JP3600543B2 - 光記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光記録媒体に係り、特には、超解像膜を用いた光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクは、様々な形態で利用されている。例えば、コンピュータの外部記憶媒体や音楽媒体などとしては、CD−ROM(再生専用型)、CD−R(追記型)、及びCD−RW(書き換え型)等のCD(コンパクトディスク)が広く普及している。また、最近では、より大容量の光ディスクとしてDVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)が普及しつつあり、映像記録などに利用されている。DVDにも、DVD−ROM(再生専用型)、DVD−R(追記型)、及びDVD−RAM(書き換え型)等の様々なタイプが存在している。
【0003】
これら光ディスクについては、その記録密度を高めることが望まれており、近年、効果的に高密度化を実現し得る技術として、超解像膜を利用した超解像技術が提案されている。例えば、特開平11−185298号公報及び特開平10−340482号公報は、ピットやグルーブが設けられた基板上に、それらピットやグルーブに対応する断面形状を有する超解像膜を設けることを記載している。
【0004】
この超解像技術は、光ビームのスポット径を光入射側に比べて光出射側でより小さくするのを可能とするものであり、ヒートモード方式を利用するものとフォトンモード方式を利用するものとに大別される。
【0005】
例えば、ヒートモード方式では、超解像膜に加熱により相変化を生ずる材料を用いる。そのような超解像膜にレーザビームを照射すると、光スポットの中心部からその周縁部に向けて温度が低下する温度分布が形成される。その結果、超解像膜の相転移温度以上に加熱された部分では屈折率が高められ、光スポットの中心部の透過率をその周囲の透過率に比べて高めたのと同様の効果を得ることができる。
【0006】
一方、フォトンモード方式では、超解像膜に、例えば、光照射により発色または消色するフォトクロミック材料を用いる。フォトクロミック材料に所定値以上のエネルギーを有する光を照射すると、電子は基底準位から寿命の短い励起準位へと励起され、その後、励起準位から寿命が非常に長い準安定励起準位へと遷移して、その結果、光吸収特性が変化する。フォトンモード方式では、このような方法により、光スポットの中心部の透過率をその周囲の透過率に比べて高めることができる。なお、フォトンモード方式では、超解像膜に、吸収飽和現象を利用した半導体連続膜或いは半導体微粒子分散膜を用いた例もある。
【0007】
ところで、光ディスクに記録された情報を読み出す場合、通常、レーザビームは記録マークだけでなくその近傍にも照射される。例えば、再生専用型の光ディスクでは記録マークとして形成されるピットの深さdは、レーザビームの波長をλ及びピットを埋め込む材料の屈折率をnとした場合、λ/(4・n)となるように設定されている。この場合、ピットの底面からの反射光とピットの周囲からの反射光との間で位相がπだけずれるため、それら反射光は互いに打ち消しあう。その結果、レーザビームがピットの周囲に照射された場合に比べ、光検出器で検出される反射率が低下する。再生専用型の光ディスクからの情報の読み出しは、このような原理を利用している。
【0008】
このような原理を利用する情報の読み出しを高精度に行うためには、レーザビームをピットに対して照射した場合に観測される反射率とピットの周囲に照射した場合に観測される反射率との間の差が十分に大きいことが必要である。したがって、レーザビームをピットに対して照射した場合に観測される反射率は十分に小さいこと,すなわち、ピットの位置での消光効果が高いこと,が望まれる。
【0009】
しかしながら、上記の原理を利用して実現され得る消光効果には限界がある。そのため、記録マークのサイズをより小さくした場合には、十分な信号強度が得られず、情報の読取不良が発生するおそれがあった。これは、上記の再生専用型光ディスクが超解像膜を有していようと生じ得る問題である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、記録マークのサイズをより小さくした場合においても十分な信号強度を得ることが可能な光記録媒体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、一主面に凸部と凹部とが設けられた基板と、前記基板の前記主面上に設けられ且つ照射光の強度が第1の強度である場合と前記第1の強度よりも高い第2の強度である場合とで複素屈折率が互いに異なる超解像膜とを具備し、前記凸部及び前記凹部のいずれか一方は記録マークに相当し、前記超解像膜の前記凹部に対応する部分の膜厚は前記超解像膜の前記凸部に対応する部分の膜厚に比べてより厚いことを特徴とする光記録媒体を提供する。
【0012】
また、本発明は、一主面に凸部と凹部とが設けられた基板と、照射光の強度が第1の強度である場合と前記第1の強度よりも高い第2の強度である場合とで複素屈折率が互いに異なる超解像膜と、前記照射光を利用して光学定数を可逆的に変化させることが可能な記録膜とを具備し、前記超解像膜と前記記録膜とは前記照射光の入射側からこの順に前記基板の前記主面上に設けられ、前記超解像膜の前記凹部に対応する部分の膜厚は前記超解像膜の前記凸部に対応する部分の膜厚に比べてより厚いことを特徴とする光記録媒体を提供する。
【0013】
なお、「複素屈折率」が異なることは、「複素屈折率の実部」である「屈折率n」及び「複素屈折率の虚部」である「消衰係数k」の少なくとも一方が異なることを意味する。また、用語「屈折率」が用語「複素」を伴わずに単独で使用される場合、それは、「複素屈折率の実部」である「屈折率n」を意味することとする。
【0014】
本発明において、超解像膜は、照射光の強度が第1の強度である場合と第2の強度である場合とで複素屈折率が互いに異なるものであれば特に制限はない。超解像膜としては、例えば、照射光強度が第1の強度である場合の消衰係数kに比べて照射光強度が第2の強度である場合の消衰係数kがより小さいものを使用することができる。
【0015】
本発明において、上記記録膜は、例えば、相変化記録膜や光磁気記録膜である。本発明の光記録媒体が記録膜を有する場合、上記凸部及び凹部は、基板の主面に帯状のランド部とそれに隣接する帯状のグルーブ部とが形成されてなるものであってもよい。
【0016】
本発明の光記録媒体において、超解像膜の基板と対向する面には、基板の主面に対応して凸部と凹部とが設けられ得る。また、超解像膜の基板と対向する面の裏面は、好ましくは、実質的に平坦である。
【0017】
本発明の光記録媒体は、通常、反射膜をさらに有する。また、本発明の光記録媒体は、反射膜と透明または半透明膜とをさらに有していてもよい。この場合、反射膜と透明または半透明膜とを超解像膜を挟持するように配置すれば、超解像効果を増幅することができる。
本発明の光記録媒体は、基板側から照射光を照射して情報の書き込みや読み出しを行うように構成されていてもよい。また、本発明の光記録媒体は、膜面側から照射光を照射して情報の書き込みや読み出しを行うように構成されていてもよい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、図面を参照しながらより詳細に説明する。なお、各図において、同様または類似する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光記録媒体を概略的に示す断面図である。なお、図1に示す光記録媒体1は再生専用型の光ディスクであって、図1では、記録マークの配列方向(光ディスク1の円周方向)に沿った断面構造が描かれている。
【0020】
図1に示す光ディスク1は、基板2の一方の主面上に反射膜3及び超解像膜4を順次積層した構造を有している。すなわち、この光ディスク1は、情報を読み出す際に膜面側から光ビームを照射する表面記録方式の超解像光記録媒体である。
【0021】
基板2の反射膜3が形成された面には、凸部5と記録マークに対応する凹部6としてピットが設けられている。反射膜3の超解像膜4側の主面は、これらピット6が設けられた基板2の表面形状に対応して凹部と凸部とを有している。すなわち、反射膜3は、凹部と凸部とを有する反射面を有しており、これら凹部のそれぞれが記録マークを構成している。超解像膜4は、反射膜3に設けられた凸部を覆い且つ凹部を埋め込むように形成されている。また、超解像膜4の反射膜3側の面の裏面は平坦面である。
【0022】
上述のように、従来技術に係る超解像膜を用いた光ディスクでは、超解像膜の膜厚を反射膜の凹部上と凸部上とで均一としていた。これは、反射膜の凹部内と凸部上とで光路長を一定として、均一な超解像効果を得るためである。
【0023】
それに対し、図1に示す光ディスク1では、超解像膜4の膜厚は、反射膜3の凸部上に比べて凹部上でより厚い。すなわち、この光ディスク1では、反射膜3の凸部上と凹部上とで超解像効果の大きさが異なっている。
【0024】
そのため、例えば、超解像膜4がフォトンモード系である場合、その消衰係数kが低強度の光ビーム照射時に比べて高強度の光ビーム照射時により小さくなるとすると、超解像膜4の光吸収は、凸部上に位置する部分に比べて凹部上に位置する部分でより大きくなる。したがって、この場合、凹部からの反射光強度を著しく低下させることができ、ピット6のサイズを小さくしたとしても、凸部と凹部との間で十分に大きな反射率差を実現すること,すなわち、十分な信号強度を得ること,が可能となる。
【0025】
上記の効果は、超解像膜4の代わりに消衰係数kが均一な薄膜を用いた場合においても得ることができる。しかしながら、そのような薄膜を用いた場合と超解像膜4を用いた場合とでは、上記効果の大きさは著しく異なる。すなわち、消衰係数kが均一な薄膜を透過する光ビームの強度は、その膜厚に対して指数関数的に低下するに過ぎない。それに対し、上記の超解像膜4では、入射光の強度は超解像膜4の入射側から反射膜3側に向けて低下するので、消衰係数kは光入射側に比べて反射膜3側においてより大きい。そのため、膜厚の差が光吸収に与える影響が著しく大きくなり、したがって、凸部と凹部との間で極めて大きな反射率差を実現することが可能となる。
【0026】
以上説明した効果は、超解像膜4がヒートモード系である場合でも得ることができる。超解像膜4がヒートモード系である場合、その消衰係数kが低強度の光ビーム照射時に比べて高強度の光ビーム照射時により小さくなるとすると、フォトンモード系に関して説明したのと同様に、超解像膜4の光吸収は、凸部上に位置する部分に比べて凹部上に位置する部分でより大きくなる。なお、ヒートモード系では、フォトンモード系とは異なり、超解像膜4の消衰係数kはその温度に応じて変化する。光ビーム照射部における超解像膜4の温度は、光入射側に比べて反射膜3側においてより低いので、その消衰係数kは光入射側に比べて反射膜3側においてより大きくなる。したがって、ヒートモード系でも、フォトンモード系に関して説明したのと同様に、凸部と凹部との間で極めて大きな反射率差を実現することができ、十分な信号強度を得ることが可能となる。
【0027】
上述した効果は、超解像膜4に用いる材料などにもよるが、凹部上での膜厚tと凸部上での膜厚tとの差(t−t)と、反射膜3に設けた凹部の深さd(=λ/4n)とが、不等式:
(t−t)≧(1/2)×d
に示す関係を満足することが好ましい。この場合、上記の効果が顕著となる。なお、差(t−t)に上限値は存在していないが、後述するように超解像膜4の光入射側の主面が平坦となるように差(t−t)を設定した場合、製造が容易である。
【0028】
以上、凸部と凹部との間で極めて大きな反射率差を実現可能であることについて説明したが、図1に示す光ディスク1によると、他の効果も得ることができる。
【0029】
超解像膜4の膜厚が反射膜3の凹部内と凸部上とで均一である場合、当然の如く、超解像膜4の光ビーム入射側の主面には、反射膜3の凹部及び凸部に対応した凹凸構造が形成される。この場合、光ビームを超解像膜4に入射させる際に、その凹凸構造が形成された主面で光ビームが反射されると、この反射光自体が信号として検出されることがある。この場合、もはや超解像効果を得ることができない。
【0030】
それに対し、図1に示す光ディスク1では、超解像膜4の光ビーム入射側の主面が平坦であるため、その主面からの反射光が信号として検出されることはない。したがって、図1に示す光ディスク1によると、確実に超解像効果を得ることができる。
【0031】
このような効果は、超解像膜4の光ビーム入射側の主面が完全に平坦でなくても得ることができる。本発明者らの実験によると、一般に、超解像膜4の光ビーム入射側の主面の高さのばらつきが反射膜3の凹部の深さdの半分以下であれば、上記の効果を得ることができる。なお、多くの場合、ピット6の深さと反射膜3の凹部の深さdとはほぼ一致し、光ビームの波長をλとし且つ超解像膜4の屈折率をnとした場合、それらはλ/(4・n)に設定される。したがって、超解像膜4の光ビーム入射側の主面の高さのばらつきは、λ/(8・n)以下とすることが好ましい。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態で説明した光ディスク1は記録マーク位置での反射率がその周囲における反射率よりも低いメディアである。それに対し、第2の実施形態に係る光ディスク1は記録マーク位置での反射率がその周囲における反射率よりも高いメディアである。
【0033】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る光記録媒体を概略的に示す断面図である。なお、図2に示す光記録媒体1は再生専用型の光ディスクであって、図2では、記録マークの配列方向(光ディスク1の円周方向)に沿った断面構造が描かれている。
【0034】
図2に示す光ディスク1は、基板2の一方の主面上に超解像膜4及び反射膜3を順次積層した構造を有している。すなわち、この光ディスク1は、第1の実施形態に係る光ディスク1とは異なり、情報を読み出す際に基板2側から光ビームを照射する裏面記録方式の超解像光記録媒体である。
【0035】
基板2の超解像膜4が形成された面には、記録マークに相当する凸部5と凹部6とが設けられている。超解像膜4は基板2の凹部6を埋め込んでおり、超解像膜4の反射膜3側の主面は平坦面である。反射膜3は、この超解像膜4の平坦な主面上に形成されている。すなわち、本実施形態に係る光ディスク1において、反射膜3の反射面は凹凸構造を有していない。
【0036】
本実施形態に係る光ディスク1においても、第1の実施形態と同様に、超解像膜4の凹部6上での膜厚は凸部5上での膜厚に比べてより厚い。そのため、第1の実施形態で説明したのと同様に、凸部5と凹部6との間で十分に大きな反射率差を実現すること,すなわち、十分な信号強度を得ること,が可能となる。
【0037】
なお、上述のように、本実施形態に係る光ディスク1はLow to Highメディアであるので、記録マークに相当する凸部5の位置での反射率が凹部6の位置での反射率に比べてより高くなるように設計される。しかしながら、本実施形態において、基板2と超解像膜4との界面は凹凸構造を有しているので、その界面からの反射光はノイズとして検出されることがある。例えば、凹部6の深さがλ/(4・n)程度であると、凸部5の位置に光ビームを照射した場合における上記界面からの反射光の強度は凹部6の位置に光ビームを照射した場合に比べてより低いため、信号強度が低下することとなる。これを防止するには、凹部6の深さを、例えば、λ/(2・n)程度とすればよい。
【0038】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る光記録媒体を概略的に示す断面図である。なお、図3に示す光記録媒体1は再生専用型の光ディスクであって、図3では、記録マークの配列方向(光ディスク1の円周方向)に沿った断面構造が描かれている。
【0039】
図3に示す光ディスク1は、基板2と超解像膜4との間に半透明反射膜7を有していること以外は図2に示す光ディスク1と同様の構造を有している。このような構造によると、干渉効果を利用して、超解像膜4の凹部6に対応する部分での光吸収を選択的に高めることが可能である。したがって、図3に示す光ディスク1によると、図2に示す光ディスク1に比べて、より高いCNR(Carrier to Noise Ratio)を実現することが可能である。なお、このような効果は、半透明反射膜7の代わりに、透明薄膜を設けても得ることができる。この場合、隣り合うもの同士で屈折率が異なる2層以上の透明薄膜の積層体を用いることが好ましい。
【0040】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図4は、本発明の第4の実施形態の一例に係る光記録媒体を概略的に示す断面図である。なお、図4に示す光記録媒体1は書き換え型の光ディスクであって、図4では、ディスク1の半径方向に沿った断面構造が描かれている。
【0041】
図4に示す光ディスク1は、基板2の一方の主面上に、反射膜3、記録膜8、及び超解像膜4を順次積層した構造を有している。すなわち、この光ディスク1は、情報を読み出す際に膜面側から光ビームを照射する表面記録方式の超解像光記録媒体である。
【0042】
基板2の反射膜3が形成された面には、凸部5と凹部6とが設けられている。これら凸部5及び凹部6は、基板2の一主面に渦巻線状或いは同心円状のランド部とグルーブ部とを形成している。反射膜3及び記録膜8の超解像膜4側の主面は、これらランド部5及びグルーブ部6が設けられた基板2の表面形状に対応して凹部と凸部とを有している。超解像膜4は、記録膜8に設けられた凸部を覆い且つ凹部を埋め込むように形成されている。また、超解像膜4の記録膜8側の面の裏面は平坦面である。
【0043】
図4に示す光ディスク1では、ランド部5及びグルーブ部6をトラッキングに利用する。そのため、例えば、記録膜8のランド部5上に位置する部分のみに対して記録を行うランド記録方式を採用した場合、超解像膜4として消衰係数kが低強度の光ビーム照射時に比べて高強度の光ビーム照射時により小さくなるものを使用すれば、グルーブ部6からの反射光強度が低下する。そのため、ランド部5からの反射光強度とグルーブ部6からの反射光強度との差が大きくなる。すなわち、トラッキング信号強度を高めることが可能となる。
【0044】
また、記録膜8のランド部5上に位置する部分及びグルーブ部6上に位置する部分の双方に対して記録を行うランド・グルーブ記録方式を採用した場合、線形吸収を利用して、記録膜8のランド部5上に位置する部分に形成した記録マークからの信号強度とグルーブ部6上に位置する部分に形成した記録マークからの信号強度とを異ならしめることができる。そのため、光検出器の線形受光感度領域を適宜設定すれば、クロストークを低減することが可能となる。
【0045】
図5は、本発明の第4の実施形態の他の例に係る光記録媒体を概略的に示す断面図である。なお、図5に示す光記録媒体1は書き換え型の光ディスクであって、図5では、ディスク1の半径方向に沿った断面構造が描かれている。
【0046】
図5に示す光ディスク1は、基板2の一方の主面上に、超解像膜4、記録膜8、及び反射膜3を順次積層した構造を有している。すなわち、この光ディスク1は、情報を読み出す際に基板2側から光ビームを照射する裏面記録方式の超解像光記録媒体である。このような光ディスク1でも、図4を参照して説明したのと同様の理由により、トラッキング信号強度を高めることやクロストークを低減することが可能である。
【0047】
次に、上述した第1〜第4の実施形態に係る光ディスク1の各構成要素について説明する。
基板2の材料としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリオレフィン、フォトポリマーコートガラス、及びガラスなどを使用することができる。基板2としては、光ディスク1が裏面記録方式を採用している場合は透明基板が使用されるが、光ディスク1が表面記録方式を採用している場合は基板2は透明である必要はない。
【0048】
反射膜3及び半透明反射膜7の材料としては、例えば、Al合金、Ag合金、Au、Cu、及びTiNなどのように情報の記録、再生、及び消去に利用する光,特にはレーザ光,に対して高い反射率を有する材料が代表的である。反射膜3及び半透明反射膜7の透過率は、それらの膜厚を調節することにより所望値とすることができる。
【0049】
超解像膜4は、ヒートモード系の薄膜であってもよく、或いは、フォトンモード系の薄膜であってもよい。
ヒートモード系の薄膜としては、例えば、Sb及びTeなどの低融点金属を含有する薄膜、結晶化速度の速いGeSbTe膜、熱分解性のAgO膜、及び熱脱色性のロイコ系色素を含有する薄膜などを挙げることができる。ヒートモード系で得られる超解像効果は、光照射により超解像膜4が加熱され、構成成分の少なくとも一部が何らかの熱的変化を生じ、その結果、光学定数が非線形的に変化することに基づいている。例えば、SbやTeを含有する薄膜及びGeSbTe膜などでは、光強度の高いビームスポット中央部で超解像膜が溶融することにより、その光学定数が非線形的に変化する。また、AgO膜では、超解像膜に含まれるAgOがビームスポット中央部でAgとOとに熱分解することにより、その光学定数が非線形的に変化する。さらに、ロイコ系色素を含有する薄膜は、超解像膜に含まれる色素と発色剤とがビームスポット中央部で熱分離することにより透明化する。
【0050】
一方、フォトンモード系の薄膜としては、フォトクロミック膜や半導体微粒子分散膜などを挙げることができる。フォトンモード系では、光による化学反応または電子励起を利用して超解像効果を得る。例えば、フォトクロミック膜で超解像効果を得るには、フォトクロミック材料の開環反応と閉環反応とで互いに波長の異なる光を照射するか、或いは、それら反応の一方を熱的に進行させる。そのため、フォトクロミック膜を用いた場合には、一般に、単一波長での動作が不可能であり、したがって、装置には複雑な光学系が必要となる。半導体微粒子分散膜では、充満帯から励起子準位もしくは伝導帯への電子励起による吸収飽和現象が利用される。超解像膜として半導体微粒子分散膜を用いた場合、光強度の高いビームスポット中央部では入射フォトン数が十分に多いため、励起可能な電子数が不足するか或いは上準位の状態が飽和し、その結果、入射フォトンをさらに吸収することができずに非線形的な光学応答を示す。三次以上の高次非線形光学効果によって起こるとも言える。半導体微粒子分散膜を用いた場合には、純安定準位を介しての電子の励起や緩和が生じる場合も含めて、基本的には単一波長での動作が可能である。
【0051】
半導体微粒子分散膜のうち、例えば、CdSSe、CuO、AgTe、SrSe、SrTe、CaSi、ZnTe、CdO、CdTe、GaSe、InS、AlSb、SbSe、CuAlS、及びZnSiAsなどのような半導体微粒子を有機マトリクス中に分散させてなる薄膜を使用することができる。このような半導体微粒子分散膜は、光ビームの波長λが650nm程度である場合に好適に使用される。また、例えば、ZnSSeTe、CuCl、CuBr、AgCl、AgBr、AgI、ZnO、ZnSe、GaS、AlSe、AlTe、InO、PbO、及びTiOなどのような半導体微粒子を有機マトリクス中に分散させてなる薄膜も使用することができる。このような半導体微粒子分散膜は、光ビームの波長λが405nm程度である場合に好適に使用される。なお、記録や再生に上記以外の波長の光を使用する場合には、使用する光の波長に近いギャップ長を有する半導体材料を上記半導体微粒子の材料として用いればよい。
【0052】
記録膜8は、相変化記録膜や光磁気記録膜などのように情報の記録を繰り返し行うことが可能な記録膜である。相変化記録膜の材料としてはGeSbTeやAgInSbTeが代表的であり、光磁気記録膜の材料としてはTbFeCoが代表的である。
【0053】
上記光ディスク1が記録膜8を有している場合、その光学特性の最適化及び記録膜8の保護などを目的として、記録膜8を一対の干渉膜(図示せず)で挟持した構造を採用することが好ましい。そのような干渉膜の材料としては、記録膜8が相変化記録膜である場合にはZnS・SiOなどの透明薄膜が一般に用いられ、記録膜8が光磁気記録膜である場合にはSiNなどの透明薄膜が一般に使用される。なお、このような干渉膜は、上述した半透明反射膜7の代替物として、或いは、半透明反射膜7と組み合わせて使用することができる。
【0054】
上記光ディスク1は、反射膜3や超解像膜4などを基板2とともに挟持する基板(図示せず)をさらに有していてもよい。或いは、そのような基板の代わりに、保護膜を有していてもよい。
【0055】
また、2枚の光ディスク1を準備し、それらを接着剤膜などを介して貼り合わせてもよい。この場合、記録容量を2倍にすることができる。なお、それらの貼り合わせは、表面記録方式を採用した光ディスク1については基板2同士が対向するように行い、裏面記録方式を採用した光ディスク1については反射膜3同士が対向するように行う。
【0056】
以上説明した第1〜第4の実施形態では、超解像膜4の膜厚を凸部5上に比べて凹部上でより厚くしたが、その逆であってもよい。但し、前者は、後者に比べて製造が容易である。また、第1〜第4の実施形態では、超解像膜4の一方の主面を平坦面としたが、超解像膜4の双方の主面が凹凸構造を有するものであってもよい。但し、前者は、後者に比べて製造が容易であるのとともに、超解像膜4の膜厚の制御が容易である。
【0057】
さらに、超解像膜4としては、高強度の光ビーム照射時に比べて低強度の光ビーム照射時において屈折率nがより高いものや、高強度の光ビーム照射時に比べて低強度の光ビーム照射時において屈折率nがより低いものも使用することができる。
【0058】
上述した第1〜第4の実施形態に係る光ディスク1への情報の記録やそれに記録された情報の再生には、例えば、図6に示す記録再生装置を利用することができる。
【0059】
図6は、第1〜第4の実施形態に係る光ディスク1への情報の記録やそれに記録された情報の再生に利用可能な記録再生装置を概略的に示す図である。図6に示す記録再生装置101は光ディスク1として相変化記録媒体を着脱可能に或いは着脱不可能に搭載する光ディスク装置であって、光ディスク1、スピンドルモータ102、焦点レンズ103、ハーフミラー104、レーザ光源105、光検出器106、プリアンプ107、可変利得アンプ108、A/D変換回路109、線形等価回路110、データ検出回路111、デコーダ112、ドライブコントローラ113、駆動制御系114、インターフェース115、変調回路116、及びレーザドライバ117を有している。
【0060】
図6に示す光ディスク装置101において、光ディスク1は、透明基板2が図中上向きとなるようにスピンドルモータ102の回転軸に着脱可能に或いは着脱不可能に支持されている。光ディスク1は、スピンドルモータ102の回転数を制御することにより、所定の回転数で回転され得る。
【0061】
光ディスク1の上方には、ピックアップ系の一部を構成する焦点レンズ103が配置されている。これらピックアップ系及びスピンドルモータ102は、駆動制御系114を介してドライブコントローラ113によって駆動される。このように構成される駆動機構によって、光ディスク1の回転数の制御並びにフォーカシング及びトラッキング制御が可能とされている。
【0062】
このように構成される光ディスク装置101での情報の記録は、上述のように光ディスク1の回転数の制御並びにフォーカシング及びトラッキング制御を行いつつ以下の方法により行われる。すなわち、情報の記録に際しては、そのような制御のもと、まず、インターフェース115を介して取り込んだユーザデータ信号をドライブコントローラ113を介して変調回路116へと転送する。ユーザデータ信号は変調回路116で所定のパルス列へと変換される。レーザドライバ117は、そのパルス列を印加電圧パルス列に変換し、レーザ光源105から記録光パルスを発振させる。
【0063】
記録光は、ハーフミラー104を透過して焦点レンズ103へと導かれ、光ディスク1上に集光照射される。これにより、光ディスク1の記録膜8の光照射部に対して選択的に記録マークが形成される。図6に示す光ディスク装置101での情報の記録は、以上のようにして行われる。なお、最短マークピッチを狭めて記録するためには、変調回路116の出力信号や駆動制御系114の出力信号などを変化させればよい。
【0064】
また、この光ディスク装置101での情報の再生は、上述のように光ディスク1の回転数の制御並びにフォーカシング及びトラッキング制御を行いつつ以下の方法により行われる。すなわち、情報の記録に際しては、そのような制御のもと、まず、レーザ光源105から再生パワーレベルのレーザビームを再生光として出射する。なお、レーザービームのパワーレベルは、レーザ光源105からの出力を周期が一定なパルス光とし、その周期を適宜設定することにより制御可能である。レーザ光源105から出射した再生光は、ハーフミラー104を透過して焦点レンズ103へと導かれ、光ディスク1上に集光照射される。光ディスク1の記録トラックからの反射光は、ハーフミラー104で反射されて光検出器106へと導かれ、そこで電気信号へと変換される。
【0065】
光検出器106からの電気信号は、プリアンプ117及び可変利得アンプ108で増幅され、その後、A/D変換回路109でデジタル信号系列へと変換される。次いで、このデジタル信号は、線形等化回路110でフィルタリングされてノイズに起因するジッタ成分を除去される。データ検出回路111は、例えば、パーシャルレスポンスで等化した再生信号波形からデータを検出するマキシマムライクリフッド法によって推定する信号処理回路であり、具体的にはビタビデコーダである。デコーダ112は、データ検出回路111によって検出された符号ビット列を元の記録データへと復元する。このようにして復元された記録データは、ドライブコントローラ107及びインターフェース106を介して装置外部へと出力される。図6に示す光ディスク装置101での情報の再生は、以上のようにして行われる。
【0066】
なお、以上説明した光ディスク装置101は、図1及び図2に示す光ディスク1に記録された情報を再生するのにも使用することができる。また、光ディスク1が記録膜8として光磁気記録膜を有する場合には、例えば、図6に示す光ディスク装置の構成を変更したものを利用することができる。すなわち、図6に示す光ディスク装置101に、ディスク1に対して磁界を印加するための磁石を付与すればよい。より具体的には、光変調記録の場合には記録時と消去時とで磁界の向きを切り替えるタイプの磁石を、磁界変調オーバーライト記録の場合には空芯コイル等に代表される交流電磁石を、光変調オーバーライト記録の場合には一定のDC磁石をそれぞれ付与すればよい。なお、光ディスク1が無磁界で光変調オーバーライト可能なように設計されている場合は光ディスク装置101に磁石を設ける必要はない。
【0067】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0068】
(実施例1)
図1に示す光ディスク1を以下に説明する方法で作製した。
まず、一方の主面に記録マークに対応する深さ60nmのピット6が設けられたポリカーボネート製の透明基板2を準備した。次に、透明基板2のピット6が設けられた面に、反射膜3として、スパッタリング法により膜厚80nmのAl:Ti膜を成膜した。なお、このAl:Ti膜は、チタンを添加したアルミニウム膜である。
【0069】
次に、反射膜3上に、半導体微粒子と液状有機マトリクスと溶剤とを含有する塗工液をスピンコート法によって塗布し、得られた塗膜から溶剤を除去するのとともに液状有機マトリクスを硬化させた。なお、その塗工液としては、1質量部のCdSSe微粒子、1質量部のPMMA、及び20質量部の乳酸エチルを含有するものを用いた。次いで、得られた硬化膜の表面を研磨により平坦化することによって、超解像膜4として、凹部6に位置で膜厚が150nmであり且つ屈折率nが1.7のCdSSe系ナノ結晶分散膜を得た。
【0070】
以上の方法で図1に示す光ディスク1を作製した。なお、このようにして得られた光ディスク1において、反射膜3の表面には、透明基板2の表面形状と対応して深さ60nm程度の凹部が設けられていた。また、この超解像膜4の露出面の高さのばらつきは約5nmであった。
【0071】
(比較例1)
図7は、比較例1に係る光ディスクを概略的に示す断面図である。図7に示す光ディスク1は、超解像膜4の膜厚が凸部5上と凹部6上とで同一であること以外は、図1に示す光ディスク1と同様の構造を有している。
【0072】
本比較例においては、上記の研磨による平坦化を行わなかったこと以外は実施例1で説明したのと同様の方法により図7に示す光ディスク1を作製した。なお、このようにして得られた光ディスク1において、超解像膜4の膜厚は、凸部5上及び凹部6上の双方において150nmであった。
【0073】
次に、実施例1に係る光ディスク1と比較例1に係る光ディスク1とについて、図6に示す光ディスク装置101を用いて再生試験を行った。なお、ここでは、光ディスク装置101として、焦点レンズ103の開口数NAが0.65であり、レーザ光源105が波長λ=405nmのレーザビームを出射するものを使用した。
【0074】
その結果、比較例1に係る光ディスク1では読み出し可能な最短ピット長は0.20μmであったのに対し、実施例1に係る光ディスク1ではピット長を0.18μmとした場合であってもクロストークを生ずることなく情報を読み出すことができた。また、実施例1に係る光ディスク1でピット長を0.18μmとした場合の信号強度は、比較例1に係る光ディスク1でピット長を0.20μmとした場合の信号強度に比べて約30%高い値であった。なお、超解像膜4を有していないこと以外は実施例1で示したのと同様の構造を有する光ディスクでは、読み出し可能な最短ピット長は0.22μmであった。
【0075】
(実施例2)
図2に示す光ディスク1を以下に説明する方法で作製した。
まず、一方の主面に記録マークに対応する深さ120nmのピット6が設けられたポリカーボネート製の透明基板2を準備した。次に、透明基板2のピット6が設けられた面に、半導体微粒子と液状有機マトリクスと溶剤とを含有する塗工液をスピンコート法によって塗布し、得られた塗膜から溶剤を除去するのとともに液状有機マトリクスを硬化させた。
【0076】
なお、その塗工液としては、1質量部のCdSSe微粒子、1質量部のポリスチレン、及び20質量部のメチルエチルケトンを含有するものを用いた。次いで、得られた硬化膜を100℃に加熱して表面を平坦化することによって、超解像膜4として、凸部5の位置での膜厚が150nmであり且つ屈折率nが1.7のCdSSe系ナノ結晶分散膜を得た。
【0077】
次に、超解像膜4上に、反射膜3として、スパッタリング法により凹部6の位置での膜厚が80nmのAl:Mo膜を成膜した。なお、このAl:Mo膜は、モリブデンを添加したアルミニウム膜である。以上の方法で図2に示す光ディスク1を作製した。なお、このようにして得られた光ディスク1において、反射膜3と超解像膜4との界面の高さのばらつきは約5nmであった。
【0078】
(比較例2)
図8は、比較例2に係る光ディスクを概略的に示す断面図である。図8に示す光ディスク1は、超解像膜4の膜厚が凸部5上と凹部6上とで同一であること以外は、図2に示す光ディスク1と同様の構造を有している。
【0079】
本比較例においては、上記の加熱による平坦化を行わなかったこと以外は実施例2で説明したのと同様の方法により図8に示す光ディスク1を作製した。なお、このようにして得られた光ディスク1において、超解像膜4の膜厚は、凸部5上及び凹部6上の双方において150nmであった。
【0080】
次に、実施例2に係る光ディスク1と比較例2に係る光ディスク1とについて、図6に示す光ディスク装置101を用いて再生試験を行った。なお、ここでは、光ディスク装置101として、焦点レンズ103の開口数NAが0.65であり、レーザ光源105が波長λ=405nmのレーザビームを出射するものを使用した。
【0081】
その結果、実施例2及び比較例2に係る光ディスク1の双方において、読み出し可能な最短ピット長は0.20μmであった。実施例2に係る光ディスク1でピット長を0.20μmとした場合の信号強度は、比較例2に係る光ディスク1でピット長を0.20μmとした場合の信号強度に比べて約30%高い値であった。
【0082】
(実施例3)
図4に示す光ディスク1を以下に説明する方法で作製した。
まず、一方の主面に深さ60nmのグルーブ部6が渦巻線状に設けられたポリカーボネート製の透明基板2を準備した。次に、透明基板2のグルーブ部6が設けられた面に、反射膜3として、スパッタリング法により膜厚80nmのAl膜を成膜した。続いて、この反射膜3上に、相変化記録膜8として、スパッタリング法により膜厚20nmのGeSbTe膜を成膜した。
【0083】
次に、記録膜8上に、半導体微粒子と液状有機マトリクスと溶剤とを含有する塗工液をスピンコート法によって塗布し、得られた塗膜から溶剤を除去するのとともに液状有機マトリクスを硬化させた。なお、その塗工液としては、1質量部のCdSSe微粒子、1質量部のPMMA、及び20質量部のメチルエチルケトンを含有するものを用いた。次いで、得られた硬化膜の表面を研磨により平坦化することによって、超解像膜4として、グルーブ部5の位置での膜厚が200nmであり且つ屈折率nが1.7のCdSSe系ナノ結晶分散膜を得た。
【0084】
以上の方法で図4に示す光ディスク1を作製した。なお、このようにして得られた光ディスク1において、記録膜8の表面には、透明基板2の表面形状と対応して深さ60nm程度のグルーブが設けられていた。また、この超解像膜4の露出面の高さのばらつきは約25nmであった。
【0085】
(比較例3)
図9は、比較例3に係る光ディスクを概略的に示す断面図である。図9に示す光ディスク1は、超解像膜4の膜厚がランド部5上とグルーブ部6上とで同一であること以外は、図4に示す光ディスク1と同様の構造を有している。
【0086】
本比較例においては、上記塗工液として以下の組成を有するものを用いて超解像膜4の露出面を平坦化しなかったこと以外は実施例1で説明したのと同様の方法により図9に示す光ディスク1を作製した。すなわち、本比較例では、塗工液として、1質量部のCdS微粒子、1質量部のPMMA、及び20質量部のメチルエチルケトンを含有するものを用いた。なお、このようにして得られた光ディスク1において、超解像膜4の膜厚は、ランド部5上及びグルーブ部6上の双方において200nmであった。
【0087】
次に、実施例3に係る光ディスク1と比較例3に係る光ディスク1とについて、図6に示す光ディスク装置101を用いて記録再生試験を行った。なお、ここでは、光ディスク装置101として、焦点レンズ103の開口数NAが0.65であり、レーザ光源105が波長λ=405nmのレーザビームを出射するものを使用した。
【0088】
情報の記録を、記録膜8のランド部5上に位置する部分に対してのみ行ったところ、実施例3に係る光ディスク1では、比較例3に係る光ディスク1に比べて、グルーブ部6からの反射光強度が低くなった。そのため、実施例3に係る光ディスク1では、比較例3に係る光ディスク1に比べて、より大きなトラッキング信号強度が得られ、その結果、トラッキング精度が向上した。なお、実施例3に係る光ディスク1で得られたトラッキング信号強度は、比較例3に係る光ディスク1で得られたトラッキング信号強度強度に比べて約40%高い値であった。
【0089】
(実施例4)
本実施例では、以下に説明する方法により、光磁気ディスクを作製する。
まず、一方の主面に深さ60nmのトラッキング用の溝がトラック幅を変化させて設けられたポリカーボネート製の透明基板を準備した。次に、この基板の溝が設けられた面に、スパッタリング法により、膜厚80nmの反射膜、膜厚80nmのSiN膜、膜厚100nmのTbFeCo膜を順次成膜した。次いで、実施例3で説明したのと同様の方法により、TbFeCo膜上に硬化膜を形成し、さらに、その表面を研磨により平坦化することによって、超解像膜を得た。なお、本実施例では、トラッキング用溝の位置での超解像膜の膜厚を150nmとした。以上のようにして、光磁気ディスクを得た。
【0090】
また、硬化膜の平坦化を行わなかったこと以外は上述したのと同様の方法により比較用の光磁気ディスクを作製した。なお、比較用の光磁気ディスクでは、トラッキング用溝の位置及びそれ以外の位置の双方において超解像膜の膜厚を150nmとした。
【0091】
次に、実施例4に係る光磁気ディスクと比較用の光磁気ディスクとについて、記録再生試験を行った。その結果、比較用の光磁気ディスクでは0.4μmのトラック幅のトラックまでしかトラッキングをかけることができなかった。それに対し、実施例4に係る光磁気ディスクでは0.37μmのトラック幅のトラックまでトラッキングをかけることができ、データの書き込み及び読み出しを行うことが可能であった。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、超解像膜の膜厚は、基板の一主面に設けられた凸部と凹部との間で互いに異なっている。そのため、凸部と凹部との間で十分に大きな反射率差を実現することができ、それゆえ、十分な信号強度を得ることが可能となる。
すなわち、本発明によると、記録マークのサイズをより小さくした場合においても十分な信号強度を得ることが可能な光記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光記録媒体を概略的に示す断面図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る光記録媒体を概略的に示す断面図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る光記録媒体を概略的に示す断面図。
【図4】本発明の第4の実施形態の一例に係る光記録媒体を概略的に示す断面図。
【図5】本発明の第4の実施形態の他の例に係る光記録媒体を概略的に示す断面図。
【図6】第1〜第4の実施形態に係る光記録媒体への情報の記録やそれに記録された情報の再生に利用可能な記録再生装置を概略的に示す図。
【図7】比較例1に係る光ディスクを概略的に示す断面図。
【図8】比較例2に係る光ディスクを概略的に示す断面図。
【図9】比較例3に係る光ディスクを概略的に示す断面図。
【符号の説明】
1…光記録媒体; 2…基板; 3…反射膜; 4…超解像膜;
5…凸部; 6…凹部; 7…半透明反射膜; 8…記録膜;
101…記録再生装置; 102…スピンドルモータ;
103…焦点レンズ; 104…ハーフミラー; 105…レーザ光源;
106…光検出器; 107…プリアンプ; 108…可変利得アンプ;
109…A/D変換回路; 110…線形等価回路;
111…データ検出回路; 112…デコーダ;
113…ドライブコントローラ; 114…駆動制御系;
115…インターフェース; 116…変調回路;
117…レーザドライバ

Claims (9)

  1. 一主面に凸部と凹部とが設けられた基板と、前記基板の前記主面上に設けられ且つ照射光の強度が第1の強度である場合と前記第1の強度よりも高い第2の強度である場合とで複素屈折率が互いに異なる超解像膜とを具備し、前記凸部及び前記凹部のいずれか一方は記録マークに相当し、前記超解像膜の前記凹部に対応する部分の膜厚は前記超解像膜の前記凸部に対応する部分の膜厚に比べてより厚いことを特徴とする光記録媒体。
  2. 前記照射光を反射する反射膜をさらに具備し、前記超解像膜と前記反射膜とは前記照射光の入射側からこの順に前記基板の前記主面上に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  3. 前記照射光を反射する反射膜と、前記照射光の少なくとも一部を透過する透明または半透明膜とをさらに具備し、前記透明または半透明膜と前記超解像膜と前記反射膜とは前記照射光の入射側からこの順に前記基板の前記主面上に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
  4. 一主面に凸部と凹部とが設けられた基板と、照射光の強度が第1の強度である場合と前記第1の強度よりも高い第2の強度である場合とで複素屈折率が互いに異なる超解像膜と、前記照射光を利用して光学定数を可逆的に変化させることが可能な記録膜とを具備し、前記超解像膜と前記記録膜とは前記照射光の入射側からこの順に前記基板の前記主面上に設けられ、前記超解像膜の前記凹部に対応する部分の膜厚は前記超解像膜の前記凸部に対応する部分の膜厚に比べてより厚いことを特徴とする光記録媒体。
  5. 前記凸部及び前記凹部は前記基板の前記主面に帯状のランド部と前記ランド部に隣接する帯状のグルーブ部とが形成されてなることを特徴とする請求項4に記載の光記録媒体。
  6. 前記照射光を反射する反射膜をさらに具備し、前記超解像膜と前記記録膜と前記反射膜とは前記照射光の入射側からこの順に前記基板の前記主面上に設けられたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の光記録媒体。
  7. 前記照射光を反射する反射膜と、前記照射光の少なくとも一部を透過する透明または半透明膜とをさらに具備し、前記透明または半透明膜と前記超解像膜と前記記録膜と前記反射膜とは前記照射光の入射側からこの順に前記基板の前記主面上に設けられたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の光記録媒体。
  8. 前記超解像膜の前記基板と対向する面には前記基板の前記主面に対応して凸部と凹部とが設けられ、前記超解像膜の前記基板と対向する面の裏面は実質的に平坦であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の光記録媒体。
  9. 前記照射光の強度が前記第2の強度である場合の前記超解像膜の消衰係数は、前記照射光の強度が前記第1の強度である場合の前記超解像膜の消衰係数に比べてより小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の光記録媒体。
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