車両の駆動力源として一般に用いられている内燃機関は、回転数の増大に応じて出力トルクが大きくなる特性を有しているのに対して、車両に要求される駆動力は、低車速で大きく、高車速で相対的に小さいのが一般的である。すなわち、車両においては、内燃機関の出力特性に基づくトルクとは反対のトルクが要求される。また、内燃機関の効率の良い運転点は限られている。そのため、内燃機関を駆動力源とする車両では、変速比を適宜に変化させることのできる変速機が搭載され、車速やアクセル開度などの車両の走行状態に基づいて変速比を適宜に設定し、必要とする駆動力を得るとともに内燃機関を効率の良い運転点で運転している。さらに、変速比に段差があると、熱効率の良い運転点がそれらの変速比の間の変速比で設定できる回転数にある場合には、一方の変速比から他方の変速比に切り替わるまでの間の運転状態では熱効率(あるいは燃費)が悪化する。そこで最近では、有段変速機に替えて無段変速機が使用されるようになってきている。
車両用の無段変速機としてベルト式無段変速機とトロイダル型無段変速機とが広く知られている。前者のベルト式無段変速機は、ベルトを巻き掛ける溝の幅を変化させることに伴ってベルトの巻き掛け半径が大小に変化する一対のプーリを有しており、一方のプーリの溝幅を広げてベルトの巻き掛け半径を減少させ、それに伴って他方のプーリの溝幅が小さくなってベルト巻き掛け半径が増大するように構成されている。また、後者のトロイダル型無段変速機は、向かい合わせて配置されている一対のディスクの間にパワーローラを挟み込み、そのパワーローラの各ディスクに対する接触点を結んだ線が、ディスクの回転中心軸線に対して傾斜することにより、各ディスク同士の回転数に差を生じさせ、その傾斜角度(傾転角度)が大きいほど、ディスク同士の回転数の差すなわち変速比が「1」から離れるように構成されている。
これらの無段変速機では、変速比を連続的に変化させることができるようにするために、プーリとベルトとの間の摩擦力、あるいはディスクとパワーローラとの間の摩擦力を利用してトルクを伝達している。摩擦力は、二つの部材の接触箇所における摩擦係数と垂直荷重(もしくは法線方向の荷重)との積であるから、伝達するべきトルクに応じて垂直荷重を大きくすることになる。その垂直荷重は車両用のベルト式無段変速機では、プーリがベルトを挟み付ける荷重であり、これは例えばプーリに油圧アクチュエータを一体に形成し、その油圧アクチュエータに供給する油圧によって発生させている。
一方、車両においては発進時に大きい駆動力が要求され、これに対して定常的な走行状態すなわち巡航時に要求される駆動力は発進時に比較して小さい。そのため、上記の摩擦力を発生させるための垂直荷重は発進時に大きくする必要があり、ベルト式無段変速機では挟圧力を発生させるための油圧を発進時に高くすることになる。車両の駆動状態として比較的短時間である発進時に備えて、大きい油圧を発生させる油圧機器を設けるとすれば、駆動装置やそのための油圧装置が大型化し、また高油圧を発生させることに伴って燃費が悪化する可能性がある。
このような課題を解消することのできる装置が、特開2000-130548号公報や特開2004-076876号公報あるいは特開2005-308041号公報などに記載されている。特開2000-130548号公報に記載されている装置について説明すると、第1のクラッチによって入力軸に連結されるギヤ列と、第2のクラッチによって入力軸に連結されるベルト式無段変速機とを備えている。そのギヤ列は、前進段と後進段とを設定できるように構成されており、入力軸と同一軸線上に設けられたドライブギヤから第1のカウンタシャフトにトルクを伝達し、そのカウンタシャフトから前進段用のギヤ列と後進段用のギヤ列とに切り替えてトルクを伝達するように構成されている。
その第1のカウンタシャフトには、上記のドライブギヤに噛み合っているドリブンギヤとリバースドライブギヤとが設けられており、さらにアウトプットドライブギヤとリバースドリブンギヤとが同軸上にかつ回転可能に配置されている。第1のカウンタシャフトとアウトプットドライブギヤとの間、およびアウトプットドライブギヤとリバースドリブンギヤとの間にドグクラッチが設けられ、そのドグクラッチによって、アウトプットドライブギヤに対して第1のカウンタシャフトを連結し、あるいはアウトプットドライブギヤに対してリバースドリブンギヤを連結するように構成されている。第1のカウンタシャフトに取り付けられているリバースドライブギヤには、第1のアイドラーシャフトに取り付けられた第1のアイドルギヤが噛み合っており、その第1のアイドルギヤに噛み合っている第2のアイドルギヤが第2のアイドラーシャフトに取り付けられている。そして、この第2のアイドラーシャフトには、上記のリバースドリブンギヤに噛み合っている第3のアイドルギヤが取り付けられている。
そして、アウトプットドライブギヤが、出力軸上に回転可能に設けられたアウトプットドリブンギヤに噛み合っている。そのアウトプットドライブギヤと出力軸との間には、互いに並列に配置されたワンウェイクラッチと第3のクラッチとが設けられている。さらに、出力軸にはベルト式無段変速機における従動側にセカンダリープーリが取り付けられ、ベルトによってこのセカンダリープーリと連結されている駆動側のプライマリープーリが前記入力軸と同一軸線上に配置され、前記第2のクラッチによって入力軸とプライマリープーリとが連結されるように構成されている。したがって、特開2000-130548号公報に記載されている装置では、前進方向への発進の際に第1のクラッチを係合させ、ドグクラッチによって第1のカウンタシャフトとアウトプットドライブギヤとを連結することにより、入力軸からギヤ列を介して出力軸にトルクが伝達される。また、第1クラッチを係合させ、かつドグクラッチによってアウトプットドライブギヤに対してリバースドリブンギヤを連結すれば、入力軸から第1のカウンタシャフトおよび第1のアイドラーシャフトならびに第2のアイドラーシャフトを介してリバースドリブンギヤおよびアウトプットドライブギヤにトルクが伝達されるので、出力軸が前進方向への発進時とは反対方向に回転し、後進段が設定される。そして、第1のクラッチに替えて第2のクラッチを係合させれば、入力軸からベルト式無段変速機を介して出力軸にトルクが伝達され、変速比を無段階に変化させることのできる前進走行状態になる。
他方、特開2004-076876号公報に記載された装置では、エンジンが出力した動力を伝達する入力軸と、ベルト式無段変速機におけるプライマリープーリとの間に、シングルピニオン型遊星歯車機構からなる前後進切替機構が設けられ、その前後進切替機構におけるリングギヤとプライマリープーリとが一体となって回転するように連結され、またサンギヤに入力軸が連結されている。したがって、サンギヤとリングギヤとをクラッチによって連結することにより前進状態となり、キャリヤをブレーキによって固定することにより後進状態となる。さらに、入力軸と、セカンダリープーリに一体化されている出力軸との間には、無段変速機による最大変速比より大きい変速比のギヤ列が設けられており、そのギヤ列を構成している入力ギヤが入力軸に一体化され、またその入力軸にアイドルギヤを介して連結されている出力ギヤは、出力軸に回転可能に嵌合させられるとともに、出力ギヤと出力軸との間に、ワンウェイクラッチと摩擦クラッチとが直列に配列されている。
したがって、前進状態で発進する場合、入力軸をプライマリープーリに連結するためのクラッチを解放しておき、また出力軸側のクラッチを係合させておくと、入力軸からギヤ列およびワンウェイクラッチならびにこれと直列に配列されているクラッチを介して出力軸にトルクが伝達される。その状態から入力軸とプライマリープーリとをクラッチによって連結すると、無段変速機の最大変速比がギヤ列による変速比より幾分小さいから、セカンダリプーリおよびこれと一体の出力軸が従前より大きい回転数、より具体的には出力ギヤより高回転数になってワンウェイクラッチが解放する。すなわち、トルクは無段変速機を介して出力軸に伝達される。このように、発進時はギヤ列がトルクの伝達を行うので、無段変速機に発進時の大きいトルクが掛かることがない。
また、特開2005-308041号公報に記載された装置では、前後進切替機構を構成しているシングルピニオン型遊星歯車機構のサンギヤに、エンジンが出力した動力が伝達され、そのサンギヤをベルト式無段変速機のプライマリープーリと一体の入力軸に連結するクラッチが設けられている。その入力軸の外周側にワンウェイクラッチを介して入力ギヤが嵌合されており、この入力ギヤが前後進切替機構におけるリングギヤに連結されている。なお、そのワンウェイクラッチは、前進回転方向で入力軸がその外周側の入力ギヤより高速で回転する場合に係合するように構成されている。また、セカンダリープーリと一体の出力軸の外周側には他のワンウェイクラッチを介して出力ギヤが嵌合されており、前記入力ギヤとの間にアイドルギヤが配置され、入力ギヤと出力ギヤとがこのアイドルギヤに噛み合っている。すなわち、入力ギヤと出力ギヤとが共に同方向に回転するように構成されている。これら入力ギヤと出力ギヤとのギヤ比(変速比)は、上記の各プーリとこれらに巻き掛けられたベルトとからなる無段変速機で設定できる最も大きい変速比より僅かに小さい変速比に設定されている。そして、当該他のワンウェイクラッチは、前進回転方向で、出力軸が出力ギヤより高速で回転する場合に係合するように構成されている。また、当該他のワンウェイクラッチと並列に摩擦式のクラッチが設けられている。さらに、後進状態を設定するために、前後進切替機構におけるキャリヤを固定するブレーキが設けられている。
したがって特開2005-308041号公報に記載された装置では、例えば前進走行するために発進する場合、サンギヤと入力軸とがクラッチによって連結され、無段変速機を主体とする主変速経路に入力軸を介してトルクが伝達され、上記の各ギヤを主体とする副変速経路にワンウェイクラッチが係合することによりトルクが伝達される。その場合、ギヤ列による変速比が無段変速機の最大変速比より幾分小さいので、出力ギヤが出力軸より高速で回転し、出力軸側のワンウェイクラッチが解放状態になり、トルクはギヤ列を介して駆動輪に伝達される。すなわち、無段変速機には発進時の大きいトルクが掛からない。発進後、車速の増大に従って無段変速機の変速比を次第に小さくするとセカンダリプーリと一体の出力軸の回転数がその外周側に設けられている出力ギヤの回転数に達し、変速比の低下によってその回転数が更に増大する。その結果、出力軸側のワンウェイクラッチが係合状態になり、駆動輪には無段変速機を介してトルクが伝達される。なお、その場合、入力軸側のワンウェイクラッチは解放状態になるので、インターロック状態は生じない。
これらいずれの公報に記載された装置であっても、ベルト式無段変速機と並列にギヤ列が設けられ、主として発進時にそのギヤ列を介して、発進のためのトルクを伝達するように構成されている。特に特開2000-130458号公報に記載された装置では、そのギヤ列に入力されたトルクを、発進のためのギヤ対と後進走行のためのギヤ対とにドグクラッチによって切り替えて伝達するように構成されている。そのため、特開2000-130458号公報に記載された装置では、上述した第1および第2のクラッチと、ドグクラッチならびにワンウェイクラッチとの合計四つの係合機構が必要であり、またそのワンウェイクラッチに対して並列に第3のクラッチを設ける必要がある。したがって、特開2000-130458号公報に記載された装置は、ベルト式無段変速機を使用せずに発進時のトルクの伝達および後進走行のためのトルクの伝達を行うことができるが、そのようなトルクの伝達経路を成立させるための係合機構の数が多くなり、それに伴って装置の全体としての構成が複雑化し、また大型化する可能性がある。
また、特開2000-130458号公報に記載された装置は、前進方向への発進のためのトルクの伝達経路と後進走行のためのトルクの伝達経路とをドグクラッチによって切り替えるように構成されているので、いわゆるガレージシフトの際のシフトに遅れが生じる可能性がある。すなわち、ドグクラッチはトルクが掛かっていない状態で切替動作させることになるから、ガレージシフトの場合、特開2000-130458号公報に記載された装置では、上述した第1のクラッチを解放してドグクラッチに対するトルクの伝達を遮断し、その状態でドグクラッチを切替動作させ、その後に第1のクラッチを係合させることになる。その結果、ドグクラッチに掛かるトルクが抜けるのを待つことになり、またドグクラッチが切り替わったことを確認してから第1のクラッチを係合させることになるので、これらの動作に時間を要し、しかも不可避的な無駄時間が生じるので、ガレージシフトのシフト応答性が悪化する可能性がある。
一方、特開2004-76876号公報に記載された装置は、後進走行する場合、前後進切替機構を後進状態に設定し、その前後進切替機構を経由したトルクをベルト式無段変速機に伝達し、そのベルト式無段変速機から駆動輪にトルクを伝達するように構成されている。したがってこの特開2004-76876号公報に記載された装置では、後進段での変速比が無段変速機で設定できる変速比に制限されてしまう。
さらに、特開2005-308041号公報に記載された装置は、前進方向への発進時にベルト式無段変速機に大きいトルクが作用することを回避もしくは抑制するように構成された装置であり、したがって発進時にトルクを伝達するギヤ列の変速比は、無段変速機で設定できる最大変速比より小さく、そのため装置の全体としての変速比幅を拡大することができない。
この発明に係る動力伝達装置は、エンジンやモータなどの駆動力源が出力した動力を駆動輪に伝達するための装置であって、変速機能のある装置である。すなわち、一般にはトランスミッションあるいはトランスアクスルと称されている装置である。特にこの発明で対象とする装置は、入力軸と出力軸との間に、無段変速機と所定の変速比(ギヤ比)のギヤ列とを互いに並列に配列して設けた動力伝達装置である。その無段変速機は、従来知られているベルト式の無段変速機やトロイダル型無段変速機であってよく、ベルト式無段変速機はFF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)に搭載する動力伝達装置に適しており、トロイダル型無段変速機はFR車(フロントエンジン・リヤドライブ車)に搭載する動力伝達装置に適している。また、ギヤ列は、要は、入力軸から出力軸にトルクを伝達できるギヤであればよいが、この発明では、無段変速機では設定できない変速比をギヤ列で設定するように構成されていてもよいので、ギヤ列は複数のギヤを噛み合わせて構成され、そのギヤ比(歯数の比)は、無段変速機での最大変速比より大きい変速比あるいは最小変速比より小さい変速比を設定できるように構成されていてよい。なお、車両が発進する際の大きいトルクが無段変速機に掛からないようにするためには、ギヤ列は無段変速機での最大変速比より大きい変速比を設定できるように構成することが好ましい。また、走行中における駆動力源の回転数を低くして燃費を低下させるためには、ギヤ列は無段変速機での最小変速比より小さい変速比を設定できるように構成することが好ましい。
その具体例を図1に示してある。ここに示す例はFF車に適するように構成した例であり、したがって無段変速機1としてベルト式の無段変速機が採用されており、また駆動力源はガソリンエンジンなどの内燃機関(Eng。以下、エンジンと記す。)2によって構成されている。
エンジン2の出力軸(クランク軸)にロックアップクラッチ付のトルクコンバータ3が連結されている。このトルクコンバータ3は従来広く知られている構成のものであって、フロントカバー4と一体のポンプインペラー5に対向してタービンランナー6が配置され、これらポンプインペラー5とタービンランナー6との間には、図示しない一方向クラッチを介して保持されたステータ7が配置されている。そのタービンランナー6と一体となって回転するロックアップクラッチ8がフロントカバー4の内面に対向して配置され、ロックアップクラッチ8を挟んだ両側の圧力差に応じてロックアップクラッチ8がフロントカバー4の内面に接触してトルクを伝達する係合状態になり、また反対にフロントカバー4の内面から離れてトルクの伝達を遮断する解放状態になるように構成されている。そして、そのタービンランナー6に入力軸9が連結されている。
その入力軸9には、発進用のドライブギヤ10が回転可能に嵌合されており、そのドライブギヤ10を入力軸9に連結し、またその連結を解くクラッチ機構(以下、第1クラッチ機構と記すことがある。)C1が入力軸9と同軸上に設けられている。このクラッチ機構C1は、要は、ドライブギヤ10と入力軸9とを連結できるものであればよいので、摩擦クラッチや噛み合いクラッチあるいはワンウェイクラッチなどによって構成することができるが、図1に示す例では、後に説明するいわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速を可能にするために、また構成を簡素化するために、多板式もしくは単板式で、かつ乾式もしくは湿式の摩擦クラッチによって構成されている。また、入力軸9には、リバースドライブギヤ11が一体となって回転するように取り付けられている。そして、入力軸9と同一の軸線上にベルト式無段変速機1におけるプライマリープーリ(ドライブプーリ)13が配置されている。なお、図1に示す例では、トルクコンバータ2側から、ドライブギヤ10、クラッチ機構C1、リバースドライブギヤ11、プライマリープーリ12の順に配置されている。
上記の入力軸9と平行に出力軸13が配置されている。この出力軸13は、終減速機であるフロントデファレンシャル14にトルクを出力するためのものであり、フロントデファレンシャル14におけるリングギヤ15に噛み合っているアウトプットギヤ16が出力軸13に一体となって回転するように取り付けられている。また、前述したドライブギヤ10に噛み合っている発進用のドリブンギヤ17が出力軸13に一体となって回転するように取り付けられている。すなわち、入力軸9から第1クラッチ機構C1およびドライブギヤ10ならびにドリブンギヤ17を介して出力軸13にトルクを伝達できるように構成されている。これらドライブギヤ10およびドリブンギヤ17は、車両が前進方向に発進する際にトルクを伝達するためのいわゆる発進用伝動機構であってこの発明における第1のギヤ列に相当し、そのギヤ比(変速比)は、無段変速機1で設定できる最大変速比(最低速側の変速比)より大きい変速比(低速側の変速比)に設定されている。
出力軸13と同一の軸線上に中間軸18が回転可能に配置されている。これら出力軸13と中間軸18との間、すなわち出力軸13にトルクを伝達する位置に、これらの軸13,18をトルク伝達可能に連結し、またその連結を解くクラッチ機構(以下、第2クラッチ機構と記すことがある。)C2が配置されている。したがって、このクラッチ機構C2は、要は、これらの軸13,18を選択的に連結できればよいので、前述した第1クラッチ機構C1と同様に、摩擦クラッチや噛み合いクラッチあるいはワンウェイクラッチなどによって構成することができるが、図1に示す例では、後に説明するいわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速を可能にするために、また構成を簡素化するために、多板式もしくは単板式で、かつ乾式もしくは湿式の摩擦クラッチによって構成されている。
この中間軸18と前述した入力軸9との間にリバース用伝動機構が設けられている。上記の発進用伝動機構であるドライブギヤ10とドリブンギヤ17とが、入力軸9に対して出力軸13が反対方向に回転するように入力軸9から出力軸13にトルクを伝達するのに対してリバース用伝動機構は、中間軸18が入力軸9と同方向に回転するように入力軸9から中間軸18にトルクを伝達するように構成されている。すなわち、入力軸9に取り付けられているリバースドライブギヤ11に噛み合って回転するアイドルギヤ19が入力軸9と中間軸18との間に、これらの軸9,18と平行な軸線を中心に回転するように配置されており、さらにこのアイドルギヤ19に噛み合っているリバースドリブンギヤ20が中間軸18に回転自在に取り付けられている。したがって、これらリバースドライブギヤ11およびアイドルギヤ19ならびにリバースドリブンギヤ20がこの発明における第2のギヤ列に相当しており、これらのギヤ11,19,20を経由して出力軸13にトルクを伝達する経路がこの発明におけるリバース用経路に相当している。
そのリバースドリブンギヤ20を中間軸18に連結し、またその連結を解く噛み合いクラッチ(ドグクラッチ)21が設けられている。このドグクラッチ21は、係合状態と解放状態とに切り替わり、これら二つの状態の中間の状態すなわち滑りを伴ってトルクを伝達する状態には設定されることのないクラッチであり、その一例は、スプラインによって係合するクラッチであり、図2に模式的に示してある。図2に示すように、中間軸18およびこれに嵌合しているリバースドリブンギヤ20のそれぞれには、外周面にスプラインが形成されたハブ22,23が一体化して設けられ、これらのハブ22,23が互いに接近して配置されている。これらのハブ22,23にスプライン嵌合している可動部材であるスリーブ24が、ハブ22,23の外周側を軸線方向に前後動できるように配置されている。したがってドグクラッチ21は、そのスリーブ24がいずれか一方のハブ22(23)から外れれば、中間軸18とリバースドリブンギヤ20との連結を解除し、またスリーブ24が両方のハブ22,23にスプライン嵌合することにより、中間軸18とリバースドリブンギヤ20とをトルク伝達可能に連結するように構成されている。なお、そのスリーブ24の軸線方向への移動は、図示しない適宜なアクチュエータによって行うように構成すればよい。したがって、図1に示す構成では、ドグクラッチ21は無段変速経路およびリバース用経路から出力軸13に向けてトルクを伝達する位置に設けられている。
さらに、中間軸18を挟んで出力軸13とは反対側にカウンタシャフト25が、中間軸18と同一軸線上に配置されている。このカウンタシャフト25は、無段変速機1によって伝達されるトルクの方向を反転させるためのものであり、カウンタドリブンギヤ26が一体となって回転するように取り付けられている。すなわち、無段変速機1は、従来知られているように、駆動側部材であるプライマリープーリ12と、従動側部材であるセカンダリープーリ(ドリブンプーリ)27と、これらのプーリ12,27に巻き掛けられたベルト28とを備えており、各プーリ12,27はベルト28が巻き掛けられている溝の幅を広狭に変化させることによりベルト28の巻き掛け半径が大小に変化するように構成されている。すなわち、ベルト28が巻き掛けられている溝幅を変化させて変速比を変更するように構成されている。
プライマリープーリ12は入力軸9と同一の軸線上で、上記のドライブギヤ10や第1クラッチ機構C1およびリバースドライブギヤ11を挟んでエンジン2とは反対側に配置されており、プライマリープーリ12と一体のプライマリーシャフト29が入力軸9に一体となって回転するように連結されている。したがって、前述したドライブギヤ10や第1クラッチ機構C1およびリバースドライブギヤ11は、上記の入力軸9の外周側に替えて、プライマリーシャフト29の外周側に設けられていてもよい。また、セカンダリープーリ27は、その回転中心軸線が上記のプライマリープーリ12の回転中心軸線と平行になるように配置されており、その回転中心軸線に沿うように設けられたセカンダリーシャフト30を備えている。そのセカンダリーシャフト30は上述したカウンタシャフト25側に延びていて、上記のカウンタドリブンギヤ26に噛み合っているカウンタドライブギヤ31がセカンダリーシャフト30に取り付けられている。したがって、入力軸9から無段変速機1を経由してカウンタシャフト25に到る経路がこの発明における無段変速経路に相当している。
そして、カウンタシャフト25と前述した中間軸18とが上記のドグクラッチ21によって選択的に連結されるように構成されている。すなわち、図2に示すように、カウンタシャフト25には、前述したハブ22,23と同様のハブ32が設けられており、スリーブ24が中間軸18におけるハブ22とカウンタシャフト25におけるハブ32とにスプライン嵌合することによりカウンタシャフト25と中間軸18とがトルク伝達可能に連結され、またスリーブ24がいずれか一方のハブ32(22)から外れることによりカウンタシャフト25と中間軸18との連結を解くように構成されている。これら三つのハブ22,23,32の配列は、中間軸18のハブ22を真中にしてその左右にカウンタシャフト25のハブ32とリバースドリブンギヤ20のハブ23とが位置する配列である。したがって、スリーブ24をその可動範囲での中央に位置させて中間軸18におけるハブ22のみに嵌合させるとともに左右のハブ32,23から外れた状態をニュートラル状態とすることができる。なお、図1に示す例では、ハブ22がこの発明における「出力するための部材」に相当し、ハブ23がこの発明における「リバース用経路の一部を構成している部材」に相当し、ハブ32がこの発明における「無段変速経路の一部を構成している部材」に相当している。
なお、上記のカウンタドライブギヤ31とカウンタドリブンギヤ26とは、増減速作用を生じないギヤ比に設定されていてもよく、あるいは増速作用もしくは減速作用を生じるギヤ比であってもよい。上記のカウンタドライブギヤ31とカウンタドリブンギヤ26とで増速作用もしくは減速作用が生じる場合、発進用伝動機構である前記ドライブギヤ10とドリブンギヤ17とのギヤ比は、カウンタドライブギヤ31とカウンタドリブンギヤ26とによるギヤ比と無段変速機1での最大変速比とで求まる変速比より大きい変速比に設定される。
この発明に係る上記の動力伝達装置は、前進方向に発進する場合および後進走行する場合、無段変速機1に対して並列に設けられた上記の発進用伝動機構あるいはリバース用伝動機構を経由して出力軸13にトルクを伝達し、ある程度車速が増大した状態での前進走行時には無段変速機1を備えたトルク伝達経路を経由して入力軸9から出力軸13にトルクを伝達するように制御される。例えば、図示しないシフト装置によってドライブポジション(ドライブレンジ)が選択されると、第1クラッチ機構C1を係合させ、第2クラッチ機構C2を解放状態にする。その場合、車両が停止しているなど所定の車速以下の車速であれば、ドグクラッチ21は後進段を設定する状態に動作させられる。すなわちスリーブ24が図1および図2の右側に移動させられてリバースドリブンギヤ20を中間軸18に連結する。各クラッチのこのような動作状態を図3にまとめて示してある。なお、図3で「ON」は係合していることを示し、「OFF」は解放していることを示し、ドグクラッチ21について「R」は後進状態を設定する位置に動作していること、「F」は前進状態を設定する位置に動作していることを示している。また、図3には無段変速機1を経由して駆動トルクを伝達している状態、および後進走行時の状態を併せて示してある。
前進方向への発進時に、各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21をこのように設定することにより、エンジン2が出力したトルクは入力軸9を介してドライブギヤ10およびリバースドライブギヤ11ならびに無段変速機1のプライマリープーリ12に伝達される。リバースドライブギヤ11のトルクはアイドルギヤ19およびリバースドリブンギヤ20ならびにドグクラッチ21を介して中間軸18に伝達されるが、第2クラッチ機構C2が解放しているので、出力軸13にはトルクは伝達されない。また、無段変速機1のプライマリープーリ12からベルト28を介してセカンダリープーリ27にトルクが伝達されるが、ドグクラッチ21は後進段を設定する状態になっていて無段変速機1を中間軸18から切り離しているので、無段変速機1から中間軸18や出力軸13にトルクは伝達されない。結局、ドライブギヤ10からこれに噛み合っているドリブンギヤ17を介して出力軸13にトルクが伝達される。そして、この出力軸13からアウトプットギヤ16を介してデファレンシャル14にトルクが出力される。
したがって、前進方向への発進時の変速比は、発進用伝動機構であるドライブギヤ10とドリブンギヤ17との歯数の比であるギヤ比に応じた変速比になり、これは、無段変速機1で設定できる最大変速比より大きい変速比であるから、この発明に係る上記の動力伝達装置によれば、発進時の駆動力を十分に大きくすることができる。そして、その駆動力は無段変速機1を経由することがないので、無段変速機1の伝達トルク容量を特に大きくする必要がない。具体的には、ベルト28を挟み付ける挟圧力を特に高くする必要がないので、動力損失が増大したり、耐久性が低下したりすることを抑制もしくは防止することができる。
発進後、予め決められている所定の車速にまで増速すると、発進用伝動機構に替えて無段変速機1を経由して出力軸13に駆動トルクを伝達する。駆動トルクを伝達する経路の切り替えは次のようにして行われる。先ず、ドグクラッチ21のスリーブ24が図1および図2の左側、すなわち前進状態を設定する位置「F」に移動させられ、リバースドリブンギヤ20と中間軸18との連結が解消され、カウンタシャフト25が中間軸18に連結される。その場合、中間軸18は、第2クラッチ機構C2が解放状態になっていて出力軸13から遮断されているので、ドグクラッチ21に特にはトルクが掛かっていない。そのため、スリーブ24は軸線方向に移動することが可能であって、リバースドリブンギヤ20のハブ23から特に支障なく外れる。また、無段変速機1にエンジン2からトルクが伝達されていてセカンダリープーリ27が回転しているが、中間軸18は上記のように自由に回転できる状態になっていてトルクが掛かっていないので、スリーブ24はカウンタドリブンギヤ26側に移動してそのハブ32にスプライン嵌合する。
ドグクラッチ21をこのように切り替えた状態で、第1クラッチ機構C1が解放させられ、かつ第2クラッチ機構C2が係合させられる。その場合、発進用伝動機構によって設定されている変速比と無段変速機1による変速比とが異なっているから、係合させてトルクを伝達させるクラッチ機構を切り替えることに伴ってエンジン回転数を低下させることになる。したがって、第1クラッチ機構C1を解放しかつ第2クラッチ機構C2を係合させる場合、過渡的にそれらのクラッチ機構C1,C2を滑り制御する。すなわち、第2クラッチ機構C2の係合圧を徐々に増大させてその伝達トルク容量を次第に増大させ、これに併せて第1クラッチ機構C1の係合圧を徐々に低下させてその伝達トルク容量を次第に減少させる。この制御は、従来、クラッチ・ツウ・クラッチ制御として知られている制御であり、こうすることにより、出力軸13のトルクが滑らかに変化して変速ショックや違和感が生じることを回避もしくは抑制することができる。
一方、後進走行する場合には、図3に示すように、第1クラッチ機構C1を解放するとともに第2クラッチ機構C2を係合させ、かつドグクラッチ21を後進段を設定する位置に動作させる。したがって、入力軸9からドライブギヤ10にはトルクが伝達されず、発進用伝動機構を介した駆動トルクの伝達は生じない。また、ドグクラッチ21が後進段を設定する状態になることにより無段変速機1が中間軸18および出力軸13から切り離されるので、無段変速機1を経由した出力軸13への駆動トルクの伝達は生じない。すなわち、後進状態では、入力軸9のトルクがリバースドライブギヤ11およびアイドルギヤ19ならびにリバースドリブンギヤ20およびドグクラッチ21を介して中間軸18に伝達される。そして、第2クラッチ機構C2が係合していることにより、中間軸18から出力軸13に駆動トルクが伝達され、アウトプットギヤ16を介してデファレンシャル14にトルクが出力される。この場合、リバース用伝動機構は上記のアイドルギヤ19を備えているから、入力軸9と出力軸13との回転方向が同じになり、これは発進用伝動機構や無段変速機1を介してトルクを伝達した場合の出力軸13の回転方向とは反対であるから、車両は後進走行することになる。
ここで、前述した前進方向への発進の場合の各クラッチの係合および解放の状態と、後進走行する場合の各クラッチの係合および解放の状態とを対比すると、前進方向への発進の際には、ドグクラッチ21は後進段を設定する位置「R」に動作させておくことができるので、前進方向への発進時と後進走行する場合とでは、第1クラッチ機構C1と第2クラッチ機構C2との係合および解放の状態が互いに反対になっているのみである。したがって上記の動力伝達装置によれば、前進と後進とを繰り返すいわゆるガレージシフトの場合、第1クラッチ機構C1と第2クラッチ機構C2とを交互に係合および解放させるクラッチ・ツウ・クラッチ制御を実行する。すなわち、ドグクラッチ21の係合状態の切替を伴わずに変速制御が完了するので、迅速な変速が可能であって、いわゆるシフト遅れあるいは制御応答性の悪化を防止もしくは抑制することができる。また、図1に示すこの発明に係る動力伝達装置は、トルクの伝達および遮断を選択的に行う係合機構が第1および第2のクラッチ機構C1,C2とドグクラッチ21との合計三つであってその数が少ないので、全体としての構成を簡素化でき、また装置全体を小型化することができる。
特に図1に示す構成では、第1クラッチ機構C1から発進用伝動機構であるドライブギヤ10およびドリブンギヤ17を介して出力軸13にトルクを伝達するように構成されているので、第1クラッチ機構C1には減速作用により増幅される前のトルクが掛かる。そのため第1クラッチ機構C1に要求される伝達トルク容量は小さく、第1クラッチ機構C1を小型化でき、またその耐久性を向上させることができる。また、第2クラッチ機構C2が出力軸13と同軸上に配置されているので、発進後、所定の車速に到った際に第2クラッチ機構C2を係合させる場合、無段変速機1の変速比が最大変速比になっていて第2クラッチ機構C2における入力側の回転数と出力側の回転数との差が小さい。そのため第2クラッチ機構C2の滑りを少なくしてその耐久性を向上させることができる。これは、ガレージシフトの際にも同様であり、発進時の変速比と後進段での変速比とは大きくは異ならないので、ガレージシフトの際に第2クラッチ機構C2の係合および解放を繰り返すとしてもその過渡的な滑りが少なく、その耐久性を向上させることができる。
さらに、上述した発進用伝動機構とリバース用伝動機構との変速比および無段変速機1の最大変速比とは大きく異ならないうえに、ドグクラッチ21は出力軸13と同一の軸線上に配置されていて、第2クラッチ機構C2が解放されている状態で係合および解放の状態が切り替えられるから、駆動側と従動側との回転数の差が小さく、かつ作用しているトルクが小さい状態で切り替えることになる。そのため、ドグクラッチ21におけるスリーブ24を係合方向に移動させれば、駆動側と従動側との回転数が一致し易い。言い換えれば、ドグクラッチ21の同期性が良好になるので、シンクロナイザーなどの同期のための機構のある噛み合いクラッチを用いずに構成することが可能になり、ひいては装置の低廉化が可能になる。また、上記のドグクラッチ21はスリーブ24を軸線方向に移動させることにより後進段を設定し、あるいは無段変速機1を介した駆動トルクの伝達を可能にするように構成されているので、一つのドグクラッチ21が後進段を設定するための手段および無段変速状態を設定するための手段の二つの機能を備えることになる。そのため、この発明に係る上記の動力伝達装置によれば、必要とする部品点数を削減して全体としての構成を簡素化し、また小型化することができる。
つぎにこの発明に係る動力伝達装置の他の例を説明する。上述した第1クラッチ機構C1は、発進用伝動機構を介したトルクの伝達を可能にし、あるいはそのトルクの伝達を遮断するためのものであり、また第2クラッチ機構C2はリバース用伝動機構を介したトルクの伝達を可能にし、あるいはそのトルクの伝達を遮断するためのものであり、さらにドグクラッチ21は無段変速機1を経由するトルクの伝達とリバース用伝動機構を経由するトルクの伝達とを切り替えるためのものであるから、これらのクラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21はその機能を生じるのであれば、その配置は図1に示す配置に限らず、必要に応じて適宜に変更することができる。図4に示す例は、第1クラッチ機構C1に加えて、第2クラッチ機構C2およびドグクラッチ21を、入力軸9と同一の軸線上に配置した例である。具体的に説明すると、入力軸9の延長線上に中間軸18とカウンタシャフト25とが順に配置されている。その入力軸9と中間軸18との間、すなわち入力軸9のトルクを無段変速経路およびリバース用経路に伝達する位置に、第2クラッチ機構C2が配置されており、無段変速機1によって前進走行時の変速比を設定する場合および後進走行する場合に入力軸9と中間軸18とを第2クラッチ機構C2によって連結するように構成されている。
また、中間軸18にリバースドライブギヤ11が回転可能に嵌合されており、このリバースドライブギヤ11と中間軸18とをトルク伝達可能に連結し、またその連結を解くドグクラッチ21が設けられている。このドグクラッチ21は、中間軸18の先端側(カウンタシャフト25側)に配置されており、リバースドライブギヤ11と中間軸18との連結を解いた場合に、中間軸18とカウンタシャフト25とをトルク伝達可能に連結できるように構成されている。その具体的な構成は、前述した図2に示す構成と同様である。したがって、図4に示す構成では、ドグクラッチ21は入力軸9のトルクを無段変速経路およびリバース用経路に伝達する位置に設けられている。また、図4に示す構成では、ハブ22がこの発明における「入力のための部材」に相当する。
プライマリープーリ12はカウンタシャフト25に対してその半径方向にオフセットしており、そのプライマリープーリ12と一体に回転するプライマリーシャフト29にカウンタドリブンギヤ26が取り付けられ、かつそのカウンタドリブンギヤ26に噛み合っているカウンタドライブギヤ31がカウンタシャフト25に取り付けられている。すなわち、プライマリーシャフト29の回転方向を入力軸9に対して反転させるように構成されている。
一方、セカンダリープーリ27と出力軸13とは同一の軸線上に配置されており、そのセカンダリープーリ27と一体に回転するセカンダリーシャフト30と出力軸13とは一体となって回転するように連結されている。そして、そのセカンダリーシャフト30もしくは出力軸13に、リバースドリブンギヤ20と発進用伝動機構におけるドリブンギヤ20とが取り付けられている。他の構成は、基本的には図1に示す構成と同様であり、したがって図4に図1と同一の符号を付してその説明を省略する。
この発明に係る動力伝達装置を図4に示すように構成した場合であっても、各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21を前述した図3に示すように係合もしくは解放させることにより、無段変速機1による最大変速比より大きい変速比での発進状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定することができる。すなわち、第1クラッチ機構C1を係合させ、かつ第2クラッチ機構C2を解放することにより、入力軸9と出力軸13とは発進用伝動機構であるドライブギヤ10およびドリブンギヤ17によってトルク伝達可能に連結される。したがって、無段変速機1による最大変速比より大きい変速比が設定され、その変速比に応じた大きい駆動力で発進することができる。その場合、ドグクラッチ21が後進段を設定する位置「R」側に動作していても、第2クラッチ機構C2が解放されていて後進切替機構には入力軸9からトルクが伝達されることがないので、インターロックが生じることはない。むしろ、ドグクラッチ21を後進段を設定する位置「R」に動作させておき、その状態で第1クラッチ機構C1を解放し、かつ第2クラッチ機構C2を係合させることにより、発進状態から後進段に迅速にシフトすることができる。すなわち、ガレージシフトでの変速応答性が良好になる。
また一方、発進状態において、ドグクラッチ21を前進走行する位置「F」に動作させておき、その状態で第1クラッチ機構C1を解放し、かつ第2クラッチ機構C2を係合させるクラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行することにより、変速比が大きい発進状態から、無段変速機1によって変速比を連続的に変化させる無段変速状態に切り替えることができ、その場合も制御の応答遅れを防止もしくは抑制することができる。
このように構成され、かつ動作させることのできる図4に示す構成であっても、前述した図1に示すように構成した場合と同様の作用・効果を得ることができる。特に図4に示す構成では、第2クラッチ機構C2が入力軸9側に配置されているので、入力軸9から入力されるトルク以上に増幅されたトルクが第2クラッチ機構C2に掛かることがなく、したがって上述した図1に示す構成と比較した場合、第2クラッチ機構C2を小容量で小型のものとすることができる。このことはドグクラッチ21についても同様であり、駆動状態でドグクラッチ21に掛かるトルクは入力軸9から伝達されるトルクであり、変速されて増幅されたトルクがドグクラッチ21に掛かることがないので、ドグクラッチ21を小容量で小型のものとすることができる。
図5に示す例は、図1に示す構成のうち、第2クラッチ機構C2およびカウンタギヤ対を入力軸9側に配置し、それに伴う変更を行った例である。言い換えれば、図4に示す構成のうち、ドグクラッチ21を出力軸13側に配置し、それに伴う変更を加えた例である。したがって、第2クラッチ機構C2とドグクラッチ21との間にリバース用伝動機構であるリバースドライブギヤ11およびアイドルギヤ19ならびにリバースドリブンギヤ20が介在することになるので、カウンタシャフト25は設けられていない。具体的に説明すると、第2クラッチ機構C2によって入力軸9に連結される中間軸18にリバースドライブギヤ11が取り付けられており、中間軸18に対してオフセットして配置されたプライマリーシャフト29には、そのリバースドライブギヤ11に噛み合っているカウンタドリブンギヤ26が取り付けられている。すなわち、図5に示す構成では、リバースドライブギヤ11が前述したカウンタドライブギヤ31を兼ねており、この分、ギヤの数が少なくなっている。なお、カウンタドライブギヤ31がリバースドライブギヤ11を兼ねているとも言い得る。
ドグクラッチ21は、互いに同一軸線上に配置されているセカンダリーシャフト30と出力軸13との間に配置されている。また、アイドルギヤ19を介してリバースドライブギヤ11に連結されているリバースドリブンギヤ20は、出力軸13に嵌合されて回転可能に支持されている。その出力軸13に一体化されているハブ22を挟んだ一方に、セカンダリーシャフト30に取り付けられたハブ32が配置され、かつ他方に、カウンタドリブンギヤ26に一体化されているハブ23が配置されている。これらのハブ22,32,23にスプライン嵌合するスリーブ24が軸線方向に移動することにより、カウンタドリブンギヤ26が出力軸13に連結され、あるいはセカンダリーシャフト30が出力軸13に連結されるように構成されている。他の構成は、基本的には図4に示す構成と同様であり、したがって図5に図4と同一の符号を付してその説明を省略する。
図5に示すように構成された動力伝達装置においても、各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21を図3にまとめて示してあるように係合もしくは解放させることによって、大きい駆動力を得られる発進状態、無段変速機1を経由して駆動トルクを伝達する無段変速状態ならびにリバース用伝動機構を経由して駆動トルクを伝達する後進段を設定することができる。すなわち、前進方向への発進時には、第1クラッチ機構C1を係合させ、かつ第2クラッチ機構C2を解放する。その結果、入力軸9がドライブギヤ10および第1クラッチ機構C1ならびにドリブンギヤ17を介して、すなわち発進用伝動機構を介して出力軸13に連結され、リバース用伝動機構および無段変速機1は入力軸9に対して遮断される。したがって、無段変速機1による最大変速比より大きい変速比が発進用伝動機構によって設定され、その変速比に応じた大きい駆動力で発進することができる。その場合、ドグクラッチ21を後進段を設定する位置「R」側に動作させておけば、その状態で第1クラッチ機構C1を解放し、かつ第2クラッチ機構C2を係合させることにより、発進状態から後進段に迅速にシフトすることができるので、ガレージシフトでの応答性が良好になる。
これに対して、発進状態において、ドグクラッチ21を前進走行する位置「F」に動作させておき、その状態で第1クラッチ機構C1を解放し、かつ第2クラッチ機構C2を係合させるクラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行することにより、変速比が大きい発進状態から、無段変速機1によって変速比を連続的に変化させる無段変速状態に切り替えることができ、その場合も制御の応答遅れを防止もしくは抑制することができる。
図5に示すように構成され、かつ上述したように動作させることのできる動力伝達装置であっても、図1あるいは図4に示すように構成された動力伝達装置と同様の作用・効果を得ることができる。これに加えて、特に図5に示す構成では、上述したようにギヤの数を少なくすることができるので、装置の全体としての構成を簡素化し、また小型化することができる。また、図5に示す構成では、ドグクラッチ21の動作状態を上記のように切り替える場合、すなわちスリーブ24を軸線方向に移動させてセカンダリーシャフト30側のハブ32もしくはリバースドリブンギヤ20側のハブ23に嵌合させ、あるいはその嵌合を外す場合、無段変速機1の変速比を最大変速比もしくはそれに近い変速比としておくことにより、出力軸13とセカンダリーシャフト30との回転数差、あるいは出力軸13とリバースドリブンギヤ20との回転数差を小さくしておくことができる。そのため、前述した図1に示す構成の動力伝達装置におけるのと同様に、ドグクラッチ21のいわゆる同期性を向上させることができ、ひいてはシンクロナイザーなどの高価かつ複雑な部品を採用することを回避することが可能になる。
図6に示す例は、図1に示す構成のうち、ドグクラッチ21およびカウンタギヤ対を入力軸9側に配置し、それに伴う変更を行った例である。言い換えれば、図4に示す構成のうち、第2クラッチ機構C2を出力軸13側に配置し、それに伴う変更を加えた例である。したがって、この図6に示す例においても上記の図5に示す例と同様に、第2クラッチ機構C2とドグクラッチ21との間にリバース用伝動機構であるリバースドライブギヤ11およびアイドルギヤ19ならびにリバースドリブンギヤ20が介在することになるので、中間軸18は設けられていない。図6に示す構成では、リバースドライブギヤ11が入力軸9に嵌合されかつ回転可能に支持されており、そのリバースドライブギヤ11にアイドルギヤ19を介して連結されているリバースドリブンギヤ20がセカンダリーシャフト30に一体となって回転するように取り付けられている。そのセカンダリーシャフト30と同一軸線上に出力軸13が配置され、これらセカンダリーシャフト30と出力軸13との間に第2クラッチ機構C2が設けられている。
さらに、入力軸9の延長線上にカウンタシャフト25が配置され、そのカウンタシャフト25に取り付けられたカウンタドライブギヤ31がプライマリーシャフト29に取り付けられたカウンタドリブンギヤ26に噛み合っている。そして、入力軸9とカウンタシャフト25との間にドグクラッチ21が設けられている。すなわち、スリーブ24を図6の右側に移動させることによりスリーブ24が入力軸9に設けられているハブ22とリバースドライブギヤ11に設けられているハブ23とにスプライン嵌合して入力軸9とリバースドライブギヤ11とが連結され、またスリーブ24を図6の左側に移動させることによりスリーブ24が入力軸9に設けられているハブ22とプライマリーシャフト29に設けられているハブ32とにスプライン嵌合して入力軸9とプライマリーシャフト29とが連結されるように構成されている。他の構成は、基本的には図1あるいは図4に示す構成と同様であり、したがって図6に図1あるいは図4と同一の符号を付してその説明を省略する。
図6に示す構成は、図1あるいは図4に示す構成とは、前述したように、第2クラッチ機構C2あるいはドグクラッチ21の位置が異なり、かつそれに伴う変更が施された構成であるから、各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21を図3に示すように係合および解放させることにより、駆動トルクの大きい前進方向への発進状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を、上述した各具体例の動力伝達装置と同様に設定することができる。これを簡単に説明すると、前進方向へ発進する場合、第1クラッチ機構C1を係合させ、かつ第2クラッチ機構C2を解放する。その結果、入力軸9がドライブギヤ10および第1クラッチ機構C1ならびにドリブンギヤ17を介して、すなわち発進用伝動機構を介して出力軸13に連結され、リバース用伝動機構および無段変速機1はドグクラッチ21あるいは第2クラッチ機構C2によって入力軸9に対して遮断される。したがって、無段変速機1による最大変速比より大きい変速比が発進用伝動機構によって設定され、その変速比に応じた大きい駆動力で発進することができる。その場合、第2クラッチ機構C2が解放していることにより、ドグクラッチ21を後進段を設定する位置「R」側に動作させておくことができ、その状態で第1クラッチ機構C1を解放し、かつ第2クラッチ機構C2を係合させることにより、発進状態から後進段に迅速にシフトすることができ、したがってガレージシフトでの応答性が良好になる。
これに対して、発進状態において、ドグクラッチ21を前進走行する位置「F」に動作させておくことができ、その状態で第1クラッチ機構C1を解放し、かつ第2クラッチ機構C2を係合させるクラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行することにより、変速比が大きい発進状態から、無段変速機1によって変速比を連続的に変化させる無段変速状態に切り替えることができる。したがって、その場合も制御の応答遅れを防止もしくは抑制することができる。
図6に示すように構成され、かつ上述したように動作させることのできる動力伝達装置であっても、図1あるいは図4に示すように構成された動力伝達装置と同様の作用・効果を得ることができる。また、第2クラッチ機構C2は、発進状態から無段変速機1を使用する無段変速状態に切り替える場合や発進状態から後進状態に切り替える場合に係合もしくは解放の状態が変更されるが、このような切替の時点における出力軸13とセカンダリーシャフト30との回転数の差、あるいは出力軸13とリバースドリブンギヤ20との回転数差は小さい。そのため、図6に示す構成では、図1に示すように構成した場合と同様に、第2クラッチ機構C2の係合あるいは解放の状態が切り替わる際の過渡的な滑りが少なくなり、第2クラッチ機構C2の耐久性の向上に有利になる。
図7に示す例は、図1に示す構成のうち、カウンタギヤ対を設けた位置を、セカンダリープーリ27側からプライマリープーリ12側に変更し、それに伴う変更を加えた例である。言い換えれば、前述した図5に示す構成のうち、第2クラッチ機構C2を設けてある位置を入力軸9側から出力軸13側に変更した例である。したがって、リバースドライブギヤ11(もしくはカウンタドライブギヤ31)が無段変速機1にトルクを伝達するための部材およびリバース用伝動機構にトルクを伝達する部材として共用されている。他の構成は、基本的には図1あるいは図5に示す構成と同様であり、したがって図7に図1あるいは図5と同一の符号を付してその説明を省略する。
この図7に示すように構成した場合であっても、各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21を図3に示すように係合および解放させることにより、駆動力の大きい発進状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進状態を設定することができる。なお、これらの各状態でのトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様であるから、その説明は省略する。また、図7に示す構成であっても、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と共通する作用・効果を得ることができる。また、特に、図7に示す構成で得られる利点を挙げると、上述したようにリバースドライブギヤ11(もしくはカウンタドライブギヤ31)の共用化による部品点数の削減およびそれに伴う装置の全体としての構成の簡素化および小型化を図ることができ、さらにドグクラッチ21が出力軸13側に設けられていることによりドグクラッチ21の同期性を向上させることができる。
図8に示す例は、前述した図1に示す構成における入力軸9側に設けられていた部材を出力軸13側に設け、かつ出力軸13側に設けられていた部材を入力軸9側に設けた例である。言い換えれば、前述した図4に示す構成のうち第2クラッチ機構C2を出力軸13と同軸上に設けた例である。したがって、ドライブギヤ10は入力軸9に一体となって回転するように取り付けられている。また、ドリブンギヤ17は出力軸13に回転可能に嵌合しており、第2クラッチ機構C2はそのドリブンギヤ17を出力軸13に連結し、またその連結を解くように構成されている。他の構成は、基本的には図1あるいは図4に示す構成と同様であり、したがって図8に図1あるいは図4と同一の符号を付してその説明を省略する。
この図8に示す構成の動力伝達装置においても、各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21を図3に示すように係合および解放させることにより、駆動力の大きい発進状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進状態を設定することができる。なお、これらの各状態でのトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様であるから、その説明は省略する。また、図8に示す構成であっても、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と共通する作用・効果を得ることができる。特に図8に示す構成に特有の利点を挙げるとすれば、ドグクラッチ21が入力軸9側に配置されているので、前述した図4や図6に示す構成と同様に、変速されて増幅されたトルクがドグクラッチ21に掛かることがなく、したがってドグクラッチ21を小容量で小型のものとすることができる。また、第2クラッチ機構C2が入力軸9側に設けられているので、前述した図4や図5に示す構成と同様に、入力軸9から入力されるトルク以上に増幅されたトルクが第2クラッチ機構C2に掛かることがなく、第2クラッチ機構C2を小容量で小型のものとすることができる。
図9に示す例は、前述した図8に示す構成のうち、ドグクラッチ21を出力軸13側もしくはセカンダリーシャフト30側に配置し、それに伴う変更を行った例である。他の構成は、基本的には図8に示す構成と同様であり、したがって図9に図8と同一の符号を付してその説明を省略する。
したがって、前進方向への発進のための状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定するための各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21の係合および解放の状態は図3に示すとおりである。このような構成であれば、ドグクラッチ21に掛かるトルクが変速作用によって増幅されたトルクになるものの、係合あるいは解放の際の回転数差が小さくなるので、ドグクラッチ21におけるいわゆる同期性が良好になるなど、図1あるいは図5もしくは図7に示すように構成した場合と同様の利点がある。また、リバースドライブギヤ11(もしくはカウンタドライブギヤ31)の共用化による部品点数の削減や装置の全体としての構成の簡素化、小型化を図ることができる。なお、図9に示す構成の動力伝達装置における各状態でのトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様であるから、その説明は省略する。また、図9に示す構成であっても、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と共通する作用・効果を得ることができ、あるいは利点がある。
図10に示す例は、前述した図1に示す構成のうち、第1クラッチ機構C1を出力軸13側に配置し、またドグクラッチ21を入力軸9側もしくはプライマリープーリ12側に配置し、それに伴う変更を行った例である。言い換えれば、図6に示す構成のうち第1クラッチ機構C1を出力軸13側に配置してそれに伴う変更を行った例、あるいは図8に示す構成のうち第2クラッチ機構C2を出力軸13側に配置してそれに伴う変更を行った例である。他の構成は、基本的には図1あるいは図6または図8に示す構成と同様であり、したがって図10に図1あるいは図6または図8と同一の符号を付してその説明を省略する。
したがって、前進方向への発進のための状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定するための各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21の係合および解放の状態は図3に示すとおりである。また、それぞれの状態におけるトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様である。そして、図10に示す構成の動力伝達装置は、上記のように図6や図8に示す構成と共通する構成を備えているから、これら図6に示す構成や図8に示す構成の動力伝達装置と同様の作用・効果を得ることができ、あるいは利点がある。
図11に示す例は、図1に示す構成のうち第1クラッチ機構C1を出力軸13側に配置するとともにカウンタギヤ対を入力軸9側もしくはプライマリープーリ12側に配置してそれに伴う変更を施した例である。言い換えれば、図7に示す構成のうち第1クラッチ機構C1を出力軸13側に配置してそれに伴う変更を行った例、あるいは図9に示す構成のうち第2クラッチ機構C2を出力軸13側に配置してそれに伴う変更を行った例である。他の構成は、基本的には図1あるいは図7または図9に示す構成と同様であり、したがって図11に図1あるいは図7または図9と同一の符号を付してその説明を省略する。
したがって、前進方向への発進のための状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定するための各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21の係合および解放の状態は図3に示すとおりである。また、それぞれの状態におけるトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様である。そして、図11に示す構成の動力伝達装置は、上記のように図6や図8に示す構成と共通する構成を備えているから、これら図6に示す構成や図8に示す構成の動力伝達装置と同様の作用・効果を得ることができ、あるいは利点がある。例えば、リバースドライブギヤ11(もしくはカウンタドライブギヤ31)の共用化による部品点数の削減や装置の全体としての構成の簡素化、小型化を図ることができる。
図12に示す例は、図1に示す構成のうち、第2クラッチ機構C2を入力軸9側に配置し、かつカウンタギヤ対を出力軸13側に残したままドグクラッチ21を入力軸9側もしくはプライマリープーリ12側に配置し、これらの変更に伴う変更を施した例である。言い換えれば、図4に示す構成のうち、カウンタシャフト25を廃止するとともにカウンタギヤ対をセカンダリーシャフト30と出力軸13との間に配置し、それに伴う変更を施した例である。他の構成は、基本的には図1あるいは図4に示す構成と同様であり、したがって図12に図1あるいは図4と同一の符号を付してその説明を省略する。
したがって、前進方向への発進のための状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定するための各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21の係合および解放の状態は図3に示すとおりである。また、それぞれの状態におけるトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様である。そして、各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21が入力軸9側に配置されていることによりこれらに掛かるトルクが小さく、したがってこれら各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21を小容量で小型のものにすることができるなど、図4に示す構成と同様の作用・効果あるいは利点を得ることができる。
図13に示す例は、図1に示す構成のうち、第2クラッチ機構C2を入力軸9側に設けて入力軸9とリバースドライブギヤ11およびプライマリープーリ12との接続およびその遮断を第2クラッチ機構C2によって行うように構成した例である。言い換えれば、図12に示す構成におけるドグクラッチ21を出力軸13側に配置し、それに伴う変更を行った例である。他の構成は、基本的には図1あるいは図12に示す構成と同様であり、したがって図13に図1あるいは図12と同一の符号を付してその説明を省略する。
したがって、前進方向への発進のための状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定するための各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21の係合および解放の状態は図3に示すとおりである。また、それぞれの状態におけるトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様である。そして、各クラッチ機構C1,C2が入力軸9側に配置されていることによりこれらに掛かるトルクが小さく、したがってこれら各クラッチ機構C1,C2を小容量で小型のものにすることができるなど、図12に示す構成と同様の作用・効果あるいは利点を得ることができる。なお、ドグクラッチ21には無段変速機1やリバース用伝動機構の減速作用で増幅されたトルクが掛かることになるが、ドグクラッチ21の係合あるいは解放の状態を切り替える際の回転数差が小さいことによりその同期性が良好であるなど、前述した他の具体例と同様の利点がある。
図14に示す構成は、図1に示す構成のうち、カウンタギヤ対を出力軸13側に残したままドグクラッチ21を入力軸9側もしくはプライマリープーリ12側に配置し、それに伴う変更を行った例である。言い換えれば、図12に示す構成のうち、第2クラッチ機構C2を出力軸13側に配置し、セカンダリーシャフト30にカウンタギヤ対を介して連結されているカウンタシャフト25と出力軸13とを第2クラッチ機構C2によって連結し、またその連結を解くように構成し、さらにそのカウンタシャフト25にリバースドリブンギヤ20を一体に設けた例である。他の構成は、基本的には図1あるいは図12に示す構成と同様であり、したがって図14に図1あるいは図12と同一の符号を付してその説明を省略する。
したがって、前進方向への発進のための状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定するための各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21の係合および解放の状態は図3に示すとおりである。また、それぞれの状態におけるトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様である。そして、第1クラッチ機構C1およびドグクラッチ21が入力軸9側に配置されていることによりこれらに掛かるトルクが小さく、したがってこれら第1クラッチ機構C1およびドグクラッチ21を小容量で小型のものにすることができるなど、図12に示す構成と同様の作用・効果あるいは利点を得ることができる。なお、第2クラッチ機構C2には無段変速機1やリバース用伝動機構の減速作用で増幅されたトルクが掛かることになるが、第2クラッチ機構C2の係合あるいは解放の状態を切り替える際の回転数差が小さいことによりその滑りを抑制して第2クラッチ機構C2の耐久性を向上させることができる。
図15に示す例は、図1に示す構成のうち、第1クラッチ機構C1を出力軸13側に配置し、かつ第2クラッチ機構C2を入力軸9側に配置し、さらにカウンタギヤ対を出力軸13側に残したままドグクラッチ21を入力軸9側もしくはプライマリープーリ12側に配置し、これらの変更に伴う変更を施した例である。言い換えれば、前述した図12に示す構成のうち第1クラッチ機構C1を出力軸13側に配置し、それに伴う変更を施した例である。他の構成は、基本的には図1あるいは図12に示す構成と同様であり、したがって図15に図1あるいは図12と同一の符号を付してその説明を省略する。
したがって、前進方向への発進のための状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定するための各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21の係合および解放の状態は図3に示すとおりである。また、それぞれの状態におけるトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様である。そして、第2クラッチ機構C2およびドグクラッチ21が入力軸9側に配置されていることによりこれらに掛かるトルクが小さく、したがってこれら第2クラッチ機構C2およびドグクラッチ21を小容量で小型のものにすることができるなど、図12に示す構成と同様の作用・効果あるいは利点を得ることができる。なお、第1クラッチ機構C1には無段変速機1やリバース用伝動機構の減速作用で増幅されたトルクが掛かることになるが、第1クラッチ機構C1の係合あるいは解放の状態を切り替える際の回転数差が小さいことによりその滑りを抑制して第1クラッチ機構C1の耐久性を向上させることができる。
図16に示す例は、図1に示す構成のうち、第1クラッチ機構C1を出力軸13側に配置し、また第2クラッチ機構C2を入力軸9側に配置し、これらの配置位置の変更に伴う変更を施した例である。言い換えれば、前述した図13に示す構成のうち、第1クラッチ機構C1の配置位置を入力軸9上から出力軸13上に変更し、それに伴う変更を行った例である。他の構成は、基本的には図1あるいは図13に示す構成と同様であり、したがって図16に図1あるいは図13と同一の符号を付してその説明を省略する。
したがって、前進方向への発進のための状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定するための各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21の係合および解放の状態は図3に示すとおりである。また、それぞれの状態におけるトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様である。そして、第2クラッチ機構C2が入力軸9側に配置されていることによりこれに掛かるトルクが小さく、したがってこれら第2クラッチ機構C2を小容量で小型のものにすることができるなど、図13に示す構成と同様の作用・効果あるいは利点を得ることができる。なお、第1クラッチ機構C1およびドグクラッチ21には無段変速機1やリバース用伝動機構の減速作用で増幅されたトルクが掛かることになるが、第1クラッチ機構C1やドグクラッチ21の係合あるいは解放の状態を切り替える際の回転数差が小さいことにより、第1クラッチ機構C1の滑りを抑制して第1クラッチ機構C1の耐久性を向上させることができ、またドグクラッチ21のいわゆる同期性が良好になる。
図17に示す例は、図1に示す構成のうち、第1クラッチ機構C1を出力軸13側に配置し、またカウンタギヤ対を出力軸13側に残したままドグクラッチ21を入力軸9側に配置し、これらの変更に伴う変更を行った例である。言い換えれば、前述した図12に示す構成のうち、各クラッチ機構C1,C2を出力軸13側に配置し、それに伴う変更を行った例である。他の構成は、基本的には図1あるいは図7または図9に示す構成と同様であり、したがって図17に図1あるいは図12と同一の符号を付してその説明を省略する。
したがって、前進方向への発進のための状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定するための各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21の係合および解放の状態は図3に示すとおりである。また、それぞれの状態におけるトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様である。そして、ドグクラッチ21が入力軸9側に配置されていることによりこれに掛かるトルクが小さく、したがってドグクラッチ21を小容量で小型のものにすることができるなど、図12に示す構成と同様の作用・効果あるいは利点を得ることができる。なお、各第1クラッチ機構C1,C2には無段変速機1やリバース用伝動機構の減速作用で増幅されたトルクが掛かることになるが、各クラッチ機構C1,C2の係合あるいは解放の状態を切り替える際の回転数差が小さいことにより、各クラッチ機構C1,C2の滑りを抑制してその耐久性を向上させることができる。
図18に示す例は、図1に示す構成のうち、第1クラッチ機構C1をも出力軸13上に配置し、それに伴う変更を行った例であり、入力軸9とプライマリーシャフト29とが一体となって回転するように連結され、その入力軸9もしくはプライマリーシャフト29にドライブギヤ10およびリバースドライブギヤ11が一体となって回転するように取り付けられている。言い換えれば、図18に示す構成は、前述した図16に示す構成のうち、第2クラッチ機構C2を出力軸13側に配置し、あるいは図17に示す構成のうち、ドグクラッチ21を出力軸13側に配置し、それに伴う変更を施した例である。他の構成は、基本的には図1あるいは図16に示す構成と同様であり、したがって図18に図1あるいは図16と同一の符号を付してその説明を省略する。
したがって、前進方向への発進のための状態および無段変速機1を使用した無段変速状態ならびに後進段を設定するための各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21の係合および解放の状態は図3に示すとおりである。また、それぞれの状態におけるトルクの伝達経路や伝達の状態、ならびに各状態に切り替えるための作用は、上述した共通する構成を有するいずれかの具体例と同様である。そして、図18に示す構成では、各クラッチ機構C1,C2およびドグクラッチ21が出力軸13上に配置されているので、その係合もしくは解放の状態を切り替える際の入力側と出力側との回転数の差が小さく、そのため各クラッチ機構C1,C2の滑りを抑制してその耐久性を向上させることができ、またドグクラッチ21のいわゆる同期性が良好になる。
なお、上述した各具体例は、ドライブギヤ10とドリブンギヤ17とによる変速比を無段変速機1での最大変速比より大きくした例であるが、この発明は、要は、無段変速機1で設定できない変速比をギヤ列によって設定するように構成されていてよいのであり、したがってギヤ列による変速比を無段変速機1での最小変速比よりも小さくしてよい。このように構成すれば、エンジン2を低負荷で運転して走行する場合にエンジン回転数を、無段変速機1によるよりも低回転数にすることができるので、燃費を更に向上させることができる。また、ギヤ列は複数の変速比を設定できるように構成されていてもよい。