JP2002083514A - プロトン伝導性膜又はフィルムとそれらを用いてなる燃料電池 - Google Patents

プロトン伝導性膜又はフィルムとそれらを用いてなる燃料電池

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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐久性と機械的強度を有するプロトン伝導性膜
又はフィルムとそれらの製造方法、更には、それらをプ
ロトン交換膜として用いてなる燃料電池を提供する。 【解決手段】本発明によれば、リン酸基、ホスホン酸基
又はホスフィン酸基を側鎖に有するポリマーを多孔質膜
の空孔内に担持させてなることを特徴とするプロトン伝
導性膜が提供される。特に、本発明によれば、リン酸
基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を有するモノマー
を多孔質膜の空孔内で重合させ、側鎖にリン酸基、ホス
ホン酸基又はホスフィン酸基を有するポリマーを生成さ
せると共に、このポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担
持させてなることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供
される。また、本発明によれば、上記プロトン伝導性膜
に残存する空隙の一部又は全部を閉塞してなるプロトン
伝導性フィルムとそのような製造方法が提供される。上
記のほか、本発明によれば、上記プロトン伝導性膜又は
フィルムをプロトン交換膜として用いてなる燃料電池が
提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プロトン伝導性を有す
るプロトン伝導性膜、これより得られるプロトン伝導性
フィルムとそれらの製造方法、更には、それらプロトン
伝導性膜又はフィルムをプロトン交換膜として用いてな
る燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、プロトン伝導性膜は、イオン交換
膜や湿度センサー等の用途に用いられているが、近年、
固体高分子型燃料電池における固体電解質膜としての用
途においても注目を集めている。例えば、デュポン社の
ナフィオン(登録商標)を代表とするスルホン酸基含有
フッ素樹脂膜は、電気自動車や分散型電源用燃料電池に
おける固体電解質としての利用が検討されているが、従
来より知られているこれらのフッ素樹脂系プロトン伝導
性膜は、価格が非常に高いという欠点がある。プロトン
伝導性膜を燃料電池等の新たな用途において実用化を図
るには、プロトン伝導性を高く、しかも価格を低くする
ことが不可欠である。
【0003】そこで、従来、空孔を有する多孔質膜に電
解質ポリマーを含有させて、プロトン伝導性膜を得る方
法が種々提案されている。例えば、特開平9−1946
09公報には、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプ
ロピレン樹脂等の疎水性樹脂からなる多孔質膜の空孔内
に同じく疎水性のポリマーの溶液を含浸させ、乾燥させ
て、上記ポリマーを多孔質膜に担持させた後、このポリ
マーにスルホン酸基、プロトン化アミノ基、カルボキシ
ル基等のイオン交換基を導入し、かくして、イオン交換
膜を製造する方法が提案されている。しかし、このよう
な方法によれば、イオン交換基を多孔質膜中に均一に分
布させることは困難であり、延いては、プロトン伝導性
も十分ではない。
【0004】そこで、最近、イオン交換基としてリン酸
エステル基を有するポリマー、即ち、側鎖にリン酸エス
テル基を有するメタクリル酸誘導体から導かれるポリマ
ーを固体高分子型燃料電池用プロトン交換膜として用い
ることが「高分子学会予稿集」第48巻第3号第414
頁(1999年)、「高分子学会予稿集」第48巻第1
0号第2393頁(1999年)、「高分子学会予稿
集」第49巻第4号第751頁(2000年)等に提案
されている。
【0005】これら文献によれば、側鎖にリン酸エステ
ル基を有するメタクリル酸誘導体から導かれるポリマー
は、上記リン酸エステル基のプロトン解離度が大きく、
強い酸性を示すので、高いプロトン伝導性を有してお
り、しかも、主鎖が炭化水素でありながら、耐熱性を有
すると共に、水に殆ど溶解しないという特性を有する。
このように、リン酸エステル基を置換基として側鎖に有
するポリマーが水不溶性であるのは、リン酸エステル基
がそれぞれの間に形成する水素結合によって、ポリマー
鎖間に強いネットワークが形成されるためであるとみら
れる。
【0006】しかしながら、側鎖にリン酸エステル基を
有するメタクリル酸誘導体から導かれる上記ポリマー自
体は、機械的強度が低く、脆いので、燃料電池用プロト
ン交換膜として用いることは困難である。また、上記ポ
リマーは、その製造時にしばしばゲル化したり、また、
得られたポリマーが溶解性に乏しい等、実用化のために
は、製造面や成形性の面で尚、多くの問題がある。
【0007】一般に、多孔質膜にプロトン伝導性を付与
するためには、膜内にプロトン発生源又は輸送サイトを
有することが必要であり、先に言及したスルホン酸基は
そのようなプロトン発生源又は輸送サイトの代表例であ
る。しかし、スルホン酸基を有するポリマーは、代表的
には、ポリスチレンスルホン酸やポリビニルスルホン酸
等であり、これらはすべて水溶性である。従って、水素
ガスや酸素ガスを水蒸気加湿して用いる燃料電池のプロ
トン交換膜としては、これらのポリマーは、そのままで
は、用いることが困難である。即ち、燃料電池のプロト
ン交換膜として用いるには、ポリマーに何らかの水不溶
性化処理を施すことが必要である。
【0008】水溶性ポリマーを水不溶化するためには、
架橋処理をするか、又はスルホン酸基を有するモノマー
と共に水不溶性ポリマーを与えるようなモノマーと共重
合を行なって、共重合体とする必要がある。
【0009】しかし、水溶性ポリマーに架橋処理を施す
ことによって、水に完全に溶解することは避けることが
できても、水に接触したとき、ポリマーが膨潤すること
は避けられない。かくして、水溶性ポリマーの架橋によ
る水不溶化は、それと引換えにポリマーの機械的強度の
低下をもたらすので、そのように、水溶性ポリマーを水
不溶化したポリマーを燃料電池用プロトン交換膜として
用いることも困難である。
【0010】他方、水不溶性ポリマーを与えるモノマー
との共重合によって、水不溶性ポリマーを得るには、重
合に供するモノマー中のスルホン酸基含有モノマーの割
合を相対的に低くせざるを得ず、そうすれば、本来、プ
ロトン交換膜として求められるプロトン伝導性が損なわ
れるので、高いプロトン伝導性を有するポリマーを得る
ことはできない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、プロトン伝
導性膜又はフィルムにおける上述した問題を解決するた
めになされたものであって、耐久性と機械的強度を有す
るプロトン伝導性膜又はフィルムとそれらの製造方法、
更には、それらをプロトン交換膜として用いてなる燃料
電池を提供することを目的とする。
【0012】
【問題を解決するための手段】本発明によれば、リン酸
基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を側鎖に有するポ
リマー(以下、「P−ポリマー」ということがある。)
を多孔質膜の空孔内に担持させてなることを特徴とする
プロトン伝導性膜が提供される。
【0013】特に、本発明によれば、リン酸基、ホスホ
ン酸基又はホスフィン酸基を有するモノマー(以下、
「P−モノマー」ということがある。)を多孔質膜の空
孔内で重合させて、上記P−ポリマーを生成させると共
に、このP−ポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持さ
せてなることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供され
る。
【0014】更に、本発明によれば、上記P−モノマー
を多孔質膜に含浸させ、この多孔質膜の空孔内で重合さ
せて、上記P−ポリマーを生成させると共に、このP−
ポリマを上記多孔質膜の空孔内に担持させることを特徴
とするプロトン伝導性膜の製造方法が提供される。
【0015】また、本発明によれば、上記プロトン伝導
性膜の空孔に空隙が残っているとき、その空隙の少なく
とも一部を閉塞してなるプロトン伝導性フィルムとその
ような製造方法が提供される。
【0016】上記のほか、本発明によれば、上記プロト
ン伝導性フィルムをプロトン交換膜として用いてなる燃
料電池が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明によるプロトン伝導性膜
は、P−ポリマーを多孔質膜の空孔内に担持させてなる
ものであり、好ましくは、P−モノマーを多孔質膜の空
孔内で重合させて、上記P−ポリマーを生成させると共
に、このP−ポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持さ
せてなるものである。
【0018】本発明によるプロトン伝導性膜において、
基材として用いる多孔質膜は、特に、限定されることな
く、種々の樹脂からなるものを用いることができる。そ
のような樹脂として、例えば、ポリテトラフルオロエチ
レン等のフッ素樹脂、6,6−ナイロンほか、種々のポリ
アミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエス
テル樹脂、ジメチルフェニレンオキサイド、ポリエーテ
ルエーテルケトン等のポリエーテル樹脂、エチレン、プ
ロピレン等のα−オレフィン、ノルボルネン等の脂環式
不飽和炭化素、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン
等の(共)重合体、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプ
ロピレン樹脂や、また、エチレン−プロピレンゴム、ブ
タジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ノルボル
ネンゴム等のエラストマーやそれらの水添物等の脂肪族
炭化水素樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、
単独で、又は2種以上を併用して、上記多孔質膜を形成
していてよい。
【0019】本発明によれば、上記した種々の樹脂から
なる多孔質膜のなかでも、ポリオレフィン樹脂、特に、
重量平均分子量5.0×105 以上、好ましくは、1.0×
10 6 以上の高分子量ポリエチレン樹脂からなる多孔質
膜が強度や耐熱性にすぐれるところから、好ましく用い
られる。また、ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ
化ビニリデン等のフッ素樹脂からなる多孔質膜も、その
すぐれた耐薬品性と耐熱性から、本発明において、好ま
しく用いられる。
【0020】本発明によれば、基材多孔質膜は、従来よ
り知られている適宜の手段によって親水化されていても
よい。このような親水化された多孔質膜は、例えば、ス
ルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、アミノ基、ア
ミド基、水酸基等の親水性基を有する重合体やそのブレ
ンドを原料に用いて製膜することによって得ることがで
きる。また、そのような親水性基をもたない重合体を多
孔質膜に製膜した後に、その多孔質膜に、例えば、スル
ホン化処理を施したり、また、界面活性剤を担持させる
等の方法によって得ることができる。
【0021】本発明において、基材多孔質膜は、通常、
20〜90%、好ましくは、30〜85%の範囲の空孔
率を有する。多孔質膜の空孔率が20%よりも小さいと
きは、このような多孔質膜にP−モノマーを含浸させ、
重合させて、多孔質膜の空孔内にP−ポリマーを担持さ
せても、高いプロトン伝導性を有する膜を得ることがで
きない。しかし、多孔質膜の空孔率が90%よりも大き
いときは、そのような多孔質膜の空孔にP−ポリマーを
担持させて得られるプロトン伝導性膜は、強度が十分で
なく、取り扱いや種々の用途での使用に困難が伴う。
【0022】また、基材多孔質膜は、前記P−モノマー
を多孔質膜中に保持することができれば、特に、限定さ
れるものではないが、その平均孔径は、通常、0.001
〜100μmの範囲であり、0.005〜10μmの範囲
にあることが好ましい。同様に、多孔質膜の厚みも、特
に、限定されるものではないが、通常、1mm以下であ
り、好ましくは、5〜500μmの範囲である。
【0023】本発明によるプロトン伝導性膜は、前記P
−モノマーを多孔質膜に含浸させ、この多孔質膜の空孔
内で重合させて、前記P−ポリマーを生成させると共
に、このP−ポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持さ
せることによって得ることができる。
【0024】本発明によれば、上記P−モノマーのう
ち、リン酸基を有するモノマーの好ましい例として、一
般式(I)
【0025】
【化1】
【0026】(式中、Rは水素原子又はメチル基を示
し、Xは基の両末端が炭素原子である2価の有機基を示
す。)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0027】特に、本発明においては、上記基Xは、好
ましくは、一般式(A)
【0028】
【化2】
【0029】(式中、R’はエチレン基又はプロピレン
基を示し、R”は炭素原子数1〜10、好ましくは、2
〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示し、pは1
〜10の整数であり、qは0、1又は2である。)で表
わされる2価基か、又は一般式(B)
【0030】
【化3】
【0031】(式中、Ar及びAr’はそれぞれ独立に
2価の芳香族炭化水素基、好ましくは、フェニレン基を
示し、R'"は炭素原子数1〜10、好ましくは、2〜6
の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示し、rは0又は
1であり、rが1のとき、sは0又は1である。)で表
わされる2価基を示す。
【0032】従って、上記一般式(I)で表わされるP
−モノマーの好ましい具体例としては、例えば、2−メ
タクリロイルオキシエチルホスフェート、メタクリロイ
ルテトラ(オキシエチレン)ホスフェート、メタクリロ
イルペンタ(オキシプロピレン)ホスフェートや、4−
スチリルメトキシブチルホスフェート等を挙げることが
できる。
【0033】ホスホン酸基を有するモノマーの好ましい
例としては、一般式(II)
【0034】
【化4】
【0035】(式中、Rは水素原子又はメチル基を示
し、Yは基の両末端が炭素原子である2価の有機基を示
す。)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0036】特に、本発明においては、上記基Yは、好
ましくは、一般式(B)
【0037】
【化5】
【0038】(式中、Ar及びAr’はそれぞれ独立に
2価の芳香族炭化水素基、好ましくは、フェニレン基を
示し、R'"は炭素原子数1〜10、好ましくは、2〜6
の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示し、rは0又は
1であり、rが1のとき、sは0又は1である。)で表
わされる2価基を示す。
【0039】従って、上記一般式(II)で表わされるホ
スホン酸基を有するモノマーの好ましい具体例として
は、例えば、4−(2−スチリルメトキシエチル)フェ
ニルホスホン酸、4−(スチリルメトキシ)ブチルホス
ホン酸、スチリルメチルホスホン酸等の化合物を挙げる
ことができる。
【0040】また、ホスフィン酸基を有するモノマーの
好ましい例としては、一般式(III)
【0041】
【化6】
【0042】(式中、Rは水素原子又はメチル基を示
し、Zは基の両末端が炭素原子である2価の有機基を示
す。)で表わされる化合物を挙げることができる。
【0043】特に、本発明においては、上記基Zは、好
ましくは、一般式(B)
【0044】
【化7】
【0045】(式中、Ar及びAr’はそれぞれ独立に
2価の芳香族炭化水素基、好ましくは、フェニレン基を
示し、R'"は炭素原子数1〜10、好ましくは、2〜6
の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示し、rは0又は
1であり、rが1のとき、sは0又は1である。)で表
わされる2価基を示す。
【0046】従って、上記一般式(III)で表わされるホ
スフィン酸基を有するモノマーの具体例としては、例え
ば、4−(2−スチリルメトキシエチル)フェニルホス
フィン酸、4−(スチリルメトキシ)ブチルホスフィン
酸、スチリルメチルホスフィン酸等の化合物を挙げるこ
とができる。
【0047】本発明によれば、P−モノマーと共に、リ
ン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を有する多官
能性モノマー(以下、多官能性P−モノマーということ
がある。)を用いることができる。
【0048】このような多官能性P−モノマーの好まし
い例として、例えば、一般式(IV)
【0049】
【化8】
【0050】(式中、RとXは前記と同じであり、mは
2又は3である。)で表わされるリン酸ジエステル又は
トリエステルを挙げることができる。
【0051】本発明においては、このような多官能性P
−モノマーのうち、特に、基Xが前記一般式(A)で表
わされる基であるものが好ましい。
【0052】従って、このような多官能性P−モノマー
の具体例として、例えば、ビス(メタクリロイルオキシ
エチル)ホスフェート、ビス{5−(メタクリロイルオ
キシエチルオキシカルボニル)ペンチル}ホスフェート
等のリン酸ジエステルを挙げることができる。
【0053】P−モノマーがこのような多官能性P−モ
ノマーを含むとき、この多官能性P−モノマーの割合は
50モル%以下であり、好ましくは、45モル%以下で
ある。
【0054】このように、P−モノマーと共に多官能性
P−モノマーを用いることによって、得られるP−ポリ
マーは、上記多官能性P−モノマーの架橋反応によっ
て、三次元構造、即ち、架橋構造を有し、かくして、P
−ポリマーの耐水性や耐溶剤性等の物性を更に改善する
ことができる。
【0055】また、本発明によれば、P−モノマーと共
に、リン酸基、ホスホン酸基及びホスフィン酸基のいず
れも有しない多官能性モノマー(以下、多官能性非P−
モノマーということがある。)を用いることができる。
このように、P−モノマーが多官能性非P−モノマーを
含むとき、この多官能性非P−モノマーの割合は50モ
ル%以下であり、好ましくは、45モル%以下である。
【0056】このように、P−モノマーと共に多官能性
非P−モノマーを用いることによって、得られるP−ポ
リマーの種々の物性、例えば、ガラス転移温度、親水性
の程度、柔軟性、機械的強度等を調整することもでき
る。
【0057】しかし、本発明によるプロトン伝導性膜に
おいて、P−ポリマーに架橋構造をもたせるための手段
は、上記に限定されるものではなく、例えば、官能基間
の反応、過酸化物による架橋、電子線等の照射、オゾン
の作用等、従来より知られている適宜の手段を利用する
ことができる。
【0058】更に、本発明によれば、P−モノマーと共
に、リン酸基、ホスホン酸基及びホスフィン酸基のいず
れも有しない単官能性モノマー(以下、単官能性非P−
モノマーということがある。)をも用いてもよい。
【0059】このような単官能性非P−モノマーとして
は、例えば、スチレン、ビニルスルホン酸、スチレンス
ルホン酸ナトリウム等のビニルモノマー類、エチルビニ
ルエーテル等のビニルエーテル類、アクリル酸ブチル、
メトキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタ
クリレート、アクリル酸等のアクリルモノマー類、N,
N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−アク
リルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアクリ
ルアミド類を挙げることができる。
【0060】本発明において、P−モノマー(多官能性
P−モノマーを含む。)と共に単官能性非P−モノマー
を用いる場合、その単官能性非P−モノマーの割合は、
用いる基材多孔質膜の空孔率にもよるが、通常、P−モ
ノマーに対して、90モル%以下の範囲であり、好まし
くは、80モル%以下の範囲である。単官能性非P−モ
ノマーの割合がP−モノマー(多官能性P−モノマーを
含む。)に対して90モル%よりも多いときは、高プロ
トン伝導性膜を得ることができない。
【0061】このように、P−モノマーと、必要に応じ
て、これ以外の種々のモノマーとを用いて、多孔質膜の
空孔内に、それらのモノマーから得られるP−ポリマー
を担持させて、本発明によるプロトン伝導性膜を得るに
は、基材多孔質膜に上記P−モノマーと、必要に応じ
て、これ以外の種々のモノマーを担持させ、熱重合や光
重合等、従来より知られている適宜の方法によって、上
記モノマーを重合させればよい。しかし、重合法として
は、なかでも、光重合法が簡便で安全あり、しかも、短
時間でP−ポリマーを得ることができる。また、必要に
応じて、光重合を行なった後、残余のP−モノマーを重
合させるために、より高温で更に光重合や熱重合を行な
ってもよい。
【0062】このように、P−モノマーの光重合を行な
うためには、前記P−モノマーに光重合開始剤を混合、
溶解し、これを多孔質膜に含浸させた後、光照射すれば
よい。
【0063】上記光重合開始剤は、従来より知られてい
るものを適宜に用いればよい。例えば、2−ベンジル−
2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)
ブタノン−1(チバガイギー社製イルガキュア36
9)、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニ
ル}−2−モルホリノプロパノン−1(チバガイギー社
製イルガキュア907)、1−ヒドロキシシクロヘキシ
ルフェニルケトン(チバガイギー社製イルガキュア18
4)、ベンジルジメチルケタール(チバガイギー社製イ
ルガキュア651)等を用いることができる。300n
m以上の波長の光を用いても重合が可能であるものが特
に好ましい。このような光重合開始剤は、通常、P−モ
ノマーに対して0.01〜5重量%程度加えられる。
【0064】P−モノマーや、場合によっては、P−モ
ノマーと共に他の共重合性モノマー、多官能性モノマ
ー、光重合開始剤等を含む混合物を多孔質膜の空孔内に
担持させるためには、例えば、P−モノマーや上記混合
物に多孔質膜を浸漬したり、また、P−モノマーや上記
混合物を基材多孔質膜に塗布すればよい。
【0065】このように、P−モノマーや上記混合物を
多孔質膜に担持させるに際して、これらP−モノマーや
上記混合物の粘度を適宜に調整してもよい。即ち、粘度
を高めるためにモノマーの一部を予備重合させたり、ま
た、適宜のポリマーを少量、添加し、溶解させてもよ
い。反対に、粘度を下げるために、適当な溶剤を加え
て、希釈してもよい。
【0066】このようにして、多孔質膜にP−モノマー
を担持させた後、例えば、ポリエステル樹脂製離型フィ
ルムで多孔質膜を挟み、この交換膜を酸素(従って、例
えば、空気)から遮断して、高圧水銀ランプ等を用いて
P−モノマーに光照射し、光重合させることによって、
P−ポリマーを多孔質膜の空孔内に担持させてなるプロ
トン伝導性膜を得ることができる。
【0067】上記光重合に必要な光照射量は、系により
異なるが、通常は、0.1〜5J/cm2 程度で十分であ
る。光重合は、得られるP−ポリマーの分子量を高くす
るために、通常、室温付近で行なうが、重合率を高める
ために、より高い温度で光重合を行なってもよく、ま
た、最初は低温で、次いで、高温で光重合してもよい。
【0068】本発明によれば、上記P−モノマーを多孔
質膜に含浸させる際、多孔質膜の空孔をP−モノマーが
充填する比率(充填率)が低いときは、このP−モノマ
ーの重合後も、基材多孔質膜は、通気性を有する多孔質
構造を有しており、かくして、通気性を有するプロトン
伝導性多孔質膜を得ることができる。他方、上記充填率
が高いときは、P−モノマーの重合後、基材多孔質膜
は、その空孔が実質的に閉塞されて、通気性のないプロ
トン伝導性無孔膜を得ることができる。一応の目安とし
て、P−モノマーの充填率が80%以上であれば、基材
多孔質膜の空孔が実質的に閉塞されてなる通気性のない
プロトン伝導性無孔膜を得ることができる。
【0069】本発明においては、P−モノマーは、基材
多孔質膜の空孔を充填するのみならず、基材多孔質膜の
少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆していて
もよい。この場合、P−モノマーの充填率は100%を
越える。このように、基材多孔質膜にP−モノマーを1
00%を越える充填率で担持させ、これに光照射すれ
ば、多孔質膜は,その空孔がP−ポリマーで充填されて
いるのみならず、少なくとも一方の表面の少なくとも一
部がP−ポリマーで被覆されたプロトン伝導性膜を得る
ことができる。
【0070】更に、本発明によれば、このようにして得
られたプロトン伝導性膜の有する空孔の残余の空隙、即
ち、このようにして得られたプロトン伝導性膜に残存す
る空隙を加熱、収縮させ、又は加熱、溶融させる等の適
宜手段によって、プロトン伝導性膜に残存する上記空隙
の少なくとも一部を閉塞して、プロトン伝導性フィルム
とすることができ、特に、好ましくは、プロトン伝導性
膜に残存する空隙をすべて閉塞して、通気性のないプロ
トン伝導性無孔フィルムを得ることができる。また、必
要に応じて、プロトン伝導性膜に残存する空隙を一部閉
塞して、通気性のあるプロトン伝導性有孔フィルムを得
ることができる。
【0071】このように、リン酸基、ホスホン酸基又は
ホスフィン酸基を側鎖に有するP−ポリマーを基材多孔
質膜の空孔内に担持させてなるプロトン伝導性膜やプロ
トン伝導性フィルムは、高いプロトン伝導性を有する。
本発明によれば、多孔質膜へのP−モノマーの充填率を
高くして、多孔質膜の有する空孔へのP−ポリマーの充
填率を高くするほど、高いプロトン伝導性を有する膜や
フィルムを得ることができる。
【0072】本発明によれば、このように、多孔質構造
を有し、通気性を有するプロトン伝導性膜や、反対に、
無孔構造のプロトン伝導性膜を得ることができ、また、
多孔質構造を有し、通気性を有するプロトン伝導性フィ
ルムや、反対に、無孔構造のプロトン伝導性フィルムを
得ることができる。多孔質構造を有し、通気性を有する
プロトン伝導性膜やフィルムは、例えば、選択透過性荷
電膜等、その空隙を活かした用途に好ましく用いること
ができる。
【0073】しかし、多孔質構造を有し、通気性を有す
るプロトン伝導性膜やフィルムは、燃料電池用セパレー
ターとして用いれば、ガスのクロスリークが起こりやす
い等の問題がある。従って、このような用途には、上述
したように、多孔質膜の空孔を実質的にすべてP−ポリ
マーで充填したプロトン伝導性無孔膜を用いたり、ま
た、プロトン伝導性多孔質膜を前述したように加熱、溶
融させる等の適宜の手段によって、プロトン伝導性膜に
残存する空隙をすべて閉塞してなるプロトン伝導性無孔
フィルムを用いることが好ましい。
【0074】本発明によれば、P−ポリマーからなるプ
ロトン伝導性ポリマーを多孔質膜に複合化して、プロト
ン伝導性膜又はフィルムとしたものであり、好ましく
は、M−モノマーを多孔質膜に含浸させ、この多孔質膜
の空孔内で重合させて、P−ポリマを生成させると共
に、このP−ポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持さ
せて、多孔質膜とP−ポリマーとの一体化を実現したも
のである。
【0075】従って、本発明によれば、基材多孔質膜と
プロトン伝導性ポリマーとの複合化に由来して、種々の
点ですぐれたプロトン伝導性膜又はフィルムを得ること
ができる。例えば、超高分子量ポリエチレン等からなる
強靱な多孔質膜を基材として用いることによって、P−
ポリマーに由来する高いプロトン伝導性に加えて、高い
機械的強度とすぐれたハンドリング性を有するプロトン
伝導性膜又はフィルムを得ることができる。
【0076】特に、本発明に従って、P−モノマーを多
孔質膜の空孔内に担持させ、重合させて、P−ポリマー
を基材多孔質膜と一体化することによって、P−ポリマ
ー鎖を多孔質膜の網目に高度に絡みつかせることがで
き、更には、P−モノマーと共に多官能性モノマーとを
共重合させれば、架橋したP−ポリマーと多孔質膜を構
成するポリマー鎖とが相互貫通したポリマーネットワー
クによって物理的な結合が生じ、かくして、プロトン伝
導性ポリマーと多孔質膜との密着性を一層強めたプロト
ン伝導性膜やフィルムを得ることができる。
【0077】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。また、以下において、用いた多孔質膜の特性や、得
られたプロトン伝導性膜又はフィルムの特性は、次のよ
うにして評価した。
【0078】(膜又はフィルムの厚み)1/10000
シックネスゲージで測定した。 (多孔質膜の空孔率)多孔質膜の単位面積S(cm2
あたりの重量W(g)、平均厚みt(μm)及び密度d
(g/cm3 )から下式にて算出した。 空孔率(%)=(1−(104 ・W/(S・t・d))
×100
【0079】(プロトン伝導度)プロトン伝導性膜又は
フィルムを温度25℃、相対湿度50%に調整した環境
下に4時間放置した後、ヒューレットパッカード社LC
RメーターHP4284Aを用いて、白金電極間に所定
厚みの1cm角の試料を挟み、温度25℃、相対湿度5
0%の条件下で複素インピーダンス法にて測定し、虚数
部の抵抗値ゼロに外挿したときの実数部の抵抗値を用い
てプロトン伝導度を算出した。
【0080】(基材多孔質膜の空孔へのP−ポリマーの
体積充填率)基材多孔質膜の体積V(cm3 )、基材多
孔質膜の空孔率Φ(%)、P−ポリマーの重量M(g)
及びP−ポリマーの密度d(g/cm3 )から下式にて
算出した。 充填率(%) =104 ・M/(V・Φ・d) (引張強度)ダンベル型に打ち抜いた試験片(JIS
K 7113、プラスチックの引張試験方法における1
号形試験片に準拠)について、引張試験機((株)島津
製作所製オートグラフAGS−50D)を用いて測定し
た。
【0081】実施例1 (プロトン伝導性膜の製造)2−メタクリロイルオキシ
エチルホスフェート/ビス(メタクリロイルオキシエチ
ル)ジホスフェート(65/35モル比)からなるP−
モノマー(共栄社化学(株)製ライトエステルP−1
M)50重量%とブチルアクリレート50重量%とから
なるモノマー混合物100重量部にベンジルジメチルケ
タール(チバガイギー社製イルガキュア651)0.5重
量部を溶解させた。
【0082】これを希釈することなく、そのまま、重量
平均分子量1.0×106 の超高分子量ポリエチレン樹脂
からなる多孔質膜T1(膜厚25μm、空孔率40%、
平均孔径0.10μm)の両面に塗布して、多孔質膜の空
孔に含浸させた。
【0083】このように処理した多孔質膜をポリエステ
ル樹脂製離型フィルムで挟んで、多孔質膜を空気から遮
断した後、高圧水銀ランプを備えた光照射装置(アイグ
ラフィック(株)製UB021−1B−13)を用い
て、上記多孔質膜にエネルギー1.5J/cm2 にて光照
射して、その空孔内で上記モノマー混合物を光重合さ
せ、P−ポリマーを生成させると共に、これを上記多孔
質膜の空孔内に担持させて、厚み35μmのプロトン伝
導性膜F1を得た。このプロトン伝導性膜においては、
多孔質膜の空孔は上記P−ポリマーにて完全に充填され
ており、また、多孔質膜の両表面も、上記P−ポリマー
層で被覆されていた。
【0084】上記プロトン伝導性膜F1のプロトン伝導
度は2.1×10-3S/cmであり、引張強度は87MP
aであった。
【0085】(燃料電池)白金触媒を0.6mg/cm2
の割合で表面に担持させたカーボンペーパー2枚の間に
上記プロトン伝導性膜F1を挟み、ホットプレスを用い
て接合して、膜−電極接合体(MEA)を製作した。
【0086】(株)東陽テクニカ製燃料電池評価装置を
用いて、上記MEAの燃料電池特性を評価した。背圧弁
は絞らず、圧力は常圧にて行なった。加湿器温度は水素
側80℃、酸素側70℃とし、燃料電池セル温度は70
℃とした。Tafel法にて電流−電圧(I−V)曲線
を得たところ、結果を図1に示すように、プロトン交換
膜として、ナフィオン(登録商標)117膜を用いた場
合とほぼ同等の電流−電圧(I−V)曲線を得た。即
ち、本発明によるプロトン伝導性膜は、ナフィオン11
7膜と同等の燃料電池特性を有する。
【0087】実施例2 実施例1と同じ2−メタクリロイルオキシエチルホスフ
ェートとビス(メタクリロイルオキシエチル)ジホスフ
ェートとからなるP−モノマー100重量部に1−ヒド
ロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社
製イルガキュア184)0.5重量部を溶解させた。
【0088】実施例1と同じ超高分子量ポリエチレン樹
脂からなる多孔質膜T1をポリエステル樹脂製離型フィ
ルム上に載せ、多孔質膜の露出表面に、上記P−モノマ
ーを希釈することなく、そのまま、塗布し、バーでしご
いて余剰のモノマーを多孔質膜の表面から除去して、多
孔質膜の空孔中にのみ、上記モノマーを含浸させた。
【0089】このように処理した多孔質膜の露出表面に
もポリエステル樹脂製離型フィルムを被せて、多孔質膜
を空気から遮断し、実施例1と同じ光照射装置を用い
て、エネルギー1.5J/cm2 にて多孔質膜に光照射し
て、その空孔内で上記モノマーを光重合させ、P−ポリ
マーを生成させると共に、このP−ポリマーを上記空孔
内に担持させて、厚み25μmのプロトン伝導性膜F2
を得た。このプロトン伝導性膜においては、多孔質膜の
空孔はポリマーにて完全に充填されていた。このプロト
ン伝導性膜F2のプロトン伝導度は8.5×10-4S/c
mであった。
【0090】実施例3 実施例1と同じ2−メタクリロイルオキシエチルホスフ
ェートとビス(メタクリロイルオキシエチル)ジホスフ
ェートとからなるP−モノマー100重量部に1−ヒド
ロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社
製イルガキュア184)0.5重量部を溶解させ、これを
メタノールでモノマー濃度30重量%に希釈した。
【0091】重量平均分子量2.4×106 の超高分子量
ポリエチレン樹脂からなる多孔質膜T2(膜厚40μ
m、空孔率44%、平均孔径0.15μm)をポリエステ
ル樹脂製離型フィルム上に載せ、この多孔質膜の露出表
面に、上記モノマー混合物の希釈溶液を塗布し、バーで
しごいて余剰のモノマー混合物を多孔質膜の表面から除
去して、風乾して、多孔質膜の空孔中にのみ、上記モノ
マー混合物を含浸させた。
【0092】このように処理した多孔質膜の露出表面に
もポリエステル樹脂製離型フィルムを被せて、多孔質膜
を空気から遮断し、実施例1と同じ光照射装置を用い
て、エネルギー1.5J/cm2 にて多孔質膜に光照射し
て、その空孔内で上記モノマー混合物を光重合させ、P
−ポリマーを生成させると共に、このP−ポリマーを上
記空孔内に担持させて、厚み40μmのプロトン伝導性
膜F3を得た。このプロトン伝導性膜においては、多孔
質膜の空孔はポリマーにて部分的に充填されていた。こ
のプロトン伝導性膜F2のプロトン伝導度は4.0×10
-5S/cmであった。
【0093】比較例1 実施例1において、基材多孔質膜を用いることなく、ポ
リエステル樹脂製離型フィルム上に実施例1と同じ2−
メタクリロイルオキシエチルホスフェートとビス(メタ
クリロイルオキシエチル)ジホスフェートとからなるP
−モノマー50重量%とブチルアクリレート50重量%
とからなるモノマー混合物を厚み35μmの層に塗布し
た。
【0094】この塗布層の上にもポリエステル樹脂製離
型フィルムを載せて、上記モノマー混合物の塗布層を空
気から遮断し、実施例1と同じ光照射装置を用いて、エ
ネルギー1.5J/cm2 にて光照射して、上記モノマー
混合物からP−ポリマーを生成させて、このP−ポリマ
ーのみからなる厚み35μmのプロトン伝導性膜R1を
得た。このプロトン伝導性膜のプロトン電導度は2.3×
10-3S/cmであり、また、引張強度は、8MPaで
あった。
【0095】比較例2 東ソー(株)製ポリナスPS−5を強酸性カチオン交換
樹脂を用いてイオン交換し、ナトリウム塩を遊離酸に変
換し、これを濃縮した後、メタノールに溶解させて、2
0%濃度のポリスチレンスルホン酸のメタノール溶液を
調製した。
【0096】実施例3と同じ超高分子量ポリエチレン樹
脂からなる多孔質膜T2をポリエステル樹脂製離型フィ
ルムに載せ、その露出表面に上記ポリスチレンスルホン
酸のメタノール溶液を塗布し、乾燥させて、厚み58μ
mのプロトン伝導性膜R2を得た。
【0097】このプロトン伝導性膜においては、多孔質
膜の空孔は上記ポリスチレンスルホン酸にて完全に充填
されており、また、多孔質膜の上記ポリスチレンスルホ
ン酸の塗布側の表面も、ポリスチレンスルホン酸の層で
被覆されていた。このプロトン伝導性膜R2のプロトン
伝導度は2.0×10-5S/cmであった。
【0098】このプロトン伝導性膜を24時間水に浸漬
したところ、ポリスチレンスルホン酸が一部、水中に溶
出した結果、この水への浸漬後に再び温度25℃、相対
湿度50%に調湿してプロトン伝導度を測定したとこ
ろ、3.7×10-6S/cmであった。
【0099】
【発明の効果】以上のように、本発明によるプロトン伝
導性膜は、リン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基
を側鎖に有するP−ポリマーを多孔質膜の空孔内に担持
させてなるものであり、高いプロトン伝導性を有するの
みならず、高い強度を有し、更に、上記ポリマーは水不
溶性である。特に、本発明に従って、リン酸基、ホスホ
ン酸基又はホスフィン酸基を有するP−モノマーを多孔
質膜の空孔内で重合させて、リン酸基、ホスホン酸基又
はホスフィン酸基を側鎖に有するP−ポリマーを生成さ
せると共に、このP−ポリマーを上記多孔質膜の空孔内
に担持させてなるプロトン伝導性膜によれば、P−ポリ
マーと多孔質膜が一体化され、P−ポリマーは多孔質膜
に対して高度の密着性を有する。しかも、本発明による
プロトン伝導性膜は、従来のスルホン酸基含有フッ素樹
脂膜からなるプロトン伝導性膜に比べて格段に低廉に得
ることができる。
【0100】かくして、本発明によるプロトン伝導性膜
は、燃料電池におけるイオン交換膜として好適に用いる
ことができ、ここに、低廉であることから、燃料電池シ
ステムのコストを大幅に低減せしめて、その実用化を速
めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明によるプロトン伝導性膜を用いて調
製した膜−電極接合体(MEA)の燃料電池特性を示す
Tafel法による電流−電圧(I−V)曲線である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01M 8/02 H01M 8/02 P 8/10 8/10 // C08L 23:02 C08L 23:02 27:12 27:12 Fターム(参考) 4F074 AA16 AA38 AB01 CD04 CD20 CE15 CE16 CE17 CE56 CE94 DA24 DA47 DA49 4J011 CA01 CA09 CB00 CC01 CC10 5G301 CA19 CA30 CD01 5H026 AA06 BB03 BB04 BB10 CX04 CX05 EE02 EE18 EE19

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】リン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸
    基を側鎖に有するポリマーを多孔質膜の空孔内に担持さ
    せてなることを特徴とするプロトン伝導性膜。
  2. 【請求項2】多孔質膜が超高分子量ポリオレフィン樹脂
    又はフッ素樹脂からなるものである請求項1に記載のプ
    ロトン伝導性膜。
  3. 【請求項3】ポリマーが架橋構造を有する請求項1に記
    載のプロトン伝導性膜。
  4. 【請求項4】請求項1から3のいずれかに記載のプロト
    ン伝導性膜の空孔の残余の空隙の少なくとも一部を閉塞
    してなるプロトン伝導性フィルム。
  5. 【請求項5】リン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸
    基を有するモノマーを多孔質膜の空孔内で重合させて、
    リン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を側鎖に有
    するポリマーを生成させると共に、このポリマーを上記
    多孔質膜の空孔内に担持させてなることを特徴とするプ
    ロトン伝導性膜。
  6. 【請求項6】多孔質膜が超高分子量ポリオレフィン樹脂
    又はフッ素樹脂からなるものである請求項4に記載のプ
    ロトン伝導性膜。
  7. 【請求項7】ポリマーが架橋構造を有する請求項5に記
    載のプロトン伝導性膜。
  8. 【請求項8】請求項5から7のいずれかに記載のプロト
    ン伝導性膜の空孔の残余の空隙の少なくとも一部を閉塞
    してなるプロトン伝導性フィルム。
  9. 【請求項9】リン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸
    基を有するモノマーを多孔質膜に含浸させ、この多孔質
    膜の空孔内で重合させて、リン酸基、ホスホン酸基又は
    ホスフィン酸基を側鎖に有するポリマーを生成させると
    共に、このポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持させ
    ることを特徴とするプロトン伝導性膜の製造方法。
  10. 【請求項10】請求項9に記載の方法において、リン酸
    基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を有するモノマー
    と共に、リン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を
    有する多官能性モノマー及び/又は、リン酸基、ホスホ
    ン酸基及びホスフィン酸基のいずれも有しない多官能性
    モノマーを用いて、上記ポリマーに架橋構造を有せしめ
    るプロトン伝導性膜の製造方法。
  11. 【請求項11】多孔質膜が超高分子量ポリオレフィン樹
    脂又はフッ素樹脂からなるものである請求項9又は10
    に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。
  12. 【請求項12】リン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン
    酸基を有するモノマーを多孔質膜に含浸させ、この多孔
    質膜の空孔内で重合させて、リン酸基、ホスホン酸基又
    はホスフィン酸基を側鎖に有するポリマーを生成させる
    と共に、このポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持さ
    せて、プロトン伝導性膜を得、次いで、このプロトン伝
    導性膜の空孔の残余の空隙の少なくとも一部を閉塞する
    ことを特徴とするプロトン伝導性フィルムの製造方法。
  13. 【請求項13】請求項12に記載の方法において、リン
    酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基を有するモノマ
    ーと共に、リン酸基、ホスホン酸基又はホスフィン酸基
    を有する多官能性モノマー及び/又は、リン酸基、ホス
    ホン酸基及びホスフィン酸基のいずれも有しない多官能
    性モノマーを用いて、上記ポリマーに架橋構造を有せし
    めるプロトン伝導性フィルムの製造方法。
  14. 【請求項14】多孔質膜が超高分子量ポリオレフィン樹
    脂又はフッ素樹脂からなるものである請求項12又は1
    3に記載のプロトン伝導性フィルムの製造方法。
  15. 【請求項15】請求項1から3又は請求項5から7のい
    ずれかに記載のプロトン伝導性膜をプロトン交換膜とし
    て用いてなる燃料電池。
  16. 【請求項16】請求項4又は8に記載のプロトン伝導性
    フィルムをプロトン交換膜として用いてなる燃料電池。
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