自動車内装ボリプロピレンテレフタレ一ト繊維布帛と製法 技術分野 本発明は、 ポリプロピレンテレフタレート繊維マルチフィラメン 1、糸を地糸とパ ィル糸に用いて編成された卜リコッ ト生機のパイル糸のシンカーループを起毛し、 その起毛 明
毛羽を刈り揃えてカツ トパイルとした起毛トリコッ トパイル布帛によって構成された自動車 内装布帛に関するものである。
田 書
背景技術 自動車内装布帛に使用される起毛トリコッ トパイル布帛は、 概して単繊維繊度 0 . 5〜 6. 0 d t e X、 総繊度 3 0〜 1 8 0 d t e xのポリエチレンテレフ夕レート繊維マ ルチフィラメント糸が、 地糸 1 1とパイル糸 1 2に使用されている。 そのカッ トパイルのゥ エール密度は 3 0 W/ 2 5. 4 mm以上、 コース密度は 5 0 C/ 2 5. 4mm以上、 ゥエー ル密度とコース密度の積として示されるニッ ト密度は 1 8 0 0〜2 3 0 0 C XW/ ( 2 5. 4mm) 2 に設定される。 木綿、 麻、 絹、 羊毛等の石油資源に依存しない天然繊維は、 地球 環境保全の点で好ましい繊維とされている。 ポリ乳酸繊維やポリプロピレンテレフ夕レー卜 (以下、 PPTと言う。 ) 繊維は、 植物を原料として製造可能な合成繊維であるので、 注目 されている。 そして、 特開 2 0 0 0— 1 5 4 4 5 7号公報、 特開 2 0 0 2— 0 0 4 1 5 6号 公報、 特開 2 0 0 5— 1 1 3 2 7 9号公報、 および、 特開平 1 1一 0 9 3 0 5 0号公報に記 載されているように、 自動車内装布帛に P P T繊維を使用することが試みられている。
自動車内装布帛は苛酷な条件下で使用される。 そこで、 自動車内装布帛にはポリ エチレンテレフタレート (以下、 P ETと言う。 ) 繊維が主として使用されている。 天然繊 維やレーヨンは、 耐久性を欠く。 従って、 天然繊維やレーヨンは、 自動車内装布帛に好んで は使用されない。 その点で、 ポリ乳酸繊維やポリプロピレンテレフタレート(以下、 PFT と言う。 ) 繊維は、 化学構造式が P ET繊維に近似しているので、 自動車内装布帛用の新素 材として期待されている。 しかし、 ポリ乳酸繊維は、 生分解性繊維であるので、 耐蝕性を欠 く。 又、 ポリ乳酸繊維は、 染色性も欠く。.従って、 ポリ乳酸繊維を自動車内装布帛に使用し
ようとする場合には、 ポリ乳酸繊維を改質することが必要となる。
その点で、 PPT繊維は、 PET繊維に比してヤング率が低く、 弾性回復率が高 く、 可撓性ゃストレッチ性に富む。 従つて、 P F'T繊維を使用することによって、 触感風 合いのよい自動車内装布帛が得られるものと期待されている。 し力、し、 FET繊維マルチフ イラメント糸に代えて PPT繊維マルチフィラメ:ント糸を使用した起毛トリコッ トパイル布 帛では、 その裁断口がカールし易い.。 従って、 PPT繊維マルチフィラメント糸を使用した 起毛トリコ トパイル布帛を裁断して積み童ねよ.うとしても、 その裁断口でのカールが邪魔 になるので、 綺麗に積み重ねるこどは出来ない。 加えて、 その裁断された起毛トリコッ トパ ィル布帛の縫製時には、 その裁断口を引っ張ってカールを消去し、 裁断口を平らに押さえな がら縫製しなければならない。 従って、 その PPT繊維マルチフィラメント糸を使用した起 毛トリコッ トパイル布帛の縫製は、 非常に手間取り、 裁断ミスや縫製ミスが起き易い。 この ため、 PPT繊維マルチフィラメント糸を使用した起毛トリコッ トパイル布帛の自動車内装 布帛としての実用性が疑問視されている。
そこで、 P P T繊維を地糸 1 1とパイル糸 1 1に使用した起毛トリコッ トパイル 布帛の裁断口を具に観察し、 次の知見を得た。
( 1 ) カールは、 起毛卜リコッ トパイル布帛のゥエール方向 Wに沿った裁断口には発生しな い。
(2) カールは、 起毛卜リコッ I、パイル布帛のゥエール方向 Wを横切るコース方向 Cに沿つ た裁断口に発生する。 ' .
そして、 PPT繊維マルチフィラメント糸を起毛トリコッ トパイル布帛に使用す るためには、 次の点が留意されるべきことと考えられた。
( 1 ) ニードルループ 1 4ゃシンカーループ 1 3は、 地糸 1 1やパイル糸 1 2を起毛トリコ ッ トパイル布帛のコース方向 Cに振り動かして形成する。
( 2 ) 起毛トリコッ 卜パイル布帛の地糸 1 1やパイル糸 1 2は、 ゥエール方向 Wに連続して いる。 '
(3) PPT繊維は、 自動車内装布帛に'汎用されている PET繊維に比して、 ストレッチ性 (弾性回復率) に優れている。
(4) この点で PPT繊維は、 PET繊維に比して熱収縮し易い。 .
(5) PPT繊維を使用したトリコッ ト生機の編成過程で加えられるテンションに対応して 生じる収縮応力は、 その P E T繊維を'使用したトリコッ ト生機に生じる収縮応力に比して大 きい。 ' '
( 6 ) 染色仕上過程において、 P P T繊維を使用したトリコッ ト生機に生じる熱収縮応力は 、 PET繊維を使用したトリコッ ト生機に生じる熱収縮応力に比して大きい。
(7)編成過程や染色仕上過程で PPT繊維に蓄積されていた潜在応力は、 伸長応力 (テン シヨン) の作用しない裁断 .縫製過程では、 地糸 1 1やパイル糸 1 2の連続するゥエール方 向 Wにおいてカールとなって顕現する。
更に検討した結果、 次の点が配慮されるべき事柄であるとの知見を得た。
( 1 ) 二一ドルループ 1 4 t、ゥエール方向 Wに沿って細長く伸びた形ではなくコース方向
Cに脹らんだ輪奈状形を成す場合には、 '繊維内部に蓄積されていた潜在応力が顕現して地糸 やパイル糸が収縮しても、 ニードル 'ループ 1 4が輪奈状形状から細長い形に変形するお'けで める。 .
(2)従って、 トリコッ ト生機のコースゲー.ジ L (ゥエール方向におけるニードルループの 寸法) は、 短くはなり難い。
(3)地糸 1 1やパイル糸 1 2の収縮に #つて、 起毛トリコッ ト地のゥエール方向 Wでの収 縮が緩和される。
(4) その結果、 起毛トリコッ ト地は、 ゥエール方向 Wにおいてカールし難くなる。
更に検討した結果、 次の点が配慮されるべきであるとの知見を得た。 ( 1 ) 地糸 1 1を構成している P FT繊隹がクリンプ (細かい曲折) のある捲縮繊維であれ ば、 繊維内部に蓄積されていた潜在応力が顕現して P PT繊維が収縮しても、 その細かい曲 折 (クリンプ) が消失して無捲縮状態に変形するだけである。
(2) その PPT捲縮繊維が収縮するとしても、 そのクリンプが消失するだけであれば、 コ ースゲージ Lが短くなることは殆どな ,い。'
( 3 ) その P P T捲縮繊維が収縮してクリンプが消失するだけであれば、 ゥエール方向 Wで の起毛トリコッ 卜地の収縮は緩和される。
(4) その結果、 起毛トリコッ ト地は、 ゥエール方向 Wにカールし難くなる。
又、 更に検討した結果、 次の点が配慮されるべきであるとの知見を得た。
( 1 ) PP T繊維が、 P P Tだけではなく、 P F Tに比してャング率が高く、 弾性回復率が 低く、 可撓性ゃストレツチ性に劣る PETとの複合繊維であれば、 その PET成分によって 繊維内部に蓄積される潜在応力が弱められる。
( 2 ) 従って、 PPT繊維が PETとの複合繊維であれば、 その複合繊維に蓄積されていた 潜在応力が顕現するとしても、 その潜在応力によって生じる収縮応力も弱まる。
( 3 ) 従って、 その複合繊維の潜在応力が顕現しても、 起毛卜リコッ 卜地は、 ゥエール方 向 Wにおいてカールし難くなる。
そして更に検討した結果、 次の点が配慮されるべきであるとの知見を得た。 ( 1) パイル糸が加撚されていて起毛し難い加撚糸であれば、 起毛工程において、 その加撚 パイル糸から繊維を引つ搔き出すためには、 強い引搔応力 Pを作用させる必要がある。
( 2) その強い引搔応力 Pは、 弓 I張応力 Qとなって加撚パイル糸のシンカーループ 1 3か ら加撚パイル糸のニードルループ 1 4へと伝わる。
(3) その伝わる引張応力 Qによって、 ニードルループ 1 4が引っ張られて緊張するので、 コースゲージ Lが短くなる。 '
(4) その結果、 ニードルループを構成している地糸の糸足 (実質長さ) は、 その地糸が起 毛作用を受けないので、 ニードルループ 1 4を構成しているパイル糸の糸足 (実質長さ) よ りも相対的に長くなる。
( 5 ) その相対的に長くなつた分だけ、 起毛作用を受けない地糸のニードルループ 1 4に弛 みが生じる。
(6) 従って、 地糸繊維内部に蓄積されていた潜在応力が顕現しても、 その弛んでいた地糸 の弛み分が消失するだけである。
(7) そして、 その起毛時にパイル糸に作用する引張応力 Qによって短くなつたコースゲー ジ Lは、 地糸に潜在応力が顕現したからと言って、'更に短くはなり難い。
( 8 ) その結果、 潜在応力が収縮応力となつて地糸に顕現しても、 その収縮応力による起毛 トリコッ ト地のゥエール方向 Wでの収縮が緩和され、 その結果、 ゥエール方向 Wにおいて力 ールし難くなる。
本発明は、 これらの知見を基に完成された。 発明の開示 本発明に係る自動車内装 F P T繊維布帛の製法は、 単繊維繊度 0. 5〜 6. 0 d t e x、 総繊度 3 0〜 1 8 0 d t e xのポリプロピレンテレフタレート繊維マルチフィラメ ント糸を地糸 ( 1 1 ) とパイル糸 ( 1 2) に用いて編成されたトリコッ ト生機のパイル糸の シン力一ループ ( 1 3) を起毛し、 その起毛毛羽を刈り揃えてカツ トパイルとした起毛卜リ コッ トパイル布帛を拡布し、 そのゥエール方向 Wに緊張することなくコース方向 (C) に緊 張しつつ加熱し、 そのゥエール密度を 3 0 W/2 5. 4mm以上、 コース密度を 5 0 C/2 5. 4 mm以上、 ゥエール密度とコース密度の積として示されるニッ ト密度を 1 8 0 0〜2
3 0 0 CXW/ (2 5. 4mm) 2 に熱セットし、 同時に、 編成過程において蓄積された二 一ドルループ ( 1 4) を構成している地糸 ( 1 1 ) の有する潜在応力を緩和することを特徴 とする。
本発明に係る自動車内装 P P T繊維布帛は、 ポリプロピレンテレフ夕レ一ト繊維 マルチフィラメント糸を地糸 ( 1 1 ) とパイル糸 ( 1 2) に用いて編成されたトリコヅト生 機のパイル糸のシンカーループ ( 1 3) を起毛し、 その起毛毛羽を刈り揃えてカツ トパイル
とした起毛トリコッ トパイル布帛によ 'つて構成され、 地糸 ( 1 1 ) がポリプロピレンテレフ タレ一ト繊維捲縮マルチフィラメント糸であり、 パイル糸 ( 1 2 ) がポリプロピレンテレフ 夕レート'繊維無捲縮マルチフィラメント^、 または、 ポリプロピレンテレフタレート繊維捲 縮マルチフィラメン卜糸であることを第 1の特徴とする。
本発明に係る自動車内装 P P T繊維布帛は、 ポリプロピレンテレフタレー卜繊維 マルチフィラメント糸を地糸 ( 1 1 ) とパイル糸 ( 1 2) に用いて編成されたトリコッ ト生 機のパイル糸のシンカーループ ( 1 '3 ) を起毛し、 その起毛毛羽を刈り揃えて力ッ トパイル とした起毛トリコッ トパイル布帛によって構成され、地糸 ( 1 1 ) とパイル糸 ( 1 2) の何 れか少なくとも一方が、 それぞれ芯成分をポリエチレンテレフ夕レートとし、 鞘成分をポリ プロピレンテレフ夕レートとし、 鞘成分 (ポリプロピレンテレフタレート) が 6 5〜7 5重 量0 /0を占めるポリプロピレンテレフ夕レート芯鞘複合繊維マルチフィラメント糸であること を第 2の特徴とする。
本発明に係る自動車内装 PPT繊維布帛は、 ポリプロピレンテレフタレ一ト繊維 マルチフィラメント糸を地糸 ( 1 1 ) とパイル糸 ( 1 2) に用いて編成されたトリコッ ト生 機のパイル糸のシンカーループ ( 1 3) を起毛レ、 その起毛毛羽を刈り揃えてカツ トパイル とした起毛トリコッ トパイル布帛によって構成され、 地糸 ( 1 1 ) がボリプロピレンテレフ タレート繊維無捲縮マルチフィラメント糸であり、 パイル糸 ( 1 2 ) がポリプロピレンテレ フ夕レート繊維捲縮マルチフィラメント加撚糸であることを第 3の特徴とする。
本発明に係る自動車内装 F P T繊維布帛は、 上記の第 I と第 2と第 3の何れかの 特徴に加えて、 ポリプロピレンテレフタレ一ト繊維マルチフィラメント糸の単繊維繊度が 0
. 5〜 6. 0 d t e Xであり、 総繊度が 3 0〜 1.8 0 d t e Xであり、 自動車内装ポリプロ ピレンテレフ夕レート繊維布帛のゥエール密度が 3.0W/2 5 , 4mm以上であり、 コース 密度が 5 0 C/2 5. 4mm以上であって、 ゥエール密度とコース密度の積として示される ニッ ト密度が 1 80 0〜2 3 0 0 CXW/ (2 5. 4mm) 2 であり、 生機相当目付けが 4 5 0 g/m2 以上であり、 コース方向とゥエール方向におけるカール度が 2 0以下であるこ とを第 4の特徴とする。 図面の簡単な説明 図 1は、 トリコッ ト生機の拡大平面図である。 発明を実施するための最良の形態
本発明によると、 地糸レ 1は、 ρρτ繊維捲縮マルチフィラメント糸である。 そ れ故、 その地糸 1 1のニードルループに蓄積されていた潜在応力が顕現すると、 地糸 1 1の Ρ Ρ Τ繊維の細かく曲折していた捲縮が消失し、 その地糸 1 1の Ρ Ρ Τ繊維が無捲縮状態に 変形する。 その無捲縮状態に変形して生じる Ρ Ρ Τ繊維の歪み分に、 Ρ Ρ Τ繊維に顕現する 潜在応力が吸収される。 一方、 パイル糸.1 2の ΡΡΤ繊維の多くは起毛毛羽となっている。 そのため、 パイル糸 1 2の ΡΡΤ繊維に蓄積されていた潜在応力が顕現しても、 その潜在応 力がパイル糸 1 2の二一ドルループにコースゲージ Lを縮める程の強い収縮応力となって顕 現することはない。 従って、 地糸やパイル糸に蓄積されていた潜在応力が顕現しても、 カー ルは発生し難い。
本発明において、 地糸 1 1とパイル糸 1 2は、 ΡΡΤだけで構成されているので はない。 即ち、 地糸 1 1とパイル糸 1 2は、 ΡΡΤに比してヤング率が高く、 弾性回復率が 低く、 可撓性ゃストレツチ性に劣る PETと ΡΡΤとの芯鞘複合繊維によつて構成されてい る。 従って、 PETと PPTとの芯鞘複合繊維に蓄積される潜在応力が低減する。 そして、 それらの PETと PPTとの芯鞘複合繊維に蓄積されていた潜在応力が収縮応力となつて顕 現しても、 ゥエール方向 Wにおけるカールは、 発生し難くなる。
又、 PPTと PETとの芯鞘複合繊維に成るパイル糸は、 PPTだけに成る繊維 に比してストレッチ性に劣る。 従って、 起毛時に P P Tと P E Tとの芯鞘複合繊維に成るパ ィル糸のシ カーループに作用する引搔応力 Pは、 ニードルループへと伝わり易い。 その伝 わる引張応力 Qによって、 パイル糸の二一ドルループ 1 4は引っ張り出され易い。 そして、 そのニードルループ 1 4が引っ張られた分だけ、 ユースゲージ Lは、 短くなる。 同時に、 パ ィル糸がニードルループ 1 4を構成しているとしても、 又、 パイル糸のシンカーループに引 搔応力 Pが作用しても、 起毛処理時に地糸は引っ張り出されないので、 引搔応力 Pが作用し てパイル糸が弓 iつ張られた分だけ地糸に弛みが生じる。 従って、 地糸に蓄積されていた潜在 応力が収縮応力となって顕現するとしても、 その収縮応力は、 弛んでいた地糸の弛み分に吸 収されるだけである。
上記の通り、 地糸に生じ、 そして、 弛んでいる地糸の弛み分に吸収される収縮応力によつ ては、 自動車内装 FPT繊維布帛は、 ゥ ール方向 Wにカールしない。
本発明によると、 パイル糸 1 2は、 PPT繊維捲縮マルチフィラメント加撚糸で ある。 従って、 起毛工程において、 引搔応力 Pは、 パイル糸に強く作用する。 その引接応力 Pは、 シンカーループ 1 3を介してパイル糸のニードルループに伝わる。 その伝わる引張応 力 Qによって、 パイル糸のニードルループ 1 4が引っ張り出される。 パイル糸のニードルル —プ 1 4が引っ張り出された分だけ、 コースゲージ Lが短くなる。 又、 ニードルループ 1 4 を構成している地糸の糸足 (長さ) は、 パイル糸のニードルループ 1 4が引っ張り出された
分だけ、 ニードルループ 1 4を構成しているパイル糸の糸足 (長さ) よりも相対的に長くな る。 その結果、 ニードルループ 1 4を構成'している地糸に弛みが生じ、 地糸の繊維に蓄積さ れていた潜在応力が顕現しても、 その弛み出ていた地糸の弛み分が消失するだけとなる。 従 つて、 地糸の繊維に蓄積されていた潜在応力が顕現しても、 コースゲージ Lが更に短くはな り難い。 その結果、 起毛トリコッ ト地のゥエール方向 Wでの収縮が緩和される。 このため、 地糸 1 1が P P T繊維無捲縮マルチフィラメント糸であつても、 自動車内装 P P T繊維布帛 は、 ゥエール方向 Wにおいてカールし難くなる。、
パイル糸 1 2の撚り数は、 1 2 ひ回/ m以下にするとよい。 そのように全ての繊 維を一括して搔き出す場合は、 個々に分かれた繊維を 1本つづ搔き出す場合よりも、 搔き出 し難い。 即ち、 パイル糸 1 2が加撚されていると、'その加撚パイル糸 1 2を起毛することは 困難になる。 そこで、 加撚されているパイル糸 1 2を起毛する場合には、 パイル糸 1 2に強 ぃ引搔応力 Pを作用させることになる。 その場合、 加撚パイル糸のニードルループ I 4は、 強く引っ張られることになる。 しかし、 加撚パイル糸 1 2の燃り数が余り多いと、 加撚パイ ル糸のシン力一ループ 1 3の起毛が難くなる。 そこで、 加撚パイル糸 1 2の撚り数を 1 2 0 回/ m以下にする。 パイル糸 1 2が加撚されていると、 起毛針は、 パイル糸の 1本 1本の繊 維にではなく、 パイル糸を構成している全ての繊維を一括して引っ掛けることになる。
在来の自動車内装布帛に使用される起毛トリコッ トパイル布帛は、 概して単繊維 繊度 0 . 5〜6 . O d t e x、 総繊度 3 0〜 1 8 0 d t e xの P E T繊維マルチフィラメン ト糸を地糸 1 1 とパイル糸 1 2に用いて編成されている。 そのパイル糸のシン力一ループ 1 3が起毛される。 カッ トパイルは、 その起毛毛羽を刈り揃えて構成されている。
その在来の起毛トリコッ トパイル布帛のゥエール密度は、 本発明と同様に、 3 0 W/ 2 5 . 4 mm以上である。 又、 在来の起毛トリコットパイル布帛のコース密度は、 本発 明と同様に、 5 0 C / 2 5 . 4 mm以上である。 そして又、 在来の起毛トリコッ トパイル布 帛のゥエール密度とコース密度の積として示されるニッ ト密度は、 本発明と同様に、 1 8 0 0〜2 3 0 0 C X W/ ( 2 5 . 4 mm) 2 である。 従って、 本発明 (請求項 4 ) によると、 裁断口でのカールが予防され、 在来の自動車内装布帛の代替品として、 そのまま使用し得る 自動車内装 P P T繊維布帛が得られる。
ニードルループ 1 4がコース方向 Cに緊張されて輪奈状に脹らんだ形に変形する 過程においては、 起毛トリコッ トパイル布帛は、 ゥエール方向 Wにおいて無緊張下にある。 そのニードルループ 1 4が変形する過程においては、 そのコース方向 Cでの変形を妨げる外 力は、 ゥエール方向 Wからは作用しない。'従って、 二一ドルループ 1 4は、 ゥエール方向 W に沿って細長い形にはなり難い。 即ち、 ニードルループ 1 4は、 コース方向 Cに輪奈状に脹 らんだ形になり易い。 そして、 コース方向 Cに輪奈状に脹らんだ形の二一ドルループ 1 4の
P P T繊維に蓄積されていた潜在応力が顕現するとしても、 その脹らんだ輪奈状形状が細長 い形状に変化するだけである。 即ち、 ニードルループ 1 4が細長い形状に変化しても、 コー スゲージ Lが格別短くなることはない。 従って、 本発明 (請求項 5) によると、 ゥエール方 向 Wにカールし難い自動車内装 PPT繊維布帛が得られる。
上記の通り、 本発明によると、 自動車内装材に仕立てる裁断過程や縫製過程にお いて裁断口がカールせず、 効率的に仕立てることの出来る自動車内装 P P T繊維布帛が得ら れる。 .
本発明において、 「生機相当目付け」 と.は、 トリコッ ト生機のゥエール密度が自 動車内装 PPT繊維布帛のヴエール密度と同じであることを意味する。 又、 その 「生機相当 目付け」 は、 トリコッ ト生機のコ'ース密度も自動車内装 PPT繊維布帛のコース密度と同じ になっていると想定されるトリコッ ト生機の目付けを意味する。 即ち、 「生機相当目付け」 とは、 仕上がった自動車内装 FPT繊維布帛のゥエール密度とコース密度と同じゥエール密 度とコース密度で編成されたと認められる起毛前の原反 (トリコッ ト生機) の目付けを意味 する。 本発明において、 「生機相当'目付け」 を定義する意義は、 自動車内装 PPT繊維布帛 力、らパイルを全て取り除いて残る地糸によって構成されるベース編地の目付けを知る手掛り になることにある。
「生機相当目付け」 を、 ベース編地の目付けを比較する手掛りになる理由は、 次 の通りである。
( 1 ) 自動車内装 PPT繊維布帛に生じ ¾カールの度合いは、 ベース編地の嵩密度によって 異なる。 .
( 2 ) ベース編地の嵩密度をパイルを取り除いて残るパイル糸の一部の繊維と地糸によつて 構成されるベース編地の目付けによっては、 カールの度合いを推定することは出来ない。
( 3 ) 何故なら、 起毛トリコッ トパイル布帛のパイルは、 起毛されて'パイル糸の周面から突 き出た繊維の一部である。
(4)従って、 ベース編地から突き出ているパイルと、 ベース編地の中に残っているパイル 糸との境目を特定することは難い。
(5)又、 自動車内装 PPT繊維布帛のカールの度合いを、 ベース編地の嵩密度によって比 較することは出来ない。
(6) そして、 自動車内装 PPT繊維布帛の目付けは、 起毛時にパイル糸から取り除かれる 繊維の量やパイルの長さによって異なる。
(7)従って、 自動車内装 PPT繊維布帛のカールの度合いを、 自動車内装 PPT繊維布帛 の目付けによって比較することも出来ない。
(8) しかし、 ベース編地の目付けは、 ゥエール密度とコース密度が同じであれば、 起毛前
のトリコッ ト生機の目付けに比例する。
(9 ) そこで、 本発明ではベース編地の目付けを比較する手掛りとして 「生機相当目付け」 を採用することとしている。
本発明において、 自動車内装 PPT繊維布帛のカールの度合いは、 次の手順によ つて測定される。
( 1 ) 自動車内装 PPT繊維布帛からタテ (ゥエール方向) 2 0 cmxョコ (コース方向) 2 0 cmの試験片を採取する。
( 2 ) その試験片を 2 4時間放置する。
( 3 ) 次いで、 試験片を拡布し、 水平な台の上に載せた夕テ 2 2. 5 cmxョコ 3 0 cmx 厚み 1. OmmX質量 1 8 0 gの金属板 (下敷き) に中心の位置を合わせて載せる。
( ) 次いで、 その試験片の上に、 タテ 2 2. 5 cmxョコ 3 0 cmx厚み 1. OmmX質 量 1 8 0 gの金属板 (上重ね) を載せる。
( 5) 次い 、 その金属板 (上重ね).の.中心部に、 直径 4 cmx質量 5 0 0 gの円柱形錘を 載せ、 試験片を 1 0分間放置する。
(6 ) 試験片を動かすことなく、 金属板 (上重ね) に載せた錘と、 金属板 (上重ね) を除去 し、 更に 1 0分間放置する。 ·
(7) 次いで、 金属板 (下敷き) の上で試験片の反り上がった端縁 (一辺). に至る金属板 ( 下敷き) からの距離 (高さ) を測定する。
測定は、 パイル面を下向きにして試験片を金属板 (下敷き) の上に載せた場合と、 パイル 面を上向きにして試験片を金属板 (下敷き) の上に載せた場合とで、 合計 2回行う。 その最 も金属板 (下敷き) から反り上がった言 験片の測定値 (高さ) をもってカールの度合いとす る。 カールの度合いは、 mmを単位として表示する。 カールの度合いの測定は、 温度 2 0. 0 °C X湿度 6 0 %の雰囲気下で行う。
PPT (ポリプロピレンテレフタレート) 繊維は、 1 , 3—プロパンジオール、 1, 2—フ。口パンジオール、 1 , 1—プロパンジオール、 2 , 2—プロパンジオール等のジ オールとテレフタル酸が重縮合した繊維であり、 ポリ トリメチレンテレフタレート繊維とも 称される。 PPT (ポリプロピレンテレフタレート) 繊維の中には、 石油を原料とするもの もある。 しかし、 地球環境保全の点で、 植物を原料とする PPT (ポリプロピレンテレフ夕 レート) 繊維を使用すること、 特に、 し 3—プロパンジオールとテレフタル酸が重縮合し たもの PPT (ポリプロピレンテレフ夕レート) 繊維を使用することが推奨される。 実施例
7種類の P P T繊維トリコッ ト生機と 1種類の P E T繊維トリコッ ト生機をそれ ぞれ染色し加熱乾燥する。 次いで、 それらのトリコッ ト生機を起毛装置に通し、 それらのパ ィル糸のシンカーループを起毛する。'次'いで、 それらのトリコッ ト生機を、 シャーリング装 置に通し、 それらの起毛毛羽による力'ッ トパイルを形成する。 カツ トパイルの形成された起 毛トリコッ トパイル布帛の仕上厚み (総厚み) は、 し 8 mm前後である。 次いで、 起毛ト リコ'ソ トパイル布帛をゥエール方向 Wに緊張することなくコース方向 Cに緊張して 1 5 0°C にて加熱セッ 卜する。
8種類の中の 5種類の PP.T繊維起毛トリコッ トパイル布帛は、 本発明の実施例 を示す。 8種類の中の 1種類の P F T繊維起毛トリコッ 卜パイル布帛は、 本発明の比較例を 示す。 1種類の P E T繊維起毛卜リコッ トパイル布帛は、 従来例を示す。 これらの起毛トリ コッ トパイル布帛のカールの度合い、 破断強度、 剛軟度、 パイル圧縮弾性、 編組織、 製品規 格、 地糸規格、 パイル糸規格、 および、 物性品質 (測定値) は、 表 1に示す通りである。
起毛卜リコッ 卜パイル布帛の剛軟度は、 J I S— L— 1 0 1 8 (4 5° カンチレ バー法) に準じ、 次の手順で測定される。
( 1 ) 起毛トリコッ トパイル布帛を裁断し、 ゥエール方向に細長の試験片とコース方向に細 長の試験片を作成する。
( 2) 試験片を一端が 4 5度の斜面となっている水平で滑らかな水平台の表面に載せる。
(3) そのとき、 試験片のタテ方向を片端の位置を、 4 5度斜面と水平で滑らかな表面との 稜線に合わせる。
(4) その試験片のタテ方向の他の片端から、 4 5度斜面と水平で滑らかな表面との稜線ま での距離を測る。
( 5 ) 次いで、 試験片を 4 5度斜面側へと押し出す。
( 6 ) 押し出された試験片の先端が垂れ下がり、 その試験片の先端が 4 5度斜面に接した時 点で、 試験片を 4 5度斜'面側へと押し出すのを停止する。
(7) 押し出し始めてから停止するまでに試験片の移動距離を測定する。
(8) 起毛トリコッ トパイル布帛の剛軟度は、 その試験片の移動距離で表示される。
( 9) その移動距離は、 mmを単位として表示する。
起毛トリコッ トパイル布帛のパイル圧縮弾性は、 次の手順で測定される。
( 1 ) 毛トリコッ トパイル布帛を裁断し、 任意の大きさの試験片を作成する。
( 2) 0. 5 N/cm2 { 5 0 g f / c m2 } の荷重を試験片に載せ、 8 0°Cの恒温槽中に
2時間放置する。
(3) 次いで、 試験片を恒温槽から取り出し、 そのパイルの倒れ具合を観察する。
(a) 全くパイル倒れの生じていない試験片のパイル圧縮弾性を 5級と評価する。
( b ) 多少ノヽ'ィル倒れは生じるが目視によっては殆ど分らなレ、試験片のパィル圧縮弾性を 4 級と評価する。
( c ) パイル倒れは生じているが目立おない試験片のパイル圧縮弾性を 3級と評価する。 ·
( d ) パイル倒れが明らかに生じていることが分る試験片のパイル圧縮弾性を 2級と評価す る。
( e ) パイル倒れが著しい試験片のパイル圧縮弾性を 1級と評価する。
比較例 1 と 2に比較して明らかなように、 地糸に無捲縮マルチフィラメント糸を 使用しない実施例 1と 2と 3と 4の起毛トリコッ トパイル布帛では、 地糸の二一ドルループ に蓄積されていた潜在応力が収縮応力となって顕現している。 し力、し、 実施例 1 と 2の起毛 トリコッ 卜パイル布帛では、 その収縮応力は、 捲縮が消失して無捲縮状態に変形する地糸の 変形歪みに吸収されている。 又、 実施例 3と 4の起毛トリコットパイル布帛では、 収縮応力 は、 ャング率の高い P E T芯成分からの反力に相殺されてコースゲージ Lを縮めるようには 作用していない。 このように、 実施例 Lと 2と 3と 4の起毛トリコッ トパイル布帛のカール の度合いは低い。
地糸に無捲縮マルチフィラメント糸を使用した比較例 1 と 2の起毛トリコッ トパ ィル布帛のニッ ト密度は、 実施例 1 と 2と 3と 4の起毛トリコッ トパイル布帛のニッ ト密度 に比して緻密になっている。 従って、 比較例 1 と 2の起毛トリコッ トパイル布帛では、 地糸 のニードルループに蓄積されていた潜在応力が収縮応力となって顕現し易い。 その収縮応力 は、 コースゲージ Lを縮めるゥェ一ル方向に作用する。 そして、 比較例 1 と 2の起毛トリコ ッ トパイル布帛は、 ゥエール方向にカールし易くなる。
実施例 5の起毛卜リコッ 卜パイル布帛では、 比較例 I と 2の起毛トリコッ トパイ ル布帛と同様に、 地糸に無捲縮マルチフィラメント糸が使用されている。 しかし、 実施例 5 の起毛トリコッ トパイル布帛のカールの度合いは、 比較例 1 と 2の起毛トリコッ トパイル布 帛のカールの度合いに比して少ない。 その理由は、 実施例 5の起毛トリコッ トパイル布帛に 使用されたパイル糸が加撚されていることに起因するものと思われる。
即ち、 加撚されているパイル糸は、 起毛され難い。 加撚されているパイル糸は敢 えて起毛しょうとする場合には、 図 1に示されるように、 パイル糸 1 2に引搔応力 Pが強く 作用する。 その引搔応力 Pは、 加撚パイル糸のシンカーループ 1 3を介して、 加撚パイル糸 のニードルループ 1 4に伝わる。 そして、 引搔応力 Pに起因する引張応力 が、 加撚パイル 糸のニードルループ 1 4に作用する。 そこで、 二一ドルループ 1 4の加撚パイル糸が引っ張 り出される。 そのため、 コースゲージ Lが短くなる。 その結果、 二一ドルループ 1 4を構成 している地糸 1 1の糸足 (長さ)'は、 二一ドルループ 1 4を構成している加撚パイル糸 1 2 の糸足 (長さ) よりも相対的に長くなる。
' その結果、 二一ドルループ 1 4を構成している地糸 1 1に弛みが生じ、 地糸 1 1 の繊維に蓄積されていた潜在応力が顕現して地糸 1 1の繊維が収縮しても、 その弛み分が消 失するだけとなる。 即ち、 地糸 1 1の繊維が収縮しても、 コースゲージ Lは短くなり難い。 又、 ニードルループ 1 4を構成している地糸 1 1が弛むなら、 ゥェ一ル方向 Wにおいて、 起 毛トリコッ トパイル布帛は収縮し難くなる。 従って、 加撚されたパイル糸を用いると、 カー ルが起毛トリコッ トパイル布帛に発生し難くなる。
図 1は、 表 1に示すトリコッ ト生機を図示する。 地糸用第 1箴または地糸用第 1 簇は、 / 1— 2 / 1— 0 / 1— 17. 1 - 0/ 1 - 2/ 1 - 0/ の順にスィング している。 パイル糸用第 1箴またはパイル糸用第 2箴は、 / 1一 0/4— 5/ 1— 0
/4 - 5/ 1- - 0/ 4 - 5/ の順にスイングしている。 図 1において、 I と W2 と
W3 と W4 と W5 は、 シンカール一プ 1 3が続く 5ゥエールを示す。
実施例 1〜5のデータからして、 カール防止のためには、 自動車内装 PPT繊維 布帛の仕様を次のように設定することが推奨される。
( 1 ) 実施例 1と 2のデータからして、 'PPT繊維捲縮マルチフィラメン.ト糸は、 地糸に使 用されるべきである。
(2) 実施例 1 と 2のデ一夕からして、 PPT繊維無捲縮マルチフィラメント糸または PP T繊維捲縮マルチフィラメント糸は、 パイル糸 使用されるべきである。
( 3) 実施例 1のデータからして、.好ましくは、 PPT繊維無捲縮マルチフィラメント糸は 、 パイル糸に使用されるべきである。
(4) 実施例 3と 4のデータからして、 更に好ましくは、 芯成分を PETとし、 鞘成分を P P Tとし、 鞘成分 ( P P T ) が 6 5 - 7 5重量%を占める P P T芯鞘複合繊維マルチフイラ メント糸は、、地糸とパイル糸の双方に使用されるべきである。
( 5 ) 実施例 3と 4のデータからして、 特に、 芯成分が P E Tであり、 鞘成分が P P Tであ り、 鞘成分 ( P P T) が 6 5〜 7 5重量%を占める P P T芯鞘複合繊維マルチフィラメント 糸を、 地糸とパイル糸との双方に使用する'と、 ゥエール方向の破断強度とコース方向との破 断強度のバランスがよくなる。
(6) 実施例 5のデータからして、 若し、 地糸に PPT無捲縮マルチフィラメント糸を使用 せざるを得ないときは、 P P T繊維マルチフィラメント加撚糸をパイル糸に使用するべきで ある。
[ 表 1 ]
産業上の利用の可能性 本発明によると、 ポリプロピレンテレフタレ一ト繊維を使用した起毛トリコッ ト パイル布帛の裁断口でのカールを防ぎ、 地球環境に優しい自動車内装布帛が実用し得るよう になる。