JP2006172764A - 電解質膜の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 多孔質基材の孔が閉塞する温度付近まで電解質ポリマーを充填した多孔質基材を加熱することにより、プロトン伝導性を維持したまま、メタノール透過阻止性を向上させた電解質膜の製造方法の提供。
【解決手段】 少なくとも下記(1)〜(4)の工程を有することを特徴とする電解質膜の製造方法。
(1)多孔質基材にイオン交換基またはイオン交換基に変換し得る基を有するモノマーを含有するポリマー前駆体を含浸させる工程、
(2)前記多孔質基材にポリマー前駆体が含浸されてなる前駆体含浸シートを樹脂フィルムで挟み込む工程、
(3)前記ポリマー前駆体を重合させてポリマーを生成させる重合工程、並びに
(4)得られたポリマー含有シートを100℃以上で加熱処理する工程。
【選択図】 なし

Description

本発明は、多孔質基材の細孔内に電解質ポリマーが充填された電解質膜の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、高プロトン伝導性および高メタノール透過阻止性の双方を備えた電解質膜の製造方法に関するものである。
本発明は、燃料電池、特に直接アルコール形燃料電池用途として好適なものであるが、他にレドックスフロー電池等の電池、電気分解等における各種装置および分離膜等において利用することができる。
高分子電解質膜を用いた電気化学装置の一種である燃料電池は、近年電解質膜や触媒技術の発展により性能の向上が著しくなり、低公害自動車用電源や高効率発電方法として注目を集めている。この内、高分子電解質膜を用いた燃料電池(固体高分子形燃料電池)は、膜の表面に酸化、還元触媒を有する反応層を形成した構造を有している。固体高分子形燃料電池においては燃料極において、水素分子がプロトンと電子に分解される反応が起き、発生した電子は電線を通って電気部品を作動させて酸素極側に運ばれ、酸素極においては酸素とプロトンと燃料極から電線を通って運ばれてきた電子から水が生成する。また直接メタノール形燃料電池(DMFC、Direct Methanol Fuel Cell)においては燃料極にはメタノールと水が供給され、膜近傍の触媒によってメタノールと水を反応させてプロトンを取り出す。これらの燃料電池には通常ポリパーフルオロアルキルスルホン酸からなる電解質膜が使用される。
しかしながら、ポリパーフルオロアルキルスルホン酸膜は、直接メタノール形燃料電池等の溶液状燃料を直接電池セルに供給する燃料電池に用いると、メタノール等の燃料が膜を通過してしまいエネルギーロスが生じるという問題があり、またメタノール等の燃料により膨潤して膜面積が大きく変化するため、電極と膜の接合部が剥がれる等の不具合を生じ易く、燃料濃度が上げられないという問題もある。また、フッ素原子を有することで材料自体の価格が高く、製造工程が複雑で生産性が低いため非常に高価であるという経済的問題もある。
このため、直接メタノール形燃料電池としたときのメタノール透過を抑制し、しかも安価な炭化水素骨格からなる高分子電解質膜が求められていた。本発明者等による特許文献1において開示された燃料電池用電解質膜は、多孔質基材に安価なプロトン伝導性ポリマーを充填してなるもので、多孔質基材がポリイミド、架橋ポリエチレン等、外力に対して変形し難い材料から形成されるため、孔内に充填されたプロトン伝導性ポリマーのメタノール水溶液による過度な膨潤を防ぐことができ、その結果、メタノールの透過を抑制することができるものである。
このような電解質膜はメタノール透過を抑制できることが特徴であるが、完全に透過を抑えることはできていない。直接メタノール形燃料電池用の電解質膜としては高プロトン伝導性かつ高メタノール透過阻止性であることが要求される。しかし、メタノール透過阻止性を上げようとすれば、プロトン伝導度が低下するという具合に、プロトン伝導性とメタノール透過阻止性は相反するものであり、両性能がともに満足する電解質膜はできていない。
一方、このような電解質膜を効率よく製造する方法として、多孔質基材に機能性モノマー等を含浸させ、その後、この機能性モノマー等を重合させる際に、多孔質膜の両側をポリエステルフィルムにより被覆し、次いで、窒素加圧下、加熱する方法が知られている(特許文献2)。
特開2002−83612号公報 特開平11−335473号公報
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、多孔質基材の孔が閉塞する温度付近まで電解質ポリマーを充填した多孔質基材を加熱することにより、プロトン伝導性を維持したまま、メタノール透過阻止性を向上させた電解質膜を製造するものである。
本発明は以下のとおりである。
1.少なくとも下記(1)〜(4)の工程を有することを特徴とする電解質膜の製造方法。
(1)多孔質基材にイオン交換基またはイオン交換基に変換し得る基を有するモノマーを含有するポリマー前駆体を含浸させる工程、
(2)前記多孔質基材にポリマー前駆体が含浸されてなる前駆体含浸シートを樹脂フィルムで挟み込む工程、
(3)前記ポリマー前駆体を重合させてポリマーを生成させる重合工程、並びに
(4)得られたポリマー含有シートを100℃以上で加熱処理する工程。
2.多孔質基材が、加熱処理により孔が閉塞する性質を有するポリオレフィンである1.に記載の電解質膜の製造方法。
3.加熱処理が、熱風の吹付けである1.または2.に記載の電解質膜の製造方法。
4.熱風の風速が3〜15m/sである3.に記載の電解質膜の製造方法。
本発明の電解質膜の製造方法によれば、多孔質基材を樹脂フィルムにより挟んだ状態でポリマー前駆体を重合させることによって、多孔質基材の細孔内に電解質ポリマーが充填され、更に特定の条件で加熱処理することにより、多孔質基材の孔の閉塞が起こりプロトン伝導性を維持したまま、メタノール透過阻止性を向上させた電解質膜を効率よく得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)含浸工程
多孔質基材は、それが有する細孔内に電解質ポリマーを形成させて、電解質膜を作成する際に基材となるものである。
多孔質基材としては、取り扱い易さおよび価格面から各種の樹脂からなるものを使用が好ましい。多孔質基材の形成に用いられる樹脂は特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルエーテル)等のフッ素系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、芳香族ポリイミド、アラミド、ポリスルホンおよびポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。この中では、機械的強度、化学的安定性、耐薬品性等に優れるポリオレフィン系樹脂が好ましく、更に次の方法で改質されたポリオレフィン系樹脂が好ましい。具体的には、電子線照射、架橋剤による化学架橋等により架橋され、耐熱性等が向上された多孔質基材、または延伸すること等によって強度が大きくなり、外力による変形が抑えられる多孔質基材が好ましい。更に、架橋と延伸等とを併せて施した多孔質基材がより好ましい。
上記多孔質基材は連続的に搬送させることにより、この工程および/または全製造工程を連続的に行うことができ、作業効率が良くなるので好ましい。連続の場合、多孔質基材としては、巻芯に捲回された長尺のシートが用いられ、この長尺のシートが所定の速度で連続的に搬送される。搬送速度は特に限定されないが、0.01〜100m/分とすることが好ましく、1〜50m/分とすることが更に好ましい。
多孔質基材の空孔率は充填ポリマーの種類、多孔質基材が用いられる製品等にもよるが、5〜95%、更には5〜90%、特に20〜80%であることが好ましい。平均孔径も充填ポリマーの種類、多孔質基材が用いられる製品等により好ましい範囲が異なるが、0.001〜100μm、特に0.01〜1μmであることが好ましい。また、多孔質基材の空孔率が5〜95%、更には5〜90%、特に20〜80%であり、かつ平均孔径が0.001〜100μm、特に0.01〜1μmであることがより好ましい。多孔質基材を、例えば、燃料電池の電解質膜用として使用した場合、空孔率が小さすぎると面積当たりのイオン交換基が過少となって出力が低下する。一方、空孔率が大きすぎると強度が低下し好ましくない。更に、多孔質基材の厚さも充填ポリマーの種類、多孔質基材が用いられる製品等によるが、200μm以下であることが好ましく、1〜150μm、更には5〜100μm、特に5〜50μmであることがより好ましい。多孔質基材が薄すぎると強度が低下し、例えば、燃料電池用電解質膜として用いる場合は、水素やメタノールのクロスオーバー量も増加するため好ましくない。一方、200μmを越えて厚くする必要はなく、例えば、燃料電池の場合、厚すぎると膜抵抗が過大となり出力が低下するため好ましくない。
なお、多孔質基材の厚さのばらつきは、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下である。
本発明で用いる多孔質基材としては、加熱処理により孔が閉塞する性質を有するポリオレフィンが好ましい。このような種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。
なお、加熱処理による孔の閉塞状況は例えば電子顕微鏡により確認することができる。
この多孔質基材の引張弾性率は500〜5000MPa、特に1000〜5000MPaであることが好ましい。また、多孔質基材の引張破断強度は50〜500MPa、特に100〜500MPaであることが好ましい。更に、多孔質基材の引張弾性率が500〜5000MPa、特に1000〜5000MPaであり、かつ引張破断強度が50〜500MPa、特に100〜500MPaであることがより好ましい。多孔質基材の引張弾性率が500〜5000MPaおよび引張破断強度が50〜500MPaのうちの少なくとも一方であれば、適度な剛性を有し、例えば、燃料電池の電解質膜として用いる場合の電極接合時の加圧成形および電池組立時の締め付け等によって亀裂が生じることがない。なお、燃料電池は運転時に昇温するが、この温度において十分な耐熱性を有し、外力が加わっても容易に変形しない多孔質基材であることが好ましい。
ポリマー前駆体には、イオン交換基またはイオン交換基に変換し得る基を有するモノマー(以下、イオン交換能モノマーという)が含有される。イオン交換能モノマーとしては、電解質膜の目的および用途、例えば燃料電池用または電気分解用により各種のものを用いることができる。
燃料電池等における電解質膜である場合に用いられるイオン交換基を有するモノマーとしては、燃料電池用の電解質膜とした際の性能に優れるプロトン酸性基を有するモノマーが好ましい。このプロトン酸性基を有するモノマーは1分子中に重合可能な官能基とプロトン酸とを有する化合物であり、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、ビニルホスホン酸、酸性リン酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのイオン交換基を有するモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。なお、「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を、「(メタ)アリル」は「アリルおよび/またはメタリル」を、「(メタ)アクリレート」は「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味する(以下も同様)。
また、イオン交換基に変換し得る基を有するモノマーを用いることもできる。このモノマーとしては、上記の化合物の塩、無水物、エステル等が挙げられる。使用するモノマーの酸残基が塩、無水物、エステル等の誘導体となっている場合は、重合後にプロトン酸型にすることでプロトン伝導性を付与することができる。更に、重合後にイオン交換基を導入可能な部位を有するモノマーを用いることもできる。このモノマーとしては、スチレン、α―メチルスチレン、クロロメチルスチレン、t−ブチルスチレン等のベンゼン環を有するモノマーが挙げられる。これらのモノマーにイオン交換基を導入する方法としては、クロロスルホン酸、濃硫酸、三酸化硫黄等のスルホン化剤によりスルホン化する方法等が挙げられる。これらのモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
プロトン酸性基を有するモノマーとしては、プロトン伝導性に優れるスルホン酸基を有するビニル化合物またはリン酸基を有するビニル化合物が好ましく、高い重合性を有する2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が特に好ましい。
電気分解等における電解質膜である場合に用いられるイオン交換基を有するモノマーとしては、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、マレイン酸、クロトン酸等のプロトン酸性基を有するモノマー、およびビニルピリジン、p−ビニル−N,N−ジメチルベンジルアミン等の塩基性モノマー等が挙げられる。これらのモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
ポリマー前駆体は、イオン交換能モノマーのみからなるものでもよく、イオン交換能モノマーと、このモノマーと共重合可能な他のモノマー(以下、「その他のモノマー」と称する。)とを含有していてもよい。更に、ポリマー前駆体は、イオン交換能モノマーと架橋性モノマーとを含有していてもよく、イオン交換能モノマーと、その他のモノマーと、架橋性モノマーとを含有していてもよい。
燃料電池等における電解質膜の形成に用いられるイオン交換能モノマーの場合、上記のその他のモノマーとしてプロトン酸性基を有さないモノマーを含有させることができる。また、その他のモノマーはイオン交換基を有するモノマーおよび架橋性モノマー等と共重合可能なモノマー等であれば特に限定されず、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、マレイミド類、スチレン類、有機酸ビニル類、アリル化合物およびメタリル化合物等が挙げられる。これらのモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
更に、電気分解等における電解質膜の形成に用いられるイオン交換能モノマーの場合、その他のモノマーとして、強度向上、親水性の調整等のため、イオン交換基を有さないモノマー、架橋性モノマー等を含有させることができる。これらのモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
架橋性モノマーとしては、1分子中に重合可能な官能基を2個以上有するモノマーを用いることができる。この架橋性モノマーとしては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルアミン、ジアリルオキシ酢酸塩等が挙げられる。また、架橋性モノマーは、炭素−炭素二重結合を有するものに限られず、反応速度はやや小さいものの、2官能以上のエポキシ化合物等を使用することもできる。このエポキシ化合物を用いる場合は、ポリマーのカルボキシル基等と反応することにより架橋結合が形成される。架橋性モノマーは1種のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
また、多孔質基材には必要に応じて重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等のポリマー前駆体以外の各種成分を含浸させることができる。
ポリマー前駆体等の含浸は、多孔質基材の細孔内にポリマー前駆体等を含浸させることにより行うことができる。この含浸の方法は特に限定されず、ポリマー前駆体等またはポリマー前駆体等を溶媒に溶解若しくは分散させた溶液若しくは分散液等に多孔質基材を浸漬する方法、或いはポリマー前駆体等またはポリマー前駆体等を溶媒に溶解若しくは分散させた溶液若しくは分散液等を多孔質基材に吹き付ける方法等が挙げられる。含浸の方法としては、前者の方が好ましい。この方法であれば、ポリマー前駆体等を多孔質基材により均一に含浸させることができる。なお、ポリマー前駆体等は特に多孔質基材の細孔内に均一に含浸させることが好ましく、そのためには多孔質基材の空孔率および細孔の平均孔径等と、ポリマー前駆体等または溶液等の粘度等とを勘案しながら含浸させる方法を選択し、かつ含浸させる条件等を設定することが好ましい。
ポリマー前駆体等の含浸は、連続的に搬送される長尺の多孔質基材の細孔内にポリマー前駆体等を含浸させることにより行うこともできる。
含浸の際の温度、時間等は特に限定されないが、温度は0〜120℃、更には5〜80℃、特に5〜50℃とすることが好ましい。時間は0.1秒〜1時間、更には1秒〜10分、特に1秒〜5分とすることが好ましい。また、温度を0〜120℃、更には5〜80℃、特に5〜50℃とし、かつ時間を0.1秒〜1時間、更には1秒〜10分、特に1秒〜5分とすることが好ましい。
ポリマー前駆体等の各々の成分は、そのもの自体が液体、特に含浸可能な程度の低い粘度を有する液体であればそのまま含浸させることができる。この場合の好ましい粘度は1〜10000mPa・sである。更に、そのままでは含浸させることができない場合は、ポリマー前駆体等の各々の成分を、それぞれ溶媒に溶解または分散させた溶液または分散液を含浸させることもできる。
この溶液または分散液の粘度も1〜10000mPa・sであることが好ましい。
また、重合開始剤等の各種の成分を用いる場合、これらはそれぞれポリマー前駆体とは別個に含浸させることができる。更に、重合開始剤等のうちの少なくとも1種とポリマー前駆体とを混合して同時に含浸させることもできる。また、重合開始剤等のすべてを、ポリマー前駆体等と混合して同時に含浸させることもできる。
更に、溶液または分散液として含浸させる場合、これらはそれぞれポリマー前駆体とは別個の溶液または分散液として含浸させることができる。また、重合開始剤等のうちの少なくとも1種とポリマー前駆体とを含有する溶液または分散液を使用し、各々の成分を同時に含浸させることもできる。更に、重合開始剤等のすべてとポリマー前駆体とを含有する溶液または分散液を使用し、各々の成分を同時に含浸させることもできる。
このように重合開始剤等のうちの少なくとも1種、好ましくは重合開始剤等のすべての成分と、ポリマー前駆体とを同時に含浸させれば、それぞれの成分を多孔質基材の細孔内により均一に含浸させることができる。
(2)樹脂フィルムで挟み込む工程
ポリマー前駆体の重合は、紫外線、電子線、可視光線等の活性エネルギー線の照射および加熱による熱重合等により行うことができる。この重合は、ポリマー前駆体等が含浸された前駆体含浸シートの両面に第1および第2の樹脂フィルムを供給して接触させて、前駆体含浸シートを2枚の樹脂フィルムで挟んだ状態で行われる。この接触の状態は、含浸されたポリマー前駆体等が重合前に脱落することがない限り特に限定されない。このようにポリマー前駆体等の脱落が防止されれば、表面から内部まで細孔内にポリマーが十分に充填され、欠陥のない電解質膜とすることができる。また、第1および第2樹脂フィルムと前駆体含浸シートとは、各々の界面に空気等の気体が侵入しないように密着していることが好ましい。このように空気等の侵入が防止されれば、特にラジカル重合性のポリマー前駆体を用いる場合に重合が阻害されず、電解質膜をより効率よく製造することができる。
この工程は次のように連続的に行うことができる。
連続に製造する場合は、第1の樹脂フィルムおよび第2の樹脂フィルムは、それぞれフィルム供給源から連続的に送出し、供給して前駆体含浸シートと接触させることができる。
フィルム供給源としては、通常、巻芯に捲回された長尺のフィルムが使用され、このフィルム供給源から送出され、供給された第1および第2の樹脂フィルムは、それぞれ前駆体含浸シートの一面と他面とに接触し、前駆体含浸シートは2枚の樹脂フィルムに挟持されて搬送される。そして、少なくとも一方の樹脂フィルムの側から紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することによりポリマー前駆体を重合させることができる。また、前駆体含浸シート等は水平方向に搬送されているが、この搬送方向は傾斜していてもよく、垂直方向に搬送してもよい。更に、下方から上方へ搬送してもよく、上方から下方へ搬送してもよい。
しかしながら、ラミネートの際に、ポリマー前駆体が樹脂フィルム間から溢れ出ることを防止するためには水平方向に搬送した方が好ましい。
なお、重合後、第1および第2の樹脂フィルムはそれぞれ前駆体含浸シートから剥離させ、巻芯に捲回して保管することができる。この巻芯に捲回された各々の樹脂フィルムは汚損、皺、伸び等により使用不可となるまで再利用することができる。
第1および第2の樹脂フィルムを形成する樹脂は特に限定されない。更に、第1および第2の樹脂フィルムは同種の樹脂からなるものでもよいし、異なる樹脂からなるものでもよい。また、樹脂は、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂でもよいが、強度の大きいフィルムを容易に形成することができる熱可塑性樹脂が好ましい。この熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、セルロース、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂のうちでは、含浸されている化合物等および紫外線や電子線等の活性エネルギー線の照射、熱重合の際の過熱等により変質し難く、かつフィルムが変形し難いポリエステルおよびポリオレフィンが好ましい。また、ポリエステルおよびポリオレフィンからなるフィルムは、活性エネルギー線の照射により重合させる場合に、活性エネルギー線を透過させ易いという点でも好ましい。なお、ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレートが、ポリオレフィンとしてはポリプロピレンがより好ましい。
また、活性エネルギー線を照射して重合させる場合は、第1樹脂フィルムおよび第2樹脂フィルムとして活性エネルギー線が透過する、即ち、活性エネルギー線に対して透明なフィルムを用いることが好ましい。この活性エネルギー線の透過度[(フィルムを透過した後の線量/フィルムに照射された線量)×100(%)]は5%以上、特に30%以上であることが好ましい。更に、紫外線および可視光線を用いる場合は無色透明であることが好ましく、着色透明であってもよいが、重合開始剤の重合開始機能が発現される波長域においては透明であるか、少なくとも透明性が高いことが好ましい。また、電子線を用いる場合は目視では不透明でもよいが、重合時等にフィルムを通して外観等を確認することができるため透明であるか、少なくとも透明性が高いことが好ましい。
第1および第2の樹脂フィルムの厚さは特に限定されない。また、第1および第2の樹脂フィルムの厚さは同じでもよく、異なっていてもよい。これら第1および第2の樹脂フィルムの厚さは3〜100μm、更には5〜80μm、特に7〜60μmであることが好ましい。各々のフィルムの厚さが3μm未満であると、皺が発生し易く、重合時に前駆体含侵シートを十分に支持することができないこともあり好ましくない。一方、厚さが100μmを超えると、重合に活性エネルギー線を用いる場合に、フィルムに吸収されてしまうため、使用する活性エネルギー線量が多くなり、好ましくない。
更に、重合に活性エネルギー線を用いる場合は、第1および第2の樹脂フィルムの各々の厚さを異ならせ、一方が薄く、他方が厚くすることも可能である。このように異なる厚さとし、薄い樹脂フィルムの側から活性エネルギー線を照射することにより、樹脂フィルムに吸収される活性エネルギー線量を低減することができ、少ない活性エネルギー線量で十分に重合させることができる。一方、厚い樹脂フィルムにより前駆体含浸シートを支持することができる。薄い樹脂フィルムの厚さは、厚い樹脂フィルムの厚さの1/10〜1/2、更には1/8〜1/3、特に1/6〜1/4であることが好ましい。また、薄い樹脂フィルムの厚さは3〜30μm、特に5〜20μm、更に7〜15μmであることが好ましい。薄い樹脂フィルムの厚さが3〜30μmであればポリマー前駆体を効率よく重合させることができる。一方、厚い樹脂フィルムの厚さは35〜80μm、更には40〜65μm、特に45〜55μmであることが好ましい。厚い樹脂フィルムの厚さが35〜80μmであれば前駆体含浸シートを確実に支持することができる。
なお、第1および第2の樹脂フィルムの各々の厚さのばらつきは、それぞれ好ましくは±10%以下、より好ましくは±2%以下である。
第1および第2の樹脂フィルムは、ポリマー前駆体の重合後のポリマーを充填させたシートから容易に剥離することができれば、そのまま前駆体含浸シートと接触させてもよいが、少なくとも前駆体含浸シートと接触する面に離型剤を塗布し、処理してもよい。この離型剤としては、シリコン系離型剤、フッ素系離型剤、高級脂肪族系離型剤等の各種のものを用いることができる。このように離型剤により処理することにより、重合後、第1および第2の樹脂フィルムとポリマー充填シートとを速やかに剥離させることができ、前駆体含浸シート等を円滑に搬送することができるので好ましい。
(3)重合工程
前駆体含浸シートに含侵されたポリマー前駆体を重合させる方法は特に限定されず、前記のように、紫外線、電子線、可視光線等の活性エネルギー線の照射による重合、加熱による熱重合等により行うことができる。これらの方法のうちでは活性エネルギー線の照射による重合が好ましく、この方法によれば電解質膜を容易にかつ効率よく連続生産することができる。また、活性エネルギー線としては紫外線および電子線がより好ましい。紫外線を用いる場合は、電子線に比べて装置が簡易であり、照射コストの面でも有利である。一方、電子線を用いた場合、多孔質基材との間に結合が生じ易く好ましい。更に、電子線は多孔質基材に対する透過性に優れ、特に多孔質基材が炭化水素系ポリマーからなるときは、照射条件によってはポリマーに架橋構造を導入することもできる。また、電子線照射による重合はラジカル系光重合開始剤等を必要としないという点でも好ましい。
紫外線を照射してポリマー前駆体を重合させる場合、多孔質基材の細孔の表面に予め紫外線によりラジカルを発生するラジカル系光重合開始剤を付着させておくことも可能である。ラジカル系光重合開始剤は、この開始剤を含有する溶液または分散液を多孔質基材の細孔内に含侵させ、その後、溶剤を除去することによって付着させることが好ましい。このようにすれば、開始剤を多孔質基材の細孔内に均一に付着させることができる。
ラジカル系光重合開始剤は特に限定されないが、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、チオアクリドン系等の炭素−水素結合から水素を引き抜くことによってラジカルを生成させることができる芳香族ケトン系ラジカル重合開始剤が好ましい。
ベンゾフェノン系開始剤としては、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4‘−メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキシ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、4,4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。また、チオキサントン系開始剤としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン等が挙げられる。更に、チオアクリドン系開始剤としては、チオアクリドン等が挙げられる。
ラジカル系光重合開始剤としては、ベンゾイン系開始剤、アセトフェノン系、ベンジル系等の開始剤を用いることもできる。
ベンゾイン系開始剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。また、アセトフェノン系開始剤としては、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モンフォリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシジ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等が挙げられる。更に、ベンジル系開始剤としては、ベンジル等が挙げられる。
ラジカル系光重合開始剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
ラジカル系光重合開始剤は、上記のように溶液または分散液として用いることが好ましい。この溶液または分散液における開始剤の濃度は0.01〜10質量%、特に0.1〜5質量%であることが好ましい。この濃度が0.01質量%未満であると十分に重合しないことがある。一方、10質量%を越えると開始剤の結晶が析出して多孔質基材の細孔の一部を塞いでしまうことがある。このように細孔の一部が塞がれてしまうとポリマー前駆体等が十分に充填されないことがある。また、多孔質基材の全体に渡って均等に充填されないこともあり、いずれにしても好ましくない。
電子線を照射してポリマー前駆体を重合させる場合、照射する電子線の加速電圧はポリマー前駆体の種類等にもよるが、150〜500KeV、特に150〜200KeVであることが好ましい。加速電圧が低すぎると電子線が発生し難く、高すぎると多孔質樹脂シートが劣化して強度が低下することがある。また、照射量もポリマー前駆体の種類によるが、10〜10000mJ/cm2、更には100〜5000mJ/cm2、特に200〜2000mJ/cm2であることが好ましい。照射量が10mJ/cm2未満であると十分に重合させることができず、10000mJ/cm2を越えると多孔質樹脂シートが劣化して強度が低下することがあり好ましくない。
電子線を照射して重合させた後、必要に応じて加熱または紫外線の照射等により後硬化させることもできる。そのための重合開始剤を予めポリマー前駆体に配合しておくこともできる。この重合開始剤としては、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物、上記過酸化物と亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアミジンスルフィン酸、アスコルビン酸等の還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤、2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ系ラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
後硬化の方法としては、重合反応の制御がし易く、簡便なプロセスで生産性よく所望の機能性膜が得られる紫外線の照射による硬化が好ましい。また、紫外線の照射により後硬化させる場合、ポリマー前駆体を含有する溶液または分散液にラジカル系光重合開始剤を予め溶解または分散させておくことがより好ましい。このラジカル系光重合開始剤としては前記のもの等を使用することができる。更に、このラジカル系光重合開始剤の配合量はポリマー前駆体を100質量%とした場合に、0.001〜1質量%、特に0.001〜0.5質量%、更に0.01〜0.5質量%であることが好ましい。
後硬化の際、第1および第2の樹脂フィルムは、前駆体含浸シートにそのまま接触させておいてもよい。また、ポリマー前駆体が多孔質基材の細孔内に十分に保持される程度に重合が進んでおれば、第1および第2の樹脂フィルムの少なくとも一方が剥離されていてもよい。
(4)加熱工程
上記工程により得られた多孔質基材の細孔内に電解質ポリマーを充填してなるポリマー充填シートに対して、特定の加熱処理を行うことにより、多孔質基材の孔の表面近傍が若干塞がりこれにより得られた電解質膜がプロトン伝導性を維持したまま、メタノール透過阻止性を向上させることができることを本発明者等は見出した。
この加熱は、ポリマー充填シートに対して行うものであり、前述の後硬化の加熱とは異なるものである。
従って、この加熱はポリマー充填シートから少なくとも一方の樹脂フィルムを剥離した状態で行われる。
加熱処理は、100℃以上で行う必要があり、高温の場合は短時間ならば目的は達成されるが、制御が困難であることから、好ましい加熱条件は、100〜150℃で30秒〜2分間である。
100℃未満では、多孔質樹脂シートの表面改質が不十分であり、150℃を越えると多孔質基材が劣化する恐れがある。また、30秒未満では多孔質基材の表面改質が不十分であり、2分を越えると温度によっては多孔質基材が劣化するおそれがある。
より好ましくは、120〜140℃、1〜1.5分である。
加熱処理は、熱風吹付け方式であることが好ましい。この方法によると多孔質基材の表面を集中的に加熱することができ、効率的に処理が行われると共に、多孔質基材の内部への加熱が抑制されるため、多孔質基材の劣化を防止することができる。
なお、熱風の風速は、ポリマー含有シート表面で、3〜15m/sが好ましい。
3m/s未満では、表面改質が不十分であり、一方15m/sを越えると多孔質基材の収縮が激しくなりいずれも好ましくない。より好ましい範囲は5〜10m/sである。
含浸工程、ラミネート工程、重合工程および加熱工程は、好ましくは連続して行われる。この連続製造方法では、長尺状の多孔質基材が連続的に搬送され、ポリマー前駆体等が含浸されて前駆体含浸シートが形成され、その後、この前駆体含浸シートの一面と他面とに第1および第2の樹脂フィルムが連続的に供給されて接触し、このように前駆体含浸シートが第1および第2の樹脂フィルムにより挟まれた状態でポリマー前駆体の重合がなされ、ポリマー充填シートが形成され、次いで、このポリマー充填シートから第1および第2の樹脂フィルムが剥離される。このように一連の操作が連続した工程によりなされる。また、得られた長尺状の電解質膜は巻芯に連続的に巻き取る等の方法により製品として保管することができる。更に、電解質膜を効率よく製造するため、その他の工程がある場合はその他の工程も含めて連続して行われる。
この連続製造方法は、例えば、図1のような工程により行うことができる。即ち、連続的に搬送される長尺の多孔質基材1を、容器に入れられたポリマー前駆体等を含有する溶液または分散液3と接触させ(含浸工程)、その後、このポリマー前駆体等が含浸され、得られた前駆体含浸シート11に、樹脂フィルム供給源211、221から連続的に供給される第1の樹脂フィルム21および第2の樹脂フィルム22を接触させ、前駆体含浸シートが2枚の樹脂フイルムにより挟持された状態で搬送し、電磁波の照射源Eから波長300〜400nmの電磁波を照射してポリマー前駆体を重合させ(重合工程)、次いで、第1および第2の樹脂フィルムを、多孔質基材にポリマーが充填されかつ付着されてなるポリマー充填シートから剥離し、得られた電解質膜5を加熱し(加熱工程)、その後巻芯に連続的に巻き取って効率よく製造することができる。更に、製品保護のため、巻き取られる機能性膜の少なくとも片面(図1では両面)に、ポリエステル、ポリオレフィン、フッ素樹脂等からなる保護フィルム6を積層させながら巻き取ることもできる。
なお、含浸工程、ラミネート工程、重合工程および加熱工程以外のその他の工程としては、ポリマー充填シートの表面に残存するポリマー除去工程、その工程の後の乾燥工程、この乾燥工程の後の検査工程、調湿工程等が挙げられる。これらの他の工程も連続した一連の工程として実施される。
本発明の方法により製造される電解質膜は、固体高分子型燃料電池、特に直接メタノール形燃料電池における電解質膜として有用である。このように、燃料電池に電解質膜を用いる際は、電解質膜を、白金等の触媒が付与された2枚の電極間に挟持し、その後、加熱プレス等によって一体化した電解質膜電極接合体を形成し、この接合体を燃料電池セルに組み込んで使用することができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
以下の各例において、プロトン伝導度およびメタノール透過性は次の方法により求めた。
(プロトン伝導性の評価)
作成した膜を25℃の蒸留水中に1時間浸漬し、これを表面が水で濡れた状態のまま白金電極を貼り付けたガラス板2枚に挟み、測定用試料とした。その後、100Hzから40MHzの交流インピーダンス測定を実施して、プロトン伝導度を測定した。伝導度が高いほど、電解質膜中をプロトンが移動し易く、燃料電池用途に優れていることを示す。
(メタノール透過性の評価)
25℃における浸透実験を以下のように行った。電解質膜をガラス製セルに挟み、一方のセルに10質量%メタノール水溶液を入れ、もう一方のセルに純水を入れた。純水側に浸透するメタノール量をガスクロマトグラフ分析により経時的に測定し、定常状態になった時の透過係数を測定した。透過係数が低いほど、電解質膜中をメタノールが透過し難く、燃料電池用途に適していることを示す。
比較例1
ポリマー前駆体として2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸450g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド50gを使用し、このポリマー前駆体と、紫外線重合開始剤(チバスペシャルティーケミカル社製、商品名「ダロキュア1173」)0.5g、ノニオン性界面活性剤5gとを、水500gに溶解させて溶液を調製した。その後、架橋ポリエチレン製多孔質基材(厚さ16μm、空孔率40%、平均孔径約0.1μm)を用意し、上記溶液が入れられた容器中を通過させて多孔質基材にポリマー前駆体等を含浸させ、前駆体含浸シートを作製した。次いで、前駆体含浸シートを2枚の厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムで挟み込んだ状態で、ラミネート装置にかけ、ポリマー前駆体溶液の一部をしごき出した。次いで、PETフィルムに挟んだ状態で高圧水銀ランプにより両面から、フィルム透過後の紫外線が合計で2000mJ/cm2の照射量となるように紫外線を照射してポリマー前駆体を重合させポリマー充填シートを得た。その後、両面からPETフィルムを剥離し、電解質膜を得た。この電解質膜のプロトン伝導率およびメタノール透過係数を測定し、結果を表1に示した。
実施例1
比較例1と同様にして得られたポリマー前駆体を重合させたポリマー充填シートから、上部PETフィルムをはがし、ポリマー充填シートと下部PETフィルムの2層構造とした。さらに、熱風温度140℃、風速3.5m/sにて1分間加熱処理し、下部PETフィルムをはがし、電解質膜を得た。この電解質膜のプロトン伝導率およびメタノール透過係数を測定し、結果を表1に示した。
実施例2
比較例1と同様にして得られたポリマー前駆体を重合させたポリマー充填シートから、上部PETフィルムをはがし、ポリマー充填シートと下部PETフィルムの2層構造とした。さらに、熱風温度140℃、風速7m/sにて1分間加熱処理し、下部PETフィルムをはがし、電解質膜を得た。この電解質膜のプロトン伝導率およびメタノール透過係数を測定し、結果を表1に示した。
実施例3
比較例1と同様にして得られた電解質前駆体を重合させた多孔性膜から、上部PETフィルムをはがし、多孔性基材と下部PETフィルムの2層構造とした。さらに、熱風温度140℃、風速14m/sにて1分間加熱処理し、下部PETフィルムをはがし、電解質膜を得た。この電解質膜のプロトン伝導率およびメタノール透過係数を測定し、結果を表1に示した。
表1から明らかなように、加熱処理することによりメタノール透過係数が低下するのが分かる。また、風速が強いほどメタノール透過係数が低下することが分かる。
なお、各実施例で使用された架橋ポリエチレン製多孔質基材およびそれを熱風温度140℃、風速7m/sにて1分間加熱した場合の同基材の表面状態を電子顕微鏡写真で比較した。加熱したものは、表面の孔がかなり閉塞されていた。
Figure 2006172764
連続的に電解質膜を製造するための工程の一例を示すフローチャートである。 各実施例で使用された架橋ポリエチレン製多孔質基材の表面を写した、倍率2万倍の電子顕微鏡写真である。 同じく加熱処理後のポリエチレン製多孔質基材の表面を写した、倍率2万倍の電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1 多孔質基材(架橋ポリエチレン製多孔質基材)
11 前駆体含浸シート
12 ポリマー充填シート
21 第1の樹脂フィルム
22 第2の樹脂フィルム
211、221 フィルム供給源
3 ポリマー前駆体等を含有する溶液または分散液
E 活性エネルギー線の照射源
H 加熱装置
5 電解質膜
6 保護フィルム

Claims (4)

  1. 少なくとも下記(1)〜(4)の工程を有することを特徴とする電解質膜の製造方法。
    (1)多孔質基材にイオン交換基またはイオン交換基に変換し得る基を有するモノマーを含有するポリマー前駆体を含浸させる工程、
    (2)前記多孔質基材にポリマー前駆体が含浸されてなる前駆体含浸シートを樹脂フィルムで挟み込む工程、
    (3)前記ポリマー前駆体を重合させてポリマーを生成させる重合工程、並びに
    (4)得られたポリマー含有シートを100℃以上で加熱処理する工程。
  2. 多孔質基材が、加熱処理により孔が閉塞する性質を有するポリオレフィンである請求項1に記載の電解質膜の製造方法。
  3. 加熱処理が、熱風の吹付けである請求項1または2に記載の電解質膜の製造方法。
  4. 熱風の風速が3〜15m/sである請求項3に記載の電解質膜の製造方法。
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