JP5551877B2 - 燃料電池用隔膜およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池用隔膜およびその製造方法に関し、詳しくは液体メタノール等を燃料とする直接液体燃料型燃料電池に好適に用いられる燃料電池用隔膜およびその製造方法に関する。特に、膜の表面領域が高度にイオンコンプレックス化され、メタノールクロスオーバー現象を抑制しつつ、高いプロトン伝導性を示す改質陽イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜およびその製造方法に関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤とを連続的に供給し、これらが反応したときの化学エネルギーを電力として取り出す発電システムである。燃料電池は、これに用いる電解質の種類によって、動作温度が比較的低いアルカリ型、リン酸型、固体高分子電解質型と、高温で動作する溶融炭酸塩型、固体酸化物電解質型とに大別される。
これらの中で、固体高分子電解質型燃料電池は、固体高分子電解質として作用する隔膜の両面に、触媒が担持された拡散電極を接合し、一方の拡散電極が存在する側の室(燃料室)に燃料である水素を、他方のガス拡散電極が存在する側の室(酸化剤室)に酸化剤である酸素や空気等の酸素含有ガスをそれぞれ供給し、両ガス拡散電極間に外部負荷回路を接続することにより、燃料電池として作用させる。
こうした固体高分子電解質型燃料電池の基本構造を図1に示す。図中、(1)は電池隔膜、(2)は燃料流通孔、(3)は酸化剤ガス流通孔、(4)は燃料室側拡散電極、(5)は酸化剤室側ガス拡散電極、(6)は固体高分子電解質を示す。この固体高分子電解質型燃料電池において、燃料室(7)では、供給された水素ガスからプロトン(水素イオン)と電子が生成し、このプロトンは固体高分子電解質(6)内を伝導し、他方の酸化剤室(8)に移動し、空気又は酸素ガス中の酸素と反応して水を生成する。この時、燃料室側拡散電極(4)で生成した電子が、外部負荷回路を通じて酸化剤室側ガス拡散電極(5)へと移動することにより電気エネルギーが得られる。
このような構造の固体高分子電解質型燃料電池において、通常使用されている燃料である水素が常温常圧で気体であり、その取り扱いが容易でないという理由から、燃料として水素に代えてメタノール、エタノール等を用いる直接液体燃料型燃料電池の開発が進められている。
直接液体燃料型燃料電池の隔膜の電解質膜としては、通常、陽イオン交換膜が使用される。そして、この陽イオン交換膜には、燃料であるメタノール等の透過性が低いこと、電気抵抗が小さいこと、保水性が高いこと、長期の使用に対して安定であること、物理的な強度が強いことなどが要求される。
従来、固体高分子電解質型燃料電池用隔膜として使用される陽イオン交換膜としては、パーフルオロカーボンスルホン酸膜が主に使用されている。しかし、この膜は、メタノール等の透過性が高く、酸化剤室側ガス拡散電極に達したメタノール等がその表面で酸素または空気と反応するために過電圧が増大し、出力電圧が低下するという問題があった。この現象は、「メタノールクロスオーバー」と呼ばれている。
これらの問題を克服するため、パーフルオロカーボンスルホン酸のような含フッ素重合体ではなく、炭化水素系重合体を母材とする陽イオン交換膜が種々検討されている。例えば、ポリオレフィン系やフッ素系樹脂製多孔質膜を基材として使用し、この基材に、陽イオン交換基を導入可能な官能基を有する単量体を特定の手法により含浸させ、次いで前記含浸させた単量体を重合させた後、得られた重合体に陽イオン交換基を導入する方法が提唱されている(特許文献1:特開2001−135328号公報、特許文献2:特開平11−310649号公報)。これらの文献には、この方法により、電気抵抗が小さく、水素ガスの透過性が小さい陽イオン交換膜が得られることが記載されている。
しかしながら、これらの方法で製造される陽イオン交換膜においても、直接メタノール型燃料電池用隔膜として用いた場合には、メタノールの透過性は十分に抑制されていない。その結果、燃料室側から酸化剤室側へメタノールが拡散し、電池性能が低下するという問題が残る。さらに、メタノールの透過性を抑制するため膜組成を変更すると、膜の電気抵抗が増大し、その結果電池出力が低下する問題が起こる。
メタノールの透過性が低い燃料電池用の隔膜として、基材となっている多孔質膜面に、さらに無機フィラーとイオン交換膜からなる層を有するイオン交換膜が提案されている(特許文献3:特開2004−217921号公報)。しかしながら、このイオン交換膜においても、メタノールの透過性は十分低減されていない。
また、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンなどの酸性基を分子内に有するポリマーと、ポリベンズイミダゾールなどの塩基性基を分子内に有するポリマーとを混合した、いわゆるポリイオンコンプレックス膜を直接メタノール型燃料電池用隔膜に用いる技術が報告されている(特許文献4:特表2003−535940号公報)。従来、このポリイオンコンプレックス膜は水素ガスを燃料とする燃料電池の隔膜に利用することが検討されてきたものである。この報告によれば、前記隔膜は高いプロトン伝導性、高温安定性、低いメタノール透過性を示すと記載されている。
本発明者らの検討によれば、上記隔膜は、確かに、それぞれ単独のポリマーからなる隔膜に比べればメタノールに対する膨潤安定性の改善効果やメタノール透過性の低減効果はある程度認められる。しかし、この隔膜は共有結合による架橋を有さない、いわゆる非架橋膜であるため、依然として、メタノール透過性の低減に関しては十分満足できるものではないことが明らかとなっている。
ポリイオンコンプレックス膜中の酸性基や塩基性基の含有量を少なくすることにより、メタノール透過性を低減させる方法も考えられる。しかし、この方法によれば、ポリイオンコンプレックス膜のプロトン伝導性が低下する問題がある。
さらに、上記のポリイオンコンプレックス膜の製造に際し、酸性基含有ポリマーと塩基性基含有ポリマーを混合する必要があるが、この際に沈殿が生じる。この問題を避けるため、上記方法においては、一旦上記両ポリマーの混合液を塩基性にして製膜し、その後得られた膜に酸処理を施している。しかし、この方法は煩雑である。
この他、主鎖の反復単位中に、ベンズイミダゾール構造を有し、更に主鎖同士を架橋させることも可能なポリベンズイミダゾール系ポリマーが、耐熱性に優れる等の理由から、燃料電池用隔膜の素材となるイオン交換樹脂として採用されている。その耐熱性をさらに向上させる目的から、主鎖中に共存するベンゼン環にスルホン酸基を導入することが提案されている(特許文献5:特開2004−131533号公報)。また、こうしたポリベンズイミダゾール系ポリマーは、その主鎖に含まれるイミダゾール環のNH基に、炭化水素基を介してスルホン酸基等の酸性基を導入することもできるので、このようにして酸性基を導入して製造したイオン交換樹脂を用いて、燃料電池用の隔膜を製造することも提案されている(特許文献6:特表2002−535467号公報)。
これらの酸性基を導入したポリベンズイミダゾール系ポリマーにおいては、導入した酸性基と主鎖のイミダゾール環とが、ある程度はイオンコンプレックスを形成していると推察される。しかし、このようにイミダゾール環が主鎖に含まれる構造の場合は、反応の自由度が少なく、該イオンコンプレックスを高率に形成することは困難である。したがって、これらの手法により形成された燃料電池用の隔膜でも、そのメタノール透過性は今一歩満足できるレベルで低減させることはできていない。
イオンコンプレックスが高率で形成されてなる燃料電池用隔膜を得る手段として、架橋型陽イオン交換樹脂が多孔質膜に充填されてなるイオン交換原膜に、陰イオン交換基を有する比較的低分子量の重合性単量体を浸透させ、ついで浸透させた重合性単量体を重合させる方法が提案されている(特許文献7:WO2006/028292)。この方法によれば、陽イオン交換膜中にイオンコンプレックスが高率で形成されるため、メタノール透過性を顕著に低減できる。しかし、一般に、メタノール透過抵抗とプロトン伝導性とを同時に向上することは困難である。すなわち、メタノール透過抵抗の高いイオン交換膜では、プロトン伝導性が低下する傾向にある。特許文献7に記載の陽イオン交換膜も同様であり、メタノール透過抵抗は顕著に向上するものの、プロトン伝導性は必ずしも満足できるレベルではない。
また、特に高温低湿状態でのプロトン伝導性を改善する技術として、特許文献8(特開2001−236973号公報)が提案されている。特許文献8には、酸性または塩基性部位を持つ主ポリマーに、主ポリマーと共に酸/塩基複合構造を作ることが可能な副ポリマーを、主ポリマーの酸性または塩基性部位以外の部位に対して多く導入してなる固体高分子電解質膜が開示されている。しかし、この固体高分子電解質膜では、主ポリマーと副ポリマーとが膜全体に均一に分散した構造であるため、前記特許文献7と同様に、プロトン伝導性の向上と、メタノール透過抵抗の向上とは両立し難い。
プロトン伝導性を維持しつつ、メタノール透過抵抗を向上する技術として、特許文献9(特開2001−167775号公報)が提案されている。特許文献9では、電解質膜表面の導電性を、膜内部の導電性よりも低く設定することを特徴としている。電解質膜表面の伝導性を低下する手段として、特許文献9では、(1)電解質膜表面に電子線を照射し膜表面を改変すること、あるいは(2)高イオン伝導膜表面に、低メタノール透過性、低イオン伝導性の膜を設けることが提案されている。
しかし、(1)の手法は、膜自体が損傷を受け、膜強度が低下する。また、(2)の手法では、燃料に対する寸法変化率が大きく異なる場合には膜同士の接着強度が充分ではないなどの問題があり、取りうる組合せに制限が生じる結果、隔膜性能の制御にも制限が生じる。
なお、特許文献10(特開昭56−50933号公報)には、重合性塩基性化合物を陽イオン交換膜の少なくとも片面に含浸し、これを重合して得られる改質陽イオン交換膜が開示されている。この改質陽イオン交換膜は、主として透析用を意図したものである。
特開2001−135328号公報 特開平11−310649号公報 特開2004−217921号公報 特表2003−535940号公報 特開2004−131533号公報 特表2002−535467号公報 WO2006/028292 特開2001−236973号公報 特開2001−167775号公報 特開昭56−50933号公報
本発明は上記のような従来技術に鑑みてなされたものであって、電解質膜の耐久性、プロトン伝導性がほぼ維持され、かつメタノール透過抵抗の改善された改質陽イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜を製造しうる方法を提供することを目的としている。
かかる課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)架橋された炭化水素系陽イオン交換膜の少なくとも片面に、
重量平均分子量(但し、化合物が、その塩基性部位がカウンターアニオンにより中和されている化合物である場合には、該カウンターアニオンの重さは分子量から除く)が700以上8000未満の重合性塩基性化合物を含浸し、
該重合性塩基性化合物を重合する工程を含む、燃料電池用隔膜の製造方法。
(2)前記重合性塩基性化合物を、前記炭化水素系陽イオン交換膜に、該交換膜の表面領域における重合性塩基性化合物濃度が、該交換膜の中心領域における重合性塩基性化合物濃度よりも高くなるように含浸する(1)に記載の製造方法。
(3)前記重合性塩基性化合物が、下記式(A)で示される化合物である(1)に記載の製造方法。
Figure 0005551877
(式中、nの平均値が4.8〜41.2、
はCHまたは(CHであり、
,R,Rはそれぞれ独立に(CH(mは1〜18の整数)、
Figure 0005551877
であり、
はH,CH
Figure 0005551877
であり、
,R,R,R,R10,R11,R12,R13はそれぞれ独立にH,CHまたはCHCHであり、
XはCl,Br,I,OHまたは1/2SOである。)
(4)前記燃料電池が、直接液体燃料型燃料電池である(1)〜(3)の何れかに記載の製造方法。
(5)架橋された炭化水素系陽イオン交換膜を母材とし、
該陽イオン交換膜の少なくとも片面における表面領域の方が、該陽イオン交換膜の中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる改質陽イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜。
(6)前記改質陽イオン交換膜中のイオン交換可能な陽イオンをCsにイオン交換し、
イオン交換後の膜の厚み方向におけるCsイオンの積算強度をX線マイクロアナライザ分析により算出し、
該改質陽イオン交換膜の全厚(T)とした際に、
該改質陽イオン交換膜の少なくとも片面の表面から深さ0.3Tまでの領域におけるCsイオン積算強度(Cs0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域におけるCsイオン積算強度(Cs0.5)との比(Cs0.3/Cs0.5)が0.05〜0.55である(5)に記載の燃料電池用隔膜。
本発明によれば、電解質膜の耐久性、プロトン伝導性がほぼ維持され、かつメタノール透過抵抗の改善された改質陽イオン交換膜からなる燃料電池用隔膜が提供される。この改質陽イオン交換膜は、膜の表面領域が高度にイオンコンプレックス化され、メタノールクロスオーバー現象を効果的に抑制しつつ、高いプロトン伝導性を示す。したがって、このような改質陽イオン交換膜は、特に液体メタノール、液体エタノール等を燃料とした直接液体燃料型燃料電池用の隔膜として好ましく用いられる。
固体高分子型燃料電池の基本構造を示す概念図である。 Csイオン交換後の改質炭化水素系陽イオン交換膜についてのEPMA分析によるCsイオン強度スペクトルの典型例を示す。
以下、本発明について、その最良の形態を含めてさらに詳細に説明する。
本発明に係る燃料電池用隔膜の製造方法は、架橋された炭化水素系陽イオン交換膜に、重合性塩基性化合物を含浸し、
該重合性塩基性化合物を重合する工程を含む。
(架橋された炭化水素系陽イオン交換膜)
架橋された炭化水素系陽イオン交換膜は、主鎖及び側鎖に直接、陽イオン交換基が結合している炭化水素系重合体の架橋物からなる膜であってもよく、また、炭化水素系重合体中に、架橋された陽イオン交換重合体が不均質に分散されたものであってもよい。後者の炭化水素系重合体中に架橋陽イオン交換重合体が不均質に分散された架橋炭化水素系陽イオン交換膜は、炭化水素系重合体が補強部分として働くため電気抵抗などを犠牲にすることなく陽イオン交換膜の物理的強度を高めることができるといった点から本発明において好適に用いることができる。
陽イオン交換基は、たとえばスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、チオール基、重金属との間にキレート構造を作り得るような活性基等である。また、陽イオン交換基は、水素型でもよいし、塩型でもよく、さらにまた塩類、酸、塩基その他の物質が陽イオン交換膜中に含まれていても良い。
以下には後者の炭化水素系重合体中に、架橋された陽イオン交換重合体が不均質に分散された炭化水素系陽イオン交換膜について説明する。炭化水素系重合体中に、架橋された陽イオン交換重合体が不均質に分散された架橋炭化水素系陽イオン交換膜は、炭化水素系重合体からなる多孔質膜の空隙部分に、架橋陽イオン交換重合体が存在するものが特に好適である。
炭化水素系重合体よりなる多孔質膜の形態は特に限定されず、多孔質フィルム、織布、不織布、紙等が制限なく使用でき、材質としても熱可塑性重合体組成物、熱硬化性重合体組成物、又はそれらの混合物でも構わないが、その製造が容易であるばかりでなく架橋炭化水素系陽イオン交換重合体との密着強度が高いという観点から、熱可塑性重合体組成物であることが好ましい。当該熱可塑性重合体組成物としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、5−メチル−1−ヘプテン等のα−オレフィンの単独重合体または共重合体等のポリオレフィン重合体;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−オレフィン共重合体等の塩化ビニル系重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド重合体等が例示される。これらの中でも特に、機械的強度、化学的安定性、耐薬品性に優れ、架橋炭化水素系イオン交換重合体との馴染みがよいことからポリオレフィン重合体を用いるのが好ましい。ポリオレフィン重合体としては、ポリエチレン又はポリプロピレン重合体が特に好ましく、ポリエチレン重合体が最も好ましい。さらに適度な平均孔径を有すものの入手が容易で、かつ強度に優れる点でポリオレフィン重合体製の多孔質フィルムであることが好ましく、ポリエチレン重合体製の多孔質フィルムであることが特に好ましい。
このような多孔質フィルムは、例えば特開平9−212964号公報、特開2002−338721号公報等に記載の方法によって得ることもできるし、あるいは、市販品(例えば、旭化成ケミカルズ「ハイポア」、宇部興産「ユーポア」、東燃タピルス「セテラ」、日東電工「エクセポール」、三井化学「ハイレット」等)として入手することも可能である。
炭化水素系重合体からなる多孔質膜が有する孔の平均径は、炭化水素系陽イオン交換膜の電気抵抗や機械的強度を勘案すると、一般には0.005〜5.0μmであることが好適であり、0.01〜1.0μmであることがより好ましく、0.015〜0.4μmであることが最も好ましい。平均孔径が0.005μm以下の多孔質膜を使用して隔膜を製造する場合は、多孔質膜の空隙に充填されるイオン交換樹脂量が不足し、充分なプロトン伝導性が得られないおそれがある。平均孔径が5.0μm以上の多孔質膜を使用して隔膜を製造する場合は、メタノール透過性の低い隔膜を得ることが困難になる。
また、炭化水素系重合体よりなる多孔質膜の空隙率は、炭化水素系陽イオン交換膜の電気抵抗や機械的強度を勘案すると、20〜95%であることが好ましく、30〜90%であることがより好ましく、30〜65%であることが最も好ましい。また、多孔膜の透気度(JIS P−8117)は1500秒以下、特に1000秒以下であることが好ましい。多孔質膜の表面平滑性は、粗さ指数で表して10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。この構成によりガス拡散電極との密着性が高くなり、より高出力の燃料電池用隔膜が得られる。
架橋炭化水素系陽イオン交換膜は、如何なる方法により製造しても良いが、一般には、以下の方法により製造することが好適である。即ち、陽イオン交換基が導入可能な官能基または陽イオン交換基を有する重合性単量体、架橋性単量体および重合開始剤からなる単量体組成物を、炭化水素系重合体からなる多孔質膜の空隙部分に含浸させた後、上記の単量体組成物を重合し、必要に応じて陽イオン交換基を導入する方法が挙げられる。
この製造方法において、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する重合性単量体または陽イオン交換基を有する重合性単量体としては、従来公知である陽イオン交換重合体の製造において用いられている炭化水素系単量体が特に限定されずに使用される。具体的には、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する重合性単量体としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−ハロゲン化スチレン類等が挙げられる。また、陽イオン交換基を有する重合性単量体としては、α−ハロゲン化ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸系単量体;メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸系単量体;ビニルリン酸等のホスホン酸系単量体、それらの塩類およびエステル類等が用いられる。
また、架橋性単量体としては、特に制限されるものではないが、例えば、ジビニルベンゼン類、ジビニルスルホン、ブタジエン、クロロプレン、ジビニルビフェニル、トリビニルベンゼン類、ジビニルナフタレン、ジアリルアミン、ジビニルピリジン類等のジビニル化合物が用いられる。
さらに、上記した陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体や架橋性単量体の他に、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な他の単量体や可塑剤類を添加しても良い。こうした他の単量体としては、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メチルスチレン、アクロレイン、メチルビニルケトン、ビニルビフェニル等が用いられる。また、可塑剤類としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメチルイソフタレート、ジブチルアジペート、トリエチルシトレート、アセチルトリブチルシトレート、ジブチルセバケート等が用いられる。
重合開始剤としては、従来公知のものが特に制限なく使用される。こうした重合開始剤の具体例としては、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド等の有機過酸化物が用いられる。
単量体組成物を構成する各成分の配合割合は、特に限定はされないが、一般には、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体100重量部に対して、架橋性単量体を0.1〜60重量部、好適には1〜50重量部、これらの単量体と共重合可能な他の単量体を0〜100重量部、可塑剤類を添加する場合は0〜50重量部使用するのが好適である。また、重合開始剤は、全重合性単量体100重量部に対して、0.1〜20重量部、好適には0.5〜10重量部配合させるのが好ましい。
母材である炭化水素系重合体の多孔質膜への上記単量体組成物の充填方法は、特に限定されない。例えば、単量体組成物を炭化水素系重合体の多孔質膜に塗布やスプレーしたり、あるいは、多孔質膜を単量体組成物中に浸漬する方法などが例示される。浸漬する方法による場合、浸漬時間は多孔質膜の種類や懸濁液の組成にもよるが、一般的には0.1秒〜十数分である。
単量体組成物を炭化水素系重合体の多孔質膜に充填させたのち重合する方法は特に限定されず、用いた重合性単量体及び重合開始剤に応じて適宜公知の方法を採用すればよい。
重合開始剤として前記有機過酸化物を用いる場合は、重合方法は加熱により重合させる方法(熱重合)が一般的である。この方法は、操作が容易で、また比較的均一に重合させることができるので、他の重合方法よりも好ましい。重合に際しては、単量体組成物を空隙部に侵入させた多孔質膜を、ポリエステル等のフィルムにより覆って、フィルムの外部方向から内部方向に向って加圧した状態を保つことが好ましい。この状態で重合させることにより、酸素による重合阻害を防止し、得られる隔膜の表面を平滑にすることができる。
更に、フィルムで前記多孔質膜の表面を覆って加圧することにより、多孔質膜内に過剰に含浸されている単量体組成物が取り除かれ、薄く均一な重合膜が得られる。
重合温度は特に制限されず、公知の重合温度条件を適宜選択すればよい。一般的には50〜150℃が好ましく、60〜120℃がより好ましい。重合時間は10分〜10時間が好ましく、30分〜6時間がより好ましい。
以上のように重合されて得られる膜状物は、必要に応じてこれを、公知の例えばスルホン化、クロルスルホン化、ホスホニウム化、加水分解等の処理により所望の陽イオン交換基を導入して、架橋炭化水素系陽イオン交換膜とすることができる。
本発明で使用する架橋陽イオン交換膜のイオン交換容量は、好ましくは0.2〜5mmol/g、さらに好ましくは0.5〜3mmol/gである。また、陽イオン交換膜は、乾燥によるプロトンの伝導性の低下が生じ難いように含水率は7%以上、好適には10%以上であるのが好ましい。一般には含水率は7〜90%程度で保持される。含水率の制御は、陽イオン交換基の種類、陽イオン交換容量及び架橋度を適宜に設定して行う。さらに陽イオン交換膜は、膜抵抗を低く抑えるという観点及び支持膜として必要な機械的強度を付与するという観点から、通常、5〜150μmの厚みを有するものが好ましく、より好ましくは7〜90μmの厚みを有するものが望ましい。
(重合性塩基性化合物)
本発明では、上記架橋炭化水素系陽イオン交換膜に、特定分子量の重合性塩基性化合物の溶液を含浸し、これを重合する。
重合性塩基性化合物とは、分子内に重合性基と塩基性部位とを有する化合物である。重合性基は、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合等を含む基であり、重合性の良さや入手の容易性等の観点から炭素−炭素二重結合が好ましく、具体的には、ビニルベンジル基、ビニル基、アリル基等があげられる。これらの重合性基の分子内における存在位置は特に限定はされず、重合性塩基性化合物の主鎖の末端あるいは側鎖に結合してなる。重合性塩基性化合物1分子当たりの重合性基の数は、好ましくは1個以上、さらに好ましくは2個以上であり、さらに、重合性基の数の上限は、通常、10個以下、好ましくは5個以下である。また、塩基性部位とは、たとえば、1〜3級アミノ基構造や、第4級アンモニウム塩基構造、第3級アンモニウム塩基構造、第2級アンモニウム塩基構造、第1級アンモニウム塩基構造、ホスホニウム塩基構造、スルホニウム塩基構造等のオニウム塩基構造であり、イオンコンプレックスの形成能の高さからオニウム塩基構造が好ましく、特に、第4級アンモニウム塩基構造が最も好ましい。このような塩基性部位は、通常は重合性塩基性化合物の主鎖中に存在し、塩素イオン、臭素イオン、よう素イオン等のハロゲンイオンなどのカウンターアニオンにより中和されている。
重合性塩基性化合物の重量平均分子量は、700以上8000未満、好ましくは700以上5000以下、さらに好ましくは700以上3000以下、最も好ましくは800以上2500以下である。ただし、この重量平均分子量は、重合性塩基性化合物が、上記したように主鎖中の塩基性部位がカウンターアニオンにより中和されている化合物である場合には、該カウンターアニオンの重さは分子量から除いて求めた値にする。このようにイオン結合したカウンターアニオンの部分は、重合性塩基性化合物を陽イオン交換膜の表面に塗布する際において、その浸透性に余り影響せず、しかもこれらの重合性塩基性化合物は、適当な溶媒に溶解させて塗布するのが好ましく、この場合、これらカウンターアニオンは電離しており、上記浸透性に対する影響はさらに弱まるため、本発明では、係るカウンターアニオンの重さは、使用する重合性塩基性化合物の重量平均分子量を求める際に除くものとする。
なお、上記重合性塩基性化合物の重量平均分子量が3000を越えて8000未満である比較的大きめのものの場合、陽イオン交換膜の表面に塗布した際における浸透性は、該重量平均分子量が前記値より低分子量のものを用いた場合に比較して低下する傾向がある。したがって、より十分に重合性塩基性化合物が含浸したものにするためには、該化合物が浸透し易いように、使用する陽イオン交換膜として、架橋度ができるだけ低かったり、基材の多孔質膜ができるだけ高空隙率のものを使用したり、或いは陽イオン交換膜に含浸させる重合性塩基性化合物の溶液または分散液として該重合性塩基性化合物ができるだけ高濃度のものを使用する等するのが好ましい。例えば、上記使用する陽イオン交換膜として、架橋度が低いものを用いるのであれば、前記陽イオン交換膜は、原料の単量体組成物として、陽イオン交換基が導入可能な官能基を有する単量体または陽イオン交換基を有する単量体100重量部に対して、架橋性単量体を0.1〜60重量部配合したものを使用するのが一般的であるが、斯様に含浸する重合性塩基性化合物の重量平均分子量が大きい場合は、上記架橋性単量体の配合量が3重量部以下、特に好適には2.5重量部以下のものを適用するのが良好である。(同様に、使用する陽イオン交換膜として、基材の多孔質膜が高空隙率のものを用いるのであれば、該多孔質膜として空隙率が40%以上のものを用いるのが良好であり、陽イオン交換膜に浸漬させる重合性塩基性化合物の溶液または分散液として該重合性塩基性化合物が高濃度のものを用いるのであれば、その濃度が4000ppm以上のするのが良好である)
使用する重合性塩基性化合物の重量平均分子量が大きすぎると、重合性塩基性化合物の陽イオン交換膜への含浸が不充分になり、重合性塩基性化合物の重合を行っても、表面領域に充分な厚さのイオンコンプレックス化領域が形成されない。この結果、所望のメタノール透過抵抗の向上が達成されない。一方、重合性塩基性化合物の重量平均分子量が小さすぎると、重合性塩基性化合物が陽イオン交換膜中に多量かつ均一に含浸され、重合性塩基性化合物の重合を行うと、イオン交換膜の大部分がイオンコンプレックス化される。この結果、メタノール透過抵抗は向上するものの、プロトン伝導性が低下し、本発明の目的は達成されない。
このような重合性塩基性化合物としては、第4級アンモニウム塩基構造と、1個以上のビニルベンジル基とを有する化合物が好ましく用いられる。かかる重合性塩基性化合物のさらに具体的な例としては、下記式(A)にて示される化合物があげられる。
Figure 0005551877
式中、n、R〜R13は、上記した重合性塩基性化合物の重量平均分子量や反応性および合成の容易性を考慮の上、適宜に選択される。特に式(A)においては、前記重量平均分子量のものとするには、nの平均値は.通常、4.8〜41.2であり、好ましくは4.8〜35.2であり、さらに好ましくは4.8〜33.2であり、最も好ましくは5.8〜27.2である。なお、本発明で使用する重合性塩基性化合物は、n値およびR〜R13が異なる複数の化合物の混合物であってもよく、この場合、平均組成が上記(A)式で示されるものであればよい。
はCHまたは(CHである。
,R,Rはそれぞれ独立に(CH(mは1〜18、好ましくは(2)〜(15)の整数)、
Figure 0005551877
である。
はH,CH
Figure 0005551877
である。
〜R13はそれぞれ独立にH,CHまたはCHCHである。
XはCl,Br,I,OHまたは1/2SOである。
上記のうち、R,R,Rは、交換膜の表面領域における重合性塩基性化合物濃度をより高くする観点から、
Figure 0005551877
が特に好ましく、
さらに、Rは重合性が高いことから
Figure 0005551877
であることが特に好ましい。
式(A)で示される重合性塩基性化合物の製法は、特に限定はされず、上記した所定の構造を有する化合物を通常の合成手法にしたがって合成すれば良い。また市販品を使用してもよい。
式(A)で示される代表的な重合性塩基性化合物の製法を以下に示す。
一般には下記式(B)の化合物と、ビニルベンジルハライド、ビニルフェニルエチルハライド等とを反応させるか、あるいは下記式(C)の化合物と、ビニルフェニルアルキルN,N−ジアルキルアミン等とを反応させることに合成すればよい。
Figure 0005551877
式(B),(C)において、R〜R、R〜R13およびXは、式(A)におけるR〜R、R〜R13およびXに相当し、YはCl,Br,Iまたはエポキシ基である。
式(A)の化合物のうち、Rがビニルベンジル基であるジビニル化合物については、式(B)の化合物1モルにビニルベンジルハライド2モルを反応させることによって容易に合成できる。さらにまた、式(A)においてRがH、CHまたはPh−CH(Phはベンゼン環)の化合物は、式(B)の化合物1モルに、ビニルベンジルハライド1モルを反応させた後、塩酸、ヨウ化メチル、ベンジルクロライド等を反応させることによって得られる。また、式(A)の化合物の合成方法として、式(C)の化合物1モルと、ビニルフェニルアルキルN,N−ジアルキルアミン2モルとを反応させるか、または式(C)の化合物1モルと、ビニルフェニルアルキルN,N−ジアルキルアミン1モルとを反応させた後、α,ω−tert−ジアミンを反応させ、次いで塩酸、ヨウ化メチル、ベンジルクロライド等を反応させることによって得られる。
これらの反応は無溶媒、または水、アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキサイド、ベンゼン、クロロホルムまたはそれらの混合溶媒中、任意の濃度で適宜実施すればよい。反応の温度は、一般に0〜100℃であり、好ましくは5〜80℃である。また、前記反応は、一般に、ハイドロキノンなどのラジカル重合禁止剤の存在下に行うことが好ましい。
(含浸)
本発明では、上記の重合性塩基性化合物を、前記架橋炭化水素系陽イオン交換膜の少なくとも片面に含浸する。重合性塩基性化合物は、架橋炭化水素系陽イオン交換膜の両面に含浸されてもよく、また片面のみに含浸されてもよいが、好ましくは両面に含浸される。
重合性塩基性化合物を、架橋炭化水素系陽イオン交換膜の少なくとも片面に含浸する方法は、特に限定的ではなく公知の方法をそのまま採用できる。一般に工業的に採用される代表的な方法を例示すれば次の方法がある。
たとえば重合性塩基性化合物をそのまま、または適当な溶媒に溶解または分散させ、架橋炭化水素系陽イオン交換膜の表面に塗布または噴霧する方法が挙げられる。さらに、重合性塩基性化合物を含む溶液または分散液に架橋炭化水素系陽イオン交換膜を浸漬し、必要に応じて過剰に含浸された重合性塩基性化合物を取り除く方法が、重合性塩基性化合物の交換膜の表面領域への含浸性に優れるため特に好ましい。
重合性塩基性化合物を溶液または分散しうる溶媒としては、たとえば水、メタノール、エタノール等の単独または混合溶媒があげられる。この際の溶液または分散液の濃度は特に限定はされないが、浸漬を行う場合には、溶液または分散液の濃度は、好ましくは500〜8000ppm、さらに好ましくは2000〜7000ppmである。また、塗布または噴霧の場合、好ましくは100〜5000ppm、さらに好ましくは500〜4000ppmである。
さらに、架橋炭化水素系陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを交互に電気透析槽に組み込んだ後、通電下あるいは非通電下で、重合性塩基性化合物を含む溶液を流通する手段を採用することもできる。この際の重合性塩基性化合物含有溶液の濃度は、好ましくは50〜2000ppm、さらに好ましくは100〜1000ppmである。
本発明では、重合性塩基性化合物として特定分子量の化合物を用いているため、重合性塩基性化合物は、架橋炭化水素系陽イオン交換膜の表面領域の方が膜の中心領域よりも高濃度になるように含浸される。架橋炭化水素系陽イオン交換膜における重合性塩基性化合物の含浸深さおよび濃度を定量することは困難であるが、後述するように、含浸された重合性塩基性化合物を重合して得られる改質陽イオン交換膜において、表面領域の方が中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されることから、架橋炭化水素系陽イオン交換膜中に、重合性塩基性化合物の濃度勾配が形成されることが確認できる。
架橋炭化水素系陽イオン交換膜中の表面領域に高濃度で重合性塩基性化合物を含浸させるための条件は特に限定はされず、重合性塩基性化合物の分子量、含浸時の温度、時間、架橋炭化水素系陽イオン交換膜の架橋度等を考慮して適宜に設定すればよい。一般に、重合性塩基性化合物の分子量が小さいほど重合性塩基性化合物の含浸深さは深くなり、膜の内部にまで均一に重合性塩基性化合物が含浸される傾向にある。一方、重合性塩基性化合物の分子量が大きいと含浸深さは浅くなり、表面領域における濃度が中心領域に比べて相対的に高くなる。また、含浸時の温度が高いと、含浸深さは深くなり、低いと浅くなる。
また、含浸時間が長いと、含浸深さは深くなり、短いと浅くなる。また、架橋炭化水素系陽イオン交換膜の架橋度が低いと含浸深さは深くなり、高いと浅くなる。
(重合)
次いで、架橋炭化水素系陽イオン交換膜に含浸された重合性塩基性化合物の重合を行い、架橋炭化水素系陽イオン交換膜中の表面領域をイオンコンプレックス化し、改質陽イオン交換膜を得る。
重合性塩基性化合物の重合法、条件については、特に限定されることはなく、たとえばラジカル重合、カチオン重合などの公知の方法で行うことができる。
たとえば、重合性塩基性化合物が含浸された架橋炭化水素系陽イオン交換膜を、ラジカル重合開始剤またはカチオン重合開始剤を含む溶液と接触させることにより該重合性塩基性化合物を重合することができる。
また、使用する重合開始剤の種類によっては、低温下に重合性塩基性化合物と重合開始剤とを含む溶液を、架橋炭化水素系陽イオン交換膜の少なくとも一方の面に含浸し、その後、温度を上昇させることで、重合性塩基性化合物を重合する手段を採用することもできる。
さらに、重合性塩基性化合物を架橋炭化水素系陽イオン交換膜の両面に含浸し、次いで片面のみを重合開始剤と接触させる手段も用いられる。なお、重合性塩基性化合物の重合は、上記いずれの場合も、窒素雰囲気下に行うことが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、たとえば過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキソ二硫酸カリウム、ベルオキソ二硫酸アンモニウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化水素などの過酸化物;
アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2−アミジノプロパン、塩酸塩などのアゾ化合物;
さらには、過酸化水素−アンモニア、エチルアミン、Fe(II)塩、ペルオキソ二硫酸塩−亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリエタノールアミン、など;過塩素酸ナトリウム−亜硫酸ナトリウムなどのレドックス開始剤も好適に用いられる。
カチオン重合開始剤としては、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化第二スズ、塩化チタン、三フッ化ホウ素、五塩化アンチモンなどのハロゲン化合物;
リン酸、硫酸、クロロスルホン酸、過塩素酸などのプロトン酸;
トリエチルアルミニウムなどの有機金属化合物が用いられる。
また、電離性の放射線を照射して重合してもよい。
重合性塩基性化合物の重合温度は、該重合性塩基性化合物の分解温度以下あるいは使用する溶媒の沸点以下で実施すればよい。また重合時間は、使用する溶媒の種類、重合温度等によって異なり一概に規定できないが、一般にレドックス開始剤を用いる場合には5分〜10時間程度であり、ラジカル重合開始剤を用いる場合には3時間〜3日程度が好適である。
(対イオン交換)
以上により製造した改質陽イオン交換膜において、膜内の陽イオン交換基の一部は、対イオンが、不純物等に由来してナトリウムイオン等の金属イオンになっているのが一般的である。当該改質陽イオン交換膜は、プロトン伝導型の燃料電池用隔膜として用いることから、燃料電池の高出力を得やすいという点で、係る改質陽イオン交換膜は、こうした金属イオンが対イオンの陽イオン交換基について、該対イオンを水素イオンにイオン交換する操作を施してから使用するのが好ましい。
陽イオン交換基の対イオンを水素イオンにイオン交換する方法としては、定法に従えばよいが、通常、上記改質陽イオン交換膜を塩酸や硫酸などの酸水溶液中に浸漬することで行われる。酸水溶液の酸濃度は、特に限定はされず、0.1〜2mol/L程度であり、また浸漬温度は5〜60℃、浸漬時間は0.5〜24時間程度である。この対イオン交換は、陽イオン交換膜において重合性塩基性化合物を含浸する前に行うことも可能であるが、重合性塩基性化合物の含浸やその後の重合時などに不純物などの混入も想定されることから、改質陽イオン交換膜として得た後の段階で行うことが好ましい。
(改質炭化水素系陽イオン交換膜)
上記のような工程を経て、架橋炭化水素系陽イオン交換膜の表面領域の方が中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる改質炭化水素系陽イオン交換膜が得られる。
ここで、イオンコンプレックス化とは、母材である架橋炭化水素系陽イオン交換膜中の陽イオン交換基が、重合性塩基性化合物の重合体(以下、「塩基性重合体」と記載する)が有する塩基性部位により中和され、陽イオン交換能を失っている状態を示す。本発明の改質炭化水素系陽イオン交換膜においては、母材である架橋炭化水素系陽イオン交換膜の表面領域における重合性塩基性化合物濃度が、該交換膜の中心領域における重合性塩基性化合物濃度よりも高くなるように重合性塩基性化合物を含浸し、重合性塩基性化合物を重合している。このため、表面領域において、塩基性重合体由来の塩基性部位が高濃度で存在することなる。この結果、母材の陽イオン交換基は、膜の表面領域において、塩基性重合体由来の塩基性部位による中和を受け不活性化しやすい。一方、陽イオン交換膜の中心領域では、塩基性重合体由来の塩基性部位の濃度が低いため、イオン交換能を維持する。
したがって、イオンコンプレックス化されイオン交換能を喪失した基と、なおイオン交換能を有する基の分布状態を測定することで、膜中のイオンコンプレックス化の程度を評価できる。本発明では、改質炭化水素系陽イオン交換膜中のイオン交換可能な陽イオンをCs(セシウム)にイオン交換し、イオン交換後の膜の厚み方向におけるCsイオンの積算強度をX線マイクロアナライザ分析(EPMA)により測定することで、イオンコンプレックス化されたイオン交換基の分布状態を評価する。
イオンコンプレックス化されイオン交換能を喪失した基ではCsへのイオン交換が行われず、一方イオン交換能を有する基ではCsへのイオン交換が行われるため、Csの分布が少ない領域が、より高度にイオンコンプレックス化された領域を示す。
本発明の改質炭化水素系陽イオン交換膜においては、膜の少なくとも片面における表面領域の方が、該膜の中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる。なお、膜の両面に高度にイオンコンプレックス化された領域が形成されていてもよい。
Csイオン交換後の膜について、膜表面の比較的浅い領域におけるCsイオン積算強度と、膜表面から中心部に至る領域のCsイオン積算強度を対比することで、膜の厚み方向でのイオンコンプレックス化領域の分布状態を確認できる。
本明細書では、改質炭化水素系陽イオン交換膜の全厚(T)とし、Csイオン交換後の膜について、膜表面から深さ0.3Tまでの領域におけるCsイオン積算強度(Cs0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域におけるCsイオン積算強度(Cs0.5)との比(Cs0.3/Cs0.5)に基づいて、イオンコンプレックス化領域の分布状態を評価する。
ちなみに、イオンコンプレックス化されていない架橋陽イオン交換膜(未処理膜)では、膜中のすべての陽イオン交換基が陽イオン交換能を有するため、すべての陽イオン交換基のカチオンがCsにイオン交換される。したがって、Csイオンは膜全体に均一に分散する。このため、Cs0.3/Cs0.5は、測定領域の面積にほぼ等しく、0.3/0.5であり、約0.6となる。
一方、本発明の改質炭化水素系陽イオン交換膜においては、膜の少なくとも片面における表面領域の方が、該膜の中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されてなる。したがって、Csイオン交換後の膜においては、膜表面から深さ0.3Tまでの領域におけるCsイオン積算強度(Cs0.3)が、未処理膜よりも顕著に低下する。一方、膜の中心領域は、イオンコンプレックス化されず、活性を維持するイオン交換基が表面領域よりも多量に存在するので、膜表面から深さ0.5Tまでの領域におけるCsイオン積算強度(Cs0.5)は未処理膜よりは低下するものの、Cs0.3の低下の度合いほどには低下しない。
したがって、表面領域がイオンコンプレックス化された改質炭化水素系陽イオン交換膜では、Cs0.3/Cs0.5は0.6よりも少なくなる。
図2に、Csイオン交換後の改質炭化水素系陽イオン交換膜についてのEPMA分析によるCsイオン強度スペクトルの典型例を示す。図2の曲線は、所定の深さにおけるCsイオン強度を示す。したがって、膜表面から深さ0.3Tまでの領域におけるCsイオン積算強度(Cs0.3)は、該曲線とX軸と0.3Tにおける垂線とで囲まれる面積を示す。同様に膜表面から深さ0.5Tまでの領域におけるCsイオン積算強度(Cs0.5)は、該曲線とX軸と0.5Tにおける垂線とで囲まれる面積を示す。
本発明の改質炭化水素系陽イオン交換膜においては、Csイオン交換後の膜について、Cs0.3/Cs0.5が好ましくは0.05〜0.55、さらに好ましくは0.10〜0.52、特に好ましくは0.20〜0.50の範囲にある。Cs0.3/Cs0.5は、母材である架橋陽イオン交換膜への重合性塩基性化合物の含浸状態により制御できる。
たとえば、比較的高分子の重合性塩基性化合物を用いると、膜の中心領域までは重合性塩基性化合物が含浸されない。この結果、表面部分におけるCsイオン積算強度(Cs0.3)は低下するが、Cs0.5の低下の度合いは少ない。このため、Cs0.3/Cs0.5は小さくなる。一方、比較的低分子の重合性塩基性化合物を用いると、膜の中心領域までは重合性塩基性化合物が含浸されやすくなり、Cs0.3は低下度合いと、Cs0.5の低下度合いには大差が無くなり、Cs0.3/Cs0.5は小さくならない。
なお、本発明の改質炭化水素系陽イオン交換膜においては、特に表面領域における陽イオン交換基がイオンコンプレックス化され、陽イオン交換能を失っているが、陽イオン交換基自体が消失しているわけではない。たとえば、陽イオン交換基がスルホン酸基(SO 2−)である場合、スルホン酸基は塩基性重合体由来の塩基性部位(たとえばアンモニウム基、NH )とイオンコンプレックスを形成することで中和され、陽イオン交換能を失うが、スルホン酸基(SO 2−)自体は存在する。このスルホン酸基は隔膜中に均一に分散して存在する。
したがって、本発明の改質炭化水素系陽イオン交換膜について、陽イオン交換基のみに由来する元素(例えば、スルホン酸基では硫黄、リン酸基ではリン)の分布をEPMAで測定した場合には、陽イオン交換基自体は膜中に均一に分散していることが分かる。たとえば、陽イオン交換基が硫黄(S)の場合には、膜表面から深さ0.3Tまでの領域における硫黄の積算強度(S0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域における硫黄の積算強度(S0.5)との比(S0.3/S0.5)は、ほぼ0.6となる。
上記の改質炭化水素系陽イオン交換膜では、膜表面が中心領域よりも高度にイオンコンプレックス化されているため、膜の耐久性が高く、またメタノール透過抵抗が向上する。
一方、膜の中心領域でのイオンコンプレックス化の程度は低いため、原料膜が有するプロトン伝導性がほぼ維持される。すなわち、改質炭化水素系陽イオン交換膜は、膜の表面領域が高度にイオンコンプレックス化され、メタノールクロスオーバー現象を効果的に抑制しつつ、高いプロトン伝導性を示す。
(燃料電池用隔膜)
このような改質炭化水素系陽イオン交換膜は、直接液体燃料型燃料電池用隔膜として特に好ましく用いられる。
本発明の改質炭化水素系陽イオン交換膜を用いた燃料電池用隔膜は、通常、その両面にガス拡散電極を接合させて用いられる。ガス拡散電極は、固体電解質型燃料電池に使用される公知のものを特に制限なく適用可能である。一般的には、触媒の金属粒子及び導電剤が分散する電極触媒相からなり、このものは多孔性材料からなる電極基材により支持されている。
ここで、触媒としては、水素やメタノールなどの燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であれば特に制限されるものではないが、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム、あるいはそれらの合金が挙げられる。これらの触媒の中で、触媒活性が優れている白金やルテニウムあるいは白金とルテニウムの合金が多くの場合用いられる。
上記触媒となる金属粒子の粒径は、通常、0.1〜100nm、より好ましくは0.5〜10nmである。粒径が小さいほど触媒性能は高くなるが、0.5nm未満のものは作製が困難であり、100nmより大きいと十分な触媒性能が得にくくなる。
上記触媒の含有量は、電極触媒相をシートとした状態で、通常、0.01〜10mg/cm、より好ましくは0.1〜5.0mg/cmである。触媒の含有量が0.01mg/cm未満では触媒の性能が充分に発揮されず、10mg/cmを超えて担持させても性能は飽和する。なお、これら触媒は、予め導電剤に担持させてから使用しても良い。
導電剤としては、電子導電性物質であれば特に限定されるものではないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛等を単独または混合して使用するのが一般的である。
また、電極触媒相には、上記触媒、導電剤の他に、結着剤等が含まれていても良い。結着剤としては、各種熱可塑性重合体が一般的に用いられるが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等が挙げられる。該結着剤の含有量は、上記電極触媒相の5〜25重量%であることが好ましい。また、結着剤は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
これら成分からなる電極触媒相が支持される電極基材は、多孔質のものが使用され、具体的には、カーボン繊維織布、カーボンペーパー等が使用される。その厚みは50〜300μmであることが、その空隙率は50〜90%であることが好ましい。
上記電極基材に対して前記電極触媒相は、その空隙内及び改質炭化水素系陽イオン交換膜との接合側表面に5〜50μmの厚みになるよう充填及び付着され、ガス拡散電極が形成される。その製造方法は、前記各成分と有機溶媒とが混合された電極触媒相ペーストを電極基材に塗布して乾燥させる方法によるのが一般的である。また、上記電極触媒相ペーストには、触媒坦持量の調整や電極触媒相の膜厚を調整するため、暫時前記有機溶媒と同様の有機溶媒を添加して粘度調整を行なうのが一般的である。
改質炭化水素系陽イオン交換膜/ガス拡散電極接合体を製造する際の熱圧着は、加圧、加温できる装置を用いて実施される。一般的には、ホットプレス機、ロールプレス機等により行われる。プレス温度はイオン交換膜のガラス転移温度以上であれば良く、一般的には80℃〜200℃である。プレス圧力は、使用するガス拡散電極の厚み、硬度に依存するが、通常0.5〜20MPaである。
このようにして熱圧着された改質炭化水素系陽イオン交換膜/ガス拡散電極接合体は、前記した図1に示すような基本構造の固体電解質用燃料電池に装着されて使用される。
(実施例)
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例に示すカチオン交換容量および含水率、膜厚、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、イオンコンプレックス化の程度は、以下の方法により測定した値を示す。
1)カチオン交換容量および含水率
イオン交換膜を1mol/L−HCl水溶液に10時間以上浸漬し、水素イオン型とした後、1mol/L−NaCl水溶液でナトリウムイオン型に置換させ、遊離した水素イオンを水酸化ナトリウム水溶液を用いて電位差滴定装置(COMTITE−900、平沼産業株式会社製)で定量した(Amol)。次に、同じイオン交換膜を1mol/L−HCl水溶液に4時間以上浸漬し、イオン交換水で十分水洗した後膜を取り出しティッシュペーパー等で表面の水分を拭き取り湿潤時の重さ(Wg)を測定した。さらに膜を60℃で5時間減圧乾燥させその重量を測定した(Dg)。上記測定値に基づいて、イオン交換容量および含水率を次式により求めた。
イオン交換容量=A×1000/D[mmol/g−乾燥重量]
含水率=100×(W−D)/D[%]
2)膜厚
膜厚は、乾燥状態の膜厚をマイクロメーターで測定した。
3)プロトン伝導性
線幅0.3mmの白金線5本を互いに離して平行に配置した絶縁基板を用い、前記白金線に、純水に湿潤した2.0cm幅の短冊状サンプル隔膜を押し当てた。40℃、90%RHの恒温恒湿槽中に試料を保持し、白金線間に1kHzの交流を印加したときの交流インピーダンスを測定した。白金線間距離を0.5〜2.0cmに変化させたときのそれぞれの交流インピーダンスを測定した。
白金線と隔膜との間には接触による抵抗が生じるが、白金線間距離と抵抗の勾配から隔膜の比抵抗を算出することでこの影響を除外した。白金線間距離と抵抗測定値との間には良い直線関係が得られた。このとき、プロトン伝導性は下記のように定義した。
プロトン伝導性[S・cm−2]=(2.0×L×S)−1
L :膜厚[cm]
S :抵抗極間勾配[Ω/cm]
4)メタノール透過抵抗
隔膜を中央に取付けた燃料電池セル(隔膜面積5cm)の一方の室に、メタノール濃度30が質量%の水溶液を液体クロマトグラフ用ポンプで供給し、隔膜の反対側の室にアルゴンガスを300ml/minで供給した。測定は25℃の恒温槽内で行った。隔膜の反対側の室から流出するアルゴンガス中のメタノール濃度をガスクロマトグラフィーで測定し、隔膜を透過したメタノール量を求めた。メタノール透過抵抗はメタノール透過量の逆数として規定した。
5)イオンコンプレックス化の程度
実施例で製造した改質陽イオン交換膜、参考例および比較例で用いる各種の陽イオン交換膜について、隔膜を0.5モル/Lの塩化セシウム溶液に16時間浸漬し、十分に水洗、および風乾した後に、カッターで幅2mm 長さ10mmの短冊状に切断した。切断したサンプルはエポキシ樹脂により包埋した。エポキシ樹脂が硬化した後、ミクロトームにより膜の断面が露出したサンプルを調製した。得られたサンプルについて炭素蒸着を実施した後、断面のX線マイクロアナライザ分析(EPMA)を下記条件で行い、Csイオン強度を測定した。
(測定)
装置:日本電子製 JXA-8621M
条件:加速電圧15kV、照射電流1.0×10−8A
積算:陽イオン交換膜の厚み方向に線分析を行った。積算回数を50回とし、その平均強度からスペクトルを作成した。陽イオン交換膜の全厚をTとし、陽イオン交換膜の表面から深さ0.3Tまでの領域におけるCsイオン積算強度(Cs0.3)と、該表面から深さ0.5Tまでの領域におけるCsイオン積算強度(Cs0.5)との比(Cs0.3/Cs0.5)を算出した。
Cs0.3/Cs0.5が小さいほど、膜の表面領域が中心領域に比べて高度にイオンコンプレックス化されていることを意味する。
6)燃料電池出力電圧
ポリテトラフルオロエチレンで撥水化処理した厚さ100μm、空孔率80%のカーボンペーパー上に、触媒が2mg/cmとなるように塗布し、80℃で4時間減圧乾燥してガス拡散電極を得た。塗布した触媒は、白金とルテニウムとの合金触媒(ルテニウム50mol%)を50質量%担持したカーボンブラックと、アルコールと水とにパーフルオロカーボンスルホン酸を5%溶解(デュポン社製、商品名ナフィオン)したものを混合して調製した。
次に、測定する燃料電池隔膜の両面に上記のガス拡散電極をセットし、100℃、圧力5MPaの加圧下で100秒間熱プレスした後、室温で2分間放置した。これを図1に示す構造の燃料電池セルに組み込んだ。燃料電池セル温度を25℃に設定し、燃料室側に20質量%のメタノール水溶液を、酸化剤室側に大気圧の酸素を200ml/min.で供給して発電試験を行ない、電流密度0A/cm、0.1A/cmにおけるセルの端子電圧を測定した。
(参考例1)
市販の燃料電池用フッ素系隔膜(パーフルオロカーボンスルホン酸系陽イオン交換膜、膜厚200μm)のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(参考例2)
ポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚25μm、空隙率36%)にスチレン95重量部、架橋剤ジビニルベンゼン5重量部および重合開始剤として過酸化ベンゾイル5重量部を混合した液を含浸させ、窒素雰囲気下で熱重合を行い、さらに重合した膜をクロロスルホン酸/硫酸 溶液(等重量混合溶液)に40℃で1時間浸漬して隔膜のスチレン部位にスルホン酸基を導入した。得られた隔膜について、スルホン酸基の対イオンを水素イオンに変換するために膜を0.5モル/Lの塩酸水溶液に一晩以上浸漬して燃料電池用隔膜を得た。得られた隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(参考例3)
スチレンが90重量部、架橋剤ジビニルベンゼンが10重量部である以外は(参考例2)と同様の手法で燃料電池用隔膜を得た。得られた隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(参考例4)
スチレンが80重量部、架橋剤ジビニルベンゼンが20重量部である以外は(参考例2)と同様の手法で燃料電池用隔膜を得た。得られた隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(参考例5)
スチレンが99重量部、架橋剤ジビニルベンゼンが1重量部である以外は(参考例2)と同様の手法で燃料電池用隔膜を得た。得られた隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
上記より従来のフッ素系膜(参考例1)では、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗ともに不充分であり、また炭化水素系陽イオン交換膜においては、架橋度を上げることでメタノール透過抵抗は向上するものの、プロトン伝導性が低下し、プロトン伝導性とメタノール透過抵抗とがtrade-offの関係にあることがわかる(参考例2〜5)。
(実施例1)
ポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚25μm、空隙率36%)にスチレン95重量部、架橋剤ジビニルベンゼン5重量部および重合開始剤として過酸化ベンゾイル5重量部を混合した液を含浸させ、窒素雰囲気下において80℃で5時間の熱重合を行い、さらに重合した膜をクロロスルホン酸/硫酸 溶液(等重量混合溶液)に40℃で1時間浸漬してスルホン化反応を行うことにより、炭化水素系架橋カチオン交換膜を調製した。
1,2‐エタンジアミンを1.30gと1,2−ジブロモエタン2.02gをメタノール200ml中に溶解させ、500ml中ナスフラスコ中35℃で10時間反応させた。その後、更にパラビニルベンジルクロライド1.8gをナスフラスコ内に添加し、35℃で12時間反応させた。反応後の溶液にアゾビスイソブチロニトリルを2g添加し、窒素雰囲気下60℃で部分重合を行い塩基性重合性化合物の溶液を得た。この塩基性重合性化合物はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により分子量を測定したところ、Mw=900であり、その化学構造が
Figure 0005551877
であることを確認した。
この塩基性重合性化合物の濃度が3000ppmとなるように溶液をイオン交換水で希釈し、希釈溶液0.5Lに前述のカチオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。浸漬後、モノマー溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6h反応させることにより燃料電池用隔膜を得た。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3%の食塩水中に浸漬した。得られた隔膜について、スルホン酸基の対イオンを水素イオンに変換するために膜を0.5モル/Lの塩酸水溶液に一晩以上浸漬した。調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例2)
炭化水素系架橋カチオン交換膜を処理する塩基性重合性溶液の濃度を6000ppmとした以外は実施例1と同じ方法で隔膜を調製した。調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例3)
1,6−ヘキサンジアミンを1.72gとパラキシリレンジクロライド1.75gをメタノール200ml中に溶解させ、500ml中ナスフラスコ中35℃で18時間反応させた。その後、更にパラビニルベンジルクロライド1.8gをナスフラスコ内に添加し、35℃で12時間反応させた。反応後の溶液にアゾビスイソブチロニトリルを2g添加し、窒素雰囲気下60℃で部分重合を行い、塩基性重合性化合物の溶液を得た。塩基性重合性化合物はGPCにより分子量を測定したところ、Mw=1600であり、その化学構造が
Figure 0005551877
であることを確認した。
この塩基性重合性化合物の濃度が3000ppmとなるように溶液をイオン交換水で希釈し、希釈溶液0.5Lに実施例1に記載の炭化水素系架橋カチオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。浸漬後、モノマー溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6h反応させた。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3%の食塩水中に浸漬した。得られた隔膜について、スルホン酸基の対イオンを水素イオンに変換するために膜を0.5モル/Lの塩酸水溶液に一晩以上浸漬した。調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例4)
炭化水素系架橋カチオン交換膜を処理する塩基性重合性溶液の濃度を6000ppmとした以外は実施例3と同じ方法で隔膜を調製した。調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例5)
1,3−プロパンジアミンを0.80gとジブロモオクタン2.8gをメタノール200ml中に溶解させ、500ml中ナスフラスコ中35℃で12時間反応させた。その後、更にパラビニルベンジルクロライド1.8gをナスフラスコ内に添加し、35℃で12時間反応させた。反応後の溶液にアゾビスイソブチロニトリルを2g添加し、窒素雰囲気下60℃で部分重合を行い、塩基性重合性化合物の溶液を得た。塩基性重合性化合物はGPCにより分子量を測定したところ、Mw=2300であり、その化学構造が
Figure 0005551877
であることを確認した。
この塩基性重合性化合物の濃度が3000ppmとなるように溶液をイオン交換水で希釈し、希釈溶液0.5Lに実施例1に記載の炭化水素系架橋カチオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。浸漬後、モノマー溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6h反応させた。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3%の食塩水中に浸漬した。得られた隔膜について、スルホン酸基の対イオンを水素イオンに変換するために膜を0.5モル/Lの塩酸水溶液に一晩以上浸漬した。調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例6)
ポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚25μm、空隙率36%)にスチレン99重量部、架橋剤ジビニルベンゼン1重量部および重合開始剤として過酸化ベンゾイル5重量部を混合した液を含浸させ、窒素雰囲気下において80℃で5時間の熱重合を行い、さらに重合した膜をクロロスルホン酸/硫酸溶液(等重量混合溶液)に40℃で1時間浸漬してスルホン化反応を行うことにより、炭化水素系架橋カチオン交換膜を調製した。
1,6−ヘキサンジアミンを1.72gとパラキシリレンジクロライド1.75gをメタノール200ml中に溶解させ、500mlのナスフラスコ中35℃で42時間反応させた。その後、更にパラビニルベンジルクロライド1.8gをナスフラスコ内に添加し、35℃で12時間反応させた。反応後の溶液にアゾビスイソブチロニトリルを2g添加し、窒素雰囲気下60℃で部分重合を行い、塩基性重合性化合物の溶液を得た。塩基性重合性化合物はGPCにより分子量を測定したところ、Mw=4300であり、その化学構造が
Figure 0005551877
であることを確認した。
この塩基性重合性化合物の濃度が3000ppmとなるように溶液をイオン交換水で希釈し、希釈溶液0.5Lに前述の炭化水素系架橋カチオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。浸漬後、モノマー溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6h反応させた。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3%の食塩水中に漫漬した。得られた隔膜について、スルホン酸基の対イオンを水素イオンに変換するために膜を0.5モル/Lの塩酸水溶液に一晩以上浸漬した。調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例7)
1.6−ヘキサンジアミンを1.72gとパラキシリレンジクロライド1.75gをメタノール200ml中に溶解させ、500mlのナスフラスコ中40℃で50時間反応させた。その後、更にパラビニルベンジルクロライド1.8gをナスフラスコ内に添加し、35℃で12時間反応させた。反応後の溶液にアゾビスイソブチロニトリルを2g添加し、窒素雰囲気下60℃で部分重合を行い、塩基性重合性化合物の溶液を得た。塩基性重合性化合物はGPCにより分子量を測定したところ、Mw=6200であり、その化学構造が
Figure 0005551877
であることを確認した。
この塩基性重合性化合物を用いた以外は上述の実施例6と同様の方法により調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(実施例8)
N,N,N’, N’−テトラメチルブタンジアミンを1.44gと1,8−ジブロモオクタン2.72gをメタノール200ml中に溶解させ、500ml中ナスフラスコ中35℃で10時間反応させた。その後、更にパラビニルベンジルクロライド1.8gをナスフラスコ内に添加し、35℃で12時間反応させた。反応後の溶液にアゾビスイソブチロニトリルを2g添加し、窒素雰囲気下60℃で部分重合を行い塩基性重合性化合物の溶液を得た。この塩基性重合性化合物はGPCにより分子量を測定したところ、Mw=7400あり、その化学構造が
Figure 0005551877
であることを確認した。
この塩基性重合性化合物を用いた以外は上述の実施例6と同様の方法により調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(比較例1)
テトラメチル‐1,2‐エチレンジアミンを0.92と1,2−ジブロモエタン1.88gをメタノール200ml中に溶解させ、500ml中ナスフラスコ中35℃で12時間反応させた。その後、更にパラビニルベンジルクロライド1.8gをナスフラスコ内に添加し、35℃で12時間反応させた。塩基性重合性化合物はGPCにより分子量を測定したところ、Mw=530であり、その化学構造が
Figure 0005551877
であることを確認した。
この塩基性重合性化合物の濃度が3000ppmとなるように溶液をイオン交換水で希釈し、希釈溶液0.5Lに実施例1に記載の炭化水素系架橋カチオン交換膜10cm×30cmを室温で3時間浸漬した。浸漬後、モノマー溶液に重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル1gを添加し、50℃で6h反応させた。反応後、未反応モノマーなどを除去するため、隔膜を3%の食塩水中に浸漬した。得られた隔膜について、スルホン酸基の対イオンを水素イオンに変換するために膜を0.5モル/Lの塩酸水溶液に一晩以上浸漬した。調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(比較例2)
炭化水素系架橋カチオン交換膜を処理する塩基性重合性溶液の濃度を6000ppmとした以外は比較例1と同じ方法で隔膜を調製した。調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
(比較例3)
N,N,N’, N’−テトラメチルヘキサンジアミンを1.80gとパラキシリレンジクロライド1.75gをメタノール200ml中に溶解させ、500ml中ナスフラスコ中35℃で120時間反応させた。その後、更にパラビニルベンジルクロライド1.8gをナスフラスコ内に添加し、35℃で12時間反応させた。反応後の溶液にアゾビスイソブチロニトリルを2g添加し、窒素雰囲気下60℃で部分重合を行い塩基性重合性化合物の溶液を得た。この塩基性重合性化合物はGPCにより分子量を測定したところ、Mw=12000であり、その化学構造が
Figure 0005551877
であることを確認した。
この塩基性重合性化合物を用いた以外は上述の実施例5と同様の方法により調製した隔膜のカチオン交換容量、含水率、膜厚、(Cs0.3/Cs0.5)値、プロトン伝導性、メタノール透過抵抗、および燃料電池出力について表1に示した。
Figure 0005551877
1;電池隔壁
2;燃料流通孔
3;酸化剤ガス流通孔
4;燃料室側拡散電極
5;酸化剤室側ガス拡散電極
6;固体高分子電解質(改質陽イオン交換膜)
7;燃料室
8;酸化剤室

Claims (5)

  1. 架橋された炭化水素系陽イオン交換膜の少なくとも片面に、
    重量平均分子量(但し、化合物が、その塩基性部位がカウンターアニオンにより中和されている化合物である場合には、該カウンターアニオンの重さは分子量から除く)が700以上8000未満であって、炭素−炭素二重結合を含む重合性塩基性化合物を含浸し、
    該重合性塩基性化合物を重合する工程を含む、燃料電池用隔膜の製造方法。
  2. 前記重合性塩基性化合物を、前記炭化水素系陽イオン交換膜に、該交換膜の表面領域における重合性塩基性化合物濃度が、該交換膜の厚さ方向における中心領域における重合性塩基性化合物濃度よりも高くなるように含浸する請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記重合性塩基性化合物が、下記式(A)で示される化合物である請求項1に記載の製造方法。
    Figure 0005551877
    (式中、nの平均値が4.8〜41.2、R1はCH2または(CH22であり、
    2,R3,R4はそれぞれ独立に(CH2m(mは1〜18の整数)、
    Figure 0005551877
    であり、
    5はH,CH3
    Figure 0005551877
    であり、
    6,R7,R8,R9,R10,R11,R12,R13はそれぞれ独立にH,CH3またはCH2CH3であり、
    XはCl,Br,I,OHまたは1/2SO4である。)
  4. 前記燃料電池が、直接液体燃料型燃料電池である請求項1〜3の何れかに記載の製造方法。
  5. 架橋された炭化水素系陽イオン交換膜の少なくとも片面に、
    重量平均分子量(但し、化合物が、その塩基性部位がカウンターアニオンにより中和されている化合物である場合には、該カウンターアニオンの重さは分子量から除く)が700以上8000未満であって、
    下記式(A)で示される化合物である重合性塩基性化合物を含浸し、
    該重合性塩基性化合物を重合する工程を含む、燃料電池用隔膜の製造方法。
    Figure 0005551877
    (式中、nの平均値が4.8〜41.2、R1はCH2または(CH22であり、
    2,R3,R4はそれぞれ独立に(CH2m(mは1〜18の整数)、
    Figure 0005551877
    であり、
    5はH,CH3
    Figure 0005551877
    であり、
    6,R7,R8,R9,R10,R11,R12,R13はそれぞれ独立にH,CH3またはCH2CH3であり、
    XはCl,Br,I,OHまたは1/2SO4である。)
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