JP7362067B2 - 合金材およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、合金材およびその製造方法に関する。
自動車のクランクシャフト等で使用される摺動部材には、耐摩耗性および耐焼付き性に加えて、低燃費化の観点から優れた摺動特性が要求されている。そのため、特に摺動部材として用いられる合金材の表面における摩擦の低減が求められている。
これまでに、材料の摺動特性を改善する方法として、材料表面に多孔質層を設ける技術が提案されている。例えば、特許文献1には、ライニング層を形成する多孔質金属焼結層内に密度の高い部分と密度の低い部分を設けた摺動部材が開示されている。さらに、特許文献2には、軸受け等の摺動部分を有する金属部品の材料として好適な多孔質層を有する金属材料が開示されている。
特開2018-54108号公報 特開2001-165168号公報
しかしながら、特許文献1では、焼結層を材料表面に形成する必要があるため、材料形状の自由度が低いという問題がある。また、潤滑油の使用が前提となっており、ドライ環境での使用に課題が残されている。
また、特許文献2では、金属材料の表面を腐食させることで多孔質層としていることから、機械的特性が劣化するため、耐摩耗性の点で改善の余地が残されている。
本発明は上記の問題を解決し、摩擦を低減するとともに、耐摩耗性および耐焼付き性に優れる合金材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記の摺動部材およびその製造方法を要旨とする。
(1)Feを含む合金からなる基材の表面の少なくとも一部に、厚さが1.0μm~2.0mmの多孔質層を有する合金材であって、
前記多孔質層の空隙率が25~90%であり、
前記多孔質層には、前記基材に含まれる元素の全てが含まれる、
合金材。
(2)前記多孔質層には、Feより卑な金属元素とFeとの合金が含まれており、
前記金属元素の、前記多孔質層中の含有量は、前記基材中の含有量より、1.0~30.0質量%高い、
上記(1)に記載の合金材。
(3)前記Feより卑な金属元素が、Al、Mg、Zn、SiおよびTiから選択される1種以上である、
上記(2)に記載の合金材。
(4)前記多孔質層の空隙の平均長さが1.0~11.0μmである、
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の合金材。
(5)(a)Feを含む合金からなる基材および対極を、Feより卑な金属元素を含む溶融塩中に浸漬する工程と、
(b)前記基材および前記対極との間に電位差を生じさせて、前記基材の表面に前記Feより卑な金属元素が電析する電圧を印加する工程と、
(c)前記基材および前記対極との間に電位差を生じさせて、前記基材の表面に電析した前記Feより卑な金属元素が溶解する電圧を印加する工程と、を備える、
合金材の製造方法。
(6)前記Feより卑な金属元素が、Al、Mg、Zn、SiおよびTiから選択される1種以上である、
上記(5)に記載の合金材の製造方法。
本発明によれば、摺動特性に優れ、かつ耐摩耗性に優れる合金材を得ることが可能である。
本発明の合金材の断面写真の一例を示した図である。 本発明の合金材の表面の写真の一例を示した図である。 本発明の合金材の表面の写真に対して白黒2値化処理を行った画像の一例を示した図である。 本発明の合金材の表面の写真に対して白黒2値化処理を行った後に縦横に5μmピッチの線を引いた画像の一例を示した図である。 本発明の一実施形態に係る合金材の製造方法を説明するための概略構成図である。
図1は、本発明の合金材の断面写真の一例を示した図である。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る合金材10は、基材1および多孔質層2を備える。基材1は、Feを含む合金からなり、低合金鋼、ステンレス鋼、Ni基合金などを含む。
また、多孔質層2は、基材1の表面の少なくとも一部に形成されており、厚さが1.0μm~2.0mmである。合金材10を摺動部材として使用する場合には、多孔質層2が形成されている部分を摺動部分とする。多孔質層2の厚さが1.0μm未満では、すぐに消耗してしまい摺動特性が持続しない。一方、厚さが2.0mmを超えると、多孔質層2が脆くなり摺動特性が低下するだけでなく、合金材10の寸法精度が悪化する。
潤滑油を用いないドライ環境での使用においても良好な摺動特性を発揮するためには、多孔質層2の厚さは、5.0μm以上であるのが好ましく、10.0μm以上であるのがより好ましい。一方、合金材10の寸法精度の向上のためには、多孔質層2の厚さは1.0mm以下であるのが好ましく、500μm以下であるのがより好ましい。
また、多孔質層2の空隙率は25~90%である。空隙率が25%未満では、摩擦係数の低減が不十分となる。一方、空隙率が90%を超えると、多孔質層2が脆くなりかえって摺動特性が低下する。空隙率は30%以上であるのが好ましく、35%以上であるのがより好ましい。また、空隙率は80%以下であるのが好ましく、70%以下であるのがより好ましく、60%以下であるのがさらに好ましい。
以上のように、本発明に係る合金材10は、基材1の表面に多孔質層2を有することにより、合金材10を摺動部材として使用する場合に、摺動相手となる部材(以下、「相手部材」ともいう。)との接触面積が減少し、摩擦係数の低減効果が得られる。加えて、空隙部分から摩擦の際に生じる熱が放出されるため、焼付きを防止する効果が得られるものと推測される。
空隙の大きさについては特に制限はないが、小さすぎると相手部材との接触面積を十分に減少させることができない場合がある。一方、大きすぎると多孔質層2が脆くなりかえって摺動特性が低下するおそれがある。そのため、多孔質層2の空隙の平均長さは1.0~11.0μmとすることが好ましい。
なお、本発明においては、基材1と多孔質層2との境界は以下のように決定するものとする。まず、合金材10の表面に垂直な断面を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて観察する。図1に示すように、基材1と多孔質層2との境界は明瞭に観察できるが、より具体的には以下の方法で特定する。まず、断面写真を用いて、表面から深さ方向へ1μmピッチで、深さ方向に1μm、表面に平行な方向に100μmの領域の空隙率を求める。そして、空隙率が1%を超える領域を多孔質層2として定義する。そして、基材1と多孔質層2との境界から表面までの長さの平均値を求めることで、多孔質層2の厚さを求める。
ただし、上記の測定において、多孔質層2の厚さが1μm以下となった場合には、0.1μmピッチで、深さ方向に0.1μm、表面に平行な方向に100μmの領域の空隙率を再測定するものとする。
さらに、多孔質層2の空隙率および空隙の平均長さは、以下の方法により測定する。まず、合金材10の表面をSEMにより倍率2000倍で反射電子像を撮影する。図2は、本発明の合金材の表面の写真の一例を示した図である。その後、図3に示すように、上記写真に対して白黒2値化処理を行う。
具体的には、256階調(グレースケール)の写真を、128階調目を閾値として2値化し、モノクロ画像とする。そして、黒で示される領域を空隙とし、その面積率を求めることで空隙率を算出する。その後、白黒2値化処理を行った画像を用いて、図4に示すような縦横に5μmピッチの線を引いた後、その線上の空隙の長さを測定する。得られた空隙の長さの平均値を、空隙の平均長さとする。
また、後述するように、多孔質層2は基材1の表面を改質することにより形成される。そのため、多孔質層2には、基材1に含まれる元素の全てが含まれることとなる。
さらに、多孔質層2には、Feより卑な金属元素とFeとの合金が含まれていることが好ましい。上記の合金は、相対的に基材より高い硬度を有するため、多孔質層2中に上記合金を含むことで、耐摩耗性が向上する。このような効果を得るためには、上記合金として存在するFeより卑な金属元素の多孔質層中の含有量は、基材中の含有量より、1.0~30.0質量%高いことが好ましい。
上記金属元素の基材中の含有量に対する多孔質層中の含有量の差が1.0質量%未満では、硬度の向上効果が十分には得られなく、一方、30.0質量%を超える場合には、後述する製法においては、多孔質層2の空隙の確保が困難となる。上記含有量の差は3.0%以上であるのが好ましく、5.0%以上であるのがより好ましい。また、上記含有量の差は25.0%以下であるのが好ましく、20.0%以下であるのがより好ましい。
Feより卑な金属元素としては、Al、Mg、Zn、SiおよびTiから選択される1種以上であることが好ましい。これらの元素は、Feとの合金を形成し、多孔質層2の硬度を向上させる効果を有するためである。
なお、基材1および多孔質層2の化学組成の分析は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)により行うことができる。具体的には、合金材10の表面に垂直な断面を、EPMAを用いたマッピング分析により測定する。そして、多孔質層2については、基材1との境界から表面までの測定結果の平均値を多孔質層2の化学組成とする。
上記の構成を有する合金材10を製造する方法について、特に制限はないが、例えば、以下に示す(a)~(c)の工程を行うことにより製造することができる。
本発明の一実施形態に係る合金材10の製造方法は、(a)浸漬工程と、(b)電析工程と、(c)溶解工程と、を備える。図5は、本発明の一実施形態に係る合金材10の製造方法を説明するための概略構成図である。図5を参照しながら、各工程について詳しく説明する。
(a)浸漬工程
図5に示すように、まず、基材1および対極20を、Feより卑な金属元素を含む溶融塩30中に浸漬する。Feより卑な金属元素としては、Al、Mg、Zn、SiおよびTiから選択される1種以上であることが好ましい。溶融塩30の温度については特に制限はないが、上記のFeより卑な金属元素が溶融し、かつ基材が溶融しない温度を選択する。
(b)電析工程
続いて、基材1および対極20との間に電位差を生じさせて、基材1の表面にFeより卑な金属元素が電析する電圧を印加する。すなわち、基材1がカソード、対極20がアノードとなるように電圧を印加する。基材1および対極20は電線40a,40bを介して外部電源40に接続されている。対極20の材質について特に制限はないが、例えば白金、黒鉛等を用いることができる。
電圧の印加は、電流制御で行ってもよいし、電位制御で行ってもよい。電流制御の場合には、外部電源40にガルバノスタットを用いることができる。一方、電位制御の場合には、図示しない参照極を対極20とともに溶融塩30中に浸漬し、外部電源40にポテンショスタットを用いる。なお、参照極としては、例えば、Ag/AgClを用いることができる。
また、電位制御を行う場合においては、基材1を作用極として参照極との間の電圧を制御する。電圧は溶融塩30として用いる金属元素の種類に応じて選択する。電析時間についても特に制限はなく、形成したい多孔質層2の厚さに応じて適宜選択すればよく、例えば、1.5~3.6ks程度とすることが好ましい。
さらに、電析工程は、不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気で電析を行うことで、溶融塩30が水分を吸収するのを抑制することができる。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガスを用いることができる。また、基材1の表面は事前に研磨しておくことが好ましい。
本工程において、溶融塩30中に含まれるFeより卑な金属元素が基材1の表面に電析し、その一部は基材1の内部に拡散し、Feとの合金を形成する。
(c)溶解工程
次に、基材1および対極20との間に電位差を生じさせて、(b)の工程で基材1の表面に電析したFeより卑な金属元素が溶解する電圧を印加する。すなわち、(b)の工程から基材1および対極20との間の電圧を変化させ、基材1がアノード、対極20がカソードとなるように電圧を印加する。
電析工程と同様に、電圧の印加は、電流制御で行ってもよいし、電位制御で行ってもよい。電位制御を行う場合においては、基材1を作用極として参照極との間の電圧を制御する。電圧は溶融塩30として用いる金属元素の種類に応じて選択する。この際、基材1の表面が溶解しない電圧に制御することが好ましい。電析時間についても特に制限はなく、例えば、1.0~3.6ks程度とすることが好ましい。
また、溶解工程は電析工程から連続して同一の溶融塩中で行ってもよいし、個別に異なる溶融塩中で行ってもよい。
本工程において、基材1の表面に電析した金属元素が再び溶融塩30中に溶解することで、基材1の内部に形成した、Feより卑な金属元素とFeとの合金からも、金属元素が溶解し、抜け落ちた部分が孔となり、多孔質な層が形成される。
以下、本発明の合金材の製造方法を、基材としてステンレス鋼を用い、Feより卑な金属元素としてAlを用いる場合を例に、より詳しく説明する。
Alを含む溶融塩としては、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)およびフッ化アルミニウム(AlF)の混合物を加熱して溶解させた、Al含有NaCl-KCl溶融塩が挙げられる。NaClの融点は800℃、KClの融点は776℃であり、NaCl-KCl混合塩(混合モル比1:1)の融点は660℃である。そのため、溶融塩を準備する際には、NaCl-KClを等モル量とすることで、融点が低くなり溶解させやすくなる。
また、Alの融点も660℃である。そのため、NaCl、KClおよびAlFの混合物を660℃以上の温度まで加熱することで溶融塩とすることができる。ステンレス鋼の融点は1250℃程度であるため、溶融塩の温度は1250℃以下とする必要があり、950℃以下とすることが好ましい。溶融塩中のAl含有量については特に制限はないが、1~5mol%とすることが好ましい。
上記のAlを含む溶融塩中にステンレス鋼からなる基材および対極を浸漬する。上述のように、電析工程および溶解工程を電位制御で行う場合には、参照極も併せて溶融塩中に浸漬する。そして、電析工程においては、基材をカソードとして、参照極との間の電位差を-2.2~-1.35Vの範囲とする。上記の電位差は、Alの還元電位域である-1.8~-1.4Vの範囲とすることがより好ましい。また、溶解工程においては、基材をアノードとして、参照極との間の電位差を-1.3~-0.7Vの範囲とする。上記の電位差は、-0.9V以下とすることがより好ましい。
次に、本発明の合金材の製造方法を、基材としてステンレス鋼を用い、Feより卑な金属元素としてSiを用いる場合を例に、より詳しく説明する。
Siを含む溶融塩としては、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化カリウム(KCl)およびケイフッ化カリウム(KSiF)の混合物を加熱して溶解させた、Si含有NaCl-KCl溶融塩が挙げられる。NaClの融点は800℃、KClの融点は776℃であり、NaCl-KCl混合塩(混合モル比1:1)の融点は660℃である。そのため、溶融塩を準備する際には、NaCl-KClを等モル量とすることで、融点が低くなり溶解させやすくなる。
また、Siの融点は1414℃であるが、NaCl、KClおよびKSiFの混合物を900℃まで加熱することで十分に溶融塩とすることができる。ステンレス鋼の融点は1250℃程度であるため、溶融塩の温度は1250℃以下とする必要があり、950℃以下とすることが好ましい。溶融塩中のSi含有量については特に制限はないが、1~15mol%とすることが好ましい。
上記のSiを含む溶融塩中にステンレス鋼からなる基材および対極を浸漬する。上述のように、電析工程および溶解工程を電位制御で行う場合には、参照極も併せて溶融塩中に浸漬する。そして、電析工程においては、基材をカソードとして、参照極との間の電位差を-2.2~-1.1Vの範囲とする。上記の電位差は、Siの還元電位域である-1.5~-1.1Vの範囲とすることがより好ましい。また、溶解工程においては、基材をアノードとして、参照極との間の電位差を-1.1~-0.7Vの範囲とする。上記の電位差は、-0.9V以下とすることがより好ましい。
以上のように、Feより卑な金属元素としてAlまたはSiを用いる場合を例に説明を行ったが、これに限定されるものではない。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
アルミナ坩堝に、NaCl、KClおよびAlFの混合物を入れた後、電気炉を用いて900℃まで加熱し、溶融塩とした。NaClおよびKClはモル比で1:1の割合で添加し、Al濃度が3.5mol%となるよう調整した。
その後、溶融塩中に、ステンレス鋼(SUS304)からなる基材、管状の黒鉛からなる対極、およびAg/AgCl(0.1)参照極を浸漬した。なお、基材の表面は、事前に#1000のSiC研磨紙を用いて研磨した。また、用いたステンレス鋼のAl含有量は0.001質量%以下であった。そして、上記の基材、対極および参照極を、電線を介してポテンショスタットに接続した。
そして、参照極との間において、基材に表1に示す電圧を印加することで、溶融塩中に含まれるAlの電析および溶解を行い、合金材を作製した。電析時間および溶解時間はともに3.6ksとし、溶融塩温度は900℃で一定とした。なお、表1において、下線は本発明の好適な製造条件から外れることを意味する。
Figure 0007362067000001
得られた各合金材について、自動精密切断機を用いて表面に垂直な断面を切り出し、SEMにより当該断面の反射電子像を観察し、形成された多孔質層の厚さを測定した。また、各合金材の表面についても同様にSEMにより反射電子像の写真を取得し、当該写真に対して白黒2値化処理を行った。そして、得られた画像から空隙率および空隙の平均長さを求めた。さらに、表面に垂直な断面について、EPMAによるマッピング分析を行い、多孔質層中のAl含有量を測定した。
それらの結果を表2に示す。表2において、下線は本発明の規定から外れることを意味する。
Figure 0007362067000002
続いて、ボールオンディスク方式の摩擦試験(CSM Instruments社製Tribometer)により、摩擦特性の評価を行った。ボールは市販の直径6mmのSUJ2球を用い、荷重3N、摩擦速度10mm/秒、摩擦時間60分とした。また、摩擦試験は、潤滑剤あり(ウェット条件)および潤滑剤なし(ドライ条件)のそれぞれの条件で実施した。
摩擦係数は、試験機のソフトウェアから提供される値を用いた。そして、「初期摩擦係数」として摩擦開始から1分間の平均摩擦係数を計測した。また、参考のため、摩擦開始から20分後および60分後における摩擦係数も計測した。
また、低摩擦の耐久性として、ウェット条件では、摩擦係数が0.20を超えるまでの持続時間を評価した。一方、ドライ条件では、摩擦係数が0.40を超えるまでの持続時間を評価した。本実施例においては、ウェット条件では、初期摩擦が0.20以下でかつ低摩擦の持続時間が20分以上であった場合に、摺動特性に優れると判断した。また、ドライ条件では、初期摩擦が0.40以下でかつ低摩擦の持続時間が20分以上であった場合に、摺動特性に優れると判断した。
ウェット条件およびドライ条件での結果をそれぞれ表3および4に示す。表3および4において、下線は特性が劣ることを意味する。
Figure 0007362067000003
Figure 0007362067000004
表3および4に示すように、本発明の規定を満足する試験No.2~9では、初期摩擦係数が低く、かつ耐久性も良好であり、摺動特性が優れる結果となった。一方、試験No.1では、電析電位が低く、形成された多孔質層の空隙率が不十分となったため、耐久性に劣るとともに、ドライ条件での初期摩擦係数が高くなる結果となった。
また、試験No.10では、電析電位が高く、多孔質層の厚さが不十分であったため、耐久性が劣る結果となった。さらに、試験No.11では、溶解電位が高く、形成された多孔質層の空隙率が不十分となったため、耐久性に劣るとともに、ドライ条件での初期摩擦係数が高くなる結果となった。
次に、Feより卑な金属元素としてSiを用いる場合について、実施例によって、より具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
アルミナ坩堝に、NaCl、KClおよびKSiFの混合物を入れた後、電気炉を用いて900℃まで加熱し、溶融塩とした。NaClおよびKClはモル比で1:1の割合で添加し、Si濃度が10mol%となるよう調整した。
その後、溶融塩中に、Fe(99.9%Fe)からなる基材、管状の黒鉛からなる対極、およびAg/AgCl(0.1)参照極を浸漬した。なお、基材の表面は、事前に#1000のSiC研磨紙を用いて研磨した。また、用いた基材のSi含有量は0.01質量%以下であった。そして、上記の基材、対極および参照極を、電線を介してポテンショスタットに接続した。
そして、参照極との間において、基材に表5に示す電圧を印加することで、溶融塩中に含まれるSiの電析および溶解を行い、合金材を作製した。電析時間および溶解時間はともに3.6ksとし、溶融塩温度は900℃で一定とした。なお、表5において、下線は本発明の好適な製造条件から外れることを意味する。
Figure 0007362067000005
得られた各合金材について、自動精密切断機を用いて表面に垂直な断面を切り出し、SEMにより当該断面の反射電子像を観察し、形成された多孔質層の厚さを測定した。また、各合金材の表面についても同様にSEMにより反射電子像の写真を取得し、当該写真に対して白黒2値化処理を行った。そして、得られた画像から空隙率および空隙の平均長さを求めた。さらに、表面に垂直な断面について、EPMAによるマッピング分析を行い、多孔質層中のSi含有量を測定した。
それらの結果を表6に示す。表6において、下線は本発明の規定から外れることを意味する。
Figure 0007362067000006
続いて、ボールオンディスク方式の摩擦試験(CSM Instruments社製Tribometer)により、摩擦特性の評価を行った。ボールは市販の直径6mmのSUJ2球を用い、荷重3N、摩擦速度10mm/秒、摩擦時間60分とした。また、摩擦試験は、潤滑剤あり(ウェット条件)および潤滑剤なし(ドライ条件)のそれぞれの条件で実施した。
摩擦係数は、試験機のソフトウェアから提供される値を用いた。そして、「初期摩擦係数」として摩擦開始から1分間の平均摩擦係数を計測した。また、参考のため、摩擦開始から20分後および60分後における摩擦係数も計測した。
また、低摩擦の耐久性として、ウェット条件では、摩擦係数が0.20を超えるまでの持続時間を評価した。一方、ドライ条件では、摩擦係数が0.40を超えるまでの持続時間を評価した。本実施例においては、ウェット条件では、初期摩擦が0.20以下でかつ低摩擦の持続時間が20分以上であった場合に、摺動特性に優れると判断した。また、ドライ条件では、初期摩擦が0.40以下でかつ低摩擦の持続時間が20分以上であった場合に、摺動特性に優れると判断した。
ウェット条件およびドライ条件での結果をそれぞれ表7および8に示す。表7および8において、下線は特性が劣ることを意味する。
Figure 0007362067000007
Figure 0007362067000008
表7および8に示すように、本発明の規定を満足する試験No.2~8では、初期摩擦係数が低く、かつ耐久性も良好であり、摺動特性が優れる結果となった。一方、試験No.1では、電析電位が低く、形成された多孔質層の空隙率が不十分となったため、耐久性に劣るとともに、ドライ条件での初期摩擦係数が高くなる結果となった。
また、試験No.9では、電析電位が高く、多孔質層の厚さが不十分であったため、耐久性が劣る結果となった。さらに、試験No.10では、溶解電位が高く、形成された多孔質層の空隙率が不十分となったため、耐久性に劣るとともに、ドライ条件での初期摩擦係数が高くなる結果となった。
本発明によれば、摺動特性に優れ、かつ耐摩耗性に優れる合金材を得ることが可能である。したがって、本発明に係る合金材は、自動車、船舶等の輸送機械、一般産業機械等に使用される摺動部材として好適に用いることができる。
1.基材
2.多孔質層
10.合金材
20.対極
30.溶融塩
40.外部電源
40a,40b.電線

Claims (5)

  1. Feを含む合金からなる基材の表面の少なくとも一部に、厚さが1.0μm~2.0mmの多孔質層を有する合金材であって、前記多孔質層の空隙率が25~90%であり、
    前記多孔質層には、前記基材に含まれる元素の全てが含まれ、
    前記多孔質層には、Feより卑な金属元素とFeとの合金が含まれており、
    前記金属元素の、前記多孔質層中の含有量は、前記基材中の含有量より、1.0~30.0質量%高い、
    合金材。
  2. 前記Feより卑な金属元素が、Al、Mg、Zn、SiおよびTiから選択される1種以上である、
    請求項に記載の合金材。
  3. 前記多孔質層の空隙の平均長さが1.0~11.0μmである、
    請求項1または請求項2に記載の合金材。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれかに記載の合金材の製造方法であって、
    (a)Feを含む合金からなる基材および対極を、Feより卑な金属元素を含む溶融塩中に浸漬する工程と、
    (b)前記基材および前記対極との間に電位差を生じさせて、前記基材の表面に前記Feより卑な金属元素が電析する電圧を印加する工程と、
    (c)前記基材および前記対極との間に電位差を生じさせて、前記基材の表面に電析した前記Feより卑な金属元素が溶解する電圧を印加する工程と、を備える、
    合金材の製造方法。
  5. 前記Feより卑な金属元素が、Al、Mg、Zn、SiおよびTiから選択される1種以上である、
    請求項に記載の合金材の製造方法。
JP2019177889A 2019-03-04 2019-09-27 合金材およびその製造方法 Active JP7362067B2 (ja)

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