JP2010070869A - ベロア調経編起毛布帛 - Google Patents

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知宏 長尾
Kenichi Murakado
憲一 村角
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Abstract

【課題】裁断口や周縁がカールせず縫製し易く、形状・寸法安定性に優れていると共に車両内装母材表面への張設時には皺を発生せず、パイル密度が緻密で横段のないベロア調起毛経編布帛を得る。
【解決手段】ベース編地を構成する地糸と、ベース編地のシンカーループ面に起毛パイルを形成するパイル糸によって編成され、パイル糸のシンカーループが起毛処理されて起毛パイルを形成しており、パイル/デシテックス換算密度(δ)が400000dtex/(25.4mm)2 以上である起毛経編布帛において、(1) 地糸とパイル糸を、それぞれポリエチレンテレフタレート繊維糸条とポリトリメチレンテレフタレート繊維糸条との二種類の糸条によって構成し、起毛経編布帛の起毛パイル層を含む総厚みを2mm以下にする。
【選択図】図1

Description

本発明は、主として車両内装材、特に椅子張地として使用される起毛経編布帛に関するものである。
ポリトリメチレンテレフタレート繊維をパイル糸に使用したパイル布帛は公知である(例えば、特許文献1と2参照)。
本願出願人は、ポリエチレンテレフタレート繊維とポリトリメチレンテレフタレート繊維との混繊糸を地糸に使用したダブルラッシェル経編カットパイル布帛を開発している。
本願出願人は、又、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を地糸に使用した起毛経編布帛の地糸を開発している(例えば、特許文献3参照)。
特開平11−93050号公報 特開2000−328393号公報 WO2007−132869号公報
起毛経編布帛の多くはポリエチレンテレフタレート繊維によって構成されている。
そのポリエチレンテレフタレート繊維に成る起毛経編布帛ではコース間に横段が生じ易く、特に布帛の裏面から表面パイルの先端までの厚み(以下、”総厚み”と言う。)が2mm以下の起毛経編布帛では、起毛パイルがベース編地から直立状態になっているので、ニードルループとの境目になっていて起毛パイル毛羽が少なくなるシンカーループの起点がコース方向に続くコースが横段のように目立ち易く、パイル密度が均等なベロア調起毛経編布帛は得難い。
ポリトリメチレンテレフタレート繊維を使用すると、伸縮性を有し、可撓性に富む起毛経編布帛が得られる。
しかし、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を使用した起毛経編布帛は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維が伸縮性に富むが故に寸法安定性を欠き、椅子張地には不向きである。
又、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を使用した起毛経編布帛は、伸縮性に富むが故に裁断口や周縁がカールし易く、縫製作業が困難になり、その点で車両内装材には不向きになっている。
そこで、本発明は、寸法・形状が安定しており、裁断口や周縁でのカールがなく、効率的に縫製することが出来、総厚みが2mm以下でも、起毛パイル密度が緻密でコース方向に続くパイル密度の疎密差による横段が目立つことがなく、車両内装材、特に車両椅子張地に適したベロア調起毛経編布帛を得ることを目的とする。
その目的をもって、ポリエチレンテレフタレート繊維とポリトリメチレンテレフタレート繊維の物性を具に調べるとき、ポリエチレンテレフタレート繊維糸条とポリトリメチレンテレフタレート繊維糸条とは、捲縮の有無によって性状が変化し、
(1) 強度に関しては、ポリトリメチレンテレフタレート捲縮繊維糸条(以下、”PTT捲縮糸”と言う。)、ポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条(以下、”PTT無捲縮糸”と言う。)、ポリエチレンテレフタレート捲縮繊維糸条(以下、”PET捲縮糸”と言う。)、ポリエチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条(以下、”PET無捲縮糸”と言う。)の順に強度が増え(PTT捲縮糸<PTT無捲縮糸<PET捲縮糸<PET無捲縮糸)、
(2) 熱収縮性に関しては、PET捲縮糸、PTT捲縮糸、PET無捲縮糸、PTT無捲縮糸の順に熱収縮性が増え(PET捲縮糸<PTT捲縮糸<PET無捲縮糸<PTT無捲縮糸)、
(3) 起毛性に関しては、PET無捲縮糸、PTT無捲縮糸、PET捲縮糸、PTT捲縮糸の順に起毛時に千切れ易くなり(PET無捲縮糸<PTT無捲縮糸<PET捲縮糸<PTT捲縮糸)、
(4) 経編布帛に編み込まれたポリエチレンテレフタレート繊維(以下、”PET繊維”と言う。)は、100℃前後の湿熱で熱収縮し始め、120℃前後の湿熱で熱収縮し終え、120℃を超える乾熱によっても左程熱収縮することはないが、ポリトリメチレンテレフタレート繊維(以下、”PTT繊維”と言う。)は、120℃を超える乾熱によっても尚熱収縮し続け、160℃前後の乾熱で熱収縮し終え、
(5) PTT繊維は、伸縮性に富む反面熱セット性を欠き、それとは逆に、PET繊維は、伸縮性を欠く反面熱セット性に優れ、PTT繊維が熱収縮し終える160℃前後の乾熱によって綺麗に熱セットされ、
(6) PET繊維には高熱収縮性PET繊維もあり、PTT繊維に代えて高熱収縮性PET繊維を使用することも考えられたが、高熱収縮性PET繊維も一般PET繊維と同様に熱セット性に優れ、その高熱収縮性PET繊維の使用によって形状・寸法安定性に優れた起毛経編布帛が得られる反面、車両内装母材の起伏に沿って彎曲変形し難く、車両内装母材表面への張設時に起毛経編布帛に皺が発生し易い。その点、PTT繊維は、十分に熱収縮し終えても伸縮性を保持しており、PTT繊維の使用された起毛経編布帛では、皺を発生することなく車両内装母材表面に綺麗に張設することが出来る、との知見を得た。
本発明に係る起毛経編布帛は、上記知見を基に完成されたものであり、(イ) ベース編地を構成する地糸と、ベース編地のシンカーループ面に起毛パイルを形成するパイル糸によって編成され、パイル糸のシンカーループが起毛処理されて起毛パイルを形成しており、ウェール密度とコース密度との積で示されるパイル密度(M)が2000個/(25.4mm)2以上であり、パイル密度(M)の2倍とパイル糸の総繊度(D)との積(2M×D)で示されるパイル/デシテックス換算密度(δ)が400000dtex/(25.4mm)2以上であり、(ロ) 地糸とパイル糸が、それぞれPET繊維糸条とPTT繊維糸条との二種類の糸条によって構成されており、(ハ) 総厚みが2mm以下であることを第1の特徴とする。
本発明に係る起毛経編布帛の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、(ニ) 地糸が、PET無捲縮糸とPTT無捲縮糸によって構成されており、(ホ) パイル糸が、PET捲縮糸とPTT無捲縮糸によって構成されている点にある。
本発明に係る起毛経編布帛の第3の特徴は、上記第2の特徴に加えて、(ヘ) ポリエチレンテレフタレート成分が、地糸のPET無捲縮糸とPTT無捲縮糸の合計質量に占める合計地糸ポリエチレンテレフタレート成分比率が、40〜70質量%であり、(ト)
ポリエチレンテレフタレート成分が、パイル糸のPET捲縮糸とPTT無捲縮糸の合計質量に占める合計パイル糸ポリエチレンテレフタレート成分比率が40〜70質量%である点にある。
本発明に係る起毛経編布帛の第4の特徴は、上記第2、第3の何れかの特徴に加えて、(チ) 地糸のPET無捲縮糸とPTT無捲縮糸、および、パイル糸のPET捲縮糸とPTT無捲縮糸が、それぞれ異なる筬によって編み込まれており、(リ) そのパイル糸のPET捲縮糸とPTT無捲縮糸の編組織が同じであり、パイル糸のPET捲縮糸のシンカーループ11とPTT無捲縮糸のシンカーループ12が引き揃えられている点にある。
本発明に係る起毛経編布帛の第5の特徴は、上記第4の特徴に加えて、地糸のPET無(ヌ) 捲縮糸のシンカーループ13の長さbが、地糸のPTT無捲縮糸のシンカーループ14の長さaよりも長く、(ル) パイル糸のシンカーループ11・12の長さcが、地糸のシンカーループ13・14の長さa・bよりも長い点にある。
本発明に係る起毛経編布帛の第6の特徴は、上記第5の特徴に加えて、(オ) 地糸のPTT無捲縮糸のシンカーループ14が、地糸のPET無捲縮糸のシンカーループ13とパイル糸のシンカーループ11・12の間に挟まれて介在している点にある。
本発明に係る起毛経編布帛の第7の特徴は、上記第1、第2、第3、第4、第5、第6の何れかの特徴に加えて、(ワ) PTT無捲縮糸が、ポリトリメチレンテレフタレート(以下、”PTT”と言う。)を鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレート(以下、”PET”と言う。)を芯成分とする無捲縮芯鞘複合繊維マルチフイラメント(以下、”PTT−PET複合無捲縮糸”と言う。)であり、(カ) その芯成分のPETの質量がPTT−PET複合無捲縮糸全体に占めるPET成分比率が15〜35質量%である点にある。
PET繊維糸条は、起毛経編布帛の染色工程での120℃前後の湿熱によって熱収縮し終えるが、PTT繊維糸条は、その後150℃前後に乾熱するときは更に熱収縮する。
従って、120℃前後の湿熱によって熱収縮し終えたPET繊維糸条は、その後にPTT繊維糸条が熱収縮する150℃前後の高い温度で熱セットされる。
即ち、PTT繊維糸条が十分に熱収縮してパイル密度が十分に緻密になった状態で起毛経編布帛の編組織がセットされる。
このため、PTT繊維糸条の伸縮性と、PTT繊維糸条とPET繊維糸条との伸縮差に起因して起毛経編布帛がカールすることはなくなり、PTT繊維糸条が熱収縮してパイル密度が緻密になり、コース間15・15が引き寄せられてパイル面に横段が発生し難くなり、又、パイル/デシテックス換算密度(δ)が400000dtex/(25.4mm)2以上であり総厚みが2mm以下であることから起毛パイルが座屈し難く起立し、パイル面の外観と感触がベロア調になり、起毛パイルが撫で倒されてフィンガーマークとかチョークマークと称される撫で痕が付き難くなる。
そのようにPTT繊維糸条が熱収縮してパイル密度が緻密になるとしても、PTT繊維糸条は、高熱収縮性PET繊維とは異なり、十分に熱収縮し終えても伸縮性を保持しており、PTT繊維糸条の使用された起毛経編布帛では、車両内装母材表面への張設時に皺が発生することはない。
従って、本発明(第1の特徴)によると、縫製時にカールすることなく、車両内装母材表面への張設時には皺を発生せず、パイル密度が緻密で横段がなく、パイル面に撫で痕が付き難く、形状・寸法安定性に優れ、車両内装材に好適なベロア調起毛経編布帛を得ることが出来る。
本発明(第2の特徴)によると、地糸のPTT無捲縮糸がPET無捲縮糸とPET捲縮糸よりも熱収縮率が高く、それが熱収縮してパイル密度が高密化する一方、地糸のPET無捲縮糸が熱セット性に優れているので寸法安定性を有し、裁断口でカールせず、縫製し易い起毛経編布帛が得られる。
そして、シンカーループ面の起毛時には、PTT無捲縮糸が、PTT捲縮糸のように、PET捲縮糸よりも先に起毛針に引っ掻かれて引き千切られることがなく、PTT無捲縮糸のシンカーループ12とPET捲縮糸のシンカーループ11が同時に起毛されて横段のない起毛経編布帛が得られる。
本発明(第3の特徴)において、地糸のPET無捲縮糸とPTT無捲縮糸の合計質量に占める合計地糸PET成分比率を40〜70質量%にするのは、合計地糸PET成分比率が70%を超えるとPTT無捲縮糸によるパイル密度緻密化機能が薄れるためであり、一方、合計地糸PET成分比率を40%未満にすると、PET無捲縮糸による寸法安定化機能が薄れ、起毛経編布帛がカールし易くなるためである。
又、パイル糸のPET捲縮糸とPTT無捲縮糸の合計質量に占める合計パイル糸PET成分比率を40〜70質量%とするのは、合計パイル糸PET成分比率が70%を超えるときは、PTT無捲縮糸による感触のよい起毛経編布帛が得難くなり、それとは逆に、合計パイル糸PET成分比率が40%未満になると、パイルの起立性のよい起毛経編布帛が得難くなるためである。
本発明(第4の特徴)によると、地糸のPET無捲縮糸とPTT無捲縮糸、および、パイル糸のPET捲縮糸とPTT無捲縮糸を、それぞれ異なる筬によって編み込むことしたので、PET無捲縮糸とPET捲縮糸とPTT無捲縮糸の機能が互いに他方の糸条に干渉されず遺憾なく発揮される。
又、パイル糸のPET捲縮糸とPTT無捲縮糸の編組織を同じにし、それらPET捲縮糸のシンカーループ11とPTT無捲縮糸のシンカーループ12を引き揃え状態にしたので、PET捲縮糸のシンカーループ11とPTT無捲縮糸のシンカーループ12が一緒に起毛針に引っ掻けられて起毛され、伸長し易く強度の弱いPTT無捲縮糸シンカーループ12だけが先に起毛され、その起毛毛羽の下にPET捲縮糸のシンカーループ11が隠れて未起毛状態に残されて横段が発生し易くなることはない。
本発明(第5の特徴)によると、パイル糸のシンカーループ11・12の長さcを、地糸のシンカーループ13・14の長さa・bよりも長くしたので、パイル糸のシンカーループ11・12が起毛し易くなり、又、地糸のPET無捲縮糸のシンカーループ13の長さbを、地糸のPTT無捲縮糸のシンカーループ14の長さaよりも長くしたので、熱収縮率の大きいPTT無捲縮糸のシンカーループ14の熱収縮によってコース列間15・15が引き寄せられ、コース密度が緻密になって横段が発生し難くなる。
本発明(第6の特徴)では、地糸のPTT無捲縮糸のシンカーループ14を、地糸のPET無捲縮糸のシンカーループ13とパイル糸のシンカーループ11・12の間に挟まれて介在するように編み込むことにしたので、熱収縮率の大きいPTT無捲縮糸が熱収縮するとき、PTT無捲縮糸を間に挟むPET無捲縮糸のシンカーループ13はニードルループ面側に膨出し、パイル糸のシンカーループ11・12はシンカーループ面側に膨出することになる。
その結果、PTT無捲縮糸のシンカーループ14は、それらのシンカーループ11・12・13に強く触れ合わない解放状態になり、そのシンカーループ14の熱収縮によるコース間密度の緻密化効果が顕著になる。
本発明(第7の特徴)によると、PTT−PET複合無捲縮糸のPET成分によってPTT成分にセット性が付与され、カールし難く、縫製し易い起毛経編布帛が得られる。
パイル層の嵩比重は、パイル層の緻密度を知る手掛りとなるファクタであり、パイル布帛の単位面積から刈り取ったパイル繊維の質量とパイル層の厚みによって算定される。
しかし、シンカーループ面からニードルループ面に至る総厚みが2.0mm以下であり、パイル層の厚みが1.5mm以下となる起毛経編布帛では、そのパイル層を構成している起毛パイル毛羽の全てを刈り取ることは極めて困難である。
そこで、本発明では、ウェール密度とコース密度との積で示されるパイル密度(M)が2000個/(25.4mm)2 以上であり、パイル密度(M)の2倍とパイル糸の総繊度(D)との積(2M×D)で示されるパイル/デシテックス換算密度(δ)をもってパイル層の嵩比重に代用している。
ここに、パイル/デシテックス換算密度(ρ)とは、パイル布帛の単位面積([25.4mm]2 )に含まれる全ての起毛パイル毛羽(パイル繊維)を太い一本の繊維に集約した場合の当該一本の仮想繊維の繊度、即ち、起毛経編布帛の単位面積内([25.4mm]2)に植設されていると仮想することの出来る太い一本の仮想パイル繊維の繊度を意味する。
そのパイル層の緻密度を知る手掛りであるパイル/デシテックス換算密度(ρ)の算定において、パイル密度を2倍(2M)とするのは、パイル糸がU字状を成してベース編地に係止され、そのベース編地に係止されてU字状を成すパイル糸が沈糸部分(シンカーループ)の両端からそれぞれ1本(合計2本)のパイルが一番(つがい)になって突き出ていることによる。
本発明を効果的に実施する上では、パイル/デシテックス換算密度(ρ)を600000dtex/(25.4mm)2 以上に、好ましくは800000dtex/(25.4mm)2以上にし、パイル糸のPET繊維とPTT繊維の単繊維繊度を2.0dtex以下にすること、更に好ましくは、パイル糸にPET捲縮糸とPTT無捲縮糸を使用し、そのPET捲縮糸のPET繊維の単繊維繊度を、概して0.4〜0.9dtexにし、PTT無捲縮糸のPTT繊維の単繊維繊度の50%以下にする。
起毛経編布帛が伸縮し難くければ、起毛経編布帛の形状・寸法が安定していてカールし難い。
ニードルループ16との境目になっていて起毛パイル毛羽が少なくなるシンカーループ(11・12・13・14)の起点であるコース部分15は、起毛経編布帛のコース列間15・15が引き寄せられてコース密度とパイル密度が緻密になると、横段として目立ち難くなる。
そのコース密度とパイル密度は、起毛経編布帛の圧縮仕事料と圧縮レジリエンスによって測ることも出来る。
従って、起毛経編布帛の形状・寸法安定性と非カール性(カールし難くさ)は起毛経編布帛の伸び率とセット率として、横段発生度合い(パイル面の横段の発生しにくさ)は起毛経編布帛の圧縮仕事量と圧縮レジリエンスとして、それぞれ次のように計測される。
(伸び率の計測法)
伸び率は、次の手順で測定し算定される。
(1) 起毛経編布帛からコース方向Cの寸法300mm・ウェール方向Wの寸法80mmのサイズのヨコ・伸び率測定用試験片と、コース方向Cの寸法80mm・ウェール方向Wの寸法300mmのサイズのタテ・伸び率測定用試験片を、それぞれ5枚採取する。
(2) 縦長の各試験片の長さ方向の中心点から上下にそれぞれ距離50mmの位置に標点を記入する。
(3) 縦長の各試験片の長さ方向の両端に掴み幅80mmの治具を取り付け、その治具の重量を含む10kgfの荷重を掛けて各試験片を縦長に吊るして10分間経過時点での上下の標点間の距離を測定する。
(4) 10分間経過時点での上下の標点間の距離(単位;mm)と吊るす前の上下の標点間の距離(100mm)との差を、吊るす前の上下の標点間の距離(100mm)で除した値に100を掛けてウェール方向Wのタテ・伸び率とコース方向Cのヨコ・伸び率を算定する。
(5) ヨコ・伸び率測定用とタテ・伸び率測定用の各5枚の伸び率算定値の中の最大値と最小値を除く3枚の試験片の伸び率算定値の平均値をもって、ヨコ・伸び率およびタテ・伸び率とする。
(セット率の計測法)
実施例と比較例において、PET繊維糸条、PTT繊維糸条およびPTT・PET芯鞘複合繊維糸条のセット性は、それらを使用して成る起毛経編布帛の次の手順で測定し算定されるセット率によって評価される。
(1) 起毛経編布帛からコース方向Cの寸法300mm・ウェール方向Wの寸法80mmのサイズのヨコ・セット率測定用試験片と、コース方向Cの寸法80mm・ウェール方向Wの寸法300mmのサイズのタテ・セット率測定用試験片を、それぞれ5枚採取する。
(2) 縦長の各試験片の長さ方向の中心点から上下にそれぞれ距離50mmの位置に標点を記入する。
(3) 縦長の各試験片の長さ方向の両端に掴み幅80mmの治具を取り付け、その治具の重量を含む10kgfの荷重を掛けて各試験片を縦長に吊るし、10分間経過時点で除重し、水平なテーブルに放置して10分間経過時点での上下の標点間の距離を測定する。
(4) テーブルに放置して10分間経過時点での上下の標点間の距離(単位;mm)と吊るす前の上下の標点間の距離(100mm)との差を、その吊るす前の上下の標点間の距離(100mm)で除した値に100を掛けてウェール方向Wのタテ・セット率とコース方向Cのヨコ・セット率を算定する。
(5) ヨコ・セット率測定用とタテ・セット率測定用の各5枚のセット率算定値の中の最大値と最小値を除く3枚の試験片のセット率算定値の平均値をもって、ヨコ・セット率およびタテ・セット率とする。
(圧縮仕事量と圧縮レジリエンスの計測法)
カトーテック株式会社製の圧縮試験機(KES−FB3)によって圧縮仕事量と圧縮レジリエンスを計測する。試験片のサイズを縦10cm×横10cmとし起毛経編布帛から各々3枚切り取る。圧縮試験機の押圧片の加圧面積を2cm2とし、加圧スピードを0.0067mm/secとし、加圧上限荷重50gf/cm2 に達した時点での圧縮仕事量と圧縮レジリエンスを読み取る。
その計測値において、圧縮仕事量の計測値が大きいほど起毛経編布帛が圧縮され易いことを意味し、圧縮レジリエンスの計測値が100に近いほど起毛経編布帛の回復性がよいことを意味する。
以下、実施例と比較例の対比の裡に本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
バック筬を第1筬とし、それに続く第2筬と第3筬と、フロント筬になる第4筬との4枚筬を具備するトリコット経編機の第1筬に単繊維繊度2.34dtex・総繊度56dtexのPET無捲縮糸を第1地糸として通し、第2筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする。
単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第2地糸として通し、第3筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第1パイル糸として通し、第4筬に単繊維繊度0.59dtex・総繊度84dtexのPET捲縮糸を第2パイル糸として通し、第1筬を/2−3/1−0………の順に操作し、第2筬を/1−0/1−2………の順に操作し、第3筬を/1−0/3−4………の順に操作し、第4筬を/1−0/3−4………の順に操作して編成した経編布帛を染色工程における120℃の湿熱で加熱してPET繊維とPTT繊維に熱収縮を顕現させ、シンカーループ面に起毛処理を施して第3筬と第4筬に編み込まれたパイル糸のシンカーループ(11・12)に起毛パイルを発生させ、160℃の乾熱で加熱してPTT繊維に更なる熱収縮を顕現させ、同時に、地糸のシンカーループ(13・14)とパイル糸および地糸のニードルループ(16)を熱セットし、起毛パイル面(シンカーループ面)にシャーリングを施して起毛パイルの長さを一定に揃え、ウェール密度38W/25.4mm、コース密度70C/25.4mm、パイル密度2660個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度893760dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.6mmの起毛経編布帛に仕上げた。
[実施例2]
バック筬を第1筬とし、それに続く第2筬と第3筬と、フロント筬になる第4筬との4枚筬を具備するトリコット経編機の第1筬に単繊維繊度2.34dtex・総繊度56dtexのPET無捲縮糸を第1地糸として通し、第2筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第2地糸として通し、第3筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第1パイル糸として通し、第4筬に単繊維繊度0.875dtex・総繊度84dtexのPET捲縮糸を第2パイル糸として通し、第1筬を/2−3/1−0………の順に操作し、第2筬を/1−0/1−2………の順に操作し、第3筬を/1−0/3−4………の順に操作し、第4筬を/1−0/3−4………の順に操作して編成した経編布帛を染色工程における120℃の湿熱で加熱してPET繊維とPTT繊維に熱収縮を顕現させ、シンカーループ面に起毛処理を施して第3筬と第4筬に編み込まれたパイル糸のシンカーループ(11・12)に起毛パイルを発生させ、160℃の乾熱で加熱してPTT繊維に更なる熱収縮を顕現させ、同時に、地糸のシンカーループ(13・14)とパイル糸および地糸のニードルループ(16)を熱セットし、起毛パイル面(シンカーループ面)にシャーリングを施して起毛パイルの長さを一定に揃え、ウェール密度38W/25.4mm、コース密度70C/25.4mm、パイル密度2660個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度893760dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.6mmの起毛経編布帛に仕上げた。
[実施例3]
バック筬を第1筬とし、それに続く第2筬と第3筬と、フロント筬になる第4筬との4枚筬を具備するトリコット経編機の第1筬に単繊維繊度2.75dtex・総繊度33dtexのPET無捲縮糸を第1地糸として通し、第2筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第2地糸として通し、第3筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第1パイル糸として通し、第4筬に単繊維繊度0.59dtex・総繊度84dtexのPET捲縮糸を第2パイル糸として通し、第1筬を/2−3/1−0………の順に操作し、第2筬を/1−0/1−2………の順に操作し、第3筬を/1−0/3−4………の順に操作し、第4筬を/1−0/3−4………の順に操作して編成した経編布帛を染色工程における120℃の湿熱で加熱してPET繊維とPTT繊維に熱収縮を顕現させ、シンカーループ面に起毛処理を施して第3筬と第4筬に編み込まれたパイル糸のシンカーループ(11・12)に起毛パイルを発生させ、160℃の乾熱で加熱してPTT繊維に更なる熱収縮を顕現させ、同時に、地糸のシンカーループ(13・14)とパイル糸および地糸のニードルループ(16)を熱セットし、起毛パイル面(シンカーループ面)にシャーリングを施して起毛パイルの長さを一定に揃え、ウェール密度38W/25.4mm、コース密度70C/25.4mm、パイル密度2660個/(25.4mm)2 、パイル/デシテックス換算密度893760dtex/(25.4mm)2、総厚み1.5mmの起毛経編布帛に仕上げた。
[実施例4]
バック筬を第1筬とし、それに続く第2筬と第3筬と、フロント筬になる第4筬との4枚筬を具備するトリコット経編機の第1筬に単繊維繊度2.75dtex・総繊度33dtexのPET無捲縮糸を第1地糸として通し、第2筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第2地糸として通し、第3筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.40dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第1パイル糸として通し、第4筬に単繊維繊度0.59dtex・総繊度84dtexのPET捲縮糸を第2パイル糸として通し、第1筬を/2−3/1−0………の順に操作し、第2筬を/1−0/1−2………の順に操作し、第3筬を/1−0/3−4………の順に操作し、第4筬を/1−0/3−4………の順に操作して編成した経編布帛を染色工程における120℃の湿熱で加熱してPET繊維とPTT繊維に熱収縮を顕現させ、シンカーループ面に起毛処理を施して第3筬と第4筬に編み込まれたパイル糸のシンカーループ(11・12)に起毛パイルを発生させ、160℃の乾熱で加熱してPTT繊維に更なる熱収縮を顕現させ、同時に、地糸のシンカーループ(13・14)とパイル糸および地糸のニードルループ(16)を熱セットし、起毛パイル面(シンカーループ面)にシャーリングを施して起毛パイルの長さを一定に揃え、ウェール密度38W/25.4mm、コース密度70C/25.4mm、パイル密度2660個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度893760dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.6mmの起毛経編布帛に仕上げた。
[比較例1]
バック筬を第1筬とし、それに続く第2筬と第3筬と、フロント筬になる第4筬との4枚筬を具備するトリコット経編機の第1筬に単繊維繊度2.34dtex・総繊度56dtexのPET無捲縮糸を第1地糸として通し、第2筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度2.34dtex・総繊度56dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第2地糸として通し、第3筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第1パイル糸として通し、第4筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.40dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合捲縮糸を第2パイル糸として通し、第1筬を/2−3/1−0………の順に操作し、第2筬を/1−0/1−2………の順に操作し、第3筬を/1−0/3−4………の順に操作し、第4筬を/1−0/3−4………の順に操作して編成した経編布帛を染色工程における120℃の湿熱で加熱してPET繊維とPTT繊維に熱収縮を顕現させ、シンカーループ面に起毛処理を施して第3筬と第4筬に編み込まれたパイル糸のシンカーループ(11・12)に起毛パイルを発生させ、160℃の乾熱で加熱してPTT繊維に更なる熱収縮を顕現させ、同時に、地糸のシンカーループ(13・14)とパイル糸および地糸のニードルループ(16)を熱セットし、起毛パイル面(シンカーループ面)にシャーリングを施して起毛パイルの長さを一定に揃え、ウェール密度38W/25.4mm、コース密度70C/25.4mm、パイル密度2660個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度893760dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.6mmの起毛経編布帛に仕上げた。
[比較例2]
バック筬を第1筬とし、それに続く第2筬と第3筬と、フロント筬になる第4筬との4枚筬を具備するトリコット経編機の第1筬に単繊維繊度2.34dtex・総繊度84dtexのPET無捲縮糸を第1地糸として通し、第2筬に単繊維繊度2.34dtex・総繊度84dtexのPET無捲縮糸を第2地糸として通し、第3筬に単繊維繊度2.34dtex・総繊度84dtexのPET無捲縮糸を第1パイル糸として通し、第4筬に単繊維繊度2.34dtex・総繊度84dtexのPET捲縮糸を第2パイル糸として通し、第1筬を/2−3/1−0………の順に操作し、第2筬を/1−0/1−2………の順に操作し、第3筬を/1−0/3−4………の順に操作し、第4筬を/1−0/3−4………の順に操作して編成した経編布帛を染色工程における130℃の湿熱で加熱してPET繊維に熱収縮を顕現させ、シンカーループ面に起毛処理を施して第3筬と第4筬に編み込まれたパイル糸のシンカーループ(11・12)に起毛パイルを発生させ、160℃の乾熱で加熱し、同時に、地糸のシンカーループ(13・14)とパイル糸および地糸のニードルループ(16)を熱セットし、起毛パイル面(シンカーループ面)にシャーリングを施して起毛パイルの長さを一定に揃え、ウェール密度38W/25.4mm、コース密度58C/25.4mm、パイル密度2204個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度740544dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.9mmの起毛経編布帛に仕上げた。
[比較例3]
バック筬を第1筬とし、それに続く第2筬と第3筬と、フロント筬になる第4筬との4枚筬を具備するトリコット経編機の第1筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第1地糸として通し、第2筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第2地糸として通し、第3筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合無捲縮糸を第1パイル糸として通し、第4筬にPTTを鞘成分(70%)としPETを芯成分(30%)とする単繊維繊度1.75dtex・総繊度84dtexのPTT−PET複合捲縮糸を第2パイル糸として通し、第1筬を/1−2/1−0………の順に操作し、第2筬を/1−0/1−2………の順に操作し、第3筬を/1−0/4−5………の順に操作し、第4筬を/1−0/4−5………の順に操作して編成した経編布帛を染色工程における120℃の湿熱で加熱してPTT繊維に熱収縮を顕現させ、シンカーループ面に起毛処理を施して第3筬と第4筬に編み込まれたパイル糸のシンカーループ(11・12)に起毛パイルを発生させ、160℃の乾熱で加熱してPTT繊維に更なる熱収縮を顕現させ、同時に、地糸のシンカーループ(13・14)とパイル糸および地糸のニードルループ(16)を熱セットし、起毛パイル面(シンカーループ面)にシャーリングを施して起毛パイルの長さを一定に揃え、ウェール密度38W/25.4mm、コース密度58C/25.4mm、パイル密度2204個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度740544dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.7mmの起毛経編布帛に仕上げた。
[実施例と比較例1の評価]
実施例1〜4と比較例1の起毛経編布帛では、地糸にPTT繊維とPET繊維が混用されており、PTT繊維の伸縮性がPET繊維に抑えられ、その混用したPTT繊維によるカールの発生もなく、混用したPTT繊維によってパイル密度が緻密化されている。
しかし、比較例1のパイル糸は、PTT−PET芯鞘複合繊維糸条であり、実施例1〜4のようにPET繊維が混用されていないので、比較例1の起毛経編布帛では、圧縮レジリエンスが多く、押圧荷重の除重後の回復性に優れているものの、実施例1〜4の起毛経編布帛比して圧縮仕事量が多く、押圧荷重を受けて押し潰され易い。
又、実施例1〜4のパイル糸は、PET捲縮糸とPTT−PET複合無捲縮糸とから成り、熱処理によってPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループが収縮し、PET捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループよりも膨出され、PTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループとPET捲縮糸のシンカーループのレベルが揃って均等に起毛されている。
これに対し、比較例1のパイル糸は、PET繊維が混用されておらず、PTT−PET複合捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループよりも膨出している。
このため、比較例1の起毛経編布帛では、PTT−PET複合捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループに先立って起毛され、PTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合捲縮糸のシンカーループに比して起毛し難く、ニードルループ16との境目となるシンカーループ(11・12・13・14)の起点17の続くコース部分15では起毛パイル毛羽が少なくなり、起毛パイル面の全面に細かい木目乃至筋目のようになった横段が認められる。
[実施例と比較例2の評価]
地糸にPTT繊維を42〜50%混用した実施例1〜4の起毛経編布帛の伸び率およびセット率と、地糸にPTT繊維を使用しない比較例2の起毛経編布帛の伸び率およびセット率の間に有意差は認められず、実施例1〜4の起毛経編布帛では、PTT繊維を混用したことによるカールもなく、混用したPTT繊維によってパイル密度が緻密化している。
そして、実施例1〜4の起毛経編布帛では、パイル糸にPTT繊維が35%混用されており、PTT繊維の混用されない比較例2の起毛経編布帛に比して圧縮仕事量が少なく、押圧荷重を受けて押し潰され難い。
又、実施例1〜4の起毛経編布帛と比較例2の起毛経編布帛の圧縮レジリエンスは略同じであるが、PET繊維に比して伸縮性と可撓性に富むPTT繊維がパイル糸に使用されていることから、パイル糸がPET繊維に成る比較例2の起毛経編布帛に比して実施例1〜4の起毛経編布帛の起毛パイル面からは軟らかい感触を受ける。
又、実施例1〜4のパイル糸は、PET捲縮糸とPTT−PET複合無捲縮糸とから成り、熱処理によってPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループが収縮し、PET捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループよりも膨出され、PTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループとPET捲縮糸のシンカーループのレベルが揃って均等に起毛されている。
これに対し、比較例2のパイル糸は、PTT繊維が混用されておらず、比較例2のPET捲縮糸のシンカーループがPET無捲縮糸のシンカーループよりも膨出した状態になっていた。
このため、比較例2の起毛経編布帛では、PET捲縮糸のシンカーループがPET無捲縮糸のシンカーループに先立って起毛され、又、比較例2の起毛経編布帛では、地糸のPET繊維の熱収縮によるパイル密度の緻密化効果も生じないことから、ニードルループ16との境目となるシンカーループ(11・12・13・14)の起点17の続くコース部分15では起毛パイル毛羽が少なく、実施例に比較して総厚みが厚いものの、パイル長の不揃いをシャーリングによってなくした起毛パイル面には、細かい木目乃至筋目のような横段が認められた。
[実施例と比較例3の評価]
地糸にPET繊維を使用しない比較例3の起毛経編布帛のセット率は、地糸にPTT繊維とPET繊維を混用した実施例1〜4の起毛経編布帛のセット率に比して悪い。
又、比較例3の起毛経編布帛では、PET繊維が混用されておらずPTT−PET複合無捲縮糸だけに成るベース編地は、PTT−PET複合無捲縮糸のPTT成分に起因して熱収縮したベース編地の熱収縮状態がセットされず、それが高い伸び率となって顕現し、PTT繊維の伸縮性に起因して若干脹らんでカールする傾向が認められた。
又、実施例1〜4のパイル糸は、PET捲縮糸とPTT−PET複合無捲縮糸とから成り、熱処理によってPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループが収縮し、PET捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループよりも膨出され、PTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループとPET捲縮糸のシンカーループのレベルが揃って均等に起毛されている。
これに対し、比較例3のパイル糸は、比較例1のパイル糸と同様にPET繊維が混用されておらず、PTT−PET複合捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループよりも膨出した状態になっていた。
このため、比較例3の起毛経編布帛では、PTT−PET複合捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループに先立って起毛され、PTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループはPTT−PET複合捲縮糸のシンカーループに比して起毛し難く、ニードルループ16との境目となるシンカーループ(11・12・13・14)の起点17の続くコース部分15では起毛パイル毛羽が少なくなり、又、地糸にPTT繊維が使用されているものの、その地糸のPTT繊維によるパイル密度の緻密化効果は生じていないので、比較例1と同様に、起毛パイル面の全面に細かい木目乃至筋目のようになった横段が認められる。
次の[表1]は、上記実施例と比較例のデータを示す。
Figure 2010070869
[総合評価]
比較例1では、地糸に混用されたPTT−PET複合無捲縮糸によってパイル密度が緻密化され、その緻密化されパイル密度が地糸に混用されたPET無捲縮糸によって固定されてベース編地がカールすることはないが、比較例1のパイル糸は、PET繊維が混用されておらず、PTT−PET複合捲縮糸のシンカーループは、PTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループよりも膨出状態にあり、その膨出したPTT−PET複合捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループに先立って起毛され、相対的にPTT−PET複合無捲縮糸が起毛され難くなるので、ニードルループ16との境目となるシンカーループ(11・12・13・14)の起点17の続くコース部分15では起毛パイル毛羽が少なくなり、起毛パイル面に横段が細かい木目乃至筋目のようになって目立ち易くなる。
比較例2では、地糸にPTT繊維が混用されておらず、従って、PTT繊維の熱収縮によってカールが問題になることがない反面パイル密度も緻密化されない。そして、比較例2には、パイル糸に伸縮性に富むPTT繊維が混用されていないので軟らかい感触の起毛パイル面は期待されない。加えて、比較例2のPET捲縮糸のシンカーループがPET無捲縮糸のシンカーループよりも膨出した状態になっており、その膨出しているPET捲縮糸のシンカーループがPET無捲縮糸のシンカーループに先立って起毛され、PET無捲縮糸のシンカーループが膨出しているPET捲縮糸のシンカーループに比して起毛され難く、而も、比較例2ではパイル密度の緻密化効果も生じないことから、ニードルループ16との境目となるシンカーループ(11・12・13・14)の起点17の続くコース部分15では起毛パイル毛羽が少なくなり、起毛パイル面に横段が細かい木目乃至筋目のようになって目立ち易くなる。
比較例3では、PTT繊維の伸縮性に起因して比較例3の起毛経編布帛が若干脹らんでカールする傾向が認められた。そして、比較例3のパイル糸は、比較例1のパイル糸と同様にPET繊維が混用されておらず、PTT−PET複合捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループよりも膨出した状態になっており、その膨出したPTT−PET複合捲縮糸のシンカーループがPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループに先立って起毛され、PTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループはPTT−PET複合捲縮糸のシンカーループに比して起毛し難くなるので、ニードルループ16との境目となるシンカーループ(11・12・13・14)の起点17の続くコース部分15では起毛パイル毛羽が少なくなり、又、地糸にPTT繊維が使用されているものの、その地糸のPTT繊維によるパイル密度の緻密化効果は生じていないので、比較例2と同様に起毛パイル面に横段が細かい木目乃至筋目のようになって目立ち易くなる。
比較例1〜3に対し、本発明実施例1〜4では、地糸に混用されたPTT−PET複合無捲縮糸の熱収縮によってパイル密度が緻密化され、その緻密化されたパイル密度が地糸に混用されたPET無捲縮糸によって固定されるので、ベース編地にカールの問題は生じない。そして、本発明実施例1〜4のパイル糸は、PET捲縮糸とPTT−PET複合無捲縮糸とから成り、そのPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループが熱処理前にPET捲縮糸のシンカーループよりも膨出していても、熱処理によってPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループが収縮し、ニードルループ16との境目となるシンカーループ(11・12・13・14)の起点17の続くコース部分15においてもPTT−PET複合無捲縮糸のシンカーループとPET捲縮糸のシンカーループのレベルが揃って均等に起毛され、そのニードルループ16との境目となるシンカーループ(11・12・13・14)の起点17の続くコース部分15において起毛パイル毛羽が少なくなることはなく、而も、地糸に混用されたPTT−PET複合無捲縮糸の熱収縮によってパイル密度が緻密化されるので、起毛パイル毛羽の粗密よる横段が起毛パイル面に細かい木目乃至筋目のように生じることはない。
このように、本発明によると、裁断口や周縁がカールせず縫製し易く、形状・寸法安定性に優れていると共に車両内装母材表面への張設時には皺を発生せず、パイル密度が緻密で横段のないベロア調起毛経編布帛を得ることが出来る。
本発明に係る起毛経編布帛のシンカーループ面の表面図である。
符号の説明
11:パイル糸のPET捲縮糸のシンカーループ
12:パイル糸のPTT無捲縮糸のシンカーループ
13:地糸のPET無捲縮糸のシンカーループ
14:地糸のPTT無捲縮糸のシンカーループ
15:コース
16:ニードルループ
17:シンカーループの起点
C :コース方向
W :ウェール方向

Claims (7)

  1. (イ) ベース編地を構成する地糸と、ベース編地のシンカーループ面に起毛パイルを形成するパイル糸によって編成され、パイル糸のシンカーループが起毛処理されて起毛パイルを形成しており、ウェール密度とコース密度との積で示されるパイル密度(M)が2000個/(25.4mm)2 以上であり、パイル密度(M)の2倍とパイル糸の総繊度(D)との積(2M×D)で示されるパイル/デシテックス換算密度(δ)が400000dtex/(25.4mm)2 以上である起毛経編布帛において、
    (ロ) 地糸とパイル糸が、それぞれポリエチレンテレフタレート繊維糸条とポリトリメチレンテレフタレート繊維糸条との二種類の糸条によって構成されており、
    (ハ) 総厚みが2mm以下であるベロア調起毛経編布帛。
  2. (ニ) 地糸が、ポリエチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条とポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条によって構成されており、
    (ホ) パイル糸が、ポリエチレンテレフタレート捲縮繊維糸条とポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条によって構成されている前掲請求項1に記載のベロア調起毛経編布帛。
  3. (ヘ) 地糸のポリエチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条とポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条の合計質量に占める合計地糸ポリエチレンテレフタレート成分比率が40〜70質量%であり、
    (ト) パイル糸のポリエチレンテレフタレート捲縮繊維糸条とポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条の合計質量に占める合計パイル糸ポリエチレンテレフタレート成分比率が40〜70質量%である前掲請求項2に記載のベロア調起毛経編布帛。
  4. (チ) 地糸のポリエチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条とポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条、および、パイル糸のポリエチレンテレフタレート捲縮繊維糸条とポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条が、それぞれ異なる筬によって編み込まれており、
    (リ) パイル糸のポリエチレンテレフタレート捲縮繊維糸条とポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条の編組織が同じであり、それらパイル糸のポリエチレンテレフタレート捲縮繊維糸条のシンカーループとポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条のシンカーループが引き揃えられている前掲請求項2と3の何れかに記載のベロア調起毛経編布帛。
  5. (ヌ) 地糸のポリエチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条のシンカーループの長さ(b)が、地糸のポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条のシンカーループの長さ(a)よりも長く、
    (ル) パイル糸のシンカーループの長さ(c)が、地糸のシンカーループの長さ(a・b)よりも長い前掲請求項4の記載のベロア調起毛経編布帛。
  6. 地糸のポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条のシンカーループが、地糸のポリエチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条のシンカーループとパイル糸のシンカーループの間に挟まれて介在している前掲請求項5に記載のベロア調起毛経編布帛。
  7. ポリトリメチレンテレフタレート無捲縮繊維糸条が、ポリトリメチレンテレフタレートを鞘成分とし、ポリエチレンテレフタレートを芯成分とする無捲縮芯鞘複合繊維マルチフイラメントであり、その芯成分の質量の占めるポリエチレンテレフタレート成分比率が15〜35質量%である前掲請求項1〜6の何れかに記載のベロア調起毛経編布帛。
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CN103015025A (zh) * 2011-09-20 2013-04-03 利巴机械制造有限公司 改变由经编机制造的针织物上的线圈尺寸的方法
WO2015045968A1 (ja) * 2013-09-27 2015-04-02 日産自動車株式会社 内装用布帛
CN105133171A (zh) * 2015-09-22 2015-12-09 旷达科技集团股份有限公司 经编短毛绒汽车面料
CN113338046A (zh) * 2020-02-18 2021-09-03 世联株式会社 合成皮革

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