明 細 書
光学的情報記録媒体及び光学的情報記録再生装置
技術分野
[0001] 本発明は、レーザ光の照射により情報が記録及び再生される光学的情報記録媒体 及びこの光学的情報記録媒体に情報を記録し再生する光学的情報記録再生装置 に関する。
背景技術
[0002] CD-ROM (Compact Disk Read Only Memory:読出専用コンパクトディスク)及び DVD-ROM (Digital Versatile Disc - ROM :読出専用 DVD)の急速な普及に伴い 、近時、 CD_R (Compact Disc Recordable)及び DVD—R (Digital Versatile Disc Recordable)といったユーザによって 1回だけ記録可能な追記型の光学的情報記録 媒体 (以下、光記録媒体、又は単に媒体ともいう)の普及も加速的に進んでいる。前 述の CD—R及び DVD— Rにおいては、記録層として感光性の色素層がスピン塗布又 は蒸着等により基板上に形成されている。そして、 CD— ROM等と同等な反射率を実 現するために、色素層の上に A1又は Au等の金属材料からなる反射層が形成されて いる。情報の記録及び再生に使用されている半導体レーザ光の波長は、 CD— Rでは 780nm程度であり、 DVD—Rでは 650nm程度である。そして、色素材料には、この ような波長の半導体レーザ光に対して記録可能な程度の光吸収率を実現できるよう な材料が使用されている。
[0003] 一方、近時、青紫色半導体レーザに関する研究開発が急速に進展しており、これ によって、波長が 380乃至 430nmの半導体レーザの実用化が近づいている。光記 録媒体の記録密度は主として情報の記録再生に使用される光ビームの集光スポット サイズによって決まる。集光スポットサイズはビーム光の波長に比例するため、記録 再生用のレーザ光として、現在実用化されている赤色半導体レーザよりも波長が短 い青紫色半導体レーザ光を使用することにより、集光スポットサイズが小さくなり、光 記録媒体の記録容量が大幅に増えるものと期待されている。
[0004] このような青紫色半導体レーザ光を使用する光記録媒体としては、上述の感光性
の色素層を使用する方法の他に、記録層として Au、 Ag又は Cu等の金属からなる微 小な粒子を離散的に分布させた島状金属極薄膜を使用し、この薄膜を透明な有機 樹脂からなるスぺーサ層を介して積層させた光記録媒体が提案されてレ、る。島状金 属極薄膜は、蒸着又はスパッタリング等による金属膜の成膜をその初期段階で停止 することにより得ること力 Sできる。この光記録媒体は、レーザ光の照射による透明樹脂 のバブルフォーミング又は 2種類の金属の相互拡散を利用してマークを形成するもの である(例えば、特許文献 1 (特開 2002 - 11957号公報)及び非特許文献 1 (第 50回 応用物理学関係連合講演会、講演予稿集 27p - ZW - 4)参照。)。
[0005] また、 PC (Poly_Carbonate :ポリカーボネート)基板上に記録層として金属又は半導 体等からなる薄膜を積層し、レーザ光の照射によってこの薄膜を加熱して加熱部分 の薄膜及び基板を変形させて情報の記録を行う光記録媒体も提案されている。
[0006] 特許文献 1 :特開 2002— 11957号公報
非特許文献 1:第 50回応用物理学関係連合講演会、講演予稿集 27p - ZW - 4 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] し力、しながら、上述の従来の技術には以下に示すような問題点がある。先ず、記録 層として色素層を使用する光記録媒体においては、波長が 380乃至 430nmの範囲 にある青紫色半導体レーザ光に適した色素材料は未だ開発途上にあり、実用に耐え 得る材料が開発されていない。即ち、色素層にマークを形成してー且情報を記録し た後に、このマークに再生用のレーザ光を照射し続けると、記録された情報が劣化し てしまう。また、色素層を形成した光記録媒体は、基板上に色素材料をスピンコート により塗布した後に、改めてスパッタリング等により反射層を形成しなくてはならない ため、光記録媒体の作製プロセスが煩雑になるという問題点がある。更に、色素層を 記録層に用いた媒体では、記録層の透過率が低いため、 2層以上の記録層が形成 され多層記録が可能な光学的情報記録媒体を作製することができないという問題点 もめる。
[0008] また、記録層として Au、 Ag又は Cu等からなる微小な金属粒子を離散的に分布さ せた島状金属極薄膜を使用し、この島状金属極薄膜を有機樹脂膜により挟んだ光
記録媒体は、記録層の構造として、直径が数 nm力 数 10nm程度の金属粒子が 2 次元的に分布した離散的な粒子構造を有している。そのため、金属粒子の量は極め て微量であり、情報記録時にディスクを高速で回転させると記録用レーザ光のパワー が不足し、信号品質が高い記録マークを形成することが困難である。また、金属粒子 力 ¾次元的に分布した離散的な粒子構造を有することから、再生時にノイズが高くな る。更に、島状の金属膜を形成するためには、その膜厚を lOnm以下程度の極めて 薄い範囲に限定しなくてはならず、膜厚の制御が困難である。更にまた、有機樹脂膜 をスピンコーティングにより形成するため、製造工程が煩雑になる。
[0009] 更に、レーザ光を照射することにより薄膜及び基板を変形させて情報の記録を行う 光記録媒体においては、記録時に基板が変形するため、ノイズの上昇が著しぐノィ ズが低い再生信号を得ることが困難である。特に、高密度化のために溝ピッチを狭く したり、基板の溝部及びこの溝部間に形成される平坦なランド部の双方に記録を行う ランド/グループ記録を行ったりすると、記録時の基板の変形が隣接した記録領域 にも影響を与えるため、高密度記録が困難である。
[0010] 本発明は力かる問題点に鑑みてなされたものであって、作製が容易であり、記録再 生光として青紫色半導体レーザ光を使用する場合においても再生信号の品質が高く 、多層記録が可能である光学的情報記録媒体及びこの光学的情報記録媒体に情報 を記録し再生する光学的情報記録再生装置を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明に係る光学的情報記録媒体は、基板及びこの基板上に形成された記録層 を備え、この記録層に光を照射することにより情報を記録及び再生する光学的情報 記録媒体において、前記記録層が、誘電体からなる母相と、この母相中に分散され 金属又は合金からなる複数の微結晶粒と、を有し、前記記録層に光が照射されること によりこの光が照射された部分における前記微結晶粒の大きさが変化して情報が記 録されることを特徴とする。
[0012] 本発明においては、記録層に光を照射することにより、記録層の照射部分における 微結晶粒の大きさが変化して、この照射部分の反射率が変化する。これにより、記録 層の照射部分にマークが形成され、情報を記録することができる。また、この光学的
情報記録媒体を製造する際に、スピンコーティング等の手段により有機樹脂膜を形 成する必要がないため、製造が容易である。
[0013] また、前記微結晶粒が、 Ag、 Cu、 In、 Pd及び Teからなる群から選択された 1種の 金属又は 2種以上の金属からなる合金により形成されていることが好ましい。更に、前 記微結晶粒が、 0. 3乃至 25質量%の Pd及び 0. 3乃至 25質量%の Cuを含有し、残 部が Ag及び不可避的不純物からなる AgPdCu合金により形成されてレ、る力、、又は、 前記微結晶粒が、 38乃至 55質量%の Teを含有し、残部が Ag及び不可避的不純物 力 なる AgTe合金により形成されている力、、又は、前記微結晶粒が、 40乃至 95質 量%の Inを含有し、残部が Cu及び不可避的不純物からなる Culn合金により形成さ れていることがより好ましい。これにより、良好な記録再生特性と良好な耐食性とを両 立させることができる。
[0014] 更に、前記記録層が複数の層からなり、この複数の層間にこの複数の層を相互に 分離する光学分離層が形成されていてもよい。これにより、複数の層に夫々情報を記 録することができ、光学的情報記録媒体の記録密度が向上する。
[0015] 更にまた、前記光が、波長が 380乃至 430nmのレーザ光であることが好ましレ、。こ れにより、記録層上に小さなスポットを形成することができ、記録密度を向上させるこ とができる。
[0016] 本発明に係る光学的情報記録再生装置は、前記光学的情報記録媒体に対して光 を照射して前記記録層の前記光の照射部分における前記微結晶粒の大きさを変化 させてこの部分の反射率を変化させることにより情報を記録し、前記記録層の反射率 の違いを検出することにより前記情報を再生することを特徴とする。
発明の効果
[0017] 本発明によれば、光を照射することにより、記録層の微結晶粒の大きさを変化させ て、情報を記録することができる。これにより、記録及び再生用の光として青紫色半導 体レーザ光を使用しても、再生信号の品質が高ぐ製造が容易な光学的情報記録媒 体を実現することができる。
図面の簡単な説明
[0018] [図 1]本発明の第 1の実施形態に係る光学的情報記録媒体を示す断面図である。
[図 2]本発明の第 2の実施形態に係る光学的情報記録媒体を示す断面図である。
[図 3]本発明の第 3の実施形態に係る光学的情報記録媒体を示す断面図である。
[図 4]本発明の第 5の実施形態に係る光学的情報記録再生装置を示すブロック図で ある。
[図 5]横軸に記録時及び再生時における光ディスク媒体の線速をとり、縦軸に 8T信 号の C/N比をとつて、再生信号品質に及ぼす線速の影響を示すグラフ図である。 符号の説明
1;透明榭脂基板
2、 2a;第 1の誘電体層
2b;第 3の誘電体層
3;記録層
3a;第 1の記録層
3b;第 2の記録層
4、 4a;第 2の誘電体層
4b;第 4の誘電体層
5;反射層
6;母相
7;微結晶粒
8;光学分離層
9;ダミー用の透明樹脂基板
100;ディスク
101;スピンドルモータ
102;回転制御回路
103;サーボ制御回路
104;光ヘッド
105;記録再生回路
106; Wobble検出回路
107;アドレス検出回路
108 ;記録データ処理回路
109 ;同期信号生成回路
110 ;再生データ処理回路
111 ;インターフェイス
112 ;コントローラ
発明を実施するための最良の形態
[0020] 以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。先 ず、本発明の第 1の実施形態について説明する。図 1は本実施形態に係る光学的情 報記録媒体を示す断面図である。なお、本明細書において、図面の縦方向及び横 方向の尺度並びに縦横比は任意である。
[0021] 図 1に示すように、本実施形態に係る光記録媒体においては、ディスク状の透明榭 脂基板 1が設けられている。透明樹脂基板 1の直径は例えば 120mmであり、厚さは 例えば 0. 6mmであり、表面に案内溝又はプリピット(図示せず)が形成されている。 そして、透明樹脂基板 1上には、第 1の誘電体層 2、記録層 3、第 2の誘電体層 4及び 反射層 5がこの順に積層されている。そして、反射層 5上に、紫外線硬化樹脂層(図 示せず)を介して、厚さが 0. 6mmのダミー用の透明樹脂基板(図示せず)が貼り合 わされている。透明樹脂基板 1及びダミー用透明樹脂基板は、例えば PC基板である 。また、第 1の誘電体層 2及び第 2の誘電体層 4は、例えば ZnS_Si〇により形成され
2
ている。更に、反射層 5は、例えば AlTi合金により形成されている。
[0022] そして、記録層 3においては、誘電体からなる母相 6に金属又は合金からなる微結 晶粒 7が分散されている。母相 6を形成する誘電体は例えば酸化物誘電体であり、例 えば酸化珪素(Si〇)である。また、微結晶粒 7を形成する金属又は合金は、例えば
2
銀 (Ag)、銅(Cu)、インジウム(In)、パラジウム(Pd)及びテルル (Te)からなる群から 選択された 1種の金属又は 2種以上の金属からなる合金であり、例えば、 0. 3乃至 2 5質量%の Pd及び 0. 3乃至 25質量%の Cuを含有し、残部が Ag及び不可避的不純 物力 なる AgPdCu合金である。また、記録層 3の厚さは例えば 5乃至 25nmであり、 例えば 7乃至 15nmであり、記録層 3は多結晶膜である。記録層 3における微結晶粒 7の含有率は例えば 30乃至 80体積%である。更に、微結晶粒 7の粒径は 10nm以
下であることが好ましぐ例えば 3乃至 7nmである。
[0023] なお、母相 6を形成する誘電体は酸化珪素(SiO )に限定されず、例えば、酸化ァ
2
ノレミニゥム (Al O )又は酸化タンタル (Ta O )であってもよい。又は、母相 6を形成す
2 3 2 5
る誘電体は窒化物誘電体であってもよぐ例えば、窒化珪素(SiN)、窒化アルミニゥ ム (A1N)若しくは窒化タンタル (TaN)であってもよレ、。又は、 2種以上の上記酸化物 及び/又は窒化物の混合物又は化合物であってもよい。
[0024] また、微結晶粒 7を形成する金属又は合金は AgPdCu合金には限定されず、例え ば、 38乃至 55質量%の Teを含有し、残部が Ag及び不可避的不純物からなる AgT e合金でもよぐ 40乃至 95質量%の Inを含有し、残部が Cu及び不可避的不純物か らなる Culn合金であってもよい。これらの場合も、微結晶粒 7の含有率及び粒径は上 記範囲にあることが好ましい。
[0025] 以下、本発明の各構成要件における数値限定理由について説明する。
[0026] 記録層の厚さ: 5乃至 25nm
記録層の厚さが 5nm未満であると、記録層における光の透過率が高くなり、記録層 における光の吸収率が低下し、情報の記録が困難になる。一方、記録層の厚さが 25 nmを超えると、記録層における光の反射率が高くなりすぎて、やはり光の吸収率が 低下し、情報の記録が困難になる。従って、記録層の厚さは 5乃至 25nmであること が好ましい。より好ましくは、 7乃至 15nmである。
[0027] 微結晶粒を AgPdCu合余により形成する場合の Pd及び Cuの各含有量: 0. 3乃至
25晳量%
本来、 Agの単体は硫黄及び塩素成分に対する耐食性が低い。一方、 Pdは硫黄及 び塩素に対しては安定な物質である。そこで、 Agに Pdを 0. 1乃至 30. 0質量%の範 囲で添加すると、耐食性が向上する。但し、 AgPdのみからなる合金では高温高湿雰 囲気中における耐食性が低ぐ高温高湿雰囲気中に媒体を放置すると腐食が発生 する場合がある。しかし、 AgPd合金に Cuを 0. 1乃至 30. 0質量%の範囲で添加す ると、高温高湿雰囲気中における耐食性がより向上する。また、上記成分範囲におい て、 Pbの含有量が 0. 3乃至 25質量%であり、 Cuの含有量が 0. 3乃至 25質量%で あると、記録再生特性が特に良好である。従って、 AgPdCu合金における Pd及び Cu
の含有量は、夫々 0. 3乃至 25質量%であることが好ましい。
[0028] 微結晶粒を AgTe合金により形成する場合の Teの含有量: 38乃至 55晳量%
前述の如ぐ Ag単体では硫黄及び塩素成分に対する耐食性が低レ、が、 Teを 33質 量%以上添加することにより、硫黄及び塩素に対する耐食性が向上する。一方、 Ag Te合金中の Te含有量を増加させていくと、これに伴い AgTe合金の融点は低下して いく。 AgTe合金の融点が高すぎると、情報を記録するために高いレーザパワーが必 要となり、 AgTe合金の融点が低すぎると、記録した情報の保存安定性が低下する虞 がある。 AgTe合金を上述した記録層の微結晶粒を形成する合金として使用する際 には、 AgTe合金の融点は 400乃至 700°Cの範囲であることが望ましい。この融点に 対応する Teの添加量は 38乃至 55質量%である。従って、 AgTe合金における Teの 含有量は 38乃至 55質量%であることが望ましレ、。
[0029] 微 ^ を Culr^ により开成才る の Inの 量 : 40 95 。 /0
Cu単体の融点は約 1083°Cであり、 Cuのみにより微結晶粒を形成すると、レーザ 光を照射して情報を記録するためには、極めて高いレーザパワーが必要となる。そこ で、 Cuに融点が低い Inを添カ卩し、 Cu単体よりも融点が低い Culn合金により微結晶 粒を形成することが好ましい。前述の如ぐ微結晶粒を形成する材料の融点は 400乃 至 700°C程度であることが好ましいが、 Inの添力卩量を 40乃至 95質量%とすると、 Cul n合金の融点はこの温度範囲になる。また、この組成範囲の Culn合金により微結晶 粒を形成すると、再生特性も良好である。従って、 Culn合金における Inの含有量は 40乃至 95質量%であることが好ましい。
[0030] 次に、本実施形態に係る光記録媒体の製造方法について説明する。予め、レーザ 光をガイドする案内溝又はプリピット(図示せず)が形成された透明樹脂基板 1上に、 インライン型のスパッタ装置により、以下に示す各層を順次形成する。先ず、スパッタ リングにより ZnS_Si〇膜を成膜し、これにより第 1の誘電体層 2を形成する。次に、
2
例えば、 Si〇力らなるターゲットと AlCuPd合金からなるターゲットの 2つのターゲット
2
を同時に使用して、共スパッタを行う。これにより、 Si〇力もなる母材 6中に AlCuPd
2
合金からなる微結晶粒 7が分散された記録層 3を形成する。次に、スパッタリング法に より ZnS_SiO膜を成膜し、第 2の誘電体層 4を形成する。次に、スパッタリング法に
より、 AlTi合金膜を成膜し、反射層 5を形成する。次に、紫外線硬化樹脂層を介して 、反射層 5にダミー用の透明樹脂基板を積層し、紫外線を照射することにより紫外線 硬化樹脂層を硬化させて、反射層 5にダミー用透明樹脂基板を貼り合わせる。これに より、本実施形態に係る光記録媒体が製造される。
[0031] 次に、上述の如く構成された本実施形態に係る光記録媒体の動作について説明 する。この光記録媒体に情報を記録する場合は、記録用レーザ光として、透明樹脂 基板 1側から波長が例えば 380乃至 430nmである青紫色半導体レーザ光を入射さ せる。この記録用レーザ光は透明樹脂基板 1及び第 1の誘電体層 2を透過して記録 層 3に照射される。また、記録層 3を透過したレーザ光は第 2の誘電体層 4を透過し、 反射層 5により反射されて再び第 2の誘電体層 4を透過し、記録層 3に照射される。こ れにより、記録層 3におけるレーザ光が照射された部分が加熱され、この部分の微結 晶粒 7が溶融し、相互に隣り合う微結晶粒 7同士が凝集し、この結果、微結晶粒 7の 粒径がレーザ光の照射前よりも大きくなる。この粒径の変化に伴レ、、記録層 3のレー ザ光照射部分の光学定数、例えば屈折率及び消衰係数が変化し、反射率が低下す る。例えば、レーザ光照射前に 20%であった記録層 3の反射率力 レーザ光照射に より 7%に低下する。これにより、記録層 3におけるレーザ光が照射された部分に、周 囲よりも光の反射率が低いマークが形成され、情報が記録される。
[0032] そして、この情報を再生する場合には、前述の記録用レーザ光よりも強度が低い再 生用レーザ光を透明樹脂基板 1側から入射させる。この再生用レーザ光の波長は例 えば記録用レーザ光の波長と同じでよい。この再生用レーザ光が透明樹脂基板 1及 び第 1の誘電体層 2を透過して記録層 3に照射され、記録層 3により反射されて、再 び第 1の誘電体層 2及び透明樹脂基板 1を透過して光記録媒体の外部に出力される 。また、記録層 3を透過したレーザ光は、第 2の誘電体層 4を透過して反射層 5により 反射され、再び第 2の誘電体層 4、記録層 3、第 1の誘電体層 2及び透明樹脂基板 1 を透過して外部に出力される。このとき、記録層 3におけるマーク (記録部)とそれ以 外の部分 (非記録部)とでは光の反射率が異なるため、マークとそれ以外の部分とで 光の戻り光量 (反射光量)が異なる。この光量差を検出することにより、記録層 3に記 録された情報を読み出すことができる。
[0033] 本実施形態においては、上述の如ぐレーザ光の照射により微結晶粒を溶融'凝集 させて粒径を変化させることにより情報を記録しているため、青紫色半導体レーザ光 を使用する場合においても再生信号の品質が高い。また、記録層に色素を使用しな いため、記録マーク部が劣化することがなレ、。更に、記録時のレーザ光照射部の PC 基板が変形することがないため、再生時にノイズが増加することはない。更にまた、前 述の特許文献 1及び比特許文献 1に記載された光記録媒体においては、透明樹脂 層のバブルフォーミングにより粒子の分布の乱れを生じさせてマークを形成している が、本実施形態においては、微結晶粒を溶融 ·凝集させてその大きさ及び形状を変 化させてマークを形成している。このため、本実施形態においては、前述の特許文献
1及び比特許文献 1に記載された技術と比較して、マーク部と非マーク部との反射率 の差が大きく、再生信号の品質が高い。このため、本実施形態に係る光記録媒体は 、ランド/グノレーブ記録のような高密度記録再生にも適している。
[0034] 更にまた、第 1の誘電体層 2から反射層 5までをスパッタリング法のみにより連続的 に形成することができ、途中でスピンコート法等により樹脂層を形成する必要がない ため、製造プロセスが単純であり、作製が容易である。また、極薄層を成膜する必要 がないため、作製条件の制御が容易である。更に、記録層を合金ターゲット及び誘 電体ターゲットを使用した共スパッタにより形成しているため、母相内に微結晶粒が 均一に分散された多結晶膜を形成することができる。この結果、レーザ光として青紫 色半導体レーザ光を使用でき、再生信号の品質が高ぐ作製が容易である光記録媒 体を実現することができる。
[0035] 次に、本発明の第 2の実施形態について説明する。図 2は本実施形態に係る光学 的情報記録媒体を示す断面図である。図 2に示すように、本実施形態に係る光記録 媒体においては、直径が例えば 120mmであり厚さが例えば 1. 2mmであるディスク 状の透明樹脂基板 1が設けられている。この透明樹脂基板 1上に、反射層 5、第 1の 誘電体層 2、記録層 3及び第 2の誘電体層 4が基板 1側からこの順に積層されている 。そして、第 2の誘電体層 4上に、紫外線硬化樹脂層(図示せず)を介して、厚さが 10 0 μ mの透明な PCフィルム(図示せず)が接着されており、 PCカバー層となっている 。また、記録層 3においては、誘電体からなる母相 6に金属又は合金からなる微結晶
粒 7が分散されている。母相 6を形成する誘電体は例えば酸化物誘電体であり、例え ば酸化珪素(SiO )である。微結晶粒 7を形成する金属又は合金は、例えば銀 (Ag)
2
、銅(Cu)、インジウム (In)、パラジウム(Pd)及びテルル (Te)からなる群から選択さ れた 1種又は 2種以上の金属からなる金属又は合金であり、例えば、 0. 3乃至 25質 量%の Pd及び 0. 3乃至 25質量%の Cuを含有し、残部が Ag及び不可避的不純物 力 なる AgPdCu合金である。本実施形態における上記以外の構成は、前述の第 1 の実施形態と同様である。
[0036] 次に、本実施形態に係る光記録媒体の製造方法について説明する。先ず、透明樹 脂基板 1上に、例えばスパッタリング法により AlTi合金膜を成膜し、反射層 5を形成 する。次に、スパッタリング法により ZnS_Si〇膜を成膜して、第 1の誘電体層 2を形
2
成する。次に、引き続きスパッタリング法により、例えば、 SiO力 なるターゲットと A1
2
CuPd合金からなるターゲットの 2つのターゲットを同時に使用して、共スパッタを行う 。これにより、 SiO力もなる母材 6中に AlCuPd合金からなる微結晶粒 7が分散された
2
記録層 3が形成される。次に、スパッタリング法により ZnS— SiO膜を成膜し、第 2の
2
誘電体層 4を形成する。次に、紫外線硬化樹脂層を介して、第 2の誘電体層 4に光透 過層として透明な PCフィルムを接着し、 PCカバー層を形成する。これにより、本実施 形態に係る光記録媒体が製造される。本実施形態に係る光記録媒体においては、 記録用レーザ光及び再生用レーザ光は PCフィルム側から入射される。本実施形態 における動作及び効果は、前述の第 1の実施形態と同様である。
[0037] 次に、本発明の第 3の実施形態について説明する。図 3は本実施形態に係る光学 的情報記録媒体を示す断面図である。図 3に示すように、本実施形態に係る光記録 媒体においては、 2層の記録層が設けられている。即ち、直径が例えば 120mmであ り厚さが例えば 0. 6mmであるディスク状の透明樹脂基板 1が設けられており、この透 明樹脂基板 1上に、基板 1側から順に、第 1の誘電体層 2a、第 1の記録層 3a、第 2の 誘電体層 4a、光学分離層 8、第 3の誘電体層 2b、第 2の記録層 3b、第 4の誘電体層 4b、反射層 5、紫外線硬化樹脂層(図示せず)及びダミー用の透明樹脂基板 9が積 層されている。第 1の記録層 3aの厚さは例えば 7nmであり、第 2の記録層 3bの厚さ は例えば 12nmである。また、第 1の記録層 3a及び第 2の記録層 3bにおいては、母
相 6中に微結晶粒 7が分散されている。更に、光学分離層 8は例えば紫外線硬化榭 脂により形成されている。本実施形態に係る光記録媒体においては、記録用レーザ 光及び再生用レーザ光は透明樹脂基板 1側から入射される。本実施形態における上 記以外の構成、製造方法及び動作は、前述の第 1の実施形態と同様である。
[0038] 本実施形態においては、記録層に色素材料を使用していないため、記録層の透過 率を高くすることができ、記録層を 2層形成することができる。これにより、記録層が 1 層である光記録媒体と比較して、記録密度を 2倍にすることができる。本実施形態に おける上記以外の効果は、前述の第 1の実施形態と同様である。
[0039] 次に、本発明の第 4の実施形態について説明する。本実施形態に係る光記録媒体 おいては、厚さが例えば 1. 2mmである透明樹脂基板上に、反射層、誘電体層、第 2 の記録層、誘電体層、光学分離層、誘電体層、第 1の記録層、誘電体層、紫外線硬 化樹脂層及び PCカバー層がこの順に積層されている。また、この光記録媒体には、 PCカバー層側から記録用レーザ光及び再生用レーザ光が入射される。本実施形態 における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第 3の実施形態と同様である。
[0040] なお、前述の第 3及び第 4の実施形態においては、記録層が 2層である場合を示し た力 記録層は 3層以上であってもよい。これにより、記録密度をより一層増加させる こと力 Sできる。
[0041] 次に、本発明の第 5の実施形態について説明する。本実施形態は、前述の第 1乃 至第 4の実施形態に係る光記録媒体に対して情報の記録及び再生を行う光学的情 報記録再生装置 (以下、単に記録再生装置ともいう)の実施形態である。図 4は本実 施形態に係る光学的情報記録再生装置を示すブロック図である。図 4に示すように、 本実施形態に係る記録再生装置においては、光記録媒体であるディスク 100を支持 して回転させるスピンドルモータ 101が設けられており、このスピンドルモータ 101の 回転を制御する回転制御回路 102が設けられている。なお、ディスク 100は前述の 第 1乃至第 4のいずれかの実施形態に係る光記録媒体である。
[0042] また、この記録再生装置には光ヘッド 104が設けられており、光ヘッド 104には、デ イスク 100に対して波長が例えば 380乃至 430nmの青紫色半導体レーザ光を記録 用レーザ光及び再生用レーザ光として照射するレーザ光源(図示せず)、及びディス
ク 100からの戻り光を検出する光検出器(図示せず)が設けられている。更に、光へッ ド 104の位置制御、フォーカス制御及びトラッキング制御を行うサーボ制御回路 103 が設けられている。
[0043] 更にまた、記録時においては光ヘッド 104内のレーザ光源を駆動し、回転する光デ イスク 100の所定の位置に記録用レーザ光を集光して情報の記録を行レ、、再生時に おいては光ヘッド 104内のレーザ光源に再生用レーザ光を出力させると共に、光へ ッド 104内の光検出器にディスク 100からの戻り光を検出させ、この検出結果に基づ いて記録情報の再生を行う記録再生回路 105が設けられている。また、記録再生回 路 105は光検出器の出力信号に基づいて、ディスク 100に記録された情報に基づく 再生データ信号の他に、ディスク上の照射位置を示す Wobble信号、フォーカス誤差 を示すフォーカスサーボ誤差信号及びトラッキング誤差を示すトラッキングサーボ誤 差信号等の信号を生成する。
[0044] また、記録再生回路 105から出力される信号に基づいて Wobble信号を検出する Wobble検出回路 106が設けられており、この Wobble検出回路 106の出力信号を 復調し復号ィ匕することによって光ディスク 100上の光ビームの収束位置を示すアドレ ス情報を検出するアドレス検出回路 107が設けられている。更に、 Wobble検出回路 106の出力信号に基づいて同期信号を生成する同期信号生成回路 109が設けられ ており、この同期信号生成回路 109からの同期信号に基づいて、記録再生回路 105 から出力される再生データ信号を復調し再生データ信号の誤り訂正を行って再生デ ータを生成する再生データ処理回路 110が設けられてレ、る。
[0045] 更にまた、再生データ処理回路 110から再生データが入力され、この再生データを 外部のホストコンピュータ(図示せず)に対して出力すると共に、ホストコンピュータ力 ら記録データ及び記録 Z再生指示データが入力され、記録データを記録データ処 理回路 108に対して出力し、記録 Z再生指示データを後述するコントローラ 112に 対して出力するインターフェイス 111が設けられてレ、る。
[0046] 更にまた、インターフェイス 111から記録データが入力され、この記録データにエラ 一訂正符号を付加すると共に記録に適したフォーマットに変換して変調して記録再 生回路 105に対して出力する記録データ処理回路 108が設けられている。更にまた
、インターフェイス 111から記録/再生指示データが入力され、アドレス検出回路 10 7からアドレス情報が入力され、サーボ制御回路 103からフィードバック信号が入力さ れ、回転制御回路 102、サーボ制御回路 103及び記録再生回路 105を制御するコ ントローラ 112が設けられている。
[0047] 次に、上述の如く構成された本実施形態に係る記録再生装置の動作について、図
4を参照して説明する。先ず、ディスク 100に情報を記録する場合の動作について説 明する。先ず、ホストコンピュータから記録指示データ及び記録データがインターフエ イス 111に入力される。インターフェイスお 1は記録指示データをコントローラ 112に 対して出力すると共に、記録データを記録データ処理回路 108に対して出力する。コ ントローラ 112は回転制御回路 102に対して制御信号を出力し、回転制御回路 102 はスピンドルモータ 101を駆動させてディスク 100を回転させる。
[0048] 一方、記録データ処理回路 108が、インターフェイス 111から入力された記録デー タにエラー訂正符号を付加し、記録に適したフォーマットに変換し、変調して記録再 生回路 105に対して出力する。そして、記録再生回路 105がこの記録データに基づ いて光ヘッド 104内のレーザ光源を駆動し、このレーザ光源が回転する光ディスク 10 0の所定の位置に記録用レーザ光を集光する。この記録用レーザ光は、波長が例え ば 380乃至 430nmの青紫色半導体レーザ光である。これにより、前述の第 1の実施 形態において説明した原理により光ディスク 100の記録層にマークが形成され、情報 が記録される。
[0049] このとき、光ヘッド 104の光検出器は検出信号を記録再生回路 105に対して出力し 、記録再生回路 105はこの信号に基づいて、 Wobble信号、フォーカスサーボ誤差 信号及びトラッキングサーボ誤差信号を生成し、 Wobble検出回路 106に対して出力 する。 Wobble検出回路 106は記録再生回路 105の出力信号に基づいて Wobble 信号を検出し、フォーカスサーボ誤差信号及びトラッキングサーボ誤差信号と共にァ ドレス検出回路 107に対して出力すると共に、 Wobble信号を同期信号生成回路 10 9に対して出力する。
[0050] アドレス検出回路 107は、 Wobble検出回路 106の出力信号を復調し復号化するこ とによって、光ディスク 100上の光ビームの収束位置を示すアドレス情報を検出し、フ
オーカスサーボ誤差信号及びトラッキングサーボ誤差信号と共にコントローラ 112に 対して出力する。そして、コントローラ 112は、アドレス情報、フォーカスサーボ誤差信 号及びトラッキングサーボ誤差信号に基づいて、サーボ制御回路 103を制御し、サ ーボ制御回路 103が光ヘッド 104の位置制御、フォーカス制御及びトラッキング制御 を行う。このとき、サーボ制御回路 103はフィードバック信号をコントローラ 112に対し て出力する。また、同期信号生成回路 109は同期信号を生成して記録データ処理回 路 108に対して出力する。
[0051] 次に、ディスク 100に記録された情報を再生する場合の動作について説明する。先 ず、ホストコンピュータから再生指示データがインターフェイス 111に入力される。イン ターフェイス 111はこの再生指示データをコントローラ 112に対して出力する。コント ローラ 112は回転制御回路 102に対して制御信号を出力し、回転制御回路 102はス ピンドルモータ 101を駆動させてディスク 100を回転させる。また、コントローラ 112は 記録再生回路 105に対して制御信号を出力し、記録再生回路 105は光ヘッド 104を 駆動させて、光ヘッド 104のレーザ光源から再生用レーザ光をディスク 100に対して 出力させると共に、光ヘッド 104の光検出器がディスク 100からの戻り光を検出する。 なお、再生用レーザ光は、波長が例えば 380乃至 430nmの青紫色半導体レーザ光 である。これにより、前述の第 1の実施形態において説明した原理によりディスク 100 に記録された情報が読み取られる。
[0052] そして、光ヘッド 104の光検出器の出力信号が記録再生回路 105に入力され、記 録再生回路 105がこの出力信号に基づいて、再生データ信号、 Wobble信号、フォ 一カスサーボ誤差信号及びトラッキングサーボ誤差信号を生成し、再生データ信号 を再生データ処理回路 110に対して出力すると共に、 Wobble信号、フォーカスサー ボ誤差信号及びトラッキングサーボ誤差信号を Wobble検出回路 106に対して出力 する。 Wobble検出回路 106は Wobble信号を同期信号生成回路 109に対して出力 し、同期信号生成回路 109は Wobble信号に基づいて同期信号を生成して再生デ ータ処理回路 110に対して出力する。そして、再生データ処理回路 110が同期信号 に基づいて再生データ信号を復調し、再生データ信号の誤り訂正を行って再生デー タを生成し、インターフェイス 111に対して出力する。そして、インターフェイス 111が
この再生データを外部のホストコンピュータに対して出力する。これにより、ディスク 1 00に記録された情報の再生が行われる。なお、このとき、前述の情報記録時と同様 な動作により、サーボ制御回路 103が光ヘッド 104の位置制御、フォーカス制御及び トラッキング制御を行う。
[0053] 本実施形態に係る光学的情報記録再生装置は、前述の第 1乃至第 4の実施形態 に係る光記録媒体に対して情報を記録し、この情報を再生することができる。これに より、記録用及び再生用のレーザ光として、青紫色半導体レーザ光を使用することが できるため、光記録媒体の記録密度を向上させることができる。
実施例 1
[0054] 以下、本発明の実施例について具体的に説明する。先ず、前述の第 1及び第 2の 実施形態において説明した方法により、評価対象となる光ディスク媒体 (光学的情報 記録媒体)を製造した。光ディスク媒体は、前述の第 1の実施形態において示したよ うな透明樹脂基板側からレーザ光を入射する光ディスク媒体 (以下、基板入射媒体と レ、う)、及び前述の第 2の実施形態において示したようなカバー層(PCフィルム)側か らレーザ光を入射する光ディスク媒体 (以下、カバー層入射媒体という)の 2種類の媒 体を製造した。即ち、予め案内溝又はプリピットが形成された透明樹脂基板上に、ィ ンライン型のスパッタリング装置により順次各層を形成した。以下、各媒体の層構造を 示す。なお、以下の説明において、基板側から順に「A層」、「B層」、「C層」が順次積 層されている構造を (A/BZC)と表記する。基板入射媒体の層構造は、(PC基板 /第 1の誘電体層 Z記録層 Z第 2の誘電体層/ AlTi反射膜/ UV接着層 Zダミー PC基板)とした。また、カバー層入射媒体の層構造は、 (PC基板/ AlTi反射膜/第 1の誘電体層 Z記録層 Z第 2の誘電体層/ UV接着層/ PCカバー層)とした。
[0055] 記録層は、スパッタリングのターゲットとして所定の組成の合金からなる合金ターグ ット、及び誘電体からなる誘電体ターゲットの 2つのターゲットを使用し、共スパッタに より同時成膜して形成した。記録層中の母相及び微結晶粒の組成は、各媒体間で相 互に異ならせた。各ターゲットには夫々独立してパワーを投入し、合金からなる微結 晶粒が誘電体力 なる母相中に均一に分散するように、成膜時のパワーを各々調整 した。また、基板は各ターゲットに対して平行に対向して配置し、且つ 40rpmの回転
速度で公転させた。この公転運動により、透明樹脂基板が合金ターゲット上及び誘 電体ターゲット上を交互に通過するため、記録層中に微結晶粒を均一に分散させる ことができた。また、誘電体層として ZnS— SiO膜を形成し、反射層 5として AlTi膜を
2
形成した。
[0056] 上述の如く製造した光ディスク媒体の記録再生特性を評価した。記録再生特性の 評価は、前述の第 5の実施形態において示した光学的情報記録再生装置(図 4参照 )を使用し、ノイズが最小となるような記録パワーにより周期が 8Tの信号を記録し、こ の信号の再生信号品質及び再生光耐性を評価した。再生信号品質の評価は、前述 の 8T信号を再生し、その CZN比(Carrier to Noise Ratio:搬送波対雑音比)を測定 した。 CZN比が 53dB以上であれば再生信号品質は良好であると判断できる。また 、再生光耐性の評価は、同一トラックを再生パワー(表 1参照)よりも 0. 2mW大きい パワーにより 10万回再生し、 8T信号の C/N比の初期値からの変化量を測定した。 また、一部の光ディスク媒体については、記録層における記録部及び未記録部を TE M (透過型電子顕微鏡)により観察し、微結晶粒の粒径を測定した。表 1に測定条件 を示す。また、表 2に記録層の微結晶粒及び母相の組成、記録パワー、再生信号品 質(8T信号の C/N比)、並びに再生光耐性(8T信号の C/N比の変化量)を示す。 なお、表 2において、例えば「Ag Pd Cu」とは、 Agが 98質量%、 Pdが 1質量0 /0、 C
98 1 1
uが 1質量%の組成を持つ AgPdCu合金を示す。この表記方法は以下の実施例に おいても同様である。また、「層構造」の欄における「基板」とは基板入射媒体を示し、 「カバー」とはカバー層入射媒体を示す。
[0057] [表 1]
[0059] 表 2に示す No. 1及び No. 7の光ディスク媒体において、記録層における微結晶粒 の結晶粒径は、未記録部では 3 7nm程度であり、記録部では 30 80nm程度で あった。これにより、レーザ光の照射により微結晶粒の粒径が大きくなつていることが わ力る。
[0060] 表 2に示すように、共スパッタにより、記録層の微結晶粒を Ag Pd Cu (質量%)合
98 1 1 金により形成し、母相を酸化物誘電体又は窒化物誘電体により形成した光学的情報 記録媒体は、高い再生 C/N比を示すと共に、再生光耐性も良好であった。
実施例 2
[0061] 前述の実施例 1と同様な方法により、微結晶粒を AgTe合金により形成した光デイス ク媒体を作製し、その特性を評価した。この光ディスク媒体の層構造は前述の第 1の 実施形態と同じ基板入射媒体及び第 2の実施形態と同じカバー層入射媒体とした。 表 3に記録層の微結晶粒及び母相の組成、記録パワー、再生信号品質 (8T信号の C/N比)、並びに再生光耐性(8T信号の CZN比の変化量)を示す。なお、光ディ スク媒体の作製方法、評価方法及び表 3の記載方法は、前述の実施例 1と同様であ る。なお、 Ag : 51質量%及び丁6 : 49質量%力 なる組成は、 Ag : 55原子%及び Te : 45原子%からなる組成と等しレ、。
[0062] [表 3]
実施例 層構造 記録層 記録パワー 8 T C/N再生光耐性
No. 微結晶粒 母相 (mW) (dB) (dB)
13 基板 Ag5 ] T e 49 S i02 9.5 56.2 0
14 基板 A g 5 1 e 49 A1203 9.9 56.2 0
15 基板 Ag5 ! T e49 Ta205 9,1 56.4 0
16 基板 Ag51 e49 S i N 9.6 55.8 0
17 基板 Ag51 T e 49 A1N 9.7 55.3 0
18 基板 Ag51 T e 49 T aN 9.7 55.9 0
19 カバ'一 Ag5iTe49 S i02 5.2 55.9 0
20 カバ一 Ag51Te49 A1203 5.8 56.1 0
21 カノ、一 Ags i T e 49 Ta205 5.7 55.7 0
22 力ハ'一 Ag5iTe49 S i N 5.3 55.1 0
23 カノ、'一 Ag5 ! T e 49 A1N 5.5 55.7 0
24 力ハ— A g 5 ! T e 49 TaN 5.2 55.2 0
[0063] 表 3に示す No.16及び No.22の光ディスク媒体において、記録層における微結 晶粒の結晶粒径は、未記録部では 3 7nm程度であり、記録部では 30 80nm程 度であった。これにより、レーザ光の照射により微結晶粒の粒径が大きくなつているこ とがわかる。
[0064] また、表 3に示すように、共スパッタにより、記録層の微結晶粒を Ag Te (質量%)
51 49 合金により形成し、母相を酸化物誘電体又は窒化物誘電体により形成した光学的情 報記録媒体は、高い再生 C/N比を示すと共に、再生光耐性も良好であった。なお、 微結晶粒が Ag Te (質量%)又は Ag Te (質量%)からなり、母相が表 3に示す
61 39 46 54
酸化物誘電体又は窒化物誘電体からなる記録層を備えた光ディスク媒体においても 、表 3に示した再生特性と同様の結果が得られた。
実施例 3
[0065] 前述の実施例 1と同様な方法により、微結晶粒を Culn合金により形成した光デイス ク媒体を作製し、その特性を評価した。この光ディスク媒体の層構造は前述の第 1の 実施形態と同じ基板入射媒体及び第 2の実施形態と同じカバー層入射媒体と同じで ある。表 4に記録層の微結晶粒及び母相の組成、記録パワー、再生信号品質 (8T信 号の CZN比)、並びに再生光耐性(8T信号の C/N比の変化量)を示す。なお、光 ディスク媒体の作製方法、評価方法及び表 4の記載方法は、実施例 1と同様である。
[0066] [表 4]
実施例 層構造 Sci録層 記録パヮ一 8 T C/N再生光耐性
N o . 微結晶粒 母相 (mW) (dB) (dB)
25 基板 Cu50 I n50 S i02 9.3 56.4 0
26 基板 U 50 I n 50 A1203 9.3 55.9 0
27 基板 G d 50 ± n 50 T a205 9.6 55.6 0
28 基板 C U 50 I n 50 S iN 9.7 56.2 0
29 基板 Cu5 o I n50 A1N 9.1 55.8 0
30 基板 C u 50 I n 50 T aN 9.5 55.2 0
31 カパ一 C u 50ェ n 5 o S i02 5.3 56.4 0
32 力パー C u 50 I n s 0 A1203 5.1 56.1 0
33 カパ一 C u 50 I n.50 T a 205 5.7 55.2 0
34 カバ一 C 50 I n 50 S iN 5.5 55.7 0
35 カノ、、一 C u 50 I n.50 A1N 5.4 55.8 0
36 力パー v_; u 50 I n 50 T aN 5.7 55.1 0
[0067] 表 4に示す No.26及び No.32の光ディスク媒体において、記録層における微結 晶粒の結晶粒径は、未記録部では 3 7nm程度であり、記録部では 30 80nm程 度であった。これにより、レーザ光の照射により微結晶粒の粒径が大きくなつているこ とがわかる。
[0068] また、表 4に示すように、共スパッタにより、記録層の微結晶粒を Cu In (質量%)
50 50 合金により形成し、母相を酸化物誘電体又は窒化物誘電体により形成した光学的情 報記録媒体は、高い再生 C/N比を示すと共に、再生光耐性も良好であった。なお、 微結晶粒が Cu In (質量%)又は Cu ln (質量%)からなり、母相が表 3に示す酸
60 40 5 95
化物誘電体又は窒化物誘電体からなる記録層を備えた光ディスク媒体においても、 表 4に示した再生特性と同様の結果が得られた。
[0069] なお、上述の実施例 1乃至実施例 3においては、記録レーザ光及び再生レーザ光 の波長を 405nmとした力 波長が 380乃至 430nmの範囲のレーザ光であれば、上 述の結果と同様の効果が得られることが確認された。上述の実施例 1乃至実施例 3に おいては、レーザ光の波長が 380nmより短くなると、 PC基板におけるレーザ光の吸 収が急激に増加するため、記録及び再生を良好に行えなくなった。また、レーザ光の 波長が 440nm以上になると、記録層における吸収率が低下してくるため、記録時に より高い記録パワーが必要となり、情報の記録が高速に行うことが困難となった。以上 のこと力、ら、情報の記録及び再生に使用するレーザ光の波長は、 380乃至 430nm
の範囲であることが好ましレ、。
実施例 4
[0070] 次に、再生特性に及ぼす線速の影響を調査した。図 5は横軸に記録時及び再生時 における光ディスク媒体の線速をとり、縦軸に 8T信号の CZN比をとつて、再生信号 品質に及ぼす線速の影響を示すグラフ図である。本実施例 4においては、光ディスク 媒体として前述の第 1の実施形態において示したような基板入射媒体を使用し、記 録層を共スパッタにより形成し、母相を SiOにより形成し、微結晶粒を Ag Pd Cu
2 98 1 1 合金、 Ag Te 合金又は Cu In 合金により形成した。このような光ディスク媒体に
51 49 50 50
対して、線速を 3. 0乃至 11. Om/秒の範囲で変化させて、周期が 8Tの信号を記録 して再生し、各線速に対する C/N比を測定した。上記以外の光ディスク媒体の製造 方法及び測定方法は、前述の実施例 1と同様である。測定結果を図 5に示す。図 5に 示すように、上述の光記録媒体は、上述の線速範囲においては良好な C/N比の値 を示しており、高速記録にも適用可能であることが判る。
[0071] なお、記録層の微結晶粒を形成する合金として実施例 1乃至実施例 3に示した各 組成の合金を使用し、これらの合金と上述の各誘電体とを共スパッタして形成した記 録層を備えた光ディスク媒体においても、図 5に示した結果と同様な効果が得られた
[0072] また、上述の実施例 1一実施例 4においては、上述の如ぐ記録層を合金ターゲット 及び誘電体ターゲットを使用して共スパッタを行って形成した場合について述べたが 、上述の合金材料及び誘電体材料を焼結又は溶融させて 1つのターゲットとし、これ を使用するスパッタ法により記録層を形成してもよい。この場合も、図 5に示した結果 と同様な効果が得られた。
実施例 5
[0073] 次に、 2層の記録層を備えた光ディスク媒体の再生特性を評価した。この光ディスク 媒体の層構造は、前述の第 3の実施形態に示した基板入射媒体及び第 4の実施形 態に示したカバー層入射媒体と同じである。即ち、基板入射媒体の層構造は、 (PC 基板/誘電体層/第 1の記録層/誘電体層/光学分離層/誘電体層/第 2の記 録層/誘電体層/反射層/ UV接着層/ダミー PC基板)とし、カバー層入射媒体
の層構造は、 (PC基板/反射層/誘電体層/第 2の記録層/誘電体層/光学分 離層/誘電体層/第 1の記録層/誘電体層/ UV接着層/ PCカバー層)とした。ま た、記録層の微結晶粒は Ag Pd Cu合金、 Ag Te 合金及び Cu In 合金により
98 1 1 51 49 50 50 形成し、母相は Si〇により形成した。更に、第 1の記録層の厚さは 7nmとし、第 2の
2
記録層の厚さは 12nmとした。これらの光ディスク媒体の上記以外の構成及び製造 方法は、前述の実施例 1と同様である。
[0074] このようにして製造した光ディスク媒体の再生特性を評価した。評価方法は、前述 の実施例 1と同様とした。表 5に第 1の記録層の再生特性、即ち、第 1の記録層にお ける微結晶粒及び母相の組成、記録パワー、再生信号品質 (8T信号の CZN比)、 並びに再生光耐性(8T信号の C/N比の変化量)を示す。また、表 6に第 2の記録層 の再生特性、即ち、第 2の記録層における微結晶粒及び母相の組成、記録パワー、 再生信号品質 (8T信号の CZN比)、並びに再生光耐性 (8T信号の C/N比の変化 量)を示す。
[0075] [表 5] 実施例 層構造 St3録眉 記録パワー 8 T C/N再生光耐性
No . 微結晶粒 母相 (mW) (dB) (dB)
37 基板 Ag98Pd J Cu! S i02 9.1 56.1 0
38 基板 Ag51 e 49 S i02 10.2 55.7 0
39 基板 U50 I n 50 S i 02 9.4 56.0 0
40 力パ'一 Ag98Pd ! Cuj S i02 5.3 55.6 0
41 力ハ— A g 51 T e 49 S i 02 5.5 56.2 0
42 力ハ'一 U50 ± n 5 o S i02 5.9 55.3 0
[0076] :表 6] 実施例 眉構; ιέ 記録層 記録パワー 8 TC/N再生光耐性
No. 微結晶粒 母相 (mW) (dB) (dB)
43 基板 AgggPd! CUi S i02 9.9 55.6 0
44 基板 A g 51 Τ θ 49 S i02 10.7 55.8 0
45 基板 C U 5 ο I n 50 S i02 10.2 55.4 0
46 カバ一 AgasPd^U i Si02 5.8 55.1 0
47 カバー Ag51 T e 49 S i02 6.1 55.7 0
48 カバ— C u 50 I n 50 S i02 6.3 55.1 0
[0077] 表 5及び表 6に示したように、記録層が光学分離層で分離された 2層記録媒体にお いて、第 1の記録層及び第 2の記録層の再生 C/N比は、記録層が 1層の記録媒体 と同等の高い値が得られると共に、再生光耐性も実用上特に問題がないことが判る。 産業上の利用可能性
[0078] 本発明は、青紫色半導体レーザ光の照射により情報が記録及び再生される CD - R 及び DVD - R等の光学的情報記録媒体に好適に利用することができる。