光通信デバイス用基材、 その製造方法およびそれを用いた光通信デバイス 技術分野
本発明は、負の熱膨張係数を有する光通信デバイス用基材、 その製造方法およ ぴその基材上に正の熱膨張係数を有する光部品を固定してなる光通信デバイス に関するものである。 背景技術
光通信技術の進歩に伴い、光ファイバを用いたネットワークが急速に整備され つつある。 ネットワークの中では、複数の波長の光を一括して伝送する波長多重 技術が用いられるようになり、 波長フィルタ、 力ブラ、 導波路等が重要な光通信 デバイスになりつつある。
この種の光通信デバイスの中には、 温度によって特性が変化し、屋外での使用 に支障をきたすものがあるため、 このような光通信デバイスの特性を温度変化に よらずに一定に保つ技術、 いわゆる温度補償技術が必要とされている。
温度捕償を必要とする光通信デバイスの代表的なものとして、 ファイバブラッ ググレーティング (以下、 F B Gという) がある。 F B Gは、 光ファイバのコア 内に格子状に屈折率変化を持たせた部分、いわゆるグレーティング部分を形成し た光通信デバイスであり、 下記の式 1に示した関係に従って、 特定の波長の光を 反射する特性を有している。 このため、波長の異なる光信号が 1本の光ファイバ を介して多重伝送される波長分割多重伝送方式の光通信システムにおける重要 な光通信デバイスとして注目を浴びている。
λ = 2 η Λ … (式 1 )
ここで、 ; L は反射波長、 ηはコアの実効屈折率、 Λ は格子状に屈折率に変化 を設けた部分の格子間隔を表す。
しかしながら、 このような FBGは、 温度が変化すると反射波長が変動すると いう問題がある。 反射波長の温度依存性は、 式 1を温度 Tで微分して得られる下 記の式 2で示される。
=2Λ {(3 η/5 Τ) +η (3 Λ/5 Τ) /Λ} … (式 2) この式 2の右辺第 2項の(3 Λ/3 Τ) ΖΛは光ファイバの熱膨張係数に相当 し、 その値はおよそ 0. 6 X 1 Ο"6/^である。 一方、 右辺第 1項は光ファイバ のコア部分における屈折率の温度依存性であり、 その値はおよそ 7. 5 X 10一6 Z°Cである。 つまり、反射波長の温度依存性はコア部分の屈折率変化と熱膨張に よる格子間隔の変化の双方に依存する力 大部分は屈折率の温度変化に起因して いることが分かる。
このような反射波長の変動を防止するための手段として、温度変化に応じた張 力を F B Gに印加し、 グレーティング部分の格子間隔を変化させることによって、 屈折率変化に起因する成分を相殺する方法が知られている。
この具体例として、予め板状に成形した原ガラス体を結晶化して得られる負の 熱膨張係数を有するガラスセラミックス基材に、所定の張力を印加した F B Gを 接着固定することによって、 FBGの張力をコントロールしたデバイス(例えば、 特許文献 1 :特表 2000— 553967号公報参照。) や、 セラミックスを焼 結して得られる負の熱膨張係数を有するセラミックス基材に、所定の張力を印加 した FBGを接着固定することによって、 FBGの張力をコントロールしたデバ イス (例えば、 特許文献 2 :特開 2003— 146693号公報参照) が開示さ ' れている。
上記デバイスは、温度が上昇するとセラミックス基材またはガラスセラミック ス基材が収縮し、光ファイバのグレーティング部分に印加されている張力が減少 する。 一方、温度が低下するとガラスセラミックス基材またはセラミックス基材 が伸長して光ファイバのグレーティング部分に印加されている張力が増加する。 この様に、温度変化によって F B Gにかかる張力を変化させることによってグレ 一ティング部分の間隔を調節することができ、 これによつて反射中心波長の温度 依存性を相殺することができる。
上記の特許文献 1、 2に記載のガラスセラミックス基材ゃセラミック基材は、 熱膨張係数が負であり、単一部材からなるため簡便な機構で温度捕償を行なうこ とができるが、 昇温時と降温時での最大の寸法の差 (熱膨張ヒステリシス) が大 きく、 これらのガラスセラミックス基材ゃセラミック基材を光通信デバイス用基 材として使用し、正の熱膨張係数を有する光部品としての F B Gをこの基材に固 定すると、 光通信デバイス用基材の寸法が温度変化の速度によって異なるため、 F B Gによる反射中心波長が安定せず、光通信デバイスとして安定した性能を発 揮できないという問題を有していた。 発明の開示
本発明の目的は、温度補償技術に必要な負の熱膨張係数を有するとともに、熱 膨張ヒステリシスが小さい光通信デバイス用基材、その製造方法およびそれを用 いた光通信デバイスを提供することである。
本発明者等は、負の熱膨張係数を有するセラミックスまたはガラスセラミック スを低温処理と高温処理とを交互に各々複数回行なうことで、熱膨張ヒステリシ スを小さくできることを見いだし、 本発明を提案するものである。
すなわち、 本発明の光通信デバイス用基材は、 一 4 0〜+ 1 0 0 °Cにおける平 均熱膨張係数がー 5 5〜一 1 2 0 X 1 0— 7/°Cであり、 β一石英固溶体もしくは _ユークリプタイト固溶体を主結晶として含有するセラミックスまたはガラ スセラミックスからなる光通信デバイス用基材において、 一 4 0 °Cから 1 0 0 °C まで 1 °C/分での昇温、および 1 0 0 °Cから一 4 0 °〇まで1 °〇 分での降温を行 なった際に生じる最大の熱膨張ヒステリシスが 1 2 p p m未満であることを特 徴とする。
また、 本発明の光通信デバイス用基材の製造方法は、 一 4 0〜十 1 0 0 °Cにお ける平均熱膨張係数が— 5 5〜一 1 2 0 X 1 0— 7Z°Cであり、 β一石英固溶体も しくは /3—ユークリプタイト固溶体を主結晶として含有するセラミックスまた はガラスセラミックスからなる光通信デパイス用基材の製造方法において、基材 に対して 2 0。C以上の温度での高温処理と 2 0 °C以下の温度での低温処理とを
交互に各々複数回行ない高温処理と低温処理の温度差が 40〜240°Cである ことを特徴とする。
また、 本発明の光通信デバイスは、 一 40〜十 100°Cにおける平均熱膨張係 数が _55〜一 120X 10一7 Z°Cであり、 /3—石英固溶体もしくは 3—ユーク リブタイト固溶体を主結晶として含有するセラミックスまたはガラスセラミツ クスからなる光通信デバイス用基材に、正の熱膨張係数を有する光部品を固定し てなる光通信デバイスであって、光通信デバイス用基材において一 40°Cから 1 00 °Cまで 1で 分での昇温、および 100 °Cから一 40 °Cまで 1 °C /分での降 温を行なった際に生じる熱膨張ヒステリシスが最大 12 p pm未満であること を特徴とする。
本発明の光通信デパイス用基材はー 40〜十 100°Cにおける平均熱膨張係 数が一 55〜一 12 OX 1 Cr7/°Cであり、 —石英固溶体もしくは i3_ユーク リブタイト固溶体を主結晶として含有するセラミックスまたはガラスセラミッ タスからなる光通信デパイス用基材において、 一 40°Cから 100°Cまで 1°C/ 分での昇温、および 100°Cから— 40°Cまで 1°CZ分での降温を行なった際に 生じる最大の熱膨張ヒステリシスが 12 p pm未満であるため、 この基材に固定 した光通信デバイスの反射中心波長ヒステリシスを 20 pm以下に抑制するこ とができる。
また、本発明の光通信デバイス用基材は、 長期間にわたって高温高湿雰囲気に 曝されても、 一 40〜: L 00°Cにおける平均熱膨張係数や、熱膨張ヒステリシス の変化を小さくすることができる。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明における実施例の光通信デバイスを示す平面図である。
図 2は、 _40〜100°Cの範囲における基材の熱膨張ヒステリシスを示すグ ラフである。
図 3は、実施例 8の長期耐久性試験の平均熱膨張係数と熱膨張ヒステリシスの 結果を示すグラフである。
図 4は、 実施例 6と比較例 1の長期耐久性試験 (温度サイクル試験) の結果を 示すグラフである。 発明を実施するための最良の形態
本発明の光通信デバイス用基材は、一 40〜十 100°Cの温度範囲において一 55— 120 X 10— 7/°Cの負の平均熱膨張係数を有するため、 光通信デバイ スの温度依存性を相殺でき、光部品の温度補償用部材として使用することができ る。 一 40〜+ 100°Cの温度範囲において熱膨張係数がー 55X 10— 7Z°Cよ りも負に小さいまたは正であると、 または、 一 120 X 1 cr7Z°cよりも負に大 きいと、正の熱膨張係数を有する光部品の温度依存性を相殺することができない ため、 光部品の温度補償用部材として使用することができない。
また、本発明の光通信デバイス用基材は、 0一石英固溶体もしくは —ユーク リプタイト固溶体を主結晶として含有するセラミックスまたはガラスセラミッ タスからなるため、充分な機械的強度を有するとともに機械加工性に優れており、 所定の形状に容易に成形することができる。
光通信デバイス用基材の形状は角柱状、 円柱状、 円筒状、 平板状が加工しやす く、 角柱状、 円柱状、 平板状の場合、 光部品を収納するためにスリットが全長に わたって設けられていても構わない。
本発明の光通信デバイス用基材は、 100°Cから一 40°Cまで 1°C/分で降温 した際、一 40〜: L 00°Cまで 20°C毎に 7つに区切った温度範囲の平均熱膨張 係数の最大値と最小値の差が 6 X 10一7/。 C以内であると、 一 40°Cから + 10 0 °Cまで 1 °C /分で昇温、および 100でからー 40 °Cまで 1 °C /分での降温を 行なった際に生じる最大の熱膨張ヒステリシスが 12 p: pm未満になりやすい。 本発明の光通信デバイス用基材は、 質量%で、 S i 02 45〜 60 %、 A 12 03 20〜45%、L i2O 7〜12%、T i〇2 0〜4%、Z rO2 0〜4% を含有すると、 e一石英固溶体もしくは β一ユークリブタイト固溶体の結晶化度 を高くできるため好ましく、特に、 L i2〇: A 1203: S i 02のモル比が 1: 1. 5〜2. 5 : 2〜3であると好ましい。
上記のように組成範囲を限定した理由を述べる。
S i〇2は、 負の熱膨張係数を示す主結晶の主成分であるが、 その含有量が 4 5%未満の場合には主結晶の析出量が不十分となりやすく、 一方、 60%を超え ると所望の主結晶相以外の結晶相が析出しやすいことから、 S i〇2の範囲は、 45〜 60 %、 好ましい範囲は、 46〜 59 %である。
A 1203も同様に、 負の熱膨張係数を示す主結晶の主成分であるが、 その量が 20 %未満の場合には主結晶の析出量が不十分となりやすく、 45 %を超えると 所望の主結晶相以外の結晶相が析出しやすいことから、 A 1203の範囲は、 20 〜45%、 好ましい範囲は、 21〜44%である。
L i2〇も同様に、 負の熱膨張係数を示す主結晶の主成分であるが、 その量が 7%未満の場合には主結晶の析出量が不十分となりやすく、 12%を超えると所 望の主結晶相以外の結晶相が析出しやすいことから、 L i2〇の範囲は、 7〜1 2%、 好ましい範囲は、 7. 5〜: L 1. 5%である。
なお、 S i〇2、 A 1203、 L i2〇が負の熱膨張係数を示す ー石英固溶体も しくは β—ユークリプタイト固溶体の主成分であるが、 L i2〇: A 1203: S i 〇2のモル比が 1 : 1. 5〜2. 5 : 2〜3である。 この範囲において主結晶の 析出量が高くなりやすく、 この範囲から外れると大きな負の熱膨張係数が得られ にくい。
Z r 02、 T i 02は、 いずれも核形成剤として作用するが、 いずれも 4%を超 えると、核形成剤として作用しない余剰な成分が存在し、 曲げ強度の劣化が発生 することから範囲は、それぞれ 0〜 4%、好ましい範囲は、 0. 5〜3°/0である。 また、 上記の成分以外にも Mg 0、 B aO、 Ζ ηθ等のアルカリ土類や N a2 ο、 κ2ο等のアルカリ成分等の他成分を 10%以下まで添加する事ができる。 また、 本発明の光通信デバイス用基材は、 シラン化合物、 シロキサン化合物も しくはシラザン化合物から選ばれる有機珪素化合物の 1種または 2種以上を含 む溶液によって処理されてなると、高温高湿雰囲気に長期間曝されても基材の熱 膨張係数が変化しにくいとともに、熱膨張ヒステリシスを小さくしゃすいため好 ましい。
本発明の光通信デバイス用基材の製造方法は、一 40〜十 100°Cにおける平 均熱膨張係数が— 55〜一 120X 10— 7/°Cであり、 13一石英固溶体もしくは
一ユークリプタイト固溶体を主結晶として含有するセラミックスまたはガラ スセラミックスからなる光通信デバイス用基材の製造方法において、基材に対し て 2 0 °C以上の温度での高温処理と 2 0 °C以下の温度での低温処理とを交互に 各々複数回行ない高温処理と低温処理の温度差が 4 0〜 2 4 0 °Cであるため、熱 膨張ヒステリシスが小さく長期間にわたって高温高湿雰囲気に曝されても熱膨 張係数や熱膨張ヒステリシスの変化が小さい光通信用デバイス用基材を得るこ とができる。 特に、 一 4 0 °C以下での低温処理と、 2 0〜 2 0 0 °Cでの高温処理 とを交互に各々複数回行なうと、 一 4 0 °Cから + 1 0 0 °Cまで 1 °CZ分で昇温、 および 1 0 0 °Cから一 4 0 °Cまで 1 °C/分での降温を行なった際に生じる最大 の熱膨張ヒステシスを 1 2 p p m未満にすることができる。 なお、低温処理と高 温処理の順序は問わない。
;3—石英固溶体もしくは —ユークリプタイト固溶体を主結晶として含有す るセラミックスまたはガラスセラミックスは、負に大きい熱膨張係数を有する β 一石英固溶体もしくは β—ユークリプタイト固溶体からなる複数個の結晶粒子 の集合体(多結晶体) を主成分として含有しており、 i3—石英固溶体もしくは β 一ユークリプタイト固溶体は、 異方性の熱膨張係数を有する結晶 (c軸方向の熱 膨張係数が負であり、 a軸方向の熱膨張係数は正である結晶) であるため、 異方 性による歪みにより結晶粒子の粒界には、 部分的に粒界空隙が形成される。 温度 変化時の a軸方向の膨張または収縮は、 この粒界空隙によって緩和されるが、 c 軸方向の熱膨張係数が主にセラミックスまたはガラスセラミックスの熱膨張係 数を支配するため、 セラミックスまたはガラスセラミックスは、負に大きい熱膨 張係数を有するようになる。
熱膨張ヒステリシスは、昇温させたときの熱膨張曲線と降温させた時の熱膨張 曲線が一致しない現象を指す。 粒界空隙は、 降温時には a軸方向に結晶粒子が収 縮することによって解離 (粒界空隙の容積が増大) し、 昇温時には a軸方向に結 晶粒子が膨張することによって結合 (粒界空隙の容積が減少) するが、 一石英 固溶体もしくは 一ユークリプタイト固溶体を主結晶として含有するセラミツ タスまたはガラスセラミックスにおいて熱膨張ヒステリシスが発生する原因は、 粒界空隙の解離が、 スムースに行なえず、 温度変化に追随できないことにあると
考えられる。粒界空隙の解離がスムースに行われない理由は、 空隙表面での摩擦 に起因すると考えられる。
2 0 °C以上の温度での高温処理と 2 0 °C以下の温度での低温処理とを交互に 各々複数回行ない、 高温処理と低温処理の温度差が 6 0〜2 4 0 °Cであると、 特 に一 4 0 °C以下での低温処理と、 2 0〜2 0 0 °Cでの高温処理を交互に各々複数 回行なうと、熱膨張ヒステリシスの測定温度範囲において、粒界空隙に新しい表 面が形成されることがなく、粒界空隙の表面の摩擦を減少させることができるた め、 熱膨張ヒステリシスが小さくなる。 すなわち、 低温処理温度から高温処理温 度への昇温、 あるいは高温処理温度から低温処理温度への降温を繰り返すことに よって、粒界空隙の結合と解離が繰り返されることで、粒界空隙の表面が擦れ合 つて滑らかになり、摩擦を減少させることができるため、熱膨張ヒステリシスが 小さくなる。
高温処理と低温処理の温度差が 6 0 °Cよりも小さいと粒界空隙が擦れ合って 滑らかになる効果が小さく、 2 4 0 °Cよりも大きくても粒界空隙の表面が擦れ合 つて滑らかになる効果が増大することがなく、 また、 昇温または降温に時間がか かり生産性が悪く経済的でない。
低温処理温度が、熱膨張ヒステリシスを測定する際の最低温度、 具体的には一 4 0 °Cよりも高いと、熱膨張ヒステリシスを測定する際に、粒界空隙に滑らかで ない新しい表面が形成され、粒界空隙の表面同士の摩擦を増加させてしまうため 好ましくない。
また高温処理温度が、 2 0 °Cよりも低レ、と、昇温時または降温時に粒界空隙の 表面同士が擦れ合いにくく、粒界空隙の表面同士の摩擦を減少させにくい。 2 0 0 °Cよりも高いと、昇温時または降温時に粒界空隙の表面同士が擦れ合うものの、 この温度よりも高くしてもその効果が増大することがなく、また昇温または降温 に時間がかかり生産性が悪く経済的ではない。
また、 一 4 0 °C以下での低温処理と、 2 0〜2 0 0 °Cでの高温処理を交互に 各々 1回づっ行なうだけであると、粒界空隙の表面同士が擦れ合う回数が少なく、 粒界空隙の表面同士の摩擦が小さくなりにくい。
- 4 0 °C以下での 1回の等温保持時間おょぴ 2 0〜2 0 0 °Cでの 1回の等温 保持時間がそれぞれ 6 0分以内、 好ましくは 1〜3 0分である。 6 0分より長く 熱処理を行なっても、粒界空隙の表面同士の摩擦をより小さくする効果が増大し ないため、 生産性が悪くなり、 経済的でない。
本発明の光通信デバイス用基材の製造方法は、 シラン化合物、 シロキサン化合 物もしくはシラザン化合物から選ばれる有機珪素化合物の 1種または 2種以上 を含む溶液で基材を処理すると、高温高湿雰囲気に長期間曝されても基材の熱膨 張係数が変化しにくいとともに、熱膨張ヒステリシスを小さくしゃすいため好ま しレ、。 なお、 基材に対して一 4 0 °C以下での低温処理や 2 0〜2 0 0 °Cでの高温 処理と、 有機珪素化合物を含む溶液での処理を行なう順序は問わない。
本発明の光通信デバイス用基材の製造方法は、基材を 0 °Cにおける飽和水蒸気 圧よりも低い水蒸気圧の雰囲気において低温処理や高温処理を行なうと、結露や 霜が発生しないため基材に水分が付着せず、粒界空隙の表面同士が擦れ合うこと を阻害することなく、 粒界空隙の表面同士の摩擦を減少させやすい。
また、本発明の光通信デバイス用基材の製造方法は、 基材を低温や高温で処理 する雰囲気がヘリゥムガス雰囲気であると、基材に熱が伝わりやすいため好まし い。
本発明の光通信デバイスは、 一 4 0〜+ 1 0 0 °Cにおける平均熱膨張係数がー 5 5〜一 1 2 0 X 1 0— 7/。Cであり、 j3—石英固溶体もしくは j3—ユークリプタ ィト固溶体を主結晶として含有するセラミックスまたはガラスセラミックスか らなる光通信デバイス用基材に正の熱膨張係数を有する光部品(例えば、 F B G) を固定してなる光通信デバイスであって、 光通信デパイス用基材において一 4 0 °Cから 1 0 0 °Cまで 1 °CZ分での昇温、および 1 0 0 °Cから一 4 0 °Cまで 1 °C /分での降温を行なった際に生じる熱膨張ヒステリシスが最大 1 2 p p m未満 であるため、反射中心波長ヒステリシスを 2 0 p m以下に抑制することができる。 本発明の光通信デバイスは、本発明の光通信デバイス用基材上に正の熱膨張係 数を有する光部品を固定する際に使用する接着剤として、 ガラス、 ポリマー接着 剤、 または金属が使用可能であるが、 ポリマー接着剤を用いると、 安価で、 強固 に接着可能であり、 高効率で光通信デバイスを生産できるため好ましく、 具体的
には、 エポキシ系接着剤が好適であるが、 その他にもシリコーン系やアクリル系 接着剤が使用可能である。
【実施例】
以下、 本発明を実施例および比較例を用いて詳細に説明する。
表 1および 2に、本発明の実施例 1〜 10を示し、表 3に比較例 1〜 6を示す。 また、 図 1は、 本発明における実施例の光通信デバイスを示す平面図であり、 図 2は、 一 40〜+ 100°Cの範囲における基材の熱膨張ヒステリシスを示すダラ フである。 また、 図 3は、 実施例 8の長期耐久性試験の平均熱膨張係数 (□) と 熱膨張ヒステリシス (令) の結果を示すグラフであり、 図 4は、 実施例 6 (秦) と比較例 1 (▲) の長期耐久性試験 (温度サイクル試験) の結果を示すグラフで ある。
表 1
実施例 1 実施例 2実施例 3実施例 4 実施例 5
セラミックセラミックセラミックセラミック セラミック
基材
ス (A) ス (A) ス (A) ス (A) ス (A)
Li20:AI203:Si02 モル比 1:1:2.9 1:1:2.9 1:1:2.9 1:1:2.9 1:1:2.9
低温処理温度 (°C) -40 —40 -40 一 40 -40
等温保持時間 (分) 3 3 30 30 30
高温処理温度 (°C) 20 100 100 100 100
等温保持時間 (分) 3 3 30 30 30
処理回数 (回) 2 2 2 5 10
平均熱膨張係数
-81 - 81 -81 -72 -82
( 10"7/°0
熱膨張ヒステリシス (ppm) 11 9 7 5 4
20°C毎の平均熱膨張係数差
6.0 6.0 5.0 5.0 4.5
(X 10— 7/°C)
波長ヒステリシス (pm) 16.5 13.5 10.5 7.5 6.0
表 2
表 3
まず、 実施例 1〜 6は、 焼結後の組成が、 質量%で3 i 0
2 55. 0 %、 A 1
20
3 33. 1%、 L i
20 9. 4%、 T i 0
2 0. 8%、 Z r〇
2 1. 0%、 MgO 0. 2%、 P
2O
s 0. 5%となるように粉末を焼結し、 一石英固溶 体を主結晶として含有するセラミックス (A) 力 らなる基材 1を作製した。 図 1に示すように、 基材 1は、 長さ 40mm、 幅 4mm、 厚さ 3 mmの寸法を 有し、 上面に全面にわたって深さ 0. 6 mmのスリット 1 aが形成されている。 この基材 1を {R i (OH)
a (OCH
3)
bO
(o_
1)/m}
ωで表されるシロキサン化 合物を含む Ι ΡΑ (イソプロピルアルコール) 溶液に浸し、 10分間超音波振動 を与えた後 +100°Cで 10分間乾燥した。 なお、 上記シロキサン化合物は、 R
1が C
6H
13、 a力 SO. 07、 b力 Si. 88、 mが 2. 1である。
続いて、 基材 1を表 1および表 2に記載した処理温度、 等温保持時間および処 理回数で、恒温恒湿槽(日立恒温恒湿槽: E C— 13 MH P )によつて処理した。 なお、 _40°C以下での低温処理と 20〜200°Cでの高温処理をそれぞれ 1 回づっ行なった場合、 処理回数を 1回として数えた。
最後に、 各基材 1のスリット 1 a中に、 FBG2を挿入し、 基材 1の両端付近 の 2点をエポキシ系接着剤 3 (協立化学産業 (株) 製 XOC— 02THK) を用 い、 FBG 2を基材 1に接着固定することによって光通信デバイス 10を作製し た。 なお、 FBG2の基材 1への接着は、 320 OmWZc m2の出力を有する メタルハライドランプを使用して、波長 300~400 nmの紫外線をエポキシ 系接着剤 3に 2秒間照射して接着剤を硬化させて行なつた。
実施例 7は、焼結後の組成が、質量%で S i 02 55. 5 %、 A 1203 32. 6 % L i 20 9. 2 %、 T i 02 0. 9 %、 Z r 02 1. 0 %、 M g O 0. 2%、 P205 0. 5%となるように粉末を焼結し、 )3—石英固溶体を主結晶と して含有するセラミックス .(B) を使用した以外は、 実施例 4と同様にして基材 およぴ光通信デバイスを作製した。
実施例 8は、焼結後の組成力 質量0んで S i〇2 56. 0 %、 A 1203 32. 1 %、 L i 20 9. 0 %、 T i 02 0. 9 %、 Z r 02 1. 1 %、 M g O 0. 2%、 P205 0. 7%となるように粉末を焼結し、 i3—石英固溶体を主結晶と して含有するセラミックス (C) を使用した以外は、 実施例 4と同様にして基材 および光通信デバイスを作製した。
実施例 9は、焼結後の組成が、質量%で S i〇2 56. 0 %、 A 1203 32. 6 %、 L i 20 8. 6。/。、 T i 02 0. 9 %、 Z r 02 1. 1 %、 M g O 0. 3%、 P205 0. 5%となるように粉末を焼結し、 一石英固溶体を主結晶と して含有するセラミックス (D) を作製した以外は、 実施例 4と同様にして基材 および光通信デパイスを作製した。
実施例 10は、 組成が質量%で3 i 02 46. 2 %、 A 1203 40. 9 %、 L i20 9. 1%、 T i〇2 2. 0%、 Z r〇2 1. 8%となるように原料を 調合した後、 1200 °Cで 7時間熔融し、急冷することによってガラスを作製し、 次いで 1350°Cで 15時間加熱して主結晶として β—石英固溶体が析出した
ガラスセラミックス (E) を使用した以外は、 実施例 4と同様にして基材および 光通信デバイスを作製した。
比較例 1は、低温処理および高温処理を行なわなかった以外は実施例 1〜 6と 同様にして基材ぉよぴ光通信デバイスを作製した。
比較例 2は、低温処理および高温処理を行なわなかった以外は実施例 8と同様 にして基材ぉよぴ光通信デバイスを作製した。
比較例 3は、低温処理および高温処理を行なわなかった以外は実施例 9と同様 にして基材ぉよび光通信デバイスを作製した。
比較例 4〜 6は、表 3に記載した温度—保持時間で熱処理を行なった以外は実 施例 1〜 6と同様にして基材ぉよび光通信デバイスを作製した。
— 4 0〜十 1 0 0 °Cの範囲における基材の平均熱膨張係数と熱膨張ヒステリ シスの測定は、 ディラトメーター (マックサイエンス製) を用いて行なった。 熱 膨張ヒステリシスは、図 2に示すように一 4 0〜 1 0 0 °Cの間で 1 °CZ分で昇温 およぴ降温し、 4 0 °Cにおける冷却時の寸法 と加熱時の寸法 L2を測定し、 L 丄と:^との差 ( | L - L2 I ) を常温で測定した寸法 Lで除した値とした。
2 0 °C毎の平均熱膨張係数差は、 図 2に示すように _ 4 0〜 1 0 0 °Cの間で 1 °CZ分で降温を行なった際の熱膨張曲線を 2 0 °C毎に 7つの温度範囲に区分 し、 それぞれの温度範囲における平均熱膨張係数を算出した後、 それらの最大値 と最小値の差から求めた。
作製した光通信デバイスの波長ヒステリシスは、光通信デバイスを一 4 0〜 1 0 0 °Cの範囲で 1 °0 分で昇温および降温し、 F B Gによって反射された光の波 長のうち、 1 5 5 0 n m付近に現れる中心波長をスペク トラムアナライザー (ァ ドバンテスト製 Q— 8 3 8 4 ) を用いて p m単位で精密に測定し、 3 5ででの 波長の差として求めた。
基材の長期耐久性は、 基材を 8 5 °C、 8 5 %の高温高湿雰囲気で 2 0 0 0時間 放置し、基材の熱膨張係数および熱膨張ヒステリシスを経時的に測定して評価し た。
光通信デバイスの長期信頼性 (温度サイクル試験) は、 室温 (2 0 °C) より一 4 0 °Cまで 1 °0 分で降温させ、 一 4 0 °Cで 3 0分間保持した後、 8 5 °Cまで
1°C/分で昇温、 85°Cで 30分間保持した後、 室温 (20°C) まで 1°CZ分で 降温させる温度サイクルを最大 500回行い、 0回、 200回、 500回行なつ た際の、 1550 nm付近の中心波長をスぺクトラムアナライザー (ァドパンテ スト製 Q— 8384) を用いて pm単位で精密に測定し、 _40°C〜85°Cま での温度変化による波長の変化量を温度依存性として算出し、温度サイクルが 0 回の時との差を温度依存性の変化量として評価した。
表 1、 2から明らかなように、 実施例 1〜10の光通信デバイスは、 一 40〜 1 00°Cにおける平均熱膨張係数が一 65〜一 81 X 1 0_7Z°Cであり、 光通信 デバイス用基材の 20°C毎の平均熱膨張係数が 6 X 10— 7/°C以下であり、 熱膨 張ヒステリシスが l i p pm以下と小さいため反射中心波長ヒステリシスも 1 6. 5 pm以下と小さかった。
また、 図 3から明らかなように、 実施例 8の光通信デバイス用基材は、 長期間 にわたつて高温高湿雰囲気に放置されても、平均熱膨張係数や熱膨張ヒステリシ スの変化が小さかった。 なお、 実施例 1〜7および 9〜10も実施例 8と同様に 長期間にわたつて高温高湿雰囲気に放置しても平均熱膨張係数や熱膨張ヒステ リシスの変化が小さかった。
また、 図 4から明らかなように、 実施例 6の光通信デバイスは、長期信頼性試 験である温度サイクル試験を行なっても、 温度依存性の変化量が小さかった。 な お、実施例 1〜 5および 7〜 10も実施例 6と同様に長期信頼性試験である温度 サイクル試験を行なっても、 温度依存性の変ィ匕量が小さかった。
一方、表 3から明らかなように比較例 1〜 3の光通信デパイスは、低温処理お よび高温処理を行なわなかったため、光通信デパイス用基材の熱膨張ヒステリシ スが 20 p pm以上と大きく、光通信デバイスの反射中心波長ヒステリシスも 3 0 pm以上と大きかった。また、比較例 4および 5の光通信デバイスは、一 40°C 以下の低温領域で低温処理を行なっていないため、光通信デバイス用基材の熱膨 張ヒステリシスが 20 p pm以上と大きく、光通信デバイスの反射中心波長ヒス テリシスも 30 pm以上と大きかった。 また、 比較例 6の光通信デバイスは、 一 40°C以下の低温領域での低温処理と 20〜200°Cの高温領域での高温処理 をそれぞれ 1回づつしか行なっていないため、光通信デバイス用基材の熱膨張ヒ
ステリシスが 1 6 p p m以上と大きく、光通信デバイスの反射中心波長ヒステリ シスも 2 4 p m以上と大きかった。
また、 図 4から明らかなように、 比較例 1の光通信デバイスは、 長期信頼性試 験である温度サイクル試験を行なった結果、 温度依存性の変化量が大きかった。 なお、比較例 2〜 6も比較例 1と同様に長期信頼性試験である温度サイクル試験 を行なった結果、 温度依存性の変化量が大きかつた。 産業上の利用可能性
本発明の光通信デバイス用基材は、充分に大きな負の平均熱膨張係数を有する とともに熱膨張ヒステリシスが小さく、長期耐久性に優れるため、 この 材に F B Gを固定した光通信デバイスは、 温度変化や、長期間高温多湿環境に曝されて も、温度補償を充分に行なうことができ、 F B Gによる反射中心波長ヒステリシ スを 2 0 p m以下と小さくすることができ、例えば、一度により多くの情報を伝 達するために異なる波長の光を同時に伝送する波長分割多重伝送方式用の光通 信デバイス用の基材として好適である。