明 細 書
イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、副反応が抑制されたイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法に関す る。
背景技術
[0002] イソブチレンとイソブチレンを主成分としない単量体の成分、特にイソブチレンとス チレン等の芳香族ビニル系単量体をカチオン重合する等によるイソブチレン系ブロッ ク共重合体の製造法については、塩ィ匕メチルとメチルシクロへキサンを組み合わせた 混合溶媒中での製造方法が特許文献 1に開示されている。この明細書中には、重合 終了後の処理方法として、重合溶液を大量のメタノール中に添加する再沈澱で樹脂 を単離する方法が記載されている。また、塩化メチレンとへキサンからなる混合溶媒 を用いたイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法が特許文献 2に開示されている 。この明細書中には、重合溶液を大量の水に投入し、カチオン活性を消失させる方 法が記載されている。これらの特許文献には、メタノールや水に投入するために要す る時間は記載されていなレ、が、実験室レベルのスケールでは、数分以内に完了する と思われる。しかし、近年、樹脂濃度を高めることによる生産性の向上が求められて おり、反応溶液は高粘度となることが予想される。このような状況で実際に工業化する 場合のことを考えると、重合終了を判断した時点より、反応溶液をメタノールまたは水 中に移液するために数十分力 数時間を要する場合が想定される。上記時間経過 が発生した場合、重合活性が消失するまでに、副反応が起こることが予想される。特 にスチレン系単量体の重合が 95モル%程度進行した時点以降に数平均分子量の 増大、生成した重合体の分子量分布の増大が起こることが特許文献 3に記載されて いる。分子量の増大が起これば、溶液粘度が上昇し、反応溶液の移液時間が更に長 くなる。また、反応溶液力 Sメタノールや水に接触するタイミングにより、分子量が違った ポリマーとなり、得られた樹脂の機械特性にばらつきが生じるような不具合がみられて いた。
[0003] 一方、リビングカチオン重合を行う際は、触媒活性を制御し、反応の安定性を保つ ために電子供与体化合物が添加される。特許文献 4には電子供与体化合物の添カロ 量はルイス酸触媒量を基準に決めることができ、触媒量と等モル量用いることで重合 反応が著しく遅くなることが記載されている。また、特許文献 5には、電子供与体化合 物として、アミン類を用いるリビングカチオン重合法が記述されている力 その中でル イス酸より過剰のアミンを添加した場合、事実上重合反応が停止すると記載されてレ、 る。
[0004] また、特許文献 6ではリビングカチオン重合を停止させる方法として、有機金属化合 物を用いる方法が提案されている。この方法は、反応を停止させるという点では有用 な方法ではあるが、有機金属化合物である n_ブチルリチウム等をカチオン活性のあ る重合溶液に添加した場合、ルイス酸由来の塩が析出するという現象が発生した。ル イス酸由来の塩の析出は、重合反応機の洗浄の妨げとなる等の問題を有していた。 特許文献 1:米国特許第 4946899号公報
特許文献 2:特公平 7 - 59601号公報
特許文献 3:特開平 8— 301955号公報
特許文献 4 :特開 2003— 292504号公報
特許文献 5:特公平 7 - 59601号公報
特許文献 6 :特開平 4 311705号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] 本発明は、上記現状を鑑み、重合反応後の移液処理等に時間を要した場合でも安 定な特性を有するイソブチレン系ブロック共重合体を与える製造方法を提供すること を目的とするものである。
課題を解決するための手段
[0006] 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、カチオン 重合終了後の重合体溶液に電子供与体化合物を添加することにより前記課題を解 決することが可能であることを見出し、本発明に至ったものである。
[0007] 即ち、本発明は、イソブチレンを主成分とする単量体成分及びイソブチレンを主成
分としない単量体成分を順次カ卩えてリビングカチオン重合させるイソブチレン系ブロ ック共重合体の製造方法において、最後に反応系に加えた単量体成分が所望の転 化率となった時に電子供与体化合物を添加することを特徴とするイソブチレン系ブロ ック共重合体の製造方法に関する。
[0008] 好ましい実施態様としては、イソブチレン系ブロック共重合体力 イソブチレンを主 体として構成される重合体ブロックと芳香族ビニル系単量体を主体として構成される 重合体ブロックからなることを特徴とするイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法 に関する。
[0009] 好ましい実施形態としては電子供与化合物がアミン類、アミド類、ホスフィン類、ホス ファイト類、ホスフェート類、チォエーテル類、エーテル類、ケトン類からなる群より選 択される少なくとも 1種類であるイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法に関する
[0010] 好ましい実施形態としては、電子供与体化合物であるアミン類、アミド類、ホスフィン 類、ホスフェート類が重合触媒として使用するルイス酸に対し 0. 5〜: 1. 0モル当量で あることを特徴とするイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法に関する。
好ましい実施形態としては、電子供与体化合物であるチォエーテル類、エーテル類 、ケトン類が重合触媒として使用するルイス酸に対し 2〜5モル当量であることを特徴 とするイソブチレン系ブロック共重合体の製造方法に関する。
発明の効果
[0011] 本発明によれば、重合反応を停止させたい時に速やかに停止させることが可能で あって、重合反応後の移液処理等に時間を要した場合でも、副反応が抑制でき、安 定した機械特性を有するイソブチレン系ブロック共重合体を提供することができる。 発明を実施するための最良の形態
[0012] 以下に本発明を詳細に説明する。
[0013] 本発明でレ、うイソブチレン系ブロック共重合体とは、イソブチレンを主成分とする単 量体成分及びイソブチレンを主成分としない単量体成分を順次反応系に加えてリビ ングカチオン重合させて得られるものである。両成分の添加順序は、 目的とするプロ ック共重合体の構造により適宜決定する。例えば、ジブロック体の場合は、イソブチレ
ンを主成分とする単量体成分を重合した後に、イソブチレンを主成分としない単量体 成分を添加しても良いし、その逆の添加順序でも良い。
[0014] 本発明におけるイソブチレンを主成分としない単量体成分はリビングカチオン重合 可能な単量体成分であれば特に限定されないが、例えば芳香族ビニル系単量体、 脂肪族ォレフイン類、ジェン類、ビュルエーテル類、シラン類、ビュルカルバゾール、 β—ピネン、ァセナフチレン等の単量体が挙げられる。
[0015] 上記芳香族ビュル系単量体としては、スチレン、 o _、 m_又は ρ—メチルスチレン 、 —メチルスチレン、 β—メチルスチレン、 2, 6 _ジメチルスチレン、 2, 4_ジメチ ノレスチレン、 ひ一メチル _ ο メチルスチレン、 ひ 一メチル _m メチルスチレン、 ひ —メチル _p—メチルスチレン、 β—メチル _ο—メチルスチレン、 β—メチノレ一 m_ メチルスチレン、 β—メチル _ρ メチルスチレン、 2, 4, 6 _トリメチルスチレン、 ひ一 メチノレー 2, 6 _ジメチルスチレン、 ひ 一メチル _ 2, 4 _ジメチルスチレン、 β—メチ ノレ 2, 6 ジメチルスチレン、 βーメチルー 2, 4 ジメチルスチレン、 ο—、 m 又は p クロロスチレン、 2, 6 ジクロロスチレン、 2, 4—ジクロロスチレン、 α—クロロー o クロロスチレン、 α—クロロー m クロロスチレン、 α クロロー p クロロスチレン、 クロロー ο クロロスチレン、 クロロー m クロロスチレン、 クロロー p ク ロロスチレン、 2, 4, 6—トリクロロスチレン、 α—クロ口一 2, 6—ジクロロスチレン、 α クロロー 2, 4—ジクロロスチレン、 β クロロー 2, 6 ジクロロスチレン、 β クロ口 - 2, 4ージクロロスチレン、 ο—、 m—又は p— t ブチルスチレン、 o—、 m—又は p ーメトキシスチレン、 o—、 m 又は p—クロロメチルスチレン、 o—、 m—又は p ブロ モメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビュルナフタレ ン等が挙げられる。更に好ましい芳香族ビュル系単量体としては、スチレン、 ひ一メ チルスチレン、 p—メチルスチレン、インデン力 なる群力 選ばれた 1種以上の単量 体を使用することが好ましぐコストの面からスチレン、 ひ一メチルスチレン、あるいは これらの混合物を用いることが特に好ましレ、。
[0016] 上記脂肪族ォレフイン系単量体としては、エチレン、プロピレン、 1—ブテン、 2—メ チル _ 1—ブテン、 3 _メチル_ 1 _ブテン、ペンテン、へキセン、シクロへキセン、 4 —メチル一 1 _ペンテン、ビュルシクロへキセン、オタテン、ノルボルネン等が挙げら
れる。
[0017] 上記ジェン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジェン、シクロ へキサジェン、ジシクロペンタジェン、ジビエルベンゼン、ェチリデンノルボルネン等 が挙げられる。
[0018] 上記ビュルエーテル系単量体としては、メチルビュルエーテル、ェチルビニルエー テル、 (n—、イソ)プロピルビュルエーテル、 (n―、 sec—、 tert―、イソ)ブチルビ二 ノレエーテル、メチルプロぺニルエーテル、ェチルプロぺニルエーテル等が挙げられ る。
[0019] 上記シラン化合物としては、ビュルトリクロロシラン、ビュルメチルジクロロシラン、ビ ニルジクロロシラン、ジビュルジメトキシシラン、ジビュルジメチルシラン、 1, 3—ジビ ニル _ 1, 1, 3, 3—テトラメチルジシロキサン、トリビュルメチルシラン、 γ—メタクリロ シシラン等が挙げられる。
[0020] これらのうち、重合性の観点から、芳香族ビュル系単量体、ビュルエーテル系単量 体が好ましぐゴム弾性を有する熱可塑性樹脂としての特性の点で芳香族ビニル系 単量体がより好ましい。
[0021] 本発明の好ましい態様は、 (Α)イソブチレンを主体として構成される重合体ブロック と(Β)芳香族ビュル系単量体を主体として構成される重合体ブロックからなる上記ィ ソブチレン系ブロック共重合体の製造方法である。この態様において、上記イソプチ レン系ブロック共重合体はイソプチレンと芳香族ビニル系単量体、及び、それ以外の 単量体を開始剤存在下でルイス酸触媒を用レ、リビングカチオン重合させることにより 得られる。
[0022] 本発明の(Β)芳香族ビニル系単量体を主体として構成される重合体ブロックは、芳 香族ビュル系単量体以外の単量体を含んでいても含んでいなくても良レ、が、物性及 び重合特性等のバランスから、芳香族ビュル系単量体の含有量が 60重量%以上で あることが好ましぐ 80重量%以上であることがより好ましい。
[0023] 本発明における(Β)芳香族ビニル系単量体を主体として構成される重合体ブロック
中の芳香族ビニル系単量体としては上記において例示した化合物が挙げられる。ま た芳香族ビュル系単量体以外の単量体は、リビングカチオン重合可能な単量体成 分であれば特に限定されないが、脂肪族ォレフイン類、ジェン類、ビュルエーテル類 、シラン類、ビュルカルバゾール、 β—ビネン、ァセナフチレン等の単量体が例示で きる。これらは 1種又は 2種以上組み合わせて使用される。具体的には上記に例示し たものが挙げられる。
[0024] また本発明の(Α)イソブチレンを主体として構成される重合体ブロックは、イソプチ レン以外の単量体を含んでいても含んでいなくても良ぐ通常、イソブチレンを 60重 量%以上含有するものが好ましぐ 80重量%以上含有するものがより好ましい。イソ ブチレン以外の単量体としてはリビングカチオン重合可能な単量体であれば特に制 限はないが、例えば上記の単量体等が挙げられる。
[0025] (Α)イソブチレンを主体として構成される重合体ブロックと(Β)芳香族ビニル系単量 体を主体として構成される重合体ブロックの割合に関しては、特に制限はないが、各 種物性の面から、イソブチレンを主体として構成される重合体ブロックが 95から 40重 量%、芳香族ビュル系単量体を主体として構成される重合体ブロックが 5から 60重量 %であることが好ましぐイソブチレンを主体として構成される重合体ブロックが 85から 50重量%、芳香族ビュル系単量体を主体として構成される重合体ブロックが 15から 50重量%であることが特に好ましレ、。
[0026] またイソブチレン系ブロック共重合体の分子量にも特に制限はないが、流動性、加 ェ性、物性等の面から、数平均分子量が 10000〜500000であることが好ましぐ 30 000〜400000であること力 S特に好ましレヽ。イソブチレン系ブロック共重合体の数平 均分子量が上記範囲より低い場合には機械的な物性が十分に発現されない傾向に あり、一方上記範囲を超える場合には流動性、加工性の面で不利である。なおここで レ、う数平均分子量はクロ口ホルムを移動相として、ポリスチレンゲルカラムを使用した GPC測定を行なレ、、ポリスチレン換算の分子量として求めたものである。このような G PC測定は例えば Waters社製 GPCシステム(カラム:昭和電工(株)製 ShodexK_8 04 (ポリスチレンゲル))等を用いて測定することができる。
[0027] 本発明におけるリビングカチオン重合に用いられる重合溶媒としては、リビングカチ
オン重合で一般的に使用される溶媒であれば特に限定されず、ハロゲン化炭化水素 からなる溶媒、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素等の非ハロゲン系の溶媒又はこ れらの混合物を用いることができる。上記ハロゲン化炭化水素としては、特に限定さ れず、塩化メチル、塩化メチレン、 1 _クロ口プロパン、 1 _クロ口一 2_メチルプロパン 、 1 _クロロブタン、 1 _クロ口一 2_メチルブタン、 1 _クロ口一 3 _メチルブタン、 1 _ クロ口 _ 2, 2—ジメチルブタン、 1 _クロロ_ 3, 3—ジメチルブタン、 1 _クロロ_ 2, 3 —ジメチルブタン、 1—クロ口ペンタン、 1—クロ口一 2 メチルペンタン、 1—クロ口一 3 —メチノレペンタン、 1 _クロ口 _4 メチノレペンタン、 1 _クロ口へキサン、 1 _クロ口一 2 メチノレへキサン、 1 _クロ口一 3 メチノレへキサン、 1 _クロ口一 4 メチノレへキサ ン、 1 _クロ口一 5 メチノレへキサン、 1 _クロ口ヘプタン、 1 _クロ口オクタン、 2_クロ 口プロノ ン、 2_クロロブタン、 2_クロ口ペンタン、 2_クロ口ペンタン、 2_クロ口へキ サン、 2—クロ口ヘプタン、 2—クロ口オクタン、クロ口ベンゼン等が使用でき、これらは 1種又は 2種以上を組み合わせて使用できる。本発明で使用できる脂肪族及び/又 は芳香族系炭化水素としては、ブタン、ペンタン、ネオペンタン、へキサン、ヘプタン 、オクタン、シクロへキサン、メチルシクロへキサン、ェチルシクロへキサン、ベンゼン、 トルエン、キシレン、ェチルベンゼン等が挙げられ、これらは 1種又は 2種以上を組み 合わせて使用可能である。なかでも、炭素数 3〜8の 1級及び 2級のモノハロゲン化炭 化水素と脂肪族及び芳香族炭化水素との混合溶媒を用いることが、イソブチレン系 ブロック共重合体の溶解度、コストの点から好ましぐ 1 クロロブタンとへキサン、シク 口へキサン、メチルシクロへキサンの組み合わせが最適である。
[0028] なお、リビングカチオン重合の際に用いる開始剤としては、下記式(1)で表わされる 化合物を用いるのが好ましい。
[0029] [化 1]
【化 1】
[0030] [式中、複数の R1は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数:!〜 6の 1価の炭化水 素基を表わす。 R2は、 1価若しくは多価の芳香族炭化水素基又は 1価若しくは多価 の脂肪族炭化水素基を表わす。 Xは、ハロゲン原子、炭素数 1〜6のアルコキシノレ基 又はァシルォキシル基を表わす。 nは、 R2の価数に等しぐ:!〜 6の整数を表わす。 n 力 ¾以上の場合、複数の Xは、同一であってもよぐ異なっていてもよレ、。 ]。
[0031] 上記一般式(1)で表わされる化合物は、ルイス酸等の存在下炭素陽イオンを生成 し、リビングカチオン重合の開始点になる。本発明で用いられる一般式(1)の化合物 の例としては、次のような化合物等が挙げられる。 (1—クロル— 1—メチルェチル)ベ ンゼン「CHC(CH) Cl〕、 1, 4—ビス(1—クロル一 1—メチルェチノレ)ベンゼン「1,
4— Cl(CH) CCHC(CH) CI], 1, 3—ビス(1—クロル一 1—メチルェチル)ベン ゼン〔1, 3-Cl(CH ) CC H C(CH ) CI], 1, 3, 5—トリス(1—クロル一 1—メチル ェチル)ベンゼン〔1, 3, 5-(ClC(CH ) ) CH〕、 1, 3—ビス(1 クロル 1ーメチ ル工チル)—5—(tert ブチル)ベンゼン〔1, 3-(C(CH ) CI) —5—(C(CH) )
C H〕。
[0032] これらの中でも特に好ましいのは(1 クロル 1ーメチルェチル)ベンゼン〔C H C
(CH ) Cl〕、ビス(1 クロルー1ーメチルェチル)ベンゼン [C H (C(CH ) C1) ]で ある [なおビス(1—クロル一 1—メチルェチル)ベンゼンは、ビス(ひ一クロ口イソプロピ ノレ)ベンゼン、ビス(2 _クロ口一 2 _プロピル)ベンゼンあるいはジクミルク口ライドとも 呼ばれる]。
[0033] イソブチレン系ブロック共重合体を重合により製造する際に、さらにルイス酸触媒を
共存させる。このようなルイス酸としてはリビングカチオン重合に使用できるものであ れば良く、 TiCl、 TiBr、 BC1、 BF、 BF - OEt、 SnCl、 SbCl、 SbF、 WC1、 Ta
CI、 VC1、 FeCl、 ZnBr、 A1C1、 AlBr等の金属ハロゲン化物; Et A1C1、 EtAlCl 等の有機金属ハロゲン化物を好適に使用することができる。中でも触媒としての能力
、工業的な入手の容易さを考えた場合、 TiCl、 BC1、 SnClが好ましい。ルイス酸の 使用量は、特に限定されないが、使用する単量体の重合特性あるいは重合濃度等 を鑑みて設定することができる。通常は一般式(1)で表される化合物に対して 0. ト 100モル当量使用することができ、好ましくは 1〜60モル当量の範囲である。
[0034] イソブチレン系ブロック共重合体の重合に際しては、必要に応じて電子供与体成分 を共存させることもできる。この電子供与体成分は、リビングカチオン重合に際して、 成長炭素カチオンを安定化させる効果があるものと考えられており、電子供与体の添 加によって分子量分布の狭い構造が制御された重合体が生成する。使用可能な電 子供与体成分としては特に限定されないが、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、 スルホキシド類、エステル類、または金属原子に結合した酸素原子を有する金属化 合物等を挙げることができる。
[0035] 各成分の使用量は目的とする重合体の特性によって適宜設定することが可能であ る。まずイソブチレン系単量体及びイソブチレンとは別種のリビングカチオン重合性 単量体と一般式(1)で表わされる化合物のモル当量関係によって、得られる重合体 の分子量が決定できる。通常得られるブロック共重合体の数平均分子量が 10, 000 〜500, 000程度になるように設定される。なお数平均分子量の測定方法は上述し た通りである。
[0036] 実際の重合を行うに当たっては、各成分を冷却下例えば— 100°C以上 0°C未満の 温度で混合する。エネルギーコストと重合の安定性を釣り合わせるために、特に好ま しレ、温度範囲は― 30°C〜― 80°Cである。
[0037] 本発明におけるイソブチレン系ブロック共重合体は、イソブチレンを主成分とする単 量体成分及びイソブチレンを主成分としない単量体の成分をリビングカチオン重合さ せて得られるものであれば特に制限はなぐ例えば、直鎖状、分岐状、星状等の構造 を有するブロック共重合体、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロッ
ク共重合体等のいずれも選択可能である。好ましいブロック共重合体としては、例え ば、芳香族ビュル系単量体を主体とする重合体ブロック イソブチレンを主体とする 重合体ブロック一芳香族ビニル系単量体を主体とする重合体ブロックからなるトリプロ ック共重合体、芳香族ビュル系単量体を主体とする重合体ブロック一イソブチレンを 主体とする重合体ブロックからなるジブロック共重合体、芳香族ビニル系単量体を主 体とする重合体ブロックとイソブチレンを主体とする重合体ブロック力、らなるアームを 3 つ以上有する星型ブロック共重合体、又はこれらの 2種以上の混合物を挙げることが できる。
[0038] 本発明におけるイソブチレン系ブロック共重合体はリビングカチオン重合終了後に ブロック共重合体、溶媒、ルイス酸、電子供与体成分の混合溶液となり、リビングカチ オン重合活性が残った状態となる。そのまま、混合溶液を放置すれば、分子量の増 大反応が進行する。本発明では、最後に反応系に加えた単量体成分が所望の単量 体転化率となった時に電子供与体化合物を添加する。これにより、カチオン重合活 性を停止させる、または、著しく低下させることが可能となり、分子量増大等の副反応 を抑制できる。
[0039] 本発明において単量体の「転化率」は、例えばガスクロマトグラフ(GC)法、重量法 などにより求めることができる。 GC法は、重合系の反応液を反応開始前および反応 途中で随時サンプリングして GC測定し、単量体と重合系内にあらかじめ添加された 内部標準物質との存在比から、単量体の消費率を求める方法である。この方法の禾 IJ 点は、複数の単量体が系内に存在している場合でも、それぞれの転化率を独立して 求めること力 Sできることである。重量法は、重合系の反応液をサンプリングして、その 乾燥前の重量と乾燥後の重量から固形分濃度を求め、単量体の全体しての転化率 を求める方法である。この方法の利点は、簡単に転化率を求めることができることであ る。これらの方法のうち、複数の単量体が系内に存在する場合、たとえば、芳香族ビ 二ル系単量体の共重合成分として脂肪族ォレフイン類等の他の単量体成分が含ま れている場合などには、 GC法が好ましい。
[0040] 上記製造方法の中でも、イソブチレンを主成分とする単量体成分及びイソプチレン を主成分としない単量体成分を順次加えてリビングカチオン重合させるイソブチレン
系ブロック共重合体の製造方法において、最後に反応系に加えた単量体成分の転 化率が 50〜95モル%となった時に電子供与体化合物を添加する製造方法が好まし レ、。転ィヒ率が 50モル%未満の段階で電子供与体化合物を添加すると未反応モノマ 一が得られた樹脂中に多く残留し、機械物性が低下する可能性がある。また仕込み モノマー量を多く設定する必要があることから、経済的な面からも好ましくない。また 転化率が 95モル%を超えるまで反応が進行した時点以降に数平均分子量の増大、 生成した重合体の分子量分布の増大が起こることから、転化率が 95モル%を超える までに電子供与体化合物を添加するのが好ましい。さらに最後に反応系に加えた単 量体成分の転化率が 75〜95モル%となった時に電子供与体化合物を添カ卩するの 力はり好ましぐ 80〜95モル%となった時に電子供与体化合物を添カ卩するのがさら に好ましい。
[0041] 電子供与体化合物を添加するタイミング (転化率の値)につレ、ては、これらのことを 勘案し、また、単量体の種類に応じて予め決定しておき、最後に反応系にカ卩えた単 量体成分の転化率が所望の転化率になったところで、電子供与体化合物を反応系 中に添加して、カチオン重合を速やかに停止させる。
[0042] カチオン重合活性停止のために添加される電子供与体化合物としては、特に限定 はないが、アミン類、アミド類、ホスフィン類、ホスファイト類、ホスフェート類、チォエー テル類、エーテル類、ケトン類が挙げられる。ァミン類の具体例として、脂肪族一級ァ ミンでは、メチノレアミン、ェチルァミン、プロピルァミン、ブチルァミン、ペンチルァミン、 へキシルァミン、ヘプチルァミン、ォクチルァミン、シクロへキシルァミン、ビニルァミン 、エチレンジァミン、トリメチレンジァミン、へキサメチレンジァミンなどが、脂肪族二級 アミン類では、ジメチルァミン、ジェチルァミン、ジプロピルァミン、ジブチルァミン、メ チルェチルァミンなど力 脂肪族三級ァミンでは、トリメチルァミン、トリェチルァミン、 トリプロピノレアミン、トリブチノレアミン、ジェチルメチルァミン、ジプロピルェチルァミンな どが挙げられる。その他のアミン類としては、ァニリン、 N—メチルァニリン、 N—ェチ ノレァニリン、 N, N—ジメチルァニリン、 N, N—ジェチルァニリン、 N, Ν—ジメチルベ ンジルァニリン、トルイジン、キシリジン、ベンジルァミン、ジフエニルァミン、トリフエ二 ノレアミン、ピぺリジン、メチルピペリジン、ェチルビペリジン、ピロリジン、インドール、メ
チルインドール、メチルピペラジン、ピロール、メチルピロール、カルバゾール、メチル カルバゾール、フエ二レンジァミン、ビフエニルァミン、ベンジジン、ナフチルァミン、ジ ナフチルァミン、ナフタレンジァミン、ピリジン、 2 メチルピリジン、 3 メチルピリジン 、 4 メチノレピリジン、 2, 6 _ジメチルビリジン、 3, 5—ジメチルピリジン、 2—ェチルピ リジン、 3 _ェチルピリジン、 2 _t_ブチルピリジン、 2, 6—ジ _t_ブチルピリジン、 キノリン、メチルキノリン、ジメチルキノリン、アタリジン、ェチルアタリジン、フエナントリ ジン、ェチルフエナントリジンなどが挙げられる。アミド類としては、ジメチルホルムアミ ド、ジメチルァセトアミド、 N メチルピロリドンなどが挙げられる。ホスフィン類としては 、トリメチルホスフィン、トリェチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィ ン、トリフエニルホスフィン、トリシクロへキシルホスフィンなどが挙げられる、ホスフアイ ト類としては、トリメチルホスファイト、トリェチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリ フエニルホスファイトなどが、ホスフェート類としては、トリメチルホスフェート、トリェチ ルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフヱニルホスフヱ ートなどが挙げられる。チォエーテル類としては、ジメチルチオエーテル、ジェチルチ ォエーテノレ、ジプロピノレチォエーテノレ、ジブチノレチォエーテノレ、ェチノレメチノレチォェ 一テル、ェチルブチルチオエーテル、メチルフエ二ルチオエーテル、ジフエ二ルチオ エーテル、ジベンジルチオエーテル、チォフェン、テトラヒドロチォフェンなどが挙げら れる。エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジェチルエーテル、ジー n ブチルェ 一テル、ジ iso ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジフエニル エーテル、メチルフエニルエーテルなどが挙げられる。ケトン類としては、アセトン、ジ ェチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、メチルェチルケトン、メチルプロピル ケトン、ェチルプロピルケトン、シクロブタノン、シクロへキサノン、メチルシクロへキサノ ン、ァセチノレアセトン、ァセトフエノン、プロピオフエノン、ブチロフエノン、バレロフエノ ン、フエ二ノレアセトン、ベンゾフエノン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノンなど が挙げられる。
電子供与体化合物の使用量は、実質リビングカチオン重合反応が著しく遅くなる、 または、停止する量であれば特に規定はない。具体的に反応を停止させるために必 要な電子供与体量はァミン類、ホスフィン類、ホスファイト類、ホスフェート類では、使
用するルイス酸に対し 0· 2〜2モル当量、好ましくは 0· 5〜1モル当量、チォエーテ ル類、エーテル類、ケトン類では、ルイス酸に対し 2〜5モル当量、好ましくは 2. 5〜4 . 0モル当量である。これらの電子供与体化合物の中でも、少量で効果のあるアミン 類、ホスフィン類、ホスファイト類、ホスフェート類を用いることが望ましい。なお、実際 に重合中に添加された電子供与体化合物と同一の化合物を用いると重合終了後の 重合槽の洗浄を簡略化できる。また、重合終了後に失活時に取り除き易い化合物を 選択することも重要となる。即ち、水もしくはメタノールに溶解する化合物が望ましい。
[0044] 電子供与体化合物の添加方法は特に限定されず、直接重合溶液に添加しても良 レ、。カチオン活性を効率良く停止させるために、重合に使用している溶媒に希釈して 添加することも可能である。また、電子供与体化合物を重合反応溶液に均一に拡散 させるために、撹拌を継続することが望ましい。
[0045] 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例 のみに限定されるものではない。本実施例に示すブロック共重合体の分子量及び分 子量分布は、 Waters社製 GPCシステム(カラム:昭和電工(株)製 ShodexK— 804 ( ポリスチレンゲル)、移動相:クロ口ホルム)を用い測定し、数平均分子量はポリスチレ ン換算で表記した。スチレン含量は1 H— NMR (GEMINI300 :Varian社製、溶媒: CDC1 )の測定を行レ、、フエニル基部位とアルキル基部位の積分曲線比より算出した
3
。また、転化率は GC法により求めた。
実施例 1
[0046] 撹拌機付き 2Lの反応容器に 1 _クロロブタン (モレキュラーシーブスで乾燥したもの)
510mL、へキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの) 57mL、 p—ジクミノレクロラ イド(1 , 4_ビス(1—クロル一 1—メチルェチル)ベンゼン) 0. 35g、ジメチルァセトァ ミド 0. 24gを加えた。反応容器を _ 70°Cに冷却した後、イソブチレン 165mLを添加 した。更に四塩化チタンを 2. 2mL (19. 7mmol)を加えて重合を開始し、 _ 70°Cで 1. 5時間攪拌した。次いで反応溶液にスチレン 55mLを添加し、更に 1時間反応さ せスチレン転化率が 85モル%の重合体溶液を得た。このブロック共重合体の分子量 を測定した結果、数平均分子量が 77000、分子量分布が 1. 48であった。
なお、ブロック共重合体の分子量測定には、得られた重合体溶液から 2mLサンプリ
ングし、 20mLのメタノールに添カ卩し、メタノール中に析出した樹脂を取り出し、 80°C の真空乾燥機で 24時間乾燥して得られたブロック共重合体を用いた。
[0047] この重合体溶液に電子供与体化合物としてジメチルァセトアミドを 1. Og (l l . 5mm ol、 0. 58mol当量対四塩化チタン)添加し、更に 1時間撹拌を継続した。得られた反 応溶液を窒素加圧下 (圧力: 0. 5MPa)、テフロン (登録商標)チューブ (内径 6mm) を用レ、、純水 500gを仕込んだ 3Lの反応容器に移液した。移液には 15分間を要した 。 3Lの反応容器は 55°Cに加熱し、 1時間撹拌した。撹拌終了後、 30分間静置し、水 相を除去した。更に、得られた重合体溶液に純水 300gを添加し、 30分間攪拌した。 撹拌を止め、 30分静置後、水相を除去した。上記水による洗浄操作を更に 2回繰り 返した。得られた重合体溶液から溶媒を留去し、更に、 80°Cの真空乾燥機で 24時 間乾燥することにより、イソブチレン系ブロック共重合体固形物を得た。イソプチレン 系ブロック共重合体の分子量を測定した結果、数平均分子量が 78000、分子量分 布が 1. 48であった。また、スチレン含量は 31重量%であった。
実施例 2
[0048] 電子供与体化合物として、ジメチルァセトアミドの代わりにトリェチルァミン 1. 2g (l l . 9mmol、 0. 60mol当量対四塩化チタン)を用いた以外は、実施例 1と同様の操作 を行った。
実施例 3
[0049] 電子供与体化合物として、ジメチルァセトアミドの代わりにピリジン 0· 93g (l l . 8mm ol、 0. 60mol当量対四塩化チタン)を用いた以外は、実施例 1と同様の操作を行つ た。
実施例 4
[0050] 電子供与体化合物として、ジメチルァセトアミドの代わりに THFを 3. 5g (48. 6mmol 、 2. 47mol当量対四塩ィ匕チタン)用いた以外は、実施例 1と同様の操作を行った。 (比較例 1)
実施例 1と同様にして、スチレン転化率が 85モル%の重合体溶液を得た。その後 電子供与体化合物を添加せずに重合体溶液をすぐに 3L反応容器に移液した。この 場合、移液に 35分を要した。
(比較例 2)
実施例 1のスチレン転化率が 85モル%の重合体溶液を更に 1時間攪拌した。この 間、電子供与体化合物は添加しなかった。この場合、反応溶液の移液は粘度が高く 不能であったため、反応容器を分解し、反応溶液を純水を仕込んだ 3L反応容器に 移液した。
(比較例 3)
電子供与体化合物の代わりに有機金属化合物である n ブチルリチウム(2Mへキ サン溶液)を 20mL添加する以外は実施例 1と同様の操作を行った。この場合、 n_ ブチルリチウムを重合体溶液に投入してすぐに溶液全体に濁りが生じた。 3L反応容 器への移液は 20分間で終了した。重合反応容器を使用した溶媒で洗浄したが、濁り に由来する固形物を除去できなかった。
(重合容器の洗浄性)
実施例又は比較例で得られた反応溶液を 3Lの反応容器に移液した後、 1 クロ口 ブタン 170mL、へキサン 19mLを、重合反応を行なうために用いた攪拌機付き 2Lの 反応容器内に投入し、 10分間撹拌した。その後、投入した溶液を払出し、反応容器 を目視で観察した。
〇:重合容器壁面に樹脂、塩の付着がなレ、状態
X:重合容器壁面に樹脂、塩の付着が目視で確認できる状態
表 1に実施例、比較例の電子供与体化合物種、添加量による反応溶液の移液時間
、分子量変化を示す。
[表 1]
【表 1】 電子供与体化合物種による反応溶液移液時間ノ分子量変化
THF :テトラヒドロフラン
*比較例 1はスチレン転化率が 85モル%の重合体を得た後すぐに、移液を開始。 *比較例 2は通常の移液が不可能なため、反応容器を分解して移液した後の値
[0052] 実施例:!〜 4では、重合体溶液に種々の電子供与体化合物を添加することにより、 リビングカチオン重合活性がなくなり、電子供与体化合物を添加してから 1時間経過 後においても反応溶液の移液には 15〜20分程度しか要さなかった。また、電子供 与体化合物の添加前後で数平均分子量/分子量分布に大きな変化は見られなかつ た。重合反応容器の洗浄性に関しては、重合に使用した溶媒である 1 _クロロブタン を用い、次回の重合が可能なレベルで洗浄できた。
[0053] 比較例 1は、所望のスチレン転化率となった重合体溶液に電子供与体化合物を添 加せずにすぐに移液した。この場合、重合体溶液にカチオン活性が残存しており、移 液中に分子量増大反応が若干進行し、移液時間が実施例の倍程度に伸びた。比較 例 2は重合体溶液に電子供与体化合物を添加せず、そのまま 1時間放置し、移液し ようとしたが、比較例 1と同様の分子量増大反応が著しく進行し、移液が不可能なほ ど溶液粘度が上昇した。
[0054] 電子供与体化合物の代わりに有機金属化合物として n—ブチルリチウムを用いた 比較例 3は、カチオン活性を消失させる効果を十分持っていた。しかし、有機溶媒に 不溶な金属塩、ルイス酸残渣が重合体溶液から析出し、重合反応容器を使用した溶 媒のみでは洗浄できなかった。
[0055] 以上の実施例、比較例から分かるように重合体溶液に電子供与体化合物を添加し た場合には、反応溶液の移液中の分子量増大反応が抑制されることにより、移液が 問題なく行え、また、重合に使用する溶媒で簡単に重合容器の洗浄ができる。 産業上の利用可能性
[0056] 本発明の製造法により得られた重合体は、一般的な熱可塑性樹脂に制振性及びガ スバリアー性を付与できると共に、透明性が必要な材料として使用できる。具体的に は、食品用途、 日用雑貨、玩具 ·運動用具用途、文具用途、自動車内外装用途、土 木 ·建築用途、家電機器用途、衣料 ·履物用途、医療用途、衛生用品、包装輸送資 材、電線用途等に利用可能である。