JPWO2009096473A1 - 燃料電池用隔膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本発明は、電解質膜の耐久性、水酸化物イオン伝導性がほぼ維持され、かつメタノール透過抵抗の改善された改質陰イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜を製造しうる方法を提供することを目的としている。【解決手段】 本発明に係る、燃料電池用隔膜の製造方法は、架橋された炭化水素系陰イオン交換膜の少なくとも片面に、重量平均分子量(但し、化合物が、その酸性部位がカウンターカチオンにより中和されている化合物である場合には、該カウンターカチオンの重さは分子量から除く)が700以上8000未満の重合性酸性化合物を含浸し、該重合性酸性化合物を重合する工程を含むことを特徴としている。【選択図】 図1
Description
本発明は、燃料電池用隔膜およびその製造方法に関し、詳しくは液体メタノール等を燃料とする直接液体燃料型燃料電池に好適に用いられる燃料電池用隔膜およびその製造方法に関する。特に、膜の表面領域が高度にイオンコンプレックス化され、メタノールクロスオーバー現象を抑制しつつ、高い水酸化物イオン伝導性を示す改質陰イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜およびその製造方法に関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤とを連続的に供給し、これらが反応したときの化学エネルギーを電力として取り出す発電システムである。燃料電池は、これに用いる電解質の種類によって、動作温度が比較的低いアルカリ型、リン酸型、固体高分子電解質型と、高温で動作する溶融炭酸塩型、固体酸化物電解質型とに大別される。
これらの中で、固体高分子電解質型燃料電池は、固体高分子電解質として作用する隔膜の両面に、触媒が担持された拡散電極を接合し、一方の拡散電極が存在する側の室(燃料室)に燃料である水素を、他方のガス拡散電極が存在する側の室(酸化剤室)に酸化剤である酸素や空気等の酸素含有ガスをそれぞれ供給し、両ガス拡散電極間に外部負荷回路を接続することにより、燃料電池として作用させる。
該固体高分子型燃料電池は、図1に示されるように、それぞれ外部と連通する燃料流通孔2および酸化剤ガス流通孔3を有する電池隔壁1内の空間を、固体高分子電解質膜6の両面にそれぞれ燃料室側拡散電極4および酸化剤室側ガス拡散電極5が接合した接合体で仕切って、燃料流通孔2を通して外部と連通する燃料室7、および酸化剤ガス流通孔3を通して外部と連通する酸化剤室8が形成された基本構造を有している。そして、このような基本構造の固体高分子型燃料電池では、前記燃料室7に燃料流通孔2を通して水素ガスあるいはメタノール等からなる液体燃料を供給すると共に酸化剤室8に酸化剤ガス流通孔3を通して酸化剤となる酸素や空気等の酸素含有ガスを供給し、更に両拡散電極間に外部負荷回路を接続することにより次のような機構により電気エネルギーを発生させている。
固体電解質膜6として陽イオン交換型電解質膜を使用した場合には、燃料室側拡散電極4において該電極内に含まれる触媒と燃料とが接触することにより生成したプロトン(水素イオン)が固体高分子電解質膜6内を伝導して酸化剤室8に移動し、酸化剤室側ガス拡散電極5で酸化剤ガス中の酸素と反応して水を生成する。一方、燃料室側拡散電極4においてプロトンと同時に生成した電子は外部負荷回路を通じて酸化剤室側ガス拡散電極5へと移動するので上記反応のエネルギーを電気エネルギーとして利用することができる。
このような固体電解質膜として陽イオン交換型電解質膜を使用した固体高分子型燃料電池において、該陽イオン交換型電解質膜としては、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜が最も一般的に用いられている。しかし、このようなパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜を用いた陽イオン交換型燃料電池では、次のような問題が指摘されている。
(i)反応場が強酸性のため、貴金属触媒しか使用できず、また、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜も高価であり、コストダウンに限界がある。
(ii)保水力が充分でないため水の補給が必要となる。
(iii)物理的な強度が低いため薄膜化による電気抵抗の低減が困難である。
(iv)燃料にメタノール等の液体燃料を用いた場合に、液体燃料の透過性が高く、酸化剤室側ガス拡散電極に到達した液体燃料がその表面で酸素または空気と反応するため過電圧が増大し、出力電圧が低下する。また、酸化剤室にメタノール等の液体燃料が漏洩した場合、液体燃料の利用効率が低下することになる。この現象は、「メタノールクロスオーバー」と呼ばれている。
(i)反応場が強酸性のため、貴金属触媒しか使用できず、また、パーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜も高価であり、コストダウンに限界がある。
(ii)保水力が充分でないため水の補給が必要となる。
(iii)物理的な強度が低いため薄膜化による電気抵抗の低減が困難である。
(iv)燃料にメタノール等の液体燃料を用いた場合に、液体燃料の透過性が高く、酸化剤室側ガス拡散電極に到達した液体燃料がその表面で酸素または空気と反応するため過電圧が増大し、出力電圧が低下する。また、酸化剤室にメタノール等の液体燃料が漏洩した場合、液体燃料の利用効率が低下することになる。この現象は、「メタノールクロスオーバー」と呼ばれている。
そこで、このような問題、特に上記(i)の問題を解決するためにパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂膜に替えて炭化水素系陰イオン交換膜を用いることが検討されており、幾つか提案されている(特許文献1〜3)。この場合、固体高分子型燃料電池において、電気エネルギーが発生するための機構は、次のような固体高分子電解質膜6内を移動するイオン種が異なるものになる。すなわち、燃料室側に水素あるいはメタノール等の液体燃料を供給し、酸化剤室側に酸素および水を供給することにより、酸化剤室側ガス拡散電極5において該電極内に含まれる触媒と該酸素および水とが接触して水酸化物イオンが生成する。この水酸化物イオンは、上記炭化水素系陰イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜6内を伝導して燃料室7に移動し、燃料室側ガス拡散電極4で燃料と反応して水を生成することになるが、これに伴って該燃料室側ガス拡散電極4で生成した電子を外部負荷回路を通じて酸化剤室側ガス拡散電極5へと移動させて、この反応のエネルギーを電気エネルギーとして利用するものである。
しかして、このような炭化水素系陰イオン交換膜を用いれば、得られる直接液体燃料型燃料電池は、上記(i)の問題だけでなく、通常、(ii)〜(iii)の問題についても大きく改善できるものになり、さらに(iv)の問題も、通電時には酸化剤室側から燃料室側に、直径が大きな水酸化物イオンが移動することになるため、相当に低減させることが可能になるのではないかと期待されている。
これまでに、固体高分子電解質膜となる陰イオン交換膜として、具体的には、織布などの多孔質膜に、4級アンモニウム塩基や4級ピリジニウム塩基などの陰イオン交換基を有する炭化水素系架橋重合体を充填した膜(特許文献1)や、炭化水素系エンジニアリングプラスチック類に4級アンモニウム塩基を導入後キャスト製膜した膜(特許文献2)、更には含フッ素ポリマーからなる基材にアニオン交換基を有する炭化水素系モノマーをグラフト重合させた膜(特許文献3)などが提案されている。これらはいずれも、前記(iv)のメタノールクロスオーバーの改善を目的としており、パーフルオロカーボンスルホン酸膜に比べて相当に効果を有するものの、実用性を勘案すると未だ充分ではなかった。
こうした中、本発明者等は、陽イオン交換膜中にイオンコンプレックスを高率に形成させることにより、メタノール透過性を顕著に低減させた陽イオン交換膜として、架橋型陽イオン交換樹脂が多孔質膜に充填されてなるイオン交換原膜に、陰イオン交換基を有する比較的低分子量の重合性単量体を浸透させ、ついで浸透させた重合性単量体を重合させることにより得た膜を提案した(特許文献4)。この陽イオン交換膜は、上記したとおりメタノール透過抵抗が高く極めて有用なものであるが、これを達成するため膜内の全域に渡って高率でイオンコンプレックスを形成させており、そのためプロトン伝導性の面では今一歩十分ではなかった。すなわち、プロトン伝導性を高く維持しつつ、メタノール透過抵抗を向上させることは困難であり、さらに改良の余地があった。
本発明は上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、電解質膜の耐久性、水酸化物イオン伝導性がほぼ維持され、かつメタノール等の液体燃料の透過抵抗の改善された改質陰イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜を製造しうる方法を提供することを目的としている。
かかる課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)架橋された炭化水素系陰イオン交換膜の少なくとも片面に、
重量平均分子量(但し、化合物が、その酸性部位がカウンターカチオンにより中和されている化合物である場合には、該カウンターカチオンの重さは分子量から除く)が700以上8000未満の重合性酸性化合物を含浸し、
該重合性酸性化合物を重合する工程を含む、燃料電池用隔膜の製造方法。
(2)前記重合性酸性化合物を、前記炭化水素系陰イオン交換膜に、該交換膜の表面領域における重合性酸性化合物濃度が、該交換膜の中心領域における重合性酸性化合物濃度よりも高くなるように含浸する(1)に記載の製造方法。
(3)前記重合性酸性化合物の有する酸性部位がカルボン酸基である(1)に記載の製造方法。
(4)前記重合性酸性化合物が、分子鎖の少なくとも一方の末端にエチレン性不飽和基を有する、ポリアクリル酸重合体、ポリメタクリル酸重合体、ポリ(アクリル酸−メタクリル酸)共重合体、およびこれらの重合体の塩類から選ばれる少なくとも一種である(1)に記載の製造方法。
(4)前記燃料電池が、直接液体燃料型燃料電池である(1)〜(4)の何れかに記載の製造方法。
(5)架橋された炭化水素系陰イオン交換膜を母材とし、
該陰イオン交換膜の少なくとも片面における表面領域の方が、該陰イオン交換膜の中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる改質陰イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜。
(6)前記改質陰イオン交換膜中のイオン交換可能な陰イオンをClにイオン交換し、
イオン交換後の膜の厚み方向におけるClイオンの積算強度をX線マイクロアナライザ分析により算出し、
該改質陰イオン交換膜の全厚をTとした際に、
該改質陰イオン交換膜の少なくとも片面の表面から深さ0.3Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.5)との比(Cl0.3/Cl0.5)が0.05〜0.55である(6)に記載の燃料電池用隔膜。
(1)架橋された炭化水素系陰イオン交換膜の少なくとも片面に、
重量平均分子量(但し、化合物が、その酸性部位がカウンターカチオンにより中和されている化合物である場合には、該カウンターカチオンの重さは分子量から除く)が700以上8000未満の重合性酸性化合物を含浸し、
該重合性酸性化合物を重合する工程を含む、燃料電池用隔膜の製造方法。
(2)前記重合性酸性化合物を、前記炭化水素系陰イオン交換膜に、該交換膜の表面領域における重合性酸性化合物濃度が、該交換膜の中心領域における重合性酸性化合物濃度よりも高くなるように含浸する(1)に記載の製造方法。
(3)前記重合性酸性化合物の有する酸性部位がカルボン酸基である(1)に記載の製造方法。
(4)前記重合性酸性化合物が、分子鎖の少なくとも一方の末端にエチレン性不飽和基を有する、ポリアクリル酸重合体、ポリメタクリル酸重合体、ポリ(アクリル酸−メタクリル酸)共重合体、およびこれらの重合体の塩類から選ばれる少なくとも一種である(1)に記載の製造方法。
(4)前記燃料電池が、直接液体燃料型燃料電池である(1)〜(4)の何れかに記載の製造方法。
(5)架橋された炭化水素系陰イオン交換膜を母材とし、
該陰イオン交換膜の少なくとも片面における表面領域の方が、該陰イオン交換膜の中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる改質陰イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜。
(6)前記改質陰イオン交換膜中のイオン交換可能な陰イオンをClにイオン交換し、
イオン交換後の膜の厚み方向におけるClイオンの積算強度をX線マイクロアナライザ分析により算出し、
該改質陰イオン交換膜の全厚をTとした際に、
該改質陰イオン交換膜の少なくとも片面の表面から深さ0.3Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.5)との比(Cl0.3/Cl0.5)が0.05〜0.55である(6)に記載の燃料電池用隔膜。
本発明によれば、電解質膜の耐久性、水酸化物イオン伝導性がほぼ維持され、かつメタノール等の液体燃料の透過抵抗の改善された改質陰イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜が提供される。この改質陰イオン交換膜は、膜の表面領域が高度にイオンコンプレックス化され、メタノールクロスオーバー現象を効果的に抑制できるため、液体燃料の利用効率に優れ、この膜を用いて製造した燃料電池は経済性の面で極めて優位なものになる。そして、高い水酸化物イオン伝導性を示すため、高い出力電圧を得ることができる。したがって、このような改質陰イオン交換膜は、特に液体メタノール、液体エタノール等を燃料とした直接液体燃料型燃料電池用の隔膜として好ましく用いられる。
以下、本発明について、その最良の形態を含めてさらに詳細に説明する。
本発明に係る燃料電池用隔膜の製造方法は、架橋された炭化水素系陰イオン交換膜に、重合性酸性化合物を含浸し、
該重合性酸性化合物を重合する工程を含む。
該重合性酸性化合物を重合する工程を含む。
(架橋された炭化水素系陰イオン交換膜)
架橋された炭化水素系陰イオン交換膜は、主鎖及び側鎖に直接、陰イオン交換基が結合している炭化水素系重合体の架橋物からなる膜であってもよく、また、炭化水素系重合体中に、架橋された陰イオン交換重合体が不均質に分散されたものであってもよい。後者の炭化水素系重合体中に架橋陰イオン交換重合体が不均質に分散された架橋炭化水素系陰イオン交換膜は、炭化水素系重合体が補強部分として働くため電気抵抗などを犠牲にすることなく陰イオン交換膜の物理的強度を高めることができるといった点から本発明において好適に用いることができる。
架橋された炭化水素系陰イオン交換膜は、主鎖及び側鎖に直接、陰イオン交換基が結合している炭化水素系重合体の架橋物からなる膜であってもよく、また、炭化水素系重合体中に、架橋された陰イオン交換重合体が不均質に分散されたものであってもよい。後者の炭化水素系重合体中に架橋陰イオン交換重合体が不均質に分散された架橋炭化水素系陰イオン交換膜は、炭化水素系重合体が補強部分として働くため電気抵抗などを犠牲にすることなく陰イオン交換膜の物理的強度を高めることができるといった点から本発明において好適に用いることができる。
なお、本発明において、炭化水素系重合体とは、実質的に炭素−フッ素結合を含まず、重合体を構成する主鎖及び側鎖の結合の大部分(陰イオン交換重合体においては、陰イオン交換基の部分は除く)が、炭素−炭素結合で構成されてなる重合体を意味する。この場合、重合体の主鎖及び側鎖を構成する結合の合間にエーテル結合、エステル結合、アミド結合、シロキサン結合等により酸素、窒素、珪素、硫黄、ホウ素、リン等の他の原子が極少量であれば介在していても良い。また、上記主鎖及び側鎖に結合する原子は、その全てが水素原子である必要はなく極少量であれば塩素、臭素、ヨウ素等の他の原子、又は他の原子を含む置換基により置換されていても良い。これら、炭素と水素以外の元素の量は、樹脂を構成する全元素(但し、陰イオン交換重合体においては、陰イオン交換基の部分の元素は除く)中10モル%以下、より好適には5モル%以下であるのが好ましい。
陰イオン交換基は、従来公知である炭化水素系陰イオン交換膜の有する陰イオン交換基が何ら制限無く使用される。具体的には、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、ピリジル基、イミダゾール基、4級ピリジニウム塩基、スルホニウム塩基、ホスホニウム塩基等が挙げられ、水酸化物イオンの伝導性に優れ、膜原料の入手の容易性等の観点から4級アンモニウム塩基や4級ピリジニウム塩基が好ましく、4級アンモニウム塩基が最も好ましい。また、陰イオン交換基は、水酸化物イオン型でもよいし、塩化物イオン等のハロゲンイオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等の他のイオン型でもよく、さらにまた塩類、酸、塩基その他の物質が陰イオン交換膜中に含まれていても良い。
以下には後者の炭化水素系重合体中に、架橋された陰イオン交換重合体が不均質に分散された炭化水素系陰イオン交換膜について説明する。炭化水素系重合体中に、架橋された陰イオン交換重合体が不均質に分散された架橋炭化水素系陰イオン交換膜は、炭化水素系重合体からなる多孔質膜の空隙部分に、架橋陰イオン交換重合体が存在するものが特に好適である。
炭化水素系重合体よりなる多孔質膜の形態は特に限定されず、多孔質フィルム、織布、不織布、紙等が制限なく使用でき、材質としても熱可塑性重合体組成物、熱硬化性重合体組成物、又はそれらの混合物でも構わないが、その製造が容易であるばかりでなく架橋炭化水素系陰イオン交換重合体との密着強度が高いという観点から、熱可塑性重合体組成物であることが好ましい。当該熱可塑性重合体組成物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体等のポリオレフィン重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド重合体、ポリイミド等が例示される。これらの中でも特に、機械的強度、化学的安定性、耐薬品性に優れ、架橋炭化水素系陰イオン交換重合体との馴染みがよいことからポリオレフィン重合体を用いるのが好ましい。ポリオレフィン重合体としては、ポリエチレン又はポリプロピレン重合体が特に好ましく、ポリエチレン重合体が最も好ましい。さらに適度な平均孔径を有すものの入手が容易で、かつ強度に優れる点でポリオレフィン重合体製の多孔質フィルムであることが好ましく、ポリエチレン重合体製の多孔質フィルムであることが特に好ましい。
このような多孔質フィルムは、例えば特開平9−216964号公報、特開2002−338721号公報等に記載の方法によって得ることもできるし、あるいは、市販品(例えば、旭化成ケミカルズ「ハイポア」、宇部興産「ユーポア」、東燃タピルス「セテラ」、日東電工「エクセポール」、三井化学「ハイレット」等)として入手することも可能である。
炭化水素系重合体からなる多孔質膜が有する孔の平均径は、炭化水素系陰イオン交換膜の電気抵抗や機械的強度を勘案すると、一般には0.005〜5.0μmであることが好適であり、0.01〜1.0μmであることがより好ましく、0.015〜0.4μmであることが最も好ましい。平均孔径が0.005μm以下の多孔質膜を使用して隔膜を製造する場合は、多孔質膜の空隙に充填されるイオン交換樹脂量が不足し、充分な水酸化物イオン伝導性が得られないおそれがある。平均孔径が5.0μm以上の多孔質膜を使用して隔膜を製造する場合は、メタノール透過性の低い隔膜を得ることが困難になる。
また、炭化水素系重合体よりなる多孔質膜の空隙率は、炭化水素系陰イオン交換膜の電気抵抗や機械的強度を勘案すると、20〜95%であることが好ましく、30〜90%であることがより好ましく、30〜65%であることが最も好ましい。また、多孔質膜の透気度(JIS P−8117)は1500秒以下、特に1000秒以下であることが好ましい。多孔質膜の表面平滑性は、粗さ指数で表して10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。この構成によりガス拡散電極との密着性が高くなり、より高出力の燃料電池用隔膜が得られる。
架橋炭化水素系陰イオン交換膜は、如何なる方法により製造しても良いが、一般には、以下の方法により製造することが好適である。即ち、陰イオン交換基が導入可能な官能基または陰イオン交換基を有する重合性単量体、架橋性単量体および重合開始剤からなる単量体組成物を、炭化水素系重合体からなる多孔質膜の空隙部分に含浸させた後、上記の単量体組成物を重合し、必要に応じて陰イオン交換基を導入する方法が挙げられる。
この製造方法において、陰イオン交換基が導入可能な官能基を有する重合性単量体または陰イオン交換基を有する重合性単量体としては、従来公知である陰イオン交換重合体の製造において用いられている炭化水素系単量体が特に限定されずに使用される。具体的には、陰イオン交換基が導入可能な官能基を有する重合性単量体としては、クロロメチルスチレン、クロロエチルスチレン、クロロプロピルスチレン、クロロブチルスチレン、クロロペンチルスチレン、ブロモメチルスチレン、ブロモエチルスチレン、ブロモプロピルスチレン、ブロモブチルスチレン、ブロモペンチルスチレン、ヨードメチルスチレン、ヨードエチルスチレン、ヨードプロピルスチレン、ヨードブチルスチレン、ヨードペンチルスチレン、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類、もしくはアリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、テトラアリルアミン等のアリルアミン誘導体等、さらにビニルホルムアミド等のビニルアミン誘導体が挙げられる。また、陰イオン交換基を有する重合性単量体としては、N,N,N-トリメチルスチリルアンモニウム塩などのハロゲノアルキル基を有するスチレン誘導体をアミノ化して得られる塩類やアリルアミン塩、ジアリルアミン塩、トリアリルアミン塩等のアリルアミンの塩類が用いられる。
また、架橋性単量体としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジビニルベンゼン類、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタレン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン類等のジビニル化合物が用いられる。
さらに、上記した陰イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陰イオン交換基を有する単量体や架橋性単量体の他に、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他の単量体や可塑剤類を添加しても良い。こうした他の単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等が用いられる。また、可塑剤類としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジブチルアジペート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート等が用いられる。
重合開始剤としては、従来公知のものが特に制限なく使用される。こうした重合開始剤の具体例としては、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物が用いられる。
単量体組成物を構成する各成分の配合割合は、特に限定はされないが、一般には、陰イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陰イオン交換基を有する単量体100重量部に対して、架橋性単量体を0.1〜60重量部、好適には1〜50重量部、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を0〜100重量部、可塑剤類を添加する場合は0〜50重量部使用するのが好適である。また、重合開始剤は、全重合性単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部、好適には0.5〜10重量部配合させるのが好ましい。
母材である炭化水素系重合体の多孔質膜への上記単量体組成物の充填方法は、特に限定されない。例えば、単量体組成物を炭化水素系重合体の多孔質膜に塗布やスプレーしたり、あるいは、多孔質膜を単量体組成物中に浸漬する方法などが例示される。浸漬する方法による場合、浸漬時間は多孔質膜の種類や懸濁液の組成にもよるが、一般的には0.1秒〜十数分である。
単量体組成物を炭化水素系重合体の多孔質膜に充填させたのち重合する方法は特に限定されず、用いた重合性単量体及び重合開始剤に応じて適宜公知の方法を採用すればよい。重合開始剤として前記有機過酸化物を用いる場合は、重合方法は加熱により重合させる方法(熱重合)が一般的である。この方法は、操作が容易で、また比較的均一に重合させることができるので、他の重合方法よりも好ましい。重合に際しては、単量体組成物を空隙部に侵入させた多孔質膜を、ポリエステル等のフィルムにより覆って、フィルムの外部方向から内部方向に向って加圧した状態を保つことが好ましい。この状態で重合させることにより、酸素による重合阻害を防止し、得られる隔膜の表面を平滑にすることができる。更に、フィルムで前記多孔質膜の表面を覆って加圧することにより、多孔質膜内に過剰に含浸されている単量体組成物が取り除かれ、薄く均一な重合膜が得られる。
重合温度は特に制限されず、公知の重合温度条件を適宜選択すればよい。一般的には50〜150℃が好ましく、60〜120℃がより好ましい。重合時間は10分〜10時間が好ましく、30分〜6時間がより好ましい。
以上のように重合されて得られる膜状物は、必要に応じてこれを、公知の例えばアミノ化、メチル化、スルホニウム塩化、加水分解等の処理により所望の陰イオン交換基を導入して、架橋炭化水素系陰イオン交換膜とすることができる。
本発明で使用する架橋陰イオン交換膜のイオン交換容量は、好ましくは0.2〜5mmol/g、さらに好ましくは0.5〜3mmol/gである。また、陰イオン交換膜は、乾燥による水酸化物イオンの伝導性の低下が生じ難いように含水率は7%以上、好適には10%以上であるのが好ましい。一般には含水率は7〜90%程度で保持される。含水率の制御は、陰イオン交換基の種類、陰イオン交換容量及び架橋度を適宜に設定して行う。さらに陰イオン交換膜は、膜抵抗を低く抑えるという観点及び支持膜として必要な機械的強度を付与するという観点から、通常、5〜150μmの厚みを有するものが好ましく、より好ましくは7〜90μmの厚みを有するものが望ましい。
(重合性酸性化合物)
本発明では、上記架橋炭化水素系陰イオン交換膜に、特定分子量の重合性酸性化合物の溶液を含浸し、これを重合する。
本発明では、上記架橋炭化水素系陰イオン交換膜に、特定分子量の重合性酸性化合物の溶液を含浸し、これを重合する。
重合性酸性化合物とは、分子内に重合性基と酸性部位とを有する化合物である。重合性基は、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合等を含む基であり、重合性の良さや入手の容易性等の観点から炭素−炭素二重結合が好ましく、具体的には、ビニルベンジル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基を有する基があげられる。これらの重合性基の分子内における存在位置は特に限定はされず、重合性酸性化合物の分子鎖の末端あるいは側鎖に結合してなるが、通常は、分子鎖の末端に結合するものが好適に使用される。重合性酸性化合物1分子当たりの重合性基の数は、好ましくは1個以上、より好ましくは2個以上であり、さらに、重合性基の数の上限は、通常、10個以下、好ましくは5個以下である。最も好ましい重合性基の数は、分子鎖の末端に結合している場合の2個である。また、酸性部位とは、たとえば、スルホン酸構造や、カルボン酸構造、リン酸構造、ホスホン酸構造、フェノール型水酸基構造などが例示されるが、イオンコンプレックスの形成能の高さ、即ち、メタノール透過抵抗の高さから弱酸性の官能基構造が好ましく、特に、カルボン酸構造が最も好ましい。このような酸性部位は、通常は重合性酸性化合物の側鎖中に存在し、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオンなどのカウンターカチオンにより中和されている。
重合性酸性化合物の重量平均分子量は、700以上8000未満、好ましくは700以上5000以下、さらに好ましくは700以上3000以下、最も好ましくは800以上2500以下である。ただし、この重量平均分子量は、重合性酸性化合物が、上記したように側鎖中の酸性部位がカウンターカチオンにより中和されている化合物である場合には、該カウンターカチオンの重さは分子量から除いて求めた値にする。このようにイオン結合したカウンターカチオンの部分は、重合性酸性化合物を陰イオン交換膜の表面に塗布する際において、その浸透性に余り影響せず、しかもこれらの重合性酸性化合物は、適当な溶媒に溶解させて塗布するのが好ましく、この場合、これらカウンターカチオンは電離しており、上記浸透性に対する影響はさらに弱まるため、本発明では、係るカウンターカチオンの重さは、使用する重合性酸性化合物の重量平均分子量を求める際に除くものとする。
使用する重合性酸性化合物の重量平均分子量が大きすぎると、重合性酸性化合物の陰イオン交換膜への含浸が不充分になり、重合性酸性化合物の重合を行っても、表面領域に充分な厚さのイオンコンプレックス化領域が形成されない。この結果、所望のメタノール透過抵抗の向上が達成されない。一方、重合性酸性化合物の重量平均分子量が小さすぎると、重合性酸性化合物が陰イオン交換膜中に多量かつ均一に含浸され、重合性酸性化合物の重合を行うと、イオン交換膜の大部分がイオンコンプレックス化される。この結果、メタノール透過抵抗は向上するものの、水酸化物イオン伝導性が低下し、本発明の目的は達成されない。
なお、上記重合性酸性化合物の重量平均分子量が3000を越えて8000未満である比較的大きめのものの場合、陰イオン交換膜の表面に塗布した際における浸透性は、該重量平均分子量が前記値より低分子量のものを用いた場合に比較して低下する傾向がある。したがって、より十分に重合性酸性化合物が含浸したものにするためには、該化合物が浸透し易いように、使用する陰イオン交換膜として、架橋度ができるだけ低かったり、基材の多孔質膜ができるだけ高空隙率のものを使用したり、或いは陰イオン交換膜に含浸させる重合性酸性化合物の溶液または分散液として該重合性酸性化合物ができるだけ高濃度のものを使用する等するのが好ましい。例えば、上記使用する陰イオン交換膜として、架橋度が低いものを用いるのであれば、前記陰イオン交換膜は、原料の単量体組成物として、陰イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陰イオン交換基を有する単量体100重量部に対して、架橋性単量体を0.1〜60重量部配合したものを使用するのが一般的であるが、斯様に含浸する重合性酸性化合物の重量平均分子量が大きい場合は、上記架橋性単量体の配合量が3重量部以下、特に好適には2.5重量部以下のものを適用するのが良好である。(同様に、使用する陰イオン交換膜として、基材の多孔質膜が高空隙率のものを用いるのであれば、該多孔質膜として空隙率が40%以上のものを用いるのが良好であり、陰イオン交換膜に浸漬させる重合性酸性化合物の溶液または分散液として該重合性酸性化合物が高濃度のものを用いるのであれば、その濃度が4000ppm以上のするのが良好である。)
このような重合性酸性化合物としては、分子鎖の少なくとも一方の末端にエチレン性不飽和基を有するものが好ましく、具体的には、該性状を備えた、スチレンスルホン酸のオリゴマーやその塩類、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のオリゴマーやその塩類、また、該性状を備えた、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル ジハイドロジェンフォスフェートのオリゴマーやその塩類を例示することができる。これらの重合性酸性化合物は、金属ポルフィリン触媒を用いたリビング重合などの公知の合成方法や、さらには後述する重合性ポリ(メタ)アクリル酸化合物の合成方法と同様の方法により得ることができる。
重合性酸性化合物として、特に好適には、カルボン酸基構造と、1個以上のアクリル酸もしくはメタクリル酸由来のエチレン性不飽和基とを有する化合物が好ましく用いられる。かかる重合性酸性化合物の具体的な例としては、分子鎖の少なくとも一方の末端にエチレン性不飽和基を有する、ポリアクリル酸重合体、ポリメタクリル酸重合体、ポリ(アクリル酸−メタクリル酸)共重合体、およびこれらの重合体の塩類などの重合性ポリ(メタ)アクリル酸化合物が挙げられる(以下、「重合性ポリ(メタ)アクリル酸化合物」とも称する)。これらの重合性ポリ(メタ)アクリル酸化合物は、2種類以上の混合物であっても良く、あるいは重合性ポリ(メタ)アクリル酸化合物と他の重合性酸性化合物の混合物であっても良い。これらの場合、無論、実質的全ての重合性酸性化合物の重量平均分子量が前述した範囲にあれば良い。なお、ポリ(アクリル酸−メタクリル酸)共重合体を採用する場合には、前記陰イオン交換膜への含浸と、続く重合反応を均一に進めることができる点で、ランダム共重合体であることが好ましい。
本発明において、上記重合性ポリ(メタ)アクリル酸化合物は、重合性を高めて長期にわたって燃料透過抵抗を維持できる点で、分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものが好ましく、これを単独で、または分子鎖の片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものとの混合物として使用するのが好適である。
これら重合性ポリ(メタ)アクリル酸化合物の製法は、特に限定はされず、従来公知の合成手法にしたがって合成すれば良い。また市販品を使用してもよい。例えば、以下の公知(河合道弘,「高温重合によるマクロモノマーの合成と反応性」,東亜合成研究年報 TREND,2002年1月1日,第5号,p.2−10)の方法により合成することができる。即ち、(メタ)アクリル酸またはそのエステル類を単独、もしくは2種類以上の混合物として、ラジカル重合開始剤の共存下、高温で短時間熱重合し、出発原料として(メタ)アクリル酸エステル類を用いた場合には酸やアルカリを用いてこのエステル部分を加水分解する方法である。この製法の重合工程では、一般的な高分子のラジカル重合における成長反応と分解反応が協奏的に進行する。成長反応ではモノマーが逐次重合し、高分子量化が進行するが、他方、分解反応では、成長末端のラジカルにより主鎖上の水素引き抜き反応が生じた後、その結果生じる主鎖上のラジカル部位でβ切断反応が生じることにより、重合物の末端にエチレン性不飽和基が導入される。後者の分解反応は100℃より低い温度領域では非常に速度が遅いため、効率的にエチレン性不飽和基を導入するためには反応の温度は、一般に150〜500℃であり、好ましくは200〜300℃である。これらの反応は無溶媒で、または水、アルコール類、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイド、ベンゼン、クロロホルムまたはこれらの混合溶媒中で任意の濃度で適宜実施すればよい。なお、使用する出発原料としては、分子量分布が比較的狭いものが多く、このため均一に陰イオン交換膜の表面近傍を改質できる点で、(メタ)アクリル酸エステル類を用いることがより好ましい。
(含浸)
本発明では、上記の重合性酸性化合物を、前記架橋炭化水素系陰イオン交換膜の少なくとも片面に含浸する。重合性酸性化合物は、架橋炭化水素系陰イオン交換膜の両面に含浸されてもよく、また片面のみに含浸されてもよいが、好ましくは両面に含浸される。
本発明では、上記の重合性酸性化合物を、前記架橋炭化水素系陰イオン交換膜の少なくとも片面に含浸する。重合性酸性化合物は、架橋炭化水素系陰イオン交換膜の両面に含浸されてもよく、また片面のみに含浸されてもよいが、好ましくは両面に含浸される。
重合性酸性化合物を、架橋炭化水素系陰イオン交換膜の少なくとも片面に含浸する方法は、特に限定的ではなく公知の方法をそのまま採用できる。一般に工業的に採用される代表的な方法を例示すれば次の方法がある。
たとえば重合性酸性化合物をそのまま、または適当な溶媒に溶解または分散させ、架橋炭化水素系陰イオン交換膜の表面に塗布または噴霧する方法が挙げられる。さらに、重合性酸性化合物を含む溶液または分散液に架橋炭化水素系陰イオン交換膜を浸漬し、必要に応じて過剰に含浸された重合性酸性化合物を取り除く方法が、重合性酸性化合物の交換膜の表面領域への含浸性に優れるため特に好ましい。
重合性酸性化合物を溶液または分散しうる溶媒としては、たとえば水、メタノール、エタノール等の単独または混合溶媒があげられる。この際の溶液または分散液の濃度は特に限定はされないが、浸漬を行う場合には、溶液または分散液の濃度は、好ましくは500〜8000ppm、さらに好ましくは2000〜7000ppmである。また、塗布または噴霧の場合、好ましくは100〜5000ppm、さらに好ましくは500〜4000ppmである。
さらに、架橋炭化水素系陰イオン交換膜と陽イオン交換膜とを交互に電気透析槽に組み込んだ後、通電下あるいは非通電下で、重合性酸性化合物を含む溶液を流通する手段を採用することもできる。この際の重合性酸性化合物含有溶液の濃度は、好ましくは50〜2000ppm、さらに好ましくは100〜1000ppmである。
本発明では、重合性酸性化合物として特定分子量の化合物を用いているため、重合性酸性化合物は、架橋炭化水素系陰イオン交換膜の表面領域の方が膜の中心領域よりも高濃度になるように含浸される。架橋炭化水素系陰イオン交換膜における重合性酸性化合物の含浸深さおよび濃度を定量することは困難であるが、後述するように、含浸された重合性酸性化合物を重合して得られる改質陰イオン交換膜において、表面領域の方が中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されることから、架橋炭化水素系陰イオン交換膜中に、重合性酸性化合物の濃度勾配が形成されることが確認できる。
架橋炭化水素系陰イオン交換膜中の表面領域に高濃度で重合性酸性化合物を含浸させるための条件は特に限定はされず、重合性酸性化合物の分子量、含浸時の温度、時間、架橋炭化水素系陰イオン交換膜の架橋度等を考慮して適宜に設定すればよい。一般に、重合性酸性化合物の分子量が小さいほど重合性酸性化合物の含浸深さは深くなり、膜の内部にまで均一に重合性酸性化合物が含浸される傾向にある。一方、重合性酸性化合物の分子量が大きいと含浸深さは浅くなり、表面領域における濃度が中心領域に比べて相対的に高くなる。また、含浸時の温度が高いと、含浸深さは深くなり、低いと浅くなる。また、含浸時間が長いと、含浸深さは深くなり、短いと浅くなる。また、架橋炭化水素系陰イオン交換膜の架橋度が低いと含浸深さは深くなり、高いと浅くなる。
(重合)
次いで、架橋炭化水素系陰イオン交換膜に含浸された重合性酸性化合物の重合を行い、架橋炭化水素系陰イオン交換膜中の表面領域をイオンコンプレックス化し、改質陰イオン交換膜を得る。
次いで、架橋炭化水素系陰イオン交換膜に含浸された重合性酸性化合物の重合を行い、架橋炭化水素系陰イオン交換膜中の表面領域をイオンコンプレックス化し、改質陰イオン交換膜を得る。
重合性酸性化合物の重合法、条件については、特に限定されることはなく、たとえばラジカル重合、カチオン重合などの公知の方法で行うことができる。
たとえば、重合性酸性化合物が含浸された架橋炭化水素系陰イオン交換膜を、ラジカル重合開始剤またはカチオン重合開始剤を含む溶液と接触させることにより該重合性酸性化合物を重合することができる。
また、使用する重合開始剤の種類によっては、低温下に重合性酸性化合物と重合開始剤とを含む溶液を、架橋炭化水素系陰イオン交換膜の少なくとも一方の面に含浸し、その後、温度を上昇させることで、重合性酸性化合物を重合する手段を採用することもできる。
さらに、重合性酸性化合物を架橋炭化水素系陰イオン交換膜の両面に含浸し、次いで片面のみを重合開始剤と接触させる手段も用いられる。なお、重合性酸性化合物の重合は、上記いずれの場合も、窒素雰囲気下に行うことが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、たとえば過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素などの過酸化物;
アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2−アミジノプロパン、これらの塩酸塩などのアゾ化合物;
さらには、過酸化水素−アンモニア、エチルアミン、Fe(II)塩など;ペルオキソ二硫酸塩−亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリエタノールアミンなど;過塩素酸ナトリウム−亜硫酸ナトリウムなどのレドックス開始剤も好適に用いられる。
アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2−アミジノプロパン、これらの塩酸塩などのアゾ化合物;
さらには、過酸化水素−アンモニア、エチルアミン、Fe(II)塩など;ペルオキソ二硫酸塩−亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリエタノールアミンなど;過塩素酸ナトリウム−亜硫酸ナトリウムなどのレドックス開始剤も好適に用いられる。
カチオン重合開始剤としては、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第二スズ、塩化チタン、三フッ化ホウ素、五塩化アンチモンなどのハロゲン化合物;
リン酸、硫酸、クロロスルホン酸、過塩素酸などのプロトン酸;
トリエチルアルミニウムなどの有機金属化合物が用いられる。
リン酸、硫酸、クロロスルホン酸、過塩素酸などのプロトン酸;
トリエチルアルミニウムなどの有機金属化合物が用いられる。
また、電離性の放射線を照射して重合してもよい。
重合性酸性化合物の重合温度は、該重合性酸性化合物の分解温度以下あるいは使用する溶媒の沸点以下で実施すればよい。また重合時間は、使用する溶媒の種類、重合温度等によって異なり一概に規定できないが、一般にレドックス開始剤を用いる場合には5分〜10時間程度であり、ラジカル重合開始剤を用いる場合には3時間〜3日程度が好適である。
(改質炭化水素系陰イオン交換膜)
上記のような工程を経て、架橋炭化水素系陰イオン交換膜の表面領域の方が中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる改質炭化水素系陰イオン交換膜が得られる。
上記のような工程を経て、架橋炭化水素系陰イオン交換膜の表面領域の方が中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる改質炭化水素系陰イオン交換膜が得られる。
ここで、イオンコンプレックス化とは、母材である架橋炭化水素系陰イオン交換膜中の陰イオン交換基が、重合性酸性化合物の重合体(以下、「酸性重合体」と記載する)が有する酸性部位により中和され、陰イオン交換能を失っている状態を示す。本発明の改質炭化水素系陰イオン交換膜においては、母材である架橋炭化水素系陰イオン交換膜の表面領域における重合性酸性化合物濃度が、該交換膜の中心領域における重合性酸性化合物濃度よりも高くなるように重合性酸性化合物を含浸し、重合性酸性化合物を重合している。このため、表面領域において、酸性重合体由来の酸性部位が高濃度で存在することなる。この結果、母材の陰イオン交換基は、膜の表面領域において、酸性重合体由来の酸性部位による中和を受け不活性化しやすい。一方、陰イオン交換膜の中心領域では、酸性重合体由来の酸性部位の濃度が低いため、イオン交換能を維持する。
したがって、イオンコンプレックス化されイオン交換能を喪失した基と、なおイオン交換能を有する基の分布状態を測定することで、膜中のイオンコンプレックス化の程度を評価できる。本発明では、改質炭化水素系陰イオン交換膜中のイオン交換可能な陰イオンをCl(クロル)にイオン交換し、イオン交換後の膜の厚み方向におけるClイオンの積算強度をX線マイクロアナライザ分析(EPMA)により測定することで、イオンコンプレックス化されたイオン交換基の分布状態を評価する。
イオンコンプレックス化されイオン交換能を喪失した基ではClへのイオン交換が行われず、一方イオン交換能を有する基ではClへのイオン交換が行われるため、Clの分布が少ない領域が、より高度にイオンコンプレックス化された領域を示す。
本発明の改質炭化水素系陰イオン交換膜においては、膜の少なくとも片面における表面領域の方が、該膜の中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる。なお、膜の両面に高度にイオンコンプレックス化された領域が形成されていてもよい。
Clイオン交換後の膜について、膜表面の比較的浅い領域におけるClイオン積算強度と、膜表面から中心部に至る領域のClイオン積算強度を対比することで、膜の厚み方向でのイオンコンプレックス化領域の分布状態を確認できる。
本明細書では、改質炭化水素系陰イオン交換膜の全厚をTとし、Clイオン交換後の膜について、膜表面から深さ0.3Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.5)との比(Cl0.3/Cl0.5)に基づいて、イオンコンプレックス化領域の分布状態を評価する。
ちなみに、イオンコンプレックス化されていない架橋陰イオン交換膜(未処理膜)では、膜中のすべての陰イオン交換基が陰イオン交換能を有するため、すべての陰イオン交換基のアニオンがClにイオン交換される。したがって、Clイオンは膜全体に均一に分散する。このため、Cl0.3/Cl0.5は、測定領域の面積にほぼ等しく、0.3/0.5であり、約0.6となる。
一方、本発明の改質炭化水素系陰イオン交換膜においては、膜の少なくとも片面における表面領域の方が、該膜の中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる。したがって、Clイオン交換後の膜においては、膜表面から深さ0.3Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.3)が、未処理膜よりも顕著に低下する。一方、膜の中心領域は、イオンコンプレックス化されず、活性を維持するイオン交換基が表面領域よりも多量に存在するので、膜表面から深さ0.5Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.5)は未処理膜よりは低下するものの、Cl0.3の低下の度合いほどには低下しない。
したがって、表面領域がイオンコンプレックス化された改質炭化水素系陰イオン交換膜では、Cl0.3/Cl0.5は0.6よりも少なくなる。
図2に、Clイオン交換後の改質炭化水素系陰イオン交換膜についてのEPMA分析によるClイオン強度スペクトルの典型例を示す。図2の曲線は、所定の深さにおけるClイオン強度を示す。したがって、膜表面から深さ0.3Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.3)は、該曲線とX軸と0.3Tにおける垂線とで囲まれる面積を示す。同様に膜表面から深さ0.5Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.5)は、該曲線とX軸と0.5Tにおける垂線とで囲まれる面積を示す。
本発明の改質炭化水素系陰イオン交換膜においては、Clイオン交換後の膜について、Cl0.3/Cl0.5が好ましくは0.05〜0.55、さらに好ましくは0.10〜0.52、特に好ましくは0.20〜0.50の範囲にある。Cl0.3/Cl0.5は、母材である架橋陰イオン交換膜への重合性酸性化合物の含浸状態により制御できる。
たとえば、比較的高分子の重合性酸性化合物を用いると、膜の中心領域までは重合性酸性化合物が含浸されない。この結果、表面部分におけるClイオン積算強度(Cl0.3)は低下するが、Cl0.5の低下の度合いは少ない。このため、Cl0.3/Cl0.5は小さくなる。一方、比較的低分子の重合性酸性化合物を用いると、膜の中心領域までは重合性酸性化合物が含浸されやすくなり、Cl0.3の低下度合いと、Cl0.5の低下度合いには大差が無くなり、Cl0.3/Cl0.5は小さくならない。
なお、本発明の改質炭化水素系陰イオン交換膜においては、特に表面領域における陰イオン交換基がイオンコンプレックス化され、陰イオン交換能を失っているが、陰イオン交換基自体が消失しているわけではない。たとえば、陰イオン交換基が四級アンモニウム塩基(NR4 +)である場合、四級アンモニウム塩基は酸性重合体由来の酸性部位(たとえばカルボン酸基、COOH)とイオンコンプレックスを形成することで中和され、陰イオン交換能を失うが、四級アンモニウム塩基(NR4 +)自体は存在する。この四級アンモニウム塩基は隔膜中に均一に分散して存在する。
したがって、本発明の改質炭化水素系陰イオン交換膜について、陰イオン交換基のみに由来する元素(例えば、四級アンモニウム塩基では窒素、スルホニウム基では硫黄)の分布をEPMAで測定した場合には、陰イオン交換基自体は膜中に均一に分散していることが分かる。たとえば、陰イオン交換基のみに由来する元素が窒素(N)の場合には、膜表面から深さ0.3Tまでの領域における積算強度(N0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域における窒素の積算強度(N0.5)との比(N0.3/N0.5)は、ほぼ0.6となる。
上記の改質炭化水素系陰イオン交換膜では、膜表面が中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されているため、膜の耐久性が高く、またメタノール透過抵抗が向上する。一方、膜の中心領域でのイオンコンプレックス化の程度は低いため、原料膜が有する水酸化物イオン伝導性がほぼ維持される。すなわち、改質炭化水素系陰イオン交換膜は、膜の表面領域が高度にイオンコンプレックス化され、メタノールクロスオーバー現象を効果的に抑制しつつ、高い水酸化物イオン伝導性を示す。
(燃料電池用隔膜)
このような改質炭化水素系陰イオン交換膜は、直接液体燃料型燃料電池用隔膜として特に好ましく用いられる。
このような改質炭化水素系陰イオン交換膜は、直接液体燃料型燃料電池用隔膜として特に好ましく用いられる。
燃料電池用隔膜として用いる際には、該改質炭化水素系陰イオン交換膜は、一般的に、陰イオン交換能を保持している陰イオン交換基の対イオンを水酸化物イオンにイオン交換してから用いられる。対イオンを水酸化物イオンとするには、前記の改質炭化水素系陰イオン交換膜を、好適には、0.05〜1mol/L程度の水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液に、0.1〜10時間浸漬し、好ましくは、これら操作を1〜5回繰り返すことで容易に達成できる。
なお、本発明者等は、陰イオン交換膜の構造ないし性質について鋭意検討し、陰イオン交換膜の対イオン種が水酸化物イオンである場合、すなわち水酸化物イオン型陰イオン交換膜は、空気中の二酸化炭素を吸収し、速やかに対イオン種の水酸化物イオンが二酸化炭素と反応して炭酸イオンに置換され、ついで重炭酸イオンへと変化する知見を得た。
しかしながら、該炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンは、燃料電池の動作中には、燃料電池発電中の触媒反応により生成した水酸化物イオンに置換(イオン交換)され、炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンは炭酸ガスとして系外に放出される。このため、陰イオン交換膜の対イオン種(水酸化物イオン)の一部または全部が炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンに置換されていても燃料電池として問題なく使用することが可能である。
しかしながら、該炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンは、燃料電池の動作中には、燃料電池発電中の触媒反応により生成した水酸化物イオンに置換(イオン交換)され、炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンは炭酸ガスとして系外に放出される。このため、陰イオン交換膜の対イオン種(水酸化物イオン)の一部または全部が炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンに置換されていても燃料電池として問題なく使用することが可能である。
本発明の改質炭化水素系陰イオン交換膜を用いた燃料電池用隔膜は、通常、その両面にガス拡散電極を接合させて用いられる。ガス拡散電極は、固体電解質型燃料電池に使用される公知のものを特に制限なく適用可能である。一般的には、触媒の金属粒子及び導電剤が分散する触媒電極層からなり、このものは多孔性材料からなる電極基材により支持されている。
ここで、触媒としては、水素やメタノールなどの燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であれば特に制限されるものではないが、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。これらの触媒の中で、触媒活性が優れている白金やルテニウムあるいは白金とルテニウムの合金が多くの場合用いられる。
上記触媒となる金属粒子の粒径は、通常、0.1〜100nm、より好ましくは0.5〜10nmである。粒径が小さいほど触媒性能は高くなるが、0.5nm未満のものは作製が困難であり、100nmより大きいと十分な触媒性能が得にくくなる。
上記触媒の含有量は、触媒電極層をシートとした状態で、通常、0.01〜10mg/cm2、より好ましくは0.1〜5.0mg/cm2である。触媒の含有量が0.01mg/cm2未満では触媒の性能が充分に発揮されず、10mg/cm2を超えて担持させても性能は飽和する。なお、これら触媒は、予め導電剤に担持させてから使用しても良い。
導電剤としては、電子導電性物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等を単独または混合して使用するのが一般的である。
また、触媒電極層には、上記触媒、導電剤の他に、結着剤等が含まれていることが好ましい。結着剤としては、水酸化物イオン伝導性を有する重合体が好ましく、例えば、クロロメチル化−{ポリスチレン‐ポリ(エチレン‐ブチレン)‐ポリスチレン}トリブロック共重合体のアミノ化物などが例示される。また、結着剤には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の陰イオン交換基を有さない重合体が含まれていても良い。該結着剤の含有量は、上記触媒電極層の5〜25重量%であることが好ましい。また、結着剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
これら成分からなる触媒電極層が支持される電極基材は、多孔質のものが使用され、具体的には、カーボン繊維織布、カーボンペーパー等が使用される。その厚みは50〜300μmであることが、その空隙率は50〜90%であることが好ましい。
上記電極基材に対して前記触媒電極層は、その空隙内及び改質炭化水素系陰イオン交換膜との接合側表面に5〜50μmの厚みになるよう充填及び付着され、ガス拡散電極が形成される。その製造方法は、前記各成分と有機溶媒とが混合された触媒電極層ペーストを電極基材に塗布して乾燥させる方法によるのが一般的である。また、上記触媒電極層ペーストには、触媒坦持量の調整や触媒電極相の膜厚を調整するため、暫時前記有機溶媒と同様の有機溶媒を添加して粘度調整を行なうのが一般的である。
改質炭化水素系陰イオン交換膜/ガス拡散電極接合体を製造する際の熱圧着は、加圧、加温できる装置を用いて実施される。一般的には、ホットプレス機、ロールプレス機等により行われる。プレス温度は一般的には80℃〜200℃である。プレス圧力は、使用するガス拡散電極の厚み、硬度に依存するが、通常0.5〜20MPaである。
このようにして熱圧着された改質炭化水素系陰イオン交換膜/ガス拡散電極接合体は、前記した図1に示すような基本構造の固体電解質用燃料電池に装着されて使用される。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例に示すアニオン交換容量および含水率、膜厚、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、イオンコンプレックス化の程度は、以下の方法により測定した値を示す。
1)アニオン交換容量および含水率
陰イオン交換膜を1mol/L−HCl水溶液に10時間以上浸漬し、塩化物イオン型とした後、0.5mol/L−NaNO3水溶液で硝酸イオン型に置換させ、遊離した塩化物イオンを硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。次に、同じイオン交換膜を1mol/L−NaCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した後膜を取り出しティッシュペーパー等で表面の水分を拭き取り湿潤時の重さ(Wg)を測定した。さらに膜を60℃で5時間減圧乾燥させその重量を測定した(Dg)。上記測定値に基づいて、イオン交換容量および含水率を次式により求めた。
陰イオン交換膜を1mol/L−HCl水溶液に10時間以上浸漬し、塩化物イオン型とした後、0.5mol/L−NaNO3水溶液で硝酸イオン型に置換させ、遊離した塩化物イオンを硝酸銀水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。次に、同じイオン交換膜を1mol/L−NaCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した後膜を取り出しティッシュペーパー等で表面の水分を拭き取り湿潤時の重さ(Wg)を測定した。さらに膜を60℃で5時間減圧乾燥させその重量を測定した(Dg)。上記測定値に基づいて、イオン交換容量および含水率を次式により求めた。
イオン交換容量=A×1000/D[mmol/g−乾燥重量]
含水率=100×(W−D)/D[%]
含水率=100×(W−D)/D[%]
2)膜厚
膜厚は、乾燥状態の膜厚をマイクロメーターで測定した。
膜厚は、乾燥状態の膜厚をマイクロメーターで測定した。
3)陰イオン伝導性
陰イオン交換膜を0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に10時間以上浸漬し、イオン交換水で3回洗浄した後大気中、乾燥状態で24時間以上放置したものを40℃のイオン交換水に湿潤させた後に切断し、横約6cm、縦2.0cmの短冊状の陰イオン交換膜を準備した。次いで、線幅0.3mmの白金線5本を、横方向(陰イオン交換膜の横方向と同じ方向)に0.5cm間隔で、何れも互いに平行で且つ縦方向(陰イオン交換膜の縦方向と同じ方向)に対して平行となる直線状に配置した絶縁基板を準備し、該絶縁基板の前記白金線を前記陰イオン交換膜に押し当てることにより測定用試料を作成した。
陰イオン交換膜を0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に10時間以上浸漬し、イオン交換水で3回洗浄した後大気中、乾燥状態で24時間以上放置したものを40℃のイオン交換水に湿潤させた後に切断し、横約6cm、縦2.0cmの短冊状の陰イオン交換膜を準備した。次いで、線幅0.3mmの白金線5本を、横方向(陰イオン交換膜の横方向と同じ方向)に0.5cm間隔で、何れも互いに平行で且つ縦方向(陰イオン交換膜の縦方向と同じ方向)に対して平行となる直線状に配置した絶縁基板を準備し、該絶縁基板の前記白金線を前記陰イオン交換膜に押し当てることにより測定用試料を作成した。
上記測定用試料について、1本目と2本目の白金線間(白金線間隔=0.5cm)、1本目と3本目の白金線間(白金線間隔=1.0cm)、1本目と4本目の白金線間(白金線間隔=1.5cm)および1本目と5本目の白金線間(白金線間隔=2.0cm)についてそれぞれ交流インピーダンスを測定した。x軸に白金線間距離をとりy軸に交流インピーダンスをとって各測定値をプロットしたときに得られるグラフから抵抗極間勾配(R)を求めると共に、下記式に基づき陰イオン伝導度(σ)を求めた。このとき、交流インピーダンスは、測定用試料を40℃、90%RHの恒温恒湿槽中で陰イオン交換膜表面にイオン交換水の水滴が存在する状態に保持し、白金線間に1kHzの交流を印加したときの交流インピーダンスとして測定した。また、膜厚(L)は陰イオン交換膜をイオン交換水で湿潤させて測定した。
δ=1/R×2.0×L
δ :伝導度[S・cm−1]
L :膜厚[cm]
R :抵抗極間勾配[Ω・cm−1]
なお、上記グラフにおいて、白金線間距離と交流インピーダンスとの間には直線関係(比例関係)が成立ち、測定試料における白金線と陰イオン交換膜との間の接触による抵抗(接触抵抗)はy切片として評価され、グラフの傾きから膜の比抵抗を意味する抵抗極間勾配(R)を算出することができる。本測定では、陰イオン伝導度(σ)は抵抗極間勾配(R)に基づいて求められているので、上記接触抵抗の影響は排除されている。
δ :伝導度[S・cm−1]
L :膜厚[cm]
R :抵抗極間勾配[Ω・cm−1]
なお、上記グラフにおいて、白金線間距離と交流インピーダンスとの間には直線関係(比例関係)が成立ち、測定試料における白金線と陰イオン交換膜との間の接触による抵抗(接触抵抗)はy切片として評価され、グラフの傾きから膜の比抵抗を意味する抵抗極間勾配(R)を算出することができる。本測定では、陰イオン伝導度(σ)は抵抗極間勾配(R)に基づいて求められているので、上記接触抵抗の影響は排除されている。
4)メタノール透過抵抗
陰イオン交換膜を空気中、室温下で24時間放置した。
この陰イオン交換膜を中央に取付けた燃料電池セル(隔膜面積5cm2)の一方の室に、メタノール濃度が30質量%の水溶液を液体クロマトグラフ用ポンプで供給し、隔膜の反対側の室にアルゴンガスを300ml/minで供給した。測定は25℃の恒温槽内で行った。隔膜の反対側の室から流出するアルゴンガス中のメタノール濃度をガスクロマトグラフィーで測定し、隔膜を透過したメタノール量を求めた。メタノール透過抵抗はメタノール透過量の逆数として規定した。
陰イオン交換膜を空気中、室温下で24時間放置した。
この陰イオン交換膜を中央に取付けた燃料電池セル(隔膜面積5cm2)の一方の室に、メタノール濃度が30質量%の水溶液を液体クロマトグラフ用ポンプで供給し、隔膜の反対側の室にアルゴンガスを300ml/minで供給した。測定は25℃の恒温槽内で行った。隔膜の反対側の室から流出するアルゴンガス中のメタノール濃度をガスクロマトグラフィーで測定し、隔膜を透過したメタノール量を求めた。メタノール透過抵抗はメタノール透過量の逆数として規定した。
5)イオンコンプレックス化の程度
実施例で製造した改質陰イオン交換膜、参考例および比較例で用いる各種の陰イオン交換膜について、隔膜を0.5モル/Lの塩化ナトリウム溶液に16時間浸漬し、十分に水洗、および風乾した後に、カッターで幅2mm長さ10mmの短冊状に切断した。切断したサンプルはエポキシ樹脂により包埋した。エポキシ樹脂が硬化した後、ミクロトームにより膜の断面が露出したサンプルを調製した。得られたサンプルについて炭素蒸着を実施した後、断面のX線マイクロアナライザ分析(EPMA)を下記条件で行い、Clイオン強度を測定した。
実施例で製造した改質陰イオン交換膜、参考例および比較例で用いる各種の陰イオン交換膜について、隔膜を0.5モル/Lの塩化ナトリウム溶液に16時間浸漬し、十分に水洗、および風乾した後に、カッターで幅2mm長さ10mmの短冊状に切断した。切断したサンプルはエポキシ樹脂により包埋した。エポキシ樹脂が硬化した後、ミクロトームにより膜の断面が露出したサンプルを調製した。得られたサンプルについて炭素蒸着を実施した後、断面のX線マイクロアナライザ分析(EPMA)を下記条件で行い、Clイオン強度を測定した。
(測定)
装置:日本電子製 JXA-8621M
条件:加速電圧15kV、照射電流1.0×10−8A
積算:陰イオン交換膜の厚み方向に線分析を行った。積算回数を50回とし、その平均強度からスペクトルを作成した。陰イオン交換膜の全厚をTとし、陰イオン交換膜の表面から深さ0.3Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.5)との比(Cl0.3/Cl0.5)を算出した。
装置:日本電子製 JXA-8621M
条件:加速電圧15kV、照射電流1.0×10−8A
積算:陰イオン交換膜の厚み方向に線分析を行った。積算回数を50回とし、その平均強度からスペクトルを作成した。陰イオン交換膜の全厚をTとし、陰イオン交換膜の表面から深さ0.3Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.5)との比(Cl0.3/Cl0.5)を算出した。
Cl0.3/Cl0.5が小さいほど、膜の表面領域が中心領域に比べて高度にイオンコンプレックス化されていることを意味する。
6)燃料電池出力
クロロメチル化−{ポリスチレン‐ポリ(エチレン‐ブチレン)‐ポリスチレン}トリブロック共重合体(スチレン含有量30質量%)を、6質量%のトリメチルアミンと25質量%のアセトンを含む水溶液中に室温で16時間浸漬し、さらに0.5mol/L−NaOH水溶液に10時間以上浸漬して触媒電極層用バインダー樹脂(水酸化物イオン型)を合成した。該バインダー樹脂は、重量平均分子量30000で、アニオン交換容量は1.5mmol/g−乾燥樹脂であった。
クロロメチル化−{ポリスチレン‐ポリ(エチレン‐ブチレン)‐ポリスチレン}トリブロック共重合体(スチレン含有量30質量%)を、6質量%のトリメチルアミンと25質量%のアセトンを含む水溶液中に室温で16時間浸漬し、さらに0.5mol/L−NaOH水溶液に10時間以上浸漬して触媒電極層用バインダー樹脂(水酸化物イオン型)を合成した。該バインダー樹脂は、重量平均分子量30000で、アニオン交換容量は1.5mmol/g−乾燥樹脂であった。
このバインダー樹脂を、テトラヒドロフランと1−プロパノールの等質量混合溶媒に溶解させ、濃度5質量%のバインダー樹脂溶液を得た。
次いで、上記バインダー樹脂溶液と、白金とルテニウム合金触媒(ルテニウム50mol%)を50質量%担持したカーボンブラックとを混合して触媒電極層形成用スラリーを作成し、該スラリーをポリテトラフルオロエチレンで撥水化処理した厚さ100μm、空孔率80%のカーボンペーパー上に、触媒が2mg・cm−2となるように塗布し、その後80℃で4時間減圧乾燥して触媒電極層を有する燃料室側拡散電極とした。
別に、白金を50質量%担持したカーボンブラックを用いて、上記の燃料室側拡散電極と同様にして、酸化剤室側ガス拡散電極を作成した。
次に、測定する燃料電池用隔膜の両面に、上記の燃料室側拡散電極と酸化剤室側ガス拡散電極をそれぞれセットし、100℃、圧力5MPaの加圧下で100秒間熱プレスした後、室温で2分間放置して、燃料電池用隔膜/触媒電極接合体を得た。これを図1に示す構造の燃料電池セルに組み込んで燃料電池セル温度を50℃に設定し、燃料室側に10質量%メタノール水溶液を、酸化剤室側に大気圧の空気を200ml・min.−1で供給して発電試験を行なった。セル電圧を0.2Vにして30分間低電圧運転を行い安定させた後、電流密度0A・cm−2、0.1A・cm−2におけるセルの端子電圧を測定した。
(参考例1)
ポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚25μm、気孔率36%)にクロロメチルスチレン95重量部、架橋剤ジビニルベンゼン5重量部および重合開始剤として過酸化ベンゾイル5重量部を混合した液を含浸させ、厚さ100μmのポリエステルフィルムで両面を覆い、0.3MPaの窒素雰囲気下で熱重合を行い、さらに得られた膜状物を6重量%のトリメチルアミンと25重量%のアセトンを含む水溶液中に室温で16時間浸漬し、次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に浸漬して対イオンを塩化物イオンから水酸化物イオンにイオン交換した後、イオン交換水で洗浄し燃料電池隔膜を得た。得られた隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
ポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚25μm、気孔率36%)にクロロメチルスチレン95重量部、架橋剤ジビニルベンゼン5重量部および重合開始剤として過酸化ベンゾイル5重量部を混合した液を含浸させ、厚さ100μmのポリエステルフィルムで両面を覆い、0.3MPaの窒素雰囲気下で熱重合を行い、さらに得られた膜状物を6重量%のトリメチルアミンと25重量%のアセトンを含む水溶液中に室温で16時間浸漬し、次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に浸漬して対イオンを塩化物イオンから水酸化物イオンにイオン交換した後、イオン交換水で洗浄し燃料電池隔膜を得た。得られた隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(参考例2)
クロロメチルスチレンが90重量部、架橋剤ジビニルベンゼンが10重量部である以外は(参考例1)と同様の手法で燃料電池用隔膜を得た。得られた隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
クロロメチルスチレンが90重量部、架橋剤ジビニルベンゼンが10重量部である以外は(参考例1)と同様の手法で燃料電池用隔膜を得た。得られた隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(参考例3)
クロロメチルスチレンが80重量部、架橋剤ジビニルベンゼンが20重量部である以外は(参考例1)と同様の手法で燃料電池用隔膜を得た。得られた隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
クロロメチルスチレンが80重量部、架橋剤ジビニルベンゼンが20重量部である以外は(参考例1)と同様の手法で燃料電池用隔膜を得た。得られた隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(参考例4)
クロロメチルスチレンが98重量部、架橋剤ジビニルベンゼンが2重量部である以外は(参考例1)と同様の手法で燃料電池用隔膜を得た。得られた隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表2に示した。
クロロメチルスチレンが98重量部、架橋剤ジビニルベンゼンが2重量部である以外は(参考例1)と同様の手法で燃料電池用隔膜を得た。得られた隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表2に示した。
上記より、炭化水素系陰イオン交換膜においては、架橋度を上げることでメタノール透過抵抗は向上するものの、陰イオン伝導性が低下し、陰イオン伝導性とメタノール透過抵抗とがtrade-offの関係にあることがわかる(参考例1〜4)。
(製造例1)
アクリル酸ブチルエステル20gにジ−t−ブチルパーオキサイド1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で15分間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等質量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリアクリル酸重合体を得た。このポリアクリル酸重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は1200であった。
アクリル酸ブチルエステル20gにジ−t−ブチルパーオキサイド1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で15分間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等質量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリアクリル酸重合体を得た。このポリアクリル酸重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は1200であった。
(製造例2)
アクリル酸ブチルエステル5gとメタクリル酸ブチルエステル15gの混合物にジ−t−ブチルパーオキサイド1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で15分間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体を得た。このポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。また、アクリル酸/メタクリル酸のモル比が、10.3/28.8であることも確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は2100であった。
アクリル酸ブチルエステル5gとメタクリル酸ブチルエステル15gの混合物にジ−t−ブチルパーオキサイド1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で15分間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体を得た。このポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。また、アクリル酸/メタクリル酸のモル比が、10.3/28.8であることも確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は2100であった。
(製造例3)
アクリル酸ブチルエステル5gとメタクリル酸ブチルエステル15gの混合物にジ−t−ブチルパーオキサイド0.3gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で1.5時間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体を得た。このポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は4700であった。
アクリル酸ブチルエステル5gとメタクリル酸ブチルエステル15gの混合物にジ−t−ブチルパーオキサイド0.3gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で1.5時間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体を得た。このポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は4700であった。
(製造例4)
アクリル酸ブチルエステル5gとメタクリル酸ブチルエステル15gの混合物にジ−t−ブチルパーオキサイド0.1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で3時間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体を得た。このポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。また、アクリル酸/メタクリル酸のモル比が、33.0/92.4であることも確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は6500であった。
アクリル酸ブチルエステル5gとメタクリル酸ブチルエステル15gの混合物にジ−t−ブチルパーオキサイド0.1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で3時間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体を得た。このポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。また、アクリル酸/メタクリル酸のモル比が、33.0/92.4であることも確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は6500であった。
(製造例5)
アクリル酸ブチルエステル5gとメタクリル酸ブチルエステル15gの混合物にジ−t−ブチルパーオキサイド0.1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で5時間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体を得た。このポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は7200であった。
アクリル酸ブチルエステル5gとメタクリル酸ブチルエステル15gの混合物にジ−t−ブチルパーオキサイド0.1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で5時間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体を得た。このポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は7200であった。
(製造例6)
アクリル酸ブチルエステル20gにジ−t−ブチルパーオキサイド1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で5分間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリアクリル酸重合体を得た。このポリアクリル酸重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は430であった。
アクリル酸ブチルエステル20gにジ−t−ブチルパーオキサイド1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で270℃で5分間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリアクリル酸重合体を得た。このポリアクリル酸重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は430であった。
(製造例7)
アクリル酸ブチルエステル5gとメタクリル酸ブチルエステル15gの混合物にジ−t−ブチルパーオキサイド0.1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で210℃で5時間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体を得た。このポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は12000であった。
アクリル酸ブチルエステル5gとメタクリル酸ブチルエステル15gの混合物にジ−t−ブチルパーオキサイド0.1gを溶解させ、内容積100mlのステンレス製圧力容器に入れ、オイルバス中で210℃で5時間反応させた。その後、反応物を取り出し、1モル/Lの水酸化ナトリウム溶液(溶媒:エタノールと水の等量混合物)中、40℃、24h反応させて加水分解反応を行いポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体を得た。このポリ(アクリル酸−メタクリル酸)ランダム共重合体について、1H−NMRで分析し、その分子鎖の両末端にエチレン性不飽和基を有するものと、片方の末端のみにエチレン性不飽和基を有するものの混合物からなる重合性酸性化合物であることを確認した。この重合性酸性化合物について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、重量平均分子量は12000であった。
(実施例1)
ポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚25μm、気孔率36%)にクロロメチルスチレン95重量部、架橋剤ジビニルベンゼン5重量部および重合開始剤として過酸化ベンゾイル5重量部を混合した液を含浸させ、厚さ100μmのポリエステルフィルムで両面を覆い、0.3MPaの窒素雰囲気下において80℃で5時間の熱重合を行い、さらに得られた膜状物を6重量%のトリメチルアミンと25重量%のアセトンを含む水溶液中に室温で16時間浸漬し、更にイオン交換水で洗浄を行って架橋型炭化水素系陰イオン交換膜(参考例1の陰イオン交換膜)を得た。
ポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚25μm、気孔率36%)にクロロメチルスチレン95重量部、架橋剤ジビニルベンゼン5重量部および重合開始剤として過酸化ベンゾイル5重量部を混合した液を含浸させ、厚さ100μmのポリエステルフィルムで両面を覆い、0.3MPaの窒素雰囲気下において80℃で5時間の熱重合を行い、さらに得られた膜状物を6重量%のトリメチルアミンと25重量%のアセトンを含む水溶液中に室温で16時間浸漬し、更にイオン交換水で洗浄を行って架橋型炭化水素系陰イオン交換膜(参考例1の陰イオン交換膜)を得た。
製造例1の重合性酸性化合物の濃度が3000ppmとなるように水溶液を調整し、該水溶液0.5Lに前述の陰イオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。次いで、陰イオン交換膜を取り出すことなく、この溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6時間反応させることにより陰イオン交換膜を改質した燃料電池用隔膜を得た。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3質量%の食塩水中に浸漬した。次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に浸漬して対イオンを塩化物イオンから水酸化物イオンにイオン交換した、さらにイオン交換水で洗浄した。調製した燃料電池用膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例2)
炭化水素系アニオン交換膜を処理する重合性酸性化合物水溶液の濃度を6000ppmとした以外は実施例1と同じ方法で燃料電池用隔膜を調製した。調製した隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
炭化水素系アニオン交換膜を処理する重合性酸性化合物水溶液の濃度を6000ppmとした以外は実施例1と同じ方法で燃料電池用隔膜を調製した。調製した隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例3)
製造例2の重合性酸性化合物の濃度が3000ppmとなるように水溶液を調整し、該水溶液0.5Lに参考例1の陰イオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。次いで、陰イオン交換膜を取り出すことなく、この溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6時間反応させることにより陰イオン交換膜を改質した燃料電池用隔膜を得た。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3質量%の食塩水中に浸漬した。次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に浸漬して対イオンを塩化物イオンから水酸化物イオンにイオン交換した、さらにイオン交換水で洗浄した。調製した燃料電池用隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
製造例2の重合性酸性化合物の濃度が3000ppmとなるように水溶液を調整し、該水溶液0.5Lに参考例1の陰イオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。次いで、陰イオン交換膜を取り出すことなく、この溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6時間反応させることにより陰イオン交換膜を改質した燃料電池用隔膜を得た。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3質量%の食塩水中に浸漬した。次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に浸漬して対イオンを塩化物イオンから水酸化物イオンにイオン交換した、さらにイオン交換水で洗浄した。調製した燃料電池用隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例4)
炭化水素系アニオン交換膜を処理する重合性酸性化合物水溶液の濃度を6000ppmとした以外は実施例3と同じ方法で燃料電池用隔膜を調製した。調製した隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
炭化水素系アニオン交換膜を処理する重合性酸性化合物水溶液の濃度を6000ppmとした以外は実施例3と同じ方法で燃料電池用隔膜を調製した。調製した隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(比較例1)
製造例6の重合性酸性化合物の濃度が3000ppmとなるように水溶液を調整し、該水溶液0.5Lに参考例1の陰イオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。次いで、陰イオン交換膜を取り出すことなく、この溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6時間反応させることにより陰イオン交換膜を改質した燃料電池用隔膜を得た。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3質量%の食塩水中に浸漬した。次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に浸漬して対イオンを塩化物イオンから水酸化物イオンにイオン交換した後、イオン交換水で洗浄した。調製した燃料電池用隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
製造例6の重合性酸性化合物の濃度が3000ppmとなるように水溶液を調整し、該水溶液0.5Lに参考例1の陰イオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。次いで、陰イオン交換膜を取り出すことなく、この溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6時間反応させることにより陰イオン交換膜を改質した燃料電池用隔膜を得た。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3質量%の食塩水中に浸漬した。次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に浸漬して対イオンを塩化物イオンから水酸化物イオンにイオン交換した後、イオン交換水で洗浄した。調製した燃料電池用隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例5)
参考例4の架橋型炭化水素系陰イオン交換膜を用い、重合性酸性化合物に製造例3で製造したものを用いた以外は実施例3と同じ方法により燃料電池用隔膜を調製した。調製した隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表2に示した。
参考例4の架橋型炭化水素系陰イオン交換膜を用い、重合性酸性化合物に製造例3で製造したものを用いた以外は実施例3と同じ方法により燃料電池用隔膜を調製した。調製した隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表2に示した。
(実施例6)
参考例4の架橋型炭化水素系陰イオン交換膜を用い、重合性酸性化合物に製造例4で製造したものを用いた以外は実施例3と同じ方法により燃料電池用隔膜を調製した。調製した隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表2に示した。
参考例4の架橋型炭化水素系陰イオン交換膜を用い、重合性酸性化合物に製造例4で製造したものを用いた以外は実施例3と同じ方法により燃料電池用隔膜を調製した。調製した隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表2に示した。
(実施例7)
参考例4の架橋型炭化水素系陰イオン交換膜を用い、重合性酸性化合物に製造例5で製造したものを用いた以外は実施例3と同様にして燃料電池用隔膜を調製した。調製した隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表2に示した。
参考例4の架橋型炭化水素系陰イオン交換膜を用い、重合性酸性化合物に製造例5で製造したものを用いた以外は実施例3と同様にして燃料電池用隔膜を調製した。調製した隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表2に示した。
(比較例2)
製造例7の重合性酸性化合物の濃度が3000ppmとなるように水溶液を調整し、該水溶液0.5Lに参考例4の陰イオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。次いで、陰イオン交換膜を取り出すことなく、この溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6時間反応させることにより陰イオン交換膜を改質した燃料電池用隔膜を得た。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3質量%の食塩水中に浸漬した。次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に浸漬して対イオンを塩化物イオンから水酸化物イオンにイオン交換した後、イオン交換水で洗浄した。調製した燃料電池用隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表2に示した。
製造例7の重合性酸性化合物の濃度が3000ppmとなるように水溶液を調整し、該水溶液0.5Lに参考例4の陰イオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。次いで、陰イオン交換膜を取り出すことなく、この溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6時間反応させることにより陰イオン交換膜を改質した燃料電池用隔膜を得た。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3質量%の食塩水中に浸漬した。次いで大過剰の0.5mol・L−1−NaOH水溶液中に浸漬して対イオンを塩化物イオンから水酸化物イオンにイオン交換した後、イオン交換水で洗浄した。調製した燃料電池用隔膜のアニオン交換容量、含水率、膜厚、(Cl0.3/Cl0.5)値、陰イオン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表2に示した。
1;電池隔壁
2;燃料流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;燃料室側拡散電極
5;酸化剤室側ガス拡散電極
6;固体高分子電解質(改質陰イオン交換膜)
7;燃料室
8;酸化剤室
2;燃料流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;燃料室側拡散電極
5;酸化剤室側ガス拡散電極
6;固体高分子電解質(改質陰イオン交換膜)
7;燃料室
8;酸化剤室
Claims (7)
- 架橋された炭化水素系陰イオン交換膜の少なくとも片面に、
重量平均分子量(但し、化合物が、その酸性部位がカウンターカチオンにより中和されている化合物である場合には、該カウンターカチオンの重さは分子量から除く)が700以上8000未満の重合性酸性化合物を含浸し、
該重合性酸性化合物を重合する工程を含む、燃料電池用隔膜の製造方法。 - 前記重合性酸性化合物を、前記炭化水素系陰イオン交換膜に、該交換膜の表面領域における重合性酸性化合物濃度が、該交換膜の中心領域における重合性酸性化合物濃度よりも高くなるように含浸する請求項1に記載の燃料電池用隔膜の製造方法。
- 前記重合性酸性化合物の有する酸性部位がカルボン酸基である請求項1に記載の製造方法。
- 前記重合性酸性化合物が、分子鎖の少なくとも一方の末端にエチレン性不飽和基を有する、ポリアクリル酸重合体、ポリメタクリル酸重合体、ポリ(アクリル酸−メタクリル酸)共重合体、およびこれらの重合体の塩類から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の燃料電池用隔膜の製造方法。
- 前記燃料電池が、直接液体燃料型燃料電池である請求項1〜4の何れかに記載の燃料電池用隔膜の製造方法。
- 架橋された炭化水素系陰イオン交換膜を母材とし、
該陰イオン交換膜の少なくとも片面における表面領域の方が、該陰イオン交換膜の中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる改質陰イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜。 - 前記改質陰イオン交換膜中のイオン交換可能な陰イオンをClにイオン交換し、
イオン交換後の膜の厚み方向におけるClイオンの積算強度をX線マイクロアナライザ分析により算出し、
該改質陰イオン交換膜の全厚をTとした際に、
該改質陰イオン交換膜の少なくとも片面の表面から深さ0.3Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域におけるClイオン積算強度(Cl0.5)との比(Cl0.3/Cl0.5)が0.05〜0.55である請求項6に記載の燃料電池用隔膜。
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