JP4463351B2 - 固体高分子電解質型燃料電池用隔膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体高分子型燃料電池用隔膜、詳しくはポリオレフィン系多孔質膜を母材とする陽イオン交換膜からなる固体高分子電解質型燃料電池用隔膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、燃料と酸化剤とを連続的に供給し、これらが反応した時の化学エネルギーを電力として取り出す発電システムである。燃料電池は、これに用いる電解質の種類によって、動作温度が比較的低いリン酸型、固体高分子型、高温で動作する溶融炭酸塩型、固体電解質型と大別される。
【0003】
これらの中で、固体高分子型燃料電池は、電解質として作用する固体高分子の隔膜の両面に触媒が坦持されたガス拡散電極を接合し、一方のガス拡散電極が存在する側の室(燃料室)に燃料である水素を、他方のガス拡散電極が存在する側の室に酸化剤である酸素や空気等の酸素含有ガスをそれぞれ供給し、両ガス拡散電極間に外部負荷回路を接続することにより、燃料電池として作用させる。
【0004】
こうした固体高分子型燃料電池の基本構造を図1に示す。図中、(1)は電池隔壁、(2)は燃料ガス流通孔、(3)は酸化剤ガス流通孔、(4)は燃料室側ガス拡散電極、(5)は酸化剤室側ガス拡散電極、(6)は固体高分子電解質膜を示す。この固体高分子型燃料電池において、燃料室(7)では、供給された水素ガスからプロトン(水素イオン)と電子が生成し、このプロトンは固体高分子電解質(6)内を伝導し、他方の酸化剤室(8)に移動し、空気又は酸素ガス中の酸素と反応して水を生成する。この時、燃料室側ガス拡散電極(4)で生成した電子は、外部負荷回路を通じて酸化剤室側ガス拡散電極(5)へと移動することにより電気エネルギーが得られる。
【0005】
このような構造の固体高分子型燃料電池において、上記隔膜には、通常、陽イオン交換膜が使用される。そして、この陽イオン交換膜には、電気抵抗が小さいこと、保水性が高いこと、ガス透過性が低いこと、長期の使用に対して安定であること、物理的な強度が強いことなどが要求される。
【0006】
従来、固体高分子型燃料電池用隔膜として使用される陽イオン交換膜として、パーフルオロカーボンスルホン酸膜が主に使用されている。しかし、この膜は、化学的安定性に優れているが、保水力が不十分であるため陽イオン交換膜の乾燥が生じてプロトンの伝導性が低下し易く、さらに物理的な強度も不十分であるために薄膜化による電気抵抗の低減が困難であった。更にパーフルオロカーボンスルホン酸膜は高価であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
一方、特開平1−22932号公報には、固体高分子型燃料電池用隔膜として、重量平均分子量が50万以上の高分子量のポリオレフィン系多孔質膜の空孔中に陽イオン交換樹脂を充填してなる陽イオン交換膜が開示され、その製造方法として、上記多孔質膜に、陽イオン交換樹脂を溶剤に溶解させて含浸させ、その後、溶剤を除去させる方法や、陽イオン交換樹脂の単量体等を上記多孔質膜に含浸させ、その後、上記原料単量体の重合を行う方法などが開示されている。
【0008】
しかしながら、この陽イオン交換膜は、物理的強度は良好であるものの、母材が高分子量のポリオレフィンであるため、陽イオン交換樹脂が溶解する溶液やその原料単量体を上記多孔質膜に含浸させる際に、該多孔質膜が十分に膨潤せず、これらが膜の空孔内の細部まで充分に入り込まない問題があった。特に、陽イオン交換膜の溶液を含浸させる方法では、含浸後に溶剤が除去されるため、充填物の体積変化が生じてしまい、上記多孔質膜の空孔部細部への充填性はさらに低下していた。また、原料単量体を含浸させる方法でも、これらの単量体は多くの場合高粘度であるため、その空孔部細部まで密に充填させることは困難であった。
【0009】
従って、上記方法で得られる陽イオン交換膜は、母材の空孔細部まで密に陽イオン交換樹脂が充填されていないものであり、そのためガスの透過性が大きく、前記燃料電池用隔膜として使用した際には、燃料室の水素ガスが酸化室側に拡散することを十分に抑えることが出来ず、大きな電池出力が得られないものであった。また、イオン交換容量が低くかつ電気抵抗も高いものであった。
【0010】
以上から、十分な物理的強度を有し、電気抵抗が小さく、且つガス透過性が低い、固体高分子型燃料電池隔膜を開発することが大きな課題であった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を続けてきた。その結果、ポリオレフィン系多孔質膜を母材とし、電気抵抗が小さく、ガス透過性が低い陽イオン交換膜を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、重量平均分子量10万〜45万のポリオレフィン系多孔質膜を母材とし、その空孔部に炭化水素系陽イオン交換樹脂が充填されてなり、1mol/L−硫酸水溶液中の電気抵抗が0.20Ω・cm2以下、50℃における水素ガスの透過係数が3.0×10−8cm3(STP)・cm・cm−2・s−1・cmHg−1以下であって、含水率が30〜90%である陽イオン交換膜からなることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池用隔膜である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において使用する陽イオン交換膜は、ポリオレフィン系多孔質膜の連通孔に実質的に完全に炭化水素系の陽イオン交換樹脂が充填されている。即ち、水和力の高い炭化水素系イオン交換樹脂がポリオレフィン系多孔質膜に分散した形態の陽イオン交換膜であり、イオン交換樹脂の充填性が高いため、該陽イオン交換膜は、イオン交換容量や固定イオン濃度を調整することにより、電気抵抗や水素ガスの透過係数を所望の範囲に設定することが出来る。
【0014】
多孔質膜の原料樹脂であるポリオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等の好適には炭素数2〜8のα−オレフィンの単独重合体、または他のα−オレフィン或いは共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。α−オレフィンに基づく単量体の含有量が90重量%以上のものが好ましい。これらのポリオレフィンにおいて、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、特にポリエチレンが好ましい。
【0015】
ポリオレフィンの重量平均分子量は、10万〜45万であり、さらに好適には15〜40万が好ましい。上記重量平均分子量のポリオレフィンを用いることにより、多孔質膜は膨潤性が低いものになり、後述する陽イオン交換膜の製造方法において、陽イオン交換樹脂を製造するための単量体組成物の含浸時に、その空孔細部までより密に該単量体組成物を充填させることが可能になる。
【0016】
なお、これらのポリオレフィン系多孔質膜は、更に、ポリプロピレン系繊維製等の布状物によるバッキングが施されていても良い。
【0017】
上記ポリオレフィン系多孔質膜の孔の平均孔径は0.1〜5μm、好適には0.1〜1μmであり、空隙率が30〜95%、より好ましくは40〜90%のものが好ましい。平均孔径が0.1μm以下の場合には電気抵抗が増大し、平均孔径が5μm以下の場合には、機械的強度が低くなるので好ましくない。また、空隙率が30%以下の場合には電気抵抗が増大し、空隙率が95%以上の場合には機械的強度が低くなるので好ましくない。
【0018】
さらに、ポリオレフィン系多孔質膜は、電気抵抗を低く抑える観点及び支持膜として必要な機械的強度を付与する観点から、通常5〜100μmの厚みを有するものが好ましく、より好ましくは10〜70μmを有するものが好ましい。これらのポリオレフィン系多孔質膜は、ポリオレフィン系フィルムを延伸法等により、多孔質化したものが使用される。
【0019】
本発明の固体高分子電解質型燃料電池用隔膜は、上記ポリオレフィン系多孔質膜の空孔部に陽イオン交換樹脂が充填されたものである。陽イオン交換樹脂の陽イオン交換基としては、水溶液中での負の電荷となりうる官能基なら特に限定されるものではないが、具体的には、スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等が挙げられ、このうちスルホン酸基が特に好ましい。
【0020】
本発明で使用する陽イオン交換膜では、前記程度の膜厚が薄い多孔質膜を母材として用いることが出来るため、1mol/L−硫酸水溶液中の電気抵抗が0.20Ω・cm2以下好適には0.05〜0.15Ω・cm2の小さい値であり、電池用隔膜として有利である。
【0021】
そして、本発明で使用する陽イオン交換膜は、上記の如く電気抵抗が小さい膜であると共に、母材の多孔質膜の空孔部への陽イオン交換樹脂の充填性が高いため、ガスの透過性が極めて小さい。即ち、50℃における水素ガスの透過係数が3.0×10-8cm3(STP)・cm・cm-2・s-1・cmHg-1以下、好適には0.5〜2.0×10-8cm3(STP)・cm・cm-2・s-1・cmHg-1である。このように水素ガスの透過係数が小さいため、該陽イオン交換膜からなる本発明の固体高分子電解質型燃料電池用隔膜は、供給した水素ガスが隔膜を透過して酸素ガス中に拡散することが良好に防止でき、高い出力の電池が得られる。
【0022】
なお、上記水素ガスの透過係数を有する本発明で使用する陽イオン交換膜は、50℃における酸素ガスの透過係数としては、一般に2.0×10-8cm3(STP)・cm・cm-2・s-1・cmHg-1以下、更には0.3〜1.5×10-8cm3(STP)・cm・cm-2・s-1・cmHg-1の値を有している。従って、本発明の固体高分子型燃料電池隔膜は、酸素ガスの隔膜の透過も良好に防止できる。
【0023】
さらに、本発明で使用する陽イオン交換膜は、電気抵抗を上記範囲に保つ観点から、陽イオン交換容量が0.2〜5.0mmol/g、好適には、0.5〜3.0mmol/gであるのが好ましい。
【0024】
また、乾燥によるプロトンの伝導性の低下が生じ難いように、含水率は、30%以上、好適には40%以上であるのが好ましい。一般には含水率は30〜90%程度で保持される。このような範囲の含水率を得るためには、多孔質膜の空孔部に存在する陽イオン交換樹脂の種類、陽イオン交換容量及び架橋度により制御することが出来る。
【0025】
このような性状を有する陽イオン交換膜は、如何なる方法により製造しても良いが、一般には、以下の方法により製造される。即ち、陽イオン交換基が導入可能な官能基または陽イオン交換基を有する単量体、架橋性単量体および重合開始剤からなる単量体組成物をポリオレフィン系多孔質膜に減圧脱気しながら含浸させた後、単量体組成物を重合し、必要に応じて陽イオン交換基を導入する方法が挙げられる。
【0026】
この製造方法において、陽イオン交換膜が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体としては、従来公知である陽イオン交換樹脂の製造において用いられている炭化水素系単量体が特に限定されずに使用される。具体的には、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン等が挙げられる。また、陽イオン交換基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、α−ハロゲン化ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体、ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体、それらの塩およびエステル類等が用いられる。
【0027】
また、架橋性単量体としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジビニルベンゼン類、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタレン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン等のジビニル化合物が用いられる。
【0028】
本発明では、上記した陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体や架橋性単量体の他に、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他の単量体や可塑剤類を添加しても良い。こうした他の単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等が用いられる。また、可塑剤類としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジブチルアジペート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート等が用いられる。
【0029】
次に、本発明における重合開始剤としては、従来公知のものが特に制限なく使用される。こうした重合開始剤の具体例としては、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物が用いられる。
【0030】
本発明において、単量体組成物を構成する各成分の配合割合は、本発明の目的を達成するためには、一般には、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体100重量部に対して、架橋性単量体を0.1〜50重量部、好適には1〜40重量部、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を0〜100重量部、可塑剤類を添加する場合は上記単量体に対して0〜50重量部使用するのが好適である。また、重合開始剤は、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部、好適には0.5〜10重量部配合させるのが好ましい。
【0031】
母材であるポリオレフィン系多孔質膜への上記単量体組成物の充填方法は、特に限定されない。例えば、単量体組生物をポリオレフィン系多孔質膜に、減圧脱気しながら含浸させれば良い。前記したとおり、ポリオレフィン系多孔質膜の空孔部の細部まで上記単量体組成物を高密度に充填することは困難であるのに対して、このように減圧下で脱気して含浸させれば、該空孔部細部まで隙間なく単量体組成物を充填することが可能になる。そしてかかる含浸後、単量体組成物を重合することで得られる陽イオン交換膜は、前記本願発明が特定するようなガス透過性が極めて低い膜になる。
【0032】
ここで、上記減圧脱気しながらの含浸処理は、具体的には、単量体組成物をポリオレフィン系多孔質膜に減圧下で接触させ、圧力を大気圧に戻すことで行われる。例えば、ポリオレフィン系多孔質膜を容器に入れ、真空ポンプで減圧状態にした後、単量体組成物を大気圧に戻るまで容器に導入して含浸させる方法、または、容器に入れた単量体混合物にポリオレフィン系多孔質膜を浸漬し、真空ポンプで孔中の気体を減圧脱気した後大気圧に戻す方法が挙げられる。減圧する時の減圧度は、7kPa〜作業温度下で単量体が沸騰するまでの圧力が好ましく、特に2kPa〜0.1kPaの範囲から選択するのが好ましい。含浸時の温度は、20℃以下が一般的であり、含浸時間は、通常、5〜60分の範囲で適宜選択すれば良い。
【0033】
単量体組成物を上記ポリオレフィン系多孔質膜に充填させた後重合するには、一般にポリエステル等のフィルムに挟んで加圧下で常温から昇温する方法が好ましい。こうした重合条件は、関与する重合開始剤の種類、単量体組成物の組成等によって左右されるものであり、時に限定されるものではなく適宜選択すれば良い。
【0034】
以上のように重合されて得られる膜状物は、必要に応じてこれを、公知の例えばスルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化、加水分解等の処理により所望の陽イオン交換基を導入して、陽イオン交換膜とすることができる。
【0035】
本発明において、上記性状の陽イオン交換膜が隔膜として使用される固体電解質型燃料電池は、公知の構造ものが何ら制限なく適用できる。通常は、前記した図1に示されるような構造をしたものに適用されるのが一般的である。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明の如く本発明の固体高分子電解質型燃料電池用隔膜は、電気抵抗が低く、ポリオレフィン系多孔質膜の空孔部に架橋した炭化水素系陽イオン交換樹脂が細部まで隙間なく密に充填された陽イオン交換膜からなる。従って、ガスの透過性が極めて低い。また、ポリオレフィン系多孔質膜が母材であることから、寸法安定性や耐薬品性にも優れている。
【0037】
従って、かような性状を有する本発明の固体高分子電解質型燃料電池用隔膜を使用して得られる燃料電池は、燃料および酸化剤のクロスオーバーが抑制されて高い電池出力が得られるものになる。そしてまた、膨潤収縮に伴う電極との接触抵抗の増大が抑えられ、さらには、ガス拡散電極を該陽イオン交換膜に接着不良なく良好に加熱圧着できるものになる。
【0038】
【実施例】
本発明を更に具体的に説明するため、以下、実施例及び比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
なお、実施例および比較例に示す陽イオン交換膜の特性は、以下の方法により測定した値を示す。
(1)陽イオン交換容量;
陽イオン交換膜を1mol/L−HClに10時間以上浸漬し、水素イオン型とした後、1mol/L−NaClでナトリウムイオン型に置換させ遊離した水素イオンを電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。
【0040】
次に、同じ陽イオン交換膜を60℃で5時間減圧乾燥させその重量を測定した(Wg)。陽イオン交換容量は次式により求めた。
陽イオン交換容量=A×1000/W[mmol/g−乾燥膜]
(2)電気抵抗
白金電極を備えた2室セルの中央に陽イオン交換膜を置き、セル内に25℃の3mol/L硫酸水溶液を満たした。陽イオン交換膜の両側にはルギン管を設け、塩橋により参照電極と液絡した。膜を挟んで100mA/cm2の電流を流したときの電位(aV)と膜を挟まずに100mA/cm2の電流を流したときの電位(bV)を測定した。陽イオン交換膜の電気抵抗は次式より求めた。
【0041】
電気抵抗=1000×(a−b)/100[Ωcm2]
(3)含水率
陽イオン交換膜を1mol/L−HClに4時間以上浸漬し、水素イオン型とし、イオン交換水で十分に水洗した後、膜を取り出しキムワイプ等で表面の水分を拭き取り湿潤時の重さ(Wg)を測定した。次に、膜を60℃で5時間減圧乾燥させ乾燥時の重さ(Dg)を測定した。陽イオン交換膜の含水率は次式により求めた。
【0042】
含水率=1000×(W−D)/D[%]
(4)ガス透過係数
ガス透過係数の測定方法として、U字管式水銀マノメーター(JIS Z 1707に準拠)によるガス透過試験機を用いた。測定に用いた陽イオン交換膜は50℃において含水状態でガス透過試験機に装着した。また、測定に用いたガスは、50℃において飽和温度に保った酸素または水素を用いた。ガス透過係数は次式により求めた。
【0043】
P=(p/t)×(1/A)×{1/(Pa−Pb)}
P:ガス透過係数(cm3(STP)・cm・cm-2・s-1・cmHg-1)
p:ガス透過量(cm3(STP))
t;測定時間(s)
l:陽イオン交換膜厚み(cm)
A:ガス透過面積(cm2)
Pa:高圧側ガス圧力(cmHg)
Pb:低圧側ガス圧力(cmHg)
(5)燃料電池出力電圧
ポリテトラフルオロエチレンで撥水化処理した空孔率80%のカーボンペーパー上に、白金30重量%の坦持のカーボンブラックとパーフルオロカーボンスルホン酸のアルコールと水の5%溶液(デュポン社製、商品名ナフィォン)を混合したものを塗布し80℃で4時間減圧乾燥しガス拡散電極とした。
【0044】
次に、測定する陽イオン交換膜の両面に上記のガス拡散電極をセットし、150℃、圧力100kg/cm2の加圧下で100秒間熱プレスした後、室温で2分間放置した。これを図1に示す燃料電池セルに組み込み、圧力2気圧、燃料電池セル温度50℃、加湿温度50℃の酸素と水素をそれぞれ200mL/min、400mL/minのときの出力電圧を測定した。
(6)耐熱性(収縮率)
50℃の乾燥機中で1時間予備乾燥させた測定用サンプル膜を160℃の乾燥機中に30分放置した後、乾燥機から取り出して寸法を測定し、以下の式により収縮率を求めた。
【0045】
S=100×(La−Lb)/La
S:収縮率(%)
La:50℃の乾燥機中で乾燥させた膜の長さ(cm)
Lb:160℃の乾燥機中で30分放置した膜の長さ(cm)
実施例1〜6
表1に示した組成表に従って、各種単量体等を混合して単量体組成物を得た。得られた単量体組成物400gを500mLのガラス容器に入れ、重量平均分子量35万のポリオレフィン系多孔質膜(A、B、C、各20cm×20cm)を浸漬した。
【0046】
次に、ガラス容器を真空ポンプで0.7kPaの圧力まで10分間減圧にして減圧脱気した後、常圧に戻してポリオレフィン系多孔質膜の空孔に単量体組成物を充填した。続いて、ポリオレフィン系多孔質膜を単量体組成物中から取り出し、100μmのポリエステルフィルムを剥離剤としてポリオレフィン系多孔質膜の両側を被覆した後、3kg/cm2の窒素加圧下、80℃5時間加熱重合した。
【0047】
得られた膜状物を98%濃硫酸と純度90%以上のクロロスルホン酸の1:1混合物中に40℃で45分間浸漬し、スルホン酸型陽イオン交換膜を得た。
【0048】
これらのスルホン酸型陽イオン交換膜の膜厚、陽イオン交換容量、電気抵抗、ガス透過係数、燃料電池出力電圧、耐熱性を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0049】
比較例1
実施例1と同じ単量体組成物400gを500mLのガラス容器に入れ、分子量200万のポリオレフィン系多孔質膜(D)を大気圧下で10分間浸漬した以外は実施例1と同じ操作を行いスルホン酸型陽イオン交換膜を得た。
【0050】
これらのスルホン酸型陽イオン交換膜の膜厚、陽イオン交換容量、電気抵抗、ガス透過係数、燃料電池出力電圧、耐熱性を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0051】
比較例2
ポリオレフィン系多孔質膜(A)を平均分子量20万のポリスチレンの10%ベンゼン溶液に5分間浸漬した。その後、液中からポリオレフィン系多孔質膜をを取り出し、50℃で乾燥した。この操作を5回繰返した後、100℃で2時間減圧乾燥し膜状物を得た。
【0052】
得られた膜状物を98%濃硫酸中に40℃で60分間浸漬し、スルホン酸型陽イオン交換膜を得た。
【0053】
これらのスルホン酸型陽イオン交換膜の膜厚、陽イオン交換容量、電気抵抗、ガス透過係数、燃料電池出力電圧、耐熱性を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0054】
比較例3
パーフルオロカカーボンスルホン酸膜(市販品)を用い、同様に膜厚、陽イオン交換容量、電気抵抗、ガス透過係数、燃料電池出力電圧、耐熱性を測定した。これらの結果を表2に示した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、固体高分子電解質型燃料電池の基本構造を示す概念図である。
【符号の説明】
1;電池隔壁
2;燃料ガス流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;燃料室側ガス拡散電極
5;酸化剤室側ガス拡散電極
6;固体高分子電解質
7;燃料室
8;酸化剤室
Claims (1)
- 重量平均分子量10万〜45万のポリオレフィン系多孔質膜を母材とし、その空孔部に炭化水素系陽イオン交換樹脂が充填されてなり、1mol/L−硫酸水溶液中の電気抵抗が0.20Ω・cm2以下、50℃における水素ガスの透過係数が3.0×10−8cm3(STP)・cm・cm−2・s−1・cmHg−1以下であって、含水率が30〜90%である陽イオン交換膜からなることを特徴とする固体高分子電解質型燃料電池用隔膜。
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