明 細 書 膜貫通型酵素阻害物質のスクリ一二ング方法 技術分野
本発明は、 膜貫通型酵素の膜貫通領域に特異的に結合する該酵素阻害物質のス クリーニング方法に関する。
背景技術
アルツハイマー病は、 神経細胞変性 '脱落と共に、 老人斑の形成および神経原 線維変化を特徴とする神経変性疾患である。 アルツハイマー病に最も特徴的な老 人斑は、 )3アミロイド蛋白 (以下、 A /3と略記することもある) を主成分として、 生体成分が脳内に沈着したものである。 アミノ酸 4 0または 4 2個からなる A J3 (以下、 それぞれ A ]3 1—4 0および A 1 - 4 2と略記する。 ) は、 神経細胞 に対して毒性を示すことが知られている。 したがって、 A の産生 '分泌を阻害 する薬剤は、 A J3に起因する疾患 (例、 アルツハイマー病、 ダウン症など) の予 防-治療に有効である。
A j3 1— 4 0および A j3 1— 4 2は、 その前駆体蛋白である A P P (Amyloid Precursor Protein) から、 セクレターゼと γセクレターゼとによって切り出 されることにより産生される。 これらの酵素を阻害する薬剤は A ]3の産生 ·分泌 を阻害するので、 特に家族性アルツハイマー病 (F AD) などの、 遺伝的に A ]3 に起因する疾患 (例、 アルツハイマー病 (AD) 、 ダウン症など) に罹患する可 能性が高い人や、 外傷などにより脳内で 蛋白の増加を起こす患者等、 脳内で 蛋白の増加している患者に対して、 根本的な予防 ·治療効果を発揮し得ると 考えられる。
1 9 9 9年、 βセクレターゼ活性を担うプ テアーゼである B A C Ε 1
(Beta-site APP Cleaving Enzyme 1; Asp2, raeraapsin 2とも呼ばれる) の c D N Aの単離が 4つの製薬企業グループからほぼ同時に報告された (非特許文献 1 に総説) 。 B A C E 1は 5 0 1アミノ酸からなる 1回膜貫通型蛋白質であり、 細 胞外 (小胞体 'ゴルジ体にあっては内腔側) に存在する 2つのァスパラギン酸を 活性中心とする典型的なァスパラギン酸プロテアーゼである。 その後、 B A C E 1ノックァゥトマウスにおいて Α ]3産生が完全に消失していることが証明され、 B A C E 1が /3セクレターゼそのものであることが示された。 また、 この K Oマ ウスは重篤な発生異常がみられず、 遺伝子発現プロフアイルにもほとんど変化が みられないことから、 セクレターゼ阻害剤は、 γセクレターゼ阻害剤 (yセク レターゼは A P P以外に免疫細胞の分化に関与する N o t c h 1も切断するが、 N o t c h 1の切断が阻害されると免疫異常が起こることが分かっている) より も安全で、 副作用の少ない A D治療薬となることが期待される。
セクレターゼがァスパラギン酸プロテアーゼであることから、 遷移状態ミミ ックとして機能し得るスタチン、 ヒドロキシエチレン、 ヒドロキシェチルカルボ ニル構造を持ったペプチド性阻害剤が開発されている (非特許文献 1に総説) 。 し力 し、 ペプチド性阻害剤は体内動態や脳内移行効率に問題があり'、 多くの場合、 インビボでの薬効発揮のためには高濃度を要求する。
非ぺプチド性の低分子型阻害剤は上記の問題点を克服し得るのみならず、 新た な阻害作用点を見出せる可能性がある。 そのような低分子化合物は徐々に開発さ れており (特許文献 1〜3 ) 、 例えば、 コンピュータシミュレーションにより ]3 セクレターゼの活性中心に直接作用する可能性が示唆されるものや (特許文献 2 ) 、 A P Pのプロセッシングを; 8セクレターゼ切断から αセクレターゼ切断に シフトさせる可能性が示唆されるもの (特許文献 3 ) がある。 また、 緑茶力テキ ン類は、 基質と非拮抗的に |3セクレターゼ活性を阻害することが報告されている (非特許文献 2 ) 。
一方、 セクレターゼ阻害剤のスクリーニング方法としては、 例えば特許文献
1には、 蛍光ドナーで標識され、 かつ蛍光クェンチヤ一で標識されているぺプチ ドを基質として用い、 組換え型ヒト /3セクレターゼ蛋白質による切断活性を検出 する方法が記載されている。 特許文献 4および 5には、 ]3—アミロイド 'ぺプチ ド (]3ΑΡ) 産生細胞系を用い、 可溶性 A Ρ産生量の変化を指標に A Ρ生産 阻害剤を同定する方法が記載されている。 また、 特許文献 6には、 セクレター ゼの活性部位との結合を指標にした j3セクレターゼ阻害剤のスクリ一ユング方法 が記載されている。
特許文献 1 :国際公開第 01Z87293号パンフレツト
特許文献 2 :国際公開第 02Z88 101号パンフレツト
特許文献 3 :国際公開第 02/96897号パンフレッ ト
特許文献 4 :国際公開第 94Z10569号パンフレツト
特許文献 5 :特開平 7— 165606号公報
特許文献 6 :特開 2003— 26 1 596公報
非特許文献 1 :バーゲーズ (Varghese J.) ら, ジャーナル■ォプ 'メディ力 ル ' ケミス トリー (J. Med. Chera. ) , 第 46巻, 第 22号, p p. 4625— 4630 (2003年)
非特許文献 2 :ジェオン (Jeon S.Y. ) ら, バイオオーガニック 'メディ力 ノレ ' ケミス トリー ' レターズ (Bioorg. Med. Chera. Lett. ) , 第 13卷, ρ . 3905-3908 (2003年) 発明の開示 ·
上記のように、 多数の製薬企業が i3セクレターゼ阻害剤の研究開発に多大の努 力を費やしている。 ]3セクレターゼの新たな阻害作用点を見出すことは、 より優 れた /3セクレターゼ阻害作用を有する化合物を開発する上でも重要である。 従って、 本発明の目的は、 新規の阻害部位に作用する セクレターゼ阻害剤の スクリーユング方法を提供することであり、 ひいては、 当該阻害部位に作用する
ことにより優れた セクレターゼ阻害作用、 従って優れた A D予防■治療活性を 有する化合物を提供することである。
本発明者は、 上記特許文献 1に記載される種々の セクレターゼ阻害活性を有 する化合物について、 ]3セクレターゼ阻害の速度論解析を行った結果、 これらの 化合物の阻害様式が非拮抗型阻害であることを見出した。 そこで、 これらの化合 物の 3セクレターゼ蛋白質に対する結合部位を調べたところ、 意外にも、 これら の化合物は セクレターゼ蛋白質の膜貫通領域に結合することにより ]3セクレタ ーゼ活性を阻害することが判明した。 活性領域以外に結合して非拮抗的に酵素活 性を阻害するァロステリックインヒビタ一は多くの酵素について周知であるが、 膜貫通型酵素の膜貫通領域に結合して阻害活性を発揮する阻害物質に関する報告 は、 ]3セクレターゼに限らずこれまで皆無である。
本発明者は、 遺伝子工学的手法を駆使して J3セクレターゼ蛋白質の C末端側か ら膜貫通領域を徐々に欠失させた種々の変異蛋白質を作製し、 これらの化合物が 結合する βセクレターゼ蛋白質の部位を特定することに成功するとともに、 該結 合部位を保持する セクレターゼ蛋白質と、 該結合部位が欠失した J3セクレター ゼ蛋白質とを用いて、 試験化合物のそれらへの結合と酵素阻害活性とを検出し得 るスクリーニング系を構築して本発明を完成するに至った。
即ち、 本発明は、
[ 1 ] 膜貫通型酵素の活性中心を含む領域と膜貫通領域の一部もしくは全部とを 含む、 該酵素のアミノ酸配列の一部または全部を有する蛋白質を用いることを特 徴とする、 膜貫通領域に特異的に結合する該酵素阻害物質のスクリーニング方 法;
[ 2 ] 活性中心を含む領域を含み且つ前記膜貫通領域の一部もしくは全部を欠く、 膜貫通型酵素のアミノ酸配列の一部を有する蛋白質をさらに用い、 各蛋白質への 被験物質の結合および各蛋白質の酵素活性を測定することを特徴とする、 上記
[ 1 ] 記載の方法;
[3] 活性中心を含む領域が細胞外もしくは内腔領域である上記 [1] 記載の方 法;
[4] 膜貫通型酵素がプロテアーゼである上記 [1] 記載の方法;
[5] プロテアーゼがァスパラギン酸プロテアーゼである上記 [4] 記載の方 法;
[6] ァスパラギン酸プロテアーゼが ]3セクレターゼである上記 [5] 記載の方 法;
[7] |3セクレターゼの活性中心を含む領域が配列番号 2で表されるァミノ酸配 列中アミノ酸番号 46〜4 54で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に 同一のアミノ酸配列を有し、 該酵素の膜'貫通領域が配列番号 2で表されるァミノ 酸配列中アミノ酸番号 4 5 5〜480で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実 質的に同一のアミノ酸配列を有するものである、 上記 [6] 記載の方法;
[ 8 ] 活性中心を含む領域として配列番号 2で表されるァミノ酸配列中アミノ酸 番号 46〜454で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のァミノ 酸配列を有し、 膜貫通領域の一部として配列番号 2で表されるアミノ酸配列中ァ ミノ酸番号 466〜47 1で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一 のアミノ酸配列を有する蛋白質を用いる、 上記 [7] 記載の方法;
[9] 以下の(a)および (b)を含んでなる、 膜貫通型酵素の膜貫通領域に特異的に 結合する該酵素阻害物質のスクリーニング用キット ;
(a) 膜貫通型酵素の活性中心を含む領域と膜貫通領域の一部もしくは全部とを含 む、 該酵素のアミノ酸配列の一部または全部を有する蛋白質
(b) 該酵素の活性中心を含む領域を含み且つ上記 (a)の膜貫通領域の一部もしく は全部を欠く、 該酵素のアミノ酸配列の一部を有する蛋白質
[1 0] /3セクレターゼの膜貫通領域に結合する該酵素阻害物質 (但し、 下記構 造式で示される化合物を除く) を含有してなる、 J3セクレターゼ選択的阻害剤;
[1 1] 阻害物質の βセクレターゼ結合部位が配列番号 2で表されるアミノ酸配 列中アミノ酸番号 466〜471で示されるアミノ酸配列中に存在する、 上記
[10] 記載の剤;
[1 2] アルツハイマー病、 ダウン症および老年性記憶障害からなる群より選択 される疾患の予防■治療用である、 上記 [10] 記載の剤;
[1 3] 血圧低下を引き起こさないことを特徴とする上記 [1 2] 記載の剤; [14] ]3セクレターゼの膜貫通領域に結合する該酵素阻害物質 (但し、 下記構 造式で示される化合物を除く) を用いることを特徴とする、 ]3セクレターゼの選 択的阻害方法;
[15] 阻害物質の セクレターゼ結合部位が配列番号 2で表されるアミノ酸配 列中アミノ酸番号 466〜471で示されるアミノ酸配列中に存在する、 上記
[14] 記載の方法;
[16] アルツハイマー病、 ダウン症および老年性記憶障害からなる群より選択 される疾患の予防'治療用である、 上記 [14] 記載の方法;
[17] 血圧低下を引き起こさないことを特徴とする上記 [16] 記載の方法; [18] ]3セクレターゼ選択的阻害剤の製造のための、 /3セクレターゼの膜貫通 領域に結合する該酵素阻害物質 (但し、 下記構造式で示される化合物を除く) の 使用;
.8S8T0/S00Zdf/X3d t898£0/900Z OAV
[19] 阻害物質の ]3セクレターゼ結合部位が配列番号 2で表されるアミノ酸配 列中アミノ酸番号 466〜471で示されるアミノ酸配列中に存在する、 上記
[18] 記載の使用;
[20] 阻害剤がアルツハイマー病、 ダウン症および老年性記憶障害からなる群 より選択される疾患の予防 ·治療用である、 上記 [18] 記載の使用;および
[21] 阻害剤が血圧低下を引き起こさないことを特徴とする上記 [20] 記載 の使用;
を提供する。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットは、 膜貫通領域に 結合することにより J3セクレターゼ活性を阻害する化合物を選択することができ るので、 遷移状態ミミックやその他の活性中心に作用する阻害薬等とは異なり、 ]3セクレターゼ選択的に作用して他のァスパラギン酸プ口テアーゼを阻害しない 化合物を選択し得るという有利な効果を奏する。 図面の簡単な説明
図 1は、 BACE 1— 501に対する化合物 Dの阻害様式を解析するラインゥ エーバ一—バークプロットを示す。 化合物 Dの濃度は、 參: 30μΜ、 Α: 10 AtM、 ■: 0 //Mである。
図 2は、 BACE 1— 501と化合物 Jの結合を示す表面プラズモン共鳴のシ グナル (Resonance Unit) 示す n
発明を実施するための最良の形態
本発明の、 膜貫通型酵素の膜貫通領域に特異的に結合する該酵素阻害物質のス クリーニング方法 (以下、 「本発明のスクリーニング方法」 と略記する場合があ る) は、 膜貫通型酵素の活性中心を含む領域と膜貫通領域の一部もしくは全部と を含む、 該酵素のアミノ酸配列の一部または全部を有する蛋白質を用いることを 特徴とする。
本発明のスクリーニング方法を用いることができる酵素としては、 膜貫通領域 を含むものであれば特に制限はなく、 Type Iもしくは Type IIの 1回膜貫通蛋白 質に属するあらゆる酵素 (例: J3セクレターゼ、 膜型マトリックスメタ口プロテ ァーゼ、 T N F a変換酵素、 メルトリン、 クズバニアン、 C D 3 8、 GM 3合成 酵素、 胎盤性ロイシンアミノぺプチダーゼ等) 、 7回膜貫通型受容体 (7 TM R) 等の複数回膜貫通蛋白質に属するあらゆる酵素 (例:プレセ二リン (P S ) 、 N AD H—キノン酸化還元酵素、 チトクロム C酸化還元酵素等) が挙げられる力 好ましくはプロテアーゼ (例:ァスパラギン酸プロテアーゼ、 セリンプロテア一 ゼ、 スレオニンプロテアーゼ、 システィンプロテアーゼ等) であり、 より好まし くほァスパラギン酸プロテアーゼ、 さらに好ましくは Type I I回膜貫通型のァス パラギン酸プロテアーゼである ]3セクレターゼである。
「膜貫通型酵素の活性中心を含む領域」 とは、 活性中心を含み、 かつ酵素活性 を発現するのに十分な、 該酵素の部分アミノ酸配列を含有する領域を意味する。 該領域の配列上の位置に制限はなく、 酵素蛋白質の N末端側領域、 内部配列、 C 末端側領域のいずれに位置してもよい。 また、 細胞外 (小胞体 ·ゴルジ体等にあ つては内腔) 、 細胞質側、 あるいは膜貫通領域 (但し、 酵素阻害物質の結合部位 とは異なる) のいずれにあってもよい。 例えば、 活性中心が細胞外 (もしくは内 腔) 領域、 細胞質領域または膜貫通領域内に存在する場合、 該 「活性中心を含む 領域」 は活性中心が存在するいずれかの領域全体であってよいし、 また、 例えば
X線結晶構造解析などにより酵素の三次元構造が明らかになつている場合には、 活性中心が存在する領域内の、 酵素活性の発現に最低限必要な部分のみを用いる こともできる。
「膜貫通領域の一部もしくは全部」 とは、 目的とする酵素阻害活性を有する化 合物が標的とする結合部位を最低限含んでいることを意味する。 該結合部位は膜 貫通領域内で任意に設定することができるが、 膜貫通型酵素の活性中心が膜貫通 領域に存在する場合には、 該結合部位は該活性中心が存在する部位以外の膜貫通 領域から選択される。
上述のように、 本発明のスクリーニング方法に用いることができる好ましい膜 貫通型酵素の 1つは J3セクレターゼである。 本発明における )3セクレターゼ蛋白 質は、 配列番号 2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 4 6〜5 0 1で示され るァミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のァミノ酸配列を含有する蛋白質で ある。
j3セクレターゼ蛋白質は、 温血動物 (例えば、 ヒト、 マウス、 ラット、 モノレモ ット、 ハムスター、 ゥサギ、 ヒッジ、 ャギ、 ブタ、 ゥシ、 ゥマ、 トリ、 ネコ、 ィ ヌ、 サル、 チンパンジーなど) の細胞 [例えば、 脾細胞、 神経細胞、 グリア細胞、 膝臓 ]3細胞、 骨髄細胞、 メサンギゥム細胞、 ランゲルハンス細胞、 表皮細胞、 上 皮細胞、 杯細胞、 内皮細胞、 平滑筋細胞、 線維芽細胞、 線維細胞、 筋細胞、 脂肪 細胞、 免疫細胞 (例、 マクロファージ、 T細胞、 B細胞、 ナチュラルキラー細胞、 肥満細胞、 好中球、 好塩基球、 好酸球、 単球) 、 巨核球、 滑膜細胞、 軟骨細胞、 骨細胞、 骨芽細胞、 破骨細胞、 乳腺細胞、 肝細胞もしくは間質細胞、 またはこれ ら細胞の前駆細胞、 幹細胞もしくはガン細胞など] もしくはそれらの細胞が存在 するあらゆる組織 [例えば、 脳、 脳の各部位 (例、 嗅球、 扁桃核、 大脳基底球、 海馬、 視床、 視床下部、 大脳皮質、 延髄、 小脳) 、 脊髄、 下垂体、 胃、 膝臓、 腎 臓、 肝臓、 生殖腺、 甲状腺、 胆のう、 骨髄、 副腎、 皮膚、 筋肉、 肺、 消化管 (例、 大腸、 小腸) 、 血管、 心臓、 胸腺、 脾臓、 顎下腺、 末梢血、 前立腺、 睾丸、 卵巣、
胎盤、 子宮、 骨、 関節、 脂肪組織、 骨格筋] などに由来する蛋白質であってよく、 また、 化学合成もしくは無細胞翻訳系で合成された蛋白質であってもよい。 ある いは上記ァミノ酸配列をコードする塩基配列を含有する核酸を導入された形質転 換体から産生された組換え蛋白質であってもよい。
配列番号 2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 4 6〜5 0 1で示されるァ ミノ酸配列と 「実質的に同一のアミノ酸配列」 とは、 配列番号 2に示されるアミ ノ酸配列中アミノ酸番号 4 6〜5 0 1で示されるアミノ酸配列と約 7 0 %以上、 好ましくは約 8 0 %以上、 さらに好ましくは約 9 0 %以上、 特に好ましくは約 9 5 %以上、 最も好ましくは約 9 8 %以上の相同性を有するアミノ酸配列をいう。 ここで 「相同性」 とは、 当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用い て 2つのアミノ酸配列をァラインさせた場合の、 最適なアラインメント (好まし くは、 該アルゴリズムは最適なァラインメントのために配列の一方もしくは両方 へのギャップの導入を考慮し得るものである) における、 オーバーラップする全 アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合 (%) を意味 する。 「類似アミノ酸」 とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、 例えば、 芳香族アミノ酸 (Phe、 Trp、 Tyr) 、 脂肪族アミノ酸 (Ala、 Leu、 Ile、 Val) 、 極性アミノ酸 (Gln、 Asn) 、 塩基性アミノ酸 (Lys、 Arg、 His) 、 酸性ァ ミノ酸 (Glu、 Asp) 、 水酸基を有するアミノ酸 (Ser、 Thr) 、 側鎖の小さいアミ ノ酸 (Gly、 Ala, Ser、 Thr、 Met) などの同じグループに分類されるアミノ酸が 挙げられる。 このような類似アミノ酸による置換は蛋白質の表現型に変化をもた らさない (即ち、 保存的アミノ酸置換である) ことが予測される。 保存的ァミノ 酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、 種々の文献に記載されている (例 えば、 Bowieら, Science, 247: 1306-1310 (1990)を参照) 。 .
本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は、 相同性計算アルゴリズム NCBI BLAST (National Center for Biotechnology Information Basic Local
Alignment Search Tool) を用い、 以下の条件 (期待値 =10;ギャップを許す;マ
トリタス =BL0SUM62;フィノレタリング =0FF) にて計算することができる。 ァミノ 酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、 例えば、 Karlinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90 : 5873-5877 (1993)に記載のアルゴリズム
[該アルゴリズムは BLASTおよび XBLASTプログラム (version 2. 0) に組み込ま れている (Altschulら, Nucleic Acids Res. , 25 : 3389-3402 (1997) ) ] 、
Needlemanら, J. Mol. BioL , 48 : 444-453 (1970)に記載のアルゴリズム [該 アルゴリズムは GCGソフトウエアパッケージ中の GAPプログラムに組み込まれてい る] 、 Myersおよび Miller, CABI0S, 4: 11-17 (1988)に記載のアルゴリズム [該 アルゴリズムは CGC配列ァラインメントソフトウエアパッケージの一部である ALIGNプログラム (version 2. 0) に組み込まれている] 、 Pearsonら, Proc.
• Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448 (1988)に記載のアルゴリズム [該ァルゴ リズムは GCGソフトウエアパッケージ中の FASTAプログラムに組み込まれている] 等が挙げられ、 それらも同様に好ましく用いられ得る。
より好ましくは、 「実質的に同一のアミノ酸配列」 とは、 配列番号 2に示され るアミノ酸配列中アミノ酸番号 4 6 - 5 0 1で示されるアミノ酸配列と約 7 0 % 以上、 好ましくは約 8 0 %以上、 さらに好ましくは約 9 0 %以上、 特に好ましく は約 9 5 %以上、 最も好ましくは約 9 8 %以上の同一性を有するアミノ酸配列で ある。
配列番号 2に示されるァミノ酸配列中ァミノ酸番号 4 6〜 5 0 1で示されるァ ミノ酸配列と 「実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質」 とは、 前記の配 列番号 2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 4 6〜 5 0 1で示されるァミノ 酸配列と実質的に同一のァミノ酸配列を含有し、 配列番号 2に示されるアミノ酸 配列中アミノ酸番号 4 6〜 5 0 1で示されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実 質的に同質の活性を有する蛋白質をいう。
「実質的に同質の活性」 とは、 (1) ]3セクレターゼ活性 (即ち、 ? の6 9
5ァミノ酸からなるアイソタイプ (A P P 6 9 5 ) を 5 9 6番目の M e tと 5 9
7番目の A s pの間で特異的に切断するプロテアーゼ活性) および (2) 膜貫通領 域に結合して J3セクレターゼ阻害活性を発揮する化合物との結合活性をいう。 実 質的に同質とは、 それらの活性が質的 (定性的) に同様であることを示す。 従つ て、 J3セクレターゼ活性および阻害物質との結合活性が同等であることが好まし いが、 これらの活性の程度、 蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよ い (例えば、 活性については、 約 0 . 0 1〜約 1 0 0倍、 好ましくは約 0 . 1〜 約 1 0倍、 より好ましくは約 0 . 5〜約 2倍の範囲内が挙げられる) 。
j3セクレターゼ活性の測定は、 公知の方法、 例えば、 A P Pまたはその J3セク レターゼにより認識される部位と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含 む合成基質ペプチドと j3セクレターゼ蛋白質とを反応させ、 切断により生じる反 応産物の一方もしくは両方を検出する方法、 あるいは上記特許文献 1に記載され るように蛍光物質と消光物質とを含む合成基質と ]3セクレターゼ蛋白質とを反応 させ、 酵素切断により蛍光物質と消光物質が分離することによって生じる蛍光を 測定する方法などにより行うことができるが、 それらに限定されない。 一方、 阻 害物質との結合活性は、 後記実施例に示されるように表面プラズモン共鳴 (S P R) 等を用いて測定することができる。
また、 本発明で用いられる セクレターゼには、 例えば、 (1) 配列番号 2に示 されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 4 6〜5 0 1で示されるアミノ酸配列の 1ま たは 2個以上 (例えば 1〜5 0個程度、 好ましくは 1〜3 0個程度、 より好まし くは 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは 1〜5個) のアミノ酸が欠失したァミノ 酸配列、 (2) 配列番号 2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 4 6〜5 0 1で 示されるアミノ酸配列に 1または 2個以上 (例えば 1〜5 0個程度、 好ましくは 1〜3 0個程度、 より好ましくは 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは 1〜5個) のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、 (3) 配列番号 2に示されるアミノ酸配列中 アミノ酸番号 4 6〜5 0 1で示されるアミノ酸配列に 1または 2個以上 (例えば 1〜5 0個程度、 好ましくは 1〜3 0個程度、 より好ましくは 1〜1 0個程度、
さらに好ましくは 1〜5個) のアミノ酸が揷入されたアミノ酸配列、 (4) 配列番 号 2に示されるアミノ酸配列中ナミノ酸番号 4 6〜5 0 1で示されるアミノ酸配 列中の 1または 2個以上 (例えば 1〜5 0個程度、 好ましくは 1〜3 0個程度、 より好ましくは 1〜1 0個程度、 さらに好ましくは 1〜5個) のアミノ酸が他の アミノ酸で置換されたアミノ酸配列、 または(5) それらを組み合わせたアミノ酸 配列を含有する蛋白質も含まれる。
但し、 1または 2個以上のアミノ酸を欠失する場合、 該欠失部位は配列番号 2 に示されるアミノ酸配列中少なくともアミノ酸番号 4 6 6〜4 7 1で示されるァ ミノ酸配列以外の部位であり、 好ましくはァミノ酸番号 4 5 5〜 4 8 0で示され るアミノ酸配列以外の部位である。 また、 1または 2個以上のアミノ酸が揷入さ れるか、 他のアミノ酸で置換される場合、 該揷入もしくは置換部位は、 配列番号 2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 4 6 6〜4 7 1で示されるアミノ酸配 列以外の部位 (好ましくはァミノ酸番号 4 5 5〜 4 8 0で示されるァミノ酸配列 以外の部位) であるか、 あるいは当該部位であっても、 その揷入もしくは置換の 結果、 当該部位の活性 (即ち、 膜貫通領域に結合する セクレターゼ阻害物質と 結合する活性) に質的な影響を与えないものである必要がある。
]3セクレターゼは、 1回膜貫通型のァスパラギン酸プロテアーゼであり、 細胞 外 (もしくは内腔) 領域内に活性中心を含む。 より具体的には、 例えば、 配列番 号 2に示されるヒト ]3セクレターゼにおいては、 アミノ酸番号 4 6〜 5 0 1で示 されるアミノ酸配列が成熟 ]3セクレターゼ蛋白質のアミノ酸配列であり ( βセク レターゼはプレブ口酵素として生成し、 分泌過程においてアミノ酸番号 1〜 2 1 で示されるァミノ酸配列からなるシグナルぺプチド、 ァミノ酸番号 2 2〜 4 5で 示されるアミノ酸配列からなるプロペプチドが切断される) 、 文献により多少位 置は異なるが、 例えば細胞外 (内腔) 領域はアミノ酸番号 4 5〜4 5 4、 膜貫通 領域はァミノ酸番号 4 5 5〜 4 8 0、 細胞質領域はァミノ酸番号 4 8 1〜 5 0 1 でそれぞれ示されるァミノ酸配列からなる。
細胞外 (内腔) 領域における活性中心のコンセンサスモチーフ (D- T/ S - G- T/ S ) は、 アミノ酸番号 9 3〜9 6 (D T G S ) およびアミノ酸番号 2 8 9〜 2 9 2 (D S G T ) である。 したがって、 /3セクレターゼの 「活性中心を含む領 域」 としては、 例えば、 配列番号 2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 9 3 〜2 9 2で示されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を 含む領域が挙げられる。 ここで 「実質的に同一のアミノ酸配列」 とは上記と同義 であり、 「実質的に同一のアミノ酸配列を含む領域」 とは、 実質的に同一のアミ ノ酸配列を含み、 且つ セクレターゼ活性を有する領域である。 βセクレターゼ の活性中心を含む領域は、 その細胞外 (内腔) 領域全体 (即ち、 配列番号 2に示 されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 4 6〜4 5 4で示されるアミノ酸配列と同一 もしくは実質的に同一のアミノ酸配列) であってもよく、 あるいはさらにプロ配 列もしくはプレブ口配列を Ν末端に含む配列 (即ち、 配列番号 2に示されるアミ ノ酸配列中アミノ酸番号 2 2〜4 5 4もしくは 1〜4 5 4で示されるアミノ酸配 列と同一もしくは実質的に同一のァミノ酸配列) であってもよい。
セクレターゼの 「膜貫通镇域の一部」 としては、 配列番号 2に示されるアミ ノ酸配列中ァミノ酸番号 4 5 5〜 4 8 0で示されるァミノ酸配列の任意の部分配 列 (例えば、 連続する 3〜 2 0アミノ酸程度、 好ましくは連続する 5〜 1 0アミ ノ酸程度力 らなる) と同一もしくは実質的に同一のァミノ酸配列であれば特に制 限はないが、 好ましくは、 アミノ酸番号 4 6 6〜4 7 1で示されるアミノ酸配列 と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列が挙げられる。 ここで 「実質的に同 一のアミノ酸配列」 とは、 配列番号 2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 4 5 5〜4 8 0で示されるアミノ酸配列の任意の部分配列において、 1〜数個のァ ミノ酸が置換、 欠失、 揷入もしくは付加されたアミノ酸配列であって、 該部分配 列の ]3セクレターゼ阻害活性を有する化合物に対する結合能が少なくとも質的に 変化しないアミノ酸配列をいう。 このようなアミノ酸の変異は上述の保存的アミ' ノ酸置換などによって達成され得る。 特に、 疎水度において類似するアミノ酸に
より置換することが好ましいと考えられるが、 それに限定されない。
本発明のスクリーニング方法に用いられる セクレターゼは、 N末端側に上記 「活性中心を含む領域」 を、 C末端側に 「膜貫通領域の一部もしくは全部」 を含 むものであれば特に制限はない。 例えば、 膜貫通領域の一部もしくは全部の C末 端側に細胞質領域の配列を含んでもよいし、 含んでいなくてもよい。
本明細書に記載される蛋白質およびぺプチドは、 ぺプチド標記の' I貧例に従って 左端が N末端 (ァミノ末端) 、 右端が C末端 (力ルポキシル末端) である。 本発 明のスクリーニング方法に用いられる膜貫通型酵素は、 C末端がカルボキシル基 (- C O O H) 、 カルボキシレート(一 C O O— ) 、 アミド (一 C O N H 2 ) ま たはエステル (一 C O O R ) の何れであってもよい。
ここでエステルにおける Rとしては、 例えば、 メチル、 ェチル、 n—プロピル、 イソプロピル、 n—ブチルなどの C i ― 6 アルキル基;例えば、 シクロペンチノレ、 シクロへキシルなどの C 3― 8 シクロアルキル基;例えば、 フエニル、 α—ナフ チルなどの C 6 ― J 2 ァリール基;例えば、 ベンジル、 フエネチルなどのフエ二 ルー ― 2 アルキル基; α—ナフチルメチルなどの α—ナフチル一 C ― 2 ァ. ルキル基などの C 7― ! 4 ァラルキル基; ビバロイルォキシメチル基などが用い られる。
膜貫通型酵素が C末端以外にカルボキシル基 (またはカルボキシレート) を有 している場合、 力ルポキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本 発明の膜貫通型酵素に含まれる。 この場合のエステルとしては、 例えば上記した C末端のエステルなどが用いられる。
さらに、 膜貫通型酵素には、 N末端のアミノ酸残基 (例、 メチォニン残基) の ァミノ基が保護基 (例えば、 ホルミル基、 ァセチル基などの _ 6 アルカノィ ルなどのじェ― 6 ァシル基など) で保護されているもの、 生体内で切断されて生 成する N末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、 分子内のアミノ 酸の側鎖上の置換基 (例えば— O H、 — S H、 アミノ基、 イミダゾール基、 イン
ドール基、 グァニジノ基など) が適当な保護基 (例えば、 ホルミル基、 ァセチル 基などの C 6 アル力ノィル基などの C i 6 ァシル基など) で保護されてい るもの、 あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含ま れる。
本発明で用いられる膜貫通型酵素の部分ペプチドは、 上記した膜貫通型酵素の 部分アミノ酸配列 (即ち、.活性中心を含む領域の配列と膜貫通領域の一部もしく は全部の配列) を有し、 且つ膜貫通型酵素と実質的に同質の活性を有するぺプチ ドである。 ここで 「実質的に同質の活性」 とは上記と同意義を示す。 また、 「実 質的に同質の活性」 の測定は上記と同様にして行うことができる。 本明細書にお いては、 当該部分ペプチドを、 以下 「阻害物質結合型ペプチド」 と称することと する。
阻害物質結合型ペプチドは、 上記の性質を有する限り特に制限されないが、 例 えば、 ]3セクレターゼの場合、 細胞外 (内腔) 領域内の酵素活性に影響を与えな い部分アミノ酸配列を欠くものや、 膜貫通領域の標的結合部位以外の部分アミノ 酸配列を欠くもの、 細胞質領域の一部もしくは全部を欠くものなどが挙げられる。 一方、 膜貫通型酵素の部分ペプチドであって、 (1) 活性中心を含む領域を保持 し、 且つ (2) 膜貫通領域内の、 目的とする酵素阻害物質が標的とする結合部位を 欠く部分ペプチドは、 酵素活性を保持するが、 目的とする酵素阻害物質に対する 結合活性がないので、 該標的結合部位に特異的に結合して酵素阻害活性を発揮す る化合物と接触させてもこれと結合せず、 酵素活性も阻害されない。 本明細書に おいては、 当該部分ペプチドを、 以下 「阻害物質非結合型ペプチド」 と称するこ ととする。
膜貫通型酵素の部分ぺプチド (阻害物質結合型ぺプチドおよび阻害物質非結合 型ペプチドの両者を包含する;以下、 このような場合には 「本発明の部分ぺプチ ド」 と称することがある) は、 C末端がカルボキシル基 (一 C O O H) 、 カルボ キシレート (一 C O O _ ) 、 アミ ド (一 C O N H 2 ) またはエステル (一 C O O
R) の何れであってもよい。 ここでエステルにおける Rとしては、 膜貫通型酵素 について前記したと同様のものが挙げられる。 これらのぺプチドが C末端以外に 力ルポキシル基 (またはカルボキシレート) を有している場合、 カルボキシル基 がァミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ぺプチドに含まれる。 この場合のエステルとしては、 例えば上記した C末端のエステルなどが用いられ る。
さらに、 本発明の部分ペプチドには、 上記した膜貫通型酵素と同様に、 N末端 のメチォニン残基のァミノ基が保護基で保護されているもの、 N端側が生体内で 切断され生成した G l nがピログルタミン酸化したもの、 分子内のアミノ酸の側 鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、 あるいは糖鎖が結合したい わゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
膜貫通型酵素またはその部分ペプチドの塩としては、 酸または塩基との生理学 的に許容される塩が挙げられ、 とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好まし レ、。 この様な塩としては、 例えば、 無機酸 (例えば、 塩酸、 リン酸、 臭化水素酸、 硫酸) との塩、 あるいは有機酸 (例えば、 酢酸、 ギ酸、 プロピオン酸、 フマル酸、 マレイン酸、 コノ、ク酸、 酒石酸、 クェン酸、 リンゴ酸、 蓚酸、 安息香酸、 メタン スルホン酸、 ベンゼンスルホン酸) との塩などが用いられる。
膜貫通型酵素またはその塩は、 その例示としての i3セクレターゼにおいて前述 した、 温血動物の細胞または組織から自体公知の蛋白質の精製方法によつて調製 することができる。 具体的には、 温血動物の組織または細胞をホモジナイズし、 可溶性画分を逆相クロマトグラフィー、 イオン交換クロマトグラフィー、 ァフィ 二ティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー等で分離精製することに よって、 膜貫通型酵素またはその塩を製造することができる。
膜貫通型酵素またはその部分べプチドは、 公知のぺプチド合成法に従って製造 することもできる。
ペプチド合成法は、 例えば、 固相合成法、 液相合成法のいずれであってもよい。
膜貫通型酵素を構成し得る部分べプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、 生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とする蛋白質を 製造することができる。
ここで、 縮合や保護基の脱離は、 自体公知の方法、 例えば、 以下の(1)〜(5)に 記載された方法に従って行われる。
(1) M. Bodanszkyおよび M. A. 0ndetti、 ペプチド ·シンセシス (Peptide Synthesis) , Interscience Publishers, New York .(1966年)
(2) Schroederおよび Luebke、 ザ 'ペプチド(The Peptide) , Academic Press, New York (1965年)
(3) 泉屋信夫他、 ペプチド合成の基礎と実験、 丸善 (株) (1975年)
(4) 矢島治明 および榊原俊平、 生化学実験講座 1、 蛋白質の化学 IV、 205、 (1977年)
(5) 矢島治明監修、 続医薬品の開発、 第 14巻、 ペプチド合成、 広川書店
このようにして得られた膜貫通型酵素またはその部分ペプチドは、 公知の精製 法により単離'精製することができる。 ここで、 精製法としては、 例えば、 溶媒 抽出、 蒸留、 カラムクロマトグラフィー、 液体クロマトグラフィー、 再結晶、 こ れらの組み合わせなどが挙げられる。
上記方法で得られる膜貫通型酵素またはその部分ペプチドが遊離体である場合 には、 該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換 することができるし、 逆に膜貫通型酵素またはその部分ペプチドが塩として得ら れた場合には、 該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体また は他の塩に変換することができる。
膜貫通型酵素またはその部分ぺプチドの合成には、 通常市販の蛋白質合成用樹 脂を用いることができる。 そのような樹脂としては、 例えば、 クロロメチル樹脂、 ヒ ドロキシメチル樹脂、 ベンズヒドリルァミン樹脂、 アミノメチル樹脂、 4—ベ ンジルォキシベンジルアルコール樹脂、 4ーメチルベンズヒドリルァミン樹脂、
PAM樹脂、 4—ヒ ドロキシメチルメチルフエニルァセトアミ ドメチル樹脂、 ポリ アクリルアミ ド樹脂、 4一 (2, , 4, ージメ トキシフエ二ル一ヒドロキシメチ ル) フエノキシ樹脂、 4— ( 2, , 4 ' ージメ トキシフエ二ルー F mocアミノエ チル) フエノキシ樹脂などを挙げることができる。 このような樹脂を用い、 x— ァミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、 目的とする蛋白質もしくは ペプチドの配列通りに、 自体公知の各種縮合方法に従い、 樹脂上で縮合させる。 反応の最後に樹脂から蛋白質 (ペプチド) を切り出すと同時に各種保護基を除去 し、 さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフイド結合形成反応を実施し、 目的の蛋 白質 (ペプチド) またはそのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、 蛋白質合成に使用できる各種活性化 試薬を用いることができるが、 特に、 カルポジイミド類がよい。 カルポジイミド 類としては、 D C C、 N, N ' —ジイソプロピルカルポジイミド、 N—ェチルー N ' 一 (3—ジメチルァミノプロリル) カルポジイミ ドなどが用いられる。 これ らによる活性化にはラセミ化抑制添加剤 (例えば、 H O B t、 H O O B t)ととも に保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、 または、 対称酸無水物または H O B t エステルあるいは H O O B tエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を 行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒は、 蛋白質縮合反応に 使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。 例えば、 N, N—ジ メチルホルムアミ ド, N, N—ジメチルァセトアミ ド, N—メチルピロリ ドンな どの酸アミ ド類、 塩化メチレン, クロ口ホルムなどのハロゲン化炭化水素類、 ト リフルォロエタノールなどのアルコール類、 ジメチルスルホキシドなどのスルホ キシド類、 ピリジンなどのアミン類, ジォキサン, テトラヒドロフランなどのェ 一テル類、 ァセトニトリル, プロピオ二トリルなどの二トリル類、 酢酸メチル, 酢酸ェチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。 反応温度は蛋白質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜
選択され、 通常約一 2 0 °C〜5 0 °Cの範囲から適宜選択される。 活性化されたァ ミノ酸誘導体は通常 1 . 5〜 4倍過剰で用いられる。 ニンヒドリン反応を用いた テストの結果、 縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を 繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。 反応を繰り返しても十分 な縮合が得られないときには、 無水酢酸またはァセチルイミダゾールを用いて未 反応ァミノ酸をァセチル化することができる。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護および用いられる保護基、 その保 護基の脱離、 並びに反応に関与する官能基の活性化などは、 公知の基または公知 の手段から適宜選択しうる。
原料のァミノ基の保護基としては、 例えば、 Z、 B o c、 ターシャリーペンチ ルォキシカルポニル、 イソボルエルォキシ力ルポニル、 4—メトキシベンジルォ キシカルボニル、 C 1 _ Z、 B r— Z、 ァダマンチルォキシカルポニル、 トリフ ノレオロアセチノレ、 フタロイノレ、 ホノレミノレ、 2—ニ トロフエニノレスノレフエ二ノレ、 ジ フエニルホスフイノチオイル、 F m o cなどが用いられる。
力ルポキシル基は、 例えば、 アルキルエステル化 (例えば、 メチル、 ェチル、 プロピノレ、 ブチノレ、 ターシャリープチノレ、 シクロペンチノレ、 シクロへキシ /レ、 シ クロへプチル、 シクロオタチル、 2—ァダマンチルなどの直鎖状、 分枝状もしく は環状アルキルエステル化) 、 ァラルキルエステルイ匕 (例えば、 ベンジルエステ ノレ、 4—ニトロべンジノレエステノレ、 4ーメ トキシべンジノレエステノレ、 4—クロ口 ベンジルエステル、 ベンズヒ ドリルエステル化) 、 フエナシルエステル化、 ベン ジルォキシカルポニルヒドラジド化、 ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジ ド化、 トリチノレヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、 例えば、 エステルイ匕またはエーテルィ匕によって保護するこ とができる。 このエステノレ化に適する基としては、 例えば、 ァセチル基などの低 級アルカノィル基、 ベンゾィル基などのァロイル基、 ベンジルォキシカルポニル 基、 エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。 また、
、
エーテル化に適する基としては、 例えば、 ベンジル基、 テトラヒドロビラニル基、 t一ブチル基などである。
チロシンのフエノーノレ性水酸基の保護基としては、 例えば、 B z 1、 C 12 - B z l、 2—ニトロベンジル、 B r— Z、 ターシャリープチルなどが用いられる。 ヒスチジンのィミダゾールの保護基としては、 例えば、 T o s、 4—メトキシ ー2, 3, 6—トリメチノレベンゼンスルホニル、 DNP、 ベンジルォキシメチノレ、 Bum, B o c、 T r t、 Fmo cなどが用いられる。
保護基の除去 (脱離) 方法としては、 例えば、 P d—黒あるいは P d—炭素な どの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、 また、 無水フッ化水素、 メタ ンスルホン酸、 トリフルォロメタンスルホン酸、 トリフルォロ酢酸あるいはこれ らの混合液などによる酸処理や、 ジイソプロピルェチルァミン、 トリェチルァミ ン、 ピぺリジン、 ピぺラジンなどによる塩基処理、 また液体アンモニア中ナトリ ゥムによる還元なども用いられる。 上記酸処理による脱離反応は、 一般に約一 2 0°C〜40°Cの温度で行なわれるが、 酸処理においては、 例えば、 ァニソール、 フエノーノレ、 チオアニソーノレ、 メタクレゾ一ノレ、 パラクレゾーノレ、 ジメチノレスノレ フイド、 1, 4—ブタンジチオール、 1, 2—エタンジチオールなどのような力 チオン捕捉剤の添加が有効である。 また、 ヒスチジンのイミダゾール保護基とし て用いられる 2, 4—ジニトロフエニル基はチォフエノール処理により除去され、 トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の 1, 2 一エタンジチオール、 1, 4—ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱 保護以外に、 希水酸化ナトリウム溶液、 希アンモニアなどによるアルカリ処理に よっても除去される。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、 例えば、 対応する酸無水 物、 アジド、 活性エステル 〔ァノレコール (例えば、 ペンタクロロフエノール、 2, 4, 5—トリクロ口フエノール、 2, 4—ジニトロフエノール、 シァノメチルァ ルコール、 パラニトロフエノーノレ、 HONB、 N—ヒ ドロキシスクシミ ド、 N—
ヒドロキシフタルイミ ド、 H O B t) とのエステル〕 などが用いられる。 原料の ァミノ基の活性化されたものとしては、 例えば、 対応するリン酸アミドが用いら れる。
蛋白質 (ペプチド) のアミド体を得る別の方法としては、 例えば、 まず、 蛋白 質 (ペプチド) を構成する部分ペプチドの各 C末端アミノ酸の α—カルボキシル 基をアミド化して保護し、 アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長 (隣接する部分 ペプチドの C末端アミノ酸と連結されるべきアミノ酸) まで延ばした後、 C末端 側ぺプチド鎖の Ν末端ァミノ酸の a—ァミノ基の保護基のみを除いたぺプチドと、 Ν末端側ペプチド鎖の C末端アミノ酸のカルボキシル基の保護基のみを除いたぺ プチドとを製造し、 これらのペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる 方法が挙げられる。 縮合反応の詳細については上記と同様である。 縮合により得 られた保護蛋白質 (保護ペプチド) を精製した後、 上記方法によって保護基を除 去し、 所望の粗蛋白質 (粗ペプチド) を得ることができる。 この粗蛋白質 (粗べ プチド) は既知の各種精製手段を駆使して精製し、 主要画分を凍結乾燥すること で所望の蛋白質 (ペプチド) のアミド体を得ることができる。
蛋白質 (ペプチド) のエステル体は、 例えば、 C末端アミノ酸の Q! —カルボキ シル基を所望のアルコール類と縮合してアミノ酸エステルとした後、 上記のアミ ド体の場合と同様に処理して得ることができる。
本発明の部分ぺプチドまたはその塩は、 膜貫通型酵素またはその塩を適当なぺ プチダーゼで切断することによつても製造することができる。
さらに、 膜貫通型酵素またはその部分ペプチドは、 それをコードする核酸を含 有する形質転換体を培養し、 得られる培養物から膜貫通型酵素またはその部分べ プチドを分離精製することによって製造することもできる。
膜貫通型酵素またはその部分ペプチドをコードする核酸は D NAであっても R N Aであってもよく、 あるいは D NA/R N Aキメラであってもよい。 好ましく は D NAが挙げられる。 また、 該核酸は二本鎖であっても、 一本鎖であってもよ
い。 二本鎖の場合は、 二本鎖 DNA、 二本鎖 RNAまたは DNA: RNAのハイ プリッドでもよい。 一本鎖の場合は、 センス鎖 (即ち、 コード鎮) であっても、 アンチセンス鎖 (即ち、 非コード鎖) であってもよい。
膜貫通型酵素またはその部分ペプチドをコードする DNAとしては、 ゲノム D NA、 温血動物 (例えば、 ヒ ト、 マウス、 ラッ ト、 モルモット、 ハムスター、 ゥ サギ、 ヒッジ、 ャギ、 プタ、 ゥシ、 ゥマ、 トリ、 ネコ、 ィヌ、 サル、 チンパンジ 一など) のあらゆる細胞 [例えば、 脾細胞、 神経細胞、 グリア細胞、 膝臓 j3細胞、 骨髄細胞、 メサンギゥム細胞、 ランゲルハンス細胞、 表皮細胞、 上皮細胞、 内皮 細胞、 線維芽細胞、 線維細胞、 筋細胞、 脂肪細胞、 免疫細胞 (例、 マクロファー ジ、 T細胞、 B細胞、 ナチュラルキラー細胞、 肥満細胞、 好中球、 好塩基球、 好 酸球、 単球) 、 巨核球、 滑膜細胞、 軟骨細胞、 骨細胞、 骨芽細胞、 破骨細胞、 乳 腺細胞、 肝細胞もしくは間質細胞、 またはこれら細胞の前駆細胞、 幹細胞もしく はガン細胞などや血球系の細胞] 、 あるいはそれらの細胞が存在するあらゆる組 織 [例えば、 脳、 脳の各部位 (例、 嗅球、 扁頭核、 大脳基底球、 海馬、 視床、 視 床下部、 視床下核、 大脳皮質、 延髄、 小脳、 後頭葉、 前頭葉、 側頭葉、 被殻、 尾 状核、 脳染、 黒質) 、 脊髄、 下垂体、 胃、 膝臓、 腎臓、 肝臓、 生殖腺、 甲状腺、 胆のう、 骨髄、 副腎、 皮膚、 筋肉、 肺、 消化管 (例、 大腸、 小腸) 、 血管、 心臓、 胸腺、 脾臓、 顎下腺、 末梢血、 末梢血球、 前立腺、 睾丸、 卵巣、 胎盤、 子宮、 骨、 関節、 骨格筋など] 由来の cDNA、 合成 DNAなどが挙げられる。 膜貫通型酵 素またはその部分ペプチドをコードするゲノム DNAおよび cDNAは、 上記し た細胞 ·組織より調製したゲノム DNA画分おょぴ全 RNAもしくは mRNA画 分をそれぞれ铸型として用い、 Polymerase Chain Reaction (以下、 「PCR 法」 と略称する) および Re verse Transcriptase- PCR (以下、 「RT— PCR 法」 と略称する) によって直接増幅することもできる。 あるいは、 膜貫通型酵素 またはその部分ペプチドをコードするゲノム DN Aおよび c DN Aは、 上記した 細胞 ·組織より調製したゲノム DNAおよぴ全 RNAもしくは mRNAの断片を
適当なベクター中に挿入して調製されるゲノム D N Aライブラリーおよび c D N Aライプラリーから、 コロニーもしくはプラークハイプリダイゼーション法また は P C R法などにより、 それぞれクローユングすることもできる。 ライプラリー に使用するベクターは、 パクテリオファージ、 プラスミド、 コスミド、 ファージ ミドなどいずれであってもよい。
膜貫通型酵素が セクレターゼである場合、 i3セクレターゼをコードする D N Aとしては、 例えば、 配列番号 1に示される塩基配列中塩基番号 1 3 6〜1 5 0 3で示される塩基配列を含有する D N A、 あるいは配列番号 1に示される塩基配 列中塩基番号 1 3 6〜 1 5 0 3で示される塩基配列の相補鎖配列とハイス トリン ジ ントな条件下でハイブリダィズする塩基配列を含有し、 前記した配列番号 2 に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 4 6〜5 0 1で示されるアミノ酸配列を 含有する蛋白質と実質的に同質の活性 (即ち、 ]3セクレターゼ活性および標的結 合部位での セクレターゼ阻害物質との結合活性など) を有する蛋白質をコード する D N Aなどが挙げられる。
配列番号 1に示される塩基配列中塩基番号 1 3 6〜 1 5 0 3で示される塩基配 列の相補鎖配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる D N A としては、 例えば、 配列番号 1に示される塩基配列中塩基番号 1 3 6〜1 5 0 3 で示される塩基配列と約 6 0 %以上、 好ましくは約 7 0 %以上、 さらに好ましく は約 8 0 %以上、 特に好ましくは約 9 0 %以上の相同性を有する塩基配列を含有 する D N Aなどが用いられる。
本明細書における塩基配列の相同性は、 相同性計算アルゴリズム NCBI BLAST (National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool) を用い、 以下の条件 (期待値 =10;ギヤップを許す;フィルタリン グ =0N;マッチスコア =1; ミスマッチスコア =-3) にて計算することができる。 塩 基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、 上記したアミノ酸 配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
ハイプリダイゼーシヨンは、 自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、 例え ば、 モレキュラー ·クローユング (Molecular Cloning) 第 2版 (J. Sambrook et al. , Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法などに従って行 なうことができる。 また、 市販のライプラリーを使用する場合、 ハイプリダイゼ ーシヨンは、 添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。 ノ、ィ ブリダィゼーションは、 好ましくは、 ハイストリンジェシトな条件に従って行な うことができる。
ハイストリンジェントな条件としては、 例えば、 ナトリウム塩濃度が約 1 9〜 約 4 0 mM、 好ましくは約 1 9〜約 2 0 mMで、 温度が約 5 0〜約 7 0 °C、 好ま しくは約 6 0〜約 6 5 °Cの条件等が挙げられる。 特に、 ナトリウム塩濃度が約 1 9 mMで温度が約 6 5 °Cの場合が好ましい。 当業者は、 ハイブリダィゼーシヨン 溶液の塩濃度、 ハイプリダゼーシヨン反応の温度、 プローブ濃度、 プローブの長 さ、 ミスマッチの数、 ハイブリダィゼーシヨン反応の時間、 洗浄液の塩濃度、 洗 浄の温度等を適宜変更することにより、 所望のストリンジエンシーに容易に調節 することができる。
13セクレターゼをコ一ドする D NAは、 好ましくは配列番号 1に示される塩基 配列を含有するヒト J3セクレターゼ D N Aもしくはそのアレル変異体、 または他 の温血動物 (例えば、 マウス、 ラット、 モルモッ ト、 ハムスター、 ゥサギ、 ヒッ ジ、 ャギ、 プタ、 ゥシ、 ゥマ、 トリ、 ネコ、 ィヌ、 サル、 チンパンジーなど) に おけるそのオルソログ (ortholog) 等である。
阻害物質結合型ぺプチドをコードする D N Aは、 膜貫通型酵素の活性中心を含 む領域をコードする塩基配列と、 膜貫通領域の一部もしくは全部をコードする塩 基配列とを含むものであればいかなるものであってもよい。 また、 阻害物質非結 合型ぺプチドをコ一ドする D N Aは、 膜貫通型酵素の活性中心を含む領域をコー ドする塩基配列を含み、 且つ上記 「膜貫通領域の一部もしくは全部」 をコードす る塩基配列を含まないものであればいかなるものであってもよい。 これらの D N
Aは、 ゲノム DNA、 上記した細胞 '組織由来の c DNA、 合成 DNAのいずれ でもよい。
具体的には、 膜貫通型酵素が ]3セクレターゼの場合、 阻害物質結合型ペプチド をコードする DNAとしては、 例えば、
(la) 配列番号 1に示される塩基配列中塩基番号 277〜 876で示される塩基 配列および塩基番号 1 363〜 1440で示される塩基配列の一部もしくは全部 を有する DNA、 または
(2a) 上記 (la) の DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズす る塩基配列を有し、 且つ配列番号 2に示されるアミノ酸配列中アミノ酸番号 46 〜501で示されるアミノ酸配列を含むペプチドと実質的に同質の活性 (即ち、 0セクレターゼ活性および膜貫通領域内の標的結合部位における酵素阻害物質と の結合活性) を有するペプチドをコードする DNAが用いられる。
また、 阻害物質非結合型ペプチドをコードする DN Aとしては、
(lb) 配列番号 1に示される塩基配列中塩基番号 277〜876で示される塩基 配列を有し、 且つ上記 (la) の DNAが有する塩基番号 1363〜1440で示 される塩基配列の一部もしくは全部を有しない DNA、 または
(2b) 上記 (lb) の DNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダィズす る塩基配列を有し、 且つ配列番号 2に示されるアミノ酸配列中ァミノ酸番号 46 〜454で示されるアミノ酸配列を含むペプチドと実質的に同質の活性 (即ち、 セクレターゼ活性) を有する力 膜貫通領域内の標的結合部位における酵素阻 害物質との結合活性を有しないペプチドをコードする D N Aが用いられる。 上記 (la) または (lb) の DNAとハイストリンジェントな条件下でハイプリ ダイズできる DNAとしては、 例えば、 該 DN Aの塩基配列中の対応する部分と 約 60 %以上、 好ましくは約 70 %以上、 より好ましくは約 80 %以上、 特に好 ましくは約 90%以上の相同性を有する塩基配列を含有する DN Aなどが用いら れる。
膜貫通型酵素またはその部分ペプチドをコードする DNAは、 該蛋白質または ペプチドをコ^"ドする塩基配列の一部分を有する合成 DNAプライマ を用いて P C R法によって増幅するか、 または適当な発現べクタ一に組み込んだ D N Aを、 本発明の蛋白質の一部あるいは全領域をコードする DN A断片もしくは合成 DN Aを標識したものとハイブリダィゼーシヨンすることによってクロ一ユングする ことができる。 ハイブリダィゼーシヨンは、 例えば、 モレキュラー 'クローニン グ (Molecular Cloning) 第 2版 (前述) に記載の方法などに従って行うことが できる。 また、 市販のライブラリーを使用する場合、 ハイプリダイゼーシヨンは、 該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
DN Aの塩基配列は、 公知のキット、 例えば、 MutanTM- super Express Km (宝 酒造 (株) ) 、 Mutan™-K (宝酒造 (株) ) 等を用いて、 ODA- LA PCR法、 Gapped duplex法、 Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って変 換することができる。
クローン化された DNAは、 目的によりそのまま、 または所望により制限酵素 で消化するか、 リンカ一を付加した後に、 使用することができる。 該 DNAはそ の 5 ' 末端側に翻訳開始コドンとしての ATGを有し、 また 3, 末端側には翻訳 終止コドンとしての TAA、 TGAまたは TAGを有していてもよい。 これらの 翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、 適当な合成 DNAアダプターを用いて付加 することができる。
上記の膜貫通型酵素またはその部分ペプチドをコードする DNAを含む発現べ クタ一で宿主を形質転換し、 得られる形質転換体を培養することによって、 該蛋 白質またはべプチドを製造することができる。
膜貫通型酵素またはその部分ペプチドをコードする D N Aを含む発現ベクター は、 例えば、 膜貫通型酵素をコードする DNAから目的とする DNA断片を切り 出し、 該 DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結するこ とにより製造することができる。
発現ベクターとしては、 大腸菌由来のプラスミ ド (例、 pBR 322, p BR 325, pUC 12, pUC 13) ;枯草菌由来のプラスミ ド (例、 · p U B 11 0, p TP 5, p C 194) ;酵母由来プラスミ ド (例、 p SH19, p SH 1 5) ; λファージなどのパクテリオファージ; レトロウイルス, ワクシニアウイ ノレス, バキュロウイノレスなどの動物ウイノレス ; ρΑΙ— 11、 XT 1 , R c /CMV, pRcZRSV、 p cDNAI Ne oなどが用いられる。
プロモーターとしては、 遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモー ターであればいかなるものでもよい。
例えば、 宿主が動物細胞である場合、 SRひプロモーター、 SV40プロモー ター、 LTRプロモーター、 CMV (サイ トメガロウィルス) プロモーター、 H SV-TKプロモーターなどが用いられる。 なかでも、 CMVプロモーター、 S R αプロモーターなどが好ましい。
宿主がェシエリヒア属菌である場合、 t r pプロモーター、 l a cプロモータ 一、 r e cAプロモーター、 ;i PL プロモーター、 l p pプロモーター、 T7プ 口モーターなどが好ましい。
宿主がバチルス属菌である場合、 SPO lプロモーター、 SPO2プロモータ 一、 p e n Pプロモーターなどが好ましい。
宿主が酵母である場合、 PHO 5プロモーター、 PGKプロモーター、 GAP プロモーター、 ADHプロモーターなどが好ましい。
宿主が昆虫細胞である場合、 ポリヘドリンプロモーター、 P 10プロモーター などが好ましい。
発現ベクターとしては、 上記の他に、 所望によりェンハンサー、 スプライシン グシグナル、 ポリ A付加シグナル、 選択マーカー、 SV40複製オリジン (以下、 SV40 o r iと略称する場合がある) などを含有しているものを用いることが できる。 選択マーカーとしては、 例えば、 ジヒ ドロ葉酸還元酵素 (以下、 d h f rと略称する場合がある) 遺伝子 〔メソトレキセート (MTX) 耐性〕 、 アンピ
シリン耐性遺伝子 (以下、 Ampr と略称する場合がある) 、 ネオマイシン耐性 遺伝子 (以下、 Ne o r と略称する場合がある、 G418耐性) 等が挙げられる。 特に、 d h f r遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用い、 d h f r遺伝子 を選択マーカーとして使用する場合、 目的遺伝子をチミジンを含まない培地によ つて選択することもできる。
また、 必要に応じて、 宿主に合ったシグナル配列をコードする塩基配列 (シグ ナルコドン) を、 膜貫通型酵素またはその部分ペプチドをコードする DNAの 5' 末端側に付加するか、 あるいはネイティブなシグナル配列 (もしくはプレブ 口配列) と置換してもよい。 宿主がェシエリヒア属菌である場合、 PhoA 'シグ ナル配列、 OmpA■シグナル配列などが;宿主がバチルス属菌である場合、 一 ァミラーゼ■シグナル配列、 サブチリシン ·シグナル配列などが;宿主が酵母で ある場合、 MFひ ■シグナル配列、 SUC 2 ·シグナル配列などが;宿主が動物 細胞である場合、 ィンシュリン ·シグナル配列、 a—インターフェロン 'シグナ ル配列、 抗体分子 ·シグナル配列などがそれぞれ用いられる。
宿主としては、 例えば、 ェシエリヒア属菌、 バチルス属菌、 酵母、 昆虫細胞、 昆虫、 動物細胞などが用いられる。
ェシェリヒア属菌としては、 例えば、 ェシェリヒア · コリ (Escherichia coli) K 12 ■ DH 1 〔プロシージングズ 'ォプ 'ザ 'ナショナル'ァカデミ 一 'ォプ■サイエンシィズ■ォブ'ザ 'ユーエスエー (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) , 60卷, 160 (.1 968)〕 , JM103 〔ヌクイレック 'ァシッズ' リサーチ (Nucleic Acids Research) , 9卷, 309 (198 1)〕 , J A 221 〔ジャーナル -ォプ -モレキュラー■ノ ィォロジー (Journal of Molecular Biology) , 1 20卷, 517 (1978)〕 , HB 101 〔ジャーナル'ォブ - モレキュラー .バイオロジー, 41卷, 459 (1 969)〕 , C 600 〔ジエネ ティックス (Genetics) , 39卷, 440 (1 954)〕 などが用いられる。
バチルス属菌としては、 例えば、 バチルス 'サブチルス (Bacillus
subtilis) M I 1 14 〔ジーン, 24卷, 255 (1 983)〕 , 207— 21
〔ジャーナル ·ォブ■バイオケミストリー (Journal of Biochemistry) , 95 卷, 87 (1984)〕 などが用いられる。
酵母としては、 例えば、 サッカロマイセス セレビシェ (Saccharomyces cerevisiae) AH 22, AH22R— , ΝΑ87- 1 1 A, DKD—5D, 20 Β— 12、 シゾサッカロマイセス ポンべ (Schizosaccharomyces pombe) NC Y C 19 1 3 , NCYC 2036、 ピキア パストリス (Pichia pastoris) K Μ71などが用いられる。
昆虫細胞としては、 例えば、 ウィルスが Ac NPVの場合、 夜盗蛾の幼虫由来 株化細胞 (Spodoptera frugiperda cell; S f 細胞) 、 Trichoplusia niの中腸 由来の MG 1細胞、 Trichoplusia niの卵由来の High FiveTM細胞、 Maraestra brassicae由来の細胞、 Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。 ウイノレス が BmNPVの場合、 昆虫細胞としては、 蚕由来株化細胞 (Bombyx raori N細 胞; BmN細胞) などが用いられる。 該 S f細胞としては、 例えば、 S f 9細胞 (ATCC CRL1711) 、 S f 21細胞 (以上、 Vaughn, J. L.ら、 イン■ヴィポ (In Vivo) ,13, 213-217, (1977)) などが用いられる。
昆虫としては、 例えば、 カイコの幼虫などが用いられる 〔前田ら、 ネイチヤー (Nature) , 3 15卷, 592 (1985)〕 。
動物細胞としては、 例えば、 サル細胞 COS— 7, V e r o, チャイニーズハ ムスター細胞 CHO (以下、 CHO細胞と略記) , d h f r遺伝子欠損チヤィニ ーズハムスター細胞 CHO (以下、 CHO (d h f r— ) 細胞と略記) , マウス L細胞, マウス A t T— 20, マウスミエローマ細胞, ラット GH3, ヒト FL 細胞、 HEK293細胞、 H e L a細胞などが用いられる。
形質転換は、 宿主の種類に応じ、 公知の方法に従って実施することができる。 ェシェリヒァ属菌は、 例えば、 プロシージングズ ·ォブ■ザ ·ナショナル ·ァ 力デミ一 ·ォブ ·サイェンジィズ■ォプ,ザ ·ユーエスエー (Proc. Natl. Acad.
Sci. USA) , 69卷, 21 10 (1 972)やジーン (Gene) , 17卷, 107 (1982)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
バチルス属菌は、 例えば、 モレキュラー 'アンド 'ジエネラノレ■ジエネティッ クス (Molecular & General Genetics) , 168卷, 1 1 1 (1 979)などに 記載の方法に従って形質転換することができる。
酵母は、 例えば、 メソッズ 'イン■ェンザィモロジ一 (Methods in
Enzymology) , 1 94卷, 182— 187 (1 991) 、 プロシージングズ ·ォ プ .ザ.ナショナル ·アカデミー ·ォプ ·サイェンシィズ .ォブ .ザ■ユーエス エー (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) , 75卷, 1929 (1 978)などに記載 の方法に従って形質転換することができる。
昆虫細胞および昆虫は、 例えば、 パイオ テクノロジー (Bio/Technology) ,6, 47-55(1988)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
動物細胞は、 例えば、 細胞工学別冊 8 新細胞工学実験プロトコール. 263 - 267 (1 995) (秀潤社発行) 、 ヴイロロジー (Virology) , 52巻, 4 56 (1 973)に記載の方法に従って形質転換することができる。
形質転換体の培養は、 宿主の種類に応じ、 公知の方法に従って実施することが できる。
例えば、 宿主がェシエリヒア属菌またはバチルス属菌である形質転換体を培養 する場合、 培養に使用される培地としては液体培地が好ましい。 また、 培地は、 形質転換体の生育に必要な炭素源、 窒素源、 無機物などを含有することが好まし い。 ここで、 炭素源としては、 例えば、 グルコース、 デキストリン、 可溶性澱粉、 ショ糖などが;窒素源としては、 例えば、 アンモニゥム塩類、 硝酸塩類、 コーン スチープ. リカー、 ペプトン、 カゼイン、 肉エキス、 大豆粕、 バレイショ抽出液 などの無機または有機物質が;無機物としては、 例えば、 塩化カルシウム、 リン 酸二水素ナトリウム、 塩化マグネシウムなどがそれぞれ挙げられる。 また、 培地 には、 酵母エキス、 ビタミン類、 生長促進因子などを添加してもよい。 培地の p
Hは、 好ましくは約 5〜 8である。
宿主がェシ工リヒア属菌である形質転換体を培養する場合の培地としては、 例 えば、 グルコース、 カザミノ酸を含む M 9培地 〔ミラー (Miller) , ジャーナ ノレ ·ォブ ·ェクスペリメンッ 'イン ·モレキュラー ·ジエネティックス
(Journal of Experiments in Molecular Genetics) , 431—433, Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕 が好ましい。 必要により、 プ 口モーターを効率よく働かせるために、 例えば、 3 )3—インドリルアクリル酸の ような薬剤を培地に添加してもよい。
宿主がェシエリヒア属菌である形質転換体の培養は、 通常約 15〜43°Cで、 約 3〜24時間行なわれる。 必要により、 通気や撹拌を行ってもよい。
宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、 通常約 30〜40°Cで、 約 6 〜 24時間行なわれる。 必要により、 通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が酵母である形質転換体を培養する場合の培地としては、 例えば、 バーク ホーノレダー (Burkholder) 最小培地 〔Bostian, K. L. ら、 プロシージングズ' ォブ ·ザ■ナショナル 'アカデミー 'ォプ■サイェンシィズ ·ォブ■ザ ·ユーェ スエー (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) , 77卷, 4505 (1 980)] や 0.
5%カザミノ酸を含有する SD培地 〔Bitter, G. A. ら、 プロシージングズ 'ォ プ .ザ.ナショナル ·アカデミー ·ォプ ·サイェンシィズ ·ォブ .ザ■ユーエス エー (Proc. Natl. Acad. Sci. USA) , 8 1卷, 5330 (1984) 〕 な どが挙げられる。 培地の ρΗは、 好ましくは約 5〜8である。 培養は、 通常約 2 0°C〜35°Cで、 約 24〜 72時間行なわれる。 必要に応じて、 通気や撹拌を行 つてもよい。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する場合の培地としては、 例えば Grace's Insect Medium (Grace, T. C.C.,ネイチヤー
(Nature) , 195, 788(1962)) に非動化した 10 %ゥシ血清等の添力卩物を適宜加え たものなどが用いられる。 培地の ρΗは、 好ましくは約 6. 2〜6. 4である。
培養は、 通常約 27°Cで、 約 3〜5日間行なわれる。 必要に応じて通気や撹拌を 行ってもよい。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合の培地としては、 例えば、 約 5〜 20%の胎児牛血清を含む MEM培地 〔サイエンス (Science) , 1 22卷, 501 (1 952)〕 , DMEM培地 〔ヴイロロジー (Virology) , 8卷, 396 (1 959)〕 , RPM I 1640培地 〔ジャーナル ·ォブ■ザ ·アメリカン · メティカノレ'アソシエーション (The Journal of the American Medical
Association) 1 99巻, 519 (1967)〕 , 199培地 〔プロシージング■ ォブ ·ザ■ ソサイエティ ■フォー ·ザ ·バイオロジカル 'メディスン
(Proceeding of the Society for the Biological Medicine) , 73 , 1、1 950)〕 などが用いられる。 培地の pHは、 好ましくは約 6〜8である。 培養 は、 通常約 30 °C〜 40 °Cで、 約 15〜 60時間行なわれる。 必要に応じて通気 や撹拌を行ってもよい。
以上のようにして、 形質転換体の細胞内または細胞外に膜貫通型酵素またはそ の部分ペプチドを生成させることができる。
前記形質転換体を培養して得られる培養物から、 膜貫通型酵素またはその部分 ぺプチドを自体公知の方法に従って分離精製することができる。
例えば、 膜貫通型酵素またはその部分ぺプチドを培養菌体あるいは細胞から抽 出する場合、 培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に 懸濁し、 超音波、 リゾチームおよびノまたは凍結融解などによって菌体あるいは 細胞を破壌した後、 遠心分離やろ過により可溶性蛋白質の粗抽出液を得る方法な どが適宜用いられる。 該緩衝液は、 尿素や塩酸グァニジンなどの蛋白質変性剤や、 トリ トン X— 100™などの界面活性剤を含んでいてもよい。
このようにして得られた可溶性画分中に含まれる膜貫通型酵素またはその部分 ペプチドの単離精製は、 自体公知の方法に従って行うことができる。 このような 方法としては、 塩析ゃ溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、 限外ろ
過法、 ゲルろ過法、 および S D S—ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主 として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の 差を利用する方法;アブイ-ティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利 用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方 法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。 こ れらの方法は、 適宜 aみ合わせることもできる。
力べして得られる膜貫通型酵素またはその部分べプチドが遊離体である場合に は、 自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によつて該遊離体を塩に変換する ことができ、 該蛋白質またはペプチドが塩として得られた場合には、 自体公知の 方法あるいはそれに準じる方法により該塩を遊離体または他の塩に変換すること ができる。
なお、 形質転換体が産生する膜貫通型酵素またはその部分ペプチドを、 精製前 または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、 任意に修飾をカロえ たり、 ポリペプチドを部分的に除去することもできる。 該蛋白修飾酵素としては、 例えば、 トリプシン、 キモトリプシン、 アルギニルェンドぺプチダーゼ、 プロテ インキナーゼ、 ダリコシダーゼなどが用いられる。
かくして得られる膜貫通型酵素またはその部分ペプチドの存在は、 特異抗体を 用いたェンザィムィムノアツセィゃウェスタンプロッティングなどにより確認す ることができる。
さらに、 膜貫通型酵素またはその部分ペプチドは、 それをコードする D N Aに 対応する R N Aを铸型として、 ゥサギ網状赤血球ライセート、 コムギ胚芽ライセ ート、 大腸菌ライセートなどからなる無細胞蛋白質翻訳系を用いてインビトロ翻 訳することによつても合成することができる。 あるいは、 さらに R NAポリメラ ーゼを含む無細胞転写 Z翻訳系を用いて、 膜貫通型酵素またはその部分ぺプチド をコードする D N Aを錄型としても合成することができる。 無細胞蛋白質 (転 写) 翻訳系は市販のものを用いることもできるし、 それ自体既知の方法、 具体的
には大腸菌抽出液は Pratt J. M. et al. , Transcription and Tranlation, 179 - 209, Hames B. D. &Higgins S. J. eds. , IRL Press, Oxford (1984)に記載の方法 等に準じて調製することもできる。 市販の細胞ライセートとしては、 大腸菌由来 のものは E. coli S30 extract system (Protnega社製)や RTS 500 Rapid
Tranlation System (Roche社製)等が挙げられ、 ゥサギ網状赤血球由来のものは Rabbit Reticulocyte Lysate System (Promega社製)等、 さらにコムギ胚芽由来 のものは PR0TEI0S™ (T0Y0B0社製)等が挙げられる。 このうちコムギ胚芽ライセ ートを用いたものが好適である。 コムギ胚芽ライセートの作製法としては、 例え ば Johnston F. B. et al. , Nature, 179, 160 - 161 (1957)あるレヽは Erickson A. H. et al. , Meth. Enzyraol. , 96, 38-50 (1996)等に記載の方法を用いることができ る。
蛋白質合成のためのシステムまたは装置としては、 バッチ法(Pratt, J. M. et al. (1984) 前述)や、 アミノ酸、 エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連 続式無細胞蛋白質合成システム (Spirin A. S. et al. , Science, 242, 1162- 1164 (1988) ) 、 透析法 (木川等、 第 21回日本分子生物学会、 WID6) 、 あるいは 重層法 (PR0TEI0S™ Wheat germ cell-free protein synthesis core kit取扱説 明書: T0Y0B0社製) 等が挙げられる。 さらには、 合成反応系に、 铸型の R NA、 アミノ酸、 エネルギー源等を必要時に供給し、 合成物や分解物を必要時に排出す る方法 (特開 2000- 333673) 等を用いることができる。
本発明のスクリーニング方法は、 上記のいずれかの方法によって得られる膜貫 通型酵素蛋白質または阻害物質結合型ぺプチドを用いて、 該蛋白質または該ぺプ チドへの被験物質の結合おょぴ該蛋白質または該ぺプチドの酵素活性を測定する ことを特徴とする。
酵素活性の測定は、 用いられる膜貫通型酵素に応じて、 従来公知のいかなる方 法を用いて行ってもよい。 例えば、 膜貫通型酵素が ]3セクレターゼの場合、 酵素 活性の測定は、 例えば、 上記特許文献 1に記載の方法、 特表平 1 1一 5 0 7 5 3
8号公報に記載の方法、 Science, 286, 735-741 (1999) , Nature, 402, 533-537 (1999)、 Nature, 402, 537-540 (1999)などに記載の方法等を用いて行うこと力 S できる。
具体的には、 例えば、 ]3セクレターゼ蛋白質または阻害物質結合型ペプチドを、 被験物質の存在下で、 3セクレターゼの天然もしくは合成の基質 [A P Pまたは その i3セクレターゼ切断部位を含むフラグメント、 あるいは該切断部位のァミノ 酸配列と同一もしくは実質的に同一のァミノ酸配列を含む合成べプチド (そのよ うな合成ペプチドは市販されており、 また、 当業者は A P Pの ]3セクレターゼ切 断部位近傍のァミノ酸配列を基にそのようなぺプチドを上記のぺプチド合成法を 用いて容易に合成することもできる) ] と接触させ、 適当な反応条件下で一定時 間インキュベートした後、 切断により生じた産物の一方もしくは両方を検出する 方法が挙げられる。 反応産物の検出法としては、 例えば、 反応液を S D S -ポリ アクリルアミド電気泳動 (S D S— P A G E ) に付し、 クーマシー 'ブリリアン ト ■ブルー ( C B B ) 染色等により 2本のバンド (および未切断の基質ペプチド のバンド) を可視化し、 デンシトメ一ターなどを用いて酵素活性を定量化する方 法、 標識剤でラベルした基質を用いて、 同様に S D S— P A G Eを行い、 ゲル上 の各バンドの標識量を検出する方法等が挙げられる。 標識剤としては、 例えば、 放射性同位元素、 酵素、 蛍光物質、 発光物質などが用いられる。 放射性同位元素 としては、 例えば、 2 5 I〕 、 3 1 I〕 、 〔3 H〕 、 C1 4 C) などが 用いられる。 上記酵素としては、 安定で比活性の大きなものが好ましく、 例えば、 βーガラクトシダーゼ、 β -ダルコシダーゼ、 アル力リフォスファターゼ、 パー ォキシダーゼ、 リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。 蛍光物質としては、 例え ば、 フルォレスカミン、 フルォレツセンイソチオシァネートなどが用いられる。 発光物質としては、 例えば、 ノレミノール、 ルミノール誘導体、 ルシフェリン、 ル シゲニンなどが用いられる。
好ましくは、 後述の実施例に示されるように、 蛍光ドナーおよび蛍光タエンチ
ヤーで標識されたペプチドを基質として (蛍光ドナーと蛍光クェンチヤ一の間に セクレターゼ切断部位があるので、 未反応の基質はドナーとクェンチヤ一の接 近により蛍光が検出されないが、 セクレターゼ活性により該切断部位で開裂す るとクェンチヤ一が離れるため、 蛍光が検出される) 、 上記と同様に被験物質の 存在下で /3セクレターゼまたは阻害物質結合型ペプチドと反応させ、 反応液中の 蛍光を測定することにより、 J3セクレターゼ活性を測定することができる。 ここ で、 光ドナーとしては NE - Methylanthranoyl¾、 (7— methoxycoumarin—4- yl) acetyl¾、 4- { (4- ^dimethylamino; phenyl) azo) benzoic acid (dabcyl)、 Cy3B Cy5等が、 蛍光クェンチヤ一としては 2,4- dinitrophenyl基、 5- ( (2- (Fmoc) - y - L- glutaraylaminoethyl) amino; naphthalene-l-sulf onic acid(EDA S) Cy5Q、 Cy7Q などがそれぞれ例示されるが、 これらに限定されない。
膜貫通型酵素または阻害物質結合型ぺプチドと被験物質との結合は、 例えば、 表面プラズモン共鳴 (S P R ) 法を用いて、 市販のセンサーチップ (例えば、 Biacore製) の表面上に、 常法に従って膜貫通型酵素または阻害物質結合型ぺプ チドを固定化し、 これに被験物質を接触させた後、 該センサーチップに特定の波 長の光を特定の角度から照射し、 共鳴角度の変化を指標にして、 固定化した酵素 または阻害物質結合型ペプチドへの被験物質の結合の有無を判定することができ る。 あるいはまた、 質量分析計に適合可能なプロテインチップの表面上に膜貫通 型酵素または阻害物質結合型ぺプチドを固定化し、 これに被験物質を接触させた 後、 MALDI- MS、 ESI- MS、 FAB-MSなどのイオン化法と質量分析計 (例:二重収束質 量分析計、 四重極型分析計、 飛行時間型質量分析計、 フーリエ変換質量分析計、 イオンサイクロトロン質量分析計など) を組み合わせる方法により、 被験物質に 相当するピークの出現を検出することによつても、 膜貫通型酵素または阻害物質 結合型べプチドと被験物質との結合を測定することができるが、 これらの方法に 限定されず、 いかなる公知の他の方法も利用可能である。
被験物質が、 膜貫通型酵素または阻害物質結合型ぺプチドにおける膜貫通領域
内の標的結合部位に結合すること、 および該結合部位に結合することによって酵 素阻害活性を発揮していることの確認は、 上記した膜貫通型酵素または阻害物質 結合型べプチドの代わりに阻害物質非結合型ぺプチドを用いて、 上記と同様にし て酵素活性および被験物質の結合活性を測定することにより行うことができる。 その結果、 膜貫通型酵素または阻害物質結合型ペプチドに結合して該酵素活性 を阻害するが、 阻害物質非結合型ペプチドには結合せず、 且つ該酵素活性を阻害 しない物質を、 膜貫通領域内の標的結合部位に結合することにより酵素阻害活性 を発揮する化合物として選択することができる。
本発明はまた、 本発明のスクリーニング方法を実施するのに好適なスクリー二 ング用キットを提供する。 該キットは、 少なくとも(a) 対象となる膜貫通型酵素 または阻害物質結合型ペプチド、 および (b) 阻害物質非結合型ペプチドを構成と して含むものである。 該キットは、 さらに酵素活性の測定や結合試験に必要な試 薬類もしくは器具類 (例えば、 基質、 反応用緩衝液、 S P R用センサーチップ、 質量分析用プロテインチップ等) をさらに含んでもよい。
本発明のスクリーニング方法において、 膜貫通型酵素として /3セクレター を 用いることにより、 ]3セクレタ一ゼの膜貫通領域に結合する該酵素阻害物質を選 択することができる。 そのような化合物の例としては、 後記実施例で示される化 合物 A, D , H, I, Jなどが挙げられるが、 これらに限定されない。 該 )3セク レターゼ阻害物質は、 ]3セクレターゼの膜貫通領域に結合してその酵素活性を阻 害することから、 従来知られている遷移状態ミミックや ]3セクレターゼの活性中 心に作用するその他の阻害薬とは異なり、 /3セクレターゼへの選択性が高い。 即 ち、 構造の類似したポケットを有する他のァスパラギン酸プロテアーゼ (例えば、 レニンゃカテブシン Dなどの膜貫通型でないァスパラギン酸プロテアーゼ等) を 阻害する可能性が極めて低いので、 副作用 (例えば、 レニンゃカテブシン D阻害 による血圧低下など) を生じるおそれが少ない。 従って、 本発明のスクリーニン グ方法により選択され得る )3セクレターゼ選択的阻害物質は、 低毒性で安全な A
D、 ダウン症、 老年性記憶障害 (AAM I ) 等の予防 '治療剤として用いること ができる (尚、 AAM Iは、 一般には、 加齢に伴ってみられる記憶力滅退で、 病 気や診断名ではなく、 生理的範囲であって病的過程を伴わない状態をいうとされ るが、 本明細書においては、 AAM Iの 「状態改善」 も含めて、 包括的に 「治 療」 という語を用いることとする) 。
0セクレターゼ選択的阻害物質を上記予防■治療剤として使用する場合は、 常 套手段に従って製剤化することができる。 例えば、 該阻害物質は、 必要に応じて 糖衣を施した錠剤、 力プセル剤、 ェリキシル剤、 マイクロ力プセル剤などとして 経口的に、 あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、 または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。 例えば、 該阻害物質 を、 生理学的に認められる公知の担体、 香味剤、 賦形剤、 べヒクル、 防腐剤、 安 定剤、 結合剤などとともに、 一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形 態で混和することによって製造することができる。 これら製剤における有効成分 量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにする
錠剤、 カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、 例えば、 ゼラ チン, コーンスターチ, トラガント, アラビアゴムのような結合剤、 結晶性セル ロースのような賦形剤、 コーンスターチ, ゼラチン, アルギン酸などのような膨 化剤、 ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、 ショ糖, 乳糖またはサッカリ ンのような甘味剤、 ペパーミント, ァカモノ油またはチェリーのような香味剤な どが用いられる。 調剤単位形態がカプセルである場合には、 上記タイプの材料に さらに油脂のような液状担体を含有することができる。 注射のための無菌組成物 • は注射用水のようなべヒクル中の活性物質、 胡麻油, 椰子油などのような天然産 出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方するこ とができる。 注射用の水性液としては、 例えば、 生理食塩水, ブドウ糖やその他 の補助薬を含む等張液 (例えば、 D-ソルビトール, D-マンニトール, 塩化ナトリ ゥムなど) などが用いられ、 適当な溶解補助剤、 例えば、 アルコール (例: エタ
ノーノレ)、 ポリアノレコースレ (例: プロピレングリ コーノレ, ポリエチレングリ コー ル)、 非イオン性界面活性剤 (例: ポリソルベート SO™, HC0-50) などと併用し てもよい。 油性液としては、 例えば、 ゴマ油, 大豆油などが用いられ、 溶解補助 剤である安息香酸ベンジル, ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、 上記予防 '治療剤は、 例えば、 緩衝剤 (例えば、 リン酸塩緩衝液, 酢酸 ナトリウム緩衝液)、 無痛化剤 (例えば、 塩化ベンザルコニゥム, 塩酸プロカイ ンなど)、 安定剤 (例えば、 ヒト血清アルプミン, ポリエチレングリコールなど)、 保存剤 (例えば、 ベンジルアルコール, フエノールなど)、 酸化防止剤などと配 合してもよい。 調製された注射液は通常、 適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、 例えば、 ヒ トゃ他の 温血動物 (例えば、 ラット, マウス, ハムスター, ゥサギ, ヒッジ, ャギ, ブタ, ゥシ, ゥマ, ネコ, ィヌ, サル, チンパンジー, トリなど) に対して投与するこ とができる。
/3セクレターゼ選択的阻害物質の投与量は、 投与対象、 症状、 投与方法などに より差異はあるが、 経口投与の場合、 一般的に、 例えば AD患者 (60 kgとして) においては、 一日につき約 0. 1〜100 mg、 好ましくは約 1. 0〜50 mg、 より好まし くは約 1. 0〜20 ragである。 非経口的に投与する場合は、 その 1回投与量は投与対 象、 症状、 投与方法などによっても異なるが、 例えば注射剤の形では、 通常、 例 えば AD患者 (60 kgとして) においては、 一日につき約 0. 01〜30 mg程度、 好ま しくは約 0. 1〜20 mg程度、 より好ましくは約 0. 1〜10 mg程度を投与するのが好都 合である。 他の動物の場合も、 60 kg当たりに換算した量を投与することができ る。
本発明のスクリーニング方法により選択され得る セクレターゼ阻害物質は、 活性中心に作用する セクレターゼ阻害薬のように、 構造の最適化において、 他 のァスパラギン酸プロテアーゼに対する阻害作用による制限を受けることなく構 造展開が可能なリ一ド化合物となりうる点でも有利である。
本明細書おょぴ図面において、 塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、 I UP AC— I UB Commission on Biochemical Nomenclature による略 ある いは当該分野における慣用略号に基づくものであり、 その例を下記する。 またァ ミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、 特に明示しなければ L体を示すもの とする。
DNA :デォキシリポ核酸
c DNA :相補的デォキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グァニン
C :シトシン
RNA : リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリポ核酸
d AT P :デォキシアデノシン三リン酸
d TT P :デォキシチミジン三リン酸
d GT P :デォキシグアノシン三リン酸
d CT P :デォキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジァミン四酢酸
SD S : ドデシル硫酸ナトリゥム
G 1 y :グリシン
A 1 a :ァラニン
V a 1 :バリン
L e u : ロイシン
I 1 e :イソロイシン
S e r : セリン
Th r : スレ才ニン
C y s : システィン
Me t : メチォニン
G 1 u : グノレタミン酸
As : ァスパラギン酸
L y s : リジン
A r g : アルギニン
H i s : ヒスチジン
P h e : フエニノレアラニン
T y r :チロシン
T r p : トリブトファン
P r o :プロリン
A s n : ァスパラギン
G 1 n : グルタミン
p G 1 u : ピログノレタミン酸
Me : メチル基
E t :ェチノレ基
B u :プチル基
P h : フエニル基
TC :チアゾリジンー4 (R) 一カルボキサミ ド基
また、 本明細書中で繁用される置換基、 保護基および試薬を下記の記号で表記 する。
T o s : ρ—トノレエンスノレフォニノレ
CHO : ホルミル
B z 1 : ベンジノレ
Cl2 B z 1 : 2, 6—ジクロ口べンジノレ
B om :ベンジノレォキシメチノレ
Z :ペンジノレオキシカノレポ二ノレ
C 1— z : 2—クロ口ベンジルォキシカノレボニル
B r— Z : 2—プロモベンジルォキシカルポニル
B o c : tープトキシカルボニル
DNP :ジニト口フエノーノレ
T r t : トリチル
Bum : tープトキシメチル
F m o c : N— 9—フルォレニルメ トキシカルポ二ノレ
HOB t : 1—ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOB t : 3, 4—ジヒ ドロー 3—ヒ ドロキシ一4—ォキソ一
1, 2, 3—べンゾトリァジン
HONB : 1-ヒドロキシ- 5-ノルポルネン- 2, 3-ジカルポキシィ
DCC : N, N' ージシクロへキシルカルポジイミ ド
本発明は、 さらに以下の参考例、 実施例によって詳しく説明されるが、 これら の例は単なる実例であって、 本発明を限定するものではなく、 また本発明の範囲 を逸脱しない範囲で変化させてもよい。 実施例
以下の実施例で用いられる 5化合物:
化合物 J
は、 上記特許文献 1の記載に従って製造した
尚、 大腸菌を用いての遺伝子操作法は、 モレキュラー 'クローユング
(Molecular cloning) に記載されている方法に従った。 参考例 1 ]3セクレターゼの全長蛋白の発現用プラスミ ドの調製
)3セクレターゼの全長蛋白を調製するための発現用プラスミ ドの構築は、 /3セ クレターゼをコードする遺伝子の塩基配列において、 Bennettらが報告 (Science 286, 735-741 (1999) ) している塩基配列と比較して、 クローン番号 FG04087
(GenBank Accession No.AB032975s かずさ DN A研究所) の塩基配列に 1塩基 の揷入 (第 102番目) があったため、 変換を行い、 さらに精製が容易なように C末端側に F 1 a gペプチド (Asp- Tyr_Lys- Asp- Asp- Asp- Asp- Lys (配列番号: 4) ) をコードする塩基配列( 5, - GATTACAAGGATGACGACGATAAG - 3, (配列番 号: 3) )を付加した。 まず、 クローン番号 FG04087の遺伝子を铸型に、 Bennett らが報告している セクレターゼ遺伝子塩基配列を参考に作製したプライマー セット : 5'— GGCACCACCMCCTTCGT— 3' (配列番号: 5) と F 1 a gぺプチドを コードする塩基配列を含む 5'―
GGTACCTACTTATCGTCGTCATCCTTGTAATCCTTCAGCAGGGAGATGTCATCAG- 3, (配列番号: 6) とを各 20 pmo 1ずつ添加し、 KOD (東洋紡) を使用して PCR反応を MiniCyclerTM (ェムジエイリサーチ) にて行った (反応条件: 94°Cで 2分間 を 1サイクル、 98 °Cで 15秒間、 72 °Cで 2秒間、 74 °Cで 10秒間を 3サイ クル、 98 °Cで 1 5秒間、 68 °Cで 2秒間、 74°Cで 10秒間を 3サイクル、 9 8 °Cで 15秒間、 64 °Cで 2秒間、 74 °Cで 10秒間を 3サイクル、 98 °Cで 1 5秒間、 60でで 2秒間、 74 °Cで 10秒間を 28サイクル) 。 その P C R産物 をァガロースゲル電気泳動し、 約 700 b p の DNA断片を回収した。 その断 片を Zero Blunt T0P0 PCR Cloning Kit (インビトロジェン) を用いて、 クロー ユングした。 得られたプラスミドを制限酵素 Ap a I (宝酒造) と Kp n l (宝 酒造) で消化した後、 ァガロースゲル電気泳動し、 約 250 b ρの DNA断片を
回収した。 クローン番号 FG04087を含むプラスミドを A p a Iで消化した後、 ァ ガロースゲル電気泳動し、 約 1. 2 k b p .の DNA断片を回収した。 これら D NA断片と Ap a Iと Kp n I で消化した動物細胞用発現プラスミド p cDN A3. 1 (一) (フナコシ) を混合し、 Ligation High (東洋紡) を用いて連結し、 大腸菌 JM109のコンビテントセル (宝酒造) を形質転換することでプラスミ ド; p BACE- Fを得た。 次に 1塩基挿入の変換を行うために、 クローン番号 FG04087の遺伝子を錄型に、 Bennettらが報告している β—セクレターゼ遺伝子塩 基配列を参考に作製したプライマーセット : 5,一 TMTACGACTCACTATAGGG— 3, (配列番号: 7) と 5'— GGCGCCCCCCAGACCACTTCTCAG— 3' (配列番号: 8) を各 20 pmo 1 ずつ添加し、 KOD (東洋紡) を使用して、 PCR反応を
MiniCyclerTMにて行った (反応条件: 94°Cで 2分間を 1サイクル、 98°Cで 15秒間、 72 °Cで 2秒間、 74 °Cで 10秒間を 3サイクル、 98 °Cで 1 5秒間、 68でで 2秒間、 74 °Cで 5秒間を 3サイクル、 98 °Cで 15秒間、 64 °Cで 2 秒間、 74 °Cで 5秒間を 3サイクル、 98 °Cで 1 5秒間、 60でで 2秒間、 7 4°Cで 5秒間を 28サイクル) 。 その P CR産物をァガロースゲル電気泳動し、 約 170 b p の DNA断片を回収した。 その断片を Zero Blunt T0P0PCR
Cloning Kit (インビトロジェン) を用いて、 クローニングした。 得られたプラ スミドを制限酵素 A p a I (宝酒造) と B b e I (宝酒造) で消化した後、 ァガ ロースゲル電気泳動し、 約 120 b p の DNA断片を回収した。 pBACE-F を同様の制限酵素で消化した後、 ァガロースゲル電気泳動し、 約 1. l k b p の DNA断片を回収した。 さらに p BACE- Fを Ap a Iで消化した後、 ァガ ロースゲル電気泳動し、 約 5. 7 kbpの DNA断片を回収した。 これらの 3つの 断片を Ligation Highを用いて連結し、 大腸菌 J M 109のコンビテントセルを 形質転換することでプラスミド p BACE 1-501を得た。 得られた cDNA 断片は、 配列番号: 9で表わされる塩基配列を有しており、 その塩基配列の第 1 番目〜第 1 527番目に配列番号: 10で表わされるアミノ酸酉己列がコードされ
ていた。 参考例 2 ]3セクレターゼの全長蛋白の HE K 2 9 3細胞での発現と精製
/3セクレターゼの全長蛋白 (BACE 1— 5 0 1) の発現は FreeStyle 293 Expression System (インビトロジェン) を用いて行った。 FreeStyle 293- F細 胞を 1. 1 X c e 1 1 s /m 1になるように FreeStyle 293 Expression Medium 140m lに播種した。 293fectin200 μ 1を 5 m 1の Opti- MEM I培地で希釈 し、 5m lの Opti- MEM I培地で希釈した 1 50 gの発現用プラスミドと混合し 20分間、 室温で放置した後に FreeStyle 293- F細胞に添加した。 3 7°C、 8% 炭酸ガス、 1 2 5 r pmで 2日間振とう培養後、 細胞を回収し、 5m lの縣濁用 緩衝液 (0. O lM T r i s— HC 1 (pH8) 、 0. 1 5M Na C l、 1 m M EDTA、 0. 5mM PMSF) を添加後、 超音波破碎機 (トミー精ェ)
(破碎条件:アウトプット 5、 1 5秒間 4回) を用いて破碎した。 その破砕液 を遠心分離 (500 g、 1 0分間) し、 その上清をさらに遠心分離 (1 00, 0 00 g、 45分間) し、 その沈殿物を 0. 5 m 1の可溶化用緩衝液 (0. 0 1 M T r i s— HC 1 (pH8) 、 0. 05M オタチル一 ]3—ダルコシド 1 mM E DTA、 0. 5mM PMS F) で可溶化 (4°C、 2. 5時間) した後、 遠心分 離'(1 00, 000 g、 45分間) した。 その上清を 1 00 /X 1の抗 F 1 a g抗 体 (シグマ) を用いて精製した。 その結果、 目的の BACE 1— 50 1を 3 9 5 /i g取得できた。 参考例 3 BACE 1— 50 1蛋白に対する化合物 A、 D、 H、 Iおよび Jの阻 害様式の解析 ·
9 6穴黒色プレート (コーユング) に 25 i lの 0. 0 5M酢酸緩衝液 (p H5. 5) 、 Ι Ο μ Ιの 0. 1 mM、 0. 1 5 mM、 0. 2 5 mM、 0. 5 mM 1 mM各基質 (Nma-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Lys (Dnp) -Arg-Arg-NHo ;
配列番号: 1 1) 、 上記 (2) で得られた 1 Ομ 1の BACE 1— 501 (0. 07mg/m l) 、 5 /ζ 1の 0. 1 mM、 0. 3 mM各化合物 A 10 %DM S O 溶液、 対照には 5 1の 10 °/0DM S Oをそれぞれ添加し、 37 °Cにて 20時間 反応した。 反応終了後、 蛍光強度 (励起波長 325 nm、 測定波長 460 nm) をフルォロスキャンアセント (ラボシステムズ) を用いて測定した。 各濃度の化 合物存在下における蛍光値の変化量の逆数を縦軸に基質濃度の逆数を横軸にプロ ット (ラインゥエーバ一一バークプロット) した結果、 いずれの化合物も横軸上 で直線が交差したことから全長 BACE 1—501に対する阻害様式は非拮抗型 阻害であることが明らかになった。 一例として化合物 Dのグラフを図 1に示す。 各化合物は全長 BACE 1— 501を非拮抗的に阻害することから活性部位以 外に結合しているものと考えられた。 次に、 その結合部位を明らかにするため、 各ドメインからなる蛋白を調製し、 阻害およぴ結合実験を行つた。 参考例 4 ]3セクレターゼの細胞外ドメインからなる蛋白およぴ細胞外ドメイン と膜貫通ドメインから ¾る蛋白の発現用プラスミドの調製
]3セクレターゼの細胞外ドメインからなる蛋白を調製するための発現用プラス ミドは、 第 1番目〜第 454番目のアミノ酸に F 1 a gペプチドが付加された塩 基配列を有するものを調製した。 まず、 プラスミド pBACE 1—501を錶型 にプライマーセット: 5' -GCTGGCTAGCGTTTAAACGGGCCCTCTAGA- 3 ' (配列番号: 12 ) と 5, - TTTTGGTACCTACTTATCGTCGTCATCCTTGTAATCGGTTGACTCATCTGTC - 3, (配列番号: 1 3) を各 20 p m o 1ずつ添加し、 pfu Turbo (ストラッタジー ン) を使用して、 PCR反応を Gene Amp PCR system 9700 (アプライドバイオシ ステム) にて行った (反応条件: 94°Cで 1分間を 1サイクル、 94°Cで 30秒 間、 58°Cで 30秒間、 72°Cで 2分間を 20サイクル) 。 その PCR産物をァ ガロースゲル電気泳動し、 約 1. 4 k b pの DNA断片を回収した。 得られた D NA断片を制限酵素 Nh e I (宝酒造) と Kp n Iを用いて消化した後、 スピン
カラム S— 300 (アマシャムバイオサイエンス) を用いて回収した。 これら D NA断片と Nh e Iと Kp n Iで消化した p c DNA3. 1 (—) を混合し、 Ligation Highを用いて連結し、 大腸菌 DH 5— αのコンビテントセル (東洋 紡) を形質転換することでプラスミド pBACE l— 454を得た。 得られた c DNA断片は、 配列番号: 14で表わされる塩基配列を有しており、 その塩基配 列の第 1番目〜第 1386番目に配列番号: 15で表わされるァミノ酸配列がコ 一ドされていた。
セクレターゼの細胞外ドメイン部分と膜貫通ドメインからなる蛋白を調製す るための発現用プラスミドの調製は、 第 1番目〜第 474番目のアミノ酸に F 1 a gペプチドが付加された塩基配列を有するものを調製した。 まず、 プラスミド p BACE l— 501を铸型にプライマーセット : 5'—
GCTGGCTAGCGTTTAAACGGGCCCTCTAGA- 3, (配列番号: 12) と 5 '—
TTTTGGTACCTACTTATCGTCGTCATCCTTGTAATCGCAGAGTGGCAGCATG- 3 ' (配列番号: 1 6) を各 20 pmo l ずつ添加し、 pfu Turboを使用して、 PCR反応を Gene Amp PCR system 9700にて行った (反応条件: 94°Cで 1分間を 1サイクル、 9 4。Cで 30秒間、 58でで 30秒間、 72 で 2分間を 20サイクル) 。 その P CR産物をァガロースゲル電気泳動し、 約 1. 5 k b pの DNA断片を回収した。 得られた DNA断片を制限酵素 Nh e Iと Kp n Iを用いて消化した後、 スピン カラム S— 300を用いて回収した。 これら DNA断片と Nh e Iと Kp n Iで 消化した p c DNA3. 1 (-) を混合し、 Ligation Highを用いて連結し、 大腸 菌 DH5—ひのコンビテントセルを形質転換することでプラスミド p BACE 1 —474を得た。 得られた cDNA断片は、 配列番号: 17で表わされる塩基配 列を有しており、 その塩基配列の第 1番目〜第 1446番目に配列番号: 18で 表わされるアミノ酸配列がコードされていた。 参考例 5 ]3セクレターゼの細胞外ドメインからなる蛋白 (BACE 1— 45
4) および細胞外ドメインと膜貫通ドメインからなる蛋白 (BACE 1— 4 7 4) の HEK 2 9 3細胞での発現と精製
各蛋白の発現は FreeStyle 293 Expression System (インビトロジェン) を用 いて行った。 FreeStyle 293 - F細胞を 1. 1 X c e 1 1 s /m 1になるように . FreeStyle 293 Expression Medium 1 4 0m lに播種した。 293fectin20 0 μ 1を 5 m 1の Opti- MEM I培地で希釈し、 5m lの Opti- MEM I培地で希釈した 1 5 0 μ gの発現用プラスミドと混合し 2 0分間、 室温で放置した後に FreeStyle 293- F細胞に添加した。 3 7°C、 8%炭酸ガス、 1 2 5 r p mで 2日間振とう培 養後、 B AC E 1— 4 74については細胞を回収し、 5 m lの縣濁用緩衝液 (0. O lM T r i s— HC 1 (p H8) 、 0. 1 5M N a C l、 1 mM EDTAヽ 0. 5mM PMS F) を添加後、 超音波破砕機 (トミー精ェ) (破碎条件:ァ ゥトプット 5、 1 5秒間 4回) を用いて破砕した。 その破碎液を遠心分離 (5 00 g、 1 0分間) し、 その上清をさらに遠心分離 (1 0 0, 00 0 g、 4 5分 間) し、 その沈殿物を 0. 5m lの可溶化用緩衝液 (0. O lM T r i s— H C 1 (p H 8) 、 0. 0 5M ォクチルー ]3—ダルコシド 1 mM EDTA、 0. 5mM PMS F) で可溶化 (4°C、 2. 5時間) した後、 遠心分離 (1 0 0, 0 0 0 g、 4 5分間) した。 その上清を 1 0 0 μ 1の抗 F 1 a g抗体を用いて精 製した。 その結果、 目的の BACE 1— 4 74を 7 0 / g取得できた。 BACE 1 - 4 5 4については培養上清を回収し、 1 0 0 μ 1の抗 F 1 a g抗体を用いて 精製した。 その結果、 目的の BAC E 1— 4 5 4を 1 4 μ g取得できた。 実施例 1 各 B AC E蛋白に対する化合物 A、 D、 H、 Iおよび Jの阻害作用の 測定
9 6穴黒色プレートに 2 5 μ 1の 0. 0 5Μ酢酸緩衝液 (ρ Η 5. 5) 、 1 0 1の 2 5 0 基質 ( Nma-Ser-Glu-Val-Lys-Met-Asp-Ala-Glu-Lys(Dnp)- Arg-Arg- H2 ;配列番号: 1 1) 、 上記参考例 5で得られた 1 0 /i 1の BACE
1-474 (0. 02mg/m 1 ) または BACE 1—454 (0. 01 m g / m l ) あるいは細胞外ドメインとして市販されている組換え型ヒト BACE— 1
(アミノ酸残基 1一 460、 アールアンドディーシステムズ) (0. 025mg /m 1 ) 、 5 μ 1の各化合物 10 %DMS Ο溶液、 対照には 5 μ 1の 10 %DM SOをそれぞれ添加し、 37 °Cにて 63時間反応した。 反応終了後、 蛍光強度
(励起波長 325 nm、 測定波長 460 nm) をフルォロスキャンアセントを用 いて測定した。 各化合物 (終濃度は Ι Ο^Μ) は BACE 1—474に対して 3 0% (化合物 A) 、 38% (化合物 D) 、 34% (化合物 H) 、 37% (化合物 I) 、 37% (化合物】) の阻害率を示したが、 BACE 1— 454およぴ耝換 ぇ型ヒト BACE— 1に対しては阻害活性を示さなかった。 実施例 2 表面プラズモン共鳴法を用いた各 BACE蛋白と化合物 A、 D、 H、 Iおよび Jとの結合の検出
表面プラズモン共鳴法を用いた解析には B i a c o r e 3000 (ビアコア) を用いた。 BACE 1— 501およぴ組換え型ヒト BACE— 1 (アミノ酸残基 1-460) は、 ; pH4. 5の酢酸バッファ一中で、 N- hydrosuccinimide(NH S)/N - ethyl~ - (3 - dimethyl - aminopropy丄)一 carboaiimide hydrochloride 、£ DC) で活性化した CM 5センサーチップ (carboxymethylated dextran matrix chip) 上の力ルポキシル基に固相化した。 BACE 1— 454、 BACE 1 -4 74は pH4. 0の酢酸バッファ一中で同様の方法で固相化した。 化合物と酵素 の結合は 10%DMSOと 0. 005%S u r f a c t a n t P 20 を含む P B S中で測定した。 バルタ効果により生じるフローセル間での Resonance Unit (RU) 値のずれの修正は、 DMSO濃度を 9%から 1 1%までの 5段階に変化 させたバッファーを用いて作成した捕正曲線を用いて行なった。 その結果、 BA CE 1— 501と BACE 1— 474に結合することを示すシグナルが得られた。 一方、 BACE 1—454と組換え型ヒト BACE— 1 (アミノ酸残基 1—46
0) に対しては、 結合を示すシグナルは得られなかっ 。 一例として BACE 1 一 501と化合物 Jとの結合を示すシグナル図を図 2に示す。
各化合物は膜貫通領域の 46 1番目から 474番目のアミノ酸のいずれかの部 位に結合することによって全長 BACE 1— 501を阻害することが明らかにな つた。 次に、 膜貫通領域の 461番目から 474番目のアミノ酸のどの部分に結 合することにより阻害するかを詳細に検討するため、 BACE 1— 474のカル ボキシル末端側からアミノ酸を削除した蛋白を作製し、 阻害および結合実験を行 つた。 参考例 6 BACE 1—474のカルボキシル末端側からアミノ酸を削除した ]3 セクレターゼ蛋白発現プラスミドの構築
BACE 1-474のカルボキシル末端側から段階的にアミノ酸を削除した ]3 セクレターゼ蛋白発現プラスミ ドの調製を行った。 まず、 第 1番目〜第 471番 目のアミノ酸に F 1 a gペプチドが付加された塩基配歹 ljを有するものの調製には プラスミド p BACE 1 -474を铸型にプライマーセット : 5,一
CATCTGCGCCCTCTTCATGCTGGATTACAAGGATGACGACG- 3, (配列番号: 1 9) と 5,一 CGTCGTCATCCTTGTAATCCAGCATGAAGAGGGCGCAGATG- 3, (配列番号: 20 ) と QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit (ストラッタジーン J を用いて 9塩基の削除することでプラスミド p BACE 1-471を得た。 得られた cD NA断片は、 配列番号: 2 1で表わされる塩基配列を有しており、 その塩基配列 の第 1番目〜第 1437番目に配列番号: 22で表わされるアミノ酸配列がコー ドされていた。
次に第 1番目〜第 469番目のアミノ酸に F 1 a gペプチドが付加された塩基 配列を有するものを調製した。 プラスミド p BACE 1-474を錄型にプライ マーセット : 5'—GCTGGCTAGCGTTTAMCGGGCCCTCTAGA— 3, (配列番号: 12) と 5, - TTTTGGTACCTACTTATCGTCGTCATCCTTGTAATCGAAGAGGGCGCAGATG - 3 ' (配列番
号: 2 3) を各 2 0 pmo l ずつ添加し、 pfu Turboを使用して、 P CR反応を Gene Amp PCR system 9ァ00にて行った (反応条件: 9 4°Cで 1分間を 1サイクル、
9 4でで 3 0秒間、 5 8 °Cで 3 0秒間、 7 2 °Cで 2分間を 2 0サイクル) 。 その
P CR産物をァガロースゲル電気泳動し、 約 1. 4 k b p の DNA断片を回収 した。 得られた DNA断片を制限酵素 Nh e Iと Kp n Iを用いて消化した後、 スピンカラム S— 3 0 0を用いて回収した。 これら DNA断片と Nh e Iと Kp n I で消化した; p c DNA 3. 1 (—) を混合し、 Ligation Highを用いて連結 し、 大腸菌 D H 5— αのコンビテントセルを形質転換することでプラスミ ド ρ Β 〇£ 1— 4 6 9を得た。 得られた c DNA断片は、 配列番号: 2 4で表わされ る塩基配列を有しており、 その塩基配列の第 1番目〜第 1 4 3 1番目に配列番 号: 2 5で表わされるアミノ酸配列がコードされていた。 さらに第 1番目〜第 4
6 5番目のアミノ酸に F l a gペプチドが付加された塩基配列を有するものを調 製した。 すなわち、 プラスミド p BACE 1— 4 6 9を錄型にプライマーセッ ト : 5, -GGCTATGTCATGGCTGCCATCGATTACAAGGATGACGACG- 3, (配列番号: 2 6) と 5' - CGTCGTCATCCTTGTAATCGATGGCAGCCATGACATAGGC - 3' (配列番号: 2 7) 'と QuickChange Site-Directed Mutagenesis Kitを用いて 1 2塩基を肖 lj除するこ とでプラスミド p B AC E 1—4 6 5を得た。 得られた c DNA断片は、 配列番 号: 28で表わされる塩基配列を有しており、 その塩基配列の第 1番目〜第 1 4
1 9番目に配列番号: 2 9で表わされるアミノ酸配列がコードされていた。 参考例 7 B ACE 1 - 4 7 1および BACE 1— 4 6 5の HEK 2 9 3細胞で の発現と精製
各蛋白の発現は FreeStyle 293 Expression System (インビトロジェン) を用 いて行った。 FreeStyle 293- F細胞を 1. 1 X c e 1 1 s /m 1になるように FreeStyle 293 Expression Medium 1 4 0m lに播種した。 293fectin20 0 μ 1を 5 m 1の Opt i- MEM I培地で希釈し、 5 m 1の Opti- MEM I培地で希釈した 1 5
0 μ gの発現用プラスミドと混合し 2 0分間、 室温で放置した後に Freestyle 293- F細胞に添加した。 3 7°C、 8%炭酸ガス、 1 2 5 r pmで 2日間振とう培 養後、 BACE 1— 4 7 1については細胞を回収し、 5m lの縣濁用緩衝液 (0. O lM T r i s—HC l (p H8) 、 0. 1 5M N a C l、 1 mM EDTA、 0. 5mM PMS F) を添加後、 超音波破砕機 (トミー精ェ) (破碎条件:ァ ゥトプット 5、 1 5秒間 4回) を用いて破砕した。 その破砕液を遠心分離 (5 O O g、 1 0分間) し、 その上清をさらに遠心分離 (1 0 0, 00 0 g、 4 5分 間) し、 その沈殿物を 0. 5m lの可溶化用緩衝液 (0. O lM T r i s— H C 1 (p H 8) 、 0. 0 5M ォクチル一 ]3—ダルコシド I mM EDTA、 0. 5mM PMS F) で可溶化 (4°C、 2. 5時間) した後、 遠心分離 (1 0 0,
0 0 0 g、 4 5分間) した。 その上清を 1 0 0 / 1の抗 F 1 a g抗体を用いて精 製した。 その結果、 目的の BAC E 1— 4 7 1を 1 0 5 t g取得できた。 BAC E 1 -4 6 5については培養上清を回収し、 1 0 0 μ 1の抗 F 1 a g抗体を用い て精製した。 その結果、 目的の BAC E 1— 4 6 5を 9 1 g取得できた。 実施例 3 BAC E 1 _ 4 7 1および 1一 4 6 5に対する化合物 A、 D、 H、 I および Jの阻害作用の測定
9 6穴黒色プレートに 2 5 μ 1の 0. 0 5Μ酢酸緩衝液 (ρ Η 5. 5) 、 1 0 μ 1の 2 5 0 μΜ基質 (Nma-Ser- Glu- Val-Lys- Met-Asp- Ala- Glu- Lys(Dnp)- Arg-Arg-NH2 ;配列番号: 1 1) 、 上記参考例 7で得られた 1 0 μ 1の BACE 1 - 4 7 1 (0. 0 5mg/m 1 ) または BACE 1—4 6 5 (0. 04mg/ m 1 ) 、 5 μ 1の 0. 1 mM化合物 A 1 0 %DMS O溶液、 対照には 5 /x 1の 1 0%DMS Oをそれぞれ添加じ、 3 7°Cにて B ACE 1—4 7 1については 5 0 時間、 BACE 1—4 6 5については 2 2時間反応した。 反応終了後、 蛍光強度 (励起波長 3 2 5 nm、 測定波長 4 6 0 nm) をフルォロスキャンアセントを用 いて測定した。 各化合物 (終濃度は 1 0 μΜ) は BACE 1— 4 7 1に対して 2
9% (化合物 A) 、 42% (化合物 D) 、 3 1% (化合物 H) 、 70% (化合物 I) 、 48% (化合物 J) の阻害率を示したが、 BACE 1— 465に対しては 阻害活性を示さなかった。 実施例 4 表面プラズモン共鳴法を用いた BACE 1— 471および BACE 1 —465と化合物 A、 D、 H、 Iおよび Jとの結合の検出
表面プラズモン共鳴法を用いた解析には B i a c o r e 3000を用いた。 B ACE 1—465は、 : H4. 5の酢酸バッファ一中で NH S^E D Cで活性化 した CM 5センサーチップ上のカルボキシル基に固相化した。 、 BACE 1—4 65は、 pH4. 0の酢酸バッファ一中で同様に固相化した。 化合物と酵素の結 合は 10%DMSOと 0. 005%S u r f a c t a n t P 20 を含む PB S 中で測定した。 バルタ効果により生じるフローセル間での RU値のずれの修正は、 DMSO濃度を 9%から 1 1%までの 5段階に変化させたバッファーを用いて作 成した補正曲線を用いて行なった。 その結果、 各化合物が BACE 1—471に 結合することを示すシグナルが得られた。 し力 し、 BACE 1—465に結合す ることを示すシグナルは得られなかった。
以上の結果から化合物 A、 D、 H、 Iおよび Jは ]3セクレターゼの 466番目 から 471番目のアミノ酸位置に結合し、 阻害活性を示すことが明らかとなった。 このことは セクレターゼの 466番目から 471番目のアミノ酸位置は活性調 節に重要な影響を及ぼす部位であることを示している。 産業上の利用可能性
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られう る、 膜貫通領域に結合することにより ]3セクレターゼ活性を阻害する化合物は、 従来知られている遷移状態ミミックやその他の活性中心に作用する阻害薬等とは 異なる /3セクレターゼ阻害様式を示すこと力ゝら、 セクレターゼを阻害すること
により予防 '治療効果が期待される疾患、 例えば AD、 ダウン症などの A/3の異 常蓄積が関与する疾患、 A AM Iなどの状態の予防■治療において有利な特性
(例えば、 ]3セクレターゼ選択的に作用し、 レニンゃカテブシン D等の他のァス パラギン酸プロテアーゼを阻害しないなど) を有する可能性がある。 従って、 本 発明のスクリーニング方法は、 副作用の危険性が低いような、 新規な阻害作用点 を有する AD、 ダウン症、 AAMI等の予防 '治療薬の探索に有用である。 本出願は、 日本で出願された特願 2004— 290784 (出願日 : 2004 年 10月 1日) を基礎としており、 その内容は本明細書に全て包含されるもので ある。 配列表フリーテキスト
[配列番号 3]
F 1 a gぺプチドをコ一ドするオリゴヌクレオチド。
[配列番号 4]
合成コンストラクト。
[配列番号 5]
プライマー。
[配列番号 6]
プライマー。
[配列番号 7]
プライマー。
[配列番号 8]
プライマー。
[配列番号 9]
(1504).. (1527) F 1 a gタグ。
[配列番号 1 1]
セクレターゼの合成基質。
(I) .. (1) N—メチルアントラノィル一Lーセリン (9).. (9) 2, 4ージニトロフエ二ルー L—リシン
(II) .. (11) アミド化
[配列番号 12]
プライマー。
[配列番号 13]
プライマー。
[配列番号 14]
(1363).. (1386) F 1 a gタグ。
[配列番号 16]
プライマー。
[配列番号 17]
(1423).. (1446) F 1 a gタグ <
[配列番号 19]
プライマー。
[配列番号 20]
プライマー。
[配列番号 21]
(1414).. (1437) F 1 a gタグ。
[配列番号 23]
プライマー。
[配列番号 24]
(1408).. (1431) F 1 a gタグ。
[配列番号 26]
プライマー。
[配列番号 27]
プライマ一。
[配列番号 28]
(1396).. (1419) F 1 a gタグ。