WO2010007831A1 - キースイッチ構造 - Google Patents

Abstract

　メンブレンシートの接点部に影響を与えることなく、メンブレンシートへの防水性を高めたキースイッチ構造を提供する。メンブレンシートの上面とバックプレートの打ち出し部の上面と周囲曲げ部の上面を同一平面に形成し、これらの上面に熱シートを溶着する。熱シートは熱溶融性の接着シートを有し、加熱ローラで加熱および加圧することにより各上面に溶着される。さらにバックプレートの底面部に空気孔を形成する。

Description

キースイッチ構造

　本発明は、情報処理機器、測定機器、医療機器などにおける入力装置として用いられるキーボードなどのキースイッチ構造およびその製造方法に関するものである。

　従来、可搬型のパーソナルコンピュータなどに用いられるキーボードにおいては、キートップのどの部分を押下してもキートップが傾くことなく下降する所謂操作性を確保するようにしている。そのために従来のキースイッチ構造においては、キートップの下部にリンク機構を備えている。キートップの下部にリンク機構を備えたキースイッチとしては、たとえば特開2001-229764号公報に開示されているものがある。

　このキースイッチ200では、図13に示すように、リンク機構を構成するリンク部材202、204はホルダ206によってキーボードのベース部208に固定されている。ベース部208はバックプレート210とメンブレンシート212とからなり、ホルダ206はメンブレンシートの上に配設されている。バックプレート210には打ち出し部214が突出形成されていて、この打ち出し部214はメンブレンシート212を貫通する透孔216に嵌合している。打ち出し部には孔218が形成されていて、この孔218にホルダ206の下部に形成された溶着用ピン220が嵌合している。バックプレート210はメンブレンシート212を挟んでホルダ206と溶着している。

　メンブレンシートは複数のシート220、222および224で構成され、シート間にキースイッチ200の接点部226を有する。これらのシート220、222、224は、キーボードの薄型化、小型化の影響により充分な糊幅が確保できず、したがって互いに充分に糊付けされていない。そのため従来のキースイッチ構造ではキーボード上に液体を溢して長時間放置すると、図13の矢印228で示す箇所、すなわち打ち出し部214とメンブレンシート212との間から液体が浸入し、さらにメンブレンシート212の糊付け部分から接点部226に浸入する可能性がある。

　また特開2002-216575号公報には、操作者がキースイッチを操作している際に誤ってキーボード上に液体を溢した場合に備えて、防水性を具備した装置が開示されている。このキーボード装置は、メンブレンシート上にキー全体を覆う防水シートを有し、この防水シートは各キーがその周囲に防水壁を有するよう成形されている。これによりキーボード上面に誤って液体を溢した場合に、キーボード下部の回路基板等がその影響を受けることを防いでいる。

　しかしながら、薄型または小型のキーボードの場合、このような防水シートを作成すること、すなわち樹脂フィルムまたは他の材料を成形して、各キーの防水壁を作ることは困難である。またそのように成形された防水シートは厚くなる傾向にあり、キースイッチを押下する際にシートの反力を受けるため、キートップ押下開始から接点部が閉成されるまでに時間が掛かる。

　このような従来技術の課題を解決するために本発明は、防水性に優れたキースイッチ構造およびその製造方法を提供することを目的とする。

　本発明はキートップを押下してメンブレンシートに設けられた接点部を閉成するキースイッチ構造に関するものであり、このキースイッチ構造は、メンブレンシートの上部に配設された熱溶着可能な防水用シートと、メンブレンシートの下部に配設され、防水用シート側に突出する固定用の打ち出し部および外周部を有するバックプレート部材とを有し、防水用シートがメンブレンシートの上面、打ち出し部の上面および外周部の上面に熱溶着されていることを特徴とするものである。

　本発明によれば、キーボード上に液体が溢れた場合であっても、キースイッチの操作に影響を与えることなくメンブレンシートの防水性を高め、メンブレンシート内に液体が浸入することを防止することができる。

　また、本発明によれば、防水用シートを成形する必要がなく、薄くすることができる。

　さらに本発明によれば、メンブレンシートの複数のシートを互いに糊接着する必要はなく、したがってメンブレンシートの糊幅に関する問題をなくすことができる。

　本発明の目的と特徴は、以下の添付図面を参照した詳細な説明を考慮することで、さらに明らかになる。
本発明のキースイッチの実施例の要部を示す概略断面図、 図１の実施例におけるキートップを示す概略斜視図、 図１の実施例におけるリンク部材を示す概略斜視図、 図１の実施例における他のリンク部材を示す概略斜視図、 図１の実施例における弾性部材を示す概略斜視図、 図１の実施例におけるホルダを示す概略斜視図、 図１の実施例における熱シートを示す概略断面図、 図１の実施例におけるメンブレンシートを示す概略斜視図、 図１の実施例におけるバックプレートを示す概略斜視図、 図１の実施例におけるベース部の製造方法を示す図、 図１の実施例におけるベース部を示す概略斜視図、 図１の実施例におけるベース部を示す概略断面図、 従来のキースイッチの構造を示す断面図である。

　次に添付図面を参照して本発明によるキースイッチ構造の実施例を詳細に説明する。本実施例のキースイッチ10は、図１に示すように、キートップ12と、リンク部材14および16と、弾性部材18と、ホルダ20と、ベース部22とを含み、キートップ12を押すことによりベース部22に配設された接点部24を閉成することができるものである。

　キートップ12の表面（上面）には文字または記号が印刷されていてよい。キートップ12の裏面には、図２に示すように、リンク部材14の一端を回転可能に支持する回転支持部26と、リンク部材16の一端を回転可能にかつ水平方向に移動可能に支持するスライド支持部28とが設けられている。

　リンク部材14、16は、その中央部において互いに回転可能に接続され、一端はキートップに支持され、他端はホルダ20に支持される。

　より詳細には、リンク部材14は図３に示すように一対の脚部30、32を有し、脚部の一端は連結棒34で連結され、他端は連結棒36で連結されている。連結棒34は、キートップの回転支持部26に挿入支持され、連結棒36はホルダ20に支持される。リンク部材14は脚部30、32の外面中央部に軸38、40を有し、これによってリンク部材16と接続する。本実施例では軸38、40は、脚部30、32の外面上における連結棒34と36とをつなぐ線上であって、連結棒34、36から等距離となる位置に設けられている。

　また、リンク部材16は図４に示すように一対の脚部42、44を有し、脚部42、44の一端は連結棒46で連結されている。この端部にはそれぞれ支持突起48、50が外側に向けて設けられていて、支持突起48、50はキートップのスライド支持部28によって支持される。脚部42、44の他端にはそれぞれ支持突起52、54が外側に向けて設けられていて、支持突起52、54はホルダ20に支持される。支持突起48と52および50と54の距離は、リンク部材14の連結棒34、36の距離に等しい。また本実施例では、連結棒46はリンク部材16において支持突起48、50より先端側に設けられている。

　さらに、リンク部材16は脚部42、44に軸穴56、58を有し、リンク部材14の軸38、40を軸支する。本実施例では軸穴56、58はそれぞれ、脚部42、44の外面上における支持突起48と52および50と54をつなぐ線上であって、それぞれの支持突起48と52および50と54から等距離となる位置に設けられている。

　弾性部材18は、キートップ12の下に配設されてキートップ12を支持するものであり、キートップが押下されると屈曲し、キートップ12への押下力が排除されるとキートップ12を元の位置に復帰させる。本実施例の弾性部材18は、図５に示すように、ゴムなどを素材として略カップ状に形成され、内面中央部に接点押下部60が突設されている。弾性部材18は、接点押下部60がベース部22に対向してベース部22の接点部24の真上に位置するようにベース部上に配設される。したがって、キートップ12が押されると接点押下部60は接点部24を押してスイッチを閉成することができる。

　ホルダ20は、本実施例では図６に示すようにキースイッチ10ごとに分割して枠状に形成され、ベース部22上に配設されている。ホルダ20は、その一端付近にリンク部材14の連結棒36を回転可能にかつ水平方向に平行移動可能に支持するスライドガイド62および、他端付近にリンク部材16の支持突起52、54を回転可能に支持する回転ガイド64、66を有する。ホルダ20はその両端部の中央に円弧形の対向するガイド壁68を有し、ガイド壁68は弾性部材18の外周部を固定する。また、ホルダの下面には所定の長さの溶着用ピン70が設けられ、ホルダ20は溶着用ピン70によってベース部22に固定されている。

　ベース部22は、熱シート72とメンブレンシート74とバックプレート76とを含み、熱シート72とバックプレート76との間にメンブレンシート74が配設されている。

　熱シート72は防水用のシートであり、図７に示すように、上層部に防水性に優れた薄膜のシート78を、下層部に熱溶解性の接着シート80を有し、薄膜シート78は本実施例では25μｍのPET（ポリエチレンテレフタラート）シートである。熱シートはメンブレンシート74全体を覆うように配設される。

　メンブレンシート74は、図１に示すように、それぞれ可撓性を有する上部シート82および下部シート84と、これらのシート82、84に挟まれたスペーサシート86とを含む。スペーサシート86には、複数の貫通穴88が設けられていて、貫通穴88の位置は接点部24の位置に対応している。貫通穴88は、上部シート82および下部シート84の間に空間を形成し、この空間内において、上部シート82には可動接点90が、下部シート84には固定接点92が互いに対向するよう設けられている。これらの接点90、92はキースイッチの接点部24を構成する。メンブレンシート74には、図８に示すように、貫通穴88の周囲に複数の透孔94が設けられている。

　バックプレート76は、図９に示すように、複数の打ち出し部96を有する。打ち出し部96はメンブレンシート74の透孔94に対応する位置に設けられていて、透孔94に嵌合する。打ち出し部96の高さはメンブレンシート74の厚さとほぼ同じである。打ち出し部96にはその高さ方向に穴98が貫通していて、この穴はホルダ20の溶着用ピン70を嵌め込むためのものである。したがって、本実施例ではホルダ20の溶着用ピン70は打ち出し部96の穴98に対応する位置に設けられている。また、バックプレート76は図１に示すようにバスタブ状に形成され、バックプレートの外周部100の上面は打ち出し部96の上面と同一平面に位置する。

　本実施例のベース部22では、図１に示すように、メンブレンシート74の上面およびバックプレート76の打ち出し部96の上面および外周部100の上面は同一平面上に位置していて、これらの面は熱シート72に密着している。

　本実施例のベース部22は、図１に示すように、メンブレンシート74とバックプレートの外周部100と熱シート72とで囲まれた空間102を有する。バックプレート76には空気孔104が設けられているため空間102は密閉されていない。

　ここで、ベース部22の製造方法を説明する。まずバックプレート76の上にメンブレンシート74を、バックプレート76の各打ち出し部96がメンブレンシート74の透孔94に嵌合するように載せる。さらにその上に熱シート72を被せる。この段階では熱シート72、メンブレンシート74およびバックプレート76は互いに固着していない。

　次に図10に示すように、内部に熱源を有し矢印104、106方向に回転する２つの加熱ローラ108、110の間を矢印111方向に通過させて、これらの熱シート72、メンブレンシート74およびバックプレート76に高い熱と圧力を与える。熱シートの接着シート80は加熱ローラの熱で溶け、熱シート72は加熱ローラからの圧力によってメンブレンシート74の上面およびバックプレートの打ち出し部96および外周部100の上面に密着する。これにより熱シート72、メンブレンシート74およびバックプレート76が一体に固着されたベース部22が得られる。

　次に、本実施例のキースイッチ10の組み立て方法を説明する。まず、図11および12に示すように、上記方法により得られたベース部22の上部にピン孔112を形成する。ピン孔112はバックプレートの打ち出し部の穴98に対応する位置に設けられ、ピン孔112の径は穴98の径より小さい。そして、ホルダ20の溶着用ピン70をベース部のピン孔112に圧入し、さらに打ち出し部の穴98に挿入して熱溶着させる。溶着用ピン70の先端部を加熱して扁平状に変形させ、図１に示すようにベース部22に密着固定する。このときホルダ20とバックプレート76とによって、熱シート72とメンブレンシート74が挟まれた状態となる。

　次にキースイッチ10の動作について説明する。キートップ12を上方から任意の荷重で押下するとキートップ12は下方に移動する。このとき弾性部材18は屈曲し、接点押下部60は熱シート72を介してメンブレンシート74の接点部24を押圧する。これによりスイッチは閉状態となる。接点部24を押圧することによりメンブレンシート74は変形するが、ベース部22の空間102内の空気が空気孔104から抜けため、接点部24の熱シート72およびメンブレンシート74は良好に撓むことができる。本実施例では、空気孔104はベース部22においてメンブレンシート74の下に位置する。

　ここで、本実施例のキースイッチ10は、仮にキートップ12の端部が押下された場合でも、リンク部材14、16からなるリンク機構によってキートップ12は水平状態を維持しながら下降することができる。たとえば、図１において矢印114で示すキートップの端部が押下された場合、まずリンク部材14の矢印114側の端部が下降する。リンク部材14の他端部は矢印116方向へ移動する。これによりリンク部材14の中央部は下降し、中央部でリンク部材14と連結されているリンク部材16も下降する。これによりキートップ12は水平状態を保ったまま下降する。

　本実施例によれば、熱シート72をメンブレンシート74の上面およびバックプレート76の打ち出し部96および周囲曲げ部100の上面に熱溶着したので、水などの液体をキーボード上に溢した場合でも、その液体がメンブレンシート74内に浸入することはなくなる。

　本実施例によれば、ホルダ20の溶着用ピン70がベース部のピン孔112に圧入されているので、熱シート上に溢れた液体がピン孔112からメンブレンシート74へ浸入することはない。万が一液体がピン孔112に浸入しても、防水性の熱シート72がバックプレート76の打ち出し部96の上面に熱溶着されているので、液体がメンブレンシート74の接点部24に浸入することはない。

　本実施例によれば、メンブレンシート74の上部、バックプレート76の打ち出し部96および周囲曲げ部100の上部は同一平面上にあるので、熱シート72は特に成形する必要がなく、装置のコストダウンに寄与することができる。さらに熱シート72を薄くすることができるので、熱シート72の厚みがキースイッチ10の操作に影響を与えることはない。

　また、本実施例によれば、ベース部22の底面部に空気孔104が形成されているため、キートップ押下時に熱シート72よびメンブレンシート74は良好に撓むことができる。また、熱シート72は高圧力かつ高熱でメンブレンシート74およびバックプレート76に溶着されるので、メンブレンシート74の糊接着を必要とせず、したがってメンブレンシート74の糊幅に関する問題をなくすことができる。

　さらに、本実施例のキースイッチ10は、キートップ12のどの位置を押下してもキートップは水平状態を保ったまま下方に移動するため、キートップの押下位置による操作感の差異がなく、すなわち、操作性を確保することができる。

　西暦2008年７月14日に出願された日本国特許出願、特願2008-183063号の明細書、請求の範囲、添付図面および要約書を含むすべての開示内容は、この明細書にそのすべてが含まれて、参照される。

　本発明を特定の実施例を参照して説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。いわゆる当業者は、本発明の範囲および概念から逸脱しない範囲で、これらの実施例を変更または修正することができることは、認識されるべきである。

Claims (5)

1. 　キートップを押下してメンブレンシートに設けられた接点部を閉成するキースイッチ構造において、
   　前記メンブレンシートの上部に配設された熱溶着可能な防水用シートと、
   　前記メンブレンシートの下部に配設され、前記防水用シート側に突出する固定用の打ち出し部および前記防水用シート側に突出する外周部を有するバックプレート部材とを含み、
   　前記防水用シートが前記メンブレンシートの上面、前記打ち出し部の上面および前記外周部の上面に熱溶着されていることを特徴とするキースイッチ構造。
2. 　請求項１に記載のキースイッチ構造において、前記メンブレンシートの上面、前記打ち出し部の上面および前記外周部の上面は同一平面上にあることを特徴とするキースイッチ構造。
3. 　請求項１に記載のキースイッチ構造において、前記バックプレート部材の前記メンブレンシートに対向する位置に空気孔を形成したことを特徴とするキースイッチ構造。
4. 　キートップを押下してメンブレンシートに設けられた接点部を閉成するキースイッチ構造の製造方法において、
   　前記メンブレンシートの上部に配設された熱溶着可能な防水用シートと、前記メンブレンシートの下部に配設され、前記防水用シート側に突出する固定用の打ち出し部および前記防水用シート側に突出する外周部を有するバックプレート部材とからなるベース部を、前記防水用シートが前記メンブレンシートの上面、前記打ち出し部の上面および前記外周部の上面に対向するように形成し、
   　前記ベース部を加熱手段により加熱して前記防水用シートを前記メンブレンシートの上面、前記打ち出し部の上面および前記外周部の上面に熱溶着することを特徴とするキースイッチ構造の製造方法。
5. 　請求項４に記載の方法において、前記防水用シートを熱溶着した前記ベース部の前記打ち出し部にホルダの溶着用ピンを圧入することを特徴とするキースイッチの製造方法。

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