WO2005116471A1 - 車輪用軸受装置 - Google Patents

Abstract

　外方部材１と内方部材２の軌道面４，５間に転動体３を介在させ、両部材１，２間の環状空間の両端をそれぞれ密封する密封手段７，８を設ける。内方部材２の車輪取付用のフランジ２ａにシールド板１１を設ける。シールド板１１は、外方部材１のアウトボード側端の外周に近接してラビリンスシール１０を構成する筒部１１ａを有するものとする。外方部材１の外周面１ｂに、流入水を外方部材１の下方へ案内する案内手段１ｃを設ける。案内手段１ｃは、前記フランジ２ａおよびシールド板１１を伝わって前記シールド板１１と外方部材１の間に流れ込む水、および前記外方部材１の外径面を伝わって前記シールド板１１と外方部材１の間に流れ込む水を下方へ案内する。案内手段１ｃは、環状の溝または突条等により構成される。

Description

明 細 書

車輪用軸受装置

技術分野

[0001] この発明は、自動車等における車輪用軸受装置に関し、特にその密封構造に関す る。

背景技術

[0002] 自動車等の車両に用いられる軸受装置は、路面等に曝される厳 、環境下にある ため、外部からの塵埃や泥水の確実な侵入防止が求められ、また保守の不要化の 面から、グリース漏れの防止についても高い効果が求められる。このため、例えば図 9に示すようなシール構造が採用されて!/、る（例えば特開 2003 - 202028号公報)。 同図の軸受装置は、外方部材 31と内方部材 32の複列の軌道面 34, 35に、ボール 3 3を介在させたものであり、内外の部材 32, 31間に形成される環状空間のアウトボー ド側の端部がシール部材 37で密封されている。インボード側端は、内輪外径にスリン ガ 38が圧入され、キャップ（図示せず）により密封されている。なお、特開 2003— 20 2028号公報は、インボード側において、組合せシール（図示せず）が用いられ、シー ル性能の向上が図れられている。

[0003] 図 9 (A)の X部を図 9 (B)に拡大して示す。アウトボード側のシール部材 37は、芯金 39に弾性部材 40を設けたものであり、弾性部材 40は、内方部材 32の外周のシール 接虫面 32c【こ接虫する 3つのシーノレリップ 40a, 40b, 40cを有して!/ヽる。そのうち 1つ のシールリップ 40aは、封入グリースの流出を防止するグリースリップであり、軸受空 間の内方に延びている。他のシールリップ 40b, 40cは塵埃や泥水の侵入を防止す るダストリップである。これらのシールリップ 40a〜40cの先端部はシール接触面 32c に組付けな 、自然状態では、図 9 (B)のようにシール接触面 32cの仮想位置力 突 出した形状であり、これにより各シールリップ 40a〜40cは所定の締代を持ってシー ル接触面 32cに接触して 、る。

[0004] しかし、上記軸受装置におけるアウトボード側のシール構造では、複数のシールリ ップ 40a〜40cを有するシール部材 37を設けて!/、るので、シール部材 37の軸方向 寸法が長くなる。その分、軸受装置が軸方向に長くなり、重量が重くなる。自動車部 品である車輪用軸受装置においては、燃費の向上等のために、重量を極力軽減す ることが求められる。また、シール部材 37のシールリップ 40a〜40cを内方部材 32の シール接触面 32cに所定の締代を持って接触させて 、るので、接触抵抗が大きくな り軸受回転トルクが増大する。さら〖こ、上記 3つのシールリップ 40a〜40cは、シール 接触面 32c、すなわち、ハブ輪を摺動面としている力 この摺動面は絶えず泥水に曝 されることになるので、摺動面が発鲭し易ぐその結果、シールリップの摩耗が大きく なり、長期の使用によって泥水が軸受内部に浸入する恐れが生じる。この軸受内部 への泥水の浸入を防止するために、上記締代を更に大きくすることも考えられるが、 接触抵抗がより大きくなり、軸受回転トルクが一層増大することになる。このため、得 策とは言えず、その改善が望まれる。

発明の開示

[0005] この発明の目的は、アウトボード側のシールリップの摺動面が泥水に曝されることを 極力抑え、シールリップの摩耗によるシール性の低下を防止することができる車輪用 軸受装置を提供することである。

[0006] この発明の車輪用軸受装置は、内周に複列の軌道面を有する外方部材と、これら 軌道面に対向する軌道面を有しかつアウトボード側端の外周に車輪取付用のフラン ジを有する内方部材と、対向する軌道面間に介在した複列の転動体と、前記外方部 材と内方部材との間の環状空間の両端を密封するアウトボード側およびインボード側 の密封手段とを備え、車体に対して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置で あって、前記車輪取付用のフランジに、前記外方部材のアウトボード側端の外周に 近接してラビリンスシールを構成する筒部を有するシールド板を設け、前記外方部材 の外周面に、前記フランジおよびシールド板を伝わって前記シールド板と外方部材 の間に流れ込む水、および前記外方部材の外径面を伝わって前記シールド板と外 方部材の間に流れ込む水を外方部材の下方へ案内する案内手段を設けている。

[0007] この構成によると、アウトボード側の密封手段において、前記案内手段によって、ラ ビリンスシールを構成するシールド板と外方部材との間に流れ込む水を外方部材の 下方へ案内する作用が得られる。これにより、泥水がハブ輪の接触シールとの摺動 面に進入することが阻止され、この摺動面の発鲭が抑えられる。したがって、接触シ ールの摩耗を抑制してシール性の低下を防ぐことができる。また、シールド板と外方 部材との間で構成されるラビリンスシールは、主に外部からの塵埃や泥水等の侵入を 防止する機能を果たすことになる。これらにより、接触シール部への泥水等の進入が 阻止されるので、接触シールを簡略ィ匕でき、接触シールの接触抵抗により生じる回 転トルクが軽減される。また、接触シールの簡略ィ匕によって、内方部材等の軸方向長 さを短くすることができ、それだけ軸受重量を軽減することも可能になる。これらにより 、車両の燃費向上に貢献できる。

[0008] この発明にお 、て、前記案内手段は、前記外方部材の前記シールド板で覆われた 軸方向範囲の外周に設けたものであっても良!、。このようにシールド板のインボード 側端よりもアウトボード側に案内手段を配置することで、内方部材の車輪取付用フラ ンジおよび外方部材の両方力 伝わって来る水滴を、共に案内手段で外方部材の 下方に案内でき、アウトボード側の密封手段まで浸入することが防止される。

[0009] 前記案内手段は、前記外方部材の外周面に円周方向に沿って設けた溝であって も良ぐまた前記外方部材の外周面に円周方向に沿って設けた突条であっても良ぐ さらには外方部材の外周面に取付けられた別体の部品であつても良い。

案内手段が溝または突条であると、外方部材と一体に案内手段が形成できるため、 部品点数，組立工数の増加を回避できる。案内手段が別体の部品であると、部品点 数，組立工数は増えるが、外方部材の加工の複雑化が回避される。

[0010] この発明にお 、て、前記シールド板の筒部は、外周を伝わる水を筒部の基端側へ 返す水返しを有する形状としても良い。水返しがシールド板に設けられていると、シ 一ルド板の外周を伝わってその先端力も水が浸入するのを防止でき、密封手段へ泥 水が流れ込むことがより一層確実に防止される。

[0011] 前記シールド板は、耐腐食性を持つ材質とすることが望ま 、。シールド板は、泥 水をかぶり易い箇所に配置された部品であり、またシールド板が鲭びると、その鲭が 密封手段に水と共に流れ込む恐れがある。そのため、シールド板は耐腐食性に優れ たものとすることが好ましい。

図面の簡単な説明 [0012] この発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明から、より明瞭 に理解されるであろう。し力しながら、実施例および図面は単なる図示および説明の ためのものであり、この発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。この 発明の範囲は添付の請求の範囲によって定まる。添付図面において、複数の図面に おける同一の部品番号は、同一部分を示す。

[図 1] (A)はこの発明の第 1の実施形態に力かる車輪用軸受装置の断面図、 (B)は（ A)における A部の拡大図である。

[図 2]図 1における接触シールの他の例を示す拡大断面図である。

[図 3]図 1における接触シールの更に他の例を示す拡大断面図である。

[図 4]この発明の第 2の実施形態に力かる車輪用軸受装置の密封手段およびシール ド板周辺の部分断面図である。

[図 5]この発明の更に第 3の実施形態に力かる車輪用軸受装置の密封手段およびシ 一ルド板周辺の部分断面図である。

[図 6]この発明の第 4の実施形態に力かる車輪用軸受装置の密封手段およびシール ド板周辺の部分断面図である。

[図 7]図 6の実施形態の変形例を示す密封手段およびシールド板周辺の部分断面図 である。

[図 8]第 1の実施形態に力かる車輪用軸受装置の周辺部を示す断面図である。

[図 9] (A)は従来例の断面図、（B)は (A)における X部の拡大図である。

発明を実施するための最良の形態

[0013] この発明の第 1の実施形態を図 1と共に説明する。この実施形態は内輪回転タイプ で従動輪支持用の車輪用軸受装置であり、第 3世代型に分類されるものである。な お、この明細書において、車両に糸且付けた状態で車幅方向の外側寄りとなる側をァ ゥトボード側と 、、車幅方向の中央寄りとなる側をインボード側と言う。図 1では左側 がアウトボード側、右側力 Sインボード側となる。

この車輪用軸受装置は、内周に複列の軌道面 4を有する外方部材 1と、これら軌道 面 4にそれぞれ対向する軌道面 5を有する内方部材 2と、これら複列の軌道面 4, 5間 に介在する複列の転動体 3とを備える。転動体 3はボール力 なり、各列毎に保持器 6で保持されている。この車輪用軸受装置は、複列のアンギユラ玉軸受とされ、各軌 道面 4, 5は、断面円弧状とされて背面合わせとなるように接触角が形成されている。

[0014] 外方部材 1は、固定側の部材となるものであって、車体取付フランジ laを有する一 体の部材である。内方部材 2は、回転側の部材となるものであって、車輪取付フラン ジ 2aを有するハブ輪 2Aと、このハブ輪 2Aのインボード側端の外径に嵌合した別体 の内輪 2Bとで構成され、ハブ輪 2Aおよび内輪 2Bに各列の軌道面 5, 5がそれぞれ 形成されて 、る。車輪取付フランジ 2aは外方部材 1よりもアウトボード側で内方部材 2 の一端寄りに位置して、外方部材 1の円筒部の外径面よりも外径側に突出するように 形成されている。内輪 2Bは、ハブ輪 2Aのインボード側の端部に設けられた加締部 でハブ輪 2Aに軸方向に締め付け固定される。内外の部材 2, 1間に形成される環状 空間の両側の開口端部は、それぞれ密封手段 7, 8で密封されている。

[0015] 図 1 (A)の A部を拡大して図 1 (B)に示す。同図のように、アウトボード側の密封手 段 7は、外方部材 1に取付けられて内方部材 2に接する接触シール 9と、この接触シ ール 9よりも軸受空間の外側にあって、内外の部材 2, 1間に設けられたラビリンスシ ール 10とでなる。ラビリンスシール 10は、内方部材 2の車輪取付フランジ 2aに装着さ れたシールド板 11と、外方部材 1の外周面 lbとの間の隙間により形成された非接触 シールである。シールド板 11は、円筒状の筒部 11aと径方向に延びる立板部 l ibと でなる断面 L字状の部材であって、立板部 1 lbを車輪取付フランジ 2aのインボード側 面 2bに固着されている。この状態で、筒部 11aの内面が外方部材 1の外周面 lbに近 接してラビリンスシール 10が形成される。外方部材 1の外周面 lbには、円周方向に 沿った溝 lcが、シールド板 11に覆われ、かつラビリンスシール 10に位置するよう形 成されており、この溝 lcが案内手段を構成している。

[0016] 上記接触シール 9は、円筒部 12aと立板部 12bとでなる断面概形カ 字状の芯金 1 2と、この芯金 12に固着されたゴムのような弾性材料カゝらなる弾性部材 13とで構成さ れる。この接触シール 9は、芯金 12の円筒部 12aを外方部材 1の内径面に嵌合する ことで、外方部材 1に取付けられている。弾性部材 13には、内方部材 2の外周の上記 車輪取付フランジ 2aの近傍におけるシール面 2cに先端が向力 3つのシールリップ 13a, 13b, 13cが形成されている。そのうち、内外の部材 2, 1の間の軸受空間に対 する最内側のシールリップ 13aを除く各シールリップ 13b, 13cは、塵埃、泥水の侵入 を防止するダストリップであり、それぞれ先端が軸受空間の外側へ延びるように形成 されている。これらダストリップ 13b, 13cは、上記シール面 2cに対して締代を持たな い状態で接触している。最内側のシールリップ 13aは、封入グリースの流出を防止す るグリースリップであり、その先端が軸受空間の内側に延びるように形成され、上記シ ール面 2cに対して締代を持って接触して 、る。

[0017] 図 1 (A)のインボード側の密封手段 8は、円筒部 14aおよび立板部 14bからなる断 面 L字状の芯金 14と、この芯金 14の立板部 14bの内側に接触する接触シール 15と よりなる組合せシールとして構成されている。この場合、立板部 14bにおける軸受空 間の外側に向く側面に、後述する図 8の多極磁石 19を固着し磁気ェンコーダ兼用の スリンガとすることも可能である。多極磁石は、円周方向に磁極が交互に着磁されたリ ング状のものであり、この多極磁石にアキシアル方向から対面して磁気センサ 20を配 置することにより、車輪回転数を検出する回転数検出装置が構成される。この車輪用 軸受装置のインボード側端は、外方部材に取付けられたシールキャップ 17により端 面の全体が閉じられている。上記磁気センサ 20はこのシールキャップ 17等に取付け られる。

[0018] この構成の車輪用軸受装置によると、図 1 (B)のアウトボード側の密封手段 7を、接 触シール 9とラビリンスシール 10とで構成し、このラビリンスシール 10に位置して外方 部材 1の外周面 lbに、案内手段となる円周方向に沿う溝 lcが形成されているため、 外部からの塵埃や泥水の侵入力 Sラビリンスシール 10を通過して浸入することが防止 される。

特に、フランジ 2aおよびシールド板 11を伝わってシールド板 11と外方部材 1の間 に流れ込む水、および外方部材 1の外径面を伝わってシールド板 11と外方部材 1の 間に流れ込む水が、溝 lcによって外方部材 1の下方へ案内されるので、接触シール 部への泥水の侵入防止効果が高いものとなる。

[0019] そのため、アウトボード側の密封手段 7が、泥水に曝される環境下にありながら、内 方部材 2のシール面 2cへの泥水の浸入がなぐこの部分の発鲭が抑制される。した がって、接触シール 9を簡略化させても、十分な密封機能を確保できる上に、シール 面 2cの発鲭による接触シール 9の摩耗がなぐシール性が低下する懸念がない。こ の例では、接触シール 9の簡略化の形態として、ダストリップとなるシールリップ 13b, 13cが、内方部材 2のシール面 2cに対して締代を持たずに接触するものとしてある。 このため、締代を持たせた場合よりも接触シール 9での密封機能は低下するが、ラビ リンスシール 10および前記案内手段となる溝 lcがあることで、密封手段 7の全体とし ては十分な密封機能を確保できる。これにより、接触シール 9による接触抵抗で生じ る回転トルクが小さくなり、車両の燃費向上に貢献できる。

[0020] なお、接触シール 9の接触抵抗を小さくする構成として、上記の例ではダストリップ であるシールリップ 13b, 13cがシール面 2cに対して締代を持たな!、で接触するもの としたが、締代を小さくすることで接触抵抗を小さくしても良い。

[0021] 図 2および図 3は、図 1 (B)における接触シール 9の他の例を示すものである。図 1 ( B)におけるダストリップとなる最外側のシールリップ 13cを、図 2のように省いたり、あ るいは図 3のようにダストリップとなる 2つのシールリップ 13b, 13cを共に省くことによ つて、接触シール 9の接触抵抗を小さくしている。

このようにシールリップの枚数を削減した場合は、接触シール 9の形状が簡略ィ匕さ れることで接触シール 9の軸方向寸法が短くなり、それだけ接触シール 9に接触させ るためのシール面 2cの軸方向長さも短くでき、軸受装置の軸方向長さを短くすること ができる。これにより、車輪用軸受装置の軽量ィ匕が可能となり、この点でも車両の燃 費向上に貢献できる。図 2,図 3の例において、接触シール 9以外の構成は、図 1 (B) と同様であるので、共通部分に同一の符号を付しその説明を省略する。

[0022] 図 4は、この発明の第 2の実施形態を示す。この車輪用軸受装置は、アウトボード側 の密封手段 7における案内手段が、外方部材 1の外周面 lbに円周方向に沿って形 成された突条 Idにより構成されている。この突条 Idが、上記と同様に内方部材 2の 車輪取付フランジ 2aに装着されたシールド板 11と、外方部材 1の外周面 lbとの間の 隙間により形成されたラビリンスシール 10に位置する。この実施形態では、フランジ 2 aおよびシールド板 11を伝わつてシールド板 11と外方部材 1の間に流れ込む水、お よび外方部材 1の外径面を伝わってシールド板 11と外方部材 1の間に流れ込む水が 、突条 Idによって堰き止められ、アウトボード側へ流入せずにそのまま外方部材 1の 下方へ案内される。そのため、接触シール部への泥水の侵入が阻止される。

[0023] このような突条 Idの泥水侵入阻止機能と、上記同様のラビリンスシール 10の機能と が相俟って、アウトボード側の密封手段 7の密封機能をより高めることができる。した がって、接触シール 9による接触抵抗で生じる回転トルクが小さくなり、車両の燃費向 上に貢献できることは上記と同様である。また、この優れた密封機能により、図 2およ び図 3に示すような接触シールの簡略化が、この実施形態でも可能であることは言う までもない。その他の構成、効果は第 1の実施形態と同じであり、対応部分に同一符 号を付し、その説明を省略する。

[0024] 図 5は、この発明の第 3の実施形態を示す。接触シール 9を構成する断面概形が L 字状の芯金 12が、その円筒部 12aをして外方部材 1の外周面 lbにアウトボード側か ら嵌め込まれて固定されて 、る。この円筒部 12aの外周面とシールド板 11の内周面 との隙間がラビリンスシール 10とされている。この実施形態では、一部品としての円 筒部 12aのインボード側の端部 leが案内手段として機能し、フランジ 2aおよびシー ルド板 11を伝わつてシールド板 11と外方部材 1の間に流れ込む水、および外方部 材 1の外径面を伝わってシールド板 11と外方部材 1の間に流れ込む水力 端部 leに よって堰き止められ、アウトボード側へ流入せずにそのまま外方部材 1の下方へ案内 される。そのため、接触シール部への泥水の侵入阻止効果が高められる。

[0025] このような案内手段としての端部 leの泥水侵入阻止機能と、上記同様のラビリンス シール 10の機能とが相俟って、上記と同様にアウトボード側の密封手段 7の密封機 能をより高めることができる。したがって、接触シール 9による接触抵抗で生じる回転ト ルクが小さくなり、車両の燃費向上に貢献できることは上記と同様である。また、この 優れた密封機能により、図 2および図 3に示すような接触シールの簡略化が、この実 施形態でも可能であることは言うまでもない。その他の構成、効果は第 1の実施形態 と同じであり、対応部分に同一符号を付して、ここでもその説明を省略する。

[0026] 図 6は、この発明の第 4の実施形態を示す。この車輪用軸受装置は、図 1に示す第 1の実施形態において、アウトボード側の密封手段 7におけるシールド板 11の筒部 1 laを、外周を伝わる水を基端側 (筒部 11aと立板部 l ibとのコーナー部 11c)へ返す 水返しを有する形状としたものである。具体的には、図のように筒部 11aと立板部 11 bとのなす角度 αが 90° より小さい形状とすることで、筒部 11aの先端が基端よりも大 径であるテーパ筒状に成形して水返しとしたものである。この構成の場合、ラビリンス シール 1の隙間はインボード側に向かって広がる傾向となる力 車輪取付フランジ 2a のインボード側面 2bおよび立板部 1 lbを流れる水、あるいは筒部 1 laの外周を流れ る水は、コーナー部 11cに集まり、そのままシールド板 11の下方に案内される。

[0027] 一方、外方部材 1の外周面 lbには、第 1の実施形態と同様、円周方向に沿った溝 1 cが、シールド板 11に覆われかつラビリンスシール 10に位置するよう形成されている 。この溝 lcが案内手段を構成している。したがって、外方部材 1の外径面を伝わって シールド板 11と外方部材 1の間に流れ込む水力 溝 lcによって外方部材 1の下方へ 案内されるので、上記筒部 11aの水返しを有する形状による機能とも相俟って、接触 シール部への泥水の侵入が略完全に阻止される。その他の構成、効果は第 1の実施 形態と同じであり、対応部分に同一符号を付してここでもその説明を省略する。

[0028] 図 7は、図 6の第 4の実施形態の変形例を示すものである。シールド板 11の筒部 11 aが円筒状とされ、この筒部 11aのインボード側端部に外向鍔部 l idが設けられてい る。この外向鍔部 l idにより水返しを有する形状が形成されている。したがって、車輪 取付フランジ 2aのインボード側面 2bおよび立板部 1 lbを流れる水、あるいは筒部 11 aの外周を流れる水は、円筒部 11aの外表面から、そのままシールド板 11の下方に 案内される。ラビリンスシール 10および溝 lcの構成は上記と同様であるので、これら の相乗効果により、接触シール部への泥水の侵入阻止作用が高められる。その他の 構成は第 1の実施形態の場合と同じである。なお、図 6および図 7の実施形態のシー ルド板 11の形状は、図 4または図 5に示す実施形態にも適用可能である。

[0029] 前記各実施形態で採用されるシールド板 11は、その筒部 11aが、外方部材のァゥ トボード側の外周に近接してラビリンスシール 10を構成し、上記シール機能を奏する 力 泥水の暴露環境下に絶えず曝されるので、耐腐食性を持つ材質力 なることが 望ましい。これにより、そのシール機能が長く維持される。ラビリンスシール 10の隙間 は 0. 5mm程度（公差を含めて 0. 4〜0. 8mm)とするのが好ましい。

[0030] なお、上記各実施形態では、外方部材 1が固定側部材で、内方部材 2が回転側部 材である車輪用軸装置の場合につき説明したが、上記とは逆に、外方部材 1が回転 側部材で、内方部材 2が固定側部材である車輪用軸装置の場合に適用しても、上記 と同様の効果が得られる。

図 8は、第 1の実施形態にかかる車輪用軸受装置の周辺構造を示す。外方部材 1 は、懸架装置のナックル 16に固定され、ナックル 16に一体にシールキャップ部 17が 設けられている。また、図示の車輪用軸受装置は、インボード側の密封手段 8が多極 磁石 19を備え、磁気エンコーダを構成するものとされ、この多極磁石 19に対面する 磁気センサ 20がナックル 16に設置されている。内方部材 2の車輪取付用フランジ 2a には、ハブボルト 23が圧入されている。ブレーキロータ 21と車輪のリム部 22とは、重 なり状態でハブボルト 23に装着され、ナット 24の螺合により締め付けられている。そ の他の構成は、図 1に示す実施形態と同様であるので、共通部分に同一の符号を付 し、その説明を省略する。また、この周辺構造は、第 1の実施形態に限らず、上記し た他の実施形態の車輪用軸受装置の周辺構造にも適用される。

Claims

請求の範囲

[1] 円周に複列の軌道面を有する外方部材と、これら軌道面に対向する軌道面を有し かつアウトボード側端の外周に車輪取付用のフランジを有する内方部材と、対向する 軌道面間に介在した複列の転動体と、前記外方部材と内方部材との間の環状空間 の両端を密封するアウトボード側およびインボード側の密封手段とを備え、車体に対 して車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置であって、

前記車輪取付用のフランジに、前記外方部材のアウトボード側端の外周に近接し てラビリンスシールを構成する筒部を有するシールド板を設け、前記外方部材の外周 面に、前記フランジおよびシールド板を伝わって前記シールド板と外方部材の間に 流れ込む水、および前記外方部材の外径面を伝わって前記シールド板と外方部材 の間に流れ込む水を外方部材の下方へ案内する案内手段を設けた車輪用軸受装 置。

[2] 請求項 1にお 、て、前記案内手段を、前記外方部材の前記シールド板で覆われた 軸方向範囲の外周に設けた車輪用軸受装置。

[3] 請求項 1において、前記案内手段が、前記外方部材の外周面に円周方向に沿つ て設けた溝である車輪用軸受装置。

[4] 請求項 1において、前記案内手段が、前記外方部材の外周面に円周方向に沿つ て設けた突条である車輪用軸受装置。

[5] 請求項 1にお 、て、前記案内手段が、前記外方部材の外周面に取付けられた部品 である車輪用軸受装置。

[6] 請求項 1にお 、て、前記シールド板の筒部力 外周を伝わる水を筒部の基端側へ 返す水返しを有する形状である車輪用軸受装置。

[7] 請求項 1にお ヽて、前記シールド板を、耐腐食性を持つ材質とした車輪用軸受装 置。