JP2003346837A - 高耐熱性イオン交換膜 - Google Patents

高耐熱性イオン交換膜

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高耐熱性及び高プロトン伝導性を両立させた
イオン交換膜を提供することを目的とする。 【解決手段】 無機物を1質量%以上99質量%以下、
かつ、イオン交換樹脂を1質量%以上99質量%以下の
範囲で含有し、表面粗さが0.001μm以上8μm以
下である複合層と、イオン交換樹脂を50質量%以上1
00質量%以下の範囲で含有するイオン交換樹脂層を含
むことを特徴とする多層イオン交換膜。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池に用いら
れるイオン交換膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】燃料電池は、水素やメタノール等を電気
化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを
電気エネルギーに変換するものであり、クリーンな電気
エネルギー供給源として注目されている。ところで、イ
オン交換膜は、高分子鎖中にスルホン酸基やカルボン酸
基等の強酸性基を有する高分子材料であって、特定のイ
オンを選択的に透過する性質を有しているため固体高分
子型燃料電池用途としての需要が高い。
【0003】固体高分子型燃料電池の燃料ガスである水
素は、メタノールや天然ガス等の炭化水素系燃料の改質
による方法が検討されているが、このような改質された
炭化水素系燃料から得られる燃料ガス中には微量の一酸
化炭素が含まれており、この一酸化炭素が白金系電極触
媒を被毒するため、燃料電池の出力を低下させる原因と
なっている。しかも、その被毒は、低温ほど著しくなる
ことが知られている。そのため、固体高分子型燃料電池
の運転温度を高くすることが望まれており、用いられる
イオン交換膜にも高耐熱性が要求されている。化学的安
定性が非常に高いとして知られているナフィオン(登録
商標、デュポン社製)に代表されるパーフルオロ系イオ
ン交換膜も、100〜150℃にてガラス状態からゴム
状態への転移が起こり、このような環境下で外力を加え
た場合、イオン交換膜が破れる、もしくはピンホールが
空いてしまう場合があり、耐熱性に関して十分とは言え
なかった。従って、現在の標準的なパーフルオロ系イオ
ン交換膜では90℃以上での運転は難しいとされてい
る。すなわち、イオン交換膜の高耐熱化とは、100℃
以上、好ましくは120℃以上でも燃料電池を長期間運
転できることを意味している。
【0004】このようなパーフルオロ系イオン交換膜に
対して、フィブリル状PTFEによる補強(特開昭53
−149881号公報、特公昭63−61337号公
報)、延伸処理したPTFE多孔膜による補強(特開平
8−162132号公報)、無機粒子の添加による補強
(特開平6−111827号公報、特開平9−2192
06号公報、米国特許第5523181号明細書)が検
討されている。また、強酸性架橋基を介して、架橋され
ているパーフルオロ系イオン交換膜も報告されている
(特開2000−188013号公報)。しかしなが
ら、これらの補強方法では満足できる耐熱性は得られて
いない。
【0005】一方、ゾルゲル反応を利用してパーフルオ
ロ系イオン交換膜にシリカを複合化した膜も報告されて
いる。このシリカ複合膜は、高膨潤状態下のイオン交換
膜中におけるゾルゲル反応を利用して、作製されたもの
である(以下、高膨潤ゾルゲル法、という)。具体的に
は、パーフルオロ系イオン交換膜をまずメタノール等の
アルコール水溶液に含浸し膨潤させた後、金属アルコキ
シドであるテトラエトキシシランとアルコールの混合溶
媒を添加して、酸性基の触媒作用によりテトラエトキシ
シランを加水分解・重縮合反応させて、イオン交換膜中
にシリカを均一に生成させている( K. A. Mauritz, R.
F. Storey and C. K. Jones, in Multiphase PolymerM
aterials: Blends and Ionomers, L. A. Utracki and
R. A. Weiss, Editors,ACS Symposium Series No. 395,
p. 401, American Chemical Society, Washington, DC
(1989))。
【0006】このようなシリカ複合膜では、従来のパー
フルオロ系イオン交換膜に比べてガラス転移温度が上昇
することが報告されており、耐熱性の向上が見出されて
いる(Journal of Applied Polymer Science, Vol.68,
747-763(1998))。また、高温での燃料電池運転で良好
な特性を示すことも報告されている(K.T.Adjemian eta
l, 2000 Fuel Cell Seminar, p164-166)が、それでもま
だ耐熱性は十分とは言えなかった(比較例3,4参
照)。
【0007】シリカ複合量を増やすことにより、耐熱性
は向上するものの、シリカのプロトン伝導性はパーフル
オロ系イオン交換樹脂に比較してかなり低いため、あま
りシリカ複合量を大きくしすぎると、十分なプロトン伝
導度が得ることができないという問題点があった(Jour
nal of the Electrochemical Society, 148, A898-A904
(2001)、比較例5参照)。また、水酸化アルカリの製造
方法において、そのガス離脱を容易にする目的で、無機
物粒子から形成された薄層を表面に有するイオン交換樹
脂膜が、特開昭57−23076号公報、特開昭59−
219487号公報、及び特開平3−137136号公
報にて開示されている。しかしながら、これらのイオン
交換樹脂膜は十分な耐熱性と強度を得ることができてい
ない。従って、高いプロトン伝導性を維持したまま、1
00〜150℃で貯蔵弾性率の急激な低下がなく高耐熱
性を有するイオン交換膜を提供する必要があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、高耐熱性及
び高プロトン伝導性を両立させたイオン交換膜を提供す
ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は前記課題を解
決するため鋭意検討した結果、無機物を1質量%以上9
9質量%以下、かつ、イオン交換樹脂を1質量%以上9
9質量%以下の範囲で含有し、表面粗さが0.001μ
m以上8μm以下である複合層と、イオン交換樹脂を5
0質量%以上100質量%以下の範囲で含有するイオン
交換樹脂層を含むことを特徴とする多層イオン交換膜
が、動的粘弾性測定において驚くべきことに100〜2
00℃で貯蔵弾性率の急激な低下がみられず、高耐熱性
を発現することを見出した。また、この本発明のイオン
交換膜のプロトン伝導度は、従来のパーフルオロスルホ
ン酸膜と同等であり、高いプロトン伝導度を維持してい
ることも見出した。
【0010】本発明の多層イオン交換膜を燃料電池に用
いる場合、多層イオン交換膜の両側にカソード電極とア
ノード電極を形成させた、膜電極接合体(MEA)とし
て使用される。一般的にカソード電極におけるプロトン
もしくは水素の酸化反応熱は大きく、カソード側でかな
り発熱し、高温となる。そこで、本発明の多層イオン交
換膜を構成する複合層が、カソード電極に近接する構造
のMEAにすることにより、カソード側での発熱に曝さ
れることによる膜の劣化を抑制することができ、より高
い耐久性を示すことも見出した。
【0011】すなわち、本発明は、以下の通りである。 (1)無機物を1質量%以上99質量%以下、かつ、イ
オン交換樹脂を1質量%以上99質量%以下の範囲で含
有し、表面粗さが0.001μm以上8μm以下である
複合層と、イオン交換樹脂を50質量%以上100質量
%以下の範囲で含有するイオン交換樹脂層を含むことを
特徴とする多層イオン交換膜。 (2)無機物が、金属酸化物であることを特徴とする
(1)に記載の多層イオン交換膜。 (3)多層イオン交換膜全体に対する無機物の含有率
が、0.001質量%以上15質量%以下であることを
特徴とする(1)に記載の多層イオン交換膜。 (4)50℃35Hzでの貯蔵弾性率に対する150℃
35Hzでの貯蔵弾性率の比が、0.1以上1以下であ
ることを特徴とする(1)に記載の多層イオン交換膜。 (5)無機物を1質量%以上99質量%以下、かつ、イ
オン交換樹脂を1質量%以上99質量%以下の範囲で含
有し、表面粗さが0.001μm以上8μm以下である
複合層をイオン交換樹脂膜上に形成させる多層イオン交
換膜の製造方法であって、膨潤率が100%以上170
%以下のイオン交換樹脂膜に、金属アルコキシドを含有
する反応液体を接触させ、金属アルコキシドを加水分解
・重縮合反応させることを含む多層イオン交換膜の製造
方法。 (6)(1)〜(4)のいずれかに記載の多層イオン交
換膜を備えることを特徴とする膜電極接合体。 (7)(1)〜(4)のいずれかに記載の多層イオン交
換膜を構成する複合層が、カソード電極に近接している
ことを特徴とする(6)に記載の膜電極接合体。 (8)(1)〜(4)のいずれかに記載のイオン交換膜
を備えることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【0012】以下に、本発明の多層イオン交換膜につい
て詳細に説明する。本発明の多層イオン交換膜は、無機
物とイオン交換樹脂を含有する複合層とイオン交換樹脂
層を含む。イオン交換樹脂層は、イオン交換樹脂を50
質量%以上100質量%以下の範囲で含有しており、好
ましくは80質量%以上100質量%以下、より好まし
くは95質量%以上100質量%以下、最も好ましくは
99.99質量%以上100質量%以下である。ここで
いうイオン交換樹脂とは、イオン伝導性のある官能基を
有する重合体のことを指し、イオン伝導性のある官能基
としてはスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、
リン酸基といったものが挙げられる。ポリマーの骨格と
しては、ポリオレフィン、ポリスチレンのような炭化水
素系重合体も使用可能であるが、耐酸化性や耐熱性に優
れた下記化学式(1)で表されるパーフルオロカーボン
重合体が好ましい。 −[CF2CX12a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF23))b −OC−(CFR1d−(CFR2e−(CF2f−X4)]g− (1) (式中のX1、X2及びX3は、独立にハロゲン元素又は
炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、aは0〜20
の整数、bは0〜8の整数、cは0又は1、d、e及び
fは独立に0〜6の整数(但しd+e+fは0に等しく
ない)、gは1〜20の整数、R1及びR2は独立にハロ
ゲン元素もしくは炭素数1〜10のパーフルオロアルキ
ル基又はフルオロクロロアルキル基、X4はCOOZ、
SO3Z、PO3Z又はPO32(Zはアルカリ金属原
子、アルカリ土類金属原子又は水素原子)) イオン交換樹脂層の厚みは制限されないが、1μm以上
500μm以下であることが好ましく、より好ましくは
2μm以上100μm以下、最も好ましくは5μm以上
50μm以下である。
【0013】本発明の多層イオン交換膜は、無機物とイ
オン交換樹脂を含有する複合層を有することを特徴とす
る。複合層は、表面粗さが0.001μm以上8μm以
下であり、好ましくは0.002μm以上5μm以下、
より好ましくは0.005μm以上2μm以下、最も好
ましくは0.01μm以上1μm以下である。ここでい
う表面粗さとは、JIS B 0601−1994に基
づく中心線平均荒さRaであり、粗さ曲線f(x)を中心線
から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた
面積を長さlで割った値をμmで表した値である。中心
線平均荒さは、中心線平均粗さ測定器や顕微鏡観察から
得られる表面凹凸情報に基づく粗さ曲線f(x)を用いて、
以下の数式(2)で算出される。
【0014】
【数1】
【0015】複合層は、無機物粒子とイオン交換樹脂か
ら形成された層と違い、表面粗さが小さく平板状である
ため、イオン交換樹脂層を繋ぎ止め、熱及び外力により
変形するのを抑制することに大きな効果を発揮する。
【0016】図1は、本発明の多層イオン交換膜最外層
を形成する複合層の表面を、図13は、シリカ微粒子を
パーフルオロスルホン酸ポリマー溶液に分散させた分散
液をイオン交換樹脂層に塗布し固化して形成させた無機
物層表面を観察したものである。図1には部分的に極小
の亀裂が観察されるが、図13に見られる、粒子が凝集
されたり、結着された形態とは明確に異なり、表面粗さ
が小さく平板状の構造を有している。このように、本発
明の多層イオン交換膜を構成する複合層は、各種顕微鏡
観察により確認することができる。
【0017】複合層を構成する無機物は限定されない。
具体的には、Al23,B23,BaO,BaTi
3,CaO,KTaO3,LiNbO3,MgO,P
25,SiO,SiO2,SnO2,SrO,TiO2
25,WO3,Y23,ZnO,ZrO2,Zr23
ZrSiO4といった金属酸化物、BN,CaCl2,S
34,TiNといった無機物を例示することができ
る。また、Al23−SiO2,B23−SiO2,Si
2−P25,SiO2−TiO2,In2O−SnO,N
2O−B23−SiO2のように任意に2種類以上の無
機物を組み合わせた複合体であってもよい。
【0018】金属、合金、及び金属間化合物も、本発明
の多層イオン交換膜を構成する無機物に属する。制限さ
れないが、金属としては、IUPACの命名則によると
ころの3B族の金属又は半金属、遷移金属、希土類金
属、及び2A族の金属が挙げられる。合金や金属間化合
物としては、これらの複数の金属元素から構成されるも
のが挙げられ、AuSn、PdSn、RuSn2といっ
たものが例示できるが、これらに限定されない。
【0019】複合層中の無機物の含有率は1質量%以上
99質量%以下であり、好ましくは2質量%以上90質
量%以下、より好ましくは10質量%以上70質量%以
下、最も好ましくは20質量%以上50質量%以下であ
る。本発明の多層イオン交換膜全体に対する無機物の含
有率としては限定されないが、0.001質量%以上1
5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは
0.1質量%以上10質量%以下、最も好ましくは1質
量%以上5質量%以下である。複合層はイオン交換樹脂
を含有し、複合層中のイオン交換樹脂の含有率は1質量
%以上99質量%以下であり、好ましくは10質量%以
上98質量%以下、より好ましくは30質量%以上90
質量%以下、最も好ましくは50質量%以上80質量%
以下である。好ましいイオン交換樹脂としては、前記化
学式(1)で示すフルオロカーボン重合体が挙げられ
る。
【0020】本発明の多層イオン交換膜は、イオン交換
樹脂層と複合層を含むことを特徴としているが、中でも
イオン交換樹脂層と複合層とが直接積層されていること
が好ましい。さらに、複合層が最表面に存在するのが好
ましい。尚、複合層を2層以上有するもの、イオン交換
樹脂層が最表面に存在するもの、複合層とイオン交換樹
脂層が相互に3層以上積層したものも本発明の多層イオ
ン交換膜に含まれる。このように、複合層が最表面に存
在しない場合、例えば、本発明の多層イオン交換膜を切
断し、SEM−EDXにより断面方向に元素分析を行な
うことにより、複合層の存在を確認できる。さらに、複
合層とイオン交換樹脂層との界面を詳細に観察し、画像
処理等を行うことにより、その凹凸情報を得て、複合層
の表面粗さを算出することができる。
【0021】複合層の膜厚は限定されないが、0.00
1μm以上10μm以下であることが好ましく、より好
ましくは0.005μm以上5μm以下、最も好ましく
は0.01μm以上1μm以下である。複合層のイオン
交換樹脂膜層に対する膜厚比は限定されないが、0.0
001以上1以下が好ましく、より好ましくは0.00
05以上0.1以下、最も好ましくは0.001以上
0.05以下である。複合層の厚みをイオン交換樹脂層
に比較して極めて薄くすることにより、複合層の存在に
よるプロトン伝導度の低下が生じず、高耐熱性と高プロ
トン伝導性との両立が可能である。
【0022】本発明の多層イオン交換膜の当量重量EW
(プロトン交換基1当量あたりの多層イオン交換膜の乾
燥重量グラム数)は限定されないが、通常250〜20
00、好ましくは500〜1500、より好ましくは7
00〜1200である。膜厚は限定されないが、1μm
以上500μm以下であることが好ましく、より好まし
くは2μm以上100μm以下、最も好ましくは5μm
以上50μm以下である。
【0023】本発明の多層イオン交換膜は、100〜2
00℃で貯蔵弾性率が大きく低下することがなく、引っ
張りモードでの動的粘弾性測定における50℃35Hz
での貯蔵弾性率(JIS K−7244)に対する15
0℃35Hzでの貯蔵弾性率の比が、好ましくは0.1
以上1以下、より好ましくは0.2以上1以下、最も好
ましくは0.4以上1以下である。ここでいう動的粘弾
性測定とは、材料に加えた歪みに対する材料の応力を検
出することにより、その粘弾性応答を調べる測定である
(講座・レオロジー、日本レオロジー学会編、高分子刊
行会等を参照)。貯蔵弾性率は材料の相対的な剛性を表
す値であり、ガラス域からゴム域への転移域や流動域に
おいては、貯蔵弾性率は大きく低下する。なお、貯蔵弾
性率の測定方法は後で述べる。
【0024】一般的に、プロトン型のパーフルオロ系イ
オン交換膜は、120℃付近にアルファ転移温度(以
下、Tg、という)を有し、ガラス状態からゴム状態へ
の転移が起こり、この前後で貯蔵弾性率は大きく低下す
る。このTgは、上記の動的粘弾性測定において求めら
れるtanδが極大値となる温度に相当する。ここでい
うtanδとは、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比率
であり、損失弾性率とは応力に反応して運動するときの
ポリマー鎖の摩擦によるエネルギーの散逸を表す値であ
る。
【0025】本発明の多層イオン交換膜の最も好ましい
形態の1つとしては、0〜200℃にTgを有さない、
つまりtanδがピークを有さないことである。ここで
いうピークとは、tanδが測定範囲において極大値を
有し、かつ、その極大値が、好ましくは0.2以上10
以下、より好ましくは0.3以上10以下、最も好まし
くは0.4以上10以下の値を示すことを指す。このよ
うに、0〜200℃にTgを有さないということは、ガ
ラス状態からゴム状態への転移が起こらず、耐熱性が高
いことを意味しており極めて好ましい。
【0026】本発明の多層イオン交換膜の25℃におけ
るプロトン伝導度としては、好ましくは0.05S/c
m以上1.0S/cm以下、より好ましくは0.07S
/cm以上0.8S/cm以下、最も好ましくは0.0
9S/cm以上0.5S/cm以下であるが、これに限
定されない。本発明の多層イオン交換膜の高温での引っ
張り強度は制限されないが、引っ張り試験測定において
120℃の乾燥状態で5%伸長させた時の強度が、好ま
しくは30N/cm2以上、より好ましくは70N/c
2以上、最も好ましくは400N/cm2以上である。
【0027】本発明の多層イオン交換膜の好ましい形態
の1つとしては、スルホン酸基をイオン交換基とするパ
ーフルオロカーボン重合体からなるイオン交換樹脂層を
有し、SiO2とパーフルオロカーボン重合体との複合
層を最表面に有するイオン交換膜を挙げることができ
る。特に、このような多層イオン交換膜表面をSEM−
EDX分析した場合、S元素(スルホン酸基由来)のX
線強度に対する、Si元素(SiO2由来)のX線強度
の比は、好ましくは2以上100以下、より好ましくは
4以上50以下、最も好ましくは8以上20以下であ
る。
【0028】本発明の多層イオン交換膜は、フィブリル
状PTFEによる補強(特開昭53−149881号公
報、特公昭63−61337号公報等)、延伸処理した
PTFE多孔膜による補強(特開平8−162132号
公報等)、無機粒子(特開平6−111827号公報、
特開平9−219206号公報、米国特許第55231
81号明細書等)による補強、架橋による補強(特開2
000−188013号公報等)が施されていてもよ
い。
【0029】次に、本発明の多層イオン交換膜の製造方
法について、パーフルオロカーボン重合体から構成され
るイオン交換樹脂膜に無機物とイオン交換樹脂からなる
複合層の製造方法を説明するが、これに限定されない。
まず、本発明の多層イオン交換膜を構成するイオン交換
樹脂層の製造方法について説明する。イオン交換樹脂層
はスルホン酸基又はカルボン酸基などのイオン交換基前
駆体を有するイオン交換樹脂前駆体を重合した後、イオ
ン交換樹脂前駆体の膜とし、引き続いて加水分解してイ
オン交換樹脂膜とする。
【0030】(イオン交換樹脂前駆体の製造)イオン交
換樹脂前駆体としては、CF2=CX12(X1及びX2
は独立にハロゲン元素又は炭素数1〜3のパーフルオロ
アルキル基)で表されるフッ化オレフィンと、CF2
CF(−O−(CF2−CF(CF23))b−OC
(CFR1d−(CFR2e−(CF2f−X5)で表
されるフッ化ビニル化合物(bは0〜8の整数、cは0
又は1、d、e及びfは独立に0〜6の整数(但しd+
e+fは0に等しくない)、R1及びR2は独立にハロゲ
ン元素又は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基又
はフルオロクロロアルキル基、X3はハロゲン元素又は
炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基、X5はCO2
3、COR4、又はSO 24(R3は炭素数1〜3の炭化
水素系アルキル基、R4はハロゲン))とのフルオロカ
ーボン共重合体が好ましい。
【0031】具体的なフッ化オレフィンとしては、CF
2=CF2、CF2=CFCl、CF2=CCl2などが挙
げられる。具体的なフッ化ビニル化合物はとしては、C
2=CFO(CF2z−SO2F、CF2=CFOCF2
CF(CF3)O(CF2z−SO2F、CF2=CF
(CF2z−SO2F、CF2=CF(OCF2CF(C
3))z−(CF2z-1−SO2F、CF2=CFO(C
2z−CO2R、CF2=CFOCF2CF(CF3)O
(CF2z−CO2R、CF2=CF(CF2z−CO2
R、CF2=CF(OCF2CF(CF3))z−(C
22−CO2R(zは1〜8の整数、Rは炭素数1〜
3の炭化水素系アルキル基を表す)などが挙げられる。
【0032】フルオロカーボン共重合体は、ヘキサフル
オロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン等のパー
フルオロオレフィン、又はパーフルオロアルキルビニル
エーテル等の第三成分を含む共重合体であってもよい。
このようなイオン交換樹脂前駆体の製造のためのフルオ
ロカーボン共重合体の重合方法としては、上記フッ化ビ
ニル化合物をフロン等の溶媒に溶かした後、フッ化オレ
フィンのガスと反応させ重合する溶液重合法、フロン等
の溶媒を使用せずに重合する塊状重合法、フッ化ビニル
化合物を界面活性剤とともに水中に仕込んで乳化させた
後、フッ化オレフィンのガスと反応させ重合する乳化重
合法等が挙げられる。重合により製造されたイオン交換
樹脂前駆体は下記化学式(3)のように表される。 −[CF2CX12a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF23)) b −OC−(CFR1d−(CFR2e−(CF2f−X5)]g− (3) (式中のX1、X2及びX3は独立にハロゲン元素又は炭
素数1〜3のパーフルオロアルキル基、aは0〜20の
整数、bは0〜8の整数、cは0又は1、d及びe及び
fは独立に0〜6の整数(但しd+e+fは0に等しく
ない)、gは1〜20の整数、R1及びR2は独立にハロ
ゲン元素又は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基
又はフルオロクロロアルキル基、X5はCO23、CO
4、又はSO24(R3は炭素数1〜3の炭化水素系ア
ルキル基、R4はハロゲン元素))
【0033】(イオン交換樹脂前駆体の製膜)このよう
に製造されたイオン交換樹脂前駆体を製膜するには、一
般的な溶融押出成形法(Tダイ法、インフレーション
法、カレンダー法等)が用いられる。また別の方法とし
て、イオン交換樹脂前駆体の溶液又は分散液の溶媒を蒸
発させてキャスト製膜する、溶剤キャスト法が挙げられ
る。キャスト製膜する際に、特開平8−162132号
公報記載のPTFE膜を延伸処理した多孔質膜や、特開
昭53−149881号公報及び特公昭63−6133
7号公報に示されるフィブリル化繊維に、分散液をキャ
ストしてもよい。
【0034】イオン交換樹脂前駆体膜を予め延伸配向す
ることもできる。Tダイ法による溶融製膜やキャスト法
による湿式製膜を行う場合は、例えば、横1軸テンター
や同時2軸テンターを使用することによって延伸配向を
付与することが可能である。インフレーション法による
溶融製膜を行う場合も、ダイレクトインフレーションや
ブロー延伸と呼ばれる公知の技術で、容易に延伸配向を
付与できる。このように延伸した後、その状態に維持し
ながら拘束下で下記の加水分解処理を行ってもよい。
【0035】(イオン交換樹脂前駆体膜の加水分解処
理)次に、上記の方法で製造されたイオン交換樹脂前駆
体膜を、反応液体に接触させて、加水分解処理する。反
応液体は限定されないが、塩基性であることが好まし
く、その場合は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金
属の水酸化物、又は塩基性窒素化合物等を少なくとも1
種類含有する。アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属
の水酸化物は限定されないが、水酸化カリウムや水酸化
ナトリウム等が挙げられる。塩基性窒素化合物は限定さ
れないが、トリエタノールアミン、ジエタノールアミ
ン、トリエチルアミン、ジエチルアミン等のアミン類が
挙げられる。アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の
水酸化物、又は塩基性窒素化合物の含有率は限定されな
いが、通常0.01質量%以上99質量%以下、好まし
くは2質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質
量%以上35質量%、最も好ましくは10質量%以上3
0質量%以下である。
【0036】上記の反応液体中に含まれる、アルカリ金
属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、又は塩基性窒
素化合物を溶解する溶媒としては、水及び/又は非水溶
媒を用いる場合がある。これら溶媒の含有率は限定され
ないが、通常、0.01質量%以上99質量%以下、好
ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましく
は30質量%以上80質量%、最も好ましくは40質量
%以上70質量%以下である。非水溶媒としては、アル
カリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、又は塩
基性窒素化合物を溶解するものであればどんな非水溶媒
でもよい。
【0037】具体的な非水溶媒としては、メタノール、
エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1
−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、
1−ドデカノール、ベンジルアルコール、α−テルピネ
オール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオー
ル、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオー
ル、1,5−ペンタンジオール、2−ブテン−1,4−
ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グ
リセリン、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3
−プロパンジオール等のアルコール類、ジヘキシルエー
テル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエー
テル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ベラ
トロール、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリ
コールジブチルエーテル、グリセリンエーテル等のエー
テル類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】上記の反応液体は、膨潤性有機化合物を含
有する場合がある。特開平3−6240号公報記載のよ
うに、水酸化アルカリ水溶液において膨潤性有機化合物
を使用するとイオン交換樹脂前駆体の樹脂層を膨潤さ
せ、加水分解反応速度を促進させる効果があることが、
すでに知られている。膨潤性有機化合物としては、ジメ
チルスルホキシド、メチルアルコール、エチルアルコー
ル、プロピルアルコール、トリエタノールアミン、ジエ
タノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロ
パノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジメチ
ルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、スル
ホランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】膨潤性有機化合物の含有率は限定されない
が、通常、0.01質量%以上99質量%以下、好まし
くは0.1質量%以上80質量%以下、より好ましくは
0.5質量%以上50質量%、最も好ましくは1質量%
以上30質量%以下である。このようにイオン交換樹脂
前駆体膜を加水分解処理した後、水洗することにより、
アルカリ金属型イオン交換基又はアルカリ土類金属型イ
オン交換基を有する、下記化学式(4)(但し、Zはア
ルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子)で表される
イオン交換樹脂膜を得ることができる。さらに塩酸等の
無機酸で処理することにより、下記化学式(4)(但
し、Zは水素原子)で表されるプロトン型イオン交換基
を有するイオン交換樹脂膜(プロトン型イオン交換樹脂
膜)を製造することも可能である。 −[CF2CX12a−[CF2−CF(−O−(CF2−CF(CF23))b −OC−(CFR1d−(CFR2e−(CF2f−X4)]g− (4) (式中のX1、X2及びX3は独立にハロゲン元素又は炭
素数1〜3のパーフルオロアルキル基、aは0〜20の
整数、bは0〜8の整数、cは0又は1、d、e及びf
は独立に0〜6の整数(但しd+e+fは0に等しくな
い)、gは1〜20の整数、R1及びR2は独立にハロゲ
ン元素又は炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基又
はフルオロクロロアルキル基、X4はCOOZ、SO
3Z、PO3Z又はPO32(Zはアルカリ金属原子、ア
ルカリ土類金属原子、又は水素原子))
【0040】次に、イオン交換樹脂膜に複合層を形成さ
せ、本発明の多層イオン交換膜を製造する方法について
説明する。 (複合層の形成)上記のように製造されたイオン交換樹
脂膜に複合層を形成させる。複合層を形成させる方法と
しては、薄膜ハンドブック(日本学術振興会薄膜第13
1委員会、オーム社)に示されている、真空蒸着法、ス
パッタリング法といった公知の薄膜形成法を用いること
ができる。真空蒸着法やスパッタリング法の場合、無機
物をスパッタ源又は蒸着源として、イオン交換膜表面に
該複合層を形成させる。無機物が金属酸化物の場合、酸
素と反応して金属酸化物を生成する各種の金属単体をス
パッタ源又は蒸着源として用い、かつ、雰囲気を酸素雰
囲気にすることにより、金属酸化物からなる薄膜層を形
成させることも可能である。
【0041】CVD法やめっきといった化学的方法も用
いることができ、例えばCVD法の場合、反応ガスをS
iH4とし、これを酸化してSiO2の薄膜を形成させる
ことが可能である。また、従来技術とは違った方法で、
ゾルゲル反応を利用し、複合層を形成させることもでき
る。以下、その方法について詳細に説明する。
【0042】(複合層の形成−低膨潤ゾルゲル法)イオ
ン交換樹脂膜を金属アルコキシド等の無機物前駆体を少
なくとも含有する反応液体と接触させ、イオン交換基の
触媒作用により無機物前駆体を加水分解・重縮合反応さ
せることで、複合層を形成させる。従来技術で述べた高
膨潤ゾルゲル法と異なる点は、膨潤率が100%以上1
70%以下(以下、低膨潤状態、という)の低膨潤状態
にて、無機物前駆体をイオン交換樹脂膜に接触させ加水
分解・重縮合反応させることである。ここでいう膨潤率
とは、反応液体に接触する前のイオン交換樹脂膜の体積
に対する接触後のイオン交換樹脂膜の体積比である。膨
潤率は、好ましくは100%以上150%以下、より好
ましくは100%以上125%以下、最も好ましくは1
00%以上110%以下である。
【0043】低膨潤状態にすることにより、無機物前駆
体はイオン交換樹脂膜内部へほとんど拡散できず、イオ
ン交換樹脂膜の表面近傍にて選択的に加水分解・重縮合
反応される。そのため、イオン交換樹脂膜の表面もしく
は表面近傍に無機物とイオン交換樹脂からなる複合層を
形成させることができる。この際、イオン交換樹脂膜と
しては、プロトン型であることが好ましい。反応液体に
含まれる無機物前駆体は限定されないが、Al,B,
P,Si,Ti,Zrの金属アルコキシドであることが
好ましく、この場合、無機物としては金属酸化物が生成
される。
【0044】Alのアルコキシドの具体例としては、A
l(OCH33,Al(OC25 3,Al(OC
373,Al(OC493が挙げられる。Bを含有す
るアルコキシドの具体例としては、B(OCH33が挙
げられる。Pを含有するアルコキシドの具体例として
は、PO(OCH33,P(OCH 33が挙げられる。
Siを含有するアルコキシドの具体例としては、Si
(OCH34,Si(OC254,Si(OC
374,Si(OC494が挙げられる。Tiを含有
するアルコキシドの具体例としては、Ti(OC
34,Ti(OC254,Ti(OC374,Ti
(OC494が挙げられる。Zrを含有するアルコキ
シドの具体例としては、Zr(OCH34,Zr(OC
254,Zr(OC374,Zr(OC494が挙
げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を混合
して用いてもかまわない。また、La[Al(i−OC3
74]3,Mg[Al(i−OC374]2,Mg[Al
(sec−OC494]2,Ni[Al(i−OC37
4]2,(C37O)2Zr[Al(OC374]2,Ba
[Zr2(OC259]2といった2金属アルコキシドを
用いてもよい。
【0045】このような無機物前駆体の含有量は限定さ
れないが、反応液体総質量に対し、好ましくは1質量%
以上99.999質量%以下、より好ましくは10質量
%以上99.99質量%以下、最も好ましくは50質量
%以上99.9質量%以下である。金属アルコキシドが
固体である場合、適当な溶媒に溶解させて使用する。ま
た、金属アルコキシドが液体であっても、溶媒に希釈し
てもよい。この際、用いられる溶媒としては、イオン交
換樹脂膜を大きく膨潤させないものが好ましく、エチレ
ングリコール、プロピレングリコール、グリセリンとい
った多価アルコール類やブタノールといった高級アルコ
ール類、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルオ
キシド、スルホランといった非プロトン性溶媒を挙げる
ことができるが、これらに限定されない。
【0046】また、必要に応じて、水、メタノールやエ
タノールといった膨潤性溶媒である低級アルコール類を
用いてもよいが、膨潤率は前述の範囲を満たさなければ
ならない。このような溶媒の含有量は限定されないが、
反応液体総質量に対し、好ましくは0.001質量%以
上99質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上
90質量%以下、最も好ましくは0.1質量%以上50
質量%以下である。イオン交換樹脂膜と反応液体との接
触時間は限定されないが、好ましくは1秒以上10時間
以下、より好ましくは2秒以上1時間以下、最も好まし
くは5秒以上10分以下である。反応液体の温度は限定
されないが、0℃以上200℃以下が好ましく、より好
ましくは5℃以上100℃以下、最も好ましくは10℃
以上80℃以下である。
【0047】イオン交換樹脂膜に反応液体を接触させる
方法は限定されないが、イオン交換樹脂膜を反応液体中
に浸漬する方法(浸漬法という)、又はイオン交換樹脂
膜上に反応液体を塗布する方法(塗布法という)が挙げ
られる。浸漬法の場合、反応液体中の無機物前駆体の量
は限定はされないが、イオン交換樹脂膜中のイオン交換
基1当量に対し、好ましくは100当量以上10000
00当量以下、より好ましくは200当量以上1000
00当量以下、最も好ましくは500当量以上1000
00当量以下である。
【0048】塗布法は限定されないが、公知の塗布技術
を使用することができる。コータとしては、リバースロ
ールコータ、ダイレクトロールコータ、カーテンコー
タ、ファウンテンコータ、ナイフコータ、ダイコータ、
グラビアコーター、マイクログラビアコータ等が挙げら
れる。この中でもマイクログラビアコータは極めて薄く
塗布することができるため、好ましい。また、公知の噴
霧(スプレー)技術を使用することもできる。
【0049】最適な塗布量は反応液体の組成によっても
異なり、限定されないが、0.001g/m2〜100
00g/m2が好ましく、より好ましくは0.005g
/m2〜1000g/m2、最も好ましくは0.01g/
2〜100g/m2である。塗布に関しては、イオン交
換樹脂膜の片面又は両面のいずれでもよく、塗布しない
部分があってもよい。反応液体と接触させた後、必要に
応じて吸水ロール等に接触させることによりイオン交換
樹脂膜上に残存する反応液体を除去する。その後熱処理
を行って、無機物もしくは無機物前駆体の重縮合反応を
更に進行させることが好ましい。
【0050】熱処理方法としては、熱風加熱やプレート
ヒーターによる加熱等、公知の加熱方法を用いることが
できる。熱処理温度は限定されないが、好ましくは30
℃以上300℃以下、より好ましくは50℃以上200
℃以下、最も好ましくは80℃以上150℃以下であ
る。熱処理時間は、熱処理温度や反応液体組成によって
変わり限定されないが、好ましくは1秒以上5時間以
下、より好ましくは5秒以上1時間以下、最も好ましく
は10秒以上10分以下である。
【0051】複合層を形成させた後、必要に応じて水洗
や酸処理を行ってもよい。さらに、複合層上にイオン交
換樹脂を添着する、又はイオン交換樹脂を溶解させた溶
液を塗布する等によりイオン交換樹脂層を形成してもよ
い。また、以上の工程を繰り返す、又は以上の方法で得
られた本発明の多層イオン交換膜同士を貼り合わせるこ
とにより、イオン交換樹脂層と複合層を複数に積層した
多層イオン交換膜としてもよい。
【0052】次に上記のようにして製造した多層イオン
交換膜を用いて膜電極接合体を製造する方法について説
明する。 (膜電極接合体)本発明の多層イオン交換膜を固体高分
子型燃料電池に用いる場合、アノードとカソード2種類
の電極が両側に接合された膜電極接合体(MEA)とし
て使用される。電極は触媒金属の微粒子とこれを担持し
た導電剤より構成され、必要に応じて撥水剤が含まれ
る。電極に使用される触媒としては水素の酸化反応およ
び酸素の還元反応を促進する金属であれば特に限定され
ず、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウ
ム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タ
ングステン、マンガン、バナジウムあるいはそれらの合
金が挙げられる。これらの中では主として白金が用いら
れる。電極とイオン交換膜よりMEAを作成するには、
例えば次のような方法が行われる。イオン交換樹脂をア
ルコールと水の混合溶液に溶解したものに電極物質とな
る白金担持カーボンを分散させてペースト状にする。こ
れをPTFEシートに一定量塗布して乾燥させる。
【0053】次に、PTFEシートの塗布面を向かい合
わせにして、その間にイオン交換膜を挟み込み、熱プレ
スにより転写接合する。熱プレス温度はイオン交換膜の
種類によるが、通常は100℃以上であり、好ましくは
130℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。
前記以外のMEAの製造方法としては、「J.Elec
trochem.Soc.Vol139、No2.L2
8−L30(1992)」に記載の方法がある。これは
官能基がSO3Hであるイオン交換樹脂をアルコールと
水の混合溶液に溶解した後、SO3Naに変換した溶液
を作製する。
【0054】次に、この溶液に一定量の白金担持カーボ
ンを添加することによりインクを作製する。別途SO3
Na型に変換しておいたイオン交換膜の表面に上記のイ
ンクを塗布し、溶媒を除去する。最後に全てのイオン交
換基をSO3H型に戻すことによりMEAを作製するも
のである。SO3H型のイオン交換樹脂の溶液に一定量
の白金担持カーボンを添加してインクを作製し、公知の
塗布技術を用いて膜に塗布し、溶媒を除去する方法も、
本発明では効果的に利用できる。本発明のMEAにおい
ては、本発明の多層イオン交換膜を構成する複合層がカ
ソード電極と近接することが好ましい。ここでいう近接
とは、完全に接触はしている、又は好ましくは0.00
1μm以上10μm以下、より好ましくは0.005μ
m以上5μm以下、最も好ましくは0.01μm以上1
μm以下の間隔を有する状態を指す。
【0055】最後に、上記のMEAを用いた燃料電池の
製造方法について説明する。 (燃料電池)本発明の固体高分子電解質型燃料電池は、
MEA、集電体、燃料電池フレーム、ガス供給装置等よ
り構成される。このうち集電体(バイポーラプレート)
は、表面などにガス流路を有するグラファイト製あるい
は金属製のフランジのことであり、電子を外部負荷回路
へ伝達する他に水素や酸素をMEA表面に供給する流路
としての機能を持っている。こうした集電体の間にME
Aを挿入して複数積み重ねることにより、燃料電池を作
製される。
【0056】燃料電池の運転は、一方の電極に水素を、
他方の電極に酸素あるいは空気を供給することによって
行われる。燃料電池の作動温度は高温であるほど触媒活
性が上がるために、通常は水分管理が容易な20℃〜8
0℃で運転することが多い。しかしながら、本発明の多
層イオン交換膜を用いることにより、90℃以上200
℃以下、好ましくは90℃以上150℃以下での燃料電
池の運転が可能、又は容易になる。酸素や水素の供給圧
力については高いほど燃料電池出力が高まるため好まし
いが、膜の破損が起きないように適当な圧力範囲に調整
することが好ましい。好ましい圧力範囲は、イオン交換
膜の厚みにもよるが、50μm程度の厚みの場合は0.
5〜10atmである。0.5atm未満ではガスが触
媒に供給されにくいため燃料電池の出力が低下する。1
0atmを超えると膜の損傷等が発生し得るため好まし
くない。本発明の多層イオン交換膜は、クロルアルカ
リ、水電解、ハロゲン化水素酸電解、食塩電解、酸素濃
縮器、湿度センサー、ガスセンサー等に用いることも可
能である。
【0057】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例に基づいて
具体的に説明するが、本発明は実施例に制限されるもの
ではない。実施例としては、低膨潤ゾルゲル法を用い
て、パーフルオロ系イオン交換樹脂膜の最表面に、金属
酸化物と該イオン交換樹脂との複合層を形成させた多層
イオン交換膜の例について示す。本発明において示され
るイオン交換膜の評価方法と解析方法は次の通りであ
る。 (膨潤率)各膜サンプルを乾燥状態にて10cm角に切
り出し、膜厚T1を測定する。これら膜サンプルを各反
応液体に1分間浸漬した後、取り出した膜サンプルの寸
法(A1*A2)と膜厚T2をすばやく測定する。膨潤率S
は下記式より算出する。 S=100*(A1*A2*T2)/(10*10*T1
【0058】(SEM−EDX測定)各膜サンプルを適
度な大きさに切断し試料台に載せ、Osコーティングを
施し、表面分析用の検鏡試料とする。各膜サンプルをエ
ポキシ樹脂包埋した後、ウルトラミクロトームを用いて
切削し、膜断面を鏡面にして試料台に載せて炭素蒸着を
施し、断面分析用の検鏡試料とする。装置としては、走
査型電子顕微鏡(日立製作所(株)社製S−4700)
を用い、各試料の検鏡観察を行う。X線分析装置とし
て、堀場製作所(株)社製EMAX−7000を使用
し、各試料のS元素(スルホン酸基由来)とSi元素
(SiO2由来)のX線強度を測定し、その強度比(以
下、Si/S)を算出する。
【0059】(表面粗さ測定)超深度形状測定顕微鏡V
K−8500(株式会社キーエンス社製)を用い、10
0倍の対物レンズで各膜サンプル表面を観察する。光量
データとCCDカメラのカラーデータをもとに画像を合
成すると同時に、表面凹凸形状データを得た。長さ10
0μm程度の不純物のない適切な場所を選択し、そこの
凹凸形状データから粗さ曲線f(x)を求め、下記数式
(2)から中心線平均荒さRaを求める。
【0060】
【数2】
【0061】(動的粘弾性測定)動的粘弾性測定装置
(アイティー計測制御株式会社:DVA−200)を用
い、JIS K 7244に基づいて測定を行う。膜サ
ンプルを乾燥状態にて幅5mm×長さ35mmに切りだ
し、膜厚を測定する。膜サンプルを、つかみ間長25m
mで装置にセットした後、周波数35Hz,歪0.1
%,静/動力比2の引っ張り条件下にて、昇温速度2℃
/分で室温から200℃まで昇温し、貯蔵弾性率及びt
anδを測定する。 (引っ張り試験測定)引っ張り試験装置((株)島津製
作所:AGS−50NG)を用い、JISK 7127
に基づいて測定を行う。膜サンプルを乾燥状態にて幅5
mm×長さ40mmに切りだし、膜厚を測定する。膜サ
ンプルをつかみ間長20mmで装置にセットした後、1
20℃乾燥状態にて30mm/分で引っ張った。応力が
検出された時を零点とし、この時から5%伸長した時の
引っ張り強度を求める。
【0062】(プロトン伝導度測定)膜サンプルを湿潤
状態にて切り出し、厚みTを測定する。そして、幅1c
m、長さ5cmの膜長さ方向の伝導度を測定する2端子
式の伝導度測定セルに装着する。このセルを30℃のイ
オン交換水中に入れ、交流インピーダンス法により、周
波数10kHzにおける実数成分の抵抗値Rを測定し、
以下の式からプロトン伝導度σを導出する。 σ=L/(R×T×W) σ:プロトン伝導度(S/cm) T:厚み(cm) R:抵抗値(Ω) L(=5):膜長(cm) W(=1):膜幅(cm)
【0063】
【実施例1】EW950、乾燥時の厚みが25μmのパ
ーフルオロスルホン酸膜Aciplex−S1001X
(登録商標、旭化成(株)製)を10cm角に切り出
し、110℃で真空乾燥をして、膜の乾燥重量W1(g)を
測定した。次に、この乾燥した膜を500mlのテトラ
エトキシシランSi(OC254(関東科学(株)社
製)に浸漬し反応を開始させた。この時の膨潤率は11
0%であった。10分後、膜を溶液からすばやく取り出
し、ろ紙に挟んで風乾させた。3時間程度風乾させた
後、110℃で1時間真空乾燥を行い、膜の乾燥重量W
2(g)を測定した。この多層イオン交換膜中のシリカの含
有率Xを、以下の式により導出したところ、6.5質量
%であった。 X=(W2−W1)/W2×100
【0064】この多層イオン交換膜表面をSEMにて観
察したところ、図1に示すような平板状の複合層が観察
された。この膜表面をEDX測定したところ、Si/S
は9.1と高い値を示した。図2に膜断面SEM写真を
示す。図中のAは複合層を、Bはイオン交換樹脂層であ
る。その膜断面方向から膜表面近傍のSiの分布を調べ
たところ、図3に示すように膜表面から約1μmの深さ
までSi由来のX線強度が強く検出された。図中のA1
は複合層、B1はイオン交換樹脂層、C1はサンプル外
である。これらの解析結果から、内部よりもSiO2
多く含有する、厚さ約1μmの複合層の存在が確認され
た。また、この複合層の表面粗さは0.1μmであっ
た。
【0065】次に、この多層イオン交換膜の動的粘弾性
測定を行ったところ、100℃以上での急激な貯蔵弾性
率の低下がみられず、150℃の貯蔵弾性率も1.6×
10 8Paであった。50℃での貯蔵弾性率に対する1
50℃での貯蔵弾性率の比は0.48であった。この結
果を図4に示す。また、図5にtanδの結果も示す
が、測定範囲において明確なピークがみられなかった。
また、120℃、5%伸長時の引っ張り強度は417N
/cm2と高かった。以上の結果から、高耐熱性を有す
ることがわかった。プロトン伝導度も0.089S/c
mと良好であった。以上の結果を表1に示す。
【0066】
【実施例2】テトラエトキシシランSi(OC254
(関東科学(株)社製)483g、リン酸トリメチルP
O(OCH33(関東科学(株)社製)17gを混合し
た液体に浸漬して反応させたこと以外は、実施例1と同
様な方法で多層イオン交換膜を作製した。この時の膨潤
率は110%であり、この多層イオン交換膜中の無機物
の含有率は10.8質量%であった。
【0067】次に、この多層イオン交換膜表面をSEM
にて観察したところ、実施例1と同様に平板状の複合層
が観察された。この膜表面をEDX測定したところ、S
i/Sは8.1と高い値を示した。また、膜断面方向か
ら膜表面近傍のSiの分布を調べたところ、実施例1と
同様に膜表面から約1μmの深さまでSi由来のX線強
度が強く検出された。これらの解析結果から、内部より
もSiO2を多く含有する、厚さ約1μmの複合層の存
在が確認された。また、この複合層の表面粗さは0.0
5μmであった。
【0068】この多層イオン交換膜の動的粘弾性測定を
行ったところ、実施例1と同様に100℃以上での急激
な貯蔵弾性率の低下がみられず、150℃の貯蔵弾性率
は1.5×108Paであった。50℃での貯蔵弾性率
に対する150℃での貯蔵弾性率の比は0.47であっ
た。この結果を図4に示す。また、図5にtanδの結
果も示すが、測定範囲において明確なピークがみられな
かった。また、120℃、5%伸長時の引っ張り強度は
276N/cm2と高かった。以上の結果から、高耐熱
性を有することがわかった。プロトン伝導度も0.08
3S/cmと良好であった。以上の結果を表1に示す。
【0069】
【比較例1】実施例1で用いたパーフルオロスルホン酸
膜Aciplex−S1001Xの膜表面をSEMにて
観察したところ、図6に示すように滑らかであった。ま
た、このイオン交換樹脂膜の表面粗さは0.05μmで
あった。次に動的粘弾性測定を行ったところ、100℃
以上での急激な貯蔵弾性率の低下がみられ、150℃の
貯蔵弾性率は3.0×106Paであった。50℃での
貯蔵弾性率に対する150℃での貯蔵弾性率の比は0.
01であり、耐熱性は悪かった。この結果を図4に示
す。図5に示すように、tanδは120℃付近にピー
クを有した。また、120℃、5%伸長時の引っ張り強
度は29N/cm2と低かった。プロトン伝導度は、
0.096S/cmと良好であった。この結果を表1に
示す。
【0070】
【比較例2】EW1100、乾燥時の厚みが175μm
であるパーフルオロスルホン酸膜ナフィオン117(登
録商標、デュポン社製)の動的粘弾性測定を行ったとこ
ろ、100℃以上での急激な貯蔵弾性率の低下がみら
れ、150℃の貯蔵弾性率は6.5×106Paであっ
た。50℃での貯蔵弾性率に対する150℃での貯蔵弾
性率の比は0.02であり、耐熱性は悪かった。この結
果を図4に示す。図5に示すように、tanδは130
℃付近にピークを有した。プロトン伝導度は、0.08
9S/cmと良好であった。この結果を表1に示す。
【0071】
【比較例3】従来技術で述べた、高膨潤ゾルゲル法によ
りSiO2を複合化した例を示す。ナフィオン117膜
を5cm角に切り出し、110℃で真空乾燥をした膜
を、水とメタノールを1:5の体積割合で混合した液体
300cm3に入れ、膨潤させた。膨潤率は220%で
あった。8時間含浸後、テトラエトキシシランとメタノ
ールを3:2の体積割合で混合した260cm3を添加
し反応を開始させ、反応時間1分で膜を溶液から取り出
して、膜表面を紙タオルで拭いた。30℃で大気中に1
日間放置後、110℃で8時間真空乾燥を行った。この
イオン交換膜中のSiO2含有率は4.0質量%であっ
た。図7に膜断面のSEM写真を示す。図中のDはイオ
ン交換膜である。その膜断面方向のSiの分布を調べた
ところ、図8に示すようにSi由来のX線強度は膜厚方
向に均一であった。図中のD1はイオン交換膜である。
【0072】このイオン交換膜の動的粘弾性測定を行っ
たところ、100℃以上での急激な貯蔵弾性率の低下が
みられ、150℃の貯蔵弾性率は1.5×107Paで
あった。50℃での貯蔵弾性率に対する150℃での貯
蔵弾性率の比は0.03であり、耐熱性は悪かった。こ
の結果を図4に示す。図5に示すように、tanδは1
40℃付近にピークを有した。プロトン伝導度は、0.
089S/cmと良好であった。この結果を表1に示
す。
【0073】
【比較例4】反応時間を5分にしたこと以外は、比較例
3と同様の方法でイオン交換膜を作製した。このイオン
交換膜のSiO2含有率は9質量%であった。図9に膜
断面のSEM写真を示す。図中のEはイオン交換膜であ
る。その膜断面方向のSiの分布を調べたところ、図1
0に示すようにSi由来のX線強度は膜厚方向に均一で
あった。図中のE1はイオン交換膜である。動的粘弾性
測定を行ったところ、100℃以上での急激な貯蔵弾性
率の低下がみられ、150℃の貯蔵弾性率は3.7×1
7Paであった。50℃での貯蔵弾性率に対する15
0℃での貯蔵弾性率の比は0.09であった。この結果
を図4に示す。図5に示すように、tanδは140℃
付近にピークを有した。このように、比較例1〜3に比
べると耐熱性はよいものの、実施例に比べると悪く、ま
だ十分とは言えなかった。プロトン伝導度は、0.06
0S/cmと悪かった。この結果を表1に示す。
【0074】
【比較例5】反応時間を35分にしたこと以外は、比較
例3と同様の方法でイオン交換膜を作製した。このイオ
ン交換膜のSiO2含有率は18質量%であった。図1
1に膜断面のSEM写真を示す。図中のFはイオン交換
膜である。その膜断面方向のSiの分布を調べたとこ
ろ、図12に示すようにSi由来のX線強度は膜厚方向
に均一であった。図中のF1はイオン交換膜である。動
的粘弾性測定を行ったところ、100℃以上での急激な
貯蔵弾性率の低下が小さく、150℃の貯蔵弾性率は
1.5×108Paであった。50℃での貯蔵弾性率に
対する150℃での貯蔵弾性率の比は0.22であっ
た。この結果を図4に示す。図5に示すように、tan
δは150℃付近にピークを有した。このように、実施
例と同等の耐熱性を示すことがわかった。しかしなが
ら、プロトン伝導度は0.050S/cmであり、実施
例に比べかなり悪かった。この結果を表1に示す。
【0075】
【比較例6】シリカ微粒子(日本アエロジル(株)製、
アエロジル(登録商標)380)をパーフルオロスルホ
ン酸ポリマー溶液(旭化成(株)製、EW:910、溶
媒組成(質量比):エタノール/水=50/50)に質
量比が3:1となるように分散液を調製した。この分散
液を120℃のホットプレート上にてパーフルオロスル
ホン酸膜Aciplex−S1001Xに塗布した後、
空気中120℃にて1hr乾燥を行うことによりシリカ
微粒子とイオン交換樹脂からなる複合層を形成させた。
塗布前後の質量変化から、無機物層は0.97mg/c
2であり、シリカ含有率は15質量%であった。この
イオン交換膜表面のSEM写真を図13に示す。このよ
うに、微粒子状のシリカから形成されている様子が観察
された。また、このイオン交換膜の表面粗さは8.2μ
mであった。このイオン交換膜の耐熱性は、比較例1と
同等であり悪かった。
【0076】
【表1】
【0077】
【発明の効果】無機物とイオン交換樹脂との複合層と、
イオン交換樹脂層を含む多層イオン交換膜は、100〜
200℃における貯蔵弾性率の急激な低下がみられず、
高耐熱性を示すとともに、高いプロトン伝導度を維持す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作製した多層イオン交換膜最外層を
形成する複合層表面のSEM写真。
【図2】実施例1で作製した多層イオン交換膜断面のS
EM写真。
【図3】実施例1で作製した多層イオン交換膜の断面方
向にSiとSのX線強度を測定したグラフ。
【図4】実施例及び比較例1〜5の動的粘弾性測定で得
られた貯蔵弾性率 vs 温度のグラフ。
【図5】実施例及び比較例1〜5の動的粘弾性測定で得
られたtanδ vs 温度のグラフ。
【図6】比較例1で用いたイオン交換樹脂膜表面のSE
M写真。
【図7】比較例3で用いたイオン交換膜断面のSEM写
真。
【図8】比較例3で用いたイオン交換膜の断面方向にS
iとSのX線強度を測定したグラフ。
【図9】比較例4で用いたイオン交換膜断面のSEM写
真。
【図10】比較例4で用いたイオン交換膜の断面方向に
SiとSのX線強度を測定したグラフ。
【図11】比較例5で用いたイオン交換膜断面のSEM
写真。
【図12】比較例5で用いたイオン交換膜の断面方向に
SiとSのX線強度を測定したグラフ。
【図13】比較例6で用いたイオン交換膜最外層を形成
する複合層表面のSEM写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01M 8/10 H01M 8/10

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機物を1質量%以上99質量%以下、
    かつ、イオン交換樹脂を1質量%以上99質量%以下の
    範囲で含有し、表面粗さが0.001μm以上8μm以
    下である複合層と、イオン交換樹脂を50質量%以上1
    00質量%以下の範囲で含有するイオン交換樹脂層を含
    むことを特徴とする多層イオン交換膜。
  2. 【請求項2】 無機物が、金属酸化物であることを特徴
    とする請求項1記載の多層イオン交換膜。
  3. 【請求項3】 多層イオン交換膜全体に対する無機物の
    含有率が、0.001質量%以上15質量%以下である
    ことを特徴とする請求項1記載の多層イオン交換膜。
  4. 【請求項4】 50℃35Hzでの貯蔵弾性率に対する
    150℃35Hzでの貯蔵弾性率の比が、0.1以上1
    以下であることを特徴とする請求項1に記載の多層イオ
    ン交換膜。
  5. 【請求項5】 無機物を1質量%以上99質量%以下、
    かつ、イオン交換樹脂を1質量%以上99質量%以下の
    範囲で含有し、表面粗さが0.001μm以上8μm以
    下である複合層をイオン交換樹脂膜上に形成させる多層
    イオン交換膜の製造方法であって、膨潤率が100%以
    上170%以下のイオン交換樹脂膜に、金属アルコキシ
    ドを含有する反応液体を接触させ、金属アルコキシドを
    加水分解・重縮合反応させることを含む多層イオン交換
    膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれか1項記載の多層
    イオン交換膜を備えることを特徴とする膜電極接合体。
  7. 【請求項7】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の多
    層イオン交換膜を構成する複合層が、カソード電極に近
    接していることを特徴とする請求項6記載の膜電極接合
    体。
  8. 【請求項8】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の多
    層イオン交換膜を備えることを特徴とする固体高分子型
    燃料電池。
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