明細書 液晶表示素子用配向膜 技術分野
本発明は、 液晶表示装置の配向膜に関するものである。 さらに詳し くは、 透明性、 製膜性に優れ、 かつ、 長期間安定したプレティルト角 を与える新規なポリイミ ド榭脂からなる液晶表示素子用配向膜に関す るものである。
背景技術
従来から、 液晶表示素子用配向膜として、 ポリイミ ド樹脂は広く用 いられてきたが、 近年、 その特性の改良課題として、 ( 1 ) 透明性 (可視光透過性) 、 (2 ) 製膜加工性、 (3 ) 長期にわたる安定した 高いプレティルト角保持性、 が挙げられている。
( 1 ) 、 ( 2 ) に関しては、 従来の全芳香族ポリイミ ド榭脂に替えて、 主鎖の共役構造を弱め、 有機溶剤に対する溶解性を増加させるため、 脂環式テトラカルボン酸二無水物を構成モノマ一として含有するポリ イミ ド樹脂からなる配向膜が提案されている (例えば、 特許文献 1〜 5を参照。 ) 。
しかしながら、 提案される脂環式テトラカルボン酸二無水物は、 デ ィ一ルス · アルダー反応生成物、 ディールス ■ アルダー反応に加えて 収率に問題のあるェン反応を経由する必要がある化合物、 極めて複雑 な合成経路を必要とする化合物であり、 不純物の混入、 また、 精製後 の逆ディールス · アルダ一反応による分解物精製の懸念の問題がある。 特に、 液晶表示素子用配肉膜は、 通常、 ポリアミック酸を塗布して 基板上で加熱してイミド化反応を行うことにより製造されること、 長 期にわたり広範な温度で使用されることから、 これらの塗膜成形時の 素材中への不純物混入、 使用中の分解物の生成 (例えば、 逆ディール
ス · アルダー反応) を避けることは極めて重要である。 (3 ) につい ては側鎖を有するポリイミ ド樹脂からなる液晶表示素子用配向膜が提 案されているが、 上述したことと同様の問題がある (特許文献 6 ) 。
特許文献 1 :特開平 1一 2 3 9 5 2 5号公報
特許文献 2 :特開平 8— 4 3 8 3 0号公報
特許文献 3 :特開平 9— 7 1 6 5 0号公報
特許文献 4 :特開 2 0 0 1— 4 8 8 7 4号公報
特許文献 5 :特開平 9— 2 1 1 4 6 7号公報
特許文献 6 :特開平 8 - 7 3 5 8 9号公報 発明の開示
本発明の課題は、 上記のような従来の問題点を解決したポリイミ ド 樹脂からなる製膜加工性と安定したプレティルト角を与える液晶表示 素子用配向膜を提供することにある。
本発明者らは、 上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、 例えば、 1, 1—ジフエニルエチレン 1モルと無水マレイン酸 2モルと の間で連続して生じる反応によって得られるトリシクロ構造をするテ トラカルボン酸二無水物の水素還元化物を含有するテトラカルボン酸 二無水物とジァミンの反応物からなるポリイミ ドを含む液晶表示素子 用配向膜用いて上記課題を解決し本発明を完成した。
本発明の第 1は、 下記式一般式 ( 1 ) 、 (2 ) で表されるテトラ力 ルボン酸二無水物の少なくとも一つと下記一般式 (3 ) で表されるジ アミンとを反応させて得られるポリアミック酸を脱水閉環して得られ るポリイミドを含むことを特徴とする液晶表示素子用配向膜である。
一般式 (1) 、 (2) において、 は水素原子、 または炭素数 1〜 10のアルキル基、 R
2は炭素数 1〜 10のアルキル基を表す。 m、 n は互いに独立の 0〜5までの任意の整数であり、 m+nが複数の場合、 複数の R
2は互いに同じでも、 または、 異なっても良い。
一般式 (3)
蘭一 E3—NB2
一般式 (3) において、 R3は 2価の有機基を表す。
本発明の第 2は、 前記一般式 (1) およ.び (2) で表されるテトラ カルボン酸二無水物の少なくともひとつと下記一般式 (4) で表され るテトラカルボン酸二無水物と前記一般式 (3) で表されるジァミン とを反応させて得られるポリアミック酸を脱水閉環して得られるポリ ィミドを含むことを特徴とする液晶表示素子用配向膜である。 一般式 (4)
一般式 (4) において、 尺ェは水素原子、 または炭素数 1〜1 0のァ ルキル基、 R
2は炭素数 1〜 10のアルキル基を表す。 m、 nは互いに 独立の 0〜 5までの任意の整数であり、 m+nが複数の場合、 複数の R
2は互いに同じでも、 または、 異なっても良い。 図面の簡単な説明
図 1はテトラカルボン酸二無水物を生成する反応経路図である。 図 2は実施例に係るテトラカルボン酸二無水物を生成する反応経 路図である。
図 3はポリアミック酸の I Rスぺクトル図である。
図 4はポリイミドの I Rスぺクトル図である。
発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶表示装置用配向膜を構成するポリイミ ドは、 一般式
( 1) 、 (2) で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも一 つと一般式 (3) で表されるジァミンから得られるものである。 また は、 一般式 ( 1) 、 (2) で表されるテトラカルボン酸二無水物の少 なくとも一つおよび一般式 (4) で表されるテトラカルボン酸二無水 物と一般式 (3) で表されるジァミンから得られるものである。 一般 式 ( 1 ) 、 (2) で表されるテトラカルボン酸二無水物は、 下記の一 般式 ( 5) で表される化合物 1モルと一般式 (6) で表される化合物 2モルとを反応させて得られる一般式 (4) で表されるテトラカルボ ン酸ニ無水物を水素添加する こ と によ っ て得られる (文献 W. N. Emmer I ing et al , European Polymer Journal , Vol.13, Pl79- 184を参照) 。
一般式 (5)
一般式 (5) 、 (6) において、 尺ェは水素原子、 または炭素数 1〜 1 0のアルキル基、 R
2は炭素数 1〜 10のアルキル基、 R
3は 2価の 有機基を表す。 m、 nは互いに独立の 0〜 5までの任意の整数であり、 m+nが複数の場合、 複数の R
2は互いに同じでも、 または、 異なって も良い。
一般式 (5) で表される化合物の具体例としては、 1, 1—ジフエ ニルエチレン、 1, 1ージ (メチルフエニル) エチレン、 1一フエ二 ル一 1—メチルフエニルエチレン、 1, 1一ジフエ二ルプロペン、 1 , 1ージ (メチルフエニル) プロペン、 1一フエ二ルー 1一メチルフエ ニルプロべン等が挙げられる。
一般式 (6) で示される化合物の具体例としては、 無水マレイン酸、 無水シトラコン酸 ( 3—メチル無水マレイン酸) 、 3—ェチル無水マ レイン酸、 3, 4—ジメチル無水マレイン酸、 3—クロル無水マレイ ン酸、 3, 4ージメチル無水マレイン酸等が挙げられる。
一般式 (5) の化合物 1モルと、 一般式 (6) の化合物 2モルとは、 図 1に示す経路で反応して、 一般式 (4) のテトラカルボン酸二無水 物を生成するものと考えられる。 反応の進行には、 特に触媒を必要と せず、 適宜、 溶剤を使用して、 両者を混合して加熱攪拌して得ること ができる。 反応温度は、 溶媒を使用した場合は当該溶媒の沸点付近で 行うのが一般的であるが、 50〜 200で間で行うことができる。 よ り好ましくは、 60〜 1 50°Cである。 反応時間は反応温度との関係 から定まるが、 通常 0. 1〜20時間の範囲が好ましい。
' 以下、 反応経路を図 1にしたがって説明する。
一般式 (5) と一般式 (6 ) の化合物とは、 炭素,炭素二重結合の 電子密度差を誘因として電荷移動錯体を形成する。
したがって、 一般式 (5) および一般式 (6 ) それぞれの化合物に 存在する置換基が、 両者の炭素 ·炭素二重結合の電子密度差を減少さ せないようにすることが好.ましい。 すなわち、 一般式 ( 5) の化合物 の芳香族環以外の炭素に電子吸引性の強い置換基を存在させることは 好ましくなく、 一般式 (6) の化合物の炭素に電子供与性の強い置換 基を存在させることは好ましくない。 さらに、 立体障害効果を有する 置換基の存在も好ましくない。
したがって、 一般式 (5) 中の および一般式 (6) 中の の少 なくとも 1つが水素原子であることが好ましい。 また、 尺ェおよび R2 は、 それぞれがアルキル基である場合、 炭素数 1 0以下であることが 好ましく、 炭素数 5以下がさらに好ましく、 特にメチル基、 プロピル 基が好ましい。
また、 一般式 (5 ) の化合物については、 m+ n≤ 4とすることが 好ましく、 特に、 m+ n≤ 2が好ましい。
したがって、 最も好ましい一般式 ( 5 ) で表される化合物は 1, 1 ージフエニルエチレンであり、 最も好ましい一般式 ( 6 ) で表される 化合物は無水マレイン酸である。
一般式 (5) と一般式 (6 ) とから形成される電荷移動錯体は、 分 子内環化反応により六員環 (シクロへキサジェン環) となり、 当該六 員環化合物内のシクロへキサジェン部と原料化合物一般式 (6) の炭 素 · 炭素二重結合部とが、 ディールス · アルダー反応を経由して一般 式 (4 ) の化合物を生成するものと考えられる。 当該ディールス · ァ ルダ一によつて生成する炭素 ·炭素二重結合部は高温環境下において 逆ディールス · アルダー反応により分解することがあるので、 公知の 還元法等を用いて常法により水素添加して当該部分を飽和単結合とし
て一般式 ( 1) で表されるテトラカルボン酸二無水物、 さらに、 側鎖 の芳香族環を核水添して一般式 (2) で表されるテトラカルボン酸二 水物とする。
接触還元方法は、 金属触媒として、 パラジウム、 ルテニウム、 ロジ ゥム、 白金、 ニッケル、 コバルト等を使用して、 溶媒中で、 水素圧を 常圧から 1 OMP aの範囲、 温度を 0~ 1 5 0°Cの範囲で行うことが できる。
さらに詳しく述べれば、 一般式 ( 1) で表されるテトラカルボン酸 二無水物を高い収率で得る塲合は、 パラジウム系触媒存在下で水素圧 を l MP a〜 5MP aの範囲とし、 温度を室温〜 5 0°Cの範囲で 5〜
2 0時間接触還元を行うとよく、 一般式 (2) で表されるテトラカル ボン酸二無水物を高い収率で得る場合は、 パラジウム系触媒存在下で 水素圧を 5 MP a〜 8MP aの範囲とし、 温度を 5 0〜: L 0 0 °Cの範 囲で 5〜20時間接触還元を行うとよい。
一般式 ( 1 ) 、 ( 2) 、 (4) で表されるテトラカルボン酸二無水 物は、 従前の脂環式ポリイミ ドに使用されているテトラカルボン酸二 無水物に比べて、 特段の反応条件変更を要さずに実質的にひとつの反 応操作で、 ェン反応等と比較して温和な条件下による反応で、 副生成 物を生じることなく得られる。 さらに、 後述する実施例に見られるよ うに再結晶による精製が可能な化合物である場合には、 特に高い純度 が要求される光学機能部材中で使用されるポリイミ ドを製造するモノ マ一として極めて優れた特性を発揮する。 これらの中でも、 一般式
( 1 ) 、 (2) で表されるテトラカルボン酸二無水物は、 高温環境下 でも逆ディールス · アルダー反応がないので、 高い耐熱性、 あるいは、 長期の安定性が要求されるポリイミ ドの構成モノマーとして優れてい る。
本発明に係る一般式 ( 1) 、 (2) 、 (4) で表されるテトラカル ボン酸二無水物は、 2つのカルボン酸二無水物基がトリシクロ環構造
中に非対称に配置されていること、 および、 側鎖 (例えば、 n= 0で あればベンゼン環。 ) を有していることを特徴とする。 本発明者らは、 当該基本構造が、 ポリアミック酸およびポリイミドの耐熱性、 有機溶 剤への溶解性、 靭性の付与に大きく関与しているものと考えている。 上記基本的特性に加えて、 より優れた耐熱性を所望する場合は一般 式 ( 1 ) で表されるテトラカルボン酸二無水物、 よりすぐれた透明性 と溶解性を所望する場合は一般式 (2) で表されるテトラカルボン酸 二無水物を単独で使用するが、 これらの特性をバランスよく所望する 場合は、 混合して使用しても良い。 なお、 一般式 (4) で表されるテ トラカルボン酸二無水物も、 化学修飾や架橋反応を所望する場合、 3 0 0 °C以上で残渣を大量に残さない熱分解を所望する場合は併用する ことが好ましい。
また、 本発明の液晶表示装置用配向膜に係るポリイミドを得るため には、 一般式 ( 1) 、 (2) 、 (4) で表されるテトラカルボン酸二 無水物中に開環重付加反応ゃ閉環反応の進行に関して立体障害となる 置換基を含まないことが好ましく、 一般式 ( 1 ) 、 (2) 、 (4) の 中でも、 1, 1ージフエニルエチレンと無水マレイン酸から合成される テトラカルボン酸二無水物が好ましい。 なお、 本発明の効果を損なわ ない範囲で、 ポリイミ ドの構成成分として使用される公知の他のテト ラカルボン酸無水物を併用することができることはもちろんである。 一般式 ( 3 ) で表されるジァミン化合物としては、 特に制限は無く、 ポリイミ ド構成モノマーとして知られているジァミン化合物であれば よい。
好ましい例を挙げれば、 p—フエ二レンジァミン、 4, 4 ' —ジァ ミノジフエニルメタン、 1, 5—ジァミノナフタレン、 2, 7—ジァ ミソフルオレン、 4, 4 ' ージァミノジフエニルエーテル、 4 , 4 ' 一 (p—フエ二レンイソプロピリデン) ビスァニリン、 2, 2—ビス [4一 (4一アミノフエノキシ) フエニル] へキサフルォロプロパン、
2, 2—ビス (4ーァミノフエニル) へキサフルォロプロパン、 2, 2 ' 一ビス [4— (4ーァミノ一 2— トリフルォロメチルフヱノキ シ) フエニル] へキサフルォロプロパン、 4, 4 ' ージァミノ— 2, 2 ' —ビス (トリフルォロメチル) ビフエニル、 4, 4 ' —ビス [ (4—アミノー 2—トリフルォロメチル) フエノキシ] —ォクタフ ルォロビフエニルなどがあり、 特に好ましくは、 p—フエ二レンジァ ミン、 4., 4 ' —ジアミノジフエニルメタンおよび 4 , 4 ' —ジアミ ノジフエ二ルエーテルが挙げられる。
本発明のポリアミック酸は、 一般式 ( 1) 、 (2) 、 (4) で表さ れるテトラカルボン酸二無水物と一般式 (3) で表されるジァミン化 合物とを、 例えば、 開環重付加反応させることにより合成することが 出来る。
一般式 (1) 、 ( 2) 、 (4) で表されるテトラカルボン酸二無水 物と一般式 (3) で表されるジァミン化合物とでポリアミック酸を合 成するときの好ましい使用割合は、 上記ジァミン化合物に含まれるァ ミノ基 1当量に対する上記テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基の 範囲が 0. 2〜4当量となる範囲である。 重合度の高いポリアミック 酸を得たいときは、 当該範囲を 0. 8〜1. 2当量の範囲とする。 上記手法により、 対数粘度が 0. 0 5〜 1 0の範囲にあるポリアミ ック酸を得ることができる。 なお、 対数粘度の値は、 N—メチルー 2 一ピロリ ドンを溶媒として用い、 濃度が 0. 5 gZ l 0 0ミリリット ルである溶液について 3 0°Cで、 対数粘度 =[ I n (溶液粘度ノ溶媒粘 度) ]Z [溶液濃度]によって求める。 なお、 液晶表示素子用配向膜用と しては、 重合度が高いほど膜としたときに高い膜強度が得られるが、 高すぎると塗膜形成形の加工性が劣ってくるので、 対数粘度を 0. 5 〜 3の範囲とすることが好ましい。
ポリアミック酸の合成反応は、 有機溶媒中において、 通常 0〜1 5 0°C、 好ましくは 0〜1 0 0 の温度条件下で行われる。 ここで、 有
機溶媒としては'、 合成されるポリアミツク酸を溶解できるものであれ ば特に制限はない。 なお、 溶媒を例示すれば、 N—メチル— 2—ピロ リ ドン、 N, N—ジメチルァセトアミド、 N , N—ジメチルホルムァ ミ ド、 ジメチルスルホキシド、 ァ—プチロラクトン、 テトラメチル尿 素、 へキサメチルホスホルトリアミ ドなどの非プロトン系極性溶媒、 m—クレゾール、 フエノール、 ハロゲン化フエノールなどのフエノー ル系溶媒が挙げられる。
つづいて、 この反応溶液とポリアミック酸の貧溶媒を混合して析出 物を得、 この析出物を減圧下乾燥することによりポリアミック酸を得 ることができる。 また、 このポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解さ せ、 貧溶媒で析出させる工程を 1回または数回行うことにより、 ポリ ァミツク酸を精製することができる。
なお、 貧溶媒を例示すれば、 水、 メチルアルコール、 ェチルアルコ ール、 イソプロピルアルコール、 シクロへキサノール等のアルコ一ル 類、 アセトン、 メチルェチルケトン、 メチルイソブチルケトン等のケ トン類、 酢酸メチル、 酢酸ェチル等のエステル類、 ジェチルエーテル、 エチレングリコールメチルエーテル等のェ一テル類が挙げられる。
本発明に係るポリイミ ドは、 公知の方法に従って、 上記ポリアミツ ク酸をそのまま、 あるいは、 有機溶媒中で、 イミ ド化反応時に生成す る低分子化合物を系外に除去しながら、 加熱して、 脱水閉環 (イミ ド 化反応) して合成する。 加熱における反応温度は 5 0〜' 3 0 0 °C、 好 ましくは、 1 0 0〜 2 0 0 °Cである。 反応温度が 5 0 °C未満ではィミ ド化反応が十分に進行せず、 反応温度が 3 0 0 °Cを超えると得られる ポリイミドの分子量が低下することがある。
また、 上記ポリアミック酸の溶液中に脱水剤およびイミ ド化触媒を 添加しても、 本発明に係るポリイミ ドを合成することができる。 脱水 剤を例示すれば、 無水酢酸、 無水プロピオン酸等の酸無水物が挙げら れる。 イミド化触媒を例示すれば、 トリェチルァミン、 ピリジン、 コ
リジン等の第 3紱ァミンが挙げられる。 また、 このようにして得られ る反応溶液に対し、 ポリアミック酸の精製方法と同様の操作を行うこ とにより、 本発明のポリイミドを精製することができる。
本発明に係る液晶表示素子用配向膜は、 通常、 一般式 ( 1 ) 、 ( 2 ) で表されるテトラカルボン酸二無水物のいずれかを含むテトラ カルボン酸二無水物と一般式 (3 ) で表されるジァミンとを反応させ てなるポリアミック酸溶液をパターニングされた透明導電膜が設けら れている基板の一面に、 塗布し、 溶剤を除去する.ことによって配向膜 となる塗膜を形成し、 さらに加熱することによって脱水閉環 (イミ ド 化) 反応を進行させて得ることができる。 形成される塗膜の膜厚は、 通常 0 . 0 0 1〜 1 mであり、 好ましくは 0 . 0 0 5〜0 . 5 m である。 当該塗膜面を、 例えばナイロン、 レーヨン、 コットンなどの 繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理を 行えば液晶表示素子用配向膜となる。
なお、 本発明に係る液晶表示素子用配向膜は、 本発明に係るポリィ ミ ド樹脂の優れた有機溶剤溶解性を利用して、 これの溶液を直接、 口 ールコ一夕一法、 スピンナ一法、 印刷法などの方法によって塗布し、 次いで、 塗布面を加熱して溶剤を除去することを経て得ることもでき る。 実施例
以下、 実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、 本発明は これらに限定されるものではない。
くテトラカルボン酸二無水物の合成 >
容量 2 0 m 1のナス型フラスコに 1, 1 —ジフエニルエチレン 5 . 1 0 gと無水マレイン酸 2 . 7 8 g (モル比 1 : 1 ) を入れ、 1 0分 間溶存酸素を脱気した後、 油浴を 1 4 0 °Cに保ち 5時間加熱攪拌した。 反応系の温度は 1 0 6 °Cであった。 反応終了後、 トルエンをフラスコ
に加えて析出する沈殿物を濾過して集めた。 濾過物の重量は 3. 6 5 gでめつた。
本合成例においては、 1 , 1—ジフエニルエチレンは反応原料とし て仕込まれたと同時に、 過剰分は溶剤として機能している。 本合成例 の収率は、 1, 1—ジフエニルエチレン 2. 5 5 gと無水マレイン酸 2. 7 8 g (モル比 1 : 2) を基準として、 6 8 %である。
(D S C分析による融点測定)
酢酸ェチルから再結晶した当該化合物は、 2 0 Zininでの昇温条件 で 29 0°Cに明確な吸熱ピークを示した。
くテトラカルボン酸二無水物の構造決定 >
(マススペクトル)
マススペクトルの結果、 生成物の分子量は 3 76であった。
( I Rスぺクトル測定)
7 0 0 cm— 1〜 740 cm— 1 : 1置換芳香族帰属ピーク
7 6 0 cm— 1〜 8 60 cm— 1 :炭素 '炭素二重結合帰属ピーク 1 7 8 0 cm— 1〜 1 8 8 0 cm— 1 : カルボン酸無水物帰属ピー ク
( 1 HNMRスぺクトル測定)
1 H NMRスペクトル (DMS O— d 6)
2. 5 5 (m、 2 H) 、 2. 7 5 (m、 2 H) : カルポニル基隣接 炭素上の水素
3. 50〜 3. 6 0 (m、 2 H)
3. 7 0 ( t、 1 H) : シクロへキセン環とシクロへキサジェン環 結合部炭素上の水素
3. 8 0 (m、 2 H) : シクロへキセン中のメチン水素
6. 0 0 ( t、 1 H) 、 6. 2 5 ( t、 1 H) : 炭素 '炭素二重結 合部の水素
7. 2 0 (d、 2 H) 、 7. 3 5 ( t、 1 H) 、 7. 45 ( t;、 2
H) 一置換ベンゼン部の水素 以上の分析結果から、 生成物の化学構造は一般式 (4) の構造を満 足するテトラカルボン酸二無水物のうち、 下記の化学式 ( 1〉 で表さ れるテトラカルボン酸二無水物であることを確認した。 なお、 当該化 合物の構造決定に関しては、 上記 .N.Emmerling et al, European Polymer Journal, Vol.13, pl79 - 184も参照した。
化学式 ( 1) で表される上記テトラカルボン酸二無水物の 1 gを 1 0 m 1 の THFに溶解し、 1 0 %パラジウム Zカーボン触媒 (小島薬 品製) l O Omgを加えて、 5 0°C、 5〜4. 5 0 MP a (水素圧) で水素化還元を 1 6時間行った。 触媒を除去後、 THFを減圧蒸留し て白色の結晶を 95 %の収率で回収した。 当該結晶の
1 HNMRスぺクトル測定を上記と同様に行ったところ、 6 = 6. 0 0〜6. 2 5の領域に現れる炭素 '炭素二重結合部分の 2 個の水素原子に帰属されるピーク面積が消滅し、 化学式 ( 1 ) 中の 1 1位の炭素 ·炭素二重結合 (2置換ォレフィン) が水素化還元された ことを示した。 一方、 δ = 0 0〜2. 0 0にはシクロアルカン系 メチン水素は新たに出現せず芳香族環族の核水添が生じていないこと
を示した。 なお、 これ以外に大きな変化は見られなかった。 また、 I Rスぺクトル解析から無水カルポニル基が残存していることを確認し、 また、 マススペクトルの結果から分子量が化学式 ( 1 ) の化合物より 2多い 3 7 8になっていることを確認した。
この結果から、 当該還元処理化合物が、 一般式 ( 1 ) の構造を満足 する下記の化学式 (2) で表されるテトラカルボン酸二無水物である ことが確認された。
化学式 ( 1 ) で表されるテトラカルボン酸二無水物 1 gを 1 0 m 1 の THFに溶解し、 1 0 %パラジウム Zカーボン触媒 (小島薬品製)
5 0 mgを加えて、 1 0 0 °C、 1 ~ 0. 9 5 M P a (水素圧) で水素 化還元を 6時間行った。 触媒を除去後、 TH Fを減圧蒸留して白色の 結晶を 9 5 %の収率で回収した。
当該結晶の1 HNMRスぺクトル測定を上記と同様に行ったところ、
6 = 6. 0 0〜 6. 2 5の領域に現れる炭素 '炭素二重結合部分の 2 個の水素原子に帰属されるピーク面積と δ = 7. 2 0〜 7. 4 5の領
域に現れる一置換ベンゼン環部分の 5個の水素原子に帰属されるピー ク面積との比が、 還元処理前の 2 : 5から、 1. 2 : 5に変化し'、 δ = 6. 0 0近傍にメチン系水素のピークが新たに出現し、 化学式 ( 1 ) 中の 1 1位の炭素 ·炭素二重結合 (2置換ォレフィン) の一部 が水素化還元されたことを示した。
一方、 6 = 1. 0 0〜 2. 0 0にはシクロアルカン系メチン水素は 新たに出現せず芳香族環族の核水添が生じていないことを示した。 な お、 これ以外に大きな変化は見られなかった。 また、 I Rスペクトル 解析から無水力ルポニル基が残存していることを確認した。
この結果から、 当該還元処理化合物が、 一般式 (4) の構造を満足 する化学式 ( 1 ) で表されるテトラカルボン酸二無水物約 6 0モル% と一般式 ( 1 ) の構造を満足する化学式 (2 ) で表されるテトラカル ボン酸二無水物約 4 0モル%とから構成されることが確認された。 以下、 当該方法で得られた混合物を 「水添テトラカルボン酸二無水 物混合物 Α」 という。
化学式 ( 1 ) で表される上記テトラカルボン酸二無水物の 1 gを 1 Om l の THFに溶解し、 1 0 %パラジウムノカーボン触媒 (小島薬 品製) l O O mgを加えて、 1 2 0 ° (:、 9. 0 0〜 8. 5 0 M P a (水素圧) で水素化還元を 1 6時間行った。 触媒を除去後、 THFを 減圧蒸留して白色の結晶を 9 5 %の収率で回収した。
当該結晶の1 HNMRスぺクトル測定を上記と同様に行ったところ、 (5 = 6. 0 0〜 6. 2 5の領域に現れる炭素 . 炭素二重結合部分の 2 個の水素原子に帰属されるピーク面積が消滅し、 化学式 ( 1) 中の 1 1位の炭素 ·炭素二重結合 (2置換ォレフィン) が水素化還元され、 かつ芳香族環がされたことを示した。 一方、 3 = 1. 0 0〜 2. 0 0 にはシクロアルカン系メチン水素が出現した。 また、 I Rスペクトル 解析から無水カルボニル基が残存していることを確認し、 また、 マス スペクトルの結果から分子量が化学式 ( 1 ) の化合物より 8多い 3 8
6になっていることを確認した。
この結果から、 当該還元処理化合物が、 一般式 (2) の構造を満足 する下記化学式 (3 ) で表されるテトラカルボン酸二無水物であるこ とが確認された。
これらの脂環式テ卜ラカルボン酸二無水物系化合物の合成経路を図 2に示した。
化学式 ( 1) で表されるテトラカルボン酸二無水物 1 gを 1 0 m 1 の THFに溶解し、 1 0 %パラジウム Zカーボン触媒 (小島薬品製) 5 0 mgを加えて、 1 0 0°C、 1〜 0. 9 5 M P a (水素圧) で水素 化還元を 6時間行った。 触媒を除去後、 THFを減圧蒸留して白色の 結晶を 9 5 %の収率で回収した。 当該結晶の
1 HNMRスぺクトル測定を上記と同様に行ったところ、 6 = 6. 0 0〜 6. 2 5の領域に現れる化学式 ( 1 ) 中の 1 1位の炭 素 · 炭素二重結合 (2置換ォレフィン) 部分の 2個の水素原子に帰属 されるピークが消滅し、 (5 = 7. 2 0〜 7. 4 5の領域に現れる一置 換ベンゼン環部分の 5個の水素原子に帰属されるピーク面積と δ = 1. 0 0〜2. 0 0にはシクロアルカン系メチン水素は新たに出現した。
なお、 これ以外に大きな変化は見られなかった。 また、 I Rスぺクト ル解析から無水カルポニル基が残存していることを確認した。
それぞれのピーク面積の比から、 当該還元処理化合物が、 一般式 ( 1 ) の構造を満足する化学式 (2) で表されるテトラカルボン酸二 無水物約 5 0モル%と一般式 (2) の構造を満足する化学式 (3) で 表されるテトラカルボン酸二無水物約 5 0モル%とから構成されるこ とが確認された。
以下、 当該方法で得られた混合物を 「水添テトラカルボン酸二無水 物混合物 B」 という。
(参考例 1)
くポリアミック酸の合成〉
化学式 ( 1) で表されるテトラカルボン酸二無水物 7 5 2 mg ( 2 mmo 1 ) 、 4, 4 ' -ジアミノジフエ二ルェ一テル 40 0 m g (2m mo 1 ) 、 溶媒としての N, N—ジメチルァセトアミド 1. 5m lを 3 0 m 1のナスフラスコに入れ室温で 1昼夜攪拌反応させた。 反応溶 液は粘稠となった。 '
つづいて、 上記反応溶液に N, N—ジメチルァセトアミ ド 1 5 m 1 を加えて溶解させて粘稠度を低下させ、 当該反応溶液を 1 5 Om 1の メタノール中にあけた。 沈殿物を濾過にて回収し、 過剰メタノールで 洗浄した。 対数粘度は 2. 3であった。
くポリアミック酸の構造決定〉
( I Rスぺクトル測定)
1 540 cm— 1、 16 8 0 cm- 1 アミド結合帰属ピーク 1 7 8 0 cm— 1、 1 8 6 0 cm— 1 カルボン酸無水物帰属ピー クの消失
I Rスペクトルを図 3に示した。
以上の分析結果から、 参考例 1によるポリアミック酸は下記化学式 (4) の繰り返し単位構造を有するものであることが確認された。
化学式 (4)
化学式 (1) で表されるテトラカルボン酸二無水物 7 52 mg ( 2 mm o 1 ) 、 4, 4-ジアミノジフエニルエーテル 400 m g ( 2 mm ο 1 ) 、 溶媒としての Ν, Ν—ジメチルァセトアミ ド 1. 5m lを 3 0m 1のナスフラスコに入れ室温で 1昼夜攪拌反応させた。 反応溶液 は粘稠となった。
つづいて、 上記反応溶液を減圧下、 100°Cで 30分、 200。Cで 2時間加熱した。 室温まで冷却後、 N, N—ジメチルァセトアミ ド 1 5 m 1を加えて溶解させて粘稠度を低下させ、 当該反応溶液を 1 50 m 1のメタノール中にあけた。 沈殿物を濾過にて回収し、 過剰メタノ ールで洗浄した。 合成物は薄金色の粉体であり、 収率は 1 00 %であ つ 7こ。
くポリイミドの構造決定〉
( I Rスペクトル測定)
1 540 cm— 1、 1 680 cm— 1 アミド結合帰属ピークの消 失
1 710 cm— 1、 1780 cm— 1 イミ ド結合帰属ピーク
1 780 cm— 1、 1 8 60 cm— 1 カルボン酸無水物帰属ピー クの消失
I Rスぺクトルを図 4に示した。
以上の分析結果から、 参考例 1によるポリイミ ドは下記化学式 (5) の繰り返し単位構造を有するものであることが確認された。
(実施例 1〜4)
参考例 1における化学式 (1) で表されるテトラカルボン酸二無水 物 2mmo 1に代えて、 化学式 (2) で表されるテトラカルボン酸二 無水物 (以下、 「実施例 1」 という。 ) 、 化学式 (3) で表されるテ トラカルボン酸二無水物 (以下、 「実施例 2」 という。 ) 、 水添テト ラカルボン酸二無水物混合物 A (以下、 「実施例 3」 という。 ) 、 水 添テトラカルボン酸二無水物混合物 B (以下、 「実施例 4」 とい う。 ) をそれぞれ約 2 mmo 1とした他は、 参考例 1に示した手法と 同様にして、 ポリアミック酸およびポリイミ ドを合成し、 I Rスぺク トルで構造決定を行った。 各合成反応における収率はほぼ同一であり、 I Rスぺクトルの帰属もほぼ同一であった。
実施例 1によるポリアミック酸 (対数粘度は 2.1であった。 ) は下 記化学式 (6) 、 ポリイミ ドは下記化学式 (7) の繰り返し単位構造 を有するものであることが確認された。 化学式(6)
実施例 2によるポリアミック酸は (対数粘度は 2.1であった。 ) ド 記化学式 (8) 、 ポリイミ ドは下記化学式 (9) の繰り返し単位構造
を有するものであることが確認された。
化学式 (8)
実施例 3によるポリアミック酸 (対数粘度は 2. 0であった。 ) は化 学式 (4) と化学式 (6) の繰り返し単位構造を有するもの、 ポリイ ミ ドは化学式 (·5) と化学式 ( 7) の繰り返し単位構造を有するもの であることが確認された。
実施例 4によるポリアミック酸 (対数粘度は 2.2であった。 ) は化
学式 (6) と化学式 (8) の繰り返し単位構造を有するもの、 ポリイ ミ ドは化学式 (7 ) と化学式 (9) の繰り返し単位構造を有するもの であることが確 feされた。
くポリイミド等の有機溶剤への溶解性〉
上記実施例 1〜 4で得られた各ポリアミック酸、 ポリイミ ドを 5 m g秤量し、 室温の 5m 1のジメチルスルホキシド (DMS O) 、 N, N—ジメチルホルムアミ ド (DMF) 、 N—メチルピロリ ドンに投入 したところ、 すべての有機溶剤につき、 投入後、 直ちに溶解した。 ま た、 溶液は実質透明であった。
(参考例 2)
上記参考例 1において、 化学式 ( 1 ) のテトラカルボン酸二無水物 をピロメリツト酸ニ無水物に代えて合成したポリアミック酸、 ポリイ ミ ドを同様に評価したところ、 当該ポリアミック酸は溶解したものの 溶液には着色が見られ、 当該茶褐色のポリイミ ドは全く溶解せず、 沈 殿したままであった。
くポリイミドの光透過性〉
参考例 1、 実施例 1〜 4で得られたポリイミ ドを N—メチルピロリ ドンに溶解させ (0. 1質量%) 、 1 c m角の石英セルに入れ、 バン ド幅 2 nm、 走査速度 2 0 0 nm/m i n. で、 UV—吸収スぺク ト ルを測定した。 全てのポリイミ ドは吸収端が 3 3 0 nm以下で、 可視 域 (4 0 0〜 7 8 0 nm) に吸収を示さなかった。 なお、 上記可視域 での光透過率は、 参考例が 9 0 %、 実施例 1と実施例 3が 9 2 %、 実 施例 2と実施例 4が 9 4 %であり、 脂環式テトラカルボン酸二無水物 系化合物からなるポリイミ ド中でも極めて光透過性に優れることがわ かる。
くポリイミド等の熱分析〉
参考例 1によるポリイミ ドを窒素雰囲気下、 2 0°C/m i nの昇温 速度で T G A測定を行った。 5 %重量損失温度は 3 2 0 であり、 液
晶配向膜用途としての耐熱性を有していることが確認された。 また、
6 0 0 での重量残存率は 3 7 %であり、 熱分解性でコーキングを生 じ難い特性が確認された。
実施例 1〜4によるポリイミ ドの 5 %重量損失温度および 6 0 0 °C での重量残存率は、 実施例 1が 3 5 51C (5 0 %) 、 実施例 2が 3 5 5 °C (44 %) 、 実施例 3が 3 3 5 °C ( 2 %) 、 実施例 4が 3 5 5°C (44 %) であり、 脂環式テトラカルボン酸二無水物系化合物か らなるポリィミ ド中でも極めて耐熱性に優れることがわかる。 また、 後述する参考
例 2との比較から、 芳香族族系ポリイミ ドに対して熱分解性でコ一キ ングを生じ難い特性が確認された。
参考例 2のポリイミドを同様に評価したところ、 6 0 0 °Cでの重量 残存率は、 それぞれ 8 2 %であり、 熱分解性でコーキングを生じ易い 特性が確認された。
ぐ液晶表示素子用配向膜の製造 >
参考例 1および実施例 1〜 4によるポリアミック酸を、 NMP: ブチル セロソルブの容積比率が 7 : 3で溶解して、 それぞれの 5質量%溶液 を液晶配向剤として評価した。 以下、 参考例 1によるポリアミック酸 を使用したものをそれぞれ 「液晶配向剤 0」 、 実施例 1〜4によるポ リアミック酸を使用したものをそれぞれ 「液晶配向剤 1」 、 「液晶配 向剤 2」 、 「液晶配向剤 3」 、 「液晶配向剤 4」 という。
<製膜性評価 1 >
( 1 ) 「液晶配向剤 0」 、 「液晶配向剤 1」 、 「液晶配向剤 2」 、 「液晶配向剤 3」 、 「液晶配向剤 4」 を、 それぞれ、 透明電極付きガ ラス基板の透明電極面にスビンコ一ターにより塗布して膜を生成させ た。 なお、 工程中、 溶液の変色やゲル化は認められなかった。
(2) ( 1 ) で得られた塗布膜を 8 0 のホットプレート上で 1 2 0秒間乾燥した。 基板を目視で観察したところ、 液晶配向剤途膜の干
渉色ムラは無かった。
(3) ( 1) で得られた塗布膜を 2 0 0 °Cのホッ トプレート上で 1 20秒間乾燥した。 基板を目視で観察したところ、 「液晶配向剤 0」 の途膜に干渉色が発生した。
<プレチルト角の安定性〉
上記 (2) 得られた各基板をクリーンオーブン中 1 8 0°Cで 6 0分 間焼成した後、 液晶配向剤 Bを使用した基盤をラビングマシーンによ りラビングし、 セルギャップ 2 0 mで張り合わせ、 液晶 (メルク社製 「ZL I— 1 1 3 2」 Z) を注入し、 このセルの配向性を顕微鏡により 評価したところ、 各基板とも全面にわたり均一であった。
なお、 クリスタルローテーション法によりプレティルト角は、 ラビ ング条件により、 1 0〜 1 5 ° の範囲であつたが、 プレティルト角に は 「液晶配向剤 2」 > 「液晶配向剤 4」 - 「液晶配向剤 1」 >「液晶 配向剤 3」 > 「液晶配向剤 0」 の関係が見られた。
さらに、 このセルを 1 0 0° (:、 6 0 % RH条件下で 7 0 0時間放置 した後、 液晶配向性及びプレティルト角の測定を行なった。 「液晶配 向剤 1」 、 「液晶配向剤 2」 、 「液晶配向剤 3」 、 「液晶配向剤 4」 を使用した基板には変化は認められなかったが、 「液晶配向剤 0」 に は、 プレティルト角が低下した部分が見られた。 産業上の利用可能性
テトラカルボン酸二無水物として一般式 ( 1 ) (2) の化合物を必 須成分として用い、 一般式 (3) で表されるジァミンを反応させて得 られるポリアミック酸を脱水閉環して得られるポリイミ ドは、 その構 成材料として含有される一般式 ( 1 ) 、 (2) で表される脂環式テト ラカルボン酸二無水物の構造に由来して、 以下の優れた特性を有する。
( 1) 脂環式テトラカルボン酸二無水物中の主鎖を構成する部分はト リシクロ環構造であるため、 ポリイミドの耐熱性を大きく低下させる
ことがない。
( 2 ) 脂環式テトラカルボン酸二無水物の構造が非対称であり、 さら に、 芳香族環またはシクロへキサン環を側鎖として含むため、 ポリイ ミド分子に屈曲性が付与され、 光透過性が高い。
( 3 ) 脂環式テトラカルボン酸二無水物が非対称構造であり、 さらに、 芳香族環またはシクロへキサン環を側鎖として含むため、 有機溶剤へ の溶解性に優れ、 かつ、 ポリイミド分子に屈曲性が付与され、 塗膜成 形体の靭性が高い。
( 4 ) 脂環式テトラカルボン酸二無水物が温和で副反応の無い経路で 生成されるため、 再結晶による精製も可能である場合はさらに、 ポリ イミド分子の不純物濃度が低い。
( 5 ) ディ一ルス · アルダー反応で生成した炭素 ·炭素不飽和結合部 が水素添加されているため高温環境したでの逆ディールス · アルダー 反応による分解が抑制される。
( 6 ) 側鎖に液晶分子と親和性の高い芳香族環またはシクロへキサン 環を含有するため、 液晶分子との相互作用が強く安定した高ティルト 角が得られる。
したがって、 一般式 ( 1 ) ( 2 ) のテトラカルボン酸二無水物から 誘導されたポリイミ ド樹脂を含む液晶表示素子用配向膜を使用すれば、 可視光領域の透過性が高く、 製膜加工性と安定したプレティルト角を 与える液晶表示素子用配向膜を得ることができる。
本発明の液晶表示素子用配向膜によれば、 透明性と膜厚の均一性に 優れた樹脂膜が形成される。 また、 液晶配向膜を備えた液晶表示素子 は、 安定した液晶配向性を有する。
以上により、 本発明の液晶表示素子用配向膜は、 卓上計算機、 腕時 計、 置時計、 計数表示板、 ヮ一ドプロセッサ、 パーソナルコンピュー 夕、 液晶テレビなどの表示装置に含まれる配向膜として好適に用いる ことができる。