JP4014422B2 - プロトン伝導性膜又はフィルムとそれらを用いてなる燃料電池 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、プロトン伝導性を有するプロトン伝導性膜、これより得られるプロトン伝導性フィルムとそれらの製造方法、更には、それらプロトン伝導性膜又はフィルムをプロトン交換膜として用いてなる燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プロトン伝導性膜は、イオン交換膜や湿度センサー等の用途に用いられているが、近年、固体高分子型燃料電池における固体電解質膜としての用途においても注目を集めている。例えば、デュポン社のナフィオン(登録商標)を代表とするスルホン酸基含有フッ素樹脂膜は、電気自動車や分散型電源用燃料電池における固体電解質としての利用が検討されているが、従来より知られているこれらのフッ素樹脂系プロトン伝導性膜は、価格が非常に高いという欠点がある。プロトン伝導性膜を燃料電池等の新たな用途において実用化を図るには、プロトン伝導性を高く、しかも価格を低くすることが不可欠である。
【0003】
そこで、従来、空孔を有する多孔質膜に電解質ポリマーを含有させて、プロトン伝導性膜を得る方法が種々提案されている。例えば、特開平9−194609公報には、フッ素樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の疎水性樹脂からなる多孔質膜の空孔内に同じく疎水性のポリマーの溶液を含浸させ、乾燥させて、上記ポリマーを多孔質膜に担持させた後、このポリマーにスルホン酸基、プロトン化アミノ基、カルボキシル基等のイオン交換基を導入し、かくして、イオン交換膜を製造する方法が提案されている。しかし、このような方法によれば、イオン交換基を多孔質膜中に均一に分布させることは困難であり、延いては、プロトン伝導性も十分ではない。
【0004】
そこで、最近、イオン交換基としてリン酸エステル基を有するポリマー、即ち、側鎖にリン酸エステル基を有するメタクリル酸誘導体から導かれるポリマーを固体高分子型燃料電池用プロトン交換膜として用いることが「高分子学会予稿集」第48巻第3号第414頁(1999年)、「高分子学会予稿集」第48巻第10号第2393頁(1999年)、「高分子学会予稿集」第49巻第4号第751頁(2000年)等に提案されている。
【0005】
これら文献によれば、側鎖にリン酸エステル基を有するメタクリル酸誘導体から導かれるポリマーは、上記リン酸エステル基のプロトン解離度が大きく、強い酸性を示すので、高いプロトン伝導性を有しており、しかも、主鎖が炭化水素でありながら、耐熱性を有すると共に、水に殆ど溶解しないという特性を有する。このように、リン酸エステル基を置換基として側鎖に有するポリマーが水不溶性であるのは、リン酸エステル基がそれぞれの間に形成する水素結合によって、ポリマー鎖間に強いネットワークが形成されるためであるとみられる。
【0006】
しかしながら、側鎖にリン酸エステル基を有するメタクリル酸誘導体から導かれる上記ポリマー自体は、機械的強度が低く、脆いので、燃料電池用プロトン交換膜として用いることは困難である。また、上記ポリマーは、その製造時にしばしばゲル化したり、また、得られたポリマーが溶解性に乏しい等、実用化のためには、製造面や成形性の面で尚、多くの問題がある。
【0007】
一般に、多孔質膜にプロトン伝導性を付与するためには、膜内にプロトン発生源又は輸送サイトを有することが必要であり、先に言及したスルホン酸基はそのようなプロトン発生源又は輸送サイトの代表例である。しかし、スルホン酸基を有するポリマーは、代表的には、ポリスチレンスルホン酸やポリビニルスルホン酸等であり、これらはすべて水溶性である。従って、水素ガスや酸素ガスを水蒸気加湿して用いる燃料電池のプロトン交換膜としては、これらのポリマーは、そのままでは、用いることが困難である。即ち、燃料電池のプロトン交換膜として用いるには、ポリマーに何らかの水不溶性化処理を施すことが必要である。
【0008】
水溶性ポリマーを水不溶化するためには、架橋処理をするか、又はスルホン酸基を有するモノマーと共に水不溶性ポリマーを与えるようなモノマーと共重合を行なって、共重合体とする必要がある。
【0009】
しかし、水溶性ポリマーに架橋処理を施すことによって、水に完全に溶解することは避けることはできても、水に接触したとき、ポリマーが膨潤することは避けられない。かくして、水溶性ポリマーの架橋による水不溶化は、それと引換えにポリマーの機械的強度の低下をもたらすので、そのように、水溶性ポリマーを水不溶化したポリマーを燃料電池用プロトン交換膜として用いることも困難である。
【0010】
他方、水不溶性ポリマーを与えるモノマーとの共重合によって、水不溶性ポリマーを得るには、重合に供するモノマー中のスルホン酸基含有モノマーの割合を相対的に低くせざるを得ず、そうすれば、本来、プロトン交換膜として求められるプロトン伝導性が損なわれるので、高いプロトン伝導性を有するポリマーを得ることはできない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プロトン伝導性膜又はフィルムにおける上述した問題を解決するためになされたものであって、耐久性と機械的強度を有するプロトン伝導性膜又はフィルムとそれらの製造方法、更には、それらをプロトン交換膜として用いてなる燃料電池を提供することを目的とする。
【0012】
【問題を解決するための手段】
本発明によれば、ホスホン酸基を側鎖に有するポリマー(以下、「P−ポリマー」ということがある。)を多孔質膜の空孔内に担持させてなることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。
【0013】
特に、本発明によれば、ホスホン酸エステル基を有するモノマー(以下、「P−モノマー」ということがある。)を多孔質膜の空孔内で重合させて、ホスホン酸エステル基を有するポリマー(以下、「P−ポリマー前駆体」ということがある。)を生成させた後、このP−ポリマー前駆体の有する上記ホスホン酸エステル基を加水分解し、かくして、遊離のホスホン酸基を有するP−ポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持させてなることを特徴とするプロトン伝導性膜が提供される。
【0014】
更に、本発明によれば、上記P−モノマーを多孔質膜に含浸させ、この多孔質膜の空孔内で重合させて、P−ポリマー前駆体を生成させた後、このP−ポリマー前駆体の有する上記ホスホン酸エステル基を加水分解し、かくして、遊離のホスホン酸基を有するP−ポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持させることを特徴とするプロトン伝導性膜の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、上記プロトン伝導性膜の空孔に空隙が残っているとき、その空隙の少なくとも一部を閉塞してなるプロトン伝導性フィルムとそのような製造方法が提供される。
【0016】
上記のほか、本発明によれば、上記プロトン伝導性フィルムをプロトン交換膜として用いてなる燃料電池が提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明によるプロトン伝導性膜は、P−ポリマーを多孔質膜の空孔内に担持させてなるものであり、好ましくは、ホスホン酸エステル基を有する前記P−モノマーを多孔質膜の空孔内で重合させて、P−ポリマー前駆体を生成させた後、このP−ポリマー前駆体の有する上記ホスホン酸エステル基を加水分解し、かくして、遊離のホスホン酸基を有するP−ポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持させてなるものである。
【0018】
本発明によるプロトン伝導性膜において、基材として用いる多孔質膜は、特に、限定されることなく、種々の樹脂からなるものを用いることができる。そのような樹脂として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、6,6−ナイロンほか、種々のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジメチルフェニレンオキサイド、ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテル樹脂、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、ノルボルネン等の脂環式不飽和炭化素、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン等の(共)重合体、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂や、また、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ノルボルネンゴム等のエラストマーやそれらの水添物等の脂肪族炭化水素樹脂を挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、又は2種以上を併用して、上記多孔質膜を形成していてよい。
【0019】
本発明によれば、上記した種々の樹脂からなる多孔質膜のなかでも、ポリオレフィン樹脂、特に、重量平均分子量5.0×105 以上、好ましくは、1.0×106 以上の高分子量ポリエチレン樹脂からなる多孔質膜が強度や耐熱性にすぐれるところから、好ましく用いられる。また、ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂からなる多孔質膜も、そのすぐれた耐薬品性と耐熱性から、本発明において、好ましく用いられる。
【0020】
本発明によれば、基材多孔質膜は、従来より知られている適宜の手段によって親水化されていてもよい。このような親水化された多孔質膜は、例えば、スルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、水酸基等の親水性基を有する重合体やそのブレンドを原料に用いて製膜することによって得ることができる。また、そのような親水性基をもたない重合体を多孔質膜に製膜した後に、その多孔質膜に、例えば、スルホン化処理を施したり、また、界面活性剤を担持させる等の方法によって得ることができる。
【0021】
本発明において、基材多孔質膜は、通常、20〜90%、好ましくは、30〜85%の範囲の空孔率を有する。多孔質膜の空孔率が20%よりも小さいときは、このような多孔質膜にP−モノマーを含浸させ、重合させて、多孔質膜の空孔内にP−ポリマー前駆体を生成させ、そのホスホン酸エステル基を加水分解し、かくして、多孔質膜に最終的に遊離のホスホン酸基を有するP−ポリマーを担持させても、高いプロトン伝導性を有する膜を得ることができない。しかし、多孔質膜の空孔率が90%よりも大きいときは、そのような多孔質膜の空孔にP−ポリマーを担持させても、得られるプロトン伝導性膜は、強度が十分でなく、取り扱いや種々の用途での使用に困難が伴う。
【0022】
また、基材多孔質膜は、前記P−モノマーを多孔質膜中に保持することができれば、特に、限定されるものではないが、その平均孔径は、通常、0.001〜100μmの範囲であり、0.005〜10μmの範囲にあることが好ましい。同様に、多孔質膜の厚みも、特に、限定されるものではないが、通常、1mm以下であり、好ましくは、5〜500μmの範囲である。
【0023】
本発明によるプロトン伝導性膜は、前記P−モノマーを多孔質膜に含浸させ、この多孔質膜の空孔内で重合させて、前記P−ポリマー前駆体を生成させた後、このP−ポリマー前駆体の有するホスホン酸エステル基を加水分解して、P−ポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持させることによって得ることができる。
【0024】
本発明によれば、上記P−モノマーの好ましい例としては、一般式(I)
【0025】
【化1】
【0026】
(式中、R1 は水素原子又はメチル基を示し、R2 及びR3 はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基又はアリールアルキル基を示し、Yは基の両末端が炭素原子である2価の有機基を示す。)
で表される化合物を挙げることができる。
【0027】
上記一般式(I)で表されるP−モノマーにおいて、R2 及びR3 は、特に限定されるものではないが、好ましくは、炭素原子数1〜4のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、好ましくは、上記アルキル基である。
【0028】
特に、本発明においては、上記基Yは、好ましくは、一般式(II)
【0029】
【化2】
【0030】
(式中、Ar及びAr’はそれぞれ独立に2価の芳香族炭化水素基、好ましくは、フェニレン基を示し、R4 は炭素原子数1〜10、好ましくは、2〜6の直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示し、rは0又は1であり、rが1のとき、sは0又は1である。)
で表される2価基を示す。
【0031】
従って、上記一般式(I)で表されるホスホン酸エステル基を有するP−モノマーの好ましい具体例としては、例えば、4−(2−スチリルメトキシエチル)フェニルホスホン酸ジエステル、4−(スチリルメトキシ)ブチルホスホン酸ジエステル、スチリルメチルホスホン酸ジエステル等を挙げることができる。
【0032】
本発明によれば、上記P−モノマーと共に、ホスホン酸エステル基を有しない多官能性モノマー(以下、多官能性非P−モノマーということがある。)を用いることができる。このように、P−モノマーと共に多官能性非P−モノマーを用いることによって、最終的に得られるP−ポリマーは、上記多官能性非P−モノマーによって三次元構造、即ち、架橋構造を有し、かくして、P−ポリマーの種々の物性、例えば、ガラス転移温度、親水性の程度、耐溶剤性、柔軟性、機械的強度等を調整し、又は改善することができる。
【0033】
このような多官能性非P−モノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルベンゼン等の炭化水素系モノマー、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル系やアリルエーテル系モノマー、ジビニルピリジン、トリアリルイソシアヌレート等の複素環含有系モノマー、アジピン酸ジビニル、アクリル酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能性アクリルエステル系又はメタクリル酸エステル系モノマー、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド等のビスアクリルアミド系又はビスメタクリルアミド系モノマー等を挙げることができる。
【0034】
本発明において、このように、P−モノマーが多官能性非P−モノマーを含むとき、この多官能性非P−モノマーの割合は50モル%以下であり、好ましくは、45モル%以下である。
【0035】
しかし、本発明によるプロトン伝導性膜において、P−ポリマーに架橋構造をもたせるための手段は、上記に限定されるものではなく、例えば、官能基間の反応、過酸化物による架橋、電子線等の照射、オゾンの作用等、従来より知られている適宜の手段を利用することができる。
【0036】
更に、本発明によれば、P−モノマーと共に、ホスホン酸エステル基を有しない単官能性モノマー(以下、単官能性非P−モノマーということがある。)も用いることができる。このような単官能性非P−モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等のビニルモノマー類、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリル酸ブチル、メトキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、アクリル酸等のアクリルモノマー類、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミド類を挙げることができる。
【0037】
本発明において、P−モノマー(多官能性非P−モノマーを含む。)と共に単官能性非P−モノマーを用いる場合、その単官能性非P−モノマーの割合は、用いる基材多孔質膜の空孔率にもよるが、通常、P−モノマーに対して、90モル%以下の範囲であり、好ましくは、80モル%以下の範囲である。単官能性非P−モノマーの割合がP−モノマー(多官能性非P−モノマーを含む。)に対して90モル%よりも多いときは、高プロトン伝導性膜を得ることができない。
【0038】
このように、P−モノマーと、必要に応じて、これ以外の種々のモノマーとを用いて、本発明によるプロトン伝導性膜を得るには、基材多孔質膜に上記P−モノマーと、必要に応じて、これ以外の種々のモノマーを担持させ、熱重合や光重合等、従来より知られている適宜の方法によって、上記モノマーを重合させた後、それらのモノマーから得られるP−ポリマー前駆体の有するホスホン酸エステル基を加水分解し、かくして、遊離のホスホン酸基を有するP−ポリマーを多孔質膜の空孔内に担持させればよい。しかし、重合法としては、なかでも、光重合法が簡便で安全あり、しかも、短時間でP−ポリマー前駆体を得ることができる。また、必要に応じて、光重合を行なった後、残余のP−モノマーを重合させるために、より高温で更に光重合や熱重合を行なってもよい。
【0039】
このように、P−モノマーの光重合を行なうためには、前記P−モノマーに光重合開始剤を混合、溶解し、これを多孔質膜に含浸させた後、光照射すればよい。
【0040】
上記光重合開始剤は、従来より知られているものを適宜に用いればよい。例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1(チバガイギー社製イルガキュア369)、2−メチル−1−{4−(メチルチオ)フェニル}−2−モルホリノプロパノン−1(チバガイギー社製イルガキュア907)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製イルガキュア184)、ベンジルジメチルケタール(チバガイギー社製イルガキュア651)等を用いることができる。300nm以上の波長の光を用いても重合が可能であるものが特に好ましい。このような光重合開始剤は、通常、P−モノマーに対して0.01〜5重量%程度加えられる。
【0041】
P−モノマーや、場合によっては、P−モノマーと共に他の共重合性モノマー、多官能性モノマー、光重合開始剤等を含む混合物を多孔質膜の空孔内に担持させるためには、例えば、P−モノマーや上記混合物に多孔質膜を浸漬したり、また、P−モノマーや上記混合物を基材多孔質膜に塗布すればよい。
【0042】
このように、P−モノマーや上記混合物を多孔質膜に担持させるに際して、これらP−モノマーや上記混合物の粘度を適宜に調整してもよい。即ち、粘度を高めるためにモノマーの一部を予備重合させたり、また、適宜のポリマーを少量、添加し、溶解させてもよい。反対に、粘度を下げるために、適当な溶剤を加えて、希釈してもよい。
【0043】
このようにして、多孔質膜にP−モノマーを担持させた後、例えば、ポリエステル樹脂製離型フィルムで多孔質膜を挟み、この交換膜を酸素(従って、例えば、空気)から遮断して、高圧水銀ランプ等を用いてP−モノマーに光照射し、光重合させることによって、P−ポリマー前駆体を多孔質膜の空孔内に担持させてなる膜を得ることができ、この後、このP−ポリマー前駆体の有するホスホン酸基を加水分解すれば、本発明によるプロトン伝導性膜を得ることができる。
【0044】
上記光重合に必要な光照射量は、系により異なるが、通常は、0.1〜5J/cm2 程度で十分である。光重合は、得られるP−ポリマー前駆体の分子量を高くするために、通常、室温付近で行なうが、重合率を高めるために、より高い温度で光重合を行なってもよく、また、最初は低温で、次いで、高温で光重合してもよい。
【0045】
本発明によれば、上記P−モノマーを多孔質膜に含浸させる際、多孔質膜の空孔をP−モノマーが充填する比率(充填率)が低いときは、このP−モノマーの重合後も、基材多孔質膜は、通気性を有する多孔質構造を有しており、かくして、最終的には、通気性を有するプロトン伝導性多孔質膜を得ることができる。他方、上記充填率が高いときは、P−モノマーの重合後、基材多孔質膜は、その空孔が実質的に閉塞されるので、最終的には、通気性のないプロトン伝導性無孔膜を得ることができる。一応の目安として、P−モノマーの充填率が80%以上であれば、基材多孔質膜の空孔が実質的に閉塞されてなる通気性のないプロトン伝導性無孔膜を得ることができる。
【0046】
本発明においては、P−モノマーは、基材多孔質膜の空孔を充填するのみならず、基材多孔質膜の少なくとも一方の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。この場合、P−モノマーの充填率は100%を越える。このように、基材多孔質膜にP−モノマーを100%を越える充填率で担持させ、これに光照射すれば、多孔質膜は、最終的には、その空孔がP−ポリマーで充填されているのみならず、少なくとも一方の表面の少なくとも一部がP−ポリマーで被覆されたプロトン伝導性膜を得ることができる。
【0047】
更に、本発明によれば、このようにして得られたプロトン伝導性膜の有する空孔の残余の空隙、即ち、このようにして得られたプロトン伝導性膜に残存する空隙を加熱、収縮させ、又は加熱、溶融させる等の適宜手段によって、プロトン伝導性膜に残存する上記空隙の少なくとも一部を閉塞して、プロトン伝導性フィルムとすることができ、特に、好ましくは、プロトン伝導性膜に残存する空隙をすべて閉塞して、通気性のないプロトン伝導性無孔フィルムを得ることができる。また、必要に応じて、プロトン伝導性膜に残存する空隙を一部閉塞して、通気性のあるプロトン伝導性有孔フィルムを得ることができる。
【0048】
このように、ホスホン酸基を側鎖に有するP−ポリマーを基材多孔質膜の空孔内に担持させてなるプロトン伝導性膜やプロトン伝導性フィルムは、高いプロトン伝導性を有する。本発明によれば、多孔質膜へのP−モノマーの充填率を高くして、多孔質膜の有する空孔へのP−ポリマーの充填率を高くするほど、最終的に高いプロトン伝導性を有する膜やフィルムを得ることができる。
【0049】
本発明によれば、このように、多孔質構造を有し、通気性を有するプロトン伝導性膜や、反対に、無孔構造のプロトン伝導性膜を得ることができ、また、多孔質構造を有し、通気性を有するプロトン伝導性フィルムや、反対に、無孔構造のプロトン伝導性フィルムを得ることができる。多孔質構造を有し、通気性を有するプロトン伝導性膜やフィルムは、例えば、選択透過性荷電膜等、その空隙を活かした用途に好ましく用いることができる。
【0050】
しかし、多孔質構造を有し、通気性を有するプロトン伝導性膜やフィルムは、燃料電池用プロトン交換膜として用いれば、ガスのクロスリークが起こりやすい等の問題がある。従って、このような用途には、上述したように、多孔質膜の空孔を実質的にすべてP−ポリマーで充填したプロトン伝導性無孔膜を用いたり、また、プロトン伝導性多孔質膜を前述したように加熱、溶融させる等の適宜の手段によって、プロトン伝導性膜に残存する空隙をすべて閉塞してなるプロトン伝導性無孔フィルムを用いることが好ましい。
【0051】
本発明によれば、P−ポリマーからなるプロトン伝導性ポリマーを多孔質膜に複合化して、プロトン伝導性膜又はフィルムとしたものであり、好ましくは、P−モノマーを多孔質膜に含浸させ、この多孔質膜の空孔内で重合させて、P−ポリマー前駆体を生成させた後、このP−ポリマー前駆体の有するホスホン酸エステル基を加水分解し、遊離のホスホン酸基を有するP−ポリマーとして、これを上記多孔質膜の空孔内に担持させて、多孔質膜とP−ポリマーとの一体化を実現したものである。
【0052】
従って、本発明によれば、基材多孔質膜とプロトン伝導性ポリマーとの複合化に由来して、種々の点ですぐれたプロトン伝導性膜又はフィルムを得ることができる。例えば、超高分子量ポリエチレン等からなる強靱な多孔質膜を基材として用いることによって、P−ポリマーに由来する高いプロトン伝導性に加えて、高い機械的強度とすぐれたハンドリング性を有するプロトン伝導性膜又はフィルムを得ることができる。
【0053】
特に、本発明に従って、P−モノマーを多孔質膜の空孔内に担持させ、重合させて、P−ポリマー前駆体、従って、加水分解後のP−ポリマーを基材多孔質膜と一体化することによって、P−ポリマー鎖を多孔質膜の網目に高度に絡みつかせることができ、更には、P−モノマーと共に多官能性モノマーとを共重合させれば、架橋したP−ポリマーと多孔質膜を構成するポリマー鎖とが相互貫通したポリマーネットワークによって物理的な結合が生じ、かくして、プロトン伝導性ポリマーと多孔質膜との密着性を一層強めたプロトン伝導性膜やフィルムを得ることができる。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。また、以下において、用いた多孔質膜の特性や、得られたプロトン伝導性膜又はフィルムの特性は、次のようにして評価した。
【0055】
(膜又はフィルムの厚み)
1/10000シックネスゲージで測定した。
(多孔質膜の空孔率)
多孔質膜の単位面積S(cm2 )あたりの重量W(g)、平均厚みt(μm)及び密度d(g/cm3 )から下式にて算出した。
【0056】
空孔率(%)=(1−(104 ・W/(S・t・d))×100
(プロトン伝導度)
プロトン伝導性膜又はフィルムを温度25℃、相対湿度50%に調整した環境下に4時間放置した後、ヒューレットパッカード社LCRメーターHP4284Aを用いて、白金電極間に所定厚みの1cm角の試料を挟み、温度25℃、相対湿度50%の条件下で複素インピーダンス法にて測定し、虚数部の抵抗値ゼロに外挿したときの実数部の抵抗値を用いてプロトン伝導度を算出した。
【0057】
参考例1
(p−スチリルメチルホスホン酸ジエチルの合成)
トルエン320g中にp−クロロメチルスチレン15.3gと亜リン酸トリエチル19.9gを加え、90℃にて3時間攪拌下に反応させた。反応終了後、得られた反応混合物に水を加えて、過剰の亜リン酸トリエチルを亜リン酸とエタノールとに分解し、水層に移した。このようにして、トルエン層を3回水洗した後、水層を除去し、得られたトルエン層に塩化カルシウムを加えて乾燥した。次いで、この塩化カルシウムを濾過にて除去した後、トルエン層からエバポレータにてトルエンを留去して、p−スチリルメチルホスホン酸ジエチルを得た。
【0058】
質量分析(エレクトロスプレーイオン法):
(M+H)+=255、(M+NH4)+=272
FT−IRスペクトル(cm-1):
3086(νCH、〔=CH2〕)、2981(νCH)、2907(νCH)、1629(νC=C)、1607〔ベンゼン環〕、1515〔ベンゼン環〕、1250〔P=O〕、1055〔−O−〕、1028〔−O−〕
プロトンNMRスペクトル(400MHz、溶媒 重水素化ジメチルスルホキシド、化学シフト(δ、ppm):
【0059】
【表1】
【0060】
【化3】
【0061】
13C−NMRスペクトル(100MHz、溶媒 重水素化ジメチルスルホキシド、化学シフト(δ、ppm):
【0062】
【表2】
【0063】
【化4】
【0064】
31P−NMRスペクトル(400MHz、溶媒 重水素化ジメチルスルホキシド、化学シフト(δ、ppm):
26.9(s)
【0065】
実施例1
(プロトン伝導性膜の製造)
p−スチリルメチルホスホン酸ジエチル80重量%とジビニルベンゼン20重量%とからなるモノマー混合物100重量部にベンジルジメチルケタール(チバガイギー社製イルガキュア651)0.5重量部を溶解させ、これを更にメタノールで希釈して、上記モノマー混合物の80重量%濃度の溶液とした。
【0066】
上記モノマー混合物の溶液をポリテトラフルオロエチレン製多孔質膜(日東電工株(株)製ミクロテックスNTF1122、膜厚85μm、空孔率75%、平均孔径0.20μm)の両面に塗布し、多孔質膜の空孔中に含浸させた後、風乾した。
【0067】
このように処理した多孔質膜をポリエステル樹脂製離型フィルムで挟んで、多孔質膜を空気から遮断した後、高圧水銀ランプを備えた光照射装置(アイグラフィック(株)製UB021−1B−13)を用いて、上記多孔質膜にエネルギー2.5J/cm2 にて光照射して、上記空孔内で上記モノマー混合物を光重合させ、架橋ポリマーを生成させると共に、これを上記多孔質膜の空孔内に担持させて、厚み120μmの膜を得た。この膜においては、膜の空孔は上記架橋ポリマーにて完全に充填されており、また、多孔質膜の両表面も、上記架橋ポリマー層で被覆されていた。
【0068】
このようにして、架橋ポリマーを担持させた膜を5規定水酸化ナトリウム水溶液中に80℃で3時間浸漬し、上記架橋ポリマーのホスホン酸ジエチル基を加水分解して、遊離のホスホン酸基を有する架橋ポリマーを担持させたプロトン伝導性膜を得た。
【0069】
このプロトン伝導性膜を温度25℃、相対湿度50%に調整した環境に24時間暴露した後、プロトン伝導度を測定したところ、1.0×10-3S/cmであった。
【0070】
実施例2
p−スチリルメチルホスホン酸ジエチル90重量%とジビニルベンゼン10重量%とからなるモノマー混合物100重量部にベンジルジメチルケタール(チバガイギー社製イルガキュア651)0.5重量部を溶解させ、これを更にメタノールで希釈して、上記モノマー混合物の80重量%濃度の溶液とした。
【0071】
上記モノマー混合物の溶液を超高分子量ポリエチレン製多孔質膜(膜厚40μm、空孔率55%、平均孔径0.15μm)をポリエステル樹脂製離型フィルム上に載置し、上記超高分子量ポリエチレン製多孔質膜の露出表面(離型フィルムに対面している表面の反対側の表面)に塗布し、多孔質膜の空孔中に含浸させた後、風乾した。
【0072】
次に、このように処理した多孔質膜の上にもポリエステル樹脂製離型フィルムで置いて、多孔質膜を空気から遮断した後、実施例1と同様にして、多孔質膜にエネルギー2.5J/cm2 にて光照射して、上記空孔内で上記モノマー混合物を光重合させ、架橋ポリマーを生成させると共に、これを上記多孔質膜の空孔内に担持させて、厚み60μmの膜を得た。この膜においては、膜の空孔は上記架橋ポリマーにて完全に充填されており、また、多孔質膜にモノマー混合物の溶液を塗布した表面も、上記架橋ポリマー層で被覆されていた。
【0073】
このようにして、架橋ポリマーを担持させた膜を5規定水酸化ナトリウム水溶液中に80℃で3時間浸漬し、上記架橋ポリマーのホスホン酸ジエチル基を加水分解して、遊離のホスホン酸基を有する架橋ポリマーを担持させたプロトン伝導性膜を得た。
【0074】
このプロトン伝導性膜を温度25℃、相対湿度50%に調整した環境に24時間暴露した後、プロトン伝導度を測定したところ、1.2×10-3S/cmであった。また、このプロトン伝導性膜を水中に24時間浸漬した後、再び、温度25℃、相対湿度50%に調整した環境に24時間暴露して、プロトン伝導度を測定したところ、1.3×10-3S/cmであって、水への浸漬前とほぼ同じであった。
【0075】
実施例3
(燃料電池)
白金触媒を0.6mg/cm2 の割合で表面に担持させたカーボンペーパー2枚の間に実施例1で得たプロトン伝導性膜を挟み、ホットプレスを用いて接合して、膜−電極接合体(MEA)を製作した。
【0076】
(株)東陽テクニカ製燃料電池評価装置を用いて、上記MEAの燃料電池特性を評価した。背圧弁は絞らず、圧力は常圧にて行なった。加湿器温度は水素側80℃、酸素側70℃とし、燃料電池セル温度は70℃とした。Tafel法にて電流−電圧(I−V)曲線を得たところ、結果を図1に示すように、プロトン交換膜として、ナフィオン(登録商標)117膜を用いた場合とほぼ同等の電流−電圧(I−V)曲線を得た。即ち、本発明によるプロトン伝導性膜は、ナフィオン117膜と同等の燃料電池特性を有する。
【0077】
比較例1
東ソー(株)製ポリナスPS−5を強酸性カチオン交換樹脂を用いてイオン交換し、ナトリウム塩を遊離酸に変換し、これを濃縮した後、メタノールに溶解させて、20%濃度のポリスチレンスルホン酸のメタノール溶液を調製した。
【0078】
実施例2と同じ超高分子量ポリエチレン製多孔質膜をポリエステル樹脂製離型フィルムに載せ、その露出表面に上記ポリスチレンスルホン酸のメタノール溶液を塗布し、乾燥させて、厚み58μmのプロトン伝導性膜を得た。
【0079】
このプロトン伝導性膜においては、多孔質膜の空孔は上記ポリスチレンスルホン酸にて完全に充填されており、また、多孔質膜の上記ポリスチレンスルホン酸の塗布側の表面も、ポリスチレンスルホン酸の層で被覆されていた。このプロトン伝導性膜を温度25℃、相対湿度50%に調整した環境に24時間暴露した後、プロトン伝導度を測定したところ、2.8×10-5S/cmであった。
【0080】
また、このプロトン伝導性膜を24時間水に浸漬したところ、ポリスチレンスルホン酸が一部、水中に溶出した結果、この水への浸漬後に再び温度25℃、相対湿度50%に調湿してプロトン伝導度を測定したところ、3.7×10-6S/cmであった。
【0081】
【発明の効果】
以上のように、本発明によるプロトン伝導性膜は、ホスホン酸基を側鎖に有するP−ポリマーを多孔質膜の空孔内に担持させてなるものであり、高いプロトン伝導性を有するのみならず、高い強度を有し、更に、上記ポリマーは水不溶性である。特に、本発明に従って、ホスホン酸エステル基を有するP−モノマーを多孔質膜の空孔内で重合させて、ホスホン酸エステル基を側鎖に有するポリマーを生成させると共に、このポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持させ、更に、上記ホスホン酸エステル基を加水分解して、ホスホン酸基を側鎖に有するP−ポリマーを多孔質膜の空孔内に担持させてなるプロトン伝導性膜によれば、P−ポリマーと多孔質膜が一体化され、P−ポリマーは多孔質膜に対して高度の密着性を有する。しかも、本発明によるプロトン伝導性膜は、従来のスルホン酸基含有フッ素樹脂膜からなるプロトン伝導性膜に比べて格段に低廉に得ることができる。
【0082】
かくして、本発明によるプロトン伝導性膜は、燃料電池におけるイオン交換膜として好適に用いることができ、ここに、低廉であることから、燃料電池システムのコストを大幅に低減せしめて、その実用化を速めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明によるプロトン伝導性膜を用いて調製した膜−電極接合体(MEA)の燃料電池特性を示すTafel法による電流−電圧(I−V)曲線の一例である。
Claims (16)
- 一般式(I)
で表されるホスホン酸エステル基を有するモノマーと、ジビニルベンゼン及びジアリルベンゼンから選ばれる多官能性モノマーを多孔質膜の空孔内で重合させて、ホスホン酸エステル基を側鎖に有すると共に架橋構造を有するポリマーを生成させた後、このポリマーの有する上記ホスホン酸エステル基を加水分解し、かくして、遊離ホスホン酸基を有するポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持させてなることを特徴とするプロトン伝導性膜。 - 一般式(I)で表されるホスホン酸エステル基を有するモノマーが4−(2−スチリルメトキシエチル)フェニルホスホン酸ジエステル、4−(スチリルメトキシ)ブチルホスホン酸ジエステル又はスチリルメチルホスホン酸ジエステルである請求項1に記載のプロトン伝導性膜。
- 多孔質膜が超高分子量ポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂からなるものである請求項1に記載のプロトン伝導性膜。
- 請求項1から4のいずれかに記載のプロトン伝導性膜の空孔の残余の空隙の少なくとも一部を閉塞してなるプロトン伝導性フィルム。
- 一般式(I)
で表されるホスホン酸基を有するモノマーと、ジビニルベンゼン及びジアリルベンゼンから選ばれる多官能性モノマーを多孔質膜に含浸させ、この多孔質膜の空孔内で重合させて、ホスホン酸基を側鎖に有すると共に架橋構造を有するポリマーを生成させた後、このポリマーの有する上記ホスホン酸エステル基を加水分解し、かくして、遊離ホスホン酸基を有するポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持させることを特徴とするプロトン伝導性膜の製造方法。 - 一般式(I)で表されるホスホン酸エステル基を有するモノマーが4−(2−スチリルメトキシエチル)フェニルホスホン酸ジエステル、4−(スチリルメトキシ)ブチルホスホン酸ジエステル又はスチリルメチルホスホン酸ジエステルである請求項6に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。
- 請求項6に記載の方法において、ホスホン酸エステル基を有するモノマーと多官能性モノマーと共に、ビニルモノマー類、ビニルエーテル類、アクリルモノマー類及びアクリルアミド類から選ばれる単官能性モノマーを重合させて、ホスホン酸基を側鎖に有すると共に架橋構造を有するポリマーを生成させるプロトン伝導性膜の製造方法。
- 多孔質膜が超高分子量ポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂からなるものである請求項6に記載のプロトン伝導性膜の製造方法。
- 一般式(I)
で表されるホスホン酸エステル基を有するモノマーと、ジビニルベンゼン及びジアリルベンゼンから選ばれる多官能性モノマーを多孔質膜に含浸させ、この多孔質膜の空孔内で重合させて、ホスホン酸エステル基を側鎖に有すると共に架橋構造を有するポリマーを生成させた後、このポリマーの有する上記ホスホン酸エステル基を加水分解し、かくして、遊離ホスホン酸基を有するポリマーを上記多孔質膜の空孔内に担持させて、プロトン伝導性膜を得、次いで、このプロトン伝導性膜の空孔の残余の空隙の少なくとも一部を閉塞することを特徴とするプロトン伝導性フィルムの製造方法。 - 一般式(I)で表されるホスホン酸エステル基を有するP−モノマーが4−(2−スチリルメトキシエチル)フェニルホスホン酸ジエステル、4−(スチリルメトキシ)ブチルホスホン酸ジエステル又はスチリルメチルホスホン酸ジエステルである請求項11に記載のプロトン伝導性フィルムの製造方法。
- 多孔質膜が超高分子量ポリオレフィン樹脂又はフッ素樹脂からなるものである請求項11に記載のプロトン伝導性フィルムの製造方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載のプロトン伝導性膜をプロトン交換膜として用いてなる燃料電池。
- 請求項5に記載のプロトン伝導性フィルムをプロトン交換膜として用いてなる燃料電池。
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