明 細 書
固体高分子電解質膜および燃料電池
技術分野
[0001] 本発明は固体高分子電解質膜に関する。さらに具体的には高いイオン伝導性を有 する固体高分子電解質膜に関し、燃料電池、固体高分子型燃料電池用イオン伝導 膜、酸化還元電池、電気透析膜、逆浸透膜、ナノ濾過膜、拡散透析膜、ガス分離膜 、浸透気化及び浸透抽出膜、湿度センサ、ガスセンサの分野に使用される。また、本 発明による固体高分子電解質膜は、極めて低 ヽメタノール透過性を有しダイレクトメ タノール型燃料電池(以下、 DMFCと略記する)用電解質膜として特に好適に使用さ れる。
本願は、日本国特許庁に 2004年 5月 13日に出願された特願 2004— 143266号 、 2004年 6月 7日に出願された特願 2004— 168420号に基づく優先権を主張し、 その内容をここに援用する。
背景技術
[0002] 近年、次世代型クリーンエネルギー源として燃料電池が重要な地位を占めつつあ る。この燃料電池のうち、固体高分子電解質型燃料電池 (以下、 PEFCと略記する) は、固体高分子電解質膜の両面にアノードおよび力ソードの両電極が配置されたも のである。例えば、この PEFCの燃料としてメタノールを使用する場合、アノード側に メタノールを、また力ソード側には酸素または空気を供給することにより、電気化学反 応を起こすことができ、結果、電気が発生する。
高出力、高エネルギー密度という、燃料電池の特性を保持し、かつ小型で軽量な 燃料電池を実現するために、高 ヽプロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜の開 発が行われている。また、 DMFCに使用される固体高分子電解質膜には、高いィォ ン伝導性を保持しつつ燃料用メタノールの阻止性、すなわち、固体高分子電解質膜 におけるアノード側力も力ソード側への燃料用メタノールの透過(クロスオーバー)を 低減することが要求される。
[0003] 従来、パーフルォロカーボンスルホン酸(以下、 PFSと略記する)系高分子(例えば
デュポン社製、商品名ナフイオン膜 (登録商標)など)を水和したものが、高いイオン 伝導性を有するため、固体高分子電解質膜として広く使用'検討されている。しかし ながら、水和した PFS系高分子膜は、水との親和性の高いメタノールを通過(クロス オーバー)させやすいため、メタノール阻止性に原理的な限界を有している。 PFS系 高分子水和膜におけるメタノールのクロスオーバーを低減する手段として、 PFS系高 分子水和膜をベースにして異種材料を複合することが考えられる。しかし、上記複合 は、本来の PFS系高分子水和膜の有する高いイオン伝導性を著しく低下させるとい う問題点を有している。
[0004] これらの問題点を解決する手段として、ナフイオン 112膜 (商品名、デュポン社製) にァ-リンを含浸させてなるメタ型ポリア-リンを用いることが、特許文献 1に開示され ている。このメタ型ポリア-リンが、ナフイオン膜 (登録商標)と同程度のイオン伝導性 とナフイオン膜 (登録商標)の 1Z3程度のメタノール阻止性を有することが開示されて いるが、 DMFC用電解質膜に使用するには未だ不十分である。また、高価なナフィ オン膜 (登録商標)に更に加工を加えるため、工程数が多く煩雑になり、結果、一段と 高価格な膜とならざるを得ない。また、多孔質膜に酸性モノマーをグラフト重合させて いるものが特許文献 2に開示されているが、膜強度が十分ではな力つた。さらに、マト リックスモノマー、イオン交換系モノマーと配向系モノマーとを共重合させたものなど が特許文献 3に開示されている力 メタノール透過性については不明である。
[0005] 上記以外に、ポリエチレンィミンに硫酸、またはリン酸をドープした例(非特許文献 1 参照)、ポリシラミンにリン酸をドープした例 (非特許文献 2参照)、ポリアクリルアミドに 硫酸、またはリン酸をドープした例(非特許文献 3参照)、ポリべンズイミダゾールにリ ン酸をドープした例(特許文献 4参照)、スルホンィ匕ポリエーテルスルホンにポリベン ズイミダゾールを添加した例 (非特許文献 4参照)があるが、ドープ剤が流れ落ちる、 十分なイオン伝導性を示さな 、等問題点を多く有して ヽる。
特許文献 1 :特開 2001-81220号 公報
特許文献 2:特許 WO00,54351
特許文献 3 :特開平 11-302410号 公報
特許文献 4 :特表平: U-503262号 公報
特干文献 1 : D.Schoolmann,O.Trinquent,ana J.-C.Lassegues, Electrochim Acta,37, 1619(1992)
特許文献 2: K.Tsuruhara,M.Rikukawa,K.Sunui,N.Ogata,Y.Nagasaki, and M.Kato, Electrochim Acta,45, 1391(2000)
非特許文献 3 :W.Wieczorek and J.R.Stevens, Polymer,38,2057(1997)
非特許文献 4 :J.Kerrer,A.Ullrich,F.Meier and T.Harig, Solid State
Ionics, 125,243(1999)
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] 本発明は、上述のような DMFC用固体高分子電解質としての PFS系高分子水和 膜、 PFS改質膜、および各種電解質膜の現状問題点を解決するためになされたもの であり、高いイオン伝導性を保持しつつ、メタノール阻止性に優れた固体高分子電解 質膜を低コストで提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者らは上記課題にっ ヽて鋭意研究した結果、特定の酸性基を有するモノマ 一と特定の塩基性基を有するモノマーとを共重合させて得られるポリマーを含有する 固体高分子電解質膜が、特に高 ヽイオン伝導性を保持しつつメタノール透過性を改 善することを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明の第 1の態様は、酸性基を有するモノマー(以下、 Aモノマーとい うことがある)と塩基性基を有するモノマー(以下、 Bモノマーと 、うことがある)とを共 重合させて得られる重合組成物を含有する固体高分子電解質膜であって、前記酸 性基を有するモノマーがスルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボキシル基力 なる 群より選ばれた少なくとも 1種を有する脂肪族モノマーであり、前記塩基性を有するモ ノマーがアミノ基、アミド基およびウレァ基力 なる群より選ばれた少なくとも 1種を有 する脂肪族モノマーまたは芳香族モノマーである固体高分子電解質膜である。
[0008] 前記固体高分子電解質膜においては、前記酸性基を有するモノマーと前記塩基 性基を有するモノマーに中性モノマー(以下、 Nモノマーということがある)をさらに加
えて共重合させること、前記酸性基を有するモノマーと前記塩基性基を有するモノマ 一に架橋性モノマー(以下、 Cモノマーということがある)をさらにカ卩えて共重合させる こと、前記酸性基を有するモノマーと前記塩基性基を有するモノマーの官能基当量 数の比が 20/80〜80/20であること、共重合させる全モノマー中の前記酸性基を有 するモノマーと前記塩基性基を有するモノマーの含有量が 10〜90重量%であること 、前記酸性基を有するモノマー力 アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、スチレン スルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)ァリルスルホン酸、アツシドホスホシキエチルメ タクリレート、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、またはフマル酸であること、前記塩基 性基を有するモノマー力 アクリルアミド、ァリルァミン、ビニルピロリドン、ビニルイミダ ゾール、 N—プロピルアクリルアミド、 N—ブチルアクリルアミド、 N—ビュルホルムアミ ド、ビュルピリジン、またはジメチルアミノエチル (メタ)アタリレートであること、前記中 性モノマー力 2—ヒドロキシェチル (メタ)アタリレート、アクリロニトリル、酢酸ビュル、 スチレン、ヒドロキシプロピル (メタ)アタリレート、またはポリエチレングリコールモノ(メタ )アタリレートであること、前記架橋性モノマー力 テトラエチレングリコールジ (メタ)ァ タリレート、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ (メタ)アタリレート、ジェチ レングリコールジ(メタ)アタリレート、トリエチレングリコールジ (メタ)アタリレート、ノナ エチレングリコールジ (メタ)アタリレート、またはジビュルベンゼンであることがそれぞ れ好ましい。
[0009] また、前記固体高分子電解質膜にお!ヽては、前記重合組成物にマトリックスを形成 する前記中性モノマーをさらに加えて重合させること、前記酸性基を有するモノマー 力 S4級アンモ-ゥム化されて 、ること(以下、 モノマーと!/、うことがある)、マトリック スを形成する前記中性モノマーに前記架橋性モノマーを加えて共重合させることが それぞれ好ましい。
[0010] また、本発明の第 2の態様は、前記固体高分子電解質膜と、この固体高分子電解 質膜を挟む正極および負極とを備える燃料電池である。
[0011] なお、本明細書においては、「アクリル酸」と「メタクリル酸」を総称して (メタ)アクリル 酸といい、「アタリレート」と「メタタリレート」を総称して (メタ)アタリレートといい、「ァリル 」と「メタリル」を総称して (メタ)ァリルと 、う。
発明の効果
[0012] 本発明によれば、特定の酸性基を有するモノマーと特定の塩基性基を有するモノ マーとを共重合してなる組成物を含有することにより、プロトン伝導性、およびメタノー ル阻止性に優れた特定性状の固体高分子電解質膜が得られる。また、前記組成物 をマトリックスを形成する中性モノマー中に溶解させ、このマトリックスを形成する中性 モノマーをさらに重合させることにより、プロトン伝導性、メタノール阻止性、および膜 強度に優れた特定性状の固体高分子電解質膜が得られる。これらの固体高分子電 解質膜は燃料電池用、特に DMFC用固体高分子電解質膜として有用である。また、 本発明の固体高分子電解質膜の製造は簡便であり、安価に製造することができる。 図面の簡単な説明
[0013] [図 1]本発明の固体高分子電解質膜を備える燃料電池の一例を示す側面図である。
符号の説明
[0014] 1 · · ·固体高分子電解質膜、 2a · · ·正極、 2b · · ·負極、 3 · · ·ガス拡散層
発明を実施するための最良の形態
[0015] 本発明における酸性基を有するモノマーは、スルホン酸基、ホスホン酸基または力 ルポキシル基を有するモノマーであれば良く、これら異種のモノマーを複数種混合し て用いても良い。また、炭素に結合している水素原子の一部もしくは、全てがフッ素 原子と置換していても良い。
[0016] 具体的には、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビュル スルホン酸、(メタ)ァリルスルホン酸、アツシドホスホシキエチルメタタリレート、(メタ) アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸などが例示できる力 これらに限定されるもの ではなぐスルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボキシル基からなる群より選ばれた 少なくとも 1種を有する脂肪族モノマーであれば良 、。
[0017] 本発明における 4級アンモ-ゥム化された酸性基を有するモノマーは、上述した酸 性基を有するモノマーを 4級アンモ-ゥム化されたィ匕合物である。 4級アンモ-ゥム化 するためのアミンィ匕合物としては、トリメチルァミン、トリェチルァミン、トリブチルァミン 、トリへキシルァミンまたは各種誘導体などを例示することができるが、これらに限定さ
れるものではなく、酸性基を有するモノマーと 4級アンモ -ゥム化合物を形成するもの であれば良い。
4級アンモ-ゥム化された酸性基を有するモノマーは、有機溶媒に対する溶解性が 向上する。よって、重合条件により好適に用いられる。以下、本明細書に記載の酸性 基を有するモノマーは、 4級アンモ-ゥム化された酸性基を有するモノマーを含む。
[0018] 本発明における塩基性基を有するモノマーは、アミノ基、アミド基、またはウレァ基 を有するモノマーであれば良ぐこれらの異種のモノマーを複数種混合して用いても 良い。また、炭素に結合している水素原子の一部もしくは、全てがフッ素原子と置換 していても良い。
[0019] 具体的には、アクリルアミド、ァリルァミン、ビュルピロリドン、ビュルイミダゾール、 N プロピルアクリルアミド、 N ブチルアクリルアミド、 N—ビュルホルムアミドビュルピ リジン、またはジメチルアミノエチル (メタ)アタリレート等、およびこれらの誘導体を例 示することができる。また芳香族環を有するモノマーなどが例示できるが、これらに限 定されるものではなくアミノ基、アミド基、およびウレァ基力 なる群より選ばれた少な くとも 1種を有する脂肪族モノマーまたは芳香族モノマーとして形成されるものであれ ばよい。
[0020] 本発明における中性モノマーとしては、 2-ヒドロキシェチル (メタ)アタリレート、アタリ 口-トリル、酢酸ビュル、スチレン、ヒドロキシプロピル(メタ)アタリレート、ポリエチレン グリコールモノ (メタ)アタリレートを例示することができる。好適には、 2-ヒドロキシェチ ル (メタ)アタリレート、アクリロニトリル、酢酸ビュル、スチレン等、およびこれらの誘導 体を例示することができるが、これらに限定されるものではなぐ単独で重合可能な、 または上記の酸性基を有するモノマーおよび Zまたは塩基性基を有するモノマーな どの他のモノマーと共重合可能な脂肪族モノマーまたは芳香族モノマーであれば良 い。
[0021] 本発明における架橋性を有するモノマーとしては、テトラエチレングリコールジ (メタ )アタリレート、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ (メタ)アタリレート、ジ エチレングリコールジ (メタ)アタリレート、トリエチレングリコールジ (メタ)アタリレート、 またはノナエチレングリコールジ (メタ)アタリレート、ジビュルベンゼン等が例示できる
力 これらに限定されるものではなぐ単独で、または酸性基を有するモノマーおよび
Zまたは塩基性基を有するモノマーなどの他のモノマーと架橋構造を形成する目的 を達成するものであればよい。また、中性モノマーを添加した場合も、これと架橋構造 を形成してよい。
[0022] 上述の酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーとは複数種混合しても 良い。酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーとを混合する際、これら の官能基当量数の比 (酸性基を有するモノマー中の酸性基の当量数 Z塩基性基を 有するモノマー中の塩基性基の当量数)は 20Z80〜80Z20であり、好適には 30 Ζ70〜70Ζ30、更に好適には 40Ζ60〜60Ζ40である。官能基当量数の比が 20 Ζ80〜80Ζ20の範囲内である場合は十分なメタノール阻止性が得られる。なお、 官能基当量数はモノマーの官能基数として求められる。また、官能基の当量数は中 和滴定により求めることができる。
[0023] 全モノマー(すなわち、酸性基を有するモノマー、塩基性基を有するモノマー、中性 モノマー、および架橋性モノマー)中の酸性基を有するモノマー含有量と塩基性基を 有するモノマー含有量を合わせた含有量は、 10〜90重量%であり、好適には 12〜 80重量%であり、更に好適には 15〜70重量%である。全モノマー中の酸性基を有 するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量が 10%以上である場合、十分な イオン伝導度が得られる。一方、全モノマー中の酸性基を有するモノマーと塩基性基 を有するモノマーの含有量が 90%以下である場合は、重合反応を制御することが容 易であり、溶剤に可溶なポリマーが得られ、膜を形成することが可能となる。
[0024] 中性モノマーの添カ卩量は、全モノマーの重量に対して 0〜89重量%である。好適 には 10〜80重量%、さらに好適には 20〜70重量%である。中性モノマーの添カロ量 が 89重量%以下である場合、十分なイオン伝導性が得られる。
[0025] 架橋性モノマーの添加量は、酸性基を有するモノマーおよび塩基性基を有するモ ノマーのモル数と中性モノマーのモル数との合計量の 1〜30モル0 /0、好適には 2〜2 0モル0 /0、さらに好適には 3〜15モル0 /0である。架橋性モノマーの添カ卩量が 1モル0 /0 以上の場合、十分な架橋効果が得られる。また、架橋性モノマーの添加量が 30モル %以下である場合、膜強度に優れたポリマーとなり、自立膜を形成することができる。
[0026] 本発明における酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーは通常、水 溶液またはアルコール溶液の状態で重合反応器に所定量入れられ、混合攪拌しな がら重合反応され、これにより、均一な重合組成物が得られる。上記モノマーに加え て、中性モノマーおよび架橋性モノマーを上記重合反応器に一括添加することもで きる。また、酸性基を有するモノマー、塩基性基を有するモノマー、中性モノマー、架 橋性モノマーを逐次添加する方法を採用することもできる。これら技術については当 該事業者の通常の方法を用いることができる。さらに、重合反応終了後、酸化防止剤 (ラジカル捕捉剤やハイド口パーオキサイド分解剤など)や着色剤などの他の添加剤 を一緒に混合しても良い。このようにして調製した重合組成物を製膜することによって 目的の固体高分子電解質膜を得ることができる。
なお、全モノマーを重合反応器に一括添加する場合には、酸性基を有するモノマ 一は 4級アンモ-ゥム化されて!/、な!/、ことが好まし!/、。
[0027] 本発明によれば、上記重合組成物の溶液と、マトリックスを形成する中性モノマーの 溶液とを混合して、マトリックスを形成する中性モノマーを重合してもよい。また、重合 組成物とマトリックスを形成する中性モノマーの混合溶液に架橋性モノマーを添加し て、マトリックスを形成するモノマーと架橋性モノマーとを共重合しても良い。
なお、重合組成物にマトリックスを形成する中性モノマー、またはマトリックスを形成 する中性モノマーおよび架橋性モノマーを添加して重合させる場合には、この重合 組成物が酸性基を有するモノマーおよび塩基性基を有するモノマー力 なることが 好ましい。また、マトリックスを形成する中性モノマーの具体例としては、中性モノマー として例示された上記化合物が挙げられる。
[0028] このように (Aまたは +B)の重合組成物をまず調製しておき、つぎに該重合組 成物に Nモノマーまたは Nモノマーおよび Cモノマーを添カ卩して重合することによって 、(Aまたは A +B)の重合組成物と、 Nポリマーまたは(N + C)ポリマーとがお互い に相互貫入した IPNポリマー (相互貫入網目構造ポリマー)が得られる。このようにし て得られた IPNポリマーは、機械的強度にも優れる。
[0029] 本発明において好適に採用される重合方法はキャスト重合法である。このキャスト 重合法について、以下に説明する。 2枚のガラス板に、膜厚調整および気密性のた
めにテフロン (登録商標)パッキンを挟み、これらガラス板の間に重合開始剤および 重合溶媒を含むモノマー組成物、または重合組成物とモノマー組成物の混合物を加 え、熱、光、電子線等にて重合を開始する。所定時間後、重合反応を終了させ、ガラ ス板より重合物、すなわち固体高分子電解質膜を取り出せばょ 、。
[0030] なお、ガラス板と重合物との剥離性を向上させるために、剥離剤を添加しても良い。
内部剥離剤として、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛などが使用できる。外部離型剤と しては、(株)佐鳴および中京化成工業 (株)のカタログに記載の外部離型剤を使用 することができる。例えば、ミラーグレーズ (佐鳴社製)、ペリコート S6、ペリコート MD 8 (中京化成工業社製)などを例示することができるが、これらに限定されるものではく 、剥離性の良いものであればよい。また、剥離剤に代えてポリエチレン、ポリプロピレ ン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩ィ匕ビユリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミドなどの フィルムをガラス板上に設けて使用することもできる。
[0031] 全モノマーは一般的に溶剤中で混合される。この溶剤としては、水、メタノール、ェ タノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルァセトアミド、ジメチルホ ルムアミドなどが使用できるが、これらに限定されるものではなぐ重合反応が制御で きるものであればよい。好適には、水、メタノールが良ぐさらに好適には環境面から も水が優れている。
[0032] 重合は、熱、光、電子線等により開始することができる。熱重合の場合は、ラジカル 重合開始剤、カチオン重合開始剤、ァ-オン重合開始剤が使用でき、好適にはラジ カル開始剤が使用される。光重合の場合は、光増感剤および重合開始剤の組合せ で行われるのが一般的であり、例えば、 日本油脂 (株)社カタログ記載の有機過酸ィ匕 物、ァゾィ匕合物も使用することができる。水を重合溶媒に使用した場合、水溶性のラ ジカル開始剤を使用することができ、和光純薬工業 (株)社のカタログ記載の VA— 0 44、 V— 50、 VA— 086など力 S好適に使用される。
[0033] 重合開始剤の添加量は、それぞれの重合条件にもよる力 全モノマーの添加量の 合計 100重量部に対して 0. 001〜2重量部、好適には 0. 01〜1重量部、さらに好 適には 0. 05-0. 5重量部である。重合温度は、 0°C〜120°C力 好適には、 20°C 〜100°Cが、さらに好適には 30°C〜80°Cが適当である力 モノマー組成、得られた
重合物の物性、工程時間等により適宜選択すればよい。
[0034] マトリックスを形成する中性モノマーの添カ卩量は、全モノマーの総重量に対して 10 〜80重量%である。好適には 15〜75重量%、さらに好適には 20〜70重量%であ る。マトリックスを形成する中性モノマーの使用量が 10%以上である場合、十分な膜 強度が得られる。また、 80重量%以下である場合、十分なイオン伝導性が得られる。
[0035] 上記のようにして作製された固体高分子電解質膜のイオン伝導度は 1 X 10"2S/c m以上であり、好適には 1. 5 X 10— Zcm以上、更に好適には 2 X 10— Zcm以上 である。
[0036] さらに、上記固体高分子電解質膜のメタノール透過速度は 2mgZcm2Zmin以下 でめり、好適には 1. 8mg/ cm Z min以下、 らに好適には 1. 6mg/ cm / min以 下である。
[0037] 図 1に示すように、本発明の固体高分子電解質膜 1を、正極 2aおよび負極 2bとで 挟むことにより、高いイオン伝導性を保持しつつ、メタノール阻止性に優れた燃料電 池が得られる。また、正極 2aおよび負極 2bの表面には、ガス拡散層 3を設けてもよい 。このガス拡散層 3により、発電に使用されるメタノール、酸素などのガスが、正極 2a および負極 2bの表面において拡散されて均一に分布する。
実施例
[0038] 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する力 本発明はこれら実施 例により限定されるものではな 、。なお、実施例および比較例における部および%は 、特に断らない限り重量基準である。各種測定は、次のようにして行った。
[0039] イオン伝 沏 I定
本発明の固体高分子電解質膜 1のイオン伝導度の測定は、次のような方法に従つ た。先ず、英国ソーラトロン社製のインピーダンスアナライザー SI1260型を用い、 25 °Cで高周波インピーダンス測定を行った。次に、 Cole— Coleプロットより直流成分 R を読み取り、プロトン伝導度 (すなわちイオン伝導度)を算出した。なお、 Cole— Cole プロットとは、物質の配向分極を示すための、複素比の実部対虚部の円弧グラフをい 蒸留水に十分に浸漬させたナフイオン 117 (商品名、デュポン社製)のイオン伝導
度は 1. 7 X 10 SZcmであった。
[0040] メタノール诱渦谏度測定
本発明の固体高分子電解質膜 1のメタノール透過性の測定は、次のような方法に 従った。固体高分子電解質膜 1を連通管の真ん中に挟み、片方に 30%メタノール水 溶液 100mlを、もう片方にイオン交換水 100mlを仕込み、 40°Cの恒温水槽に浸した 。水側に浸透してくるメタノールをガスクロマトグラフにより定量し、メタノール透過速度 (mgz cm Z min)を算出した。
蒸留水に十分に浸漬させたナフイオン 117 (商品名、デュポン社製)の 30%メタノー ル水溶液でのメタノール透過速度は、 4. OmgZcm2Zminであった。
[0041] 実施例 1
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 0. 83g (4. Ommol)、 50%—ァ クリルアミド水溶液 0. 57g (4. Ommol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有す るモノマーの官能基当量数の比: 50Z50、全モノマー組成物中に占める酸性基を 有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 17重量%)、 2—ヒドロキシェ チルメタタリレート 4. 42g (34. Ommol)、テトラエチレングリコールジメタタリレート 0. 90g (2. 7mmol)、水 3. 35gおよび重合開始剤 V— 50の 10%水溶液を 0. 14g添 加して重合用溶液を調製した。 2枚のガラス板の各片面に外部離型剤としてペリコ一 ト MD8を塗り、これらの面が相対するように、 0. 5mmのテフロン(登録商標)パッキン を介して貼り合わせた (キャスト重合装置)。先に調製した重合用溶液を脱気し、これ をキャスト重合装置の上方より静かに流し込み、 50°Cの温浴に 6時間浸漬し重合させ た。重合終了後、キャスト重合装置より重合物 (膜)を取り出した。この際、重合物 (膜) のガラス板からの剥離性は良好であった。次に、この膜状重合物の両側に白金電極 を装着し、イオン伝導度を測定した。その結果、 2. 6 X 10_2SZcmであった。次に、 メタノール透過速度を測定した結果、 1. 05mgZcm2Zminであった。
[0042] 比較例 1
50%—アクリルアミド水溶液 1. 42g (10. Ommol) (酸性基を有するモノマーと塩 基性基を有するモノマーの官能基当量数の比: 0Z100、全モノマー組成物中に占 める酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 10重量0 /0)、 2
—ヒドロキシェチルメタタリレート 5. 20g (40. Ommol)、テトラエチレングリコールジメ タクリレート 1. 52g (4. 5mmol)、水 2. 50gおよび重合開始剤 V— 50の 10%水溶液 を 0. 09g添加して重合用溶液を調製し、その後は実施例 1と同様の操作を行った。 得られた重合物 (膜)のイオン伝導度は 1. 2 X 10_5SZcmで、 30%メタノール水溶 液でのメタノール透過速度を測定した結果、 4. 8mgZcm2Zminであった。
[0043] 比較例 2
2 アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 1. 24g (6. Ommol) (酸性基を 有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの官能基当量数の比: 100Z0、全モノ マー組成物中に占める酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有 量: 16重量0 /0)、 2 ヒドロキシェチノレメタタリレート 5. 20g (40. Ommol)、テトラェチ レングリコールジメタクリレート 1. 52g (4. 5mmol)、水 2. 50gおよび重合開始剤 V —50の 10%水溶液を 0. 09g添加して重合用溶液を調製し、その後は実施例 1と同 様の操作を行った。得られた重合物 (膜)のイオン伝導度は 1. 8 X 10_2SZcmで、 3 0%メタノール水溶液でのメタノール透過速度を測定した結果、 8. 8mg/cmVmin であった。
[0044] 実施例 2
実施例 1の 2—アクリルアミド 2—メチルプロパンスルホン酸に代えて、スチレンス ルホン酸ナトリウムの 20%水溶液 4. 12g (4. Ommol) (酸性基を有するモノマーと塩 基性基を有するモノマーの官能基当量数の比: 50Z50、全モノマー組成物中に占 める酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 17重量0 /0)を添 カロして、以下同様に重合させた。無色透明の膜が得られ、この膜を 0. 5mol硫酸に 一晚浸漬し、酸型に替え、水洗後一晚蒸留水に浸漬させた。このようにして得られた 重合物(膜)のイオン伝導度は 2. 1 X 10_2SZcmで、 30%メタノール水溶液でのメ タノール透過速度を測定した結果、 1. 8mgZcm2Zminであった。
[0045] 実施例 3
2 アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 0. 17g (0. 8mmol)、 50% ァ クリルアミド水溶液 1. 02g (7. 2mmol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有す るモノマーの官能基当量数の比: 10Z90、全モノマー組成物中に占める酸性基を
有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 11重量%)、 2—ヒドロキシェ チルメタタリレート 4. 42g (34. Ommol)、テトラエチレングリコールジメタタリレート 0. 90g (2. 7mmol)、水 3. 35gおよび重合開始剤 V— 50の 10%水溶液を 0. 14g添 加して重合用溶液を調製し、その後は実施例 1と同様の操作を行った。得られた重 合物(膜)のイオン伝導度は 2. 0 X 10_3SZcmで、 30%メタノール水溶液でのメタノ ール透過速度を測定した結果、 4. 3mgZcm2Zminであった。
[0046] 実施例 4
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 0. 41g (2. Ommol)、 50%—ァ クリルアミド水溶液 0. 28g (2. Ommol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有す るモノマーの官能基当量数の比: 50Z50、全モノマー組成物中に占める酸性基を 有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 6. 6重量0 /0)、 2—ヒドロキシ ェチルメタタリレート 7. 24g (55. 6mmol)、メチレンビスアクリルアミド 0. 55g (3. 57 mmol)、水 2. 49gおよび重合開始剤 V— 50の 10%水溶液を 0. 08g添カ卩して重合 溶液を調製し、その後は実施例 1と同様の操作を行った。得られた重合物 (膜)のィ オン伝導度は 1. 0 X 10_3SZcmで、 30%メタノール水溶液でのメタノール透過速 度を測定した結果、 0. 8mgZcm2Zminであった。
[0047] 実施例 5
テトラエチレングリコールジメタタリレート (架橋性モノマー)を添加しな 、こと以外は 実施例 1と同様の操作を行い重合させ (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有する モノマーの官能基当量数の比:50750、全モノマー組成物中に占める酸性基を有 するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 20重量%)、無色透明の重合 物 (膜)が得られた。得られた重合物 (膜)のイオン伝導度は 3. 6 X 10_2SZcmであ つた o
[0048] 実施例 6
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 4. 66g (22. 5mmol)、アクリル アミド 9. 07g (127mmol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの 官能基当量数の比: 15Z85、全モノマー組成物中に占める酸性基を有するモノマ 一と塩基性基を有するモノマーの含有量: 76重量0 /0)とテトラエチレングリコールジメ
タクリレート 4. 38g (13. Ommol)、水 5. 81gおよび重合開始剤 V— 50の 10%水溶 液を 0. 27g添加して重合用溶液を調製し、その後は実施例 1と同様の操作を行った 。得られた重合物 (膜)のイオン伝導度は 4. 4 X 10_2SZcmで、 30%メタノール水 溶液でのメタノール透過速度を測定した結果、 1. lmgZcm2Zminであった。
[0049] 実施例 7
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 3. 73g (18. Ommol)、 50%— アクリルアミド水溶液 2. 56g (18. Ommol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有 するモノマーの官能基当量数の比: 50Z50、全モノマー組成物中に占める酸性基 を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 27重量0 /0)、 2—ヒドロキシ ェチルメタタリレート 9. 37g (72. Ommol)、アクリロニトリル 0. 64g (12mmol)、テト ラエチレングリコールジメタタリレート 3. 51g (10. 4mmol)、水 4. 71gおよび重合開 始剤 V— 50の 10%水溶液を 0. 21g添加して重合用溶液を調製し、その後は実施例 1と同様の操作を行った。得られた重合物 (膜)のイオン伝導度は 3. 9 X 10"2S/cm で、 30%メタノール水溶液でのメタノール透過速度を測定した結果、 1. 3mg/cm2 Z minで teつた。
[0050] 実施例 8
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 3. 73g (18. Ommol)、 50%— アクリルアミド水溶液 2. 56g (18. Ommol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有 するモノマーの官能基当量数の比: 50Z50、全モノマー組成物中に占める酸性基 を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 24重量0 /0)、 2—ヒドロキシ ェチルメタタリレート 6. 25g (48. Ommol)、酢酸ビュル 3. 10g (36mmol)、テトラエ チレングリコールジメタタリレート 3. 51g (10. 4mmol)、水 4. 49gおよび重合開始剤 V— 50の 10%水溶液を 0. 21g添加して重合用溶液を調製し、その後は実施例 1と 同様の操作を行った。得られた重合物 (膜)のイオン伝導度は 9. 2 X 10_2SZcmで 、 30%メタノール水溶液でのメタノール透過速度を測定した結果、 1. Omg/cmV millで teつた。
[0051] 実施例 9
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 3. 73g (18. Ommol)、 50%—
アクリルアミド水溶液 2. 56g (18. Ommol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有 するモノマーの官能基当量数の比: 50Z50、全モノマー組成物中に占める酸性基 を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 28重量0 /0)、 2—ヒドロキシ ェチルメタクリレー卜 9. 63g (74. Ommol)、スチレン 1. 04g (10mmol)、テ卜ラエチ レングリコールジメタクリレート 3. 51g (10. 4mmol)、水 4. 93gおよび重合開始剤 V —50の 10%水溶液を 0. 21g添加して重合用溶液を調製し、その後は実施例 1と同 様の操作を行った。得られた重合物 (膜)のイオン伝導度は 4. 9 X 10_2SZcmで、 3 0%メタノール水溶液でのメタノール透過速度を測定した結果、 1. 2mg/cmVmin であった。
[0052] 実施例 10
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 2. 07g (10. Ommol)、ァリルアミ ン 0. 57g (10. Ommol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの官 能基当量数の比: 50Z50、全モノマー組成物中に占める酸性基を有するモノマーと 塩基性基を有するモノマーの含有量: 17重量0 /0)、 2—ヒドロキシェチルメタタリレート 10. 41g (80. Ommol)、テトラエチレングリコールジメタタリレート 2. 14g (6. 4mmol )および重合開始剤 V— 50の 10%水溶液を 0. 24g添加して重合用溶液を調製し、 その後は実施例 1と同様の操作を行った。得られた重合物 (膜)のイオン伝導度は 2. 1 X 10_3SZcmで、 30%メタノール水溶液でのメタノール透過速度を測定した結果 、 2. 2mgZ cm / minであった。
[0053] 実施例 11
実施例 10のァリルアミンを 1—ビュル— 2—ピロリドン 1. l lg (10. Ommol) (酸性 基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの官能基当量数の比: 50Z50、全 モノマー組成物中に占める酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの 含有量: 20重量%)に変えた以外は実施例 10と同様に行った。得られた重合物 (膜) のイオン伝導度は 2. 7 X 10_2S/cmで、 30%メタノール水溶液でのメタノール透過 速度を測定した結果、 1. 7mgZcm2Zminであった。
[0054] 実施例 12
実施例 10のァリルアミンを 1—ビュルイミダゾール 0. 94g (10. Ommol) (酸性基を
有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの官能基当量数の比: 50Z50、全モノ マー組成物中に占める酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有 量: 19重量%)に変えた以外は実施例 10と同様に行った。得られた重合物 (膜)のィ オン伝導度は 1. 3 X 10_3S/cmで、 30%メタノール水溶液でのメタノール透過速 度を測定した結果、 1. 4mgZcm2Zminであった。
[0055] 実施例 13
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 0. 83g (4. Ommol)、 50%—ァ クリルアミド水溶液 0. 57g (4. Ommol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有す るモノマーの官能基当量数の比: 50Z50、全モノマー組成物中に占める酸性基を 有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 100重量%)と水 2. 59gおよ び重合開始剤 V— 50の 10%水溶液を 0. 08g添加し、以下実施例 1と同様に行った 。重合物 (膜)のイオン伝導度は 1. 7 X 10_1SZcmであった。
[0056] 実施例 14
アクリル酸 1. 08g (15mmol)、ァリルアミン 0. 57g (10mmol) (酸性基を有するモ ノマーと塩基性基を有するモノマーの官能基当量数の比: 40Z60、全モノマー組成 物中に占める酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの含有量: 11重 量0 /0)、 2—ヒドロキシエチレンメタタリレート 8. 46g (65mmol)、ノナエチレングリコー ルジメタタリレート 5. 36g (10mmol)と水 21. 5gおよび重合開始剤 V— 50の 10%水 溶液を 0. 24g添加し、以下実施例 1と同様に行った。重合物 (膜)のイオン伝導度は 1. l X 10_2SZcmで、 30%メタノール水溶液でのメタノール透過速度を測定した結 果、 0. 9mgZ cm / minであつ 7こ。
[0057] 実施例 15 酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーとの共重合
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 5. 18g (0. 025mol)、 50%—ァ クリルアミド水溶液 7. l lg (0. 05mol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有する モノマーの官能基当量数の比:33Z67)、水 75. Ogおよび重合開始剤 V— 50の 10 %水溶液を 0. 33gを 200mlセパラブルフラスコに仕込み、窒素ガスを吹き込みつつ 重合温度 50°Cで 4時間重合させた。これをポリマー Aとし、ポリマー濃度 10%で、無 色透明で粘稠な液体が得られた。この液体をポリマー溶液 Aとし、実施例 19で使用
した。
[0058] 実施例 16 酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーとの共重合
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 10. 7g (0. O52mol)、 50%—ァ クリルアミド水溶液 7. 4g (0. O52mol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有する モノマーの官能基当量数の比:50Z50)と水 14. 3gを滴下ロートに仕込んだ。 200 mlセパラブルフラスコには水 50. 8gを仕込み、窒素ガスを吹き込みつつ重合温度 5 0°Cに昇温し、滴下ロート中のモノマー溶液と重合開始剤 V— 50の 10%水溶液 5. 3 gとを 1時間かけて重合フラスコ中に加え、その後 4時間重合反応を継続させた。これ をポリマー Bとし、ポリマー濃度 16. 2%で、無色透明で粘稠な液体が得られた。この 液体をポリマー溶液 Bとし、実施例 20で使用した。
[0059] 実施例 17 4級アンモニゥム化されている酸性基を有するモノマーと塩基性基を有す るモノマーとの共重合
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 10. 4g (0. 05mol)、アクリルアミ ド 3. 56g (0. 05mol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの官能 基当量数の it : 50/50)、トリエチノレアミン 6. lg (0. 06mol)とをアセトン 20gに溶解 させ、滴下ロートに仕込んだ。 200mlセパラブルフラスコにはアセトン 40mlを仕込み 、窒素ガスを吹き込みつつ重合温度 50°Cに昇温し、滴下ロート中のモノマー溶液と 重合開始剤ァゾビスイソブチ口-トリルの 10%アセトン溶液 4. Ogとを 1時間かけて重 合フラスコ中に加え、その後 4時間重合反応を継続させた。重合の進行と共に、白色 粉末状のポリマーが生成し、重合終了後、重合物をろ過、アセトン洗浄し、乾燥させ て白色粉末状のポリマーを得た。これをポリマー Cとし、実施例 21で使用した。
[0060] 実施例 18 4級アンモニゥム化されている酸性基を有するモノマーと塩基性基を有す るモノマーとの共重合
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 10. 4g (0. 05mol)、アクリルアミ ド 3. 56g (0. 05mol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの官能 基当量数の it : 50/50)、トリブチノレアミン 11. lg (0. 06mol)と 2—ヒドロキシェチ ルメタクリレー卜 13. 0g(0. lOmol)および溶媒の DMSO40gに溶解させ、滴下ロー卜 に仕込んだ。 200mlセパラブルフラスコには DMS022gを仕込み、窒素ガスを吹き
込みつつ重合温度 50°Cに昇温し、滴下ロート中のモノマー溶液と重合開始剤ァゾビ スイソプチ口-トリルの 2%DMSO溶液 20gとを 1時間かけて重合フラスコ中に加え、 その後 4時間重合反応を継続させた。これをポリマー Dとし、ポリマー濃度 31. 1%で 、微黄色透明で粘稠な液体が得られた。この液体をポリマー溶液 Dとし、実施例 22 および 23で使用した。
[0061] 実施例 19 固体高分子電解質膜 1の製造 (キャスト重合)
実施例 15で得られたポリマー溶液 A4. 21g、 2—ヒドロキシェチルメタタリレート 2. 65g、テトラエチレングリコールジメタクリレート 0. 44gおよび重合開始剤 V— 50の 10 %水溶液 0. 04gを加え、キャスト重合用溶液を調製した (ポリマー A濃度 5. 6%)。 2 枚のガラス板の各片面に外部離型剤としてペリコート MD8を塗り、これらの面が相対 するように、 0. 5mmのテフロン (登録商標)パッキンを介して貼り合わせた (キャスト重 合装置)。先に調製したキャスト重合用溶液を脱気し、これをキャスト重合装置の上方 より静かに流し込み、 50°Cの温浴に 6時間浸漬し重合させた。重合終了後、キャスト 重合装置より重合物 (膜)を取り出し、無色透明で平滑性に優れた膜が得られた。こ の際、重合物 (膜)のガラス板力もの剥離性は良好であった。次に、この膜状重合物 の両側に白金電極を装着し、イオン伝導度を測定した。その結果、 3. 1 X 10"4S/c mであった。次に、メタノール透過速度を測定した結果、 3. lmgZcm2Zminであつ た。
[0062] 実施例 20 固体高分子電解質膜 1の製造 (キャスト重合)
実施例 16で得られたポリマー溶液 B2. 99g、 2—ヒドロキシェチルメタタリレート 5. 20g、テトラエチレングリコールジメタタリレート 0. 86gおよび重合開始剤 V— 50の 10 %水溶液 0. 10gを添加してキャスト重合用溶液を調製した (ポリマー B濃度 5. 3%)。 その後は実施例 19と同様に行い、重合終了後、キャスト重合装置より重合物 (膜)を 取り出し、無色透明で平滑性に優れた膜が得られた。この膜状重合物の両側に白金 電極を装着し、イオン伝導度を測定した。その結果、 8. 1 X 10_4S/cmであった。 次に、メタノール透過速度を測定した結果、 1. 4mgZcm2Zminであった。
[0063] 実施例 21 固体高分子電解質膜 1の製造 (キャスト重合)
実施例 17で得られたポリマー Cを DMSOに溶解させ、 15%溶液とした。この DMS
O溶液 5. 93g、アクリロニトリル 2. 12g (40mmol)、テトラエチレングリコールジメタク リレート 0. 86g (2. 55mmol)および重合開始剤 V— 50の 2%エタノール溶液 0. 25 gを添加してキャスト重合用溶液を調製した (ポリマー C濃度 9. 7%)0その後は実施例 19と同様に行い、重合終了後、キャスト重合装置より重合物 (膜)を取り出した。この 膜状重合物は、ほぼ無色透明で平滑性に優れていた。この膜状重合物を一晩、ァセ トンに浸漬し、その後 0. 5mol硫酸に一日浸漬、その後十分に水洗して固体高分子 電解質膜 1を得た。この膜のイオン伝導度は 2. 9 X 10_3S/cmで、メタノール透過 速度は 0. 34mgZcm2Zminであった。
[0064] 実施例 22 固体高分子電解質膜 1の製造 (キャスト重合)
実施例 18で得られたポリマー溶液 D4. 14g、 2—ヒドロキシェチルメタタリレート 3. 25g (25. Ommol)、テトラエチレングリコールジメタタリレート 0. 54g (l . 6mmol)お よび重合開始剤ァゾビスイソブチ口-トリルの 2%DMSO溶液 0. 25gを添カ卩してキヤ スト重合用溶液を調製した (ポリマー D濃度 15. 7%)0その後は実施例 19と同様に行 い、重合終了後、キャスト重合装置より重合物 (膜)を取り出した。この膜状重合物は 、ほぼ無色透明で平滑性に優れていた。この膜状重合物を一晩、アセトンに浸漬し、 次に 0. 5mol硫酸に一日浸漬、その後十分に水洗して固体高分子電解質膜 1を得 た。この膜のイオン伝導度は 1. 5 X 10_2S/cmで、メタノール透過速度は 1. 8mg
[0065] 実施例 23 固体高分子電解質膜 1の製造 (キャスト重合)
実施例 18で得られたポリマー溶液 D3. 30g、アクリロニトリル 2. 66g (50. Ommol) 、テトラエチレングリコールジメタタリレート 1. 07g (3. 2mmol)および重合開始剤ァ ゾビスイソブチ口-トリルの 2%DMSO溶液 0. 30gを添カ卩してキャスト重合用溶液を 調製した (ポリマー D濃度 14. 1%)。その後は実施例 19と同様に行い、重合終了後 、キャスト重合装置より重合物 (膜)を取り出した。この膜状重合物は、ほぼ無色透明 で平滑性に優れていた。この膜状重合物を一晩、アセトンに浸漬し、その後 0. 5mol 硫酸に一日浸漬、その後十分に水洗して固体高分子電解質膜 1を得た。この膜のィ オン伝導度は 2. 3 X 10_3SZcmで、メタノール透過速度は 0. 2mgZcm2Zminで めつ 7こ。
[0066] 実施例 24 酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーとの共重合 スチレンスルホン酸ナトリウムの 20%水溶液 25. 8g (0. O25mol)、 50%—アクリル アミド水溶液 7. l lg (0. O5mol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノ マーの官能基当量数の比:33Z67)、水 10. Ogおよび重合開始剤 V— 50の 10% 水溶液 0. 33gを 200mlセパラブルフラスコに仕込み、窒素ガスを吹き込みつつ重合 温度 50°Cで 4時間重合させた。これをポリマー Eとし、ポリマー濃度 20. 2%で、無色 透明で粘稠な液体が得られた。この液体をポリマー溶液 Eとし、実施例 25で使用した
[0067] 実施例 25 固体高分子電解質膜 1の製造 (キャスト重合)
実施例 24で得られたポリマー溶液 E5. 41g、 2—ヒドロキシェチルメタタリレート 2. 65g、テトラエチレングリコールジメタクリレート 0. 44gおよび重合開始剤 V— 50の 10 %水溶液 0. 04gを加え、キャスト重合用溶液を調製した (ポリマー E濃度 12. 8%)。 2 枚のガラス板の片面に外部離型剤としてペリコート MD8を塗り、これらの面が相対す るように、 0. 5mmのテフロン (登録商標)パッキンを介して貼り合わせた (キャスト重合 装置)。先に調製したキャスト重合用溶液を脱気し、これをキャスト重合装置の上方よ り静かに流し込み、 50°Cの温浴に 6時間浸漬し重合させた。重合終了後、キャスト重 合装置より重合物 (膜)を取り出し、無色透明で平滑性に優れた膜が得られた。その 後 0. 5mol硫酸に一日浸漬、その後十分に水洗して固体高分子電解質膜 1を得た。 この膜のイオン伝導度は 2. 3 X 10_2SZcmで、 30%メタノール水溶液でのメタノー ル透過速度を測定した結果、 1. 7mgZcm2Zminであった。
[0068] 実施例 26 固体高分子電解質膜 1の製造 (キャスト重合)
実施例 19でテトラエチレングリコールジメタタリレート (架橋性モノマー)を添加しな いこと以外は実施例 19と同様の操作を行い重合させ無色透明の重合物 (膜)が得ら れた。得られた重合物 (膜)のイオン伝導度は 3. 6 X 10_3SZcmであった。
[0069] 実施例 27 酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーとの共重合
2—アクリルアミドー 2—メチルプロパンスルホン酸 10. 4g (0. 05mol)、ァリルァミン 2. 85g (0. 05mol) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの官能基 当量数の比: 50Z50)、水 52gおよび重合開始剤 V— 50の 10%水溶液 0. 4gを 20
Omlセパラブルフラスコに仕込み、窒素ガスを吹き込みつつ重合温度 50°Cで 4時間 重合させた。これをポリマー Fとし、ポリマー濃度 20. 3%で、無色透明で粘稠な液体 が得られた。この液体をポリマー溶液 Fとし、実施例 28で使用した。
[0070] 実施例 28 固体高分子電解質膜 1の製造 (キャスト重合)
実施例 27で得られたポリマー溶液 F4. 20g、 2—ヒドロキシェチルメタタリレート 2. 65gとテトラエチレングリコールジメタタリレート 0. 44gおよび重合開始剤 V— 50の 10 %水溶液 0. 10gを添加してキャスト重合用溶液を調製した (ポリマー F濃度 11. 7%) 。その後は実施例 19と同様に行い、重合終了後、キャスト重合装置より重合物 (膜) を取り出し、無色透明で平滑性に優れた膜が得られた。この膜状重合物の両側に白 金電極を装着し、イオン伝導度を測定した。その結果、イオン伝導度は 1. 9 X 10"3S Zcmで、 30%メタノール水溶液でのメタノール透過速度は、 2. 5mgZcm2Zminで めつに。
[0071] 実施例 29 酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーとの重合
実施例 27のァリルアミンを 1—ビュル— 2—ピロリドン 5. 55g (0. 05mol) (酸性基 を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの官能基当量数の比: 50Z50)に変 えた以外は実施例 27と同様に行い、重合物を得た。これをポリマー Gとし、ポリマー 濃度 23. 5%で、無色透明で粘稠な液体が得られた。この液体をポリマー溶液 Gとし 、実施例 30で使用した。
[0072] 実施例 30 固体高分子電解質膜 1の製造 (キャスト重合)
実施例 29で得られたポリマー溶液 G4. 20g、 2—ヒドロキシェチルメタタリレート 2. 65g、テトラエチレングリコールジメタクリレート 0. 44gおよび重合開始剤 V— 50の 10 %水溶液 0. 10gを添加してキャスト重合用溶液を調製した (ポリマー G濃度 13. 3% )。その後は実施例 19と同様に行い、重合終了後、キャスト重合装置より重合物 (膜) を取り出し、無色透明で平滑性に優れた膜が得られた。得られた重合物 (膜)のィォ ン伝導度は 2. 7 X 10_2SZcmで、 30%メタノール水溶液でのメタノール透過速度を 測定した結果、 1. 7mgZcm2Zminであった。
[0073] 実施例 31 酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーとの重合
実施例 29の 1—ビュル— 2—ピロリドンを 1—ビュルイミダゾール 4. 70g (0. 05mol
) (酸性基を有するモノマーと塩基性基を有するモノマーの官能基当量数の比: 50Z 50)に変えた以外は実施例 29と同様に行い、重合物を得た。これをポリマー Hとし、 ポリマー濃度 22. 5%で、無色透明で粘稠な液体が得られた。この液体をポリマー溶 液 Hとし、実施例 32で使用した。
[0074] 実施例 32 固体高分子電解質膜 1の製造 (キャスト重合)
実施例 31で得られたポリマー溶液 H4. 20g、 2—ヒドロキシェチルメタタリレート 2. 65gとテトラエチレングリコールジメタタリレート 0. 44gおよび重合開始剤 V— 50の 10 %水溶液 0. 10gを添加してキャスト重合用溶液を調製した (ポリマー H濃度 12. 8% )。その後は実施例 19と同様に行い、重合終了後、キャスト重合装置より重合物 (膜) を取り出し、無色透明で平滑性に優れた膜が得られた。得られた重合物 (膜)のィォ ン伝導度は 1. 5 X 10_3SZcmで、 30%メタノール水溶液でのメタノール透過速度を 測定した結果、 1. 2mgZcm2Zminであった。
[0075] 実施例および比較例の結果を表 1ないし 3にまとめた。
[表 1]
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産業上の利用可能性
以上のように、本発明の固体高分子電解質膜 1は、燃料電池、固体高分子電解質 型燃料電池用イオン伝導膜、酸化還元電池、電気透析膜、逆浸透膜、ナノ濾過膜、 拡散透析膜、ガス分離膜、浸透気化及び浸透抽出膜、湿度センサ、ガスセンサの分 野に使用され、また、極めて低いメタノール透過性を有し、 DMFC用電解質膜として 使用されるため、産業上有用である。