JP2009218154A - 膜電極接合体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭化水素骨格を有するポリマー電解質を含む電解質膜と電極との電気的接合性を改善することにより、従来に比べて大幅に改良された電池性能を発揮する膜電極接合体を得るための製造方法を提供する。
【解決手段】該ポリマー電解質が充填された構造を含む電解質膜の表面に、酸素の存在下で活性エネルギー線を照射するか、または酸素を含まない雰囲気で照射した後に酸素を含む雰囲気に曝露する工程の後に、電解質膜と電極とを接合させて膜電極接合体を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は電解質膜と電極とからなる膜電極接合体の製造方法に関するもので、当該膜電極接合体は電気化学装置、特に燃料電池、さらに詳細には直接アルコール形燃料電池用途に優れたものである。
高分子電解質膜を用いた電気化学装置の一種である固体高分子形燃料電池(PEFC、Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、低温動作、高出力密度、環境負荷が少ないという優れた特長を有している。中でも、メタノール燃料のPEFCは、ガソリンと同様に液体燃料として供給が可能なため、電気自動車用動力や携帯機器用電源として有望であると考えられている。
燃料としてメタノールを用いる場合のPEFCは、改質器を用いてメタノールを水素主成分のガスに変換するメタノール改質形と、改質器を用いずにメタノールを直接使用する直接メタノール形(DMFC、Direct Methanol Polymer Fuel Cell)の二つのタイプに区分される。DMFCは、改質器が不要であるため、軽量化が可能である等の大きな利点があり、その実用化が期待されている。
しかし、DMFC用の電解質膜として、在来の水素を燃料とするPEFC用の電解質膜であるポリパーフルオロアルキルスルホン酸膜、例えばDu Pont社のNafion(登録商標)膜等を用いた場合には、メタノールが膜を透過してしまうため、起電力が低下し、さらに燃料効率が低いという問題がある。さらに、これらの電解質膜は非常に高価であるという経済上の問題も有している。
上記の問題を解決する手段として、ポリパーフルオロアルキルスルホン酸膜に代えて炭化水素骨格を有するポリマー電解質膜がいくつか提案された(例えば特許文献1)。このとき、電解質膜から電極内触媒層に存在する触媒までのプロトンを輸送する媒体となる電極内樹脂についても各種の電解質樹脂が提案されたが、いずれにしても電解質膜と電極とを貼り合わせて膜電極接合体としたときに密着性が悪く、剥がれ易いとか、界面の接触抵抗が大きいといった問題が起きた。
この問題に対して、上記の特許文献1の段落番号「0074」には、「高分子電解質膜1と触媒層2との間に必要に応じて前述したような高分子電解質からなる接着層を設けてもよい。」ことが記載されているが、その効果は十分とは言えなかった。
また、特許文献2には外力に対して変形し難い多孔性基材に電解質ポリマーを充填してなる電解質膜の提案がなされている。このように多孔性基材の空孔内部に電解質ポリマーを充填してなる電解質膜をDMFC用途に用いると、燃料であるメタノール水溶液で電解質ポリマーが膨潤しようとしても、基材によってポリマーの変形が抑制されるために、電解質ポリマー内への燃料の浸透が少なく、その結果として燃料極から空気極への燃料の透過が起こり難いといわれている。
しかしながら、このような方法でメタノールの透過を抑制した電解質膜を用いて膜電極接合体(MEA)を作成しDMFCに組み込んで発電を行うと、出力が安定するまでに時間がかかるという問題を有していた。すなわち、運転開始直後から徐々に内部抵抗が下がり、それに伴って最高出力が上昇するが、これらの数値が定常状態になるまでの時間が非常に長いため、低出力の状態が長時間続くという問題があった。
本発明者らは、この問題に対して特許文献3において、多孔性基材に電解質ポリマーを充填してなる電解質膜を作成する際に、膜の表面に多孔性基材の一部を露出させることで、電極との接着性が向上することを提案したが、このような方法は膜と電極を強く接着して耐久性を向上するためには高い効果が得られる反面、イオン伝導性のない多孔性基材が露出している部分に接した電極触媒が機能し難くなり、特に多孔性基材がポリオレフィンなどの撥水性材料からなる場合はその影響が大きくて効果が出難いという問題があった。
特開2007−134164号公報 特開2002−83612号公報 国際公開WO2005/98875号パンフレット
従来のパーフルオロスルホン酸膜に代えて、炭化水素骨格を有するポリマー電解質膜や多孔性基材に該電解質ポリマーを充填した構造を持った電解質膜には電極との電気的接合性に問題があり、膜電極接合体における物理的な接着強度を改善しても初期段階では電池性能が低いという問題があった。
本発明は上記問題を鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、炭化水素骨格を有するポリマー電解質および/または多孔性基材に該ポリマー電解質が充填された構造を含む電解質膜と、電極とを含む膜電極接合体の電気的接合性を改善することにより、従来に比べて初期段階の電池性能が大幅に改良された膜電極接合体の製造方法を提供することである。
本発明者等は、鋭意検討の結果、多孔性基材に該ポリマー電解質が充填された構造を含む電解質膜の表面に遠紫外線のように高いエネルギーを有する活性エネルギー線を酸素の存在下で照射するか、照射後に酸素を接触させることによって得られた膜電極接合体は、内部抵抗が低下する結果、燃料電池として評価したときの出力が著しく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の製造方法による炭化水素骨格を有するポリマー電解質を含む膜電極接合体は、従来の膜電極接合体に比べて、燃料電池として発電させた場合の内部抵抗が低く、その結果得られる出力が高くなるので、直接メタノール形燃料電池などの燃料電池用電解質として好適である。その理由は定かではないが、活性エネルギー線を照射中または照射直後に酸素が接触することによって、電解質膜の表面が親水化され電解質膜内部のプロトン伝導に関与する成分が表面に露出しやすくなるなど、電極との接触を改善するためであると推察している。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる電解質膜は、炭化水素骨格を有する電解質ポリマーを構成材料に使ったものである。
炭化水素骨格を有する電解質ポリマーとしての具体例としては、例えばスルホン酸基、リン酸基などを有する炭化水素骨格を有するモノマーを重合して得られるものや、予め重合された炭化水素骨格を有するポリマーをスルホン化するなどして重合後にイオン伝導性を付与したものなどが挙げられる。また、炭化水素骨格を有していないフッ素系の電解質ポリマーと炭化水素骨格を有するポリマーを複合化させたものであっても良い。
本発明の電解質膜に用いられる電解質ポリマーが、スルホン酸基、リン酸基などのイオン伝導性官能基を有するモノマーを重合して得られるものの場合、重合方法は特に限定しないが、例えばラジカル重合性基とイオン伝導性官能基またはその塩をラジカル重合して得られるものや、ポリエーテルスルホンなど重縮合によって得られる場合は、縮合反応可能な官能基とイオン伝導性官能基またはその塩を有するモノマーを重縮合して得られるものがある。以降の記述において特に説明はしないが、イオン伝導性官能基を塩として重合させた場合、官能基が塩のままではイオン伝導性を発現しにくいので、電解質膜として使用する前に官能基の対イオンをプロトンへとイオン交換して用いる。
<ラジカル重合による電解質ポリマーの製造方法>
本発明の電解質膜に用いる電解質ポリマーをラジカル重合によって製造する場合、ラジカル重合性を有する炭素−炭素二重結合とイオン伝導性官能基またはその塩を併せ持つモノマーを重合して電解質ポリマーを製造することができる。その場合、発電に伴って発生する水や燃料に電解質ポリマーが溶解しにくくするなどの目的で、炭素−炭素二重結合を2個以上有する化合物を併用して架橋構造を形成することが好ましい。
上記のモノマーとしては、1分子中にラジカル重合性を有する炭素−炭素二重結合とイオン伝導性官能基またはその塩を併せ持つものが含まれているもの少なくとも1種類が含まれていることを必須とするが、1分子中に重合性の炭素−炭素二重結合を有するがイオン伝導性官能基を有しないモノマーや、電極との接合性向上や、電解質膜の親水性疎水性調製などの目的でこれらの構成モノマーと共重合可能なモノマーを共重合することも可能である。
ラジカル重合の方法は、加熱または紫外線などの光によってラジカルを発生する重合開始剤を添加して、重合開始剤に適した条件で重合させる方法や。重合開始剤を添加せず電子線のような活性エネルギー線を照射して重合する方法などが知られているが、本発明においては、重合方法を特に限定しない。
イオン伝導性官能基を有するモノマーは特に限定されるものではないが、例えばスルホン酸モノマーとして従来から知られている、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミドシクロヘキサンスルホン酸など、およびこれらの塩を挙げることができる。この中では重合性が良好なアクリルアミド派生物のモノマーやスチレンスルホン酸を好ましく用いることができる。アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、ビニルスルホン酸は重合性がやや劣るが、少量添加することでスルホン酸導入量をふやすことができるので好ましい。
上記のモノマーに加え、(メタ)アクリル酸を少量併用すると、耐酸化性が向上するため好ましい。(メタ)アクリル酸はカルボキシル基を有しているので、伝導度にも寄与することができるし、少量の添加でも耐酸化性向上に効果があるため、モノマーと架橋剤からなる樹脂組成の内、2〜50質量%程度の範囲で用いるのが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸はメタクリル酸とアクリル酸とを総称する慣用表現である。
本発明の電解質膜に用いられる電解質ポリマーは架橋剤を用いて架橋構造を導入して使用することができる。架橋構造を導入する方法としては、1分子中に炭素−炭素二重結合を2個以上含有する化合物を併用して共重合すると容易に架橋構造を導入することができ好ましい。特に2官能以上の多官能(メタ)アクリルアミド類は、モノマーとの共重合性が良好で、モノマーと架橋剤の比率を調整しやすく好ましい。その具体例としては、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−プロピレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ブチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,4−ジ(メタ)アクリルアミドシクロヘキサン、N,N’−ビス(メタ)アクリルアミドピペラジンなどが挙げられる。
この内、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−ビス(メタ)アクリルアミドピペラジンは水溶性が高いため、一般に水溶性が高いイオン伝導性基含有モノマーと併用すれば、有機溶剤を使用しなくても水に溶解させることができ好ましい。さらにN,N’−ビス(メタ)アクリルアミドピペラジンは耐酸化性が高い架橋電解質ポリマーを得ることができ特に好ましい。
また、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートを添加することも好ましい。好ましい添加量は0.1質量%以上10質量%以下であり、重合物の耐加水分解性を向上させることができる。
<重縮合による電解質ポリマーの製造方法>
本発明で用いることができる電解質ポリマーを得る方法の内、イオン伝導性基を有するモノマーを重合する方法はラジカル重合によって得られるものだけではない。その一例として重縮合により重合させるポリマーが知られている。重縮合ポリマーとしては、例えば水酸基またはそのアルコキシドとハロゲンから脱ハロゲン化水素または脱塩反応を行って重合する例が一般的である。その際に用いるモノマーは一分子中に水酸基とハロゲンをそれぞれ1個ずつ有するモノマーを用いても良いし、一分子中に水酸基を2個有するモノマーと一分子中にハロゲンを2個有するモノマーを併用して重縮合することもできる。
これらのモノマーの内、一部または全部を、スルホン化などの方法で分子内にイオン伝導性官能基を導入したものを用いると電解質ポリマーを得ることができる。
モノマーをスルホン化する場合はベンゼン環を有するモノマーをスルホン化試薬によってベンゼン環を直接スルホン化する方法が知られている。
また、ブタンスルトンなどの環状スルホン酸エステルでアルキルスルホン化する場合は、モノマー中に水酸基、アミノ基などの活性水素を有する基を持つモノマーを使い、予め水酸基やアミノ基などをアルキルスルホン化して重合に用いることができる。この場合は重合に寄与する水酸基やアミノ基までスルホン化されると高分子量の重合体ができないので、通常は2個のハロゲンと1個以上の水酸基を有するモノマーの水酸基をアルキルスルホン化して用いるのが好ましい。
<後スルホン化による電解質ポリマーの製造方法>
本発明の電解質膜に用いられる電解質ポリマーが、予め重合された炭化水素骨格を有するポリマーをスルホン化するなどして重合後にイオン伝導性を付与したものである場合は、例えばスチレンやポリエーテルスルホンのようにベンゼン環を有するポリマーにクロロスルホン酸、発煙硫酸、濃硫酸などのスルホン化剤を反応させるなどの方法でスルホン化する方法、水酸基などを有するポリマーにブタンスルトンなどの環状スルホン酸エステルを反応させてアルキルスルホン酸を導入する方法、チオール基を有するポリマーを酸化してスルホン酸に変換する方法が好ましく用いられる。
ポリマー中にベンゼン環を有しているポリマーはクロロスルホン酸、発煙硫酸、濃硫酸などのスルホン化剤で容易にスルホン化することができるため好適で、ベンゼン環を有するポリマーの具体例としては、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレンなどが好ましいものとして挙げられる。
<多孔性基材と組み合わせる場合の製造方法>
本発明の電解質膜の中では、多孔性基材の空孔内部に電解質ポリマーが充填された構造であることが好ましい。その理由は、幾つか挙げられるが、その一つに電解質ポリマーが空孔内部に充填されているために、DMFCなどの液体燃料を用いる燃料電池に使用する際に、電解質ポリマーが燃料で膨潤されにくくなり、その結果として、燃料であるメタノールなどが燃料極から空気極に透過して燃料利用効率を下げる現象を防止できることがある。第二に、多孔性基材の一部を電解質膜の表面に露出させることによって炭化水素骨格を有するポリマー電解質を含む電解質膜で生じやすい電極との接着不良を改善できることもあげられる。また、電解質ポリマーは発電によって生じた水分や燃料を吸収して強度が低下しやすいが、多孔性基材を併用すると高い強度を保持できるという利点もある。
本発明で用いる電解質ポリマーは活性エネルギー線照射の効果が顕れ易いものとして、炭化水素骨格を有するものを用いることが必要であるが、その理由としては、炭素−水素結合は活性エネルギー線で水素が引き抜かれてポリマーにラジカルが生じやすく、ここに酸素等が反応して親水性官能基が生じるからだと考えられる。これに対し、広く用いられている炭化フッ素系電解質ポリマーは炭素−水素結合に比べて結合エネルギーが高い炭素−フッ素結合を有しているため、活性エネルギー線ではフッ素が引き抜かれ難いと考えられ、活性エネルギー線を照射しても表面の親水化の効果は顕れ難い。
したがって、炭素−フッ素結合が一部に含まれていても本発明の効果を損ねるものではなく、電解質ポリマーの主成分すなわち50質量%以上が炭化水素骨格を有するものであれば本発明の効果を得ることができる。
本発明で用いる多孔性基材に使用する材質は、メタノールおよび水に対して実質的に膨潤しない材料であることが好ましく、特に乾燥時に比べて水による湿潤時の面積変化が少ないか、ほとんどないことが望ましい。
面積増加率は、浸漬時間や温度によって変化するが、本発明では25℃における脱イオン水に1時間浸漬したときの面積増加率が、乾燥時を基準として比較して最大でも20%以下であることが好ましい。
また本発明で用いる多孔性基材は、引張り弾性率が500〜5000MPaであるものが好ましく、さらに好ましくは1000〜5000MPaであり、また破断強度が50〜500MPaを有するのが好ましく、さらに好ましくは100〜500MPaである。 これらの数値は高い方が、充填されたポリマーのメタノールや水により膨潤しようとする力による膜の変形を抑えるために好ましく、また同時に低い方が基材に柔軟性が増すために、電極接合時のプレス成形や電池に組み込む際の締付け等によって膜がひび割れたりすることを防止できるので上記の範囲内がこのましいものである。
また、多孔性基材は燃料電池を運転する際の温度に対して耐熱性を有するものがよく、外力が加えられても容易に延びないものがよい。
そのような性質を持つ材料として、無機材料ではガラスまたはアルミナ若しくはシリカ等のセラミックス等が挙げられる。また、有機材料では芳香族ポリイミド等のエンジニアリングプラスチック、ポリオレフィンを放射線の照射や架橋剤を加えて架橋したり延伸する等の方法で、外力に対して延び等の変形をし難くしたもの等が挙げられる。これらの材料は単独で用いても2種以上を積層する等により複合化して用いてもよい。
これらの多孔性基材の中では、延伸ポリオレフィン、架橋ポリオレフィン、延伸後架橋されたポリオレフィン類からなるものは化学的な安定性が高い点、得られた電解質膜の強度が高い点、活性エネルギー線で水素が引き抜かれやすく本発明の効果が容易に得られるなどの点から好ましい。
本発明で用いる多孔性基材の空孔率は、基材の外形容積を基準として5〜95容積%が好ましく、さらに好ましくは5〜90容積%、特に好ましくは20〜80容積%である。また平均空孔径は0.001〜100μmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜1μmの範囲である。空孔率が大きい方が面積当たりのプロトン伝導性基であるプロトン酸性基が多くなるので燃料電池としては出力が大きくなり、一方で小さい方が膜強度が向上するので上記の範囲が好ましいものである。
さらに基材の厚さは200μm以下が好ましい。より好ましくは1〜150μm、さらに好ましくは5〜100μm、特に好ましくは5〜50μmである。膜厚が厚い方が膜強度が向上しメタノールの透過量も減るが、一方で薄い方が膜抵抗が小さくなって燃料電池の出力が向上するから上記の範囲が好ましい。
多孔性基材の空孔内に電解質ポリマーを充填する方法に関しては、特に制限はなく公知の方法が利用できる。例えば電解質ポリマーの前駆体となるモノマー溶液やポリマー溶液若しくは分散液を多孔性基材に含浸させ、その後にポリマー前駆体を重合および架橋させる方法や単に溶剤を揮発除去する方法が挙げられる。その際、充填する混合液には必要に応じて架橋剤、重合開始剤、触媒、硬化剤、界面活性剤等を含んでいてもよい。
<活性エネルギー線処理>
本発明で用いることができる活性エネルギー線処理の種類としては、紫外線照射、コロナ放電処理、プラズマ処理、電子線照射などがある。これらの処理はプラスチックフィルムの接着性改善、印刷性改善、親水化処理などの目的やラジカル重合性を有するアクリル化合物の重合などにも用いられている。いずれの場合も表面処理する際の原理としては、まず活性エネルギー線を照射中または照射後に空気などの酸素を含む雰囲気にさらされることで、表面に主として酸素由来の親水性官能基が形成することであると思われる。本発明の効果はこのような親水性官能基の生成によるだけのものではなく、照射によって表面付近の親水性が顕著に向上することと、電解質膜内のイオン伝導性を有する親水部分との連続性が高まって界面でのプロトン伝導性が高まり、電極と貼り合わせて膜電極接合体とした場合に、電極内の電解質と接合界面を介した電解質膜内とのプロトン伝導がスムーズになるために電池性能が向上するものと考えられる。
活性エネルギー線のうち、紫外線としては、本発明の目的で使用する場合、遠紫外、真空紫外と呼ばれる波長が200nm以下10nm以上の短波長領域の電磁波を用いるとよく、そのような波長を発生させることができるエキシマランプなどの光源から紫外線を照射して電解質膜表面を処理することができるため、真空や高電圧などの付帯設備が不要なため簡単に利用することができ好ましい。
紫外線よりも強力で、短時間で効果の得られる方法としては、コロナ放電処理やプラズマ処理も比較的広く用いられている表面改質方法で、同様の効果が得られるから好ましく用いることができる。電子線は物質を透過する力が強く、照射量を調整すれば同様の効果が得られる。ポリエチレンなどは電子線照射でポリマー鎖の切断が起きやすく、その結果強度が低下しやすいということが知られているので照射量の最適化を行えば好ましく用いることができる。
紫外線以外の方法としては、比較的簡単な装置で大きな効果が得やすい点でコロナ放電がより好ましい。
本発明による電解質膜の改質は、電解質膜の表面に活性エネルギー線を照射し、照射中もしくは照射後に酸素雰囲気にさらすことによる。この処理によって得られた電解質膜を用いて膜電極接合体を作成し、燃料電池セルに組み込んで発電させると、内部抵抗が低下し、その結果出力が向上する。さらに電池性能の立ち上がりも早くなり、特にメタノールの透過が少ない炭化水素骨格を有するポリマー電解質を含む電解質膜において顕著な効果が得られる。これらの利点のため、DMFCなどの燃料電池用途に適したものとなる。
酸素雰囲気とは一部に酸素を含むガス雰囲気のことであって気圧に限定はない。中でも好ましいのは酸素分圧が10〜10MPaであり、さらに好ましくは大気中の分圧に近い0.02〜2MPaである雰囲気であり、酸素以外のガスに制限は無い。また、酸素のない雰囲気下で照射した後に酸素雰囲気にさらす場合は照射直後から24時間以内、さらには4時間以内にさらすことが効果を発現する上で好ましい。酸素のない雰囲気としては酸素を含まないガス雰囲気または真空などが用いられ、好ましくは窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気、さらに好ましくは窒素雰囲気である。
本発明は、炭化水素骨格を有するポリマー電解質を含む電解質膜の少なくとも一方の表面に、活性エネルギー線を照射する工程と、その後で該電解質膜表面に電極を接合させる工程とを含む膜電極接合体の製造方法である。製造された膜電極接合体を燃料電池に適用するとき、一方の側は燃料極、他方は空気極として使用されるが、本発明で電解質膜表面に活性エネルギー線照射を行うのは、いずれの面であっても好ましい効果が生じる。両面を処理するのが最も好ましいが、一方だけを処理するときは空気極側を処理するのが好ましい。
<膜電極接合体の形成>
電解質膜と電極とを接合して膜電極接合体を形成する時の好ましい方法は、白金などの触媒を含むインキ(以下触媒インキとする)を電解質膜表面に塗布してから乾燥して触媒塗布膜(以下CCMとする)を作成し、ガス拡散層を合わせで電池セル内に組み込み、電池内部で膜電極接合体(以下MEAとする)方法(以下直接塗布法とする)、触媒インキをポリ四フッ化エチレンなどのシート状に塗布乾燥し、これを電解質膜表面に張り合わせて加熱加圧してCCMを形成し、ガス拡散層を合わせで電池セル内に組み込み電池内部でMEAとする方法(以下転写法とする)、ガス拡散電極の片面に触媒インキを塗布乾燥し、これを電解質膜表面に張り合わせて加熱加圧してMEAを形成する方法(以下触媒付き電極法とする)などが挙げられる。
触媒インキ中に含まれる電解質ポリマーがポリパーフルオロアルキルスルホン酸のように熱処理によってアルコールや水への溶解し難くなる性質を有する場合、耐久性を向上させる目的で120℃〜200℃で5分ないし2時間程度熱処理する場合があるが、このような処理を行う場合は転写法か触媒付き電極法が好ましい。その理由は直接塗布法では電解質膜が加熱によって劣化しやすいことや、電解質膜の収縮等による変形で触媒層が剥がれやすいためである。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳しく説明するが、本発明の範囲がこれらの例により限定されるものではない。また実施例および比較例中の部は特に断りの無い限り質量部を意味するものとする。本発明で用いた電解質膜表面の接触角およびプロトン伝導性、メタノール透過性、膜電極接合体を用いた電池性能の試験は以下のように評価した。
<表面接触角>
電解質膜表面の接触角の測定は、JISK2396:2006の9.12.1fの方法で、電解質膜表面に載せた脱イオン水の接触角を市販の液滴法接触角測定装置で測定し、表面接触角を決定した。表面接触角は角度が小さいほど表面が親水性であることを示す。
<プロトン伝導性>
25℃における膨潤試料のプロトン伝導度測定を行った。脱イオン水に1時間浸して膨潤させた電解質膜を2枚の白金板で挟み込み測定用試料とした。その後、100Hzから40MHzの交流インピーダンス測定を実施して、プロトン伝導度を測定した。プロトン伝導度が高いほど、電解質膜中をプロトンが移動し易く、燃料電池用途に優れていることを示す。
<メタノール透過性>
25℃におけるメタノールの浸透実験を以下のように行った。電解質膜をガラス製セルに挟み、一方のセルに10質量%メタノール水溶液を入れ、もう一方のセルに脱イオン水を入れた。脱イオン水側に浸透するメタノール量をガスクロマトグラフ分析により経時的に測定し、定常状態になった時の透過係数を測定してメタノール透過流束とした。透過流束が低いほど、電解質膜中をメタノールが透過し難く、燃料電池用途に適していることを示す。
<電池性能評価>
白金をカーボンブラックに担持した触媒と電解質溶液(デュポン製:Nafion5%溶液)を混合して触媒インキを作成し、カーボンペーパー(東レ株式会社製TGP−H−090)上に乾燥時後に面積あたりの白金量が1mg/cm2になるように印刷しカソード電極とした。
同様に白金とルテニウムをカーボンブラックに担持した触媒と電解質溶液(デュポン製:Nafion5%溶液)を混合して触媒インキを作成し、カーボンペーパー(東レ株式会社製TGP−H−090)上に乾燥時後に面積あたりの白金量が3mg/cm2になるように印刷しアノード電極とした。
両電極を5cm2の大きさの正方形になるように切り出し、アノード電極、カソード電極の触媒印刷面で実施例および比較例の電解質膜を挟み、120℃で5分間ホットプレスしてDMFC評価用の膜電極接合体とした。
膜電極接合体をDMFC単セルに組み込んだ際の運転条件は次のとおり。燃料を1mol/リットル濃度のメタノール水溶液、酸化剤に空気を用い、セル温度は60℃とした。電子負荷器により負荷を変化させて電圧および内部抵抗を測定した。
電池性能の評価は燃料と空気を流し始めた直後から5時間の間100mA/cm2の負荷をかけておき、その後に電池性能を評価した。

(電解質膜作製例1)
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亞合成株式会社製:商品名ATBS)35g、N,N’−エチレンビスアクリルアミド15g、ノニオン性界面活性剤0.005g、紫外線ラジカル発生剤0.005g、水50gからなる電解質ポリマー前駆体水溶液に、架橋ポリエチレン製多孔性基材(厚さ30μm、空孔率40%、平均孔径約0.1μm)を浸漬し当該水溶液を充填させた。次いで、多孔性基材を溶液から引き上げた後、気泡ができないように厚さ50μmのPETフィルムで挟んだ。次に高圧水銀ランプを用いて紫外線を裏表からそれぞれ1000mJ/cm2照射した。照射後にPETフィルムを剥がして除去し、さらに脱イオン水で表面を濡らしながら樹脂繊維不織布からなるたわしで表面を擦って表面に付着した樹脂を取り除き、膜を自然乾燥させ電解質膜を得た。この電解質膜表面に水滴を垂らすと水を弾いたことから、基材として用いた撥水性のポリエチレンが露出していることがわかった。この電解質膜のプロトン伝導度は5.7S/cm2、電解質膜をメタノールが透過する量を表すメタノール透過流束は0.09kg/(m2・h)であった。
(電解質膜作製例2)
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(東亞合成株式会社製:商品名ATBS)45g、N,N’−エチレンビスアクリルアミド5g、ノニオン性界面活性剤0.005g、紫外線ラジカル発生剤0.005g、水50gからなる電解質ポリマー前駆体水溶液に、架橋ポリエチレン製多孔性基材(厚さ30μm、空孔率40%、平均孔径約0.1μm)を浸漬し当該水溶液を充填させた。次いで、多孔性基材を溶液から引き上げた後、気泡ができないように厚さ50μmのPETフィルムで挟んだ。次に高圧水銀ランプを用いて紫外線を裏表からそれぞれ1000mJ/cm2照射した。照射後にPETフィルムを剥がして除去し、さらに脱イオン水で表面を濡らしながら樹脂繊維不織布からなるたわしで表面を擦って表面に付着した樹脂を取り除き、膜を自然乾燥させ電解質膜を得た。この電解質膜表面に水滴を垂らすと水を弾いたことから、基材として用いた撥水性のポリエチレンが露出していることがわかった。この電解質膜のプロトン伝導度は11.4S/cm2、電解質膜をメタノールが透過する量を表すメタノール透過流束は0.29kg/(m2・h)であった。

(実施例1)
電解質膜作製例1で作成した電解質膜を硝子板上にテープで固定し、この上に中心波長172nm、放射照度10mW/cm2のエキシマランプ(ウシオ電機製:エキシマ光照射ユニットUER20−172C)の照射部をのせ照射部と膜の間隔2mmで5分間紫外線を照射した。この工程は空気中で行ったので2mmの間隔には空気が存在していた。同様の操作を電解質膜の裏面にも実施した。照射後の電解質膜を水に水滴をたらすと水を全くはじかなくなっていた。そこで、電解質膜表面の接触角を測定したところ両面の測定の平均値で16°であった。この電解質膜のプロトン伝導度は5.8S/cm2、電解質膜をメタノールが透過する量を表すメタノール透過流束は0.09kg/(m2・h)であり、紫外線照射前後でほとんど変化がなかった。この電解質膜を用いた膜電極接合体をDMFC単セルに組み込んで性能を評価した。電解質膜の物性と電池性能の結果を表1にまとめた。実施例1は、同じ電解質膜を使用した比較例1、2と比べて電池性能は著しく優れていた。なお、紫外線の照射時間は1分以上であれば明らかな表面親水化効果が見られたが30秒では水滴がやや大きくなる程度であった。
(実施例2)
装置全体を窒素雰囲気のグローブボックス内に設置し、電解質膜作製例1で作成した電解質膜を硝子板上にテープで固定し、この上に中心波長172nm、放射照度10mW/cm2のエキシマランプ(ウシオ電機製:エキシマ光照射ユニットUER20−172C)の照射部を乗せ、グローブボックス内を充分窒素で置換した後に、照射部と膜の間隔2mmで5分間紫外線を照射した。同様の操作を電解質膜の裏面にも実施した直後(30秒以内)に、電解質膜を空気中にさらした。照射後の電解質膜を水に水滴をたらすと水を全くはじかなくなっていた。そこで、電解質膜表面の接触角を測定したところ両面の測定の平均値で28°であった。この電解質膜のプロトン伝導度は5.4S/cm2、電解質膜をメタノールが透過する量を表すメタノール透過流束は0.09kg/(m2・h)であり、紫外線照射前後でほとんど変化がなかった。この電解質膜を用いた膜電極接合体をDMFC単セルに組み込んで性能を評価した。電解質膜の物性と電池性能の結果を表1にまとめた。実施例2は同じ電解質膜を使用した比較例1、2に比べて内部抵抗が小さく、最高出力密度は高く、優れていた。
(実施例3)
電解質膜作製例2で作成した電解質膜を硝子板上にテープで固定し、この上に中心波長172nm、放射照度10mW/cm2のエキシマランプ(ウシオ電機製:エキシマ光照射ユニットUER20−172C)の照射部をのせ照射部と膜の間隔2mmで5分間紫外線を照射した。この工程は空気中で行ったので2mmの間隔には空気が存在していた。同様の操作を電解質膜の裏面にも実施した。照射後の電解質膜を水に水滴をたらすと水を全くはじかなくなっていた。そこで、電解質膜表面の接触角を測定したところ両面の測定の平均値で7°であった。この電解質膜のプロトン伝導度は11.4S/cm2、電解質膜をメタノールが透過する量を表すメタノール透過流束は0.29kg/(m2・h)であり、紫外線照射前後でほとんど変化がなかった。この電解質膜を用いた膜電極接合体をDMFC単セルに組み込んで性能を評価した。電解質膜の物性と電池性能の結果を表1にまとめた。実施例3は同じ電解質膜を使用した比較例3と比べて最高出力、内部抵抗の数値はいずれも優れていた。
(実施例4)
電解質膜作製例1で作成した電解質膜をステージ上に置き、この上にコロナ放電処理装置(ナビタス(株)製:ポリダイン1)のロール電極を用い、空気中で出力電圧15kV、ロールの操作速度20秒/mの条件で膜の上を4回なぞり、コロナ放電処理を行った。同様の操作を電解質膜の裏面にも実施した。照射後の電解質膜を水に水滴をたらすと水をほとんどはじかなくなっていた。そこで、電解質膜表面の接触角を測定したところ両面の測定の平均値で24°であった。この電解質膜のプロトン伝導度は5.8S/cm2、電解質膜をメタノールが透過する量を表すメタノール透過流束は0.09kg/(m2・h)であり、コロナ放電処理前後でほとんど変化がなかった。この電解質膜を用いた膜電極接合体をDMFC単セルに組み込んで性能を評価した。電解質膜の物性と電池性能の結果を表1にまとめた。実施例4は、同じ電解質膜を使用した比較例1、2と比べて電池性能は著しく優れていた。なお、この条件でロール電極の操作回数は3回以上であれば明らかな表面親水化効果が見られたが1回では水滴がやや大きくなる程度であった。
(実施例5)
電解質膜作製例1で作成した電解質膜をステージ上に置き、この上に大気圧プラズマ照射器((株)キーエンス製:照射ヘッドST−7010、コントローラST−7000)を用い、ヘッドと膜の間隔6mm、コントローラの出力Highの設定とした。ステージを操作速度20秒/mの条件で移動させながら、空気中で膜の片面に2回でプラズマ照射を行った。同様の操作を電解質膜の裏面にも実施した。照射後の電解質膜を水に水滴をたらすと水をほとんどはじかなくなっていた。そこで、電解質膜表面の接触角を測定したところ両面の測定の平均値で22°であった。この電解質膜のプロトン伝導度は5.9S/cm2、電解質膜をメタノールが透過する量を表すメタノール透過流束は0.09kg/(m2・h)であり、プラズマ処理前後でほとんど変化がなかった。この電解質膜を用いた膜電極接合体をDMFC単セルに組み込んで性能を評価した。電解質膜の物性と電池性能の結果を表1にまとめた。実施例5は、同じ電解質膜を使用した比較例1、2と比べて電池性能は著しく優れていた。なお、この条件で片面へのプラズマ照射回数は1回以上であれば明らかな表面親水化効果が見られた。

(比較例1)
装置全体を窒素雰囲気のグローブボックス内に設置し、電解質膜作製例1で作成した電解質膜を硝子板上にテープで固定し、この上に中心波長172nm、放射照度10mW/cm2のエキシマランプ(ウシオ電機製:エキシマ光照射ユニットUER20−172C)の照射部を乗せ、グローブボックス内を充分窒素で置換した後に、照射部と膜の間隔2mmで5分間紫外線を照射した。同様の操作を電解質膜の裏面にも実施した後、窒素雰囲気下に36時間放置した。その後、電解質膜を空気中に照射後の電解質膜を水に水滴をたらすと水をはじいた。そこで、電解質膜表面の接触角を測定したところ両面の測定の平均値で63°であった。この電解質膜のプロトン伝導度は5.7S/cm2、電解質膜をメタノールが透過する量を表すメタノール透過流束は0.09kg/(m2・h)であり、紫外線照射前後で変化がなかった。この電解質膜を用いた膜電極接合体をDMFC単セルに組み込んで性能を評価した。電解質膜の物性と電池性能の結果を表1にまとめた。比較例1は同じ作成例1の電解質膜を使用した実施例1,2,4,5より劣る結果を示した。

(比較例2)
電解質膜作製例1で作成した電解質膜をそのまま用いた膜電極接合体をDMFC単セルに組み込んで性能を評価した。電解質膜表面の接触角を測定したところ両面の測定の平均値で91°であった。電解質膜の物性および電池性能の結果を表1にまとめた。実施例1と比べて電池性能が低く、最高出力密度、内部抵抗の数値はいずれも実施例1,2,4,5に比べて劣っていた。
(比較例3)
電解質膜作製例2で作成した電解質膜をそのまま用いた膜電極接合体をDMFC単セルに組み込んで性能を評価した。電解質膜表面の接触角を測定したところ両面の測定の平均値で86°であった。電解質膜の物性および電池性能の結果を表1にまとめた。実施例3と比べて比較例3の電池性能は低く、最高出力、内部抵抗の数値はいずれも実施例3に比べて劣っていた。
Figure 2009218154
表1から明らかなように、実施例と比較例を比較すると、炭化水素骨格を有するポリマー電解質を含む電解質膜の表面に波長172nmの紫外線、コロナ放電、プラズマを照射すると同時におよび/または照射後に酸素を含む空気と接触させた場合、照射表面の接触角が小さくなり、この電解質膜を用いた膜電極接合体を燃料電池とした場合、電池出力が改善されることがわかる。特にメタノール透過が少ない電解質膜作製例1のような電解質膜では改善効果が著しい。電解質膜のプロトン伝導度という点では紫外線照射有無で変化がほとんどないのに対し、接触角では電解質膜表面の親水性が著しく向上し、また膜電極接合体の電池測定では内部抵抗が軽減されていることから、本発明の活性エネルギー線照射の効果は電極と電解質膜の界面の接触を改善するものであると考えられる。すなわち電池の内部抵抗は下記(式1)で表わされるようにMEAの抵抗とMEA以外の燃料電池部材(=燃料電池セル)の抵抗およびMEAと燃料電池セルの接触抵抗の和で表わすことができる。さらにMEAの抵抗は(式2)で表わさせるように膜の抵抗とガス拡散電極の抵抗および膜とガス拡散電極の接触抵抗の和で表わすことができる。ここでガス拡散電極とはカーボンペーパーなどのガス拡散層と触媒層を合わせたものを表わし、ガス拡散電極を形成する部材のなかで電解質膜と接触する部分は触媒層となる。

内部抵抗=MEAの抵抗+MEAと電池セルの接触抵抗+燃料電池セルの抵抗 (式1)
MEAの抵抗=膜の抵抗+膜とガス拡散電極の接触抵抗+ガス拡散電極の抵抗 (式2)

本願実施例および比較例では電解質膜の表面に特定雰囲気下で活性エネルギー線を照射したこと以外は、すべて同じ部材を使用して電池評価を実施しており、かつ電解質膜の抵抗の逆数を示すプロトン伝導度においては紫外線照射有無による差がほとんどないことから、低下した内部抵抗は電解質膜と電極の界面接触抵抗が下がった効果によるものと考えられる。
本発明の膜電極接合体は、電気化学装置、特にDMFCをはじめとする燃料電池用途に好ましく利用することができる。


Claims (4)

  1. 炭化水素骨格を有するポリマー電解質を含む電解質膜の少なくとも一方の表面に、活性エネルギー線を照射する工程が、酸素の存在する雰囲気下で行われるか、または酸素の存在しない雰囲気下で活性エネルギー線を照射した後、24時間以内に酸素存在雰囲気に曝露する工程のいずれかであることを特徴とする膜電極接合体の製造方法。
  2. 活性エネルギー線を照射する工程の後、電解質膜の表面接触角が0°以上45°以下であることを特徴とする請求項1の膜電極接合体の製造方法。
  3. 炭化水素骨格を有するポリマー電解質が、炭化水素骨格を有する高分子から形成された多孔性基材の空孔内部に充填された構造を有していることを特徴とする請求項1または2
    に記載の膜電極接合体の製造方法。
  4. 活性エネルギー線が、波長10nm以上200nm以下の遠紫外線から真空紫外線の領域にある電磁波,コロナ放電,プラズマ,の中から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の膜電極接合体の製造方法。
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