明 細 書
コンタクトレンズ用液剤及びこれを用いたコンタクトレンズの親水化処理方 法
技術分野
[0001] 本発明は、コンタクトレンズ用液剤に係り、特に、酸素透過性ノヽードコンタクトレンズ やソフトコンタクトレンズの表面に対して親水化処理を実施する際の親水化処理剤と して、或いはコンタクトレンズ表面の親水性を維持する際の保存液等として有利に用 いられ得るコンタクトレンズ用液剤、及び、力かる液剤を用いたコンタクトレンズの親水 化処理方法に関するものである。
背景技術
[0002] コンタクトレンズの利用者数は年々、増加しており、これに伴い、コンタクトレンズ素 材ゃレンズデザインについての研究及び開発力 盛んに行なわれている。具体的に は、コンタクトレンズは、視力矯正という同じ目的で使用される眼鏡とは異なり、角膜 に直接接触させて、使用されるものであるところから、コンタクトレンズには、その装用 中に角膜の新陳代謝を阻害しないことが要求される。このため、酸素透過性に優れ たコンタクトレンズ素材の開発や、コンタクトレンズと角膜との間の涙液交換がスムー ズに行なわれ得るようなレンズデザインの研究力 盛んに進められて 、るのである。
[0003] 例えば、酸素透過性に優れたポリマーとして、シロキサニル (メタ)アタリレート、ポリ ジメチルシロキサンマクロマー、フルォロアルキル (メタ)アタリレート等のシロキサン化 合物やフッ素含有ィヒ合物と、他の一種又は二種以上のモノマーとを共重合せしめて 得られる、シリコーン系ポリマーやフッ素系ポリマーが知られており、これらのポリマー は、従来より、コンタクトレンズ素材として広く用いられている。
[0004] し力しながら、かかるシリコーン系ポリマーやフッ素系ポリマーは、一般に、撥水性 が強いものであるため、そのようなシリコーン系ポリマー等力もなるコンタクトレンズに あっては、そのレンズ表面において涙液をはじいてしまい、装用者が強い異物感を 感じるという問題があった。また、シリコーン系ポリマーやフッ素系ポリマーからなるコ ンタクトレンズには、涙液中の成分が付着し易いため、それら成分の付着によってレ
ンズが曇ってしまい、装用者の視界を悪化させる等の問題点も指摘されている。
[0005] このようなコンタクトレンズの撥水性に起因する問題を解決すベぐ上記のシロキサ ン化合物等と共重合せしめるモノマーとして親水性モノマーを用いることにより、最終 的に得られるコンタクトレンズに親水性を付与せしめることが提案されている。しかし ながら、親水性モノマーは、一般に、上記のケィ素含有ィ匕合物等との相溶性が悪い ため、それらを共重合せしめると、得られるポリマーが白濁したものとなる恐れがあり、 また、親水性をより向上させるベく親水性モノマーの使用量を多くすると、最終的に 得られるコンタクトレンズにおいて、レンズ規格の安定性が低下する等の問題があつ た。
[0006] 一方、コンタクトレンズに様々な処理を施すことにより、コンタクトレンズに親水性を 付与する方法が種々、提案されている。例えば、コンタクトレンズ表面にプラズマ処理 やプラズマ重合処理を施すことにより、コンタクトレンズに親水性を付与する方法が提 案されている(特許文献 1及び 2を参照)。し力しながら、このような表面処理によるコ ンタクトレンズの親水化処理方法にあっては、その実施に際して所定の処理装置が 必要となり、また、コンタクトレンズの表面及び裏面をそれぞれ処理する必要があるこ とから、生産性の点において問題を有するものであった。
[0007] また、コンタクトレンズを、所定の成分を含有する溶液に浸漬せしめて、力かるコンタ クトレンズに親水性を付与する方法 (以下、浸漬法という)も広く知られており、それに 用いられる各種溶液が提案されて 、る。
[0008] 具体的には、ポリビュルアルコール、ヒドロキシェチルセルロース及びポリビュルピ 口リドンの三種の高分子化合物を主要成分とする溶液にコンタクトレンズを浸漬せし める方法や、イオン電荷を有する重合体物質を含む溶液にコンタクトレンズを浸漬せ しめる方法 (特許文献 3)、更には、加水分解コラーゲンペプチドを含有する溶液にコ ンタクトレンズを浸漬せしめる方法 (特許文献 4)等が、提案されている。これらの方法 は、前述の如き表面処理によるコンタクトレンズの親水化処理方法と比較して、簡易 なものではあるものの、コンタクトレンズに付与できる親水性の程度が低いため、コン タ外レンズに対して所望とする親水性を付与し難 、と 、う問題があった。
[0009] 上述した溶液の他にも、種々の糖類を含有する溶液が提案されて ヽる。例えば、特
許文献 5にお 、ては、多糖類の球状微粒子を含有するコンタクトレンズ用洗浄剤が 提案されており、特許文献 6においては、デキストリンとァラビノガラタタンとからなる群 から選択される多糖類等を含有する眼科用溶液が提案されている。また、特許文献 7 には、単糖類及び二糖類の群の中から選ばれる少なくとも一つ以上のものと酵素等 を含有するコンタクトレンズ保存液が、更に特許文献 8には、直鎖状多糖類であるァ ルギン酸を含むコンタクトレンズ用液剤力 それぞれ開示されている。これら溶液に用 いられる糖類は、何れも、何らかの修飾が加えられたものではないため、安全性に問 題はないものの、上述した他の液剤を用いた浸漬法と同様に、コンタクトレンズに付 与できる親水性の程度が低ぐまた、付与された親水性も長時間、持続するものでは ないことから、改善の余地を残すものであった。
[0010] ところで、修飾された糖類として、糖を側鎖として有するポリスチレン誘導体であるポ リ(N—p ビュルベンジル一 D—ラタトンアミド)〔以下、 PVLAという〕が知られている (非特許文献 1を参照)。力かる PVLAについては、基質として細胞培養に用いること (特許文献 9〜 12を参照)や、細胞培養容器のコーティング剤に用いること (特許文 献 13を参照)、抗血栓性材料に用いること (特許文献 14を参照)、薬剤を PVLAで包 接し DDS製剤として用いること (特許文献 15を参照)や、化粧料に用いること (特許 文献 16を参照)等が、提案されている。なお、これらは何れも、 PVLAをホモポリマー として用いたものである。
[0011] また、糖鎖含有スチレン誘導体たる PVLAと他のモノマーとの共重合体の利用例と しては、 PVLAとメタクリロイル基を N末端に有するリジンオリゴマーとのグラフト共重 合体を用いて、薬物を特定細胞に取り込ませる方法 (特許文献 17を参照)や、 PVL Aと 4 ビュルべンジルへキサデカンアミドとの共重合体を抗血栓性材料として用い ること (特許文献 18を参照)等が提案されて 、る。このような糖側鎖含有ポリマーの利 用例は、糖側鎖が細胞培養において特異的な効果を有するものであることや、細胞 が糖側鎖を認識すること等を利用したものであるが、本発明者等が知る限りにおいて 、そのような糖側鎖含有ポリマーをコンタクトレンズ分野に応用した例は未だにない。
[0012] 特許文献 1:特公昭 55- 49288号公報
特許文献 2:特開昭 58-216222号公報
特許文献 3 :特公平 2-61017号公報
特許文献 4 :特開平 7- 218878号公報
特許文献 5:特開平 1-293314号公報
特許文献 6:特公昭 61-5452号公報
特許文献 7 :特開平 4-161921号公報
特許文献 8:特開平 7-157747号公報
特許文献 9:特開昭 63-116692号公報
特許文献 10:特開昭 63-279787号公報
特許文献 11:特開昭 63-301786号公報
特許文献 12 :特開平 1-309681号公報
特許文献 13 :特開平 4- 169530号公報
特許文献 14:特開平 2- 224664号公報
特許文献 15:特開平 5- 105637号公報
特許文献 16:特開 2000-273019号公報
特許文献 17:特開平 10-45630号公報
特許文献 18:特開 2005- 112987号公報
非特干文献 1 : Kazukiyo Kobayasmら、「Synthesis and Functions of Polystyrene Deri vatives Having Pendant OligosaccharidesJ、ポリマ ~~ンャ ~~ナル (Polymer Journal)、 第 17卷、第 4号、第 567〜575頁(1985年)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
ここにおいて、本発明は、力かる事情を背景にして為されたものであって、その解決 すべき課題とするところは、撥水性の強いコンタクトレンズ表面に対しても安定した親 水性を付与することが可能なコンタクトレンズ用液剤を提供することにある。また、本 発明は、力かるコンタクトレンズ用液剤を用いて、コンタクトレンズ表面の親水化処理 を有利に行なうことが可能なコンタクトレンズの親水化処理方法を提供することも、そ の解決課題とするものである。
課題を解決するための手段
[0014] そして、本発明は、 N—p—ビュルべンジルー D—ラタトンアミドと、これと共重合可 能な少なくとも 1種のモノマーからなる共重合体を、 0. 0001〜5wZv%の割合にお いて含有することを特徴とするコンタクトレンズ用液剤を、その要旨とするものである。
[0015] なお、そのような本発明に従うコンタクトレンズ用液剤における好ましい態様の一つ においては、前記共重合体が、下記式(1)〜 (4)で表わされるものである。
[0016] [化 1]
[式中、 mi:ni二 9:1〜1:9であり、 xは 0〜3の整数である。また、一 Y—は、 単結合、又は一 NHCO—、— NHCONH―、— CONH—、— OCONH―、 — NHCOO—、一〇CO—、 一COO—、 一CO—若しくは一 NH—で表わさ れる原子団である。
更に、 Riは、下記(a)、(b)の何れかである。
(a)炭素数が 5〜: L0であって飽和又は不飽和の、 i )単環、 ii)二環、若し くは iii)0原子、 S原子若しくは N原子を含む五員複素環若しくは六員複 素環。なお、かかる単環、二環、五員複素環及び六員複素環は、少なく ともその一部がハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、シァノ 基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フエニル基及びァセチル基か ら選択される一つ以上の基で置換されてレ、てもよレ、。
(b)炭素数が 1〜20であるアルキル基、又は、一般式:一 O— C"H2a + i、 -S-CaH2« + u― NH— C"H2a + i (前記一般式中の αは、何れも:!〜 20の整数)で表わされる原子団。なお、かかるアルキル基及び原子団は、 少なくともその一部がハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、 シァノ基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フエニル基及びァセチル 基から選択される一つ以上の基で置換されていてもよい。 ] 2]
[式中、 m2: = 9:l〜: 1:9であり、 Riは式(1)と同様である。 ]
[0018] [化 3]
[式中、 m3:m = 9:l〜: 1:9である。 ]
[0019] [化 4]
[式中、 m4:n4 = 9:l〜: 1:9であり、 Ll、 L2、 L3は各々独立して、 0又は 1 である。また、 R2、 R3、 R4は、各々が互いに独立したものであって、炭素数 力 :!〜 20であるアルキル基、又は、一般式:一 O— CiiH2/9+】、
-S-C/iH20+u—NH— + 1 (前記一般式中の /3は、何れも 1〜
20の整数)で表わされる原子団である。なお、かかるアルキル基及び原子 団は、少なくともその一部がハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、チォー ル基、シァノ基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フヱニル基及びァ セチル基から選択される一つ以上の基で置換されてレ、てもよレ、。
更に、一 R5 は、下記(a)、 (b)の何れかである。
(a)単結合、又は NHCO 、 一 NHCONH 、 一 CONH—、 OCONH 、一 NHCOO 、一 OCO 、一 COO 、 一 CO—、 — NH—若しくは一 O で表わされる原子団。
(b)一般式:一 CyH2Y―、 -0-C7H27-, -CyH2y-0-,
-S-CyH2T-, CVH2Y S―、 一 NH— CyH2V—、 CYH2y— NH—(前記一般式中の! /は、何れも:!〜 20の整数)で 表わされる原子団。なお、かかる原子団は、少なくともその一部がハロ ゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、シァノ基、シクロペン チル基、シクロへキシル基、フエニル基及びァセチル基から選択され る一つ以上の基で置換されていてもよい。 ]
[0020] また、本発明のコンタクトレンズ用液剤における好ましい態様の他の一つにおいて は、非イオン性界面活性剤を 0.001〜10wZv%の割合で含有する。
[0021] さらに、本発明に係るコンタクトレンズ用液剤の別の好ましい態様の一つにおいて
は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のうちの何 れか一種を、 0. 001〜10wZv%の割合で含有する。
[0022] さらにまた、本発明のコンタクトレンズ用液剤における望ましい態様の一つにおいて は、緩衝剤、等張化剤、増粘剤及び殺菌剤のうちの少なくとも何れか一種を、更に含 有する。
[0023] 一方、本発明は、上述の如きコンタクトレンズ用液剤の何れかを用いて、該コンタク トレンズ用液剤をコンタクトレンズに接触せしめることを特徴とするコンタクトレンズの 親水化処理方法をも、その要旨とするものである。
[0024] なお、力かるコンタクトレンズの親水化処理方法においては、有利には、コンタクトレ ンズ用液剤中にコンタクトレンズを浸漬せしめ、その後に該コンタクトレンズに対して すすぎ処理が施されることとなる。
発明の効果
[0025] このように、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤は、 N—p—ビュルべンジルラタトン アミドと他のモノマーとの共重合体を、所定割合にて含有するものであり、かかる共重 合体は、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つものであることから、本発明のコンタ クトレンズ用液剤をコンタクトレンズに接触させると、液剤に含まれる共重合体は撥水 性の強いコンタクトレンズ表面にも良好に吸着する。力かる吸着により、コンタクトレン ズ表面には親水性の表面層が形成されるところから、コンタクトレンズの親水化が効 果的に図られるのである。
[0026] また、液剤に含まれる共重合体は、コンタクトレンズ表面に、比較的強固な結合であ る疎水結合によって吸着するため、本発明のコンタクトレンズ用液剤を用いて親水化 処理が施されたコンタクトレンズにあっては、その効果を比較的長期間に亘つて享受 することが可能である。
[0027] さらに、液剤中の共重合体がコンタクトレンズに吸着し、コンタクトレンズ上に表面層 を形成することから、特にハード系コンタクトレンズの使用時に発生する場合があるレ ンズ表面の曇りの発生を、効果的に防止することが出来る。
[0028] そのような優れた特性を有するコンタクトレンズ用液剤を親水化処理剤として用いて 、本発明に従いコンタクトレンズの親水化処理を行なうと、処理後のコンタクトレンズは
、優れた親水性を長期間に亘つて発揮することとなるのである。
図面の簡単な説明
[0029] [図 1]実施例の「コンタクトレンズ装用試験 I」において得られた被験者の評価の平均( 平均評価点)を、それぞれ示す棒グラフである。
[図 2]実施例の「コンタクトレンズの水濡れ性評価試験 II」にお ヽて得られた被験者の 評価の平均 (平均評価点)を、それぞれ示す棒グラフである。
[図 3]実施例の「コンタクトレンズ装用試験 II」において、市販されているコンタクトレン ズの一つを試験用コンタクトレンズとして用いた際に得られた、被験者の評価の平均 (平均評価)点を、それぞれ示す棒グラフである。
[図 4]実施例の「コンタクトレンズ装用試験 II」において、市販されているコンタクトレン ズの別の一つを試験用コンタクトレンズとして用いた際に得られた、被験者の評価の 平均 (平均評価)点を、それぞれ示す棒グラフである。
[図 5]実施例の「コンタクトレンズ装用試験 II」において、市販されているコンタクトレン ズの更に別の一つを試験用コンタクトレンズとして用いた際に得られた、被験者の評 価の平均 (平均評価)点を、それぞれ示す棒グラフである。
発明を実施するための最良の形態
[0030] ところで、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤にあっては、 N— p—ビニルベンジル —D—ラタトンアミド(以下、適宜 VLAという)と、これと共重合可能な少なくとも 1種の モノマー力もなる共重合体を、必須成分として含有するものである。そのような共重合 体を合成するに際しては、先ず、 VLAが準備されることとなる力 かかる VLAの合成 方法については、その一例が非特許文献 1に記載されている。非特許文献 1に開示 されている VLAの合成方法は、以下の通りである。
[0031] 先ず、 p—ビュルべンジルクロリドとフタルイミドカリウムの等モル混合物を準備し、こ れを N, N—ジメチルホルムアミドに溶解せしめて反応溶液とする。この反応溶液をカロ 熱して、 p—ビュルべンジルクロリドとフタルイミドカリウムを反応させる。加熱後の反応 溶液を減圧濃縮して、反応生成物を含んだ残留物をクロ口ホルムに溶解してクロロホ ルム溶液とする。かかるクロ口ホルム溶液を、水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、濃縮 した後、反応生成物である N—p—ビニルベンジルフタルイミドを、メタノールを用いて
再結晶させる。このようにして得られた N—p—ビュルべンジルフタルイミドをエタノー ルに溶解し、これに無水ヒドラジンのエタノール溶液をカ卩えて還流する。得られた析 出物を濾別して、水酸化カリウム水溶液で処理し、エーテルにより抽出する。抽出物 であるエーテル溶液を乾燥した後、減圧濃縮し、 p ビュルベンジルァミンを得る。な お、ここまでの反応の流れを、反応式によって以下に示す。
[0032] [化 5]
[0033] 一方、別途準備した O— 13 D—ガラクトビラノシルー (1→4) D ダルコノー 1, 5—ラタトンをメタノールに溶解して、メタノール溶液とする。このメタノール溶液に、加 熱下で、前述した P ビュルベンジルァミンのメタノール溶液を添加する。これにより 生じた白色結晶の沈殿物を濾別し、残渣を冷メタノールで洗浄し、減圧乾燥すること により、 目的とする N— p ビュルベンジル一 D—ラタトンアミド (VLA)が得られるの である。なお、 VLA生成の化学反応式を、参考として下に示す。
[0034] [化 6]
[0035] 以上、非特許文献 1に記載されて 、る VLAの合成方法にっ 、て述べてきたが、本 発明にお 、ては、上述した方法以外の方法に従って合成された VLAであっても用い られ得ることは、言うまでもないところである。
[0036] 本発明にお!/、ては、 VLAと共重合可能なモノマーであれば、如何なるものであつ ても用いることが可能である力 それらの中でも、特に、以下に述べるモノマーが有利 に用いられることとなる。
[0037] まず、 VLAはスチレン誘導体であるため、共重合性の点より、同じ重合基を有する スチレン系のモノマーが有利に用いられる。具体的には、下記式(5)で表わされるモ ノマーを、例示することが出来る。
(CH2)x
I
Y
Ri
[式中、 xは 0〜3の整数であり、一 Y—は、単結合、又は— NHC〇一、 一 NHCONH—、一 C〇NH—、一 OCONH—、一 NHCOO—、一 OCO—、 一 COO—、一CO—若しくは一 NH—で表わされる原子団である。
また、 Riは、下記(a)、(b)の何れかである。
(a)炭素数が 5〜: 10であって飽和又は不飽和の、 i )単環、 ii )二環、若し くは iii )〇原子、 S原子若しくは N原子を含む五員複素環若しくは六員複 素環。なお、かかる単環、二環、五員複素環及び六員複素環は、少なく ともその一部がハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、シァノ 基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フエニル基及びァセチル基か ら選択される一つ以上の基で置換されてレ、てもよレ、。
(b)炭素数が 1〜20であるアルキル基、又は、一般式:—Ο— C " H2 a + i、
- S -C aH2 a + U 一 NH— C a H2a + l (前記一般式中のひは、何れも 1〜
20の整数)で表わされる原子団。なお、かかるアルキル基及び原子団は、 少なくともその一部がハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、 シァノ基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、フエニル基及びァセチル 基から選択される一つ以上の基で置換されてレ、てもよレ、。 ] そのようなモノマーの中でも、下記式(5a)で表わされるモノマー(5a) [ビュルベン ジルへキサデカンアミド]や、下記式(5b)で表わされるモノマー(5b) [ビュルべンジ ルシクロへキシルプロパンアミド]力 特に有利に用いられる。これらモノマーと VLAと の共重合体を含有するコンタクトレンズ用液剤を、コンタクトレンズの保存液として用 いると、力かる共重合体がコンタクトレンズ表面に良好に吸着し、コンタクトレンズ表面 の水濡れ性を向上させる(コンタクトレンズ表面に親水性を付与する)と共に、その優 れた水濡れ性 (親水性)を効果的に維持し得る力 である。本発明者等が知得したと ころによれば、上記ポリマーと VLAとの共重合体を含有するコンタクトレンズ用液剤
は、特に、シリコーン系コンタクトレンズに対して優れた効果を発揮することとなる。
[0040] [化 8]
[0041] また、 VLAとの共重合が容易に進行する他のモノマーとしては、ビニル基を有する モノマーを挙げることが出来る。具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステ アリン酸ビュル等のカルボン酸ビュルモノマーや、 N ビュル— 2—ピぺリドン、 N— ビュル一 2 ピロリドン、 N ビュル一 2—力プロラタタム、 N ビュル一 3—メチル 2 —ピロリドン、 N ビュル一 3—メチル 2 ピぺリドン、 N—ビュル一 3—メチル 2 一力プロラタタム、 N ビニルー 4ーメチルー 2 ピロリドン、 N ビニルー 4 メチル —2 ピぺリドン、 N ビュル一 4—メチル 2—力プロラタタム、 N—ビュル一 5—メ チル一 2 ピロリドン、 N ビュル一 5—メチル 2 ピぺリドン、 N ビュル一 3 ェ チルー 2—ピロリドン等の N ビュルラタタム、ビュルシクロペンタン、更には、下記式 (6)で表わされるモノマーを例示することが出来る。
[0042] [化 9]
c
H
2
[式中、 R!は式 o c(——-5)と同様である。 ]
H
[0043] これらの中でも、ビュルシクロペ 6ンタン、下記式(6a)で表わされるモノマー(6a) [ェ チレングリコールモノビュルエーテル]、及び下記式(6b)で表わされるモノマー(6b) [ジエチレングリコールモノビュルエーテル]力 特に有利に用いられる。
[0044] [化 10]
CH2
[0045] さらに、本発明のコンタクトレンズ用液剤を用いて親水化処理が施されるコンタクトレ ンズは、近年、酸素透過性の向上を図る観点から、大多数のものがシロキサンィ匕合 物を構成成分として 、る。そのようなシロキサンィ匕合物を構成成分とするコンタクトレ ンズとの親和性の観点より、本発明においては、 VLAと共重合可能なモノマーとして 、下記式(7)で表わされるシリコン系モノマーが有利に用いられ得る。
[0046] [化 11]
CH?
[式中、 Ll、 L2、 L3は各々独立して、 0又は 1である。また、 R2、 R3、 R4は、 各々が互いに独立したものであって、炭素数が 1〜20であるアルキル基、 又は、一般式:一 O— C H2(5 + i、 -S-C/3H2/J + K— NH— C H2/3 + 1 (前記一般式中の βは、何れも 1〜20の整数)で表わされる原子団である。 なお、かかるアルキル基及び原子団は、少なくともその一部がハロゲン原 子、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、シァノ基、シクロペンチル基、シ クロへキシル基、フエニル基及びァセチル基力、ら選択される一つ以上の基 で置換されていてもよい。
更に、一 Rs—は、下記(a)、 (b)の何れかである。
(a)単結合、又は一 NHCO—、一 NHCONH—、一 CONH―、
一 OCONH—、一 NHCOO—、 一 OCO—、一 COO—、 一 CO—、 一 NH—若しくは一〇一で表わされる原子団。
(b)—般式:一 CyH2v—、 -0-C H2V-, 一 CyH2y—◦—、
-S-CyH2y-,— CyH2Y— S―、 -NH-CyH2y
一 CvH2v— NH—(前記一般式中の γは、何れも 1〜20の整数)で 表わされる原子団。なお、かかる原子団は、少なくともその一部がハロ ゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、チォ一ル基、シァノ基、シクロペン チル基、シクロへキシル基、フエニル基及びァセチル基力、ら選択され る一^ ^以上の基で置換されていてもよい。 ] 力かるシリコン系モノマーの中でも、特に、下記式(7a)〜(7c)で表わされるものが 有利に用いられる。
[化 12]
CH2=CH CH2 H
CH3CH20— Si-0CH2CH3 H3CH20 0 2CH3 7b
0CH2CH3
CH2=CH
H3C0CH2CH20— S i -0CH2CH20CH3 (7c)
0CH2CH20CH3
[0048] 上述したモノマーと VLAとの共重合は、例えば、以下のようにして実施される。即ち 、最終目的物たるコンタクトレンズ用液剤に要求される特性に応じて、上述したモノマ 一を始めとする VLAと共重合可能なモノマーの中から一種以上のものを選択し、か 力る一種以上のモノマーと VLAとを混合する。この混合物CSI -を、必要に応じて、水、テト ラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド (DMSO)等の溶媒に溶解する。そして、重合開 始剤を加えてラジカル重合することにより、 目的とする共重合体 (以下、適宜 VLA共 重合体とも 、う)を得ることが出来る。
[0049] なお、ラジカル重合を行なう際に用いられる重合開始剤としては、従来より広く用い られているものであれば、如何なるものであっても用いることが可能である。例えば、 過酸化べンゾィル、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルォキシジカーボネート、 t- ブチルペルォキシ 2—ェチルへキサノエート、 t ブチルペルォキシジイソブチレ ート、ァゾビスイソブチ口-トリル、ァゾビスイソジメチルバレ口-トリル、過硫酸塩及び 過硫酸塩 亜硫酸水素塩系等を挙げることができる。
[0050] また、共重合を行なう際の種々の条件、例えば、 VLA及びモノマーの使用量等は、 モノマーの種類や目的とする共重合体に応じて、適宜に決定されることとなる。例え ば、上述したシリコン系モノマーにあっては、その共重合比が大きすぎると、 VLAとの 共重合性が低下する恐れや、得られる共重合体の水溶性が悪化する恐れがあること から、そのような問題が発生しないような共重合比が採用されることとなる。
[0051] 本発明のコンタクトレンズ用液剤に含有せしめられる共重合体としては、液剤への
溶解性及びコンタクトレンズに対して効果的に親水性を付与するという観点から、重 量平均分子量が約 10000〜2000000程度のものを用いることが好ましい。重量平 均分子量が小さすぎる共重合体では、親水性の持続効果に劣る場合があり、 20000 00を超えるようなり大きな重量平均分子量を有する共重合体にあっては、その重合 や精製が困難になる力 である。
[0052] また、本発明に係るコンタクトレンズ用液剤における共重合体の濃度は、かかる液 剤の使用目的(例えば、流通保存液として用いるの力、洗浄保存液として用いるのか など)や、使用態様 (毎日使用するのか、定期的に使用するの力など)、使用状態 (洗 浄時の一瞬だけレンズと接触するの力、レンズを一晚浸漬させるのかなど)、対象と するコンタクトレンズの種類等に応じて適宜、選択されることとなるが、一般には 0. 00 01〜5wZv%の割合となるように、液剤に含有せしめられる。好ましくは、 0. 001〜 2. OwZv%、より好ましくは、 0. 01〜0. 5w/v%の割合において含有せしめられ る。共重合体の濃度が 0. 0001wZv%より小さいと、コンタクトレンズ表面の親水化 が十分に図れない恐れがあり、その一方、 5wZv%より高い濃度で用いても、親水化 効果が増進されるわけではなぐ多量に使用することによる共重合体の無駄が大きく なるからである。
[0053] 本発明のコンタクトレンズ用液剤における、所定の共重合体によるコンタクトレンズ への親水性付与の機構は、本発明者等も未だ完全には解明していないが、共重合 体の主鎖骨格に含まれるポリスチレン鎖、及び VLAと共重合するモノマーの側鎖が 、コンタクトレンズの疎水性表面と疎水結合によって結合する結果、 VLAの側鎖であ る親水性のラタトースがレンズの表面層を形成することによるものであると、本発明者 等は推測している。特に、従来のコンタクトレンズ用液剤においては、糖類をそのまま 使用していたために、疎水性を示すコンタクトレンズ表面への結合が充分ではなぐ 水道水等によるすすぎで容易に離れてしまう結果、親水化効果の持続性乃至は耐 久性に問題があつたが、本発明のコンタクトレンズ用液剤においては、そこに含まれ る共重合体とレンズ表面との間の疎水結合が比較的強固なものであるために、親水 化効果が効果的に維持され得るのである。ここで、所定の共重合体を用いることの他 の利点として、共重合体が親水性部分と疎水性部分を合わせもつ結果、界面活性効
果をも期待されることが挙げられる。即ち、本発明に係るコンタクトレンズ用液剤は、コ ンタクトレンズの保存液としてだけではなぐ洗浄液としても使用することが可能である
[0054] 本発明のコンタクトレンズ用液剤には、コンタクトレンズに付着した眼脂等の汚れを 効果的に除去すベぐ有利には界面活性剤が含有せしめられる。力かる界面活性剤 としては、従来よりコンタクトレンズ用液剤に用いられているものであれば、如何なるも のであっても用いることが可能である力 液剤にて処理するコンタクトレンズの種類等 に応じたものが適宜、選択されて、使用される。
[0055] 例えば、含水性ソフトコンタクトレンズを対象とする液剤には、安全性は無論のこと、 レンズ素材への影響がなぐこの液剤を多目的ソリューションとして使用するような場 合をも考慮すると、その消毒効果に影響しないものであることが望ましい。このような 観点からすると、陰イオン性界面活性剤は、多目的ソリューションに用いられる殺菌 剤が一般的に陽イオン性であるために、これと結合して消毒効果を低下させることが 予想され、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤は、特に含水性コンタ外レンズ との相互作用が強ぐレンズ素材に吸着する傾向があるため、結局、非イオン性界面 活性剤が好ましいものとなる。なお、多目的ソリューションとは、近年の含水性ソフトコ ンタクトレンズのケア用液として主流となりつつある力 一般にコンタクトレンズの洗浄 •保存'消毒などの処理を一液で行う液剤のことを 、う。
[0056] このような非イオン ¾界面活'性剤としては、ポリオキシエチレン ポリオキシプロピレ ングリコール共重合体、ポリオキシエチレン ポリオキシプロピレン置換エチレンジァ ミン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖アルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキ ルァミン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、トリエタノールァミン脂肪酸 エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフエ二 ルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。これらの中でも、ポリ ォキシエチレン ポリオキシプロピレングリコール共重合体、ポリオキシエチレンーポ リオキシプロピレン置換エチレンジァミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、生体 に対する安全性が高いことから、有利に用いられる。そのような非イオン性界面活性 剤の濃度は、液剤中の VLA共重合体の量等に応じて、適宜、設定されることとなる
力 濃度が低すぎると、その配合効果が十分に得られない恐れがあり、その一方、濃 度が高すぎると、液剤中の共重合体やその他の成分の働きを阻害する恐れがある。 従って、本発明のコンタクトレンズ用液剤において、非イオン性界面活性剤は、通常
、 0. 001〜10wZv%、好ましくは 0. 01〜3 / %の割合において含有せしめられ ることとなる。
[0057] その一方、ハード系コンタクトレンズのケア用液に対しては、一般に、液剤の防腐効 果は要求されるものの積極的にレンズを消毒することまでの要求は少なぐむしろレ ンズ表面の疎水性が強!ヽことにより脂質汚れが付着しやす!、ために、このような汚れ の除去効果の高い界面活性剤が有利に配合される。具体的には、陰イオン性界面 活性剤や両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤などが適宜選択される。
[0058] 陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスル ホン酸塩、 N—ァシルタウリン塩、 α—ォレフインスルホン酸塩、ポリオキシエチレンァ ルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシ エチレンアルキルフエ-ルエーテル硫酸塩、ジ(ポリオキシエチレンアルキルエーテ ル)リン酸塩等を使用することができる。これらの中でも、アルキル酸ナトリウム、アル キルベンゼンスルホン酸ナトリウム、 aーォレフインスルホン酸ナトリウム、ポリオキシ エチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフエ-ルエー テル硫酸ナトリウムは、優れた洗浄効果を発揮し、非イオン性界面活性剤と併用した 場合、短時間の浸漬保存でも優れた洗浄効果を発揮することが報告されて 、る。
[0059] また、両性界面活性剤の例としては、ラウリルジアミノエチルダリシン等のグリシン型 、ラウリルジメチルァミノ酢酸べタイン等の酢酸べタイン型、 2—アルキル—N—カル ボキシメチルー N—ヒドロキシェチルイミダゾリゥムベタイン等のイミダゾリゥムべタイン 型、アルキルジメチルアミンォキシド等の第三アミノォキシド等を、挙げることが出来る 。更に、陽イオン性界面活性剤の例としては、ォクタデシルァミン酢酸塩、ォクタデシ ルアンモ -ゥムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモ -ゥムクロライド等が例示 できる。
[0060] そのような界面活性剤の添加量は、選択する或いは組み合わせる界面活性剤の種 類により、一概にはいえないが、一般に、前述した非イオン性界面活性剤と同様に、
0. 001〜10wZv%、好ましくは 0. 01〜3w/v%の割合において含有せしめられ る。
[0061] なお、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤は、上述の如き成分の他にも、更に必要 に応じて、従来力 コンタクトレンズ用液剤にぉ 、て用いられて 、る各種の添加成分 のうちの一種又は二種以上が、通常の範囲内において添加せしめられていても、何 等差し支えないのである。
[0062] 例えば、本発明のコンタクトレンズ用液剤には、 pHを安定ィ匕させて、液剤中に含ま れる各成分の保存安定性を向上させ、或いは、コンタクトレンズを装用する際に眼に 入ってもしみたりしないようにするための成分として、緩衝剤を添加することが可能で ある。力かる緩衝剤としては、コンタクトレンズ用液剤に一般的に使用されているもの の中から適当なものを選択して、使用することが出来る。具体的には、ホウ酸緩衝剤 、リン酸緩衝剤、クェン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、トリス緩衝剤等が挙 げられる。力かる緩衝剤の配合割合は、約 0. 1〜: LOwZv%、好ましくは 0. 2〜5w Zv%とされるのが望ましい。その配合割合が少なすぎると、 pHを安定ィ匕するだけの 効果が発揮されない恐れがあり、その一方で配合割合が多すぎると、他の成分の添 加量が相対的に少なくなつて、他の成分による効果の発現に悪影響を及ぼす恐れが あるからである。
[0063] また、本発明のコンタクトレンズ用液剤には、眼に対する刺激をなくすために浸透圧 を調整する目的で、等張化剤を添加することができる。特に、含水性ソフトコンタクトレ ンズのように、保存液がレンズ素材内に保持された状態にて眼に装用される場合に は、用いられるコンタクトレンズ用液剤の浸透圧を涙液の浸透圧(280〜300mOsZ kg)に近い状態に調整することが必要である。従来より一般的に使用されている等張 ィ匕剤の具体例としては、塩ィ匕ナトリウム、塩ィ匕カリウム等の眼科生理学的に許容しえ る無機塩や、前述した緩衝剤等を挙げることが出来る。また、非イオン性の等張化剤 であるプロピレングリコールやグリセリン等についても、本発明のコンタクトレンズ用液 剤に使用可能である。そのような等張化剤は、液剤中の濃度が約 0. 01〜0. 5mol ZLとなるような量的割合において添加されることが好ましぐより好ましくは、 0. 05〜 0. 15molZL程度となるような量的割合において、添加される。濃度が 0. Olmol/
Lより小さい場合には、浸透圧が低くなり、また、濃度が 0. 5molZLを越えると、浸透 圧が高くなりすぎて、レンズを装着する際に、眼に対して刺激を与える恐れがあるから である。なお、非含水性のコンタクトレンズのように、本発明のコンタクトレンズ用液剤 にレンズを浸漬せしめた後、レンズを水道水等で一度すす ヽでから装用する場合に は、特に浸透圧の調整に留意する必要はない。
[0064] さらにまた、手指洗浄する際のレンズの滑りを良くすることを目的として、増粘剤を含 有せしめることが可能である。力かる増粘剤としてはポリビニルアルコール、ポリビ- ルピロリドン、カノレボキシメチノレセロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ァラビ ァゴム、多糖類及びその塩類等を例示することが出来、これらの中から適宜に選択さ れた一種又は二種以上のもの力 添カ卩目的が十分に達成され得るような量的割合に おいて、液剤に添加される。
[0065] 力!]えて、コンタクトレンズ用液剤の細菌汚染を防止し、或いは積極的にコンタクトレ ンズの消毒ができるように、殺菌剤を添加することができる。力かる殺菌剤の具体例と しては、ソルビン酸、安息香酸ナトリウム、塩化ベンザルコ-ゥム、クロ口へキシジン、 臭化ピリジ-ゥム、クロロブタノール、ポリへキサメチレンビグアニド塩酸塩、ベンジル アルコール、ポリクヮテリウム等を挙げることが出来る。これら殺菌剤の添加量は、用 いた殺菌剤の種類によって異なる力 細菌、力ビ等を殺菌し、その繁殖を抑制するの に十分な量であればよぐ通常、その濃度が 0. 0001-0. 5wZv%程度となるよう に調整される。
[0066] 上述したものの他にも、具体的な用途に応じて、更に種々の添加物を使用しても、 何等差し支えない。例えば、コンタクトレンズに付着した蛋白質汚れを除去するため に酵素を配合することや、コンタクトレンズに付着した涙液中のカルシウムなどが沈着 するのを防止するためにキレート剤を添加すること、或いは、浸漬後のコンタクトレン ズを装用するときの爽快感を与えるために清涼化剤を併用すること等も、可能である 。なお、キレート剤の例としては、エチレンジァミン四酢酸及びそのナトリウム塩等が、 また、清涼化剤の例としては、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラ-オール、ュ 一カリ油、ベルガモット油、ウイキヨゥ油、ハツ力油、ローズ油、クールミント等力 各々 、挙げられる。これらの添加成分は、その添加目的に応じた量的割合において、それ
ぞれ液剤に添加される。
[0067] ところで、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤は、上述の如き各成分を、従来と同 様に、適当な水性媒体中にそれぞれ適量において添加、含有せしめることにより、調 製されることとなるのであるが、それに際して用いられる水性媒体としては、水道水や 精製水、蒸留水等の水そのものの他にも、水を主体とする溶液であれば、生体への 安全性が高ぐ尚且つ眼科的に十分に許容され得るものである限りにおいて、何れも 、利用することが可能である。また、そのようなコンタクトレンズ用液剤を調製するにあ たっては、何等特殊な方法を必要とせず、通常の水溶液を調製する場合と同様に、 水性媒体中に各成分を任意の順序にて溶解させることにより、容易に得ることが出来 るものである。
[0068] そして、このようにして調製されたコンタクトレンズ用液剤を親水化処理剤として用い て、コンタクトレンズに対して親水化処理を施す際には、単に、コンタクトレンズ用液 剤をコンタクトレンズに接触させるだけでよい。また、力かるコンタクトレンズ用液剤に コンタクトレンズを浸漬し、その後、液剤力も取り出したコンタクトレンズに対して、水道 水等を用いてすすぎ処理を施す手法も効果的である。
[0069] すなわち、本発明のコンタクトレンズ用液剤をコンタクトレンズに接触させると、液剤 中の VLA共重合体がレンズ表面に吸着して、吸着層を構成し、この吸着層の存在に よって、レンズ表面が効果的に親水化されるのである。しかも、かかる吸着層は、それ がレンズ表面に形成された後は、水ですすいでも簡単には除去されないものであり、 簡易な操作により非常に良好にコンタクトレンズ表面の親水化が図られるのである。
[0070] また、装用後のコンタクトレンズを、本発明のコンタクトレンズ用液剤内に保存するこ とにより、継続的に親水性が維持されるのである。なお、従来の含水性ソフトコンタクト レンズは、その表面は基本的に親水性であり、あえて本発明の液剤を適用する意義 は希薄ではある力 近年の低含水高酸素透過性ソフトコンタクトレンズには、シロキサ -ル (メタ)アタリレート、ポリジメチルシロキサンマクロマー、フルォロアルキル (メタ)ァ タリレート等のシリコンやフッ素を含有するモノマーが用いられて 、るものが多 、。この ため、含水性ソフトコンタクトレンズと呼ばれて 、ても表面の水濡れ性が良 、とは 、え ないものもあり、本願に係るコンタクトレンズ用液剤は、そのような水濡れ性の悪い含
水性ソフトコンタクトレンズに対して適用価値が高い。なお、上述した低含水高酸素 透過性レンズに対しては、 VLAとシリコン系モノマーとの共重合体を含有するコンタ クトレンズ用液剤が有利に用いられる。
[0071] ちなみに、これらの高酸素透過性レンズは、当然長期間の装用が可能とされている ため、保存液等より取り出されてカゝら再度、保存液等に浸漬され、保存されるまでの 間は、直接、コンタクトレンズの親水化の回復を図る等の処理を施すことは困難であ る。そのような場合であっても、本発明のコンタクトレンズ用液剤に含まれる VLA共重 合体は、レンズ素材との親和性を考慮して選択可能なものであるため、コンタクトレン ズ表面の良好な親水性が、長期間、持続することが可能ならしめられるのである。 実施例
[0072] 以下に、本発明の実施例を幾つ力示し、本発明を更に具体的に明らかにすることと するが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるもので ないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、 更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当 業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、 理解されるべきである。
[0073] 先ず、 N— p ビュルベンジル一 D—ラタトンアミド (VLA)を、以下の手順に従って 合成した。
[0074] —VLAの合成
所定容量のナスフラスコ内において、 ρ—ビュルべンジルクロリド: 1kg及びフタルイ ミドカリウム: 1. 2kgを、 3. 2Lの N, N ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解せしめた 後、 50°Cで 4時間、溶液を加熱した。次いで、エバポレーターを用いて、かかる溶液 力 DMFを留去した後、ベンゼン: 4. 5Lをカ卩えて残渣を溶解した。得られたベンゼ ン溶液を、 0. 2規定 (N)の NaOH水溶液で数回、洗浄し (NaOH水溶液の合計使 用量: 3. 25L)、さらに水で数回、洗浄した (水の合計使用量: 3. 25L)。かかる洗浄 後のベンゼン溶液について、硫酸ナトリウムにて乾燥せしめた後、エバポレーターを 用いて溶媒を留去した。その後、得られた残渣について、メタノールを用いて再結晶 させることにより、 1. 5kgのビュルべンジルフタルイミドを得た。
[0075] そのようにして得られたビュルべンジルフタルイミドの lkgを、所定容量のセパラブ ルフラスコ内にて 2. 7Lのエタノールに溶解し、そのエタノール溶液を窒素気流下で 加熱還流させた。力かるセパラブルフラスコ内に、 80%ヒドラジンモノハイドレートの 0 . 36kgを 545mLのエタノールに溶解せしめてなる溶液を、滴下ロートを用いて、 40 分程度の時間をかけて滴下した。なお、ビュルべンジルフタルイミドとヒドラジンモノハ イドレートとの反応は、溶液の滴下開始から 90分間、加熱還流させながら行なった。 次いで、反応により得られた固体物を濾取し、これに KOH溶液(水: 6. 5Lに KOH : lkgを溶解せしめてなるもの)をカ卩えて、固体物を溶解せしめた後、かかる固体物が 溶解した KOH溶液をエーテルにて抽出した。なお、力かる抽出は、 1回当たり 3. 6L のエーテルを使用し、計 3回実施した。抽出により生じたエーテル層を分取し、かかる エーテル層(エーテル溶液)を 2%炭酸カリウム水溶液で洗浄し、更に水で数回、洗 浄した。洗浄後のエーテル溶液について、硫酸ナトリウムにて乾燥せしめた後、エー テルを留去し、残渣を減圧蒸留することにより、 0. 45kgのビュルベンジルァミンを得 た。なお、後述するように、得られたビュルベンジルァミンは、 VLAの合成のみならず 、 VLAと共重合させるモノマーを合成する際にも用いた。
[0076] 一方、ラタトース: 12gを、 300mLのメタノール中に分散させ、 40°C〖こカロ熱した。こ の分散溶液に、 18gのヨウ素を 15mLのメタノールに溶解せしめてなるメタノール溶 液を滴下し、 40分間、反応させた。カゝかる反応溶液に、 4Nの KOHメタノール溶液を 、反応溶液力もヨウ素の色が消失するまで添加した。その後、反応溶液内に生じた沈 澱を濾別し、その濾別した沈澱を冷メタノールで数回、洗浄して、反応生成物の結晶 を得た。なお、得られた結晶をー且、秤量した。得られた結晶をごく少量の水に溶解 せしめ、この水溶液より、プロトン型イオン交換榭脂(米国ローム 'アンド'ハース社製 、商品名:アンバーライト IR120B)を用いて酸性分画を単離した。かかる単離後の水 溶液について、メタノール及びエタノールを添カ卩し、脱水して、得られた固体物を完 全に乾固せしめるという操作を数回、繰り返した後、 目的とするラタトースラクトンを得 た。
[0077] 所定容量のナスフラスコ内にて、上述のようにして得られたラタトースラクトンの lkg を、 5. 4Lのメタノールに 70°Cで溶解せしめた後、このメタノール溶液に、上述したビ
-ルベンジルァミンの 0. 4kgを添加し、 70°Cで 120分間、反応させた。かかる反応 終了後、 21. 7Lのアセトンをナスフラスコ内に加えて、反応生成物 (VLA)を沈澱さ せた。沈澱物を 4°Cで数時間、放置した後に濾取し、メタノールを用いて沈澱物を再 結晶させた。なお、再結晶させた VLAの収量は 1. 1kgであった。
[0078] 一方、 VLAと共重合させるモノマーを、各々、以下に述べるようにして準備した。
[0079] モノマー(5a)の合成
前述のモノマー(5a) [ビュルべンジルへキサデカンアミド]を、以下のようにして合 成した。先に得られたビュルベンジルァミン: 10gを無水クロ口ホルム: 150mLに溶解 せしめ、更にピリジン: 7gを加えて、溶液を冷却した。かかる冷却後、溶液に、パルミト イルクロリド: 24gを溶解した無水クロ口ホルム: 50mLを、滴下漏斗を用いて 30分間 かけて滴下した。滴下終了後、クロ口ホルム溶液を水で洗浄し、乾燥させた後、クロ口 ホルムを減圧留去した。そして、エタノールを用いて、減圧留去により生じた残渣を再 結晶させることにより、 20gのモノマー(5a)を得た。
[0080] モノマー(5b)の合成
前述のモノマー(5b) [ビュルベンジルシクロへキシルプロパンアミド]を、以下のよう にして合成した。先に得られたビュルベンジルァミン: 13gを無水テトラヒドロフラン (T HF) : 150mLに溶解せしめ、更に、 1—ェチル 3— (3 ジメチルァミノプロピル)力 ルボジイミド(水溶性カルボジイミド、 WSC) : 23g及び 3 シクロへキシルプロピオン 酸: 13gを溶解した無水 THF : 50mLを加えた。反応終了後、沈澱 (反応生成物)を 濾別し、濾別した沈殿から THFを留去した。そのようにして得られた反応生成物をク ロロホルムに溶解せしめ、そのクロ口ホルム溶液を水で洗浄し、乾燥させた後に、クロ 口ホルムを減圧留去した。そして、エタノールを用いて、減圧留去により生じた残渣を 再結晶させることにより、 10gのモノマー(5b)を得た。
[0081] なお、モノマー(6a)としては、東京化成工業株式会社製のエチレングリコールモノ ビュルエーテル(TCI製品コード: E0518)を、また、モノマー(6b)としては、同社製の ジエチレングリコールモノビュルエーテル(TCI製品コード: D2623)を、それぞれ準備 した。
[0082] また、下に示す構造を有するモノマー (A)〜 (F)につ 、ても、それぞれ市販品を準
備した。
[0083] [化 13]
[0084] さらに、前述したシリコーン系モノマー [モノマー(7a)〜(7c) ]についても、それぞ れ市販品を準備した。なお、かかるモノマー(7a)〜(7c)の構造を、念のため、下に 示す。
[0085] [化 14]
CH2=CH CH2=CH
CH3CH20— S i-0CH2CH3 CH3CH2O— Si-0CH2CH3 (7b)
0CH2CH, CH3
CH2=CH
H3C0CH2CH20— S i - 0CH2CH20CH3
0CH2CH20CH3
[0086] 以上のようにして準備した N—p—ビニルベンジル一 D—ラタトンアミド (VLA)、及 び各モノマーを用いて、複数の共重合体を合成した。具体的には、先ず、 VLA及び 各モノマーの何れかを、下記表 1又は表 2に示したモル比で枰量し、真空反応管に 分注した。次いで、溶媒としてジメチルスルホキシド(DMSO)、又は DMSOとトルェ ンとの混合溶媒を反応管内に加え、共重合成分 (VLA及びモノマー)を完全に溶解 せしめた後、その溶液について、凍結—脱気—融解を 1サイクルとする工程を複数回 、繰り返して、溶液中の酸素を取り除いた。その後、溶液に 0. 01モルのァゾイソプチ 口-トリル (AIBN)を添加し、溶解せしめた後、真空反応管内を減圧密閉した。そし て、反応管内を 60°Cに加熱して 5時間、共重合成分を反応させた。
[0087] [表 1]
[0088] [表 2] 共重合体 No.
1 1 1 2 1 3 1 4 1 5
VLA 9 9 9 7 5
共重合 モノマ一(7a) 1 ― ― ― ―
成分
(モル比) モノマー(7b) ― 1 ― ― ―
モノマ一(7c) ― ― 1 3 5
[0089] 力かる反応後の溶液を大過剰のメタノールに滴下して、反応生成物を沈澱させた。 その後、この沈澱物 (反応生成物)を所定の溶媒に溶解せしめ、再びメタノールに滴 下して反応生成物を沈澱させるという処理を 3回、繰り返した。なお、用いたモノマー 力 Sメタノールに難溶なものである場合には、前記処理が施された後の反応生成物を、 クロ口ホルム又はトルエンにて数回、洗浄した。
[0090] そのような処理が施された反応生成物を蒸留水に溶解せしめ、大過剰の水に対し て透析を行なった。カゝかる透析に際しては、三光純薬株式会社製のセルロース膜( 分画分子量: 15000)を用いた。そして、透析後の溶液を凍結乾燥することにより、 目 的とする共重合体 (共重合体 No. 1〜15)を得た。
[0091] 得られた 15種類の共重合体を用いて、以下の各試験を行なった。
[0092] 〈コンタクトレンズの水濡れ性評価試験 I〉
先ず、リン酸水素ニナトリウム十二水和物を 0. 37wZv%、リン酸二水素ナトリウム 二水和物を 0. 08wZv%、及び塩化ナトリウムを 0. 83wZv%の割合において含有 する水溶液を調製した。なお、この水溶液の浸透圧は約 290 (mOsmZkg'H O )、
2 pHは約 7. 0であった。この水溶液に共重合体 No. 1を溶解せしめて、かかる共重合 体 No. 1の濃度が異なる 2種類のコンタクトレンズ用液剤 (液剤 No. 1、 2)を調製した 。共重合体の濃度が 0. 05wZv%のものを液剤 No. 1と、共重合体の濃度が 0. lw Zv%のものを液剤 No. 2とする。
[0093] それら 2種類のコンタクトレンズ用液剤の各 2mLに、酸素透過性ハードコンタクトレ ンズ (商品名:ドクターズ EX-G、販売元:株式会社エイコ一)を 1枚、浸漬した。浸漬 力も 10分後に液剤中よりレンズを取り出し、水道水でレンズを軽くすすいだ後、レン ズ表面の水濡れ性を目視により観察した。一方、コントロールとして、共重合体 No. 1 を含有しない前記水溶液 (以下、水溶液 αという)を用いて酸素透過性ノヽードコンタ クトレンズに同様の処理を施し、そのレンズ表面を観察した。観察結果を対比したとこ ろ、本発明に係るコンタクトレンズ用液剤 (液剤 No. 1、 2)にて処理されたコンタクトレ ンズは、優れた水濡れ性を発揮することが確認された。
[0094] 次いで、本発明に係るコンタクトレンズ用液にてコンタクトレンズを処理することによ りレンズの水濡れ性が向上することについて、より詳細に確認すベぐ以下の試験を
行なった。 2種類のコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 1、 2)及び水溶液 aの各 2mL に、上記酸素透過性ノヽードコンタクトレンズを 1枚ずつ、 10分間、浸漬し、その後に 液中よりレンズを取り出して、レンズを風乾した。かかる風乾の後、各コンタクトレンズ の接触角を測定した。なお、コンタクトレンズの接触角の測定は、レンズに水滴を付 着させ、レンズと水滴とが接触している部分の角度を、レンズの側方より接触角測定 器 (ゴ-ォメータ式 G— 1、エルマ光学株式会社製)にて測定することにより行なった。
[0095] その測定結果は、液剤 No. 1にて処理されたコンタクトレンズの接触角は 68° 、液 剤 No. 2にて処理されたレンズの接触角は 63° であったのに対し、水溶液 αで処理 されたレンズの接触角は 90° であった。かかる測定結果より、本発明に係るコンタクト レンズ用液剤を用いてコンタクトレンズを処理すると、レンズの水濡れ性が効果的に 向上することが確認されたのである。
[0096] 〈コンタクトレンズ装用試験 I〉
先ず、生理食塩水(NaCl濃度: 0. 9wZv%)に、共重合体 No. 1〜10のうちの何 れか一種を溶解せしめて、力かる共重合体を 0. 05wZv%の割合において含有す る 10種類のコンタクトレンズ用液剤 (液剤 No. 3〜12)を調製した。なお、各コンタクト レンズ用液剤を調製した際に用いた共重合体を、下記表 3に示す。また、何れの共 重合体をも含有しない生理食塩水を、コンタクトレンズ用液剤 (液剤 No. 13)として準 備し 7こ。
[0097] [表 3]
コンタクトレンズ用液剤 液剤中の共重合体
液剤 No. 3 共重合体 No. 1
液剤 No. 4 共重合体 No. 2
液剤 No. 5 共重合体 No. 3
液剤 No. 6 共重合体 No. 4
液剤 No. 7 共重合体 No. 5
液剤 No. 8 共重合体 No. 6
液斉 IjNo. 9 共重合体 No. 7
液斉 ijNo. 1 0 共重合体 No. 8
液剤 No. 1 1 共重合体 No. 9
液剤 No. 1 2 共重合体 No. 1 0
液剤 No. 1 3 ―
[0098] それら 11種類のコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 3〜13)の各 2mLに、上述した 水濡れ性評価試験 Iで用いたものと同様の酸素透過性ノヽードコンタクトレンズの 1枚 を、 30分間、浸漬せしめることにより、コンタクトレンズ表面を処理した。一種のコンタ クトレンズ用液剤を用いて一種のコンタクトレンズの 6枚に対して処理を施すことにより 、 6枚の試験用コンタクトレンズを準備した。なお、コンタクトレンズ用液剤は 11種類あ ることから、この試験の為に準備した試験用コンタクトレンズの合計枚数は 66枚であ る。
[0099] 浸漬開始から 30分経過後に液剤力も取り出した試験用コンタクトレンズを、 3名の ボランティア (被験者)に 8時間、実際に装用してもらい、 8時間経過後に被験者自身 が感じる視界の曇りの程度を、下記表 4に示す評価基準に従って被験者に評価して もらった。各液剤を用いて処理された試験用コンタクトレンズ毎に 3名のボランティア の評価点を集計し、その平均評価点を算出して、図 1において棒グラフにて示した。 なお、下記表 4に示す評価基準から明らかなように、平均評価点が低いコンタクトレン ズほど、 8時間装用した後においてもボランティアが視界の曇りを感じな力つたことを 示している。これを換言すれば、平均評価点が低いコンタクトレンズにおいては、かか るレンズを処理した際に用いられた液剤力 レンズにおける曇りの発生を効果的に抑 制したことを示して 、るのである。
[0100] [表 4]
[0101] 図 1の結果から明らかなように、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 3〜
12)にあっては、何れも、コンタクトレンズにおける曇りの発生を効果的に抑制し得る ものであることが、確認された。中でも、共重合体 No. 1を含有するコンタクトレンズ用 液剤 (液剤 No. 3)や、共重合体 No. 2を含有するコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 4)が特に優れていること力 認められたのである。
[0102] 〈コンタクトレンズの水濡れ性評価試験 II〉
先ず、前述したコンタクトレンズ装用試験 Iと同様に、 11種類のコンタクトレンズ用液 剤 (液剤 No. 3〜13)を調製乃至は準備し、カゝかるコンタクトレンズ用液剤を用いて 前記酸素透過性ノヽードコンタクトレンズの表面を処理することにより、各液剤について 6枚の試験用コンタクトレンズを準備した。試験用コンタクトレンズを液剤から取り出し 、力かる試験用コンタクトレンズに対して、流れる水道水の中で、手指を用いて強いこ すり洗いを実施した。こすり洗いの後、コンタクトレンズ表面の水濡れの程度を目視に より観察し、下記表 5に示す評価基準に従って評価した。各液剤を用いて処理された 6枚の試験用コンタクトレンズに対する評価点を集計し、その平均を算出して、図 2に おいて棒グラフにて示した。なお、下記表 5に示す評価基準から明らかなように、平 均評価点が低 、コンタクトレンズほど、水濡れ性が優れて 、ることを示して 、る。
[0103] [表 5] 評価基準 評価点
レンズ全面が均一に濡れている 0点
レンズ全面の 90%以上が濡れている 1点
レンズ全面の 30~ 90%程度が濡れている 2点 レンズ全面の 30%未満しか濡れていない 3点
[0104] 図 2の結果から明らかなように、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 3〜 12)にあっては、液剤によって程度の差こそあるものの、コンタクトレンズに対して親 水性を付与して、その水濡れ性を向上させ得るものであることが確認された。中でも、 液剤 No. 3〜6は、より効果的に水濡れ性を向上させ得るものであることが認められ た。なお、力かる試験においては、液剤から取り出した試験用コンタクトレンズに対し て流水中で強いこすり洗いを実施していることから、例えば、水濡れ性の大幅な向上 が認められな力つた液剤 No. 12等であっても、コンタクトレンズ表面の親水性を維持 することを目的とする保存液として使用すると、充分な効果が得られると考えている。
[0105] 〈コンタクトレンズの水濡れ性評価試験 III〉
共重合体 No. 2及び界面活性剤を水に溶解せしめて、コンタクトレンズ用液剤 (液 剤 No. 14〜18)を調製した。なお、界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤 A( ポリオキシエチレンォレイルエーテル、商品名:ェマルゲン 420、花王株式会社製)、 非イオン性界面活性剤 B (ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、商品名:ニッコール HCO -60、 日光ケミカルズ株式会社製)、両性界面活性剤 A (ラウリルジメチルァミノ酢酸べ タイン水溶液、 日本油脂株式会社製)、両性界面活性剤 B (ヤシ油脂肪酸アミドプロ ピルジメチルァミノ酢酸べタイン水溶液、商品名: -ッコール AM- 3130N、 日光ケミカ ルズ株式会社製)、及び陰イオン性界面活性剤 (ポリオキシエチレンラウリルエーテ ル硫酸ナトリウム水溶液、商品名:エマール E-27C、花王株式会社製)を用いた。ま た、各液剤における共重合体 No. 2の濃度、並びに、含有する界面活性剤の種類及 びその濃度を、下記表 6に示す。更に、界面活性剤のみを水に溶解して、コンタクトレ ンズ用液剤 (液剤 No. 19〜23)も調製した。なお、力かる調製に際して用いた界面 活性剤を、下記表 6に併せて示す。
[0106] 各液剤の 2mLに、 1枚の酸素透過性コンタクトレンズ(商品名: Q-1、ポリマーテクノ ロジ一社製)を 2時間、浸漬した。この浸漬の後、液剤よりコンタクトレンズを取り出し、 取り出したレンズを水で 10秒間すす 、だ後、レンズ表面の水濡れ性の程度を目視に より観察し、上記表 5に示した評価基準に従って評価した。その評価結果 (評価点) についても、下記表 6に併せて示す。
[0107] [表 6]
;辰 共重合体 No. 2の濃度
界面活性剤
[Wノ v%] 評価点
[wZv%]
液斉 IjNo. 1 4 非イオン性界面活性剤 A 0.5 0.05 2 液剤 No. 1 5 非イオン性界面活性剤 B 0.5 0.05 2 液斉 IjNo. 1 6 両性界面活性剤 A 1.5 0.075 0 液剤 No. 1 7 両性界面活性剤 B 1.5 0.075 0 液剤 No. 1 8 陰イオン性界面活性剤 0.5 0.05 2 液剤 No. 19 非イオン性界面活性剤 A 0.5 ― 3 液剤 No. 20 非イオン性界面活性剤 B 0.5 ― 3 液剤 No. 21 両性界面活性剤 A 1.5 ― 3 液剤 No. 22 両性界面活性剤 B 1.5 ― 3 液剤 No. 23 陰イオン性界面活性剤 0.5 ― 3
[0108] 力かる表 6の結果から明らかなように、界面活性剤をも含有する本発明のコンタクト レンズ用液剤(液剤 No. 14〜18)にあっては、コンタクトレンズに対して親水性を付 与して、その水濡れ性を向上させ得るものであることが認められた。
[0109] 〈コンタクトレンズの水濡れ性評価試験 IV〉
水にヒアルロン酸ナトリウム(商品名: FCH-120、株式会社紀文フードケミファ製)を カロえて、溶解せしめた。そこに、トロメタモール (和光純薬工業株式会社製、試薬特 級)及びエチレンジァミン四酢酸ニナトリウム二水和物(和光純薬工業株式会社製) を加え、これらを溶解せしめた後、更に、ポリへキサメチレンビグアニド溶液(COSMO CIL CQ、アーチ ·ケミカルズ 'ジャパン株式会社製)、両性界面活性剤(ヤシ油脂肪 酸アミドプロピルジメチルァミノ酢酸べタイン水溶液、商品名:ニッコール AM- 3130N 日光ケミカルズ株式会社製)、及び共重合体 No. 2をカ卩えて、溶解せしめた。かかる 溶液に、 3N塩酸を適量カ卩え、更に水をカ卩えることによって、コンタクトレンズ用液剤( 液剤 No. 24)を調製した。なお、得られたコンタクトレンズ用液剤は、ヒアルロン酸ナ トリウムを 0. lwZv%、トロメタモールを 2. 4wZv%、エチレンジァミン四酢酸ニナト リウムニ水和物を 0. 02w/v%,両性界面活性剤を lw/v%、共重合体 No. 2を 0. 05wZv%、及び、ポリへキサメチレンビグアニドを lppmの割合において、それぞれ 含有するものであり、浸透圧は 310 (mOsmZkg'H O )、 pHは 9. 0であった。一方 、上記した各成分のうち共重合体 No. 2以外の全てのものを、液剤 No. 24と同一の
割合にお 、て含有するコンタクトレンズ用液剤 (液剤 No. 25)を調製した。
[0110] このようにして準備した 2種類の液剤の各 2mLに、 1枚の酸素透過性ノヽードコンタク トレンズ (商品名: Q1)を、下記表 7に示す時間(浸漬時間)だけ浸漬した。その後、レ ンズを液剤から取り出し、レンズ表面の水濡れ性の程度を目視により観察し、上記表 5に示した評価基準に従って評価した。
[0111] ここで、下記表 7の「浸漬時間」の欄における「直後」とは、コンタクトレンズと液剤とを 接触せしめた後、直ちにという意味である。また、「取り出し直後の評価」の欄には、 液剤中からコンタクトレンズを取り出した直後にレンズ表面を観察し、評価した結果( 評価点)を示した。更に、「水すすぎ後の評価」の欄には、液剤中から取り出したコン タクトレンズを、水で 20秒間すすいだ後にレンズ表面を観察し、評価した結果 (評価 点)を示した。更にまた、「液剤で手指洗浄した後の評価」の欄には、液剤から取り出 したコンタクトレンズに対して、力かる液剤を用いて手指洗浄を実施し、その後、レン ズ表面に付着した泡等を水ですす ヽだ後にレンズ表面を観察し、評価した結果 (評 価点)を示した。
[0112] [表 7]
[0113] 力かる表 7の結果から明らかなように、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤であって 、一般的なコンタクトレンズ用液剤に添加される各種成分を含有する液剤 No. 24に あっても、共重合体 No. 2を含有しない液剤 No. 25と比較して、コンタクトレンズに対 して親水性を付与して、その水濡れ性を向上させ得るものであることが認められた。
[0114] 〈コンタクトレンズ装用試験 II〉
先ず、生理食塩水(NaCl濃度: 0. 9wZv%)に、共重合体 No. 11〜13のうちの 何れか一種を溶解せしめて、力かる共重合体を 0. 05wZv%の割合において含有
する 3種類のコンタクトレンズ用液剤 (液剤 No. 26〜28)を調製した。なお、各コンタ クトレンズ用液剤を調製した際に用いた共重合体を、下記表 8に示す。また、先に述 ベたコンタクトレンズ装用試験 Iと同様に、何れの共重合体をも含有しない生理食塩 水を、コンタクトレンズ用液剤 (液剤 No. 13)として準備した。更に、試験に供する酸 素透過性ノヽードコンタクトレンズとして、コンタクトレンズ A (商品名: Q-1、ポリマーテ クノロジ一社製)、コンタクトレンズ B (商品名: FP-60、ノ ラゴン社製)及びコンタクトレ ンズ C (商品名: EM、ボストン社製)を準備した。
[0115] [表 8]
[0116] それら 4種類のコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 13、同 26〜28)の各 2mLに、 3 種類の酸素透過性ノヽードコンタクトレンズの各 1枚を、 30分間、浸漬せしめること〖こよ り、コンタクトレンズ表面を処理した。一種のコンタクトレンズ用液剤を用いて一種のコ ンタクトレンズの 6枚に対して処理を施すことにより、 6枚の試験用コンタクトレンズを準 備した。なお、コンタクトレンズ用液剤は 4種類あり、また、コンタクトレンズは 3種類あ ることから、この試験の為に準備した試験用コンタクトレンズの合計枚数は 72枚であ る。
[0117] 浸漬開始から 30分経過後に液剤力も取り出した試験用コンタクトレンズを、 3名の ボランティア (被験者)に 8時間、実際に装用してもらい、 8時間経過後に被験者自身 が感じる視界の曇りの程度を、前記表 4に示す評価基準に従って被験者に評価して もらった。各試験用コンタクトレンズ毎に 3名のボランティアの評価点^^計し、その 平均評価点を算出した。図 3には、コンタクトレンズ Aを各コンタクトレンズ用液剤に浸 漬せしめて準備した試験用コンタクトレンズについての平均評価点を、浸漬に用いた 液剤毎に棒グラフにて示した。同様に、図 4には、コンタクトレンズ Bを各コンタクトレン ズ用液剤に浸漬せしめて準備した試験用コンタクトレンズについての平均評価点を
棒グラフにて示しており、図 5には、コンタクトレンズ Cを各コンタクトレンズ用液剤に浸 漬せしめて準備した試験用コンタクトレンズについての平均評価点を棒グラフにて示 した。
[0118] 力かる図 3乃至図 5の結果からも明らかなように、本発明に従うコンタクトレンズ用液 剤(液剤 No. 26〜28)にあっては、何れも、コンタクトレンズにおける曇りの発生を効 果的に抑制し得るものであることが、確認された。中でも、共重合体 No. 13を含有す るコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 28)にあっては、 3種類のコンタクトレンズ全てに おいて曇りの発生が効果的に抑制されたことが、認められたのである。
[0119] 〈コンタクトレンズ装用試験 III〉
それぞれ所定量の共重合体 No. 13を生理食塩水に溶解せしめることにより、かか る共重合体 No. 13の濃度が異なる 3種類のコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 29〜 31)を調製した。なお、各コンタクトレンズ用液剤における共重合体 No. 13の濃度を 、下記表 9にそれぞれ示した。 3種類のコンタクトレンズ用液剤と 3種類の酸素透過性 ハードコンタクトレンズ(コンタクトレンズ A〜C)とを用いて、上述したコンタクトレンズ 装用試験 IIと同様の装用試験を行なった。試験用コンタクトレンズ毎に被験者 3人が 示した評価点から、平均評価点を算出し、下記表 9に併せて示した。
[0120] [表 9]
※試験に用いたコンタクトレンズ
力かる表 9の結果から明らかなように、本発明に係るコンタクトレンズ用液剤にあって は、その必須成分である所定の共重合体の濃度が低い液剤であっても、コンタクトレ ンズの種類によっては曇りの発生を効果的に抑制し得る場合があること力、確認され
た。これは、本発明のコンタクトレンズ用液剤における必須成分たる共重合体の吸着 メカニズムが、コンタクトレンズ素材に大きく関連していることを示している。従って、本 発明のコンタクトレンズ用液剤を調製する際には、カゝかる液剤が対象とするコンタクト レンズの素材に応じて、共重合体の構造やその濃度等の条件を適宜、設定すること が重要である。
[0122] 〈コンタクトレンズ装用試験 IV〉
生理食塩水に、共重合体 No. 13〜 15の何れか一種を溶解せしめて、共重合体の 濃度が 0. lwZv%である 3種類のコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 32〜34)を調 製した。なお、各コンタクトレンズ用液剤に含まれる共重合体を、下記表 10にそれぞ れ示した。 3種類のコンタクトレンズ用液剤と 3種類の酸素透過性ハードコンタクトレン ズ(コンタクトレンズ A〜C)とを用いて、上述したコンタクトレンズ装用試験 IIと同様の 装用試験を行なった。試験用コンタクトレンズ毎に被験者 3人が示した評価点から、 平均評価点を算出し、下記表 10に併せて示した。
[0123] [表 10]
«試験に用いたコンタクトレンズ
[0124] 〈コンタクトレンズの保水性評価試験〉
所定量の共重合体 No. 14を生理食塩水に溶解せしめて、力かる共重合体 No. 1 4の濃度が 0. 05wZv%であるコンタクトレンズ用液剤 (液剤 No. 35)を調製した。ま た、先に述べた種々の試験と同様に、何れの共重合体をも含有しない生理食塩水を 、コンタクトレンズ用液剤 (液剤 No. 13)として準備した。更に、試験に供するシリコー ンヒドロゲルレンズとして、含水性ソフトコンタクトレンズ A (商品名:アキュビューアドバ
ンス、ジョンソン 'エンド'ジョンソン社製)、及び含水性ソフトコンタクトレンズ B (商品名 : 0ォプテイクス、チバビジョン社製)を準備した。
2
[0125] 2種類のコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 13、 35)の各 2mLに、 2種類の含水性ソ フトコンタクトレンズの各 1枚を、 2時間、浸漬せしめることにより、レンズ表面を処理し た。各コンタクトレンズ用液剤を用いて、各ソフトコンタクトレンズの 6枚に対して処理を 施すことにより、合計 24枚の試験用コンタクトレンズを準備した。
[0126] 浸漬開始から 2時間経過後に液剤力も試験用コンタクトレンズを取り出し、かかるレ ンズを、その端部をピンセットでつまんだ状態で保持しながら、レンズ表面の水分層( 水膜)を観察した。そして、液剤力も試験用コンタクトレンズを取り出した直後からレン ズ表面の水分層(水膜)が破壊するまでの時間を測定した。同一のコンタクトレンズ用 液剤にて処理した同一のソフトコンタクトレンズ: 6枚についての測定結果から、平均 値 (秒)を算出し、下記表 11に示した。なお、力かる平均値 (秒)が長ければ長い程、 レンズ表面の保水性が高 、ことを示す。
[0127] [表 11]
生理食塩水
[0128] 力かる表 11の結果より、本発明に従うコンタクトレンズ用液剤は、シリコーンヒドロゲ ルレンズのような含水性ソフトコンタクトレンズに対しても、その保水性の向上に寄与 し得ることが確認された。
[0129] 〈コンタクトレンズ装用試験 V〉
前述した保水性試験において用いたコンタクトレンズ用液剤(液剤 No. 13、 35)及 びシリコン含有ヒドロゲルレンズ (含水性ソフトコンタクトレンズ A、 B)と共に、使い捨て コンタクトレンズとして、含水性ソフトコンタクトレンズ C (商品名: 2ウィークアキュビュー 、ジョンソン 'エンド'ジョンソン社製)を準備した。これらを用いて、前述の保水性試験 と同様に、各含水性ソフトコンタクトレンズの 6枚を、各コンタクトレンズ用液剤に 2時間
、浸漬せしめることにより、合計 36枚の試験用コンタクトレンズを準備した。
[0130] 浸漬開始から 2時間経過後に液剤力も取り出した試験用コンタクトレンズを、 3名の ボランティア (被験者)に装用した。そして、被験者には暫くの間、瞬きを我慢してもら い、装用している試験用コンタクトレンズ表面の涙液の膜が壊れるまでの時間(所謂、 ブレイクアップタイム)測定した。同一のコンタクトレンズ用液剤にて処理した同一のソ フトコンタクトレンズ: 6枚についての測定結果から、平均値 (秒)を算出し、下記表 12 に示した。なお、力かる平均値 (秒)が長ければ長い程、レンズ表面の濡れを良好に 保持し得ることを示す。
[0131] [表 12]
※生理食塩水
力かる表 12の結果から明らかなように、本発明のコンタクトレンズ用液剤に浸漬せし めたコンタクトレンズを実際に装用した場合であっても、レンズ表面の濡れが長く保持 されたことが認められた。また、含水性ソフトコンタクトレンズ Cの如き、シロキサン化合 物を構成成分として含有して!/、な 、一般的な含水性ソフトコンタクトレンズにつ ヽても 、本発明のコンタクトレンズ用液剤を適用することにより、表面の水濡れ性を効果的に 向上せしめ得ることが確認されたのである。