明 細 書
空気入りタイヤ
技術分野
[0001] この発明は空気入りタイヤ、なかでも乗用車用タイヤに関するものであり、とくには、 トレッド踏面の周方向に直線状、ジグザグ状、クランク状等に連続して延びる周溝に よって発生される気柱共鳴音を、共鳴器の作用下で有効に低減させる技術を提案す るものである。
背景技術
[0002] 気柱共鳴音とは、トレッド踏面の周方向に連続して延びる周溝と、トレッド踏面接地 域内の路面とによって囲繞される管内の空気の共鳴によって発生される騒音であり、 この気柱共鳴音の周波数は、一般的な乗用車では 800〜1200Hz程度に観測され ることが多ぐピークの音圧レベルが高ぐ周波数帯域が広いことから、タイヤの発生 騒音の大きな部分を占めることになる。
[0003] また、人間の聴覚は、上記の周波数帯域でとくに敏感であるので、フィーリング面で の静粛性を向上させる上においても、気柱共鳴音の低減は有効である。
[0004] そこで、気柱共鳴音の低減を目的として、周溝の容積を減じることが広く行われて いる他、特許文献 1に開示されているように、一端だけが周溝に開口し、他端が陸部 内で終了する長い横溝を設けて、その横溝内での反共振を用いて気柱共鳴音を低 減させることが提案されており、また、特許文献 2〜4に記載されているように、ヘルム ホルツ共鳴器によって、気柱共鳴音の共鳴周波数付近のエネルギーを吸収する技 術も提案されている。
特許文献 1:国際公開 04Z103737号パンフレット
特許文献 2:特開平 5— 338411号公報
特許文献 3:特開 2000— 118207号公報
特許文献 4:特開 2001 - 191734号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] し力るに、周溝の溝容積を減少させる従来技術では、排水性能の低下が余儀なくさ れることになり、また、長い横溝の配設を必須とする、特許文献 1に記載された発明に よれば、トレッドパターンの設計上の自由度、適切な陸部剛性の確保等についての 難点がある、という問題があった。
[0006] この一方で、特許文献 2〜4のそれぞれに記載された発明はいずれも、タイヤ陸部 の路面衝突音の低減、陸部の耐摩耗性、耐石嚙み性等の性能全般や、タイヤの量 産可能性等を十分に考慮した上で、ヘルムホルツタイプの共鳴器の、トレッドへの具 体的かつ効果的な配設方法を開示しているとはいい難ぐ未だ実用化には到ってい ない状況にある。
[0007] この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題としてなされ たものであり、それの目的とするところは、周溝容積の低減に起因する、排水性能の 低下をもたらすことなぐタイヤのトータル性能および量産性等を十分に確保し、併せ て、トレッドパターンの設計上の高い自由度および所期した通りの陸部剛性を実現し てなお、周溝によって発生される気柱共鳴騒音を効果的に低減できる空気入りタイヤ を提供するにある。
課題を解決するための手段
[0008] この発明に係る空気入りタイヤは、トレッド踏面に、周方向に直線状、ジグザグ状等 の延在形態で連続して環状に延びる周溝を設けるとともに、その周溝、より直接的に はそれの溝壁に開口して、リブ、ブロック等の陸部内で終了する共鳴器を設け、この 共鳴器を、陸部表面に開口する気室と、気室と周溝との連通をもたらす、狭小通路と しての狭窄ネックとで構成し、そして、適用リムに装着したタイヤに規定の空気圧を充 填し、そのタイヤに、規定の質量の 80%に対応する負荷を作用させたタイヤ姿勢の 下で、接地面内に、共鳴周波数の異なる複数個の共鳴器が常に完全に含まれるよう に、それぞれの共鳴器を配置してなるものである。
[0009] ここで、「適用リム」とは、タイヤのサイズに応じて下記の規格に規定されたリムを、「 規定の空気圧」とは、下記の規格において、最大負荷能力に対応して規定される空 気圧をいい、最大負荷能力とは、下記の規格で、タイヤに負荷することが許容される 最大の質量をいう。また「規定の質量」とは、上記の最大負荷能力をいう。
なお、ここでいう空気は、窒素ガス等の不活性ガスその他に置換することも可能で ある。
[0010] そして規格とは、タイヤが生産または使用される地域に有効な産業規格によって決 められたものであり、たとえば、アメリカ合衆国では、 "THE TIRE AND RIM ASSOCIA TION INC.の YEAR BOOK"であり、欧州では、 "THE European Tyre and Rim Tech nical Organisation"の" STANDARDS MANUAじ,であり、日本では日本自動車タイヤ 協会の" JATMA YEAR BOOK"である。
[0011] なおここでいう「共鳴周波数」は、狭窄ネックの半径を!:、長さを 1、ネック断面積を S
0
とし、また、気室容積を V、音速を cとしたとき、
なお、上記式中の管端補正は、実験によって求められることが多ぐその値は文献 ごとに異なる力 ここでは 1. 3rを用いるものとする。
[0012] 力かるタイヤにおいてより好ましくは、接地面内に常に含まれる複数個の共鳴器の 、共鳴周波数の最大値と最小値の差を、 200〜800Hz、とりわけ、 300〜600Hzの 範囲とする。
[0013] また好ましくは、接地面内に常に含まれる共鳴器の数を、周溝一本当り三個以上、 なかでも四個以上、とくには六個以上とする。
[0014] ここで、ピッチバリエーションを付与したトレッドパターンにおける共鳴器の共鳴周波 数の調整は、ピッチ長さの長短に応じて、共鳴器の気室の周方向寸法を変化させる ことによって行うことが好ましい。
[0015] また、ピッチバリエーションを付与したトレッドパターンを有するトレッド踏面では、周 上の少なくとも一つのピッチ内に、共鳴周波数の平均値が 700〜1800Hzの範囲内 の値となる共鳴器を配設することが好まし 、。
なおここで、「共鳴周波数の平均値」とは、ある一本の周溝に、全周にわたって開口
する全ての共鳴器にっ 、ての共鳴周波数の平均値を 、うものとする。
[0016] そしてまた好ましくは、周上の少なくとも一つのピッチ内に、共鳴周波数が 609〜2
153Hzの範囲内の一個以上の共鳴器を配設する。
[0017] なお、共鳴器の、上述したような共鳴周波数の調整は、
[数 2]
の計算式中の、ネック断面積 Sに影響を及ぼす、狭窄ネックそれ自身の幅、深さの他 、狭窄ネックの長さ 1
0を変化させることによって行うことができるとともに、気室容積 Vに 影響を及ぼす、気室の幅、深さおよび長さを変化させることによつても行うことができ、 また、この気室容積 Vに関しては、気室の陸部開口面積または、気室側壁の傾き角 度をパラメータとして周波数調整を行うこともできる。
[0018] ここで、共鳴器の狭窄ネックはサイプによって形成することもできる。なおこの場合 は、上記共鳴周波数 f の式中の、ネック半径 rは、ネック断面積 Sとしてのサイプ断面
0
積から半径 rを逆算することによって求めることができる。
[0019] またここで、気室の、陸部表面への開口形状は、角形輪郭形状とする他、曲線輪郭 形状とすることもでき、このような気室は、それの深さ方向の全体にわたって、開口面 積と同一の横断面積を有するものとすることができる他、深さ方向に向けて、横断面 積が漸増もしくは漸減するものとすることもできる。
[0020] ところで、このような気室の底壁は、平坦面とすることの他、開口側に向けて凸もしく は凹となる面とすることもできる力 より好ましくは、底壁に、 1. 6mm以上の高さの凹 凸を設けてなるものとする。
[0021] 以上に述べたいずれのタイヤにおいても、狭窄ネックの深さを、気室の狭さ深さと同 等もしくは、それより浅くすること、狭窄ネックの、トレッド幅方向に対する延在角度を、 10° 〜60° の範囲、とくには 20° 〜40° の範囲とすること、気室の、陸部表面開 口輪郭線のアスペクトレシオを 2〜20の範囲、なかでも 10以下とすることが好ましぐ 気室の、陸部表面への開口面積を、トレッド中央部からトレッド幅方向の外側に向か
うにつれて次第に減少させること、気室の、陸部表面への開口面積を、気室の底壁 面積より大きくすること、狭窄ネックの幅を、それの底部に向けて次第に狭めることが 好ましい。
[0022] また好ましくは、共鳴器を、陸部表面に開口する一個の気室と、同一の周溝の溝壁 に別個に開口して、その気室を周溝に連通させる二本以上の狭窄ネックとで構成す る。
なおこの場合の、二本以上の狭窄ネックは、延在途中で二本以上に分岐させること によって構成することができる他、交差も分岐もさせることなぐ相互に完全に独立さ せて構成することもできる。
[0023] ところで、一個の気室に対して、独立した複数本、たとえば二本の狭窄ネックを配設 した場合の共鳴周波数は、
01 1 1
狭窄ネック 2 :1 、r、S
02 2 2
として表わすことができ、狭窄ネックの断面積はその合計 (断面積の総和)が、また長 さは、それらの平均値が共鳴周波数に影響を及ぼすことになる。
ここで、狭窄ネックが三本以上の場合は、ルート内の(1 + 1. 3r)および Sがそれら
0
の本数に応じて加算され、分子の係数がそれらの本数分を表示した式に変更される ことになる。
[0024] なお、狭窄ネックが、延在途中で複数本に分岐されるものである場合の共鳴周波数 は、その分岐個所までは、複数本の狭窄ネックが一括りにされているとして扱うことで 、上記の式をもって算出することができる。
[0025] そしてまた、上述した 、ずれの空気入りタイヤにお!、ても、気室の、陸部表面への 開口面積を、 25〜300mm2、な力でも 72〜180mm2、そしてとくには、 100〜150m m2範囲とすることが好ましぐ狭窄ネックの平面最大幅を、気室の平面最大幅の 3〜
50%、なかでも 3〜20%、とくには 3〜15%の範囲とすることが好ましい。
発明の効果
[0026] この発明に係る空気入りタイヤでは、周溝に、気室と、狭小通路としての狭窄ネック とからなるヘルムホルツタイプの共鳴器を開口させて設け、この共鳴器の共鳴周波数 を、周溝のそれに合わせることにより、周溝の一次共鳴エネルギーを、共鳴器の狭窄 ネック内での空気の振動によって吸収することができるので、周溝内の気柱共鳴音は 、その周溝の溝容積を減少させることなしに有効に低減されることになる。
[0027] ところで、このタイヤでは、共鳴器の気室を、陸部表面に開口させて形成して 、るの で、生タイヤに対する加硫成形を、金型部分の、その気室相当部分への入り込みを もって行う場合でも、製品タイヤの気室力 のその金型部分の抜き出しを、気室の横 断面積が、それの深さ方向で幾分変化すると否とにかかわらず、常に円滑かつ確実 なものとすることができ、この結果として、タイヤの製造を、共鳴器を有しない従来の 一般的なタイヤと同様にして容易に行うことができる。
[0028] なお、陸部表面に開口するこのような気室も、トレッド踏面の接地面内では、路面に よる開口の閉止下で、密閉空間を画成することになるので、その気室に、共鳴室とし ての機能を十分に発揮させることができる。
[0029] またここでは、タイヤに、最も使用頻度の高い、規定質量の 80%に対応する負荷を 作用させたタイヤ姿勢の下で、接地面内に、共鳴周波数の異なる複数個の共鳴器が 常に完全に含まれるように共鳴器を配置することにより、タイヤの回転位置のいかん にかかわらず、共鳴周波数の異なるそれぞれの共鳴器をもって、広い周波数帯域の 周溝気柱共鳴騒音を同時に、効果的に低減させることができる。
[0030] 力べして、この空気入りタイヤでは、周溝容積の低減による排水性能の低下をもたら すことなぐまた、製品タイヤの型抜け性、いいかえれば、タイヤの量産性を損なうこと なぐ気室、ひいては、共鳴器にそれ本来の機能を効果的に発揮させることができ、 併せてここでは、陸部の適切な配置による操縦性の向上、二次元デザイン時点での 、耐摩耗性、陸部の路面衝突騒音等を考慮した共鳴器設計が可能になる。
[0031] 力かるタイヤにおいて、接地面内に常に含まれる複数個の共鳴器の、共鳴周波数 の最大値と最小値の差を、 200〜800Hz、好適には 300〜600Hzの範囲内としたと
きは、広い周波数帯域にわたって、気柱共鳴騒音をより効果的に低減させることがで きる。
すなわち、その差が 200Hz未満では、共鳴周波数が同一の共鳴器の複数個が接 地面内に含まれる場合に比して、騒音低減効果のそれほどの増加は見込めず、一 方、複数の共鳴器の共鳴周波数を、 800Hzを越えるほどに分散させたときは、周溝 の気柱共鳴騒音の周波数帯域力 外れることになるため、同様に、高い騒音低減効 果を期し難くなる。
[0032] またここで、接地面内に、常に同時に含まれる、共鳴周波数の異なる共鳴器の数を 、周溝一本あたり三個以上、好ましくは四個以上、より好ましくは六個以上としたとき は、各個の共鳴器それ自体は小型になるも、結果として、より大きな騒音低減効果が 得られる。
これは、周溝内で音圧振幅が最大となる、タイヤ中心軸の直下付近に共鳴器を配 置している時間が長くなることによるものと考えられる。
[0033] この一方で、接地面内に含まれる共鳴器の数が二個では、それが一個の場合に比 して、さほどの効果をもたらし得ない。
[0034] そしてまた、ピッチバリエーションの付与に伴うピッチ長さの長短に応じて、共鳴器 の気室の寸法を変化させる場合は、ピッチノリエーシヨンの付与に際し、気室の周方 向長さを、ピッチ長さに応じて伸縮させることで対処することができるので、共鳴器の 配置設計が容易になる。
また、ピッチ長さに応じて共鳴器の共鳴周波数を変化させることができ、結果として 、より広い周波数帯域に対して共鳴器を作用させることが可能となる。
[0035] さらに、周上の少なくとも一のピッチ内に、共鳴周波数の平均値が 700〜 1800Hz 、とりわけ 700〜1400Hzの範囲内の値となる共鳴器を配設したときは、それが接地 面内に完全に入り込んだ状態で、ドライバーに不快な騒音として認識されることの多 い、 1Z3オクターブバンドで 800〜1250Hzの帯域の周溝気柱共鳴音に有効に対 処させることができ、また、それを、高周波ノイズと称される、 1000〜2000Hzの高音 域の騒音に対する不快感の低減に有利に寄与させることができる。
[0036] そしてまた、周上の少なくとも一つのピッチ内に、共鳴周波数力 ½09〜2153Ηζと
なる一個以上の共鳴器を配設したときは、気柱共鳴音の低減に有意な効果を持つと 分かった。
[0037] ところで、共鳴器の狭窄ネックは、それを、陸部の表面に露出しないトンネル状に形 成することは可能であるが、陸部表面に開口するサイプによって形成するときは、サ イブは、それの所要の長さ、深さ、延在態様等のいかんにかかわらず、加硫金型その 他によって、所期した通りに簡単かつ容易に成形することができるので、共鳴器、ひ いては、タイヤの製造を一層容易にすることができる。
[0038] また、サイプは、それの深さを十分にとることで、トレッド陸部の摩耗が進行しても、 狭窄ネックの消滅を有効に防止して、共鳴器に、その機能を長期間にわたって十分 に発揮させることができる。
[0039] なおこの場合、サイプを、底部に拡大空間部を有する、いわゆるフラスコサイプとす ることもでき、これによれば、拡大空間部の作用下で、狭窄ネックの不測の閉塞のお それを有効に取り除くことができる。
[0040] ここで、気室の、陸部表面への開口形状は、それを、形成が容易な多角形輪郭形 状としたときは、その多角形のいずれの辺も、タイヤ接地面の、踏込み縁および蹴出 し縁に沿って存在しない姿勢として気室を配設することで、気室開口縁が、路面に衝 突することによるピッチノイズの発生を抑制することができる。また、気室の開口形状 を多角形輪郭形状としたときは、気室容積の設定が容易になることにより、より効果的 に作用する共鳴器の設計が容易になる。
[0041] この一方で、その開口形状を、円形、楕円形等の曲線輪郭形状としたときは、気室 を所要に応じた配設姿勢としてなお、ピッチノイズの発生を有利に抑制し、また、開口 縁部分への偏摩耗の発生を抑制することができる。
[0042] そしてさらに、気室の底壁に、 1. 6mm以上の凹凸を設けた場合には、気室への石 嚙みを有利に防止することができ、このことは、 3. Omm以上の凹凸を設けた場合に より効果的である。
[0043] 力かる空気入りタイヤにおいて、狭窄ネックの深さを、気室の深さと同等としたときは 、狭窄ネックの摩滅とほぼ同時期に気室もまた摩滅することになるので、それらのい ずれか一方だけがいつまでも残存する場合に比し、陸部の剛性段差を取り除いて、
偏摩耗の発生を有利に抑制することができる。
この一方で、狭窄ネックの深さを気室のそれより浅くしたときは、トレッド接地面の摩 耗に伴う気室容積の減少等によって、共鳴器の共鳴周波数が、周溝内の気柱共鳴 音の低減に寄与し得ないほどに変化する場合に、狭窄ネックの摩滅をもって、共鳴 器にその機能を停止させることができる。
[0044] また、狭窄ネックのトレッド幅方向に対する延在角度を 10° 〜60° 、なかでも、 20
° 〜40° の範囲としてときは、その狭窄ネックが陸部表面に開口するものである場 合に、偏摩耗の発生および、狭窄ネックの縁部が路面に衝突することに起因するピッ チの発生をともに有効に防止することができる。
いいかえれば、その延在角度が 10° 未満では、狭窄ネックによって比較的大きな ピッチノイズが生じるおそれが有り、一方、 60° を越えると、陸部の、狭窄ネックと周 溝との間の鋭角隅部に、偏摩耗の発生のおそれが高くなる。
[0045] そしてまた、気室の、陸部表面開口輪郭線のアスペクトレシオを 2〜20の範囲、より 好適には 10以下の範囲として場合には、ピッチノイズや偏摩耗の発生を抑制しつつ
、気室にそれ本来の機能を十分に発揮させることができる。
すなわち、アスペクトレシオが 2未満では、気室が、局所的なボイドの如くに作用し て、ピッチノイズや偏摩耗を悪化させるおそれがある一方、それが 20を超えると、共 鳴器に、所要の周波数の共鳴を生じさせることが難しくなる。
[0046] ところで、気室の、陸部表面への開口面積を、トレッド中央部からトレッド幅方向の 外側に向かうにつれて次第に減少させたときは、偏摩耗の発生し易いトレッド接地面 の側部域から、ボイドの如くに振るまって偏摩耗の発生の核となり易 、気室の占有面 積を有効に低減させることができる。
[0047] ここで、気室の、陸部表面への開口面積を、気室の底壁面積より大きくした場合に は、その気室への石嚙みが生じても、気室力もの石の抜け出しを十分円滑に行なわ せることができ、また、生タイヤに対する加硫成形に当ってのその気室の形成を一層 容易にすることができる。
[0048] そして、狭窄ネックの幅を、それの底部に向けて次第に狭めた場合は、気室の摩耗 に伴う気室容積の減少に対応させてネック断面積を減少させることで、共鳴周波数を
所期した通りに維持することができる。
[0049] さらに、共鳴器を、陸部表面に開口する一個の気室と、同一の周溝の溝壁に別個 に開口してその気室を周溝に連通させる二本以上の狭窄ネックとで構成したときは、 すぐれた減音効果を確保しつつ、たとえば、一方の狭窄ネックを経て気室内へ侵入 した水を、他方の狭窄ネックを経て周溝内へ排水させること等によって排水性を改善 することができ、さらには、陸部剛性の調整や意匠の点で、トレッドパターンの設計の 自由度を高めることができる。
[0050] なおこの場合、複数本の狭窄ネックのそれぞれを、相互に完全に独立させて形成し たときは、とくに優れた排水性能を確保することができ、この一方で、複数本の狭窄ネ ックを、一本もしくは複数本の狭小ネックの延在途中で分岐させて形成したときは、ト レッド陸部剛性の調整が容易となる他、偏摩耗性その他の性能を向上させることがで きる。
[0051] またここで、気室の、陸部表面への開口面積を 25〜300mm2、より好ましくは、 72 〜180mm2、さらに好ましくは、 100〜150mm2の範囲としたときは、気室にそれ本 来の機能を有効に発揮させてなお、気室開口縁の、路面衝突騒音、すなわち、ピッ チノイズの増力 []、気室開口縁それ自体の偏摩耗を有効に抑制することができる。
[0052] すなわち、開口面積が 25mm2未満では、気室に共鳴室としての機能を十分に発 揮させるためには、細く長い狭窄ネックを設けることが必要になるところ、そのネックが 閉じるおそれが高くなるため、共鳴器に所期した騒音低減効果を常に確実に発揮さ せることが困難〖こなる。一方 300mm2を超えると、陸部剛性の低下による操縦性の悪 化の他、開口縁の長さが長くなる事に起因する、ピッチノイズの増大、早期の偏摩耗 の発生が否めなくなる。
[0053] 以上のようなタイヤにおいて、トレッドパターンの展開平面視で、狭窄ネックの平面 最大幅を、気室の平面最大幅の 3〜50%、より好ましくは 3〜20%、さらに好ましくは 3〜15%の範囲とした場合は、狭窄ネックと気室とに、所期した通りの機能を十分に 発揮させることができる。
つまり、狭窄ネックの最大幅が 3%未満では、そのネックが閉塞されることで、所要 の騒音低減効果を、常に確実に実現することが難しぐ一方、それが 50%を越えると
、そのネック内の空気体積が大きくなくなりすぎて、共鳴周波数でのその空気の、十 分な振動振幅をもたらすことが難しくなり、結果として、騒音低減効果が小さくなる。 図面の簡単な説明
圆 1]この発明の一の実施形態を接地面について模式的に示す図である。
圆 2]図 1の変形例を模式的に示す図である。
[図 3]ヘルムホルツタイプの共鳴器を模式的に示す図である。
[図 4]接地面内での共鳴器の配置態様を例示する図である。
圆 5]共鳴器の形成態様を例示する要部斜視図である。
[図 6]図 5 (a)の VI— VI線に沿う気室底壁の拡大断面図である。
[図 7]共鳴器の平面形態および配置態様を示す図である。
[図 8]実施例 2の結果を示す図である。
[図 9]実施例 3の結果を示す図である。
[図 10]実施例 4の結果を示す図である。
[図 11]実施例 6の結果を示す図である。
[図 12]実施例 7の結果を示す図である。
圆 13]共鳴器の変形例を示す断面図および平面図である。
圆 14]他の実施形態を接地面で示す模式図である。
[図 15]加硫金型の、共鳴器の成形部を例示する斜視図である。
[図 16]図 14に示す共鳴器をヘルムホルツタイプの共鳴器に摸して示す斜視図であ る。
圆 17]共鳴器の形成態様を例示する要部斜視図である。
[図 18]共鳴器の各寸法を示す図である。
[図 19]共鳴器の他の形態を例示する図である。
圆 20]共鳴器の配置態様を例示する図である。
[図 21]共鳴器の他の配置態様を例示する図である。
[図 22]実施例 9の結果を示すグラフである。
[図 23]実施例 12の結果を示すグラフである。
[図 24]実施例 13の結果を示すグラフである。
[図 25]実施例 14の結果を示すグラフである。
[図 26]実施例 18の結果を示す図である。
[図 27]実施例 19の結果を示す図である。
[図 28]実施例 20の結果を示す図である。
[図 29]実施例 21の結果を示す図である。
[図 30]実施例 23の結果を示す図である。
[図 31]他の実施態様の共鳴器を例示する展開拡大平面図である。
[図 32]実施例 28の結果を示す図である。
[図 33]実施例 29の結果を示す図である。
[図 34]実施例 30の結果を示す図である。
[図 35]実施例 30の結果を示す図である。
[図 36]実施例 31での結果を示す図である。
[図 37]実施例 31での結果を示す図である。
[図 38]実施例 34での共鳴器の配置態様を示す図である。
符号の説明
1 トレッド踏面
2 接地面
3 周溝
4 陸部
4a ブロック
5, 5a, 5b, 5c, 15 共鳴器
6, 16 気室
6d 突部
7, 17a, 17b 狭窄ネック
δ 凹凸差
Θ 延在角度
CL 平面中心線
w , w 平面琅大幅
1 , 1 平面長さ
0 1
発明を実施するための最良の形態
[0056] 図 1は、この発明の実施の形態を模式的に示す図であり、図中 1はトレッド踏面、な かでも、適用リムに装着したタイヤに規定の空気圧を充填し、そのタイヤに、規定の 質量の 80%に対応する負荷を作用させた状態で路面に接地する接地面 2を示し、 3 は、その接地面 2の中央部を通って、周方向へ、たとえば直線状に連続して延びて、 全体として円環形状をなす周溝を示す。
[0057] ここでは、このようにして形成される周溝 3に一端で開口して他端が陸部 4内で終了 する共鳴器 5を設け、この共鳴器 5を、それの他端側にあって、陸部 4の表面に開口 する、所要の容積の気室 6と、この気室 6と周溝 3との連通をもたらす、陸部 4内への 埋め込みを可とする、狭小通路としての狭窄ネック 7とで構成するとともに、接地面 2 内に、常に同時に、かつ完全に含まれる複数個、図では二個の共鳴器 5の共鳴周波 数を相互に相違させる。
[0058] なお、ここにおいては、接地面内に、常に同時に含まれることとなる複数個の共鳴 器が二種類以上の共鳴周波数を有していればよぐ従って、接地面 2内に、たとえば 一本の周溝 3にっき三個以上の共鳴器 5が含まれる場合であっても、共鳴周波数の 種類は二種類以上とすることができ、また、複数本の周溝 3のそれぞれに共鳴器 5を 設ける場合には、図 2に例示するように、各個の周溝 3に設けた共鳴器 5の相互間で 、共鳴周波数を二種類以上、図では三種類に相違させることを可とする。
[0059] ここで、気室 6の、陸部表面への開口面積は、たとえば 25〜300mm2の範囲、とく に好ましくは、 100〜150mm2の範囲とすることができ、この気室 6の、陸部表面と平 行な断面内での横断面積および輪郭形状は、その気室 6の底壁側に向けて、陸部 開口のそれらと同一にできることはもちろん、加硫成形を終えたタイヤの気室 6からの 、金型部分の抜き出しが拘束されることのない程度に漸増させることもでき、逆に、漸 次減少、させることちできる。
[0060] このように構成することができる共鳴器 5は、気室 6の陸部開口および狭窄ネック 7 がともに、路面によって密閉された状態の下では、図 3に模式的に示すようなヘルム ホルツタイプの共鳴器を形成することになり、その共鳴器 5の共鳴周波数 f は、前述
したように、狭窄ネック 7の半径を!:、長さを 1、ネック断面積を Sとするとともに、気室容
0
積を V、音速を cとしたとき、
画
として表わすことができるので、この共鳴周波数 f は、周溝 3の気柱共鳴周波数との
0
関連の下で、ネック半径 r、ネック長さ 1、ネック断面積 Sおよび気室容積 Vを、先に述
0
ベたようにして直接的もしくは間接的に選択することによって、所要に応じて適宜に 調整することができる。
[0061] ところで、このような共鳴周波数 f に関し、その平均値が、 700〜1800Hzの範囲、
0
なかでも、 700〜1400Hzの範囲内の共鳴器 5を、ピッチバリエーションを付与したト レッドパターンを有するトレッド踏面で、周上の少なくとも一つのピッチ内に配設するこ とが好ましい。
[0062] そしてまた、接地面 2内に、常に同時に含まれることになる複数個の共鳴器 5のそれ ぞれの共鳴周波数 f は、それらの最大値と最小値の差を 200〜800Hzの範囲とする
0
ことが、騒音低減効果をより実効あるものとする上で好ましぐこのことは、それぞれの 共鳴器 5の共鳴周波数 f の平均値を、 700〜1800Hzの範囲内に特定した場合に
0
一層効果的である。
[0063] ここにおいて、共鳴器 5の配置は、図 4に例示するように、接地面内に、常に同時に 含まれる共鳴器の数が、周溝一本当り三個以上となるように行うことがより好ましぐこ の場合、一本の周溝 3に開口するそれぞれの共鳴器はともに、同一の共鳴周波数 f
0 を有するものとすることもできるが、図示のように、共鳴周波数 f
0が相互に異なる共鳴 器 5a、 5b、 5cとすることがより好適である。
[0064] なおここで、周溝 3に開口する共鳴器の共鳴周波数 f をこのように相違させる場合
0
は、ピッチバリエーションの付与に伴うピッチ長さの長短に応じて、共鳴器の気室 6の 周方向寸法、ひいては気室容積を変化させることが、共鳴器の配置設計を容易にす る上で有利である。
[0065] ところで、図 1、 2および 4に示すところでは、気室 6の、陸部表面への開口形状を円 形輪郭形状としているも、この開口形状は、楕円形その他の曲線輪郭形状とすること もでき、また、四角形その他の多角形輪郭形状とすることもできる。
[0066] このような共鳴器 5において、狭窄ネック 7は、図 5 (a)に要部斜視図で例示するよう に、陸部 4、ここではブロック 4a内に埋め込み配置したトンネル状のものとすることが できる他、図 5 (b)に示すように、ブロック 4aの表面に開口したものとすることもできる。 ここで、後者のような開口ネック 7を、たとえば、加硫金型のブレードその他の押し込 み等によって形成するときは、気室 6に加えて、狭窄ネック 7をもまた簡易に形成する ことができる。
そしてこの場合は、狭窄ネック 7をサイプによっても形成することができる。 このとき、サイプの形状を、図 5 (c)に例示するように、底部に拡大空間部を有する、 いわゆるフラスコ状とし、たとえば、拡大空間部以外の部分は、接地面内でサイプ壁 が相互に接触する程度の狭幅部とすることにより、狭窄ネック 7の各種の寸法を、図 5
(a)に示す場合と同様に常に一定のものとすることができる。
[0067] なお、図 5に示すところでは、気室 6のブロック表面への開口形状を、曲線のみから なる異形輪郭形状としているも、この形状は、円形、角形等を含む所要の輪郭形状 に適宜変更できることはもちろんである。
[0068] 以上に述べたところにぉ 、て、気室 6の底壁は、平坦面とすることの他、それの開口 側に向けて凸もしくは凹となる面等とすることもできるが、より好ましくは、図 6に、図 5 ( a)の VI— VI線に沿う断面を拡大して示すように、その底壁に、上方に向けて凸とな る突部 6aを一個以上設け、この結果として生じる凹凸差 δを 1. 6mm以上、一層好 ましくは 3. Omm以上とする。
なおこの場合の突部 6aは、気室側壁に突出形成されて、底壁からは独立するもの
、いいかえれば、底壁からは分離されたものとすることもできる。
実施例 1
[0069] サイズが 195Z65R15のタイヤを、 6JJのリムに装着し、空気圧を 210kPaとした状 態で、室内ドラム試験機により、 4. 47kNの荷重の作用下で 80kmZhの速度で負荷 転動させ、このときのタイヤの側方音を JASO C606に定める条件に従って測定し、
1Z3オクターブバンドで、中心周波数 800Hz、 lOOOHzおよび 1250Hzの帯域の パーシャルオーバオール値を求めた。
[0070] この場合、効果有りと判断するのは、実車試験によるドライバーのフィーリング評価 で改善効果が見込める 2dB以上の音圧低下とした。
[0071] なお共鳴器の共鳴周波数 f は、前述したように、
0
ここで、音速 cは 343. 7mZsを用いた。
[0072] 接地面内に、溝幅および溝深さがともに 8mmの四本の直線状周溝を延在させてな る従来タイヤと、
接地面内に延在する、溝幅および溝深さがともに 8mmの四本の直線状周溝のそ れぞれにっき、図 7 (a)に示すように、気室が陸部表面に四角形に開口する平面形 態を有する共鳴器を、図 7 (b)に示す態様にて、 33. 4mmのピッチで周上に 60個配 置して、接地面内に、常に同時に入り込む三種類の共鳴器の共鳴周波数を、表 1に 示すように、約 800Hz、約 lOOOHzおよび約 1250Hzとしてなる実施例タイヤとの測 定結果を比較したところ、実施例タイヤでは、 3. 3dBの騒音低減効果が認められた。 これに対し、接地面内に同時に含まれる共鳴器の共鳴周波数を、一種類だけの 10 14Hzとした比較例タイヤでは、従来タイヤに対する騒音低減効果は 2. 6dBであつ た。
[0073] [表 1]
これによれば、実施例タイヤでは、広い帯域の周波数に対してそれぞれの共鳴器 を同時に作用させることで、より大きな効果をもたらし得ることが解かる。
実施例 2
[0075] 図 7 (b)に示すように配置した共鳴器の共鳴周波数 f をそれぞれの帯域で変化させ
0
た実施例タイヤと、前記従来タイヤとの騒音レベルの差を、実施例 1の場合と同様に して求めた。
そのときの、実施例タイヤの騒音低減効果を図 8に示す。
[0076] 図 8によれば、共鳴周波数 f の平均値を 700〜1800Hzの範囲内に設定すること
0
で、狙いとする気柱共鳴音を 2dB以上低減させることができ、なかでも、 700-1400 Hzの範囲ではその効果がとくに大き 、ことが明らかである。
実施例 3
[0077] 一本の周溝につき、三個の共鳴器が、常に同時に接地面内に入り込むように共鳴 器を配設し、中間の共鳴周波数を約 lOOOHzとして固定し、他の二個の共鳴器のそ れぞれの共鳴周波数を、その約 1000Hzを境として低周波側および高周波側へ変 化させた実施例タイヤと、前記従来タイヤとの騒音を、実施例 1の場合と同様にして 測定した。
[0078] この測定結果による騒音の低減効果を、実施例タイヤの、共鳴周波数の最大値と 最小値との差をパラメータとして整理したところ図 9に示す通りとなった。
[0079] ここで、共鳴周波数の差が 0 (三個の共鳴器の共鳴周波数がともに約 1000Hz)で ある場合の騒音低減効果より ldB以上すぐれた効果を希求水準とすると、周波数の 差力 200〜800Hzの範囲、とりわけ、 300〜600Hzの範囲で高い騒音低減効果が 得られた。
実施例 4
[0080] 一本の周溝につき、接地面内に含まれる、共鳴周波数が二種類以上に異なる、共 鳴器の数を変化させた実施例タイヤと、前記従来タイヤとの発生騒音を、実施例 1の 場合と同様にして測定した。
このときの、実施例タイヤの騒音低減効果を図 10に示す。
[0081] 図 10によれば、接地面内に一個の共鳴器だけが含まれる比較例タイヤに対し、そ れより ldB以上の騒音低減効果があることを希求水準とした場合、接地面内に、三個 以上の共鳴器が含まれることで、効果がより高まることになり、このことは、共鳴器の個
数の増加につれて顕著になることが解かる。
なお、これらのタイヤでは、共鳴器の個数が異なる力 公平な比較とするため、共鳴 周波数範囲がほぼ等しぐさらに、気室合計容積が同一となるようにしている。
実施例 5
[0082] 共鳴器の気室の開口形状を円形輪郭形状とするとともに、複数の共鳴器を、接地 面内に、図 4に示すような態様で配置し、それぞれの共鳴器の共鳴周波数 (作用周 波数)を表 1に示すところに合わせるベぐ共鳴器の寸法等を以下の表 2に示すように 設定した実施例タイヤの、前記従来タイヤに対する騒音低減効果を、実施例 1と同様 にして求めたところ 3. 35dBであった。
[0083] [表 2]
[0084] 従って、これによれば、共鳴器の共鳴周波数を所要に応じて選択することで、気室 の、陸部表面への開口形状のいかんにかかわらず、同等の騒音低減効果をもたらし 得ることが解かり、また共鳴室として機能する気室は、それを、作成が容易な、単純二 次元形状と深さの組み合わせによって構成しても、共鳴器としての機能を十分に発 揮し得ることが解カゝる。
実施例 6
[0085] 共鳴器の気室の底壁に、凹凸段差量が 1. 6mm、 3. Ommおよび 4. Ommとなるそ れぞれの突部を設けた、実施例 1で述べたものと同様の条件設定をした実施例タイ ャで、テストコースの砂利道を走行して、気室および狭窄ネックへの石嚙みの発生の 有無を試験したところ、図 11に示すように、凹凸段差のない底壁とした気室には石嚙 みがみられたものの、突部を設けた実施例タイヤでは石嚙みが生じな力つた。
なお、気室底壁に突部を設けたこの共鳴器は、図 11のグラフから明らかなように、 所要の気室容積を確保でき、かつ、凹凸が気室を分断しない限り、所期した通りの騒 音低減機能を発揮することができる。
実施例 7
[0086] 接地面内に含まれる、共鳴周波数が 813Hz、 1014Hzおよび 1242Hzのそれぞ れの共鳴器の狭窄ネックの、トレッド幅方向に対する延在角度を、図 12の表に示すよ うに変化させた場合の、発生ピッチノイズおよび偏摩耗段差を求めたところ、図 12に グラフで示す結果を得た。なお本実施例は、表 1に記載の実施例にて、ネック角度を 変えたものである。
[0087] なおここで、ピッチノイズは、室内ドラム試験機にて JASO C606に則り、平滑路面 にてマイク一個で計測することにより測定し、ピッチノイズの一次ピークにおいて、ネッ ク 0度対比マイナス ldB以上の差があれば有意とみなして 、る。(実車フィーリングで 差有りと判定される大きさと考える。 )
ところで、計測諸条件は、実施例 1と同様とした。
また、偏摩耗段差は、室内ドラム試験機にて 1000km走行後、ネック部前後 (周方 向)の偏摩耗段差量を測定して、段差平均値が 0. 5mm以内であることを必要条件と した。
走行条件はブレーキング 0. 1Gを 10kmと、フリーローリングを 90kmとをセットとし、 これらを 10セット繰返すことにより行った。
その他の諸条件 (荷重、内圧、速度など)は、実施例 1と同様とした。
[0088] 図 12のグラフによれば、ピッチノイズ差は、ネック角度が 10° 以上なかでも 20° 以 上で有効に改善されることになり、また、偏摩耗段差平均値は 60° 以下、なかでも 4 0° 以下で効果的に低減されることが解かる。
[0089] 以上に述べたような空気入りタイヤにおいて、狭窄ネック 7の深さは、図 13 (a)に、 共鳴器 5を横断面として例示するように、気室 6の深さと同等とすること、または、図に 仮想線で例示するように、気室 6の深さより浅いものとすることもできる。
この一方で、狭窄ネック 7は、図 13 (b)に共鳴器 5を平面図に示すように、トレッド幅 方向 X— Xに対する延在角度 I θ Iを 10° 〜60° 、なかでも、 20° 〜40° の範囲と することが好ましい。
[0090] また好ましくは、気室 6の、陸部表面開口輪郭線のアスペクトレシオ、図 7 (a)に示す ところを例にとると、気室長さ Z気室幅の比を、 2〜20の範囲、なかでもとくに 10以下
とする。
[0091] ところで、このような気室 6の、陸部表面への開口面積は、トレッド中央部からトレッド 幅方向の外側に向力うにつれて次第に減少させることが好ましぐまた、気室 6の陸 部表面への開口面積は、図 13 (a)に横断面図で例示するように、気室 6の底壁面積 より大きくすることが好ましい。
なお、図示はしないが、狭窄ネック 7は、それの幅を、底部に向けて次第に狭めるも のであることが好ましい。
[0092] 図 14は、この発明の他の実施形態を、一個の共鳴器を例にとって示す、図 1と同様 の接地面摸式図であり、前述したところと同様の部分は、それらと同一の符号で示す これは、先に述べた共鳴器 5, 5b, 5cと同様に機能する共鳴器 15を、陸部表面に 開口する一個の気室 16と、同一の周溝 3の溝壁に別個に開口してその気室 6を周溝 3に連通させる、相互に完全に独立させて設けた二本の狭窄ネック 17a, 17bとで構 成したものである。
[0093] このような構造の共鳴器 15は、たとえば図 15に斜視図で例示するように、加硫金型 の成形面に突設されて気室 16の成形に寄与する突部 Pおよび、その突部 Pの周面 から側方へ突出して狭窄ネック 17a, 17bの成形に寄与する二枚のサイプブレード U を具える加硫金型をもって生タイヤに加硫成形を施すことで、簡易に、かつ確実に形 成することができる。
[0094] 力かる共鳴器 15は、トレッド踏面 1の接地面 2内で、気室 16および狭窄ネック 17a, 17bのそれぞれの、路面側の開口を、その路面によって閉止されることで、図 16に例 示するようなヘルムホルツタイプの共鳴器を構成することになり、この共鳴器 16の共 振周端数 f は、両狭窄ネック 17a, 17bのトータル半径 、トータル長さを 1そして、
0 0
両狭窄ネック 17a, 17bのトータル断面積を Sとするとともに、気室容積を V、音速を c としたとき、
[0095] 従って、この共鳴周波数 f は、周溝 3の気柱共鳴周波数との関連の下で、半径!:、
0
長さ 1、断面積 Sおよび気室容積 Vを選択することによって、所要に応じて適宜に調
0
整することができ、たとえば、その共鳴周波数 f の平均値を、 700〜1800Hzの範囲
0
に設定することにより、高周波ノイズと、気柱共鳴による騒音を効果的に低減させるこ とがでさる。
[0096] このような共鳴器 15においても、狭窄ネック 17a, 17bは、図 17 (a)に要部斜視図 で例示するように、陸部 4、ここではブロック 4a内に埋め込み配置したトンネル状のも のとすることができる他、図 17 (b)に示すように、ブロック 4a表面に開口したものとす ることちでさる。
[0097] ここで、後者のような狭窄ネック 17a, 17bを、たとえば、加硫金型のサイプブレード その他の押し込み等によって形成するときは、気室 16に加えて、狭窄ネック 17a, 17 bをもまた簡易に形成することができる。
そしてこの場合は、狭窄ネック 17a, 17bをサイプによっても形成することがでこる。 このとき、サイプの形状を、図 17 (c)に例示するように、底部に拡大空間部を有する 、いわゆるフラスコ状とし、たとえば、拡大空間部以外の部分は、接地面内でサイプ 壁が相互に接触する程度の狭幅部とすることにより、狭窄ネック内 17a, 17bの各種 の寸法を、図 17 (a)に示す場合と同様に常に一定のものとすることが可能となる。
[0098] このような共鳴器 15においてより好ましくは、気室 16の、陸部表面、図 17ではブロ ック 4aの表面力もの深さ hを、陸部 4を区画する周溝 3の最大深さ Hの 20%以上、とく には 40〜80%とし、また好ましくは、狭窄ネック 17a, 17bの、ブロック表面からの深 さ寸法 dを、気室 16の最大深さ hの 70%以下、とくには 50%以下とする。そして、狭 窄ネック 17a, 17bの幅 tについては、気室 16の幅 Tの 3〜50%、なかでも 3〜20% の範囲とすることが好まし 、。
[0099] ここにおいて、気室 16の長さ Lは、図 18に例示するように狭窄ネック内 17a, 17bの 幅 tの中心を通りそれに沿う寸法 (軸方向寸法)をいうものとし、これに直角な向きの寸 法を気室 16の幅 Tとする。
[0100] なお、図 14においては、気室 16の、陸部表面への開口形状を円形とし、狭窄ネッ
ク 17a, 17bについては直線とした場合を、また、図 17では、気室 16のブロック表面 への開口形状を、曲線のみ力もなる異形輪郭形状とした場合を示したが、気室 16の 開口形状は楕円形その他の曲線輪郭形状、四角形その他の多角形状とすることもで き、また、狭窄ネック 17a, 17bについても曲線部、屈曲部を含んだ形状とすることが できる。
気室 16の開口形状及び狭窄ネック 17a, 17bの他の例を図 19、図 20にそれぞれ 示す。
[0101] そして、このような共鳴器 15の気室 16の底壁は、これもまた平坦面とすることができ るが、それの開口側に向けて凸もしくは凹となる曲面等とすることもできる。
そしてこの場合、より好ましくは、図 6について述べたように、その底壁に、上方に向 けて凸となる突部 6aを一個以上設け、この結果として生じる凹凸差 δを 1. 6mm以 上、一層好ましくは 3. Omm以上とする。
[0102] 以上のようにして構成される共鳴器 15の、周溝 3に対する配置態様は、トレッド踏面 1に一本の周溝 3を形成した場合、および複数本の周溝 3を形成した場合の 、ずれ においても、図 1について先に述べた条件の下での接地面 2内に、少なくとも、いず れか一本の周溝 3に設けた共鳴器 15の一個以上が常に完全に含まれる態様とし、よ り好ましくは、複数個の共鳴器の配置態様を、図 21に示すように、前述したと同一の 条件の下で接地する接地面 2内に、共鳴周波数の異なる複数個の共鳴器 15のそれ ぞれが常に含まれる態様とする。
[0103] なお、図 21に示すところでは、接地面 2内に延在する全ての周溝 3のそれぞれにつ いて、共鳴周波数の異なる複数個の共鳴器 15が接地面 2内に含まれる構成としてい るが、複数本の周溝 3のうち、少なくとも一本の周溝 3に設けた複数個の共鳴器 15だ けが接地面 2内に含まれる配置態様とすることも可能である。
[0104] この実施形態においては、気室 16の陸部表面への開口面積は 25〜300mm2、よ り好ましくは、 72〜180mm2の範囲とすることができる。
その理由は、気室 16にそれ本来の機能を有効に発揮させてなお、気室開口縁の、 路面衝突騒音の増加を有効に抑制することができるからであり、開口面積が 25mm2 未満では、気室に所要の容積を確保するべぐ気室の深さを深くしてなお、気室 16
に共鳴室としての機能を十分に発揮させることが困難となるのに加えて、周波数調整 に長い狭窄ネックが必要となる不具合が生じる一方、 300mm2を超えると、開口縁の 長さが長くなることに起因する、路面衝突音の顕在化が否めなくなるからである。
[0105] また、この実施形態においては、好ましくは、気室 16の、陸部表面からの最大深さ h を、トレッド表面に陸部 4を区画する周溝 3の最大深さ Hの 20%以上、より好ましくは 4 0〜80%の範囲とする力 その理由は、気室 16の、陸部開口面積と関連する十分な 容積を確保して、その気室 16を共鳴室として有効に機能させるためである。
[0106] V 、かえれば、平均深さ hが 20%未満では、空気の共鳴を十分に励起できな!/、お それがあり、一方、それが 80%を越えると、気室開口縁の路面衝突騒音、すなわち、 ピッチノイズが増大するおそれがある。
[0107] 狭窄ネック 17a, 17bの幅 tは、二次元パターン図で見た場合において、気室 16の 幅 Tの 3〜50%の幅に規制する(狭窄ネックが一つの気室につき複数存在する場合 は、その合計をいう。)が、その理由は、狭窄ネック 17a, 17bと気室 16がそれぞれの 役割を果たすためにはその幅に違いがある必要があるからであり、狭窄ネック 17a, 1 7bの幅 tが気室 16の幅 Tの 3%未満では該狭窄ネック 17a, 17bが閉じることにより狙 い通りの共鳴作用が見られず、一方、 50%を超えた場合には該ネック 17a, 17bは 管としての振る舞いが強まるため共鳴効果力 、さくなるからである。
共鳴器 15としての機能をより効果的に発揮させるためには、 3〜20%の範囲に設 定するのが良好となる。
[0108] なお、狭窄ネック 17a, 17bをサイプタイプとする場合は、底部に拡大空間部を有す る、いわゆるフラスコサイプ等を適用することができる。
[0109] また、この場合、共鳴器の共鳴周波数 f のネックの直径 2rは、サイプ断面積から半
0
径 rを逆算することによって求めることができる。
[0110] 共鳴器 15の狭窄ネック 17a, 17bは、陸部 4の表面に露出しないトンネル状とするこ とができることは前述したとおりである力 陸部表面に開口するサイプタイプとする場 合には、共鳴器 15、ひいては、タイヤの製造を一層容易にすることができ、また、サイ プの深さを十分にとることで、トレッド踏面の摩耗が進行しても、狭窄ネックの早期消 滅を回避して共鳴器 15を常に有効に機能させることができる。
[0111] 狭窄ネック 17a, 17bの断面積はその合計を、長さは平均値を用いて気室の設定を 行うことになる。狭窄ネック 17a, 17bが浅すぎると、摩耗の進行に伴ってすぐに消滅 することになる一方で、深すぎると、サイプ等とすることができる狭窄ネック 17a, 17b の開閉が生じ易くなつて、そのネックの断面積が大きく変化し、共鳴周波数 f の特定
0 が困難になり、共鳴器 15を所期した通りに機能させることができなくなることも懸念さ れるので、狭窄ネック 17a, 17bの深さについてはその点を考慮して設定する。 なお、共鳴器 15の周波数は有限要素法や境界要素法等の解析手段を用いて特 定するチューニングを行うこともできる。
[0112] 周溝 3の気柱共鳴音は、摩耗の進行による周溝容積の減少に伴って小さくなるの で、狭窄ネック 17a, 17bの深さ dの初期設定値としては、気室 16の最大深さ hの 70 %以下、好ましくは、 50%以下とする。
実施例 8
[0113] 図 21に示すような接地面を有する、サイズが 195Z65R15のタイヤ(周溝四本でそ の幅 8mm、深さ 8mm、ピッチバリエーションのピッチ長さは 50mm)を、 6JJのリムに 装着し、空気圧を 210kPaとした状態で、室内ドラム試験機により、 4. 47kNの荷重 の作用下で 80kmZhの速度で負荷転動させ、このときのタイヤの側方音を JASO C606に定める条件に従って測定し、 1Z3オクターブバンドで、中心周波数 800Hz , 1000Hz, 1250Hz帯域のパーシャルオーバオール値を求めた。
[0114] この場合、効果有りと判断するのは、実車試験によるドライバーのフィーリング評価 で改善効果が見込める 2dB以上の音圧低下とした。
[0115] なお共鳴器の共鳴周波数 f は、前述したように、
で求められる値とした。ここで、音速 cは 343. 7mZsとした。
接地面内に一本の直線状周溝を延在させた従来タイヤと、
接地面内に延在する一本の直線状周溝に、共鳴周波数の異なる三個の共鳴器の気
室を、図 17 (b)に示す形態でもって開口させ、それぞれの気室の容積 Vを 864mmd 、 1123mm3および 605mm3とし、狭窄ネックの断面積 Sを lmm2、狭窄ネックの半径 rを 0. 56mmとして、それぞれの共鳴器の共鳴周波数を 1014Hz、 889Hzおよび 12 12Hzとするとともに、気室を陸部表面に開口させた実施例タイヤとの測定結果を比 較した。
その結果、実施例タイヤでは、 1000Hzの周波数帯域で発生騒音が 2. 6dB低減さ れた。なお、それぞれの気室は、気室の幅 T: 6mm、長さ L : 24mm、 31. 2mmおよ び 16. 8mm、最大深さ H : 6mm、狭窄ネックの深さ d: 2mm、幅 t: 0. 5mmとした(狭 窄ネックの寸法は 1本当たりの寸法として表示)。
実施例 9
[0116] 共鳴器の作用周波数を 600〜2000Hzの範囲で変更した、表 3に示す緒元になる 実施例タイヤと、従来タイヤ(幅 8mm、深さ 8mmになるストレートの周溝を四本有す るタイヤ)の周波数帯域での騒音レベルの差を実施例 8と同一の条件にて測定した。 その結果を図 22に示す。
[0117] [表 3]
[0118] 図 22より、共鳴器の作用周波数の平均値を 700〜1800Ηζに設定しておく場合に 効果があり、とくに 700〜1400Ηζ程度の範囲に設定しておくことにより従来タイヤに 比較して騒音レベルが著しく改善されることが明らカ^なつた。
実施例 10
[0119] 共鳴器の作用周波数を 600〜2000Ηζに設定した実施例タイヤ(実施例 8と同一 の条件になるタイヤ)を用意して、これを車両に装着してテストコースで走行実験(走 行条件:リム 6JJ、乗用車 (セダン)、アスファルト直線路にて 80kmZhにて走行)を行
レ、、ドライバーのノイズフィーリングについて評価(一般的に認知される程度の差とし て + 3点を希求水準とする。)した。その結果を表 4に示す。
[0120] [表 4]
[0121] 表 4より明らかなように、三個の共鳴器の設定周波数の平均値を 700〜: 1800Hz程 度の範囲に設定しておくことで気柱共鳴に加え、様々な要因が混在する高周波ノィ ズに対しても軽減効果があることが確認された。
実施例 11
[0122] 図 17 (b)に示すような形状の狭窄ネック(断面積 Sは合計で 2mm2)を有し、容積 V が864 mm3、 l l23mm3および 605mm3〖こなる気室を備えた、図 21に示す如き接地 面を有するタイヤと、図 21にお 、て狭窄ネックを一本のみとした共鳴器を有するタイ ャ(狭窄ネックの幅を拡大して断面積 Sを同じにしたもの。図示せず。)の騒音の低減 効果につき、実施例 8と同様の条件の下で試験を行い、四本の直線状周溝 (ストレー トリブパターン)を延在させた従来タイヤとの対比を行った。
なお、三種類の共鳴器は、気室の幅 T: 6mm、長さ L : 24mm、 31. 2mmおよび 16 . 8mm深さ H : 6mm、狭窄ネックの深さ d : 2mm、幅 t : 0. 5mmとした(狭窄ネックの
寸法は 1本当たりの寸法として表示)。
[0123] その結果、単一の狭窄ネックを有するタイヤは、 1Z3オクターブバンドで、中心周 ¾¾800Hz, 1000Hz, 1250Hz のノ ーシャノレ才ーノく才ーノレ直で、 2. 6dBig 減されることが明らカ^なつた力 二本の狭窄ネックを有する実施例タイヤにぉレ、ては 、 2. 8dB低減されており、騒音の低減効果がより高いことが確認された。
実施例 12
[0124] 図 17 (a)に示した構成になる共鳴器を具えたタイヤについて、共鳴器の作用周波 数の平均値を約 1000Hzに設定したうえで表 5の如ぐ気室の幅と狭窄ネックの幅を 変更して騒音の低減効果に与える影響につ V、て調査 (試験条件は実施例 8と同じ)し た。
その結果を従来タイヤ(幅 8mm、深さ 8mmになるストレートの周溝を四本有するタ ィャ)の騒音レベルとの差で図 23に示す。
[0125] [表 5]
図 23より明らかな如ぐ狭窄ネックの幅の、気室の幅に対する割合が 3〜50%程度 の範囲においては、騒音の低減効果が著しく改善される傾向にあることが確認された 実施例 13
図 17 (a)に示した共鳴器を有するタイヤについて、共鳴器の作用周波数の平均値
を約 1000Hzに設定したうえで、気室の最大深さと狭窄ネックの深さを表 6に示す如 く変更して騒音の低減効果に与える影響について調査 (試験条件は実施例 8と同じ) した。
その結果を、従来タイヤ(幅 8mm、深さ 8mmになるストレートの周溝を四本有する タイヤ)の騒音レベルとの差で図 24に比較して示す。
[¾6]
[0129] 図 24より明らかな如く、狭窄ネックの深さの、気室の最大深さに対する割合が 70% 程度までは、騒音の低減効果が著しく改善される傾向にあり、とく狭窄ネックの深さが 気室の最大深さの 50%以下では騒音の低減効果が顕著であることが確認された。 実施例 14
[0130] 図 21に示したような開口形状になる気室(開口面積が 144mm2、 101mm2および 18 7. 2mm2,容積 Vが 864mm3、 1123mm3および 605mm3最大深さはともに 6mm) を有するタイヤにつき、その底壁に表 7に示す如き起伏 (段差)を設け、走行実験を 行レ、(実施例 8と同じ条件)、石嚙みの発生状況について調査した。
その結果は、表 7に併せて示したように、気室の底壁に 1. 6mm、 3mm、 5mmの起 伏 (段差)を設けた場合には石嚙みの発生が見られず、また、騒音レベルについては 図 25に示すように、高いレベルに維持されることが確認された。
[0131] [表 7]
気室の底壁の 石嚙みの有
起伏 (凹凸) 効果 [dB]
無
[mm]
0 有 2.6
1.6 無し 2.7
3 無し 2.8
5 無し 2.8 実施例 15
[0132] 図 21に示した接地面を有するタイヤにつき、三種類の共鳴器 (作用周波数: 1014 mmHz、 890Hzおよび 1212Hz)をタイヤの半周に一ピッチおきに配置した比較タイ ャ(タイヤの転動中に接地面に共鳴器が入らな 、場合)と、タイヤの全周にわたりーピ ツチおきに配置した実施例のタイヤ(タイヤの転動中に常に共鳴器の一つが接地面 内に入る場合)の騒音レベルについて、ストレートリブパターンになるタイヤの騒音レ ベルと対比(実施例 8と同じ条件)したところ (一ピッチ当たりの共鳴器の数は同じ)、 比較タイヤでは、 1. 5dBであるのに対して実施例タイヤでは、 2. 7dBであって騒音 の低減効果が高いことが判明し、とくに、この実施例では、タイヤの接地面 (接地長さ 約 140mmの範囲)で常に共鳴器が存在することが有効であることがわ力つた。
[0133] その結果、騒音レベルの差は、共鳴器が接地面に入らな 、場合がある比較タイヤ においては騒音レベルの差は 1. 5dB程度にあつたのに対して、常に一つの共鳴器 が入る実施例タイヤにおいては、 2. 7dB程度であって、この発明に従うタイヤは騒音 の低減効果が高いことが判明した。
実施例 16
[0134] 表 8に示す作用周波数の平均値を有する共鳴器を一セットとして常に接地面に存 在する図 21に示す如き実施タイヤを用いて走行試験を行 、、単なるストレートリブパ ターンになるタイヤとの騒音レベルとの差について調査した(実施例 8と同じ条件)。
[0135] [表 8]
狭窄ネック 狭窄ネック 作用周波数 気室の幅 τ 気室の長さ 気室の深さ 狭窄ネック
の長さ lo の深さ d の平均値
[mm] L[mm] [mm] の幅 t[mm]
[mm] [mm] [Hz]
6 36 4 6 2 0.5 1014
4 36 4 6 2 0.5 1242
6 36 6.5 6 2 0.5 796
[0136] その結果、騒音レベルの差は、 3. 3dB程度であることが判明し、作用周波数の異 なる三種類の共鳴器を設けることで、広い帯域に対して同時に共鳴器を作用させるこ とが可能であり、トータルとして大きな騒音低減効果が得られることが明らかとなった。 これは、気柱共鳴が周波数空間でブロードなピークをもつ特性によるものと推察され る。
[0137] そしてまた、この発明のさらに他の実施形態では、先に述べたいずれかのタイヤ、 たとえば図 1に示すものを例にとると、陸部 4の表面に開口する気室 6と、この気室 6と 周溝 3との連通をもたらす、陸部 4内への埋め込みを可とする狭窄ネック 7とを具えて なる共鳴器 5において、その気室 6の、タイヤの無負荷状態の下での、陸部表面への 開口面積を 25〜300mm2、より好ましくは 100〜150mm2の範囲とする。
[0138] なお、ここでもまた、気室 6の、陸部表面と平行な断面内での横断面積および輪郭 形状は、その気室 6の底壁側に向けて、陸部開口のそれらと同一にできる他、加硫 成形を終えたタイヤの気室 6からの、金型部分の抜き出しが拘束されることのない程 度に漸増させる
こと、逆に、漸次減少させることもできる。
[0139] このように構成することができる共鳴器 5は、図 3に関連して述べたヘルムホルツタ イブの共鳴器として機能することができ、そこで述べたと同様の共鳴周波数 f
0
を有することになる。
[0140] 従って、この共鳴周波数 fもまた、周溝 3の気柱共鳴周波数との関連の下で、ネック
0
半径!:、ネック長さ 1、ネック断面積 Sおよび気室容積 Vを選択することによって、所要
に応じて適宜に調整することができ、好ましくは、その共鳴周波数 f
0の平均値を、 70
0〜1800Hzの範囲内のもの、より好適には、 700〜1400Hzの範囲内のものとする
[0141] なお、図 1に示すところでは、気室 6の、陸部表面への開口形状を円形としているも 、この開口形状もまた、楕円形その他の曲線輪郭形状とすることもでき、また、四角形 その他の多角形状とすることもできる。
[0142] このような共鳴器 5では、図 5について前述したように、狭窄ネック 7は、図 5 (a)に例 示するように、ブロック 4a内に埋め込み配置したトンネル状のものとすることができる 他、図 5 (b)に示すように、ブロック 4aの表面に開口したものとすることもでき、後者の ような開口ネック 7を、たとえば、加硫金型のブレードその他の押し込み等によって形 成するときは、気室 6に加えて、狭窄ネック 7をもまた簡易に形成することができる。 そしてこの場合は、狭窄ネック 7をサイプによっても形成することができる。 このとき、サイプの形状を、図 5 (c)に例示するように、底部に拡大空間部を有する、 いわゆるフラスコ状とし、たとえば、拡大空間部以外の部分は、接地面内でサイプ壁 が相互に接触する程度の狭幅部とすることにより、狭窄ネック 7の各種の寸法を、図 5 (a)に示す場合と同様に常に一定のものとすることができる。
[0143] 力かる共鳴器 5においてより好ましくは、気室 6の、陸部表面、図ではブロック表面 力もの最大深さ hを、トレッド踏面 1に陸部、図ではブロック 4aを区画する溝、たとえば 周溝 3の最大深さ Hの 20%以上、とくには 40〜80%とし、また好ましくは、狭窄ネック 7の、ブロック表面力もの深さ寸法 dを、気室 6の最大深さ hの 70%以下、とくには 50 %以下とする。
[0144] ところで、図 5に示すところでは、気室 6のブロック表面への開口形状は、曲線のみ からなる異形輪郭形状をなす。
[0145] 以上に述べたところにおいて、気室 6の底壁は、平坦面とすることの他、図 6につい て前述したように、それの開口側に向けて凸もしくは凹となる曲面等とすることもでき、 この場合、より好ましくは、その底壁に、上方に向けて凸となる突部 6aを一個以上設 け、この結果として生じる凹凸差 δを 1. 6mm以上、一層好ましくは 3. Omm以上と する。
なおこの場合の突部 6aは、気室側壁に突出形成されて、底壁からは独立するもの 、いいかえれば、底壁からは分離されたものとすることもできる。
[0146] このような構成を有する共鳴器 5の、周溝 3に対する配置態様は、たとえば図 1に示 すように、トレッド踏面 1に一本の周溝 3を形成した場合、および複数本の周溝を形成 した場合において、図 1について述べた条件の下での接地面 2内に、共鳴周波数の 異なる複数個の共鳴器 5が常に完全に含まれる態様とすることが必要になる。
[0147] この場合、図 4に例示するように、前述したと同一の条件の下で接地する接地面 2 内で、各周溝 3に、共鳴周波数の異なる複数個の共鳴器 5a, 5b, 5cのそれぞれが 常に含まれる配置態様とすることが好ま 、。
[0148] しかるに、図 4に示すところに限定されることなぐ複数本の周溝 3のうち、少なくとも 一本の周溝 3に設けた複数個の共鳴器だけが接地面 2内に含まれる配置態様とする ことも可能である。
実施例 17
[0149] サイズが 195Z65R15のタイヤを、 6JJのリムに装着し、空気圧を 210kPaとした状 態で、室内ドラム試験機により、 4. 47kNの荷重の作用下で 80kmZhの速度で負荷 転動させ、このときのタイヤの側方音を JASO C606に定める条件に従って測定し、 1Z3オクターブバンドで、中心周波数 800Hz、 1000Hzおよび 1250Hzの帯域の パーシャルオーバオール値を求めた。
[0150] この場合、効果有りと判断するのは、実車試験によるドライバーのフィーリング評価 で改善効果が見込める 2dB以上の音圧低下とした。
[0151] なお共鳴器の共鳴周波数 f は、前述したように、
0
で求められる値とした。
ここで、音速 cは 343. 7mZsを用いた。
[0152] 接地面内に四本の直線状周溝を延在させてなる従来タイヤと、
接地面内に延在する四本の直線状周溝のそれぞれに、図 7 (a)に示すような形態
を有し、気室が陸部表面に四角形に開口する共鳴器を、図 7 (b)に示す配置態様を もって 60個ずつ形成し、その三種類の共鳴器の気室容積 Vをそれぞれ、 302mm3、 432mm3および 562mm3、ネック断面積 Sを lmm2、ネック半径 rを 0. 56mmとして、 共鳴器の共鳴周波数を 1014Hzとしてなる実施例タイヤとの測定結果を比較したとこ ろ、実施例タイヤ 1では、上述した中心周波数が 800Hz、 1000Hzおよび 1250Hz のパーシャルオーバーオール値が 2. 6dB低減された。
実施例 18
[0153] 約 900Hz、約 1000Hzおよび約 1200Hzで共鳴する三種類の共鳴器の気室の、 陸部への開口面積をパラメータとした、ピッチ長さが 38. 5mmの実施例タイヤと、上 記従来タイヤとの、 1Z3オクターブバンドで、中心周波数が 800Hz、 1000Hzおよ び 1250Hzのパーシャルオーバーオール値の差を、実施例 1と同一の条件の下で求 めた。
そのときの実施例タイヤの騒音低減効果を図 26に示す。
[0154] 図 26によれば、気室開口面積が 25〜300mm2の間では騒音を 2dB以上低減させ ることができ、とりわけ、 72〜180mm2の間でその効果が顕著であることがわ力る。 実施例 19
[0155] 三種類の共鳴器の共鳴周波数 f を変化させた実施例タイヤと、前記従来タイヤとの
0
騒音レベルの差を、実施例 1の場合と同様にして測定した。
そのときの、実施例タイヤの騒音低減効果を図 27に示す。
[0156] 図 27によれば、共鳴周波数 f の平均値を 700〜1800Hzの範囲内に設定すること
0
で、狙いとする気柱共鳴音を 2dB以上低減させ得ることが明らかである。
実施例 20
[0157] 約 1000Hzで共鳴する共鳴器の気室の、最大深さが 8mmの周溝に対する最大深 さをパラメータとした、ピッチ長さが 38. 5mmの実施例タイヤと、前記従来タイヤとの 騒音レベルの差を、実施例 1と同一の条件の下で求めた。
その結果としての、実施例タイヤの騒音低減効果を図 28に示す。
[0158] 図 28によれば、気室の最大深さが 20%以上、なかでも 40〜80%で騒音低減効果 が大きくなることが解力る。
実施例 21
[0159] 共鳴器の気室の底壁に、凹凸段差量が 1. 6mm、 3. Ommおよび 4. Ommとなる突 部を設けた実施例タイヤで、テストコースの砂利道を走行して、気室および狭窄ネッ クへの石嚙みの発生の有無を試験したところ、図 29に示すように、凹凸段差のない 底壁とした気室には石嚙みがみられたものの、突部を設けた実施例タイヤでは石嚙 みが生じな力 た。
なお、気室底壁に突部を設けたこの共鳴器は、図 29のグラフから明らかなように、 所要の気室容積を確保でき、かつ、凹凸が気室を分断しない限り、所期した通りの騒 音低減機能を発揮することができる。
実施例 22
[0160] 狭窄ネックをサイプによって形成し、共鳴器の共鳴周波数を
によって求める場合の、狭窄ネックの半径 rを、サイプ断面積力も逆算した。
そのときの三種類の共鳴周波数 f をそれぞれ約 900Hz、約 lOOOHzおよび約 120
0
0Hzとした、ピッチ長さが 77mmの実施例タイヤの、前記従来タイヤに対する騒音低 減効果は、実施例 1で述べた測定条件の下で 2. 5dBであった。
実施例 23
[0161] 気室の最大深さに対する、表面に開口した (サイプのような)狭窄ネックの、トレッド 表面からの深さの比率をパラメータとして、約 lOOOHzに共鳴周波数の平均値をもつ 共鳴器を設けた、ピッチ長さが 77mmの実施例タイヤの、従来タイヤに対する騒音低 減効果を、実施例 1と同様にして求めたところ、図 30に示す結果を得た。
図 30によれば、上記の比率が 70%以下で 2. OdB以上の騒音低減効果が得られ、 それが 25〜50%では 3. OdB以上の低減効果が得られることが解かる。
[0162] なお、狭窄ネックそれ自体にっ 、てみれば、浅 、ほど偏摩耗に対して有利であるが 、それが浅すぎると、前述したように陸部の摩耗途中で、そのネックが消滅してしまう
おそれがある。
また、気室については、それが浅ぐかつ陸部表面への開口面積が小さい方が偏 摩耗、耐摩耗両面で有利となる。
実施例 24
[0163] 陸部表面に、図 7 (a)に示すように四角形に開口させた気室を有する三種類の共鳴 器を設け、その気室の開口幅を 6mm、開口長さをそれぞれ、 8. 4mm、 12mmおよ び 15. 6mmとし、気室深さを 6mmとするとともに、ネック幅を 0. 5mm、ネック長さを 6 mm、ネック深さを 2mmとして、共鳴周波数をそれぞれ 889Hz、 1014Hzおよび 121 2Hzとした、ピッチ長さが 38. 5mmの実施例タイヤの、前記従来タイヤに対する騒音 低減効果を、実施例 1と同様にして求めたところ、 2. 6dBとなった。
[0164] これと同様の騒音低減効果をもたらすベぐ気室の、陸部表面への開口形状を円 形とするとともに、その半径を 4. 8mmとしてなる共鳴器を設けた実施例タイヤの、従 来タイヤに対する騒音低減効果を同様にして求めたところ、 2. 7dBとなった。
[0165] これらのによれば、共鳴室として機能する気室は、それを、作成が容易な、単純二 次元形状と深さの組み合わせによって構成しても、共鳴器としての機能を十分に発 揮し得ることが解カゝる。
実施例 25
[0166] トレッド接地面の中央部に直線状に延びる幅 8mm、深さ 8mmの一本の周溝に、三 種類の共鳴器(共鳴周波数 889Hz、 1014Hzおよび 1212Hz)を開口させて設け、 それらの共鳴器を、タイヤの負荷転動に当って、接地面 (接地長さ約 140mm)内に 共鳴器が入らない瞬間がある配置とした比較例タイヤと、接地面内に常に一個の共 鳴器が存在する配置とした実施例タイヤとのそれぞれにっき、前記従来タイヤに対す る、 1Z3オクターブバンド、中心周波数 800Hz、 1000Hz、 1250Hz帯域のパーシ ャルオーバーオール値についての騒音低減効果を、実施例 1の場合と同様にして求 めたところ、比較タイヤでは、 1. 5dBであり、実施例タイヤでは 2. 5dBであった。 実施例 26
[0167] 表 9に示すように、約 800Hz、約 1000Hzおよび約 1250Hzで作用する、四角形に 開口する気室を有するそれぞれの共鳴器が常に接地面内に、図 7 (b)に例示するよ
うな態様で存在するように配置した実施例タイヤと、前記従来タイヤとのそれぞれに つき、 1Z3オクターブバンド、中心周波数 800Hz、 1000Hz、 1250Hz帯域のパー シャルオーバーオール値を実施例 1の場合と同様に測定して、実施例タイヤの騒音 低減効果を求めたところ 3. 3dBであった。
[0168] [表 9]
これによれば、広い周波数帯域に対して同時に機能するそれぞれの共鳴器を設け ることで、タイヤの発生騒音をより大きく低減させ得ることが解力る。
[0169] さらに、この発明の他の実施形態では、とくに、タイヤへの無負荷状態での、狭窄ネ ックの平面最大幅を、気室の平面最大幅の 3〜50%の範囲とする。
[0170] すなわち、このタイヤでは、図 5に要部斜視図で例示するように構成することができ る共鳴器 5において、図 31に、図 5 (a)に示す共鳴器を例として展開拡大平面図で 示すように、共鳴器 5の平面中心線 CLと直交する方向に測った狭窄ネック 7の平面 最大幅、ここでは、トンネル状をなすその狭窄ネック 7の、陸部表面への投影幅のうち の最大幅 wを、気室 6の、その平面中心線 CLと直交する方向に測った平面最大幅
0
wの 3〜50%、より好ましくは 3〜20%の範囲とする。
[0171] ここで、より具体的には、狭窄ネック 7の平面最大幅 wは、 0. 5〜4. Omm、なかで
0
ち 0. 5〜2. Ommの範囲とし、また、気室 6の平面最大幅 wは、 3. 0〜15. Omm、と くには 5. 0〜: LO. Ommの範囲内とすることが好ましい。
[0172] そしてさらに、上記平面中心 CL上で測った、狭窄ネック 7の平面長さ 1は 2〜50m
0
m、とくには 2〜30mmの範囲とすることが好ましぐまた、その平面中心線 CL上で測 つた気室の平面長さ 1は、 5〜50mm、なかでも 5〜30mmの範囲とすることが好まし い。
[0173] 以上に述べたところにおいて、気室 6の底壁は、好ましくは、図 6について前述した ように、その底壁に、上方に向けて凸となる突部 6aを一個以上設け、この結果として 生じる凹凸差 δを 1. 6mm以上、一層好ましくは 3. Omm以上とする。
[0174] このような構成を有する共鳴器 5の、周溝 3に対する配置態様は、たとえば図 1に示 すように、トレッド踏面 1に一本の周溝 3を形成した場合、および複数本の周溝を形成 した場合において、図 1について述べた条件の下で、接地面 2内に、少なくともいず れか一本の周溝 3に設けた共鳴器 5の、共鳴周波数の異なる複数個が常に完全に 含まれる態様とし、より好ましくは、複数個の共鳴器を、図 4に例示するように、前述し たと同一の条件の下で接地する接地面 2内に、共鳴周波数の異なる複数個の共鳴 器 5a, 5b, 5cのそれぞれが常に同時に含まれる態様とする。
[0175] なお図 4に示すところでは、接地面 2内に延在する全ての周溝 3の各々について、 複数個の共鳴器が接地面 2内に含まれることとしているも、複数本の周溝 3のうち、少 なくとも一本の周溝 3に設けた複数個の共鳴器だけが接地面 2内に含まれる配置態 様とすることちでさる。
実施例 27
[0176] サイズが 195Z65R15のタイヤを、 6JJのリムに装着し、空気圧を 210kPaとした状 態で、室内ドラム試験機により、 4. 47kNの荷重の作用下で 80kmZhの速度で負荷 転動させ、このときのタイヤの側方音を JASO C606に定める条件に従って測定し、 1Z3オクターブバンドで、中心周波数 800Hz、 1000Hzおよび 1250Hzの帯域の パーシャルオーバオール値を求めた。
[0177] この場合、効果有りと判断するのは、実車試験によるドライバーのフィーリング評価 で改善効果が見込める 2dB以上の音圧低下とした。
[0178] なお共鳴器の共鳴周波数 f は、前述したように、
0
[数 11] f
0 I l0 +1 s.3r)V
で求められる値とした。
ここで、音速 cは 343. 7mZsを用いた。
[0179] 接地面内に四本の、幅および深さがともに 8mmの直線状周溝を延在させてなる従 来タイヤと、
接地面内に延在する四本の、幅および深さがともに 8mmの直線状周溝のそれぞ
れに、図 7 (a)に示すような形態を有し、気室が陸部表面に四角形に開口する共鳴器 を、図 7 (b)に示す配置態様をもって 60個ずつ形成し、それらの共鳴器の、気室の平 面最大幅を 6. Omm、気室平面の長さを 8. 4mm、 12mmおよび 15. 6mmとし、気 室深さを 6. Omm、そして、狭窄ネックの平面最大幅を 0. 5mm、平面長さを 6mm、 ネック深さを 2. Ommとすることで、気室容積 Vをそれぞれ、 302mm3, 432mm3およ び 562mm3、ネック断面積 Sを lmm2、ネック半径 rを 0. 56mmとして、共鳴器の共鳴 周波数をそれぞれ、 889Hz, 1014Hzおよび 1212Hzとしてなる実施例タイヤとの測 定結果を比較したところ、実施例タイヤでは、上述した中心周波数が 800Hz、 1000 Hzおよび 1250Hzのパーシャルオーバーオール値が 2. 6dB低減された。
実施例 28
[0180] 約 1000Hzの平均周波数で共鳴する、図 7 (a)に示すような、三種類の共鳴器の、 ネックの平面最大幅と、気室の平面最大幅との比率をパラメータとした、ピッチ長さが 38. 5mmの実施例タイヤと、上記従来タイヤとの、 1Z3オクターブバンドで、中心周 波数が 800Hz、 1000Hzおよび 1250Hzのパーシャルオーバーオール値の差を、 実施例 27と同一の条件の下で求めた。
そのときの実施例タイヤの騒音低減効果を図 32に示す。
[0181] 図 32によれば、平面最大幅の比率が 3〜50%の間では騒音を 2. 5dB以上低減さ せることができ、とりわけ、 3〜20%の間でその効果が 3dB以上となって顕著であるこ とがわかる。
実施例 29
[0182] 共鳴器の、図 7 (b)に示すような配置態様の下で、共鳴周波数 f の平均値を変化さ
0
せた実施例タイヤと、前記従来タイヤとの騒音レベルの差を、実施例 27の場合と同 様にして測定した。
そのときの、実施例タイヤの騒音低減効果を図 33に示す。
[0183] 図 33によれば、共鳴周波数 f を 700〜1800Hzの範囲内に設定することで、狙い
0
とする気柱共鳴音を 2dB以上低減させることができ、なかでも、 700〜 1400Hzの範 囲内でとくにすぐれた効果をもたらし得ることが明らかである。
実施例 30
[0184] 約 1000Hzで共鳴する共鳴器の、狭窄ネックの平面最大幅をパラメータとした実施 例タイヤおよび、気室の平面最大幅をパラメータとした実施例タイヤのそれぞれと、 前記従来タイヤとの騒音レベルを、実施例 27と同様にして測定した。
その結果としての、実施例タイヤの騒音低減効果を図 34および 35のそれぞれに示 す。
[0185] 図 34によれば、狭窄ネックの平面最大幅が 0. 5〜4. Ommの範囲内で、 2dBを越 える騒音低減効果があり、なかでも、 0. 5〜2. Ommの間でその効果が、 2. 5dB以 上となって顕著であることが解かる。
また、図 35によれば、気室の平面最大幅が 3. 0〜15. Ommの範囲で、 2dBを越 える騒音低減効果があることが解かる。
実施例 31
[0186] 約 900Hz、約 1000Hzおよび約 1200Hzで共鳴する三種類の共鳴器の狭窄ネッ クの平面長さをパラメータとした実施例タイヤと、前記従来タイヤとの、実施例 27で述 ベたパーシャルオーバオール値、および、気室の平面長さをパラメータとした実施例 タイヤとのパーシャルオーバオール値のそれぞれを、実施例 27と同様の条件の下で 測定した。
そのときの、実施例タイヤによる騒音低減効果を図 36および 37にそれぞれ示す。 図 36によれば、狭窄ネックの平面長さが 2〜50mmの範囲で、 2dB以上の騒音低 減効果をもたらすことができ、なかでも、 2〜30mmの範囲で効果がとくに大きいこと が解かり、図 37によれば、気室の平面長さが 5〜50mmの範囲で 2dB以上の効果を もたらすことができ、なかでも、 5〜30mmの範囲では 2. 5dB以上の効果を実現でき ることが解カゝる。
実施例 32
[0187] 889Hz, 1014Hzおよび 1212Hzのそれぞれで共鳴する、気室幅が 6. Omm、気 室長さがそれぞれ、 8. 4mm、 12mmおよび 15. 6mm、気室深さが 6. Ommで、ネッ ク長さが 6mm、ネック深さが 2. Omm、ネック幅が 0. 5mmの共鳴器の気室の底壁に 、凹凸段差量が 1. 6mm、 3. Ommおよび 4. Ommとなるそれぞれの突部を設けて、 テストコースで砂利道を 5km走行し、気室およびネックへの石嚙みの発生の有無を
確認したところ表 10に示す結果を得た。
[0188] [表 10]
表 10によれば、凹凸段差のない底壁とした気室には石嚙みがみられたものの、突 部を設けた気室には石嚙みが生じな力つた。
また、表 10からは、気室底壁に突部を設けた共鳴器は、所要の気室容積を確保で き、かつ、凹凸が気室を分断しない限り、所期した通りの騒音低減機能を発揮するこ とができることが解力ゝる。
実施例 33
[0189] 狭窄ネックをサイプによって形成し、共鳴器の共鳴周波数を
[数 12] f =上
。 2ττ I +1 s.3r)V によって求める場合の、狭窄ネックの半径 rを、サイプ断面積から逆算した。
そのときの共鳴周波数 f の平均値を約 1000Hzとした場合、前記従来タイヤに対す
0
る騒音低減効果は、実施例 1で述べた測定条件の下で 2. 5dBであった。
実施例 34
[0190] 実施例 27で述べたように、気室が陸部表面に四角形に開口する共鳴器を設けた 場合と同様の騒音低減効果をもたらすベぐ気室の陸部表面への開口形状を円形と するとともに、その半径を 4. 8mmとしてなる共鳴器を、図 38に示すような配置態様 で設けた実施例タイヤの、従来タイヤに対する騒音低減効果を同様にして求めたとこ ろ、 2. 7dBとなった。
なお、三種類の共鳴器(共鳴周波数 889Hz、 1014Hzおよび 1212Hz)のそれぞ れの気室の深さは、 7. 8mm、 6. Ommおよび 4. 2mmとした。
[0191] これらによれば、共鳴室として機能する気室は、それを、作成が容易な、単純二次 元形状と深さの組み合わせによって構成しても、共鳴器としての機能を十分に発揮し 得ることが解かる。
実施例 35
[0192] トレッド接地面の中央部に直線状に延びる幅 8mm、深さ 8mmの寸法の一本の周 溝に、複数個の共鳴器(共鳴周波数 889Hz、 1014Hzおよび 1212Hz)を開口させ て設け、それらの共鳴器を、タイヤの負荷転動に当って、接地面 (接地長さ 140mm) 内に共鳴器が入らない瞬間がある配置とした比較例タイヤ(タイヤの半周にのみ、 38 . 5mmのピッチ長さで共鳴器を配設したもの)と、接地面内に常に一個の共鳴器が 存在する配置とした実施例タイヤ (タイヤの全周に、 38. 5 X 2 (mm)のピッチ長さで 共鳴器を配設したもの)とのそれぞれにっき、前記従来タイヤに対する、 1Z3ォクタ ーブバンド、中心周波数 800Hz、 1000Hz、および 1250Hz帯域のパーシャルォー バーオール値についての騒音低減効果を、実施例 1の場合と同様にして求めたとこ ろ、比較タイヤでは、 1. 5dBであり、実施例タイヤでは 2. 5dBであった。
なおここで、両タイヤの共鳴器はいずれも、実施例 27で述べたものと同一とした。 実施例 36
[0193] 約 800Hz、約 1000Hzおよび約 1250Hzで作用するそれぞれの共鳴器が常に接 地面内に、図 7 (b)に例示するような態様で存在するように配置するとともに、それら の共鳴器を、表 11に示す構成を有するものとした実施例タイヤと、前記従来タイヤと のそれぞれにっき、 1/3オクターブバンド、中心周波数 800Hz、 1000Hz、 1250H z帯域のパーシャルオーバーオール値を実施例 26の場合と同様に測定して、実施 例タイヤの騒音低減効果を求めたところ 3. 3dBであった。
[0194] [表 11] 気室幅 気室長さ 気室深さ ネック長さ ネック深さ ネック幅 作用周波数
Lmmj Lmm] Lmm] 〔mm〕 Lmmj Lmm] 〔Hz〕
6 12 4 6 2 0.5 1242
6 12 6 6 2 0.5 1014
7 16 6 6 2 0.5 813
これによれば、広い周波数帯域に対して同時に機能するそれぞれの共鳴器を設け ることで、タイヤの発生騒音をより大きく低減させ得ることが解力る。