JP2015165461A - 複合電解質膜及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭化水素系高分子固体電解質膜の課題であった機械的強度及びプロトン伝導性の向上に加えて、経時的な性能低下を抑制することができる複合電解質膜とその製造方法の提供。【解決手段】イオン性基を有する芳香族系高分子電解質がイオン性基以外の部位で少なくとも1種以上の架橋成分によって連結されてなる架橋芳香族系高分子電解質が、多孔性基材の空孔に充填された複合電解質膜であって、該架橋成分のうちの少なくとも1種は、イオン性基ではない反応性官能基を1分子中に3個以上有し、かつ該反応性基がエステル結合で結合されていない化合物の反応物から形成されていることを特徴とする複合電解質膜。【選択図】なし

Description

本発明は、優れた耐久性とプロトン伝導性を有する複合電解質膜及びその製造方法に関するものである。
高分子固体電解質をイオン伝導体として用いる電気化学的装置の例として、水電解槽や燃料電池を挙げることが出来る。これらに用いられる高分子膜は、カチオン交換膜として高いプロトン伝導率を有すると共に、化学的、熱的、電気化学的および力学的に十分安定なものでなくてはならない。このため、長期にわたり使用できるものとして、パーフルオロカーボンスルホン酸膜が使用されてきた。現在、特に注目されている固体高分子形燃料電池分野においては、燃料である水素ガスの透過が大きいなどの特性面での課題に加え、フッ素を含むため廃棄時の環境汚染や、発電時に発生するフッ酸が燃料電池のシステムを腐食するなど燃料電池の実用化に向けた障害として指摘されている。
一方、パーフルオロカーボンスルホン酸膜に代わる電解質膜として、ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルスルホン、ポリスルホンなどのポリマーにスルホン酸基などイオン性基を導入した、いわゆる炭化水素系高分子固体電解質が近年盛んに検討されている。しかしながら、炭化水素系高分子固体電解質はパーフルオロカーボンスルホン酸に比べて水和・膨潤しやすく、寸法変化が大きいため、乾燥・湿潤の繰り返しにより破断してしまうなどの機械的な特性に問題があると指摘されている。
高分子固体電解質膜の強度や耐久性を上げる方法として、電解質膜を架橋する方法が挙げられる。ポリアリーレン系電解質存在下にラジカル重合性モノマーを開始剤存在下で反応させた架橋高分子電解質膜(例えば、特許文献1参照)、高分子フィルムにプロトン伝導性基を導入されてなる高分子電解質膜中に多官能性トリアジン化合物、多官能性トリアジン化合物前躯体を含む電解質膜(例えば、特許文献2参照)、イオン性基を有する芳香族電解質に、分子中に2個のアリル基を有するビスマレイミド構造を有する化合物を加えて熱処理した電解質膜(例えば、特許文献3参照)が報告されている。
さらに、高分子固体電解質膜の機械的強度を向上させ、寸法変化を抑制する方法として、高分子固体電解質膜に種々の補強材を組み合わせた複合高分子固体電解質膜が提案されている。延伸多孔ポリテトラフルオロエチレン膜の空隙部にイオン交換樹脂であるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含浸し、一体化した複合高分子固体電解質膜(例えば、特許文献4参照)が、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーの膜内に補強材としてフィブリル化されたポリテトラフルオロエチレンが分散された複合高分子固体電解質膜(例えば、特許文献5参照)が、それぞれ記載されている。しかしながら、元素としてフッ素を含んでいることには変わりなく、廃棄時の環境汚染や、発電時に発生する、フッ素膜の問題は依然として解決されていない。
一方、炭化水素系高分子固体電解質を炭化水素系の補強材で補強したものとしてポリベンゾオキサゾール多孔膜と高分子固体電解質を複合化した高分子固体電解質膜(例えば、特許文献6参照)が記載されている。また、多孔性基材中に浸透させたモノマーからイオン伝導性を有するポリマーを重合した電解質膜(例えば、特許文献7参照)や、イオン交換性基を有する重合体を多孔質基材に充填した電解質膜(例えば、特許文献8参照)などが報告されている。
しかしながら、いずれの場合においても、充填された炭化水素系高分子固体電解質の割合が炭化水素系高分子固体電解質単独膜に比べて少なくなるため、得られた複合電解質膜のイオン交換容量が低下することから、プロトン伝導性があまり高くなく水素を燃料とする燃料電池などに応用した際には、発電性能などにおいて不十分と思われる電解質膜であった。
本発明者らは、上記の諸課題を解決するための方策を鋭意検討した結果、多孔性の基材とその細孔に充填された高分子電解質からなる複合電解質膜であって、該高分子電解質は2分子以上の芳香族系高分子電解質がイオン性基以外の部位で、該芳香族系高分子電解質と異なる構造を有し且つ繰り返し単位を有する化合物によって連結されていることを特徴とする複合電解質膜を発明するに至った(特許文献9参照)。ところが、前記の複合電解質膜の中には経時的に性能が低下するものがあることが判明し、本発明者らは、さらなる研究開発に取り組んでいた。
特開2003−82012号公報 特開2007−335264号公報 特開2007−63532号広報 特開平8−162132号公報 特開2001−35508号公報 国際公開第WO00/22684号公報 国際公開第WO05/76396号公報 特開2010−40530号公報 特願2013−136381号
本発明は従来技術の課題を背景になされたものであって、炭化水素系高分子固体電解質膜の課題であった機械的強度及びプロトン伝導性の向上に加えて、経時的な性能低下を抑制することができる複合電解質膜とその製造方法の提供を課題とするものである。
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
(1)イオン性基を有する芳香族系高分子電解質がイオン性基以外の部位で少なくとも1種以上の架橋成分によって連結されてなる架橋芳香族系高分子電解質が、多孔性基材の空孔に充填された複合電解質膜であって、該架橋成分のうちの少なくとも1種は、イオン性基ではない反応性基を1分子中に3個以上有し、かつ該反応性基がエステル結合で結合されていない化合物の反応物から形成されていることを特徴とする複合電解質膜。
(2)架橋成分を形成する化合物が、下記化学式1で表される構造を反応性基として有することを特徴とする(1)に記載の複合電解質膜。

(式中、Nは窒素原子であり、架橋成分を形成する化合物中の他の部位と結合しており、Xはイオン性基でない1以上の価数を有する反応性基を表す。)
(3)Xが、ビニル基とエチニル基からなる群より選ばれる1種以上の構造を有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の複合電解質膜。
(4)Xが、アリル基とメタリル基からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする(3)に記載の複合電解質膜
(5)上記化学式1で表される構造を反応性基として有し、架橋成分を形成する化合物が、分子中に環構造を有することを特徴とする(2)〜(5)のいずれかに記載の複合電解質膜
(6)架橋成分が、さらにイオン性基ではない反応性基を一つだけ有する1種以上の化合物の反応物から形成されていることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の複合電解質膜。
(7)イオン性基ではない反応性基を一つだけ有する化合物が、イオン性基を有することを特徴とする(6)に記載の複合電解質膜。
(8)イオン性基ではない反応性基を一つだけ有する化合物の反応性基がビニル基であることを特徴とする(6)又は(7)に記載の複合電解質膜。
(9)前記芳香族系高分子電解質がその分子鎖中に少なくとも下記化学式2および下記化学式3で示される繰り返し構造を有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の複合高分子電解質膜。

(Ar1はスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含む2価の芳香族基、Ar2はスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含まずベンゾイル基を有する2価の芳香族基を示す)
(10)化学式2および化学式3で示される繰り返し構造を有する芳香族系高分子電解質が、下記化学式4で表されることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載の複合高分子電解質膜。

(式中、m、nは正の整数、m+n=5〜1000を示す。Arはスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含む芳香族基、Arはスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含まずベンゾイル基を有する芳香族基を示す。Ar及びArは、ランダムポリマーあるいはブロックポリマーとして共重合している。)
(11)化学式3及び化学式4におけるArが化学式5で示されることを特徴とする(9)または(10)に記載の複合電解質膜。

(式中、nは化学式4で定義したものと同じ意味を表す。R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかであり、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリール基のいずれかを示す。Rの置換基は水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかであり、その置換基は同一であっても異なっていてもよい。a、bは0〜4の整数を示す。p、qは0または1であり、p+q=1を示す)
(12)化学式2及び化学式4におけるArが下記化学式6で表されることを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載の複合電解質膜。

(式中、mは化学式4で定義したものと同じ意味を表す。Rは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかであり、置換基は同一であっても異なっていてもよい。rは1または2であり、dは4−rを示す。AはOR、NR を示し、Rは水素、アルカリ金属、炭素数1〜20のアルキル基を示し、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基を示す)
(13)多孔性基材の材質が高分子材料であることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の複合電解質膜。
(14)イオン交換容量が1.5meq/g〜6.0meq/gであることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の複合電解質膜。
(15)イオン性基を有する芳香族系高分子電解質と、イオン性基ではない反応性官能基を1分子中に3個以上有し、かつ該反応性基がエステル結合で結合されていない架橋成分化合物を溶媒に溶解した溶液を、多孔性基材に含浸し、溶媒を除去して複合電解質膜前駆体を作製し、外部からの刺激によって該芳香族系高分子電解質と該架橋成分化合物とを反応させて、該芳香族系高分子電解質と該架橋成分化合物とを連結させることを特徴とする複合電解質膜の製造方法。
(16)芳香族系高分子電解質と架橋成分化合物を含む溶液が、さらにイオン性基ではない反応性基を一つだけ有する1種以上の化合物を含む(15)に記載の複合電解質膜の製造方法。
(17)外部からの刺激が電子線照射であることを特徴とする、(15)又は(16)に記載の複合電解質膜の製造方法
である。
本発明の複合電解質膜においては、高いイオン交換容量を有する芳香族系高分子電解質および酸性基を有するラジカル重合性モノマーが架橋を介して多孔膜の細孔中に充填されることから、得られる複合電解質膜は、高いイオン交換容量を有する膜となるため、高いプロトン伝導性が実現できる。
さらに、多孔性基材の細孔中に架橋高分子電解質が充填されていることから、水和・膨潤を抑制でき、寸法変化が小さくなり、乾燥・湿潤の繰り返しにより破断してしまうなどの機械的な特性の問題を解消できる。また、架橋成分に特定の構造を用いることによって、電解質膜の経時的な性能劣化を解消することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の複合電解質膜は、イオン性基を有する芳香族系高分子電解質がイオン性基以外の部位で少なくとも1種以上の架橋成分によって連結されてなる架橋芳香族系高分子電解質が、多孔性基材の空孔に充填された複合電解質膜であって、該架橋成分のうちの少なくとも1種は、イオン性基ではない反応性官能基を1分子中に3個以上有し、かつ該反応性基がエステル結合で結合されていない化合物の反応物から形成されていることを特徴とする複合電解質膜である。
イオン性基を有する芳香族系高分子電解質がイオン性基を介して架橋成分と連結していると、膜中のイオン性基濃度が減少し、高いプロトン伝導性を得ることができず好ましくない。また、架橋成分を形成する全ての化合物における反応性基の数が1分子当たり2個以下であると、芳香族系高分子電解質間の架橋反応が進行しにくく、複合電解質膜を得ることが難しくなるため好ましくない。すなわち、架橋成分を形成する化合物のうち、少なくとも1種は、分子中の3個以上の反応性基を有していることが好ましい。分子中の反応性基が多くなりすぎても、全ての反応性基が反応しなければ、かえって架橋反応が進行しにくくなるため、分子中の反応性基の数は3〜10個が好ましく、3〜5個がより好ましい。
前記、架橋成分を形成する化合物においては、反応性基がエステル結合で結合されていると好ましくない。エステル結合は、酸性又はアルカリ性の環境下で容易に加水分解されるため、反応により水を生成し、常に酸性もしくはアルカリ性の環境下にある燃料電池電解質膜では性能劣化を起こす原因となる。
架橋成分を形成する化合物は、下記化学式1で表される構造を反応性基として有することが好ましい。

(式中、Nは窒素原子であり、架橋成分を形成する化合物中の他の部位と結合しており、Xはイオン性基でない1以上の価数を有する反応性基を表す。)
窒素原子を有していると、極性の高い芳香族高分子電解質との混合性が向上するため好ましい。またXがNと結合する部分がカルボニル基である、すなわちアミド結合であると、エステル基よりは加水分解性は高いものの、長期的な分解が進行する恐れがあるため、XがNと結合する部分はアルキレン基であることが好ましい。
反応性基である化学式1中のXは、ビニル基とエチニル基からなる群より選ばれる1種以上の構造であることが好ましい。これらの基は外部からの刺激によって架橋反応を進行させることが容易である。なかでも、Xが、アリル基とメタリル基からなる群より選ばれる1種以上の基であることが、電解質膜の性能維持の観点からさらに好ましく、アリル基がなお好ましい。また、前記の反応性基を分子中に3個以上有する架橋成分は、分子中に環構造を有していることが、電解質膜の耐熱性や化学的な安定性の面から好ましい。
イオン性基ではない反応性基を1分子中に3個以上有し、かつ該反応性基がエステル結合で結合されていない、架橋成分を形成する化合物として好ましい例として、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、及びそれらの誘導体及び反応物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。中でも、反応性の点から、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、トリアリルイソシアヌレート、及びこれらの誘導体及び反応物がさらに好ましいが、トリアリルイソシアヌレート及びこれらの誘導体及び反応物がより好ましい。
本発明における架橋成分には、必須成分である上記のイオン性基ではない反応性基を1分子中に3個以上有し、かつ該反応性基がエステル結合で結合されていない化合物から形成される構造以外に、イオン性基ではない反応性基を一つだけ有する1種以上の化合物の反応物から形成されている構造をさらに含んでいてもよい。芳香族系高分子電解質は剛直な芳香環を多数含むため、イオン性基ではない反応性官能基を1分子中に3個以上有し、かつ該反応性基がエステル結合で結合されていない化合物によっては、架橋反応が進行しにくい場合がある。その際に、イオン性基ではない反応性基を一つだけ有する1種以上の化合物を加えると架橋反応が進行しやすくなる。詳細な機構は明確ではないが、イオン性基ではない反応性基を一つだけ有する1種以上の化合物がスペーサーとして反応点間を連結することによって架橋反応が良好に進行すると推定している。
イオン性基ではない反応性基を一つだけ有する1種以上の化合物は、イオン性基を有することは必須ではないが、有していると電解質膜としてのプロトン伝導性を向上できるため好ましい。また、架橋反応の反応性や電解質膜の性能安定性の面から、イオン性基ではない反応性基はビニル基であることが好ましい。そのような化合物として、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。中でも、プロトン伝導性の面からは、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸が好ましく、さらに反応性の面からは、ビニルスルホン酸が好ましい。また、膜の化学的安定性の向上の観点からは、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸が好ましく、ビニルホスホン酸が好ましい。これらの化合物は、アルコールと反応させたエステルなどの誘導体として反応させて電解質膜とした後、後処理によって保護基を除去してもよい。
本発明における芳香族系高分子電解質はその分子鎖中に架橋成分と反応しうる基を有していれば、特に構造を限定されるものではないが、プロトン伝導性や耐久性の観点から、その分子鎖中に少なくとも下記化学式2および下記化学式3で示される繰り返し構造を有していることが好ましい。

(Ar1はスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含む2価の芳香族基、Ar2はスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含まずベンゾイル基を有する2価の芳香族基を示す。)
上記の芳香族系高分子電解質は、さらに下記化学式4で表される構造が好ましい。

(式中、m、nは正の整数、m+n=5〜1000を示す。Arはスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含む芳香族基、Arはスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含まずベンゾイル基を有する芳香族基を示す。Ar及びArは、ランダムポリマーあるいはブロックポリマーとして共重合している。)
化学式4において、Ar及びArは、ランダムポリマーあるいはブロックポリマーとして共重合していてよい。ランダムポリマーであると、架橋反応が分子中の多くの箇所で架橋反応を起こすことができ好ましい。ブロックポリマーであると、架橋反応の箇所を、プロトン伝導性部位から隔離することができ、電解質膜性能の面から好ましい。
化学式4において、電解質としての形状を保つためm+nは5以上であることが好ましく、重合及びその後処理の観点からm+nは1000以下であることがこのましい。
化学式4において、mおよびnの比率は、特に制限されるものではないが、複合電解質膜製膜後のプロトン伝導性や架橋反応性の面から、m/n(モル分率)で0.95/0.05〜0.6/0.4であることが好ましく、0.9/0.1〜0.75/0.25であることがより好ましい。これらの値はNMRなどの一般的な手法により求めることができる。
本発明における芳香族系高分子電解質のイオン交換容量(IEC)は特に制限されるものではないが、プロトン伝導性の観点から3.0meq/g以上であれば良い。ただし、IECが高すぎると膨潤が大きくなるなどの問題があるため、実質的に3.0〜8.4meq/gであることが好ましく、中でも3.5〜8.0meq/gがより好ましく、4.0〜7.5meq/gが最も好ましい。
ここで、イオン交換容量とは、乾燥した高分子電解質膜1グラムあたりに導入されたイオン交換基量であり、値が大きいほどイオン交換基の量が多いことを示す。例えば、スルホン酸基とした場合、スルホン酸基密度(meq/g)の値として示すことができる。イオン交換容量は、キャピラリー電気泳動、元素分析、中和滴定などにより求めることが可能である。これらの中でも測定の容易さから、中和滴定法によりイオン交換容量を求めることが好ましい。本発明のイオン交換容量は中和滴定法により測定した値を用いるが、他の方法でも大きな差はなく採用可能である。
化学式2及び4におけるArは、化学式5で表される構造が好ましく、化学式3及び4におけるArは化学式6で表される構造が好ましい。

(化学式5及び6において、m、nは化学式4で定義したものと同じ意味を表す。R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかであり、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリール基のいずれかを示す。Rの置換基は水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかであり、その置換基は同一であっても異なっていてもよい。a、bは0〜4の整数を示す。p、qは0または1であり、p+q=1を示す。化学式4中、mは化学式1で定義したものと同じ意味を表す。Rは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかであり、置換基は同一であっても異なっていてもよい。rは1または2であり、dは4−rを示す。AはOR、又はNR を示し、Rは水素、アルカリ金属、炭素数1〜20のアルキル基を示し、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基を示す)
〜Rのうち前記炭素数1〜20 のアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基等が挙げられる。炭素数6〜20のアリール基として、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、3−フェナントリル基、2−アントリル基等の直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれかのものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
〜Rがそれぞれ複数の場合、R〜Rは同一の基であってもいいし、異なる基であってもよい。Rは炭素数6〜20のアリール基が好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基がより好ましい
化学式5においてa、bは0〜4の整数を示し、p、qは0または1であり、p+q=1を示す。すなわち、p=1かつq=0またはp=0かつq=1のいずれかである。a及びbはいずれも1以下であることが好ましく、0がより好ましい。
化学式6において、rは1または2、dは4−rを示し、rは1、dは3が好ましい。
化学式5において、AがORであり、Rの80%以上が水素またはアルカリ金属であることが好ましく、さらに90%以上が水素またはアルカリ金属であることが好ましい。
以下、本発明の芳香族系高分子電解質の製造方法について説明する。
化学式2の構造を有する芳香族系高分子電解質を製造するための原料化合物のひとつとして、化学式7に示される置換基を有しているハロベンゼン化合物が挙げられる。

(式中、X、Yはフッ素を除くハロゲン原子であり、X、Yはそれぞれ同一でも異なってもよい。R〜R、a、b、p、qは上記化学式5で定義したものと同じ意味を表す。)
具体的には、置換基を有してよい2,4−ジクロロベンゾフェノン、2,5−ジクロロベンゾフェノン、3,4−ジクロロベンゾフェノン、2,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、2,4−ジブロモベンゾフェノン、2,5−ジブロモベンゾフェノン、3,4−ジブロモベンゾフェノン、2,4’−ジブロモベンゾフェノン、4,4’−ジブロモベンゾフェノンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
中でも、置換基を有してもよい2,5−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノンが好ましい。
さらに化学式2の構造を有する芳香族系高分子電解質を製造するための原料化合物のひとつとして、化学式8に示される置換基を有してもよいジハロベンゼンスルホン酸エステルが挙げられる。

(式中、X、Yはフッ素を除くハロゲン原子であり、X、Yはそれぞれ同一でも異なってもよい。Rは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかであり、置換基は同一であっても異なっていてもよい。sは1または2であり、eは4−sを示す。BはORまたはNR で表され、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基のいずれかを示し、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基のいずれかを示す。)
具体的には、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソプロピル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソブチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル) 、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−オクチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、2,5−ジクロロジクロロベンゼンスルホン酸n−イコシル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソプロピル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソブチル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−オクチル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸n−イコシル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸イソプロピル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸イソブチル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル) 、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−オクチル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、2,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−イコシル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸イソプロピル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸イソブチル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル) 、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸シクロヘキシル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−オクチル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−ペンタデシル、3,5−ジブロモベンゼンスルホン酸n−イコシル、2,4−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,4−ジブロモベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
中でも2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸(2,2−ジメチルプロピル)、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸イソブチル、2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸シクロヘキシルが好ましい。
上記原料を用いてカップリング重合する際に、ニッケル化合物、配位子、還元剤の触媒系で重合することができる。
ニッケル化合物として、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)、ニッケル(0)(エチレン)ビス(トリフェニルホスフィン) 、ニッケル(0)テトラキス(トリフェニルホスフィン)等のゼロ価ニッケル化合物、フッ化ニッケル、塩化ニッケル、臭化ニッケル、ヨウ化ニッケル等のハロゲン化ニッケル、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル等のニッケルカルボン酸塩、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、ビス( トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド等の2価ニッケル化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、ニッケル(0)ビス(シクロオクタジエン)、ハロゲン化ニッケル、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリドが好ましい。
ニッケル化合物の使用量はモノマーに対して0.01〜500mol%がよく、ニッケル化合物の使用量が多すぎると分子量が小さくなる傾向にある。また精製が困難かつコスト的な問題から実用的には100mol%以下である。一方、少なすぎると系中に存在する水の影響により触媒能がなくなる可能性があり、実用的には1mol%以上である。すなわち、1〜100mol%が好ましい。
配位子として、含窒素二座配位子またはリン配位子が挙げられる。含窒素二座配位子としては2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、メチレンビスオキサゾリン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられ、2,2’−ビピリジンが好ましい。一方、リン配位子としてはトリフェニルホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリス(m−トリル)ホスフィン、トリス(p−トリル)ホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、トリフェニルホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリス(m−トリル)ホスフィン、トリス(p−トリル)ホスフィンが好ましい。配位子の使用量はニッケル化合物に対して、含窒素ニ座配位子は0.5〜8.0当量、好ましくは1.0〜4.0当量である。
還元剤としては亜鉛を用いることができるが、限定されるものではない。使用量は通常モノマーに対して1当量以上であり、上限は設けない。実用的には重合後の精製を考慮すると5当量以下、好ましくは2当量以下である。
重合溶媒としては、モノマー組成物及び生成するポリアリーレンが溶解し得る溶媒であればよい。そのような溶媒の具体例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でもエーテル系溶媒及び非プロトン性極性溶媒が好ましく、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン及びN,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。溶媒の使用量は、多すぎると分子量の小さなポリアリーレンが得られやすく、少なすぎるとモノマー組成物及び生成するポリアリーレンの溶解性の観点から好ましくない。モノマー組成物中のモノマーに対して、通常1〜200重量倍、好ましくは5〜100重量倍である。
重合反応は通常、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で実施することが好ましいが、これらに限定されるものではない。重合時間は0.5時間〜48時間以内で行い、反応温度は室温〜溶媒の沸点までで行うことができ、特に制限されない。
反応後は酸性水溶液に再沈し、有機溶媒で精製することでポリマー中間体を合成する。目的のポリアリーレン以外の化合物を溶解し且つ目的のポリアリーレンを溶解しない溶媒または溶解しにくい溶媒により精製する。反応混合物を上記溶媒と混合して目的のポリアリーレンのみを析出させ、濾過を行うことで、目的のポリアリーレンを取り出すことができる。得られたポリアリーレンの分子量や構造は、ゲル浸透クロマトグラフィー、NMR等の通常の分析手段により分析することができる。上記酸性水溶液としては塩酸が好ましく、上記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコール類またはアセトン、アセトニトリル等が挙げられ、2−プロパノールおよびアセトンが好ましい。
続いて、脱保護、酸変換する方法に関して説明する。
スルホン酸エステルは通常、酸またはアルカリによる加水分解や、アルカリ金属ハロゲン化物またはアミン塩を反応させ、次いで酸処理することによって、スルホン酸基に変換することができる。今回製造する水溶性ポリアリーレンスルホン酸類は通常の方法で実施すると、酸またはアルカリ水溶液に溶解し、目的とするポリマーを得ることが困難となる。
そこで、アルカリ金属ハロゲン化物またはアミン塩を反応させ、次いで固体酸により酸処理する方法が好ましい。アルカリ金属ハロゲン化物としては、例えば、臭化リチウム、ヨウ化ナトリウム等が挙げられ、アミン塩としては、アミン塩酸塩が好ましく、トリメチルアミン塩酸塩、トリエチルアミン塩酸塩等がより好ましく、臭化リチウム及びトリメチルアミン塩酸塩がさらに好ましい。使用量はポリマー中のスルホン酸エステルに対して1.1〜10当量、好ましくは2〜8当量である。
重合反応に使用する溶媒は脱保護剤およびポリマーが溶解することが条件として挙げられる。そのような溶媒としてN−メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒が挙げられる。反応温度は通常、0〜200℃、好ましくは80〜160℃である。
反応後の溶液中にはスルホン酸アンモニウム型またはスルホン酸金属塩型に変換されたポリマー、脱保護剤の反応残渣、反応溶媒が存在しているために精製を行う必要がある。精製に用いる溶媒として、スルホン酸アンモニウム型またはスルホン酸金属塩型に変換されたポリマーが溶解せず脱保護剤の反応残渣が溶解する溶媒、またはスルホン酸アンモニウム型またはスルホン酸金属塩型に変換されたポリマーが溶解し脱保護剤の反応残渣が溶解しない溶媒が求められる。生成したポリマーが溶解せず脱保護剤の反応残渣が溶解する溶媒としてハロゲン化炭化水素溶媒等が挙げられる。中でもクロロホルムが好ましい。
スルホン酸アンモニウム型またはスルホン酸金属塩型に変換されたポリマーを酸変換する方法として、固体酸を用いる方法が挙げられる。固体酸として陽イオン交換樹脂がよい。陽イオン交換樹脂の使用量は陽イオン交換樹脂のイオン交換容量に依存するが、平衡反応であるため目的のポリマーのイオン交換容量の10倍以上の相当量が必要とされる。特に上限は設けないが、実用的には20倍以下である。
固体酸が分散したポリマー水溶液から固体酸をろ別し、ポリマー水溶液を濃縮し乾燥する事により目的とするポリマーを製造することができる。
本発明に用いられる多孔性基材の材質としては、プロトン伝導を遮断や妨害しないものであれば特に限定するものではないが、耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を鑑みれば、脂肪族系高分子、芳香族系高分子、または含フッ素高分子が好ましく使用される。脂肪族系高分子としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、ここで言うポリエチレンとは、ポリエチレンの結晶構造を有するエチレン系のポリマーの総称であり、例えば直鎖状高密度ポリエチレン(HDPE)や、低密度ポリエチレン(LDPE)の他に、エチレンと他のモノマーとの共重合体をも含み、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と称されるエチレン、α−オレフィンとの共重合体や超高分子量ポリエチレンなどを含む。またここで言うポリプロピレンはポリプロピレンの結晶構造を有するポリプロピレン系のポリマーの総称であり、一般に使用されているプロピレン系ブロック共重合体、ランダム共重合体など(これらはエチレンや1−ブテンなどとの共重合体である)を含むものである。
前記芳香族系高分子としては、例えばポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルフィドスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンオキシド、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド等が挙げられる。さらに、セルロースやポリ乳酸も使用できる。
また、前記含フッ素高分子としては、分子内に炭素−フッ素結合を少なくとも1個有する熱可塑性樹脂が使用されるが、脂肪族系高分子の水素原子のすべてまたは大部分がフッ素原子によって置換された構造のものが好適に使用される。その具体例としては、例えばポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルエーテル)、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでもポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン)が好ましく、特にポリテトラフルオロエチレンが好ましい。これらの多孔質材料は、単独で用いても、他の素材と組み合わせて用いても良い。
多孔質材料として多孔質フィルムを選択する場合、電気化学的な安定性、コストの観点からポリエチレンやポリプロピレンに代表される脂肪族ポリオレフィンフィルムが好ましい。
また、ポリオレフィンに被抽出物を添加し、微分散させ、シート化した後に被抽出物を溶媒などにより抽出して孔を形成し、必要に応じて抽出前および/または後に延伸加工を行う工程を有する抽出法で得られた湿式法で得られた多孔質材料も使用可能である。また自己組織化によるハニカム状に開口した多孔質材料や炭酸カルシウムなどの造孔剤を添加し延伸により多孔質化したフィルムも使用可能である。
多孔質基材の空隙率は使用する高分子電解質のイオン交換容量によって適宜実験的に求められるが、複合電解質膜のプロトン伝導性や、高分子電解質溶液の充填の容易さの観点から、30%以上90%以下が好ましく、35%以上70%以下がより好ましい。空隙率が35%以上であれば、高分子電解質溶液が多孔質材料の内部まで充填が容易となりプロトン伝導パスが複合化高分子電解質膜の厚み芳香に連続的に形成されやすい。また、90%以下であれば製膜工程での作業性が良好となり、複合電解質膜の乾湿寸法変化や吸水時の機械的強度の低下を抑制できる。
多孔質基材の空隙率は、多孔質材料を正方形に切り取り、一辺の長さをL(cm)、重量W(g)、厚みD(cm)、を測定して、以下の式より求めることができる。
空隙率=100−100(W/ρ)/(L2×D)
上記式中のρは、フィルム密度を示す。ρはJIS K7112(1980)のD法の密度勾配管法にて求めた値を用いる。このときの密度勾配管用液は、エタノールと水を用いる。
多孔質基材の厚みは、目的とする複合電解質膜の膜厚により適宜決定できるが、1〜100μmであることが実用上好ましい。フィルム厚みが1μm未満では、製膜工程および二次加工工程における張力によってフィルムが伸び、縦じわの発生や、破断する場合がある。また、100μmを超えると、高分子電解質の充填が不十分となりプロトン伝導性が低下する。
本発明の複合電解質膜は、上記多孔質基材に上記芳香族高分子電解質および上記ラジカル重合性化合物の混合溶液を含浸させ、溶媒を除去した後に、UV照射や電子線照射によって架橋を進行させることで得られる。
本発明の複合電解質膜のイオン交換容量(IEC)は、複合電解質膜のプロトン伝導性の観点から、1.5meq/g以上であれば良く、膜の形態安定性について考慮すると1.5meq/g以上6.0meq/g以下であることが好ましく、2.0meq/g以上4.0meq/gであることがより好ましい。IECが1.5meq/gより低いとプロトン伝導性が不十分で、IECが6.0meq/gより高いと膜の形態安定性に問題が出てしまう。
以下に複合電解質膜の製造法について説明する。芳香族高分子電解質およびラジカル重合性化合物の混合溶液の多孔膜への含浸方法は特に限定されず、該多孔質基材と上記混合溶液が接触するような態様をとればよく、上記混合溶液を溜めた溶液槽に、該多孔質基材を浸漬した後に溶媒を除去する工程、該溶液を多孔質基材に流延塗布して含浸させる工程、該溶液を基材上に流延塗布しその後に該多孔質基材を貼り合わせて含浸させる工程などが挙げられる。
本発明における芳香族高分子電解質およびラジカル重合性化合物の混合比は、上記のIECの範囲から逸脱しないものであれば特に限定されないが、芳香族高分子電解質/ラジカル重合性化合物(質量%比)で90/10〜40/60の範囲であることが好ましく、プロトン伝導性や耐久性および反応性の面から75/25〜50/50であることが特に好ましい。
本発明における芳香族高分子電解質およびラジカル重合性化合物の混合溶液の濃度は、流動性を有する範囲であれば、特に限定されるものではないが、1質量%〜30質量%であり、好ましくは,5質量%〜15質量%である。
上記混合溶液における溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類やジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性有機溶媒および水などが挙げられる。これらの溶剤はそれぞれ混合されていても良い。乾燥速度および製膜性の観点からアルコール系の溶媒と水の混合溶媒を用いることが好ましく、メタノールと水の混合溶媒を用いることがより好ましい。
芳香族系高分子電解質およびラジカル重合性化合物の混合溶液の多孔膜への含浸後に、得られた複合膜に対して、外部刺激を与えてラジカル反応を起こし、架橋を進行させることで本発明の高分子電解質膜を得ることができる。ここで、外部刺激とは、芳香族高分子電解質およびラジカル重合性化合物の一部を反応させることができるものであれば良く、例えば、紫外線や電子線照射を挙げることができる。処理の簡便さから紫外線処理であることが好ましく、反応性の観点からは電子線照射がより好ましい。
また、これらの処理と並行またはその処理後に加熱処理を行うこともできる。芳香族高分子電解質およびラジカル重合性化合物の一部を反応させることができればよく、具体的な加熱条件については、特に限定されないが、反応性の面から50℃〜150℃の温度で処理することが好ましく、80〜150℃で処理することがより好ましい。
本発明の複合電解質膜は、イオン交換膜として用いることができる。また、電極触媒層を結合して膜/電極接合体とすることで、燃料電池や電解膜として用いることができる。電極触媒層は触媒と電極材料からなり、公知の材料を用いることができる。例えば、拡散層としては、カーボンペーパーやカーボンクロスなど、導電性の多孔質材料を用いることができるが、それらに限定されるものではない。カーボンペーパーやカーボンクロスなど、導電性の多孔質材料は、撥水処理、親水処理などの表面処理がされたものを用いることもできる。触媒には、公知の材料を用いることができる。例えば、白金、白金とルテニウムなどの合金、白金とコバルトの合金、パラジウムなどの非白金金属をコアとし表面に白金を有するコアシェル触媒、Nを含むカーボンアロイ触媒などを挙げることができるが、それらに限定されるものではない。触媒や触媒を坦持した粒子を含む電極触媒層のバインダーにはプロトン伝導性を有する樹脂を用いることができ、フッ素系高分子電解質やその分散液を用いることができる。また、撥水性を良くするためのフッ素樹脂を加えたり、保水性をよくするために親水性樹脂を加えたりすることもできる。
膜/電極接合体は、従来からの公知の方法を用いて行うことができ、例えば、電極表面に接着剤を塗布して高分子電解質膜と電極触媒層とを接着する方法または高分子電解質膜と電極触媒層とを加熱加圧する方法、触媒とバインダーの分散液を、電解質膜に塗布又は噴霧し乾燥する方法等がある。接着剤としては、ナフィオン(商品名)溶液など公知のものを用いてもよいし、本発明の複合電解質膜構成するイオン性基含有ポリマーを主成分としたものを用いてもよいし、他の炭化水素系プロトン伝導性ポリマーを主成分とするものを用いてもよい。
本発明の複合電解質膜は、高分子電解質膜/電極接合体とした後、酸素及び燃料の流路を有するセパレーターで挟むことにより燃料電池の単セルとなり、単セルを連結することで燃料電池スタックを得ることができる。
以下、本発明を、実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
<高分子電解質膜の評価方法>
以下に高分子電解質膜の評価方法を示す。なお評価するに際しては、特別な記載がない限り、厚みや質量を正確に測ることを目的とし、室温が20℃で相対湿度が30±5RH
%にコントロールされた測定室内で評価を行った。なお、測定に際してサンプルは、24時間以上、測定室内で静置したものを使用した。
<高分子電解質膜の厚み>
複合電解質膜の厚みは、マイクロメーター(Mitutoyo、標準マイクロメーター)を用いて測定することにより求めた。測定は10箇所行い、その平均値を厚みとした。
<イオン交換容量>
乾燥したプロトン交換膜50mgを、0.01MのNaOH水溶液50mlに浸漬し、25℃で2時間攪拌した。その後、0.05MのHCl水溶液で中和滴定した。中和滴定には、平沼産業(株)製、電位差滴定装置COMTITE−980を用いた。イオン交換当量は下記式で計算して求めた。
イオン交換容量[meq/g]=(10−滴定量[ml])
<プロトン伝導性>
自作測定用プローブ(テフロン(登録商標)製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃、50%RHの恒温・恒湿オーブン(株式会社ナガノ科学機械製作所、LH−20−01)中に試料を保持し、白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルしたプロトン伝導率(σ)を算出した。
σ[S/cm]=1/膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm]
<膨潤・収縮繰り返し(D/W)試験方法>
高分子電解質膜の膨潤・収縮繰り返し試験および耐久性は、以下の方法で測定した。高分子電解質膜を自作の膨潤・収縮繰り返し試験セル(有効面積約15cm)にセットし、セル温度は85℃になるように加温した。その後、セル中に無加湿の窒素を270秒−フル加湿の窒素を30秒流すサイクルを繰り返す試験を実施した。6サイクルごとにアノード開放状態でカソード側に背圧(50kPa)を掛けることで膜の破れを確認した(背圧↓で膜破れ発生と判断)。
500サイクルまで測定し、破れがあったものは×、破れがなかったものは○と評価した。
<電解質膜の経時安定性>
電解質膜を70℃の純水に浸漬し、4時間後、及び29時間後の乾燥重量を測定し、受領保持率を算出した。
<合成例1>
ポリ[(p−フェニレンスルホン酸)−2,5−ベンゾフェノン(10)] (化学式9)
30ml反応容器<A>に無水塩化ニッケル(97mg、0.75mmol)、トリフェニルホスフィン(780mg、3.0mmol)、沃化ナトリウム(56mg、0.37mmol)、亜鉛粉末(980mg、15mmol)を量りとり、テトラヒドロフラン3mlを加えた。70℃まで昇温し、10分間撹拌した。異なる30ml反応容器<B>に2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸2,2−ジメチルプロピル(2.0g、6.7mmol)、2,5−ジクロロベンゾフェノン(0.19g、0.75mmol)にテトラヒドロフラン(7ml)を加えた。反応容器<B>の溶液を反応容器<A>に移し、70℃で6時間撹拌した。反応溶液を10%塩酸水溶液100mlに注ぎ、ろ過した。次いで、アセトン100ml中に分散させ、反応混合物を溶解し、ろ過することにより目的としたポリ[(p−フェニレンスルホン酸)−2,2−ジメチルプロピル−2,5−ベンゾフェノン(10)]を1.3g合成することができた。Mn=5600。
30ml反応容器に合成したポリマー(1g、スルホン酸エステルユニット4.4mmol分に相当)、トリメチルアミン塩酸塩(2.1g、22mmol)、NMP 20mlを計量し、120℃で12時間攪拌した。反応混合物をクロロホルム100mlで洗浄し、トリメチルアミン塩酸塩の反応残渣が除去できるまでクロロホルムで洗浄した。100ml三角フラスコに精製したポリマー、陽イオン交換樹脂(ダウエックスモノスフィアー650C)10g、純水10gを計量し室温で12時間攪拌した。陽イオン交換樹脂をろ過により除去し、ポリマー水溶液を濃縮、乾燥し、目的物を0.7g合成することができた。合成したポリ[(p−フェニレンスルホン酸)−2,5−ベンゾフェノン(10)]のイオン交換容量は5.5meq/gであった。
<合成例2>
ポリ[(p−フェニレンスルホン酸)−4,4’−ベンゾフェノン(10)] (化学式10)
原料として2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸2,2−ジメチルプロピル(2.0g、6.7mmol)、2,5−ジクロロベンゾフェノン(0.19g、0.75mmol)の重量比で合成例1と同様な実験条件で重合した。ポリ[(p−フェニレンスルホン酸)2,2−ジメチルプロピル−4,4’−ベンゾフェノン(10)]を1.4g合成することができた。Mn=4300。合成したポリマーを用いて合成例1と同様に処理し、ポリ[(p−フェニレンスルホン酸)―4,4,4‘−ベンゾフェノン(10)]を0.8g合成することができた。合成したポリ[(p−フェニレンスルホン酸)−4,4’−ベンゾフェノン(10)]のイオン交換容量は5.4meq/gであった。
<実施例1>
合成例1で得られたポリ[(p−フェニレンスルホン酸)−2,5−ベンゾフェノン(10)]100mg、ビニルスルホン酸40mg、トリアリルイソシアヌレート20mgをメタノール/水[90/10(w/w)]混合溶液4.4gに溶解させた。その後、メタノールに浸漬したポリエチレン製多孔膜(サイズ:10×10cm、膜厚:10μm、空孔率:40%)をPTFE製基材上に置き、その上から上記ポリマー溶液をコートし、窒素雰囲気下室温で乾燥させた。得られた複合膜に対して、室温で、加速電圧250KVの電子線を500KGy照射した。得られた架橋複合膜を純水に一晩浸漬し、その後乾燥させ、目的の複合電解質膜を得た。得られた膜のIECは1.8meq/gであった。
<実施例2>
ビニルスルホン酸の量を70mg、トリアリルイソシアヌレートの量を15mgに変更した他は実施例1と同様にして複合電解質膜を得た。得られた膜のIECは2.5meq/gであった。
<実施例3>
合成例1で得られたポリ[(p−フェニレンスルホン酸)−2,5−ベンゾフェノン(10)]に替えて、合成例2で得られたポリ[(p−フェニレンスルホン酸)−4,4’−ベンゾフェノン(10)]を用いた他は実施例1と同様にして複合電解質膜を得た。得られた膜のIECは1.8meq/gであった。
<比較例1>
トリアリルイソシアヌレートの代わりにペンタエリスリトールトリアクリレートを用いた他は実施例1と同様にして複合電解質膜を得た。得られた膜のIECは1.8meq/gであった。
<比較例2>
電子線照射の替りに、80度加熱下でUV照射(20J/cm)を行った他は比較例1と同様にして複合電解質膜を得た。得られた膜のIECは1.8meq/gであった。
<比較例3>
下記

で示される繰り返し単位と、下記

で示される繰り返し単位を有するポリマーD(X=0.42、数平均分子量10万)12.00gをN−メチル−2−ピロリドン88.00gに溶解し、ポリマー溶液Dを作製した。この溶液を、室温の雰囲気下で188μmポリエステルフィルム上にキャストし、80℃で10分、100℃で10分、130℃で10分処理した。その後、得られたフィルム状膜を、室温の純水に一晩浸漬させ、残留している溶媒を取り除いた。その後、得られた膜をろ紙に挟み、さらにガラス板で両面を挟み、荷重をかけつつ、20℃、相対湿度30%RHの室内で、2日間、放置して乾燥し、高分子電解質膜を作製した。得られた高分子電解質膜の厚みは、13μmであり、イオン交換容量は、2.0meq/gとなった。
<比較例4>
市販のパーフルオロスルホン酸系イオン交換膜であるナフィオン NR211(商品名)を用いて、比較評価した。
表1から、本発明の複合電解質膜は、高分子電解質膜の膨潤・収縮繰り返し試験における耐久性に優れ、フッ素材料を用いなくても、フッ素系電解質膜と同等以上のプロトン伝導性を示し、なおかつ、経時的な安定性についても優れていることが分かる。
<参考例 膜電極と接合体の作製および発電試験>
実施例1で作製した電解質膜に、あらかじめ作製した電極触媒層付きガス拡散層をホットプレス法により80℃、3MPaにて3分間加圧、加熱することにより、膜電極接合体とした。この接合体をElectrochem社製の評価用燃料電池セルFC25−02SPに組み込んで、セル温度80℃で、アノード26%RHおよびカソード16%RHの条件で水素と酸素を供給して発電特性を評価したところ、1A/cmの電流密度における出力電圧は0.4Vであり、燃料電池膜として良好に機能していることを確認した。
本発明の複合電解質膜は、低湿度下において高いプロトン伝導性を示し、膨潤・収縮試験に対しても高い耐久性を示し、かつ経時的な安定性に優れていることから、本発明の複合電解質膜を用いることで、燃料電池の耐久性、低湿度下運転に大きく寄与して実用性を向上させ、産業界の発展に寄与するところ大である。

Claims (17)

  1. イオン性基を有する芳香族系高分子電解質がイオン性基以外の部位で少なくとも1種以上の架橋成分によって連結されてなる架橋芳香族系高分子電解質が、多孔性基材の空孔に充填された複合電解質膜であって、該架橋成分のうちの少なくとも1種は、イオン性基ではない反応性基を1分子中に3個以上有し、かつ該反応性基がエステル結合で結合されていない化合物の反応物から形成されていることを特徴とする複合電解質膜。
  2. 架橋成分を形成する化合物が、下記化学式1で表される構造を反応性基として有することを特徴とする請求項1に記載の複合電解質膜。

    (式中、Nは窒素原子であり、架橋成分を形成する化合物中の他の部位と結合しており、Xはイオン性基でない1以上の価数を有する反応性基を表す。)
  3. Xが、ビニル基とエチニル基からなる群より選ばれる1種以上の構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の複合電解質膜。
  4. Xが、アリル基とメタリル基からなる群より選ばれる1種以上の基であることを特徴とする請求項3に記載の複合電解質膜
  5. 上記化学式1で表される構造を反応性基として有し、架橋成分を形成する化合物が、分子中に環構造を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の複合電解質膜
  6. 架橋成分が、さらにイオン性基ではない反応性基を一つだけ有する1種以上の化合物の反応物から形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の複合電解質膜。
  7. イオン性基ではない反応性基を一つだけ有する化合物が、イオン性基を有することを特徴とする請求項6に記載の複合電解質膜。
  8. イオン性基ではない反応性基を一つだけ有する化合物の反応性基がビニル基であることを特徴とする請求項6又は7に記載の複合電解質膜。
  9. 前記芳香族系高分子電解質がその分子鎖中に少なくとも下記化学式2および下記化学式3で示される繰り返し構造を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の複合高分子電解質膜。

    (Ar1はスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含む2価の芳香族基、Ar2はスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含まずベンゾイル基を有する2価の芳香族基を示す)
  10. 化学式2および化学式3で示される繰り返し構造を有する芳香族系高分子電解質が、下記化学式4で表されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の複合高分子電解質膜。

    (式中、m、nは正の整数、m+n=5〜1000を示す。Arはスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含む芳香族基、Arはスルホン酸基、スルホン酸塩またはスルホン酸基誘導体を含まずベンゾイル基を有する芳香族基を示す。Ar及びArは、ランダムポリマーあるいはブロックポリマーとして共重合している。)
  11. 化学式3又は4におけるArが化学式5で示されることを特徴とする請求項9又は10に記載の複合電解質膜。

    (式中、nは化学式4で定義したものと同じ意味を表す。R、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかであり、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。Rは炭素数1〜20のアルキル基または置換基を有してもよい炭素数6〜20のアリール基のいずれかを示す。Rの置換基は水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかであり、その置換基は同一であっても異なっていてもよい。a、bは0〜4の整数を示す。p、qは0または1であり、p+q=1を示す)
  12. 化学式2又は4におけるArが下記化学式6で表されることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の複合電解質膜。

    (式中、mは化学式4で定義したものと同じ意味を表す。Rは水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかであり、置換基は同一であっても異なっていてもよい。rは1または2であり、dは4−rを示す。AはOR、又はNR を示し、Rは水素、アルカリ金属、炭素数1〜20のアルキル基を示し、Rは水素または炭素数1〜20のアルキル基を示す)
  13. 多孔性基材の材質が高分子材料であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の複合電解質膜。
  14. イオン交換容量が1.5meq/g〜6.0meq/gであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の複合電解質膜。
  15. イオン性基を有する芳香族系高分子電解質と、イオン性基ではない反応性官能基を1分子中に3個以上有し、かつ該反応性基がエステル結合で結合されていない架橋成分化合物を溶媒に溶解した溶液を、多孔性基材に含浸し、次いで該溶媒を除去して複合電解質膜前駆体を作製し、外部からの刺激によって該芳香族系高分子電解質と該架橋成分化合物とを反応させて、該芳香族系高分子電解質と該架橋成分化合物とを連結させることを特徴とする複合電解質膜の製造方法。
  16. 芳香族系高分子電解質と架橋成分化合物を含む溶液が、さらにイオン性基ではない反応性基を一つだけ有する1種以上の化合物を含む請求項15に記載の複合電解質膜の製造方法。
  17. 外部からの刺激が電子線照射であることを特徴とする、請求項15又は16に記載の複合電解質膜の製造方法。
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