JP2006260901A - 含フッ素スルホン酸ポリマー複合膜 - Google Patents

含フッ素スルホン酸ポリマー複合膜 Download PDF

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Abstract

【課題】高い機械的強度および優れた寸法安定性に加えて、燃料電池運転時の高温かつ強い酸化雰囲気下の過酷な環境においても高い化学的安定性を示す実用的固体高分子電解質膜の提供。
【解決手段】一般式(1)
Figure 2006260901

(k及びlは、k/lがそれぞれのモノマー単位のモル比を表し、イオン交換容量が600〜1300g/当量の範囲となるように定められる数値であり、mは3〜8の整数である。)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーと補強材を含有し、かつ、膜厚が1〜200μmであることを特徴とする複合固体電解質膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池用の固体高分子電解質膜に適した複合固体電解質膜に関する。さらに詳しくは、本発明は、機械的強度および寸法安定性に加えて、化学的安定性をも併せ持つ複合固体電解質膜に関する。
近年、電解質として固体高分子電解質膜を用いた燃料電池は、小型軽量化が可能であり、かつ、比較的低温でも高い出力密度が得られることから、自動車用途や家庭用コジュネレーションシステムに向けた開発が進められている。
このような目的に用いられる固体高分子電解質膜材料としては、優れたプロトン伝導性、適度な保水性、水素ガスや酸素ガス等に対するガスバリア性等が要求される。このような要件を満たす材料として、スルホン酸基やホスホン酸基等を有する高分子が種々検討され、多くの材料が提案されてきている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、実際の燃料電池運転条件下では、電極において高い酸化力を有する活性酸素種が発生し、特に長期にわたり燃料電池を安定に運転させるためには、このような過酷な酸化雰囲気下での耐久性が要求される。現在までに提案されている多くの炭化水素系材料は、燃料電池の運転の初期特性に関しては優れた特性を示すものも報告されているが、耐酸化性に問題がある。
このため、現在、実用化に向けた固体高分子電解質膜材料としては、下記一般式(2)
Figure 2006260901
(k’及びl’は、k’/l’が3〜10である数値であり、pは0又は1、qは2である。)
で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーが主に採用されている。
しかしながら、実際の燃料電池運転は80℃以上の温度で行われるため、該パーフルオロスルホン酸ポリマーのガラス転移温度に近く、燃料電池運転条件下での膜の機械的強度が不十分となる。また、さらに、該パーフルオロスルホン酸ポリマーからなる膜は、燃料電池運転条件下での水による膨潤が大きく、膜の面方向での寸法安定性が不良で燃料電池の耐久性を低下させる原因になる。したがって、該パーフルオロスルホン酸ポリマーからなる固体電解質膜のこれらの欠点を補うために、各種の膜補強技術が提案されている。その例としては、例えば、該パーフルオロスルホン酸ポリマーにフィブリル状のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が添加された膜(例えば特許文献1及び2参照)、延伸処理を施したPTFEの多孔質体等の各種の多孔質膜に該パーフルオロスルホン酸ポリマーを含浸させた膜(例えば特許文献3及び4参照)、該パーフルオロスルホン酸ポリマーに無機粒子(Al、SiO、TiO、ZrO等)を添加した膜(例えば特許文献5及び6参照)等の複合膜が開示されている。しかしながら、これらの複合膜では、確かに機械的強度や寸法安定性は改善されるものの、実用的燃料電池用固体電解質膜としての評価が進むにつれて、その化学的安定性はまだ不十分であり改善が必要であることがわかってきた。すなわち、上記一般式(2)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーの膜でさえ、燃料電池のような過酷な運転条件下では次第に分解し、運転中の排水にフッ化物イオンが溶出していることが判明し、さらなる化学的安定性に優れた固体高分子電解質膜の開発が求められていた。
すなわち、実用的な燃料電池用固体高分子電解質膜としては、機械的強度および寸法安定性とともに、一般式(2)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーの膜より優れた化学的安定性を併せ持つ固体高分子電解質膜の開発が求められていた。
なお、特許文献7には、一般式(1)においてm=4であるパーフルオロスルホン酸ポリマーポリマーの水和積が22000以上である固体高分子電解質膜が開示されているが、本発明者らの検討により、この膜では機械的強度が弱く、また乾湿寸法変化も大きく燃料電池用の固体高分子電解質膜材料には適さないことが判明した。また、特許文献7には、その膜の化学的安定性や高温での耐酸化性については何の説明もされていないし、補強材との複合化技術についても何の記載も無い。
O. Savadogo, Journal of New Materials for Electrochemical Systems 1巻, 47-66頁(1998年) 特開昭53−149881号明細書 特公昭63−61337号明細書 特公平5−75835号明細書 米国特許第5599614号明細書 特開平6−111827号明細書 特開平9−219206号明細書 国際出願公開公報WO2004/062019号明細書 特開昭57−25331号明細書
本発明は、高い機械的強度および優れた寸法安定性に加えて、燃料電池運転時の高温かつ強い酸化雰囲気下の過酷な環境においても高い化学的安定性を示す実用的固体高分子電解質膜を提供することを目的とするものである。
本発明者らは上記問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、少なくとも一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーと補強材を含有し、かつ、膜厚が1〜200μmであることを特徴とする複合固体電解質膜が、高温かつ強い酸化雰囲気下の過酷な環境においても、優れた化学的安定性を示す実用的固体高分子電解質膜であることを見出だし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1].少なくとも下記一般式(1)
Figure 2006260901
(k及びlは、k/lがそれぞれのモノマー単位のモル比を表し、イオン交換容量が600〜1300g/当量の範囲となるように定められる数値であり、mは3〜8の整数である。)
で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーと補強材を含有し、かつ、膜厚が1〜200μmであることを特徴とする複合固体電解質膜。
[2].該補強材が、空孔率が20〜99%の多孔質シート状材料であることを特徴とする[1]に記載の複合固体電解質膜。
[3].上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーにおいて、該パーフルオロスルホン酸ポリマー中の−SOH基を−SOF基とした形態の時の、270℃におけるメルトフローレート(MFR)が200g/10分以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の複合固体電解質膜。
[4].上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーの水和積が2000以上、22000未満であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の複合固体電解質膜。
[5].該複合固体電解質膜が、200℃で、80℃水飽和空気と8時間にわたり接触し続けたときのフッ化物イオンの生成量が、元の該複合固体電解質膜の全質量に対して、1時間あたり0.02質量%以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の複合固体電解質膜。
[6].該複合固体電解質膜が、80℃熱水に1時間浸漬させた場合と23℃で湿度50%に1時間以上置いた場合との乾湿寸法変化の振幅が10%以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の複合固体電解質膜。
[7].[1]〜[6]のいずれかに記載の複合固体電解質膜を介してアノードとカソードが対向してなる膜/電極接合体。
[8].[7]に記載の膜/電極接合体を包含してなることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
本発明の複合固体電解質膜は、機械的強度及び寸法安定性に加えて、高温かつ強い酸化雰囲気下の過酷な環境においても、化学的安定性に優れており、固体高分子型燃料電池膜として用いた場合、長期間安定して使用することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、下記一般式(1)
Figure 2006260901
で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーが使用される。なお、k及びlは、k/lがそれぞれのモノマー単位のモル比を表し、イオン交換容量(EW)が600〜1300g/当量の範囲となるように定められる数値である。
上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーのEWとしては、スルホン酸基密度が高いほうが(すなわち、EWが低いほうが)プロトン伝導度が高いので好ましい。具体的にはEWの値は1300g/当量以下であり、好ましくは1100g/当量以下であり、より好ましくは1000g/当量以下であり、より好ましくは950g/当量以下であり、特に好ましくは900g/当量以下である。一方、EWの値が低すぎると機械的強度が低下したり、水への溶解が問題になるので、EWの値は600g/当量以上であり、好ましくは640g/当量以上であり、さらに好ましくは680g/当量以上である。
上記一般式(1)において、mの値は3〜8の整数であるが、化学的安定性が優れている点ではmは4〜8がより好ましく、さらにガラス転移温度の高さを考慮するとmは4〜6がさらに好ましく、4が最も好ましい。
なお、本願に使用される上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーとしては、溶液重合法や乳化重合法で製造されたポリマーをそのまま使用しても良いが、重合により得られたポリマーをフッ素ガス等のフッ素化剤で安定化処理したポリマーはより高い化学的安定性を示すので好ましい。
上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーにおいて、該パーフルオロスルホン酸ポリマー中の−SOH基を−SOF基とした形態の時の270℃におけるメルトフローレート(MFR)の値(荷重2.16kg、オリフィス径2.09mmの条件で測定した値)は、通常は200g/10分以下のポリマーが使用されるが、当該MFRの値は、好ましくは100g/10分以下であり、より好ましくは60g/10分以下又は40g/10分以下であり、さらに好ましくは20g/10分以下であり、特に好ましくは10g/10分以下である。MFRとはポリマーの溶融流動性や分子量の尺度であり、当該MFRの値が高すぎると、含水状態での複合固体電解質膜の機械的強度が低下したり、複合固体電解質膜の面方向や厚み方向での乾湿寸法変化が大きくなったり、あるいは後述の複合固体電解質膜の水和積の値が大きくなりすぎるので好ましくない。当該MFRの値の下限値は、特に限定的なものではないが、成膜の容易性より、好ましくは0.001g/10分であり、より好ましくは0.01g/10分であり、特に好ましくは0.1g/10分である。
上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーの水和積(特許文献7参照)は、2000以上、22000未満である。なお、本願における「ポリマーの水和積」とは、対象となるポリマーが膜状であり、その膜は、1)該パーフルオロスルホン酸ポリマー中の−SOH基を−SOF基とした形態の時に、270℃で膜厚50μmのプレス膜を作製した後、ケン化、酸処理を行い−SOH基に変換して得られた膜、あるいは2)該パーフルオロスルホン酸ポリマーを含有する水/アルコール混合溶液から膜厚50μmのキャスト膜を少なくとも200℃で1時間アニール処理して得られた膜、である。
ここで、ポリマーの水和積とは、膜が吸収したスルホン酸基1当量あたりの水の当量数と、EWとの積である。水の吸収水量(特許文献8参照)は、膜を沸騰水中に保持して測定される。プロトン伝導度と湿潤時の機械的強度のバランスから、ポリマーの水和積の上限は22000未満が好ましく、21000以下がより好ましく、20000以下がさらに好ましく、19000以下がさらに好ましく、18000以下が特に好ましい。ポリマーの水和積の下限は2000以上が好ましく、より好ましくは3500以上であり、特に好ましくは5000以上である。また、ポリマーの水和積とEWとの積で表す値の場合、上限は23×10が好ましく、22×10がより好ましく、21×10がより好ましく、20×10が特に好ましい。また、ポリマーの水和積とEWとの積の値の下限は2×10が好ましく、3×10がより好ましく、4×10がより好ましく、5×10が特に好ましい。
本発明の複合固体電解質膜において、上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーと組み合わせて使用される補強材としては、各種の補強材が使用されるが、その例としては、例えば、多孔質シート状材料、フィブリル状材料、繊維状材料、耐熱性ポリマー分散体、無機微粒子、ゾルゲル材料等の各種の材料が挙げられる。それらの補強材の中でも、多孔質シート状材料が操作性と補強効果に優れているので特に好ましい。
本発明の複合固体電解質膜の全質量に対する上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーの含有量の上限は、好ましくは99質量%であり、より好ましくは95質量%であり、特に好ましくは90質量%である。また、その下限は、好ましくは20質量%であり、より好ましくは50質量%の範囲あり、特に好ましくは70質量%である。
本発明の複合固体電解質膜の全質量に対する補強材の含有量の上限は、好ましくは80質量%であり、より好ましくは50質量%であり、特に好ましくは30質量%である。また、その下限は、好ましくは1質量%であり、より好ましくは5質量%であり、特に好ましくは10質量%である。
なお、本発明の複合固体電解質膜は、上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーと補強材以外に、膜特性を調製するために、第3成分として他の添加成分を含めても良い。この場合、第3成分の例としては、ポリベンズイミダゾール(PBI)やポリフェニレンスルフィド(PPS)等のポリマー成分や酸化防止剤等が挙げられ、第3成分の添加量は、上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーの質量に対して、50質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、特に好ましく10質量%以下である。
本発明の複合固体電解質膜の膜厚は、1〜200μmの範囲であり、好ましくは3〜200μmの範囲であり、より好ましくは5〜150μmの範囲であり、さらに好ましくは10〜100μmの範囲であり、特に好ましくは15〜80μmの範囲である。さらに、本発明の複合固体電解質膜は、各種の条件下で延伸して作製されたものでも良い。
本発明の複合固体電解質膜に、上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーと組み合わせて使用される補強材としては、膜の表面から裏面までの貫通構造を有している多様な多孔質シート状材料が使用可能である。その例としては、例えば、各種の成膜法により作製された多孔質膜の他に、各種の繊維からなる不織布、織布、抄紙法により得られたシート、貫通孔を有するフィルム材料等も含まれる。
該多孔質シート状材料の空孔率は20%〜99%が好ましいが、空孔率が低すぎると固体高分子電解質膜としてのプロトン伝導性が低下し、空孔率が高すぎると機械的強度が低下するため、より好ましくは40%〜98%であり、特に好ましくは50%〜95%である。
本発明の複合固体電解質膜に使用される該多孔質シート状材料の膜厚は、必ずしも複合固体電解質膜の厚さと同じである必要は無く、複合固体電解質の膜厚以内の各種の膜厚の材料が使用される。その膜厚の下限としては好ましくは、0.1μm以上であり、より好ましくは1μm以上であり、さらに好ましくは5μm以上であり、特に好ましくは10μm以上である。また、膜厚の上限としては、好ましくは200μm以下であり、より好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは80μm以下である。膜厚が0.1μm未満の場合には、機械的強度の低下や取り扱い性の面から実用に供することが難しい。一方、膜厚が200μmを超える場合、イオン伝導性が低下するので好ましくない。
本発明の複合固体電解質膜に使用される該多孔質シート状材料の材質としては、特に限定されないが、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等のフッ素系高分子、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)等の熱可塑性樹脂、PI(ポリイミド)、PSF(ポリスルホン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPSS(ポリフェニレンスルフィドスルフォン)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PEK(ポリエーテルケトン)、PBI(ポリベンズイミダゾール)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPP(ポリパラフェニレン)、PPQ(ポリフェニルキノキサリン)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)、芳香族液晶ポリエステル等のエンジニアリングプラスチック等を挙げることができる。
本発明の複合固体電解質膜に使用される該多孔質シート状材料と上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを複合化させる方法としては、特に制約は無く、広範な種類の複合化方法が採用される。その具体的な例としては、例えば、該パーフルオロスルホン酸ポリマーが、水、アルコール類等のプロトン溶媒や、N,N―ジメチルホルムアミド、N,N―ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N―メチル−2−ピロリドン等の非プロトン極性溶媒、あるいはこれらの混合溶媒に溶解あるいは分散させた液(以後、含浸液と呼ぶ)に、該多孔質シート状材料を浸漬して、該含浸液を含浸させ、次いで乾燥させる方法が挙げられる。また、該多孔質シート状材料の上に、該パーフルオロスルホン酸ポリマーが溶解あるいは分散した液を塗布して含浸・乾燥させる方法も挙げられる。この方法以外にもスプレーや刷毛塗り等でも含浸できるがいずれの方法でも構わない。また、このような方法で作製した複合膜に、さらに上記一般式(1)で表されるポリマーからなる膜や別途作製した複合膜を加熱下でプレスして複合化することもできる。
該多孔質シート状材料に、上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを含浸させる際の含浸液の固形分濃度は、通常5質量%以上のものが使用される。該多孔質シート状材料に含浸させた後でも空孔が存在する場合には、繰り返し含浸させることもできる。その際、含浸後に風乾または熱風等を十分に当てて溶剤を乾燥・除去した後に再度含浸をさせる。また、減圧下あるいは超音波照射により、空孔を残さずに含浸させる方法も可能である。
上記の方法で得られた複合固体電解質膜は、引き続き熱処理されることが望ましい。熱処理により該多孔質シート状材料と上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーが強固に密着され、その結果、機械的強度に優れた複合固体電解質膜が得られる。熱処理温度は、好ましくは120℃〜300℃、より好ましくは140℃〜250℃、特に好ましくは160℃〜230℃である。熱処理温度が低いと、該多孔質シート状材料と上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーとの密着性が確保できず、好ましくない。一方、熱処理温度が高くなると、上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーが変性する可能性があり好ましくない。熱処理の時間は、熱処理温度にもよるが、好ましくは5分〜3時間、さらに好ましくは10分〜2時間である。
以下に、上記の方法で得られた複合固体電解質膜の熱酸化耐性の評価試験方法について説明をする。
一般に固体高分子型燃料電池用膜の耐久性評価は、実際の電池条件で何千時間もの長期間の試験を繰り返すことは効率的ではないので、種々の加速試験が行われている。実際の燃料電池運転においては、クロスオーバーした水素がカソードで燃焼することで発生する熱によりパーフルオロスルホン酸ポリマーの分解が起こり、その結果としてフッ化物イオンが生成したと推定される現象が観測されている。本発明者らは、上記の現象を鑑み、複合固体電解質膜の高温領域での熱酸化耐性評価を行った。
高温での熱酸化耐性の評価試験方法は以下のとおりである。上記の製膜方法で得られた複合固体電解質膜を3cm×3cmに切り出し、内径5mm長さ5cmのSUS製試料管に入れ、入口側にSUS配管を、出口側にPTFEの配管をそれぞれ接続した。試料管全体を200℃のオーブンに入れ、SUS配管を通じて空気を20ml/分で流した。この際、配管の途中で80℃に加温した水のバブラーを通すことで空気を加湿した。出口側のPTFE配管は、8mlの希NaOH水溶液(6×10−3N)に導入し、分解物を8時間に渡り捕集し、この捕集液中のフッ化物イオンをイオンクロマトグラフィーで測定した。
なお、複合固体電解質膜中の不純物等の影響で、分解試験初期に比較的高濃度のフッ化物イオンが捕集されることがあるが、その場合には、1時間あたりの捕集量が安定してからの捕集量を求めればよい。
本発明者らは、様々な複合固体電解質膜について上記の高温での熱酸化耐性試験で幅広く検討を行った結果、前記の該多孔質シート状材料に上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを複合化させた本発明の複合固体電解質膜は、同じ多孔質シート状材料に上記一般式(2)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを複合化させた複合固体電解質膜と比較して、燃料電池運転時の高温かつ強い酸化雰囲気下の過酷な環境においても、化学的安定性に優れた複合膜であることを見出した。すなわち、上記の高温での熱酸化耐性試験において、本発明の複合固体電解質膜の場合には、当該捕集液中のフッ化物イオンの量が、元の複合固体電解質膜の全質量に対して、1時間あたり0.02質量%以下が容易に達成され、さらには1時間あたり0.01質量%以下、あるいは1時間あたり0.008質量%以下が達成される。一方、本発明の複合固体電解質膜で使用した該多孔質シート状材料に上記一般式(2)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを複合化させて得られた複合固体電解質膜の場合には、上記の高温で熱酸化耐性試験での捕集液中のフッ化物イオンの量は、元の複合固体電解質膜の全質量に対して1時間あたり0.03質量%以上であった。以上のように、本発明の複合固体電解質膜では、従来の複合固体電解質膜の課題であった高温領域での熱酸化耐性が大幅に改善された。
固体高分子電解質膜の乾燥時に対する含水時の寸法変化は、乾湿寸法変化の振幅の測定で評価される。詳細な測定方法については後述するが、固体高分子電解質膜を80℃熱水に浸漬させた場合と23℃で湿度50%に置いた場合との乾湿寸法変化の振幅が10%以下であることが好ましく、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。10%を超える場合には、生じる局所的なひずみが固体高分子電解質膜の変形や破壊の起点となるという問題点があった。例えば、上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマー単独の膜では、上記乾湿寸法変化の振幅が20%程度であるため、その乾湿寸法変化の改善が求められていた。しかしながら、本発明者らは、該多孔質シート状材料に上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを複合化させた該複合固体電解質膜は、上記乾湿寸法変化の振幅が10%以下に抑えられ、燃料電池用の固体電解質膜に適していることを見出した
以下に、本発明の複合固体電解質膜について具体例で説明する。
多孔質シート状材料としては、下記一般式(3)
Figure 2006260901
(m’、n’の比は任意であり、どちらかの単独重合体であっても、共重合体であっても良い。また、ランダムに重合されていてもブロック重合されていても良い。)
で表される芳香族液晶ポリエステル(m’=0.75、n’=0.25)の不織布(クラレ社製、商品名ベクルス、膜厚20μm、空孔率83%)を用意し、
(複合膜a)該芳香族液晶ポリエステルの不織布に、EWが1100g/当量である市販のNafion溶液(Aldrich社製、5質量%溶液、上記一般式(2)においてp=1かつq=2であるパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液)を含浸させて得られた複合固体電解質膜、
(複合膜b)該芳香族液晶ポリエステルの不織布に、上記一般式(1)においてm=4であり、EWが829g/当量であり、該パーフルオロスルホン酸ポリマー中の−SOH基を−SOF基とした形態の時のMFRが2.9g/10分であるパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液(5質量%溶液)を含浸させて得られた複合固体電解質膜、
を各々作製し、高温での熱酸化耐性試験により、生成するフッ化物イオンの生成量を測定した。その結果、(複合膜a)の場合、元の複合固体電解質膜の全質量に対して、1時間あたり0.035質量%であった。これに対して、(複合膜b)の場合、元の複合固体電解質膜の全質量に対して、1時間あたり0.005質量%であった。このように(複合膜a)と比べて(複合膜b)は高温での熱酸化分解におけるフッ化物イオンの生成量が少ないことから(複合膜b)は化学的安定性に優れた膜であることが判明した。
また、(複合膜b)の乾湿寸法変化の振幅は1%であり、23℃における破断強度は560kgf/cmであった。これらの値は、上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマー単独の膜の場合(乾湿寸法変化の振幅は22%、23℃における破断強度は200kgf/cm)と比べて、乾湿寸法変化及び機械的強度に優れた複合固体電解質膜であることがわかった。
本発明の複合固体電解質膜を固体高分子型燃料電池として用いる場合、該複合固体電解質膜がアノードとカソードの間に密着保持されてなる膜/電極接合体(membrane/electrode assembly)(以下、しばしば「MEA」と称する)として使用される。ここでアノードはアノード触媒層からなり、プロトン伝導性を有し、カソードはカソード触媒層からなり、プロトン伝導性を有する。また、アノード触媒層とカソード触媒層のそれぞれの外側表面にガス拡散層(後述する)を接合したものもMEAと呼ぶ。
アノード触媒層は、燃料(例えば水素)を酸化して容易にプロトンを生ぜしめる触媒を包含し、カソード触媒層は、プロトン及び電子と酸化剤(例えば酸素や空気)を反応させて水を生成させる触媒を包含する。アノードとカソードのいずれについても、触媒としては白金もしくは白金とルテニウム等を合金化した触媒が好適に用いられ、1nm〜100nm以下の触媒粒子であることが好ましい。また、このような触媒粒子は、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック、活性炭、黒鉛といった0.01nm〜10μm程度の大きさの導電性粒子に担持されていることが好ましい。触媒層投影面積に対する触媒粒子の担持量は、0.001mg/cm〜10mg/cm以下であることが好ましい。
さらにアノード触媒層とカソード触媒層は、上記一般式(1)又は一般式(2)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーを含有することが好ましい。触媒層投影面積に対する担持量として、0.001mg/cm〜10mg/cm以下であることが好ましい。
MEAの作製方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。まず、上記一般式(1)又は一般式(2)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーをアルコールと水の混合溶液に溶解したものに、触媒として市販の白金担持カーボン(例えば、田中貴金属(株)製TEC10E40E)を分散させてペースト状にする。これを2枚のPTFEシートのそれぞれの片面に一定量塗布して乾燥させて触媒層を形成する。次に、各PTFEシートの塗布面を向かい合わせにして、その間に本発明の複合固体電解質膜を挟み込み、100℃〜200℃で熱プレスにより転写接合してから、PTFEシートを取り除くことにより、MEAを得ることができる。
当業者にはMEAの作製方法は周知である。MEAの作製方法は、例えば、JOURNAL OF APPLIED ELECTROCHEMISTRY,22巻 1−7頁(1992年)に詳しく記載されている。
ガス拡散層としては、市販のカーボンクロスもしくはカーボンペーパーを用いることができる。前者の代表例としては、米国DE NORA NORTH AMERICA社製カーボンクロスE−tek,B−1が挙げられ、後者の代表例としては、CARBEL(登録商標、ジャパンゴアテックス(株))、東レ(株)製TGP−H、米国SPCTRACORP社製カーボンペーパー2050等が挙げられる。また、電極触媒層とガス拡散層が一体化した構造体は「ガス拡散電極」と呼ばれる。ガス拡散電極を本発明の複合固体電解質膜に接合してもMEAが得られる。市販のガス拡散電極の代表例としては、米国DE NORA NORTH AMERICA社製ガス拡散電極ELAT(登録商標)(ガス拡散層としてカーボンクロスを使用)が挙げられる。
上記MEAのアノードとカソードを複合固体電解質膜の外側に位置する電子伝導性材料を介して互いに結合させると、作動可能な固体高分子型燃料電池を得ることができる。当業者には固体高分子型燃料電池の作成方法は周知である。固体高分子型燃料電池の作成方法は、例えば、FUEL CELL HANDBOOK(VAN NOSTRAND REINHOLD、A.J.APPLEBY et.al、ISBN 0−442−31926−6)、化学One Point,燃料電池(第二版),谷口雅夫,妹尾学編,共立出版(1992)等に詳しく記載されている。
電子伝導性材料としては、その表面に燃料や酸化剤等のガスを流すための溝を形成させたグラファイトまたは樹脂との複合材料、金属製のプレート等の集電体を用いる。上記MEAがガス拡散層を有さない場合、MEAのアノードとカソードのそれぞれの外側表面にガス拡散層を位置させた状態で単セル用ケーシング(例えば、米国エレクトロケム社製 PEFC単セル)に組み込むことにより固体高分子型燃料電池が得られる。
高電圧を取り出すためには、上記のような単セルを複数積み重ねたスタックセルとして燃料電池を作動させる。このようなスタックセルとしての燃料電池を作成するためには、複数のMEAを作成してスタックセル用ケーシング(例えば、米国エレクトロケム社製 PEFCスタックセル)に組み込む。このようなスタックセルとしての燃料電池においては、隣り合うセルの燃料と酸化剤を分離する役割と隣り合うセル間の電気的コネクターの役割を果たすバイポーラプレートと呼ばれる集電体が用いられる。
燃料電池の運転は、一方の電極に水素を、他方の電極に酸素または空気を供給することによって行われる。燃料電池の作動温度は高温であるほど触媒活性が上がるために好ましい。通常は、水分管理が容易な50〜80℃で作動させることが多いが、80℃〜150℃で作動させることもできる。
なお、本発明の複合固体電解質膜は、機械的強度、寸法安定性、化学的安定性に優れているので、燃料電池用の固体高分子電解質膜以外にも、食塩電解設備用や水電解設備用の固体電解質膜、あるいはそれ以外の各種の電気化学装置用固体電解質膜に適している。
以下に実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。
(特性値の測定方法)
<イオン交換容量(EW)>
10cm程度に切り出した固体高分子電解質膜を110℃にて真空乾燥して、乾燥重量W(g)を求める。この膜を50mlの25℃飽和NaCl水溶液に浸漬してHを遊離させ、フェノールフタレインを指示薬として、0.01N水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定を行い、中和に要したNaOHの等量M(ミリ等量)を求める。WをMで割って1000倍した値がEW(g/当量)である。
<膜厚>
複合固体電解質膜を23℃、65%の恒温室で12時間以上放置した後に、東洋精機製作所製B−1型膜膜厚計を用いて測定した。
<空孔率>
多孔質シート状材料を10cm×10cmの大きさに切断し23℃、50%の恒温室で24時間以上放置した後に重量測定を行った。また上記に示した方法で膜厚を測定した。重量W(g)、膜厚d(μm)、多孔質シート状材料の比重をx(g/cm)として
空孔率(%)=100−[W/(10×10×d×10−4×x)]
として算出した。液晶ポリエステルの比重は1.40g/cmとして計算した。
<メルトフローレート(MFR)>
米国Dynisco社製D4002メルトインデックステスターを用い、温度270℃、荷重2.16kg、オリフィス径2.09mmの条件で測定を行い、10分あたりの溶融ポリマー量を算出した。
<ポリマーの水和積>
「ポリマーの水和積」とは、対象となるポリマーが膜状であり、その膜は、1)該パーフルオロスルホン酸ポリマー中の−SOH基を−SOF基とした形態の時に、270℃で膜厚50μmのプレス膜を作製した後、ケン化、酸処理を行い−SOH基に変換して得られた膜、あるいは2)該パーフルオロスルホン酸ポリマーを含有する水/アルコール混合溶液から膜厚50μmのキャスト膜を少なくとも200℃で1時間アニール処理して得られた膜である。
特許文献8に記載の方法に従い、110℃で16時間乾燥させて乾燥質量を測定した上記の膜を沸騰水中に30分間浸漬させた後、取り出して、特許文献7に記載の方法に従い、室温の水中に5分間保持した。膜を取り出して表面水をすばやく拭き取った後の質量を測定した。増加した質量から吸収水量を求め、スルホン酸基の当量あたりの水のモル数を求め、EW値と掛け合わせることで水和積を算出した。
<乾湿寸法変化の振幅>
複合固体電解質膜を23℃・50%の恒温室で1時間以上放置したあと、任意のサイズに切り出し、初期の寸法(縦方向の長さA(cm)、横方向の長さB(cm))を測定した。そのサンプルを80℃熱水に1時間浸漬させ、膨潤時の寸法(縦方向の長さC(cm)、横方向の長さD(cm))を測定し、下記式を用いて80℃での縦方向、横方向それぞれの膨潤寸法変化率を求め、その平均を膨潤寸法変化率△W(%)とした。
△W縦=((C−A)/A)×100
△W横=((D−B)/B)×100
△W=(△W縦+△W横)/2
引き続き、膨潤したサンプルを23℃・50%の恒温室で1時間以上放置、乾燥させ、乾燥時の寸法(縦方向の長さE(cm)、横方向の長さF(cm))を測定し、下記式を用いて乾燥時での縦方向、横方向それぞれの乾燥寸法変化率を求め、その平均を乾燥寸法変化率△K(%)とした。
△K縦=((E−A)/A)×100
△K横=((F−B)/B)×100
△K=(△K縦+△K横)/2
これらより、以下の式を用いて繰り返し乾湿寸法変化の振幅△H(%)を求めた。
△H=△W−△K
<破断強度>
JIS K7113に基づき、島津製作所製精密万能試験機AGS−1KNGを用いて
複合固体電解質膜の破断強度を測定した。サンプルは23℃、65%の恒温室で12時
間以上放置した後に幅5mm、長さ50mmに切出し測定に供した。測定は3サンプルに
ついて行い、その平均値を求めた。
<高温での熱酸化耐性試験>
複合固体電解質膜を3cm×3cmに切り出し、内径5mm長さ5cmのSUS製試料管に入れ、入口側にSUS配管を、出口側にPTFEの配管をそれぞれ接続した。試料管全体を200℃のオーブンに入れ、SUS配管を通じて空気を20ml/分で流した。この際、配管の途中で80℃に加温した水のバブラーを通すことで空気を加湿した。出口側のPTFE配管は、8mlの希NaOH水溶液(6×10−3N)に導入し、分解物を8時間に渡り捕集し、この捕集液中のフッ化物イオンをイオンクロマトグラフィーで測定した。なお複合固体電解質膜中の不純物等の影響で、分解試験初期に比較的高濃度のフッ化物イオンが捕集されることがあるが、その場合には、1時間あたりの捕集量が安定してからの捕集量を求めた。
<燃料電池運転試験>
Nafion溶液(Aldrich社製、Nafion固形分10%、溶媒 水/エタノール重量比=1/1に、触媒として市販の白金担持カーボン(田中貴金属(株)社製TEC10E40E)を分散させてペースト状にする。これを2枚のPTFEシートの各々の片面に0.8mg/cmして乾燥させて触媒層を形成した。次に、各PTFEシートの塗布面を向かい合わせにして、その間に本発明の複合固体電解質膜を挟み込み、150℃、圧力5MPaで90秒間プレスしてMEAを作成した。
得られたMEAの両側にガス拡散層としてカーボンクロスをセットして燃料電池単セ0ル評価装置に組み込み、水素ガスと空気を用いて0.15MPa加圧下95℃で燃料電池特性試験を行った。アノードとカソードのガスの加湿温度は60℃とし、電流密度0.3A/cmで発電した。また、電池運転排水中に溶出するフッ化物イオン溶出速度の測定も行った。
[参考例1]
上記一般式(1)においてm=4であるパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液の作製法
ステンレス製1Lオートクレーブに、478gのCF=CFO(CFSOFと503gのHFC43−10meeを入れた。容器内を充分に窒素置換した後、さらにテトラフルオロエチレン(TFE)で置換した。ここで重合開始剤として(CFCFCFCOO)の5%HFC43−10mee溶液1.9gを入れ、TFEで0.35MPaに加圧した。35℃で攪拌しながら適宜TFEを追加圧入した。途中で(CFCFCFCOO)の5%HFC43−10mee溶液0.95gを追加注入した。4時間後、放圧し、水を注入して終夜攪拌した後、常圧〜減圧で溶媒および大部分の残モノマーを除去した。残った固形物をHFC43−10meeで5回洗浄、110℃で真空乾燥して54.9gの白色フレーク状固体を得た。
この固体のIRスペクトルを測定したところ、SOF基に由来するピークが観察され、SOF基が含まれていることが確認できた。また、19F−NMRスペクトルを測定した結果、CF=CFO(CFSOFモノマー単位とTFEモノマー単位を含む共重合体であることが確認され、MFRは2.9であった。
上記で得られたポリマーを270℃にてプレスし、厚さ50μmのフィルムを得た。このフィルムを、KOH/ジメチルスルホキシド/水(30:15:55/質量比)中、90℃で1時間浸漬してケン化反応を行った。次いで水洗後、4N硫酸中、90℃で1時間浸漬し、水洗、乾燥してスルホン酸型の膜を得た。この膜についてEWは829g/当量、吸収水量は47質量%、ポリマーの水和積は18000、ポリマーの水和積とEWとの積は15×10であった。
このスルホン酸型の膜を水/エタノール(50/50、質量%)混合溶液とともにオートクレーブ中に入れて密閉し、180℃で4時間加熱攪拌した。その後、室温まで自然冷却して、パーフルオロスルホン酸ポリマー/水/エタノール=5/47.5/47.5(質量%)のポリマー溶液(含浸液B)を得た。
[参考例2]
上記一般式(1)においてm=6であるパーフルオロスルホン酸ポリマー溶液の作製法
ステンレス製200mlオートクレーブに、30gのCF=CFO(CFSOF、30gのHFC43−10meeを入れた。容器内を充分に窒素置換した後、重合開始剤として(CFCFCFCOO)の5%HFC43−10mee溶液1.0gを入れた。テトラフルオロエチレン(TFE)で置換した後、さらにTFEで0.2MPaに加圧した。25℃で攪拌しながら0.2MPaを維持するように、適宜TFEを追加圧入した。6時間後放圧し、次いで重合混合液にメタノールを加えて濾過し、固形物をHFC43−10meeで洗浄、乾燥して7.11gの白色固体を得た。
この固体のIRスペクトルを測定したところ、SOF基に由来するピークが観察され、SOF基が含まれていることが確認できた。また、19F−NMRスペクトルを測定した結果、CF=CFO(CFSOFモノマー単位とTFEモノマー単位を含む共重合体であることが確認された。このポリマーのMFRは9.5g/10分であった。
このポリマーを参考例1と同様にプレス成膜、ケン化、酸処理を行い、得られた−SOH型の膜のEWは870g/当量、吸収水量は51質量%、ポリマーの水和積は21400、ポリマーの水和積とEWとの積は18.6×10であった。
このスルホン酸型の膜を水/エタノール(50/50、質量%)混合溶液とともにオートクレーブ中に入れて密閉し、180℃で4時間加熱攪拌した。その後、室温まで自然冷却して、パーフルオロスルホン酸ポリマー/水/エタノール=5/47.5/47.5(質量%)のポリマー溶液(含浸液C)を得た。
[実施例1]
上記一般式(3)で表される芳香族液晶ポリエステルで、m’=0.75、n’=0.25である構造を有する不織布(クラレ社製、商品名ベクルス、膜厚20μm、空孔率83%)を、参考例1で得られた含浸液Bに浸漬させ、次いで80℃の熱風下で乾燥するという操作を3回繰り返して、芳香族液晶ポリエステル不織布内にパーフルオロスルホン酸ポリマーを含浸させた。含浸後、200℃の熱風下に1時間おき、完全に溶媒をとばし、膜厚50μmの(複合膜b)を得た。得られた(複合膜b)についての評価は次の通りである。
<乾湿寸法変化の振幅> 1%
<破断強度> 560kgf/cm
<高温での熱酸化耐性試験> フッ化物イオンの生成量は、元の(複合膜b)の全質量に対して、1時間あたり0.005質量%であった。
<燃料電池運転試験> 運転時間が1000時間では、電池運転排水中に溶出するフッ化物イオン溶出速度は、元の(複合膜b)の全質量に対して、1時間あたり0.00011質量%であった。
[実施例2]
実施例1において、含浸液Bのかわりに、参考例2で得られた含浸液Cにした以外は同様の方法で膜厚50μmの(複合膜c)を得た。得られた(複合膜c)についての評価は次の通りである。
<乾湿寸法変化の振幅> 1%
<破断強度> 550kgf/cm
<高温での熱酸化耐性試験> フッ化物イオンの生成量は、元の(複合膜c)の全質量に対して、1時間あたり0.007質量%であった。
<燃料電池運転試験> 運転時間が1000時間では、電池運転排水中に溶出するフッ化物イオン溶出速度は、元の(複合膜c)の全質量に対して、1時間あたり0.00012質量%であった。
[比較例1]
実施例1において、含浸液Bのかわりに、EWが1100g/当量である市販のNafion溶液(Aldrich社製、5質量%溶液、)にした以外は同様の方法で、膜厚50μmの(複合膜a)を得た。得られた(複合膜a)についての評価は次の通りである。
<高温での熱酸化耐性試験> フッ化物イオンの生成量は、元の(複合膜a)の全質量に対して、1時間あたり0.035質量%であった。
<燃料電池運転試験> 運転時間が1000時間では、電池運転排水中に溶出するフッ化物イオン溶出速度は、元の(複合膜a)の全質量に対して、1時間あたり0.0098質量%であった。
[比較例2]
参考例1で得られた含浸液Bをガラス製シャーレに流し込み、ホットプレート上で60℃で1時間、次いで80℃で1時間溶媒を揮散させ、さらに200℃の熱風下で1時間おいた。このガラスシャーレに純水を加えて、膜を剥がした後、乾燥させると、膜厚50μmの補強材を含まない(電解質膜d)が得られた。得られた(電解質膜d)についての評価は次の通りである。
<乾湿寸法変化の振幅> 22%
<破断強度> 200kgf/cm
本発明の複合固体電解質膜は、高温かつ強い酸化雰囲気下の過酷な環境においても、機械的強度に加えて化学的安定性にも優れており、固体高分子型燃料電池運転中における分解が極めて少ないことから、燃料電池用材料として長期間安定して用いることができる。

Claims (8)

  1. 少なくとも下記一般式(1)
    Figure 2006260901
    (k及びlは、k/lがそれぞれのモノマー単位のモル比を表し、イオン交換容量が600〜1300g/当量の範囲となるように定められる数値であり、mは3〜8の整数である。)
    で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーと補強材を含有し、かつ、膜厚が1〜200μmであることを特徴とする複合固体電解質膜。
  2. 該補強材が、空孔率が20〜99%の多孔質シート状材料であることを特徴とする請求項1に記載の複合固体電解質膜。
  3. 上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーにおいて、該パーフルオロスルホン酸ポリマー中の−SOH基を−SOF基とした形態の時の、270℃におけるメルトフローレート(MFR)が200g/10分以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合固体電解質膜。
  4. 上記一般式(1)で表されるパーフルオロスルホン酸ポリマーの水和積が2000以上、22000未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合固体電解質膜。
  5. 該複合固体電解質膜が、200℃で、80℃水飽和空気と8時間にわたり接触し続けたときのフッ化物イオンの生成量が、元の該複合固体電解質膜の全質量に対して、1時間あたり0.02質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合固体電解質膜。
  6. 該複合固体電解質膜が、80℃熱水に1時間浸漬させた場合と23℃で湿度50%に1時間以上置いた場合との乾湿寸法変化の振幅が10%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合固体電解質膜。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の複合固体電解質膜を介してアノードとカソードが対向してなる膜/電極接合体。
  8. 請求項7に記載の膜/電極接合体を包含してなることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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