地である。屋根下地2は、本実施形態では、野地板21と、野地板21の上面に敷かれた下葺材22と、水切り23と、を備える。下葺材22は、本実施形態では、アスファルトルーフィングである。下葺材22の上面は、屋根下地2の上面を構成する。下葺材22の上面には、複数の既設屋根板3が葺かれている。
水切り23は、野地板21の水下側の端部に取り付けられている。水切り23は、野地板21と下葺材22との間に配置されている。下葺材22を伝う水は、水流れ方向に流れ、水切り23を伝って軒下に放出される。
(1.2.2)既設屋根板
複数の既設屋根板3は、図2に示すように、屋根下地2に取り付けられている。複数の既設屋根板3は、第一屋根板5及び第二屋根板8の取付けに先立って、予め施工された屋根板であり、本実施形態では、改修の対象となる屋根板である。既設屋根板3は、本実施形態では、金属製の立平葺きの屋根板により構成されている。ただし、本開示では、既設屋根板3は、立平葺きの屋根板に限らず、瓦棒葺きの屋根板、又は波板葺き、横葺きの屋根板であってもよい。
本実施形態では、既設屋根板3は、金属板により形成されている。本開示では、金属板は、例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標),亜鉛めっき鋼板,塗装鋼板,エスジーエル(登録商標)鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム合金板,又はチタン板等が例示される。ただし、既設屋根板3は、金属製に限らず、FRP(Fiber-Reinforced Plastics),又はポリカーボネート等のように非金属製であってもよい。
既設屋根板3は、本実施形態では、縦葺き材である。既設屋根板3の長手方向は、水流れ方向に平行である。本実施形態では、各既設屋根板3は、水下から水上まで連続している。ただし、本開示では、複数の既設屋根板3を水流れ方向に接続してもよい。
横方向に隣り合う既設屋根板3は、接続端部31で接続されている。接続端部31は、既設屋根板3の横方向の端部同士が接続されることで構成されている。接続端部31は、本実施形態では、既設屋根板3の主面(屋根面)よりも上方向に突出している。接続端部31における既設屋根板3同士の接続は、端部同士を互いに締める「はぜ方式」、又は端部同士を嵌合する「嵌合方式」等により実現される。
接続端部31は、流れ方向に延びている。接続端部31は、本実施形態では、水下から水上までの全長にわたって形成されている。また、複数の接続端部31は、横方向に一定の間隔をおいて離れている。
(1.2.3)第一屋根板
第一屋根板5は、図1に示すように、既設屋根板3の上方に配置される。第一屋根板5は、屋根面1の一端から他端までつながる屋根板4であり、本実施形態では、水下から水上にわたって形成されている。第一屋根板5は、水流れ方向に接続された複数の建築板6を備える。
本実施形態に係る建築板6は、縦葺き材60である。各建築板6は、本実施形態では、金属板を曲げ加工することで形成されており、より具体的には、ロール加工によって形成されている。本開示では、金属板は、例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標),亜鉛めっき鋼板,塗装鋼板,エスジーエル(登録商標)鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム合金板,又はチタン板等が例示される。
各建築板6は、図3A,3Bに示すように、第一本体部61と、引掛け体65と、保持体66と、樋部67と、を備える。要するに、第一屋根板5は、第一本体部61と、保持体66と、樋部67と、引掛け体65とを備える。本実施形態では、第一本体部61,保持体66,樋部67及び引掛け体65は一体に形成されている。
ここで、本開示では、建築板6において、保持体66,第一本体部61,引掛け体65及び樋部67が並ぶ方向を「第一方向D1」とし、第一方向D1に直交しかつ第一本体部61の上面に沿う方向を「第二方向D2」として定義する。また、第一方向D1及び第二方向D2に直交する方向を「高さ方向D3」として定義する。
本開示でいう「沿う」とは、同一平面上の2直線(あるいは空間の2平面,又は1直線と1平面)が平行であることに加え、2直線が長手方向において一定の距離の範囲内で続いていることを意味する。「沿う」には、直線と非直線との関係も含まれる。また、「平行」とは、同一平面上の2直線(あるいは空間の2平面,又は1直線と1平面)の成す角が、例えば、0°以上10°以下である場合を含む。
第一本体部61は、建築板6の主体を構成する部分である。第一本体部61は、建築板6において、屋根面1を構成する部分であり、大部分が施工された状態において曝露される。第一本体部61は、面板部62と、立上げ部63と、立下げ部64と、を備える。本実施形態では、面板部62,立上げ部63及び立下げ部64は、曲げ加工で形成されており、面板部62,立上げ部63及び立下げ部64は一体である。
面板部62は、屋根下部材の上面に沿うように配置される。面板部62は、本実施形態では、既設屋根板3の屋根面(主面)に平行である。面板部62は、本実施形態では、既設屋根材の屋根面に載る。面板部62は、図3Aに示すように、一対の長辺621,622と、一対の短辺623,624とを備え、高さ方向D3に見て(平面視)長方形状に形成されている。
面板部62は、一対の長辺621,622として、第一長辺621と、第二長辺622と、を有する。第一長辺621と第二長辺622とは、第一方向D1に直交し、かつ第一方向D1に互いに離れている。また、面板部62は、一対の短辺623,624として、第一短辺623と、第二短辺624と、を有する。第一短辺623と第二短辺624とは、第二方向D2に直交し、かつ第二方向D2に互いに離れている。第一短辺623は、本実施形態では、水流れ方向において水上側に配置され、第二短辺624は、水流れ方向において水下側に配置される。
立上げ部63は、面板部62の一端部(第二長辺622)から立ち上がっている。立上げ部63は、本実施形態では、立上げ部63の上面(立上げ部63の厚み方向のうちの上側の面)に直交する方向に見て、長方形状に形成されている。立上げ部63は、図3Bに示すように、面板部62の第二長辺622から、第一方向D1のうちの面板部62から離れる側(外側)に行くに従って、上方向に行くように傾斜している。図3Cに示すように、立上げ部63と、面板部62とのなす角θ1は、90°以上180°未満であり、より好ましくは140°以上170°未満である。
ここで、本開示において、立上げ部63が面板部62の一端部から立ち上がるとは、面板部62よりも高さ方向D3の上側に立上げ部63が位置することを意味する。したがって、本開示において、立上げ部63は、面板部62に対して傾斜してもよいし、面板部62に対して直交してもよい。
立上げ部63の下端面(基端面631)は、屋根下部材に対向する。本実施形態では、基端面631は、既設屋根板3の屋根面に載る。高さ方向D3において、立上げ部63と立下げ部64との接続部分の裏面641(入隅部分)と、基端面631と、の間の寸法Hは、20mm以上に形成されており、より好ましくは、25mm以上に形成されている。
立下げ部64は、立上げ部63の上端(立上げ部63の立ち上げ方向における上側の辺)から下側に延びる。ここでいう「下側に延びる」とは、立下げ部64の延びる方向が、高さ方向D3のうちの下方向の成分を有することを意味する。要するに、立下げ部64は、立上げ部63の上端よりも高さ方向D3の下側にあれば、鉛直面に平行であってもよいし、鉛直面に対して傾斜してもよい。本実施形態に係る立下げ部64は、立上げ部63の上端から、第一方向D1のうちの外側に行くに従って下方向に行くように傾斜している。
立下げ部64は、本実施形態では、立下げ部64の上面(厚み方向の両面のうちの上側の面)に直交する方向に見て、長方形状に形成されている。立下げ部64の下端は、本実施形態では、面板部62よりも高さ方向D3の上側に位置している。
第一本体部61の第二方向D2の水上側の端部の上面と、水下側の端部の下面とには、パッキン69a,69bが設けられている。パッキン69aは、水上側の端部のうち、第二方向D2において、後述の水返し片68よりも水下側に配置されている。また、パッキン69bは、水下側の端部のうち、第二方向D2において、後述の折り重ね片70よりも水上側に配置されている。パッキン69aは、本実施形態では、第一本体部61の第一方向D1の全長にわたって形成されている。また、パッキン69bは、本実施形態では、第一本体部61の第一方向D1のうちの少なくとも面板部62に対応する位置に形成されている。
ただし、本開示において、パッキン69a,69bの第一方向D1の長さについては、パッキン69bを第一方向D1の全長にわたって形成し、パッキン69aを第一方向D1のうちの少なくとも面板部62に対応する位置に形成してもよい。また、本実施形態では、パッキン69a,69bは、面板部62と立上げ部63との角部に対応する部分が、他の部分よりも幅広であるが、全長にわたって同一幅であってもよい。
パッキン69a,69bは、本実施形態では、製造時において、建築板6に接着されている。ただし、本開示では、製造時にパッキン69a,69bが設けられなくてもよく、例えば、施工時において、現場作業でパッキン69a,69bを建築板6に取り付けてもよい。
引掛け体65は、第一方向D1に隣接する建築板6のうち、引掛け体65側の建築板6(第二屋根板8)の保持体66に引掛けられ、かつ第二方向D2に隣接する建築板6(第一屋根板5)に引掛けられる。引掛け体65は、第一本体部61の第一方向D1の端部から第一方向D1の内側に突出して、第一本体部61(ここでは、立下げ部64)に対し、高さ方向D3の下側(ここでは、下方)に位置している。引掛け体65は、傾斜部651と、先端部652と、を備える。
傾斜部651は、隣接する建築板6の保持体66に引っ掛かり、当該保持体66に対して、第一本体部61が高さ方向D3の上側へ移動するのを規制する。傾斜部651は、立下げ部64の下端から、下方向に行くに従って、第一方向D1のうちの内側(面板部62側)に行くように傾斜している。本開示では、傾斜部651は、鉛直面に対して、0°より大きくかつ90°以下の範囲で角度を有していればよい。
先端部652は、保持体66と、第一本体部61との入隅部分に対して、引掛け体65を差し入れやすいように構成された部分である。先端部652は、傾斜部651の下端から突出しており、引掛け体65の下端部に形成されている。先端部652は、傾斜部651に対して、角度を有している。ただし、本開示において、先端部652は、傾斜部651と同じ角度であってもよい。
保持体66は、第一方向D1に隣接する建築板6(第二屋根板8)の引掛け体65が引っ掛かる部分である。保持体66は、第一本体部61の第一方向D1の端部につながっている。保持体66は、第一本体部61の第一方向D1の一方の端部から、上方向に行くに従って、第一方向D1の内側に行くように傾斜している。保持体66は、第一本体部61に対し、高さ方向D3の上側に配置されている。要するに、保持体66は、第一本体部61の端部から折り返されている。保持体66は、本実施形態では、第一本体部61の先端部を曲げ加工することで形成されている。
ここで、保持体66は、本実施形態では、第一本体部61の先端部を曲げ加工することで形成されているが、本開示では、保持体66は、溶接によって形成されてもよい。要するに、本開示において、「折り返される」とは、第一本体部61と保持体66との間の角度が鋭角であることを意味し、製造方法について、曲げ加工に特定することを意図するものではない。
樋部67は、保持体66の先端につながっており、雨水を受けて、雨水を水流れ方向に流す。樋部67は、本実施形態では、連結部671と、排水溝672と、立壁676と、支持片677と、を備える。
連結部671は、保持体66と排水溝672とをつなぐ部分である。連結部671は、施工された状態で、第一方向D1の外側に行くに従って下方向に行くように傾斜している。連結部671の第一方向D1の外側の端部には、排水溝672がつながっている。これによって、連結部671に付着した水は、表面を伝って排水溝672に流れる。
排水溝672は、連結部671につながっている。排水溝672は、本実施形態では、断面U字状に形成されている。排水溝672は、水流れ方向に一様な断面形状に形成され、第一本体部61に対して、水流れ方向の全長に形成されている。排水溝672は、連結部671につながる第一側壁673と、底壁674と、第一側壁673と対向する第二側壁675とを備える。
底壁674は、第一側壁673と第二側壁675との下端をつなぐ。底壁674は、施工された状態では、図8Bに示すように、固着具41を介して屋根下地2に取り付けられ、屋根下地2の上面に沿う。なお、施工した状態では、固着具41は、コーキング等の止水材で覆われてもよいし、止水材で覆われなくてもよい。
立壁676は、第二側壁675の上端から上方に突出している。立壁676は、上下方向において、保持体66の上端よりも上方に突出した部分である。立壁676は、排水溝672の長手方向(水流れ方向)の全長にわたって形成されている。立壁676は、本実施形態では、第二側壁675に対して境界があらわれないが、本開示では、第二側壁675と立壁676との間が段状に形成されてもよい。
支持片677は、立壁676の上端に設けられている。支持片677は、図8Bに示すように、施工した状態では、第一方向D1に隣接する建築板6の立上げ部63の下面に対向する。本実施形態では、支持片677は、第一方向D1に隣接する建築板6の立上げ部63の下面を支持する。支持片677は、第一方向D1のうちの外側に行くに従って下方向に行くように傾斜している。
本実施形態では、立壁676が、立上げ部63と立下げ部64との接続部分の裏面641を支持しているため、立上げ部63又は立下げ部64に対して、積雪や踏力等で下方向に荷重が掛かっても、立上げ部63及び立下げ部64が変形しにくい。本実施形態では、立壁676の上端に支持片677が設けられているため、裏面641に対する立壁676の上端の位置がずれにくい。要するに、本実施形態では、立壁676による、立上げ部63及び立下げ部64に対する支持状態を安定させることができる。
すなわち、支持片677が設けられていない場合、仮に立下げ部64に対して下方向に荷重が掛かると、立下げ部64に対して立壁676が傾斜しているため、立壁676は、第一方向D1の立上げ部63側に移動する。これにより、立壁676は、立上げ部63及び立下げ部64を支持できなくなる可能性がある。
これに対し、本実施形態では、立下げ部64に対して下方向に荷重が掛かると、支持片677が立上げ部63の裏面に対して下方から当たるから、立壁676が第一方向D1の立上げ部63側へ移動するのが規制される。また、立上げ部63に対して下方向に荷重が掛かった場合、支持片677は、立壁676に対して弾性変形する。このとき、立壁676は、立下げ部64によって、第一方向D1の立下げ部64側への移動が規制されているため、立壁676の上端と、裏面641との位置関係が変わりにくい。この結果、本実施形態では、立壁676による、立上げ部63及び立下げ部64に対する支持状態を安定させることができる。
本実施形態に係る建築板6では、図3Aに示すように、建築板6の第二方向D2の水上側の端部は、水返し片68を有する。水返し片68は、第一本体部61の厚み方向の上側において、面板部62及び立上げ部64の第二方向D2の一方側(ここでは水上側)の端縁から、第二方向D2の他方側(ここでは水下側)に向かって延びている。
水返し片68は、図4に示すように、屋根面1に沿う位置A1と、屋根面1の上側(要するに、縦葺き材60の上側)に突出する位置A2との間で切替え可能である。屋根面の上側に突出する位置A2にある水返し片68の上端は、本実施形態では、立上げ部64の上端の延長線上に位置する。本実施形態では、屋根面1の上側に突出する位置A2にある水返し片68は、鉛直方向に沿って延びている。
水流れ方向のうち最も水上に配置される建築板6において、水返し片68は、施工時において、屋根面1の上側に突出する位置A2に切り替えられる。これによって、いわゆる面戸を構成することができ、第一本体部61と、例えば棟包みとの間に生じる隙間を覆うことができる。
屋根面1の上側に突出する位置A2にある水返し片68は、本実施形態では、鉛直方向に沿って延びているが、本開示では、屋根面1に直交する方向に延びていてもよい。要するに、「縦葺き材の上側」とは、縦葺き材の厚み方向において、上面(屋根面1)を含む仮想面よりも屋外側であることを意味する。
また、屋根面1に沿う位置A1にある水返し片68の上面は、水流れ方向の水上側に隣接する建築板6の下面に対向する。このとき、屋根面1に沿う位置A1にある水返し片68は、二次止水として機能する。要するに、第一屋根板5では、後述の接続部7において、パッキン69a,69bが一次止水として機能し、水返し片68が二次止水として機能し、これによって、接続部7において高い止水性が確保されている。
本実施形態では、図3Aに示すように、建築板6の第二方向D2の水下側の端部は、折り重ね片70を有する。折り重ね片70は、建築板6の第二方向D2の水下側の端部に対し、ヘミング曲げを施して形成された部分である。また、建築板6では、第二方向D2の水下側の端部のうち、第一方向D1の一方の端部(角部)は、一部が切り欠かれている。この切欠きによって、複数の建築板6が横方向及び水流れ方向に接続された場合の金属板の重なり枚数を抑えることができる。
(1.2.3.1)接続部
このような構成の一の建築板6は、図5A~5Fに示すように、水流れ方向に隣接する建築板6に対し、接続部7で接続される。要するに、第一屋根板5は、複数の建築板6を接続部7において接続して構成される。接続部7は、図1に示すように、本実施形態では、横方向に隣り合わず、第一屋根材5の接続部7と、第二屋根板8の接続部7は、水流れ方向にずれている(これを千鳥配置という)。接続部7は、図5Aに示すように、第一端部71と、第二端部75と、を備える。
第一端部71は、水流れ方向に接続された建築板6のうち水下側の建築板6の水上側の端部である。第一端部71は、下重ね部72と、下引掛け部73と、下保持部74とを備える。ここで、本開示において「端部」とは、水流れ方向において、端面から所定寸法内側の位置までの一定の範囲を意味する。
下重ね部72は、第二端部75の下面に重ねられる部分である。下重ね部72は、第一本体部61の水上側の端部である。下重ね部72の上面は、第一端部71と第二端部75とが接続されると、第二端部75の下面に対向する。
下引掛け部73は、水流れ方向の水上側に隣接する建築板6の引掛け体65に重なる部分である。下引掛け部73は、引掛け体65の水上側の端部である。下引掛け部73は、下重ね部72につながっている。
下保持部74は、水流れ方向の水上側に隣接する建築板6の保持体66に重なる部分である。下保持部74は、保持体66の水上側の端部である。下保持部74は、下重ね部72につながっている。
第二端部75は、水流れ方向に接続された建築板6のうち水上側の建築板6の水下側の端部である。第二端部75は、第一端部71に接続される。第二端部75は、上重ね部76と、上引掛け部77と、上保持部78とを備える。
上重ね部76は、第一端部71の下重ね部72(要するに、第一端部71の上面)に重ねられる部分である。上重ね部76は、第一本体部61の水下側の端部である。上重ね部76の下面は、下重ね部72の上面に対向する。
上引掛け部77は、水流れ方向の水下側に隣接する建築板6の下引掛け部73に重なる部分である。上引掛け部77は、引掛け体65の水下側の端部である。上引掛け部77は、上重ね部76につながっている。上引掛け部77は、上重ね部76の第一方向D1の端部(後述の第一位置側の端部)から、第一方向D1のうちの内側に突出して、上重ね部76の下方に位置している。上引掛け部77は、下引掛け部73に重なることで引掛けられ、第一方向D1のうちの内側への移動が規制される。
上保持部78は、水流れ方向の水下側に隣接する建築板6の下保持部74に重なる部分である。上保持部78は、保持体66の水下側の端部のことである。上保持部78は、上重ね部76につながっている。上保持部78と下保持部74とが重なると、下保持部74は、第二端部75の第一方向D1における上引掛け部77とは反対側の端部(後述の第二位置側の端部)を保持する。
第一端部71に対し、第二端部75を接続するには、図5B,5Eに示すように、平面視において、第二端部75を、第一端部71に対して、側方(ここでは、第一方向D1の外側)に位置させる。この第一端部71に対する第二端部75の位置を「第一位置」という。第一位置では、平面視において、第一端部71に対して、第二端部75のうちの少なくとも上引掛け部77が、側方に位置していればよい。
次いで、図5C,5Fに示すように、第一位置にある第二端部75を、第一方向D1のうちの内側に移動させ、第二端部75の上重ね部76を、第一端部71の下重ね部72に重ねる。この第一端部71に対する第二端部75の位置を「第二位置」という。これによって、第一端部71の下引掛け部73に対して、第二端部75の上引掛け部77が重なり、第一端部71の下保持部74に対して、第二端部75の上保持部78が重なる。このとき、パッキン69aの上面にパッキン69bの下面が接触して密着する。
第一端部71に対して、第二端部75を接続する際に、第一端部71の上面に、第二端部75の引掛け体65の先端が擦って、第一端部71の上面に傷がついても、当該傷が露出しない。このため、傷による耐食性の低下を抑えることができる。
このとき、第二端部75は、第一端部71に対して、上方向への移動が規制される。そして、図6に示すように、第二端部75は、第一端部71に対して、水流れ方向に平行な方向において、移動可能である。したがって、本実施形態に係る第一屋根板5は、接続部7において、第一端部71と第二端部75との重ね代を調整することができる。
また、第二端部75は、第一端部71に対して、横方向に移動させることで、取付けと取外しとが可能であるため、複数の縦葺き材60により屋根面1を葺いた後であっても、一の縦葺き材60だけを取り外しやすい。
(1.2.4)第二屋根板
第二屋根板8は、図1に示すように、既設屋根板3の上方に配置される。第二屋根板8は、第一屋根板5に対し、横方向に配置される。第二屋根板8は、第一屋根板5に対して接続される。第二屋根板8は、屋根面1の一端から他端までつながる屋根板4であり、本実施形態では、水下から水上にわたって形成されている。第二屋根板8は、第一屋根板5と同様、水流れ方向に接続された複数の建築板9を備える。
本実施形態に係る建築板9は、縦葺き材60である。第二屋根板8の建築板9は、第一屋根板5の建築板6と同じ構造である。ただし、以下の説明では、第二屋根板8の建築板9と、第一屋根板5の建築板6とを区別するために、第一本体部61を「第二本体部91」とし、保持体66を「保持体93」とし、樋部67を「樋部94」とし、引掛け体65を「引掛け体92」とする。
第二屋根板8は、第一屋根板5に対して、次のようにして取り付けられる。本実施形態では、第一屋根板5及び第二屋根板8において、第一方向D1を横方向に平行に配置し、第二方向D2を水流れ方向に平行に配置する。図7A~7Fに示すように、第二屋根板8の引掛け体92を、第一屋根板5の保持体66と、第一本体部61との間の入隅部分に差し入れる(図7B,7E)。すると、第二屋根板8の引掛け体92は、第一屋根板5の保持体66に対して引掛けられる。
この状態において、図7C,7Fに示すように、第二屋根板8の第二本体部91は、第一屋根板5の支持片677に載る。これによって、第二屋根板8の引掛け体92は、第一屋根板5の保持体66に対して、上下方向に引掛けられると共に、第二本体部91の立上げ部63及び立下げ部64は、第一屋根板5の支持片677によって支持される。
ここで、第一屋根板5及び第二屋根板8が接続された状態を、図8A,8Bに示す。図8Bは、図8AのG部分拡大図である。
図8Aに示すように、第一屋根板5及び第二屋根板8が既設屋根板3の上方に取り付けられると、面板部62が既設屋根板3の屋根面に載り、樋部67の底壁674が既設屋根板3の屋根面に載る。また、図8Bに示すように、樋部67の立壁676及び第二側壁675は、既設屋根板3の接続端部31に対して、第一方向D1の一方側に沿って配置される。本実施形態では、支持片677は、接続端部31の上方に配置される。この状態で、樋部67の底壁674が、固着具41を介して、屋根下地2に取り付けられる。
このとき、既設屋根板3の接続端部31が、第二屋根板8の立上げ部911及び立下げ部912の下方の空間に収容される。本実施形態では、接続端部31と、立上げ部911及び立下げ部912との間には隙間がある。
ただし、本開示では、接続端部31は、立上げ部911及び立下げ部912の下方の空間に収容されていればよく、接続端部31に対して、立上げ部911及び立下げ部912が載っていてもよい。また、接続端部31が、立上げ部911及び立下げ部912の下方の空間に収容されていることには、立上げ部911及び立下げ部912のいずれか一方の下方に、接続端部31が位置していることも含む。
本実施形態では、第一本体部61の上面において、水流れ方向に雨水が流れる。例えば、本実施形態の屋根面1が緩勾配(例えば、2寸以下)である場合、図9Aに示すように、第一本体部61の上面で排水が滞ることがある。この場合、排水の水面が、保持体66の上端以下である場合には、雨水は、第一本体部61の上を流れる。
この状態において、さらに排水の水面が上昇すると、水面は保持体66の上端を超える。すると、図9Bに示すように、雨水は樋部67に流れ込む。樋部67に流れ込んだ雨水は、樋部67を伝って水流れ方向に排水される。
この状態よりもさらに排水の水面が上昇した場合でも、本実施形態では、雨水が屋根下地2に浸水するのを防ぐことができる。すなわち、本実施形態に係る第一屋根板5は、保持体66の上端よりも上方に突出した立壁676を有するため、雨水の水面が保持体66の上端を超えても、樋部67で受けることができる。この結果、雨水が屋根下地2に浸水するのを防ぐことができる。
(1.3)使用例
(1.3.1)横葺き
上記実施形態では、建築板6,9を縦葺き材60として用いる例であったが、建築板6は、図10に示すように、横葺き材600としても使用することができる。すなわち、本実施形態では、建築板6は、横葺き材600と縦葺き材60とで、選択的に用いられる。
図10に示すように、建築板6を横葺き材600として使用する場合、第一屋根板5及び第二屋根板8において、第一方向D1は水流れ方向に平行であり、第二方向D2は横方向に平行である。また、第一屋根板5及び第二屋根板8は、第一方向D1において、引掛け体65側の端部は、水下側に配置され、保持体66側の端部は水上側に配置される。
言い換えると、本使用例では、第一屋根板5の長手方向は、横方向に沿っており、かつ、面板部62,立上げ部63及び立下げ部64がこの順で、水流れ方向に沿う。また、第二屋根板8の長手方向は、横方向に沿っており、かつ、面板部910,立上げ部911及び立下げ部912がこの順で、水流れ方向に沿う。
建築板6,9を横葺き材600として使用する場合でも、建築板6,9を既設屋根板3の上方に配置することができる。
(2)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下、実施形態の変形例を説明する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
(2.1)変形例1
変形例1に係る建築板6は、図11A,11Bに示すように、本体部610と、引掛け体65と、保持体66とを備える。本体部610は、面板部62と、立上げ部63と、立下げ部64とを備える。本体部610は、上記実施形態における「第一本体部61」及び「第二本体部91」に対応する。引掛け体65と保持体66の構成は、実施形態1と同じである。
面板部62は、既設屋根板3の上面に沿うように配置される。本変形例では、面板部62は、既設屋根板3の屋根面に対して傾斜している。面板部62の第一方向D1の引掛け体65側の端部は、反対側の端部よりも上方向に位置している。
立上げ部63は、面板部62の引掛け体65とは反対側の端部から立ち上がる。立上げ部63は、鉛直面に沿って立ち上がっている。立下げ部64は、立上げ部63の上端につながっている。立下げ部64は、面板部62と平行であり、また、面板部62と同じサイズである。立下げ部64は、既設屋根板3の上面に沿う。
変形例に係る建築板6では、立上げ部63及び立下げ部64の下方の空間には、接続端部31が収容される。
変形例1にあっても、接続部7において、水流れ方向に複数の建築板6を接続できるため、第一端部71と第二端部75との重ね代の調整が可能である。また、施工後における複数の建築板6において、水流れ方向の一部を取り外しやすい。さらに、第一端部71に対し、第二端部75を横方向に移動させることで、建築板6同士を接続するため、水流れ方向に建築板6を接続するに当たり、建築板6の表面に傷が付くのを防ぐことができる。
また、変形例1の建築板6では、第一方向D1の中間部分に立上げ部63が形成されているため、耐風圧に対する強度も高くできる。
(2.2)その他の変形例
以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
上記実施形態に係る縦葺き材60の接続構造では、接続部7が隣り合わないように配置した千鳥配置であったが、図12に示すように、横方向において接続部7は隣り合ってもよい。また、横葺き屋根においても、「(1.3.1)横葺き」で説明した構造のように、千鳥配置であってもよいし、接続部7が隣り合ってもよい。
上記実施形態では、第一屋根板5は、複数の建築板6で構成されたが、水流れ方向に連続した一つの建築板6で構成されてもよい。同様に、第二屋根板8も、水流れ方向に連続した一つの建築板9で構成されてもよい。
上記実施形態では、屋根板4として、横葺き材600と、縦葺き材60とで選択的に用いることができたが、本開示では、縦葺き材専用の屋根板であってもよいし、横葺き材専用の屋根板であってもよい。
本開示において接続端部31は、波板等を屋根下地に固定し、屋根面から上方向に突出するボルトであってもよい。接続端部31は、一方向に延びていなくてもよい。
上記実施形態において、第二端部75の水下側の端部は、第一端部71に向かって折り曲げられてもよい。この場合、第二端部75の水下側の端縁は、第一端部71の上面に対向するが、第一端部71の上面に対して接触してもよいし、離れていてもよい。
(3)態様
以上説明したように、第1の態様に係る屋根構造は、第一屋根板(5)と、第一屋根板(5)に対し一方向に配置され、第一屋根板(5)に接続された第二屋根板(8)と、を備える。第一屋根板(5)は、屋根面(1)の一部を構成する第一本体部(61)と、第一本体部(61)の一方向の端部につながり、当該端部の上方に折り返された保持体(66)と、保持体(66)に対して前記一方向につながる樋部(67)とを有する。第二屋根板(8)は、屋根面(1)の一部を構成する第二本体部(91)と、引掛け体(92)とを有する。引掛け体(92)は、第二本体部(91)の一方向の端部とは反対側の端部につながり、当該端部の下方に折り返され、保持体(66)が引掛けられる。樋部(67)は、保持体(66)の上端よりも上方に突出した立壁(676)を有する。
この態様によれば、屋根面(1)に沿う風により、第一本体部(61)上の水の流れが滞っても、樋部(67)を通して排水することができる。樋部(67)は、第二屋根板(8)に覆われており、風の影響を受けにくいため、スムーズな排水を実現できる。また、万が一、樋部(67)において液面が上昇しても、立壁(676)によって、下地に浸水するのを抑えることができる。
第2の態様に係る屋根構造では、第1の態様において、第二本体部(91)の少なくとも一部は、立壁(676)の上端部に載る。
この態様によれば、施工された状態において、第二本体部(91)の形状を安定させることができる。
第3の態様に係る屋根構造では、第1又は第2の態様において、第一屋根板(5)及び第二屋根板(8)が縦葺き材(60)である。
この態様によれば、縦葺き材(60)において、下地への浸水を抑えることができる。
第4の態様に係る屋根構造では、第1又は第2の態様において、第一屋根板(5)及び第二屋根板(8)が横葺き材である。前記一方向とは反対方向が、水流れ方向である。
この態様によれば、横葺き材において、下地への浸水を抑えることができる。
第5の態様に係る屋根板(4)は、本体部(第一本体部61)と、保持体(66)と、樋部(67)と、引掛け体(65)とを備える。保持体(66)は、本体部の一方向の端部につながり、当該端部の上方に折り返される。樋部(67)は、保持体(66)に対して一方向につながる。引掛け体(65)は、本体部の一方向の端部とは反対側の端部につながり、当該端部の下方に折り返される。樋部(67)は、保持体(66)の上端よりも上方に突出した立壁(676)を有する。
この態様によれば、屋根面(1)に沿う風により、本体部(第一本体部61)上の水の流れが滞っても、樋部(67)を通して排水することができる。樋部(67)は、第二屋根板(8)に覆われており、風の影響を受けにくいため、スムーズな排水を実現できる。また、万が一、樋部(67)において液面が上昇しても、立壁(676)によって、下地に浸水するのを抑えることができる。
第2~第4の態様に係る構成については、屋根構造に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。