JP2015232171A - 金属製基材の表面に多孔質層を形成する方法 - Google Patents

金属製基材の表面に多孔質層を形成する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】被覆層の密着性を向上させるために、従来法より工程が比較的単純であり、アンカー効果も発揮できる金属製基材の表面に多孔質層を形成する方法を提供する。【解決手段】溶融塩を用いた電気化学プロセスにより、(a)金属Bのイオンを含む溶融塩浴を準備するステップと、(b)溶融塩浴の中へ、金属Aを含む基材を浸漬させ、金属Aが溶融塩中における金属Bよりも卑であることにより、金属Aと金属Bのイオンとの置換反応によって基材の表面に前記金属Bもしくは金属Bを含む合金から成る多孔質層を形成させるステップとを含んでいることを特徴とする基材の表面に多孔質層を形成する方法を提供する。【選択図】 図5

Description

本発明は、金属製基材の表面に被覆される被覆層の密着性を向上させるために、金属製基材の表面に多孔質層を形成する方法に関する。
溶融塩中での炭素めっき法は、PVDやCVDなどの気相法による炭素コーティング法と比較して、より簡便な装置で、複雑な反応制御を必要とすることなく、比較的密着性良く炭素コーティングができる方法である。この方法は、比較的高温の溶融塩中での電気化学的な反応により、基材上に炭素を膜状に形成させる方法であることから、基材としては導電性の、特に金属製基材が好ましい。このような金属製基材に対して炭素めっきを施した場合、基材と、形成される炭素膜との界面で、基材成分金属の炭化物が形成し、これが中間層として働くことが、基材と炭素膜との間の密着性を高める一つの要因と考えられている。一方で、安定な炭化物を形成し難い銅などの金属の場合では、中間層として炭化物を形成する金属製基材の場合と比較して密着性に劣り、使用条件によっては膜の剥離を生じる場合もあった。
炭素のめっきに限らず、比較的高温の溶融塩中で処理を行うめっき法では、機能性溶媒である溶融塩の特長を生かし、水溶液系では取り扱えない金属や合金等のめっきが可能である。めっき時の処理温度が比較的高いため、めっき膜(被覆層)と基材との界面で、炭素めっきの場合と同様に合金相からなる中間層を形成し易く、これが密着性を高める要因の一つとなっている。一方で、基材とめっき膜との熱膨張に大きな差異があると、特に中間層を形成し難い組み合わせでは、めっき膜の剥離を生じる場合があった。
基材とめっき膜(被覆層)の密着性を高める手法としては、例えば特開平8−109490号公報(特許文献2)に記載されているように、基材表面を粗面化することによるアンカー効果を利用する方法、或いは特開2009−197284号公報(特許文献3)に記載されているように、基材表面を多孔質化することによるアンカー効果を利用する方法が知られている。
しかしながら、基材表面を粗面化することによるアンカー効果を利用する方法では、被覆層は、基材表面との接触面積が増大されることによりその密着性が向上するが、荒らされた基材表面に単に積層されている構成に変わりがないので、例えば基材の曲げなどに対する剥離強度が必ずしも十分ではないといった問題があった。
一方、基材表面を多孔質化することによるアンカー効果を利用する方法は、被覆層の下部層が基材表面の多孔質層の中へ入り込むことにより、曲げや膨張収縮などにも強い密着性を有する被覆層を得ることができる。
しかしながら、例えばニッケル基材に対しては、アルミニウムなどとの合金を準備したうえでリーチングによりアルミニウム成分を除去して多孔質体を形成させることが可能であるが、希望する組成や形状の基材に対してその表面のみの多孔質化に適用することは困難である。チタンやシリコンなどの限られた種類の基材に対しては、陽極酸化処理によって表面の多孔質化が可能であるが、酸化膜を成長させないよう高度な反応制御やフッ酸などの使用が必要となる。このように、従来の方法では、被覆対象となる基材の表面のみを多孔質化することが難しく、また表面の多孔質化が可能な基材の種類や手段が限られており、その処理には高度な反応制御が必要であった。
特開平2−282491号公報 特開平8−109490号公報 特開2009−197284号公報 特許第5065948号公報
そこで、本発明は、基材表面に形成される被覆層の密着性を向上させるために、溶融塩を用いた電気化学プロセスを利用することにより、広範な種類の金属製基材の表面に多孔質層を形成できる方法を提供することを目的とする。
本発明者は、金属製基材の表面に形成される被覆層の密着性を向上させるために、溶融塩を用いる電気化学プロセスを利用して、広範な種類の金属製基材の表面に、簡便に多孔質層を形成させる方法について鋭意研究を重ねた結果、多孔質層の形成には、例えば特許第5065948号公報(特許文献4)に記載されているような溶融塩中での置換反応を利用することが有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、卑な金属を基材として用い、貴な金属をイオンとして溶融塩中に存在させて置換反応を進行させた場合、卑な基材金属の溶出過程において基材表面に凹凸が生じることで、貴な金属の析出・合金化反応の進行に伴って基材表面が多孔質化されることを見出した。
このようにして、基材の表面近傍の領域のみを多孔質化させた上で、被覆処理を行って孔の中まで被覆材料を析出させると、孔の中に析出した被覆材料は基材表面或いは多孔質層表面に形成された被覆層と繋がっており、孔の中に析出した被覆材料が該被覆層の強力なアンカーとして働くので、該被覆層の密着性を高めることができる。このため、本発明は、被覆材料が基材成分と合金化する/しないに関わらず、被覆材料により形成される被覆層の基材への密着性を向上させる方法であるといえる。
置換反応
本発明において、置換反応を進行させるため、基材を成す金属に対して、より貴な金属をイオンとして溶融塩中に存在させることになるが、この組み合わせの基準としては、例えばデータブック(J.A.Plambeck,Encyclopedia of Electrochemistry of the Elements,Volume X,A.J.Bard,Editor, Marcel Dekker,New York and Basel, 1976)にあるような代表的な浴組成と温度における溶融塩中での標準酸化還元電位を参考にするのが好ましい。
しかしながら、実際に置換反応を進行させる際、使用する浴組成や温度によっては、この標準酸化還元電位での貴/卑の順序が逆転していても、反応が進行する場合がある。さらに、基材に含まれる金属の組成や浴中の金属イオンの濃度によっても、反応が進行する場合がある。
ここで、下記式1に示される基材の金属A成分の電気化学的な溶出反応(一価のイオンとしての溶出を仮定)、

A → A(I)+e・・・(式1)

と、下記式2に示される金属Bのイオンからの電気化学的な析出反応(一価のイオンからの析出を仮定)、

B(I)+e → B・・・(式2)

について考える場合、それぞれの平衡電位EA(I)/A、EB(I)/Bは、次の式3、式4で表わすことができる。
A(I)/A=E A(I)/A+(RT/F)ln(aA(I)/a)・・・(式3)

B(I)/B=E B(I)/B+(RT/F)ln(aB(I)/a)・・・(式4)

ここで、E A(I)/A、E B(I)/Bは標準酸化還元電位でありaA(I)、aB(I)は溶融塩中のA(I)、B(I)の沖合での活量、a、aは金属A成分、金属B成分の活量を表す。
式1、式2の反応でAとBが純金属である場合、a、aは1である。金属基材がAを含む合金であったり、置換反応による生成物がBを含む合金となる場合は、a、aは1とは異なった値となる。
ここで、aA(I)、aB(I)は溶融塩中でのA(I)、B(I)の活量係数、γA(I)、γB(I)と、それぞれの沖合濃度CA(I)、CB(I)の積として表わされ、CA(I)、CB(I)を用いて、式3、式4を次式のように表わすことができる。
A(I)/A=E0’ A(I)/A+(RT/F)ln(CA(I)/a)・・・(式5)

B(I)/B=E0’ B(I)/B+(RT/F)ln(CB(I)/a)・・・(式6)

ここで、E0’ A(I)/AとE0’ B(I)/Bは標準式量酸化還元電位であり、
0’ A(I)/A=E A(I)/A+(RT/F)lnγA(I)・・・・・・(式7)

0’ B(I)/B=E B(I)/B+(RT/F)lnγB(I)・・・・・・(式8)
で表わされる。
ΔE=EB(I)/B−EA(I)/A>0である場合、式1の溶出反応と式2の析出反応が自発的に進行することで、次式の置換反応、

A + B(I)→ A(I)+ B・・・(式9)

が進行すると考えられる。
ここで、標準酸化還元電位としてはAの方が貴(ΔE=E B(I)/B−E A(I)/A<0)であったとしても、溶融塩中でのA(I)の濃度CA(I)を低く抑えた場合EA(I)/Aはより卑な値となり、また、溶融塩中でのB(I)の濃度CB(I)を高くした場合EB(I)/Bはより貴な値となるため、A(I)とB(I)の濃度CA(I)、CB(I)によっては、ΔE=EB(I)/B−EA(I)/A>0となる場合がある。すなわち、標準酸化還元電位がより貴な金属Aとより卑な金属Bのイオンを用いた場合でも、条件によっては反応が進行する場合がある。
また、前述したように金属基材が合金であったり、置換反応による生成物が純金属ではなく合金となる場合(a、aが1とは異なった値となる場合)でも同様であり、基材合金や置換反応による生成物中での各成分の組成によっては、標準酸化還元電位がより貴な金属Aとより卑な金属Bのイオンを用いた場合でも反応が進行する場合がある。
さらにΔEは、反応電子数や反応温度にも依存するため、ΔEの値から、ΔE>0となって置換反応が進行する金属の組み合わせを計算で正確に予測するのは困難であり、実験的に確認するのが適切かつ確実である。
また、本発明の金属製基材の表面に多孔質層を形成する方法は、置換反応のみを利用して基材表面を多孔質化してもよいし、金属製基材に通電することによって、合金化処理を施した後に、上述の置換反応により多孔質化を施してもよいし、或いは置換反応を利用して基材表面を多孔質化した後に、金属製基材に通電することによって合金化処理を施し、さらに上述の置換反応を繰り返して多孔質化を施してもよい。
置換反応による多孔質化の駆動力は、前記ΔEであると考えられるが、金属Aと金属Bの組み合わせによっては駆動力が非常に大きくなり、置換反応が急激に進み、表面のマクロな凹凸が激しくなって、その後に被覆処理をした時の被覆層の緻密性の低下や表面平滑性の低下などを招くことがある。そこで、本発明では、置換反応を進行させる前あるいは置換反応の途中に、金属Aからなる基材に対して通電を行うことで金属Bのイオンを還元・析出させることにより、基材表面に金属A及び金属Bからなる合金相を均一に形成させる。これによりΔEを小さくして置換反応の駆動力を抑えることで、置換反応をより緩やかに進行させて、基材表面に形成された多孔質層のマクロな凹凸の成長を抑制し微細な多孔質層を形成することができる。
上記では通電による金属Bのイオンの還元・析出によって、基材表面に金属A及び金属Bからなる合金相を均一に形成させているが、基材が純金属Aに限定されないのであれば、通電により形成される金属A及び金属Bからなる合金と同一組成の合金自体を基材に用いることも可能である。これにより、通電によって基材表面に合金層を形成させる工程を省略することができる。
金属Aと金属Bの組み合わせ
基材を構成する金属Aと、基材表面に多孔質層を形成するために使用する金属Bとの組み合わせは、使用する溶融塩中でイオンとして存在し得る相異なる金属元素であれば、特に限定されることなく自由に組み合わせることができる。
例えば、アルカリ金属ハライド又はアルカリ土類金属ハライドに代表される一般的な溶融塩中では、ケイ素等を含むほぼ全ての金属元素は標準酸化還元電位が異なる。さらに、基材として合金を用いたり、あるいは置換反応による生成物を合金とすることによっても上記の酸化還元電位を制御できる。従って、原理的には、全ての金属製基材の表面を多孔質化することができる。
本発明で基材として使用できる金属Aは、上述の置換反応により、他の種類の金属Bによって金属Aの基材表面を多孔質化できるものであれば特に限定されることなく使用することができるが、特に例示するならば、Cu、Ti、Zr、Ta、V、Zn、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Sn、Al及びSiに加え、Sc、Y、La、Nd及びSmなどのランタノイド、U及びThなどのアクチノイドを使用することができる。
また、上記基材は金属Aを含む合金であっても良い。この場合、金属A以外の合金成分は、置換反応に関与しない、あるいは後述する金属Bを含むことが好ましく、基材中の金属A成分の組成を制御し、置換反応の進行速度を制御する目的でも利用できる。一方、金属A以外の合金成分が金属B成分を含まず置換反応に関与する場合には、反応制御が困難になり、溶融塩浴状態の管理も困難になるため好ましくない。
また、本発明で使用できる金属Bは、金属Aとの組み合わせによって選択されるものであるが、置換反応によって多孔質層を形成できるものであれば特に限定されることなく使用することができる。特に例示するならば、Sn、Al、Zn、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、In、W、Moや、Ag、Au、Pt、Ir、Ru及びPdなどの貴金属などを使用することができる。
溶融塩浴
多孔質化する際の溶融塩の浴組成については、置換反応が進行して基材表面を多孔質化できる組成であれば特に制限されず、反応温度についても液体として使用できる温度であれば特に制限はされないが、少なくとも同溶融塩浴中に溶解する金属Bの化合物、好ましくは金属Bの塩化物やフッ化物などのハロゲン化物を含んでおり、金属Aの化合物、好ましくは金属Aの塩化物やフッ化物などのハロゲン化物の溶解度が十分にある浴組成が好ましい。
例えば金属Bのハロゲン化物であるSnClやAlCl、ZnClなどと、LiClやNaCl、KClなどのアルカリ金属ハロゲン化物やMgClやCaClなどのアルカリ土類金属ハロゲン化物の少なくとも1種を混合した浴が例示できる。このような浴組成は、特に反応浴中の金属Bのイオン濃度を比較的高く設定したい場合に好ましい。
或いは、LiCl−KCl、LiCl−KCl−CsCl、NaCl−KCl、NaCl−MgClなどのアルカリ金属ハライド又はアルカリ土類金属ハライドを混合したものからなる溶融塩を溶媒として、ここに金属Bのハロゲン化物であるSnClなどを添加した浴も例示できる。このような浴組成は、特に反応浴中の金属Bのイオン濃度を比較的低く設定したい場合に好ましい。この場合、例えば溶融塩を準備する段階で金属Bのハロゲン化物を含んでいなくとも、溶媒溶融塩中に金属Bから成る電極を設置し、その陽極溶解により金属Bのイオンを供給することで、同等の反応浴を準備することもできる。
反応速度を調整する目的で、金属Aのハロゲン化物等を加えることなどにより溶融塩中に金属Aのイオンを存在させておいてもよい。
上記の溶融塩浴については、置換反応の進行速度に応じて浴温を制御する必要もあるため、融点や蒸気圧を鑑みつつ、浴組成を決定するのが好ましい。
また反応の進行に伴い金属Bのイオン濃度が低下し、金属Aのイオン濃度が高まった場合には、金属Bのハロゲン化物等を追添加するのが良く、この際、あらかじめ陰極還元等により金属Aのイオンを除去しておくのがより好ましい。
なお、溶融塩浴は、多孔質化された基材表面の酸化を防ぐなどの目的により、必要があれば不活性ガスによるパージ若しくは気流中に保持することができる。また、置換反応を促進させる目的で、溶融塩浴を攪拌したり振動を与えたりすることもできる。
浴 温
置換反応を起させるために必要となる溶融塩浴の温度(浴温)については特に制限はないが、浴温が高い場合は、置換反応の速度が大きくなるので、金属Aと金属Bとの組み合わせにもよるが、比較的短時間での基材表面の多孔質化に適する。一方、浴温が低い場合は、置換反応速度は小さくなるので、多孔質層の厚みを小さく抑えたり、孔の微細化を図る上で好ましい。
また、多孔質化の際に合金層が形成する場合には、生成される合金相の融点以下の浴温(ただし、合金相の生成過程で生じる他の組成の合金相の方が融点が低くなる場合は、最も融点の低い合金相を想定すればよい)で実施する方が、合金相の形成・成長が常に固相で進行し、多孔質層の形成を阻害しないので好ましい。
多孔質層
基材表面を多孔質化する際の該多孔質層の厚みは、被覆材料、被覆層の厚み若しくは被覆した製品の使用用途などに応じて調整するのが好ましい。
被覆層
基材表面に形成された多孔質層に対する被覆層の形成については、通常の電気化学プロセスを用いためっき方法を使用することができる。多孔質層内部においても均一な被覆層の形成を促進する目的で、パルス電解や撹拌、振動印加等の方法を利用してもよい。
また、多孔質化した後、付着塩を除去することなく被覆処理を行ってもよい。多孔質層が形成される際、その全ての空隙は、多孔質化処理を行った際の溶融塩で満たされていると考えられる。そのため、特に前記被覆処理を、溶融塩を用いた電気化学プロセスを用いて実施する場合は、被覆処理を行う溶融塩中に浸漬させた場合に孔の内部にまで溶融塩が到達し易くなる。
従って、多孔質層の孔径が小さい場合や、多孔質層の厚みが大きく、より深くまで被覆層を形成させて強いアンカー効果を得る必要がある場合などに好都合である。また、多孔質化した際の溶融塩浴の成分が被覆処理に使用する溶融塩浴に混入することを避ける目的で、一旦洗浄を実施して付着塩を除去した後に被覆処理を施してもよい。この場合、多孔質層の内部まで被覆処理を行うための溶融塩を充填する目的で、多孔質化した基材に対して該溶融塩浴の中で真空含浸処理を行ってもよい。
以上の検討結果をまとめると、本発明の特徴は以下のように整理される。
すなわち、本発明によれば、金属Aを含む金属製基材の表面に被覆される被覆層の密着性を向上させるために、溶融塩を用いた電気化学プロセスにより、(a)金属Bのイオンを含む溶融塩浴を準備するステップと、(b)前記溶融塩浴の中へ、前記金属Aを含む金属製基材を浸漬させ、金属製基材に含まれる前記金属Aが前記溶融塩中における前記金属Bよりも卑であることにより、前記金属Aと、前記金属Bのイオンとの置換反応によって前記基材の表面に少なくとも前記金属Bを含む多孔質層を形成させるステップとを含んでいることを特徴とする前記基材の表面に多孔質層を形成する方法が提供される。
本発明では、多孔質層を介した金属製基材と被覆層の密着性をさらに向上させるために、金属Aと金属Bのイオンとの置換反応によって金属製基材の表面に少なくとも前記金属Bを含む多孔質層を形成させるステップ(b)において、前記金属Bを前記置換反応により単体で析出させた後、前記金属Aとの相互拡散により前記多孔質層中に前記金属Aと前記金属Bからなる合金相を形成させることができる。
また、本発明では、多孔質層を介した金属製基材と被覆層の密着性をさらに強化するために、金属Aと金属Bのイオンとの置換反応によって金属製基材の表面に少なくとも前記金属Bを含む多孔質層を形成させるステップ(b)において、前記置換反応により、前記金属Bと前記金属Aからなる合金相を直接形成させることもできる。
さらに本発明では、多孔質層の形態制御を行うことによりそのアンカー効果を高め、多孔質層を介した金属製基材と被覆層の密着性をさらに向上させるため、金属Aと金属Bのイオンとの置換反応によって金属製基材の表面に少なくとも前記金属Bを含む多孔質層を形成させるステップ(b)の前に、または前記ステップ(b)の実施中において、溶融塩浴の中に陽極を配置し、浸漬した前記基材を陰極として、前記陽極との間で通電することにより、前記金属Aと前記金属Bからなる合金相の組成を制御して、前記置換反応における前記金属Aの溶出速度を制御することで、前記多孔質層の形態を制御するステップ(c)をさらに含ませることができる。
本発明では、金属製基材表面を多孔質化することによって密着性を向上させた被覆層を得るために、金属Aと金属Bのイオンとの置換反応によって金属製基材の表面に少なくとも前記金属Bを含む多孔質層を形成させるステップ(b)の後に、前記多孔質層を被覆材料で被覆するステップ(d)をさらに含ませてもよい。
本発明において、多孔質化した金属製基材表面に被覆層を形成する場合、被覆材料の被覆は電気化学プロセスを用いて実施されることが好ましく、前記電気化学プロセスには溶融塩が用いられていることがより好ましい。このような手法により形成された被覆膜は金属製基材表面に形成された多孔質層の孔内部にまで進入し、アンカーとして働くので、基材表面との間で高い密着性を得ることができる。
上述のように、被覆材料は、電気化学プロセスを用いた被覆処理により金属製基材表面に形成された多孔質層の孔内部にまで進入させ得るものであればよく、金属や合金の他、炭素やホウ素、あるいは金属窒化物や酸化物、ホウ化物、炭化物といった金属化合物も含まれる。また、電気化学プロセスを用いた被覆処理の形態としては、通電を伴う電解めっきや、通電を伴わない無電解めっきなど、上記の被覆材料を、金属製基材表面に形成された多孔質層の孔内部にまで進入させ得る方法であれば良い。
また、上記の電気化学プロセスを用いた被覆処理以外の方法であっても、金属製基材表面に形成された多孔質層の孔内部にまで進入させ得るものであればよく、例えば被覆膜成分を含む原料を塗布したり、原料中に浸漬させることにより形成される膜であっても、密着性向上の効果が得られる。
本発明によれば、溶融塩を用いた電気化学プロセスを利用することにより、広範な種類の金属製基材表面に形成させる被覆層の密着性を向上させることができる多孔質層を該基材表面に形成させることができる。また、多孔質層を形成する際の溶融塩中の金属イオンの濃度や反応時間、浴温などを制御することにより、基材表面に形成される多孔質層の形態や構造、組成を制御することもできる。このため、本発明により形成された多孔質層は、被覆層の一部を該多孔質層の孔内部に深く進入させることにより、物理的に強いアンカー効果を発揮することができる。
また、本発明によれば、置換反応と、通電による還元反応等を用いた基材の組成制御とを併用することによって、基材表面に形成される多孔質層の形成速度や孔径、空隙率といった形態を制御することもできるので、ショットブラスト法を用いた基材表面の粗面化や限られた種類の基材に対する電解酸化等により形成させる多孔質層とは異なり、基材組成や被覆材料の種類に応じて任意の形態や組成を有する多孔質層を形成することができる。
置換反応と通電による還元反応とを併用し、Cu板の溶融塩浴中での電解処理時間を変化させることにより、Cu板表面にSnを含む多孔質層を形成させた本発明の一実施形態に係る置換反応処理後のCu板の外観写真である。 図1に示された各置換反応処理Cu板の一部を基材として、炭素めっきを施した各試料の外観写真である。 図2の各試料のテープ剥離テスト後の外観写真である。 Cu板に直接炭素めっきを施した場合の、テープ剥離テスト前後の外観写真である。 置換反応処理Cu板に炭素めっきを施した試料(図2(b))の断面TEM写真である。 置換反応のみを利用し、溶融塩浴中でのCu板の浸漬時間を変化させることにより、基材表面にSnを含む多孔質層を形成させた、本発明の第2の実施形態に係る置換反応処理後のCu板表面の顕微鏡写真である。 置換反応と通電による還元反応とを併用し、電解処理をした後の溶融塩浴中での浸漬時間を変化させることにより、基材表面にSnを含む多孔質層を形成させた、本発明の第3の実施形態に係る置換反応処理後のCu板表面の顕微鏡写真である。 置換反応のみを利用し、溶融塩浴の浴温を変化させることにより、Ti板の基材表面に多孔質層を形成させた、本発明の第4の実施形態に係る置換反応処理後のTi板表面の顕微鏡写真である。 置換反応のみを利用し、溶融塩浴の浴温を変化させることにより、Fe板の基材表面に多孔質層を形成させた、本発明の第5の実施形態に係る置換反応処理後のFe板表面の顕微鏡写真である。 置換反応のみを利用し、溶融塩浴中でのAl板の浸漬時間を変化させることにより、Al板の基材表面に多孔質層を形成させた、本発明の第6の実施形態に係る置換反応処理後のAl板表面の顕微鏡写真である。 置換反応処理を施したCu板へ、Fe電析膜を形成させた本発明の第7の実施形態に係る試料についてのテープ剥離テスト前後の外観写真である。 置換反応処理を施していないCu板表面へ、Fe電析膜を形成させた比較例1についてのテープ剥離テスト前後の外観写真である。 置換反応処理を施したCu板へ、アルミナ塗布膜を形成させた本発明の第8の実施形態に係る試料についてのテープ剥離テスト前後の外観写真である。 置換反応処理を施していないCu板表面へ、アルミナ塗布膜を形成させた比較例2についてのテープ剥離テスト前後の外観写真である。
以下、写真等を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
1.試料の作製
被覆材料として炭素を選び、炭素めっきを施した炭素膜の密着性向上を確認するため、基材としてCu板を使用し、溶融塩中に存在させるイオンとしてSn(II)を選択して、以下の実験を行った。
溶融塩には225℃のSnCl−KClを用い、これをAr雰囲気に保持した電解セル内に設置した。HNOで1分間の前処理を行なったCu板を前記溶融塩浴中に浸漬させた。引き続き、前記Cu板を陰極として用い、陽極にはグラッシーカーボンを用い、参照極にはAg(I)/Ag電極を用いて−64mV(Sn(II)/Sn電位基準)の電位で15sec、30sec、60secの定電位電解を行い、Cu板の表面でSn(II)を還元させた。電解終了後、Cu板を引き上げ、付着塩を水洗により除去した。以上の処理の後の各試料(以降、置換反応処理Cu板と記載)の外観写真を図1(a)、(b)、(c)に示す。
置換反応処理後の表面は、灰白色或いは銀白色に変化しており、Cu−Sn合金相と一部Sn単相の形成が示唆された。
次に、得られた各置換反応処理Cu板の一部を切り出し、これを基材として、炭素めっきを行った。溶融塩には540℃のLiCl−KCl−CaClに5mol%のCaCを添加したものを用い、Ar雰囲気に保持したグローブボックス内の電解セルに設置した。陽極には上記の各置換反応処理Cu板を用い、陰極には炭素板を用い、参照極にはAg(I)/Agを用いた。
上記の溶融塩浴中で、まず0.2V(Li(I)/Li電位基準)の電位で300secの定電位電解を行った後、さらに1.5Vの電位で300secの定電位電解を行った。電解終了後、各置換反応処理Cu板を引き上げ、付着塩を水洗により除去した。以上の炭素めっきを施した後の各置換反応処理Cu板の外観写真を図2に示す。全ての試料において、均一な炭素膜が形成されていることを確認することができた。
2.被覆層の密着性評価
次に、各置換反応処理Cu板上に形成させた炭素膜の密着性を評価するために、テープによる剥離試験を行なった。その結果を図3(a)、(b)、(c)に示す。比較のために、置換反応処理を施していないCu板に直接炭素めっきを施した試料について、同様のテープによる剥離試験を行なった。その結果を図4(a)、(b)に示す。
Cu板に直接炭素めっきを施した試料では、Cu板上の炭素膜の剥離がみらされたが(図4(b))、置換反応処理Cu板上に形成させた炭素膜については、いずれも剥離はみられず、炭素膜の密着性が向上していることを確認することができた。
図2(b)の試料について、断面TEM観察を行った。その結果を図5に示す。
置換反応処理Cu板の表面近傍には1μm程度の厚みにおいて多孔質層が形成されおり、EDX測定の結果から、CuSn(ε)相およびCuSn(δ)相が形成されていることを確認することができた。この置換反応処理Cu板表面上には炭素めっきにより形成した炭素膜が確認されたが、多孔質層の孔内部の表面においても炭素めっきが進行しており、孔内部のほぼ全体を埋めるように炭素が形成していることが判った。
上記の結果より、Sn(II)を含有する溶融塩浴中への浸漬、電解処理、回収までの保持の過程において、Cu基材とSn(II)との間の置換反応によって多孔質層が形成されると共に、多孔質層の合金化が進行したものと考えられる。さらに、多孔質層の孔内部に形成された炭素はすべて置換反応処理Cu板表面上の炭素膜と繋がっているので、孔内部に形成された炭素が強力なアンカーの役割を果たし、表面の炭素膜の密着性を向上させているものと考えられる。
以上の結果より、溶融塩中での置換反応を利用してCu板の表面に多孔質層を形成した後に炭素めっきを施すと、置換反応処理Cu板表面上の炭素膜の形成と同時に、多孔質層内部にも炭素のアンカーが形成されることにより、置換反応処理Cu板表面上の炭素膜の密着性が向上することを確認することができた。
<Cu基材での置換反応処理条件の検討1>
溶融塩中での置換反応によるCu板表面近傍の多孔質化を確認するため、さらに以下の実験を行った。
溶融塩には実施例1と同じく225℃のSnCl−KClを用い、これにCu板を浸漬させ、電解処理を行わずに浸漬時間のみを変化させた際のCu板の表面形態の変化を光学顕微鏡により観察した。
まず、225℃のSnCl−KCl中で、電解によるSn(II)の還元を行わず、浸漬時間のみを45sec、60sec、90secと変化させた場合の表面の形態変化を図6(a)、(b)、(c)に示す。
いずれの試料においても、表面に多孔質層が形成されていることを示す孔の形成を確認することができたことから、Cu板表面では、Cuと溶融塩浴中のSn(II)との間で置換反応が進行して、表面の多孔質化が進むことが分かった。さらに浸漬時間を長くすると、多孔質層に形成される孔のサイズはより大きく深く成長しており、表面近傍の多孔質化が進行すると共に、マクロな粗面化も進行していくことが確認された。
<Cu基材での置換反応処理条件の検討2>
次に、実施例1と同じSnCl−KCl中にCu板を15sec浸漬させた後、陰極には前記Cu板を用い、陽極にはグラッシーカーボンを用い、参照極にはAg(I)/Ag電極を用いて−64mV(Sn(II)/Sn電位基準)の電位において30secの定電位電解を行ってCu板表面でSn(II)を還元させ、電解後の浸漬時間を0sec、15sec、30secと変化させた場合の表面のCu板の表面の形態変化を図7(a)、(b)、(c)に示す。
いずれの試料においても、表面に多孔質層が形成されていることを確認することができるが、電解処理を行わない場合(図6)と比較して形成される孔のサイズが大幅に小さくなることが分かった。さらに電解処理を行った後の浸漬時間を長くすると、大きなサイズの孔の存在割合が減少し、より小さな孔が均一に成長する傾向が見られることが分かった。
この結果より、電解前の浸漬時においては、図6の場合と同様に、Cuと溶融塩浴中のSn(II)との間で置換反応が速やかに進行して、表面には大きなサイズの孔の形成よる多孔質化が進むと考えられる。一方、電解により表面にCu−Sn合金相を形成させた後の浸漬時においては、Cu−Sn合金相表面で置換反応(Cuの溶出とSnの析出・合金化)が進行することによって置換反応の速度が抑えられ、より小さなサイズの孔の形成を伴う多孔質化が進むことが分かった。
<Ti基材での置換反応処理条件の検討>
実施例1〜3に対し、溶融塩中での置換反応による、Cu以外の金属基材の表面近傍の多孔質化を確認するため、Ti板を用いて以下の実験を行った。
溶融塩には実施例1と同じくSnCl−KClをAr雰囲気に保持した電解セル内に設置したものを用いた。この浴中に、表面の機械研磨を施したTi板を浸漬させ、300sec保持した際のTi板の表面形態の変化を光学顕微鏡により観察した。
浴温を225℃から330℃まで変化させた際のTi板表面の顕微鏡写真を図8(a)、(b)、(c)に示す。225℃では表面形態に変化は見られず、置換反応はほとんど進行していなかった(図の傷跡は観測位置の確認のために意図的に形成したものである)。一方、浴温を300℃まで昇温させると、表面に複数の孔の形成が確認され、緩やかであるが置換反応による表面の多孔質化が進行していることが分かった。
この結果より、Ti板表面では、Tiと溶融塩浴中のSn(II)との間で置換反応が進行して、表面の多孔質化が進むことが分かった。さらに、浴温を330℃まで昇温させた場合では、さらに表面の微細な多孔質化が進行していたことから、反応温度を高くすることで、置換反応の進行が促進されることを確認した。
<Fe基材での置換反応処理条件の検討>
実施例1〜3及び実施例4に対し、溶融塩中での置換反応による、Cu、Ti以外の金属基材の表面近傍の多孔質化を確認するため、Fe板を用いて以下の実験を行った。
溶融塩にはZnCl−KClをAr雰囲気に保持した電解セル内に設置したものを用いた。この浴中に、表面の機械研磨を施したFe板を浸漬させ、300sec保持した際のFe板の表面形態の変化を光学顕微鏡により観察した。
浴温を550℃から600℃まで変化させた際のFe板表面の顕微鏡写真を図9(a)、(b)、(c)に示す。550℃では表面形態に変化は見られず、置換反応はほとんど進行していなかった(図の傷跡は観測位置の確認のために意図的に形成したものである)。一方、浴温を570℃まで昇温させると、表面に複数の孔の形成が確認され、置換反応による表面の多孔質化が進行していた。
この結果より、Fe板表面では、Feと溶融塩浴中のZn(II)との間で置換反応が進行して、表面の多孔質化が進むことが分かった。さらに浴温を330℃まで昇温させると、表面の多孔質化が進行するとともに、表面のマクロな粗面化も進行していることが分かった。以上の結果から、この溶融塩中でのFe表面の多孔質化は570℃程度の浴温で進行させることが好ましいことが分かった。
<Al基材での置換反応処理条件の検討>
実施例1〜3及び実施例4、5に対し、溶融塩中での置換反応による、Cu、Ti、Fe以外の金属基材の表面近傍の多孔質化を確認するため、Al板を用いて以下の実験を行った。
溶融塩にはLiCl−KClに2mol%のFeClを添加したものを、Ar雰囲気に保持した電解セル内に設置して450℃で用いた。この浴中に、表面の機械研磨を施したAl板を浸漬させた際のAl板の表面形態の変化を光学顕微鏡により観察した。
浸漬時間を変化させた際の、Al板表面の顕微鏡写真を図10(a)、(b)、(c)に示す。10secの浸漬において表面に複数の孔の形成が確認され、置換反応による表面の多孔質化が進行していることが分かった。
この結果より、Al板表面では、Alと溶融塩浴中のFe(II)との間で置換反応が速やかに進行して、表面の多孔質化が進むことが分かった。さらに浸漬時間の増加により、孔数や孔径は増加・成長している様子が確認され、浸漬時間の増大により置換反応がさらに進行し多孔質化が進むことが分かった。
<Fe電析膜を被覆層とした場合の密着性評価>
次に、炭素以外の被覆材料について、電気化学プロセスにより形成した被覆層の密着性が向上することを確認するため、Cu板(基材)に対するFe電析膜に関して、以下の実験を実施した。
まず置換反応処理を施したCu基材を準備するため、溶融塩として225℃のSnCl−KClを用い、Cu板に対して実施例3と同様の条件(15sec浸漬→−64mVで30secの定電位電解→15sec浸漬)で置換反応処理を行い、浴から引き上げ、付着塩を洗浄により除去した。
ここで得られた置換反応処理Cu板上に、溶融塩中での電解によりFeの電析膜を形成させるため、Ar雰囲気に保持した電解セル内において、LiCl−KClに2mol%のFeClを添加した450℃の浴中で、置換反応処理Cu板を陰極として、Fe板を陽極として用い、参照極にはAg(I)/Agを用い、2050mV(Li(I)/Li電位基準)で、陰極の通電電気量が67C/cmとなるよう定電位電解を行い、実施例7の試料を作製した。
比較例1
比較のため、置換反応処理を施していないCu板についても上記と同様の処理を行い、Fe電析膜を形成させて比較例1の試料を作製した。すなわち、被表面処理基材として置換反応処理を施していないCu板を用いたこと以外は、実施例7と同じ条件でFe電析膜を形成させた。
引き続き、置換反応処理Cu板上に形成させたFe電析膜の密着性を評価するために、実施例7の試料についてテープによる剥離試験を行なった。その結果を図11(a)、(b)に示す。比較のため、置換反応処理を施していないCu板にFe電析膜を形成させた比較例1の試料について、同様のテープによる剥離試験を行なった。その結果を図12(a)、(b)に示す。未処理Cu板の場合、Fe電析膜の剥離がみられた。一方、置換反応処理Cu板上に形成させたFe電析膜については、剥離はみられず、形成したFe電析膜の密着性が向上していることを確認することができた。
以上の結果より、溶融塩中での置換反応を利用してCu板の表面に多孔質層を形成した後にFe電析を実施すると、置換反応処理により形成される多孔質層内部にもFeのアンカーが形成されることにより、置換反応処理Cu板表面上のFe電析膜の密着性が向上すると考えられた。
<アルミナ塗布膜を被覆層とした場合の密着性評価>
次に、電気化学プロセス以外の方法により形成した被覆層の密着性が向上することを確認するため、Cu板(基材)に対するアルミナ塗布膜に関して以下の実験を実施した。
まず、実施例7と同様に、置換反応処理を施したCu基材を準備するため、溶融塩として225℃のSnCl−KClを用い、Cu板に対して実施例3と同様の条件(15sec浸漬→−64mVで30secの定電位電解→15sec浸漬)で置換反応処理を行い、浴から引き上げ、付着塩を洗浄により除去した。得られた置換反応処理Cu板に対して、被覆材料として市販のアルミナペーストを用い、これを表面に均一に塗布した。塗布後、常温の大気中で乾燥させた後、さらに100℃で48時間保持し、実施例8の試料を作製した。
比較例2
比較のため、置換反応処理を施していないCu板についても上記と同様の処理を行い、アルミナ塗布膜を形成させて比較例2の試料を作製した。すなわち、被表面処理基材として置換反応処理を施していないCu板を用いたこと以外は、実施例8と同じ条件でアルミナ塗布膜を形成させた。
引き続き、置換反応処理Cu板上に形成させたアルミナ塗布膜の密着性を評価するために、実施例8の試料についてテープによる剥離試験を行なった。その結果を図13(a)、(b)、(c)に示す。比較のため、置換反応処理を施していないCu板にアルミナ塗布膜を形成させた比較例2の試料について、同様のテープによる剥離試験を行なった。その結果を図14(a)、(b)、(c)に示す。未処理Cu板に塗布した試料では、Cu板上のアルミナ塗布膜は容易に剥離することが確認された。一方、置換反応処理Cu板上に形成させたアルミナ塗布膜については、剥離はみられなかったことから、塗布膜についても密着性が向上していることを確認することができた。
以上の結果より、溶融塩中での置換反応を利用してCu板の表面に多孔質層を形成した後に塗布膜を形成すると、置換反応処理により形成される多孔質層内部にも塗布膜成分のアンカーが形成されることにより、置換反応処理Cu板表面上の塗布膜の密着性が向上すると考えられた。

Claims (8)

  1. 金属Aを含む金属製基材の表面に被覆される被覆層の密着性を向上させるために、
    (a)金属Bのイオンを含む溶融塩浴を準備するステップと、
    (b)前記溶融塩浴の中へ、前記金属Aを含む金属製基材を浸漬させ、金属製基材に含まれる前記金属Aが前記溶融塩中における前記金属Bよりも卑であることにより、前記金属Aと、前記金属Bのイオンとの置換反応によって前記基材の表面に前記金属Bもしくは金属Bを含む合金から成る多孔質層を形成させるステップと
    を含んでいることを特徴とする前記基材の表面に多孔質層を形成する方法。
  2. 前記ステップ(b)において、前記金属Bは前記置換反応により単体で析出した後、前記金属Aとの相互拡散により前記多孔質層中に前記金属Aと前記金属Bからなる合金相を形成していることを特徴とする請求項1に記載の前記多孔質層を形成する方法。
  3. 前記ステップ(b)において、前記金属Bは前記置換反応により、前記金属Bと前記金属Aからなる合金相を前記多孔質層中に直接形成していることを特徴とする請求項1に記載の前記多孔質層を形成する方法。
  4. 前記ステップ(b)の前に、または前記ステップ(b)の実施中において、前記溶融塩浴の中に陽極を配置し、浸漬した前記基材を陰極として、前記陽極との間で通電することにより、前記金属Aと前記金属Bからなる合金相の組成を制御して、且つ前記置換反応における前記金属Aの溶出速度を制御することで、前記多孔質層の形態を制御するステップ(c)をさらに含んでいることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の前記多質層を形成する方法。
  5. 前記ステップ(b)の後に、前記多孔質層を被覆材料で被覆するステップ(d)をさらに含んでいることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の前記多孔質層を形成する方法。
  6. 前記被覆材料の被覆は、電気化学プロセスを用いて実施されるものであることを特徴とする請求項5に記載の前記多孔質層を形成する方法。
  7. 前記電気化学プロセスは、溶融塩が用いられていることを特徴とする請求項6に記載の前記多孔質層を形成する方法。
  8. 前記溶融塩を用いた前記電気化学プロセスは、炭素めっき又は金属めっきであることを特徴とする請求項7に記載の前記多孔質層を形成する方法。
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