明 細 書
リチウム含有複合酸化物の製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、体積容量密度が大きく、安全性が高く、充放電サイクル耐久性及び低 温特性に優れた、リチウム二次電池正極に適したリチウム含有複合酸化物の製造方 法、製造されたリチウム含有複合酸化物を含むリチウム二次電池用正極及びリチウム 二次電池に関する。
背景技術
[0002] 近年、機器のポータブル化、コードレス化が進むにつれ、小型、軽量でかつ高エネ ルギー密度を有するリチウム二次電池などの非水電解液二次電池に対する要求が ますます高まっている。力かる非水電解液二次電池用の正極活物質には、 LiCoO、
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LiNi Co Mn O、 LiNi Co O、 LiMn O、 LiMnOなどのリチウムと遷移金
1/3 1/3 1/3 2 0.8 0.2 2 2 4 2
属の複合酸化物 (リチウム含有複合酸化物と ヽぅ)が知られて ヽる。
[0003] リチウム含有複合酸ィ匕物のなかでも、 LiCoOを正極活物質として用い、リチウム合
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金、グラフアイト、カーボンファイバーなどのカーボンを負極として用いたリチウム二次 電池は、 4V級の高い電圧が得られるため、高エネルギー密度を有する電池として広 く使用されている。
[0004] しかしながら、 LiCoOを正極活物質として用いた非水系二次電池の場合、正極電
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極層の単位体積当たりの容量密度及び安全性の更なる向上が望まれるとともに、充 放電サイクルを繰り返し行うことにより、その電池放電容量が徐々に減少するといぅサ イタル特性の劣化、重量容量密度の問題、あるいは低温での放電容量低下が大きい という問題などがあった。
[0005] これらの問題を解決するために、特許文献 1には、 LiCoOの Co原子の 5〜35%を
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W、 Mn、 Ta、 Ti又は Nbで置換することがサイクル特性改良のために提案されている 。また、特許文献 3には、格子定数の c軸長が 14. 051 A以下であり、結晶子の(110 )方向の結晶子径が 45〜: LOOnmである、六方晶系の LiCoOを正極活物質とするこ
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とによりサイクル特性を向上させることが提案されている。
[0006] 更に、特許文献 2には、 Niと Co又は、 Niと Mnの共沈殿物を湿式粉砕器で粉砕し、 その後スプレードライヤーで乾燥造粒し、これにリチウム化合物の粉体を添加混合し 、焼成することにより、 Li-Ni-Co複合酸ィ匕物あるいは Li-Ni-Mn複合酸ィ匕物を製造 することが提案されている。
[0007] また、特許文献 3には、リチウム複合酸化物を製造する方法であって、ニッケル原料 、コバルト原料及びマンガン原料を湿式粉砕し、得られた粉砕物を噴霧乾燥により造 粒し、得られた造粒物を更にリチウム原料と乾式混合し、得られた乾式混合物を焼成 することを特徴とする Li-M-Co-Mn複合酸ィ匕物の製造方法が提案されている。 しかし、この場合にも高い体積容量密度の正極活物質は得られず、また、サイクル 特性、安全性ゃ大電流放電特性の点でもなお充分ではな ヽ。
[0008] また、特許文献 4には、リチウム源、金属源とドーピング元素を含む溶液形態又は 懸濁液形態からなるドーピング液を混合し、その混合物を熱処理する工程を含むリチ ゥム二次電池用正極活物質の製造方法が提案されている。
特許文献 5には、金属原料物質を、有機溶媒又は水に溶解可能なドーピング元素 を含有し、かつ溶液形態又は懸濁液形態力 なるコーティング液に金属原料物質を 添加して金属原料物質を表面処理した後、これを乾燥して前駆体を製造し、更にリ チウム原料物質を混合して、熱処理することによるリチウム二次電池用正極活物質の 製造方法が提案されている。その具体的態様としては、有機溶媒を用いたドーピング 元素溶液や、硼素力 なるドーピング元素含有懸濁水溶液をドーピング液として用い ている。
[0009] また、特許文献 6には金属塩粒子に、(NH ) HPOと Α1 (ΝΟ ) · 3Η Οに水を添カロ
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して得られるコロイド形態のコーティング水溶液を作用させた後乾燥し、リチウム化合 物と混合 '熱処理する電池用正極活物質の製造方法が提案されている。しかし、得ら れた正極活物質は、その電池性能、即ち放電容量、充放電サイクル耐久性や安全 性も不満足である。
[0010] 上記のように、従来の技術では、リチウム複合酸ィ匕物を正極活物質に用いたリチウ ムニ次電池において、体積容量密度、安全性、塗工均一性、サイクル特性更には低 温特性、製造コストなどの全てを充分に満足するものは未だ得られて 、な 、。
[0011] 特許文献 1 :特開平 3— 201368号公報
特許文献 2:特開平 10— 134811号公報
特許文献 3 :特開 2005— 123180号公報
特許文献 4:特開 2002— 373658号公報
特許文献 5 :特開 2003— 331845号公報
特許文献 6:特開 2003—331846号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0012] 本発明は、体積容量密度が大きぐ安全性が高ぐ充放電サイクル耐久性に優れ、 更には、低温特性に優れた、製造コストの安価なリチウム二次電池正極用のリチウム 含有複合酸化物の製造方法、製造されたリチウム含有複合酸化物を含む、リチウム 二次電池用正極、及びリチウム二次電池の提供を目的とする。
課題を解決するための手段
[0013] 本発明者は、鋭意研究を続けたところ、 N元素源粉末又はその粉砕物に対して、 N 元素の置換元素である M元素を M元素源の水溶液として作用させて、乾燥造粒する ことにより、リチウム含有複合酸ィ匕物におけるコノ レトなどの N元素が極めて充分にか つ均一に M元素により置換されることにより、上記の課題が良好に達成され、リチウム 二次電池正極に適したリチウム含有複合酸化物が得られることを見出した。
[0014] 力べして、本発明は以下の構成を要旨とするものである。
(1)リチウム源、 N元素源、 M元素源及び必要に応じて含有されるフッ素源を含む混 合物を焼成することによる、一般式 Li N M O F (但し、 Nは、 Co、 Mn及び N な る群力 選ばれる少なくとも 1種の元素であり、 Mは、 N元素以外の遷移金属元素、 A 1及びアルカリ土類金属元素力もなる群力も選ばれる少なくとも 1種の元素である。 0. 9≤p≤l. 2、 0. 95≤x≤2. 00、 0<y≤0. 05、 1. 9≤z≤4. 2、 0≤a≤0. 05)で 表されるリチウム含有複合酸化物の製造方法であって、 M元素源が溶解した水溶液 と、 N元素源粉末若しくはその粉砕物とを混合してスラリーを形成し、必要に応じて粉 砕した後、該スラリーを乾燥造粒して得られる造粒物、リチウム源粉末、及び必要に 応じて含有されるフッ素源粉末とを含む混合物を酸素含有雰囲気中で 700〜 1100
°cで焼成することを特徴とするリチウム含有複合酸化物の製造方法。
(2)乾燥造粒前のスラリー中の N元素源粉末の粉砕物の平均粒径 (D50)が 0. 1〜 であり、かつ、造粒物の平均粒径(D50)が 5〜25 /ζ πιである上記(1)に記載 の製造方法。
(3) Μ元素源が溶解した水溶液が、カルボン酸塩を含有する水溶液である上記(1) 又は(2)に記載の製造方法。
(4)前記カルボン酸塩力 少なくともカルボキシル基を 1つ有し、更に、水酸基及び力 ルポ-ル基の何れか又は両方の基を 1つ以上有して 、てもよ 、カルボン酸塩である 上記 (3)に記載の製造方法。
(5)前記カルボン酸塩が、炭素数 1〜8の脂肪族カルボン酸の塩である上記(3)又は (4)に記載の製造方法。
(6)前記カルボン酸塩力 クェン酸、蓚酸、ダリオキシル酸、乳酸及び酒石酸からな る群力 選ばれる少なくとも 1種のカルボン酸の塩である上記(3)〜(5)に記載の製 造方法。
(7)前記カルボン酸塩が、蟻酸又は酢酸のアンモニゥム塩である上記(3)〜(5)に記 載の製造方法。
(8) Μ元素源が、炭酸ジルコニウムアンモ-ゥム及び Ζ又はハロゲン化ジルコニウム アンモ-ゥムである上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(9) Μ元素源が溶解した水溶液が、 ρΗ2〜12である上記(1)〜(8)のいずれかに記 載の製造方法。
(10) Ν元素源が、水酸化コバルト、ォキシ水酸化コバルト、四三酸化コバルト及び炭 酸コバルトからなる群力 選ばれる少なくとも 1種である上記(1)〜(9)のいずれかに 記載の製造方法。
(11) Ν元素源が、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩、ニッケル コバルト共沈物、 ニッケル マンガン共沈物、及びニッケル コノ レト マンガン共沈物からなる群か ら選ばれる少なくとも 1種である上記(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
(12)上記(1)〜(11)の 、ずれかに記載の製造方法により製造されたリチウム含有 複合酸化物を含むリチウム二次電池用正極。
( 13)上記( 12)に記載されたリチウム二次電池用正極を使用したリチウム二次電池。
(14) N元素: M元素が 0. 95 : 0. 05〜0. 9995 : 0. 0005の割合にて N元素源及び M元素源を含む造粒物(但し、 Nは、 Co、 Mn及び N なる群力 選ばれる少なく とも 1種の元素であり、 Mは、 N元素以外の遷移金属元素、 A1及びアルカリ土類金属 元素からなる群力も選ばれる少なくとも 1種の元素である。)の製造方法であって、 M 元素源が溶解した水溶液と、 N元素源粉末若しくはその粉砕物とを混合してスラリー を形成し、必要に応じて粉砕した後、該スラリーを乾燥造粒することで得られる N元素 源及び M元素源を含む造粒物の製造方法。
(15) N元素源が、水酸化物、ォキシ水酸化物、酸化物及び炭酸塩からなる群から選 ばれる少なくとも 1種の化合物である上記(14)に記載の製造方法。
( 16) M元素源が溶解した水溶液力 クェン酸、蓚酸、ダリオキシル酸、乳酸及び酒 石酸力 なる群力 選ばれる少なくとも 1種のカルボン酸の塩を含有する水溶液であ る上記(14)又は(15)に記載の製造方法。
発明の効果
[0015] 本発明によれば、体積容量密度が大きぐ安全性が高ぐ充放電サイクル耐久性に 優れ、更には、低温特性に優れた、リチウム二次電池正極に適したリチウムコバルト 複合酸化物などのリチウム含有複合酸化物の製造方法、製造されたリチウム含有複 合酸化物を含む、リチウム二次電池用正極、及びリチウム二次電池が提供される。 発明を実施するための最良の形態
[0016] 本発明の製造方法で得られるリチウム二次電池正極に適したリチウム含有複合酸 化物は、一般式 Li N M O Fで表される。かかる一般式における、 p、 x、 y、 z及び a
p x y z a
は上記に定義される。なかでも、 p、 x、 y、 z及び aは、好ましくは、それぞれ、 0. 97≤ p≤l. 03、 0. 97≤x≤2. 00、 0. 0005≤y≤0. 03、 1. 95≤z≤4. 05、 0. 001≤ a≤0. 01であり、さらに好ましくは、それぞれ、 0. 97≤p≤l. 03、 0. 97≤x≤0. 9 995、 0. 0005≤y≤0. 03、 1. 95≤z≤2. 05、 0. 001≤a≤0. 01である。さらに、 x、yに関して ίま、 0. 975≤χ≤0. 999, 0. 001≤y≤0. 025、 x+y= 1力 S好ましく、 特に、 0. 975≤x≤0. 998、 0. 002≤y≤0. 025、 x+y= 1力 ^好まし!/ヽ。なお、ここ で、 aが 0より大きいときには、酸素原子の一部がフッ素原子で置換された複合酸ィ匕
物になるが、この場合には、得られた正極活物質の安全性が向上する。
[0017] Nは、 Co、 Mn及び Niからなる群から選ばれる少なくとも 1種の元素である。なかで も、 Co、 Ni、 Coと Ni、 Mnと Ni、 Coと Niと Mnである場合が好ましい。 Mは、 N元素以 外の遷移金属元素、アルミニウム、及びアルカリ土類金属力 なる群力 選ばれる少 なくとも 1種の元素である。ここで、遷移金属元素は周期表の 4族、 5族、 6族、 7族、 8 族、 9族、 10族、 11族及び 12族の遷移金属を表す。なかでも、 M元素は、 Ti、 Zr、 H f、 Nb、 Ta、 Mg、 Sn、 Zn及び Alからなる群から選ばれる少なくとも 1つの元素が好ま しい。特に、容量発現性、安全性、サイクル耐久性などの見地より、 Ti、 Zr、 Nb、 Mg 又は Alが好ましい。
[0018] 本発明において、特に、 N元素の置換元素である M元素が A1と Mgとからなり、 A1 ZMgが、原子比で好ましくは 1Z3〜3Z1、特に好ましくは 2Z3〜3Z2であり、力 つ カ好ましく ίま、 0. 005≤y≤0. 025、特に好ましく ίま 0. 01≤y≤0. 02である場 合には、電池性能のバランス、即ち、初期重量容量密度、安全性、充放電サイクル 安定性のバランスがよいので特に好ましい。また、本発明において、 M元素が Mgと M2 (M2は Ti、 Zr、 Ta、及び Nbからなる群から選ばれる少なくとも 1種の元素である )とからなり、 M2ZMgが、原子比で好ましくは 1Z40〜2Z1、より好ましくは 1Z30 〜1/5であり、力つ y力好ましく ίま 0. 005≤y≤0. 025、より好ましく ίま 0. 01≤y≤0 . 02である場合には、電池性能のバランス、即ち、初期重量容量密度、初期体積容 量密度、安全性、充放電サイクル安定性のバランスがよいので特に好ましい。
[0019] また、本発明において、 M元素が Zrと Mgと力もなり、 ZrZMgが、原子比で好ましく ίま 1/40〜2/1、より好ましく ίま 1/30〜1/5であり、力つ y力 S好ましく ίま 0. 005≤ y≤0. 025、より好ましくは 0. 01≤y≤0. 02である場合には、電池性能のバランス、 即ち、初期重量容量密度、初期体積容量密度、安全性、充放電サイクル安定性のバ ランスがよ!、ので特に好まし!/、。
[0020] また、本発明において、 M元素が Mgと A1とからなり、かつ Zrが共存していると、特 に電池性能のバランス、即ち、初期重量容量密度、初期体積容量密度、安全性、充 放電サイクル安定性のバランスがよいので好ましい。この場合、 Mgと A1の合計モル 数の lZ2〜l/20の Zrの共存が好ましい。
更に、本発明において、 N元素が Coである場合、リチウム複合酸化物中の Liと、 N 元素と M元素の合計のモル比 LiZ (N + M)は、特に 1. 00-1. 03であることが好ま しい。この場合、リチウム複合酸化物の粒子成長が促進され、より高密度な粒子を得 ることがでさる。
[0021] 本発明にお ヽて、上記 M元素及び Z又は Fを含有せしめる場合は、 M元素及び F は、いずれもリチウム含有複合酸ィ匕物粒子の表面に存在していることが好ましい。こ れらの元素が表面に存在することにより、少量の添加で電池性能の低下を招来する ことなぐ安全性、充放電サイクル特性などの重要な電池特性を改良できる。これらの 元素が表面に存在することは、正極粒子についての、分光分析、例えば、 XPS分析 を行うことにより判断できる。
[0022] 本発明にお ヽては、 M元素源が溶解した水溶液と、 N元素源粉末若しくはその粉 砕物とを混合してスラリーが形成される。 N元素源粉末は、その平均粒径が 0. 1〜3 mである場合はそのまま使用される。 N元素源粉末としてその平均粒径が 0. 1〜3 /z mでない場合には、これを粉砕してこの範囲内にせしめられる。この場合の粉砕法 としては、既知の湿式粉砕法、乾式粉砕法などが使用される。
本発明において、 N元素源粉末を湿式粉砕する場合、 M元素源が溶解した水溶液 を N元素源粉末と混合してスラリー状とし、該スラリーを湿式粉砕してもよいし、また、 N元素源粉末を水を媒体としてスラリー状とし、該スラリーを湿式粉砕してもよい。湿 式粉砕する方法としては、湿式ボールミル粉砕、湿式ビーズミル粉砕、湿式振動ミル 粉砕などが適用できる。本発明において、 N元素源粉末を乾式粉砕する場合は、通 常、 M元素源が溶解した水溶液を N元素源粉末と混合する前に行なわれる。乾式粉 砕は、乾式ボールミル粉砕、乾式ジェットミル粉砕などが例示される。
[0023] 上記のようにして、 M元素源が溶解した水溶液と N元素源粉末とを混合し、必要に 応じて粉砕して形成されるスラリーは、次いで乾燥造粒される。本発明では、この乾 燥造粒されるスラリーは、その中に含まれる N元素源粉末の平均粒径が 0. 1〜3 /ζ πι であることが好ましい。 Ν元素源粉末の平均粒径が 0. 1 μ mより小さいと、粉砕の不 必要なコストアップを招いたり、スラリーの粘度が高くなる場合があったり、乾燥造粒 後の粒径が過大となるので好ましくない。 N元素源粉末の平均粒径が 3 mを超える
と、乾燥造粒における粒子成長が不充分となるので好ましくない。上記スラリー中の
N元素源粉末のより好ましい平均粒径は 0. 2〜2. 5 mであり、特に好ましくは 0. 4 〜1. 5 mである。また、 N元素源粉末の比表面積は 2〜200m2Zgであるのが好ま しい。 N元素源が複数の元素からなり、かつ、複数の元素源が共沈物でない場合、 正極活物質化後にお!ヽて、正極活物質粒子内に複数の元素を原子状に均一に分 散させるために、それぞれの複数の元素源混合物の粉砕後の平均粒径は、 0. 1〜1 . 5 /z m力好まし!/ヽ。特に好ましくは、 0. 2〜1. 0 mである。
[0024] 本発明において、 N元素源粉末を含む水を媒体とするスラリーはバインダ成分を含 む場合がある。バインダ成分としては、ポリビュルアルコール、カルボキシメチルセル ロース、ポリビュルピロリドン、ポリアクリル酸アンモ-ゥムなどが例示される。
本発明では M元素源が溶解した水溶液を用いることが必要であり、 M元素源が溶 解した有機溶媒溶液を使用した場合には、有機溶媒溶液は水に比較して高価かつ 有害、危険であるので工業的方法としては好ましくない。本発明における M元素源が 溶解した水溶液とは実質的に水溶液であることが必要であり、実質的に M元素源の 懸濁水溶液又はコロイド形態の水溶液は本発明には含まれな!/ヽ。実質的に M元素 源の懸濁水溶液又はコロイド形態の水溶液を用いると、 N元素源粒子内部まで均一 に M元素を含浸できないので本発明の効果が得られないからである。ここに、実質的 に水溶液とは、 M元素源の水溶液が主体である水溶液であれば、本発明の実質的 に M元素が N元素源粒子内部まで均一に含浸される結果、本発明の効果が得られ るので、その水溶液の一部にコロイド形態や懸濁物が存在してもよいことを意味する
[0025] 本発明における平均粒径 (D50)とは、リチウム含有複合酸化物粒子の場合、一次 粒子が相互に凝集、焼結してなる二次粒径についての体積平均粒径である。 N元素 源粒子の場合は、粒子が一次粒子のみカゝらなる場合は、一次粒子についての体積 平均粒径を意味する。 N元素源粒子が一次粒子が凝集して二次粒子を形成して ヽ る場合、及び N元素源の造粒物においては、 N元素源の二次粒子の体積平均粒径 を意味する。平均粒径とは、体積基準で粒度分布を求め、全体積を 100%とした累 積カーブにおいて、その累積カーブが 50%となる点の粒径である、体積基準累積 5
0%径 (D50)を意味する。粒度分布は、レーザー散乱粒度分布測定装置で測定し た頻度分布及び累積体積分布曲線で求められる。粒径の測定は、粒子を水媒体中 に超音波処理などで充分に分散させて粒度分布を測定する(例えば、 Leeds & No rthrup社製マイクロトラック HRAX— 100などを用いる)ことにより行なわれる。
[0026] 本発明にお ヽて、乾燥造粒後、二次粒子の集合体からなる造粒物の平均粒径 (D 50)は、 5〜25 μ mが好ましい。平均粒径が 5 μ m以下であると、リチウム含有複合酸 化物のプレス密度が低下する結果、正極の体積充填密度が低くなり電池の体積容 量密度が低下するので好ましくない。また、 25 m超であると、平滑な正極表面を得 ることが困難となるので好ましくない。造粒物の特に好ましい平均粒径は 8〜20 μ m である。
上記した造粒物は N元素源及び M元素源を少なくとも含み、さらに N元素及び M 元素を原子比で、 N元素: M元素力 好ましくは 0. 95 : 0. 05〜0. 9995 : 0. 0005、 より好ましくは 0. 97 : 0. 03〜0. 999 : 0. 001、さらに好ましくは 0. 975 : 0. 025〜0 . 999 : 0. 001、特【こ好ましく ίま 0. 975 : 0. 025〜0. 998 : 0. 002の害 ij合【こて含ん だ造粒物が好適である。
[0027] また、上記造粒物に含まれる N元素源は、水酸化物、ォキシ水酸ィ匕物、酸化物及 び炭酸塩力 なる群力も選ばれる少なくとも 1種の化合物であることが好ましく、さらに 水酸ィ匕物又はォキシ水酸ィ匕物がより好ましぐォキシ水酸ィ匕物が特に好ましい。この 場合、該造粒物を安価に製造でき、正極活物質の原料粉末として用いたときに所期 の特性を発現しやす ヽ傾向がある。
上記の造粒物は、上記した本願発明の要旨である、(1)〜(11)に記載のリチウム 含有複合酸化物の中間原料、特に、リチウム二次電池正極用のリチウム含有複合酸 化物の中間原料として、好適に用いることができる。
[0028] 本発明にお 、て、 M元素源が溶解した水溶液は、カルボン酸塩を含有する水溶液 であることが好ましい。本発明において、カルボン酸塩とは、カルボン酸及びその塩 を意味し、カルボン酸塩力 カルボン酸とカルボン酸の塩の混合物である場合も含ま れる。また、本発明におけるカルボン酸塩は、少なくともカルボキシル基を 1つ有し、 更に、水酸基及びカルボ-ル基のいずれか又は両方を 1つ以上有していてもよぐこ
れら官能基の存在は、多様な M元素について、 M元素の濃度の高い水溶液を形成 できるので好ましい。特に、カルボキシル基が 2〜4個であったり、カルボキシル基に 加えて水酸基が 1〜4個共存するカルボン酸は溶解度を高くできるので好ましい。ま た、炭素数 1〜8の脂肪族カルボン酸塩が好ましぐ炭素数が 9以上であると M元素 の溶解度が低下するので好ましくな 、。特に好まし 、炭素数は 2〜6である。
[0029] 上記炭素数 1〜8のカルボン酸塩の好ましいカルボン酸塩としては、クェン酸、酒石 酸、蓚酸、マロン酸、リンゴ酸、葡萄酸、乳酸、ダリオキシル酸の塩である。特にクェン 酸、酒石酸、蓚酸、及びダリオキシル酸の塩は M元素の溶解度を高くでき、比較的安 価であるので好ましい。蓚酸のように酸性度の高いカルボン酸を用いるときは、水溶 液の pHが 2未満であると N元素の種類によっては N元素源が溶解しやすくなる場合 があるので、アンモニアなどの塩基を添カ卩して pHを 2〜12にすることが好ましい。 pH が 12を超えると N元素の種類によっては N元素源が溶解しやすくなるので好ましくな い場合がある。モノカルボン酸塩としては、溶解度の確保できる M元素との組み合わ せにぉ 、て、蟻酸若しくは酢酸の如きモノカルボン酸のアンモ-ゥム塩が本発明に おいて用いられる。
[0030] 本発明で使用される上記カルボン酸塩を含有する水溶液の濃度は、後の工程で乾 燥により水媒体を除去する必要がある点力 高濃度の方が好ましい。しかし、高濃度 過ぎると粘度が高くなり、正極活物質を形成する他の元素源粉末との均一混合性が 低下し、また N元素原料粉体に溶液が浸透しに《なるので、好ましくは 1〜30重量 %、特には 4〜 20重量%が好ましい。
[0031] カルボン酸塩の水溶液を形成する媒体には、 M元素源や必要に応じて使用される フッ素源への溶解度を高めるために、メタノール、エタノールなどのアルコールや、錯 体を形成させる効果のあるポリオールなどを含有させることができる。ポリオールとし ては、エチレングリコーノレ、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレン グリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオールグリセリンなどが例示される。そ の場合の含有量としては、好ましくは 1〜20重量%である。
[0032] 本発明で使用される N元素源としては、 N元素がコバルトの場合には、炭酸コバル ト、水酸ィ匕コバルト、ォキシ水酸ィ匕コノ レト、酸ィ匕コバルトなどが好ましく使用される。
特に水酸ィ匕コノ レトある 、はォキシ水酸ィ匕コバルトは、性能が発現しやす 、ので好 ましい。また、 N元素がニッケルの場合には、水酸化ニッケル、ォキシ水酸化ニッケル 、酸ィ匕ニッケル、炭酸ニッケルなどが好ましく使用される。また、 N元素がマンガンの 場合には、二酸ィ匕マンガン、又は炭酸マンガンが好ましく使用される。
[0033] 更に、 N元素源として、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩、ニッケル コバルト共 沈物、ニッケル マンガン共沈物、及びニッケル コバルト マンガン共沈物などか ら適宜選択することができる。ここで、ニッケル塩、コバルト塩、マンガン塩としては、 実質的に水に不溶の塩が選ばれる。具体的には、水酸化物、ォキシ水酸ィ匕物、酸ィ匕 物、炭酸塩などが例示される。また、ニッケル コバルト共沈物としては、ニッケル コバルト共沈水酸化物、ニッケル コバルト共沈ォキシ水酸化物、ニッケルーコバル ト共沈酸化物、ニッケル コバルト共沈炭酸塩、ニッケル マンガン共沈物としては、 ニッケル マンガン共沈水酸化物、ニッケル マンガン共沈ォキシ水酸化物、ニッケ ルーマンガン共沈酸化物、ニッケル コバルト マンガン共沈物としては、ニッケル コバルト マンガン共沈水酸化物、ニッケル コバルト マンガン共沈ォキシ水酸 化物、ニッケル コバルト マンガン共沈炭酸塩、又はニッケル-コバルト マンガン 酸ィ匕物が好ましい。更に具体的には、ニッケルとコノ レトを含む N元素源は、 Ni C
0. 8 o OOH、 Ni Co (OH) などが、ニッケルとマンガンを含む N元素源は Ni M
0. 2 0. 8 0. 2 2 0. 5 n OOHなどが、ニッケルとコバルトとマンガンを含む N元素源は、 Ni Co Mn
0. 5 0. 4 0. 2 0.
OOH、 Ni Co Mn OOHなどがそれぞれ好ましく例示される。
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[0034] 本発明で使用されるリチウム源としては、炭酸リチウムあるいは水酸化リチウムが好 ましく使用される。特に炭酸リチウムが安価で好ましい。リチウム源は、平均粒径 (D5 0) 2〜25 /ζ πιの粉末が好ましく用いられる。フッ素源としては、金属フッ化物、 LiF、 MgFなどが選択される。
2
[0035] 本発明で使用される、 M元素を含有する上記カルボン酸塩の水溶液 (M元素源が 溶解した水溶液)用の M元素源としては、固体の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、 炭酸塩、硝酸塩などの無機塩;それらのアンモ-ゥム錯体、酢酸塩、シユウ酸塩、タエ ン酸塩などの有機塩;有機金属キレート錯体;金属アルコキシドをキレートなどで安定 化した化合物などでもよい。なかでも、本発明では、使用するカルボン酸塩水溶液に
均一に溶解又は分散するものがより好ましぐ例えば、酸化物、水酸化物、ォキシ水 酸化物、水溶性の炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シユウ酸塩、クェン酸塩である。特には 、クェン酸塩が溶解度が大きく好ましい。 M元素が Zrである場合、 M元素源として炭 酸ジルコニウムアンモ-ゥム及び Z又はハロゲン化ジルコニウムアンモ-ゥムが好適 に用いられる。
[0036] M元素を含有する上記カルボン酸塩の水溶液は、 N元素源が溶解し難い pH2〜l 2に調整することが好ましい。特に、シユウ酸塩やクェン酸塩水溶液は pHが低いので 、 M元素を N元素源に含浸させる過程で、 N元素源力 N元素を溶解してしまう場合 があるため、カルボン酸塩水溶液にアンモニアを添カ卩して、 pHを 2〜12にするのが 好ましい。
本発明で使用される M元素を含有するカルボン酸塩水溶液を作製する時には、必 要に応じて加温しながら行うと好ましい。好ましくは 40〜80°C、特に好ましくは 50〜7 0°Cに加温するとよい。加温によって、 M元素源の溶解が容易にすすみ、 M元素源 を短時間に安定して溶解することができる。
[0037] また、 M元素源の使用量は、本発明で製造する正極活物質の一般式である上記 Li
N M O Fの範囲内で所望とする各元素の比率になるようにされる。
[0038] 上記手段における M元素を含有するカルボン酸塩の水溶液を、 N元素源粉末若し くはその粉砕物に含浸せしめる方法としては、該粉末に該水溶液をスプレー噴霧す ること〖こより含浸させることも可能である。しかし、タンク中で該水溶液中に該 N元素源 粉末を投入して攪拌して含浸させたり、さらに好ましくは 2軸スクリュウ-一ダー、アキ シアルミキサー、パドルミキサー、タービュライザ一などを使用し、スラリーを形成する ように充分に均一に混合することにより含浸させることが好ましい。スラリー中の固形 分濃度としては、均一に混合される限り高い濃度の方が好ましいが、通常、固体 Z液 体比は 30Z70〜90ZlO、特に好ましくは 50Ζ50〜80Ζ20が好適である。また、 上記スラリーの状態で減圧処理を行うと、 Ν元素源粉末に溶液がより浸透し好ま ヽ
[0039] 上記 Μ元素を含有するカルボン酸塩の水溶液と、 Ν元素源粉末若しくはその粉砕 物との混合物力もなるスラリー中の水媒体の除去は、好ましくは 50〜200°C、特に好
ましくは 80〜120°Cにて、通常 0. 1〜10時間乾燥することにより行われる。混合物ス ラリー中の水媒体は、後の焼成工程で除去されるために、この段階で必ずしも完全 に除去する必要はないが、焼成工程で水分を気化させるに多量のエネルギーが必 要になるので、できる限り除去しておくのが好ましい。本発明において、乾燥造粒す る方法としては、スプレードライ、フラシュドライ、ベルトドライヤー、レーディゲミキサー 、 2軸スクリュウドライヤーとしては、サーモプロセッサや、パドルドライヤー、などが例 示される。なかでもスプレードライが生産性が高!、ので特に好ま 、。
乾燥造粒方式として、スプレードライを用いた場合は、造粒後の二次粒子からなる 造粒粒子径は、湿式粉砕後の N元素源粉砕粒子径、噴霧形式、加圧気体供給速度 、スラリー供給速度、乾燥温度などを選ぶことにより制御できる。本発明では、乾燥造 粒後の二次粒子力 なる前駆体の粒径が本発明のリチウム含有複合酸ィ匕物の粒径 にほぼ反映される。
[0040] 上記スラリーから水媒体を除去した後の焼成は、酸素含有雰囲気下において 700 〜: L 100°Cで行われる。かかる焼成温度が、 700°Cより低い場合にはリチウム複合酸 化物化が不完全となり、逆に 1100°Cを超える場合には充放電サイクル耐久性や初 期容量が低下してしまう。特に、焼成温度は 850〜1050°Cが好適である。
[0041] このようにして製造されるリチウム含有複合酸ィ匕物は、その平均粒径 D50が好ましく は 5〜30 m、特に好ましくは 8〜25 m、比表面積が好ましくは 0. 1〜0. 7m Vg 、特に好ましくは 0. 15〜0. 5mVg, CuKひを線源とする X線回折によって測定さ れる 2 0 =66. 5± 1° の(110)面回折ピーク半値幅が好ましくは 0. 08〜0. 14° 特に好ましくは 0. 08〜0. 12° 、かつプレス密度が Nがコバルトの場合、好ましくは 3 . 65〜4. 10g/cm3、特に好ましく ίま 3. 70〜4. OOg/cm3であるの力 S好適である。 本発明の製造方法は従来技術に較べて、高いプレス密度が得られる特徴を有する。 本発明にお 、て、プレス密度とはリチウム複合酸ィ匕物粉末を 2トン /cm2の圧力でプレ スしたときの粉末の見かけ密度を意味する。なお、プレス密度は体積容量密度と相関 がある数値である。プレス密度が高いほど体積容量密度が高くなる傾向がある。また 、本発明で得られるリチウム含有複合酸化物は、含有される残存アルカリ量が 0. 03 重量%以下が好ましぐ特には 0. 01重量%以下であるのが好適である。
[0042] かかるリチウム含有複合酸化物からリチウム二次電池用の正極を製造する場合に は、該リチウム含有複合酸化物の粉末に、アセチレンブラック、黒鉛、ケッチェンブラ ックなどのカーボン系導電材と結合材を混合することにより形成される。上記結合材 には、好ましくは、ポリフッ化ビ-リデン、ポリテトラフルォロエチレン、ポリアミド、カル ボキシメチルセルロース、アクリル榭脂などが用いられる。本発明のリチウム含有複合 酸化物の粉末、導電材及び結合材は溶媒又は分散媒を使用し、スラリー又は混練 物とされる。これをアルミニウム箔、ステンレス箔などの正極集電体に塗布などにより 担持せしめてリチウム二次電池用の正極が製造される。
[0043] 本発明のリチウム含有複合酸ィ匕物を正極活物質に用いるリチウム二次電池にお!ヽ て、セパレータとしては、多孔質ポリエチレン、多孔質ポリプロピレンのフィルムなどが 使用される。また、電池の電解質溶液の溶媒としては、種々の溶媒が使用できるが、 なかでも炭酸エステルが好ましい。炭酸エステルは環状、鎖状いずれも使用できる。 環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート(EC)な どが例示される。鎖状炭酸エステルとしては、ジメチルカーボネート、ジェチルカーボ ネート(DEC)、ェチノレメチノレカーボネート (EMC)、メチノレプロピノレカーボネート、メ チルイソプロピルカーボネートなどが例示される。
[0044] 本発明では、電解質溶液の溶媒として、上記炭酸エステルを単独で又は 2種以上 を混合して使用できる。また、他の溶媒と混合して使用してもよい。また、負極活物質 の材料によっては、鎖状炭酸エステルと環状炭酸エステルを併用すると、放電特性、 サイクル耐久性、充放電効率が改良できる場合がある。
[0045] また、本発明のリチウム含有複合酸ィ匕物を正極活物質に用いるリチウム二次電池 においては、フッ化ビ-リデン一へキサフルォロプロピレン共重合体(例えばアトケム 社製、商品名:カイナー)あるいはフッ化ビ-リデン—パーフルォロプロピルビュルェ 一テル共重合体を含むゲルポリマー電解質としてもよヽ。上記の電解質溶液の溶媒 又はポリマー電解質に添加される溶質としては、 CIO―、 CF SO―、 BF―、 PF―、 A
4 3 3 4 6 sF―、 SbF―、 CF CO―、 (CF SO ) N—などをァ-オンとするリチウム塩のいずれ
6 6 3 2 3 2 2
力 1種以上が好ましく使用される。上記リチウム塩力もなる溶質は、電解質溶液の溶 媒又はポリマー電解質に対して、 0. 2〜2. OmolZl (リットル)の濃度で添加するの
が好ましい。この範囲を逸脱すると、イオン伝導度が低下し、電解質の電気伝導度が 低下する。なかでも、 0. 5〜1. 5molZlが特に好ましい。
[0046] 本発明のリチウム含有複合酸ィ匕物を正極活物質に用いるリチウム電池にぉ 、て、 負極活物質には、リチウムイオンを吸蔵、放出可能な材料が用いられる。この負極活 物質を形成する材料は特に限定されないが、例えばリチウム金属、リチウム合金、炭 素材料、周期表 14、又は 15族の金属を主体とした酸化物、炭素化合物、炭化ケィ素 化合物、酸化ケィ素化合物、硫ィ匕チタン、炭化ホウ素化合物などが挙げられる。炭素 材料としては、種々の熱分解条件で有機物を熱分解したもの、人造黒鉛、天然黒鉛 、土壌黒鉛、膨張黒鉛、鱗片状黒鉛などを使用できる。また、酸ィ匕物としては、酸ィ匕 スズを主体とする化合物が使用できる。負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔など が用いられる。かかる負極は、上記負極活物質を有機溶媒と混練してスラリーとし、 該スラリーを金属箔集電体に塗布、乾燥、プレスして得ることにより好ましくは製造さ れる。
[0047] 本発明のリチウム含有複合酸ィ匕物を正極活物質に用いるリチウム電池の形状には 特に制約はない。シート状、フィルム状、折り畳み状、卷回型有底円筒形、ボタン形 などが用途に応じて選択される。
実施例
[0048] 以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限 定されな!/ヽことはもちろんである。
以下、パーセント表示(%)は、断りの無いかぎり重量%である。
[0049] [例 1]
マグネシウム含量が 25. 8%の炭酸マグネシウム 4. 9gと、クェン酸 18. 9gを水 50g に加えて溶解し、さらにアルミニウム含量が 4. 4%の乳酸アルミニウム水溶液 31. 6g をカロえて混合し、 M元素が溶解した水溶液を調製した。コバルト含量が 59. 8%であ る、平均粒径 13 mのォキシ水酸ィ匕コバルト 500gと、上記で調製した M元素が溶解 した水溶液に水 400gを加え、湿式ボールミルを用いて粉砕し、さら〖こ水 lOOOgをカロ えて混合しスラリーとした。湿式粉砕後のォキシ水酸化コバルトの粒度分布をレーザ 一散乱式粒度分布測定装置を用いて水溶媒中にて測定したところ平均粒径 D50は
1. 7 mであった。このスラリーをスプレードライで噴霧乾燥し造粒した。得られた造 粒物は平均粒径が 10. 9 mであり、コノ レトの含量は 59. 9%であった。この造粒 物 198. 2gに!;チウム含量力 S 18. 7%の炭酸ジチウム 77. 9gを混合し、 1000oCで 10 時間焼成し、 Li Co Mg Al Oを得た。焼成物を解砕し得られたリチウム
1. 01 0. 97 0. 01 0. 01 2
含有複合酸化物粉末の粒度分布をレーザー散乱式粒度分布測定装置を用いて水 溶媒中にて測定した。その結果、平均粒径 D50が 11. 8 /ζ πι、 D10が 5. 7 /ζ πι、 D9 0が 18. 7 mであり、 BET法により求めた比表面積が 0. 25m2Zgの略球状のリチ ゥム含有複合酸化物粉末を得た。
このリチウム含有複合酸化物粉末について、 X線回折装置 (理学電機社製、 RINT 2100型)を用いて X線回折スペクトルを得た。 CuK a線を使用した粉末 X線回折 において、 2 0 = 66. 5 ± 1° の(110)面の回折ピーク半値幅は 0. 112° であった。 この粉末のプレス密度は 3. 66gZcm3であった。
[0050] 上記のリチウム含有複合酸化物粉末と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビ-リデン 粉末とを 90/5/5の重量比で混合し、 N—メチルピロリドンを添加してスラリーを作 製し、厚さ 20 /z mのアルミニウム箔にドクターブレードを用いて片面塗工した。その後 、乾燥し、ロールプレス圧延を 5回行うことによりリチウム電池用の正極体シートを作製 した。
そして、上記正極体シートを打ち抜いたものを正極に用い、厚さ 500 /z mの金属リ チウム箔を負極に用い、負極集電体にニッケル箔 20 mを使用し、セパレータには 厚さ 25 /z mの多孔質ポリプロピレンを用い、さらに電解液には、濃度 1Mの LiPF /
6
EC + DEC (1: 1)の溶液(LiPFを溶質とする ECと DECとの重量比(1: 1)の混合溶
6
液を意味する。後記する溶媒もこれに準じる。)を用いてステンレス製簡易密閉セル 型リチウム電池をアルゴングローブボックス内で 2個組み立てた。
[0051] 上記 2個のうちの 1個の電池については、 25°Cにて正極活物質 lgにっき 75mAの 負荷電流で 4. 3Vまで充電し、正極活物質 lgにっき 75mAの負荷電流にて 2. 5V まで放電して初期放電容量を求めた。さらに電極層の密度を求めた。また、この電池 について、引き続き充放電サイクル試験を 30回行なった。その結果、 25°C、 2. 5〜4 . 3Vにおける正極電極層の初期重量容量密度は、 153mAhZgであり、 30回充放
電サイクル後の容量維持率は 98. 4%であった。
[0052] また、他の 1個の電池については、それぞれ 4. 3Vで 10時間充電し、アルゴングロ ーブボックス内で解体し、充電後の正極体シートを取り出し、その正極体シートを洗 滌後、径 3mmに打ち抜き、 ECとともにアルミニウム製カプセルに密閉し、走査型差 動熱量計 (セイコーインスツルメンッ社製 DSC6200R)にて 5°CZ分の速度で昇温し て発熱開始温度を測定した。その結果、 4. 3V充電品の発熱曲線の発熱開始温度 は 157°Cであり、発熱の速度を示す、発熱曲線の傾きの最大値は 471mWZminで あった。なお、発熱曲線の傾きとは、安全性と深く相関のある数値である。この数値が 低いほど、リチウム含有複合酸化物の加熱時の安定性が高ぐ急激な発熱反応を抑 制する傾向がある。このため、安全性の観点から、発熱曲線の傾きが低いほど好まし い。
[0053] [例 2]
ジルコニウム含量が 15. 1%の炭酸ジルコニウムアンモ-ゥム水溶液 15. 4gと、ク ェン酸 14. 3gを水 500gにカ卩えて溶解し、 M元素が溶解した水溶液を調製した。コバ ルト含量が 59. 8%で、平均粒径 13 mのォキシ水酸化コバルト 500gと、上記で調 製した M元素が溶解した水溶液を水 400gに加え、湿式ボールミルを用いて粉砕し、 さらに水 lOOOgをカ卩えて混合しスラリーとした。湿式粉砕後のォキシ水酸ィ匕コノ レト の粒度分布は平均粒径 D50は 2. 2 μ mであった。このスラリーをスプレードライで噴 霧乾燥し造粒した。得られた造粒物は平均粒径が 14. 5 mであり、コノ レトの含量 は 60. 3%であった。この造粒物 198. 3gにリチウム含量が 18. 7%の炭酸リチウム 7 7. 2gを混合し、 1000°Cで 10時間焼成し、 Li Co Zr Oを得た。焼成物を
1. 01 0. 985 0. 005 2
解砕し得られたリチウム含有複合酸化物粉末は、平均粒径 D50が 14. 5 /ζ πι、 D10 力 6. 2 /ζ πι、 D90力 23. 5 mであり、 BET法により求めた it表面積力 0. 22m g の略球状のリチウム含有複合酸化物粉末であった。
[0054] このリチウム含有複合酸化物粉末について、例 1と同じ操作を行ったところ、 (110) 面の回折ピーク半値幅は 0. 109° 、プレス密度は 3. 76gZcm3であった。
また、このリチウム含有複合酸化物を使用して、 [例 1]と同様に電池を作製した。 作製した電池の特性は以下のとおりであった。正極電極層の初期重量容量密度は 1
60mAhZgであり、 30回充放電サイクル後の容量維持率は 98. 6%、 4. 3V充電品 の発熱曲線の発熱開始温度は 162°Cであり、発熱の速度を示す発熱曲線の傾きの 最大値は 675mWZminであった。
[0055] [例 3]
マグネシウム含量が 25. 8%の炭酸マグネシウム 2. 4gと、クェン酸 29. 4gを水 50g に加えて溶解し、さらにアルミニウム含量が 4. 4%の乳酸アルミニウム水溶液 15. 9g と、チタン含量が 8. 1%の乳酸チタン水溶液 1. 5gを加えて混合し、 M元素が溶解し た水溶液を調製した。ニッケル含量が 49. lgの炭酸ニッケル 204gとコバルト含量が 59. 8%であるォキシ水酸化コバルト 168gと、マンガン含量が 62. 1%のォキシ水酸 化マンガン 151gと、上記で調製した M元素が溶解した水溶液を水 400gに加え、湿 式ボールミルを用いて粉砕し、さらに水 lOOOgをカ卩えて混合しスラリーとした。湿式粉 砕後の混合粉の平均粒径 D50は 2. 4 μ mであった。このスラリーをスプレードライで 噴霧乾燥し造粒した。得られた造粒物は平均粒径が 15. 5 mでり、ニッケル、コバ ルト、マンガンの含量はそれぞれ 19. 1%、 19. 2%、 17. 9%であった。この造粒物 200gとリチウム含量が 18. 7%の炭酸リチウム 77. lgを混合し、 1000°Cで 10時間 焼成して、 Li Ni Co Mn Mg Al Ti Oを得た。
1. 024 0. 322 0. 322 0. 322 0. 005 0. 005 0. 0005 2
焼成物を解砕し得られたリチウム含有複合酸化物粉末は、平均粒径 D50が 15. 6 μ m、 D10力 S6. 9 m、 D90力 23. 4 μ mであり、 BET法により求めた it表面積力 . 65m2Zgの略球状であった。
[0056] このリチウム含有複合酸化物粉末について、例 1と同じ操作を行ったところ、プレス 密度は 3. 41g/cm3であった。また、このリチウム含有複合酸化物を使用して、 [例 1 ]と同様に電池を製作した。作製した電池の特性は以下のとおりであった。正極電極 層の初期重量容量密度は、 156mAhZgであり、 30回充放電サイクル後の容量維 持率は 98. 2%、 4. 3V充電品の発熱曲線の発熱開始温度は 220°Cであった。
[0057] [例 4]
マグネシウム含量が 25. 8%の炭酸マグネシウム 2. 4gと、クェン酸 32. 6gを水 50g に加えて溶解し、さらにジルコニウム含量が 15. 1%の炭酸ジルコニウムアンモ-ゥム 水溶液 15. 6gを加え混合し、 M元素が溶解した水溶液を調製した。ニッケル含量が
49. lgの炭酸ニッケル 204gとコバルト含量が 59. 8%であるォキシ水酸化コバルト 1 68gと、マンガン含量が 62. 1%のォキシ水酸化マンガン 151gと、上記で調製した M 元素が溶解した水溶液を、水 400gに加え、湿式ボールミルを用いて粉砕し、さら〖こ 水 lOOOgを加えて混合しスラリーとした。湿式粉砕後の混合粉の平均粒径 D50は 1. 6 mであった。このスラリーをスプレードライで噴霧乾燥し造粒した。得られた造粒 物は平均粒径が 15. 8 mであり、ニッケル、コノ レト、マンガンの含量はそれぞれ 1 9. 0%、 19. 0%、 17. 7%であった。この造粒物 200gとリチウム含量力 18. 7%の 炭酸リチウム 76. 3gを混合し、 1000°Cで 10時間焼成して、 Li Ni Co M
1. 024 0. 322 0. 322 n Mg Zr Oを得た。
0. 322 0. 005 0. 005 2
焼成物を解砕し得られたリチウム含有複合酸化物粉末は、平均粒径 D50が 16. 0 μ m、 D10力 S6. 7 m、 D90力 24. 1 μ mであり、 BET法により求めた it表面積力 . 60m2Zgの略球状であった。
[0058] このリチウム含有複合酸化物粉末について、例 1と同じ操作を行ったところ、プレス 密度は 3. 42g/cm3であった。また、このリチウム含有複合酸化物を使用して、 [例 1 ]と同様に電池を製作した。作製した電池の特性は以下のとおりであった。正極電極 層の初期重量容量密度は、 154mAhZgであり、 30回充放電サイクル後の容量維 持率は 98. 4%、 4. 3V充電品の発熱曲線の発熱開始温度は 221°Cであった。
[0059] [例 5]
マグネシウム含量が 25. 8%の炭酸マグネシウム 1. 9gに、グリオキシル酸 50%水 溶液 6. lgと水 50gをカ卩えて溶解し、さらにアルミニウム含量が 4. 4%の乳酸アルミ- ゥム水溶液 12. 5gと、チタン含量が 8. 1%の乳酸チタン水溶液 6. lgをカ卩えて混合 し、アンモニア水をカ卩えて pHを 7. 1に調節して、 M元素が溶解した水溶液を調製し た。コバルト含量が 62. 5%である平均粒径 15 mの水酸化コバルト 500gと、上記 で調製した M元素が溶解した水溶液を水 400gに加え、湿式ボールミルを用いて粉 砕し、さらに水 1000gをカ卩えて混合しスラリーとした。湿式粉砕後の水酸ィ匕コバルトの 平均粒径 D50は 1. 3 mであった。このスラリーをスプレードライで噴霧乾燥し造粒 した。得られた造粒物は平均粒径が 12. 5 mであり、コノ レトの含量は 61. 2%で あった。この造粒物 195. 4gにリチウム含量が 18. 7%の炭酸リチウム 77. 6gを混合
し、 1000°Cで 10時間焼成し、 Li Co Mg Al Ti Oを得た。
1. 01 0. 98 0. 004 0. 004 0. 002 2
焼成物を解砕し得られたリチウム含有複合酸化物粉末は、平均粒径 D50が 12. 8 μ m、 D10力 S7. 0 m、 D90力 18. 3 μ mであり、 BET法により求めた it表面積力 . 30m2Zgの略球状であった。
[0060] このリチウム含有複合酸ィ匕物粉末について、例 1と同じ操作を行ったところ、 (110) 面の回折ピーク半値幅は 0. 118° 、プレス密度は 3. 68gZcm3であった。また、こ のリチウム含有複合酸化物を使用して、 [例 1]と同様に電池を製作した。作製した電 池の特性は以下のとおりであった。正極電極層の初期重量容量密度は、 158mAh Zgであり、 30回充放電サイクル後の容量維持率は 98. 8%、 4. 3V充電品の発熱 曲線の発熱開始温度は 161°Cであり、発熱の速度を示す、発熱曲線の傾きの最大 値は 607mWZminであった。
[0061] [例 6] 比較例
コバルト含量が 59. 8%である、平均粒径 13 mのォキシ水酸化コバルト 198. 9g と、リチウム含量が 18. 7%の炭酸リチウム 78. 0gと、マグネシウム含量力 1. 6%の 水酸化マグネシウム 1. 2gと、アルミニウム含量が 34. 6%の水酸化アルミニウム 1. 6 gを混合し、 1000°Cで 10時間焼成して、 Li Co Mg Al Oを得た。焼成
1. 01 0. 97 0. 01 0. 01 2
物を #し、平均 D50力 13. 4 m、 D10力 7. 8 m、 D90力 20. 0 μ mであり 、 BET法により求めた比表面積が 0. 27m2Zgの略球状のリチウム含有複合酸化物 粉末を得た。
[0062] このリチウム含有複合酸化物粉末について、例 1と同じ操作を行ったところ、 (110) 面の回折ピーク半値幅は 0. 119° 、プレス密度は 3. 63gZcm3であった。また、こ のリチウム含有複合酸化物を使用して、 [例 1]と同様に電池を製作した。作製した電 池の特性は以下のとおりであった。正極電極層の初期重量容量密度は、 152mAh Zgであり、 30回充放電サイクル後の容量維持率は 98. 5%、 4. 3V充電品の発熱 曲線の発熱開始温度は 162°Cであり、発熱の速度を示す、発熱曲線の傾きの最大 値は 851mWZminであった。
[0063] [例 7] 比較例
コバルト含量が 59. 8%である、平均粒径 13 mのォキシ水酸化コバルト 201. 4g
と、リチウム含量が 18. 7%の炭酸リチウム 75. 9gを混合し、 1000°Cで 10時間焼成 し、 LiCoOを得た。焼成物を解砕し、平均粒径 D50が 14. 1 μ m、 D10が 6.4 μ m、
2
D90が 20. であり、 BET法により求めた比表面積が 0. 39m2/gの略球状のリ チウム含有複合酸化物粉末を得た。
[0064] このリチウム含有複合酸ィ匕物粉末について、例 1と同じ操作を行ったところ、 (110) 面の回折ピーク半値幅は 0. 105° 、プレス密度は 3. 60g/cm3であった。また、こ のリチウム含有複合酸化物を使用して、 [例 1]と同様に電池を製作した。作製した電 池の特性は以下のとおりであった。正極電極層の初期重量容量密度は、 162mAh Zgであり、 30回充放電サイクル後の容量維持率は 93. 2%、 4. 3V充電品の発熱 曲線の発熱開始温度は 156°Cであり、発熱の速度を示す、発熱曲線の傾きの最大 値は 970mWZminであつた。
[0065] [例 8] 実施例
例 1で作製した造粒物 197. 9gと、リチウム含量が 18. 7%の炭酸リチウム 77. 7gと 、フツイ匕リチウム 0. 05gを混合し、 1000。Cで 10時間焼成し、 Li Co Mg Al
1. 01 0. 97 0. 01 0
O F を得た。焼成物を解砕し得られたリチウム含有複合酸化物粉末は、平
. 01 1.999 0.001
均粒径 D50力 12. 5 111、010カ 5. 3 m、 D90力 20. 5 mであり、: BET法により 求めた比表面積が 0. 27m2Zgの略球状のリチウム含有複合酸化物粉末であった。
[0066] このリチウム含有複合酸化物粉末について、例 1と同じ操作を行ったところ、 (110) 面の回折ピーク半値幅は 0. 108° 、プレス密度は 3. 70gZcm3であった。
また、このリチウム含有複合酸化物を使用して、 [例 1]と同様に電池を作製した。 作製した電池の特性は以下のとおりであった。正極電極層の初期重量容量密度は 1 53mAhZgであり、 30回充放電サイクル後の容量維持率は 98. 2%、 4. 3V充電品 の発熱曲線の発熱開始温度は 161°Cであり、発熱の速度を示す発熱曲線の傾きの 最大値は 520mWZminであつた。
産業上の利用可能性
[0067] 本発明で得られたリチウム含有複合酸化物は、体積容量密度が大きぐ安全性が 高ぐ充放電サイクル耐久性に優れ、更には、低温特性に優れた、製造コストの安価 なリチウム二次電池正極として適切である。
なお、 2005年 9月 28曰に出願された曰本特許出願 2005— 282535号の明細書 、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示と して、取り入れるものである。