WO2012101903A1 - 固体電解コンデンサ - Google Patents
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Abstract
【課題】固体電解コンデンサにおいて、その製造過程を煩雑化させずに、該固体電解コンデンサの大容量化を実現しつつ、該固体電解コンデンサが搭載される基板上に形成すべきランドパターンの設計変更を不要にする。 【解決手段】本発明に係る固体電解コンデンサは、巻回体11と、固体電解質層と、陽極リードタブ端子30と、陰極リードタブ端子40とを備えている。巻回体11は、表面に誘電体被膜が形成された陽極部材111を、該陽極部材111にセパレータ112を重ね合わせる一方で陰極部材を重ねずに巻回して構成されている。固体電解質層は、巻回体11の内部に形成されている。陽極リードタブ端子30は、陽極部材111に取り付けられると共に陽極部材111に電気的に接続されている。陰極リードタブ端子40は、セパレータ112に取り付けられると共に固体電解質層に電気的に接続されている。
Description
本発明は、巻回型の固体電解コンデンサに関する。
図11は、従来の固体電解コンデンサを示した断面図である。図11に示す様に、該固体電解コンデンサ(第1従来例)は、巻回素子80と、該巻回素子80が収容される有底筒状の外装ケース85と、該外装ケース85の開口850を封止するゴム製の封口部材86とを備えている。ここで、巻回素子80は、巻回体81と、陽極リードタブ端子83と、陰極リードタブ端子84とを有している。そして、陽極リードタブ端子83及び陰極リードタブ端子84にはそれぞれリード部830,840が形成されており、該リード部830,840が、封口部材86を貫通して外装ケース85の外部へ引き出されている。
図12は、第1従来例に係る固体電解コンデンサの巻回体81を示した斜視図である。図12に示す様に、巻回体81は、陽極箔811と陰極箔812とを重ね合わせて巻回することにより構成されており、陽極箔811に陽極リードタブ端子83が電気的に接続される一方、陰極箔812に陰極リードタブ端子84が電気的に接続されている(例えば、特許文献1参照)。ここで、陽極箔811の表面には、該表面に化成処理を施すことによって誘電体被膜が形成されている。又、図12に示す様に、陽極箔811及び陰極箔812にはそれぞれ紙製のセパレータ813が重ねられており、該セパレータ813に化学重合液を含浸させて重合させることにより、陽極箔811と陰極箔812との間に固体電解質層が形成されている。
上記固体電解コンデンサは、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置から生じる高周波ノイズを除去するノイズフィルタとして機能させることが出来る。
近年、電子機器の小型化に伴い、固体電解コンデンサにおいて、それが小型であるにも拘わらず大容量であるものが求められている。又、CPU等の処理装置は、その動作速度が高速化しており、このため、処理装置に供給される電流量が増大し、又、ノイズの帯域が高周波側へシフトする傾向にある。従って、固体電解コンデンサにおいて、その低ESR(等価直列抵抗)化が求められている。
大容量化の実現には、次の様な手法が考えられる。例えば、陽極箔811の表面にエッチングを施して微細な凹凸を形成することにより、陽極箔811の表面積を増大させる。或いは、陽極箔811の表面に化成処理を施す際、陽極箔811に印加する電圧を小さくすることにより、陽極箔811の表面に形成される誘電体被膜の厚さ寸法を小さくする。しかしながら、これらの手法によれば、固体電解コンデンサの静電容量が従来のものに比べて増加する一方で、漏れ電流が増大し易くなり、延いてはショート不良が発生することになる。
又、陽極箔811と陰極箔812の巻回量を増やしてこれらの対向面積を増大させることにより、固体電解コンデンサの大容量化を実現することが出来る。しかしながら、これでは固体電解コンデンサが大型化することになる。
固体電解コンデンサの大容量化と小型化の両方を実現するべく、次の構成を有した固体電解コンデンサ(第2従来例)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。即ち、この固体電解コンデンサにおいては、巻回素子が、表面に誘電体被膜が形成された1枚の陽極箔と紙製のセパレータとを巻回して構成された巻回体と、陽極箔に電気的に接続されると共に巻回体の巻回端面から引き出された陽極リードタブ端子と、巻回体の内部及び外部に形成された固体電解質層と、巻回体の外部にて固体電解質層上に形成された陰極層と、巻回体の外部に設けられると共に陰極層に電気的に接続された陰極リードフレームとから構成されている。ここで、巻回体には陰極箔は巻回されていない。
第2従来例に係る固体電解コンデンサによれば、その製造過程において陰極箔を巻回する必要がない。従って、陰極箔がない分を陽極箔に置き換えて陽極箔の巻回量を増やすことが出来る。よって、第2従来例に係る固体電解コンデンサによれば、該固体電解コンデンサの大容量化と小型化の両方を実現することが可能になる。
その一方で、第2従来例に係る固体電解コンデンサにおいては、第1従来例に係る固体電解コンデンサに比べて、陰極層の形成、及び陰極リードタブ端子84とは形状が異なる陰極リードフレームの作製並びに巻回体への陰極リードフレームの取付けが必要となる。従って、第2従来例に係る固体電解コンデンサは、その製造過程が、第1従来例に係る固体電解コンデンサの製造過程に比べて煩雑である。
更に、第2従来例に係る固体電解コンデンサにおいて、外装ケースからのリード部の引出し位置が、第1従来例に係る固体電解コンデンサのリード部830,840の引出し位置と異なっていた場合、第2従来例に係る固体電解コンデンサを基板に搭載する際に、第1従来例に係る固体電解コンデンサを搭載するために基板上に形成されていたランドパターンをそのまま用いることができず、ランドパターンの設計を変更しなければならない。尚、第2従来例に係る固体電解コンデンサにおいて、外装ケースからのリード部の引出し位置を、第1従来例に係る固体電解コンデンサのリード部830,840の引出し位置と一致させようとした場合、陰極リードフレームの形状が複雑になり、該陰極リードフレームの作製が難しくなる。
そこで本発明の目的は、固体電解コンデンサにおいて、その製造過程を煩雑化させずに、該固体電解コンデンサの大容量化を実現しつつ、該固体電解コンデンサが搭載される基板上に形成すべきランドパターンの設計変更を不要にすることである。
本発明に係る固体電解コンデンサは、巻回体と、固体電解質層と、陽極リードタブ端子と、陰極リードタブ端子とを備えている。ここで、前記巻回体は、表面に誘電体被膜が形成された陽極部材を、該陽極部材にセパレータを重ね合わせる一方で陰極部材を重ねずに巻回して構成されている。前記固体電解質層は、前記巻回体の内部に形成されている。前記陽極リードタブ端子は、前記陽極部材に取り付けられると共に前記巻回体の巻回端面から引き出された端子であって、前記陽極部材に電気的に接続されている。前記陰極リードタブ端子は、前記セパレータに取り付けられると共に前記巻回体の巻回端面から引き出された端子であって、前記固体電解質層に電気的に接続されている。
上記固体電解コンデンサの具体的構成において、前記陰極リードタブ端子は、これを前記セパレータに対して加締めることにより該セパレータに取り付けられている。より具体的な構成において、前記セパレータの厚さ寸法が10μm以上である。
上記固体電解コンデンサの他の具体的構成において、前記陰極リードタブ端子は、これを前記セパレータに貼着固定することにより該セパレータに取り付けられている。
上記固体電解コンデンサの他の具体的構成において、前記セパレータには、該セパレータへの陰極リードタブ端子の取付け強度を向上させる補強部材が設けられている。
上記固体電解コンデンサの他の具体的構成において、固体電解コンデンサは、前記巻回体が収容される外装ケースを更に備え、前記陽極リードタブ端子は、前記外装ケースの開口の中心位置とは異なる位置から該外装ケースの外部へ引き出される一方、前記陰極リードタブ端子は、前記外装ケースの開口の中心位置に対して前記陽極リードタブ端子の引出し位置とは反対側の位置から該外装ケースの外部へ引き出されている。
本発明に係る固体電解コンデンサによれば、その製造過程を煩雑化させずに、該固体電解コンデンサの大容量化を実現しつつ、該固体電解コンデンサが搭載される基板上に形成すべきランドパターンの設計変更を不要にすることが出来る。
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る固体電解コンデンサを示した斜視図であり、図2は、該固体電解コンデンサの下面図である。又、図3は、図2に示されるA-A線に沿う断面図である。図1~図3に示す様に、該固体電解コンデンサは、コンデンサ本体1と、該コンデンサ本体1を搭載する座板2と、陽極端子3と、陰極端子4とを備えている。ここで、該陽極端子3と陰極端子4は何れも、座板2の下面2bに露出している。
図2に示す様に、座板2の下面2bには、座板2の縁21まで延びた第1溝部201と、該縁21とは反対側の縁22まで延びた第2溝部202とが凹設されている。そして、第1溝部201には陽極端子3が収容される一方、第2溝部202には陰極端子4が収容されている。
図1及び図3に示す様に、コンデンサ本体1は、巻回素子10と、該巻回素子10が収容される有底筒状の外装ケース5と、該外装ケース5の開口50を封止するゴム製の封口部材6とから構成されている。ここで、外装ケース5は、アルミニウム等の金属材料から形成されており、該外装ケース5の開口端部に横絞り加工及びカール処理を施すことにより、外装ケース5に封口部材6が固定されている。尚、外装ケース5は、金属材料に限らず、電気絶縁材料を含む種々の材料から形成されていてもよい。又、外装ケース5の開口50は、該外装ケース5内へ樹脂材を流し込んで該樹脂材を固化させることにより封止されていてもよい。
巻回素子10は、図7に示す如く巻回体11を有している。ここで、図7は、後述する製造方法の内、巻回工程の後段の説明に用いられる斜視図である。図7に示す様に、巻回体11は、陽極箔111を、該陽極箔111にセパレータ112を重ね合わせて巻回することにより構成されている。その一方で、陽極箔111には陰極箔等の陰極部材が重ねられておらず、従って巻回体11には陰極箔等の陰極部材が巻回されていない。陽極箔111は、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁作用金属から形成されている。又、図示していないが、陽極箔111の表面には誘電体被膜が形成されている。一方、セパレータ112には、電気絶縁性の繊維紙、例えばセルロース、アラミド、ポリエステル、ナイロン、ビニロン等の繊維材料から形成された織布又は不織布が用いられている。尚、巻回体11は、陽極箔111に限定されない種々の陽極部材を、該陽極部材にセパレータ112を重ね合わせて巻回することにより構成されていてもよい。
図示していないが、巻回体11には固体電解質層が形成されている。ここで、固体電解質層は、巻回体11の内部及び外部に形成されている。具体的には、固体電解質層を形成するための前駆体、例えば導電性高分子を含んだ重合液を、セパレータ112に含浸させることにより、巻回体11の内部に存在する隙間(主に、陽極箔111の巻回により該陽極箔111によって形成された隙間)を埋めた状態で、固体電解質層が形成されている。又、固体電解質層は、巻回体11の外周面上にも形成されている。
巻回素子10は更に、図6に示す如く陽極リードタブ端子30と陰極リードタブ端子40とを有している(図3も参照)。ここで、図6は、後述する製造方法の内、巻回工程の前段の説明に用いられる斜視図である。陽極リードタブ端子30は、陽極箔111に取り付けられている。一方、陰極リードタブ端子40は、セパレータ112に取り付けられている。そして、図7に示す様に、陽極リードタブ端子30と陰極リードタブ端子40は、巻回体11の同じ巻回端面11aから引き出されている。
具体的には、図6に示す様に、陽極リードタブ端子30はリード部31と平坦部32とを有しており、該平坦部32が陽極箔111に取り付けられている。そして、図7に示す様に、陽極リードタブ端子30のリード部31が巻回体11の巻回端面11aから引き出されている。ここで、陽極リードタブ端子30は、その平坦部32を陽極箔111に対して加締めることにより該陽極箔111に取り付けられている。従って、陽極リードタブ端子30は、陽極箔111に電気的に接続されている。尚、陽極箔111に対して陽極リードタブ端子30を加締める方法については、後述する製造方法の第1の端子取付け工程(図4(a)及び図4(b))にて説明する。
一方、図6に示す様に、陰極リードタブ端子40はリード部41と平坦部42とを有しており、該平坦部42がセパレータ112に取り付けられている。そして、図7に示す様に、陰極リードタブ端子40のリード部41が巻回体11の巻回端面11aから引き出されている。ここで、陰極リードタブ端子40は、その平坦部42をセパレータ112に対して加締めることにより該セパレータ112に取り付けられている。そして、陰極リードタブ端子40は、巻回体11の内部及び巻回端面11aにおいて固体電解質層に電気的に接続されている。尚、セパレータ112に対して陰極リードタブ端子40を加締める方法については、後述する製造方法の第2の端子取付け工程(図5(a)及び図5(b))にて説明する。
図3に示す様に、巻回体11において、陽極リードタブ端子30は、巻回軸110とは異なる位置に設けられる一方、陰極リードタブ端子40は、巻回軸110に対して陽極リードタブ端子30とは反対側の位置に設けられている。そして、陽極リードタブ端子30と陰極リードタブ端子40のリード部31,41はそれぞれ、封口部材6を貫通して外装ケース5の外部へ引き出されている。
ここで、図3に示す様に、巻回体11の巻回軸110は、外装ケース5の開口50の中心位置52に略一致している。従って、陽極リードタブ端子30のリード部31は、外装ケース5の開口50の中心位置52とは異なる位置から外装ケース5の外部へ引き出される一方、陰極リードタブ端子40のリード部41は、外装ケース5の開口50の中心位置52に対して陽極リードタブ端子30のリード部31の引出し位置とは反対側の位置から外装ケース5の外部へ引き出されている。
図2及び図3に示す様に、座板2には、該座板2をその上面2aから下面2bに貫通する2つの貫通孔20,20が形成されており、該2つの貫通孔20,20はそれぞれ、座板2の下面2bに設けられている第1溝部201と第2溝部202とに通じている。
そして、陽極リードタブ端子30のリード部31は、これに対応する座板2の貫通孔20を通過した後、該貫通孔20の出口近傍で屈曲し、その後、第1溝部201に沿って第1溝部201内を座板2の縁21まで延びている。そして、該リード部31の内、第1溝部201に沿って第1溝部201内を延びている部分は平坦形状を有しており、該平坦部分によって固体電解コンデンサの陽極端子3が構成されている。
又、陰極リードタブ端子40のリード部41は、これに対応する座板2の貫通孔20を通過した後、該貫通孔20の出口近傍で屈曲し、その後、第2溝部202に沿って第2溝部202内を座板2の縁22まで延びている。そして、該リード部41の内、第2溝部202に沿って第2溝部202内を延びている部分は平坦形状を有しており、該平坦部分によって固体電解コンデンサの陰極端子4が構成されている。
次に、上記固体電解コンデンサの製造方法について、具体的に説明する。該製造方法では、箔作製工程、第1の端子取付け工程、第2の端子取付け工程、巻回工程、再化成処理工程、電解質層形成工程、及び組み立て工程が順に実行される。
箔作製工程では、先ず、陽極箔111となる金属箔を用意する。そして、該金属箔の表面にエッチング加工を施して複数の微細な凹凸を形成し、これによって金属箔の表面積を増大させる。次に、金属箔の表面に対して化成処理を施すことにより、該表面に誘電体被膜を形成する。その後、金属箔に切断加工を施して該金属箔を長尺状の所定形状に裁断する。これにより、表面に誘電体被膜が形成された陽極箔111が作製される。尚、作製された陽極箔111においては、その切断面(端面)に、該陽極箔111を構成する金属の一部が露出することになる。
図4(a)及び図4(b)は、第1の端子取付け工程の説明に用いられる平面図である。ここで、第1の端子取付け工程は、陽極箔111に陽極リードタブ端子30を取り付ける工程である。尚、図4(a)は、陽極箔111を陽極リードタブ端子30側から見た平面図である。又、図4(b)は、陽極箔111を陽極リードタブ端子30とは反対側から見た平面図である。図4(a)及び図4(b)に示す様に、第1の端子取付け工程では、陽極リードタブ端子30の平坦部32を陽極箔111に対して加締め、これにより該陽極箔111に陽極リードタブ端子30を取り付ける。
具体的には、陽極リードタブ端子30の平坦部32と陽極箔111とに対して、陽極リードタブ端子30側から加締め針(図示せず)を突き刺す。ここで、加締め針の先端部は、四角錐形状を呈している。従って、加締め針の刺衝により、陽極リードタブ端子30の平坦部32には、図4(a)に示す如く貫通孔34が形成され、更に該平坦部32には、図4(b)に示す如く花弁状のバリ33が、陽極箔111を貫通した状態で形成されることになる。このとき、陽極箔111にもバリが形成されることになる。次に、これらのバリ33に対してプレス加工を施すことにより、バリ33を陽極箔111の表面上にて押し潰す。その結果、陽極リードタブ端子30の平坦部32が陽極箔111に対して加締められることになる。そして、陽極箔111への陽極リードタブ端子30の加締めにより、陽極リードタブ端子30が、陽極箔111に対して電気的に接続されることになる。尚、第1の端子取付け工程では、陽極箔111への陽極リードタブ端子30の加締めにより、誘電体被膜が損傷する虞がある。
図5(a)及び図5(b)は、第2の端子取付け工程の説明に用いられる平面図である。ここで、第2の端子取付け工程は、セパレータ112に陰極リードタブ端子40を取り付ける工程である。尚、図5(a)は、セパレータ112を陰極リードタブ端子40側から見た平面図である。又、図5(b)は、セパレータ112を陰極リードタブ端子40とは反対側から見た平面図である。図5(a)及び図5(b)に示す様に、第2の端子取付け工程では、陰極リードタブ端子40の平坦部42をセパレータ112に対して加締め、これにより該セパレータ112に陰極リードタブ端子40を取り付ける。
具体的には、陰極リードタブ端子40の平坦部42とセパレータ112とに対して、陰極リードタブ端子40側から加締め針(図示せず)を突き刺す。ここで、加締め針の先端部は、四角錐形状を呈している。従って、加締め針の刺衝により、陰極リードタブ端子40の平坦部42には、図5(a)に示す如く貫通孔44が形成され、更に該平坦部42には、図5(b)に示す如く花弁状のバリ43が、セパレータ112を貫通した状態で形成されることになる。次に、バリ43に対してプレス加工を施すことにより、バリ43をセパレータ112の表面上にて押し潰す。その結果、陰極リードタブ端子40の平坦部42がセパレータ112に対して加締められることになる。
巻回工程では、図6及び図7に示す様に、陽極箔111を、該陽極箔111にセパレータ112を重ね合わせて巻回し、これにより巻回体11を作製する。このとき、陽極箔111には陰極箔等の陰極部材を重ねない。又、陽極リードタブ端子30と陰極リードタブ端子40とが巻回体11の同じ巻回端面11aから突出することとなる様に、更には、巻回体11において陰極リードタブ端子40が巻回軸110に対して陽極リードタブ端子30とは反対側の位置に配置されることとなる様に、陽極箔111とセパレータ112とを重ね合わせて巻回する。そして、陽極箔111の巻回後、巻回体11の型崩れを防止するべく、図7に示す如く巻止めテープ113によってセパレータ112の終端部を巻回体11の外周面に固定し、又は、巻止めテープ113によって陽極箔111の終端部を巻回体11の外周面に固定する。巻止めテープ113には、導電性を有したものを用いることが出来る。尚、巻回工程では、陽極箔111の巻回によって誘電体被膜にストレスが生じ、これにより該誘電体被膜が損傷する虞がある。
再化成処理工程では、巻回体11を化成液に浸漬させ、この状態で、陽極リードタブ端子30を通じて陽極箔111に電圧を印加する。ここで、化成液には、例えばアジピン酸アンモニウム水溶液が用いられる。これにより、巻回体11に対して再化成処理が施され、その結果、陽極箔111の切断面(端面)に酸化被膜(誘電体被膜)が形成され、又、誘電体被膜の損傷した部分が修復される。その結果、陽極箔111の表面全体が誘電体被膜によって覆われることになる。
電解質層形成工程では、固体電解質層を形成するための前駆体、例えば導電性高分子を含んだ重合液を用意し、該重合液に巻回体11を浸漬させる。これにより、セパレータ112に重合液が含浸して重合し、これによって巻回体11の内部に存在する隙間(主に、陽極箔111の巻回により該陽極箔111によって形成された隙間)に、該隙間を埋めた状態で導電性高分子膜が形成される。又、巻回体11の外周面上にも導電性高分子膜が形成される。これにより、これらの導電性高分子膜によって固体電解質層が構成され、巻回素子10が完成する。
組み立て工程では、先ず、封口部材6に巻回素子10を固定する(図3参照)。具体的には、封口部材6に対して、陽極リードタブ端子30のリード部31と陰極リードタブ端子40のリード部41とを貫通させる。その後、外装ケース5内に巻回素子10を収容すると共に、外装ケース5の開口50を封口部材6によって塞ぐ。そして、外装ケース5の開口端部に横絞り加工及びカール処理を施すことにより、外装ケース5に封口部材6を固定し、これによって外装ケース5の開口50を封止する。その結果、巻回素子10が外装ケース5内に固定されて、コンデンサ本体1(図1参照)が完成する。
組み立て工程では更に、座板2上にコンデンサ本体1を搭載する(図1~図3参照)。このとき、陽極リードタブ端子30のリード部31を、第1溝部201に通じる貫通孔20に挿入する。又、陰極リードタブ端子40のリード部41を、第2溝部202に通じる貫通孔20に挿入する。
その後、これらのリード部31,41に対して、座板2の下面2bから突出した部分にそれぞれプレス加工を施し、これによって該部分を平坦形状に変形させる。そして、陽極リードタブ端子30のリード部31を貫通孔20の出口近傍にて折り曲げることにより、該リード部31の平坦部分を第1溝部201内に収容する。又、陰極リードタブ端子40のリード部41を貫通孔20の出口近傍にて折り曲げることにより、該リード部41の平坦部分を第2溝部202内に収容する。その結果、リード部31,41の平坦部分によって、座板2の下面2bに露出した陽極端子3と陰極端子4とがそれぞれ構成されることになる。
斯くして、本実施形態の固体電解コンデンサが完成することになる。
上記固体電解コンデンサにおいては、巻回体11に陰極箔等の陰極部材が巻回されておらず、従って、該固体電解コンデンサの製造過程において陰極箔等の陰極部材を巻回する必要がない。よって、陰極箔等の陰極部材がない分を陽極箔111に置き換えて陽極箔111の巻回量を増やすことが出来、これにより、固体電解コンデンサの大容量化が実現されることになる。
ここで、上記固体電解コンデンサにおいては、陰極箔等の陰極部材に代えてセパレータ112に陰極リードタブ端子40が取り付けられている。従って、該固体電解コンデンサの製造過程において陽極箔111とセパレータ112とを重ね合わせて巻回するだけで、第1従来例に係る固体電解コンデンサ(図12参照)と同様、陽極リードタブ端子30と陰極リードタブ端子40とが何れも巻回端面11aから引き出された巻回体11を作製することが出来る。よって、本実施形態に係る固体電解コンデンサによれば、第2従来例に係る固体電解コンデンサ(特許文献2参照)で必要であった煩雑な工程、即ち陰極リードフレームを作製し、又、該陰極リードフレームを巻回体に取り付ける工程が必要でなく、従って固体電解コンデンサの製造過程が煩雑化することがない。
更に、上記固体電解コンデンサにおいては、セパレータ112への陰極リードタブ端子40の取付け位置を調整することにより、陽極リードタブ端子30に対する陰極リードタブ端子40の位置関係を容易に変更することが出来る。本実施形態においては、陰極リードタブ端子40が、巻回軸110に対して陽極リードタブ端子30とは反対側の位置に設けられている。そして、巻回体11の巻回軸110が、外装ケース5の開口50の中心位置52に略一致し、これにより、陽極リードタブ端子30のリード部31が、外装ケース5の開口50の中心位置52とは異なる位置から外装ケース5の外部へ引き出される一方、陰極リードタブ端子40のリード部41が、外装ケース5の開口50の中心位置52に対して陽極リードタブ端子30のリード部31の引出し位置とは反対側の位置から外装ケース5の外部へ引き出されている。よって、上記固体電解コンデンサを基板に搭載する場合、従来の2端子の固体電解コンデンサ(図11参照)を搭載するために基板上に形成されていたランドパターンをそのまま用いることが出来、従って基板上に形成すべきランドパターンの設計変更が不要である。
更に又、上記固体電解コンデンサにおいては、陽極リードタブ端子30が、その平坦部32を陽極箔111に対して加締めることにより該陽極箔111に取り付けられている。従って、陽極リードタブ端子30は陽極箔111から脱落し難い。又、陰極リードタブ端子40が、その平坦部42をセパレータ112に対して加締めることにより該セパレータ112に取り付けられている。従って、陰極リードタブ端子40はセパレータ112から脱落し難い。
本願発明者は、本実施形態に係る固体電解コンデンサ(図3及び図6参照)と、第1従来例に係る固体電解コンデンサ(図11及び図12参照)とについて、静電容量及びESRを測定する実験を行った。ここで、本実施形態に係る固体電解コンデンサにおいては、巻回体11に陰極箔等の陰極部材が巻回されておらず、陰極リードタブ端子40がセパレータ112に取り付けられているのに対し、第1従来例に係る固体電解コンデンサにおいては、巻回体81に陰極箔812が巻回されており、該陰極箔812に陰極リードタブ端子84が取り付けられている。そして、本実験においては、固体電解コンデンサの外寸を本実施形態と第1従来例とで同じにした。又、静電容量の測定周波数を120Hz、ESRの測定周波数を100kHzとした。
実験の結果、第1従来例に係る固体電解コンデンサにおいて、静電容量が336μF、ESRが12mΩとなったのに対し、本実施形態に係る固体電解コンデンサにおいては、静電容量が645μF、ESRが42mΩとなった。この結果から、本実施形態に係る固体電解コンデンサにおいて大容量化が実現されることが確かめられた。
更に、本願発明者は、本実施形態に係る固体電解コンデンサについて、セパレータ112の厚さ寸法と固体電解コンデンサの不良率との関係を実験により調べた。ここで、本実験においては、セパレータ112に加締められた陰極リードタブ端子40が該セパレータ112から脱落したものを不良品とし、該不良品の割合を不良率として求めた。
実験の結果、セパレータ112の厚さ寸法を8μmとした場合、不良率が6%となったのに対し、セパレータ112の厚さ寸法を10μm、50μm、100μmとした場合は何れも、不良率が0%となった。この結果から、セパレータ112に対して陰極リードタブ端子40を加締める場合、セパレータ112の厚さ寸法を10μm以上とすることが好ましいことが分かった。尚、上記不良率との関係では、セパレータ112の厚さ寸法の上限値は特に限定されるものではなく、陰極リードタブ端子40を加締めることが出来る厚さ寸法であればよい。
図8は、上記固体電解コンデンサの第1変形例について、陰極リードタブ端子40の取付け構造を示した平面図である。又、図9は、図8に示されるB-B線に沿う断面図である。図8及び図9に示す様に、陰極リードタブ端子40は、その平坦部42をセパレータ112に貼着固定することにより該セパレータ112に取り付けられていてもよい。本変形例に係る固体電解コンデンサにおいても、上記固体電解コンデンサと同様、陰極リードタブ端子40はセパレータ112から脱落し難い。
ここで、図9に示す様に、セパレータ112への陰極リードタブ端子40の貼着には、接着剤や両面テープ等の接着部材70が用いられる。尚、接着部材70は、導電性のものであってもよいし、電気絶縁性のものであってもよい。但し、接着部材70に導電性のものを用いることにより、セパレータ112に重合液を含浸させて形成される固体電解質層と、陰極リードタブ端子40との電気的な接続面積が増大し、これによって固体電解コンデンサのESRが低減されることになる。
図10は、上記固体電解コンデンサの第2変形例について、陰極リードタブ端子40の取付け構造を示した平面図である。図10に示す様に、セパレータ112には、該セパレータ112への陰極リードタブ端子40の取付け強度を向上させる補強部材7が設けられていてもよい。具体的には、補強部材7はシート部材から形成されており、補強部材7が、陰極リードタブ端子40の平坦部42を被覆した状態で、該平坦部42とセパレータ112とに貼着固定されている。これにより、セパレータ112への陰極リードタブ端子40の取付け強度が高められる。よって、第2変形例に係る固体電解コンデンサによれば、セパレータ112からの陰極リードタブ端子40の脱落が防止されることになる。尚、補強部材7は、シート部材に限定されない種々の部材から形成されていてもよい。
更に、第2変形例に係る固体電解コンデンサにおいては、補強部材7として電気絶縁性のものを用いることが好ましい。補強部材7は、陰極リードタブ端子40と陽極箔111と間に介在することになるので、該補強部材7として電気絶縁性のものを用いることにより、陰極リードタブ端子40と陽極箔111とが互いに電気的に絶縁された状態で維持されることになる。
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記固体電解コンデンサにおいて、セパレータ112への陰極リードタブ端子40の取付け方法には、加締めや貼着に限定されない種々の方法を適用することが可能である。
又、上記固体電解コンデンサにおいて、巻回体11は、1枚の陽極箔111を巻回したものに限らず、2枚以上の複数枚の陽極箔111を、各陽極箔111にセパレータ112を重ね合わせて巻回したものであってもよい。又、上記固体電解コンデンサにおいて、陽極リードタブ端子30及び陰極リードタブ端子40の本数はそれぞれ、1本に限らず、2本以上の複数本であってもよい。
更に、上記固体電解コンデンサは、巻回体11の内部に固体電解質層が形成される一方で、巻回体11の外部には固体電解質層が形成されていない構成を有していてもよい。
11 巻回体
11a 巻回端面
111 陽極箔
112 セパレータ
30 陽極リードタブ端子
40 陰極リードタブ端子
5 外装ケース
50 開口
52 中心位置
7 補強部材
11a 巻回端面
111 陽極箔
112 セパレータ
30 陽極リードタブ端子
40 陰極リードタブ端子
5 外装ケース
50 開口
52 中心位置
7 補強部材
Claims (6)
- 表面に誘電体被膜が形成された陽極部材を、該陽極部材にセパレータを重ね合わせる一方で陰極部材を重ねずに巻回して構成された巻回体と、
前記巻回体の内部に形成された固体電解質層と、
前記陽極部材に取り付けられると共に前記巻回体の巻回端面から引き出された端子であって、前記陽極部材に電気的に接続されている陽極リードタブ端子と、
前記セパレータに取り付けられると共に前記巻回体の巻回端面から引き出された端子であって、前記固体電解質層に電気的に接続されている陰極リードタブ端子と
を備える、固体電解コンデンサ。 - 前記陰極リードタブ端子は、これを前記セパレータに対して加締めることにより該セパレータに取り付けられている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記セパレータの厚さ寸法が10μm以上である、請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記陰極リードタブ端子は、これを前記セパレータに貼着固定することにより該セパレータに取り付けられている、請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
- 前記セパレータには、該セパレータへの陰極リードタブ端子の取付け強度を向上させる補強部材が設けられている、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の固体電解コンデンサ。
- 前記巻回体が収容される外装ケースを更に備え、前記陽極リードタブ端子は、前記外装ケースの開口の中心位置とは異なる位置から該外装ケースの外部へ引き出される一方、前記陰極リードタブ端子は、前記外装ケースの開口の中心位置に対して前記陽極リードタブ端子の引出し位置とは反対側の位置から該外装ケースの外部へ引き出されている、請求項1乃至請求項4の何れかに記載の固体電解コンデンサ。
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2011
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