JP7037122B2 - ジアミンおよびその利用 - Google Patents
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Description
これらのデバイスにおいては、ガラス基板上に様々な電子素子、例えば、薄膜トランジスタや透明電極等が形成されているが、このガラス材料を柔軟かつ軽量な樹脂材料に替えることで、デバイス自体の薄型化や軽量化、フレキシブル化が期待される。
そして、そのような樹脂材料の候補としてはポリイミドが注目を集めており、ポリイミドフィルムに関する種々の報告が従来よりなされている(例えば特許文献1,2参照)。
すなわち、リタデーション(位相差)とは、複屈折(直交する2つの屈折率の差)と膜厚との積をいうが、この数値、特に厚さ方向のリタデーションは視野角特性に影響する重要な数値であり、大きなリタデーション値は、ディスプレイの表示品質の低下を招く原因となり得ることから(例えば特許文献3参照)、フレキシブルディスプレイ基板にあっても、高い柔軟性(可撓性)以外に、これらの特性も求められている。
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至5のアルキル基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシ基を表し、
a、b、d及びeは、それぞれ独立して、0~4の整数を表し、そして
cは0~2の整数を表す。)
第2観点として、式(1-2)で表されるジアミンである、第1観点に記載のジアミンに関する。
第5観点として、前記ジアミン成分が、式(A1)で表されるジアミンをさらに含む、第4観点に記載のポリアミック酸に関する。
第6観点として、前記酸二無水物成分が、式(C1)で表される酸二無水物を含む、第4観点又は第5観点に記載のポリアミック酸に関する。
第7観点として、第4観点乃至第6観点のうちいずれか一項に記載のポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドに関する。
第8観点として、第7観点に記載のポリイミドと、有機溶媒とを含む膜形成用組成物に関する。
第9観点として、第8観点に記載の膜形成用組成物から形成される薄膜に関する。
第10観点として、第9観点に記載の薄膜からなるフレキシブルデバイス用基板に関する。
第11観点として、式(2-1)で表されることを特徴とするジニトロ化合物に関する。
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至5のアルキル基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシ基を表し、
a、b、d及びeは、それぞれ独立して、0~4の整数を表し、そして
cは0~2の整数を表す。)
第12観点として、式(2-2)で表されるジニトロ化合物である、第11観点に記載のジニトロ化合物に関する。
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至5のアルキル基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシ基を表し、
a、b、d及びeは、それぞれ独立して、0~4の整数を表し、そして
cは0~2の整数を表す。)
式(2-1)で表されるジニトロ化合物のニトロ基を還元して式(1-1)で表されるジアミンを得る段階を含む、製造方法に関する。
また本発明のジアミン化合物から得られるポリイミドは、柔軟性及び透明性に優れ、さらに低いリタデーションを実現できる薄膜を形成できる。
さらに本発明のポリイミドを含む膜形成用組成物より得られる薄膜は、柔軟性及び透明性に優れることに加え、特に低い線膨張係数、低いリタデーションを示すことから、該樹脂膜についてもフレキシブルデバイス、特にフレキシブルディスプレイの基板として好適に用いることができる。
そして、本発明のポリイミドを用いて形成される膜は、高い透明性(高い光線透過率、低い黄色度)、低いリタデーションを示すことから、フレキシブルデバイス、特にフレキシブルディスプレイの基板として好適に用いることができる。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るジアミンは、式(1-1)で表されるジアミンであり、特に式(1-2)で表されるジアミンが好ましく、中でも、柔軟性及び透明性に優れ、低リタデーションの薄膜等を再現性よく得ることを考慮すると、好ましくは式(1-3)又は式(1-4)で表されるジアミンである。
上記炭素原子数1乃至5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、tert-アミル基、sec-イソアミル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
また炭素原子数1乃至5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert-ペントキシ基等が挙げられる。
塩基触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチル-N-メチルピペリジン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N-メチルモルホリン等の有機アミン類等の有機塩基が好適に用いられる。また、塩基触媒の使用量は、ベンゼノアントラセンジアミノ化合物1モルに対して2モル以上であれば特に限定されるものではないが、通常2~10モル程度である。
また、反応で副生する塩酸等の酸を中和するために、酸吸収剤を用いてもよい。酸吸収剤としては、プロピレンオキシド等のエポキシド類が挙げられる。酸吸収剤の使用量は、ベンゼノアントラセンジアミノ化合物1モルに対して2モル以上であれば特に限定されるものではないが、通常2~10モル程度である。
有機溶媒としては、反応に影響を及ぼさない溶媒であれば特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFという)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcという)、N-メチル-2-ピロリドン(以下、NMPという)等のアミド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(以下、THFという)、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、2-ブタノン、4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOという)などを用いることができる。これらの溶媒は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、溶媒中に水分が多く含まれると、エステルの加水分解が起こることから、溶媒は脱水溶媒を使用する、もしくは、脱水してから使用することが好ましい。
反応温度は、0~200℃程度とすることができるが、20~150℃が好ましい。
反応後は、溶媒を留去し、粗生成物のまま、あるいは精製して次工程に用いる。精製法は任意であり、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィ等公知の手法から適宜選択すればよい。
接触水素化の水素原子源としては、水素ガスやヒドラジン、塩化水素、塩化アンモニウム、ギ酸アンモニウム等が挙げられる。
接触水素化に用いる触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル、鉄、亜鉛、スズ等の金属の粉末が挙げられ、金属の粉末が活性体に担持されたものであってもよい。触媒の種類は、水素源の種類や反応条件に応じて適宜決定されるため、特に限定されないが、ニトロ基のみを還元できる触媒であればよく、好ましくは、パラジウム-炭素、酸化白金、ラネーニッケル、白金-炭素、ロジウム-アルミナ、硫化白金炭素が挙げられる。また、触媒の使用量は、水素源の種類や反応条件に応じて適宜決定されるため、特に限定されないが、原料のジニトロ体(中間体)に対して金属換算で通常0.01モル%から50モル%、好ましくは0.1モル%から20モル%である。
反応溶媒としては、反応に影響を及ぼさない溶媒を用いることができる。例えば、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素溶媒、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒、2-ブタノン、4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒、水などが挙げられる。これらの溶媒は、単独、又は、2種類以上混合して使用することができる。
反応温度は、原料や生成物が分解することなく、用いる溶媒の沸点以下であれば、反応が効率よく進行する温度で行なうことができる。具体的には、-78℃から溶媒の沸点以下の温度が好ましく、合成の簡便性の観点から、0℃から溶媒の沸点以下の温度がより好ましく、さらに好ましくは0~100℃、さらにより好ましくは10~50℃である。
また、接触水素化は、オートクレーブを用いる等して、加圧条件の下で行ってもよい。
反応後は、溶媒を留去後、再結晶、蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィ等公知の手法を用いて精製し、目的物のジアミンを得ることができる。なお、溶媒中に酸素が多く含まれると、生成したジアミン化合物の着色が起こる場合があるため、反応および精製に使用する溶媒は脱気してから使用することが好ましい。また、より着色を防ぐために、反応後の溶媒留去前、溶媒留去後の反応液も脱気することが好ましい。
以上説明した本発明のジアミンは、酸二無水物との重縮合反応によりポリアミック酸とした後、熱または触媒を用いた脱水閉環反応により、対応するポリイミドとすることができる。該ポリアミック酸及びポリイミド、すなわち、本発明の上記式(1-1)で表されるジアミンを含むジアミン成分と、酸二無水成分とを反応させることで得られるポリアミック酸(ジアミン成分と酸二無水物成分との反応生成物)、並びに該ポリアミック酸のイミド化物であるポリイミドも、本発明の対象である。
また、本発明の効果を損なわない範囲において、前記ジアミン成分には、上記式(1-1)で表されるジアミン、上記式(A1)で表されるジアミン以外の、その他のジアミン化合物を用いてもよい。
ポリアミック酸を合成する際の酸二無水物成分のモル数とジアミン成分のモル数との比は、酸二無水物成分/ジアミン成分=0.8~1.2である。
重縮合反応の温度は、-20~150℃、好ましくは-5~100℃の任意の温度を選択することができる。
ポリアミック酸含有溶液の希釈用溶媒並びに単離したポリアミック酸の再溶解用溶媒は、得られたポリアミック酸を溶解させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、m-クレゾール、2-ピロリドン、NMP、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、DMAc、DMF、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
加熱による方法は、100~300℃、好ましくは120~250℃の任意の温度で行うことができる。
化学的に閉環する方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミン、1-エチルピペリジンなどと、無水酢酸などとの存在下で行うことができ、この際の温度は、-20~200℃の任意の温度を選択することができる。
再溶解用溶媒は、得られたポリイミドを溶解させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、m-クレゾール、2-ピロリドン、NMP、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、DMAc、DMF、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
上述の本発明のポリイミドと有機溶媒を含む膜形成用組成物も本発明の対象である。
上記膜形成組成物に使用する有機溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、上記ポリアミック酸及びポリイミドの調製時に用いた反応溶媒の具体例と同様のものが挙げられる。より具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、平坦性の高い薄膜を再現性よく得ることを考慮すると、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトンが好ましい。
本発明の膜形成用組成物は、均一なものであって、相分離は認められないものである。
また本発明の膜形成用組成物における固形分量の配合量は、通常0.5~30質量%程度、好ましくは5~25質量%程度である。固形分濃度が0.5質量%未満であると薄膜を作製する上において製膜効率が低くなり、また膜形成用組成物の粘度が低くなるため、表面が均一な塗膜を得られにくい。また固形分濃度が30質量%を超えると、膜形成用組成物の粘度が高くなりすぎて、やはり成膜効率の悪化や塗膜の表面均一性に欠ける虞がある。なおここでいう固形分量とは、有機溶媒以外の成分の総質量を意味し、液状のモノマー等であっても固形分として重量に含めるものとする。
なお膜形成用組成物の粘度は、作製する薄膜の厚み等を勘案し適宜設定するものではあるが、特に5~50μm程度の厚さの薄膜を再現性よく得ること目的とする場合、通常、25℃で500~50,000mPa・s程度、好ましくは1,000~20,000mPa・s程度である。
なおその他成分を含む場合も含め、本発明の膜形成用組成物の固形分量において、上記ポリイミドの割合は70~100質量%とすることができる。
本発明の膜形成用組成物は、上述の方法で得られたポリイミドを上述の有機溶媒に溶解して得ることができるし、ポリイミドの調製後の反応溶液に所望により前記有機溶媒を更に加えたものとしてもよい。
以上説明した本発明の膜形成用組成物を基材に塗布して乾燥・加熱することで有機溶媒を除去し、高い耐熱性と、高い透明性と、適度な柔軟性と、適度な線膨張係数とを有し、しかもリタデーションの小さい薄膜を得ることができる。
そして上記薄膜、すなわち上記ポリイミドを含有する薄膜(膜形成用組成物の固形分からなる薄膜)も本発明の対象である。
特に、電子デバイスの基板材料として適用する場合においては、既存設備を利用することができるという観点から、適用する基材がガラス、シリコンウェハであることが好ましく、また得られる薄膜が良好な剥離性を示すことからガラスであることがさらに好ましい。なお、適用する基材の線膨張係数としては塗工後の基材の反りの観点から、好ましくは35ppm/℃以下、より好ましくは30ppm/℃以下、より一層好ましくは25ppm/℃以下、さらに好ましくは、20ppm/℃以下である。
また、得られる薄膜の耐熱性と線膨張係数特性を考慮すると、塗布した膜形成用組成物を40℃~100℃で5分間~2時間加熱した後に、そのまま段階的に加熱温度を上昇させ、最終的に175℃超~280℃で30分~2時間加熱することが望ましい。このように、溶媒を乾燥させる段階と分子配向を促進する段階の2段階以上の温度で加熱することにより、低熱膨張特性を発現させることができる。
特に、塗布した膜形成用組成物は、40℃~100℃で5分間~2時間加熱した後に、100℃超~175℃で5分間~2時間、次いで、175℃超~280℃で5分~2時間加熱することが好ましい。
加熱に用いる器具は、例えばホットプレート、オーブン等が挙げられる。加熱雰囲気は、空気下であっても窒素等の不活性ガス下であってもよく、また、常圧下であっても減圧下であってもよく、また加熱の各段階において異なる圧力を適用してもよい。
なおこのようにして形成された薄膜を基材から剥離する方法としては特に限定はなく、該薄膜を基材ごと冷却し、薄膜に切れ目を入れ剥離する方法やロールを介して張力を与えて剥離する方法等が挙げられる。
すなわち、基材上に塗布した上記ポリアミック酸含有溶液を加熱し、溶媒を蒸発させつつイミド化反応をさせることで、あるいは、基材上に塗布した上記ポリイミド含有溶液を加熱し、溶媒を蒸発させることで、本発明のポリイミドを含む膜を得ることができる。すなわち該膜は、上記ポリアミック酸含有溶液の固形分からなり、該固形分中のポリアミック酸のイミド化物を含む膜であるか、上記ポリイミド溶液の固形分からなるものである。この際、加熱温度は、通常40~500℃程度であり、例えば、40~150℃の範囲、180~350℃の範囲、さらに380~450℃の範囲で段階的に加熱してもよい。
なお、ポリイミドの膜と基材との密着性を更に向上させる目的で、ポリアミック酸含有溶液やポリイミド溶液に、カップリング剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
上記ポリアミック酸含有溶液やポリイミド溶液からなる膜形成用組成物並びに該組成物を用いて形成される膜も本発明の対象である。
なお、ポリアミック酸含有溶液やポリイミド溶液に配合され得る公知の添加剤や、ポリイミドの膜の形成等に係る諸条件は、先に詳述した膜形成用組成物に配合され得る添加剤や、該組成物から形成される薄膜の製造等に係る諸条件を適宜採用することができる。
DATDNB:ジアミノトリプチセンジニトロベンズアミド(Diamino Triptycene Dinitrobenzamide)
DATDAB:ジアミノトリプチセンジアミノベンズアミド(Diamino Triptycene Diaminobenzamide)
THF:テトラヒドロフラン
DMF:ジメチルスルホキシド
GBL:γ-ブチロラクトン
TFMB:2,2’-ジ(トリフルオロメチル)ベンジジン
TCA:2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸-1,4:2,3-二無水物
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
カラム:Inertsil ODS-3、5μm、4.6×250mm
オーブン:40℃、 検出波長:200nm、254nm、 流速:1.0mL/分
溶離液:
DATDAB:アセトニトリル/0.5%リン酸水溶液=70/30 サンプル注入量:10μL
装置:フーリエ変換型超伝導核磁気共鳴装置(FT-NMR)(INOVA-400(Varian社)400MHz、
溶媒:DMSO-d6、CDCl3
内標準物質:テトラメチルシラン(TMS)
<実施1-1>(DATDNBの合成)
次にこのDATDNB粗物(57.3g)をメタノール(360g)に加え、還流条件(65℃)で1時間撹拌し、室温に冷却した。析出物をろ過し、得られたろ取物を70℃にて減圧乾燥し、DATDNBを45.8g得た(収率:95.4%)。
この結晶は、1H-NMR分析結果から、DATDNBであることを確認した。
1H-NMR(DMSO-d6、δppm):10.7(s、2H)、8.5(d、4H)、8.4(d,4H)、7.5(m,4H)、7.1(s,2H)、7.0(m,4H)、5.7(s,2H).
反応容器にDATDNB(10.0g)、5%Pd-C(STDタイプ、wet品、エヌ・イー ケムキャット(株)製、1.0g)、ジメチルホルムアミド(70g)を仕込み、反応容器内を水素置換した後、水素圧0.8MPaの条件下、室温にて23時間撹拌した。ここまでと同じ操作をDATDNB(10.0g)スケールで2度実施した。反応完了をHPLCにて確認し、反応液を合一後、Pd-Cをろ過し、N,N-ジメチルホルムアミド(60g)でPd-Cを洗浄した。このろ液にヒドラジン1滴を添加後、室温で水(1650g)を滴下した。析出物をろ過後、ろ取物を70℃にて減圧乾燥することでDATDAB粗物(28.5g)を得た。
このDATDAB粗物(28.5g)を酢酸エチル(1140g)に加え、還流条件下(77℃)1時間撹拌後、室温まで冷却した。析出物をろ過し、酢酸エチル(285g)で2回洗浄後、ろ取物(35.0g)を70℃にて減圧乾燥することでDATDAB酢酸エチルリパルプ物(28.0g)を得た。このDATDAB酢酸エチルリパルプ物(28.0g)を室温下、N,N-ジメチルホルムアミド(84g)に溶解し、酢酸エチル:ヘキサン=1:1の混合溶媒(317g)を滴下し、1時間撹拌した。析出物をろ過し、ろ取物(42.5g)を70℃にて減圧乾燥することでDATDAB再結晶物(23.9g)を得た。
このDATDAB再結晶物(23.9g)をヘキサン(717g)に加え、還流条件下(68℃)、1時間撹拌後、室温まで冷却した。析出物をろ過し、ヘキサン(120g)で3回洗浄後、ろ取物(27.5g)を70℃にて減圧乾燥することでDATDABを22.4g得た(収率:76.0%、HPLC面百(保持時間:4.0min):99.3%)。この結晶は、1H-NMR分析結果から、DATDABであることを確認した。
1H-NMR(DMSO-d6、δppm):9.8(s、2H)、7.9(m、4H)、7.4(m,4H)、7.0(m,4H)、6.9(s,2H)、6.7(m,4H)、5.8(b,4H).5.6(s,2H).
<実施例1-3 ポリイミドの製造[DATDAB:TFMB:TCA:CBDA=30:70:50:50(モル比)]
その後、固形分濃度が10質量%となるように、GBLを用いて反応混合物を希釈し、希釈した反応混合物に無水酢酸2.654g(0.026モル)及びピリジン1.542g(0.0195モル)を加え、窒素雰囲気下、100℃にて4時間撹拌した。
次いで、得られた反応混合物を500gのメタノール中に加えて30分間撹拌し、ろ過によって析出物であるポリイミドを回収した。この操作を3回繰り返した。
最後に、得られたポリイミド中のメタノール残渣を真空オーブンにより、120℃で8時間乾燥し、乾燥したポリイミドを得た(3.53g、収率:97.8%)。
得られたポリイミド(粉末)を、固形分濃度が12質量%となるようにGBLに溶解させた。
室温にて、前記ポリイミド3gを、固形分濃度が12質量%となるようにGBLに溶解し、得られたポリイミド溶液を、5μmのフィルターを用いて加圧ろ過した。
その後、ろ過したポリイミド溶液をガラス基板上に塗布し、大気下で、50℃で30分間、140℃で30分間、200℃で60分間、順次加熱し、透明のポリイミドの膜を得た。そして、得られたポリイミドの膜を機械的切断にて剥がし、評価試料とした。
また、上記ポリイミドの数平均分子量及び重量平均分子量についても、下記手順に従い測定した。結果を表1に示す。
CIE b値(CIE b*)は、日本電色工業(株)製 SA4000スペクトロメーターを用いて、室温にて、リファレンスを空気として、測定を行った。
2)光線透過率(透明性)(T400nm、T550nm)
波長400nm及び550nmの光線透過率(T400nm、T550nm[%])は、(株)島津製作所 紫外可視分光光度計 UV-Visible 3600を用い、室温にて、リファレンスを空気として、測定を行った。
3)リタデーション(Rth、R0)
厚さ方向リタデーション(Rth)及び面内リタデーション(R0)を、王子計測機器(株)製、KOBURA 2100ADHを用いて、室温にて測定した。
なお、厚さ方向リタデーション(Rth)及び面内リタデーション(R0)は以下の式にて算出される。
R0=(Nx-Ny)×d=ΔNxy×d
Rth=[(Nx+Ny)/2-Nz]×d=[(ΔNxz×d)+(ΔNyz×d)/2
Nx、Ny:面内の直交する2つの屈折率(Nx>Ny、Nxを遅相軸、Nyを進相軸とも称する)
Nz:面に対して厚さ(垂直)方向の屈折率
d:膜厚
ΔNxy:面内の2つの屈折率の差(Nx-Ny)(複屈折)
ΔNxz:面内の屈折率Nxと厚さ方向の屈折率Nzの差(複屈折)
ΔNyz:面内の屈折率Nyと厚さ方向の屈折率Nzの差(複屈折)
4)線膨張係数(CTE)
各評価試料を幅5mm、長さ16mmのサイズにカットし、
これをTAインスツルメンツ社製 TMA Q400を用いて、まず10℃/minで昇温して50℃乃至300℃まで加熱(第一加熱)し、次いで10℃/minで降温して30℃まで冷却した後に、10℃/minで昇温して30℃乃至410℃まで加熱(第二加熱)した際の、第二加熱の50℃乃至200℃、並びに200℃乃至250℃における線膨張係数(CTE[ppm/℃])の値を測定することで求めた。なお、第一加熱、冷却および第二加熱を通じて、荷重0.05Nを加えた。
5)5%重量減少温度(Td5%)
5%重量減少温度(Td5%[℃])は、TAインスツルメンツ社製 TGA Q500を用い、窒素中、樹脂薄膜約5乃至10mgを50乃至800℃まで10℃/minで昇温して測定することで求めた。なお、150℃における重量を重量減少0%とした。
6)膜厚
得られた樹脂薄膜の膜厚は、(株)テクロック製 シックネスゲージにて測定した。
7)面内複屈折(Δn)
前述の<3)リタデーション>により得られた厚さ方向リタデーション(Rth)の値を用い、以下の式にて算出した。
ΔN=[Rth/d(フィルム膜厚)]/1000
8)数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)
数平均分子量(以下、Mnと略す)と重量平均分子量(以下、Mwと略す)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製0.45μmのフィルタにてろ過したポリマー試料を、装置:昭和電工(株)製、Showdex GPC-101、カラム:KD803およびKD805、カラム温度:50℃、溶出溶媒:DMF、流量:1.5ml/分、検量線:標準ポリスチレン、の条件にて測定した。
上記新規なジアミンは、共役系を破壊し光伝送のためのより大きな自由体積をもたらす嵩高い構造によって特異な配列方向を有すると考えられ、そしてそのことがポリイミド膜において、透過率とリタデーション(位相差)に優れた性能をもたらすと考えられる。
このように、本発明の新規な酸二無水物を用いて製造したポリイミド膜は、高い透明性(高い光線透過率)及び耐熱性、そして低いリタデーションという特性を有し、すなわちフレキシブルディスプレイ基板のベースフィルムとして必要な要件を満たすものであり、フレキシブルディスプレイ基板のベースフィルムとして特に好適に用いることができることが期待できる。
Claims (14)
- 請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のジアミンを含むジアミン成分と、酸二無水物成分とを用いて得られるポリアミック酸。
- 請求項4乃至請求項6のうちいずれか一項に記載のポリアミック酸から得られるポリイミド。
- 請求項7に記載のポリイミドと、有機溶媒とを含む膜形成用組成物。
- 請求項8に記載の膜形成用組成物から形成される薄膜。
- 請求項9に記載の薄膜からなるフレキシブルデバイス用基板。
- 式(1-1)で表されるジアミンを製造する方法であって、
1乃至5のアルキル基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシ基を表し、
R6及びR7は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至5のアルキル基又は炭素原子数1乃至5のアルコキシ基を表し、
a、b、d及びeは、それぞれ独立して、0~4の整数を表し、そして
cは0~2の整数を表す。)
式(2-1)で表されるジニトロ化合物のニトロ基を還元して式(1-1)で表されるジアミンを得る段階を含む、製造方法。
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