明 細 書
溶融塩電解による基体への多元系合金の作製方法
技術分野
[0001] 本発明は、基体に合金薄膜および多孔性合金薄膜を作製する方法に関する。
背景技術
[0002] 近年、ビデオムービー、 DVDレコーダー、通信機器の小型 '軽量'高性能化が進ん でいる。これらの機器を構成する小型デバイスに用いる磁石は、現在、焼結磁石およ びボンド磁石のブロックを機械カ卩ェすることにより得ている。
[0003] 焼結磁石は脆い材料であるため、機械による微小形状加工が困難であり、超小型 磁石には不向きである。一方、ボンド磁石は機械カ卩ェ性に優れているため、現在、ミ リサイズの磁石ではボンド磁石が主流になっている。例えば、超小型ァクチユエータ にお 、ても、直径が lmm程度で長さが 1mm程度の円柱ボンド磁石が必要とされて!/、 るが、これ以上に微小で複雑な形状の磁石は得られな 、。
[0004] 小型モーター、小型回転センサ等に使用する小型磁石は、主に押出成形法等によ り作製されている。押出成形法では、プレス圧力に耐えうる強度を確保するためにあ る程度大きな型を必要とすることから、現在作製されて ヽる磁石は形状のシンプルな ものに限られ、また、複雑な形状を有する超小型磁石を作製することは不可能である
[0005] また、将来の産業 ·医療用の検査 ·修復ロボットに適用するために、サイズが lmm3 以下のマイクロマシン用超小型モーターの出現が期待されている力、そのために必 要となる超小型磁石は、内径 lmm以下の円筒内面に形成する必要があり、従来の方 法ではそのような磁石の作製は不可能である (例えば、特許文献 1参照)。
[0006] 一方、小型磁石の製作にスパッタ法等の物理蒸着法を適用すると、磁石の寸法を サブミクロンオーダーで制御することができるので、この利点を生力して、希土類金属 系の薄膜磁石が開発されている。しかし、物理蒸着法では、複雑形状を有する基板 に対して均一な合金薄膜を作製することは難しぐ大型のターゲット、基板、ターゲッ ト自体を動かす装置等、非常に複雑で大きな装置が必要となる。従って、複雑形状を
有する微小サイズの対象に対しての適用は極めて困難であり、大量生産も不可能で ある (例えば、特許文献 2参照)。
[0007] また、合金薄膜を作製する方法としてはめつき法があり、電気めつき法、無電解めつ き法が使用されている。この電気化学的な反応により作製するめつき法では、半導体 産業における銅めつき技術のように、非常に簡便な装置構成で、微小複雑形状を有 する基板に対しても均一な薄膜作製を行うことが可能である。しかしながら、水溶液を 電解浴として用いる湿式めつき法では、使用できる金属原子の種類が限定され、希 土類ゃァクチノイドといった卑な元素を含む合金薄膜を作製することは不可能である
[0008] 希土類ゃァクチノイドと!/、つた卑な元素を含む合金薄膜を作製するためには、溶融 塩電解を使用することが考えられるが、溶融塩中における従来の方法では、二元系 合金のみ検討されてきており、多元系合金を形成させる場合、少なくとも二種類以上 のイオンが同時に電気化学反応を起こす必要がある。しかし、目的の合金組成が正 確に得られる条件は非常に限られており、これまで見出すことができな力つた。特に、 本発明が対象とするような高アスペクト比の微小複雑形状の基板に対して行った場 合には、反応種の供給不足等の理由で、均一な膜組成や膜厚が得られない場合が 殆どであった (例えば、非特許文献 1および 2参照)。
[0009] また、溶融塩中における従来の方法では、形成時の大きな密度変化に伴って、得 られる合金と基板との界面で大きな応力が発生し、膜が剥離し易くなるという場合が めつに。
[0010] さらに、従来法では合金作製後の冷却時に、作製温度である 450°C以上の高温か らクェンチングを行っており、このことも合金層の剥離やひび割れを促進する原因の 一つと考えられる。この冷却過程に関しては、試料作成後徐冷することにより改善可 能と思われるが、希土類等を含む合金は非常に酸ィ匕し易いため、従来の気相中での 徐冷では極低酸素濃度の雰囲気を準備する必要があり、非常に困難であった。
[0011] また、中温領域(200〜350°C)における溶融塩電析については、これまで
LiBr-KBr-CsBr系等の低融点の溶融塩力いくつか知られていたものの、電析を行う ための電解浴として使用された報告は、殆ど見当たらない。唯一、溶融
LiBr-KBr-CsBr中での Crめっきについて簡単に紹介されているのみであり(例えば、 非特許文献 3参照)、希土類ゃァクチノイドを基材中に注入したり、複数の金属を基 材上に同時共祈させることが行われたことはない。これは、セシウムのハロゲンィ匕物を 含まない他の溶融塩系と比べ、前処理 (脱水)や取り扱う際の雰囲気制御に一層の 注意を要することに加えて、上述のように最適な電解条件が見出されな力つたことが 原因と考えられる。
特許文献 1:特開平 11-74122号公報
特許文献 2:特開平 8-83713号公報
非特干文献 1: Formation of Dy-Fe Alloy Films by Molten bait Electrochemical Process", H. Konishi, T. Nohira and Y. Ito, Electrocnim. Acta, 47, pp. 3533-3539 (2002).
非特許文献 2: "Electrochemical formation of Sm- Co alloys by codeposition of Sm and Co in a molten LiCl— KC1— SmC13— CoC12 system", T. Iida, T. Nohira and Y. Ito, Electrochim. Acta, 48, pp. 2517—2521 (2003).
非特許文献 3: "The chemistry and electrochemistry associated with the
electroplating of group VIA transition metals", S. H. White and U. M. Twardoch, J. Appl. Electrochem., 17, pp. 225-242 (1987).
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0012] 本発明の目的は、微細および Zまたは複雑な形状の基体に対して膜厚および膜 組成が均一な薄膜が作製できる方法を提供することである。
課題を解決するための手段
[0013] 本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の条件下で溶融塩電解を行うことによ つて上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
[0014] すなわち、本発明は、下記の多元系合金の作製方法に関する。
[0015] 項 1.ァクチノイドィ匕合物および希土類ィ匕合物からなる群力 選ばれる少なくとも 1 種の金属化合物を溶解させた電解浴中において、 Fe、 Coおよび Ni力もなる群力 選 ばれる少なくとも 1種の金属を含み、微細および Zまたは複雑な形状を有する基体を
陰極に使用して溶融塩電解を行うことを特徴とする、微細および zまたは複雑な形状 を有する基体に対する合金薄膜の作製方法。
[0016] 項 2.ァクチノイドィ匕合物および希土類ィ匕合物からなる群力 選ばれる少なくとも 1 種の金属化合物と Fe化合物、 Co化合物および Niィ匕合物からなる群力 選ばれる少 なくとも 1種の金属化合物とを溶解させた電解浴中で、微細および Zまたは複雑な形 状を有する基体を陰極に使用して溶融塩電解を行うことを特徴とする、微細および Z または複雑な形状を有する基体に対する合金薄膜の作製方法。
[0017] 項 3.微細および Zまたは複雑な形状が、 (1)内径が lmm以下の円筒状;(2)外径 力 Slmm以下の円筒状;(3)幅が lmm以下であって、かつ、アスペクト比が 1以上である 溝状;(4)内径が lmm以下であって、かつ、アスペクト比が 1以上である細孔状;(5)入 り口部分の内径が lmm以下であり、アスペクト比が 1以上であり、かつ、入り口部分の 内径に対する細孔内部における最大径の比がはり大きい形状;および (6)単位体積 当たりの比表面積が 100m2/m3以上である多孔質形状力 なる群力 選ばれる少なく とも 1種の形状であることを特徴とする項 1または 2に記載の方法。
[0018] 項 4.溶融塩電解において、(a)平均陰極電流密度を l〜500mAZcm2、通電時間 と休止時間との比(デューティー比)を 1 : 0.5〜1 : 5として定電流ノルス電解を行うか、 または (b)電極電位を A成分が析出する電位に対して— 0.2V〜 + 1.5Vとし、デューテ ィー比を 1: 0.5〜1: 5として定電位パルス電解を行うことを特徴とする項 1〜3のいずれ かに記載の方法。
[0019] 項 5.溶融塩電解において、(c) (i)通電時間と休止時間との比(デューティー比)を 1 : 0.5〜1 : 5とし、(ii)陰極電流密度の範囲を l〜500mAZcm2とし、電解開始時の電 流密度を最小値または最大値として、その電流密度を (0.1〜20mA/cm2) /hの範囲 内で増カロもしくは減少させることにより走査型電流パルス電解を行うか、または(d) (i) デューティー比を 1 : 0.5〜1 : 5とし、(ii)電極電位を A成分が析出する電位に対して— 0.2Vから B成分が析出する電位に対して 0.01V程度の範囲内で、電解開始時の電 極電位を最小値または最大値として 0.1〜100mVZhの割合で増加または減少させる ことにより走査型電位パルス電解を行うことを特徴とする項 1〜3のいずれか〖こ記載の 方法。
[0020] 項 6.塩化セシウム、臭化セシウムおよびヨウ化セシウム力もなる群力も選ばれる少 なくとも 1種と、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物 力 なる群力も選ばれる少なくとも 1種とを含む溶融塩中に、ァクチノイドィ匕合物およ び希土類ィ匕合物からなる群力 選ばれる少なくとも 1種の金属化合物を溶解させ、 Fe 、 Coおよび Ni力もなる群力も選ばれる少なくとも 1種の金属を含み、微細および Zま たは複雑な形状を有する基体を陰極に使用して、 200〜350°Cで溶融塩電解を行うこ とを特徴とする、項 1、 3〜5のいずれかに記載の方法。
[0021] 項 7.塩化セシウム、臭化セシウムおよびヨウ化セシウム力もなる群力も選ばれる少 なくとも 1種と、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物 力 なる群力も選ばれる少なくとも 1種とを含む溶融塩中に、ァクチノイドィ匕合物およ び希土類ィ匕合物からなる群力 選ばれる少なくとも 1種の金属化合物と Fe化合物、 Co化合物および Niィ匕合物力もなる群力 選ばれる少なくとも 1種の金属化合物とを溶 解させ、微細および Zまたは複雑な形状を有する基体を陰極に使用して、 200〜350 °Cで溶融塩電解を行うことを特徴とする、項 2〜5の 、ずれかに記載の方法。
[0022] 項 8.項 1〜7のいずれかに記載された方法により得られた合金薄膜に対して、さら に陽極と陰極とを入れ替えて通電することを特徴とする多孔性合金薄膜の作製方法
[0023] 項 9. 200〜350°Cの電解浴中で通電を行うことを特徴とする項 8記載の方法。
[0024] 項 10.項 1〜7のいずれかに記載の方法により得られた合金薄膜。
[0025] 項 11.項 8または 9に記載の方法により得られた多孔性合金薄膜。
[0026] 項 12.項 1〜7のいずれかに記載の方法により得られた合金薄膜を有する基体。
[0027] 項 13.項 8または 9に記載の方法により得られた多孔性合金薄膜を有する基体。
[0028] 本発明の合金薄膜の作製方法は、溶融塩電解を利用することを特徴とし、ァクチノ イドおよび希土類力 選ばれる少なくとも 1種の元素と Fe、 Coおよび Niからなる群から 選ばれる少なくとも 1種の元素との合金薄膜が作製される。作製される合金の例とし ては、 AB、 AB、 AB、 AB、 A B、 A B 、 A B および A B (式中、 Aは、同一または相
2 3 5 2 7 2 17 4 13 5 23
異なって、ァクチノイドまたは希土類を示し、 Bは、同一または相異なって、 Fe、 Coま たは Niを示す。)からなる群力も選ばれる少なくとも 1種の合金などが挙げられる。(以
下、ァクチノイドおよび希土類力 選ばれる少なくとも 1種の元素を「 (A)成分」、 Fe、 Coおよび Ni力もなる群力 選択される少なくとも 1種の元素を「(B)成分」と呼ぶ場合 がある。 )
本発明の作製方法により、微小または複雑な形状を有する基体に対しても、二元系 合金薄膜、三元系以上の多元系合金薄膜、またはそれらの多孔体 (多孔性合金薄 膜)を得ることができる。このような基体としては、例えば、(1)内径力 lmm以下の円筒 状;(2)外径が lmm以下の円筒状;(3)幅が lmm以下であって、かつ、アスペクト比が 1以上である溝状;(4)内径が lmm以下であって、かつ、アスペクト比力 以上である細 孔状;(5)入り口部分の内径が lmm以下であり、アスペクト比が 1以上であり、かつ、入 り口部分の内径に対する細孔内における最大径の比がはり大きい形状;(6)単位体 積当たりの比表面積が 100m2/m3以上である多孔質形状等の形状部を有する基体が 挙げられる。本発明はこのような微細および Zまたは複雑な形状を有する基体に対し ても膜厚および膜組成が均一な合金薄膜を作成するのに適している。
[0029] そして、本発明の作成方法には、以下に詳述する電気化学インプラント法 (以下、 単にインプラント法と称する場合がある)および多元素同時共析法 (以下、単に共析 法と称する場合がある)の 2種類の方法がある。
[0030] 雷気化学インプラント法
本発明におけるインプラント法とは、ァクチノイド金属化合物および希土類ィ匕合物 力 なる群力 選ばれる少なくとも 1種の金属化合物を溶解させた電解浴中において 、 Fe、 Coおよび Ni力 なる群力 選ばれる少なくとも 1種の金属を有する基体を陰極 に使用して溶融塩電解を行う方法をいう。
[0031] この方法によれば、基体が有する金属中に、電解浴中のァクチノイドおよび希土類 力 なる群力 選ばれる少なくとも 1種の元素を導入し、合金化することができる。また 、電解条件を適宜選択することにより、当該元素の導入を調節でき、微細および Zま たは複雑な形状を有する基体表面に対しても、膜厚および膜組成の均一な合金薄 膜を作製することができる。
[0032] 多元素同時共析法
本発明における共析法とは、ァクチノイド化合物および希土類ィ匕合物力もなる群か
ら選ばれる少なくとも 1種の金属化合物と Feィ匕合物、 Co化合物および Niィ匕合物から なる群力 選ばれる少なくとも 1種の金属化合物とを溶解させた電解浴中で、溶融塩 電解を行う方法である。
[0033] この方法によれば、基体表面上に様々な組成の合金薄膜を作製することができる。
また、微細および Zまたは複雑な形状を有する基体表面に対しても、膜厚および膜 組成が均一で基材との密着性の高い合金薄膜を作製することができる。
[0034] 以下、本発明の合金薄膜の作製方法について詳説する。
[0035] 電解浴
本発明において、電解浴としては、インプラント法を使用する場合にも共析法を使 用する場合にも、一般に溶融塩電解において使用する電解浴が使用できる。例えば 、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ土類金属のハロゲン化物などを、単独でま たは 2種以上組み合わせて得られる溶融塩を、電解浴の溶媒として使用するのが好 ましい。
[0036] このようなアルカリ金属ハロゲン化物としては、 LiF、 NaF、 KF、 RbF、 CsF、 LiCl、
NaCl、 KC1、 RbCl、 CsCl、 LiBrゝ NaBrゝ KBrゝ RbBr、 CsBrゝ Lil、 Nal、 KI、 Rbl、 Csl等が 使用でき、アルカリ土類金属ハロゲン化物としては、 MgF、 CaF、 SrF、 BaF、 MgCl
2 2 2 2 2
、 CaCl、 SrCl、 BaCl、 MgBr、 CaBr、 SrBr、 BaBr、 Mgl、 Cal、 Sri、 Bal等力 S使用
2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 できる。
[0037] 上記化合物は単独で使用することもできるし、 2種以上を組み合わせて使用するこ ともできる。これらの化合物の組み合わせ、組み合わせる化合物の数、混合比等も限 定されず、電気分解される金属の種類等に応じて適宜選択することができる。
[0038] これらの中でも、アルカリ土類金属のハロゲンィ匕物および Zまたはアルカリ土類金 属のハロゲン化物が好ましぐ該ハロゲン化物のうち融点が 300°C以下のものがより好 ましい。このような低融点化合物の溶融塩を電解浴として用いることにより、例えば、 200〜350°C程度、好ましくは 250〜350°Cの中温域で合金の形成を行うことができる ので、基体と合金との熱膨張係数の違いによる起こりうる合金薄膜の基体力もの剥離 を大幅に抑制することができる。また、高温に弱い基体を使用して合金薄膜を作製す る場合に有利である。
[0039] 好ま 、電解浴としては、例えば、塩化セシウム、臭化セシウムおよびヨウ化セシゥ ムカ なる群力 選ばれる少なくとも 1種と、アルカリ金属のハロゲンィ匕物およびアル カリ土類金属のハロゲンィ匕物からなる群力 選ばれる少なくとも 1種とを含む溶融塩 が使用できる。
[0040] より具体的には、 LiClおよび KC1を溶融させたもの(LiCl: KCl=50mol%〜70mol%程 度: 30mol%〜50mol%程度、好ましくは 57mol%〜60mol%程度: 40mol%〜43mol%程度)、 NaClおよび KC1を溶融させたもの(NaCl: KCl=40mol%〜60mol%程度: 40mol%〜 60mol%程度、好ましくは 48 mol%〜 52 mol%程度: 48 mol%〜52 mol%程度)、 LiCl、 KC1 および CsClを溶融させたもの(LiCl: KCl : CsCl=50 mol%〜65 mol%程度: 5mol%〜 20mol%程度: 25mol%〜45mol%程度、好ましくは 58mol%〜61mol%程度: 11 mol%〜 12mol%程度: 28mol%〜31mol%程度)、 LiBr、 KBrおよび CsBrを溶融させたもの(LiBr: KBr: CsBr=50mol%〜65 mol%程度: 10 mol%〜25mol%程度: 20 mol%〜30mol%程度、 好ましくは 55mol%〜57mol%程度: 18mol%〜20mol%程度: 24mol%〜26mol%程度)が好 ましい。
[0041] このような溶媒中に、基体上に作製する多元系合金の原料となる金属化合物 (ィォ ン源)を添加し、溶融塩電解を行うことにより、所望の合金薄膜を得ることができる。
[0042] また、本発明における電解浴には、その他の成分として、溶解補助剤、電解補助剤 が使用できる。当該その他の成分としては、 Li 0、 LiOH、 Li CO
2 2 3等の、アルカリ金属 またはアルカリ土類金属の酸ィ匕物、水酸化物、あるいは (A)および Zまたは(B)元素 を含む酸化物、水酸化物、酸塩ィ匕物等が挙げられる。
[0043] イオン源
( 1)雷気化学インプラント法
インプラント法においては、電解浴中に存在する (A)成分のイオンが、陰極に存在 する Fe、 Niおよび Coからなる群力 選ばれる少なくとも 1種の金属に導入される。この ため電解浴中には、イオン源として、(A)成分のイオンが必須である。なお、(B)成分 のイオンが電解浴中に存在して 、てもよ!/、。
[0044] (A)成分のイオンの供給源としては、ァクチノイド金属化合物および希土類ィ匕合物 が例示される。ァクチノイドィ匕合物または希土類ィ匕合物としては、ハロゲン化物が好
ましぐ AXまたは AXで表される化合物がより好ましい。 Aは、ァクチノイドまたは希土
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類である。 Xは、 F、 Cl、 Brまたは Iである。
[0045] ァクチノイドとしては、アクチニウム (Ac)、トリウム(Th)、ウラン(U)、ネプツニウム(Np )、プルトニウム(Pu)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)、バークリウム(Bk)、カリホル -ゥム(Cf)、アインスタイニウム(Es)、フェルミウム(Fm)、メンデレビウム(Md)、ノーべ リウム(No)、ローレンシウム(Lr)が挙げられる。
[0046] 希土類としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム (Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、 プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウ口ピウム( Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エル ビゥム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム (Yb)、ルテチウム(Lu)等が例示できる。
[0047] これらの金属の中でも、本発明にお 、ては、 Th、 U、 Y、 La、 Ce、 Pr、 Nd、 Sm、 Eu、 Gd、 Tb、 Dy、 Er、 Yb力も選ばれる少なくとも 1種が好ましい。
[0048] 上記金属化合物は、単独で使用することもできるし、 2種以上を組み合わせて使用 することもできる。電解浴中に添加する金属化合物の量は限定されず、 目的とする合 金や作製条件に応じて適宜選択することができる。例えば、 0.1〜10mol%程度、好ま しくは 0.5〜5 mol%程度添加すればよい。 2種以上の金属化合物を使用する場合は、 各々の添カ卩量が上記の範囲であればよ!、。
共析法にぉ 、ては、電解浴中に存在する (A)成分のイオンと(B)成分のイオンとが 、陰極表面で同時に還元されて、(A)成分と (B)成分とからなる合金として、陰極表 面上に析出する。このため電解浴中には、イオン源として、(A)成分のイオンと (B)成 分のイオンとが必須である。
[0050] (A)成分のイオンの供給源としては、ァクチノイドィ匕合物および希土類ィ匕合物から なる群から選ばれる少なくとも 1種の金属化合物が挙げられる。これら金属化合物は 、上記(1)電気化学インプラント法にて記載したものを使用でき、これらの例示、およ び好ま 、ものも上記(1)電気化学インプラント法にて記載したとおりである。これら の金属化合物は単独で使用することもできるし、 2種以上を組み合わせて使用するこ とちでさる。
[0051] (B)成分のイオンの供給源としては、 Fe化合物、 Co化合物および Niィ匕合物力 なる 群力 選ばれる少なくとも 1種の金属化合物が挙げられる。該金属化合物としては、 該金属の塩化物、酸化物、酸塩化物、水酸化物 が例示され、好ましくは Feハロゲン 化物、 Coハロゲン化物、 Niハロゲンィ匕物である。これらの供給源は、インプラント法に お!、て (B)成分供給源を使用する場合にも利用できる。
[0052] また、(A)成分のイオンと (B)成分のイオンとを同時に供給する供給源としては、 (A )および (B)の両方を含有する合金、化合物などであってもよい。このような合金とし ては、 AB、 AB、 AB、 AB、 A B、 A B 、 A B 、 A B (式中、 Aは、同一または相異な
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つて、ァクチノイドまたは希土類を示し、 Bは、同一または相異なって、 Fe、 Coまたは Niを示す。)などが例示される。例示された合金の 1種のみをイオン源として本発明の 共析法に使用すると、イオン源と同じ組成の合金薄膜が作製されるが、この場合、合 金バルク材 (供給源)から合金薄膜を製造することとなる。なお、これらの供給源は、 インプラント法にお!、て (A)成分および (B)成分供給源を使用する場合にも利用でき る。
[0053] 電解浴中に添加する金属化合物の量は限定されず、目的とする合金や作製条件 に応じて適宜選択することができる。例えば、 0.1〜10mol%程度、好ましくは 0.5〜 5mol%程度添加すればよい。 2種以上の金属化合物を使用する場合は、各々の添加 量が上記の範囲であればよ!、。
[0054] 雷極
( 1)
本発明において、陰極は、合金薄膜を作製する対象となる基体を使用する。基体 の材質としては、溶融塩電解を行う温度で電流が流れる程度の導電性を有して!/ヽれ ば限定されない。基体の大きさ等についても限定されず、使用する電解浴、基体の 使用目的等に応じて適宜選択することができる。
[0055] 本発明の方法は、特に、 (1)内径が lmm以下の円筒状;(2)外径力 mm以下の円 筒状;(3)幅が lmm以下であって、かつ、アスペクト比(溝の深さ Z溝の幅)が 1以上で ある溝状; (4)内径が lmm以下であって、かつ、アスペクト比(細孔の深さ Z細孔の内 径)力 1以上である細孔状;(5)入り口部分の内径が lmm以下であり、アスペクト比(細
孔入り口部分の内径 Z細孔の深さ)力 s i以上であり、かつ、前記入り口部分の内径に 対する細孔内部における最大径の比がはり大きい形状;(6)単位体積当たりの比表 面積が 100m2/m3以上である多孔質形状等のような微細および/または複雑な形状 部分に合金薄膜を作製するのにも非常に適している。
[0056] 基体の材質としては、 Fe、 Co、 Ni、 Cu、 Si (Bがドープされて!/、るものを含む)、ステン レスなどを用いることができる。
[0057] インプラント法を用いる場合には、基体は表面に、 Fe、 Coおよび Ni力もなる群から 選ばれる少なくとも 1種の金属 (合金を含む)を有する必要がある。このような金属を 有しない基体を電極材料として使用する場合には、このような金属の膜を予め基体の 表面に作製しておけばよい。このときの方法は限定されず、溶融塩電解、電解めつき 、無電解めつき、物理的蒸着法等種々の方法力も適宜選択することができる。なお、 共析法を用いる場合には、陰極に Fe、 Coおよび Ni力もなる群力も選ばれる少なくとも 1種の金属が含有されて 、なくてもょ 、。
[0058] (2)陽極
本発明において、イオン源を電解浴に添加して電解を行う場合は、陽極には不溶 性電極を使用すればよい。不溶性電極としては、黒鉛、グラッシ一カーボン、フェライ ト ·電子伝導性セラミックス等が挙げられる。
[0059] さらに、インプラント法においては、(A)成分の金属化合物を有する陽極を使用する と陽極自身力 Sイオン源となるため、電解浴中のイオン源が消費されてもこれを補うこと ができる。したがって、陽極にァクチノイド金属、ァクチノイドィ匕合物、希土類金属およ び希土類ィ匕合物からなる群カゝら選択される少なくとも 1種を含有する陽極を好ましく 使用できる。
[0060] 共析法にぉ ヽては、(A)成分および Zまたは(B)成分を含有する電極を使用すると 、電解中にこれらの成分が浴中に溶解して電解により消費される浴中のイオン源を補 うことができる。例えば (A)成分の金属、(A)成分の金属化合物、(B)成分の金属お よび (B)成分の金属化合物からなる群から選択される少なくとも 1種を含有する電極 である。 (A)成分と (B)成分とを含む合金を有する電極を陽極として使用することが好 ましい。(A)成分または(B)成分のどちらかを有する電極を使用する場合には、電極
として使用していない方の成分の金属(Fe、 Co、 Niの金属は除く)および Zまたは金 属化合物を電解浴中に添加すればょ ヽ。
(A)成分の金属化合物としては、酸化物、窒化物、酸窒化物が例示され、(B)成分の 金属化合物としては 酸化物、窒化物、酸窒化物が例示される。
[0061] インプラント法においても共析法においても、イオン源成分を含む上記のような陽極 を用いると、電解により消費される浴中のイオンを連続的に供給することができ、さら に、電解中に発生するハロゲンガスを抑制することができるので、好ましい。
[0062] 雷解 (溶融塩雷解)
(A)雷気化学インプラント法
本発明にお 、てインプラント法を用いる場合には、定電流パルス電解または定電圧 パルス電解を行う。この場合、通電時間と休止時間との比(デューティー比)が 1 : 0.5 〜1 : 5程度 (通電時間:休止時間)が好ましい。また、定電流パルス電解を用いる場合 には、平均陰極電流密度は、 l〜500mA/cm2程度、好ましくは 5〜100mA/cm2程度 とすればよい。さらに、電極電位は、(A)成分が析出する電位に対して一 0.2Vから + 1.5 V程度であることが好まし 、。
[0063] 作製する合金薄膜の厚さは、上記電流密度、電位等により容易に制御することがで きる。必要に応じて、電解浴を撹拌してもよい。
多元素同時共析法の場合は、走査型電流パルス電解または走査型電位パルス電 解により行うことができる。
[0065] 走査型電流パルス電解を行う場合は、陽極と陰極との間において電流の印加と休 止を繰り返し行えばよい。その際の陰極電流密度は、 l〜500mAZcm2程度、好ましく は 5〜100mA/cm2程度の範囲内がよぐデューティー比は、 1 : 0.5〜1 : 5程度とすれ ばよい。
[0066] 電流密度は、電解開始時を最小値もしくは最大値として、それ以降、(0.1〜20mA /cm2) Zh程度、好ましくは(0.5〜10mAZcm2) Zh程度の範囲内で設定値(l〜10m AZcm2程度)まで増カロもしくは減少させればよ!ヽ。
[0067] 走査型電位パルス電解の場合も同様に、(A)成分が析出する電位に対して— 0.2V
力 (B)成分が析出する電位に対して— 0.01V程度の範囲内で所定時間陰極電位を 保持し、その後開回路状態に保つという動作を繰り返すことにより行うことができる。こ の場合のデューティー比は、 1 : 0.5〜1 : 5程度 (通電時間:休止時間)とすればよい。 また、ここで設定する電位は、電解開始時に設定した電位を最小値または最大値とし て、それ以降、 0.1〜100mVZh程度、好ましくは 0.5〜30mVZh程度の割合で増加ま たは減少(走査)させればよ!、。
[0068] 上記のような電解を行った後に、異なるイオン源を使用して電解を行うことにより、さ らに異なる種類の金属が含まれた合金薄膜が形成される。イオン種を代えて複数回 の電解を行うことによって所望の多元系積層合金薄膜を作製することも可能である。
[0069] さらに、作製する合金薄膜の厚さは、上記電流密度、電位等により容易に制御する ことができる。必要に応じて、電解浴を撹拌してもよい。このような条件で溶融塩電解 を行うことにより、基体とその表面に作製された合金薄膜との間、または基体とその表 面および基体の表層部に作製された合金との間に生じる応力を最小限に抑えること ができ、非常に高い密着性が得られる。
[0070] 本発明にお ヽて、電気化学インプラント法および多元素同時共析法を用いた溶融 塩電解により、アスペクト比力 S1以上、特に、アスペクト比力 1〜5程度の微細および Z または複雑な形状を有する基体に対して、 (A)成分または (B)成分を含むイオンの供 給不足が解消され、均一な組成および膜厚で密着性の高!、合金薄膜が得られる。
[0071] また、アスペクト比が 5以上程度のより複雑な形状の部分に合金薄膜を形成する場 合には、 50Hz〜50kHz程度、振幅 lmm程度以下の振動を、陰極に振動子等を接触 させることにより直接印加し、さらに、デューティー比を 1 : 5〜1: 20とするのが好ましい
[0072] 多孔皙合余薄膜の作製
本発明では、上記のようにして得られた合金薄膜を有する基体に対して、陽極と陰 極を入れ替えて更に通電することにより、特定の元素を選択的に溶出させ、多孔質な 合金薄膜を得ることもできる。形成する合金薄膜の組成や多孔度は、電流密度、電 位等により制御できるので、合金薄膜の使用目的等に応じて、適宜選択することがで きる。
[0073] このときの電解の条件は、例えば、定電流パルス電解を行う場合、陽極と陰極との 間に 0.1〜500mAZcm2程度、好ましくは l〜100mAZcm2程度の電流密度を有する電 流をデューティー比 1 :0.5〜1 :5程度に設定して通電すればよい。この条件で電解す れば、(A)成分を電解浴中に溶出させることができ、(A)成分を低濃度に含む合金薄 膜または多孔質合金薄膜が作製できる。
[0074] また、定電位パルス電解の場合には、(A)成分が析出する電位に対して + 0.01Vか ら + 1.5V程度の貴な電位領域で電解を行えばよい。
[0075] 印加する電流または電位は、電流密度は電解開始時を最小値として、それ以降、( 0.1〜20mAZcm2) Zh程度、好ましくは(0.5〜10mAZcm2) Zh程度の割合で設定値 (l〜10mAZcm2程度)まで減少させればよぐ設定する電位は電解開始時に最も卑 な電位に設定し、それ以降、 0.1〜100mVZh程度、好ましくは 0.5〜30mVZh程度の 割合で貴な方向に走査させればょ 、。
[0076] 本発明にお!/、ては、この通電は 200〜350°C程度の中温領域で行うことができる点 で有用である。このような条件で電解を行うことにより、基体と多孔質性合金薄膜の間 だけでなく、合金薄膜の多孔質になって 、な 、部分と多孔質になって 、る部分との 間に生じる応力を緩和し、ひび割れ、剥離等を抑制することができる。
[0077] 某体の取り出し
電解終了後、電解浴の温度が、溶媒となっている溶融塩の融点 (凝固点)付近にな るまで徐々に(自然に)冷却した後、合金薄膜が形成された基体を洗浄すればょ ヽ。
[0078] 徐冷は、基材と形成した膜の熱膨張率が大きく異なる場合に、急激な冷却により、 形成膜が基材から剥離したり、形成膜にクラックが入ることを防ぐために行う。具体的 な徐冷する方法としては、溶媒である溶融塩自体の温度を溶融塩の融点 (凝固点) 付近になるまで徐々に(自然に)冷却させた後に、溶融塩力も引き上げる方法、溶媒 である溶融塩から引き上げ、ゆっくりと溶融塩力 遠ざけることで、溶融塩上方の不活 性ガス雰囲気中で徐冷させる方法、溶媒である溶融塩力 引き上げた後に、溶媒より も低融点である NH Cl-ZnCl、 NH C1-A1C1等の、 100°C〜250°C程度の温度下の保
4 2 4 3
持した別の溶融塩中に直ちに浸漬させて、この溶融塩の温度を融点 (凝固点)付近 になるまで徐々に(自然に)冷却させた後に、溶融塩力も引き上げる方法などが挙げ
られる。
[0079] 洗浄は、例えば、アルゴンガス等の不活性雰囲気下にお 、て、蒸留水やメタノール 等を用いて行うことができる。撹拌下の溶融塩中に基体を浸漬してもよいし、溶融塩 中で基体を動かすことによって洗浄しても良い。洗浄は必要に応じて、繰り返し行つ ても良い。
[0080] 本発明により得られる合金薄膜は、 0.1〜5,000 μ m程度、好ましくは 1〜500 μ m程 度の範囲において、自由に厚さを選択でき、どの厚さにおいても基体との密着性が 高く保持されたままである。さらに、合金膜中の金属組成の比率も一定である。また、 本発明で得られた多孔質膜の場合、上記で作製した合金層に対し、空隙率 0.1〜80 %程度、好ましくは 1〜50%の範囲で選択でき、また多孔質層厚みも表層のみ〜合 金層全体まで自由に選択することができる。
[0081] さらに、本発明において得られた合金薄膜に、一般的に使用されている方法によつ て磁場をかけることにより、磁性膜とすることも可能である。
[0082] 以下、本発明において使用する溶融塩電解における好ましい態様について、図 1 を参考にしながら記載する。
[0083] 電気的に絶縁された容器 1に、溶融塩電解の電解浴における溶媒となる化合物を 添加したるつぼ 5をセットし、容器 1の外部に設けたヒーター 2で加熱し、当該化合物を 溶融させる。溶融後、(A)成分を有する化合物を添加し、陰極 3および陽極 4を溶融 塩の浴中に浸潰し、所定条件で電解を開始する。
[0084] (A)成分を有する化合物の溶解により生じた (A)成分のイオン化したものが陽極の
(B)成分を含む基体表面で還元され、同時に基体中に拡散し、(A)成分と (B)成分 の合金を形成する。陰極で消費された (A)成分は陽極 4の (A)成分一(B)成分バルタ 電極力 溶融塩中に溶出して拡散し、陰極 3界面に供給される。
発明の効果
[0085] 本発明の方法によれば、溶融塩電解を利用することにより、微細および Zまたは複 雑な形状を有する基体に対して、所望の組成の合金薄膜および多孔質性合金薄膜 を極めて容易かつ低コストで作製することができる。得られた合金薄膜は、微細およ び Zまたは複雑な形状部分にぉ 、ても、膜厚および合金組成が均一で非常に密着
'性が高い。
[0086] 本発明で使用する方法はそれほど高い温度を必要しないので、基体と合金薄膜と の熱膨張係数の大きな差によって生じる基体と合金薄膜との界面における応力が非 常に小さぐ薄膜の剥離や脱落等の問題も生じない。また、高温に強くない基体に対 しても合金薄膜を形成することが可能である。
[0087] 本発明の方法では、膜厚を幅広!/、範囲から自由に選択することができ、また、厚!、 合金薄膜を基体に作製しても、剥離等の問題は生じな!/、。
[0088] さらに、触媒として多孔質体を作製する場合には、本発明の方法によれば、小さな 基体に対しても作製することができるので、パソコンや携帯電話等に用いる燃料電池 等も小型化することができる。
図面の簡単な説明
[0089] [図 1]本発明の実施態様の一例を示す模式図である。
[図 2]実施例 1〜10で使用した電解装置の模式図ある。
[図 3]実施例 7で作製した試料の断面の SEM写真である。
[図 4]実施例 11で得られた円筒形試料の断面および分析結果である。
[図 5]実施例 12で使用した基体の模式図 (A)と、電解後の断面図の模式図 (B)であ る。
[図 6]実施例 13で使用した基体の模式図 (A)と、電解後の断面図の模式図 (B)であ る。
符号の説明
1 容器
2 ヒーター
3 陰極
4 陽極
5 るつぼ
21 陰極
22 陽極
23 参照極
24 電熱対
25 気密絶縁容器
発明を実施するための最良の形態
[0091] 以下、実施例等を示し、本発明の特徴を一層明確にする。本発明はこれら実施例 に限定されるものではない。
実施例
[0092] 実施例 1〜7 (平板試料、電気化学インプラント法)
LiClおよび KC1 (50 : 50 mol%;合計 400g)、 NaClおよび KC1 (50 : 50 mol%;合計 400g) または LiC卜 KC卜 CsCl (57.5: 13.3: 29.2 mol%)を共晶組成となるように秤量し、粉砕混 合した後、アルミナ製または黒鉛製ルツボに移し、 200°Cの真空乾燥器内で一昼夜 乾燥した。これをステンレス製気密容器内で外部ヒーターにより 300〜800°Cまで加熱 し、融解させた。次いで、表 1に示すような種々の条件で溶融塩電解を行った。
[0093] [表 1]
[0094] 図 2に例示する装置を使用した。即ち、陰極 (21)、陽極 (22)、参照極 (23)および熱 電対 (24)を、パイレックス (R)製またはステンレス製気密絶縁容器 (25)にセットした。 陰極 (21)には、基体として Fe平板を用意し、陽極 (22)にはグラッシ一カーボンを用 いた。
[0095] また参照極 (23)として、まず上記溶融塩と同組成の混合物に lmol%の AgClを添カロ し、これを底薄に加工したパイレックス (R)管中に封入したものを準備した。これを電解
浴である上記溶融塩中に浸すことで内包する混合塩が融解した後、 Ag線を浸漬させ て参照電極として用いた。
[0096] Tbのイオン源として 0.5mol%の TbClを上記溶融塩中に添カ卩した。陰極(21)の初期
3
電位を Li析出電位に対して 0.45〜0.50V、デューティー比 1 : 1として、 1〜5時間の電 解を行った。電解後、各電解浴と同温度にぁるし 卜!^«:3じ1 (57.5 : 13.3 : 29.2 mol% )中に移動させて、 300°Cまで徐冷した。その後、 250°Cの NH C1-A1C1 (32 : 68 mol%)
4 3
中で 5秒間洗浄し、 300°Cに保持した真空容器内で表面に付着した NH C1-A1C1を揮
4 3 発除去した後、 3時間かけて室温まで徐冷し、試料 (合金薄膜が形成された基体)を 得た。
[0097] 電解後の表面には密着性の良い膜が形成しており(図 3)、 X線回折 (XRD)、電子 線マイクロアナライザ (EPMA)による分析の結果、主成分は TbFeまたは Tb Fe であ
2 2 17 ることがわ力つた (表 1)。また、作製した合金層表面にスコッチテープ # 810を貼り付 けこれを垂直方向に剥がすと 、う引つ張り試験を行ったところ、 5回繰り返しても合金 層の剥離は確認されな力つた。走査型電子顕微鏡 (SEM)により膜を断面方向から観 察したところ、膜厚はほぼ一定であった。また、 EPMAにより膜の断面方向から分析し たところ合金組成はほぼ一定であった。
[0098] 次に Dyイオン源として 0.5 mol%の DyClを、新たに用意した上記溶融塩と同様の溶
3
融塩中に添カ卩した。上記の実施例 1、 3、 6および 7で得られた TbFeを陰極として用
2
い、上記と同様にして電解を行った(実施例 1 '、 3'、 6'、 7 および 7")。 TbFe陰極の
2 初期電位を Li析出電位に対して 0.50V、最終到達電位を 0.45Vに設定しデューティー 比 1 : 1で陰分極 (実施例 1 '、 3'、 6'、 7')、もしくは浸漬 (実施例 7")させた。電解後、 各サンプル表面を XRDで分析したところ、 3元系の合金層が形成されており、いくつ かの場合にはターフェノール D組成の Tb Dy Feが形成されていることが確認され
0.3 0.7 2
た (表 2)。
[0099] [表 2]
電極 浴温 c) 時間 主成分 副成分 膜厚 実施例 1 ' LiCl-KCl- 300 3h Tbo.3D o.7Fe2 TbFe2 3 m
CsCl
実施例 3 ' LiCl-KCl 400 lh TbFe2 Tbo.3Dyo.7Fe2 l m 実施例 6 ' LiCl-KCl 500 lh Tbo.3Dyo.7Fe2 ― 8 m 実施例 7 ' NaCl-KCl 600 lh Tbo.3Dyo.7Fe2 ― 12 m 実施例 7 " NaCl-KCl 600 lh Tbo.3Dyo.7Fe2 TbFe2 4 m
[0100] 実施例 8〜10 (平板試料、電気化学インプラント法)
実施例 8〜10においては、図 2に示す装置を使用し、陰極 (21)には Fe基板を用意 した。 Tbイオン源として 0.3 mol%の TbCl、 Dyイオン源として 0.7 mol%の DyClを上記溶
3 3 融塩中に添加した。
[0101] 陰極 (21)の初期電位を Li析出電位に対して 0.52V、最終到達電位を 0.45V、デュー ティー比 1 : 1に設定し、 1時間の電解を行った後、所定の方法により徐冷し試料を得 た。電解後の表面には比較的密着性の良い膜が形成しており、 XRD、 EPMAによる 分析の結果、いくつかの場合にはターフェノール D組成の Tb Dy Fe力 S形成してい
0.3 0.7 2
ることがわ力つた (表 1)。このように Fe基板上で Tbイオンと Dyイオンを同時に還元、合 金化させる場合の形成速度は、実施例 1〜7のように別個に行う場合とほぼ同じであ ることが解った。
[0102] 実施例 11 (複雑形状試料、電気化学インプラント法)
実施例 11においても、図 2に示す装置を使用して溶融塩電解を行った。陰極 (21) には、基体として内径 0.7mm、肉厚 0.5mm、長さ 20mmの円筒状 Co基体を用いた。電 解浴として共融組成の塩化リチウム、塩ィ匕カリウム、塩ィ匕セシウム溶融塩 (57.5 : 13.3 : 29.2 mol%;合計 300 g)を用い、 Smイオン源として 0.5 mol%の SmClを上記溶融塩中に
3
添加した。
[0103] 陰極(21)の電極電位を Li析出電位に対して 0.45V、デューティー比を 1:1に設定し 、 300°Cで 4時間の定電位パルス電解を行った後、所定の方法により徐冷し試料を得 た。
[0104] 試料断面を SEM、 EPMA等により分析した結果、形成した合金相は密着性の良!ヽ 緻密な SmCo単相であった。さら〖こ、その膜厚は 8 /z mで、円筒外部から内部に至る
5
までの膜厚と合金組成非常に均一であった (図 4)。
[0105] 実施例 12 (複雑形状試料、多元素同時共析法)
実施例 12においても図 2に示す装置を使用した。陰極 (21)には、基体として図 5A に示す形状の SUS316製基板を用いた。電解浴として、共有組成の塩化リチウム、塩 化カリウム、塩化セシウム溶融塩(57.5 : 13.3 : 29.2 mol%;合計 300 g)を用い、これに Smイオン源として 0.6 mol%の SmCl、 Coイオン源として 1.8mol%の CoClを添カ卩した。
3 2
[0106] 陰極 (21)の初期電位を Li析出電位に対して 0.8V、最終到達電位を 0.55V、デュー ティー比 1 : 5に設定し、 300°Cで 4時間の走査型電位パルス電解を行った後、所定の 方法により徐冷し試料を得た。
[0107] 得られた試料断面を SEM、 EPMA等により分析した結果、図 5Bに示すように、膜厚 が一定で緻密な SmCo合金層(膜厚は約 5 μ m)を確認した。
3
[0108] 実施例 13 (複雑形状試料、電気化学インプラント法)
実施例 13においても図 2に示す装置を使用した。陰極 (21)には、図 6Aのように SUS304製の平板表面に彫った溝中に Niを埋めたものを用いた。電解浴として共有組 成の塩化リチウム、塩化カリウム、塩化セシウム溶融塩(57.5 : 13.3 : 29.2 mol%;合計 300 g)を用い、 Smイオン源として 0.5mol%の SmClを上記溶融塩中に添加した。
3
[0109] 陰極 (21)の初期電位を Li析出電位に対して 0.45V、デューティー比を 1 : 3に設定し 300°Cで 4時間の定電位パルス電解を行った後、引き続 ヽて陽極と陰極とを入れ替え て、 Li析出電位に対して 0.80V、デューティー比 1 : 1として 300°Cで 2時間の走查型電 位パルス電解を行った。その後、所定の方法により徐冷し試料を得た。
[0110] 試料断面を SEM、 EDX等により分析した結果、 Ni部分のみ全て多孔質になってい た(図 6B)。その空隙率は約 50%であり、 5wt%程度の Smを含んでいることが分かった。 また、この多孔質 Ni部分は、多孔形状の発現に伴い、電解前と比べ大きく盛り上がつ た形状となっていたが、 SUS基板との密着性は良好であり、機械研磨を施しても剥離 やひび割れは確認できな力つた。
[0111] 実施例 14 (平板試料、多元素同時共析法)
実施例 14においても、図 2に示す装置を使用した。陰極 (21)には、基体として SUS304製平板(10mm X 20mm X 1mm厚)を用いた。電解浴として、共有組成の塩 ィ匕リチウム、塩化カリウム、塩化セシウム溶融塩(57.5 : 13.3 : 29.2 mol%;合計 300 g)を
用い、これに Smイオン源として 0.6 mol%の SmCl、 Coイオン源として 3mol%の CoClを添
3 2 加した。
[0112] 陰極 (21)の初期電位を Li析出電位に対して 1.2V、最終到達電位を 0.75V、デュー ティー比 1 :4に設定し、 350°Cで 4時間の走査型電位パルス電解を行った後、所定の 方法により徐冷し試料を得た。
[0113] 得られた試料断面を SEM、 EPMA等により分析した結果、膜厚が一定で緻密な
SmCo合金層(膜厚は約 10 μ m)を確認した。電位走査を行って ヽるため膜の深さ方
5
向に対して組成が不均一になる可能性も考えられた力 合金形成と同時に Sm原子と Co原子の相互拡散も速やかに進行することで、合金組成の均一な SmCo合金層が
5 得られたと思われる。
産業上の利用可能性
[0114] 本発明は、磁性合金膜の分野において有用である。