WO2007100113A1

WO2007100113A1 - 精錬用吹き込みランス、精錬用吹き込みランス設備、溶銑の脱珪処理方法及び溶銑の予備処理方法

Info

Publication number: WO2007100113A1
Application number: PCT/JP2007/054109
Authority: WO
Inventors: Naoki Kikuchi; Yuta Hino; Seiji Nabeshima; Kenichiro Tamiya; Takashi Yamauchi; Koji Okada; Yoshiyuki Tanaka; Hiroshi Shimizu
Original assignee: Jfe Steel Corporation
Priority date: 2006-02-27
Filing date: 2007-02-26
Publication date: 2007-09-07
Also published as: KR101021349B1; TWI319014B; KR20080089637A; CN101389774A; TW200738889A; CN101389774B

Abstract

溶融金属中に酸素ガスを吹き込むためのガス吹き込みランス１において、内管２及び外管３からなる２重管構造とし、内管からは酸素ガスを吹き込み、内管と外管との間隙からは炭化水素系ガスを吹き込み、外管の外周にはＭｇＯを５～３０質量％含有するＡｌ２Ｏ３−ＭｇＯ系不定形耐火物を少なくとも先端部の耐火物被覆層として用いることにより、耐用性が高く、従来に比べて多数回の使用が可能であり、製造コストの削減に寄与するガス吹き込みランスを提供するとともに、該吹き込みランスを使用した溶銑の脱珪処理方法を提供する。

Description

明細書精鍊用吹き込みランス、精鍊用吹き込みランス設備、溶銑の脱珪処理方法及び溶銑の予備処理方法技術分野

本発明は、溶融金属を精鍊するために、溶融金属中に酸素ガスを吹き込む吹き込みランスおょぴランス設備（l ance equipment)に関するものである。本発明はまた、前記吹き込みランスやランス設備を使用して、搬送容器内に保持されている溶銑を予備処理（pretreatment proce s s) する方法、とぐに溶銑の脱珪処理方法に関するものである。

なお、前記ランスは酸素ガスとともに精鍊剤を吹き込むために用いてもよく、また前記予備処理中の一時期に、酸素ガス以外の搬送ガス等を吹き込むことを禁ずるものではない。背景技術

高炉で鉄鉱石を還元して製造された溶銑には、珪素、硫黄、燐などの不純物が含まれている。近年、鋼材の高級化に伴う燐含有量低下対策或いは製鋼プロセスの合理化を目的として、溶銑の脱燐処理（ hot metal dephosphorizat ion proces s ) 、転炉や、溶銑鍋若しくは混銑車（「トーピードカー」ともいう）（torpedo car) 等の搬送容器などにおいて広く行われている。また、この脱燐処理を効率的に行うために、脱燐処理の前に予め溶銑中の珪素を除去する脱珪処理（des i l i coni zat ion proce s s) も行われている。これらは溶銑の予備処理と総称される。 .

溶銑中の燐及び珪素は酸化反応によって除去されるので、溶銑の脱燐処理及ぴ脱珪処理は、溶銑に酸素ガスや酸化鉄などの酸素源を供給し、酸素源によって溶銑中の燐或いは珪素を酸化除去させている。その際に、反応効率を高める或いは生成するスラグの組成を調整するために、生石灰などのフラックスも添加されている。なお、溶銑中の珪素を酸化して除去する反応を脱珪反応、溶銑中の憐を酸化して除去する反応を脱憐反応と称する。溶銑に酸素を供給する手段として、酸化鉄（固体酸素源）を溶銑中に投入する方法があるが、固体酸素源は溶融分解によって溶.銑温度を降下させやすい。溶銑温度が降下すると、次工程の転炉での脱炭精鍊におけるスクラップ配合率の低下や熱余裕の不足等の問題を誘発するおそれがある。そこで、溶銑の温度降下を抑制するため、気体酸素を溶銑に供給する方法も知られている。

溶銑の脱燐処理及び脱珪処理において溶銑に酸素ガスを供給する方法は、大きく分けて 2種類に分類され、 1つの方法は、溶銑とは非接触の上吹きランスなどから酸素ガスを溶銑浴面に向けて吹き付ける方法、所謂上吹きする' 方法（「上吹き送酸法（oxygen top b lowing ) J と呼ぶ）（例えば、特開昭 53 - 78913号公報参照）である。他の方法は、溶銑中に浸漬させた吹き込みランスゃ反応容器の底部などに設けた羽口から、溶銑中に酸素ガスを直接吹き込む方法（「吹き込み送酸法（inj ect i on of oxygen gas：)」と呼ぶ）（例えば、特開昭 61- 42763号公報参照）である。それぞれの方法には、それぞれの特長があり、吹き込み送酸法の場合には、酸素ガスの添加効率が高い、攪拌力が向上するなどの利点がある一方、浸漬部の熱負荷が大きく（例えば一方向のみの熱負荷をうける羽.口等に比べても消耗が激しい）、耐用回数が限られるなどの問題がある。；れに対して、上吹き送酸法の場合には、上吹きランスへの熱負荷が小さく、長期間にわたって使用できるという利点があるが、酸素ガスの添加効率が低い、攪拌力が得られないなどの問題がある。

酸素ガスを供給する際に、上吹き送酸法とするか、吹き込み送酸法とするかは、上記の特長を考慮して決められるが、例えば混銑車の場合のように、処理容器の形状から上吹き送酸法では反応効率が悪く、吹き込み送酸法を採用せざるを得ないこともある。混銑車の場合には、その容器形状が攪拌 ·混合されにくく、それに加えて溶銑の収容量に対して開口部が少なく、上吹き送酸法では所望する反応効率が得られないからである。吹き込み送酸法で使用する吹き込みランスは、前述したように浸漬部の損耗が激しいことから、 'これを改善する手段が提案されている。例えば、実開平 6-6447号公報には、溶融金属ヰに浸漬する先端部と、該先端部を保持するホルダー部とからなる吹き込みランスにおいて、前記先端部を単管構造とし、その全表面をカロラィズ処理（ca lori z ing treatment ) し、更にその外周を耐火物で被覆することにより、吹き込みランス先端部の溶損防止を図る技術が開示されている。また、特開昭 58- 221210号公報には、吹き込みランスを、外周に耐火物が被覆された 2重管構造とし、内管からは精鍊剤と酸素ガスを吹き込み、外管からは炭化水素系ガスを吹き込むことで、吹き込みランス先端部の溶損防止を図る技術が開示されている。特開昭 58 - 221210号公報の技術は、炭化水素系ガスは加熱されると分解し、分解する際に吸熱するので、この吸熱を利用して吹き込みランス先端部を冷却するという技術である。また、ランスにかかる外力に注目した技術として、特開昭 54- 23019号公報には、，吹き込みランス先端部に水平部を設けることにより、ガス吹き込み時の反力を緩和し、浸漬部の振動を減じることで、つまり浸漬部に作用する応力を減じることで、吹き込みランスの延命を図る技術が開示されている。更に、特開昭 60- 234908号公報には、吹き込みランスを取卷く方向に設けた口 —ラにより構成される上部固定装置と、開閉式挟持型の下部固定装置とを設けることにより、ガス吹き込み時の振動を少なくする技術が開示されている。発明の開示 '

〔発明が解決しょうとする課題〕

しかしながら、上記の従来技術には以下の問題点がある。トーピードカーのような、攪拌 ·混合に不向きであり、溶銑収容量に対して開口部が小さい形状の容器において脱珪処理などを行う場合、大量の酸素を溶銑中に吹き込むことが望ましい。.しかし、実開平 6- 6447号公報のように、浸漬部を力口ラィズパイプとしてその周囲を耐火物で被覆する技術においては、供給する酸素源としては酸化鉄が主体であり、酸素ガス比率、つまり総酸素ガス供給量 (酸化鉄（酸素ガスに換算） +酸素ガス）に対する酸素ガス供給量の割合は、 2 0 - 3 0 %が上限である。酸素ガス比率を高めた場合（すなわち酸素ガス流量を増加させる場合や、酸素ガスのみの吹き込みとする場合）には、発熱が激しく単管構造では耐え切れない。酸化反応による発熱を有効利用するためには酸素ガス比率は 1 0 0 %が望ましいが、この技術では酸素ガスのみの吹き込みに対する耐用性が十分でない。

また、特開昭 58- 221210号公報に開示された方法では、炭素水素系ガスの分解吸熱により、吹き込みランス先端部においては冷却が行われるが、炭化水素系ガスの分解による吸効果は極先端部つまり吹き出し部が主であり、吹き込みランスに被覆した耐火物の冷却に寄与しない。従って、耐火物自体の耐用性確保が必要であるが、特開昭 58-221210号公報では耐火物の組成を具体的に開示していない。

さちに、実開平 6 - 6447号公報、特開昭 58- 221210号公報とも、ガスを吹き込むことによって吹き込みランスが振動し、この振動によって耐火物に物理的な割れ ·剥離損傷（スポーリング）が発生するという点に関しては、何ら対策が採られていない。 . ランスの振動に関し、特開昭 54-23019号公報では、吹き込みランス先端に水平部を設けることによりガス吹き込み時の反力を緩和し、浸漬部の応力を緩和する方法を開示している力、ガス吹き込み量が大きい場合には浸漬部だけでなく吹き込みランス設備全体の振動も顕著になり、抜本的な解決にはならない。

また、特開昭 60- 234908号公報では、吹き込みランスを取卷く方向に設けたローラで構成される上部固定装置と、開閉式挟持型の下部固定装置とで振動を抑えようとしている。この装置は垂直降下式の吹き込みランスでは効果が発揮できる力 S、傾斜して浸漬される吹き込みランスには開閉式挟持型の固定装置は適用が困難であり、振動を防止できない。また、吹き込みランスに付着する地金ゃスラグなどにより、ローラ部や挟持部分の保守が困難となるという問題も発生する。さらに予備処理技術自体、下記の課題を抱えている。溶銑の浴面に吹き付けた気体酸素と、溶銑の脱炭反応で発生した C O (—酸化炭素）ガスとで 2 次燃焼が起きると、 2次燃焼で発生する熱によって熱捕償を効果的に行なうことができる力 S、溶銑の浴面のみに気体酸素を供給している特開昭 5³-ァ891³ 号公報の技術では、 C Oガス発生量が少ないので 2次燃焼の熱が発生しにくく、熱補償を効果的に行なうことができない。

また、気体'酸素を溶銑の浴面下に供給する特開昭 61- 42763号公報の技術は、脱珪反応期から脱憐反応期に移行すると、脱炭反応が激しくなり、脱憐反応が低下してしまうという問題がある。本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、下記の少なくともいずれかである。

(A)溶銑などの溶融金属中に酸素ガスを吹き込む酸素ガス吹き込みランスにおいて、耐用性が高く、従来に比べて多数回の使用が可能であり、製造 . コストの削減に寄与する酸素ガス吹き込みランスを提供すること

(B)該吹き込みランスを使用した溶銑の脱珪処理方法を提供すること

(C)溶銑などの溶融金属中に酸素ガス或いは酸素ガスとともに精鍊剤を吹き込むための精鍊用吹き込みランス設備において、多量の酸素ガスのみの吹き込みであっても、従来に比べて多数回の使用が可能であり、製造コストの削減に寄与する精鍊用吹き込みランス設備を提供すること

(D)該精鍊用吹き込みランス設備を使用'した溶銑の脱珪処理方法を提供すること .

(E)脱珪反応の時期において熱補償を効果的に行なうことで、次工程の転炉での脱炭精鍊におけるスクラップ配合率の低下や熱余裕の不足等の問題を解消する溶銑の予備処理方法を提供すること .

〔課題を解决するための手段〕

( 1 )溶融金属中に少なくとも酸素ガスを吹き込むための吹き込みランスであって、内管及ぴ外管からなる 2重管構造であり、内管からは酸素ガスが吹き込まれ、内管と外管との間隙からは炭化水素系ガスが吹き込まれ、外管の外周には M g Oを 5〜 3 0質量％含有する A 1 2 O 3 - M g O系不定形耐火物が被覆されていることを特徴とする精鍊用吹き込みランス。

( 2 ) 上記（ 1 ) に記載された精鍊用吹き込みランスであって、該ランスの先端部において前記外管の外周に前記 A 1 2 O 3 -M g O系不定形耐火物が被覆されており、該ランスの前記先端部に続く胴部において前記外管の外周に S i 〇 ₂を 1 0〜40質量％含有する A 1 2 O 3 - S Ϊ 0、₂系不定形耐火物が被覆されている精鍊用吹き込みランス。

ここで、上記の先端部の不定形耐火物と胴部の不定形耐火物の境界は、溶銑の湯面以下にあることが好ましい。

(3) 上記（ 1 ) または（2) に記載された精練用吹き込みランスであつて、前記溶融金属の浴面に対して傾斜して浸漬される精鍊用吹き込みランスであり、かつ、該吹き込みランスの先端には、該吹き込みランスの外径の 0. 5倍〜 2. 0倍の長さを有する水平部が備えられた精鍊用吹き込みランス。

(4) 上記（ 1 ) 〜（3) のいずれかに記載された精鍊用吹き込みランスを溶銑中に浸漬させ、該吹き込みランスの内管から溶銑中に酸素ガスを吹き込むとともに、内管と外管との間隙から炭化水素系ガスを吹き込んで溶銑中の珪素を酸化除去することを特徴とする溶銑の脱珪処理方法。

(5) 上記（ 1 ) 〜（3) のいずれかに記載された精練用吹き込みランスと、該吹き込みランスを保持する保持部と、該保持部を昇降させる昇降装置とを備えた、溶融金属中に少なくとも酸素ガスを吹き込むための精鍊用吹き込みランス設備であって、前記吹き込みランスの振動を抑制する機構として、前記吹き込みランスの上端側を保持する羽根板と、前記昇降装置に備えられ、前記羽根板を挟持する羽根板受とを有する精鍊用吹き込みランス設備。

ここで、前記羽根板の形成する平面と溶融金属浴面とのなす角度が吹き込みランスの溶融金属浴面に対する傾斜角度と同一であることが好ましい。

(6) 上記（5) に記載の精鍊用吹き込みランス設備を用い、吹き込みランスを溶銑中に浸漬させ、該吹き込みランスの内管から溶銑中に酸素ガスを吹き込むとともに、内管と外管との間隙から炭化水素系ガスを吹き込んで、溶銑中の珪素を酸化除去するこ'とを特徴とする溶銑の脱珪処理方法。

( 7 ) 容器内に保持されている溶銑に対して脱珪反応、脱燐反応を行なう溶銑の予備処理において、前記脱珪反応の時期に、前記溶銑内に固体酸素源を供給し、気体酸素を前記溶銑の浴面に吹き付けるとともに、上記（ 1 ) または（ 2 ) に記載された精鍊用吹き込みランスより前記溶銑内に気体酸素を吹き込み供給することを特徴とする溶銑の予備処理方法。

ここで、前記脱燐反応の時期に、前記溶銑内に固体酸素源を供給するとともに、気体酸素を前記溶銑の浴面に吹き付けることが好ましい。

また、前記脱珪反応の時期において前記溶銑内に供給される前記固体酸素. 源及ぴ気体酸素の総酸素供給速度を、 0 . 2 3 N m V t Z minを下回る値とすることが好ましい。図面の簡単な説明

図 1は、本発明に係る酸 ¾ガス吹き込みランスの概略断面図である。

図 2は、本発明に係る酸素ガス吹き込みランスを用いて混銑車に収容され . た溶銑を脱珪処理する状況を示す図である。

図 3は、本発明に係る別の酸素ガス吹き込みランスの概略断面図である。図 4は、本発明に係る精鍊用吹き込みラシス設備を用いて混銑車に収容された溶銑を脱珪処理している概略図である'。 . 図 5は、図 4の X— X ' 矢視による概略断面図である。

図 6は、図 5の Y— Y ' 矢視による概略図である。

図 7は、本発明で使用するさらに別の吹き込みランスの概略断面図である。図 8は、本発明に係る溶銑の予備処理の構造を示す図である。

図 9は、本発明に係る溶銑の予備処理の手順を示す図である。

図 1 0は、本発明に係る脱珪反応の時期における酸素供給速度（固体酸素及び溶銑内に吹き込み供給される気体酸素とを合わせたものの供給速度）とスロッビングの発生との関係を示した図である。

図 1 1は、本発明.に係る溶銑の予備処理を行なうときの溶銑の成分の濃度変化を示す図である。図 1 2は、本発明に係るさらに別の酸素ガス吹き込みランスの概略断面図である。'

(符号の説明）

1 酸素ガス吹き込みランス

1 A ランス先端部

I B ランス先端水平部

1 C ランス開口部中心

2 内管

3 外管

4 耐火物被覆層

4 A 先端部被覆層

4 B 胴部被覆層

5 混銑車

6 溶銑

6 A 浴面

7 屈曲部

1 1 精鍊用吹き.込みランス設備

1 2 昇降装置. .

1 3 保持部

1 3 A 保持部上部

1 9 振動防止冶具

2 0 鉄製羽根板

2 0 A 羽根板補強材

2 1 鉄製羽根板受

2 1 A、 2 1 B 羽根板受部材

2 2 ガイドロール

2 6 上吹きランス発明を実施するための最良の形態以下、本発明を具体的に説明する。くランスの耐火物〉

本発明者らは混銑車に収容された溶銑に酸素ガス吹き込みランスを浸漬させ、該ガス吹き込みランスから酸素ガスを溶銑に吹き込んで行う溶銑の脱珪処理において、ガス吹き込みランスの長寿命化について研究 .検討を行つた。

その結果、酸素ガス吹き込みランスの外面が金属のままでは溶銑による溶損を抑えることができないことが分かった。また、実開平 6 - 6447号公報のように外表面をカロライズ処理しても、酸素を大量に吹き込む場合は消耗が著 · しいため、その効果は少ないことが分かった。即ち、酸素ガス吹き込みランスの耐用性を向上させるためには、少なくとも溶銑中に浸漬させる部位の外表面には、耐火物の被覆層を形成させる必要のあることが分かった。

また、溶銑への浸漬部が単管構造では、耐火物を被覆したとしても耐用性に乏しく、従って、少なくとも 2重管構造とし、冷却用の炭化水素系ガスを内管と外管との間隙に流すことが好ましいことが分かった。これは、炭化水素系ガスが分解する際の吸熱反応により、少なくとも酸素ガス吹き込みランスの先端部は冷却され、これにより、先端部の溶損が抑制されることが確認されたからである。 . .

しかしながら、これらの対策のみでは目的とする耐用性は得られず、そこで、使用済みの吹き込みランスを調査し、長寿命化を阻害している原因を調查した。調査結果から、吹き込みランス浸漬部の損耗形態は、溶銑及ぴスラグによる溶損と、物理的に破壊するスポーリングの 2種理の損網形態が観察された。

'さらなる調査の結果、ランス先端部の溶損に関して、極先端部以外では炭化水素系ガスの冷却効果はほとんど得られておらず、吹き込みランスに被覆した耐火物の最も溶損の激しい部位は、先端部ではなく、炭化水素系ガスの冷却効果が得られない、先端からやや離れた部位であることが分かった。この知見から、酸素ガス吹き込みランスの耐用性を向上させるためには、被覆する耐火物自体の溶損速度を減少させることが必要であることが分かった。つまり、溶銑に対する耐溶損性に優れる耐火物とする必要のあることが分かつた。そこで、耐火物材質の適正化を図るための試験を実施した。試験は混銑車に収容された溶銑を脱珪処理する際に使用する酸素ガス吹き込みランスで行った。図 1およぴ図 3に試験で使用した各酸素ガス吹き込みランスの概略断面図を示し、図 2に混銑車に収容された溶銑を脱珪処理する状況を示す。図 1および図 3において、 1は酸素ガス吹き込みランス、 2は内管、 3は外管、 4は不定形耐火物（セメント状にして目的の形状に成形可能な耐火物で例えばキャスタブル（castab le) などが挙げられる）からなる耐火物被覆' 層である。図 1においては耐火物被覆層 4は先端部被覆層 4 Aおよび胴部被覆層 Bに別れ、それぞれ異なる耐火物が用いられている。内管 2の内部を酸素ガスが流れ、内管 2と外管 3 との間隙を炭化水素系ガスが流れ、酸素ガス及ぴ炭化水素系ガスは、酸素ガス吹き込みランス 1の先端部 1 Aから溶銑中に吹き込まれるようになっている。なお 1 Cはランス開口部中心、 7は屈曲部（屈曲前後のランス中心線の交点で定義される）である。

また、図 2において、 5は混銑車、 6は溶銑であり、混銑車 5に収容された溶銑 6に、図' 1または図 3に示す酸素ガス吹き込みランス 1の先端部 1 A を浸漬させ、内管 2 ら酸素ガス（必要に応じさらに精鍊剤）を吹き込み、内管 2と外管 3 との間隙から炭化水素系ガスを吹き込み、溶銑 6に脱珪処理を実施している様子を示している。

この溶銑脱珪処理において、耐火物被覆層 4 (あるいは先端部被覆層 4 A およぴ胴部被覆層 4 B ) の組成を変化させ、酸素ガス吹き込みランス 1の耐用性を調査した。試験では、混銑車 5に収容された約 3 0 0 トンの溶銑 6に内管 2から 3 0 N m ³ Z m i nの流量で酸素ガスを吹き込み、また、内管 2 と外管 3 との間隙から 2 ~ 5 N m ³ / m i nの流量でプロパンガスを吹き込み、脱珪処理した。なお、 N m ³は、標準状態における体積に換算した体積を単位 m ³で示すものである。内管 2及ぴ外管 3はステンレス鋼鋼管を使用した。この脱珪処理における試験条件を表 1に示す。表 1

図 3のランスにおける耐火物被覆層 4としては、 A 1 2 O 3 - S i 〇₂系キヤスタブル（A 1 ₂ O ₃— 20質量⁰ /₀ S i O ₂) と、 A l ₂〇 ₃— Mg O系キヤスタプルとで試験した。 A 1 ₂ O ₃— M g O系キャスタプルでは、 Mg O の含有量を 3、 5、 1 0、 2 0、 30、 40、 5 0、 70質量％に変更し、耐火物被覆層 4の損耗速度に及ぼす M g O含有量の影響を調査した。また図 1のランスにおける先端部被覆層 4 Aとして、 A 1 ₂0₃— 7質量％Mg O キャスタブル、胴部被覆層 4 Bとして A 1 ₂0₃— 20質量％S i 0₂キャスタプルを用い、先端部と胴部の境界は溶銑の湯面位置、屈曲部およびその中間点（真中）とした。なお溶銑の湯面はスラグ表面ではなく、溶銑そのものの湯面とする。試験結果を表 2に示す。表 2

*)屈曲部と湯面位置との真中

表 2に示すように、 A 1 ₂ O ₃ 2 0質量％ S i O ₂キャスタブルの場合には、 1チャージ当たりの損耗速度が 2 0 0 mm (以下、「mmZ c h」と記 'す）であったが、 M g'Oが 5〜 3 0質量％配合された A 1 ₂ O ₃— M g O系キャスタブルでは、損耗速度が 1 5 mm/ c h以下であった。但し、 A 1 ₂ 0₃— Mg O系キャスタブルであっても、 M g Oが 5質量。 /。未満の場合には、損耗速度が速く M g Oの効果が少ないことが分かった。一方、 A 1 ₂ O 3 - Mg O系キャスタブルであっても、 M g Oが 3 0質量％を超えた場合には、耐火物のヤング率が増加するために耐火物被覆層 4の割れが顕著となり、スポーリングによる割れが進行して耐用性の向上は期待できないことが分かつた。

これらの結果から、耐火物被覆層 4としては Mg Oを 5〜 3 0質量％含有する A 1 ₂0₃— M g O系不定形耐火物が最適であり、この不定形耐火物を使用することで、酸素ガス吹き込みランス 1の耐用性が向上することが分かつた。なお、最も良好な結果となつ'たのは、先端部に A 1 ₂ 0 ₃— M g O不定形耐火物を用い、胴部に A 1 ₂ 0 3 - S i O ₂系不定形耐火物を用いた場合であり、全体を A 1 ₂ 0 ₃— M g O不定形耐火物で被覆した場合より、さらに損耗速度が低く良好な結果であった。これは、以下の理由によると考えられる。上記の適正範囲にある A 1 2 O 3 - M g O系不定形耐火物に比べても基本的に A 1 ₂ 0 3 - S i O ₂系不定形耐火物は耐スポーリング性に優れ、とくに湯面直上に掛かる熱衝擊に対しては有効である。このため、胴部を A 1 ₂ 0 ₃ 一 S i O ₂系不定形耐火物とすることで、さらにランスの耐久性が向上するものと考えられる。

なお、本発明者らは他に A 1 2 O 3 - C r ₂ 0 ₃系、 A I ₂ 0 ₃— Z r〇₂系、 S i O 2 - Z r 0 ₂系も単独あるいは組み合わせて試験してみたが、上記本発明ほどの改善効果は得られなかった。本発明はこれらの試験結果に基づくものであり、発明に係る精鍊用酸素ガス吹き込みランス 1は、前述した図 1および図 3に示すように、内管 2及び外管 3からなる 2重管構造であり、内管 2からは酸素ガス（および必要に応じ精鍊剤）が吹き込まれ、内管 2と外管 3との'間隙からは炭化水素系ガスが吹き込まれる。外管 3の外周には図 3に示すように全体が M g Oを 5 ~ 3 0 質量％含有する A 1 ₂ 0 3 - M g O系不定形耐火物が被覆されているか、あるいは図 1に示すように先端部が A 1 ₂ 0 3 - M g O系不定形耐火物に被覆され、残りの胴部が A 1 ₂ 0 3 - S i O ₂系不定形耐火物で被覆されていることを特徴とする。図 1の場合も、先端部の A 1 ₂ O a - M g O系不定形耐火物は M g Oが 5 〜 3 0質量％配合されたものを用いる。また、 A 1 ₂ O 3 - S i O ₂系不定形耐火物は S i 0 ₂を 1 0〜4 0質量。 /₀含有する場合に有効である。耐スポーリング性の観点から、胴部被覆層 4 Bは、少なくとも溶銑の湯面までを被覆することが好ましい。先端部被覆層 4 Aは、耐溶損性の観点から充分な範囲を被覆することが好ましく、例えば図 1に示す形状のランスの場合は、少なぐとも屈曲部 7までを被覆することが好ましい。すなわち、図 1のランスにおいて、先端部被覆層 4 Aと胴部被覆層 ·4 Βとの境界は、屈曲部と湯面位置との間に位置させることが好ましい。

なお、先端部被覆層 4 Αと胴部被覆層 4 Bは境界部で連続的に移行することが好ましい。これは、外管 3の周囲に型を作り不定形耐火物を流し込んでランスを被覆する際に、途中で耐火物を変更することで容易に実現できる。本発明で用いる A 1 ₂ O 3 - M g O系不定形耐火物、 A 1 ₂ O ₃— S i O ₂ 系不定形耐火物とも、不純物を 7 %以下程度含有することは問題ない。また図 1、図 3いずれの形態においても、耐スポーリング性の観点から、 A l ₂ O 3 - M g O系不定形耐火物中の M g Oの量は 5〜 1 0質量％が最も好ましい。. 耐火物層の厚みは 25m m以上程度が好ましい。本発明に係る精鍊用酸素ガス吹き込みランス 1は、溶融金属中に酸素ガスまたは酸素ガスとともに精鍊剤を供給して行う精練であるならばどのような精鍊であっても適用可能であるが、特に、溶銑の脱珪処理における酸素ガス供給手段として適用することが最適である。溶銑の脱珪処理で生成されるスラグは S i O ₂を主体としており、本発明において耐火物被覆層 4あるいは先端部被覆層 4 A して使用する、 M g Oを 5〜 3 0質量％含有する A 1 ₂ O _s - M g O系不定形耐火物は、 S i O ₂を主体とするスラグに対する耐溶損性に優れるからである。ここで、精鍊剤とは、酸素源となる酸化鉄や生石灰、石灰石などのフラックスのことである。

また、本発明に係るランスは、とくにトーピードカーにおける脱珪処理など、多量の送酸（例えば 1 0 N m ³ /min以上、好ましくは 1 5 N m ³ /min以上）により処理を進行させる用途に好適である。

本発明に係る精練用酸素ガス吹き込みランス 1を用いて溶銑 6の脱珪処理を行う場合、上記の試験と同一方法で、つまり内管 2から酸素ガスを吹き込み、内管 2と外管 3との間隙から炭化水素系ガスを吹き込んで脱珪処理を行うが、その際に、非浸漬型の上吹きランスによる酸素ガス添加などの他の酸素ガス供給手段を併用しても構わない。また、図 1あるいは図 3に示す精鍊用酸素ガス吹き込みランス 1では、先端部 1 Aまで内管 2及び外管 3が分岐しない形状であるが、先端部近傍で内管 2及び外管 3を分岐させ、 T字型或いは Y字型としてもよい。 T字型の例として、図 1 2に、本発明のランスの別の様態を示す。各符号の意味は図 1 と同じであり、垂直に溶銑中に浸漬される点を除けば用法も図 1に示されたランスと同様である。なお、図 1 2 の形態のラ'ンスにおいて溶損を充分抑制するためには、先端部被覆層 4 Aは、ランス開口部中心 1 Cからランスの先端までの距離 dの 2倍の位置までを少なくとも被覆することが好ましい。すなわち、先端部被覆層 4 Aと胴部被覆層 4 Bとの境界は、ランス先端から 2 dの位置と湯面位置'との間に位置させることが好ましい。 Y字型ランスについても同様である。

内管 2及び外管 3はステンレス鋼鋼管である必要はなく、例えば炭素鋼鋼管であっても問題ない。また、内管 2からの酸素ガスの吹き込み流量を低下させる際に、窒素ガス、 A rガスといった不活性ガスを酸素ガスに混合させてもよいし、富酸素空気などの酸素含有ガスを適宜利用しても良い。酸素濃度は必要とされる酸素量より適宜決定すればよい。内管 2からの酸素ガス吹き込み流量の変更に伴って外管 3からの炭化水素系ガスの吹き込み流量を低下させる際にも、窒素ガス、 A rガスといった不活性ガスを炭化水素系ガスに混合させても V、。炭化水素ガスの量の目安としては、内管 2から供給される酸素の 5〜 2 0体積％程度とするこ-とが好ましい。炭化水素ガスとしては、プロパン（C₃H₈)、メタン（CH₄)、ェタン（C₂H₆)、ブタン（C₄H_1C1)等が比較的低温で熱分解し、分解吸熱も大きいため製鋼プロセスでは利用しゃすい。

<ランスの形状 >

次に、本発明者らは、とくに斜めに浸漬するランスの形状の改善について検討を行った。すなわち、トーピードカーのように開口部が溶銑容量に対して小さい場合、ランスを溶湯の湯面に対して斜めに浸漬することが撹拌を行き渡らせる観点から有利であるが、他方、振動の悪影響は垂直に浸漬する場合より強く受ける。

そこで、吹き込みランスの浸漬部のスポーリング対策として、吹き込みランスの先端に水平部を設け、該水平部の長さを変更する実験を行った。試験は、前述した図 1または図 3に示す形状のランスを用レ、、図 7に示すように、水平部 1 Bの長さ（L) を、酸素ガス吹き込みランス 1の外径（D) に対して 0倍〜 3倍の長さで変化させた。ここで、水平部 1 Bの長さ（L) は、内管 2の軸心線の長さで表している。なお、図 7において 20は鉄製羽根板（後述）である。

試験では、混銑車に収容された約 3 00 トンの溶銑に内管 2から 3 0 Nm ³Zm i nの流量で酸素ガスを吹き込み、また、内管 2と外管 3との間隙から Ζ δ Νπι³ /!!! i nの流量でプロパンガスを吹き込み、脱珪処理した。內管 2及び外管 3はステンレス鋼鋼管を使用した。耐火物被覆層 4としては、表 2の No.10と同じ、 A 1 ₂0₃— 5質量⁰ /oM g Oキャスタブルと A 1 ₂ O ₃ - 20質量。 /₀ S i O ₂キャスタブルとの複合型を使用し、耐火物被覆層 4の厚みは 3 5 mmとした。なお、酸素ガス吹き込みランス 1を浸漬する際の傾斜角（ランス（胴部）と溶銑表面とのなす角度）は 6 5° とし、水平部 1 B の溶銑表面とのなす角度は約 0° とした。脱珪処理における試験条件は前記表 1 と同様とした。水平部 1 Bの長さ (L) を変化させたと'きの浸漬部の損耗状況は表 3に示す。

表 3

No. 先端水平部長さ区分耗速度 (mm/ch) 最終損耗形態

21 水平部なし好適範囲外 0~10 安定 (スホ。-リンク'）

22 外径 χθ.3倍好適範囲外 0~9 安定 (スホ '-リンク'）

23 外径 χθ.5倍好適範囲 0~8 安定 (スホ。-リンク'）

24 外径 χθ.75倍好適範囲 0-8 安定 (スホ。-リンク'）

25 外径 x1.0倍好適範囲 0-8 安定 (スホ。-リンゲ）

26 外径 x1.5倍好適範囲 0~8 安定 (スホリンク'）

27 外径 x2.0倍好適範囲 0-8 安定 (スホ '-リンク'）

28 外径 x2.5倍好適範囲外 0~10 安定 (非浸漬部割れ）

29 外径 x3.0倍好適範囲外 0~12 安定 (非浸溃部割れ）表 3に示すように、水平部 1 Bの長さ（L) を、酸素ガス吹き込みランス 1の外径（D) の 0. 5倍〜 2. 0倍相当の長さとすることで、損耗速度は 8 mm/c h以下となり、表 2の結果よりさらに改善された。なお、表 2の実験における水平部 1 Bの長さは外形 Dの 0. 4倍であった。

これに対して、水平部 1 Bを設置しない場合や水平部 1 Bの長さ（L) が酸素ガス吹き込みランス 1の外径（D) の 0. 3倍の場合には、損耗速度の最大は 9〜 1 0 mmZ c hとなったすなわち、この場合には、水平部 1 B を設けることによる振動抑制の効果が発揮されず（すなわちランスが溶銑からのカを受けやすく）、スポーリングまでの寿命には顕著な改善が見られなかった。一方、水平部 1 Bの長さ（L) が酸素ガス吹き込みランス 1の外径 (D) の.2. 5倍以上の場合には、損耗速度の最大が 1 0〜 1 2 mmZ c li となた。この場合は、酸素ガス吹き込みランス 1の非浸漬部の割れがネックとなった。

これらの結果から、水平部 1 Bの長さ（L) は、酸素ガス吹き込みランス 1の外径（D) の 0. 5倍〜 2. 0倍相当の長さが最適であり、このようにすることで、酸素ガス吹き込みランス 1の耐用性が向上することが分かった。. このように、水平部.1 Bの長さ（L) を適正値に調整することにより、酸素ガス吹き込み時の振動が抑制され、酸素ガス吹き込みランス 1の浸漬部のスポーリング、及ぴ、酸素ガス吹き込みランス 1の非浸漬部等での亀裂を克服でき、安定的な酸素ガス吹き込みが可能となることが分かった。

本発明はこれらの試験結果に基づくものであり、発明に係る精鍊用吹き込みランス 1は、外表面に不定形耐火物の被覆層 4 (あるいは 4 Aおよび 4 B) が形成された、溶融金属の浴面に対して傾斜して浸漬される吹き込みランスであって、先端部には、吹き込みランス外径の 0. 5倍〜 2. 0倍相当の長さを有する水平部 1 Bが備えられていることを特徴とする。

なお、ランスの傾斜角は 4 5〜8 5° とすることが好ましく、さらに 6 0 ~ 8 5° とすることが好ましい。また、水平部は、溶銑の湯面（水平面）に対して一 20〜+ 20° 、好ましくは 0° となるようにすることが好ましい。 <ランス設備（振動防止機構） ■>

以上述べたように吹き込みランスの寿命を延ばすには、ランスの耐火物や形状を適正化することが好ましいが、さらに、ランスの振動を効率的にかつ低コストで抑制することも有効である。

すなわち、脱珪反 j ^の酸素源として酸素ガスのみを使用した場合のように酸素ガス供給量を増加した場合には、吹き込みランスの振動が激しくなり、スポーリングによる損耗が発生しゃすくなる。また、吹き込みランスの振動により、吹き込みランスの浸漬部のみならず、非浸漬部における耐火物被覆層の割れや脱落、更には、ランス昇降装置の亀裂発生なども発生することがあり、これらにより寿命を迎えるケースや設備破壌に至るケースもある。この知見から、吹き込みランスの耐用性を向上させるためには、吹き込みランスのならず、吹き込みランスを保持する保持部、及ぴ該保持部を昇降させる昇降装置を含めた精鍊用吹き込みランス設備全体の振動を防止することが有効であり、望まれる。そこで、精鍊用吹き込みランス設備全体の振動を防止するための振動防止対策を検討した。種々の試作 ·検討をした結果、吹き込みランスの上端部側に鉛直方向の振動を防止するための振動防止冶具を設置すればよいことが分かった。 ·

以下、添付図面を参照して振動防止冶具を備えた本発明に係る精鍊用吹き込みランス設備の一例を説明する。図 4は、本発明に係る精鍊用吹き込みランス設備を用いて混銑車に収容された溶銑を脱珪処理している概略図であり、図 5は、図 4の X— X ' 矢視による概略断面図、図 6は、図 5の Y— Y ' 矢視による概略図である。

図 4に示すように、本発明に係る精鍊用吹き込みランス設備 1 1は、溶銑 6の浴面に対して傾斜して浸漬される酸素ガス吹き込みランス 1 と、この酸素ガス吹き込みランス 1を保持する保持部 1 3と、この保持部 1 3を昇降させる昇降装置 1 2とで構成されている。即ち、保持部 1 3は保持部上部 1 3 Aで昇降装置 1 2に固定されており、昇降装置 1 2の作動により、酸素ガス吹き込みランス 1が混銑車 5に収容された溶銑 6に浸漬するようになっている。酸素ガス吹き込みランス 1の先端部には水平方向に向いた水平部 1 B が設置され、また、酸素ガス吹き込みランス 1の外周には不定形耐火物からなる耐火物被覆層 4が形成されている。耐火物被覆層は図 1に示すように複合構造でも良いし、また好ましい。酸素ガス吹き込みランス 1が所定の位置まで浸漬したときの、保持部 1 3 と酸素ガス吹き込みランス 1 との継目の直下位置に相当する部位の昇降装置 1 2に、振動防止冶具 1 9が設置されており、酸素ガス吹き込みランス 1 の耐火物被覆層 4の形成されていない .1

9部位が振動防止冶具 1 9に支持されている。

図中の符号 2 2はガイドロールである。ガイドロール 2 2は必須ではないが、単数または複数個設け、酸素ガス吹き込みランス 1がガイドロール 2 2 にも案内されるように構成することは、酸素ガス吹き込みランス 1の交換における作業性を向上させる上で有効な一手段である。振動防止冶具 1 9を、図 5及ぴ図 6を参照して説明する。酸素ガス吹き込みランス 1にはその下面側に鉄製羽根板 2 0が取り付けられている。羽根板の素材は、鉄製である必要は無い。すなわち、必要な強度を備え、素材コストおよび加工コスト^折り合うものであれば何でも良いが、これらの観点から鉄製であることが好ましい。なお、振動防止冶具は、その位置から、スラグゃ地金の付着による痛みが激しく、このため、低コストで更新可能.であることは重要である。

鉄製羽根板 2 0は何らかの手段で酸素ガス吹き込みランス 1を固定する。 1つの手段は、羽根板を酸素ガス吹き込みランス 1に溶接等の手段で接続 · 固定することである。他の手段として、符号 2 0 Aに示すような鉄製羽根板 2 0の補強材を設けることが考えられる。すなわち、 2枚の羽根板補強材 2 0 Aおよび鉄製羽根板 2 0とによって構成された凹状部分に、酸素ガス吹き込みランス 1を位置させて振動しないように拘束する。この場合、ランスを鉄製羽根板 2 0等に接合してもよいが、作業を省略する観点などから、接合せず単にランスを位置させるだけでもよい。なお、酸素ガス吹き込みランス 1 と鉄製羽根板 2 0を接合しない場合、図 5の振動防止冶具では同図の上方へのランスの振動は拘束されない。当該方向への振動力は比較的弱いので、このままでもよいが、同図上方への振動を拘束するために、押さえ手段を設けても良い。該押さえ手段としては、例えば、捕強材 2 0 Aに蝶番などで可動に接合され、ランス設置後に閉じる門状の押さえ具などが考えられる。鉄製羽根板 2 0の左右には、鉛直方向と平行に配置された部材 2 1 Aと、部材 2 1 Aに取り付けられた一対の部材 2 1 Bとで構成される鉄製羽根板受 2 1が設置されている。 . 対向する一対の部材 2 1 Bは間隙.を設けてあり、この間隙に鉄製羽根板 2 0が揷入されるようになっている。つまり、鉄製羽根板受 2 1は、左右から鉄製羽根板 2 0を挟持して案内するようになっている。この場合、鉄製羽根板 2 0の形成する平面が、酸素ガス吹き込みランス 1の浸漬方向と平行で且つ鉄製羽根板 2 0の形成する平面と溶銑浴面とのなす角度が、酸素ガス吹き込みランス 1 の溶融金属浴面に対する傾斜角度と同一になっていることが好ましい。なお、ランスと羽根板を固定しない場合、ランス設置前に羽根板が落下をすることを防止するため、落下防止冶具を備えても良い。落下防止冶具としては、例えば、羽根板受部材 2 1 Bの図 6における下端の位置にストッパーを設置することが考えられる。羽根板受の素材も鉄製である必要は無いが、羽根板と同様の理由で鉄製が好適である。このように、鉄製羽根板.2 0が鉄製羽根板受 2 1で案内されることにより、酸素ガス吹き込みランス 1の鉛直方向の振動が抑制されるようになつている。尚、振動防止冶具 1 9は、鉄製羽根板 2 0及び鉄製羽根板受 2 1で構成されていることに特徴があり、その他の細部（例えば構造や、羽根板と羽根板受との間の「遊び」の設計など）は必要に応じて自由に構成してよい。この構成の精鍊用吹き込みランス設備 1 1を用いることで、ガス反力による酸素ガス吹き込みランス 1の鉛直方向の振動が抑制されて、吹き込みランス 1の非浸漬部における耐火物被覆層 4の亀裂、脱落、及び、昇降装置 1 2 における亀裂が解消された。 - 例えば、図 5およぎ図 6に示された装置を用いて、表 3の No. .2 5の条件で試験を行ったところ、損耗速度は 7 m m / c h以下となり、表 3の結果よりさらに改善された。このように、振動防止冶具 1 9を設置することにより、酸素ガス吹き込み時の振動が抑制され、酸素ガス吹き込みランス 1の浸漬部のスポーリング、及び、酸素ガス吹き込みランス 1の非浸漬部ゃ昇降装置 1 2での亀裂をさらに抑制でき、より安定的な酸素ガス吹き込みが可能となることが分かった。本発明はこのような試験結果に基づくものであり、発明に係る精鍊用吹き込みランス設備 1 1は、外表面に不定形耐火物の耐火物被覆層 4が形成された、溶融金属の浴面に対して傾斜して浸漬される酸素ガス吹き込みランス 1 と、酸素ガス吹き込みランス 1を保持する保持部 1 3と、保持部 1 3を昇降させる昇降装置 1 2とを備え、溶融金属中に酸素ガスまたは酸素ガスとともに精鍊剤を吹き込むための精鍊用吹き込みランス設備 1 1であって、前記吹き込みランスの振動を抑制する機構として、酸素ガス吹き込みランス 1の上端部に、これを保持す.る羽根板 2 0と、昇降装置 1 2に備えられ、 (鉄製）羽根板 2 0を挟持す（鉄製）羽根板受 -2 .1 とを有することを特徴とする。ここで羽根板 2 0の形成する平面が酸素ガス吹き込みランス 1の浸漬方向と平行で且つ羽根板 2 0の形成す'る平面と溶融金属浴面とのなす角度が酸素ガス吹き込みランス 1 の溶融金属浴面に対する傾斜角度と同一であることが好ましい。また、羽根板 2 0が羽根板受 2 1に案内されることによって酸素ガス吹き込みランス 1 のとくに鉛直方向の振動が抑制されることが好' ましい。本発明に係る精鍊用吹き込みランス設備 1 1は、溶融金属中に酸素ガスまたは酸素ガスとともに精鍊剤を供給して行う精練であるならばどのような精鍊であっても適用可能であるが、特に、溶銑の脱珪処理における酸素ガス供給手段として適用することが最適である。本発明を適用することにより、脱珪処理において熱余裕の創出'が可能となり、その結果、鉄スクラップ溶解のための熱として使用可能となるからである。ここで、精鍊剤とは、酸素源となる酸化鉄や生石灰などのフラックスのことである。

本発明に係る精鍊用吹き込みランス設備 1 1を用いて溶銑 6の脱珪処理を行う場合の留意事項は、本発明の吹き込みランスの場合と同様である。

<溶銑の予備処理方法 >

次に、本発明に係る溶銑の予備処理方法について、図面を参照しながら説明する。

図 8は、本発明に係る 1実施形態の予備処理設備を示すものであり、符号. 5は、高炉（図示せず）から出銑された溶銑 6を保持しているトーピードカ一（镡銑車）であり、この混銑車 5内に移動可能に、昇降自在な、上吹きランス 2 6及び精鍊用吹き込みランス設備 1 1が設置されている。

上吹きランス 2 6は、混銑車 5内の溶銑 6の浴面 6 Aに気体酸素を吹き付け供給する装置である。なお、この上吹きランス 2 6で供給する気体酸素を、上吹き気体酸素と称する。

精鍊用吹き込みランス設備 1 1は、溶銑 6の内部に気体酸素を吹き込み供給するとともに、酸化鉄等の固体酸素を溶銑 6の内部に供給する装置である。なお、この精鍊用吹き込みランス設備 1 1で供給する気体酸素を、インジェクション気体酸素と称する。

混銑車 5は、溶銑 6の予備処理を行なった後に転炉（図示せず）まで移動し、溶銑 6を転炉に装入するようになっている。次に、本実施形態の溶銑の予備処理方法について、図 9およぴ図 1 0を参照しながら説明する。

図 9に示すように、予備処理の初期に行なわれる脱珪反応期には、精鍊用吹き込みランス設備 1 1から固体酸素及ぴィンジ: クション気体酸素の供給を行なうとともに、上吹きランス 2 6により上吹き気体酸素の供給を行なうようにした。また、脱珪反応期に引き続いて行なわれる脱燐反応期に、ィンジェクション気体酸素の供給を停止し、固体酸素及ぴ上吹き気体酸素の供給を引き続き行なうようにした。

ここで、癸明者は、脱珪反応期に、混銑車 5内に供給される固体酸素及びィンジクション気体酸素を合わせた酸素の供給速度（以下、総酸素供給速度と称する）が増大すると、溶銑 6中の炭素と急激に反応して突沸物が発生し、混銑車 5の溶銑口から突沸物が噴出するスロッビング（s lopping) が起きるおそれがあるので、固体酸素及ぴィンジェクション気体酸素の総酸素供給速度を検討することにした。そして、表 4に示す成分の溶銑 6について、脱珪期のスロッビングの発生率と総酸素供給速度との関係を調査した。

表 4

その関係を図 1 0に示すが、総酸素供給速度が 0 . 2 3 N m ³ / t /minを下回るときにはス口ッビングが発生せず、総酸素供給速度が 0 . 2 3 N m ³ / t Zminを上回ると、 .スロッビングの発生頻度が増加することがわかった。したがって、脱珪反応期における総酸素供給速度を、 0 . 2 3 N m ³ / t / minを下回る値に制限するようにした。次に、本実施形態の溶銑の予備処理方法の作用効果について、図 8から図 1 1を参照して説明する。なお、図 1 1は、脱珪反応期及ぴ脱憐反応期における溶銑 6中の炭素（C ) 濃度、珪素（S i ) 濃度、燐（P ) 濃度の変化を示している。

脱珪反応期では、図 1 1に示すように溶銑 6中の珪素濃度が大幅に減少していく。

そして、溶銑 6の内部に精鍊用吹き込みランス設備 1 1から固体酸素及ぴインジェクション気体酸素を供給しているので、溶銑 6の脱炭反応により十分な量の C Oガスが発生する。溶銑 6から十分な量の C Oガスが発生すると、この C Oガスと溶銑 6の浴面 6 Aに向けて上吹きランス 2 6から供給される上吹きの気体酸素との 2次燃焼が活発になり、大量の 2次燃焼の熱が発生する。したがって、脱珪反応期には、大量に 2次燃焼の熱が癸生することによって熱捕償を効果.的に行なうことができる。

また、前述したように脱珪反応期における総酸素供給速度を、 0 . 2 3 N m ³ / t /minを下回る値に制限するようにしたので、混銑車 5の溶銑口から突沸物が噴出するスロッビングの発生を防止することができる。

一方、脱珪反応期に引き続いて行なわれる脱燐反応期は、本実施形態では、ィシジェクション気体酸素の供給を停止し、固体酸素及び上吹き気体酸素の供給を引き続き行なうようにしている。本実施形態では、溶銑 6中に吹き込まれる固体酸素は溶銑中 [ C ]との反応よりも優先的に溶銑中 [ P ]と反応するため、図 1 1の線 Cで示すように炭素濃度は比較的緩やかに減少していき、脱炭反応が抑制される。これに対して、脱燐反応期の初期から溶銑 6中にィンジェクション気体酸素を供給する従来の方法では、気体酸素は溶銑中 [ P ] よりも溶銑中 [ C ]と優先的に反^するため、図 1 1の線 C 'で示すように炭 . 素濃度が比較的急激に減少する。そのため後工程における脱炭工程において熱余裕が不足する等の支障が生じる。

このように、本実施形態の脱燐反応期では、脱炭反応よりも比較的優先して脱燐反応が起こるため、図 1 1の線 Pで示すように燐濃度を確実に低下させることができる。これに対して、脱燐反応期の初期から溶銑 6中にインジクション気体酸素を供給する従来の方法では、脱炭反応が脱燐反応よりも比較的優先して起こるため、図 1 1の線 P 'で示すように溶銑 6中の憐濃度が低下しない。

したがって、本実施形態では、脱珪反応期には、溶銑 6の内部に固体酸素及ぴィンジエタション気体酸素の供給を行ない、且つ溶銑 6の浴面 6 Aに向けて上吹き気体酸素の供給を行なうとともに、脱燐反応期には、ィンジェクシヨン気体酸素の供給を停止し、固体酸素及び上吹き気体酸素の供給を行なうようにしているので、熱補償を効果的に行うことができるとともに、効率よく不純物の除去を行なうことができる。なお、脱珪反応期、脱燐反応期の見極めは、混銑車 5の集麈系統で測定される排ガス温度或いはサンプル採集で判定でき、例えば排ガス温度の急上昇で脱珪反応期の終了を検知することができる。

〔実施例〕

(実施例 1 )

俞述した図 4に示す精鍊用吹き込みランス設備及び、前述した図 1および図 7に示す吹き込みランスを用いて、混銑車に収容された溶銑の脱珪処理を実施した（表 5参照）。なお、振動防止治具については図 5および図 6に示すものを用いたが（本発明^ 3、 5、 6 )、一部の例で使用しなかった（本発明例 1、 2、 4 )。ランスの傾斜角は 7 0。Cとした。なお、本発明例 7についてのみ、図 1 2に示す T型ランスを用い垂直に浸漬した。

酸素ガス吹き込みランスの耐火物被覆層は、 A 1 2 O 3 " 1 0質量。/。 M g Oキャスタブルで施工するか（本発明例 1 )、先端から溶銑湯面までを A 1 ₂ 0 3 - 7質量⁰ /₀ M g Oキャスタブル、溶銑湯面より上方を A 1 ₂ 0 3 - 2 0 質量％S i O ₂キャスタプルで施工した（本発明例 2〜 7 )。

脱珪処理においては、内管から酸素ガスを吹き込みながら、内管と外管との間隙からプロパンガスを吹き込んで、合計 3 6〜 5 1チャージの脱珪処理を実施した。吹き込みランス先端部の水平部の長さ（L ) は外径（D ) の 0 . 3倍〜 1 . 0倍とした。また、比較のために、耐火物被覆や吹き込みガス等を変化きせて脱珪処理を実施した（表 6参照）。なお、一部の比較例では、酸素源として酸素ガスを使用せずに、窒素ガスを搬送用ガスとして酸化鉄（鉄鉱石）を內管から吹き込んだ（比較例 5および 6 )。酸化鉄中の酸素量は、化学分析値に基づいて酸化鉄 1 k gが酸素ガス 0 . 1 5 N m ³に相当するとし、送酸速度が一定になるように調整した。

表 5およぴ表 6に記載された以外の条件は、本発明例およぴ比較例とで同一とした。本発明例おょぴ比較例において、酸素ガス吹き込みランスの寿命及び溶銑温度について比較評価した。表 5および表 6に試験条件及び試験結果を示す。

表 5

*1) '複合被覆 1: 先端〜湯面: AI₂0₃-7質量％MgO、湯面 ~_:Ai₂0₃- 20質量"/ iSi'0₂

*2) T型ランス垂直浸漬：図 12に示すランスを使用し、垂直に浸漬表 6

*1) 複合被覆 1: 先端〜湯面: AI₂0₃-7質量 ¾MgO、湯面〜： AI₂O₃-20質量 ¾Si0₂

*2) 複合被覆 2: 先端〜湯面: Al₂0₃- 50質量 %MgO、湯面〜： A1₂0₃- 20質量 ¾SiO_z

*3) T型ランス垂直浸漬：図 12に示すランスを使用し、垂直に浸漬

本発明例では、斜め浸漬タイプで 3 0 Nm³/minの酸素を吹き込んだ場合、条件ランス寿命は 1本のランス当たり平均で 6. 5〜 8. 5チャージ（以下、 rc liZ本」と記す）となり（本発明例 1 ~ 5)、その他の条件でも好成績であった。また、酸素ガスを酸素源として使用することで、脱珪処理において、溶銑中の珪素 0. 0 1質量％が酸化除去されることにより約 3°Cの溶銑温度上昇が認められた。

なお、複合被覆とした方がランス寿命は長く（本発明例 1 と本発明例 2との比較）、また先端水平部長さを外形の 0. 5〜 2. 0倍の範囲内とすることによりランス寿命が改善され（本発明例 2と本発明例 4との比較）、振動防止治具を採用することでさらにランス寿命が改善される（本発明例 4と本発明例 5との比較）。一方、耐火物被覆層を A 1 ₂0₃— 20質量。 /oS i 0₂キャスタブルで施工した酸素ガス吹き込みランスを用い、その他は本発明例 5と同じ条件で脱珪処理した場合（比較例 1 ) では溶損が激しくランス寿命は 1. 0 c 本であった。垂直浸漬型でも同様に、 A 1 2 O 3 - 20質量。 /oS i O ₂キャスタブルを耐火物被覆として用いると極度にランス寿命は短くなる（本発明例 7と比較例 7との比較）。

また、 A 1 ₂0₃— 20質量％S i 0₂キャスタプルを耐火物被覆として用い、酸素源として酸素ガスを使用せずに、窒素ガスを搬送用ガスとして酸化鉄（鉄鉱石）を内管から吹き込み、また、内管と外管との間隙からは窒素ガスを吹き込んだ場合、ランス寿命はそこそこ良好であるが、使用する酸化鉄の顕熱に熱が奪われ、溶銑温度は上昇せず、逆に低下（したがって後工程での熱余裕不足を補償するためのエネルギーが増大する）ことが確認された (比較例 5および比較例 6 )。

なお、 30質量％を超える Mg Oを含有する A 1 ₂0₃— Mg O系キャスタブルを単独あるいは複合して耐火物被覆として用いた場合、スポーリングのためランス寿命はやはり本発明に比べて著しく低くなる（比較例 2および比較例 3)。また、本発明の A 1 ₂0₃— Mg O系キャスタプルを用いたとしても、内管と外管との間隙から炭化水素ガスを供給しない場合は、ランス寿命は著しく低下する（比較例 4)。

(実施例 2)

表 7は、溶銑の予備処理方法の脱珪反応期を、本発明と、本発明と異なる比較方法（以下、比較例）とで比べたものである。予備処理設備としては図 8に示したものを用い、ランス設備としては実施例 1の本発明例 5 (表 5) に示したものと同じものを用いた。本発明の脱珪反応期では、溶銑 6の内部に固体酸素及ぴィンジェクション気体酸素の供給を行ない、且つ溶銑 6の浴面 6 Aに向けて上吹き気体酸素の供給を行なっている。また、比較例 Aは、脱珪反応期に、固体酸素及びィンジェクション気体酸素の供給を行なっている。また、比較例 Bは、脱珪反応期に、固体酸素及び上吹き気体酸素の供給を行なっている。なお、表 7の熱余裕とは、脱珪反応期の前後の炭素濃度及び溶銑温度で得ちれる数値であり、数値が高いほど熱補償が効果的に得られることを表している。比較例 Aは、固体酸素及びィンジェクション気体酸素を供給したことで溶銑の脱炭反応により十分な量の C Oガスが発生することができる力、上吹き気体酸素を供給していないので 2次燃焼が発生しにくく、比較例 B、本発明と比較して熱余裕の数値が低い。

また、比較例 Bは、固体酸素のみを供給したことで溶銑の C Oガス発生量. が少なく、上吹きの気体酸素との 2次燃焼による熱を十分に発生することができず、本発明と比較して熱余裕の数値が低い。

これに対して、本発明は、固体酸素及ぴィンジヱクション気体酸素を供給したことで溶銑の脱炭反応により十分な量の C〇ガスが発生し、この C〇ガスと上吹きの気体酸素との 2次燃焼による熱を十分に浴面で発生させ着熱することができ、熱余裕の数値が高くなる。

表 7

*)熱余裕- (脱珪反応後の G質量 % -処理前の G質量 5 x100

- (脱珪反応後の溶銑温度 °C -処理前の溶銑温度。 C) また、表 8は、溶銑の予備処理方法の脱珪反応期に引き続き、脱憐処理を行なった際の、本発明法と、本発明と異なる方法（以下、比較例）とで比べたものである。本発明の脱燐反応期では、溶銑 6中に固体酸素の供給を行い、且つ溶銑 6の浴面 6 Aに向けて上吹き気体酸素の供給を行なう。また、比較例 Cは、脱燐反応期に固体酸素及ぴィンジェクション気体酸素の供給を行なつている例を、また、比較例 Dは、脱燐反応期に固体酸素及びインジェクション気体酸素の供給を行い、且つ溶銑 6の浴面 6 Aに向けて上吹き気体酸素の供給を行なっている例を示す。なお、表 8の熱余裕とは、脱燐反応期の前後の炭素濃度及び溶銑温度から得られる数値であり、表 7と同様に数値が高いほど熱捕償が効果的に得られることを表している。本発明法においてはィ. ンジェクション気体酸素の供給を停止し、固体酸素供給及ぴ上吹き気体酸素の供糁を行なうため、脱炭反応が抑制され脱燐反応が進み、しかも、熱余裕の数値が高くなる。

表 8

*) 熱余裕 = (脱燐期後の c質量 ¾ -処理前の C質量 %)x100

- (脱燐期後の溶銑温度 °C-処理前の溶銑温度。 G)

産業上の利用の可能性

本発明の精鍊用ガス吹き込みランスによれば、酸素ガス吹き込みランスの損耗速度を従来に比べて大幅に低減することができる。その結果、精鍊反応に使用する酸素ガスを、転炉底吹き羽口のような設備を用いることなく、高効率で且つ撹拌力を向上可能な方法で長期間にわたって同一の吹き込みランスで添加可能となる。また、酸素ガスを吹き込むことにより、熱余裕の創出が可能となる。その結果、鉄スクラップ溶解のための熱として使用可能となり、鉄鋼材料製造 B#の C O ₂発生量の低減に寄与する。また酸素ガス吹き込みランスの寿命が延びることで、ランス交換作業の頻度軽減、更に、常に浸漬深さを大きく確保できるといった利点がある。

特に、溶銑の脱珪処理で本発明の酸素ガス吹き込みランスを使用することにより、脱珪反応による発熱を有効利用することが可能となる。また、本発明の精鍊用ガス吹き込みランス設備によれば、酸素ガス吹き込み時の吹き込みランスの振動が抑制され、振動に起因して吹き込みランスに作用する応力が緩和されて、吹き込みランスの浸漬部におけるスポーリングや、非浸漬部における亀裂がさらに防止され、吹き込みランスの耐用性を従来に比べて大幅に向上させることができる。その結果、上に述べた効果をさらに向上させることができる。さらに、本発明の溶銑の予備処理方法によると、脱珪反応の時期に、溶銑内に固体酸素を供給し、溶銑内に気体酸素を吹き込み供給することで、溶銑中の脱炭反応により十分な量の C Oガスが発生する。そして、溶銑から十分な量の C Oガスが発生すると、この C Oガスと溶銑の浴面に向けて供給されている気体酸素と浴面で 2次燃焼が活発になり、大量の 2次燃焼の熱が発生して溶銑に着熱する。これにより、溶銑の熱補償を効果的に行なうことができ、次工程の転炉での脱炭精鍊における溶銑配合率の低下や熱余裕の不足等の問題を解消することができる。

Claims

请求の範囲

1 . 溶融金属中に少なくとも酸素ガスを吹き込むための吹き込みランスであって、

内管及び外管からなる 2重管構造であり、

内管からは酸素ガスが吹き込まれ、

内管と外管との間隙からは炭化水素系ガスが吹き込まれ、

外管の外周には M g Oを 5〜 3 0質量％含有する A 1 ₂ O ₃— M g O系不定形耐火物が被覆されている精鍊用吹き込みランス。

2 . 請求項 1に記載の精鍊用吹き込みランスであって、

該ランスの先端部において前記外管の外周に前記 A 1 2 O 3 - M g O系不定形耐火物が被覆されおり、

該ランスの前記先端部に続く胴部において前記外管の外周に S i o ₂を

1 0〜 4 0質量％含有する A 1 2 O a - S i O ₂系不定形耐火物が被覆されている精鍊用吹き込みランス。

3 . 請求項 1または 2に記載の精鍊用吹.き込みランスであって、

溶融金属の浴面に対して傾斜して浸漬され、

先端に外径の 0 . 5倍〜 2 . 0倍の長さを有する水平部が備えられた精鍊用吹き込みランス。

4 . 請求項 1〜 3のいずれかに記載された精鍊用吹き込みランスと、該吹き込みランスを保持する保持部と、該保持部を昇降させる昇降装置とを備えた、溶融金属中に少なくとも酸素ガスを吹き込むための精鍊用吹き込みランス設備であって、

前記吹き込みランスの振動を抑制する機構として、前記吹き込みランスの上端側を保持する羽根板と、前記昇降装置に備えられ、前記羽根板を挟持する羽根板受とを有する精鍊用吹き込みランス設備。

5 . 請求項 1〜 3のいずれかに記載された精鍊用吹き込みランスを溶銑中に浸漬させ、 ·

該吹き込みランスの内管から溶銑中に酸素ガスを吹き込むとともに内管と外管との間隙から炭化水素系ガスを吹き込んで、

溶銑中の珪素を酸化除去する、溶銑の脱珪処理方法。

6 . 請求項 4に記載された精鍊用吹き込みランス設備を用い、

該吹き込みランスを溶銑中に浸漬させ、

該吹き込みランスの内管から溶銑中に酸素ガスを吹き込むとともに内管. と外管との間隙から炭化水素系ガスを吹き込んで、

溶銑中の珪素を酸化除去する、溶銑の脱珪処理方法。

7 . 搬送容器内に保持されている溶銑に対して脱珪反応、脱燐反応を行なう溶銑の予備処理において、 ■

前記脱珪反応の時期に、前記溶銑内に固体酸素源を供給し、

気体酸素を前記溶銑の浴面に吹き付けるとともに、

請求項 1または 2に記載された精鍊用吹き込みランスより前記溶銑内に気体酸素を吹き込み供給する溶銑の予備処理方法。

8 . 前記脱燐反応の時期に、

前記溶銑内に固体酸素源を供給するとともに、

気体酸素を前記溶銑の浴面に吹き付ける、

請求項 7に記載の溶銑の予備処理方法。

9 . 前記脱珪反応の時期において

前記溶銑内に供給される前記固体酸素源及ぴ気体酸素の総酸素供給速度を、 0 . 2 3 N m³/ t Zniinを下回る値とする請求項 7又は 8に記載の溶銑の予備処理方法。