JP4074333B2 - 表裏面異種繊維フリースの製造方法 - Google Patents
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Description
このフリースは、一般的には両面パイル編機で編成されており、編機のシンカーノーズの高低調整により表面および裏面に突出するポリエステル繊維のループパイルの長短調整を行ない、その後、ループパイルをシャーリングカットし、毛羽立ててフリースと呼ばれる起毛地にしている(例えば、特許文献1を参照。)。
しかしながら、上記特許文献1に開示されているフリースは、パイル糸が2〜2.5デニールと比較的太く、長さも5〜10mmと長いポリエステル糸条で、ループ密度も粗いことから、しなやかさに欠けると共に、毛羽が抜け落ちやすく風通しが良すぎて寒いという問題があった。特に、この従来のフリースは、洗濯すると毛羽が長いことから互いに絡みあってごわつき、手触り、風合い感が悪くなるといった問題点もあった。また、強度や伸度の大きいポリエステル素材のフリースは、着用中に他物と接触または摺接したり、洗濯時においては他物との接触摩擦を受けて繊維の毛羽が擦れたり揉まれたり、また毛羽同士が絡んだりしてピリングと呼ばれる毛玉が発生しやすい問題があった。一方、他の問題として、表裏面がポリエステル素材のフリースは、静電気の発生が問題とされている。静電気の発生は、主として二つの物体の接触分離等力学的運動に伴って本来電気的に中性状態である物体上で、正または負のどちらかが一方の極性電荷が他方よりも過剰となる現象である。この静電気は合成繊維と合成繊維、例えば、ポリエステル繊維とナイロン繊維などを着合わせると帯電量が大きくなり、日常経験する不快な「パチパチ感」の静電気が発生する。また、冬季の乾燥した条件のもとでは埃や塵が付着して汚れやすくなると言った問題点があった。本発明は、上記のような問題を解決することを課題として研究開発されたもので、天然のようなストレッチ性を出すことができ、しなやかさがあってソフトで肌触りの良いフリースを生成すること、およびピリングの発生抑制と、静電気の発生を少なくして塵や埃の付着を防止する高品位のフリースを生成することを目的とするものである。
また、上記のように構成した表裏面異種繊維フリースの製造方法において、前記起毛繊維群がマイクロデニールに近い極細のポリエステル又はアクリルフイラメント集束糸であることを特徴とする表裏面異種繊維フリースの製造方法、および前記短小起毛繊維群が1.0〜3.0mmの長さに剪毛されていることを特徴とする表裏面異種繊維フリースの製造方法を開発し、採用した。
本発明は、表面にハイゲージでループ密度を細かく編みこんだ極細のポリエステル繊維またはアクリル繊維をループパイルとし、そのループパイルの先端を毛割りしてカットパイルとし、起毛、剪毛、ピリング立て、剪毛の各工程を経て短小起毛繊維群にしたから、従来のフリースでは得られなかったしなやかさとソフトなストレッチ性があって、極めて手触り感の良いフリースが得られ、かつピリングを抑制できると共に、繰り返しの洗濯や長期間の着用をしても抗ピリング性が低下せず、いつまでも品質、外観が良好なフリースが得られる。
また、天然繊維の綿糸や絹糸を地糸として裏面としたので、合成繊維のように帯電量が多くならず、重ね着する時や脱ぐ時に生じる静電気の発生を有効に抑制でき、塵や埃の付着が少ないフリースが得られる。
本発明の表裏面異種繊維フリースの製造方法は、口径30インチ、20〜24の編ゲージのシンカーパイル機でパイル編成され、表面をループパイル1、裏面を地糸2とした編地であり、表面のループパイル1を引き揃えて先端部を毛割りしてカットパイル3とし、そのカットパイル3を毛羽立てて起毛繊維群4とすると共に、剪毛後、起毛繊維群に接触摩擦で毛羽、毛玉5を発生させ、再度剪毛を行って短小起毛繊維群4とするものである。
表面のループパイル1の繊維としては、ポリエステルまたはアクリルの糸条を用いる。裏面の地糸2としては、綿糸、絹糸など天然繊維糸条を使用することにより、帯電量が少なくなり静電気の発生を抑制するものである。
ループパイル1のポリエステルまたはアクリルの糸条は0.3〜1.5デニールの極細でマイクロデニールに近づけてあり、ポリエステルやアクリルの本来有する硬さに対して繊細さと柔らかさを出す。0.3デニール以下になると、しなやかすぎて生地自体の腰がなくなるので適さず、また、1.5デニール以上になると、風合いが硬くなりソフト感を損なうので適さない。したがって、前記の0.3〜1.5デニールの範囲が好適である。また、繊維長としては、風合いとソフト感を考慮して1.0mm〜3.0mmのものが好ましい。糸条は通常の丸断面糸のほかに、中空糸をはじめ抗菌性、耐UV性、遠赤外線加工などの機能性効果を付加したものを用いることができる。
また、地糸2としては、綿糸、絹糸を用いることができ、綿糸の場合は、30/1〜40/1番手を用いるのが生地の厚さや重さ(もちかかり)の適正化で良い。30/1番手以下になると、地厚で生地が重たくなるため適さず、また、40/1番手以上になると、生地が薄くなりすぎて腰がなくなり強度にも影響を及ぼすため適さない。したがって、綿糸の太さは、30/1〜40/1番手が好ましい。また、絹紡糸(カットファイバー)の場合は、100/2〜140/2が適し、フィラメントの場合は、約180デニール〜130デニールが適している。この範囲を超えると、前述の綿糸と同じ理由により適さない。
カットパイル3は、ループパイル1の先端部をロールスパイラルカッターなどで毛割りすることにより形成され、起毛繊維群4は、カットパイル3を起毛機にかけて毛羽立たせたものである。その起毛繊維群4は、垂直に整列するように刷毛加工および起毛繊維群4の先端部を接触摩擦して毛玉5を作るピリング立て加工が施され、その後、少なくとも1回の剪毛を丁寧に行って起毛繊維群4の毛羽を短小起毛繊維群4とすることでピリング発生を防いでいる。
シンカーパイル機(典洋針織機(株)製TYTD、口径30インチ、編ゲージ24)を使用し、表面をループパイル1としてポリエステル75d/144f、地糸2に綿糸40/1番手を用いて編地を編成した(図1A)。
編地の目付は160g/m2であり、ループパイル1の高さは3.0mmであった。ループパイル1を引き揃えてロールスパイラルカッターで先端を毛割り加工してカットパイル3の高さを2.8mmにした(図1B)。
カットパイル3を起毛機にかけて毛羽立てて起毛繊維群4とした(図1C)。
起毛繊維群4をロールスパイラルカッターで剪毛し高さを2.0mmにした(図1D)。
つぎに、起毛繊維群4を垂直に整列するように刷毛加工を施した(図1E)。
起毛繊維群4に接触摩擦を加えて先端部に毛羽、毛玉5を作るピリング立て加工を施した(図1F)。
その後、先端部をロールスパイラルカッターで剪毛して高さ1.5mmの短小起毛繊維群4のフリースを得た(図1G)。
(比較例1)
実施例1と同様の編機と口径で、編ゲージ22を使用し、表面のパイル糸としてポリエステル100d/144f、地糸をポリエステル75デニール、裏面のパイル糸としてポリエステル100d/144f、繊維長さ2.0mm、目付160g/m2のフリースを得た。
編地の目付は200g/m2であり、ループパイル1の高さは3.0mmであった。ループパイル1を引き揃えてロールスパイラルカッターで先端を毛割り加工しカットパイル3の高さを2.8mmにした(図1B)。
カットパイル3を起毛機にかけて毛羽立てて起毛繊維群4とした(図1C)。
起毛繊維群4をロールスパイラルカッターで剪毛し高さを2.2mmにした(図1D)。
つぎに、起毛繊維群4を垂直に整列するように刷毛加工を施した(図1E)。
起毛繊維群4に接触摩擦を加えて先端部に毛羽、毛玉5を作るピリング立て加工を施した(図1F)。
その後、先端部をロールスパイラルカッターで剪毛して高さ1.5mmの短小起毛繊維群4のフリースを得た(図1G)。
(比較例2)
実施例1と同様の編機と口径で、編ゲージ20を使用し、表面のパイル糸としてポリエステル100d/144f、地糸をポリエステル100デニール、裏面のパイル糸としてポリエステル100d/144f、繊維長さ2.5mm、目付200g/m2のフリースを得た。
編地の目付は280g/m2であり、ループパイル1の高さは3.5mmであった。ループパイル1を引き揃えてロールスパイラルカッターで先端を毛割り加工してカットパイル3の高さを3.2mmにした(図1B)。
カットパイル3を起毛機にかけて毛羽立てて起毛繊維群4とした(図1C)。
起毛繊維群4をロールスパイラルカッターで剪毛し高さを2.5mmにした(図1D)。
つぎに、起毛繊維群4を垂直に整列するように刷毛加工を施した(図1E)。
起毛繊維群4に接触摩擦を加えて先端部に毛羽、毛玉5を作るピリング立て加工を施した(図1F)。
その後、先端部をロールスパイラルカッターで剪毛して高さ2.0mmの短小起毛繊維群4のフリースを得た(図1G)。
(比較例3)
実施例3と同様の編機、口径および編ゲージを使用し、表面のパイル糸としてポリエステル150d/144f、地糸をポリエステル100デニール、裏面のパイル糸として100d/144f、繊維長さ3.0mm、目付280g/m2のフリースを得た。
以上のようにして得られた表裏面異種繊維フリースの評価結果を下記の表1に示す。なお、表1では実施例1〜3を実1〜3と略示し、比較例1〜3を比1〜3と略示した。
帯電圧(静電気)は、温度20℃、湿度40%の条件下で、試験布を摩擦機にかけて発生した静電気の電圧を測定した(JIS L1094−1997:摩擦帯電圧測定法)。
ピリング性は、試験布を、液温40℃の水で家庭用電気洗濯機を使用して洗濯し、吊り干しした後におけるピリングの発生状況を級分けした(JIS L0217 103法 吊り干し)。
縮率は、試験布を、液温40℃の水で家庭用電気洗濯機を使用して洗濯し、タンブル乾燥後における縮率を測定した(JIS L0217 103法 タンブル)。
毛羽付着は、QTEC(財団法人 日本繊維製品品質技術センター:Japan Textile Products Quality and Technology Center)セロテープ(登録商標)法に基づいて、毛羽付着の程度を級分けした。
ソフト感、暖かさ、及び、吸汗・吸湿は、触感による官能検査による3段階評価で行った。
上記の表1における評価結果の説明をする。
ピリング性の5級はピリングの発生が殆どなく極めて良好。4級はピリングの発生がわずかにあるが良好。3級はピリングの発生が少々あるもの。2級はピリングの発生が多くやや不良。1級はピリングの発生が著しく多く不良。なお、3級以上を合格とする。
毛羽付着の5級は毛羽の付着が殆どなく極めて良好。4級は毛羽の付着がわずかにあるが良好。3級は毛羽の付着が少々あるもの。2級は毛羽の付着が多くやや不良。1級は毛羽の付着が著しく多く不良。なお、3級以上を合格とする。
ソフト感の○はソフトで手触りが非常に良い。△は手触り感が良い。
暖かさの○は非常に暖かい。
吸汗・吸湿の○は優れている。△はやや劣る。×は劣る。
以上の結果で明らかなように、本発明に係る表裏面異種繊維フリースの製造方法によって、従来のフリースに比べて、しなやかさがあってソフトで肌触りの良いフリースが得られると共に、帯電圧が少なくなり静電気の発生を抑制できる。また、ピリング性においても、本発明によって製造されたフリースは4〜5級と優れているが、従来のフリースは3級以下の不良品となり両者において格段の相違が認められた。
以上、本発明の主要な実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に限らず、本発明の目的を達成でき、かつ本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
Claims (3)
- 極細のポリエステル繊維またはアクリル繊維を、ハイゲージでループ密度を細かく編み込んで表面をループパイルとすると共に、綿、絹などの天然繊維を裏面の地糸として編成する工程と、
この編成工程で生成されたループパイルの先端部を毛割りしてカットパイルとする工程と、
カットパイルを毛羽立てて起毛繊維群とする工程と、
起毛繊維群を剪毛する工程と、
剪毛された起毛繊維群を接触摩擦によりピリングを生じさせる工程と、
その起毛繊維群を少なくとも1回剪毛して短小起毛繊維群にする工程とを含む
ことを特徴とする表裏面異種繊維フリースの製造方法。 - 前記起毛繊維群がマイクロデニールに近い極細のポリエステル又はアクリルフイラメント集束糸である
ことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の表裏面異種繊維フリースの製造方法。 - 前記短小起毛繊維群が1.0〜3.0mmの長さに剪毛されている
ことを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の表裏面異種繊維フリースの製造方法。
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