JP2001205747A - 表面処理層を有する基材およびその製造方法 - Google Patents

表面処理層を有する基材およびその製造方法

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JP2001205747A
JP2001205747A JP2000343121A JP2000343121A JP2001205747A JP 2001205747 A JP2001205747 A JP 2001205747A JP 2000343121 A JP2000343121 A JP 2000343121A JP 2000343121 A JP2000343121 A JP 2000343121A JP 2001205747 A JP2001205747 A JP 2001205747A
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Takashige Yoneda
貴重 米田
Sunao Hamano
直 濱野
Fumiaki Gunji
文明 郡司
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Asahi Glass Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】水滴除去性を有し、耐摩耗性、耐候性、耐煮沸
性および耐薬品性に優れるためその性質が半永久的に持
続する表面処理層を有する基材の提供。 【解決手段】少なくとも2層の表面処理層を有する基材
であって、表面処理層の最外層である第1層が、所定の
有機ケイ素化合物を含有する組成物(I)で被覆して得
られる層であり、第1層の内側に接する第2層が、水に
対する接触角値が100度以上である表面を形成する含
フッ素反応性シラン化合物(II)、を含有する組成物
(II)で被覆して得られる層であることを特徴とする表
面処理層を有する基材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水滴の付着が少な
く、また、付着した水滴の除去が容易な表面処理層を有
する基材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】表面処理層を有する各種基材は、多くの
分野で使用されているが、その表面で水のもたらす悪影
響が問題となっている。例えば、電車、自動車、船舶、
航空機等の輸送機器における、1)外板、窓ガラス、
鏡、表示機器表面材等の外層部材、2)計器盤表面材等
の内層部材、3)その他の物品の表面は常に清浄である
ことが好ましい。輸送機器物品の表面に、雨滴、ほこ
り、汚れ等が付着したり、大気中の湿度、温度の影響で
水分が凝縮したりすると、輸送機器用物品等が有する本
来の機能が低下する場合がある。特に、輸送機器用物品
が透明性、透視性を要求される物品(例えば、窓ガラ
ス、鏡)である場合には、雨滴、ほこり、汚れ等の付着
や水分の凝縮により、透明性、透視性が低下し、それに
より本来の目的が損なわれかねない。例えば、自動車の
フロントガラスは、雨滴等の付着等により透明性、透視
性が減少する。
【0003】水滴を物理的に除去する手段(例えば、拭
き取り、ワイパーによる除去)は、ときとして物品の表
面に微細な傷を付けることがある。また、水滴等に伴わ
れる異物粒子よってかかる傷を一層著しいものにするこ
ともある。さらに、ガラス表面に水分が付着した場合に
は水分中にガラス成分が溶出し、表面が浸食されてい
く、いわゆる焼けを生じることはよく知られている。こ
の焼けを除去するために強く摩擦すると微細な凸凹を生
じ易い。焼けが激しく生じたガラスや表面に微細な凸凹
を生じたガラスからなる透視部は、本来の機能が低下
し、その表面で光の散乱が生じる。
【0004】その他にも、水分は輸送機器物品等の表面
や内部に有害な影響を与えて、損傷、汚染、着色、腐食
等を促進させ、また、輸送機器用物品等の電気特性、機
械的特性、光学的特性等の変化を誘発することもある。
また、それらの外観が損なわれる場合もあり、人の目に
直接触れる表面であったり、人が直接接する表面である
と、不快感を与える。この種の水がもたらす悪影響は輸
送機器用物品に限らず、建築・建装用物品、電気・電子
機器用物品等の各種分野で用いられる物品基材で問題と
なっている現象である。
【0005】このような現状において、基材表面に水滴
が付着しにくく、または、付着した水滴の除去が容易な
性質(以下、単に「水滴除去性」という。)を付与する
ことは強く求められているところであり、以前から、表
面に水滴除去性を付与するために、物品表面に直接処理
して用いる表面処理剤が提案されている。例えば、シリ
コーン系ワックス、オルガノポリシロキサンからなるシ
リコーン油、界面活性剤等がある。
【0006】特開昭58−147484号公報、特開昭
60−221470号公報、特開平4−96935号公
報等には、パーフルオロアルキル基を含有する、ポリシ
ロキサンまたはポリシラザンが撥水性に優れることが記
載されている。しかし、これらは耐摩耗性、耐候性等に
劣るため、屋外等で長期的に使用することができなかっ
た。また、自動車用フロントガラス、建築物用窓ガラス
等には、撥水性のみならず水滴が転がり落ちる性質(水
滴転落性)も要求されるが、これらは水滴転落性が十分
であるとはいえなかった。
【0007】また、特開平10−194784号公報に
は、耐摩耗性、耐候性等の向上を目的とし、ガラス板
と、酸素原子の一部が水酸基で置換された酸化ケイ素か
らなる下地膜と、フルオロアルキル基を含む有機ケイ素
化合物からなる撥水性ガラスが提案されている。しか
し、前記撥水性ガラスは、実際には、耐摩耗性は優れる
ものの耐候性に劣るものであった。また、水滴転落性も
十分でなかった。
【0008】また、特開平7−252472号公報に
は、パーフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物と、
加水分解性基含有メチルポリシロキサンとの共加水分解
物を含有する撥水処理剤が記載されている。これは、撥
水性に優れるパーフルオロアルキル基含有有機ケイ素化
合物と、水滴転落性に優れる加水分解性基含有メチルポ
リシロキサンとを、水および親水性溶媒中で共加水分解
することにより、撥水性と水滴転落性の両方に優れたも
のとすることを目的としたものである。しかし、前記撥
水処理剤は、基材に塗布すると、完全に乾燥するまで
に、表面エネルギーの低いパーフルオロアルキル基含有
有機ケイ素化合物が、表面エネルギーの高い水分解性基
含有メチルポリシロキサンより外側に移動し、後者に由
来する所望の水滴転落性が得られるものではなかった。
【0009】さらに、従来提案されていた表面処理剤
は、塗布に伴う前処理を必要とするものが多く、かつ塗
布時に塗布ムラが発生しやすいという問題があった。ま
た、処理剤自身の基材への付着性が低いことにより、水
滴除去性の長期持続性が得られないものが多く、用途が
限定されていた。
【0010】また、今後新たに製作される各種基材はも
とより、既に使用されている各種基材に対しても対策を
講じることができる手法が望まれている。この場合に
は、各種基材に表面処理剤を常温で直接塗布するだけで
水滴除去性を付与することができる必要がある。例え
ば、既に使用されている自動車用フロントガラスに水滴
転落性付与のための処理を行うことを考えた場合に、経
済的にみて各自動車のフロントガラスを入れ替えるわけ
にもいかず、また、塗布後その部分を焼成することも現
実には不可能である。この観点からも従来提案されてい
た表面処理剤を用いる手法では対応が困難であるという
のが現実である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の如き問
題点に鑑みなされたものである。すなわち、本発明者は
従来の提案が有していた欠点を解消しうる処理剤の研
究、検討の過程において、多種類の基材に応用が可能で
あり、優れた水滴除去性(水滴転落性および撥水性)を
長期的に発現する表面処理手段を見出し、その処理は容
易に行うことができ、かつ、処理した各種基材は水滴除
去性を有する基材として、特に、輸送機器用の基材とし
て極めて好適であることを確認し、本発明を完成するに
至った。本発明は、水滴除去性を有し、耐摩耗性、耐候
性、耐煮沸性および耐薬品性に優れるためその性質が半
永久的に持続する基材の提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも2
層の表面処理層を有する基材であって、表面処理層の最
外層である第1層が、下記組成物(I)で被覆して得ら
れる層であり、第1層の内側に接する第2層が、下記組
成物(II)で被覆して得られる層であることを特徴とす
る表面処理層を有する基材を提供する。 組成物(I):下記式(1)で表される有機ケイ素化合
物を含有する組成物。 組成物(II):水に対する接触角値が100度以上であ
る表面を形成する含フッ素反応性シラン化合物(II)を
含有する組成物。
【0013】
【化5】
【0014】(式中、R1 〜R3 は、それぞれメチル基
または下記式(2)で表される基であり、1分子中に複
数含まれるR1 〜R3 のうち少なくとも1つは、下記式
(2)で表される基である。R1 、n個のR2 およびR
3 は同一であっても異なっていてもよい。mは1〜10
0の整数、nは0〜10の整数を表す。
【0015】
【化6】
【0016】(式中、Aは炭素数2〜10の2価の炭化
水素基または酸素原子、R4 は炭素数1〜10の1価の
炭化水素基、Qはイソシアネート基、塩素原子またはO
5 で表されるアルコキシ基であって、R5 は炭素数1
〜6の1価の炭化水素基を表す。p個のR4 は同一であ
っても異なっていてもよく、(3−p)個のQは同一で
あっても異なっていてもよい。pは0〜2の整数を表
す。))
【0017】前記含フッ素反応性シラン化合物(II)
が、下記式(IIA)および/または(IIB)で表される
のが好ましい。
【0018】
【化7】
【0019】(式中、Z1 およびZ2 は、それぞれイソ
シアネート基または加水分解性基を表し、(3−a)個
のZ1 および(3−b)個のZ2 は同一であっても異な
っていてもよい。R6 およびR7 は、それぞれ水素また
は炭素数1〜21の有機基を表し、a個のR6 およびb
個のR7 は同一であっても異なっていてもよい。Yは、
2価の有機基を表す。a個のR6 、b個のR7 およびY
のうち少なくとも一つは、含フッ素有機基である。aお
よびbは、それぞれ0〜2の整数を表す。)
【0020】
【化8】
【0021】(式中、R8 は、水素または炭素数1〜2
1の有機基を表し、c個のR8 は同一であっても異なっ
ていてもよい。c個のR8 のうち少なくとも一つは、含
フッ素有機基である。Z3 は、イソシアネート基または
加水分解性基を表す。cは、1〜3の整数を表す。)
【0022】また、本発明は、さらに、第2層の内側
(基材側)に接する第3層を有し、該第3層がフッ素不
含の反応性シラン化合物(III) を含有する組成物(III)
で被覆して得られる層である前記表面処理層を有する基
材を提供する。
【0023】さらに、本発明は、基材の表面を前記組成
物(II)で被覆して第2層を形成する工程、および第2
層表面を前記組成物(I)で被覆して第1層を形成する
工程を有する前記表面処理層を有する基材の製造方法を
提供する。
【0024】さらに、本発明は、基材の表面を前記組成
物(III) で被覆して第3層を形成する工程、第3層表面
を前記組成物(II)で被覆して第2層を形成する工程、
および第2層表面を前記組成物(I)で被覆して第1層
を形成する工程を有する前記表面処理層を有する基材の
製造方法を提供する。
【0025】さらに、本発明は、前記基材が窓ガラスで
ある前記表面処理層を有する基材を提供する。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳細に説明す
る。本発明の基材は、少なくとも2層の表面処理層を有
する基材である。表面処理層の最外層である第1層は、
組成物(I)で被覆して得られる層である。組成物
(I)は、(A)上記式(1)で表される有機ケイ素化
合物を含有する。組成物(I)は、(A)の他に、
(B)酸および(C)有機溶剤を含有することが好まし
い。
【0027】初めに、(A)有機ケイ素化合物について
説明する。 (A)有機ケイ素化合物は、上記式(1)で表され、式
(1)中、R1 〜R3は、それぞれメチル基または上記
式(2)で表される基であり、1分子中に複数含まれる
1 〜R3 のうち少なくとも1つは、上記式(2)で表
される基である。R1 〜R3 の全部が上記式(2)で表
される基であってもよい。中でも、R1およびR3 のい
ずれか一方または両方が上記式(2)で表される基であ
るのが好ましい。R1 、n個のR2 およびR3 は同一で
あっても異なっていてもよい。mは1〜100(好まし
くは3〜50)の整数、nは0〜10(好ましくは0〜
5)の整数を表す。m+nは、好ましくは5〜100、
特に好ましくは5〜50の整数である。m+nが5以上
であると後述する水滴転落性が発現しやすく、100以
下であると本発明の基材を製造する際の作業性に優れ
る。
【0028】式(2)中、Aは、直鎖構造であっても、
分岐構造を有していてもよい炭素数2〜10の2価の炭
化水素基または酸素原子を表す。中でも、−(CH2
q −(qは、2〜6の整数、特に2または3)または酸
素原子であるのが好ましい。R4 は炭素数1〜10の1
価の炭化水素基、Qはイソシアネート基、塩素原子また
はOR5 で表されるアルコキシ基であって、R5 は炭素
数1〜6の1価の炭化水素基を表す。R4 としては、例
えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロ
ピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、
フェニル基が挙げられる。OR5 としては、例えば、メ
トキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポ
キシ基、イソプロペノキシ基、n−ブトキシ基、アセト
キシ基が挙げられる。p個のR4 は同一であっても異な
っていてもよく、(3−p)個のQは同一であっても異
なっていてもよい。pは0〜2の整数を表す。中でも、
第1層と第2層との密着性の点から、0または1である
のが好ましい。
【0029】組成物(I)は、1種の化合物(I)を含
有していてもよく、2種以上の化合物(I)を含有して
いてもよい。
【0030】次に、(B)酸について説明する。 (B)酸は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択す
ればよい。使用可能な酸としては、例えば、硫酸、塩
酸、硝酸、リン酸等の無機酸;酢酸、蟻酸、p−トルエ
ンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸が挙げられ
る。酸はそのまま組成物(I)に添加してもよいし、反
応促進等の目的で必要に応じてそれらの水溶液にしてか
ら添加してもよい。酸またはそれらの水溶液の添加は、
予め混合して組成物(I)としておいてもよいし、使用
直前に混合して組成物(I)として使用してもよい。組
成物(I)における(B)酸の含有量は、化合物(I)
100重量部に対して0.01〜10重量部であること
が好ましい。0.01重量部以上であると添加効果が十
分発現し、10重量部以下であると液の安定性に優れ
る。(B)酸は、後述する反応促進および第1層と第2
層との密着性の向上に寄与する。
【0031】次に、(C)有機溶剤について説明する。
組成物(I)はそのまま用いてもよいが、作業性、第1
層の目的の膜厚等を考慮し、必要に応じて(C)有機溶
剤で希釈して使用することができる。 (C)有機溶剤は、他の必須成分を溶解するものであれ
ば、特に限定されない。中でも、アルコール類、ケトン
類、芳香族炭化水素類、パラフィン系炭化水素類が好ま
しく、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の
低級アルコール類とパラフィン系炭化水素類が特に好ま
しい。(C)有機溶剤は1種に限定されることなく、極
性、蒸発速度等の異なる2種以上を混合して使用するこ
とも可能である。組成物(I)における(C)有機溶剤
の含有量は、化合物(I)100重量部に対して100
000重量部以下(特に、10000重量部以下)であ
るのが好ましい。100000重量部以下であると、均
一の被膜を形成しやすく、水滴除去性が安定して発現す
る。
【0032】組成物(I)は、上記成分の他、本発明の
目的を損なわない範囲で、各種金属酸化物、各種樹脂、
染料、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を含
有することができる。
【0033】組成物(I)で被覆することにより、第2
層の表面に、組成物(I)に含まれる化合物(I)が化
学的および/または物理的に結合する。化合物(I)
は、反応性基を分子中に少なくとも1つ有する化合物で
あり、化合物(I)は主として化学的反応により第2層
の表面に結合するものと考えられる。
【0034】組成物(I)の第2層表面への被覆にあた
っては、特別な前処理を必要としない。好ましくは、後
述するように第2層を形成させた後、直ちに第1層を形
成させる。第1層の形成は、はけ塗り、流し塗り、回転
塗布、浸漬塗布、スキージ塗布、スプレー塗布、手塗り
等の各種の公知の方法で、組成物(I)を表面に塗布
し、大気中や窒素気流中等で乾燥させればよい。処理方
法によっては、余剰成分が発生し外観品質を損なう場合
があるが、この場合には、溶剤拭きあるいは空拭き等で
余剰成分を除去し外観調節すればよい。この表面処理に
よって生成する第1層の厚さは特に限定されるものでは
ないが、経済性の観点から、100nm以下(特に50
nm以下)の膜厚であることが望ましい。また、その下
限は単分子層厚である。
【0035】第1層の内側に接する第2層は、水に対す
る接触角値が100度以上である表面を形成する含フッ
素反応性シラン化合物(II)を含有する組成物(II)で
被覆して得られる層である。組成物(II)の必須成分で
ある含フッ素反応性シラン化合物(II)は、含フッ素有
機基を有する反応性シラン化合物であって、水に対する
接触角値が100度以上である表面を形成する化合物で
ある。ここで、「水に対する接触角値が100度以上で
ある表面を形成する化合物」とは、洗浄されたソーダラ
イムガラス基板の表面をある化合物で被覆することによ
り該基板の表面が露出しないようにその化合物で完全に
被覆された場合に、その被覆後の表面の水に対する接触
角値が100度以上となるような化合物をいう。化合物
(II)においては、反応性基がケイ素原子に直接結合し
ている。反応性基は、例えば、イソシアネート基、ハロ
ゲン原子(Fは除く。)、アルコキシ基、アシルオキシ
基、アルコキシ置換アルコキシ基、アミノキシ基、アミ
ド基、酸アミド基、ケトキシメート基が挙げられる。中
でも、炭素数1〜4のアルコキシ基、アシルオキシ基、
イソシアネート基、塩素原子が好ましい。第2層の内側
の表面処理層または基材に対する結合性の点を考慮する
と、1つのケイ素原子に結合した反応性基は2つ以上で
あるのが望ましい。化合物(II)は、この反応性基の反
応性により、優れた水滴除去性、耐摩耗性、耐薬品性、
耐候性等の性能を発現するものと考えられる。また、後
述するように、有機基を選択することによりこれらの性
能をさらに向上させることが可能である。
【0036】また、化合物(II)はそのまま用いてもよ
いし、加水分解物として使用してもよい。化合物(II)
の加水分解物とは、水中または酸性もしくはアルカリ性
の水溶液中で、化合物(II)の有する反応性基の全部ま
たは一部を加水分解して生成するシラノール基等を有す
る化合物、あるいはそのシラノール基の反応により2以
上に分子が縮合した化合物をいう。酸性の水溶液は、例
えば、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、メタン
スルホン酸等の水溶液を使用することができる。
【0037】化合物(II)は、上記式(IIA)および/
または(IIB)で表される化合物であるのが好ましい。
式(IIA)中、Z1 およびZ2 は、それぞれイソシアネ
ート基または加水分解性基を表し、(3−a)個のZ1
および(3−b)個のZ2 は同一であっても異なってい
てもよい。式(IIB)中、Z3 は、イソシアネート基ま
たは加水分解性基を表す。aおよびbは、それぞれ0〜
2の整数を表すが、第1層および、後述する第3層また
は基材への密着性の観点から、それぞれ、1以下である
のが好ましく、0であるのがより好ましい。同様に、c
は、1〜3の整数を表すが、1であるのが好ましい。
【0038】R6 およびR7 は、それぞれ水素または炭
素数1〜21の有機基を表し、a個のR6 およびb個の
7 は同一であっても異なっていてもよい。Yは、2価
の有機基を表す。a個のR6 、b個のR7 およびYのう
ち少なくとも一つは、含フッ素有機基である。R8 は、
水素または炭素数1〜21の有機基を表し、c個のR 8
は同一であっても異なっていてもよい。c個のR8 のう
ち少なくとも一つは、含フッ素有機基である。
【0039】含フッ素有機基は、フッ素原子を有しない
炭素原子(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレ
ン基の炭素原子)でケイ素原子と結合していることが好
ましい。Yが2価の含フッ素有機基である場合、ポリフ
ルオロアルキレン基、ポリフルオロオキサアルキレン基
(アルキレン基の炭素鎖の中間に少なくとも1つのエー
テル結合が存在するもの)、ポリフルオロチオキサアル
キレン基(アルキレン基の炭素鎖の中間に少なくとも1
つのチオエーテル結合が存在するもの)であるのが好ま
しい。特に、Yの部分のうち、両末端のケイ素原子に結
合する部分がポリメチレン基(特に、ジメチレン基)で
あり、それらの中間部分がパーフルオロアルキレン基、
パーフルオロキサアルキレン基である2価の有機基であ
るが好ましい。この場合、Yの炭素数は、2〜30であ
るのが好ましく、4〜16であるのがより好ましい。Y
が2価の含フッ素有機基でない場合、アルキレン基、オ
キサアルキレン基、チオキサアルキレン基であるのが好
ましい。この場合、Yの炭素数は、2〜30であるのが
好ましく、2〜12であるのがより好ましい。
【0040】a個のR6 およびb個のR7 のうち、いず
れかが1価の含フッ素有機基である場合、および、c個
のR8 のうち、いずれかが1価の含フッ素有機基である
場合、その1価の含フッ素有機基は、ポリフルオロアル
キル基、ポリフルオロオキサアルキル基、ポリフルオロ
チオキサアルキル基;またはこれらのいずれかの基とア
ルキレン基等の炭化水素基とがエステル結合、エーテル
結合、チオエーテル結合、イミノ結合、アミド結合、ウ
レタン結合、その他の連結結合で結合した有機基(炭化
水素基の他端でケイ素原子と結合する)であるのが好ま
しい。ポリフルオロアルキル基およびポリフルオロオキ
サアルキル基は、パーフルオロ部分を有し、かつ、ケイ
素原子とはアルキレン基(特に、ジメチレン基)で結合
することが好ましい。1価の有機基のパーフルオロ部分
は炭素数3以上の、パーフルオロアルキル基、パーフル
オロオキサアルキル基、パーフルオロチオキサアルキル
基が好ましく、特に、炭素数3〜16のパーフルオロア
ルキル基が好ましい。
【0041】化合物(IIA)および(IIB)において、
フッ素原子を有しない有機基が存在する場合、その有機
基は、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、
アリール基等の炭化水素基;クロロアルキル基等のハロ
ゲン化炭化水素基;水酸基、エポキシ基、アミノ基、メ
ルカプト基、カルボキシ基、その他の官能基を有する
(ハロゲン化)炭化水素基;および炭素鎖中にエステル
結合、エーテル結合、チオエーテル結合、イミノ結合、
アミド結合、ウレタン結合、その他の連結結合を有する
(ハロゲン化)炭化水素基であるのが好ましい。中で
も、メチル基および長鎖炭化水素基が好ましい。長鎖の
炭化水素基としては、炭素数4〜20のアルキル基が好
ましい。
【0042】以下に化合物(IIA)および(IIB)の具
体例を示す。なお、下記式中、記号は上述と同様の意義
で用いる。また、Rfは1価の含フッ素有機基、nは2
〜16の整数、mは1〜20の整数である。
【0043】
【化9】
【0044】
【化10】
【0045】
【化11】
【0046】
【化12】
【0047】
【化13】
【0048】
【化14】
【0049】
【化15】
【0050】
【化16】
【0051】
【化17】
【0052】
【化18】
【0053】
【化19】
【0054】組成物(II)は、1種の化合物(II)を含
有していてもよく、2種以上の化合物(II)を含有して
いてもよい。
【0055】組成物(II)は、上記成分の他、目的に応
じて他の化合物や添加剤を含有することができる。添加
剤等は、各成分との反応性、相溶性を考慮して選択すれ
ばよい。例えば、両末端反応性ポリジメチルシロキサン
等の非フッ素系撥水性材料;シリカ、アルミナ、ジルコ
ニア、チタニア等の各種金属酸化物の超微粒子;各種樹
脂が挙げられる。また、着色が必要であれば、染料、顔
料等を含有することもできる。添加剤等の添加量は化合
物(II)100重量部に対して0.01〜20重量部程
度でよく、過剰な添加は本発明の水滴除去性、耐摩耗性
等を低下させるので望ましくない。
【0056】組成物(II)はそのまま用いてもよいが、
作業性、第2層の目的の膜厚等を考慮し、必要に応じて
有機溶剤で希釈して使用することができる。組成物(I
I)に用いられる有機溶剤は、例えば、酢酸エステル
類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、ケトン
類、エーテル類、アルコール類が挙げられる。ただし、
化合物(II)がイソシアネート基、塩素原子等の非常に
反応性の高い基を有している場合は、活性プロトン(水
酸基等の水素原子)を有する溶剤は望ましくない。有機
溶剤は1種に限定されることなく、極性、蒸発速度等の
異なる2種以上の混合溶剤を使用することも可能であ
る。組成物(II)における有機溶剤の含有量は、化合物
(II)100重量部に対して100000重量部以下で
あるのが好ましい。100000重量部以下であると、
均一の被膜を形成しやすい。有機溶剤の含有量は、被膜
の成形性(作業性)、安定性、被膜厚さ、経済性等を考
慮して適宜決定すればよい。
【0057】組成物(II)で被覆することにより、第3
層の表面または基材の表面に、組成物(II)に含まれる
化合物(II)が化学的および/または物理的に結合す
る。化合物(II)は、反応性基である、イソシアネート
基または加水分解性基を分子中に少なくとも1つ有する
化合物であり、化合物(II)は主として化学的反応によ
り第3層の表面または基材の表面に結合するものと考え
られる。組成物(II)の第3層の表面または基材の表面
への被覆にあたっては、特別な前処理を必要としない。
組成物(II)で被覆することによる第2層の形成は、は
け塗り、流し塗り、回転塗布、浸漬塗布、スキージ塗
布、スプレー塗布、手塗り等の各種の公知の方法で、組
成物(II)を表面に塗布し、大気中、窒素気流中等で乾
燥させればよい。この表面処理によって生成する第2層
の厚さは特に限定されるものではないが、経済性の観点
から、50nm以下の膜厚であることが望ましい。ま
た、その下限は単分子層厚である。
【0058】また、本発明の基材は、上述したように、
少なくとも最外層である第1層およびその内側に接する
層である第2層を有するが、さらに、第2層の内側に接
する第3層を有し、該第3層がフッ素不含の反応性シラ
ン化合物(III) を含有する組成物(III) で被覆して得ら
れる層であるのが好ましい一態様である。組成物(III)
の必須成分であるフッ素不含の反応性シラン化合物(II
I) は、フッ素原子を有しない反応性シラン化合物であ
る。化合物(III) においては、反応性基がケイ素原子に
直接結合している。ケイ素原子に直接結合する反応性基
のケイ素原子あたりの数は、多いほどよい。化合物(II
I) としては、SiX4 (式中、Xは、イソシアネート
基または加水分解性基を表す。4個のXは、同一であっ
ても異なっていてもよい。)で表される化合物であるの
が好ましく、具体的には、テトラクロロシラン、テトラ
イソシアネートシラン、テトラアルコキシシランが挙げ
られる。
【0059】化合物(III) は、この反応性基の反応性に
より、主に第2層および基材に強固に結合し、耐久性の
向上に寄与する。
【0060】また、化合物(III) はそのまま用いてもよ
いし、加水分解により加水分解物として使用してもよ
い。化合物(III) の加水分解物とは、水中または酸性も
しくはアルカリ性の水溶液中で、化合物(III) の有する
反応性基の全部または一部を加水分解して生成するシラ
ノール基等を有する化合物、あるいはそのシラノール基
の反応により2以上に分子が縮合した化合物をいう。酸
性の水溶液は、例えば、塩酸、酢酸、硫酸、リン酸、ス
ルホン酸、メタンスルホン酸等の水溶液を使用すること
ができる。また、化合物(III) にシリカ以外の金属酸化
物またはその前駆体化合物を添加し、第3層として、混
合酸化物層または複合酸化物層を得ることも可能であ
る。
【0061】組成物(III) は、1種の化合物(III) を含
有していてもよく、2種以上の化合物(III) を含有して
いてもよい。
【0062】組成物(III) は、上記成分の他、目的に応
じて他の化合物や添加剤を含有することができる。添加
剤等は、各成分との反応性、相溶性を考慮して選択すれ
ばよい。添加剤等は、組成物(II)に用いられるものと
同様のものを同様の使用量で用いることができる。
【0063】組成物(III) はそのまま用いてもよいが、
有機溶剤で希釈して使用することが好ましい。有機溶剤
は、組成物(II)に用いられるものと同様のものを用い
ることができる。
【0064】組成物(III) で被覆することにより、基材
の表面に、組成物(III) に含まれる化合物(III) が化学
的および/または物理的に結合する。化合物(III) は、
第1層および第2層の耐久性を飛躍的に向上させると同
時に、基材との密着性を高める働きをする。組成物(II
I) の基材の表面への被覆にあたっては、特別な前処理
を必要としない。しかし、目的に応じて行うことは別段
問題なく、例えば、1)フッ酸、硫酸、塩酸等による酸
処理、2)水酸化ナトリウム水溶液等によるアルカリ処
理、3)プラズマ照射、コロナ照射、電子線照射等によ
る放電処理を行うことができる。組成物(III) で被覆す
ることによる第3層の形成は、はけ塗り、流し塗り、回
転塗布、浸漬塗布、スキージ塗布、スプレー塗布、手塗
り等の各種の公知の方法で、組成物(III) を表面に塗布
し、大気中、窒素気流中等で乾燥させればよい。乾燥は
室温で充分であるが、加熱乾燥する場合には、基材の耐
熱性を加味して温度、時間を設定すればよい。この表面
処理によって生成する第3層の厚さは特に限定されるも
のではなく、基板がソーダライムガラス等の場合、Na
イオンの溶出を防止する目的で100nm以上の膜厚と
することもできる。500nm以下とすると、傷がつい
たときでも損傷が目立ちにくくなるので好ましい。特に
100nm以下であることが好ましい。また、極めて薄
いものであってもよく、その下限は単分子層厚である。
【0065】形成される各層の厚さは組成物濃度、塗布
条件、加熱条件等によって適宜制御することができる。
各層の膜厚は、それぞれ上述した通りであるが、表面処
理層全体の膜厚は、経済的効果も加味して1000nm
以下(特に100nm以下)であるのが好ましい。
【0066】本発明において、表面処理層が設けられる
基材は、特に限定されない。例えば、金属、プラスチッ
ク、ガラス、セラミックその他の無機質材料や、有機質
材料、あるいはその組み合わせ(複合材料、積層材料
等)が挙げられる。また、基材は、金属等の表面に蒸着
膜、スパッタ膜、湿式法等で得られた各種膜等の層が形
成されていてもよい。例えば、塗装金属板等のように塗
装表面を有するものや、表面処理ガラス等のように表面
処理層を有するものが挙げられる。中でも、ガラス、プ
ラスチック等の透明な材料からなる基材は、本発明の効
果が特に顕著である。表面処理層を設けられる基材の形
状は、平板に限らず、全面または一部に曲率を有するも
のなど、目的に応じた任意の形状とすることができる。
【0067】次に、本発明の表面処理層を有する基材の
製造方法について説明する。本発明の表面処理層を有す
る基材の製造方法は、特に限定されないが、好ましい製
造方法として、基材の表面を前記組成物(II)で被覆し
て第2層を形成する工程、および第2層表面を前記組成
物(I)で被覆して第1層を形成する工程を有する製造
方法が挙げられる。前記組成物(II)で被覆して第2層
を形成する工程および第2層表面を前記組成物(I)で
被覆して第1層を形成する工程は、組成物(I)および
(II)についての説明において述べたように行う。
【0068】上記製造方法においては、第1層を形成し
た後に乾燥工程を有するのが好ましい。乾燥工程は、室
温で行ってもよいし、例えば、80〜300℃で1〜6
0分間加熱してもよい。室温乾燥か加熱乾燥かは目的等
に応じて選ばれる。室温乾燥は特別な設備導入の必要が
なく経済的に有利である。特に、処理対象が別の物品に
組み込まれているような場合(例えば、自動車に組み込
まれたガラス基板等)には、事実上加熱乾燥することは
困難であり、室温乾燥が選ばれる。一方、加熱乾燥は、
乾燥速度が速く、また、耐久性が優れたものになるとい
う利点を有する。
【0069】また、本発明の基材が、第2層の内側に第
3層を有する場合には、基材の表面を前記組成物(III)
で被覆して第3層を形成する工程、第3層表面を前記組
成物(II)で被覆して第2層を形成する工程、および第
2層表面を前記組成物(I)で被覆して第1層を形成す
る工程を有する製造方法が好ましい。前記組成物(III)
で被覆して第3層を形成する工程は、組成物(III) につ
いての説明において述べたように行う。前記組成物(I
I)で被覆して第2層を形成する工程および第2層表面
を前記組成物(I)で被覆して第1層を形成する工程
は、第3層がない場合と同様である。上記製造方法にお
いては、第1層を形成した後に加熱工程を有するのが好
ましい。加熱工程は、例えば、大気中、80〜250℃
で、5〜60分間加熱する。また、第3層を形成した後
第2層を形成する前に、加熱工程を設けることもでき
る。この場合、例えば、400℃以上、好ましくは50
0〜700℃で、1〜60分間加熱する。加熱により、
第3層と基材との密着性および第3層の緻密性が向上
し、耐久性が向上するという利点がある。
【0070】本発明の基材は、少なくとも2層の表面処
理層を有する基材であり、基本的には、前記組成物
(I)で被覆して得られる第1層は優れた水滴転落性の
発現に寄与し、前記組成物(II)で被覆して得られる第
2層は優れた撥水耐久性の発現に寄与し、必要に応じて
前記組成物(III) で被覆して得られる第3層は、基材等
と主に第2層を強固に結びつける働きをする。
【0071】本発明は、ただ単に異なる機能を有する材
料を積層した場合に期待される効果を超える効果を発現
する。上述したように、組成物(I)で被覆して得られ
る第1層はシリコーン系被膜であり、組成物(II)で被
覆して得られる第2層は含フッ素シリコーン被膜であ
る。従来の知見では、表面エネルギーの低い含フッ素シ
リコーン被膜の上に表面エネルギーの高いシリコーン被
膜を塗布することは、非常に困難なことである。しか
し、材料構成を上述したような本発明のようにすると、
その塗布が可能となる。この機構の詳細は不明である
が、本発明の選ばれた組成物材料の組み合わせにおいて
は、第1層構成材料と第2層構成材料との間で、従来予
想できなかった強い分子間相互作用が働くためと思われ
る。その相互作用の一部は、第1層構成材料と第2層構
成材料との間のミキシング(相互拡散)と推定される。
本発明のように組成物(I)を第2層表面に被覆した場
合の第1層表面の水との接触角は、例えば、組成物
(I)をガラス表面に直接被覆した場合に比べ大きい。
これは接触角が大きい第2層構成材料の含フッ素反応性
シラン化合物(II)が第1層の形成過程で第1層中に拡
散し、その一部が第1層表面に露出しているためと考え
られる。また、第1層は単独ではそれほど高い撥水耐久
性を示さないが、第2層表面に塗布した場合、非常に優
れた耐久性を発現し、第1層と第2層との間に従来の知
見では予想できない相乗効果が発現するものと考えられ
る。
【0072】すなわち、本発明における層の概念は、マ
クロ的には各層を区別することができるが、ミクロ的に
は境界線が厳密に引ける状態ではなく、各層間で界面の
一部または全部が相互に入り交じっているものである。
本発明は、そのような層構造を有することにより、第1
層表面を構成する材料に依存する水滴転落性および撥水
耐久性について、第1層構成材料の組成物(I)に由来
する水滴転落性だけでなく、第2層構成材料の含フッ素
反応性シラン化合物(II)に由来する撥水耐久性までも
が、優れたものとなっているのである。上述したよう
に、従来、含フッ素シリコーン材料とシリコーン系材料
との混合により、両者の表面特性を発揮させることを目
的とした撥水処理剤が提案されていたが、表面エネルギ
ーの低い含フッ素シリコーン材料が、表面エネルギーの
高いシリコーン系材料より外側に移動し、後者に由来す
る所望の水滴転落性が得られるものではなかった。本発
明は、第1層および第2層の構成材料として、上記の組
成物(I)および(II)を用い、好ましくは所定の製造
方法で製造することにより、水滴転落性および撥水耐久
性の両者に優れ、水滴除去性に優れる基材を実現したの
である。
【0073】本発明の基材の用途は、特に限定されない
が、輸送機器用物品において特に有用である。輸送機器
用物品とは、電車、バス、トラック、自動車、船舶、航
空機等の輸送機器における、窓ガラス(例えば、フロン
トガラス、サイドガラス、リアガラス)、鏡、表示機器
表面材、計器盤表面材、その他構成部材(例えば、ボデ
ィー、バンパー)をいう。物品は本発明の基材のみから
なっていてもよく、本発明の基材が組み込まれたもので
あってもよい。例えば、前者として自動車用の窓ガラス
があり、後者としてガラス鏡が組み込まれた自動車用バ
ックミラー部材がある。
【0074】かかる基材、物品においては本発明の水滴
除去性により表面に付着する水滴がはじかれ、特に、輸
送機器が運行している場合には風圧によって表面上を急
速に移動し、水滴として溜ることなく、水分が誘発する
種々の悪影響を排除することが可能となる。特に、窓ガ
ラス等の透視野部での用途では水滴の飛散により視野確
保が非常に容易となる。すなわち、本発明の基材は水滴
転落性だけでなく撥水性にも優れ、雨等が表面に付着し
た場合に水滴となって流れ落ちるため、水滴転落性を有
するが撥水性に劣る表面のように水が膜状となって流れ
落ちることはない。従って、視野確保が容易となるとい
う利点がある。
【0075】また、本発明の基材は、上記第1層と第2
層との組み合わせにより、初期の水滴転落性および撥水
性のみならず、耐摩耗性、耐候性、耐煮沸性にも優れ
る。また、耐薬品性にも優れるので、海岸線沿い、ある
いは海水が直接触れる地域での応用も可能である。
【0076】本発明の基材が、第3層を有する場合に
は、耐久性が優れたものとなる。例えば、自動車用フロ
ントガラスに用いる場合、3〜5年間は、第1層および
第2層がはく離したり欠落したりせずにその性能を維持
できる。本発明の基材が、第3層を有しない場合には、
修繕の際に第1層および第2層をはく離させて新たな第
1層および第2層を形成することが容易にできるという
利点がある。
【0077】また、撥水性に優れるため、氷点下等の環
境下においても水滴が表面に氷結することなく、わずか
に氷結したとしても解凍は著しく速い。さらには、水滴
の付着がほとんどないため定期的な清浄作業回数を低減
でき、しかも、清浄は極めて容易で、美観保護の点から
も非常に有利である。
【0078】
【実施例】以下に、実施例を示して本発明を具体的に説
明するが、本発明はこれらに限られるものではない。 1.表面処理層を有する基材の調製 (実施例1)撹拌機および温度計がセットされたガラス
容器に、Si(NCO)4 3.0gおよび酢酸n−ブチ
ル97.0gを加え、25℃で10分間撹拌し、処理剤
1−3を得た。また、別の撹拌機および温度計がセット
されたガラス容器に、C8 172 4 SiCl3 (水
に対する接触角値が111゜の表面を形成する化合物)
3.0gおよび酢酸エチル97.0gを加え、25℃で
10分間攪拌し、処理剤1−2を得た。さらに、別の撹
拌機および温度計がセットされたガラス容器に、下記式
(3)で表される化合物1の5.0gおよびイソプロピ
ルアルコール95.0gを加え、25℃で10分間攪拌
し、処理剤1−1Aを得た。また、別の撹拌機および温
度計がセットされたガラス容器に、パラトルエンスルホ
ン酸10gおよびイソプロピルアルコールを90gを加
え、25℃で10分間攪拌し、処理剤1−1Bを得た。
使用直前に処理剤1−1A50gと処理剤1−1B3g
を混合し、処理剤1−1を得た。
【0079】
【化20】
【0080】次に、予め洗浄された大きさ10cm×1
0cm(厚さ3mm)のガラス製の基板に処理剤1−3
を0.5ml滴下し、布で塗り広げた。室温で1分間放
置した後、処理剤1−3で被覆して得られた層の上に処
理剤1−2を0.5ml滴下し、布で塗り広げた。室温
で1分間放置した後、処理剤1−2で被覆して得られた
層の上に処理剤1−1を0.5ml滴下し、布で塗り広
げた。この基板を室温で1昼夜放置し、基板1を得た。
なお、処理剤1−3を塗布し乾燥して得られた層は、触
針式膜厚測定をした結果、16nmであった。処理剤1
−2、処理剤1−1を塗布し乾燥して得られた層はES
CA測定の結果より、それぞれ6nmおよび6nmと見
積もられた。したがって、全体の膜厚は28nmであっ
た。
【0081】(実施例2)室温で1昼夜放置する代わり
に150℃で30分間加熱した以外は、実施例1と同様
の方法により、基板2を得た。
【0082】(実施例3)処理剤1−3による被覆と処
理剤1−2による被覆との間に、室温で1分間放置する
代わりに、650℃で7分間加熱し室温まで冷却した以
外は、実施例1と同様の方法により、基板3を得た。
【0083】(実施例4)撹拌機および温度計がセット
されたガラス容器に、C8 172 4 Si(OCH3)
3 (水に対する接触角値が109゜の表面を形成する化
合物)3.0gおよびイソプロピルアルコール97.0
gを加え、25℃で10分間攪拌した後、0.1mol
/L硝酸水溶液2.6gを滴下し、25℃で3昼夜攪拌
し、処理剤4−2を得た。処理剤1−2の代わりに、処
理剤4−2を用いた以外は、実施例1と同様の方法によ
り、基板4を得た。
【0084】(実施例5)撹拌機および温度計がセット
されたガラス容器に、C8 172 4 Si(NCO)3
(水に対する接触角値が110゜の表面を形成する化合
物)3.0gおよび酢酸エチル97.0gを加え、25
℃で10分間攪拌し、処理剤5−2を得た。処理剤1−
2の代わりに、処理剤5−2を用いた以外は、実施例1
と同様の方法により、基板5を得た。
【0085】(実施例6)撹拌機および温度計がセット
されたガラス容器に、C8 172 4 SiCl 3 3.
0g、下記式(4)で表される化合物6の0.6gおよ
び酢酸エチル97.0gを加え、25℃で10分間攪拌
し、処理剤6−2(水に対する接触角値が108゜の表
面を形成する)を得た。処理剤1−2の代わりに、処理
剤6−2を用いた以外は、実施例1と同様の方法によ
り、基板6を得た。
【0086】
【化21】
【0087】(実施例7)撹拌機および温度計がセット
されたガラス容器に、下記式(5)で表される化合物7
の5.0gおよびイソプロピルアルコール95.0gを
加え、25℃で10分間攪拌し、処理剤7−1Aを得
た。使用直前に処理剤7−1A50gと実施例1で得ら
れた処理剤1−1B3gを混合し、処理剤7−1を得
た。処理剤1−1の代わりに、処理剤7−1を用いた以
外は、実施例1と同様の方法により、基板7を得た。
【0088】
【化22】
【0089】(実施例8)撹拌機および温度計がセット
されたガラス容器に、下記式(6)で表される化合物8
の5.0gおよびイソプロピルアルコール95.0gを
加え、25℃で10分間攪拌し、処理剤8−1Aを得
た。使用直前に処理剤8−1A50gと実施例1で得ら
れた処理剤1−1B3gを混合し、処理剤8−1を得
た。処理剤1−1の代わりに、処理剤8−1を用いた以
外は、実施例1と同様の方法により、基板8を得た。
【0090】
【化23】
【0091】(実施例9)撹拌機および温度計がセット
されたガラス容器に、下記式(7)で表される化合物9
の5.0gおよびイソプロピルアルコール95.0gを
加え、25℃で10分間攪拌し、処理剤9−1Aを得
た。使用直前に処理剤9−1A50gと実施例1で得ら
れた処理剤1−1B3gを混合し、処理剤9−1を得
た。処理剤1−1の代わりに、処理剤9−1を用いた以
外は、実施例1と同様の方法により、基板9を得た。
【0092】
【化24】
【0093】(実施例10)撹拌機および温度計がセッ
トされたガラス容器に、下記式(8)で表される化合物
10の5.0gおよびイソプロピルアルコール95.0
gを加え、25℃で10分間攪拌し、処理剤10−1A
を得た。使用直前に処理剤10−1A50gと実施例1
で得られた処理剤1−1B3gを混合し、処理剤10−
1を得た。処理剤1−1の代わりに、処理剤10−1を
用いた以外は、実施例1と同様の方法により、基板10
を得た。
【0094】
【化25】
【0095】(実施例11)撹拌機および温度計がセッ
トされたガラス容器に、下記式(9)で表される化合物
11の5.0gおよびイソプロピルアルコール95.0
gを加え、25℃で10分間攪拌し、処理剤11−1A
を得た。使用直前に処理剤11−1A50gと実施例1
で得られた処理剤1−1B3gを混合し、処理剤11−
1を得た。処理剤1−1の代わりに、処理剤11−1を
用いた以外は、実施例1と同様の方法により、基板11
を得た。
【0096】
【化26】
【0097】(実施例12)撹拌機および温度計がセッ
トされたガラス容器に、下記式(10)で表される化合
物12の5.0gおよびイソプロピルアルコール95.
0gを加え、25℃で10分間攪拌し、処理剤12−1
Aを得た。使用直前に処理剤12−1A50gと実施例
1で得られた処理剤1−1B3gを混合し、処理剤12
−1を得た。処理剤1−1の代わりに、処理剤12−1
を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、基板1
2を得た。
【0098】
【化27】
【0099】(実施例13)撹拌機および温度計がセッ
トされたガラス容器に、下記式(11)で表される化合
物13の5.0gおよびイソプロピルアルコール95.
0gを加え、25℃で10分間攪拌し、処理剤13−1
Aを得た。使用直前に処理剤13−1A50gと実施例
1で得られた処理剤1−1B3gを混合し、処理剤13
−1を得た。処理剤1−1の代わりに、処理剤13−1
を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、基板1
3を得た。
【0100】
【化28】
【0101】(実施例14)撹拌機および温度計がセッ
トされたガラス容器に、Si(OC2 5)4 3.0gお
よびイソプロピルアルコール97.0gを加え、25℃
で10分間撹拌した後、0.1mol/L硝酸水溶液を
3.0g滴下し、25℃で1昼夜攪拌し、処理剤14−
3を得た。処理剤1−3の代わりに、処理剤14−3を
用いた以外は、実施例1と同様の方法により、基板14
を得た。
【0102】(実施例15)処理剤1−3の代わりに、
処理剤14−3を用いた以外は、実施例3と同様の方法
により、基板15を得た。
【0103】(実施例16)撹拌機および温度計がセッ
トされたガラス容器に、Si(OC2 5)4 3.0g、
Sn(OC4 9)4 0.3gおよびイソプロピルアルコ
ール97.0gを加え、25℃で10分間撹拌した後、
0.1mol/L硝酸水溶液を3.0g滴下し、25℃
で1昼夜攪拌し、処理剤16−3を得た。処理剤1−3
の代わりに、処理剤16−3を用いた以外は、実施例3
と同様の方法により、基板16を得た。
【0104】(実施例17)予め洗浄された大きさ10
cm×10cm(厚さ3mm)のガラス製の基板に実施
例1で得られた処理剤1−2を0.5ml滴下し、布で
塗り広げた。室温で1分間放置した後、処理剤1−2で
被覆して得られた層の上に実施例1で得られた処理剤1
−1を0.5ml滴下し、布で塗り広げた。この基板を
室温で1昼夜放置し、基板17を得た。
【0105】(比較例1)予め洗浄された大きさ10c
m×10cm(厚さ3mm)のガラス製の基板に実施例
1で得られた処理剤1−3を0.5ml滴下し、布で塗
り広げた。室温で1分間放置した後、処理剤1−3で被
覆して得られた層の上に実施例1で得られた処理剤1−
1を0.5ml滴下し、布で塗り広げた。この基板を室
温で1昼夜放置し、基板R1を得た。
【0106】(比較例2)予め洗浄された大きさ10c
m×10cm(厚さ3mm)のガラス製の基板に実施例
1で得られた処理剤1−3を0.5ml滴下し、布で塗
り広げた。室温で1分間放置した後、処理剤1−3で被
覆して得られた層の上に実施例1で得られた処理剤1−
2を0.5ml滴下し、布で塗り広げた。この基板を室
温で1昼夜放置し、基板R2を得た。
【0107】(比較例3)撹拌機および温度計がセット
されたガラス容器に、C8 172 4 Si(OCH3)
3 1.5g、上記式(3)で表される化合物1の1.5
gおよびイソプロピルアルコール97.0gを加え、2
5℃で10分間攪拌した後、1重量%(0.16mol
/L)硝酸水溶液3gを滴下し、25℃で3日間攪拌
し、処理剤R3−1を得た。予め洗浄された大きさ10
cm×10cm(厚さ3mm)のガラス製の基板に実施
例1で得られた処理剤1−3を0.5ml滴下し、布で
塗り広げた。室温で1分間放置した後、処理剤1−3で
被覆して得られた層の上に処理剤R3−1を0.5ml
滴下し、布で塗り広げた。この基板を室温で1昼夜放置
し、基板R3を得た。
【0108】2.水滴除去性および撥水性の評価 上記で得られた各基板の表面の水滴除去性を転落角によ
り、撥水性を接触角により評価した。測定法を以下に示
す。 (a)転落角 水平に保持した基板表面に50μlの水滴を滴下し、基
板の一辺を持ち上げて徐々に傾けていき、水滴が落下し
始めたときの基板表面と水平面との角度を読み取った。
従って、この角度が小さいサンプルほど水滴除去性が優
れることを意味する。実用上は、初期の転落角が20゜
以下、特に10゜以下であることが好ましい。 (b)接触角 直径1mmの水滴を用いて、基板表面の接触角を測定し
た。基板表面上の異なる5ケ所で測定を行い、その平均
値を算出した。実用上は、初期の接触角が90゜以上、
特に100゜以上であることが好ましい。
【0109】基板の耐摩耗性、耐候性および耐煮沸性
は、以下の各処理を行った後、上述した方法で転落角お
よび接触角を測定することにより評価した。 (1)耐摩耗性 往復式トラバース試験機(ケイエヌテー社製)を用い、
以下の試験条件で摩耗処理を行った。 試験条件:ネル布、荷重1kg、摩耗回数3000往復 (2)耐候性 70℃、8時間という条件で紫外線照射を行った後、5
0℃、4時間という条件で湿潤曝露を行うという工程を
1サイクルとし、200サイクルの処理を行った。 (3)耐煮沸性 沸騰水中に3時間浸漬するという煮沸試験を行った。
【0110】基板の初期性能ならびに耐摩耗性、耐候性
および耐煮沸性の結果を第1表に示す。
【0111】
【表1】
【0112】本発明の基板は、初期の水滴転落性および
撥水性に優れ、また、耐摩耗性、耐候性および耐煮沸性
のいずれにも優れる(実施例1〜17で得られた基板1
〜17)。これに対して、所定の含フッ素反応性シラン
化合物(II)を含有する組成物(II)で被覆して得られ
る層である第2層を有しない場合には、初期の水滴転落
性には優れるものの、撥水性にやや劣り、また、耐摩耗
性、耐候性および耐煮沸性のいずれにも劣ることが分か
る(比較例1で得られた基板R1)。また、上記組成物
(I)で被覆して得られる層である第1層を有しない場
合には、初期の撥水性には優れるものの、水滴転落性に
劣り、また、耐摩耗性、耐候性および耐煮沸性のいずれ
にも劣ることが分かる(比較例2で得られた基板R
2)。また、含フッ素シリコーン材料とシリコーン系材
料とを混合した組成物で被覆した場合は、初期の転落性
および撥水性に劣り、また、耐摩耗性、耐候性および耐
煮沸性のいずれにも劣ることが分かる(比較例3で得ら
れた基板R3)。したがって、本発明の奏する上記効果
は、最外層として前記第1層を有し、かつ、その内側に
接する第2層を有するという構成を採ることにより、初
めて実現されるものであるということが分かる。
【0113】(4)耐薬品性 基板の耐薬品性は、実施例1および実施例6で得られた
基板1および6を第2表に示す薬品に24時間浸漬した
後取り出して直ちに洗浄した後、外観変化を観察し、ま
た、転落角および接触角を測定することにより評価し
た。基板の耐薬品性の結果を第2表に示す。
【0114】
【表2】
【0115】本発明の基板(実施例1および6)は、薬
品浸漬処理により水滴転落性および撥水性のいずれにお
いても、ほとんど劣化せず、耐薬品性に優れる。
【0116】3.実地試験 (試験例1)実施例1の方法により自動車用フロント合
わせガラスの表面を被覆し、得られたフロント合わせガ
ラスを被覆面を外側にして自動車のフロントに装着し
た。この自動車を用いて、日中4時間の走行テストを1
ケ月間行い、日毎にフロント表面への汚れ、ほこりの付
着状態、また、雨天時においては水滴の付着状態を肉眼
で観察した。その結果、汚れ、ほこりの付着、水滴の付
着による水垢の発生は全く見られず、まれにそれらの発
生が認められてもティッシュペーパーで軽く拭くことに
より容易に除去された。また、雨天時には、表面の水滴
がはじかれ走行による風圧との相互作用によってすみや
かに移動し、ワイパーを使用することなく視野が確保さ
れた。
【0117】(試験例2)日中4時間の走行テストの代
わりに、未処理のフロント合わせガラスに付着している
水滴が氷結する、あるいは空気中の水分が凝縮してフロ
ントガラスに氷結するような環境下(0〜−5℃)での
走行テストを行った以外は、試験例1と同様の方法によ
り、試験を行った。また、さらに厳しい低温環境下(−
10〜−15℃)での走行テストによっても試験を行っ
た。0〜−5℃での走行テストでは、フロントガラスで
の氷結は全くみられなかった。また、−10〜−15℃
での走行テストでは、フロントガラスでの氷結も認めら
れるが、室温に戻した場合の解凍速度は、未処理のフロ
ントガラスに比べて著しく速かった。
【0118】(試験例3)試験例1および2において、
フロント合わせガラスをサイドガラスまたはリアガラス
に変更して試験を行った。その結果、サイドガラスおよ
びリアガラスのいずれの場合にも、試験例1および2と
同様の効果が確認された。
【0119】4.自動車のフロントに装着された自動車
用フロント合わせガラスに対する被覆による本発明の基
板の作成 (試験例4)常用して5年が経過した自動車のフロント
合わせガラス全面の表面に、炭酸カルシウムを水に懸濁
させた溶液を垂らし、スポンジを用いてワックスがけの
要領で研磨した。研磨後、水を十分にかけ、水をはじい
ているところがないように研磨できたことを確認した
後、1時間乾燥した。乾燥後、フロント合わせガラスに
実施例1の方法で処理を行い、自動車のフロントに装着
された態様の本発明の基板を作成した。この自動車を用
いて試験例1および2と同様の走行試験を行った。その
結果、試験例1および2と同様の効果が確認された。ま
た、上記例における実施例1の方法での処理を実施例1
7の方法に変更して行ったところ、より簡単に処理がで
き、上記例と同様の効果が確認された。
【0120】
【発明の効果】本発明の基材は、その表面が、水滴転落
性および撥水性(すなわち、水滴除去性)に優れ、耐摩
耗性、耐候性および耐煮沸性にも優れるので、水滴除去
性が長期的に持続する。耐薬品性にも優れるため、幅広
い分野に適用可能である。また、本発明の基材の製造に
は、被覆前の基材に対する特別な前処理を必要とせず、
経済的効果も高い。特に、常温処理でも水滴除去性の持
続性が高い。従って、本発明の基材は、用途を特に限定
されず広い分野において用いられるが、中でも、輸送機
器分野に最適である。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくとも2層の表面処理層を有する基材
    であって、 表面処理層の最外層である第1層が、下記組成物(I)
    で被覆して得られる層であり、 第1層の内側に接する第2層が、下記組成物(II)で被
    覆して得られる層であることを特徴とする表面処理層を
    有する基材。 組成物(I):下記式(1)で表される有機ケイ素化合
    物を含有する組成物。 組成物(II):水に対する接触角値が100度以上であ
    る表面を形成する含フッ素反応性シラン化合物(II)を
    含有する組成物。 【化1】 (式中、R1 〜R3 は、それぞれメチル基または下記式
    (2)で表される基であり、1分子中に複数含まれるR
    1 〜R3 のうち少なくとも1つは、下記式(2)で表さ
    れる基である。R1 、n個のR2 およびR3 は同一であ
    っても異なっていてもよい。mは1〜100の整数、n
    は0〜10の整数を表す。 【化2】 (式中、Aは炭素数2〜10の2価の炭化水素基または
    酸素原子、R4 は炭素数1〜10の1価の炭化水素基、
    Qはイソシアネート基、塩素原子またはOR5 で表され
    るアルコキシ基であって、R5 は炭素数1〜6の1価の
    炭化水素基を表す。p個のR4 は同一であっても異なっ
    ていてもよく、(3−p)個のQは同一であっても異な
    っていてもよい。pは0〜2の整数を表す。))
  2. 【請求項2】前記含フッ素反応性シラン化合物(II)
    が、下記式(IIA)および/または(IIB)で表される
    請求項1に記載の表面処理層を有する基材。 【化3】 (式中、Z1 およびZ2 は、それぞれイソシアネート基
    または加水分解性基を表し、(3−a)個のZ1 および
    (3−b)個のZ2 は同一であっても異なっていてもよ
    い。R6 およびR7 は、それぞれ水素または炭素数1〜
    21の有機基を表し、a個のR6 およびb個のR7 は同
    一であっても異なっていてもよい。Yは、2価の有機基
    を表す。a個のR6 、b個のR7 およびYのうち少なく
    とも一つは、含フッ素有機基である。aおよびbは、そ
    れぞれ0〜2の整数を表す。) 【化4】 (式中、R8 は、水素または炭素数1〜21の有機基を
    表し、c個のR8 は同一であっても異なっていてもよ
    い。c個のR8 のうち少なくとも一つは、含フッ素有機
    基である。Z3 は、イソシアネート基または加水分解性
    基を表す。cは、1〜3の整数を表す。)
  3. 【請求項3】さらに、第2層の内側に接する第3層を有
    し、該第3層がフッ素不含の反応性シラン化合物(III)
    を含有する組成物(III) で被覆して得られる層である請
    求項1または2に記載の表面処理層を有する基材。
  4. 【請求項4】基材の表面を請求項1に記載の組成物(I
    I)で被覆して第2層を形成する工程、および第2層表
    面を請求項1に記載の組成物(I)で被覆して第1層を
    形成する工程を有する請求項1または2に記載の表面処
    理層を有する基材の製造方法。
  5. 【請求項5】基材の表面を請求項3に記載の組成物(II
    I) で被覆して第3層を形成する工程、第3層表面を請
    求項1に記載の組成物(II)で被覆して第2層を形成す
    る工程、および第2層表面を請求項1に記載の組成物
    (I)で被覆して第1層を形成する工程を有する請求項
    3に記載の表面処理層を有する基材の製造方法。
  6. 【請求項6】前記基材が窓ガラスである請求項1〜3の
    いずれかに記載の表面処理層を有する基材。
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